説明

頭部装着型表示装置

【課題】頭部装着型表示装置の小型化や軽量化を実現する。
【解決手段】頭部装着型表示装置1は、第1の光L1と第2の光とを射出する画像形成部2と、第1の光L1が入射する領域で第1の偏光L3が透過し、第2の光L2が入射する領域で第2の偏光L4が透過する特性の偏光素子3と、偏光素子3から射出された第1の偏光L3と第2の偏光L4のうちの一方の偏光が透過し、他方の偏光が反射する特性の偏光分離面8を含み、偏光分離面8を透過した偏光を観察者の両眼の片方へ導くとともに偏光分離面8で反射した偏光を観察者の両眼のもう片方へ導く導光部6を備える。導光部6は、偏光分離面8を透過した偏光が入射する位置に配置された1/4波長板12と、1/4波長板12を通った偏光が反射して折り返される反射ミラー13を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭部装着型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置の1つとして、頭部装着型表示装置(ヘッドマウントディスプレイ)が知られている(例えば、特許文献1参照)。頭部装着型表示装置は、コンパクトでありながら、実質的に大画面の画像を視聴可能である。特許文献1の頭部装着型表示装置は、液晶パネルから射出される光を半透過膜分離し、分離した一方の光を左目へ導くとともに他方の光を右目へ導く構造である。
【0003】
近年、3D画像を視聴可能な頭部装着型表示装置が期待されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2の頭部装着型表示装置は、画像を外界情景に重ねて表示可能な表示部が左目用と右目用に個別に設けられており、左目と右目で異なる画像を表示可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−177785号公報
【特許文献2】特開2008−58461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2のような頭部装着型表示装置は、左目用の表示部と右目用の表示部を個別に設けるので、装置の小型化や軽量化を実現することが難しい。また、各表示部から眼球に光を導く光学系を左目用と右目用のそれぞれに設けると、光学系の構成が複雑になり、装置の小型化や軽量化を実現することが難しい。このように従来の頭部装着型表示装置は、小型化や軽量化を実現することが難しく、携帯性や利便性を実現することが困難である。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑み成されたものであって、左目と右目とで異なる画像を表示可能であり、装置の小型化や軽量化を実現可能な頭部装着型表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の頭部装着型表示装置は、右目用画像を示す第1の光及び左目用画像を示す第2の光を射出する画像形成部と、前記画像形成部から射出された光が入射する位置に配置され、前記第1の光が入射する領域で第1の偏光が透過するとともに前記第2の光が入射する領域で第2の偏光が透過する特性の偏光素子と、前記偏光素子から射出された前記第1の偏光と第2の偏光のうちの一方の偏光が透過するとともに他方の偏光が反射する特性の偏光分離面を含んで構成され、前記偏光分離面を透過した偏光を観察者の両眼のうちの一方へ導くとともに前記偏光分離面で反射した偏光を前記観察者の両眼のうちの他方へ導く導光部と、を備え、前記導光部は、前記偏光分離面を透過した偏光が入射する位置に配置された1/4波長板と、前記1/4波長板を通った偏光が反射して折り返される反射ミラーと、を含む。
【0008】
上記の頭部装着型表示装置において、画像形成部から射出されて偏光素子を通った右目画像を示す第1の偏光と左目用画像を示す第2の偏光は、互いに異なる偏光状態となり、一方の偏光が偏光分離面を透過して観察者の両眼の片方へ導光され、他方の偏光が偏光分離面で反射して観察者の両眼のもう片方へ導光される。このように、同一の画像形成部で形成された左目用画像と右目用画像とが、観察者の左目と右目とに別れて観察されるので、左目用と右目用に個別に画像形成部が設けられている構成と比較して、装置の小型化や軽量化を実現することができる。
【0009】
また、偏光分離面を透過した偏光は、反射ミラーで反射する前後で1/4波長板を2回通ることになり、1/4波長板へ入射前とは直交する偏光へ変換されて偏光分離面へ再度入射し、偏光分離面で反射する。このように、左目用画像を示す偏光と右目用画像を示す偏光は、その一方の偏光が反射ミラーを経由して偏光分離面で反射し、他方の偏光が反射ミラーを経由しないで偏光分離面で反射する。したがって、左目用画像を示す偏光と右目用画像を示す偏光は、偏光素子から偏光分離面へ向う偏光の光路に関して互いに対称的に進行することになり、観察者の左目と右目とに分けて導光することが容易になる。よって、導光部の構成をシンプルにすることができ、装置の小型化や軽量化を実現することができる。
【0010】
上記の頭部装着型表示装置において、前記偏光素子は、透過軸に平行な偏光が透過する特性を有し、前記第1の光が入射する領域の透過軸と前記第2の光が入射する領域の透過軸とが互いに直交していてもよい。
【0011】
このようにすれば、第1の光のうちで偏光素子を透過する第1の偏光と、第2の光のうちで偏光素子を透過する第2の偏光とが直交することになり、偏光分離面で第1の偏光と第2の偏光を高精度に分離することができる。
【0012】
