鞍乗型車両
【課題】ナックルアームを分割式にすることにより、低コストで操縦性を変えることができる鞍乗型車両を提供する。
【解決手段】左側ナックルアーム25Lは、互いに分離可能な、アッパアームボールジョイント取付部75を含む上部ナックルアーム71と、ロアアームボールジョイント取付部78及びアクスル取付部79を含む下部ナックルアーム73とで構成されている。また、上部ナックルアーム71は、アッパアームボールジョイント取付部75を異なる位置に設けた上部ナックルアームと換装することができる。したがって、上部ナックルアーム71を換装するだけで操縦性を変えることができるので、左側ナックルアームの全体を換装する従来例に比較して低コストにすることができる。
【解決手段】左側ナックルアーム25Lは、互いに分離可能な、アッパアームボールジョイント取付部75を含む上部ナックルアーム71と、ロアアームボールジョイント取付部78及びアクスル取付部79を含む下部ナックルアーム73とで構成されている。また、上部ナックルアーム71は、アッパアームボールジョイント取付部75を異なる位置に設けた上部ナックルアームと換装することができる。したがって、上部ナックルアーム71を換装するだけで操縦性を変えることができるので、左側ナックルアームの全体を換装する従来例に比較して低コストにすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車体の前側に一対の車輪を有する自動三輪車両または自動四輪車両であって、車体を傾斜させて旋回可能な鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両として、前後にそれぞれ二つの車輪を備えた四輪の鞍乗型車両がある(例えば、特許文献1参照)。ここで、図14及び図15を参照する。なお、図14は、従来例に係る鞍乗型車両の斜視図であり、図15は、従来例に係る鞍乗型車両の左側面図である。
【0003】
従来例に係る鞍乗型車両100は、メインフレーム101を備えている。メインフレーム101は、前側に二つの前輪103R、103Lを備え、後側に二つの後輪105L、105Rを備えている。メインフレーム101は、その中央部にエンジン107を備え、その上方に燃料タンク109とシート111とを備えている。
【0004】
メインフレーム101は、前側の左右から前方に延びたロアアーム113L、113Rを備えている。その上方には、同様に前方に延びたアッパアーム115L、115Rを備えている。また、メインフレーム101の前側上部には、ステアリングハンドル117を備えている。ステアリングハンドル117の操作は、メインフレーム101の前側の左右から前方に延びたステアリングロッド119L、119Rを介して伝達される。前輪103L、103Rは、ナックルアーム121L、121Rの下部に取り付けられている。
【0005】
ここで、ナックルアーム121L、121Rのうちナックルアーム121Lを例にとって説明する。ナックルアーム121Lは、下部のアクスル取付部123Lと、その上方にロアアーム取付部125Lと、その上方にアッパアーム取付部127Lと、上部にステアリングロッド取付部129Lとを備えている。アクスル取付部123Lは、前輪103Lが取り付けられる。ロアアーム取付部125Lは、ロアアーム113Lが接続される。アッパアーム取付部127Lは、アッパアーム115Lが接続される。ステアリングロッド取付部129Lは、ステアリングロッド119Lが接続される。
【0006】
このように、前輪103Lがナックルアーム121Lで支持されており、側面視でロアアーム113Lとアッパアーム115Lとがほぼ平行を保って前輪103Lが上下動するような、リーディング型サスペンションを構成している。この構成により、前輪103Lがメインフレーム101に対して上下動する。
【0007】
なお、アッパアーム取付部127Lとロアアーム取付部125Lとを結ぶ直線L1の接地点と、アクスル取付部123Lからの垂線L2の接地点との距離は、トレール量TAと呼ばれている。このトレール量TAは、長いと車両の直進性が増し、車両の操舵力が大きくなる。一方、トレール量TAは、短いと車両の旋回性が良くなり、車両の操舵力も小さくなるが、安定性が悪くなる。したがって、トレール量TAを変えることにより、鞍乗型車両100の操縦性を変えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−143474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、従来の鞍乗型車両は、操縦性を変えるためにナックルアーム121L(121R)ごと、ロアアーム取付部125Lとアッパアーム取付部127Lとが異なるものに換装する必要がある。ナックルアーム121L、121Rは一体成型品であって非常に大きい部品であるので、操縦性を変えるのに非常にコストが高くなるという問題がある。
【0010】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ナックルアームを分割式にすることにより、低コストで操縦性を変えることができる鞍乗型車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、車体を傾斜させて旋回可能な鞍乗型車両であって、メインフレームと、前記メインフレームから前方へ延びた左右一対のロアアームと、前記メインフレームのうち、前記一対のロアアームより上方から前方へ延びた左右一対のアッパアームと、前記ロアアームおよび前記アッパアームが接続される左右一対のナックルアームと、前記メインフレームのうち、前記一対のアッパアームより上方に設けられたステアリングハンドルと、前記ステアリングハンドルの操作を前記ナックルアームに伝達する左右一対のステアリングロッドと、前記左右一対のナックルアームにそれぞれ支持された左右一対の前輪と、を備え、前記ナックルアームは、下部に前記前輪の車軸が取り付けられるアクスル取付部と、前記アクスル取付部の上方に設けられ、前記ロアアームが接続されるロアアーム取付部と、前記ロアアーム取付部の上方に設けられ、前記アッパアームが接続されるアッパアーム取付部と、前記アッパアーム取付部の上方に設けられ、前記ステアリングロッドが接続されるステアリングロッド取付部とを備え、前記ナックルアームは、互いに分離可能な、前記アッパアーム取付部を含む上部ナックルアームと、前記ロアアーム取付部及び前記アクスル取付部を含む下部ナックルアームとで構成されており、前記上部ナックルアームは、前記アッパアーム取付部を異なる位置に設けたものと換装可能である。
【0012】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、ナックルアームは、互いに分離可能な、アッパアーム取付部を含む上部ナックルアームと、ロアアーム取付部及びアクスル取付部を含む下部ナックルアームとで構成されている。また、上部ナックルアームは、アッパアーム取付部を異なる位置に設けたものと換装することができる。したがって、アッパアーム取付部とロアアーム取付部とを結ぶ直線の接地点と、アクスル取付部からの垂線の接地点との距離を変えることができる。その結果、上部ナックルアームを換装するだけで操縦性を変えることができるので、ナックルアーム全体を換装する従来例に比較して低コストにすることができる。
【0013】
なお、アッパアームボールジョイント取付部を異なる位置に設けることの「異なる位置」とは、上部ナックルアームのアッパアームボールジョイント取付部の位置を車両の進行方向に前後に移動させた位置である。
【0014】
また、請求項2に記載の発明は、車体を傾斜させて旋回可能な鞍乗型車両であって、メインフレームと、前記メインフレームから前方へ延びた左右一対のロアアームと、前記メインフレームのうち、前記一対のロアアームより上方から前方へ延びた左右一対のアッパアームと、前記ロアアームおよび前記アッパアームが接続される左右一対のナックルアームと、前記メインフレームのうち、前記一対のアッパアームより上方に設けられたステアリングハンドルと、前記ステアリングハンドルの操作を前記ナックルアームに伝達する左右一対のステアリングロッドと、前記左右一対のナックルアームにそれぞれ支持された左右一対の前輪と、を備え、前記ナックルアームは、下部に前記前輪の車軸が取り付けられるアクスル取付部と、前記アクスル取付部の上方に設けられ、前記ロアアームが接続されるロアアーム取付部と、前記ロアアーム取付部の上方に設けられ、前記アッパアームが接続されるアッパアーム取付部と、前記アッパアーム取付部の上方に設けられ、前記ステアリングロッドが接続されるステアリングロッド取付部とを備え、前記ナックルアームは、互いに分離可能な、前記アッパアーム取付部及び前記ロアアーム取付部を含む上部ナックルアームと、前記アクスル取付部を含む下部ナックルアームとで構成されており、前記下部ナックルアームは、前記アクスル取付部を異なる位置に設けたものと換装可能である。
【0015】
[作用・効果]請求項2に記載の発明によれば、ナックルアームは、互いに分離可能な、アッパアーム取付部及びロアアーム取付部を含む上部ナックルアームと、アクスル取付部を含む下部ナックルアームとで構成されている。また、下部ナックルアームは、前記アクスル取付部を異なる位置に設けたものと換装することができる。したがって、アッパアーム取付部とロアアーム取付部とを結ぶ直線の接地点と、アクスル取付部からの垂線の接地点との距離を変えることができる。その結果、下部ナックルアームを換装するだけで操縦性を変えることができるので、ナックルアーム全体を換装する従来例に比較して低コストにすることができる。
【0016】
また、キャスター角が不変であるので、所望の操縦性を比較的得やすくできる。
【0017】
なお、アクスル取付部を異なる位置に設けることの「異なる位置」とは、下部ナックルアームのアクスル取付部の位置を車両の進行方向に前後に移動させた位置である。
【0018】
また、この発明において、前記上部ナックルアームと前記下部ナックルアームの一方は、位置決めピンを備え、前記上部ナックルアームと前記下部ナックルアームの他方は、前記位置決めピンに対応した位置に形成された位置決め穴を備えていることが好ましい(請求項3)。位置決めピンを位置決め穴に挿入することにより、上部ナックルアームと下部ナックルアームとを精度良組み立てることができる。したがって、トレール量が設計値から大きくずれることを防止できるので、操縦性を精度良く変えることができる。
【0019】
また、この発明において、前記上部ナックルアームと前記下部ナックルアームは、一方の外側面と他方の内側面とを対向させた状態で連結されることが好ましい(請求項4)。一方の外側面と他方の内側面とを対向させた状態で連結されるので、接触面積を広くすることができる。したがって、ナックルアームを分割式にしても、剛性の低下を抑制することができる。
