説明

音響パネル

【課題】音波の反射特性を容易かつ任意に変えられる音響パネル装置を提供する。
【解決手段】パネル枠体10と、周縁部がパネル枠体10に支持されたゴム弾性を示す反射板20と、反射板20の背面側に配置され反射板20を音源側に向けて圧力可変として押圧する押圧手段30とを備えた構成とする。本発明によれば、押圧手段30による押圧力が小さい場合には音波が反射しにくく、押圧力が大きい場合には音波が反射しやすくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にリスニングルームなどに設置される音響パネルに関し、さらに詳しく言えば、音源から到来する音波の反射率を調整できるようにした音響パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、リスニングルームを設計するにあたっては、聴者にとって、スピーカなどの音源から放射される音波の音質が良好となるように、反射,散乱,吸収の各特性を考慮して音響バネルが選択される。
【0003】
リスニングルームは、室外への音漏れを防止するために、室内を囲む天井,壁,床には強度の高い施工がなされることから、音波を適切に反射,散乱,吸収させることは、きわめて重要な課題である。
【0004】
このうち、音波の反射方向,散乱方向については、反射板の配置や角度などを試行錯誤的に配置することにより、比較的容易に調整することが可能であるが、音波の反射率や吸収率については、パネル面の音響抵抗を調整する必要がある。
【0005】
音響パネルに関して種々の提案がなされているが、例えば特許文献1に記載の音響パネルでは、片面に多数個の有底穴が形成された複数枚の吸音ボードを、それらの間に有底穴による空洞が形成されるように重ね合わせることにより、所望とする音響特性を得るようにしている。
【0006】
また、特許文献2に記載の音響パネルでは、粒子の振動により吸音性能を発揮する粉体を音響的に透明な袋内に充填して、所望とする音響効果を得るようにしている。
【0007】
また、特許文献3に記載の音響パネルでは、表面より音を吸収して透過させる音吸収板と、音波を干渉させて減衰させる音波干渉空気層と、音波を反射させる反射板とを表面から裏面側に向けて3層構造に配設して、所望とする音響効果を得るようにしている。
【0008】
【特許文献1】実開平3−55405号公報
【特許文献2】特開平9−114468号公報
【特許文献3】特開2000−309989号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、音波の反射特性は反射板の硬さに依存するため、リスリングルームなどの施工現場でその反射特性を調整するにあたって、従来では、特性の異なる複数の反射板材料を用意し、聴音しながら、その場に好適な反射板材料を選択するようにしているが、これにはかなりの時間と労力を必要とし、調整が容易ではないという問題がある。
【0010】
したがって、本発明の課題は、音波の反射特性を容易かつ任意に変えられる音響パネル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、音源から到来する音波の反射率を調整可能な音響パネルであって、パネル枠体と、周縁部が上記パネル枠体に支持されたゴム弾性を示す反射板と、上記反射板の背面側に配置され上記反射板を上記音源側に向けて圧力可変として押圧する押圧手段とを備えていることを特徴としている。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1における上記押圧手段が、加圧流体源に接続される膨張収縮可能な袋体からなることを特徴としている。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1における上記反射板と上記押圧手段との間に、硬質材からなる加圧板が介装されていることを特徴としている。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項3における上記加圧板には、上記反射板の背面に接触する複数の突起が形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、押圧手段によりゴム弾性を示す反射板をその背面側から押圧すると反射板の硬さが増加し音波が反射しやすくなり、また、押圧力を小さくすると反射板が柔らかくなり音波が反射しにくくなるため、反射板に対する押圧力を可変とすることにより、反射板そのものを取り替えることなく、反射特性を容易に調整することができる。
【0016】
押圧手段は圧力可変のバネ手段などであってもよいが、押圧手段として加圧流体源に接続される膨張収縮可能な袋体を用いる請求項2に記載の発明によれば、構成が簡単であって、かつ、反射板に対する押圧力をリニアに調整することができる。また、加圧流体源に例えば自転車などの空気入れポンプを使用することができる。
【0017】
反射板と押圧手段との間に硬質材からなる加圧板を介装させる請求項3に記載の発明によれば、反射板の全体を均一に押圧することができる。
【0018】
また、加圧板に反射板の背面に接触する複数の突起を形成する請求項4に記載の発明によれば、反射板に対して押圧力をより効率的に加えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、図1ないし図3により、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。図1は本発明による音響パネルを示す正面図、図2は図1のA−A線に沿った断面図、図3は反射板の押圧状態を示す図2と同様の断面図である。
