説明

頭部保護エアバッグ装置

【課題】折り畳まれたエアバッグを、捻ることなく、容易に、ケースに収納可能な頭部保護エアバッグ装置を提供すること。
【解決手段】頭部保護エアバッグ装置は、エアバッグ20が、折り畳まれた状態で、下方側を開口させた断面逆U字状の合成樹脂製のケース41に収納される。エアバッグは、複数の取付部を、ケースの内周側から外周側へ突出させて、車両のボディ側に取り付けることにより、ケースとともに、車両に搭載される。ケースには、エアバッグの上縁側の係止孔29bに挿入されてエアバッグの上縁側を係止する係止突起50を突設させて、内周側に撓み可能な片持ち梁状の係止片部49が、配設される。エアバッグは、係止孔29bに係止突起50を貫通させ、かつ、係止孔の周縁29aを、開口部47,48を経て係止片部49の外周面49c側に配置させた状態として、ケース41内に収納されて、車両に搭載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、展開膨張時に車両の窓を覆うエアバッグが、下縁側を上縁側に接近させるように折り畳まれた状態で、下方側を開口させた断面逆U字状の合成樹脂製のケースに収納されて車両に搭載される頭部保護エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の頭部保護エアバッグ装置では、エアバッグを折り畳んで車両に搭載するまで若しくは搭載後も含めたエアバッグの保護や運搬等の取り扱いの利便性を考慮し、エアバッグが、下縁側を上縁側に接近させるように折り畳まれた状態で、合成樹脂製のケースに収納されて、運搬され、そして、車両に搭載されていた(例えば、特許文献1参照)。ケースは、下方側を開口させた断面逆U字状としていた。このようなエアバッグは、上縁側の上方へ突出するように配置された複数の取付部を、ケースの内周側から外周側へ突出させて、窓の上縁側の前後方向に沿わせて、車両のボディ側に取り付けることにより、ケースとともに、車両に搭載されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−184056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の頭部保護エアバッグ装置では、取付部間で捻れてエアバッグがケースに収納される虞れがあるため、慎重に、順次、取付部をケースの内周側から外周側に突出させつつ、折り畳まれたエアバッグを、ケース内に収納することとなって、ケースへのエアバッグの収納に手間がかかっていた。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、折り畳まれたエアバッグを、捻ることなく、容易に、ケースに収納可能な頭部保護エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
<請求項1の説明>
本発明に係る頭部保護エアバッグ装置は、展開膨張時に車両の窓を覆うエアバッグが、
エアバッグの下縁側を上縁側に接近させるように折り畳まれた状態で、下方側を開口させた断面逆U字状の合成樹脂製のケースに収納されるとともに、
前記エアバッグの上縁側に配置された複数の取付部を、前記ケースの内周側から外周側へ突出させて、前記窓の上縁側の前後方向に沿わせて、車両のボディ側に取り付けることにより、
前記ケースとともに、車両に搭載される頭部保護エアバッグ装置であって、
前記エアバッグが、隣接する前記取付部間の少なくとも1箇所の上縁側に、貫通した係止孔を配設させ、
前記ケースが、
前記係止孔に対応する位置の外周面側に、前記係止孔に挿入されて前記エアバッグの上縁側を係止する係止突起を突設させ、かつ、車内側の縁から車外側方向に延びる開口部を前記係止突起の前後両側に配置させた片持ち梁状として、内周側に撓み可能な係止片部を、配設させて構成され、
