説明

頭蓋内のsiRNAの運搬を通じたハンチントンの疾患治療用の組成物、デバイス及び方法

本発明は、カテーテルの排出部分が脳中の所定の導入部位に近接するようにカテーテルを外科的に移植し、及びカテーテルの排出部分を通じて、少なくとも一の神経変性タンパク質の生産を阻害可能な、所定の用量の少なくとも一の物質を放出する段階を含む、神経変性障害を治療するためのデバイス、低分子干渉RNA、及び方法を提供する。本発明はまた、細胞の小胞体、自発運動活性、または患者の自発運動の障害のない、ハンチントン病をインビボで治療するための、価値のある低分子干渉RNAのベクター、システム、及び方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2003年2月3日に出願された仮出願60/444,614の優先権を主張する、2003年11月25日に出願された米国出願10/721,693の一部継続である、2006年8月8日に出願された米国特許出願11/501,147の一部継続である。
【0002】
本願はまた、2003年2月3日に出願された仮出願60/444,614の優先権を主張する、2003年11月25日に出願された米国出願10/721,693の一部継続である、2004年5月25日に出願された米国出願10/852,997の一部継続でもある。
【0003】
発明の分野
本発明は、低分子干渉RNA(siRNA)または低分子干渉RNAをコードするDNAを含有するベクターの脳内注入による、神経変性障害を治療するためのデバイス、システム、及び方法に関する。
【背景技術】
【0004】
本発明は、脳中の標的部位に低分子干渉RNAを運ぶために、神経変性障害の発達及び進行を阻害するかまたは進行を止めるための、新規なデバイス、システム及び方法を提供する。パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、脊髄小脳失調の1型、2型及び3型、並びに歯状核赤核・淡蒼球ルイ体萎縮症(DRLPA)のような幾つかの神経変性疾患に対して、前記疾患の全体的な病原性の進行に関わるタンパク質が同定されてきている。これらの神経変性疾患に対する治療法は現在のところ、何ら分かっていない。これらの疾患は、徐々に衰弱させていき、殆どが最終的には致死となる。
【0005】
これらの神経変性疾患(特に、アルツハイマー病及びパーキンソン病)についての更なる問題は、それらの有病率が増大し続けているということであり、そのため、公衆衛生上の重大な問題を生じている。最近の研究は、以下の疾患の各々の発症における主要な因子として、それぞれ、α−シヌクレイン(パーキンソン病)、β−アミロイド−分解酵素1(BACE1(その変異型、例えば、変異型A、B、C及びDを含む))(アルツハイマー病)、ハンチンチン(ハンチントン病)、及びアタキシン1(脊髄小脳失調1型)を対象としている。
【0006】
パーキンソン病及びアルツハイマー病における神経変性過程は、シナプスの損傷及び星膠症に付随して起こる、選択された神経細胞の集団の過度の損失を特徴とする。アルツハイマー病の病理学的特徴は、アミロイド斑の形成、神経原線維変化及び神経絨毛糸の形成を含む;パーキンソン病の病理学的特徴は、レヴィー小体と呼ばれる神経細胞内封入体の形成、及び黒質におけるドーパミン作動性ニューロンの損失を含む。細胞機能障害及び死を誘発するメカニズムは明らかになっていないが、一般的な見方は、神経変性が、α−シヌクレイン(パーキンソン病)及びアミロイド前駆体タンパク質(APP)((その変異型、例えば、変異型A、B、C及びDを含む)BACE1によるβ−アミロイドへとアルツハイマー病で処理される)のような、特異的な神経細胞タンパク質の蓄積に続く有毒作用の原因となるということである。
【0007】
α−シヌクレインは、レヴィー小体において多く発見されており、トランスジェニックマウスにおけるその過剰発現がパーキンソン病様の病状へと繋がり、この分子内の変異が家系内のパーキンソン病に関与しているので、パーキンソン病に関与している。α−シヌクレインは、β及びγシヌクレインを含む、比較的大家族の分子に属しており、アミロイド斑で発見された、35個のアミノ酸の非アミロイド成分のタンパク質の前駆体である、140個のアミノ酸の非アミロイドのシナプスタンパク質である。
【0008】
アルツハイマー病は、認知症、記憶障害、精神錯乱及び見当識障害を特徴とする、脳の進行性の変性疾患である。この病状に寄与する細胞のメカニズムの中には、脳内の2つの型の原線維タンパク質の堆積物がある:すなわち、重合したタウタンパク質からなる細胞内の神経原線維、及び大部分がβ-アミロイドからなる豊富な細胞外の原線維である。Aβとしても知られるβ−アミロイドは、Aβ(Aβ40及びAβ42)という2つの主要な形態についての細胞毒性及びアミロイド−形成能を上昇させる、β−及びγ−セクレダーゼの切断部位でのアミロイド前駆体タンパク質(APP)のタンパク質分解の過程から発生する。このように、アミロイドの斑(plaque)形成形態へのAPPの加工を抑制することは、(その変異型、例えば、変異型A、B、C及びDを含む)BACE1を、本疾患を阻害し、または進行を止めるための臨床目標とする、前記疾患の形成及び進行に、非常に影響を及ぼしうる。類似した報告は、異常なプロセシング(processing)に向け直すために、プレセニリンが候補となる標的であることを示唆している。
【0009】
ハンチントン病は、不随意の“弾道の”動き、うつ病及び認知症であることを特徴とする致死の、遺伝的な、神経変性の障害である。その原因は、DNAにおける、過度に長い一連のC、A、G、C、A、G・・・C、A、Gのヌクレオチドからなる、単一の遺伝子中の変異であると証明されてきている。前記CAGの繰り返しは、遺伝子が生産するタンパク質をコードする、前記遺伝子の領域中にある。そのため、結果としてのハンチンチンタンパク質も“伸長”し、アミノ酸であるグルタミンで作られた過度に長い領域を含有し、“CAG”はそれをコードする。この変異がハンチントン病の原因として特定された後直ぐに、他の遺伝子における類似したCAGの繰り返しの伸長が見られ、多くの他の致死の、遺伝的な、神経変性の疾患の原因であると分かった。これらのいわゆる“ポリグルタミン”疾患のリストは、現在のところ少なくとも11超を含み、脊髄小脳失調の1型、2型及び3型、脊髄延髄の筋萎縮症(SBMAまたはケネディ疾患)並びに歯状核赤核・淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPIA)を含む。伸長したCAGの繰り返しを含有する特定の遺伝子は各疾患によって異なるが、それは、各疾患を原因とする、脳内の伸長したポリグルタミンタンパク質の生産物である。症状は、概して、10〜15年後に向かう死を伴う、早期の中年の成人に発生する。これらの致死性の疾患に対する効果的な治療は、現在のところ何ら存在しない。
【0010】
神経における異常タンパク質の生産を止めることは、ポリグルタミン疾患における治療法となりうることを示唆する、多くの証拠がある。これらの疾患の原因は、タンパク質の元々の機能の損失ではなく、変異タンパク質による新たな機能の獲得となることが知られている。ヒトの伸長した、脊髄小脳失調の1型(SCA1)に対する導入遺伝子を拒絶する(harboring)マウスは、若年成人期にひどい運動失調となる(Clark, H., et al., Journal of Neuroscience 17: 7385-7395 (1997))が、その対応するマウスの遺伝子がノックアウトされたマウスは、運動失調に陥らないか、または他の主要な異常を示さない(Matilla, A., et al., Journal of Neuroscience 18: 5508-5516 (1998))。異常なアタキシン1タンパク質は、生産されるが、細胞の核に入ることができないように遺伝学的に設計されている、SCA1に対するトランスジェニックマウスは、運動失調を発現しない(Klement, I., et al., Cell 95: 41-53 (1998))。最終的に、ハンチントン病についてのトランスジェニックマウスモデルが作られており、当該モデルにおいて、変異したヒトの導入遺伝子は、テトラサイクリンを投与することによって、人工的に“止めることができる(turned off)”方法で設計される(通常は、マウス及びヒトで、この構成物質の投与は前記疾患に何の効果も有しないであろう)。これらのマウスが症状を発現し始めた後、テトラサイクリンの長期投与によって異常タンパク質の生成物の生産を止めることは、前記マウスの挙動を改善することとなる。(Yamamoto, A., et al ., Cell 101: 57-66 (2000))。これは、異常なハンチンチンタンパク質のヒトでの発現を減少させることは、ハンチントン病が、新たに診断された患者で進行することを妨げうるだけでなく、すでにその症状に羅患している患者の生命の質を改善しうることを示唆している。
【0011】
様々なグループが最近、siRNAの効果を研究している。Caplen,et al.(Human Molecular Genetics, 11 (2): 175-184 (2002))は、異なるCAGの繰り返しを含有するヒトのアンドロゲン受容体遺伝子のmRNA転写産物の細胞発現の阻害能に対する様々な異なる2本鎖RNAを評価した。彼らの研究は、遺伝子特異的な阻害だけが、CAGの繰り返しに対するフランキング配列が2本鎖RNA中に存在していた場所で起こっていたことを見出した。彼らはまた、構成された2本鎖RNAが誘導されたカスパーゼ−3の活性を助けることができることも示すことができた。Xia,Haibin,et al.(Nature Biotechnology, 20: 1006-1010 (2002))は、緑色の蛍光タンパク質をコードするmRNAを標的とするsiRNAを発現する構成された組み換えアデノウィルスを用いた、注入されたポリグルタミン−蛍光タンパク質を発現する、設計された神経のPC12クローナル細胞株のポリグルタミン(CAG)発現の阻害を試験した。
【0012】
特定のタンパク質を生産するmRNAの標的と相補的な低分子干渉RNA設計及び使用は、特異的なmRNAの翻訳を妨げるために、分子生物学者によって用いられる最近のツールである。分子生物学者によって用いられる他のツールは、アルツハイマー病(WO01/16312A2を参照)及びパーキンソン病(WO99/50300A1及びWO01/60794A2を参照)用の治療標的に対して、リボザイムを用いたmRNA配列の切断を含む翻訳を干渉する。しかし、上記した特許は、いずれも、神経変性疾患の局所治療が可能な手法で、低分子干渉RNAベクターの、標的とされた脳の細胞への特異的に局在した運搬方法を開示していない。上記特許は、運搬デバイスの使用、または低分子干渉RNAベクターの脳への運搬もしくは導入の方法を何ら開示していない。例えば、上記特許は、頭蓋内の運搬デバイスによる、低分子干渉RNAベクターの脳への運搬または導入の方法について開示も示唆もしていない。
【0013】
更に、上述の先行技術は、脳の低分子干渉RNAベクターへ導入する技術を開示しておらず、先行技術は、低分子干渉RNAベクターは、脳への導入に関して、ニューロンに入り、所望の低分子干渉RNAを生産することができ、それから、神経変性障害の発症に含まれる少なくとも一のタンパク質の生産を抑えることができるかについても開示していない。先行技術は、リボザイムの直接的な全身の運搬を記載している。神経変性障害の治療に対するこのアプローチは、可能なものでも望ましいものでもない。第1に、干渉RNAは、リボザイムとは明らかに異なる。第2に、全身に運ばれた小さなRNA分子は、所望の標的に到達するのに十分な期間は、インビボでは生き残らないだろうし、血液−脳のバリアを横切ることもおそらくないだろう。更に、先行技術で採られたアプローチは、脳における効果的な量に達するためにこの方法で投与されねばならないであろう大量の低分子干渉RNAであるがゆえに非現実的であるかもしれない。血液−脳のバリアが一時的に開いた場合でさえ、血流を介して運ばれたオリゴヌクレオチドの大部分は、体中の他の器官、特に肝臓のシステムにより失われるかもしれない。
【0014】
米国特許第5,735,814及び6,042,579は、ハンチントン病の治療に対する、薬物導入の利用を開示するが、神経の興奮状態のレベルを変えることのできる薬剤に関連する、これらの特許で特異的に特定された前記薬物は、細胞に入り込み、細胞内でのタンパク質生産を変化させることを意図した薬剤を特異的に特定しない。
【発明の概要】
【0015】
本発明は、低分子干渉RNAをコードするDNAの形態で、低分子干渉RNAを直接的に運ぶことによって、ウィルスベクターを使用する脳の標的細胞へ、核酸の全身の運搬に関連する先行技術に存在する従来の問題を解決する。脳内注入の病変部位への低分子干渉RNAベクターの有向(Directed)運搬は、運搬に関する過去の障害を乗り越える。更に、ウィルスベクターの使用は、細胞の機構(machinery)が低分子干渉RNA自体の生産に向くようにすることによって、標的細胞への並びに有効な短期及び長期の低分子干渉RNAの薬剤の生産に対する、有効な導入を可能にするものである。最終的に、本発明は、活性のある低分子干渉RNAの薬剤を、原因タンパク質に対するmRNAのコーディング配列中の特異的部位にカスタマイズすることによって、特有の標的及び選択プロファイルをもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、(技術的に実践している者にとって公知の定量的RT−PCR法を用いた)抗アタキシン1のリボザイムを含有するプラスミド(図1の上のレーン)またはアタキシン1に対するsiRNAで形質転換されたHEK293H細胞より得られるアタキシン1のmRNA(図1の下のレーン)のアッセイを示す。
