説明

音声出力装置、映像音声再生装置及び音声出力方法

【課題】画面の薄型化を図ることができ、音質を劣化させずに音像の定位を画面の高さ方向に移動することが可能な音声出力装置、映像音声再生装置及び音声出力方法を提供すること。
【解決手段】入力された入力音声信号を第1の音声信号と第2の音声信号に分割する分割部121と、第1の音声信号を第2の音声信号より所定量だけ遅延させて出力する遅延処理部122と、第1の音声信号のうち高域側の周波数帯域又は第1の音声信号より高域である周波数帯域からなるように第2の音声信号の周波数帯域を調整する周波数調整部125と、映像を表示する表示部の画面より上方又は下方に設けられ、遅延処理部から入力された第1の音声信号を出力する第1の出力部151、152と、表示部の画面高さ中央以上に設けられ、周波数調整部で調整された第2の音声信号を出力する第2の出力部153、154とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声出力装置、映像音声再生装置及び音声出力方法に関する。
【背景技術】
【0002】
音声を出力し映像を表示するテレビ受像機等の映像音声再生装置は、画面に対して上又は下にスピーカーを配置したり、画面に対して右及び左にスピーカーを配置したりして、画面とスピーカーが一体的に又は別体で構成される。従来、テレビ受像機から出力される音声によって形成される音場の定位を調整することによって、映像と音声を一致させる技術がある。
【0003】
例えば、特許文献1では、映像再生装置の上又は下側に位置するスピーカーが4kHz以上の周波数帯域のうちの特定帯域のレベルを抑制したセンターチャンネル信号を再生する。また、映像再生装置の左右に位置するスピーカーがこの特定帯域のセンターチャンネル信号を再生する。また、特許文献2では、オーディオ信号を聴覚上の方向知覚が得られる周波数帯域とそれ以外の周波数帯域に分割する。そして、方向知覚が得られる帯域のオーディオ信号に対して位相と音圧レベルを調整して複数スピーカーを用いて音像定位を制御し、それ以外の帯域のオーディオ信号に対して音像定位を行わず単一のスピーカーを用いて再生する。
【0004】
【特許文献1】特開平9−37384号公報
【特許文献2】特開平2−59000号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、テレビ受像機の薄型化の影響によって、テレビ受像機に画面と一体的に設けられるスピーカーは、配置位置が限定されている。テレビ受像機の大部分を占める画面部分の厚さを例えば10数mm〜数mmオーダーに低減するため、スピーカーは画面の下方に設けられる傾向がある。特に、例えば20Hz〜20kHzの音声出力が可能なスピーカーは、音の品質を確保するため一定の体積が必要であり、薄型化が図られた画面部分近傍に設けられず、画面の下方に設けられる。薄型化が図られた画面部分近傍にフルレンジスピーカーが設けられたとしても、スピーカーの体積を確保することができないため、例えば100Hz以下の低域の音声が劣化しやすいという問題があった。
【0006】
テレビ受像機の画面の下方にのみスピーカーが配置される場合、左右にスピーカーが配置されてステレオ出力が可能であれば、左右スピーカーの音量調整によって、左右方向に音像の定位を移動することができる。しかし、テレビ受像機の薄型化による制約によって、画面の下方にのみスピーカーが配置される場合、音像の定位が画面下方に偏ったまま、画面高さ中央に音像の定位を移動することができないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、画面の薄型化を図ることができ、音質を劣化させずに音像の定位を画面の高さ方向に移動することが可能な、新規かつ改良された音声出力装置、映像音声再生装置及び音声出力方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、入力された入力音声信号を第1の音声信号と第2の音声信号に分割する分割部と、第1の音声信号を第2の音声信号より所定量だけ遅延させて出力する遅延処理部と、第1の音声信号のうち高域側の周波数帯域又は第1の音声信号より高域である周波数帯域からなるように第2の音声信号の周波数帯域を調整する周波数調整部と、映像を表示する表示部の画面より上方又は下方に設けられ、遅延処理部から入力された第1の音声信号を出力する第1の出力部と、表示部の画面高さ中央以上に設けられ、周波数調整部で調整された第2の音声信号を出力する第2の出力部とを有する音声出力装置が提供される。
【0009】
上記周波数調整部が、第1の音声信号の周波数帯域及び第2の音声信号の周波数帯域を調整してもよく、第1の音声信号及び第2の音声信号によって形成される音像の定位の高さ方向の位置が、表示部の画面上で移動される。
【0010】
上記第2の出力部は、表示部の左側及び右側にそれぞれ少なくとも1つずつ設けられてもよい。
【0011】
上記周波数調整部は、第1の音声信号が第2の音声信号の周波数帯域を含まないように第1の音声信号の周波数帯域を調整してもよい。また、周波数調整部は、第2の音声信号の高域側の周波数帯域を調整できてもよい。更に、周波数調整部は、第2の音声信号の周波数帯域が2〜4kHzの周波数を含むように調整してもよい。
【0012】
上記第2の音声信号の音声の音圧レベルを調整する音圧調整部と、ユーザーによる操作を受け付け、第2の音声信号の音圧レベルを操作する操作信号を音圧調整部に出力する操作部とを更に備え、第2の音声信号の音圧レベルが大きく調整されたとき、周波数調整部が、第1の音声信号の高域側の周波数帯域を減少させ、第2の音声信号の高域側の周波数帯域を増加させてもよい。
【0013】
上記第2の音声信号の音圧レベルが小さく調整されたとき、周波数調整部が、第1の音声信号の高域側の周波数帯域を増加させ、第2の音声信号の高域側の周波数帯域を減少させてもよい。
【0014】
