説明

音響インピーダンス測定方法、音響インピーダンス測定装置、物体特性評価方法、及び物体特性評価装置

【課題】簡単な構成で被検査物の音響インピーダンスを正確に測定することができる音響インピーダンス測定装置を提供すること。
【解決手段】音響インピーダンス測定装置1において、超音波振動子13は第1の超音波伝達部材11及び第2の超音波伝達部材12を介して被検査物16と対向配置されている。超音波振動子13から発せられた超音波は、各超音波伝達部材11,12の界面で反射されるとともに、被検査物16の表面にて反射される。それら反射波の信号強度と各超音波伝達部材11,12の固有音響インピーダンスとに基づいて、被検査物16の音響インピーダンスが算出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を利用した音響インピーダンス測定方法、音響インピーダンス測定装置、物体特性評価方法、及び物体特性評価装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
音響インピーダンスは、密度と音速との積により決定され、硬さを反映したパラメータとして利用される。具体的には、例えば、軟組織(表層部)及び骨(コア部)の音響インピーダンスを測定して、その測定値に基づいて骨粗鬆症の診断を行う技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の音響インピーダンス測定装置は、被検査物に超音波を照射するためのトランスデューサを備える。このトランスデューサは、超音波振動子を主要部として構成された超音波センサと、その超音波センサに接合された中間媒体とからなり、パルス信号が供給されることにより超音波振動子が振動して超音波が照射される。
【0004】
この音響インピーダンス測定装置において、被検査物(軟組織及び骨)の音響インピーダンスを測定する場合、先ず、初期校正としてトランスデューサを空気中にセットしてトランスデューサから超音波を照射することにより、中間媒体と空気との境界面からの反射波信号が取得される。その後、既知の音響インピーダンスを有する校正媒体にトランスデューサを当接させた状態で、トランスデューサから超音波を照射することにより、中間媒体と校正媒体との境界面からの反射波信号が取得される。そして、音圧反射係数の関係式を利用し、中間媒体と空気との境界面からの反射波信号と、中間媒体と校正媒体との境界面からの反射波信号と、空気の音響インピーダンスと、校正媒体の音響インピーダンスとに基づいて、中間媒体の音響インピーダンスが算出される。
【0005】
次いで、トランスデューサを軟組織の表面に当接させた状態で、トランスデューサから超音波を照射することにより、中間媒体と軟組織との境界面からの反射波信号と、軟組織と骨との境界面からの反射波信号とが取得される。そして、音圧反射係数の関係式を利用し、中間媒体と軟組織との境界面からの反射波信号と、中間媒体の音響インピーダンスとに基づいて、軟組織の音響インピーダンスが求められる。さらに、軟組織と骨との境界面からの反射波信号と軟組織の音響インピーダンスとに基づいて、骨の音響インピーダンスが求められ、その音響インピーダンスに応じて骨粗鬆症の診断が行われる。
【0006】
ところで、特許文献1の音響インピーダンス測定装置では、被検査物の音響インピーダンスを測定するのに先立ち初期校正が行われる。この初期校正では、空気中に超音波を照射した後に、校正媒体に向けて超音波を照射する必要がある。従って、被検査物の音響インピーダンスを測定するためには超音波を複数回照射しなければならない。また、中間媒体の音響インピーダンスを求めてから、被検査物の音響インピーダンスを求める必要があるので、その演算処理が複雑になり、測定時間が長くなるといった問題や装置サイズが大型化するといった問題が生じる。
【0007】
この対策として、本発明者らは、被検査物の音響インピーダンスを迅速に測定することができる小型の音響インピーダンス測定装置を提案している(例えば、特許文献2参照)。特許文献2の測定装置では、図7に示されるように、既知の固有音響インピーダンス及び振動面40を有する超音波振動子41と被検査物42とを対向配置するとともに、超音波振動子41と被検査物42との間に超音波振動子41及び被検査物42とは異なる既知の固有音響インピーダンスを有する超音波伝達部材43を介在させている。そして、超音波振動子41から被検査物42に向けて超音波Sを照射し、その照射された超音波Sを超音波振動子41の振動面40での反射作用により被検査物42の表面にて多次的に反射させる。このとき、超音波振動子41に時間差で到達する1次反射波St1及び2次反射波St2の信号強度を検出する。その後、それら1次反射波St1及び2次反射波St2の信号強度、超音波伝達部材43の固有音響インピーダンス及び超音波振動子41の固有音響インピーダンスに基づいて、被検査物42の音響インピーダンスを算出する。
【0008】
このように音響インピーダンス測定装置を構成すると、超音波Sを複数回照射する必要がなく、超音波振動子41から超音波Sを1回照射することにより、被検査物42の音響インピーダンスが迅速に求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−102537号公報
【特許文献2】特開2007−195743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、特許文献2のように、超音波Sの多重反射を利用した測定装置では、1次反射波St1と2次反射波St2とで信号強度のレベル差が大きくなる。このため、A/D変換器を用いて各反射波の信号強度を検出する場合、その検出レベルを合わせることが困難となる。すなわち、1次反射波St1に対して2次反射波St2は非常に小さいため、1次反射波St1に合わせた分解能でA/D変換を行うと、2次反射波St2の信号強度を精度よく検出することができなくなる。