【図2】図2は、グリセルアルデヒド−3−ホスフェート デヒドロゲナーゼ(GAPDH)に対するmRNAを標的とするコントロールのsiRNAで形質転換されたHEK2 93H 細胞より得られるmRNAと比較した、抗アタキシン−1の低分子干渉RNA(下のレーン)で形質転換されたHEK293H細胞より得られるアタキシン−1のmRNAのアッセイ(技術的に実践している者にとって公知の同じ定量的RT−PCR法を用いた)を示す。
【図3】図3は、アデノ関連ウィルス発現ベクターであるpAAV−siRNAの構成を示す。
【図4】図4は、試験研究中のデバイス(ミネソタ州、ミネアポリスのメドトロニック社による。モデル8506)であって、頭蓋上に皮下移植可能であり、治療上の薬剤が脳に運ばれうる際に通る点検口を提供するデバイスを図示している。
【図5】図5は、試験研究中のデバイス(ミネソタ州、ミネアポリスのメドトロニック社による−モデル8506の概略図)であって、頭蓋上に皮下移植可能であり、治療上の薬剤が脳に運ばれうる際に通る点検口を提供するデバイスを図示している。
【図6】図6は、本願に記載された様々な神経変性疾患の関連性、及び目的の標的遺伝子の産物を対象にした、低分子干渉RNAのベクターを伴う治療についての配置を図示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の概要
本発明は、神経変性障害の治療に対して低分子干渉RNAを運ぶためのデバイス、システム、方法を提供する。
【0018】
第1の当該記載された治療の目的は、特異的に調整された低分子干渉RNAを、パーキンソン病の治療に対する治療上の薬剤として運ぶことである。パーキンソン病に対して特異的に調整された低分子干渉RNAは、α−シヌクレインタンパク質の量を減少させるために、神経細胞中で生産されたα−シヌクレインタンパク質に対するmRNAを標的とする。関連する実施形態では、本発明は、抗α−シヌクレインの低分子干渉RNAの運搬に対する黒質に特異的にアクセスするデバイスを提供する。
【0019】
当該記載された治療の第2の目的は、特異的に調整された低分子干渉RNAを、アルツハイマー病の治療に対する治療上の薬剤として運ぶことである。アルツハイマー病に対して特異的に調整された低分子干渉RNAは、神経細胞中で生産されたBACE1(その変異型、例えば、変異型A、B、C、及びDを含む)タンパク質の量を減少させるために、BACE1(その変異型、例えば、変異型A、B、C、及びDを含む)に対するmRNAを標的とし、これにより、β−アミロイドの生産を阻害する。関連する実施形態において、本発明は、マイネルト基底核及び抗BACE1の運搬に対する大脳皮質(その変異型、例えば、変異型A、B、C、及びDを含む)の低分子干渉RNAに特異的にアクセスするデバイスを提供する。
【0020】
当該記載された治療の第3の目的は、特異的に調整された低分子干渉RNAを、ハンチントン病の治療に対する治療上の薬剤として運ぶことである。ハンチントン病に対して特異的に調整された低分子干渉RNAは、ハンチンチンタンパク質に対するmRNAを標的とし、神経細胞中で生産されるハンチンチンタンパク質の量を減少させる。関連する実施形態において、本発明は、抗ハンチンチンの低分子干渉RNAの運搬に対して、尾状核及び被殻(線条体として総称して知られている)に特異的にアクセスするデバイスを提供する。本発明の異なる実施形態では、ハンチントン病の治療に対するsiRNA、またはこれらのsiRNAをコードするベクターは、配列番号:24または配列番号:25からなる群によってコードされた、少なくとも19個のコンティグヌクレオチドを含む第1の鎖を含む。
【0021】
当該記載された治療の第4の目的は、特異的に調整された低分子干渉RNAを、脊髄小脳失調1型(SCA1)の治療に対する治療上の薬剤として運ぶことである。脊髄小脳失調1型に対する特異的に調整された低分子干渉RNAは、アタキシン1タンパク質に対するmRNAを標的とし、神経細胞中で生産されるアタキシン1タンパク質の量を減少させる。関連する実施形態において、本発明は、抗アタキシン−1の低分子干渉RNAに対して、歯状核、エボリフォーム(eboliform)核、淡蒼核(globus nucleus)、及び小脳の室頂核(総称して、深部小脳核として知られている)の運搬に特異的にアクセスするデバイスを提供する。
【0022】
当該記載された治療の第5の目的は、特異的に調整された低分子干渉RNAを、マシャド・ジョセフの疾患としても知られている脊髄小脳失調3型(SCA3)の治療に対する治療上の薬剤として、運ぶことである。脊髄小脳失調3型に対する特異的に調整された低分子干渉RNAは、アタキシン3タンパク質に対するmRNAを標的とし、神経細胞中で生産されるアタキシン3タンパク質の量を減少させる。関連する実施形態において、本発明は、歯状核、エボリフォーム(eboliform)核、淡蒼核、及び小脳の室頂核(総称して、深部小脳核として知られている)、視床下部、並びに抗アタキシン−3−低分子干渉RNAの運搬に対する黒質に特異的にアクセスするデバイスを提供する。
【0023】
当該記載された治療の第6の目的は、歯状核赤核・淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)の治療に対する治療上の薬剤として、特異的に調整された低分子干渉RNAを運ぶことである。DRPLAに対する特異的に調整された低分子干渉RNAは、アトロフィリン−1タンパク質に対するmRNAを標的とし、神経細胞中で生産されるアトロフィリン−1タンパク質の量を減少させる。関連する実施形態において、本発明は、歯状核、エボリフォーム(eboliform)核、淡蒼核、及び小脳の室頂核(総称して、深部小脳核として知られている)、the 淡蒼球、並びに抗DRPLAの低分子干渉RNAの運搬に対する赤核に特異的にアクセスするデバイスを提供する。
【0024】
本発明は、短期間で、または患者に対する延長した治療期間を超えて、脳中の標的部位に、低分子干渉RNA(低分子干渉RNAベクター)をコードするDNAを含有する低分子干渉RNAまたはベクターの標的となる運搬を可能にする神経変性疾患に対する低分子干渉RNAベクター治療に対して運搬システムを提供する。
【0025】
本発明の主要な実施形態では、低分子干渉RNAのベクターは、低分子干渉RNAのベクターが、神経によって取り込まれ、標的となった細胞の核に輸送される、脳の標的部位中に注入される。低分子干渉RNAのベクターは、その後、宿主の細胞機構によりRNAへと転写され、標的となった神経変性タンパク質の生産を妨げる低分子干渉RNAを生産する。
【0026】
本発明はまた、治療上の低分子干渉RNAのベクターを脳の選択された領域へと運ぶための、脳神経外科のデバイスを用いた方法も提供する。特に、本発明は、特異の、繰り返しの、または慢性の、低分子干渉RNAのベクターの脳への運搬に対して、外科的に移植されたカテーテルを使用する方法を提供する。病的細胞へと導入された低分子干渉RNAのベクターは、細胞による要求された低分子干渉RNAの転写産物に対する必要なDNA配列を有し、プロモーター配列、低分子干渉RNA配列、並びに治療上の低分子干渉RNAの規定された末端が生産されるようにする任意の隣接配列、及び任意のポリアデニル化シグナル配列を含む。
【0027】
好ましい実施形態の詳細な説明
本発明は、先行技術における2つの問題を同時に解決する:(1)病原特性を有するタンパク質の神経内産物の原因となる神経変性疾患の治療の仕方についての問題、及び(2)治療上の低分子干渉RNAの、羅患した神経への運搬という問題。
【0028】
本発明をより良く理解するために、用語のリスト及びそれらの用語の理解の範囲が下記に与えられる。
【0029】
専門用語
“α−シヌクレイン、BACE1(その変異型、例えば、変異型A、B、C及びDを含む)、ハンチンチン、アタキシン−1、アタキシン−3、及び/またはアトロフィン−1タンパク質”を意味し、タンパク質またはその変異タンパク質誘導体は、それぞれ、α−シヌクレイン(パーキンソン病)、及びβ部位APP−分解酵素(BACE1(その変異型、例えば、変異型A、B、C及びDを含む))(アルツハイマー病)、ハンチンチン(ハンチントンの疾患)、及びアタキシン−1(脊髄小脳失調1型)、アタキシン−3(脊髄小脳失調3型またはマシャド・ジョセフの疾患)、及び/または歯状核赤核・淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPIA)遺伝子及び/またはヒトのゲノムDNAによって、発現される、及び/またはコードされるアミノ酸配列を含む。
【0030】
本願で用いられているように、“細胞”は通常の生物学的意味で用いられ、全ての多細胞生物を意味するわけではない。前記細胞は、ヒトであってもよいが好ましくは、例えば、ヒト、ウシ、ヒツジ、類人猿、サル、ブタ、イヌ、ネコ等の哺乳類の起源の生物に存在しうる。しかし、低分子干渉RNAを生産する幾つかの段階は、原核細胞(例えば、細菌性細胞)または真核細胞(例えば、哺乳類の細胞)の使用を要求してもよく、その結果、“細胞”という用語にも含まれる。
【0031】
“相補性”が意味するところは、一以上の核酸(DNAまたはRNA)からなる分子が、伝統的なワトソン−クリックの対合(pairing)または他の非伝統的な型のいずれかによる、一以上の核酸からなる、別の分子と水素結合を形成しうるということである。
【0032】
α−シヌクレイン、BACE1(その変異型、例えば、変異型A、B、C及びDを含む)、ハンチンチン、アタキシン−1、アタキシン−3、及び/またはアトロフィン−1に“相当な(equivalent)”DNAが意味するのは、α−シヌクレイン、BACE1(その変異型、例えば、変異型A、B、C及びDを含む)、ハンチンチン、アタキシン−1、アタキシン−3及び/またはアトロフィン−1タンパク質をコードするか、あるいは、ヒト、齧歯類、霊長類、ウサギ、ブタ及び微生物を含む様々な生物における、α−シミクライン(symiclein)、BACE1(その変異型、例えば、変異型A、B、C及びDを含む)、ハンチンチン、アタキシン−1、アタキシン−3及び/またはアトロフィリン−1のような類似する機能を伴うタンパク質をコードする、DNAに対する(部分的または完全な)ホモログを有する、自然発生したDNA分子を含むものである。相当するDNA配列も、5’−非翻訳領域、3'−非翻訳領域、イントロン、イントロン-エキソン接合、低分子干渉RNAの標的部位などのような領域を含み、アデノ−関連ウィルス(AAV)のような感染性ウィルスのDNAに任意に導入される。
【0033】
“機能的相当(functional equivalent)”という用語は、参照配列またはタンパク質と機能的に類似するいかなる誘導体のことをいう。特に、“機能的相当”という用語は、ヌクレオチドの塩基が、生物学的機能に関する顕著な悪影響なしに、付加され、欠失され、または置換される誘導体を含む。“遺伝子”が意味するところは、RNAの生産を制御するDNAの領域である。機能的な低分子干渉RNAを生産することに関連して、この定義は、低分子干渉RNAをコードするDNA配列、非コード調節配列及びいかなる内在イントロンを包含し、必要なDNA配列情報を含む。本定義は、タンパク質をコードする付加遺伝子が、低分子干渉RNAをコードする遺伝子に関連して、またはこれとともに機能しうるという可能性を除外しない。
【0034】
“ベクター”という用語は、従来より一般に知られており、プラスミドDNA、ファージDNA、ウィルスDNA等を定義しており、本発明のDNAが挿入され、RNAが転写されうるDNAビヒクルとしての機能を果たしうる。“ベクター”という用語は、所望の核酸を運ぶために用いられる、これらの核酸及び/またはウィルスを基礎とする技術のいずれも意味する。多数のベクターの型が存在し、従来より良く知られている。
【0035】
“発現”という用語は、遺伝子がRNA(転写産物)に転写される過程を定義する;RNAはさらに成熟した低分子干渉RNAへとプロセシングされうる。
【0036】
“発現ベクター”という専門用語は、上述のように、ベクターまたはビヒクルを定義づけるが、宿主への形質転換に続く挿入配列の発現を可能にするように設計される。クローニングされた遺伝子(挿入配列)は、プロモーター配列のような調節エレメント配列の調節下にたいていの場合置かれる。このような調節配列下でのクローニングされた遺伝子の配置は、調節エレメントまたは配列と使用可能なように結合するとよく言われる。
【0037】
“プロモーター”とは、直接的にまたは間接的に細胞中でRNAポリメラーゼと結合可能で、下流(3’直接)のコード配列の転写を開始可能なDNA調節領域のことをいう。本発明の目的として、プロモーターは、転写開始部位近傍の3'末端で結合し、上流(5’直接)を伸長させて、バックグラウンドの上で検出可能なレベルで転写を開始するのに必要な、塩基またはエレメントの最小数を含む。プロモーターが転写開始部位(便宜上、S1ヌクレアーゼでマッピングすることにより定義される)であると見出されうるだけでなく、RNAポリメラーゼの結合に関与するタンパク質結合ドメイン(コンセンサス配列)であるとも見出されうる。真核プロモーターは、常に、とまではいえないが、よく、“TATA”ボックス及び“CCAT”ボックスを含有する。原核プロモーターは、−10及び−35のコンセンサス配列を含有し、転写を開始する働きをする。