上記の頭部装着型表示装置において、前記画像形成部は、複数の画素からなり前記第1の光を射出する第1の画素グループと、複数の画素からなり前記第2の光を射出する第2の画素グループとを含み、前記第1の画素グループを構成する画素が所定の方向に連続して並んでいるとともに前記第2の画素グループを構成する画素が前記所定の方向に連続して並んでいてもよい。
【0013】
このようにすれば、各画素グループを構成する画素が所定の方向に連続して並んでいるので、各画素グループを構成する画素の駆動方法をシンプルにすることができる。
【0014】
上記の頭部装着型表示装置において、前記画像形成部は、複数の画素からなり前記第1の光を射出する第1の画素グループと、複数の画素からなり前記第2の光を射出する第2の画素グループとを含み、前記第1の画素グループを構成する画素と前記第2の画素グループを構成する画素は、互いに交差する第1方向と第2方向のそれぞれにおいて交互に並んでいてもよい。
【0015】
このようにすれば、各画素グループの画素の分布が第1方向と第2方向のいずれにおいても均一になるので、画素の分布の偏りによる表示品質の低下を抑制することができる。
【0016】
上記の頭部装着型表示装置は、前記画像形成部と前記偏光分離素子との間の光路に配置され、前記偏光分離素子を経由した偏光を前記観察者の左目又は右目に結像させる結像部を備えていてもよい。
【0017】
このようにすれば、画像形成部と偏光分離面との間の光路に結像部が配置されているので、左目用画像を左目に結像させる光学系と右目画像を右目に結像させる光学系の少なくとも一部を共通化することができ、装置の小型化や軽量化を実現することができる。
【0018】
上記の頭部装着型表示装置において、前記導光部は、前記偏光分離面から前記一方の偏光の結像面までの光路長と前記偏光分離面から前記他方の偏光の結像面までの光路長の違いによる焦点のずれを補正する焦点補正部を含んでいてもよい。
【0019】
このようにすれば、左目用画像と右目用画像をそれぞれ同じ結像部で結像させる場合に、偏光分離面から一方の偏光の結像面までの光路長と、偏光分離面から他方の偏光の結像面までの光路長の違いに起因するピンボケ等を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施形態の頭部装着型表示装置を示す図である。
【図2】第1実施形態における画像形成部の画素配列を示す平面図である。
【図3】第1実施形態における画素を拡大して示す平面図である。
【図4】第1実施形態における偏光素子を示す平面図である。
【図5】第2実施形態における画像形成部の画素配列を示す平面図である。
【図6】第2実施形態における画像形成部のサブ画素組の構成を示す回路図である。
【図7】第3実施形態における画像形成部の画素配列を示す平面図である。
【図8】第3実施形態における偏光素子を示す平面図である。
【図9】(A)〜(F)は、偏光素子の製造方法の一例を示す工程図である。
【図10】(G)〜(L)は、図9(F)から続く工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態及び実施例について図面を参照しながら説明する。説明に用いる図面中の構造の寸法や縮尺は、実際と異なることがある。
【0022】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の頭部装着型表示装置を示す図である。図1に示すヘッドマウントディスプレイ(頭部装着型表示装置)1は、互いに異なる左目用画像と右目用画像を、観察者の左目と右目に分けて表示することができる。上記の左目用画像及び右目用画像は、例えば両目の視差を考慮した画像であり、観察者は、3D画像を観察することができる。なお、ヘッドマウントディスプレイ1は、上記のように互いに異なる左目用画像と右目用画像を表示するモードの他に、左目に左目用画像を表示し、かつ右目に左目用画像と同じ右目用画像を表示するモードを有しており、通常の画像を表示することもできる。
【0023】
ヘッドマウントディスプレイ1は、右目用画像を示す第1の光L1と左目用画像を示す第2の光L2とを射出する画像形成部2と、画像形成部2から射出された第1の光L1及び第2の光L2が入射する位置に配置された偏光素子3と、偏光素子3から射出された光が入射する位置に配置された結像部4と、結像部4を通った光が入射する位置に配置された偏光分離素子5を含んで構成された導光部6と、画像形成部2を駆動する駆動部7を備える。
【0024】
偏光素子3は、画像形成部2から第1の光L1が入射する領域で第1の偏光L3が透過し、第2の光L2が入射する領域で第2の偏光L4が透過する特性を有する。偏光分離素子5は、偏光素子3から射出された第1の偏光L3と第2の偏光L4のうちの一方の偏光が透過するとともに他方の偏光が反射する特性の偏光分離面8を有する。本実施形態では、第1の偏光L3が偏光分離面8で反射し、第2の偏光L4が偏光分離面8を透過する構成について説明する。
【0025】
上記のヘッドマウントディスプレイ1の各部は、実際には、ヘッドマウントディスプレイ1の一部を構成するメガネ状のフレームに取り付けられている。観察者がこのフレームを装着すると、観察者の左目あるいは右目と、ヘッドマウントディスプレイ1の各部との相対位置が固定される。導光部6は、ヘッドマウントディスプレイ1を装着した観察者に対して、偏光分離素子5で反射した第1の偏光L3を観察者の右目へ導くとともに、偏光分離素子5を透過した第2の偏光L4を観察者の左目へ導くことができる。
【0026】
偏光分離面8で反射した第1の偏光L3は、偏光素子3から偏光分離面8へ向う光の光路(進行方向)に対してほぼ直角に進行した後、観察者の右目にて結像する。第1の偏光L3は、右目用画像を示す第1の光L1の一部又は全部であり、観察者は右目で右目用画像を観察することができる。