【0020】
また、この発明において、前記上部ナックルアームは、前記下部ナックルアームの上部外側面を覆うように包み込む凹部を備えていることが好ましい(請求項5)。上部ナックルアームは、その凹部で下部ナックルアームの上部外側面を覆うように包み込むので、ナックルアームを分割式にしても、剛性の低下を抑制することができる。
【0021】
また、この発明において、前記下部ナックルアームは、前記上部ナックルアームの下部外側面を覆うように包み込む凹部を備えていることが好ましい(請求項6)。下部ナックルアームは、その凹部で上部ナックルアームの下部外側面を覆うように包み込むので、ナックルアームを分割式にしても、剛性の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
この発明に係る鞍乗型車両によれば、ナックルアームは、互いに分離可能な、アッパアーム取付部を含む上部ナックルアームと、アクスル取付部を含む下部ナックルアームとで構成されている。また、上部ナックルアームは、アッパアーム取付部を異なる位置に設けたものと換装することができる。したがって、アッパアーム取付部とロアアーム取付部とを結ぶ直線の接地点と、アクスル取付部からの垂線の接地点との距離を変えることができる。その結果、上部ナックルアームを換装するだけで操縦性を変えることができるので、ナックルアーム全体を換装する従来例に比較して低コストにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例1に係る鞍乗型車両の全体構成を示す左側面図である。
【図2】実施例1に係るナックルアームであって、第1のトレール量に設定されたナックルアームを示し、(a)は背面図であり、(b)は右側面図である。
【図3】第1のトレール量にするための上部ナックアームを示す図であり、(a)は背面図であり、(b)は右側面図である。
【図4】下部ナックルアームを示す図であり、(a)は背面図であり、(b)は右側面図である。
【図5】第2のトレール量に設定されたナックルアームを示し、(a)は背面図であり、(b)は右側面図である。
【図6】第2のトレール量にするための上部ナックアームを示す図であり、(a)は背面図であり、(b)は右側面図である。
【図7】トレール量の変化を説明するための模式図である。
【図8】実施例2に係るナックルアームであって、第1のトレール量に設定されたナックルアームの右側面図である。
【図9】上部ナックルアームを示す右側面図である。
【図10】第1のトレール量にするための下部ナックルアームを示す右側面図である。
【図11】第2のトレール量に設定されたナックルアームの右側面図である。
【図12】第2のトレール量にするための下部ナックルアームを示す右側面図である。
【図13】トレール量の変化を説明するための模式図である。
【図14】従来例に係る鞍乗型車両の斜視図である。
【図15】従来例に係る鞍乗型車両の左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
分離式のナックルアームを備えた鞍乗型車両について、二つの実施例を例にとって以下に説明する。
【実施例1】
【0025】
以下、図面を参照してこの発明の実施例1を説明する。
図1は、実施例1に係る鞍乗型車両の全体構成を示す左側面図である。なお、以下の説明において、「右側」や「左側」、「前側」や「後側」の表現は、鞍乗型車両に乗車した搭乗者から見た場合の方向をいう。図1では、図面の手前側が鞍乗型車両の左側であり、図面の奥側が鞍乗型車両の右側である。また。図面の左側が鞍乗型車両の前側であり、図面の右側が鞍乗型車両の後側である。
【0026】
実施例1に係る鞍乗型車両1は、車体の前側に一対の車輪を備え、車体の後側に一対の車輪を備えた自動四輪車両である。実施例1に係る鞍乗型車両1の全体の概略構成は、図14に示した従来例に係る鞍乗型車両100と同様であるので、以下の説明においては、鞍乗型車両1を左側面から見た図1を参照しながら全体構成を説明する。
【0027】
鞍乗型車両1は、車体の中央部にメインフレーム3を備えている。メインフレーム3の前側(図1の左側)には、支持フレーム5を介してヘッドパイプ7が取り付けられている。このヘッドパイプ7は、ステアリングハンドル11を取り付けられている。メインフレーム3は、その上部前側に、燃料タンク13を取り付けられている。メインフレーム3は、燃料タンク13の後方に、シート15を取り付けられている。メインフレーム3のうち、燃料タンク13の下方には、エンジン17を取り付けられている。
【0028】
以下の説明では、メインフレーム3及びメインフレーム3と一体に固定されている構成(例えば、シート15など)を合わせて「車体」と適宜に記載する。
【0029】
<前輪に関する構成>
1.支持機構〜左側支持機構
左側支持機構と右側支持機構とは同様の構成であるので、左側支持機構について符号付で詳細に説明し、右側支持機構の説明については図示を省略し、適宜符号なしで説明する。
【0030】
メインフレーム3の前端には、メインフレーム3の左右から車体の前部へ延びた左側ロアアーム21Lと右側ロアアームとが車幅方向に並び、前方へ向かって設けられている。つまり、左右一対のロアアームがメインフレーム3から前方へ延びている。左側ロアアーム21Lと右側ロアアームの一端側は、メインフレーム3の前端に設けられているピボット軸22周りに回転可能である。メインフレーム3の前側上部には、メインフレーム3の左右から車体の前部へ延びた左側アッパアーム23Lと右側アッパアームとが車幅方向に並び、前方へ向かって設けられている。つまり、左右一対のアッパアームがメインフレーム3から前方へ延びている。左側アッパアーム23Lと右側アッパアームの一端側は、ピボット軸22の上方に設けられたピボット軸24周りに回転可能である。
【0031】
左側ロアアーム21Lの他端側には、左側ナックルアーム25Lが連結されている。左側ナックルアーム25Lは、斜め後方に向かって湾曲して傾斜しており、そのほぼ中央部で左側アッパアーム23Lの他端側と連結されている。左側ナックルアーム25Lの下部には、左側前輪27Lが回転可能に支持されている。側面視において、左側ナックルアーム25Lが左側ロアアーム21Lと左側アッパアーム23Lとそれぞれ結合する各結合部と、ピボット軸22,24の各位置は、ほぼ平行四辺形の各頂点に対応するように配置されている。
【0032】
同様に、右側ロアアームの他端側には、右側ナックルアームが連結されている。右側ナックルアームは、その中央部で右側アッパアームの他端側と連結されている。右側ナックルアームの下部には、右側前輪が回転可能に支持されている。つまり、左右一対のナックルアームは、ロアアーム及びアッパアームを接続されている。
【0033】
左側ロアアーム21L及び左側アッパアーム23Lがそれぞれピボット軸22,24周りに正逆方向に回転することで、左側ナックルアーム25Lは、車体のほぼ上下方向に昇降する。これにより、左側前輪27Lは、車体に対して上下動する。同様に、右側ロアアーム及び右側アッパアームがそれぞれピボット軸周りに正逆方向に回転することで、右側ナックルアームは、車体のほぼ上下方向に昇降する。これにより、右側前輪は、車体に対して上下動する。左側前輪27L及び右側前輪は、車体を挟む位置関係となる。つまり、左右一対の前輪が左右一対のナックルアームにそれぞれ支持されている。
【0034】
2.支持機構〜バランサ機構
左側支持機構と右側支持機構とは同様の構成であるので、左側支持機構について符号付で詳細に説明し、右側支持機構の説明については図示を省略し、適宜符号なしで説明する。
【0035】
左側ロアアーム21Lには、左側ショックアブソーバ31Lの一端側が連動連結されている。左側ショックアブソーバ31Lの他端側は、図示しないバランスビームに連動連結されている。また、同様に、右側ロアアームには、右側ショックアブソーバの一端側が連動連結され、右側ショックアブソーバの他端側は、図示しないバランスビームに連動連結されている。
【0036】
上述したステアリングハンドル11は、下部で操舵リンク機構35に連動連結されている。操舵リンク機構35は、左側ステアリングロッド37L及び右側ステアリングロッドの一端側に連結されている。左側ステアリングロッド37Lは、他端側を左側ナックルアーム25Lの上部に連動連結され、右側ステアリングロッドは、他端側を右側ナックルアームの上部に連動連結されている。ステアリングハンドル11の操作に応じて、左側ナックルアーム25及び右側ナックルアームがそれぞれ縦軸心周りに回転し、左側前輪27L及び右側前輪に舵角を与える。つまり、左右一対のステアリングロッドは、ステアリングハンドル11の操作をそれぞれのナックルアームに伝達する。
【0037】
<後輪に関する構成>
1.支持機構〜左側支持機構
メインフレーム11の後端下部には、車体の後側へ延びた左側リアアーム41Lと右側リアアームとが車幅方向に並んで設けられている。左側リアアーム41L及び右側リアアームとは、それぞれ揺動軸PV周りに回転可能である。左側リアアーム41Lの後端部には、左側後輪43Lが回転可能に支持されている。また、右側リアアームの後端部には、右側後輪が回転可能に支持されている。左側後輪43L及び右側後輪は、車体を挟む位置関係となる。
【0038】
そして、左側後輪43Lが車体に対して上下動すると、左側リアアーム41Lは揺動軸PV周りに正逆方向に回転する。右側後輪と右側リアアームとの関係も同様である。
【0039】
2.支持機構〜バランサ機構
左側リアアーム41L及び右側リアアームの間には、キャリアビーム51が配置され、キャリアビーム51はメインフレーム3に連結されている。キャリアビーム51は、図示しないスタビライザーを回転可能に保持している。キャリアビーム51の先端部には、ショックアブソーバ55の一端側が連動連結されている。ショックアブソーバ55の他端側は、メインフレーム3に連動連結されている。図示しないスタビライザーの両端には、それぞれ左側ロッド57Lと右側ロッドとの一端側が連動連結されている。左側ロッド57Lの他端側は、左側リアアーム41Lに連動連結されている。右側ロッドの他端側は、右側リアアームに連動連結されている。
【0040】
例えば、左側後輪43Lの下降に伴って左側リアアーム41Lが揺動軸PV周りに回転する際、左側リアアーム41Lは左側ロッドを介してスタビライザー(図示省略)の一端側を引き下げる。これにより、スタビライザー(図示省略)は回転し、他端側に連結されている右側ロッドを介して、右側リアアームを引き上げる。これにより、右側後輪は、左側後輪43Lが下降した分だけ上昇する。このように、左側後輪43Lと右側後輪とは、車体のほぼ上下方向で逆向きに昇降する。