【0038】
“ホモロジー”の意味するところは、2以上の核酸分子のヌクレオチド配列が、部分的または完全に同一であるということである。
【0039】
“高度に保存された配列領域”の意味するところは、標的遺伝子中の一以上の領域のヌクレオチド配列が、一の世代から他の世代まで、または一の生物学的システムから他の生物学的システムまで、それほど多様ではないということである。
【0040】
“阻害する”または“阻害の”という用語の意味するところは、標的遺伝子の活性または、標的遺伝子をコードするmRNAもしくは同等のRNAのレベルが、下方に低下し、これは、与えられる低分子干渉RNAを欠くときに見られる。好ましくは、低分子干渉RNAを欠くときに、阻害は、少なくとも10%未満、25%未満、50%未満、または75%未満、85%未満、または95%未満である。
【0041】
“阻害された発現”の意味するところは、α−シヌクレイン、BACE1(その変異型、例えば、変異型A、B、C及びDを含む)、ハンチンチン、アタキシン−1、アタキシン−3及び/またはアトロフィリン−1のmRNAレベルの減少、並びに前記各タンパク質のレベルにおけるかかる減少が、ある程度、前記疾患または状態の症状を緩和しうるということである。
【0042】
“RNA”とは、リボ核酸、すなわち、ホスフェート−リボース(砂糖)骨格を介して結合するリボヌクレオチドからなる分子を意味する。“リボヌクレオチド”とは、グアニン、シトシン、ウラシルもしくはアデニン、またはβ−D−リボ−フラノース基の2’位に水酸基を有する何らかのヌクレオチドを意味する。従来からよく知られていたように、遺伝子のコードは、DNA配列中の塩基としてチミジンを、及びRNA中ではウラシルを用いる。本分野に熟達した者であれば、DNA配列をRNAへと変換し、またはその逆の変換をするために、核酸配列中でチミジンをウラシルへ置換する方法を知っている。
【0043】
“患者”とは、移植された細胞または細胞それ自体の臓器提供者または臓器被提供者である生物を意味する。“患者”とは、本発明の核酸分子が投与可能な生物をも意味する。好ましくは、患者は、哺乳類または哺乳類細胞であり、例えば、ヒト、ウシ、ヒツジ、類人猿、サル、ブタ、イヌ、ネコ等、または移植のために用いられる、これらの動物の細胞である。より好ましくは、患者とは、ヒトまたはヒト細胞である。
【0044】
“シヌクレイン”という用語は、α−シヌクレイン(特に、ヒトまたはマウス)またはβ−シヌクレイン(特に、ヒトまたはマウス)を意味する。ヒトのα−シヌクレインをコードする全長のヌクレオチド配列は、Accession No AF163864(配列番号:7)の下で利用可能である。ヒトのα−シヌクレイン配列の2つの変異型は、Accession No NM000345(配列番号:14)及びAccession No NM_007308(配列番号:23)の下で利用可能である。マウスのα−シヌクレインは、Accession No.AF163865(配列番号:10)の下で利用可能である。
【0045】
“BACE1”という用語は、β−部位のアミロイド前駆体タンパク質分解酵素1型(特に、ヒトまたはマウス)を意味しうる。BACE1の幾つかの変異型が配列されており、変異型A、B、C及びDを含む。ある科学文献によれば、BACE1は、ASP2及びメマプシン(Memapsin)2としても知られている。ヒトBACE1及びそれに関連する変異型をコードする全長のヌクレオチド配列は、Accession No.NM__138971(配列番号:20)、Accession No.NM_138972(配列番号:19)、Accession No.NM_138973(配列番号:21)、及びAccession No.NM_012104(配列番号:18)の下で利用可能である。マウスのホモログに対する配列は、accession number NM_011792(配列番号:22)の下で利用可能である。
【0046】
“ハンチンチン”という用語は、ハンチントンの疾患遺伝子(IT−15)(特に、ヒトまたはマウス)によってコードされるタンパク質の産物を意味しうる。ヒトIT−15をコードする全長のヌクレオチド配列は、Accession No AH003045(配列番号:9)の下で利用可能である。マウスの配列は、Accession No.U24233(配列番号:12)の下で利用可能である。
【0047】
“アタキシン−1”という用語は、脊髄小脳失調1型遺伝子(特に、ヒトまたはマウス)によってコードされるタンパク質の産物を意味しうる。ヒトSCA1をコードする全長のヌクレオチド配列は、Accession No NM_000332(配列番号:15)の下で利用可能である。マウスのスカル(scal)は、Accession No.NM_009124(配列番号:13)の下で利用可能である。
【0048】
“アタキシン−3”という用語は、脊髄小脳失調3型遺伝子(特に、ヒトまたはマウス)によってコードされたタンパク質の産物を意味しうる。ヒトSCA3をコードする全長のヌクレオチド配列は、Accession No NM_004993(スプライス変異1)(配列番号:16)、及びNM_030660(スプライス変異2)(配列番号:17)の下で利用可能である。(マウスのホモログに対する配列は、未だ利用できない)。
【0049】
“アトロフィリン−1”という用語は、歯状核赤核・淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)遺伝子(特に、ヒトまたはマウス)によってコードされるタンパク質の産物を意味しうる。ヒトDRPLAをコードする全長のヌクレオチド配列は、Accession No XM_032588(配列番号:8)の下で利用可能である。マウスの配列は、Accession No.XM_132846(配列番号:11)の下で利用可能である。
【0050】
“修飾(modification)”という用語は、参照配列またはタンパク質に実質的に類似する誘導体を含む。
【0051】
本願で用いられているように、“核酸分子”とは、ヌクレオチドを有する分子を意味する。核酸は、単鎖、2本鎖、または多本鎖であり得、修飾もしくは非修飾のヌクレオチド、または非ヌクレオチドあるいは様々な混合物及びそれらの組み合わせを含みうる。タンパク質の産物をコードすることに、通常以上の意味を必ずしも有しないとしても、本発明による核酸分子の例は低分子干渉RNAをコードする遺伝子である。
【0052】
“低分子干渉RNA”とは、特異的な遺伝子の標的への基質結合領域における相補性を有し、及び標的RNAを切断する宿主細胞において酵素を特異的に誘導するように作用する核酸分子を意味する。すなわち、RNA標的に対する配列及びそのホモロジーの特異性による低分子干渉RNAは、RNA鎖の切断の原因となり得、標的RNA分子はもはや転写され得ないため、その結果、標的RNA分子を不活化する原因となり得る。これらの相補領域は、低分子干渉RNAの標的RNAへの十分なハイブリダイゼーションが可能とし、そのため、切断することとなる。100%の相補性が生物学的活性に必要となることが多く、そのため好ましいものといえるが、90%程度の相補性は、本発明において有益となり得る。本願において記載されている特異的な低分子干渉RNAは、制限することなど何ら意味しておらず、本分野に熟達した者であれば、本発明の低分子干渉RNAにおいて重要なもの全てが、一以上の標的核酸領域に相補的な、特異的基質結合部位を有することを認識するであろう。
【0053】
低分子干渉RNAは、標的RNA(一般にはメッセンジャーRNA)の一部(すなわち、これと塩基対になり得る)と相補的な、2本鎖RNAの薬剤である。一般には、このような相補性は100%であるが、所望であれば、それ未満、例えば91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%も有り得る。例えば、21塩基のうち19塩基は、塩基対になり得る。幾つかの例では、様々なアリル変異型の中での選択が望ましいが、他のアリル配列から標的配列を効果的に区別するために、標的遺伝子に100%相補的であることが要求される。アリル標的の中で選択する場合、長さの選択が上記割合の相補性に含まれる他の因子であり、アリルの相違の中での異なる能力であるため、長さの選択も重要な因子である。
【0054】
低分子干渉RNA配列は、相補的な塩基対の相互作用を通じて、低分子干渉RNA及び標的RNAを共にもたらすのに十分な長さを有する必要がある。本発明の低分子干渉RNAは、様々な長さを有しうる。低分子干渉RNAの長さは、好ましくは、10ヌクレオチドより長いか同等であり、標的RNAと安定的に相互作用するのに十分な長さを有し;特異的に15〜30ヌクレオチド;より特異的には、15及び30ヌクレオチドの間のあらゆる整数、例えば、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、及び30である。“十分な長さ”とは、予期された状態の下での目的の機能をもたらすのに十分な長さを有する15ヌクレオチドより長いか同等の長さであるオリゴヌクレオチドを意味する。“安定的に相互作用する”とは、低分子干渉RNAの、標的核酸との相互作用(例えば、生理的状態の下での標的において、相補的なヌクレオチドと水素結合を形成することによって)を意味する。
【0055】
“含むこと(comprising)”とは、含むこと(including)を意味するが、特に制限されることなく、“含むこと”という文言を理解しうるあらゆるものを意味する。そのため、“含むこと”という用語の使用は、記載された要素は、要求されたかまたは必須であるが、他の要素は任意的であってもよいし、存在しなくてもよいということを示す。
【0056】
“からなる(consisting of)”とは、含む(including)を意味し、特に制限されることはなく、“からなる”という表現を理解しうるあらゆるものを意味する。そのため、“からなる”という表現は、記載された要素が要求されたかまたは必須であり、他の要素は何ら存在しなくてもよいということを示す。
【0057】
“から実質的になる(consisting essentially of)”とは、かかる表現の後に記載されたあらゆる要素、及び特に制限されることはないが、記載された要素に対する開示に特異的な活性または作用を阻害しないか、または寄与しない他の要素を含むことを意味する。そのため、“から実質的になる(consisting essentially of)”という表現は、記載された要素が要求されたかまたは必須であるが、他の要素は任意であってもよいし、前記記載された要素の活性または作用に影響を及ぼすか否かによって存在しなくてもよいということを示す。
【0058】
本発明は、一以上の移植された実質内カテーテルを通じて運ばれた、疾患の原因となるかまたは疾患をひどくするタンパク質の発現をサイレンシングするように設計された低分子干渉RNAをコードするベクターの頭蓋内運搬による、ポリグルタミン疾患(例えば、ハンチントン病及び脊髄小脳失調1型)、パーキンソン病、及びアルツハイマー病を治療するための手段及びツールを提供する。特に、本発明は、(1)ハンチンチンタンパク質の発現をサイレンシングするように設計された低分子干渉RNAをコードするベクターの頭蓋内運搬による、ハンチントン病を治療するための方法;(2)アタキシン1タンパク質の発現をサイレンシングするように設計された低分子干渉RNAをコードするベクターの頭蓋内運搬による、脊髄小脳失調1型を治療する方法;(3)α−シヌクレインタンパク質の発現をサイレンシングするように設計された低分子干渉RNAをコードするベクターの頭蓋内運搬による、パーキンソン病を治療するための方法、及び(4)β−アミロイド分解酵素1(BACE1)の発現をサイレンシングするように設計された低分子干渉RNAをコードするベクターの頭蓋内運搬による、アルツハイマー病を治療するための方法である。
【0059】
上記で示したように、本願に記載される低分子干渉RNA(またはsiRNA)は、長さが15〜30ヌクレオチドの、2本鎖RNAの断片である。それは、RNA干渉として知られている細胞反応を誘発するために用いられる。RNA干渉では、2本鎖RNAは、Dicerとして知られている細胞内酵素によって短くなり、siRNAの2本鎖を形成する。siRNAの2本鎖は、結果として、siRNA配列と相同性のある(または相補的である)あらゆるmRNA分子を標的とするために活性化される別の細胞内酵素複合体と結合する。活性化酵素複合体は、標的mRNAを切断し、それを破壊し、及びそれが、その対応するタンパク質産物の合成を進めるために用いられるのを防ぐ。未だ十分には理解されていない手段によって、RNA干渉過程は自己増幅に見える。最近の証拠は、ウィルス感染に対する防御(多くのウィルスが外からのRNAを細胞へと導入する)だけでなく、非常に基本的なレベルでの遺伝子の調節もまた、RNA干渉は古代からの先天的なメカニズムであると示唆している。RNA干渉は、植物、虫、下等動物及び哺乳類で生じることが分かっており、他のジーンサイレンシング技術、例えばアンチセンスまたはリボザイムよりも劇的に効果的であることも分かっている。siRNAは、バイオテクノロジーとして用いられているが、細胞への導入(または細胞が、)侵入する2本鎖のRNAウィルスに由来するDicer酵素によって生産されうるものに類似した、短くて2本鎖のRNA分子(を生産する原因)を含む。人工的に誘発されたRNA干渉過程は、その後、その点から継続する。