前記エアバッグが、前記係止孔に前記係止突起を貫通させ、かつ、前記係止孔の周縁を、前記開口部を経て前記係止片部の外周面側に配置させた状態として、前記ケース内に収納されて、車両に搭載されることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る頭部保護エアバッグ装置では、折り畳まれたエアバッグをケースに収納する際、前方側若しくは後方側から、一つの取付部をケースの内周側から外周側に突出させつつ、折り畳まれたエアバッグをケース内に収納し、さらに、つぎの取付部をケースの内周側から外周側に突出させて、エアバッグをケース内に収納し、順次、この作業を繰り返して、ケース内の全域に、エアバッグを収納させることとなる。
【0008】
その際、本発明の頭部保護エアバッグ装置では、前後で隣接する取付部間のエアバッグの上縁側に、ケースの係止突起を挿入させる係止孔が形成されており、係止孔周縁を、前後両側の開口部を経て、係止片部の外周面側に配置させて、係止突起を係止孔に挿入させる。そしてこの時、エアバッグの取付部間の部位が捻れていれば、エアバッグの係止孔の周縁も捻れて、前後両側の開口部を経て、係止孔周縁をケースの係止片部の外周面側に配置できないことから、エアバッグの捻れが直ちに解って、エアバッグの捻れを直して、係止孔に係止突起を挿入させつつ、後続の取付部をケースの内周側から外周側に突出させて、適正に、エアバッグをケース内に収納することができる。
【0009】
そして、係止孔に係止突起を挿入させる作業は、ケースの係止片部が、片持ち梁状として、先端側をケースの内周側へ撓ませることができるため、係止片部を撓ませつつ、容易に、係止孔に係止突起を挿入させることができて、手間取らない。
【0010】
したがって、本発明に係る頭部保護エアバッグ装置では、折り畳まれたエアバッグを、捻ることなく、容易に、ケースに収納することができる。
【0011】
<請求項2の説明>
本発明に係る頭部保護エアバッグ装置では、前記エアバッグの本体部が、
膨張用ガスの流入時に車内側壁部と車外側壁部とを離すように膨らむ袋状のガス流入部と、前記ガス流入部の周囲に配置されて、前記車内側壁部と前記車外側壁部とを結合させたように形成される周縁部と、を設ける袋織りにより、製造されるとともに、
前記袋織り時に、複数、並設されて製造され、かつ、裁断して形成される構成として、
裁断時の位置決め孔を、前記本体部の上縁側における前記周縁部に形成されるとともに、前記係止孔として兼用されるように、形成することが望ましい。
【0012】
このような構成では、袋織り後の裁断時に必要な位置決め孔を、係止孔に兼用できることから、別途、係止孔を形成しなくとも、容易に、エアバッグを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る一実施形態の頭部保護エアバッグ装置の車両搭載状態を示す車両の車内側から見た正面図である。
【図2】実施形態における車両搭載状態の頭部保護エアバッグ装置の縦断面図であり、図1のII−II部位に対応する。
【図3】実施形態における車両搭載状態の頭部保護エアバッグ装置の縦断面図であり、図1のIII−III部位に対応する。
【図4】実施形態に使用するエアバッグの折り畳み状態を説明する図である。
【図5】実施形態の頭部保護エアバッグ装置の車両搭載前の状態を示す正面図である。
【図6】実施形態のケースの係止片部を示す斜視図であり、係止突起に係止孔を嵌める前と後の状態を示す。
【図7】実施形態のエアバッグの係止孔に、係止突起を挿入させる状態を順に説明する断面図である。
【図8】実施形態のエアバッグの本体部を袋織りで製造する状態を説明する図である。
【図9】実施形態の変形例のケースの係止片部を示す斜視図であり、係止突起に係止孔を嵌める前と後の状態を示す。