【0041】
3.駆動機構
エンジン17の駆動力は、図示しないベベルギヤを介して左側ドライブシャフト61L及び右側ドライブシャフトに出力される。左側ドライブシャフト61Lの中間部には、左側ダブルカルダンジョイント63Lが設けられている。左側ドライブシャフト61Lの後部は、図示しない軸受け部を介して左側リアアーム1Lに回転可能に保持されている。左側ドライブシャフト61Lの後端は、図示しないベベルギヤが設けられており、このベベルギヤに左側後輪43Lが連結されている。右側ドライブシャフトは、左側ドライブシャフト61Lと同様に構成されている。
【0042】
<分割式ナックルアーム>
ここで図2〜図4を参照して、上述した左側ナックルアーム25Lについて詳細に説明する。なお、図2は、実施例1に係るナックルアームであって、第1のトレール量に設定されたナックルアームを示し、(a)は背面図であり、(b)は右側面図である。図3は、第1のトレール量にするための上部ナックアームを示す図であり、(a)は背面図であり、(b)は右側面図である。図4は、下部ナックルアームを示す図であり、(a)は背面図であり、(b)は右側面図である。以下においては、図示の関係上、図1の奥側(右側)からナックルアームを見た図で説明する。
【0043】
なお、トレール量については、詳細を後述するが、後述するアッパアームボールジョイント取付部とロアアームボールジョイント取付部とを結ぶ直線の接地点と、アクスル取付部からの垂線の接地点との距離のことである。まず、第1のトレール量に設定されている左側ナックルアーム25Lについて説明する。
【0044】
左側ナックルアーム25Lは、上部ナックルアーム71と下部ナックルアーム73とから構成されている。上部ナックルアーム71は、アッパアームボールジョイント取付部75と、ステアリングロッドボールジョイント取付部77とを備えている。アッパアームボールジョイント取付部75は、ボールジョイントを介して左側アッパアーム23Lを取り付ける部位であり、ステアリングロッドボールジョイント取付部77は、ボールジョイントを介して左側ステアリングロッド37Lを取り付けるための部位である。下部ナックルアーム73は、ロアアームボールジョイント取付部78と、アクスル取付部79とを備えている。ロアアームボールジョイント取付部78は、ボールジョイントを介して左側ロアアーム21Lを取り付ける部位であり、アクスル取付部79は、左前輪27Lの車軸を回転可能に支持するための部位である。
【0045】
なお、アッパアームボールジョイント取付部75がこの発明における「アッパアーム取付部」に相当する。また、ステアリングロッドボールジョイント取付部77がこの発明における「ステアリングロッド取付部」に相当し、ロアアームボールジョイント取付部78がこの発明における「ロアアーム取付部」に相当する。
【0046】
下部ナックルアーム73は、上部ナックルアーム71との連結部81を上部に備えている。連結部81は、左側面にネジ穴83を形成されている。また、ネジ穴83の間には、位置決め穴85を形成されている。
【0047】
上部ナックルアーム71は、下部ナックルアーム73との連結部87を下部に備えている。連結部87は、下部ナックルアーム73の連結部81を覆うように包み込む凹部89を形成されている。凹部89は、ネジ穴83に対応する位置にネジ止め用の穴91を形成されている。また、下部ナックルアーム73の位置決め穴85に対応する位置には、位置決めピン93を備えている。
【0048】
上部ナックルアーム71と下部ナックルアーム73との連結は、上部ナックルアーム71の内側面89aを、下部ナックルアーム73の外側面81aに対向させることで行う。そして、その状態で、位置決めピン93を位置決め穴85に挿入し、さらに、例えば、4個のネジ95を用いて上部ナックルアーム71を下部ナックルアーム73に対して強固に連結させる(図2)。
【0049】
このような左側ナックルアーム25Lは、トレール量が第1のトレール量TA1に設定されているものとする。なお、トレール量TA1については後述する。
【0050】
次に、図5,6を参照して、第2のトレール量に設定されている左側ナックルアーム25Lについて説明する。なお、図5は、第2のトレール量に設定されたナックルアームを示し、(a)は背面図であり、(b)は右側面図である。図6は、第2のトレール量にするための上部ナックアームを示す図であり、(a)は背面図であり、(b)は右側面図である。
【0051】
この左側ナックルアーム25Lは、上述した第1のトレール量TA1に設定された左側ナックルアーム25Lに対して上部ナックルアーム71aを異なるものにしている。この上部ナックルアーム71aは、上述した上部ナックルアーム71のアッパボールジョイント取付部75の位置を異なるものに設定されている。
【0052】
具体的には、連結部87の左側のネジ穴83からアッパボールジョイント取付部75までの距離d2を、第1のトレール量TA1に設定された上部ナックルアーム71の距離d1よりも長く設定されている(図3及び図6参照)。換言すると、車両の進行方向(図2(b)、図3(b)、図5(b)、図6(b)の左右方向)における前後に、上部ナックルアーム71におけるアッパアームボールジョイント取付部75の位置を変えてある。その他の連結部87等は、上部ナックルアーム71と同様の構成である。なお、この例では、上部ナックルアーム71,17aは、ステアリングロッドボールジョイント取付部77の位置も変えてある。
【0053】
ここで、図7を参照する。なお、図7は、トレール量の変化を説明するための模式図である。
【0054】
図7中に実線で示したのは、上部ナックルアーム71を取り付けた左側ナックルアーム25Lであり、点線で示したのは、上部ナックルアーム71aを取り付けた左側ナックルアーム25Lである。図示の関係上、アッパアームボールジョイント取付部75と、ロアアームボールジョイント取付部78と、アクスル取付部79だけを示す。
【0055】
アッパアームボールジョイント取付部75とロアアームボールジョイント取付部78とを結ぶ直線L1の接地点(地面に接地する点)と、アクスル取付部79からの垂線L2の接地点(地面に接地する点)との距離は、トレール量と呼ばれている。上部ナックルアーム71の場合を実線の直線L1で示し、上部ナックルアーム71aの場合を点線の直線L1で示している。また、上部ナックルアーム71の場合のトレール量を符号TA1で示し、上部ナックルアーム71aの場合のトレール量を符号TA2で示している。
【0056】
図7から明らかなように、上部ナックルアーム71のトレール量TA1は、上部ナックルアーム71aのトレール量TA2よりも短い。このトレール量TA1,2は、長いと車両の直進性が増し、車両の操舵力が大きくなる。一方、トレール量TA1,2は、短いと車両の旋回性が良くなり、車両の操舵力も小さくなるが、安定性が悪くなる。したがって、左側ナックルアーム25Lの上部ナックルアーム71を上部ナックルアーム71aに換装すると、車両の直進性が増し、車両の操舵力が大きくなる。その結果、異なる操縦性の車両にすることができる。なお、左側ナックルアーム25Lと同様に右側ナックルアームも同様の上部ナックルアームに換装することは言うまでもない。
【0057】
上述したように、左側ナックルアーム25Lは、互いに分離可能な、アッパアームボールジョイント取付部75を含む上部ナックルアーム71と、ロアアームボールジョイント取付部78及びアクスル取付部79を含む下部ナックルアーム73とで構成されている。また、上部ナックルアーム71は、アッパアームボールジョイント取付部75を異なる位置に設けた上部ナックルアーム71aと換装することができる。したがって、上部ナックルアーム71を換装するだけで操縦性を変えることができるので、左側ナックルアーム121Lの全体を換装する従来例(図14,15)に比較して低コストにすることができる。
【0058】
また、上述した左側ナックルアーム25Lは、上部ナックルアーム71,71aの位置決めピン93を、下部ナックルアーム73の位置決め穴85に挿入することにより、上部ナックルアーム71,71aと下部ナックルアーム73とを精度良組み立てることができる。したがって、トレール量が設計値から大きくずれることを防止できるので、操縦性を精度良く変えることができる。
【0059】
また、左側ナックルアーム25Lは、下部ナックルアーム73の外側面81aと、上部ナックルアーム71,71aの内側面89aとを対向させた状態で連結される。したがって、下部ナックルアーム73と上部ナックルアーム71,71aとの接触面積を広くすることができる。その結果、左側ナックルアーム25Lを分割式の構成としながらも、その剛性の低下を抑制することができる。
【0060】
さらに、上部ナックルアーム71,71aは、連結部87の凹部89で下部ナックルアーム73の連結部81の外側面を覆うように包み込む。したがって、左側ナックルアーム25Lを分割式にしても、剛性の低下を抑制することができる。
【0061】
なお、上記の説明においては、左側ナックルアーム25Lを例にとって説明したが、右側ナックルアームについても同様であることは言うまでもない。
【0062】
上述した実施例1は、次のように変形実施することができる。
【0063】
(1)上述した実施例1では、上部ナックルアーム71,71aが位置決めピン93を備え、下部ナックルアーム73が位置決め穴85を備えている。しかし、それらが入れ替わった構成としてもよい。また、精度的に問題がない場合には、位置決めピン93及び位置決め穴85を備える必要はない。
【0064】
(2)上述した実施例1では、下部ナックルアーム73の外側面81aと、上部ナックルアーム71,71aの内側面89aとを対向させた状態で連結されるようにした。しかし、下部ナックルアーム73の前面(または背面)と、上部ナックルアーム71,71aの背面(または前面)とを対向させた状態で連結するようにしてもよい。
【0065】
(3)上述した実施例1では、上部ナックルアーム71,71aの連結部87に凹部89を設けている。しかし、凹部89を下部ナックルアーム73の連結部81側に設けるようにしてもよい。また、凹部89を省略した構成としてもよい。
【実施例2】
【0066】
次に、図面を参照してこの発明の実施例2を説明する。
図8は、実施例2に係るナックルアームであって、第1のトレール量に設定されたナックルアームの右側面図である。図9は、上部ナックルアームを示す右側面図であり、図10は、第1のトレール量にするための下部ナックルアームを示す右側面図である。
【0067】
なお、全体構成は、上述した実施例1と同様であるので、全体の詳細な説明については省略し、左側ナックルアーム25Laについてのみ詳細な説明を行う。
【0068】