【0011】
このため、例えば2次反射波St2の信号レベルを1次反射波St1の同等レベルまで増幅した後にA/D変換を行うことにより、2次反射波St2の検出精度が高められる。しかしながら、この回路構成を採用すると、信号伝達経路の切り替え回路や信号増幅回路等が必要となるため、回路構成が複雑となり装置コストが嵩んでしまう。
【0012】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡単な構成で被検査物の音響インピーダンスを正確に測定することができる音響パラメータ測定方法、及び音響パラメータ測定装置を提供することにある。また、別の目的は、簡単な構成で被検査物の特性評価を正確に行うことができる物体特性評価方法、及び物体特性評価装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、手段1に記載の発明は、超音波を被検査物に照射し、得られた反射波に基づいて前記被検査物の音響インピーダンスを測定する音響インピーダンス測定方法であって、超音波振動子と前記被検査物とを対向配置するとともに、前記超音波振動子と前記被検査物との間に前記被検査物とは異なる既知の固有音響インピーダンスを有する2種類の超音波伝達部材を介在させるステップと、前記超音波振動子から前記被検査物に向けて超音波を照射し、各超音波伝達部材の界面での反射波の信号強度と、前記被検査物の表面での反射波の信号強度とを検出するステップと、前記各反射波の信号強度及び前記各超音波伝達部材の固有音響インピーダンスに基づいて、前記被検査物の音響インピーダンスを算出するステップとを含むことを特徴とする音響インピーダンス測定方法をその要旨とする。
【0014】
従って、手段1に記載の発明によると、超音波振動子と被検査物との間に2種類の超音波伝達部材が介在され、超音波振動子から被検査物に向けて超音波が照射される。ここで、各超音波伝達部材は、それぞれ固有音響インピーダンスが異なり、被検査物とも音響インピーダンスが異なるため、超音波振動子から照射された超音波の一部は、各超音波伝達部材の界面で反射するとともに、被検査物の表面で反射する。そして、それら反射波の信号強度が検出され、各反射波の信号強度及び各超音波伝達部材の固有音響インピーダンスに基づいて、被検査物の音響インピーダンスが算出される。この測定方法によると、超音波を複数回照射する必要がなく、超音波振動子から超音波を1回照射すれば、被検査物の音響インピーダンスを求めることができる。またこの場合、反射波の信号強度は、各超音波伝達部材の固有音響インピーダンスの大小関係に応じて調整することができる。従って、被検査物の音響インピーダンスに応じた適切な超音波伝達部材を用いることにより、各反射波の信号強度を同等レベルに設定することができる。この結果、従来のように信号増幅回路等を用いなくても、測定精度を十分に確保することができる。
【0015】
手段2に記載の発明は、超音波を被検査物に照射し、得られた反射波に基づいて前記被検査物の音響インピーダンスを測定する音響インピーダンス測定装置であって、電気信号を振動に変換して前記超音波を発生させるとともに、前記反射波を受信して電気信号に変換する超音波振動子と、既知の固有音響インピーダンスを有し、基端面が前記超音波振動子に接合される第1の超音波伝達部材と、前記被検査物及び前記第1の超音波伝達部材とは異なる既知の固有音響インピーダンスを有し、基端面が前記第1の超音波伝達部材の先端面に接合される一方、先端面が前記被検査物に対して直接接触するように配置される第2の超音波伝達部材と、前記超音波振動子から前記被検査物に向けて超音波を照射し、各超音波伝達部材の界面での反射波の信号強度と、前記被検査物の表面での反射波の信号強度とを検出する信号強度検出手段と、前記各反射波の信号強度及び前記各超音波伝達部材の固有音響インピーダンスに基づいて、前記被検査物の音響インピーダンスを算出する演算手段とを備えることを特徴とする音響インピーダンス測定装置をその要旨とする。
【0016】
従って、手段2に記載の発明によると、第1の超音波伝達部材の基端面が超音波振動子と接合されるとともにその第1の超音波伝達部材の先端面が第2の超音波伝達部材の基端面に接合される。さらに、第2の超音波伝達部材の先端面が被検査物に対して直接接触するよう配置される。そして、超音波振動子が電気信号を振動に変換することにより、その超音波振動子から2種類の超音波伝達部材を介して被検査物に超音波が照射される。ここで、各超音波伝達部材は、それぞれ固有音響インピーダンスが異なり、被検査物とも音響インピーダンスが異なるため、超音波振動子から照射された超音波の一部は、各超音波伝達部材の界面で反射するとともに、被検査物の表面で反射する。このとき、信号強度検出手段により、それら反射波の信号強度が検出される。そして、演算手段により、各反射波の信号強度及び各超音波伝達部材の固有音響インピーダンスに基づいて、被検査物の音響インピーダンスが算出される。この音響インピーダンス測定装置によると、超音波を複数回照射する必要がなく、超音波振動子から超音波を1回照射すれば、被検査物の音響インピーダンスを求めることができる。またこの測定装置では、各反射波の信号強度は、各超音波伝達部材の固有音響インピーダンスの大小関係に応じて調整することができる。従って、被検査物の音響インピーダンスに応じた適切な超音波伝達部材を用いることにより、各反射波の信号強度を同等レベルに設定することができる。この結果、従来のように信号増幅回路等を用いなくても、測定精度を十分に確保することができる。
【0017】
手段3に記載の発明は、手段2において、前記第1の超音波伝達部材は、前記超音波の伝搬方向の厚さが前記第2の超音波伝達部材よりも厚く形成されていることをその要旨とする。