【図10】実施形態のエアバッグの係止孔に、変形例の係止突起を挿入させる状態を順に説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、図1に示すように、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mは、エアバッグ20を、展開膨張完了時に、車両Vの窓(サイドウィンド)W1,W2を覆い可能に、窓W1,W2の上縁側の周縁、すなわち、フロントピラー部FPからルーフサイドレール部RRを経てリヤピラー部RPの上方付近までの範囲に、折り畳んで収納させている。なお、この車両Vは、フロントピラー部FPとリヤピラー部RPとの間に、略上下方向に沿って配設される一つの中間ピラー部CPを配設させ、展開膨張完了時のエアバッグ20は、窓W1,W2とともに、中間ピラー部CPの中間ピラーガーニッシュ7やリヤピラー部RPのリヤピラーガーニッシュ8の一部の車内側も、覆うように、構成されている。
【0015】
頭部保護エアバッグ装置Mは、図1,5に示すように、エアバッグ20、エアバッグ20に膨張用ガスを供給するインフレーター10、取付ブラケット11,15、取付ボルト12,16、及び、折り畳まれたエアバッグ20を収納するケース41(41A,41B)、を備えて構成されている。折り畳まれたエアバッグ20、インフレーター10、及び、ケース41は、車両Vへの搭載時に、車内側をエアバッグカバー18に覆われて収納されている。エアバッグカバー18は、実施形態の場合、フロントピラー部FPの車内側を覆うフロントピラーガーニッシュ5の下縁5aとルーフサイドレール部RRの車内側を覆うルーフヘッドライニング6の下縁6aとから構成されている。
【0016】
フロントピラーガーニッシュ5とルーフヘッドライニング6とは、中間ピラーガーニッシュ7やリヤピラーガーニッシュ8とともに、合成樹脂製として、図示しない取付手段によって、フロントピラー部FPやルーフサイドレール部RRにおけるボディ1側の部材であるインナパネル2の車内側に、取り付けられている。そして、これらの下縁5a,6aから構成されるエアバッグカバー18は、展開膨張時のエアバッグ20を突出可能に、エアバッグ20に押されて、下縁5a,6a側を車内側に開くように、構成されている(図2,3の二点鎖線参照)。
【0017】
インフレーター10は、略円柱状とされて、先端(前端)側に、膨張用ガスを吐出可能な図示しないガス吐出口が、配設されている。そして、このインフレーター10は、ガス吐出口付近を含めた先端付近をエアバッグ20の接続口部26に挿入させ、接続口部26の後端付近に外装されるクランプ13を利用して、エアバッグ20の接続口部26に連結されている。また、インフレーター10は、インフレーター10を保持する取付ブラケット11と、取付ブラケット11をボディ1側のインナパネル2に固定するための取付ボルト12と、を利用して、インナパネル2に取り付けられている。
【0018】
エアバッグ20は、図2,3の二点鎖線や図4のAに示すように、膨張用ガスGを流入させて車内側壁部21aと車外側壁部21bとを離すように膨張するガス流入部21と、車内側壁部21a、車外側壁部21b相互を結合させるように形成されて、膨張用ガスGを流入させない非流入部28と、を備えて構成されている。ガス流入部21は、保護膨張部22、ガス供給路部25、及び、接続口部26、を備えて構成され、非流入部28は、周縁部29、取付部30、板状部31,32、及び、区画部33、を備えて構成されている。
【0019】
ガス流入部21の保護膨張部22は、エアバッグ20の展開膨張完了時に、前席の側方の窓W1を覆う前保護部23と、後席の側方の窓W2を覆う後保護部24と、を備えている。また、ガス供給路部25は、エアバッグ20の上縁20a側で接続口部26から前後両側に延びて、前保護部23と後保護部24とに接続口部26からの膨張用ガスGを供給できるように配設されている。接続口部26は、エアバッグ20の上縁20a側の前後方向の中央付近に配置されて、インフレーター10からの膨張用ガスGを保護膨張部22内に導入できるように、配設されている。
【0020】
そして、前保護部23と後保護部24とは、膨張時のエアバッグ20が、前後方向の幅寸法を狭め、また、厚さを規制して前後方向に延びる板形状を維持できるように、区画部33と板状部31とを配設させて構成されている。区画部33は、前保護部23の前上部に配置される円形状の閉じ部33aと、板状部31から前方に延びるように配設される略逆L字状の閉じ部33bと、後保護部24に配置されるブーメラン形状の閉じ部33cと、から構成されている。