【0027】
導光部6は、偏光分離面8を透過した第2の偏光L4が入射する位置に配置された1/4波長板12と、1/4波長板12を通った第2の偏光L4が反射して折り返される反射ミラー13と、を含む。偏光分離面8を透過した第2の偏光L4は、1/4波長板12を通ってミラー13で反射して折り返される。ミラー13で反射した第2の偏光L4は、1/4波長板12を通って偏光分離面8へ再度入射して偏光分離面8で反射し、偏光素子3から偏光分離面8へ向う光の光路に関して、ミラー13を介することなく偏光分離面8で反射した第1の偏光L3とは対称的に進行する。ミラー13を介して偏光分離面8で反射した第2の偏光L4は、観察者の左目にて結像する。第2の偏光L4は、左目用画像を示す第2の光L2の一部又は全部であり、観察者は左目で左目用画像を観察することができる。
【0028】
次に、ヘッドマウントディスプレイ1の各部について詳しく説明する。図2は、第1実施形態における画像形成部の画素配列を示す平面図である。図3は、第1実施形態における画素を拡大して示す平面図である。
【0029】
図2に示すように、画像形成部2は、互いに直交する第1方向(X方向)と第2方向(Y方向)とに等間隔で配列された複数の画素Pを有する。第1方向は、例えば画像形成部2の水平走査方向であり、Y方向は、例えば画像形成部2の垂直走査方向である。
【0030】
複数の画素Pは、第1の画素グループG1又は第2の画素グループG2に属している。本実施形態において、第1の画素グループG1は右目用画像を形成し、第2の画素グループG2は左目用画像を形成する。なお、第1の画素グループG1が左目用画像を形成し、第2の画素グループG2が右目用画像を形成してもよい。
【0031】
本実施形態において、第1の画素グループG1と第2の画素グループG2は、それぞれ、第2方向(Y方向)に連続して並ぶ画素(以下、画素列という)で構成される。第1の画素グループG1に属する画素列と第2の画素グループG2に属する画素列は、第1方向と直交する第2方向(X方向)に交互に繰り返し並んでいる。
【0032】
なお、各画素グループは、第2方向に連続的に並ぶ画素(以下、画素行という)で構成され、第1の画素グループに属する画素行と第2の画素グループに属する画素行とが、第1方向に交互に繰り返し並んでいてもよい。
【0033】
図3に示すように、各画素Pは、赤色光を発する赤用のサブ画素Prと、緑色光を発する緑用のサブ画素Pgと、青色光を発する青用のサブ画素Pbで構成されている。画素Pは、赤用のサブ画素Prと緑用のサブ画素Pgと青用のサブ画素Pbから射出される3色の色光によって、フルカラーの1画素を表示可能である。本実施形態では、フルカラーの1画素を画素、各色の画素をサブ画素として扱うが、各色用の画素(サブ画素)を1画素として扱うこともできる。
【0034】
各画素Pのサイズは、例えば第1方向と第2方向のサイズがそれぞれ15μm程度である。また、各サブ画素のサイズは、例えば第1方向のサイズが4μm程度であり、第2方向のサイズが14μm程度である。すなわち、サブ画素の間隔は1μm程度である。
【0035】
本実施形態において、同じ色用のサブ画素は、第2方向(Y方向)に連続して並んでおり、異なる色用の画素は、第1方向と直交する第1方向(X方向)に繰り返し並んでいる。すなわち、第1方向に連続的に並ぶ3つのサブ画素が1つの画素Pを構成している。
【0036】
本実施形態の画像形成部2は、各サブ画素に有機EL素子が配置された有機ELパネルにより構成されている。この有機EL素子は、1対の電極の間に有機発光層を含んだ有機層が配置された構造である。
【0037】
駆動部7は、画像形成部2は、ヘッドマウントディスプレイ1の外部のDVDプレイヤーやPC、携帯情報端末等の信号源から画像データを有線又は無線により受信することができる。駆動部7は、外部から受信した画像データに基づき、各種配線や各種スイッチング素子を介して、各サブ画素の有機EL素子の有機発光層に画像データに規定された階調値に対応する電流を流すことができる。有機EL素子は、有機発光層に流れる電流値に応じた光量で発光する。画像形成部2は、各サブ画素の有機EL素子から発せられた光により各サブ画素を表示することができる。
【0038】
駆動部7は、第1の画素グループG1と第2の画素グループG2とで異なる画像を表示する場合に、レンダリング処理等の各種画像処理を適宜行って、第1の画素グループG1の各画素Pを、この画素で表示する右目用画像の画素の画素値に応じて駆動することができる。同様に、駆動部7は、第2の画素グループG2の各画素Pを、この画素で表示する左目用画像の画素の画素値に応じて駆動することができる。
【0039】
なお、画像形成部の構成は、適宜変更可能である。例えば、画像形成部は、光源部と、光源部から射出された光のうち直線偏光が透過する特性の入射側偏光板と、入射側偏光板を等価した光を変調する液晶パネルとを含んで構成されていてもよい。また、画像形成部は、光源部と、光源部から射出された光により画像を形成するデジタルミラーデバイスとを含んで構成されていてもよい。また、画像形成部は、単色光で構成される画像を形成する構成でもよいし、2色又は4色以上の色光で構成される画像を形成する構成でもよい。
【0040】
図4は、第1実施形態における偏光素子を示す平面図である。図4に示す偏光素子3は、ワイヤーグリッド偏光素子であり、ガラス等の誘電体10と、誘電体10の表面に形成された複数の金属線11を有する。なお、偏光素子3は、実際には画像形成部2において第1の光L1及び第2の光L2が射出される光射出面と接触しており、画像形成部2と一体的に設けられている。