【0018】
前記超音波振動子から発せられる超音波は、その信号強度が超音波伝達部材の界面での反射波と比較して大きく、残響が続く時間も長くなる。従って、手段3に記載の発明のように、第1の超音波伝達部材を厚く形成することにより、反射波の伝搬時間を十分に確保できる。このため、超音波の残響と反射波とが重なることを防止することができる。また、超音波伝達部材の界面での反射波や被検査物の表面での反射波は、信号強度が比較的小さく、残響が続く時間も短くなる。このため、第2の超音波伝達部材を第1の超音波伝達部材よりも薄く形成したとしても各反射波の重なりを回避することができる。さらに、第2の超音波伝達部材を薄く形成することにより、測定装置の小型化を図ることができる。
【0019】
手段4に記載の発明は、手段2または3において、前記被検査物は生体組織であり、前記第2の超音波伝達部材は、前記第1の超音波伝達部材よりも親水性が高い材料を用いて形成されていることをその要旨とする。
【0020】
従って、手段4に記載の発明によると、被検査物としての生体組織と接触する第2の超音波伝達部材は親水性が高い材料を用いて形成されるので、生体組織との密着性を高めることができ、生体組織の音響インピーダンスを正確に測定することができる。
【0021】
手段5に記載の発明は、手段4において、前記第1の超音波伝達部材の固有音響インピーダンスは、前記第2の超音波伝達部材の固有音響インピーダンスよりも大きく、さらに前記第2の超音波伝達部材の固有音響インピーダンスは前記被検査物の音響インピーダンスよりも大きいことをその要旨とする。
【0022】
従って、手段5に記載の発明によると、第1の超音波伝達部材と被検査物との間に、中間的な音響インピーダンスを有する第2の超音波伝達部材が配置されることとなる。この場合、第1の超音波伝達部材と第2の超音波伝達部材との界面及び被検査物の表面において超音波を確実に反射させることができ、各反射波の信号強度が適度な大きさとなる。従って、被検査物の音響インピーダンスを確実に測定することができる。
【0023】
また、前記被検査物の音響インピーダンスが比較的大きい場合、前記第1の超音波伝達部材の固有音響インピーダンスを前記第2の超音波伝達部材の固有音響インピーダンスよりも小さく、さらに前記第2の超音波伝達部材の固有音響インピーダンスを前記被検査物の音響インピーダンスよりも小さくしてもよい。このようにしても、第1の超音波伝達部材と被検査物との間に、中間的な音響インピーダンスを有する第2の超音波伝達部材が配置されることとなる。この場合も、第1の超音波伝達部材と第2の超音波伝達部材との界面及び被検査物の表面において超音波を確実に反射させることができ、各反射波の信号強度が適度な大きさとなる。従って、被検査物の音響インピーダンスを確実に測定することができる。
【0024】
前記超音波振動子、前記第1の超音波伝達部材、及び前記第2の超音波伝達部材は接着剤層を介して接合されるものであり、前記接着剤層は、前記超音波の波長の1/10の厚さよりも薄くなるよう形成されていることが好ましい。このようにすると、接着剤層を透過する際に超音波が減衰することなく伝搬するため、被検査物の音響インピーダンスを正確に測定することができる。
【0025】
前記音響インピーダンス測定装置は、前記演算手段が算出した音響インピーダンスを表示する表示装置をさらに備えることが好ましい。このようにすると、演算手段により算出された音響インピーダンスが表示装置に表示されるので、その音響インピーダンスに基づいて、被検査物の性状を容易に確認することができる。
【0026】
前記音響インピーダンス測定装置は、全体としてペン状を呈するハンドピースをさらに備え、そのハンドピースの先端に前記超音波振動子及び前記超音波伝達部材が配置されていることが好ましい。このように構成すると、ユーザはハンドピースを手で持ってその先端の超音波伝達部材を被検査物に当接させることで、被検査物の音響インピーダンスを測定することができるので、操作性に優れた音響インピーダンス測定装置を実現することができる。また、ハンドピースに信号強度検出手段及び演算手段が収容されていることが好ましく、さらに、ハンドピースに表示装置が設けられることが好ましい。この構成を採用すれば、携帯型の音響インピーダンス測定装置を実現することができる。
【0027】
手段6に記載の発明は、超音波を被検査物に照射し、得られた反射波に基づいて前記被検査物の特性を評価する方法であって、超音波振動子と前記被検査物とを対向配置するとともに、前記超音波振動子と前記被検査物との間に前記被検査物とは異なる既知の固有音響インピーダンスを有する2種類の超音波伝達部材を介在させるステップと、前記超音波振動子から前記被検査物に向けて超音波を照射し、各超音波伝達部材の界面での反射波の信号強度と、前記被検査物の表面での反射波の信号強度とを検出するステップと、前記各反射波の信号強度及び前記各超音波伝達部材の固有音響インピーダンスに基づいて、前記被検査物の特性評価のための要素となるパラメータを算出するステップとを含むことを特徴とする超音波を利用した物体特性評価方法をその要旨とする。
【0028】
従って、手段6に記載の発明によると、超音波振動子と被検査物との間に2種類の超音波伝達部材が介在され、超音波振動子から被検査物に向けて超音波が照射される。ここで、各超音波伝達部材は、それぞれ固有音響インピーダンスが異なり、被検査物とも音響インピーダンスが異なるため、超音波振動子から照射された超音波の一部は、各超音波伝達部材の界面で反射するとともに、被検査物の表面で反射する。そして、それら反射波の信号強度が検出され、各反射波の信号強度及び各超音波伝達部材の固有音響インピーダンスに基づいて、被検査物の特性評価のための要素となるパラメータが算出される。この評価方法によると、超音波を複数回照射する必要がなく、超音波振動子から超音波を1回照射すれば、被検査物のパラメータを求めることができ、それに応じて被検査物の特性評価を迅速に行うことができる。またこの場合、被検査物の音響インピーダンスに応じた適切な超音波伝達部材を用いることにより、各反射波の信号強度を同等レベルに設定することができる。この結果、従来のように信号増幅回路等を用いなくても、測定精度を十分に確保することができる。