【0021】
非流入部28の周縁部29は、ガス流入部21の外周縁に配置されている。板状部31は、ガス供給路部25の下方における前保護部23と後保護部24との間に位置して、略長方形板状とし、また、板状部32は、エアバッグ20の前端側に配置される略長方形板状とし、かつ、下端から前方にベルト状に延びる部位を備えた形状としている。これらの板状部31,32は、エアバッグ20の全体形状を確保するとともに、膨張用ガスGを流入させる部位の容積を減らして、エアバッグ20の膨張開始から膨張完了前の時間を極力短くするために配設されている。
【0022】
また、取付部30は、板状部32を含めたエアバッグ20の上縁20a側に、上方へ突出するように、複数、配置されて、取付ボルト16を利用してエアバッグ20をインナパネル2に止めるための取付孔30aを備えて、構成されている。各取付部30には、二枚一組の板金製の取付ブラケット15が、取付部30を挟持し、かつ、一部をかしめて、取り付けられている。そして、各取付部30は、取付ブラケット15の取付孔15aとともに、取付孔30aを貫通する取付ボルト16を利用して、インナパネル2に取り付けられることなる(図2参照)。なお、取付部30に取り付ける取付ブラケット15のかしめ部15bは、取付孔15aの前後両側に配置されている(図4のB参照)。また、各取付ボルト16は、インナパネル2の取付孔3に設けられたナット4に螺合して、各取付部30を、取付ブラケット15やケース41の取付片部45とともに、車両Vのボディ1側のインナパネル2に対して、取り付けることとなる。
【0023】
また、エアバッグ20は、図4,8に示すように、ポリアミド糸やポリエステル糸等を使用した袋織りによって形成される本体部35と、ポリアミド糸やポリエステル糸等の織布からなって本体部35に縫製される別体布36,37,38,39と、から構成されている。別体布36は、板状部31の部位を構成し、別体布37は、板状部32の部位を構成し、別体布38は、取付部30A,30B,30C,30D、30E,30Fの部位を構成し、別体布39は、接続口部26の部位を構成している。本体部35は、長方形形状に形成されて、前保護部23、後保護部24、ガス供給路部25、周縁部29、及び、板状部31、の部位を備えて、袋織りにより製造されている。なお、袋織りで製造された板状部31の部位は、その部位を切除されて、接続口部26を形成する別体布39となる。切除された部位には、別体布36が縫合されて塞がれ、板状部31が形成されている。
【0024】
そして、本体部35の袋織り時には、図8に示すように、三個分の本体部35を幅方向に並設させた状態で、帯状に製造され、その後、一点鎖線の切断線CLの部位で裁断されて、本体部35がそれぞれ形成されている。裁断時には、複数の位置決め孔55が穿設され、それらの位置決め孔55を基準に、各本体部35が裁断されることとなる。
【0025】
これらの位置決め孔55は、エアバッグ20の上縁20a側における周縁部29に配置されており、さらに詳しくは、前方側の取付部30B.30C間や取付部30c,30Dの二箇所と、後方側の取付部30E,30F間の一箇所との計三箇所に形成されており、これらの位置決め孔55は、後述するように、実施形態では、係止孔29bとしても使用される。
【0026】
ケース41は、図1〜3,5,6に示すように、折り畳まれたエアバッグ20を収納可能に断面逆U字形状として、前後方向に延びた長尺状に形成されている。実施形態の場合、折り畳まれたエアバッグ20の前保護部23を収納するケース41Aと後保護部24を収納するケース41Bとの二つが使用されている。各ケース41(41A,41B)は、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー等の合成樹脂から形成され、半割り円筒状の天井壁部42と、天井壁部42の車外側Oの縁から下方に延びる縦壁部43と、を備える断面逆U字形状としている。なお、ケース41Aは、前席の窓W1の上縁側に対応して、前端側が下方に曲げられ、ケース41Bは、後席の窓W2の上縁側に対応して、前後方向に延びる略直線状に形成されている。