上記音圧調整部が、第1の音声信号による音声の音圧レベル及び第2の音声信号による音声の音圧レベルを調整してもよく、第1の音声信号及び第2の音声信号によって形成される音像の定位の高さ方向の位置が、表示部の画面上で移動される。
【0015】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、入力された入力音声信号を第1の音声信号と第2の音声信号に分割する分割部と、第1の音声信号を第2の音声信号より所定量だけ遅延させて出力する遅延処理部と、第1の音声信号のうち高域側の周波数帯域又は第1の音声信号より高域である周波数帯域からなるように第2の音声信号の周波数帯域を調整する周波数調整部と、映像を表示する表示部の画面より上方又は下方に設けられ、遅延処理部から入力された第1の音声信号を出力する第1の出力部と、表示部の画面高さ中央以上に設けられ、周波数調整部で調整された第2の音声信号を出力する第2の出力部とを有する映像音声再生装置が提供される。
【0016】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、入力された入力音声信号を第1の音声信号と第2の音声信号に分割するステップと、第1の音声信号を第2の音声信号より所定量だけ遅延させて出力するステップと、第1の音声信号のうち高域側の周波数帯域又は第1の音声信号より高域である周波数帯域からなるように第2の音声信号の周波数帯域を調整するステップと、映像を表示する表示部の画面より上方又は下方に設けられた第1の出力部が、遅延処理部から入力された第1の音声信号を出力するステップと、表示部の画面高さ中央以上に設けられた第2の出力部が、周波数調整部で調整された第2の音声信号を出力するステップとを有する音声出力方法が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、画面の薄型化を図ることができ、音質を劣化させずに音像の定位を画面の高さ方向に移動することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。なお、説明は、以下の順序で行う。
1.一実施形態の構成
2.一実施形態の動作
【0019】
<1.一実施形態の構成>
[外観による全体構成]
まず、図1〜図3を参照して、本発明の一実施形態に係るテレビ受像機100の構成について説明する。図1は、本実施形態に係るテレビ受像機100を示す正面図である。図2は、本実施形態に係るテレビ受像機100を示す側面図である。図2は、図1に示したテレビ受像機100を側面側から見た図である。図3は、本実施形態に係るテレビ受像機100の本体部174内部に収容されたフルレンジスピーカー156を示す拡大断面図である。図3は、本実施形態のテレビ受像機100の本体部174を正面から背面方向に伸びる切断線で切断して、側面側から見た断面図である。
【0020】
テレビ受像機100は、映像音声再生装置の一例であり、テレビ放送信号や外部装置から入力された映像音声信号に基づく映像を表示部170に表示し、音声をフルレンジスピーカー155、156、ツイーター157、158から出力できる。なお、本実施形態では、テレビ受像機100について説明するが、本発明を適用できる映像音声再生装置は、テレビ受像機100に限定されない。映像音声再生装置は、例えば、テレビ放送信号を受信する機能を有さないが、記録メディアに記録されたコンテンツやストリーミング配信されたコンテンツ等の映像や音声を再生できるディスプレイ装置や、パーソナルコンピュータ、PDA等の携帯機器でもよい。
【0021】
テレビ受像機100は、例えば、図1及び図2に示すように、表示パネル172と本体部174に分けることができる。表示パネル172は、画面を有する表示部170やツイーター157、158を備え、本体部174は、後述する音声出力部102、チューナー160やフルレンジスピーカー155、156等を備える。また、テレビ受像機100は、本体部174から斜め前方に立設された支持部176と、支持部176の上端に設けられ表示パネル172を背面側から支持する支持パネル178を更に備える。
【0022】
表示パネル172は、例えば平板形状であり、中央に表示部170の画面が設けられ、表示部170の画面の左右にツイーター157、158が設けられる。ツイーター157、158は、画面高さ中央以上に設けられる。ツイーター157、158は、例えばステレオ出力やモノラル出力ができ、ステレオ出力時はツイーター157が左用音声を出力し、ツイーター158が右用音声を出力する。ツイーター157、158は、例えばフラットパネルスピーカーであり、ツイーター157、158の音声出力の軸方向は、表示部170の画面表示の軸方向と同一である。
【0023】
本体部174は、例えば、設置面に広い面積を有する直方体形状である。本体部174は、図示しない回路等が収容され、左右にフルレンジスピーカー155、156が設けられる。フルレンジスピーカー155、156は、例えばステレオ出力やモノラル出力ができ、ステレオ出力時はフルレンジスピーカー155が左用音声を出力し、フルレンジスピーカー156が右用音声を出力する。
【0024】
フルレンジスピーカー155、156の音声出力の軸方向は、図2及び図3に示すように設置面に対して所定角度Aに傾けるとよい。所定角度Aは、例えば、視聴者が位置する方向や距離及びフルレンジスピーカー155、156、ツイーター157、158の位置等を考慮して設けられる。例えば、テレビ受像機100の高さが約250mmであり、フルレンジスピーカー155(156)とツイーター157(158)の間隔が、約200mmであるとき、フルレンジスピーカー155、156の音声出力の軸方向は、設置面に対して66°がよい。
【0025】