【0041】
偏光素子3は、画像形成部2の第1の画素グループG1から射出された第1の光L1が入射する第1領域A1と、第2の画素グループG2から射出された第2の光L2が入射する第2領域A2を有する。第1領域A1と第2領域A2のパターンは、第1の画素グループG1の画素と第2の画素グループG2の画素の配置パターンと対応している。すなわち、第1領域A1と第2領域A2は、それぞれ第2方向(Y方向)に帯状に延びており、第1方向に繰り返し配置されている。
【0042】
第1領域A1の第1方向の幅は、例えば第1の画素グループG1の画素Pの第1方向の幅と同程度である。第2領域A2の第1方向の幅は、例えば第2の画素グループG2の画素Pの第1方向の幅と同程度である。第1領域A1と第2領域A2の各領域において金属線11は、この領域の外周よりも0.5μmから1μm程度内側の範囲に設けられている。すなわち、第1領域A1において金属線11が設けられている領域と、第2領域A2において金属線11が設けられている領域との間には、金属線11が設けられていない領域がある。画像形成部2の光射出面の法線方向から見た偏光素子3は、金属線11が設けられていない領域が画像形成部2のサブ画素間の領域と重なるように、配置されている。
【0043】
金属線11は、第1領域A1においてX方向に延びており、第2領域A2において第1領域A1の金属線11と直交するY方向に延びている。金属線11の間隔は、可視光の波長よりも短く(例えば300nm未満)設定され、ここでは50nm程度である。
【0044】
偏光素子3は、金属線11に直交する透過軸に平行な偏光が透過し、金属線11と平行な反射軸に平行な偏光が反射する特性を有する。すなわち、透過軸は、第1領域A1においてY方向に平行であり、第2領域A2においてX方向に平行である。このように偏光素子3は、第1領域A1における透過軸が第2領域A2における透過軸と直交している。
【0045】
図1の説明に戻り、結像部4は、導光部6を経由した左目用画像を示す光が観察者の左目で結像し、導光部6を経由した右目用画像を示す光が観察者の右目で結像するように、画像形成部2から射出されて偏光素子3を通った偏光を屈折させる。結像部4は、複数のレンズ等によって構成される。
【0046】
上記のように、ヘッドマウントディスプレイ1を装着した観察者の両目の位置に対する画像形成部2の相対位置は、フレームの形状や寸法等により定まる。結像部4は、画像形成部2から射出された偏光が観察者の左目あるいは右目で結像するように、観察者の両目と画像形成部2の相対位置に基づいて、適宜設計可能である。なお、結像部4は、観察者によってピンボケが認識されない程度の許容範囲をもって、画像形成部2から射出された光を結像させればよい。
【0047】
本実施形態の導光部6は、偏光分離面8を有する偏光分離素子5と、偏光分離面8で反射した偏光が入射する位置に配置された右目用導光部15と、偏光分離面8を透過した偏光が入射する位置に配置された左目用導光部16を含む。
【0048】
偏光分離素子5は、透過軸に平行な偏光が透過し、かつ透過軸に直交する反射軸に平行な偏光が反射する特性を有する。本実施形態の偏光分離素子5は、画像形成部2から偏光分離素子5に向う光路(光の進行方向)に直交する面内に射影した透過軸が偏光素子3の第1領域A1における透過軸と直交するように配置されている。
【0049】
本実施形態の偏光分離素子5は、偏光ビームスプリッタープリズムにより構成されている。偏光ビームスプリッタープリズムは、断面がほぼ直角二等辺三角形の柱状のプリズム17を含む。以下の説明で、三角柱状のプリズムの軸方向の周囲の側面のうち、断面形状の直角二等辺三角形において互いに直交する2辺を除いた辺(斜辺)を含む面を斜面という。偏光ビームスプリッタープリズムは、1対のプリズム17の斜面を互いに貼り合わせた直方体状である。
【0050】
プリズム17の斜面には、偏光分離面8を構成する偏光ビームスプリッター膜が形成されている。本実施形態において、偏光分離面8は、結像部4の光軸に対して略45°の角度をなして傾斜している。偏光分離素子5は、透過軸がX方向に平行であり、偏光分離面8に対するS偏光が反射し、P偏光が透過する特性である。なお、偏光分離素子5は、ワイヤーグリッド偏光素子によって構成されていてもよい。
【0051】
画像形成部2から射出された右目用画像を示す第1の光L1は、偏光素子3の第1領域A1に入射する。偏光素子3の第1領域A1に入射した第1の光L1のうち、偏光方向がY方向の直線偏光は、第1の偏光L3として偏光素子3から射出される。偏光素子3から射出された右目用画像を示す第1の偏光L3は、偏光分離素子5の反射軸に平行な直線偏光として偏光分離素子5へ入射し、偏光分離面8で反射して右目用導光部15へ入射する。
【0052】
また、画像形成部2から射出された左目用画像を示す第2の光L2は、偏光素子3の第2領域A2に入射する。偏光素子3の第2領域A2に入射した第2の光L2のうち、偏光方向がX方向の直線偏光は、第2の偏光L4として偏光素子3から射出される。偏光素子3から射出された左目用画像を示す第2の偏光L4は、偏光分離素子5の透過軸に平行な直線偏光として偏光分離素子5へ入射し、偏光分離面8を透過して左目用導光部16へ入射する。
【0053】
右目用導光部15は、偏光分離面8で反射した偏光が入射する位置に配置されたレンズ18と、レンズ18を通った偏光が入射する位置に配置されたミラー19を含む。レンズ18は、後述するレンズ20とともに焦点補正部21を構成している。ミラー19は、レンズ18を通った光がミラー19で反射した後に観察者の右目に向って進行するように、配置されている。
【0054】