【0027】
そして、それぞれの天井壁部42における車外側Oの縁付近には、上方へ延びる複数の取付片部45が配設されている(図2,5参照)。各取付片部45は、それぞれ、収納するエアバッグ20の各取付部30B,30C,30D,30E,30Fに対応する位置に配置され、その元部側の車内側Iにおける天井壁部42との境界部位には、各取付部30B,30C,30D,30E,30Fを上方へ突出させるスリット状の突出用開口44が形成されている。なお、エアバッグ20の前端の取付部30A付近は、ケース41Aに収納されず、ケース41Aから離れた前方へ突出するように、構成されている。
【0028】
各取付片部45には、図2,4に示すように、エアバッグ20の取付ブラケット15を取り付けた取付部30に対応するように、取付ボルト16を貫通させる挿通孔45aが配設されている。さらに、各取付片部45の上縁側の前後の両角の部位には、車内側Iに突出して下方へ反転するように、断面L字状の規制片45cが配設されている。これらの取付片部45には、折り畳まれたエアバッグ20をケース41A,41Bに収納させた状態で、突出用開口44を経て、取付ブラケット15を取り付けた取付部30B,30C,30D,30E,30Fが車内側面45dに配置され、その際、各取付部30B,30C,30D,30E,30Fの車内側Iの面(取付ブラケット15の面)が、各規制片45cに係止される。その結果、取付ブラケット15を取り付けた各取付部30B,30C,30D,30E,30Fは、規制片45cと取付片部45の車内側面45dとの間で挟持されて、ケース41A,41Bの各取付片部45に取り付けられることとなる。
【0029】
そして、ケース41A,41Bの所定の取付片部45,45間(取付片部45B,45C間、取付片部45C,45D間、及び、取付片部45E,45F間)には、図3,5,6に示すように、係止孔29b(位置決め孔55)に対応する位置の外周面49c側に、係止孔29bに挿入されてエアバッグ20の上縁20a側を係止する係止突起50が突設されている。係止突起50は、先端を車外側Oの上方に延ばした鉤状(L字形状)に形成されて、天井壁部42の一部から構成される係止片部49から、突設されている。係止片部49は、天井壁部42の車内側Iの縁から車外側O方向に延びる開口部47,48を、係止突起50の前後両側に配置させて、構成されている。そして、係止片部49は、前後両側にケース41A,41Bの内外周を貫通する開口部47,48を配設させて片持ち梁状としており、開口部47,48の先端間を結ぶ部位をヒンジ部49aとして、先端49b側が、ケース41A,41Bの内周側へ容易に撓むように構成されている。
【0030】
なお、開口部47,48の奥行き寸法DL(図6のA参照)、換言すれば、係止片部49のヒンジ部49aから先端49bまでの長さ寸法は、係止突起50を係止孔29bに挿入させる際、折り畳んだエアバッグ20の上縁20a側(後述する引出部29a)が、エアバッグ20の上縁20a側の折り崩れを極力招かないように、設定されている。すなわち、係止突起50を係止孔29bに挿入させる際、係止片部49の先端49bが、取付部30の部位を除いたエアバッグ20の上縁20a側における最上端の車内側Iの折目VFの車外側O(折目VFの内周側)に、奇麗に収納される寸法に、奥行き寸法DLが設定されている(図6のA,B、図7のC参照)。
【0031】
また、エアバッグ20の上縁20a側における取付部30を除いた部位の折り畳み状態では、最上端の車内側Iの折目VFが、上縁20aの端末20aaを、車外側Oに向けて、折り畳まれる状態としている(図2,図7のC参照)。
【0032】
この頭部保護エアバッグ装置Mの車両Vへ搭載する工程の概略を説明すると、まず、図4のAに示すように、エアバッグ20を非膨張状態の平らに展開した状態とし、そして、折り畳む。折り畳みは、上縁20aからガス供給路部25までのエリアを、上縁20aと平行な折目を付けた蛇腹折りとし、その下方の下縁20bまでのエリアを、下縁20bを車外側壁部21b側で巻くロール折りとしている(図2参照)。上縁20a側の蛇腹折りは、上縁20aに近い最上端の部位に、車内側Iに位置させた折った折目VFを付け、その下方に折り重ねる部位を設ける蛇腹折りとしている。