【0029】
手段7に記載の発明は、超音波を被検査物に照射し、得られた反射波に基づいて前記被検査物の特性を評価する装置であって、電気信号を振動に変換して超音波を発生させるとともに、前記反射波を受信して電気信号に変換する超音波振動子と、既知の固有音響インピーダンスを有し、基端面が前記超音波振動子の振動面に接合される第1の超音波伝達部材と、前記被検査物及び前記第1の超音波伝達部材とは異なる既知の固有音響インピーダンスを有し、基端面が前記第1の超音波伝達部材の先端面に接合される一方、先端面が前記被検査物に対して直接接触するように配置される第2の超音波伝達部材と、前記超音波振動子から前記被検査物に向けて超音波を照射し、各超音波伝達部材の界面での反射波の信号強度と、前記被検査物の表面での反射波の信号強度とを検出する信号強度検出手段と、前記各反射波の信号強度及び前記各超音波伝達部材の固有音響インピーダンスに基づいて、前記被検査物の特性評価のための要素となるパラメータを算出する演算手段とを備えることを特徴とする超音波を利用した物体特性評価装置をその要旨とする。
【0030】
従って、手段7に記載の発明によると、第1の超音波伝達部材の基端面が超音波振動子と接合されるとともにその第1の超音波伝達部材の先端面が第2の超音波伝達部材の基端面に接合される。さらに、第2の超音波伝達部材の先端面が被検査物に対して直接接触するよう配置される。そして、超音波振動子が電気信号を振動に変換することにより、その超音波振動子から2種類の超音波伝達部材を介して被検査物に超音波が照射される。ここで、各超音波伝達部材は、それぞれ固有音響インピーダンスが異なり、被検査物とも音響インピーダンスが異なるため、超音波振動子から照射された超音波の一部は、各超音波伝達部材の界面で反射するとともに、被検査物の表面で反射する。このとき、信号強度検出手段により、それら反射波の信号強度が検出される。そして、演算手段により、各反射波の信号強度及び各超音波伝達部材の固有音響インピーダンスに基づいて、被検査物の特性評価のための要素となるパラメータが算出される。この評価装置によると、超音波を複数回照射する必要がなく、超音波振動子から超音波を1回照射すれば、被検査物のパラメータを求めることができ、それに応じて被検査物の特性評価を迅速に行うことができる。またこの評価装置では、被検査物の音響インピーダンスに応じた適切な超音波伝達部材を用いることにより、各反射波の信号強度を同等レベルに設定することができる。この結果、従来のように信号増幅回路等を用いなくても、測定精度を十分に確保することができる。
【発明の効果】
【0031】
以上詳述したように、請求項1〜5に記載の発明によると、簡単な構成で被検査物の音響インピーダンスを正確に測定することができる。また、請求項6,7に記載の発明によると、簡単な構成で被検査物の特性評価を正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明を具体化した一実施の形態の音響インピーダンス測定装置を示す斜視図。
【図2】音響インピーダンス測定装置の電気的構成を示すブロック図。
【図3】(a),(b)は超音波センサにおける超音波の反射を示す説明図。
【図4】音響インピーダンス測定装置の動作波形を示すタイミングチャート。
【図5】マイコンが実行する処理例を示すフローチャート。
【図6】別の実施の形態の音響インピーダンス測定装置を示す斜視図。
【図7】従来の音響インピーダンス測定方法を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は音響インピーダンス測定装置1を示す斜視図である。
【0034】
図1に示されるように、音響インピーダンス測定装置1は、全体としてペン状を呈するハンドピース2と、そのハンドピース2の先端に設けられる超音波センサ3とを備える。超音波センサ3の基端部はゴムなどの制振部材4を介してハンドピース2に固定されており、超音波センサ3はハンドピース2に対して音響的に絶縁されている。本実施の形態の音響インピーダンス測定装置1は、携帯型の装置であり、ユーザがハンドピース2をペンのように手で持って被検査物に超音波センサ3を押し付けることでその音響インピーダンスを測定する。また、音響インピーダンス測定装置1において、ハンドピース2には操作パネル5やディスプレイ6が設けられるとともに、その内部には各種の処理回路が収納されている。
【0035】
図2には音響インピーダンス測定装置1の電気的な回路構成を示している。図2に示すように、ハンドピース2内には、処理回路として発信機7、受信機8、受信電圧測定器9、マイクロコンピュータ(マイコン)10などが収納されている。マイコン10は操作パネル5、ディスプレイ6、発信機7、及び受信電圧測定器9と電気的に接続されており、発信機7及び受信機8が超音波センサ3に電気的に接続されている。
【0036】
図1及び図2に示されるように、本実施の形態の超音波センサ3は、固有音響インピーダンスが異なる2種類の超音波伝達部材11,12と、超音波振動子13とを備える。第1の超音波伝達部材11は、例えば、ポリイミド樹脂を用いて円柱状に形成され、第2の超音波伝達部材12は、例えば、ポリスチレン樹脂を用いて円柱状に形成されている。各超音波伝達部材11,12は同じ直径を有し、第1の超音波伝達部材11は第2の超音波伝達部材12よりも厚く形成されている。具体的には、第1の超音波伝達部材11は5mm程度の厚さであり、第2の超音波伝達部材12は3mm程度の厚さである。