左目用導光部16は、偏光分離面8を透過した第2の偏光L4が入射する位置に配置された1/4波長板12と、1/4波長板12を通った偏光が反射して折り返される反射ミラー13と、反射ミラー13を介して偏光分離面8で反射した偏光が入射する位置に配置されたレンズ20と、レンズ20を通った偏光が入射する位置に配置されたミラー23を含む。
【0055】
本実施形態の1/4波長板12は、その片面が偏光分離素子5のプリズム17の外面と接触するように、配置されている。上記の外面は、画像形成部2から射出されて偏光分離面8を透過した偏光が偏光分離素子5から射出される面である。偏光素子3から偏光分離面8へ入射する偏光の進行方向に直交する面に射影した1/4波長板12の進相軸は、偏光分離面8の透過軸とほぼ45°の角度をなしている。
【0056】
本実施形態の反射ミラー13は、金属等の光反射材料からなる平面状の鏡面を有する。反射ミラー13は、1/4波長板12において偏光分離素子5と接触する面の反対面に接触している。反射ミラー13は、その鏡面が画像形成部2から偏光分離素子5へ向う偏光の進行方向に直交するように、配置されている。
【0057】
画像形成部2で形成された左目用画像を示す第2の光L2は、偏光素子3の第2領域A2に入射する。偏光素子3の第2領域A2に入射した第2の光L2のうち、偏光方向がY方向の直線偏光は、第2の偏光L4として偏光素子3から射出される。偏光素子3から射出された左目用画像を示す第2の偏光L4は、偏光分離素子5の透過軸に平行な直線偏光として偏光分離素子5へ入射し、偏光分離面8を透過する。
【0058】
偏光分離面8を透過した左目用画像を示す偏光は、1/4波長板12を通って反射ミラー13へ入射し、反射ミラー13で反射する。反射ミラー13で反射した左目用画像を示す偏光は、反射ミラー13での反射前とは進行方向が反転し、1/4波長板12を再度通って偏光分離面8へ再度入射する。左目用画像を示す偏光は、反射ミラー13での反射前後に1/4波長板12を二回通ることになり、反射ミラー13で反射した後に偏光分離面8へ入射するときに第1の偏光L5へ変換されている。
【0059】
反射ミラー13から偏光分離面8へ入射した左目用画像を示す第1の偏光L5は、偏光分離面8で反射し、偏光素子3から偏光分離素子5へ向う偏光の光路に関して右目用画像を示す第1の偏光L3とは対称的に、進行する。偏光分離面8で反射した左目用画像を示す第1の偏光L4は、レンズ20及びミラー23を経由して観察者の左目に結像する。これにより、観察者は、左目で左目用画像を観察することができる。
【0060】
レンズ18とレンズ20(焦点補正部21)は、偏光分離面8で反射した右目用画像を示す第1の偏光L3の結像面(右目)と偏光分離面8との間の光路長と、偏光分離面8を透過した左目用画像を示す偏光の結像面(左目)と偏光分離面8との間の光路長の違いによる焦点のずれを補正するように設けられている。焦点補正部21は、必要に応じて設けられ、省略される場合もある。ミラー23は、レンズ20を通った光がミラー23で反射した後に観察者の左目に向って進行するように、配置されている。
【0061】
以上のような構成のヘッドマウントディスプレイ1は、同一の画像形成部2で形成された左目用画像と右目用画像を、それぞれ、左目と右目で別々に観察することができる。したがって、左目用の画像形成部と右目用の画像形成部が別途設けられている構成と比較して、装置の小型化や軽量化を実現することができる。
【0062】
また、偏光分離面8を透過した左目用画像を示す偏光が1/4波長板12を通って反射ミラー13で折り返されるように構成されているので、偏光分離素子5に対して画像形成部2とは反対側の光路を格段に短縮することができ、装置サイズを小型にすることができる。また、偏光分離素子で反射した右目用画像を示す第1の偏光L3の光線束の中心軸と、偏光分離素子で反射した左目用画像を示す第1の偏光L5の光線束の中心軸を近づけることができる。したがって、偏光分素子Aから観察者の右目又は左目までの光路に配置される光学部品、例えばレンズ19やレンズ20の光軸をほぼ同軸になるように近づけることができる。よって、画像形成部2から偏光分離素子5へ向う偏光の進行方向における装置サイズを小型にすることができる。また、左目用画像を示す偏光と右目用画像を示す偏光の光路長の差を減らすことができ、左目用画像あるいは右目用画像のピンボケを抑制することができる。
【0063】
また、画像形成部2と偏光分離素子5との間の光路に結像部4が配置されているので、左目用画像を左目に結像させる光学系と右目用画像を右目に結像させる光学系の少なくとも一部を共通化することができ、装置の小型化や軽量化を実現することができる。
【0064】
また、焦点補正部21は、偏光分離面8から左目用画像の結像面までの光路長と偏光分離面8から右目用画像の結像面までの光路長の違いによる焦点のずれを補正するので、左目用画像と右目用画像のいずれについても左目に至る光路長と右目に至る光路長の違いによるピンボケ等を抑制することができる。
【0065】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。図5は、第2実施形態における画像形成部の画素配列を示す平面図である。図6は、第2実施形態における画像形成部のサブ画素組の構成を示す回路図である。
【0066】
本実施形態の画像形成部2Bにおいて、複数のサブ画素は、赤色光を射出する第1の赤用のサブ画素Pr1及び第2の赤用のサブ画素Pr2と、緑色光を射出する第1の緑用のサブ画素Pg1及び第2の緑用のサブ画素Pg2と、青色光を射出する第1の青用のサブ画素Pb1及び第2の青用のサブ画素Pb2と、を含む。
【0067】