【0033】
そして、折り畳み後、エアバッグ20の周囲には、破断可能な図示しないラッピング材を巻き付けて、エアバッグ20の折り崩れを防止する。なお、ケース41A,41Bの係止片部49の外周面49c側に配置させる係止孔29bの周縁、すなわち、引出部29aの部位には、引出部29aを引き出し易いように、ラッピング材を巻き付けない。
【0034】
ついで、接続口部26に対し、クランプ13を利用して、取付ブラケット11を取り付け済みのインフレーター10を結合させるとともに、各取付部30に取付ブラケット15をかしめて取り付ける。
【0035】
そして、折り畳まれたエアバッグ20の前保護部23のエリアをケース41Aに収納するとともに、後保護部24のエリアをケース41Bに収納させる。その際、突出用開口44に挿通させつつ、取付ブラケット15を取り付け済みの各取付部30B,30C,30D,30E,30Fを、所定の取付片部45の車内側面45dに配置させる。その際、各取付部30B,30C,30D,30E,30Fは、取付ブラケット15ごと、規制片45cと車内側面45dとの間で、挟持されて、ケース41A,41Bの各取付片部45に取り付けられる。
【0036】
この折り畳まれたエアバッグ20をケース41A,41Bに収納する際には、前方側若しくは後方側から、例えば、前方側から、一つの取付部30Bを、取付ブラケット15とともに、突出用開口44を経て、ケース41Aの内周側から外周側に突出させて、取付片部45Bに係止させつつ、折り畳まれたエアバッグ20をケース41A内に収納し、さらに、つぎの取付部30Cを、取付ブラケット15とともに、突出用開口44を経て、ケース41Aの内周側から外周側に突出させて、取付片部45Cに係止させつつ、ケース41Aの内周側から外周側に突出させて、エアバッグ20をケース41A内に収納し、順次、この作業を繰り返して、ケース41A,41B内の全域に、エアバッグ20を収納させ、さらに、ケース41A,41Bとエアバッグ20との分離を防止するように、適宜、ラッピング材を巻き付ける。
【0037】
そして、エアバッグ20のケース41への収納時、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、前後で隣接する取付部30B,30C間、取付部30C,30D間、及び、取付部30E,30F間のエアバッグ20の上縁20a側に、ケース41A,41Bの係止突起50を挿入させる係止孔29bが形成されており、図7のA〜Cに示すように、係止孔29bの周縁となる引出部29aを、前後両側の開口部47,48を経て、引張り上げつつ、係止片部49の外周面49c側に配置させて、係止突起50を係止孔29bに挿入させる。
【0038】
この時、エアバッグ20の取付部30B,30C間の部位が捻れていれば、エアバッグ20の係止孔29bの周縁である引出部29aも捻れており、前後両側の開口部47,48を経て、引出部29aをケース41Aの係止片部49の外周面49c側に配置できないことから、エアバッグ20の捻れが直ちに解って、エアバッグ20の捻れを直して、係止孔29bに係止突起50を挿入させつつ、後続の取付部20Cを、突出用開口44を経て、ケース41Aの内周側から外周側に突出させて、取付片部45Cに取り付けることとなる。その後、後続の引出部29aを係止片部49の外周面49c側に配置させつつ、係止孔29bに係止突起50を挿入させて、順次、後続の取付部30D,30E,30Fを、突出用開口44を経て、ケース41Aの内周側から外周側に突出させて、取付片部45D,45E,45Fに取り付ければ、適正に、エアバッグ20をケース41A,41B内に収納することができる。
【0039】
