説明

頂部放射デバイスおよび照明デバイス

【課題】経済的に生産しうる、大量生産プロセスに適した、改良された光抽出の頂部放射デバイス、とくに有機発光ダイオードの提供。
【解決手段】基板上に適用された層配列を有する頂部放射デバイス、特に有機発光ダイオードに関し、該層配列は、基板上に配置された底部電極および光放射が行われる頂部電極と、底部電極および頂部電極間に配置された有機層の積層も含んでなり、底部電極の場合に、有機層の積層に面する表面は少なくとも部分領域で光反射式に形成されて、底部電極における有機層の積層で生じる光の反射を規定する表面構造で形成され、該表面構造は機械的成形により形成する。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、基板上に適用された層配列を有する頂部放射デバイス、特に有機発光ダイオード、であって該層配列が基板上に配置された底部電極および光放射が行われる頂部電極と、底部電極および頂部電極間に配置された有機層の積層も含んでなるもの、並びに照明デバイスに関する。
【発明の背景】
【0002】
有機発光ダイオードは、略記されると、通常OLEDとも表わされるが、照明およびディスプレーの分野の用途に関して、特に白光発生の態様で、高い潜在可能性を有している。実質的改良が、得られる効率に関してだけでなく、デバイスの耐用期間に関しても、この分野で近年なし遂げられた。白色OLEDの性能効率は現在10〜25 lm/Wの範囲内であり、10000時間を超える耐用期間が実現可能である。しかしながら、現在のところ、100 lm/W以下の効率で、例えば蛍光灯のような、白光の発生のための高効率技術により市場が支配されているため、一般照明用の分野で広汎商品化のためには、特に性能効率に関する改良が必要である。
【0003】
従来のOLEDは発生光の約25%を放射するだけで、主部分は基板または有機層の光学モードに残留し、次いでプロセスで失われることが、通常知られている。その理由は、光学媒体のOLED内で光が約1.3〜1.8の屈折率で形成されているからである。この光が低屈折率で光学媒体、例えばOLED‐積層内の別な層、OLEDが適用された基板、または電極の1つに当たると、ある値の入射角を超えたときに全反射が生じる。
【0004】
特に、空気中への光の移行に際して、このような屈折率の跳躍が必ず生じ、こうして単純に光が、比較的小さな角度で空気との境界面に当たると、OLEDデバイスから出てくるのである。全反射に関するこの境界角は空気への移行に際して逆正弦(l/n)に等しく、ここでnは空気との境界線上における物質の屈折率である。
【0005】
この光抽出の改良に焦点を合わせた多種多様な考え方が知られている。有益な提言は、例えば、OLEDの基板側におけるスキャッターホイル、マイクロレンズまたは特別に構築された表面の設置であり、そこで空気の方に境界面を形成して、光の望ましくない全反射の主部分が生じる。これらの処置は、OLEDの透明基板で“捕捉”された抽出光に向けられている。
【0006】
しかしながら、反射ベース接点上に置かれたOLED、いわゆる頂部放射OLEDに基づく構造素子は、透明基板での損失により性能キャパシティに関して制限されていない。それにもかかわらず、この場合でも、放射光の主部分が全反射に起因してOLEDの有機層内に“捕捉される”ため、発光効率が原則として損失メカニズムにより限定されている。OLEDの境界面で空気方向に反射条件を改善する、特にいわゆるマイクロキャビティの形成により、または追加抽出層の助けで、発光効率で可能な改良もここでは知られている。
【0007】
放射光の抽出で既に達成された改良があるにもかかわらず、相当な改良が業界水準と比べてなお必要である。これは特にOLEDの有機層のモードでそれ自体捕捉される光と関連している。例えば、有機層が平滑基板上に置かれず、この表面に溝が彫られたとき、ここで捕捉された光は原則的に使用可能であることが知られている。結果として、図1で略記されているように、光は様々な角度で有機層のエリアの境界面に当たり、こうして抽出されるようになる。幾何放射光学によるこの記載は光波長以下の層厚に関してほぼ正確であるが、非平滑基板の現象学についても十分な程度に記載している。このような方法は、例えば、透明底部接点電極付き透明基板に関してGB2361356A、または溝付ピクセル構造の能動マトリックスディスプレー素子に関してGB2390215Aで既に記載されている。
【0008】