この実施例2に係る左側ナックルアーム25Laは、互いに分離可能な、アッパアームボールジョイント取付部75及びロアアームボールジョイント取付部78を含む上部ナックルアーム71と、アクスル取付部79を含む下部ナックルアーム73とで構成されている。
【0069】
上部ナックルアーム71は、下部ナックルアーム73との連結部87を下部に備えている。連結部87は、側面にネジ穴83を形成されている。また、ネジ穴83の間には、位置決め穴85を形成されている。
【0070】
下部ナックルアーム73は、上部ナックルアーム71との連結部81を上部に備えている。連結部81は、上部ナックルアーム71の連結部87を覆うように包み込む凹部89を形成されている。凹部89は、ネジ穴83に対応する位置にネジ止め用の穴91が形成されている。また、位置決め穴85に対応する位置に位置決めピン93を備えている。
【0071】
下部ナックルアーム7の凹部89は、その内側面89aを、上部ナックルアーム71の外側面(図示省略)に対向させた状態で、例えば、4個のネジで上部ナックルアーム71と下部ナックルアーム73とを強固に連結する(図示省略)。
【0072】
このような左側ナックルアーム25Laは、トレール量が第1のトレール量TA1に設定されているものとする。なお、トレール量TA1については後述する。
【0073】
次に、図11,12を参照して、第2のトレール量に設定されている左側ナックルアーム25Laについて説明する。なお、図11は、第2のトレール量に設定されたナックルアームの右側面図である。また、図12は、第2のトレール量にするための下部ナックルアームを示す右側面図である。
【0074】
この左側ナックルアーム25Laは、上述した第1のトレール量に設定された左側ナックルアーム25Laに対して下部ナックルアーム73aを異なるものにしてある。この下部ナックルアーム73aは、上述した下部ナックルアーム73のアクスル取付部79の位置を異なるものに設定されている。具体的には、連結部81の右側に形成されているネジ穴91の中心部からアクスル取付部79の中心部までの距離d4を、第1のトレール量に設定された下部ナックルアーム73の距離d3よりも長く設定されている(図10及び図12参照)。換言すると、車両の進行方向(図8、図10、図12の左右方向)における前後に、下部ナックルアーム73,73aにおけるアクスル取付部79の位置を変えてある。その他の連結部81等は、下部ナックルアーム73と同様の構成である。
【0075】
ここで、図13を参照する。なお、図13は、トレール量の変化を説明するための模式図である。
【0076】
図13中に実線で示したのは、下部ナックルアーム73を取り付けた左側ナックルアーム25Laであり、点線で示したのは、下部ナックルアーム73aを取り付けた左側ナックルアーム25Laである。図示の関係上、アッパアームボールジョイント取付部75と、ロアアームボールジョイント取付部78と、アクスル取付部79だけを示す。
【0077】
アッパアームボールジョイント取付部75とロアアームボールジョイント取付部78とを結ぶ直線L1の接地点(地面に接地する点)と、アクスル取付部79からの垂線L2の接地点(地面に接地する点)との距離は、トレール量と呼ばれている。下部ナックルアーム73の垂線L2を一点鎖線で示し、下部ナックルアーム73aの垂線L2を点線で示している。また、下部ナックルアーム73の場合のトレール量を符号TA1で示し、下部ナックルアーム73aの場合のトレール量を符号TA2で示している。
【0078】
図13から明らかなように、下部ナックルアーム73のトレール量TA1は、下部ナックルアーム73aのトレール量TA2よりも短くなっている。このトレール量TA1,2は、長いと車両の直進性が増し、車両の操舵力が大きくなる。一方、トレール量TA1,2は、短いと車両の旋回性が良くなり、車両の操舵力も小さくなるが、安定性が悪くなる。したがって、左側ナックルアーム25Laの下部ナックルアーム73を下部ナックルアーム73aに換装すると、車両の直進性が増し、車両の操舵力が大きくなる。その結果、異なる操縦性の車両にすることができる。なお、左側ナックルアーム25Laと同様に右側ナックルアームも下部ナックルアームを換装することは言うまでもない。
【0079】
また、実施例2は、キャスター角が変わる実施例1とは異なり、キャスター角が不変である。したがって、実施例1に比較して所望の操縦性を得やすくできる。なお、キャスター角とは、アッパアームボールジョイント取付部75とロアアームボールジョイント取付部78とを結ぶ直線と垂線とのなす角度である。このキャスター角は、旋回性に影響する。
【0080】
上述した実施例2は、次のように変形実施することができる。
【0081】
(1)上述した実施例2では、上部ナックルアーム73,73aが位置決めピン93を備え、上部ナックルアーム71が位置決め穴85を備えている。しかし、それらが入れ替わった構成としてもよい。また、精度的に問題がない場合には、位置決めピン93及び位置決め穴85を備える必要はない。
【0082】
(2)上述した実施例2では、下部ナックルアーム73,73aの内側面と、上部ナックルアーム71の外側面とを対向させた状態で連結されるようにした。しかし、下部ナックルアーム73,73aの前面(または背面)と、上部ナックルアーム71の背面(または前面)とを対向させた状態で連結するようにしてもよい。
【0083】
(3)上述した実施例2は、下部ナックルアーム73,73aの連結部81に凹部89を設けている。しかし、凹部89を上部ナックルアーム71の連結部87側に設けるようにしてもよい。また、凹部89を省略した構成としてもよい。
【0084】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0085】
(1)上述した各実施例1,2では、二つの前輪と二つの後輪を備えた自動四輪車両として鞍乗型車両を例にとって説明した。しかし、後輪が一つの自動三輪車両であってもこの発明を適用することができる。
【0086】
(2)上述した各実施例1,2では、左側ナックルアーム25L及び右側ナックルアームは、斜め後方に向かって湾曲して傾斜した形状を例にとって説明した。しかし、この発明は、そのような形状に限定されるものではない。
【0087】
(3)上述した各実施例1,2では、左側ロアアーム21L、左側アッパアーム25L、左側ステアリングロッド37Lを、ロアアームボールジョイント取付部78、アッパアームボールジョイント取付部75、ステアリングロッドボールジョイント取付部77にボールジョイントを介して取り付けるようにした。しかし、この発明はボールジョイントとは異なる継ぎ手を用いた場合であっても適用することができる。
【符号の説明】
【0088】
1 … 鞍乗型車両
3 … メインフレーム
11 … ステアリングハンドル
21L … 左側ロアアーム
23L … 左側アッパアーム
25L … 左側ナックルアーム
27L … 左側前輪
37L … 左側ステアリングロッド
41L … 左側リアアーム
43L … 左側後輪
71,71a … 上部ナックルアーム
73 … 下部ナックルアーム
75 … アッパボールジョイント取付部
77 … ステアリングロッドボールジョイント取付部
79 … アクスル取付部
81,87 … 連結部
81a … 外側面
85 … 位置決め穴
89 … 凹部
89a … 内側面
91 … ネジ止め用の穴
93 … 位置決めピン
TA1,TA2 … トレール量
【技術分野】
【0001】
この発明は、車体の前側に一対の車輪を有する自動三輪車両または自動四輪車両であって、車体を傾斜させて旋回可能な鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両として、前後にそれぞれ二つの車輪を備えた四輪の鞍乗型車両がある(例えば、特許文献1参照)。ここで、図14及び図15を参照する。なお、図14は、従来例に係る鞍乗型車両の斜視図であり、図15は、従来例に係る鞍乗型車両の左側面図である。
【0003】
従来例に係る鞍乗型車両100は、メインフレーム101を備えている。メインフレーム101は、前側に二つの前輪103R、103Lを備え、後側に二つの後輪105L、105Rを備えている。メインフレーム101は、その中央部にエンジン107を備え、その上方に燃料タンク109とシート111とを備えている。
【0004】
メインフレーム101は、前側の左右から前方に延びたロアアーム113L、113Rを備えている。その上方には、同様に前方に延びたアッパアーム115L、115Rを備えている。また、メインフレーム101の前側上部には、ステアリングハンドル117を備えている。ステアリングハンドル117の操作は、メインフレーム101の前側の左右から前方に延びたステアリングロッド119L、119Rを介して伝達される。前輪103L、103Rは、ナックルアーム121L、121Rの下部に取り付けられている。
【0005】
ここで、ナックルアーム121L、121Rのうちナックルアーム121Lを例にとって説明する。ナックルアーム121Lは、下部のアクスル取付部123Lと、その上方にロアアーム取付部125Lと、その上方にアッパアーム取付部127Lと、上部にステアリングロッド取付部129Lとを備えている。アクスル取付部123Lは、前輪103Lが取り付けられる。ロアアーム取付部125Lは、ロアアーム113Lが接続される。アッパアーム取付部127Lは、アッパアーム115Lが接続される。ステアリングロッド取付部129Lは、ステアリングロッド119Lが接続される。
【0006】
このように、前輪103Lがナックルアーム121Lで支持されており、側面視でロアアーム113Lとアッパアーム115Lとがほぼ平行を保って前輪103Lが上下動するような、リーディング型サスペンションを構成している。この構成により、前輪103Lがメインフレーム101に対して上下動する。
【0007】
なお、アッパアーム取付部127Lとロアアーム取付部125Lとを結ぶ直線L1の接地点と、アクスル取付部123Lからの垂線L2の接地点との距離は、トレール量TAと呼ばれている。このトレール量TAは、長いと車両の直進性が増し、車両の操舵力が大きくなる。一方、トレール量TAは、短いと車両の旋回性が良くなり、車両の操舵力も小さくなるが、安定性が悪くなる。したがって、トレール量TAを変えることにより、鞍乗型車両100の操縦性を変えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−143474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、従来の鞍乗型車両は、操縦性を変えるためにナックルアーム121L(121R)ごと、ロアアーム取付部125Lとアッパアーム取付部127Lとが異なるものに換装する必要がある。ナックルアーム121L、121Rは一体成型品であって非常に大きい部品であるので、操縦性を変えるのに非常にコストが高くなるという問題がある。