【0020】
図1および図2を参照して、本発明の音響パネルは、ベースレームとしてのパネル枠体10を備えている。この実施形態において、パネル枠体10は、背板12と、背板12の周辺に立設された4つの側板11とを含む前面側(受音面側)が開放された箱体として形成されている。材質は、構成樹脂,金属,木製などであってよい。また、形状や大きさは任意に設計されてよい。
【0021】
パネル枠体10の前面の開口部には、ゴム弾性を示す反射板20が配置されている。反射板20の周縁は、接着材などにより各側板11に固定される。反射板20の大きさは、開口部の開口面積とほぼ同じであることが好ましい。反射板20の厚さは任意に選択されてよい。
【0022】
パネル枠体10内には、反射板20をその背面側から押圧して反射板20の硬さ(反射率)を変化させる押圧手段30が収納されている。
【0023】
押圧手段30には、押圧力が可変のバネ部材などが用いられてもよいが、この実施形態では、圧力の調整の容易さおよび構造上の観点から、ゴム材などよりなる膨張収縮可能な袋体30が用いられている。
【0024】
袋体30は、パネル枠体10内の全体にわたって配置される扁平な袋体で、その一部分には、加圧流体源Pに接続される筒状の接続口31bが一体に形成されている。図2に示すように、加圧流体源Pと接続するため、接続口31bは背板12からパネル枠体10の外側に引き出されている。
【0025】
加圧流体源Pは、油圧,水圧,空気圧のいずれでもよいが、この実施形態では、加圧流体源Pをエアポンプとしている。
【0026】
エアポンプには、通常、エアコンプレッサ(圧搾空気供給源)が用いられるが、本発明では、簡便な手段として、例えば自転車などのタイヤチューブに空気を入れる空気入れポンプを使用することができる。この種の空気入れポンプによっても、2kg/cm程度の空気圧を加えることは容易である。
【0027】
本発明の好ましい実施形態によれば、反射板20と押圧手段である上記袋体30との間に、反射板20の全体を均一に押圧する硬質材からなる加圧板40が介装される。
【0028】
より好ましくは、反射板20に押圧力をより効率的に加えるため、加圧板40に反射板20の背面に対して部分的に接触する複数の突起41を形成するとよい。突起41は、例えば円柱状のボスもしくは矩形状に延びるリブであってよい。
【0029】
図2に示すように、袋体30が膨らませられていない自然状態では、反射板20は固有の柔らかい弾性を示すため、音源(例えば図3に示すスピーカSP)からの音波の反射率は低い。
【0030】
これに対して、袋体30内の空気室31a内に加圧流体源Pから圧搾空気が供給されて袋体30が膨らませられると、図3に示すように、反射板20が音源(スピーカSP)側に押圧され、反射板20にその押圧力に見合ったテンションが加えられることから、反射板20の硬さ(スチフネス)が増大し、音波の反射率が高くなる。
【0031】
このように、本発明によれば、反射板20に対する押圧力(加圧力)を可変とすることにより、反射板20を取り替えることなく、音響バネルの反射特性を容易にしかもリニアに調整することができる。
【0032】
なお、最終的に所望とする反射特性が得られた場合には、加圧流体源Pから袋体30の接続口31bを切り離し、接続口31bを図示しない栓で閉塞すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明による音響パネルを示す正面図。
【図2】上記音響パネルの内部構造を示す図1のA−A線に沿った断面図。
【図3】本発明において、反射板の押圧状態を示す図2と同様の断面図。
【符号の説明】
【0034】
10 パネル枠体
11 側板
12 背板
20 反射板
30 押圧手段む
31 袋体
31a 空気質
31b 接続口
40 加圧板
41 突起
P 加圧流体源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音源から到来する音波の反射率を調整可能な音響パネルであって、
パネル枠体と、周縁部が上記パネル枠体に支持されたゴム弾性を示す反射板と、上記反射板の背面側に配置され上記反射板を上記音源側に向けて圧力可変として押圧する押圧手段とを備えていることを特徴とする音響パネル。
【請求項2】
上記押圧手段が、加圧流体源に接続される膨張収縮可能な袋体からなることを特徴とする請求項1に記載の音響パネル。
【請求項3】
上記反射板と上記押圧手段との間に、硬質材からなる加圧板が介装されていることを特徴とする請求項1または2に記載の音響パネル。
【請求項4】
上記加圧板には、上記反射板の背面に接触する複数の突起が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の音響パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−19413(P2009−19413A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−182891(P2007−182891)
【出願日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(000128566)株式会社オーディオテクニカ (787)
【Fターム(参考)】