上述した通り、本実施形態のテレビ受像機100は、画面下方に設けられたフルレンジスピーカー155、156の音声出力の軸方向が斜め前方に傾斜し、ツイーター157、158が画面高さ中央以上に設けられる。そして、後述する通り、フルレンジスピーカー155、156とツイーター157、158の出音時間や周波数特性を更に調整することで、テレビ受像機100の音像の定位が画面付近となる。ツイーター157、158から音声が出力されない場合は、音像の定位は画面下方となるが、本実施形態によれば、音像の定位をテレビ受像機100の上部方向に持ち上げることができる。その結果、視聴者は、音声が画面付近から聴こえてくるような感覚を持つことができる。
【0026】
[機能ブロックによる全体構成]
次に、図4を参照して、本実施形態に係るテレビ受像機100の構成について説明する。図4は、本実施形態に係るテレビ受像機100を示すブロック図である。
【0027】
テレビ受像機100は、例えば、チューナー160と、復調部164と、音声出力部102と、フルレンジスピーカー155、156と、ツイーター157、158と、映像信号処理部166と、表示制御部168と、表示部170と、制御部110と、操作部112等からなる。
【0028】
テレビ受像機100は、アンテナ10と接続されて、テレビ放送信号を受信する。また、テレビ受像機100は、記録メディア再生装置20と接続されて、記録メディアに記録されたコンテンツの映像音声再生信号を受信する。記録メディア再生装置20は、例えば、DVDやブルーレイディスク等の光ディスク再生装置やハードディスク再生装置などである。また、図示しないが、テレビ受像機100は、インターネット等のネットワークと接続されて、ストリーミング配信されたコンテンツやダウンロード可能なコンテンツの映像信号を受信してもよい。
【0029】
チューナー160は、アンテナ10を介してテレビ放送信号を受信する。チューナー160は、所定の周波数の放送信号を抽出、増幅する。チューナー160は、生成した信号を復調部164に送る。
【0030】
復調部164は、チューナー160から放送信号を受けたり、又は記録メディア再生装置20から映像再生信号を受けたりする。そして、復調部164は、放送信号又は映像音声信号を復調処理する。また、復調部164は、デマルチプレクス処理をして、マルチプレクス処理されている信号を映像信号と音声信号に分離する。更に、復調部164は、MPEG規格などによって符号化処理されている信号を復号化処理する。復調部164は、処理後の信号を音声出力部102と映像信号処理部166に送る。
【0031】
音声出力部102は、復調処理された音声信号に対して所定の信号処理をして、フルレンジスピーカー155、156とツイーター157、158に処理された音声信号を出力する。音声出力部102の詳細な説明は後述する。
【0032】
フルレンジスピーカー155、156は、例えば約10Hz〜20kHzの周波数帯域の音声を出力する。なお、フルレンジスピーカー155、156が出力できる周波数帯域は、この例に限定されず、他の範囲であってもよい。フルレンジスピーカー155、156は、音声出力部102から受けた音声信号に基づいて、テレビ放送による番組や、記録メディアに記録されたコンテンツなどの音声を出力する。
【0033】
ツイーター157、158は、例えば2kHz以上の周波数帯域の音声を出力する。ツイーター157、158は、高い周波数帯域の音声を出力するため、指向性があり、視聴者に対して音声の出力源をツイーター157、158の設置場所の中間付近に認識させることができる。また、ツイーター157、158は、2kHz〜4kHzの音声を出力することによって、人間にとって聞き取りやすい音を提供する。更に、ツイーター157、158の周波数帯域を2kHz以上とすることによって、約150Hzの低い人の声の倍音をツイーター157、158から出力することができる。
【0034】
ツイーター157、158は、例えばフラットパネルスピーカーであり、圧電素子(ピエゾ素子)を用いた方式によるスピーカーを用いることができる。なお、ツイーター157、158は、これに限定されず、他の方式によるスピーカーでもよい。ツイーター157、158は、音声出力部102から受けた音声信号に基づいて、テレビ放送による番組や、記録メディアに記録されたコンテンツなどの音声を出力する。
【0035】
映像信号処理部166は、復調部164から受けた映像信号に対して、表示部170の画素数に応じたスケーリング処理、色補正処理、エッジ強調処理などを施す。映像信号処理部166は、処理後の映像信号を表示制御部168に送る。
【0036】
表示制御部168は、映像信号処理部166から受けた映像信号に基づいて、表示部170を駆動して表示部170に映像を表示させる。表示部170は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイなどである。表示部170には、テレビ放送による番組や、記録メディアに記録されたコンテンツなどの映像が表示される。また、表示部170は、テレビ受像機100やテレビ受像機100に接続された記録メディア再生装置20等の設定メニュー画面を表示する。
【0037】
制御部110は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などが組み合わされて構成されるマイクロコンピュータなどを有する。制御部110は、プログラムによって演算処理装置及び制御装置として機能し、テレビ受像機100における上記各構成要素などを制御する。また、制御部110は、操作部112からの信号に基づいてテレビ受像機100の各構成要素を制御する。
【0038】
操作部112は、ユーザーによる操作を受け付け、その操作に基づいた操作信号を制御部110に送る。操作部112は、例えばテレビ受像機100の本体に設けられたボタンやスイッチ、制御部110と無線通信可能なリモートコントローラである。
【0039】
[音声出力部102の構成]
次に、図5を参照して、本実施形態に係る音声出力部102について詳しく説明する。図5は、本実施形態に係るテレビ受像機100の音声出力部102を詳細に示すブロック図である。
【0040】