第1の赤用のサブ画素Pr1と第2の赤用のサブ画素Pr2は、一組のサブ画素組Pr3を構成しており、X方向にて隣り合っている。同様に、第1の緑用のサブ画素Pg1と第2の緑用のサブ画素Pr2はX方向にて隣り合っており、第1の青用のサブ画素Pb1と第2の青用のサブ画素Pb2はX方向にて隣り合っている。赤用のサブ画素組Pr3と緑用のサブ画素組と青用のサブ画素組は、X方向に周期的に繰り返し配列されている。第1の各色用のサブ画素は、Y方向に連続的に並んでおり、また、第2の各色用のサブ画素もY方向に連続的に並んでいる。
【0068】
X方向にサブ画素1つおきに並ぶ3つのサブ画素は、フルカラーの1画素を構成している。具体的には、第1の赤用のサブ画素Pr1と第1の緑用のサブ画素Pg1と第1の青用のサブ画素Pb1は、第1の画素P1を構成しており、第2の赤用のサブ画素Pr2と第2の緑用のサブ画素Pg2と第2の青用のサブ画素Pb2は、第2の画素P2を構成している。第1の画素P1は、第1の画素グループを構成しており、第2の画素P2は、第2の画素グループを構成している。
【0069】
本実施形態において各色用のサブ画素組は、各サブ画素への信号のスイッチングを行うトランジスターや配線が共通化された構成である。ここでは、赤用のサブ画素組Pr3を例に挙げて、サブ画素組の構成を説明する。
【0070】
図6に示す画像形成部2Bは、X方向に延びて互いに平行な複数の走査線30と、走査線30に交差して延びる複数のデータ線31を含む。走査線30とデータ線31とに囲まれる各領域は、1つのサブ画素組に相当する領域である。また、画像形成部2Bは、X方向に並ぶサブ画素組の行ごとに設けられた第1電源線32、第2電源線33、及び第3電源線34を含む。第1ないし第3電源線は、例えば、走査線30と平行に設けられる。
【0071】
サブ画素組Pr3は、選択トランジスター35、駆動トランジスター36、第1有機EL素子37、第2有機EL素子38、及び容量39を含む。第1有機EL素子37から発せられた光は、第1の画素グループに属する第1の赤用のサブ画素Pr1から射出される。第2有機EL素子38から発せられた光は、第2の画素グループに属する第2の赤用のサブ画素Pr2から射出される。
【0072】
第1有機EL素子37は、共通電極40を陽極とし、第1対向電極41を陰極として構成される。第2有機EL素子38は、共通電極40を陽極とし、第2対向電極42を陰極として構成される。第1有機EL素子37と第2有機EL素子38は、陽極と陰極との間に閾値(以下、発光閾値という)以上の電圧が印加されると、有機発光層に陽極から陰極への向きに電流が流れ、この電流の値に応じた光量の光を発光する。なお、第1有機EL素子37と第2有機EL素子38は、共通電極40を陰極とし、第1対向電極41および第2対向電極42を陽極として構成されていてもよい。
【0073】
選択トランジスター35のゲートは、走査線30と電気的されている。選択トランジスター35のソースとドレインのうち一方はデータ線31と電気的に接続され、選択トランジスター35のソースとドレインのうち他方は駆動トランジスター36のゲートと電気的に接続されている。選択トランジスター35がオフ状態であると、データ線31を介して駆動トランジスター36のゲートに電圧を印加することが実質的に不能である。走査線30に選択信号が供給されて選択トランジスター35がオン状態になると、データ線31を介して駆動トランジスター36のゲートに電圧を印加可能になる。
【0074】
駆動トランジスター36のソースとドレインのうち一方は第1電源線32と電気的に接続されている。駆動トランジスター36のソースとドレインのうち他方は共通電極40、すなわち、第1有機EL素子37と第2有機EL素子38のそれぞれの一方の電極と電気的に接続されている。第1有機EL素子37の他方の電極である第1対向電極41は、第2電源線33と電気的に接続されている。第1有機EL素子37の他方の電極である第2対向電極42は、第3電源線34と電気的に接続されている。
【0075】
容量39の一方の電極は、選択トランジスター35のゲートと電気的に接続されている。容量39の他方の電極は、第1電源線32と電気的に接続されている。容量39は、データ線31及び選択トランジスター35を介して駆動トランジスター36のゲートに信号(電圧)が印加されたときに充電され、この信号を所定の期間にわたって保持することができる。
【0076】
データ線31及び選択トランジスター35を介して駆動トランジスター36のゲートに電圧が印加されると、共通電極40には、第1電源線32を介して、第1電位が印加される。第1対向電極41には、第2電源線33を介して、第2電位又は第3電位が印加される。第2電位は、第1電位よりも低電位であり、第1電位との差分が発光閾値以上に設定されている。第3電位は、第1電位よりも低電位かつ第2電位よりも高電位であって、第1電池との差分が発光閾値未満に設定されている。すなわち、共通電極40に第1電位が印加されている状態で、第1対向電極41に第2電位が印加されていると第1有機EL素子は発光可能であり、第1対向電極41に第3電池が印加されていると第1有機ELは発光不能である。
【0077】
第1対向電極41に第2電位が印加されて第1有機EL素子37が発光可能な期間に、第2対向電極42には、第3電源線34を介して第3電位が印加され、第2有機EL素子38が発光不能になる。また、第1対向電極41に第3電位が印加されて第1有機EL素子37が発光不能な期間に、第2対向電極42には、第3電源線34を介して第2電位が印加され、第2有機EL素子38が発光可能になる。
【0078】