【0037】
また、超音波振動子13は、例えば、圧電セラミックであるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用いて円板状に形成されている。超音波振動子13は各超音波伝達部材11,12と同じ直径を有する。この超音波振動子13の振動面14に第1の超音波伝達部材11の基端面が接合される一方、第1の超音波伝達部材11の先端面が第2の超音波伝達部材12の基端面に接合される。さらに、第2の超音波伝達部材12の先端面が被検査物(例えば、生体組織)16に直接接触するよう配置される。すなわち、この超音波センサ3では、超音波振動子13と対向するよう被検査物16が配置され、それら超音波振動子13と被検査物16との間に第1及び第2の超音波伝達部材11,12が介在されている。なお、本実施の形態の超音波センサ3では、各超音波伝達部材11,12及び超音波振動子13は、数μm程度の厚さを有する接着剤層(図示略)を介して接合されている。
【0038】
操作パネル5には、例えば、電源ボタン17や測定開始ボタン18などが設けられ、そのボタン操作に応じた信号がマイコン10に入力される。
【0039】
発信機7は、マイコン10から入力されるトリガー信号に応答して励起パルスを生成して超音波センサ3に出力する。そして、超音波センサ3において、励起パルスが超音波振動子13に供給され、該超音波振動子13が振動することで例えば10MHzの超音波が各超音波伝達部材11,12を介して被検査物16に照射される。
【0040】
本実施の形態において、第1の超音波伝達部材11(ポリイミド樹脂)の固有音響インピーダンスは3.5×10Ns/mであり、第2の超音波伝達部材12(ポリスチレン樹脂)の固有音響インピーダンスは2.49×10Ns/mである。また、被検査物16(生体組織)の音響インピーダンスは1.6×10Ns/m程度である。つまり、第1の超音波伝達部材11の固有音響インピーダンスは、第2の超音波伝達部材12の固有音響インピーダンスよりも大きく、第2の超音波伝達部材12の固有音響インピーダンスは被検査物16の音響インピーダンスよりも大きくなっている。
【0041】
このように、本実施の形態では、超音波振動子13と被検査物16との間に被検査物16とは異なる既知の固有音響インピーダンスを有する2種類の超音波伝達部材11,12を介在させている。この場合、超音波振動子13から照射された超音波の一部は、各超音波伝達部材11,12の界面で反射されるとともに、被検査物16の表面にて反射される。
【0042】
超音波センサ3の超音波振動子13は、送受信兼用の振動子であり、各超音波伝達部材11,12の界面や被検査物16の表面で反射した超音波(反射波)を電気信号に変換する。
【0043】
受信機8は、図示しない信号増幅回路、遅延回路、ゲート回路などを含んで構成されていて、超音波振動子13で変換された反射波信号を増幅するとともに、その反射波信号を抽出する。具体的には、超音波の照射タイミングから所定時間が経過したときに遅延回路からゲートパルスが出力される。そして、そのゲートパルスに応じてゲート回路が動作することで、超音波振動子13に到達する各反射波の信号が抽出される。
【0044】
受信電圧測定器9は、A/D変換器19を含んで構成されていて、受信機8から入力される反射波信号の電圧値(アナログ値)をA/D変換し、その変換後のデジタルデータをマイコン10に出力する。
【0045】
マイコン10は、各種の演算処理を行うCPU21や処理プログラムやデータを記憶するメモリ22などを含んで構成されていて、装置全体を統括的に制御する。処理プログラムとしては、音響インピーダンスを算出するためのプログラムや、算出した音響インピーダンスなどをディスプレイ6に表示するためのプログラムを含む。
【0046】
次に、本実施の形態における音響インピーダンスの測定方法を説明する。図3は、測定原理を示す説明図であり、図4は、音響インピーダンス測定装置1の動作波形を示すタイミングチャートである。
【0047】
図3及び図4に示すように、励起パルスPを超音波振動子13に供給しその励起パルスPにより超音波振動子13を振動させることで、超音波振動子13から被検査物16に向けて超音波Sが照射される。この超音波Sは、その一部が各超音波伝達部材11,12の界面で反射するとともに被検査物16の表面(超音波伝達部材12と被検査物16との界面)で反射する。本実施の形態においては、超音波Sが各超音波伝達部材11,12の界面及び被検査物16の表面で反射される結果、超音波振動子13に最初に到着する第1の反射波S(各超音波伝達部材11,12の界面での反射波)と第1の反射波Sの次に到着する第2の反射波S(被検査物16の表面での反射波)とを抽出する。そして、それらの反射波信号の電圧値V,Vを取得する。
【0048】
反射波信号の電圧値V,Vは、音圧反射率の関係を利用し、各超音波伝達部材11,12の間における透過波及び反射波、被検査物16での反射波を考慮すると、次式のように表すことができる。
【数1】

【数2】

【0049】
ここで、Vは、超音波振動子13で発生する超音波(入射波)Sに対応する電圧値であり、Zは、第1の超音波伝達部材11の音響インピーダンスである。また、Zは、第2の超音波伝達部材12の音響インピーダンスであり、Zは、被検査物16の音響インピーダンスである。
【0050】
上記式(1),(2)と既知の固有音響インピーダンスZ,Zとを用いると、被検査物16の音響インピーダンスZは、次式(3)の演算式により求めることができる。
【数3】

【0051】
ここで、A,Bは、各超音波伝達部材11,12や接着剤層などでの減衰率に依存する誤差を補正するための補正値である。この補正値は、実験にて求め、テーブルデータとしてメモリ22に記憶されている。