【0060】
患者の脳へ低分子干渉RNAを運搬するために、好ましい方法としては、siRNA分子自体よりもむしろ、siRNAをコードするDNAをinto the脳の細胞へと導入するべきであろう。特定の治療上のsiRNAをコードするDNA配列は、(a)(公的なヒトゲノムのデータベースで利用可能である、)小さくてアクセス可能な標的mRNAの部分に対応する配列、及び(b)DNAが細胞によって転写される場合に、対応するRNA配列の産物をもたらす、DNAの特定の仕方に対する周知の科学的なルールを知ることを特定可能である。DNA配列は、一旦特定されると、実験の供給者から注文された、合成分子から実験室で構成され、DNAの細胞への運搬のための、幾つかの代替的な“ベクター”の一つへと、標準的な分子生物学的方法を用いて挿入されうる。一旦、患者の脳の神経へと運ばれると、それらの神経はそれ自体、挿入されたDNAをRNAに転写することによって、治療上のsiRNAとなるRNAを生産するであろう。その結果として、細胞それ自体が、標的遺伝子をサイレンシングするであろうsiRNAを生産するであろう。その結果は、細胞によって生産された標的タンパク質の量の減少となるであろう。
【0061】
低分子干渉RNA及び低分子干渉RNAベクター
本発明に従って、病的細胞中で生産された特異的なmRNAに対する低分子干渉RNAは、神経中の前記疾患に関連するタンパク質の生産を妨げる。低分子干渉RNAを標的細胞へ運ぶように設計された、特異的に調整されたベクターの使用は、本発明に従う。設計された低分子干渉RNAの成功は、神経変性疾患を治療するための、脳の標的細胞への成功したそれらの運搬に基礎を置くものである。
【0062】
低分子干渉RNAは、ヒトの細胞において、特異的なmRNA分子を標的とすることができることを示している。低分子干渉RNAのベクターは、標的RNAの切断及びその結果の原因となり、結果としてコードされたタンパク質の生産を阻害する、ヒトの細胞を形質転換し、低分子干渉RNAを生産するために構成されうる。
【0063】
本発明の低分子干渉RNAのベクターは、神経病原性のタンパク質自体の生産を抑制するか、または前記生産物中に含まれるタンパク質の生産もしくは神経病原性のタンパク質のプロセシングを抑制することによって、病原性のタンパク質の生産を妨げうる。治療上の薬剤の患者への繰り返しの投与は、患者の生命の質を改善するのに十分なほど非常に多くの神経の変化を達成するように要求されうる。しかし、個人のニューロン内では、前記変化は、治療上の利点をもたらすのに十分なほど長年に亘っている。神経変性障害、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病または脊髄小脳失調1型に羅患している多くの患者の絶望的な状況は、治療に由来する利点が、治療、運搬及び投与の危険性を超えるだろうという強い見込みを提供する。神経病原性タンパク質の生産における減少を、他の治療上の薬剤及び投与の手段(route)によって達成できうるが、直接的なインビボでの神経のトランスフェクションを含む、成功する治療の発達は、低分子干渉RNAのベクターの、標的細胞への運搬に基づく最良のアプローチをもたらしうる。外からのDNAの脳中の神経への運搬に対して好ましいベクターは、アデノ関連ウィルス(AAV)、例えば、組み換えアデノ関連ウィルスの血清型2または組み換えアデノ関連ウィルスの血清型5である。代替的に、他のウィルスベクター、例えば単純ヘルペスウィルスは、外からのDNAを中央の神経システムの神経へと運搬するのに用いられうる。非ウィルスベクター、例えばプラスミドDNAは、単体で運ばれるか、またはリポソーマル化合物もしくはポリエチレンアミンと複合化され、外からのDNAを脳中の神経へと運ぶために用いられうるということも可能である。
【0064】
本願で図示されている抗アタキシン−1の低分子干渉RNAのみならず、神経変性障害を治療するための他の低分子干渉RNAもまた、まさに本発明の実施形態の幾つかの例であるということを認識しておくことが重要である。動物を伴う脳神経外科的方法を用いた実験は、神経科学に熟練した者には知られているが、候補となる低分子干渉RNAを特定するために用いられうる。これらの経験的な方法によって特定される、標的となる切断部位及び低分子干渉RNAは、本(subject)神経変性疾患を伴う患者に投与された場合、
最も優れた治療上の効果をもたらしうるものとなるであろう。
【0065】
本発明の核分子に関連して、現実のタンパク質のコーディング配列中または5’非翻訳領域もしくは3’非翻訳領域中のいずれかで、低分子干渉RNAは標的タンパク質の産物をコードするmRNA配列中の相補的な配列にとっての標的となる。ハイブリダイゼーション後、宿主の酵素はmRNA配列の切断ができるようになる。完全な、または非常に高度の相補性が、低分子干渉RNAが効果的となるのに必要となる。パーセントの相補性は、第2の核酸配列(例えば、50%、60%、70%、80%、90%、及び100%相補的である、10のうちの5、6、7、8、9、10)と水素結合(例えば、ワトソン−クリックの塩基対)を形成できる核酸分子中のコンティグ残基の割合を示す。“完全に相補的な”とは、核酸配列の全てのコンティグ残基が、第2の核酸配列中の同数のコンティグ残基と水素結合するだろうということを意味する。しかし、siRNA配列内での、一塩基のミスマッチ(single mismatches)または塩基の置換は、低分子干渉RNAのジーンサイレンシング活性を実質的に減少しうるということに注意すべきである。
【0066】
α−シヌクレイン、BACE1(その変異型、例えば、変異型A、B、C、及びDを含む)、ハンチンチン、アタキシン−1、アタキシン−3及び/またはアトロフィリン−1のRNAにおける特定の部位を標的とする低分子干渉RNAは、細胞または組織における、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、脊髄小脳1、脊髄小脳失調症3型、及び/または歯状核赤核・淡蒼球ルイ体萎縮症を治療するための新規な治療上のアプローチを示している。
【0067】
本発明の好ましい実施形態では、低分子干渉RNAは長さが15〜30ヌクレオチドである。特定の実施形態では、核酸分子は、長さが15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30ヌクレオチドである。好ましい実施形態では、siRNA配列の長さが19〜30塩基対の間であり得、より好ましくは、21〜25塩基対の間であり得、さらに好ましくは、21〜23塩基対の間であり得る。
【0068】
好ましい実施形態では、本発明は、所望の標的のRNAに対して高度の特異性を示す、薬剤を阻害する核酸ベースの遺伝子の部類を生産するための方法を提供する。例えば、好ましくは、疾患または状態の特異的な治療に本発明の一または幾つかの核酸分子を与えられるように、低分子干渉RNAが、α−シヌクレイン、BACE1(その変異型、例えば、変異型A、B、C、及びDを含む)、ハンチンチン、アタキシン−1、アタキシン−3及び/またはアトロフィリン−1のRNAをコードする標的RNAの高度に保存された配列領域にとっての標的となる。更に、一般には、一対のアデニン塩基(AA)で始まる干渉RNAの配列が標的配列中の領域を特定することによって選択される(実施例を参照せよ)。SiRNAsは、適当な転写酵素または発現ベクターを用いて、インビトロでまたはインビボで構成されうる。
【0069】
SiRNAは、DNAオリゴヌクレオチドを用いて、インビトロで構成されうる。これらのオリゴヌクレオチドは、サイレンサーsiRNA(Ambionの合成キット1620)に含まれるT7プロモータープライマーの5’末端に相補的な8塩基の配列を含むように構成されうる。各遺伝子に特異的なオリゴヌクレオチドは、供給されるT7プロモータープライマーでアニーリングされ、クレノー(Klenow)断片遺伝子を伴う5’突出末端の末端平滑化反応(fill-in反応)は、RNAへの転写のための全長DNAのテンプレートを評価する。2つのインビトロで転写したRNA(一方は他方に対するアンチセンス)は、インビトロでの転写反応によって生じ、その後、互いに2本鎖RNAを形成するようにハイグリダイズする。2本鎖RNA産物は、(DNAの転写テンプレートを除去するための)DNase及び(2本鎖RNAの末端を平滑化する(polish)ための)RNase、並びに細胞中に運ばれて試験されうるsiRNAを提供するために精製されたカラムで治療される。
【0070】
哺乳類の細胞内のsiRNAを発現するsiRNAベクターの構築は、概して、siRNAの構造を模倣する短いヘアピンRNAの発現を促すために、RNAポリメラーゼIIIプロモーターを用いる。このヘアピンをコードする挿入物は、2つの反転した繰り返しを短いスペーサー配列によって分離させるように設計される。一の反転した繰り返しは、siRNAが標的とされるmRNAに相補的である。3’末端に付加されるチミジンの鎖は、ポリメラーゼIII転写終結部位としての役割を果たす。一旦ベクターが細胞内に入ると、ベクターは構造的にヘアピンRNAを発現する。ヘアピンRNAは、標的遺伝子の発現のサイレンシングを誘導するsiRNAへとプロセシングを受け、これをRNA干渉(RNAi)と呼ぶ。
【0071】
これまで記載されてきたsiRNA発現のほとんどにおいて、3つの異なる RNAポリメラーゼIII(ポリメラーゼIII)プロモーターのうちの1つは、小さなヘアピンsiRNA(1−5)の発現を促すために用いられる。これらのプロモーターは、十分に特徴付けられたヒト及びマウスのU6プロモーター並びにヒトのHIプロモーターを含む。RNAポリメラーゼIIIは、哺乳類の細胞中の比較的大量の小さなRNAを発現し、3〜6のウリジンの鎖を組み入れることに関する転写を終結させるという理由から、siRNAの発現を促すために選択された。
【0072】
構成された核酸分子は、要求される通りに、特異的な組織または細胞の標的に外部から運ばれうる。代替的に、核酸分子(例えば、低分子干渉RNA)は、特異的な細胞に運ばれる、DNAプラスミド、DNAウィルスベクター、及び/またはRNAレトロウィルスベクターより発現されうる。
【0073】
標的とされた細胞または組織に運ばれる、運ばれた小さな核のRNA配列は、α−シヌクレイン、BACE1(その変異型、例えば、変異型A、B、C及びDを含む)、ハンチンチン、アタキシン−1、アタキシン−3及び/または アトロフィリン−1の発現(例えば、翻訳のインヒビター)の核酸ベースのインヒビターであり、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、脊髄小脳失調1型、脊髄小脳失調3型、及びDRPLA並びにα−シヌクレイン、BACE1(その変異型、例えば、変異型A、B、C及びDを含む)、ハンチンチン、アタキシン−1、アタキシン−3及び/またはアトロフィリン−1のレベルに関連した細胞または組織中の他のいかなる状態、並びにα−シヌクレイン、β−アミロイド、ハンチンチン、アタキシン−1、アタキシン−3またはアトロフィリン−1の細胞または組織中のレベルに関連する、他のいかなる疾患または状態を含む神経変性疾患の予防にも有益である。
【0074】
本発明の核酸ベースのインヒビターは、直接的に付加されるか、あるいは陽イオン性脂質と複合化可能であるか、リポソーム内でパッケージング可能であるか、ウィルスベクター内でパッケージング可能であるか、または、そうでなければ標的の細胞または組織へ運搬可能である。核酸または核酸複合体は、生体外(ex vivo)で、または注入、導入ポンプもしくはステントを通じてのインビボで、生体高分子中への取り込みがあってもなくても、関連性のある組織に局所的に投与されることができる。好ましい実施形態では、核酸インヒビターは、十分な長さであり、及び/または配列番号7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22または23で特定される相補的な基質配列と安定的に相互作用する配列を含む。このような低分子干渉RNAの例も、アタキシン1に関連する配列番号に対応して、配列番号1及び2、3及び4、並びに5及び6で示される。
【0075】
別の態様では、本発明は、本発明の一以上の核酸分子及び/または発現ベクターを含有する哺乳類の細胞を提供する。前記一以上の核酸分子は、同一のまたは異なる部位に対する、独立した標的となりうる。
【0076】
本発明の別の態様では、標的RNA分子と相互作用し、及びα−シヌクレイン、BACE1(その変異型、例えば、変異型A、B、C及びDを含む)、ハンチンチン、アタキシン−1、アタキシン−3及び/またはアトロフィリン−1のRNA活性を阻害する、低分子干渉RNA分子が、DNAまたはRNAのベクターへと挿入された転写ユニットより発現される。組み換えベクターは、好ましくは、DNAプラスミドまたはウィルスベクターである。ウィルスベクターより発現される低分子干渉RNAは、特に制限されることなく、アデノ関連ウィルス、レトロウィルス、またはアデノウィルスのベクター配列に基づいて構成されうる。好ましくは、低分子干渉RNAを発現できる組み換えベクターは、上述のように運ばれ、及び標的細胞中で生き残る。代替的に、低分子干渉RNAの一時的な発現をもたらすウィルスベクターが使用されてもよい。このようなベクターは、必要な程度相当を反復して投与される。一旦発現すると、低分子干渉RNAは、標的RNAと結合し、並びに宿主の機構(machinery)の利用を通じて、その発現及び結果としてその機能を阻害する。ベクターを発現する低分子干渉RNA、または低分子干渉RNA自体の運搬は、頭蓋内のアクセスデバイスの利用による。