したがって、照明技術で白色OLEDの使用には、これに加えて、製造プロセスへ安価に取り込める適切な抽出法を採用することが必要である。現在、照明目的で1cmのOLED表面がわずか数セントで済むため、その使用が経済目的であることはもちろんである。しかしながら、これは、特に安価なだけの方法が光抽出の増加のためにとにかく選択しうることも意味している。
【0009】
照明素子としてOLEDの適用には、大表面規模でデバイスを作製することが更に必要である。例えば、OLEDが1000cd/mの輝度で機能するならば、例えばオフィスルームを照明するために、数平方メートル程度の表面が必要とされる。
【0010】
しかしながら、このサイズのOLEDの構築には、デバイスの透明電極の電極導電率に問題がある。通常、OLEDはITO(酸化インジウムスズ)で被覆された透明基板上に置かれるが、しかしながらITOは、層厚および組成に依存して、5〜100Ω/Aの層抵抗を有している。しかしながら、大表面OLEDの場合、比較的高い電流が電極に通されねばならないため、有意に低い層抵抗が必要であり、そのため、例えばこれらが1Ω/Aより小さな非常に低い抵抗を有しているかぎり、大きな電圧降下が電極で生じうる。ITOの層抵抗のために、わずか数平方センチメートルのOLED表面でも、この効果は大きな輝度減衰につながる。この問題を軽減するために、ITOは追加金属トラックで強化され、それが電流の主要路となる。しかしながら、この目的のため、金属トラックはある直径を有しなければならず、その理由からそれらは数百ナノメートルの高さを通常有し、そうでなければそれらは広すぎて、OLED構造素子の能動表面が大きく減りすぎてしまう。しかしながら、金属強化された透明ITO被覆基板の使用によると、絶縁層による金属トラックの不動態化が必要であり、そうでなければ短絡がデバイスの底部および頂部電極間で生じてしまうからである。
【0011】
これらの事実を考慮すると、基板上で高導電性底部接点の使用が目的にかなうようである。<1Ω/Aの対応高導電性を有する電極は、業界水準によると金属で得られるだけである。しかしながら、対応導電性は、非常に低レベルの透明度を有するだけか、または全く透明というわけではない層厚で得られるだけである。したがって、高導電性底部接点の使用によると、OLEDは透明頂部電極を有さなければならず、そのためそれは頂部放射式で作製されねばならない。このような透明頂部電極は、例えば薄い金属層またはITOからなる。
【0012】
層抵抗に関する考察は、頂部電極にも同程度で当てはまる。そのため、デバイスが照明用に必要と思われるようなあるサイズを超えているかぎり、透明電極の導電性も有意の電圧損なしにOLEDで電流を通すためにここでは不十分である。しかしながら、金属コンダクタートラックによる頂部電極の強化がこの場合に有意に容易な程度まで実現可能であり、追加の不動態化ステップが今度は省けるからである。電流輸送のための金属強化は、例えば格子の形で頂部電極上で実際に施せる。OLEDのアノードおよびカソード間の短絡の危険性は、もはや考慮する必要がない。
【0013】
この場合に、有意な電圧降下もなく電流を電極に流せる構造が、寸法通りに形成されねばならないだけであるため、金属トラックの加工処理は比較的複雑でない。例えば、金属トラックは約1センチメートルのメッシュサイズでグリッドを形成でき、こうして作製されたセグメント化透明電極部分表面により無視しうるほどの値まで電圧降下が最少化される。
【0014】
もちろん、電流の輸送に際してシリアル抵抗に基づき生じる問題を迂回するための代替アプローチもある。ここで特に有益な提言は、何度も、デバイス内でOLEDユニットの直列接続が提案された、という事実である。しかしながら、このような解決法は基板のより複雑な構造と追加マスキングステップを前提としている。
【0015】
効率と耐用期間に関する実質的進展が頂部放射OLEDで近頃得られた。この理由から、特にOLEDで大きな価格要因である、物質としてITOを省くオプションのせいでも、頂部放射構造が照明用の分野で主要関心事であると思われる。しかしながら、OLED技術の経済的躍進のためには、既に記載されているように、デバイスの高効率と同時に安価な生産が特に必要である。この目的のため、例えば、“ロール・ツー・ロール”プロセスでの生産法に注意が向けられている。経済的に競争しうるOLED照明技術を発達させるためには、更にいずれか可能な抽出法を安価に確立することが特に必要である。
【0016】