【0052】
従って、測定した電圧値V,Vを上記式(3)に代入することにより、被検査物16の音響インピーダンスZを求めることができる。
【0053】
ここで、生体組織の音響インピーダンスZは1.5〜1.8Ns/mである。本実施の形態のように第1の超音波伝達部材11としてポリイミド樹脂(Z=3.5×10Ns/m)を用い、第2の超音波伝達部材12としてポリスチレン樹脂(Z=2.49×10Ns/m)を用いると、上記式(1),(2)の関係により、反射波信号の電圧値V,Vは、ほぼ同等レベルとなる。このため、A/D変換器19の検出レベルを固定した場合でも、各電圧値V,Vを精度良く検出することができる。
【0054】
次に、本実施の形態において、被検査物(生体組織)16の音響インピーダンスZを測定するためにマイコン10が実行する処理例について、図5のフローチャートに従い説明する。なお、図5の処理は、ユーザにより操作パネル5の測定開始ボタン18が操作され、その操作に応じた信号がマイコン10に入力されたときに開始される。
【0055】
先ず、マイコン10は、発信機7にトリガー信号を供給して発信機7から励起パルスPを出力させる(ステップ100)。この励起パルスPが超音波センサ3の超音波振動子13に供給されると、その超音波振動子13が振動して振動面14から超音波Sが照射される。このとき、各超音波伝達部材11,12の界面で反射した反射波Sが超音波振動子13で電気信号(反射波信号)に変換される。そして、その反射波信号が受信機8で抽出され、その反射波信号の信号強度に応じた電圧値が受信電圧測定器9でA/D変換される。
【0056】
マイコン10は、受信電圧測定器9で変換されたデジタルデータを取得し、各超音波伝達部材11,12の界面での反射波Sの電圧値Vとしてメモリ22に記憶する(ステップ110)。
【0057】
さらに、各超音波伝達部材11,12の界面を透過した超音波Sの一部は、生体組織16の表面で反射する。その反射波Sが超音波振動子13で電気信号(反射波信号)に変換される。受信機8では反射波Sに続いて反射波Sが抽出され、その反射波Sの信号強度に応じた電圧値が受信電圧測定器9でA/D変換される。
【0058】
マイコン10は、受信電圧測定器9で変換されたデジタルデータを取得し、生体組織16の表面での反射波Sの電圧値Vとしてメモリ22に記憶する(ステップ120)。
【0059】
マイコン10は、各反射波S,Sの電圧値V,Vを用いて上式(3)に対応した演算を行うことで、生体組織16の音響インピーダンスZを求める(ステップ130)。
【0060】
マイコン10は、その音響インピーダンスZに基づいて生体組織16を診断する(ステップ140)。ここで、例えば癌化した生体組織においてコラーゲン線維が増加すると、正常組織に比較して硬化するので、算出した音響インピーダンスZに基づいて癌化した組織か否かを診断する。また、マイコン10は、算出した生体組織16の音響インピーダンスZ及びその診断結果に応じたデータをディスプレイ6に送信し、その音響インピーダンスZと診断結果とをディスプレイ6に表示させた後(ステップ150)、本処理を終了する。
【0061】
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0062】
(1)本実施の形態の音響インピーダンス測定装置1を用いれば、超音波Sを複数回照射する必要がなく、超音波振動子13から超音波Sを1回照射すれば、生体組織16の音響インピーダンスZを求めることができる。また、超音波センサ3では、第1の超音波伝達部材11としてポリイミド樹脂が用いられ、第2の超音波伝達部材12としてポリスチレン樹脂が用いられている。この超音波センサ3を用いて生体組織16の音響インピーダンスを測定する場合、第1の超音波伝達部材11と生体組織16との間に、中間的な音響インピーダンスを有する第2の超音波伝達部材12が配置されることとなる。このようにすると、第1の超音波伝達部材11と第2の超音波伝達部材12との界面及び生体組織16の表面において超音波Sを確実に反射させることができる。またこの場合、各反射波S,Sの信号強度は同等レベルとなるため、従来のように信号増幅回路を用いなくても各反射波S,Sの信号強度を精度良く検出することができ、音響インピーダンスZの測定精度を十分に確保することができる。
【0063】
(2)本実施の形態の超音波センサ3において、第1の超音波伝達部材11は、超音波Sの伝搬方向の厚さが第2の超音波伝達部材12よりも厚く形成されている。このように第1の超音波伝達部材11を厚く形成することにより、反射波Sの伝搬時間を十分に確保できるため、超音波Sの残響と反射波Sとが重なることを防止することができる。また、超音波伝達部材11,12の界面での反射波Sや生体組織16の表面での反射波Sは、信号強度が比較的小さく、残響が続く時間も短くなる。このため、第2の超音波伝達部材12を第1の超音波伝達部材11よりも薄く形成したとしても各反射波S,Sの重なりを回避することができる。さらに、第2の超音波伝達部材12を薄く形成することにより、超音波センサ3の小型化を図ることができる。
【0064】
(3)本実施の形態の超音波センサ3において、第2の超音波伝達部材12として親水性が高いポリスチレン樹脂を用いているので、生体組織16との密着性を高めることができ、生体組織16の音響インピーダンスを正確に測定することができる。
【0065】
(4)本実施の形態の超音波センサ3において、超音波振動子13、第1の超音波伝達部材11及び第2の超音波伝達部材12は、数μm程度の厚さを有する接着剤層を介して接合されている。この接着剤層は、超音波Sの波長(具体的には、150μm程度)の1/10の厚さよりも薄いので、その接着剤層での超音波Sの反射が抑制され超音波Sを確実に伝搬させることができる。
【0066】