音声出力部102は、例えば、入力部104、デジタル信号処理部(DSP)120と、D/A変換部131、132、133、134と、出力部151、152、153、154などからなる。
【0041】
入力部104は、復調部164から音声信号を受けて、デジタル信号処理部120に音声信号を送る。
【0042】
デジタル信号処理部120は、復調部164から受けた音声信号に対して、各種信号処理を施す。デジタル信号処理部120は、処理後の音声信号をD/A変換部131、132、133、134に送る。デジタル信号処理部120は、例えば分割部121と、遅延処理部122、123と、周波数調整部124、125と、音圧調整部126、127などからなる。
【0043】
分割部121は、入力された音声信号を第1の音声信号と第2の音声信号に分割する。ここで、第1の音声信号は、最終的にフルレンジスピーカー155、156に出力される音声信号であり、第2の音声信号は、ツイーター157、158に出力される音声信号である。分割部121は、第1の音声信号を遅延処理部122に送り、第2の音声信号を遅延処理部123に送る。
【0044】
遅延処理部122は、分割部121から第1の音声信号を受ける。遅延処理部123は、分割部121から第2の音声信号を受ける。そして、遅延処理部122は、第1の音声信号を第2の音声信号より所定量だけ遅延させて、周波数調整部124に遅延処理された第1の音声信号を出力する。遅延処理部123は、周波数調整部125に第2の音声信号を出力する。なお、遅延処理部122と遅延処理部123は、互いに同期している。また、遅延処理部123は、第2の音声信号に対して遅延処理を施してもよいし、施さなくてもよい。即ち、遅延処理部122、123によって、第2の音声信号が第1の音声信号より上記所定量だけ早く出力されるように処理されればよい。
【0045】
ここで、所定量とは、第2の音声信号によるツイーター157、158からの音声が出力されてから、第1の音声信号によるフルレンジスピーカー155、156からの音声が出力されるまでの所定時間に対応する量である。所定時間とは、例えば、60μsecである。これにより、高域の周波数の音声が先に出力されるため、視聴者にとって、テレビ受像機100の音像の定位がツイーター157、158の中間付近、例えば表示部170の画面付近であると認識されるようになる。
【0046】
遅延処理が施されていない通常のスピーカーシステムの場合、視聴者は、フルレンジスピーカー155、156が設置されたテレビ受像機100の下部から音声が聞こえてくるように感じる。一方、本実施形態のように遅延処理を施すことによって、視聴者は、フルレンジスピーカー155、156が設置されたテレビ受像機100の下部から音声が聞こえてくるのではなく、画面から音声が聞こえてくるように感じることができる。また、遅延処理が施されることによって、遅延処理が施されていない場合に比べて、音声が粒立ち、よりクリアに(はっきりと)聞こえてくる。
【0047】
なお、音声が出力される時間差である所定時間は、60μsec〜120μsecの範囲のいずれかの値で設定されるとよい。但し、100μsec以上の時間差があると、100μsec未満の場合に比べて音声のクリアさは僅かに低減し、音声がよりかたまりのようになって出力されているように感じる。しかし、より視聴者側に近づいて音声が出力されているように感じることができる。そのため、表示部170の画面で表示されるコンテンツが3D画像(ステレオ画像)の場合に、視聴者に対してより効果的にコンテンツを提供することができる。また、180μsec以上の時間差があると、上側と下側から別々に音声が出力されるように聞こえ、音がずれて聞こえてしまうため、本実施形態の作用を得るためには好ましくない。
【0048】
なお、遅延処理部122、123は、2つの機能ブロックで構成される例を説明したが、遅延処理部122、123は、1つの機能ブロックで上記遅延処理が実現されるようにしてもよい。
【0049】
周波数調整部124、125は、操作部112におけるユーザーの操作によって生じた操作信号を制御部110から受けて周波数帯域の調整をする。周波数調整部124は、遅延処理部122から第1の音声信号を受けて、第1の音声信号に対して周波数帯域の調整をする。周波数調整部124は、調整後の第1の音声信号を音圧調整部126に送る。周波数調整部125は、遅延処理部123から第2の音声信号を受けて、第2の音声信号に対して周波数帯域の調整をする。周波数調整部125は、調整後の第2の音声信号を音圧調整部127に送る。
【0050】
周波数調整部125は、出力される第2の音声信号が、第1の音声信号のうち高域側の周波数帯域又は第1の音声信号より高域である周波数帯域からなるように第2の音声信号の周波数帯域を調整する。例えば、周波数調整部124は、フルレンジスピーカー155、156から約10Hz〜20kHzの周波数帯域の音声が出力されるように、第1の音声信号の周波数帯域を調整する。また、周波数調整部125は、ツイーター157、158から例えば2kHz以上の周波数帯域の音声が出力されるように、第2の音声信号の周波数帯域を調整する。これにより、視聴者は、テレビ受像機100から出力される音声が立体的に聞こえくるように感じることができる。
【0051】
また、周波数調整部124は、第1の音声信号が第2の音声信号の周波数帯域を含まないように第1の音声信号の周波数帯域を調整してもよい。例えば、上記の例では、周波数調整部124は、第1の音声信号が例えば2kHz以上の周波数帯域を含まないように第1の音声信号の周波数帯域を調整してもよい。これにより、視聴者は、テレビ受像機100から出力される音声が、テレビ受像機100の下方から聞こえてくる音声が減少し、より上方、例えば画面付近から音声が聞こえてくるように感じることができる。
【0052】