現在までのところ、特にOLEDの効率および価格がまだ競争しうるものではないという事実からみて、照明素子用にOLED技術を商業化することは不可能であった。散乱格子(US6,476,550参照)、二次元光子構造(US6,630,684参照)、ホログラムなどが抽出改良の目的で統合された方法が記載されている。しかしながら、これらの方法は、例えば比較的複雑なプロセスステップ、フォトリソグラフィーに基づいている。
【0017】
透明基板が用いられて、光放射がずっと通り抜けて下方向に行われる、いわゆる底部放射OLED構造では、印型で規則的構造を形成することが提案された(GB2361356A参照)。ポリマー層が器具の使用で形成される、透明基板上溝付表面の作製のための方法が、この文献で記載されている。この場合に、成形が液体ポリマーの光硬化により行われ、これが硬化プロセスに際して成形器具の助けで形状保持されるか、あるいはポリマー溶液が器具で形成されて、溶媒の蒸発により硬化される方法が開示されている。しかしながら、頂部放射OLED構造の場合、構築底部電極は複雑な方法(GB2390215A参照)、例えばフォトリソグラフィーにより業界水準に従い配備され、これらの底部電極は経済的大量生産向けに選択できない。これに関する1つの理由は、短絡が粗面で生じるため、用いられる基板の表面は非常に滑らかでなければならない、と業界水準では頂部放射OLEDについて思われている事実である。底部放射デバイスの場合には、通常電導性ガラス製の完全に異なる底部電極が考えられるが、通常は頂部放射デバイス用の典型的底部電極は金属または金属積層からなる。基板および有機層のゾーン間の境界面におけるこの差異は、有機層のゾーンおよび基板の構築方式に関して、頂部放射および底部放射デバイスで非常に異なる要件があることを意味している。したがって、わずかな高効率および長寿命頂部放射デバイスが知られているにずぎず、他方で多数の底部放射デバイスが記載されてきた。
【0018】
特に、底部電極の粗度がOLEDの加工処理上の問題であり、それは約100nmの非常に薄い全体層厚がOLED積層で有機層のゾーンに通常用いられ、そのため電極間で短絡の危険性があるからである。この理由から、特別な平面化層が例えば能動マトリックスディスプレー素子で配備されねばならず、または現在の高さの違いが適切な平端角でもたらされるように底部電極表面が作製されねばならず、こうして短絡への傾向が抑制されるのである。
【発明の要旨】
【0019】
経済的に生産しうる、大量生産プロセスに適した、改良された光抽出の頂部放射デバイスを提供することが、本発明の課題である。
【0020】
この課題は、独立請求項1の頂部放射デバイスにより、本発明に従い解決されている。本発明の有利な態様が従属請求項の主題である。
【0021】
本発明によると、層配列が基板上に置かれた頂部放射デバイス、特に有機発光ダイオードが考えられ、該層配列は、基板上に配置された底部電極および光放射が行われる頂部電極と、底部電極および頂部電極間に配置された有機層の積層も含んでなり、底部電極の場合に、有機層の積層に面する表面は少なくとも部分領域で光反射式に形成されて、底部電極における有機層の積層で生じる光の反射を規定する表面構造で形成され、該表面構造は機械的成形により形成されている。
【0022】
非常に低い逆電流の長寿命頂部放射デバイスが粗面でも生産でき、それが表面構造(表面粗さ)の結果として形成されていることが、実験で意外にも発見された。低逆電流は、表面粗さ(表面構造)にもかかわらず、短絡が底部および頂部電極間で生じない証拠としてみなされている。特に成形器具が多数のデバイスの製造に用いられるため、表面構造を形成するための機械的成形は経済的大量生産を可能としている。
【0023】
最初に、非常に粗い表面上で、高効率および長寿命耐用期間を有し、逆方向に低電流でもある、有機層の積層をもつ頂部放射デバイスが提案されている。この結果は意外であり、総合試験シリーズおよび長期最適化からきている。頂部放射デバイスは市販可能技術として高い可能性を有しており、複雑でないやり方で製造しうる。そのため、本発明は照明用有機発光デバイスの将来的大量生産向けに重要なモジュールである。
【0024】
機械的成形は、例えば印型(スタンプ)により行える。対応表面構造の印型を製造するためには、例えばフォトリソグラフ法によりシリコン表面を構築することが考えられる。こうしたシリコンの構築は技術的に知られている。ここでは、サブマイクロメートル範囲の構造が生産しうる。半導体技術分野の永続的開発に基づくと、例えばEUVリソグラフィーまたはX線リソグラフィーのような別のリソグラフ製造法が原則としてこのような表面の製造に考えられる。一般認識によると、対応印型の製造には大きな労力消費とコストを要する。しかしながら、このような印型は非常に多数のデバイスの生産に用いられ、こうしてそれらの経済的製作が確保される。