(5)本実施の形態の音響インピーダンス測定装置1の場合、生体組織16の音響インピーダンスZと生体組織16の診断結果がディスプレイ6に表示されるので、生体組織16の性状を容易に確認することができる。
【0067】
(6)本実施の形態の音響インピーダンス測定装置1は、ペン状を呈するハンドピース2内に、信号強度検出手段としての受信機8及び受信電圧測定器9や演算手段としてのマイコン10などが収納されており、そのハンドピース2を手で持って生体組織16の音響インピーダンスZを測定することができる。このように構成すると、操作性に優れた携帯型の測定装置を実現することができる。
【0068】
なお、本発明の実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0069】
・上記実施の形態では、ペン状を呈する音響インピーダンス測定装置1に具体化するものあったが、これに限定されるものではない。例えば、図6に示す音響インピーダンス測定装置31のように、ボックス状の装置本体32に信号ケーブル33を介して超音波センサ34が接続される測定装置に具体化してもよい。音響インピーダンス測定装置31は、その装置本体32が手のひらに収まるサイズであり、携帯型の測定装置として使用される。この音響インピーダンス測定装置31において、装置本体32には、ディスプレイ35と操作パネル36とが設けられている。また、超音波センサ34は、上記実施の形態と同様に2種類の超音波伝達部材11,12と超音波振動子13とを備える。そして、信号ケーブル33の接続端子37が装置本体32に設けられたコネクタ38に挿入されることで、超音波センサ34が信号ケーブル33を介して装置本体32内の処理回路と接続される。なお、装置本体32内の処理回路としては、上記実施の形態と同様に、発信機7、受信機8、受信電圧測定器9、マイクロコンピュータ(マイコン)10などを含む。
【0070】
この音響インピーダンス測定装置31では、超音波センサ34(信号ケーブル33の接続端子37)が装置本体32のコネクタ38に着脱可能に設けられ、被検査物の種類やサイズなどに応じた超音波センサ34に交換することができる。また、装置本体32には、比較的に画面サイズが大きなディスプレイ35を設けることができ、より多くの情報をディスプレイ35に表示させることが可能となる。さらに、超音波センサ34を任意の位置に移動させることができるので、被検査物16における複数個所の音響インピーダンスZを迅速に測定することができる。
【0071】
・上記実施の形態では、携帯型の音響インピーダンス測定装置1,31に具体化したが、これ以外に据え置き型の音響インピーダンス測定装置として具体化してもよい。
【0072】
・上記実施の形態の音響インピーダンス測定装置1,31では、1つの超音波センサ3,34を備えるものであったが、これに限定されるものではなく複数の超音波センサを備える測定装置を構成してもよい。この測定装置において、例えば、複数の超音波センサをマトリクス状に配置させ、それら超音波センサを用いて被検査物16における複数の測定点の音響インピーダンスZを測定する。このようにすれば、被検査物16における音響インピーダンスZの分布を容易に確認することができる。またこの場合、各測定点での音響インピーダンスZに基づいて被検査物16の音響インピーダンス像を表示装置に表示させるよう構成してもよい。この音響インピーダンス像を確認することにより、被検査物16の性状をより的確に判定することができる。
【0073】
・上記実施の形態では、超音波センサ3,34の各超音波伝達部材11,12の形成材料として、ポリイミド樹脂やポリスチレン樹脂を用いたが、それ以外の樹脂材料やステンレスなどの金属材料を用いてもよい。
【0074】
・上記実施の形態では、被検査物16として生体組織の音響インピーダンスZを測定するものであったが、肉、魚類、うどん、蕎麦などの食材の音響インピーダンスや液体の音響インピーダンスを測定してもよい。
【0075】
・上記実施の形態では、測定した被検査物16の音響インピーダンスZに基づいて組織診断を行い、その診断結果をディスプレイ6に表示させるものであったがこれに限定されるものではない。例えば、肉、魚類の音響インピーダンスを測定してその測定値に基づいて鮮度診断を行い、その診断結果をディスプレイ6に表示させてもよい。また、測定した音響インピーダンスに基づいて、うどんや蕎麦などの水分量を表示させてもよいし、液体の塩分濃度などをディスプレイ6に表示させてもよい。
【0076】
・上記実施の形態では、被検査物16の音響インピーダンスZを求め、その音響インピーダンスZに基づいて被検査物16の特性評価を行うものであったが、音響インピーダンスZ以外のパラメータを用いて被検査物16の特性評価を行ってもよい。なお、この特性評価のための要素となるパラメータは、上記構成のような超音波センサ3を用いて各反射波S,Sの信号強度を検出し、それら信号強度、及び各超音波伝達部材11,12の音響インピーダンスZ,Zに基づいて算出する。
【0077】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0078】
(1)手段4において、前記第1の超音波伝達部材の固有音響インピーダンスは前記第2の超音波伝達部材の固有音響インピーダンスよりも小さく、さらに前記第2の超音波伝達部材の固有音響インピーダンスは前記被検査物の音響インピーダンスよりも小さいことを特徴とする音響インピーダンス測定装置。
【0079】
(2)手段2乃至5のいずれかにおいて、前記超音波振動子、前記第1の超音波伝達部材及び前記第2の超音波伝達部材は接着剤層を介して接合されるものであり、前記接着剤層は、前記超音波の波長の1/10の厚さよりも薄くなるよう形成されていることを特徴とする音響インピーダンス測定装置。
【0080】