そして、係止孔29bに係止突起50を挿入させる作業は、図7のBに示すように、ケース41A、41Bの係止片部49が、ヒンジ部49aを中心として、先端49b側をケース41A,41Bの内周側へ撓ませることができるため、係止片部49を撓ませつつ、容易に、係止孔29bに係止突起50を挿入させることができて、手間取らない。
【0040】
したがって、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、折り畳まれたエアバッグ20を、捻ることなく、容易に、ケース41A,41Bに収納することができる。
【0041】
そして、頭部保護エアバッグ装置Mの車両Vへの搭載までの運搬時や収納時には、ケース41A,41B間の接続口部26付近で二つ折りしておけばよい。その後、頭部保護エアバッグ装置Mの車両Vへの搭載時には、各取付ブラケット11,15を、所定のインナパネル2の位置に配置させて、取付ボルト12,16を使用して、所定のインナパネル2の位置に固定すれば、頭部保護エアバッグ装置Mを車両Vに組み付けることができる。その後、インフレーター10に、インフレーター作動用の制御装置から延びる図示しないリード線を結線するとともに、フロントピラーガーニッシュ5、ルーフヘッドライニング6、中間ピラーガーニッシュ7、及び、リヤピラーガーニッシュ8を、ボディ1側のインナパネル2に取り付ければ、頭部保護エアバッグ装置Mの車両Vへの搭載が完了することとなる。
【0042】
車両Vへの搭載後、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mが作動して、インフレーター10が膨張用ガスGをエアバッグ20に供給すれば、エアバッグ20は、ガス供給路部25や前保護部23や後保護部24に膨張用ガスGを流入させ、エアバッグカバー18を押し開いて下方へ展開し、図1の二点鎖線に示すように、窓W1,W2や中間ピラー部CP,リヤピラー部RPの車内側を覆うように、展開膨張を完了させることなる。
【0043】
なお、エアバッグ20の膨張時、エアバッグ20の上縁20a側では、その一部の引出部29aが、ケース41の内周側でなく、ケース41の外周面49c側に配置されているが、容易に撓む係止片部49の外周面49c側に配置されていることから、引出部29aは、係止片部49を撓ませたり、あるいは、係止突起50の係止を解除させつつ係止片部49から離脱する等して、支障なく、エアバッグ20を膨張させることができる。
【0044】
また、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、エアバッグ20の本体部35が、膨張用ガスGの流入時に車内側壁部21aと車外側壁部21bとを離すように膨らむ袋状のガス流入部21と、ガス流入部21の周囲に配置されて、車内側壁部21aと車外側壁部21bとを結合させたように形成される周縁部29と、を設ける袋織りにより、製造されるとともに、袋織り時に、複数、並設されて製造され、かつ、裁断して形成される構成としている。そして、裁断時の位置決め孔55が、本体部35の上縁20a側における周縁部29に形成されるとともに、係止孔29bとして兼用されるように、形成されている。このような構成では、袋織り後の裁断時に必要な位置決め孔55を、係止孔29bに兼用できることから、別途、係止孔を形成しなくとも、容易に、エアバッグ20を製造することができる。
【0045】
なお、実施形態では、ケース41A,41Bの係止突起50が、先端を車外側Oの上方に屈曲させたL字形状の鉤状とした場合を示したが、図9,10に示す係止突起50Aのように、略円錐状や球状に膨出させた係止頭部50aを、係止片部49から突設された柱状の首部50bの先端に、配置させた形状としてもよい。
【0046】
このような構成でも、図10のA〜Cに示すように、ケース41の係止片部49が、ヒンジ部49aを中心として、先端49b側を、ケース41の内周側へ撓ませることができるため、係止片部49を撓ませつつ、係止孔29bに係止突起50Aの係止頭部50aを挿入させることができて、容易に、係止孔29bに係止突起50Aを挿入させて、引出部29aを係止突起50Aに係止させることができる。
【0047】