【0025】
ポリマー表面の構築法は、Natalie Stutzmannの博士論文(博士論文ETH Zurich 2001,Technische Wissenschaften(Technical Sciences)ETH Zurich,No.14046,2001)で記載されている。この論文は、簡単な複雑でない製作手法で微細構造表面を作製するために、標準方法、特にエンボス法によりポリマー物質を処理する可能性について取り扱っている。
【0026】
本発明の一態様によると、機械的成形により形成された表面構造は非規則的手法で作製されることが考えられる。表面の構築は、好ましくは、約50nm〜約50μmの寸法、特に可視光の波長の寸法にある構造で行われる。原則的に、電磁波は2つの異なるメカニズム、いわゆるRayleigh散乱およびいわゆるMieまたはLorenz-Mie散乱に従い散乱される。前者は散乱光の波長より有意に小さな寸法の物体で行われ、比較的弱いが、後者は光波長範囲内の寸法にある構造で行われ、比較的強い。Rayleigh散乱は主要波長依存的に行われるが、Mie散乱は波長非依存的に最大可能程度で行われる。したがって、光波長の大きさで散乱中心/構造の使用による利点は2倍である:散乱はより大きな規模で行われ、こうして高い抽出増加が得られ、それは光の色とは無関係に生じる。波長依存性抽出増加が照明素子の変色をもたらすことから、これはもちろん望ましい。
【0027】
エンボス表面構造の不規則性の目的は、規則的構造が付着表面構造のゾーンで散乱挙動の角度依存性をもたらすことである。しかしながら、特に白色光の場合のような広帯域光放射の場合ではこれが望まれず、照明素子が様々な観察角度で異なる色の光を発するためである。この目的から、これを支える代わりに、放射の角度依存性を理想的に抑制する抽出構造が選択されるのである。
【0028】
例えばフルオロエチレンプロピレン(FEP)のような延性または熱可塑性ポリマーが、機械的成形、特にエンボスプロセスにより形成される表面構造をもつ層用の物質として、好ましくは選択可能である。ポリマーの選択は様々な基準により影響され、例えば他物質への接着傾向のみが非常に小さな物質が、好ましくは選択される。この場合には、この目的のために、過フッ素化ポリマーまたはポリオレフィンが、非接着性について知られた選択可能物質である。小さな接着傾向のせいで、例えば印型を含めた、表面構造を形成する機械的器具の引き離し作業が促進される。更におよび特に、エンボスポリマーにおける機械的欠陥の形成は引き離し作業に際して減少する。
【0029】
加えて、本発明は、光学性に乏しいポリマー、特に部分結晶ポリマーの使用を可能にする。これらは、もちろん、CDまたはDVDに用いられるような非晶物質よりも明確に小さな透明度を有している。しかも、それらはより明確に改良された機械的性質を有している。部分結晶ポリマーは、特に、それらがガラス転移温度より高く溶融温度より低い機械的には固体であるが、しかしながら非晶質ポリマーとは対照的に脆性でない、という事実により特徴付けられる。そのため、機械的成形器具から引き離すときにおける欠陥形成の危険性が減少し、それによりデバイス製作の全体プロセスにおける歩留が増加する。
【0030】
しかしながら、粗面化基板表面としてこのような部分結晶ポリマーの使用は頂部放射OLEDの場合でのみ可能であり、それ以外では光学性に乏しいためOLEDデバイスの効率に有害で過大な影響を及ぼすであろう。
【0031】
本発明の一態様の代わりとして、表面構造の形成目的で機械的成形により金属層を加工処理することが考えられる。このような当業者に知られている様々な機械的成形法により、金属は加工処理できる。これらには、例えばエンボス、ブラッシングおよびプリンティングがある。この態様では、有機層の積層に面する側の金属層に、例えばポリマーまたは酸化ケイ素からなる絶縁層が施される。
【0032】
機械的成形による表面構造の形成は、底部電極の設置前またはその適用後において、本発明の様々な態様で行える。
【0033】
一態様において、電荷担体輸送層が非常に厚く、即ち約10〜約100nmで形成しうるという利点のために、ドープされた電荷担体輸送層の使用が考えられる。こうすると、デバイスは粗い基板にさほど影響されない。これに加えて、ドープされた層で電荷担体の注入に際する電極物質の放電作用がわずかな影響を及ぼすにすぎないため、ドープされた層の使用は可能な電極物質の複数の配備を可能とする。