【0077】
本発明の核酸分子は、独立して、または他の薬物と組み合わせて、もしくは他の薬物と共同で、上記で論じられた疾患または状態を治療するために用いることができる。例えば、α−シヌクレイン(パーキンソンの疾患)、及びβ−部位のAPP−分解酵素(アルツハイマーの疾患)、ハンチンチン(ハンチントンの疾患)、及びアタキシン1(脊髄小脳失調)を関連する疾患または状態を治療するために、本分野に熟達した者にとってはまきらかなように、独立して、またはその治療に適合する状態の下での一以上の薬物と組み合わせて、患者は治療され得、または他の適当な細胞が治療され得る。
【0078】
更なる実施形態では、上記で論じられた状態または疾患を治療するために、他の公知の治療と組み合わせて、望ましい低分子干渉RNAが用いられうる。
【0079】
別の好ましい実施形態では、本発明は、核酸ベースのインヒビター(例えば、低分子干渉RNA)、並びにパーキンソン病/アルツハイマー病、ハンチントン病、脊髄小脳失調1型、脊髄小脳失調3型、及び歯状核赤核・淡蒼球ルイ体萎縮症の進行及び/または維持に含まれるタンパク質をコードするRNAの発現を下方制御するか阻害するための使用方法(例えば、α−シヌクレイン、BACE1(その変異型、例えば、変異型A、B、C及びDを含む)、ハンチンチン、アタキシン−1、アタキシン−3及び/またはアトロフィリン−1)を提供する。
本発明は、公知の真核プロモーターに由来する細胞内で発現されうる核酸分子も提供する(例えば、Izant及びWeintraub, 1985, Science, 229, 345; McGarry及びLindquist, 1986, Proc. Natl. Acad. Sci., USA 83, 399,− Scanlon et al., 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88, 10591-5; Kashani-Sabet et al., 1992、Antisense Res. Dev., 2, 3-15; Dropulic et al., 1992, J Virol., 66, 1432- 41; Weerasinghe et al., 1991, J Virol., 65, 5531-4; Ojwang et al., 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89, 10802-6; Chen et al., 1992, Nucleic Acids Res., 20, 4581-9; Sarver et al., 1990 Science, 247, 1222-1225; Thompson et al., 1995, Nucleic Acids Res., 23, 2259; Good et al., 1997, Gene Therapy, 4, 45;これらの引用の全てが、全体的に参照によってここで本願に組み入れられる)。本分野に熟達した者であれば、いかなる核酸も、適当なDNA/RNAのベクターから、真核細胞中で発現されうるということを認識する。このような核酸の活性は、リボザイムによる初期の転写産物からの放出によって増大しうる(Draper et al., PCT WO 93/23569、及びSullivan et al., PCT WO 94/02595; Ohkawa et al., 1992, Nucleic Acids Symp. Ser., 27, 15-6; Taira et al., 1991, Nucleic Acids Res., 19, 5125-30; Ventura et al., 1993, Nucleic Acids Res., 21, 3249-55; Chowrira et al., 1994, J Biol. Chem., 269, 25856;これらの引用の全てが、全体的に参照によってここで本願に組み入れられる)。
【0080】
本発明の別の態様では、本発明のRNA分子は、好ましくは、DNAまたはRNAのベクターへと挿入された転写ユニット(例えば、Couture et al., 1996, TIG., 12, 5 10を参照せよ)から発現される。組み換えベクターは、好ましくは、DNAプラスミドまたはウィルスベクターである。ウィルスベクターを発現する低分子干渉RNAは、特に制限されることなく、アデノ関連ウィルス、レトロウィルス、アデノウィルス、またはαウィルスに基づいて構成されうる。
【0081】
好ましくは、核酸分子を発現可能な組み換えベクターは、上述のように運ばれて、標的細胞中で生き残る。代替的に、核酸分子の一時的な発現をもたらすウィルスベクターが使用されてもよい。このようなベクターは、必要な程度で、繰り返し投与されてもよい。一旦発現すると、核酸分子は、標的mRNAと結合する。ベクターを発現する核酸分子の運搬は、記載された頭蓋内のアクセスデバイスの利用により、特異の、多様な、または慢性の運搬でとなりうる。
【0082】
一の態様では、本発明は、本発明の核酸分子の少なくとも一の機能的断片をコードする核酸配列を含む発現ベクターを特徴とする。本発明の核酸分子をコードする核酸配列は、その核酸分子の発現を可能にする手法で、手術可能となるようにリンクしている。
【0083】
別の態様では、本発明は、以下を含む発現ベクターを特徴とする:a)転写 開始 領域(例えば、真核ポリメラーゼI、IIまたはIIIの開始領域);b)本発明の核酸薬剤のうち少なくとも1つをコードする核酸配列;及びc)転写終結領域(例えば、真核性のポリメラーゼI、IIまたはIIIの終結領域);ここで、当該配列は、当該核酸分子の発現及び/または運搬を可能にする手法で、手術可能となるように、当該開始領域及び当該終結領域にリンクしている。
【0084】
核酸分子配列の転写は、知られているように、真核のRNAポリメラーゼI(ポリメラーゼ1)、RNAポリメラーゼII(ポリメラーゼII)、またはRNAポリメラーゼIII(ポリメラーゼIII)に対するプロモーターから促され、技術的に価値が高い。これらの引用の全てが参照により、本願に組み入れられる。RNA分子はこのようなプロモーターから発現可能であり、哺乳類細胞の機能を有しうるということを数人の調査員が実証している(例えば、Kashani-Sabet et al., 1992, Antisense Res. Dev., 2, 3-15; Ojwang et al., 1992, Proc. NatL Acad Sci. USA, 89, 10802-6; Chen et al., 1992, Nucleic Acids Res., 20, 4581-9; Yu et al., 1993, Proc. Natl. Acad Sci. USA、90, 6340-4; L'Huillier et al., 1992, EMBO J, 11, 4411- 8; Lisziewicz et al., 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A, 90, 8000-4; Thompson et al., 1995, Nucvleic Acids Res., 23, 2259; Sullenger & Cech、1993, Science, 262, 1566)。より詳細には、U6の小さな核(snRNA)をコードする遺伝子に由来するもののような転写ユニット、運搬RNA(tRNA)及びアデノウィルス VAのRNAは、細胞中の低分子干渉RNAのような高濃度の所望のRNA分子を作り出すのに有益である(Thompson et al., supra; Couture and Stinchcomb, 1996, supra; Noonberg et al., 1994, Mucleic Acid Res., 22, 2830; Noonberg et al., 米国特許第5,624,803;Good et al., 1997, Gene Ther., 4, 45; Beigelman et al., PCTの国際公開番号WO 96118736;これらの公報の全てが参照により本願に組み入れられる)。上記低分子干渉RNAの転写ユニットは、哺乳類細胞への導入に対する様々なベクターへと組み入れることができ、特に制限されないが、プラスミドDNAベクター、ウィルスDNAベクター(例えば、アデノウィルスまたはアデノ関連ウィルスのベクター)、またはウィルスRNAのベクター(例えば、レトロウィルスまたはαウィルスのベクター)(見直しとして、Couture and Stinchcomb, 1996, supraを参照せよ)を含む。
【0085】
前記疾患である脊髄小脳失調1型に対する低分子干渉RNAベースの治療を用いた、減少のためにアタキシン1のmRNAを標的とすることは、まさに本発明の一実施形態であるということに留意することも重要である。他の実施形態は、ハンチントン病の治療に対する、ヒトの脳の線条体に投与された抗ハンチンチンの低分子干渉RNAの使用、及びパーキンソン病の治療に対する、ヒトの脳の黒質に投与された抗α−シヌクレインの低分子干渉RNAの使用を含む。
【0086】
本発明における治療上の薬剤として用いられる低分子干渉RNAを構成するための例示的な方法(すなわち、インビトロでのDNAテンプレートからの転写及び2本鎖RNAへの集合、またはRNAのヘアピン構造をコードするDNAのアデノ関連ウィルス発現ベクターでのクローニング)は、治療上の低分子干渉RNAを作るためのたった2つの可能な手段であるということに留意すべきである。低分子干渉RNAを製作する上での、他のより大きなスケールでより効果的な方法は、本発明の本質を変えることなく、ヒトの患者を治療するのに用いられる、医学的なグレード及び医学的な量を生産するのに用いられうる。
【0087】
本分野に熟達した者であれば、レミングトン(Remington)の薬学(17th Ed., Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1985)並びにグッドマン(Goodman)及びギルマン(Gilman)の治療に関する薬学基礎(8th Ed., Pergamon Press, Elmsford, N.Y., 1990)として広く知られ、且つ利用可能な出典において論じられている原理及び手段を知っており、これらは共に、参照により本願に組み入れられる。
【0088】
本発明の好ましい実施形態では、siRNAの薬剤もしくは前駆体またはそれらの誘導体を含む組成物は、ヒト及び他の哺乳類への運搬された投与に適合した薬剤組成物として、標準的な手段に従って配合される。典型的には、静脈内投与に対する組成物は、無菌の等張水性バッファー中の溶液である。
【0089】
必要な前記組成物は、注入部位でのあらゆる痛みを改善する、可溶化薬剤及び局所的麻酔薬も含みうる。一般には、原料は、例えば、活性のある薬剤の量を示すアンプルまたは匂い袋(sachette)のような密封されたコンテナ中で、凍結乾燥した粉末または水を含まない濃縮物として、分離してまたは共に混合して、ユニットの用量形態で供給される。前記組成物は、導入によって投与されるが、無菌の薬剤のグレードの水または生理食塩水を含有する導入ボトルを用いて投薬されうる。前記組成物は、注入によって投与されるが、無菌の水または生理食塩水の注入用のアンプルは、原料が投与前に混合されうるように与えられうる。
【0090】
静脈内投与以外の他の場合には、前記組成物は、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤を含有させることができる。前記組成物は、溶液、懸濁液、乳化液、ゲル、ポリマーまたは徐放性製剤でありうる。前記組成物は、本分野では公知であるように、これまでに用いられてきたバインダー及び担体と配合され得る。製剤は、薬剤グレードのマンニトール、ラクトース、炭水化物、ステアリン酸マグネシウム、サッカリドナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等のような標準的な担体を含むことができ、不活性の担体は、薬剤の製造の際の機能性を十分に証明している。様々な運搬システムが知られており、リポソームのカプセル化、微小粒子、マイクロカプセル、ナノ粒子、ナノカプセル等を含む本発明の治療薬を投与するために用いることができる。
【0091】
さらに別の好ましい実施形態では、低分子干渉RNAもしくは前駆体またはそれらの誘導体を含有する治療薬は、中性型または塩形態として配合することができる。薬学的に許容可能な塩は、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸等に由来するもののような遊離アミノ基で形成されるもの、及びナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、鉄の水酸化物、イソプロピルアミン、トリエチルアミン(thriethylamine)、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインまたは類似物に由来するもののようなカルボキシル基で形成されるものを含む。