第2実施形態のヘッドマウントディスプレイは、同一の画像形成部2Bで形成された左目用画像と右目用画像を、それぞれ、左目と右目で別々に観察することができ、装置の小型化や軽量化を実現することができる。また、第1有機EL素子37が発光可能な期間と第2有機EL素子が発光可能な期間が重複しないので、右目用画像を示す第1の光L1と左目用画像を示す第2の光L2が時間順次で択一的に画像形成部2から射出されることになる。したがって、偏光分離面8の偏光分離機能が完全でない場合でも、右目用画像と左目用画像とが混じり合って観察されることが抑制される。
【0079】
また、第1有機EL素子37と第2有機EL素子38で、選択トランジスター35及び駆動トランジスター36が共通化されているので、画像形成部2Bの構成が複雑になることを避けることができる。
【0080】
また、画像形成部2Bは、有機ELパネルにより構成されており、液晶パネルを利用した画像形成部よりも応答性を高めることが容易である。したがって、右目用画像と左目用画像を時分割で表示する場合であっても、右目用画像と左目用画像の表示タイミングのずれを認識されにくくすることができ、滑らかな動画を表示すること等ができる。
【0081】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明する。図7は、第3実施形態における画像形成部の画素配列を示す平面図である。図8は、第3実施形態における偏光素子を示す平面図である。
【0082】
図7に示す画像形成部2Cは、2次元的に配列された複数の画素Pを有する。複数の画素Pは、第1の画素グループG3又は第2の画素グループG4に属している。本実施形態において、第1の画素グループG3を構成する画素Pと第2の画素グループG4を構成する画素Pは、互いに交差する第1方向(X方向)と第2方向(Y方向)のそれぞれにおいて交互に並んでいる。
【0083】
図8に示す偏光素子3Cは、第1実施形態と同様にワイヤーグリッド偏光素子で構成されている。偏光素子3Cは、画像形成部2の第1の画素グループG3から射出された第1の光が入射する第1領域A3と、第2の画素グループG4から射出された第2の光が入射する第2領域A4を有する。第1領域A3と第2領域A4のパターンは、第1の画素グループG3の画素と第2の画素グループG4の画素の配置パターンと対応している。すなわち、第1領域A1と第2領域A2は、互いに交差する第1方向(X方向)と第2方向(Y方向)のそれぞれにおいて交互に並んでいる。
【0084】
偏光素子3Cの金属線11は、第1領域A3においてX方向に延びており、第2領域A4において第1領域A3の金属線11と直交するY方向に延びている。すなわち、透過軸は、第1領域A3においてY方向に平行であり、第2領域A4においてX方向に平行である。このように偏光素子3Cは、第1領域A3における透過軸が第2領域A4における透過軸と直交している。
【0085】
第3実施形態のヘッドマウントディスプレイは、同一の画像形成部2Cで形成された左目用画像と右目用画像を、それぞれ、左目と右目で別々に観察することができ、装置の小型化や軽量化を実現することができる。
【0086】
また、第1の画素グループG3を構成する画素と第2の画素グループG4を構成する画素が、互いに交差する第1方向と第2方向のそれぞれにおいて交互に並んでいるので、各画素グループの画素の分布が第1方向と第2方向のいずれにおいても均一になる。したがって、各画素グループの画素の間が視認されにくくなり、画素の分布の偏りによる表示品質の低下を抑制することができる。
【0087】
次に、第3実施形態の偏光素子の構成に基づいて、偏光素子の製造方法の一例について説明する。なお、第1実施形態の偏光素子は、この製造方法を適用して製造することもできる。
【0088】
図9(A)〜図9(F)は、偏光素子の製造方法の一例を示す工程図である。図10(G)〜図10(L)は、図9(F)から続く工程図である。
【0089】
偏光素子3Cを製造するには、図9(A)に示すようにガラス等の誘電体からなる基板50の上にアルミニウム等の金属からなる金属膜51を蒸着法等で形成する。次いで、図9(B)に示すように、金属膜51を覆うようにネガ型のフォトレジストからなるレジスト膜52を塗布法等で形成し、このレジスト膜52にスポット形状がY方向に延びるスリット状の露光光が照射されるように、レジスト膜52を回折露光等によって露光する。スリット状の露光光(干渉縞)の間隔は、金属線11の間隔と同程度(例えば50nm程度)である。レジスト膜52において露光光が照射された領域は、現像液に対して不溶化される。
【0090】
次いで、図9(C)に示すように、フォトマスク53を介してレジスト膜52を露光する。このフォトマスク53は、第1領域A3の金属線11を形成する領域への露光光を遮光する遮光部54と、第2領域A4への露光光を通す開口55を含む。フォトマスク53を介して露光光が照射された領域のレジスト膜52は、現像液に対して不溶化される。
【0091】
次いで、図9(D)に示すように、回折露光及びフォトマスク53を用いた露光が施されたレジスト膜52を現像する。これにより、金属膜51のうちで第1領域A3の金属線11になる部分の間の相当する開口56を有するレジストパターン57が形成される。次いで、図9(E)に示すように、レジストパターン57をマスクとして金属膜51をエッチングする。これにより、第1領域A3の金属線11が形成される。次いで、図9(F)に示すように、レジストパターン57を金属膜51から剥離する。
【0092】