【本発明の好ましい態様の説明】
【0034】
本発明は、図面の図を参考にして、態様例に基づき、以下で更に詳細に説明されている。
【0035】
加熱プレート上に置かれた温度330℃のガラス基板上で、ポリテトラフルオロエチレン‐コ‐ヘキサフルオロプロピレン(FEP)ペレットを溶融させ、シリコンウェファーによりガラス表面上でフィルムにプレスする。次いで、ガラス基板を加熱プレートから取り除き、冷表面上で冷却させる。今度は、シリコンウェファーを冷却FEPフィルムから取り除く。
【0036】
用いられるシリコンウェファーは、フッ化水素酸への簡単な浸漬により、事前に粗面化させた。こうして、表面構造が約100nmの山‐谷‐粗度でウェファーの二酸化ケイ素層に生じ、FEPフィルム上にネガティブインプリントとしてそれ自体移る。
【0037】
シリコンウェファーの代わりに、研磨鋼板も用いられ、その中へ約300nmの平均広がりを有する不規則構造が、例えばレーザーでまたはフォトリソグラフィーの使用で形成される。鋼板をポリマーにプレスすることにより、これらの構造はポリマーへネガティブインプリントとして移される。
【0038】
平面鋼板の代わりに、研磨鋼製のロールも型打ちに用いうる。これは1μmの大きさで不規則な高または低構造を有している。この場合には、ポリマーを330℃に加熱せず、20〜150℃の温度で構築する。ガラスおよびポリマー層からなる基板の代わりに、いわゆる自立軟質ポリマーフィルムが、プリント産業で知られているように、ロール・ツー・ロール法で構築できる。
【0039】
対応粗度の金属ベース接点を得るために、アルミニウム、銀またはクロムの50nm厚層を第二ステップで熱蒸発により基板上へ蒸着させる。
【0040】
このようなクロムベース接点の粗度を走査力顕微鏡法で測定したところ、70nmの山‐谷‐粗度を示した(図2)。この層は、下記層構造形態の頂部放射デバイスでアノード(底部電極)として用いた:
(1)4%F4‐TCNQでドープされた70nm MeoTPD
(2)10nm α‐NPD
(3)10%fac‐トリス(2‐フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy)3)でドープされた20nm TCTA
(4)10nmバソフェンアントロリン
(5)Csでドープされた50nmバソフェンアントロリン(1:1モル混合物)
(6)カソードとして15nm銀
【0041】
層(1)〜(5)が有機層の積層を形成し、次いで層(6)の形でカソードが頂部電極として適用される。
【0042】
この有機発光デバイスは3Vの電圧で100cd/mを超える輝度のとき14.6cd/Aの電流効率を示し、良い電流‐電圧特性と±5Vで〜104の高いブロック比を有している(図3)。1000cd/mの輝度は4V以下で得られる(図4)。
【0043】
このOLEDデバイスの耐用期間は、約850cd/mの開始輝度で800時間以上に達する(図5参照)。対照的に、平滑基板上で同等の参照ダイオードは100cd/mの輝度で12.0cd/Aの電流効率を示すだけである。
【0044】
図6および7は、機械的成形に際する使用上、エンボス印型またはエンボスロールで可能な表面形態に関する概略図を示している。この場合に、図6は不規則溝付パターンで覆われた表面を示し、図7は符合的配列で点状構造をとる表面を示している。エンボス構造はパターン状窪みの形または盛上り構造の形で適用しうる。更に、複数の可能な形態が構造の形で考えられる。溝は丸形または角形の特徴を有し、点状構造は例えば円錐台の形で作製される。
【0045】
しかしながら、示されたパターンは単なる例にすぎない。原則的に、あらゆる種類の表面エンボスが用いられる。好ましくは、有機層の積層で短絡の危険性を避けるために、特徴がそれほど鋭角でないエンボス構造が選択される。
【0046】
この記載、請求項および図面で開示されているような本発明の特徴は、様々な態様で本発明の実現のために、個別およびランダムな組合せの双方で重要である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図は以下を示している:
【図1】水平面および表面構造を施した表面で光反射を説明するための概略図である。
【図2】走査力顕微鏡法による表面構造の測定に関する実験結果である。
【図3】電流密度‐電圧‐頂部放射デバイスに関する特性である。
【図4】輝度‐電圧‐頂部放射デバイスに関する特性である。
【図5】頂部放射デバイスに関する操作時間のファクターとして輝度のグラフ図である。