周波数調整部125は、出力される第2の音声信号の高域側の周波数帯域を調整できてもよい。即ち、周波数調整部125は、第2の音声信号の周波数帯域が、2kHz〜10kHzの範囲で出力する場合、更に10kHz又は20kHz以上の周波数帯域も出力する場合というように、高域側の周波数帯域の範囲をより広げられるようにしてもよい。高域側の音声がより広い範囲で出力されることで、視聴者は、画面内から音声が聞こえてくるだけでなく、画面外からも音声が聞こえてくるように感じることができ、更に音声を立体的かつ広がりをもって感じることができる。
【0053】
上記説明では、周波数調整部124、125は、遅延処理後の第1の音声信号及び第2の音声信号に対して周波数帯域を調整するとしたが、この例に限定されない。例えば、分割部121が、音声信号を第1の音声信号及び第2の音声信号に音声信号を分割した後に、周波数調整部が第1の音声信号及び第2の音声信号に対して周波数の帯域を調整してもよい。この場合、周波数調整された第1の音声信号及び第2の音声信号に遅延処理が施される。
【0054】
音圧調整部126、127(ボリュームコントロール)は、操作部112におけるユーザーの操作によって生じた操作信号を制御部110から受けて、音声信号の音圧を調整する。周波数調整部124、125と音圧調整部126、127が同時に制御されることで、第1の音声信号及び第2の音声信号によって形成される音像の定位が高さ方向で変化する。音圧調整部126、127は、それぞれ周波数調整部124、125から受けた音声信号に対して音圧を調整する。音圧調整部126は、音圧が調整された第1の音声信号をD/A変換部131、132に出力する。音圧調整部127は、音圧が調整された第2の音声信号をD/A変換部133、134に出力する。
【0055】
D/A変換部131、132、133、134は、デジタル音声信号をデジタルアナログ変換してアナログ音声信号に変換する。D/A変換部131は、左スピーカー出力用の第1の音声信号を受けて、変換後の第1の音声信号を出力部151に送る。D/A変換部132は、右スピーカー出力用の第1の音声信号を受けて、変換後の第1の音声信号を出力部152に送る。D/A変換部133は、左スピーカー出力用の第2の音声信号を受けて、変換後の第2の音声信号を出力部153に送る。D/A変換部134は、右スピーカー出力用の第2の音声信号を受けて、変換後の第2の音声信号を出力部154に送る。第1の音声信号は、出力部151、152を介して、フルレンジスピーカー155、156に出力される。第2の音声信号は、出力部153、154を介して、ツイーター157、158に出力される。なお、出力部151、152は、第1の出力部の一例であり、出力部153、154は、第2の出力部の一例である。
【0056】
<2.一実施形態の動作>
[音声出力の動作]
次に、図6を参照して、本発明の一実施形態に係るテレビ受像機100の音声出力の動作について説明する。図6は、本実施形態に係るテレビ受像機100の音声出力の動作を示すフローチャートである。
【0057】
まず、テレビ放送信号や記録メディアに記録されたコンテンツの映像音声信号が入力され、チューナー160や復調部164を介して音声信号が音声出力部102に入力される(ステップS101)。
【0058】
そして、音声出力部102の分割部121において、音声信号が第1の音声信号と第2の音声信号に分割される(ステップS102)。分割された第1の音声信号及び第2の音声信号は、それぞれ遅延処理部122、123に出力される。次に、遅延処理部122、123において、第1の音声信号が第2の音声信号より所定量だけ遅延して出力されるように遅延処理される(ステップS103)。その結果、第2の音声信号は第1の音声信号より所定量だけ早く出力される。
【0059】
また、ユーザーによって音像定位が後述する方法で調整されているか否かを判断する(ステップS104)。音像定位が調整されている場合、調整後の周波数帯域及び音圧に周波数調整部124、125、音圧調整部126、127を設定する(ステップS105)。音像定位が調整されていない場合は、あらかじめ設定された周波数帯域及び音圧、又は前回設定された周波数帯域及び音圧が用いられる。
【0060】
そして、設定されている周波数及び音圧で、音声信号が音声出力部102から出力される(ステップS106)。その結果、遅延処理、周波数調整、音圧(音量)調整がされた音声がフルレンジスピーカー155、156及びツイーター157、158から出力される。なお、出力される音声によって形成される音像の定位は、以下のようになる。
【0061】
[音像定位の調整動作]
次に、図7〜図9を参照して、本発明の一実施形態に係るテレビ受像機100における音像定位の調整動作について説明する。図7は、本実施形態に係る表示部170の画面に表示されたユーザーインターフェースを示す説明図である。図8は、本実施形態に係るフルレンジスピーカー155、156、ツイーター157、158から出力される音声の周波数特性を示すグラフである。図8の上のグラフがツイーター157、158の周波数特性を示し、図8の下のグラフがフルレンジスピーカー155、156の周波数特性を示す。図9は、本実施形態に係るテレビ受像機100を示す正面図であり、音像定位の移動を示す説明図である。
【0062】
本実施形態では、音像定位がテレビ受像機100の高さ方向上下に移動できるとする。音像定位の調整は、例えば、画面に表示された図7に示すようなユーザーインターフェース(UI)を介して視聴者が調整できるとしてもよい。なお、ユーザーインターフェースは、画面表示される場合に限定されず、例えばテレビ受像機100やリモートコントローラに設けられた実体的なスライダー及びつまみなどの操作部材であってもよい。
【0063】
音像定位調整の設定画面として、例えば、表示部170の画面にスライダー190と、スライダー190上を移動するつまみ192が表示される。そして、つまみ192がスライダー190の最も左に位置するとき、音像定位調整は「MIN」に設定され、つまみ192がスライダー190の最も右に位置するとき、音像定位調整は「MAX」に設定される。
【0064】