【0010】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ナックルアームを分割式にすることにより、低コストで操縦性を変えることができる鞍乗型車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、車体を傾斜させて旋回可能な鞍乗型車両であって、メインフレームと、前記メインフレームから前方へ延びた左右一対のロアアームと、前記メインフレームのうち、前記一対のロアアームより上方から前方へ延びた左右一対のアッパアームと、前記ロアアームおよび前記アッパアームが接続される左右一対のナックルアームと、前記メインフレームのうち、前記一対のアッパアームより上方に設けられたステアリングハンドルと、前記ステアリングハンドルの操作を前記ナックルアームに伝達する左右一対のステアリングロッドと、前記左右一対のナックルアームにそれぞれ支持された左右一対の前輪と、を備え、前記ナックルアームは、下部に前記前輪の車軸が取り付けられるアクスル取付部と、前記アクスル取付部の上方に設けられ、前記ロアアームが接続されるロアアーム取付部と、前記ロアアーム取付部の上方に設けられ、前記アッパアームが接続されるアッパアーム取付部と、前記アッパアーム取付部の上方に設けられ、前記ステアリングロッドが接続されるステアリングロッド取付部とを備え、前記ナックルアームは、互いに分離可能な、前記アッパアーム取付部を含む上部ナックルアームと、前記ロアアーム取付部及び前記アクスル取付部を含む下部ナックルアームとで構成されており、前記上部ナックルアームは、前記アッパアーム取付部を異なる位置に設けたものと換装可能である。
【0012】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、ナックルアームは、互いに分離可能な、アッパアーム取付部を含む上部ナックルアームと、ロアアーム取付部及びアクスル取付部を含む下部ナックルアームとで構成されている。また、上部ナックルアームは、アッパアーム取付部を異なる位置に設けたものと換装することができる。したがって、アッパアーム取付部とロアアーム取付部とを結ぶ直線の接地点と、アクスル取付部からの垂線の接地点との距離を変えることができる。その結果、上部ナックルアームを換装するだけで操縦性を変えることができるので、ナックルアーム全体を換装する従来例に比較して低コストにすることができる。
【0013】
なお、アッパアームボールジョイント取付部を異なる位置に設けることの「異なる位置」とは、上部ナックルアームのアッパアームボールジョイント取付部の位置を車両の進行方向に前後に移動させた位置である。
【0014】
また、請求項2に記載の発明は、車体を傾斜させて旋回可能な鞍乗型車両であって、メインフレームと、前記メインフレームから前方へ延びた左右一対のロアアームと、前記メインフレームのうち、前記一対のロアアームより上方から前方へ延びた左右一対のアッパアームと、前記ロアアームおよび前記アッパアームが接続される左右一対のナックルアームと、前記メインフレームのうち、前記一対のアッパアームより上方に設けられたステアリングハンドルと、前記ステアリングハンドルの操作を前記ナックルアームに伝達する左右一対のステアリングロッドと、前記左右一対のナックルアームにそれぞれ支持された左右一対の前輪と、を備え、前記ナックルアームは、下部に前記前輪の車軸が取り付けられるアクスル取付部と、前記アクスル取付部の上方に設けられ、前記ロアアームが接続されるロアアーム取付部と、前記ロアアーム取付部の上方に設けられ、前記アッパアームが接続されるアッパアーム取付部と、前記アッパアーム取付部の上方に設けられ、前記ステアリングロッドが接続されるステアリングロッド取付部とを備え、前記ナックルアームは、互いに分離可能な、前記アッパアーム取付部及び前記ロアアーム取付部を含む上部ナックルアームと、前記アクスル取付部を含む下部ナックルアームとで構成されており、前記下部ナックルアームは、前記アクスル取付部を異なる位置に設けたものと換装可能である。
【0015】
[作用・効果]請求項2に記載の発明によれば、ナックルアームは、互いに分離可能な、アッパアーム取付部及びロアアーム取付部を含む上部ナックルアームと、アクスル取付部を含む下部ナックルアームとで構成されている。また、下部ナックルアームは、前記アクスル取付部を異なる位置に設けたものと換装することができる。したがって、アッパアーム取付部とロアアーム取付部とを結ぶ直線の接地点と、アクスル取付部からの垂線の接地点との距離を変えることができる。その結果、下部ナックルアームを換装するだけで操縦性を変えることができるので、ナックルアーム全体を換装する従来例に比較して低コストにすることができる。
【0016】
また、キャスター角が不変であるので、所望の操縦性を比較的得やすくできる。
【0017】
なお、アクスル取付部を異なる位置に設けることの「異なる位置」とは、下部ナックルアームのアクスル取付部の位置を車両の進行方向に前後に移動させた位置である。
【0018】
また、この発明において、前記上部ナックルアームと前記下部ナックルアームの一方は、位置決めピンを備え、前記上部ナックルアームと前記下部ナックルアームの他方は、前記位置決めピンに対応した位置に形成された位置決め穴を備えていることが好ましい(請求項3)。位置決めピンを位置決め穴に挿入することにより、上部ナックルアームと下部ナックルアームとを精度良組み立てることができる。したがって、トレール量が設計値から大きくずれることを防止できるので、操縦性を精度良く変えることができる。
【0019】
また、この発明において、前記上部ナックルアームと前記下部ナックルアームは、一方の外側面と他方の内側面とを対向させた状態で連結されることが好ましい(請求項4)。一方の外側面と他方の内側面とを対向させた状態で連結されるので、接触面積を広くすることができる。したがって、ナックルアームを分割式にしても、剛性の低下を抑制することができる。
【0020】
また、この発明において、前記上部ナックルアームは、前記下部ナックルアームの上部外側面を覆うように包み込む凹部を備えていることが好ましい(請求項5)。上部ナックルアームは、その凹部で下部ナックルアームの上部外側面を覆うように包み込むので、ナックルアームを分割式にしても、剛性の低下を抑制することができる。
【0021】
また、この発明において、前記下部ナックルアームは、前記上部ナックルアームの下部外側面を覆うように包み込む凹部を備えていることが好ましい(請求項6)。下部ナックルアームは、その凹部で上部ナックルアームの下部外側面を覆うように包み込むので、ナックルアームを分割式にしても、剛性の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
この発明に係る鞍乗型車両によれば、ナックルアームは、互いに分離可能な、アッパアーム取付部を含む上部ナックルアームと、アクスル取付部を含む下部ナックルアームとで構成されている。また、上部ナックルアームは、アッパアーム取付部を異なる位置に設けたものと換装することができる。したがって、アッパアーム取付部とロアアーム取付部とを結ぶ直線の接地点と、アクスル取付部からの垂線の接地点との距離を変えることができる。その結果、上部ナックルアームを換装するだけで操縦性を変えることができるので、ナックルアーム全体を換装する従来例に比較して低コストにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例1に係る鞍乗型車両の全体構成を示す左側面図である。
【図2】実施例1に係るナックルアームであって、第1のトレール量に設定されたナックルアームを示し、(a)は背面図であり、(b)は右側面図である。
【図3】第1のトレール量にするための上部ナックアームを示す図であり、(a)は背面図であり、(b)は右側面図である。
【図4】下部ナックルアームを示す図であり、(a)は背面図であり、(b)は右側面図である。
【図5】第2のトレール量に設定されたナックルアームを示し、(a)は背面図であり、(b)は右側面図である。
【図6】第2のトレール量にするための上部ナックアームを示す図であり、(a)は背面図であり、(b)は右側面図である。
【図7】トレール量の変化を説明するための模式図である。
【図8】実施例2に係るナックルアームであって、第1のトレール量に設定されたナックルアームの右側面図である。
【図9】上部ナックルアームを示す右側面図である。
【図10】第1のトレール量にするための下部ナックルアームを示す右側面図である。
【図11】第2のトレール量に設定されたナックルアームの右側面図である。
【図12】第2のトレール量にするための下部ナックルアームを示す右側面図である。
【図13】トレール量の変化を説明するための模式図である。
【図14】従来例に係る鞍乗型車両の斜視図である。
【図15】従来例に係る鞍乗型車両の左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
分離式のナックルアームを備えた鞍乗型車両について、二つの実施例を例にとって以下に説明する。
【実施例1】
【0025】
以下、図面を参照してこの発明の実施例1を説明する。
図1は、実施例1に係る鞍乗型車両の全体構成を示す左側面図である。なお、以下の説明において、「右側」や「左側」、「前側」や「後側」の表現は、鞍乗型車両に乗車した搭乗者から見た場合の方向をいう。図1では、図面の手前側が鞍乗型車両の左側であり、図面の奥側が鞍乗型車両の右側である。また。図面の左側が鞍乗型車両の前側であり、図面の右側が鞍乗型車両の後側である。
【0026】
実施例1に係る鞍乗型車両1は、車体の前側に一対の車輪を備え、車体の後側に一対の車輪を備えた自動四輪車両である。実施例1に係る鞍乗型車両1の全体の概略構成は、図14に示した従来例に係る鞍乗型車両100と同様であるので、以下の説明においては、鞍乗型車両1を左側面から見た図1を参照しながら全体構成を説明する。
【0027】
鞍乗型車両1は、車体の中央部にメインフレーム3を備えている。メインフレーム3の前側(図1の左側)には、支持フレーム5を介してヘッドパイプ7が取り付けられている。このヘッドパイプ7は、ステアリングハンドル11を取り付けられている。メインフレーム3は、その上部前側に、燃料タンク13を取り付けられている。メインフレーム3は、燃料タンク13の後方に、シート15を取り付けられている。メインフレーム3のうち、燃料タンク13の下方には、エンジン17を取り付けられている。
【0028】
以下の説明では、メインフレーム3及びメインフレーム3と一体に固定されている構成(例えば、シート15など)を合わせて「車体」と適宜に記載する。