【図6】エンボス印型またはエンボスロールの表面形態に関する概略図である。
【図7】エンボス印型またはエンボスロールの別な表面形態に関する概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に適用された層配列を有する頂部放射デバイス、特に有機発光ダイオード、であって、層配列が、基板上に配置された底部電極および光放射が行われる頂部電極と、底部電極および頂部電極間に配置された有機層の積層も含んでなり、底部電極の場合に、有機層の積層に面する表面が少なくとも部分領域で光反射式に形成されて、底部電極における有機層の積層で生じる光の反射を規定する表面構造が付与され、該表面構造が機械的成形により形成された、頂部放射デバイス。
【請求項2】
表面構造が、ポリマー層の機械的成形により形成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
基板が、ポリマー層で形成されている、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
基板が、ポリマー層が適用された基板物質から作製されている、請求項2に記載のデバイス。
【請求項5】
ポリマー層が、延性ポリマー物質から作製されている、請求項2〜4のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
ポリマー層が、熱可塑性ポリマー物質から作製されている、請求項2〜4のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
ポリマー層が、部分結晶ポリマー物質から作製されている、請求項2〜4のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項8】
表面構造が、金属層の機械的成形により形成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
基板が、金属層で形成されている、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
基板が、金属層が適用された基板物質から作製されている、請求項8に記載のデバイス。
【請求項11】
表面粗さが不規則表面構造として形成されている、請求項1〜10のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項12】
表面構造の構造要素が、約50nm〜約50μm範囲の寸法を有している、請求項1〜11のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項13】
表面構造の構造要素が、可視光の波長領域の寸法を有している、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
表面構造が、少なくとも部分的に型打ちにより形成されている、請求項1〜13のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項15】
表面構造が、少なくとも部分的に圧延により形成されている、請求項1〜13のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項16】
表面構造が、少なくとも部分的にブラッシングにより形成されている、請求項1〜13のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項17】
有機層の積層が、1つまたは複数のドープされた電荷担体輸送層を含んでなる、請求項1〜16のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項18】
請求項1〜17の少なくとも一項に記載された1つまたは複数のデバイスを有する照明デバイス。

【図1】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−53089(P2007−53089A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−219359(P2006−219359)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(504432747)ノバレット、アクチェンゲゼルシャフト (8)
【氏名又は名称原語表記】NOVALED AG
【Fターム(参考)】