図10(G)示す断面は、図9(F)に示す断面を偏光素子の厚み方向の周りで90°回転した断面である。上記のようにレジストパターン57を剥離した後に、図10(H)に示すように、第1領域A3の金属線11が形成された金属膜51を覆うようにネガ型のフォトレジストからなるレジスト膜58を塗布法等で形成し、このレジスト膜58にスポット形状がX方向に延びるスリット状の露光光が照射されるように、レジスト膜58を回折露光等によって露光する。スリット状の露光光の間隔は、金属線11の間隔と同程度である。レジスト膜58において露光された領域は、現像液に対して不溶化される。
【0093】
次いで、図10(I)に示すように、フォトマスク59を介してレジスト膜58を露光する。このフォトマスク59は、第2領域A4の金属線11を形成する領域への露光光を遮光する遮光部60と、第1領域A3への露光光を通す開口61を含む。フォトマスク59を介して露光光が照射された領域のレジスト膜58は、現像液に対して不溶化される。
【0094】
次いで、図10(J)に示すように、回折露光及びフォトマスク59を用いた露光が施されたレジスト膜58を現像する。これにより、金属膜51のうちで第2領域A4の金属線11になる部分の間に相当するレジスト膜62に開口を有するレジストパターン63が形成される。次いで、図10(K)に示すように、レジストパターン63をマスクとして金属膜51をエッチングする。これにより、第2領域A4の金属線11が形成される。次いで、図10(L)に示すように、レジストパターン63を金属膜51から剥離する。以上のようにして、偏光素子3Cを製造することができる。
【0095】
なお、本発明の技術範囲は上記の実施形態に限定されるものではない。上記の実施形態で説明した要件は、適宜組み合わせることができる。また、上記の実施形態で説明した要件の少なくとも1つは、省略されることある。本発明の主旨を逸脱しない範囲内で多様な変形が可能である。
【0096】
なお、ヘッドマウントディスプレイ1は、右目用画像を示す第1の偏光L3が偏光分離面8を透過し、左目用画像を示す第2の偏光L4が偏光分離面8で反射するように、構成されていてもよい。この場合に、導光部6は、例えば右目用導光部と左目用導光部を、画像形成部2から偏光分離素子5へ向う光の進行方向を対称軸として反転させた構成に変更される。
【符号の説明】
【0097】
1・・・ヘッドマウントディスプレイ(頭部装着型表示装置)、2、2B、2C・・・画像形成部、3・・・偏光素子、3C・・・偏光素子、4・・・結像部、5・・・偏光分離素子、6・・・導光部、8・・・偏光分離面、21・・・焦点補正部、22・・・プリズム(反射部材)、G1・・・第1の画素グループ、G2・・・第2の画素グループ、G3・・・第1の画素グループ、G4・・・第2の画素グループ、L1・・・第1の光、L2・・・第2の光、L3・・・第1の偏光、L4・・・第2の偏光、P・・・画素、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
右目用画像を示す第1の光及び左目用画像を示す第2の光を射出する画像形成部と、
前記画像形成部から射出された光が入射する位置に配置され、前記第1の光が入射する領域で第1の偏光が透過するとともに前記第2の光が入射する領域で第2の偏光が透過する特性の偏光素子と、
前記偏光素子から射出された前記第1の偏光と第2の偏光のうちの一方の偏光が透過するとともに他方の偏光が反射する特性の偏光分離面を含んで構成され、前記偏光分離面を透過した偏光を観察者の両眼のうちの一方へ導くとともに前記偏光分離面で反射した偏光を前記観察者の両眼のうちの他方へ導く導光部と、を備え、
前記導光部は、前記偏光分離面を透過した偏光が入射する位置に配置された1/4波長板と、前記1/4波長板を通った偏光が反射して折り返される反射ミラーと、を含む頭部装着型表示装置。
【請求項2】
前記偏光素子は、透過軸に平行な偏光が透過する特性を有し、前記第1の光が入射する領域の透過軸と前記第2の光が入射する領域の透過軸とが互いに直交している請求項1に記載の頭部装着型表示装置。
【請求項3】
前記画像形成部は、複数の画素からなり前記第1の光を射出する第1の画素グループと、複数の画素からなり前記第2の光を射出する第2の画素グループとを含み、
前記第1の画素グループを構成する画素が所定の方向に連続して並んでいるとともに前記第2の画素グループを構成する画素が前記所定の方向に連続して並んでいる請求項1又は2に記載の頭部装着型表示装置。
【請求項4】
前記画像形成部は、複数の画素からなり前記第1の光を射出する第1の画素グループと、複数の画素からなり前記第2の光を射出する第2の画素グループとを含み、
前記第1の画素グループを構成する画素と前記第2の画素グループを構成する画素は、互いに交差する第1方向と第2方向のそれぞれにおいて交互に並んでいる請求項1又は2に記載の頭部装着型表示装置。
【請求項5】
前記画像形成部と前記偏光分離素子との間の光路に配置され、前記偏光分離素子を経由した偏光を前記観察者の左目又は右目に結像させる結像部を備える請求項1から4のいずれか一項に記載の頭部装着型表示装置。
【請求項6】
前記導光部は、前記偏光分離面から前記一方の偏光の結像面までの光路長と前記偏光分離面から前記他方の偏光の結像面までの光路長の違いによる焦点のずれを補正する焦点補正部を含む請求項5に記載の頭部装着型表示装置。

【図1】
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【図4】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−220776(P2012−220776A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87500(P2011−87500)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】