ここでは、音像定位調整がMINに設定されるとき、音像定位がテレビ受像機100の下部に位置し、音像定位がMAXに設定されるとき、音像定位がテレビ受像機100の表示部170の画面付近に位置するように設定されている場合について説明する。なお、ここでは、ツイーター157、158から出力される音声は、フルレンジスピーカー155、156から出力される音声より常に所定時間(例えば60μsec)だけ早く出力される。
【0065】
音像定位調整がMINに設定されると、ツイーター157、158は音圧レベルがOFFにされ、フルレンジスピーカー155、156は音圧レベルが最大となる。そして、フルレンジスピーカー155、156の周波数帯域は、例えば図8に示すように、150Hz〜15kHzの範囲に設定される。この結果、ツイーター157、158からは全く音声が出力されず、フルレンジスピーカー155、156のみから音声が出力されるため、音像の定位は図9のVMINに示すように、テレビ受像機100の下部になる。このとき、視聴者は、フルレンジスピーカー155、156が設けられたテレビ受像機100の下部側から音声が聞こえてくることになる。そのため、音声の出力源と画像の表示方向が一致しないため、視聴者は違和感を覚えながら、放送番組や各種コンテンツを視聴することになる。特に、人物が話しているシーン等で顕著にずれを感じやすい。
【0066】
なお、図8では、音像定位が調整されたときの周波数特性の変化を示した。但し、音像定位調整は、音圧レベルも同時に変化させるが、説明の都合上、図8は、音圧レベルが一定である場合について示している。即ち、音像定位調整がMINに設定されるとき、ツイーター157、158の音圧レベルはOFFであるから、実際は音圧レベルが0でフラットなグラフとなる。
【0067】
音像定位調整がMINから徐々にMAXの方向へ設定されると、ツイーター157、158の音圧レベルは徐々に増加し、図8に示すように周波数帯域もMIN近傍時の2kHz〜10kHzの範囲から、次第に高域側の範囲が広くなる。図8に示すツイーター157、158の周波数特性のグラフは、設定がMAXの方向へ移動するにつれて、実際は音圧が0レベルから音圧が最大値の方向へ次第に増加する。
【0068】
また、音像定位調整がMINから徐々にMAXの方向へ設定されると、フルレンジスピーカー155、156の音圧レベルは徐々に減少し、図8に示すように周波数帯域もMIN時の150Hz〜15kHzの範囲から、次第に高域側の範囲が狭くなる。図8に示すフルレンジスピーカー155、156の周波数特性のグラフは、設定がMAXの方向へ移動するにつれて、実際は音圧レベルが最大値から音圧が最大値より低いレベルの方向へ次第に減少する。
【0069】
この結果、ツイーター157、158からは出力される音声の音圧レベルが増加しつつ、音声の周波数帯域の高域側の範囲が広がっていく。そして、フルレンジスピーカー155、156からの音声の周波数帯域の高域側の範囲が狭まっていく。従って、音像の定位は図9のVMINから次第に、テレビ受像機100の上方向に移動する。即ち、高域の周波数帯域の音声がツイーター157、158から出力されることで、音声の指向性の特性により、音声の出力源は、ツイーター157、158が設置されている画面方向に移動していくように感じる。音圧レベルが変化することで音像の定位の上昇感がより明確になる。
【0070】
音像定位調整がMAXに設定されると、ツイーター157、158の音圧レベルは最大にされ、フルレンジスピーカー155、156の音圧レベルは、最大に比べて低減される。そして、フルレンジスピーカー155、156の周波数帯域は、例えば図8に示すように、150Hz〜2kHzの範囲に設定される。また、ツイーター157、158の周波数帯域は、下限が2kHzであり、上限が例えば20kHz以上設定される。
【0071】
これにより、ツイーター157、158からは出力される音声の周波数帯域は、フルレンジスピーカー155、156から出力される音声の周波数帯域と重複しないようになる。その結果、テレビ受像機100の下部から出力されるように感じていた音声が聞こえなくなり、音声はテレビ受像機100の画面付近を中心に出力されているように聞こえる。また、音声が設置面より上部から聞こえてくるように感じ、音声が設置面から浮いて出力されているようにも感じる。
【0072】
また、ツイーター157、158から出力される音声の周波数帯域の高域側の範囲が広がると、画面内から音声が出力されるだけでなく、画面の外側からも音声が出力されているように感じる。その結果、視聴者はより立体的に音声を聞くことができる。
【0073】
音像の定位は図9のVMAXに示すように、テレビ受像機100の画面の中央付近になる。このとき、視聴者は、フルレンジスピーカー155、156が設けられたテレビ受像機100の画面付近から音声が聞こえてくることになる。そのため、音声の出力源と画像の表示方向が一致するため、視聴者は違和感を覚えることなく、放送番組や各種コンテンツを視聴することができる。特に、人物が話しているシーン等でよりリアリティーのある視聴が可能となる。
【0074】
なお、説明の都合上、図8は、音圧レベルが一定である場合について示している。しかし、音像定位調整がMAX方向に設定されるとき、ツイーター157、158の音圧レベルはOFFから、最大値の方向に増加する。
【0075】
音像定位調整がMAXから徐々にMINの方向へ設定されると、ツイーター157、158の音圧レベルは徐々に減少し、図8に示すように周波数帯域もMAX時の2kHz〜20kHz以上の範囲から、次第に高域側の範囲が狭くなる。図8に示すツイーター157、158の周波数特性のグラフは、設定がMINの方向へ移動するにつれて、実際は音圧が最大値レベルから音圧が0レベルの方向へ次第に減少する。
【0076】
また、音像定位調整がMAXから徐々にMINの方向へ設定されると、フルレンジスピーカー155、156の音圧レベルは徐々に増加し、図8に示すように周波数帯域もMAX時の150Hz〜2kHzの範囲から、次第に高域側の範囲が広くなる。図8に示すフルレンジスピーカー155、156の周波数特性のグラフは、設定がMINの方向へ移動するにつれて、実際は音圧レベルが最大値より低いレベルから音圧が最大値の方向へ次第に増加する。