なお、実施形態では、エアバッグ20の係止孔29bを三個として、ケース41側に、対応する係止突起50を設けた係止片部49を、三箇所に設けた場合を示した。しかし、ケースへの収納時、エアバッグが捻れ易ければ、適宜、係止孔と係止突起の数を増やして、全ての取付部間に係止孔等を設けたり、あるいは、捻れる虞れのある箇所が少なければ、適宜、取付部間に配置させる係止孔と係止突起との数を減らせばよい。
【0048】
また、取付部間に設ける係止孔は、一つとせずに、複数を設けて、その数に対応させて、ケース側に係止突起や係止片部を設けてもよい。
【0049】
さらに、実施形態では、ケース41として、エアバッグ20の各取付部30を係止して、取付部30や取付ブラケット15とともに、取付ボルト16により、インナパネル2に対して、共締めされる取付片部45を備えたものを示した。しかし、ケースは、別途、取付部と別位置で、インナパネルに対して、ボルト止め等して取り付ける構成としてもよい。但し、その場合でも、ケース内に収納したエアバッグから延びる取付部をケースの内周側から外周側に突出させるように、ケースには、突出用開口を設ける必要が生ずる。ちなみに、この場合の突出用開口は、周囲を天井壁部42の部位等に囲まれたスリット状の孔でなくとも、車内側若しくは車外側の縁から凹むような凹部から、形成してもよい。
【符号の説明】
【0050】
20…エアバッグ、
20a…(エアバッグの)上縁、
21…ガス流入部、
29…周縁部、
29a…(係止孔周縁)引出部、
29b…係止孔、
30(30A,30B,30C,30D,30E)…取付部、
35…本体部、
41,41A,41B…ケース、
47,48…開口部、
49…係止片部、
50,50A…係止突起、
55…位置決め孔、
M…頭部保護エアバッグ装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
展開膨張時に車両の窓を覆うエアバッグが、
エアバッグの下縁側を上縁側に接近させるように折り畳まれた状態で、下方側を開口させた断面逆U字状の合成樹脂製のケースに収納されるとともに、
前記エアバッグの上縁側に配置された複数の取付部を、前記ケースの内周側から外周側へ突出させて、前記窓の上縁側の前後方向に沿わせて、車両のボディ側に取り付けることにより、
前記ケースとともに、車両に搭載される頭部保護エアバッグ装置であって、
前記エアバッグが、隣接する前記取付部間の少なくとも1箇所の上縁側に、貫通した係止孔を配設させ、
前記ケースが、
前記係止孔に対応する位置の外周面側に、前記係止孔に挿入されて前記エアバッグの上縁側を係止する係止突起を突設させ、かつ、車内側の縁から車外側方向に延びる開口部を前記係止突起の前後両側に配置させた片持ち梁状として、内周側に撓み可能な係止片部を、配設させて構成され、
前記エアバッグが、前記係止孔に前記係止突起を貫通させ、かつ、前記係止孔の周縁を、前記開口部を経て前記係止片部の外周面側に配置させた状態として、前記ケース内に収納されて、車両に搭載されることを特徴とする頭部保護エアバッグ装置。
【請求項2】
前記エアバッグの本体部が、
膨張用ガスの流入時に車内側壁部と車外側壁部とを離すように膨らむ袋状のガス流入部と、前記ガス流入部の周囲に配置されて、前記車内側壁部と前記車外側壁部とを結合させたように形成される周縁部と、を設ける袋織りにより、製造されるとともに、
前記袋織り時に、複数、並設されて製造され、かつ、裁断して形成される構成として、
裁断時の位置決め孔が、前記本体部の上縁側における前記周縁部に形成されるとともに、前記係止孔として兼用されるように、形成されていることを特徴とする請求項1に記載の頭部保護エアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−245854(P2012−245854A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118110(P2011−118110)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】