【0092】
特定の疾患または状態の治療に効果的な、本発明の治療薬の量は、疾患または状態の本質によるであろうし、標準的な医学的技術によって決定されうる。製剤中で用いられる正確な用量も、投与の経路及び疾患の深刻さによるであろうし、医師の判断及び患者の必要度によって決まるはずである。頭蓋内投与に対する適切な用量の範囲は、一般には、1〜3000μlの1回の注入量で運ばれる、μl当たり約10〜1015のウィルスベクターの感染単位である。μl当たりのベクターの感染単位の追加的な量は、一般に、約10、50、100、200、500、1000または2000μl中に運ばれる、約10、10、10、10、10、10、1010、1011、1012、1013、1014感染単位のウィルスベクターを含有するであろう。効果的な用量は、インビトロまたはインビボでの試験システムに由来する用量応答曲線より推定されうる。
【0093】
本発明の神経変性疾患のための、低分子干渉RNAベクター治療に対して、点検口を有する多様なカテーテルを、完全な治療のために特定の患者に移植することができる。好ましい実施形態では、大脳または小脳の半球当たり、一のポート及びカテーテルシステムがあり、おそらくは幾つかある。一旦、神経外科医によって移植が実行されると、その患者の神経科医は、数週間から数ヶ月もの間、低分子干渉RNAの発現ベクターについての繰り返されるボーラス注入法からなる治療の方針を、長期に亘る治療上の効果の測定と併せて実行できる。デバイスは、全過程の治療に対して、数ヶ月または数年間、移植されたままでありうる。治療の効果の確認後、前記点検口が任意に移植され、前記カテーテルは密封され、捨てられるか、または同様に移植されうる。デバイス材料が核磁気共鳴映像法を阻害してはならず、もちろん、低分子干渉RNAの調製は前記点検口及びカテーテル材料、並びにいかなる表面コーティングにも適合しなければならない。
【0094】
別の方法で規定されない限り、本願で使用される科学的及び技術的な用語及び学名は、本発明が関連する通常のスキルを有する者によって一般に理解されるのと同一の意味を有する。一般には、細胞培養、感染、分子生物学的方法等に対する手段は、技術的に使用される通常の方法である。このような標準的な技術は、例えば、Sambrook et al.(1989年、分子クローニング−A 実験マニュアル、Cold Spring Harbor. Laboratories)及びAusubel et al.(1994年、分子生物学における現代のプロトコール、Wiley, N.Y.)のような参照マニュアル中に見出すことができる。。
【0095】
siRNA発現プラスミド及び/またはウィルスベクターの構築に用いられるポリメラーゼ鎖反応(PCR)は、公知の技術に従って実行される。例えば、米国特許第4,683,195;4,683,202;4,800,159;及び4,965,188を参照せよ(3つの米国特許全ての開示が参照により本願に引用される)。一般に、PCRは、ハイブリダイズする状態の下、特異的な配列の各鎖が検出されるための一のオリゴヌクレオチドプライマーを用いた、核酸サンプルの治療(例えば、熱安定性のDNAポリメラーゼの存在下で)を含む。合成される各プライマーの伸張産物は、2つの核酸の鎖の各々に相補的であり、前記プライマーは、そこへハイグリダイズするのに特異的な配列を有する各鎖に十分に相補的である。各プライマーより合成される伸張産物も、同一のプライマーを用いた伸張産物の更なる合成のためのテンプレートとしての役割を果たすことができる。伸張産物の合成についての十分に多くのラウンドを経て、サンプルは、配列または検出される配列が存在するかどうかを評価するために分析される。増幅された配列の検出は、ゲル電気泳動に続くDNAのEtBr染色に従うか、または検出する公知の技術に従った検出可能な標識を用いる等の視覚化によって実行されうる。PCR技術に関する検査については(PCRプロトコール、方法及び増幅への指針、Michael et al. Eds, Acad. Press, 1990を参照せよ)。
【0096】
デバイス
上記で記載された低分子干渉RNAベクターを用いて、本発明はまた、脳の標的位置への低分子干渉RNAの運搬に対するデバイス、システム及び方法を提供する。想定される運搬の経路は、AAVまたは他のベクターを含有する少量の流体を、局所的な脳の組織へ直接的に注入するための手段を提供する、移植された、内在性の、実質内のカテーテルの使用に通じる。これらのカテーテルの近接端部は、患者の頭蓋に外科的に取り付けられた、移植された大脳内の点検口と、または患者の胴に位置する移植された薬物ポンプと接続されうる。
【0097】
本発明の範囲内の運搬デバイスの例は、頭蓋上の皮下に移植でき、及び治療上の薬剤が脳に運ばれうる点検口を提供する、モデル8506の試験研究中のデバイス(ミネソタ州、ミネアポリスのメドトロニック社製)を含む。運搬は、定位的に移植されたポリウレタンのカテーテルを通じて生じる。モデル8506は、図4及び5に概略的に描写されている。モデル8506の点検口と機能できる2つのモデルのカテーテルは、参照により本願に引用される米国特許第6,093,180で開示されている、大脳の脳室(ventricle)への運搬のための、メドトロニック社製のモデル8770の脳室の(ventricular)カテーテル、並びに参照により本願に引用される米国出願第09/540,444及び09/625,751で開示されている、脳の組織自体への運搬(すなわち実質内運搬)のための、メドトロニック社製のIPA1のカテーテルを含む。後者のカテーテルは、カテーテルの通路に沿って、治療上の薬剤を多様な部位に運ぶための遠位末端上に、多様な出口を有している。
【0098】
アクセス及び配置の過程中に、カテーテルの遠位末端に配置させるための何らかの手段を設けることが好ましい。好ましくは、これは、アクセス及び配置の過程中に検出されるカテーテルの遠位末端にマーカーを適用することによってなされる。もし、アクセス及び配置がX線照射の形態を用いて達成されるならば、前記マーカーは、好ましくは、X線不透過性である。前記X線不透過性のマーカーは、遠位端の少なくとも一部をX線に不透過性とし、カテーテルのアクセス及び配置中に、前記端を、蛍光透視法またはX線を介して可視的なものとすることができる。
【0099】
一の有利な実施形態では、前記X線不透過性のマーカーは、生体適合性の接着剤、例えば、上述したものからなる基質(matrix)で分散したタンタル粉末を含む。他の材料、例えばバリウムまたは白金の材料も、前記X線不透過性のマーカーにも適合しうる。通常、前記X線不透過性のマーカーは、カテーテルの遠位端上にあらかじめ成型される(premold)だろう。
【0100】
代替的に、X線写真のマーカーは、放射線学的手段の際の視覚化にとって十分なX線濃度を有する材料から選択されうるが、その時点でカテーテルの遠位端中に分散される粉末中では、カテーテルの端(tip)が成型される。
【0101】
代替的に、マーカーは、MRIスキャン中に前記遠位端が検出できるようにするために、核磁気共鳴映像法(MRI)に適合する材料からなりうる。バリウム、タンタル及び類似の材料も適しているが、このようなマーカーにとっての好ましい材料は白金である。X線写真またはMRIが利用されるかどうかにかかわらず、X線写真のマーカーを提供する目標は、操作者が、カテーテルの遠位末端の整合及び位置についての配置及びその後の検査を促進するために正確な位置を迅速に検出できるようにすることである。
【0102】
上記したデバイスに加えて、本発明に従った低分子干渉RNAのベクターの運搬は、非常に多様なデバイスを用いて達成することができ、特に制限されることはないが、米国特許第5,735,814、5,814,014及び6,042,579を含み、それらの全てが参照により本願に引用される。本発明の教示を用いて、本分野に熟達した者であれば、これらの並びに他のデバイス及びシステムが本発明に従った神経変性疾患の治療に対する低分子干渉RNAのベクターの運搬に好適となりうることを認識するであろう。
【0103】
一の好ましい実施形態では、前記方法は、脳の外側にポンプを移植する段階であって当該ポンプがカテーテルの近接端部と連結するような段階、及び所定の用量の少なくとも一の低分子干渉RNAまたは低分子干渉RNAのベクターを、カテーテルの排出部分を通じて運ぶためのポンプを操作する段階をさらに含む。更なる実施形態は、少なくとも一の低分子干渉RNAまたは低分子干渉RNAのベクターを当該脳の外側のポンプへと供給することを定期的に一新する(refreshing)という更なる段階を含む。
【0104】
脳の所定の位置は、多くの方法でマッピングされうる。例えば、ある用途に対して、標的となる領域は、定位のまたは全体の解剖学上の第一頸椎(atlas)に位置しうる。他の実施形態では、標的となる領域の正確な位置が重要である場合、例えば、少なくとも部分的に可逆的な遺伝子治療のシステムが患者の脳内へ運ばれると、他のマッピング手段が用いられうる。このようなマッピング手段は、制限なく、放射断層撮影法(単光子放出コンピュータ断層撮影法(Positron Emission Tomography))及び 単光子放出コンピュータ断層撮影法(Single Photon Emission Computed Tomography)(それぞれ、PET及びSPECT)、薬理的核磁気共鳴映像法(phMRl)、機能的MRI(fMRI)、及び造影剤増強X線断層撮影法(contrast-enhanced computerized tomography (CT) scan)を含む。
【0105】
別の実施形態では、コンピュータを用いた第一頸椎(atlas)ベースの機能的な神経外科的方法論は、本発明の少なくとも部分的に可逆的な遺伝子治療のシステムを迅速及び正確に注入するのに用いることができる。このような方法論は、大脳の構造についての3次元表示及び実時間操作(real-time manipulation)を可能にする。全ての3つの直交配向において、相互に事前登録された多様な脳の第一頸椎(atlas)を伴う脳神経外科的計画は、このようにして可能であり、神経毒の注入または移植に対する標的の定義づけの更なる迅速化、管の数の減少による手術の手段の時間の減少を可能にし、より高度な軌道を有する計画を促進する。例えば、Nowinski W.L.et al.の多様な脳の第一頸椎のデータベースの使用による、コンピュータを用いた定位の機能的な神経外科的改良、IEEE Trans Med Imaging 19(1), -62- 69:2000を参照せよ。
【0106】
さらに別の実施形態では、マッピング手段は、カテーテルの遠位端の配置についての内的手術(intra-operative)の検査をも可能にする。例えば、カテーテルの遠位末端の配置についての検査は、内的手術(intra-operative)のMRイメージ−ガイダンスシステム、例えば、PoleStar(登録商標)のiMRIのナビゲーション一式または同程度のシステムの利用によって、MRIにより内的手術的(intra-operatively)に実行されうる。
【0107】
別の例では、アクセス及び配置の過程中に遠位末端を位置付けるための手段は、医師が患者の脳へカテーテルを挿入するのに用いているカテーテルまたは手術用具の近位部分に一時的に付着した、小さな赤外光反射球の使用による。手術台の近くに設置された手術室における赤外カメラは、これらの小球を反射する赤外シグナルを発し、探知する。検出された反射は、その後、ソフトウェア及びコンピュータのシステム(例えば、StealthStation(登録商標))が、内的手術的(intra-operatively)にリアルタイムでこの特定の患者についての過去に捕捉されたMRIイメージ上で重ね合わせられる、カテーテルの遠位末端の位置を計算し表示するのを可能にする。(カテーテルの遠位末端は、赤外光反射球が一時的に接着されたカテーテルの近位部分からの公知の直線距離であるため、これは可能である)。
【0108】
別の例では、アクセス及び配置の過程中に遠位末端を位置づけるための手段は、医師が患者の脳へカテーテルを挿入するのに用いているカテーテルまたは手術用具の近位部分に一時的に接着された赤外発光ダイオード(LED)の利用による。手術台の近くに設置された手術室における赤外カメラは、これらのLEDから発した赤外ビームを検出する。これらの検出されたビームは、ソフトウェア及びコンピュータのシステム(例えば、StealthStation(登録商標))が、内的手術的(intra-operatively)にリアルタイムでこの特定の患者についての過去に捕捉されたMRIイメージ上で重ね合わせられる、カテーテルの遠位末端の位置を計算し表示するのを可能にする。(カテーテルの遠位末端は、LEDが一時的に接着されたカテーテルの近位部分からの公知の直線距離であるため、これは可能である)。
【0109】
受動的に反射される赤外光または活発に発光される赤外光が、医師が患者の脳へカテーテルを挿入するのに用いているカテーテルまたは手術用具の位置を計算するのに利用されるかどうかにかかわらず、赤外の三角測量を利用することの目標は、操作者が、カテーテルの遠位末端の整合及び位置についての配置及び内的手術(intra-operative)の検査を促進するために、前記端(tip)の正確な位置を迅速に検出することができるようにすることである。