【0077】
上述した通り、フルレンジスピーカー155、156とツイーター157、158のスピーカーの音声が出力される時間差と、周波数特性と、音圧レベル(音量)の変化を、ユーザーインターフェースと連動させることによって、上下方向の音像定位調整が可能となる。音像定位調整がMAXに設定されると上述したような音像の定位が画面中心付近になる。一方、音像定位調整がMINに設定されると音像の定位がテレビ受像機100の下部になる。なお、音像定位調整がMINに設定することで、ツイーター157、158の出力がなくなるため、高域の音声に敏感な人にとって耳障りな音を排除することができる。
【0078】
以上では、ツイーター157、158から出力される音声は、フルレンジスピーカー155、156から出力される音声より常に一定時間だけ早く出力される場合について説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、音声が出力される時間差は、60μsec〜120μsecの範囲で調整できるようにしてもよい。
【0079】
上述した通り、本実施形態によれば、ツイーター157、158が表示部170の画面高さ中央以上に設けられ、フルレンジスピーカー155、156が画面より下方に設けられる。そして、フルレンジスピーカー155、156と、ツイーター157、158のスピーカーの音声が出力される時間差と、周波数特性と、音圧レベル(音量)を変化させることで、音像の定位をテレビ受像機の上下方向に移動することができる。
【0080】
本実施形態のテレビ受像機100は、高域の周波数の第2の音声信号による音声がツイーター157、158から出力される。そして、ツイーター157、158から出力される音声は、フルレンジスピーカー155、156から出力される第1の音声信号による音声より所定時間だけ早く出力される。そのため、視聴者は、ツイーター157、158が設置された中間付近、即ち画面付近から音声が聞こえてくるように感じることができ、映像の表示方向と一致するため、従来に比べて臨場感のある音場を実現することができる。また、ツイーター157、158から出力される音声の高域側の周波数特性の範囲を広げることで、空間的により広がりのある音声が聞こえてくるようにすることができる。
【0081】
従来、左右のスピーカーの音圧レベルを変化させることによって、図9のH、H、Hのように音像の定位を左右方向に移動することはできたが、上下方向の音像の定位の移動はできなかった。そのため、音像がテレビ受像機100の下部又は上部に偏る傾向があった。近年、テレビ受像機の薄型化の影響によって、テレビ受像機に画面と一体的に設けられるスピーカーは、配置位置が限定されている。テレビ受像機の大部分を占める画面部分の厚さを例えば10数mm〜数mmオーダーに低減するため、スピーカーは画面の下方に設けられる。
【0082】
本実施形態によれば、フルレンジスピーカー155、156がテレビ受像機100の画面の下方又は上方に位置して設けたとしても、音像の定位を画面付近に移動することができる。即ち、画面の近傍にツイーター157、158を設けたとしても、ツイーター157、158は体積確保が不要であるため画面の薄型化を図ることができ、音質を劣化させずに音像の定位を画面の高さ方向に移動することができる。また、一定の体積が必要なフルレンジスピーカー155、156を画面付近に配置する必要がなく、画面の下方又は上方に配置することができるため、画面の薄型化を図りつつ、音の品質を確保することができる。
【0083】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0084】
例えば、本発明の映像音声再生装置は、図1や図2で示すように、表示パネル172と本体部174が分離したテレビ受像機100の形態に限定されない。本発明の映像音声再生装置は、例えば、表示パネル172と本体部174が一体的に設けられた1つのパッケージからなる形態でもよい。なお、この形態でも、フルレンジスピーカーは表示部の画面の下方又は上方に設けられ、ツイーターは表示部の画面高さ中央以上に設けられる必要がある。
【0085】
また、上記実施形態では、フルレンジスピーカー155、156と、ツイーター157、158は、それぞれ左右に1つずつ設けられる場合について説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、表示部の画面の下方に設けられるフルレンジスピーカーは、1つ又は3つ以上でもよいし、表示部の画面高さ中央以上に設けられるツイーターは、1つ又は3以上でもよい。
【0086】
また、上記実施形態では、フルレンジスピーカー155、156は、映像を表示する表示部の画面より下方に設けられる場合について説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、フルレンジスピーカーは表示部の画面より上方に設けられてもよい。この場合も、フルレンジスピーカー、ツイーターの音圧レベル、周波数特性、出力される音声の時間差を調整することで、音像の定位を画面付近に移動させることができる。
【0087】
また、上記実施形態では、フルレンジスピーカー155、156とツイーター157、158が約20cmの距離で離れている場合について説明したが、本発明はこの例に限定されない。フルレンジスピーカーとツイーターの間の距離は、他の値でもよい。このとき、音像の定位を画面付近にするためのフルレンジスピーカーの音声とツイーターの音声が出力される時間の差は、上述した例に限定されず、他の値でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の一実施形態に係るテレビ受像機を示す正面図である。
【図2】同実施形態に係るテレビ受像機を示す側面図である。
【図3】同実施形態に係るテレビ受像機の本体部内部に収容されたフルレンジスピーカーを示す拡大断面図である。