【0029】
<前輪に関する構成>
1.支持機構〜左側支持機構
左側支持機構と右側支持機構とは同様の構成であるので、左側支持機構について符号付で詳細に説明し、右側支持機構の説明については図示を省略し、適宜符号なしで説明する。
【0030】
メインフレーム3の前端には、メインフレーム3の左右から車体の前部へ延びた左側ロアアーム21Lと右側ロアアームとが車幅方向に並び、前方へ向かって設けられている。つまり、左右一対のロアアームがメインフレーム3から前方へ延びている。左側ロアアーム21Lと右側ロアアームの一端側は、メインフレーム3の前端に設けられているピボット軸22周りに回転可能である。メインフレーム3の前側上部には、メインフレーム3の左右から車体の前部へ延びた左側アッパアーム23Lと右側アッパアームとが車幅方向に並び、前方へ向かって設けられている。つまり、左右一対のアッパアームがメインフレーム3から前方へ延びている。左側アッパアーム23Lと右側アッパアームの一端側は、ピボット軸22の上方に設けられたピボット軸24周りに回転可能である。
【0031】
左側ロアアーム21Lの他端側には、左側ナックルアーム25Lが連結されている。左側ナックルアーム25Lは、斜め後方に向かって湾曲して傾斜しており、そのほぼ中央部で左側アッパアーム23Lの他端側と連結されている。左側ナックルアーム25Lの下部には、左側前輪27Lが回転可能に支持されている。側面視において、左側ナックルアーム25Lが左側ロアアーム21Lと左側アッパアーム23Lとそれぞれ結合する各結合部と、ピボット軸22,24の各位置は、ほぼ平行四辺形の各頂点に対応するように配置されている。
【0032】
同様に、右側ロアアームの他端側には、右側ナックルアームが連結されている。右側ナックルアームは、その中央部で右側アッパアームの他端側と連結されている。右側ナックルアームの下部には、右側前輪が回転可能に支持されている。つまり、左右一対のナックルアームは、ロアアーム及びアッパアームを接続されている。
【0033】
左側ロアアーム21L及び左側アッパアーム23Lがそれぞれピボット軸22,24周りに正逆方向に回転することで、左側ナックルアーム25Lは、車体のほぼ上下方向に昇降する。これにより、左側前輪27Lは、車体に対して上下動する。同様に、右側ロアアーム及び右側アッパアームがそれぞれピボット軸周りに正逆方向に回転することで、右側ナックルアームは、車体のほぼ上下方向に昇降する。これにより、右側前輪は、車体に対して上下動する。左側前輪27L及び右側前輪は、車体を挟む位置関係となる。つまり、左右一対の前輪が左右一対のナックルアームにそれぞれ支持されている。
【0034】
2.支持機構〜バランサ機構
左側支持機構と右側支持機構とは同様の構成であるので、左側支持機構について符号付で詳細に説明し、右側支持機構の説明については図示を省略し、適宜符号なしで説明する。
【0035】
左側ロアアーム21Lには、左側ショックアブソーバ31Lの一端側が連動連結されている。左側ショックアブソーバ31Lの他端側は、図示しないバランスビームに連動連結されている。また、同様に、右側ロアアームには、右側ショックアブソーバの一端側が連動連結され、右側ショックアブソーバの他端側は、図示しないバランスビームに連動連結されている。
【0036】
上述したステアリングハンドル11は、下部で操舵リンク機構35に連動連結されている。操舵リンク機構35は、左側ステアリングロッド37L及び右側ステアリングロッドの一端側に連結されている。左側ステアリングロッド37Lは、他端側を左側ナックルアーム25Lの上部に連動連結され、右側ステアリングロッドは、他端側を右側ナックルアームの上部に連動連結されている。ステアリングハンドル11の操作に応じて、左側ナックルアーム25及び右側ナックルアームがそれぞれ縦軸心周りに回転し、左側前輪27L及び右側前輪に舵角を与える。つまり、左右一対のステアリングロッドは、ステアリングハンドル11の操作をそれぞれのナックルアームに伝達する。
【0037】
<後輪に関する構成>
1.支持機構〜左側支持機構
メインフレーム11の後端下部には、車体の後側へ延びた左側リアアーム41Lと右側リアアームとが車幅方向に並んで設けられている。左側リアアーム41L及び右側リアアームとは、それぞれ揺動軸PV周りに回転可能である。左側リアアーム41Lの後端部には、左側後輪43Lが回転可能に支持されている。また、右側リアアームの後端部には、右側後輪が回転可能に支持されている。左側後輪43L及び右側後輪は、車体を挟む位置関係となる。
【0038】
そして、左側後輪43Lが車体に対して上下動すると、左側リアアーム41Lは揺動軸PV周りに正逆方向に回転する。右側後輪と右側リアアームとの関係も同様である。
【0039】
2.支持機構〜バランサ機構
左側リアアーム41L及び右側リアアームの間には、キャリアビーム51が配置され、キャリアビーム51はメインフレーム3に連結されている。キャリアビーム51は、図示しないスタビライザーを回転可能に保持している。キャリアビーム51の先端部には、ショックアブソーバ55の一端側が連動連結されている。ショックアブソーバ55の他端側は、メインフレーム3に連動連結されている。図示しないスタビライザーの両端には、それぞれ左側ロッド57Lと右側ロッドとの一端側が連動連結されている。左側ロッド57Lの他端側は、左側リアアーム41Lに連動連結されている。右側ロッドの他端側は、右側リアアームに連動連結されている。
【0040】
例えば、左側後輪43Lの下降に伴って左側リアアーム41Lが揺動軸PV周りに回転する際、左側リアアーム41Lは左側ロッドを介してスタビライザー(図示省略)の一端側を引き下げる。これにより、スタビライザー(図示省略)は回転し、他端側に連結されている右側ロッドを介して、右側リアアームを引き上げる。これにより、右側後輪は、左側後輪43Lが下降した分だけ上昇する。このように、左側後輪43Lと右側後輪とは、車体のほぼ上下方向で逆向きに昇降する。
【0041】
3.駆動機構
エンジン17の駆動力は、図示しないベベルギヤを介して左側ドライブシャフト61L及び右側ドライブシャフトに出力される。左側ドライブシャフト61Lの中間部には、左側ダブルカルダンジョイント63Lが設けられている。左側ドライブシャフト61Lの後部は、図示しない軸受け部を介して左側リアアーム1Lに回転可能に保持されている。左側ドライブシャフト61Lの後端は、図示しないベベルギヤが設けられており、このベベルギヤに左側後輪43Lが連結されている。右側ドライブシャフトは、左側ドライブシャフト61Lと同様に構成されている。
【0042】
<分割式ナックルアーム>
ここで図2〜図4を参照して、上述した左側ナックルアーム25Lについて詳細に説明する。なお、図2は、実施例1に係るナックルアームであって、第1のトレール量に設定されたナックルアームを示し、(a)は背面図であり、(b)は右側面図である。図3は、第1のトレール量にするための上部ナックアームを示す図であり、(a)は背面図であり、(b)は右側面図である。図4は、下部ナックルアームを示す図であり、(a)は背面図であり、(b)は右側面図である。以下においては、図示の関係上、図1の奥側(右側)からナックルアームを見た図で説明する。
【0043】
なお、トレール量については、詳細を後述するが、後述するアッパアームボールジョイント取付部とロアアームボールジョイント取付部とを結ぶ直線の接地点と、アクスル取付部からの垂線の接地点との距離のことである。まず、第1のトレール量に設定されている左側ナックルアーム25Lについて説明する。
【0044】
左側ナックルアーム25Lは、上部ナックルアーム71と下部ナックルアーム73とから構成されている。上部ナックルアーム71は、アッパアームボールジョイント取付部75と、ステアリングロッドボールジョイント取付部77とを備えている。アッパアームボールジョイント取付部75は、ボールジョイントを介して左側アッパアーム23Lを取り付ける部位であり、ステアリングロッドボールジョイント取付部77は、ボールジョイントを介して左側ステアリングロッド37Lを取り付けるための部位である。下部ナックルアーム73は、ロアアームボールジョイント取付部78と、アクスル取付部79とを備えている。ロアアームボールジョイント取付部78は、ボールジョイントを介して左側ロアアーム21Lを取り付ける部位であり、アクスル取付部79は、左前輪27Lの車軸を回転可能に支持するための部位である。
【0045】
なお、アッパアームボールジョイント取付部75がこの発明における「アッパアーム取付部」に相当する。また、ステアリングロッドボールジョイント取付部77がこの発明における「ステアリングロッド取付部」に相当し、ロアアームボールジョイント取付部78がこの発明における「ロアアーム取付部」に相当する。
【0046】
下部ナックルアーム73は、上部ナックルアーム71との連結部81を上部に備えている。連結部81は、左側面にネジ穴83を形成されている。また、ネジ穴83の間には、位置決め穴85を形成されている。
【0047】
上部ナックルアーム71は、下部ナックルアーム73との連結部87を下部に備えている。連結部87は、下部ナックルアーム73の連結部81を覆うように包み込む凹部89を形成されている。凹部89は、ネジ穴83に対応する位置にネジ止め用の穴91を形成されている。また、下部ナックルアーム73の位置決め穴85に対応する位置には、位置決めピン93を備えている。
【0048】
上部ナックルアーム71と下部ナックルアーム73との連結は、上部ナックルアーム71の内側面89aを、下部ナックルアーム73の外側面81aに対向させることで行う。そして、その状態で、位置決めピン93を位置決め穴85に挿入し、さらに、例えば、4個のネジ95を用いて上部ナックルアーム71を下部ナックルアーム73に対して強固に連結させる(図2)。
【0049】
このような左側ナックルアーム25Lは、トレール量が第1のトレール量TA1に設定されているものとする。なお、トレール量TA1については後述する。
【0050】
次に、図5,6を参照して、第2のトレール量に設定されている左側ナックルアーム25Lについて説明する。なお、図5は、第2のトレール量に設定されたナックルアームを示し、(a)は背面図であり、(b)は右側面図である。図6は、第2のトレール量にするための上部ナックアームを示す図であり、(a)は背面図であり、(b)は右側面図である。
【0051】
この左側ナックルアーム25Lは、上述した第1のトレール量TA1に設定された左側ナックルアーム25Lに対して上部ナックルアーム71aを異なるものにしている。この上部ナックルアーム71aは、上述した上部ナックルアーム71のアッパボールジョイント取付部75の位置を異なるものに設定されている。