【0110】
そのため、本発明は、米国特許第5,735,814及び6,042,579で教示されたような、移植可能なポンプ及びカテーテルを用いた、並びに米国特許第5,814,014で教示されたような、脳に運ばれる低分子干渉RNAのベクターの量を調節するための導入システムの一部としてのセンサーを更に用いた、低分子干渉RNAのベクターの運搬を含む。他のデバイス及びシステムは、本発明の方法に従って用いることができ、例えば、デバイス及びシステムは、米国特許出願第09/872,698(2001年6月1日に出願)及び米国特許出願第09/864,646(2001年5月23日に出願)に開示されており、それらは参照により本願に引用される。
【0111】
要約すると、本発明は、低分子干渉RNAのベクターをヒトの中央神経システムへ運ぶための方法を提供し、これにより、神経内の病原性タンパク質の生産を減少させることによって神経変性疾患を治療する。
【0112】
本発明は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、脊髄小脳1型、2型、及び3型並びに/または病原性タンパク質の生産の原因となるか、もしくはさらに悪化させる、あらゆる神経変性疾患、または変異タンパク質による新たな病原性の機能の獲得の原因となる、他のあらゆる神経変性疾患を含む、神経変性障害及び/または疾患に対する治療としての使用を目的とする。
【実施例】
【0113】
実施例1
ヒトのアタキシン1のmRNAを標的とする低分子干渉RNAの構築
本発明の実施形態の例として、我々は、ヒトのアタキシン1に対応するmRNAを標的とする低分子干渉RNAを作製している。この低分子干渉RNAは、細胞培養において、ヒト細胞中のヒトのアタキシン1に対応するmRNAの量を減少させる。脊髄小脳失調1型(SCA1)のための治療として、この同じ低分子干渉RNAまたは類似の低分子干渉RNAは、移植された点検口及びカテーテルを用いて、患者の脳における小脳の細胞へ運ばれるであろう。その結果は、これらの細胞中のアタキシン1タンパク質の量の減少となり得、その結果、患者のSCA1疾患の進行を緩和するか進行を止める。
【0114】
ヒトのアタキシン1に対する低分子干渉RNAは、ヒトのアタキシン1に対応するヌクレオチド配列より構成された。ヒトのアタキシン−1に由来する配列は、NCBIによって提供された、公衆にアクセス可能なヌクレオチドのデータベースより検索され、NCBIのaccession number NM_000332(配列番号:15)として検索可能である。アタキシン1に対応するヒトのmRNA配列の一部は、低分子干渉RNAの切断に対する潜在的な部位として特定され、及びMFOLD解析によって1本鎖であると予測もされた。accession NM_000332(配列番号:15)において、3対の抗アタキシン1のsiRNAの標的が構成された:
1.945〜965の番号の部位でmRNA配列を標的とする抗アタキシン1のsiRNA:
配列番号:1:5’−AACCAAGAGCGGAGCAACGAA−3’
配列番号:2:3’−GGTTCTCGCCTCGTTGCTTAA−5’
2.1671〜1691の番号の部位でmRNA配列を標的とする抗アタキシン1のsiRNA:
配列番号:3:5’−AACCAGTACGTCCACATTTCC−3’
配列番号:4:3’−GGTCATGCAGGTGTAAAGGAA−5’
3.2750〜2770の番号の部位でmRNA配列を標的とする抗アタキシン1のsiRNA:
配列番号:5:5’−AAGCAACGACCTGAAGATCGA−3’
配列番号:6:3’−CGTTGCTGGACTTCTAGCTAA−5’
一連の6つのデオキシオリゴヌクレオチド断片が、MWG Biotech社の注文オリゴヌクレオチド合成サービスを通じて設計され、注文し、購入し、3つの標的部位を作成する6つの断片の提供を受けた。付加的に、これらのオリゴヌクレオチドは、siRNA構築キットに含まれるT7プロモーターのプライマーの5’末端に相補的な8つの塩基配列を含むように構成された(Ambion社のカタログ番号1620)。各々の特異的なオリゴヌクレオチドは、提供されたT7プロモーターのプライマーにアニーリングされ、RNAへの転写用の全長のDNAテンプレートを生成するために、クレノー(Klenow)断片で満たされた。2つのインビトロで転写するRNA(一方は他方のアンチセンスである)は、インビトロでの転写反応によって生成され、その後、互いにハイグリダイズして2本鎖RNAを形成した。前記2本鎖RNA産物は、(DNAの転写テンプレートを除去する)DNase及び(2本鎖RNAの末端を平滑化する)RNase、並びに細胞中に運ばれ、試験された3つのsiRNAを得るために精製されたカラムで治療された。
【0115】
実施例2
ヒトのアタキシン1のmRNAを標的とする低分子干渉RNAの運搬
実施例1で記載された構成されたsiRNA分子1〜3がHEK293細胞中で形質転換された。形質転換された細胞によって生産されたRNAは、ヒトのアタキシン1のmRNAの量を測定するために、採取され、アッセイされた。
【0116】
図1は、HEK293H細胞の培養液(culture)に由来する総RNAの、μg当たりのアタキシン1のメッセンジャーRNA(mRNA)の量に対する、定量的逆転写酵素のポリメラーゼ鎖反応(qRT−PCR)アッセイの結果を示す。4つの細胞集団がアッセイされた。第1は、アタキシン1のmRNA発現と何ら公知の関連性のないGAPDH、すなわち“ハウスキーピング遺伝子”に対し、siRNAで一時的に形質転換された293H細胞であった。(GAPDHに対するsiRNAは、siRNAを作り、試験するための市販のキットにおいて、標準的なコントロールとして、Ambion社により供給された)。第2は、アタキシン1のmRNA配列中1671位で、アタキシン1のmRNAに対し、siRNAで一時的に形質転換された293H細胞であった。第3は、(アタキシン1のmRNA配列中1364位で、アタキシン1のmRNAを切断する)アタキシン1のmRNAに対し、リボザイムを含有するプラスミドで一時的に形質転換された293H細胞であった。第4は、0945位でアタキシン1のmRNAに対し、siRNAで一時的に形質転換された293H細胞であった。全ての細胞集団は、形質転換後48時間の時点で、総ての細胞のRNAについて一斉に採取された。
【0117】
撮影されたゲルに関して、RT−PCR反応により増幅されたDNA産物は、ゲル電気泳動を用いて分子サイズで分離され、様々な強度のバンドとして視認できる。記載された各細胞集団は、一連の平行反応を用いてアッセイされ、各ゲルの一番上(top)及び一番下(bottom)で、1セットのレーンとして示された。各セットのレーンは、1レーン当たり2つのバンドを含有する。一番上(top)のバンドは、細胞のmRNAから逆転写された内因性のcDNAと拮抗する反応に添加された、既知の量のDNAより増幅されたDNA産物である。所定のレーンにおける複数のバンドが同じ強度を有するならば、元の細胞サンプル中の細胞のmRNAの量が、反応チューブに添加されたDNAの既知の量に匹敵すると推定することができる。レーンを横切って左から右まで、示されたpg(picogram)量中、標準的に添加された既知のDNAの量は減少した。アッセイは、バンドの強度がDNAの基準に対し最も強く“現れる(cross over)”レーンのセットを探すことによって、それより下の細胞の産物に対し最も強いと解釈され、このことは、DNAの基準量が細胞のmRNA量よりもその時点で低いことを示す。
【0118】
図1に示されたゲル上では、一番上(top)のセットのレーンが、アタキシン1のmRNAに対し、リボザイムで形質転換された細胞に由来する。この細胞のサンプルに由来するバンドと、DNAの基準に由来するバンドとの比較は、これらの細胞中のアタキシン1のmRNA量が、総ての細胞のRNAのμg当たり、0.505〜0.303pg(picogram)であるということを示す。一番下(bottom)のセットのレーンが、0945位で、アタキシン1に対し、siRNAで形質転換された細胞に由来する。これらのレーンの解析は、これらの細胞中のアタキシン1のmRNA量が、総ての細胞のRNAのμg当たり、0.303〜0.202pg(picogram)であるということを示す。
【0119】
図2に示されたゲル上では、一番上(top)のセットのレーンが、GAPDHに対し、コントロールのsiRNAで形質転換された細胞に由来する。これらのレーンの解析は、これらの細胞中のアタキシン1のmRNA量が、総ての細胞のRNAのμg当たり、0.711〜0.400pg(picogram)であるということを示す。最後に、一番下(bottom)のセットのレーンは、1671位で、アタキシン1に対し、別のsiRNAで形質転換された細胞に由来する。これらのレーンは、これらの細胞中のアタキシン1のmRNA量が、総ての細胞のRNAのμg当たり、0.404〜0.303pg(picogram)であるということを示す。
【0120】
要するに、この特定の解析の結果は:
【0121】
【表1】

【0122】
これらのデータは、アタキシン1に対し、AT1671及びAT0945の両方のsiRNAが、形質転換後48時間以内に、これらの細胞中のアタキシン1のmRNA量を減少させるのに効果的であり、並びにsiRNAは、この抗アタキシン1のリボザイムの場合よりもアタキシン1のmRNAの減少の方がより効果的であったということを示す。
【0123】
本発明において治療上の薬剤として用いられる低分子干渉RNAを構成するための例示的な方法(すなわち、インビトロでの転写及びハイブリダイゼーションを用いたオリゴヌクレオチドに由来する集合)は、治療上の低分子干渉RNAを形成するための1つの可能な手段にすぎないということに留意すべきである。他のより大きなスケール、すなわち、低分子干渉RNAを製造するのにより効果的な方法は、ヒトの患者を治療するために用いられる医学的なグレード及び医学的な量を生産するのに利用され得、添付された特許請求の範囲で説明されているように、本発明の本質を変えることもなければ、本発明の精神及び範囲から逸脱することもない。
【0124】
実施例3
低分子干渉RNAを用いたアタキシン1発現のアリル特異的な減少
ヘテロ接合患者において、もし、単一のヌクレオチド多型(SNP)が変異体及び通常の長さのアリルの間で相違するならば、適当なsiRNAは変異体のアリルのみの発現を選択的に減少させうる。我々は、SCA1の開始コドン(Accession NT_007592を参照)から、+927位分下流のSNPに対し、アリル特異的なRT−PCRを用いて、293、DAOY、SK−N−SH及びHeLa細胞を試験した。HeLa細胞は、927Tのアリルではなく927Cを発現する一方で、293細胞は、927Cのアリルではなく927Tを発現する。DAOY及びSK−N−SH細胞は、双方のアリル変異型を発現する。我々は、この部位に中心がある、アリル特異的なsiRNAを作った。これらのsiRNAの変異型による、内因性のSCAlのmRNAについてのアリル特異的な抑制に対するアッセイの結果が示されるだろう。
【0125】
実施例4
低分子干渉RNAのウィルスベクターの構築
選択可能なレポータープラスミドであるpAAV−U6−Tracerが、siRNAのクローニングのために構成された。(図3を参照)。前記プラスミドpAAV−U6−Tracerは、アデノ関連ウィルスの反転した末端の繰り返し(ITR)を含有するように構成され、pSilencer(Ambion)由来のU6 RNAポリメラーゼIIIプロモーター、並びにEF1aプロモーター、緑色蛍光タンパク質、ゼオシン抵抗性、及びpTracer(Invitrogen)由来のSV40ポリAを含む。遺伝子断片は、図3に示されるようにクローニングされる。siRNAを発現するためのオリゴヌクレオチドは、多様なクローニング領域の下流であってU6 RNAポリメラーゼIIIプロモーターから3’方向のちょうど下流へとクローニングされる。
【0126】
HEK293細胞は、pAAV−siRNA、pHelper、及びpAAV−RCで共形質転換され、pAAV−RC及びpHelperのプラスミドが3つのプラスミドAAV生産システム(Avigen社)の一部であるウィルス生産細胞を作った。生産者である293細胞は培養液中で成長し、二次性の細胞:HeLa細胞、DAOY細胞、及びSK−N−SH細胞で形質転換されるのに用いられる組み換えウィルスを単離するために用いられる。
【0127】
実施例5
配列番号:24のsiRNAの注入は、HD mRNAの量を局所的及び顕著に減少させる。
【0128】
上記で開示されたsiRNAの配列がインビボで効果的であることを検証するために、表3に示されたように、配列番号:24もしくは配列番号:25のsiRNA、またはCMVプロモーターの制御の下でのGFP配列のU6プロモーター上流の調節の下でのコントロールsiRNAを含むAAVベクターを含む3×1011のウィルス粒子が、下記のようにアカゲザルに注入された:
【0129】
【表2】

【0130】
【表3】

【0131】
ティッシュパンチ(tissue punch)または組織の区分に由来するレーザーマイクロダイセクション(laser micro dissected)(LMD)処理を受けた細胞から単離されたハンチンチン(HD)のmRNA及びタンパク質が、qRT−PCRまたはウエスタンブロットでそれぞれ定量化された。