(3)手段2乃至5のいずれかにおいて、前記演算手段が算出した音響インピーダンスを表示する表示装置をさらに備えることを特徴とする音響インピーダンス測定装置。
【0081】
(4)手段2乃至5のいずれかにおいて、全体としてペン状を呈するハンドピースをさらに備え、そのハンドピースの先端に前記超音波振動子及び前記各超音波伝達部材が配置されていることを特徴とする音響インピーダンス測定装置。
【符号の説明】
【0082】
1,31…音響インピーダンス測定装置
8…信号強度検出手段を構成する受信機
9…信号強度検出手段を構成する受信電圧測定器
10…演算手段としてのマイコン
11…第1の超音波伝達部材
12…第2の超音波伝達部材
13…超音波振動子
16…被検査物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を被検査物に照射し、得られた反射波に基づいて前記被検査物の音響インピーダンスを測定する音響インピーダンス測定方法であって、
超音波振動子と前記被検査物とを対向配置するとともに、前記超音波振動子と前記被検査物との間に前記被検査物とは異なる既知の固有音響インピーダンスを有する2種類の超音波伝達部材を介在させるステップと、
前記超音波振動子から前記被検査物に向けて超音波を照射し、各超音波伝達部材の界面での反射波の信号強度と、前記被検査物の表面での反射波の信号強度とを検出するステップと、
前記各反射波の信号強度及び前記各超音波伝達部材の固有音響インピーダンスに基づいて、前記被検査物の音響インピーダンスを算出するステップと
を含むことを特徴とする音響インピーダンス測定方法。
【請求項2】
超音波を被検査物に照射し、得られた反射波に基づいて前記被検査物の音響インピーダンスを測定する音響インピーダンス測定装置であって、
電気信号を振動に変換して前記超音波を発生させるとともに、前記反射波を受信して電気信号に変換する超音波振動子と、
既知の固有音響インピーダンスを有し、基端面が前記超音波振動子に接合される第1の超音波伝達部材と、
前記被検査物及び前記第1の超音波伝達部材とは異なる既知の固有音響インピーダンスを有し、基端面が前記第1の超音波伝達部材の先端面に接合される一方、先端面が前記被検査物に対して直接接触するように配置される第2の超音波伝達部材と、
前記超音波振動子から前記被検査物に向けて超音波を照射し、各超音波伝達部材の界面での反射波の信号強度と、前記被検査物の表面での反射波の信号強度とを検出する信号強度検出手段と、
前記各反射波の信号強度及び前記各超音波伝達部材の固有音響インピーダンスに基づいて、前記被検査物の音響インピーダンスを算出する演算手段と
を備えることを特徴とする音響インピーダンス測定装置。
【請求項3】
前記第1の超音波伝達部材は、前記超音波の伝搬方向の厚さが前記第2の超音波伝達部材よりも厚く形成されていることを特徴とする請求項2に記載の音響インピーダンス測定装置。
【請求項4】
前記被検査物は生体組織であり、前記第2の超音波伝達部材は、前記第1の超音波伝達部材よりも親水性が高い材料を用いて形成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の音響インピーダンス測定装置。
【請求項5】
前記第1の超音波伝達部材の固有音響インピーダンスは、前記第2の超音波伝達部材の固有音響インピーダンスよりも大きく、さらに前記第2の超音波伝達部材の固有音響インピーダンスは前記被検査物の音響インピーダンスよりも大きいことを特徴とする請求項4に記載の音響インピーダンス測定装置。
【請求項6】
超音波を被検査物に照射し、得られた反射波に基づいて前記被検査物の特性を評価する方法であって、
超音波振動子と前記被検査物とを対向配置するとともに、前記超音波振動子と前記被検査物との間に前記被検査物とは異なる既知の固有音響インピーダンスを有する2種類の超音波伝達部材を介在させるステップと、
前記超音波振動子から前記被検査物に向けて超音波を照射し、各超音波伝達部材の界面での反射波の信号強度と、前記被検査物の表面での反射波の信号強度とを検出するステップと、
前記各反射波の信号強度及び前記各超音波伝達部材の固有音響インピーダンスに基づいて、前記被検査物の特性評価のための要素となるパラメータを算出するステップと
を含むことを特徴とする超音波を利用した物体特性評価方法。
【請求項7】
超音波を被検査物に照射し、得られた反射波に基づいて前記被検査物の特性を評価する装置であって、
電気信号を振動に変換して超音波を発生させるとともに、前記反射波を受信して電気信号に変換する超音波振動子と、
既知の固有音響インピーダンスを有し、基端面が前記超音波振動子の振動面に接合される第1の超音波伝達部材と、
前記被検査物及び前記第1の超音波伝達部材とは異なる既知の固有音響インピーダンスを有し、基端面が前記第1の超音波伝達部材の先端面に接合される一方、先端面が前記被検査物に対して直接接触するように配置される第2の超音波伝達部材と、
前記超音波振動子から前記被検査物に向けて超音波を照射し、各超音波伝達部材の界面での反射波の信号強度と、前記被検査物の表面での反射波の信号強度とを検出する信号強度検出手段と、
前記各反射波の信号強度及び前記各超音波伝達部材の固有音響インピーダンスに基づいて、前記被検査物の特性評価のための要素となるパラメータを算出する演算手段と
を備えることを特徴とする超音波を利用した物体特性評価装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−213896(P2010−213896A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−63909(P2009−63909)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000243364)本多電子株式会社 (255)
【Fターム(参考)】