【0052】
具体的には、連結部87の左側のネジ穴83からアッパボールジョイント取付部75までの距離d2を、第1のトレール量TA1に設定された上部ナックルアーム71の距離d1よりも長く設定されている(図3及び図6参照)。換言すると、車両の進行方向(図2(b)、図3(b)、図5(b)、図6(b)の左右方向)における前後に、上部ナックルアーム71におけるアッパアームボールジョイント取付部75の位置を変えてある。その他の連結部87等は、上部ナックルアーム71と同様の構成である。なお、この例では、上部ナックルアーム71,17aは、ステアリングロッドボールジョイント取付部77の位置も変えてある。
【0053】
ここで、図7を参照する。なお、図7は、トレール量の変化を説明するための模式図である。
【0054】
図7中に実線で示したのは、上部ナックルアーム71を取り付けた左側ナックルアーム25Lであり、点線で示したのは、上部ナックルアーム71aを取り付けた左側ナックルアーム25Lである。図示の関係上、アッパアームボールジョイント取付部75と、ロアアームボールジョイント取付部78と、アクスル取付部79だけを示す。
【0055】
アッパアームボールジョイント取付部75とロアアームボールジョイント取付部78とを結ぶ直線L1の接地点(地面に接地する点)と、アクスル取付部79からの垂線L2の接地点(地面に接地する点)との距離は、トレール量と呼ばれている。上部ナックルアーム71の場合を実線の直線L1で示し、上部ナックルアーム71aの場合を点線の直線L1で示している。また、上部ナックルアーム71の場合のトレール量を符号TA1で示し、上部ナックルアーム71aの場合のトレール量を符号TA2で示している。
【0056】
図7から明らかなように、上部ナックルアーム71のトレール量TA1は、上部ナックルアーム71aのトレール量TA2よりも短い。このトレール量TA1,2は、長いと車両の直進性が増し、車両の操舵力が大きくなる。一方、トレール量TA1,2は、短いと車両の旋回性が良くなり、車両の操舵力も小さくなるが、安定性が悪くなる。したがって、左側ナックルアーム25Lの上部ナックルアーム71を上部ナックルアーム71aに換装すると、車両の直進性が増し、車両の操舵力が大きくなる。その結果、異なる操縦性の車両にすることができる。なお、左側ナックルアーム25Lと同様に右側ナックルアームも同様の上部ナックルアームに換装することは言うまでもない。
【0057】
上述したように、左側ナックルアーム25Lは、互いに分離可能な、アッパアームボールジョイント取付部75を含む上部ナックルアーム71と、ロアアームボールジョイント取付部78及びアクスル取付部79を含む下部ナックルアーム73とで構成されている。また、上部ナックルアーム71は、アッパアームボールジョイント取付部75を異なる位置に設けた上部ナックルアーム71aと換装することができる。したがって、上部ナックルアーム71を換装するだけで操縦性を変えることができるので、左側ナックルアーム121Lの全体を換装する従来例(図14,15)に比較して低コストにすることができる。
【0058】
また、上述した左側ナックルアーム25Lは、上部ナックルアーム71,71aの位置決めピン93を、下部ナックルアーム73の位置決め穴85に挿入することにより、上部ナックルアーム71,71aと下部ナックルアーム73とを精度良組み立てることができる。したがって、トレール量が設計値から大きくずれることを防止できるので、操縦性を精度良く変えることができる。
【0059】
また、左側ナックルアーム25Lは、下部ナックルアーム73の外側面81aと、上部ナックルアーム71,71aの内側面89aとを対向させた状態で連結される。したがって、下部ナックルアーム73と上部ナックルアーム71,71aとの接触面積を広くすることができる。その結果、左側ナックルアーム25Lを分割式の構成としながらも、その剛性の低下を抑制することができる。
【0060】
さらに、上部ナックルアーム71,71aは、連結部87の凹部89で下部ナックルアーム73の連結部81の外側面を覆うように包み込む。したがって、左側ナックルアーム25Lを分割式にしても、剛性の低下を抑制することができる。
【0061】
なお、上記の説明においては、左側ナックルアーム25Lを例にとって説明したが、右側ナックルアームについても同様であることは言うまでもない。
【0062】
上述した実施例1は、次のように変形実施することができる。
【0063】
(1)上述した実施例1では、上部ナックルアーム71,71aが位置決めピン93を備え、下部ナックルアーム73が位置決め穴85を備えている。しかし、それらが入れ替わった構成としてもよい。また、精度的に問題がない場合には、位置決めピン93及び位置決め穴85を備える必要はない。
【0064】
(2)上述した実施例1では、下部ナックルアーム73の外側面81aと、上部ナックルアーム71,71aの内側面89aとを対向させた状態で連結されるようにした。しかし、下部ナックルアーム73の前面(または背面)と、上部ナックルアーム71,71aの背面(または前面)とを対向させた状態で連結するようにしてもよい。
【0065】
(3)上述した実施例1では、上部ナックルアーム71,71aの連結部87に凹部89を設けている。しかし、凹部89を下部ナックルアーム73の連結部81側に設けるようにしてもよい。また、凹部89を省略した構成としてもよい。
【実施例2】
【0066】
次に、図面を参照してこの発明の実施例2を説明する。
図8は、実施例2に係るナックルアームであって、第1のトレール量に設定されたナックルアームの右側面図である。図9は、上部ナックルアームを示す右側面図であり、図10は、第1のトレール量にするための下部ナックルアームを示す右側面図である。
【0067】
なお、全体構成は、上述した実施例1と同様であるので、全体の詳細な説明については省略し、左側ナックルアーム25Laについてのみ詳細な説明を行う。
【0068】
この実施例2に係る左側ナックルアーム25Laは、互いに分離可能な、アッパアームボールジョイント取付部75及びロアアームボールジョイント取付部78を含む上部ナックルアーム71と、アクスル取付部79を含む下部ナックルアーム73とで構成されている。
【0069】
上部ナックルアーム71は、下部ナックルアーム73との連結部87を下部に備えている。連結部87は、側面にネジ穴83を形成されている。また、ネジ穴83の間には、位置決め穴85を形成されている。
【0070】
下部ナックルアーム73は、上部ナックルアーム71との連結部81を上部に備えている。連結部81は、上部ナックルアーム71の連結部87を覆うように包み込む凹部89を形成されている。凹部89は、ネジ穴83に対応する位置にネジ止め用の穴91が形成されている。また、位置決め穴85に対応する位置に位置決めピン93を備えている。
【0071】
下部ナックルアーム7の凹部89は、その内側面89aを、上部ナックルアーム71の外側面(図示省略)に対向させた状態で、例えば、4個のネジで上部ナックルアーム71と下部ナックルアーム73とを強固に連結する(図示省略)。
【0072】
このような左側ナックルアーム25Laは、トレール量が第1のトレール量TA1に設定されているものとする。なお、トレール量TA1については後述する。
【0073】
次に、図11,12を参照して、第2のトレール量に設定されている左側ナックルアーム25Laについて説明する。なお、図11は、第2のトレール量に設定されたナックルアームの右側面図である。また、図12は、第2のトレール量にするための下部ナックルアームを示す右側面図である。
【0074】
この左側ナックルアーム25Laは、上述した第1のトレール量に設定された左側ナックルアーム25Laに対して下部ナックルアーム73aを異なるものにしてある。この下部ナックルアーム73aは、上述した下部ナックルアーム73のアクスル取付部79の位置を異なるものに設定されている。具体的には、連結部81の右側に形成されているネジ穴91の中心部からアクスル取付部79の中心部までの距離d4を、第1のトレール量に設定された下部ナックルアーム73の距離d3よりも長く設定されている(図10及び図12参照)。換言すると、車両の進行方向(図8、図10、図12の左右方向)における前後に、下部ナックルアーム73,73aにおけるアクスル取付部79の位置を変えてある。その他の連結部81等は、下部ナックルアーム73と同様の構成である。
【0075】
ここで、図13を参照する。なお、図13は、トレール量の変化を説明するための模式図である。
【0076】
図13中に実線で示したのは、下部ナックルアーム73を取り付けた左側ナックルアーム25Laであり、点線で示したのは、下部ナックルアーム73aを取り付けた左側ナックルアーム25Laである。図示の関係上、アッパアームボールジョイント取付部75と、ロアアームボールジョイント取付部78と、アクスル取付部79だけを示す。
【0077】
アッパアームボールジョイント取付部75とロアアームボールジョイント取付部78とを結ぶ直線L1の接地点(地面に接地する点)と、アクスル取付部79からの垂線L2の接地点(地面に接地する点)との距離は、トレール量と呼ばれている。下部ナックルアーム73の垂線L2を一点鎖線で示し、下部ナックルアーム73aの垂線L2を点線で示している。また、下部ナックルアーム73の場合のトレール量を符号TA1で示し、下部ナックルアーム73aの場合のトレール量を符号TA2で示している。
【0078】
図13から明らかなように、下部ナックルアーム73のトレール量TA1は、下部ナックルアーム73aのトレール量TA2よりも短くなっている。このトレール量TA1,2は、長いと車両の直進性が増し、車両の操舵力が大きくなる。一方、トレール量TA1,2は、短いと車両の旋回性が良くなり、車両の操舵力も小さくなるが、安定性が悪くなる。したがって、左側ナックルアーム25Laの下部ナックルアーム73を下部ナックルアーム73aに換装すると、車両の直進性が増し、車両の操舵力が大きくなる。その結果、異なる操縦性の車両にすることができる。なお、左側ナックルアーム25Laと同様に右側ナックルアームも下部ナックルアームを換装することは言うまでもない。
【0079】
また、実施例2は、キャスター角が変わる実施例1とは異なり、キャスター角が不変である。したがって、実施例1に比較して所望の操縦性を得やすくできる。なお、キャスター角とは、アッパアームボールジョイント取付部75とロアアームボールジョイント取付部78とを結ぶ直線と垂線とのなす角度である。このキャスター角は、旋回性に影響する。
【0080】
上述した実施例2は、次のように変形実施することができる。
【0081】