【0132】
配列番号:24のsiRNAを含むベクターの注入は、結果として、ティッシュパンチのqRT−PCRで測定されたように、同じ(右)半球においてGFPを発現しない被殻の一部と比較すると、動物1におけるGFPを発現する被殻の一部でHD mRNAの37%減少となった。
【0133】
同じ動物の左半球において、HD mRNAの量は、LMDの区分のqRT−PCRで測定されたように、GFPを発現しない領域と比較したGFPの発現領域において、約65%〜70%の減少となった。
【0134】
更に、siRNA治療の効果は、半球に特異的であった。動物2では、HD mRNAの顕著な減少は、(コントロールsiRNAを含むベクターを注入された)左半球のGFPの発現領域とは対照的に、(配列番号:24を含むベクターを注入された)右半球のGFPの発現領域中で観察された。
【0135】
そのため、これらのデータは、配列番号:24のsiRNAを含むウィルス構成物が局所的及び顕著にHD mRNAの量を減少させることができるということを示している。
【0136】
実施例6
配列番号:24のsiRNAの注入は、顕著な解剖学上の逸脱の原因となっておらず、形質導入細胞の小胞体を害さない。
【0137】
動物は、これまでの実施例のプロトコールに従って注入された。組織病理学的解析は、緑色蛍光タンパク質に対する蛍光顕微鏡観察、ヘマトキシリン・エオジン(H&E)染色、ハンチンチンタンパク質の免疫染色に対する蛍光顕微鏡観察、カルネキシンに対する免疫染色、及びプロテインジスルフィドイソメラーゼ(PDI)に対する免疫染色により行われた。それらの研究の結果は、HD抑制が注入領域における検出可能な神経解剖学上の異常の原因とはならないということを示している。ウィルスによって形質導入した領域における血管周囲細胞浸潤の証拠が観察されたが、この細胞浸潤は、HD抑制と相互に関連していなかった。更に、カルネキシン及びPDIに対する染色は、形質導入された細胞の小胞体(ER)における明らかな変化を何ら示さなかった。
【0138】
実施例7
配列番号:24のsiRNAの注入は、自然活性を変えることなく、優れた自発運動に改善する傾向にある。
【0139】
実施例5のプロトコールに従って、動物が注入された。自然活性及び優れた運動活性も、EthoVision及びmMAPの用具でそれぞれ測定された。EthoVisionは、観察期間中の動物の走行距離(cm)及び全体的な体の動き速度(cm/秒)を測定する、商業的に利用可能なビデオ探知システム(EthoVision Pro、version 2.2、Noldus Information Technologies、アシュビル、ノースカロライナ州)である。mMAP用具は、容器のチャンバ中に置かれた台(platform)から食品を取り戻す際に、アカゲザルの小さな手の筋肉の優れた運動の動きの時間を客観的に測定するために用いられる、(自動的なサルのMovement Analysis Panel[mMAP]という名称の)装置である。
【0140】
尾状及び被殻内のHD抑制は、動物の自然活性における変化の原因となる。優れた自発運動は、いかなる動物においても害されなかった。更に、全ての動物は、優れた運動能力の後、ウィルス注入を改善する傾向にあった。
【0141】
本願では、本発明を、特定の実施形態を参照しつつ記載してきたが、これらの実施形態では、本発明の原理及び用途をほとんど説明しきれていないということが理解されるはずである。このように、多数の改変が例示的な実施形態においてなされうるということが理解されるはずであり、下記の特許請求の範囲で規定されたように、本発明の精神及び範囲から逸脱することなしに、他の改良がなされうるが理解されるはずである。
【0142】
本明細書で引用された全ての刊行物、すなわち特許文献及び非特許文献の双方が、本発明が関連する分野に熟達した者の熟達レベルを示している。各個の文献があたかも、参照により本願に引用されるように、特異的に及び独立して示されているように、これらの文献全てが、参照により本願に、同程度に十分引用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含むハンチントン病治療用の医学的なシステム:
a)頭蓋内のアクセスデバイス;
b)脳中の所定の位置を位置づけるマッピング手段であり、該所定の位置は、ハンチンチンを発現する少なくとも一の細胞を含む;
c)運搬可能な量の低分子干渉RNAであり、該低分子干渉RNAは、配列番号:24もしくは配列番号:25よりなる群によってコードされる少なくとも19のコンティグヌクレオチド、または該低分子干渉RNAをコードするベクターを含む第1の鎖を含む。
d)該低分子干渉RNAを該頭蓋内のアクセスデバイスから脳の該位置へ運ぶための運搬手段。
【請求項2】
前記頭蓋内のアクセスデバイスは頭蓋内の点検口である、請求項1に記載の医学的なシステム。
【請求項3】
脳中の前記所定の位置は尾状核、被殻、放線冠(corona radiata)または線条体である、請求項1または2に記載の医学的なシステム。
【請求項4】
該運搬手段は外部の注射器から頭蓋内の点検口への注入である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医学的なシステム。
【請求項5】
該運搬手段は導入ポンプである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医学的なシステム。
【請求項6】
該導入ポンプは電子機械のポンプである、請求項5に記載の医学的なシステム。
【請求項7】
該導入ポンプは浸透性のポンプである、請求項5に記載の医学的なシステム。
【請求項8】
前記ベクターはウィルスベクターである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の医学的なシステム。
【請求項9】
前記ウィルスベクターはアデノ関連ウィルスベクターである、請求項8に記載の医学的なシステム。
【請求項10】
前記ウィルスベクターは第2の鎖をさらにコードし、前記第2の鎖は前記第1の鎖のうち少なくとも15のコンティグヌクレオチドに相補的である、請求項8に記載の医学的なシステム。
【請求項11】
前記低分子干渉RNAは、第2の鎖をさらに含み、前記第2の鎖は前記第1の鎖のうち少なくとも15のコンティグヌクレオチドに相補的である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の医学的なシステム。
【請求項12】
前記マッピング手段は患者に特異的であり内的手術である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の医学的なシステム。
【請求項13】
前記頭蓋内のアクセスデバイスはカテーテルを含み、前記カテーテルはマーカーを含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の医学的なシステム。
【請求項14】
以下を含む、ハンチントン病患者の治療方法:
a)脳中の所定の位置に位置づけ、該所定の位置はハンチンチンを発現する少なくとも一の細胞を含む;
b)脳中の所定の位置へのアクセスをもたらす、頭蓋内のアクセス運搬デバイスを位置づけ;
c)低分子干渉RNAを導入し、該低分子干渉RNAは、配列番号:24もしくは配列番号:25よりなる群によってコードされる少なくとも19のコンティグヌクレオチド、または該低分子干渉RNAをコードするベクターを含む第1の鎖を含む;
その際、ハンチントン病のうちの少なくとも一の特性が減少するか、あるいはその進行が緩やかになるか、または進行が止まる。
【請求項15】
前記頭蓋内のアクセスデバイスは頭蓋内の点検口である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
脳中の前記所定の位置は尾状核、被殻、放線冠(corona radiata)または線条体である、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
該運搬手段は外部の注射器から頭蓋内の点検口への注入である、請求項14〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記低分子干渉RNAは導入ポンプによって注入される、請求項14〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
該導入ポンプは電子機械のポンプである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
該導入ポンプは浸透性のポンプである、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記ベクターはウィルスベクターである、請求項14〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記ウィルスベクターはアデノ関連ウィルスベクターである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ウィルスベクターは第2の鎖をさらにコードし、前記第2の鎖は前記第1の鎖のうち少なくとも15のコンティグヌクレオチドに相補的である、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
前記低分子干渉RNAは第2の鎖をさらに含み、前記第2の鎖は前記第1の鎖のうち少なくとも15のコンティグヌクレオチドに相補的である、請求項14〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
該低分子干渉RNAは少なくとも4週間、患者の死の原因とならない、請求項14〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記低分子干渉RNAの導入は患者の良好な自発運動を害さない、請求項14〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記低分子干渉RNAはハンチンチンを発現する少なくとも一の細胞中で発現される、請求項14〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
ハンチンチンを発現する少なくとも一の細胞中での前記低分子干渉RNAの発現は、少なくとも一の細胞の小胞体を害さない、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
ハンチンチンを発現する少なくとも一の細胞中での前記低分子干渉RNAの発現はカルネキシンの発現または分布を害さない、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
ハンチンチンを発現する少なくとも一の細胞中での前記低分子干渉RNAの発現はPDIの発現または分布を害さない、請求項27〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
頭蓋内のアクセス運搬デバイスを位置づける段階は、ハンチントン病が診断された後に実行される、請求項14〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
頭蓋内のアクセス運搬デバイスを位置づける段階は、ハンチントン病が診断された後でハンチントン病の症状が明らかになる前に実行される、請求項14〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
頭蓋内のアクセス運搬デバイスを位置づける段階は、ハンチントン病の症状が明らかになった後に実行される、請求項14〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
頭蓋内のアクセス運搬デバイスの位置づけは内的−外科的に実証される、請求項14〜33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
頭蓋内のアクセス運搬デバイスはマーカーを含む、請求項14〜34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
脳中の所定の位置への位置づけは患者に特異的な手法で実行される、請求項14〜35のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−500357(P2010−500357A)
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−523836(P2009−523836)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【国際出願番号】PCT/US2007/017659
【国際公開番号】WO2008/021149
【国際公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(591007804)メドトロニック,インコーポレイテッド (243)
【住所又は居所原語表記】710Medtronic Parkway,Minneapolis,Minnesota 55432,U.S.A
【Fターム(参考)】