【図4】同実施形態に係るテレビ受像機を示すブロック図である。
【図5】同実施形態に係るテレビ受像機の音声出力部を示すブロック図である。
【図6】同実施形態に係るテレビ受像機の音声出力の動作を示すフローチャートである。
【図7】同実施形態に係る表示部の画面に表示されたユーザーインターフェースを示す説明図である。
【図8】同実施形態に係るフルレンジスピーカー、ツイーターから出力される音声の周波数特性を示すグラフである。
【図9】同実施形態に係るテレビ受像機を示す正面図であり、音像定位の移動を示す説明図である。
【符号の説明】
【0089】
100 テレビ受像機
102 音声出力部
104 入力部
110 制御部
112 操作部
120 デジタル信号処理部(DSP)
121 分割部
122、123 遅延処理部
124、125 周波数調整部
126、127 音圧調整部
131、132、133、134 D/A変換部
151、152、153、154 出力部
155、156 フルレンジスピーカー
157、158 ツイーター
160 チューナー
164 復調部
166 映像信号処理部
168 表示制御部
170 表示部
172 表示パネル
174 本体部
176 支持部
178 支持パネル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された入力音声信号を第1の音声信号と第2の音声信号に分割する分割部と、
前記第1の音声信号を前記第2の音声信号より所定量だけ遅延させて出力する遅延処理部と、
前記第1の音声信号のうち高域側の周波数帯域又は前記第1の音声信号より高域である周波数帯域からなるように前記第2の音声信号の周波数帯域を調整する周波数調整部と、
映像を表示する表示部の画面より上方又は下方に設けられ、前記遅延処理部から入力された前記第1の音声信号を出力する第1の出力部と、
前記表示部の画面高さ中央以上に設けられ、前記周波数調整部で調整された前記第2の音声信号を出力する第2の出力部と、
を有する、音声出力装置。
【請求項2】
前記周波数調整部が、前記第1の音声信号の周波数帯域及び前記第2の音声信号の周波数帯域を調整して、前記第1の音声信号及び前記第2の音声信号によって形成される音像の定位の高さ方向の位置が、前記表示部の画面上で移動される、請求項1に記載の音声出力装置。
【請求項3】
前記第2の出力部は、前記表示部の左側及び右側にそれぞれ少なくとも1つずつ設けられる、請求項1又は2に記載の音声出力装置。
【請求項4】
前記周波数調整部は、前記第1の音声信号が前記第2の音声信号の周波数帯域を含まないように前記第1の音声信号の周波数帯域を調整する、請求項1〜3のいずれかに記載の音声出力装置。
【請求項5】
前記周波数調整部は、前記第2の音声信号の高域側の周波数帯域を調整できる、請求項1〜4のいずれかに記載の音声出力装置。
【請求項6】
前記周波数調整部は、前記第2の音声信号の周波数帯域が2〜4kHzの周波数を含むように調整する、請求項1〜5のいずれかに記載の音声出力装置。
【請求項7】
前記第2の音声信号による音声の音圧レベルを調整する音圧調整部と、
ユーザーによる操作を受け付け、前記第2の音声信号の音圧レベルを操作する操作信号を前記音圧調整部に出力する操作部と
を更に備え、
前記第2の音声信号による音声の音圧レベルが大きく調整されたとき、前記周波数調整部が、前記第1の音声信号の高域側の周波数帯域を減少させ、前記第2の音声信号の高域側の周波数帯域を増加させる、請求項1に記載の音声出力装置。
【請求項8】
前記第2の音声信号による音声の音圧レベルが小さく調整されたとき、前記周波数調整部が、前記第1の音声信号の高域側の周波数帯域を増加させ、前記第2の音声信号の高域側の周波数帯域を減少させる、請求項7に記載の音声出力装置。
【請求項9】
前記音圧調整部が、前記第1の音声信号による音声の音圧レベル及び前記第2の音声信号による音声の音圧レベルを調整して、前記第1の音声信号及び前記第2の音声信号によって形成される音像の定位の高さ方向の位置が、前記表示部の画面上で移動される、請求項7又は8に記載の音声出力装置。
【請求項10】
入力された入力音声信号を第1の音声信号と第2の音声信号に分割する分割部と、
前記第1の音声信号を前記第2の音声信号より所定量だけ遅延させて出力する遅延処理部と、
前記第1の音声信号のうち高域側の周波数帯域又は前記第1の音声信号より高域である周波数帯域からなるように前記第2の音声信号の周波数帯域を調整する周波数調整部と、
映像を表示する表示部の画面より上方又は下方に設けられ、前記遅延処理部から入力された前記第1の音声信号を出力する第1の出力部と、
前記表示部の画面高さ中央以上に設けられ、前記周波数調整部で調整された前記第2の音声信号を出力する第2の出力部と、
を有する、映像音声再生装置。
【請求項11】
入力された入力音声信号を第1の音声信号と第2の音声信号に分割するステップと、
前記第1の音声信号を前記第2の音声信号より所定量だけ遅延させて出力するステップと、
前記第1の音声信号のうち高域側の周波数帯域又は前記第1の音声信号より高域である周波数帯域からなるように前記第2の音声信号の周波数帯域を調整するステップと、
映像を表示する表示部の画面より上方又は下方に設けられた第1の出力部が、前記遅延処理部から入力された前記第1の音声信号を出力するステップと、
前記表示部の画面高さ中央以上に設けられた第2の出力部が、前記周波数調整部で調整された前記第2の音声信号を出力するステップと、
を有する、音声出力方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−147608(P2010−147608A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320219(P2008−320219)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】