(1)上述した実施例2では、上部ナックルアーム73,73aが位置決めピン93を備え、上部ナックルアーム71が位置決め穴85を備えている。しかし、それらが入れ替わった構成としてもよい。また、精度的に問題がない場合には、位置決めピン93及び位置決め穴85を備える必要はない。
【0082】
(2)上述した実施例2では、下部ナックルアーム73,73aの内側面と、上部ナックルアーム71の外側面とを対向させた状態で連結されるようにした。しかし、下部ナックルアーム73,73aの前面(または背面)と、上部ナックルアーム71の背面(または前面)とを対向させた状態で連結するようにしてもよい。
【0083】
(3)上述した実施例2は、下部ナックルアーム73,73aの連結部81に凹部89を設けている。しかし、凹部89を上部ナックルアーム71の連結部87側に設けるようにしてもよい。また、凹部89を省略した構成としてもよい。
【0084】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0085】
(1)上述した各実施例1,2では、二つの前輪と二つの後輪を備えた自動四輪車両として鞍乗型車両を例にとって説明した。しかし、後輪が一つの自動三輪車両であってもこの発明を適用することができる。
【0086】
(2)上述した各実施例1,2では、左側ナックルアーム25L及び右側ナックルアームは、斜め後方に向かって湾曲して傾斜した形状を例にとって説明した。しかし、この発明は、そのような形状に限定されるものではない。
【0087】
(3)上述した各実施例1,2では、左側ロアアーム21L、左側アッパアーム25L、左側ステアリングロッド37Lを、ロアアームボールジョイント取付部78、アッパアームボールジョイント取付部75、ステアリングロッドボールジョイント取付部77にボールジョイントを介して取り付けるようにした。しかし、この発明はボールジョイントとは異なる継ぎ手を用いた場合であっても適用することができる。
【符号の説明】
【0088】
1 … 鞍乗型車両
3 … メインフレーム
11 … ステアリングハンドル
21L … 左側ロアアーム
23L … 左側アッパアーム
25L … 左側ナックルアーム
27L … 左側前輪
37L … 左側ステアリングロッド
41L … 左側リアアーム
43L … 左側後輪
71,71a … 上部ナックルアーム
73 … 下部ナックルアーム
75 … アッパボールジョイント取付部
77 … ステアリングロッドボールジョイント取付部
79 … アクスル取付部
81,87 … 連結部
81a … 外側面
85 … 位置決め穴
89 … 凹部
89a … 内側面
91 … ネジ止め用の穴
93 … 位置決めピン
TA1,TA2 … トレール量
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体を傾斜させて旋回可能な鞍乗型車両であって、
メインフレームと、
前記メインフレームから前方へ延びた左右一対のロアアームと、
前記メインフレームのうち、前記一対のロアアームより上方から前方へ延びた左右一対のアッパアームと、
前記ロアアームおよび前記アッパアームが接続される左右一対のナックルアームと、
前記メインフレームのうち、前記一対のアッパアームより上方に設けられたステアリングハンドルと、
前記ステアリングハンドルの操作を前記ナックルアームに伝達する左右一対のステアリングロッドと、
前記左右一対のナックルアームにそれぞれ支持された左右一対の前輪と、を備え、
前記ナックルアームは、下部に前記前輪の車軸が取り付けられるアクスル取付部と、前記アクスル取付部の上方に設けられ、前記ロアアームが接続されるロアアーム取付部と、前記ロアアーム取付部の上方に設けられ、前記アッパアームが接続されるアッパアーム取付部と、前記アッパアーム取付部の上方に設けられ、前記ステアリングロッドが接続されるステアリングロッド取付部とを備え、
前記ナックルアームは、互いに分離可能な、前記アッパアーム取付部を含む上部ナックルアームと、前記ロアアーム取付部及び前記アクスル取付部を含む下部ナックルアームとで構成されており、
前記上部ナックルアームは、前記アッパアーム取付部を異なる位置に設けたものと換装可能である鞍乗型車両。
【請求項2】
車体を傾斜させて旋回可能な鞍乗型車両であって、
メインフレームと、
前記メインフレームから前方へ延びた左右一対のロアアームと、
前記メインフレームのうち、前記一対のロアアームより上方から前方へ延びた左右一対のアッパアームと、
前記ロアアームおよび前記アッパアームが接続される左右一対のナックルアームと、
前記メインフレームのうち、前記一対のアッパアームより上方に設けられたステアリングハンドルと、
前記ステアリングハンドルの操作を前記ナックルアームに伝達する左右一対のステアリングロッドと、
前記左右一対のナックルアームにそれぞれ支持された左右一対の前輪と、を備え、
前記ナックルアームは、下部に前記前輪の車軸が取り付けられるアクスル取付部と、前記アクスル取付部の上方に設けられ、前記ロアアームが接続されるロアアーム取付部と、前記ロアアーム取付部の上方に設けられ、前記アッパアームが接続されるアッパアーム取付部と、前記アッパアーム取付部の上方に設けられ、前記ステアリングロッドが接続されるステアリングロッド取付部とを備え、
前記ナックルアームは、互いに分離可能な、前記アッパアーム取付部及び前記ロアアーム取付部を含む上部ナックルアームと、前記アクスル取付部を含む下部ナックルアームとで構成されており、
前記下部ナックルアームは、前記アクスル取付部を異なる位置に設けたものと換装可能である鞍乗型車両。
【請求項3】
請求項1または2に記載の鞍乗型車両において、
前記上部ナックルアームと前記下部ナックルアームの一方は、位置決めピンを備え、
前記上部ナックルアームと前記下部ナックルアームの他方は、前記位置決めピンに対応した位置に形成された位置決め穴を備えている鞍乗型車両。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の鞍乗型車両において、
前記上部ナックルアームと前記下部ナックルアームは、一方の外側面と他方の内側面とを対向させた状態で連結される鞍乗型車両。
【請求項5】
請求項1に記載の鞍乗型車両において、
前記上部ナックルアームは、前記下部ナックルアームの上部外側面を覆うように包み込む凹部を備えている鞍乗型車両。
【請求項6】
請求項2に記載の鞍乗型車両において、
前記下部ナックルアームは、前記上部ナックルアームの下部外側面を覆うように包み込む凹部を備えている鞍乗型車両。
【請求項1】
車体を傾斜させて旋回可能な鞍乗型車両であって、
メインフレームと、
前記メインフレームから前方へ延びた左右一対のロアアームと、
前記メインフレームのうち、前記一対のロアアームより上方から前方へ延びた左右一対のアッパアームと、
前記ロアアームおよび前記アッパアームが接続される左右一対のナックルアームと、
前記メインフレームのうち、前記一対のアッパアームより上方に設けられたステアリングハンドルと、
前記ステアリングハンドルの操作を前記ナックルアームに伝達する左右一対のステアリングロッドと、
前記左右一対のナックルアームにそれぞれ支持された左右一対の前輪と、を備え、
前記ナックルアームは、下部に前記前輪の車軸が取り付けられるアクスル取付部と、前記アクスル取付部の上方に設けられ、前記ロアアームが接続されるロアアーム取付部と、前記ロアアーム取付部の上方に設けられ、前記アッパアームが接続されるアッパアーム取付部と、前記アッパアーム取付部の上方に設けられ、前記ステアリングロッドが接続されるステアリングロッド取付部とを備え、
前記ナックルアームは、互いに分離可能な、前記アッパアーム取付部を含む上部ナックルアームと、前記ロアアーム取付部及び前記アクスル取付部を含む下部ナックルアームとで構成されており、
前記上部ナックルアームは、前記アッパアーム取付部を異なる位置に設けたものと換装可能である鞍乗型車両。
【請求項2】
車体を傾斜させて旋回可能な鞍乗型車両であって、
メインフレームと、
前記メインフレームから前方へ延びた左右一対のロアアームと、
前記メインフレームのうち、前記一対のロアアームより上方から前方へ延びた左右一対のアッパアームと、
前記ロアアームおよび前記アッパアームが接続される左右一対のナックルアームと、
前記メインフレームのうち、前記一対のアッパアームより上方に設けられたステアリングハンドルと、
前記ステアリングハンドルの操作を前記ナックルアームに伝達する左右一対のステアリングロッドと、
前記左右一対のナックルアームにそれぞれ支持された左右一対の前輪と、を備え、
前記ナックルアームは、下部に前記前輪の車軸が取り付けられるアクスル取付部と、前記アクスル取付部の上方に設けられ、前記ロアアームが接続されるロアアーム取付部と、前記ロアアーム取付部の上方に設けられ、前記アッパアームが接続されるアッパアーム取付部と、前記アッパアーム取付部の上方に設けられ、前記ステアリングロッドが接続されるステアリングロッド取付部とを備え、
前記ナックルアームは、互いに分離可能な、前記アッパアーム取付部及び前記ロアアーム取付部を含む上部ナックルアームと、前記アクスル取付部を含む下部ナックルアームとで構成されており、
前記下部ナックルアームは、前記アクスル取付部を異なる位置に設けたものと換装可能である鞍乗型車両。
【請求項3】
請求項1または2に記載の鞍乗型車両において、
前記上部ナックルアームと前記下部ナックルアームの一方は、位置決めピンを備え、
前記上部ナックルアームと前記下部ナックルアームの他方は、前記位置決めピンに対応した位置に形成された位置決め穴を備えている鞍乗型車両。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の鞍乗型車両において、
前記上部ナックルアームと前記下部ナックルアームは、一方の外側面と他方の内側面とを対向させた状態で連結される鞍乗型車両。
【請求項5】
請求項1に記載の鞍乗型車両において、
前記上部ナックルアームは、前記下部ナックルアームの上部外側面を覆うように包み込む凹部を備えている鞍乗型車両。
【請求項6】
請求項2に記載の鞍乗型車両において、
前記下部ナックルアームは、前記上部ナックルアームの下部外側面を覆うように包み込む凹部を備えている鞍乗型車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−183882(P2012−183882A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47438(P2011−47438)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】
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