説明

顔写真撮影装置及びIDカード発行装置

【課題】 個人情報保護性に優れた顔写撮影装置等を提供する。
【解決手段】 顔写真撮影装置1は、被撮影者の顔を撮影するカメラ11と、被撮影者の識別情報が記録された媒体から識別情報を読み取る手段と、カメラ11で撮影された被撮影者の顔写真データを、読み取り手段から読み取られた被撮影者の識別情報(画像ファイル名)と関連付けて保存する手段と、を備える。画像ファイル名は、例えば、被撮影者毎に付与された無作為の数字であり、被撮影者の顔写真データが、この画像ファイル名と関連付けられて顔写真撮影装置1に保存される。顔写真データと画像ファイル名から被撮影者の氏名や社員番号を照合することはできないので、装置自体にセキュリティ性が高い個人情報が残ることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔写真と個人情報とが印刷されたIDカードを発行するための顔写真撮影装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
会社や学校などにおいてIDカード(社員証や学生証)を作成する方法としては、社員や生徒の情報(社員番号や所属など)が印刷又は記憶されたカードと、その社員や生徒の顔写真とを準備しておき、カードと写真と照らし合わせて人物を特定し、写真をカードに貼付するという方法がある。この場合、写真とカードとを照合する作業に手間がかかり、ミスが起こりやすい。
【0003】
また、IDカードに顔写真を貼り付けてIDカードを作成する装置も使用されている。このような装置は、発行済みのIDカードに顔写真貼り付けエリアを設定し、そのエリアに撮影された顔写真を貼り付けるものである。この装置を使用すれば、本人がカードを持参して写真撮影を行うので、写真とカードとの照合ミスなどはなくなるが、一度IDカードを発行してから顔写真を撮影して写真を貼り付けるという二段階のプロセスが必要になる。
【0004】
さらに、IDカード作成装置には、顔写真を撮影する装置と、個人情報が記録されたデータベースを備える、あるいは、このようなデータベースと通信手段を介して接続しているものがある。この装置では、撮影装置で撮影された顔写真と、データベースから読み出された個人情報とがカード基板上に印刷されてIDカードが作成される。このタイプの装置は、例えば、企業や学校などのように、大人数の写真や生徒の個人情報がデータベース化されて、大量のIDカードを発行する場合に適している。
【0005】
ところで、これらの装置においては、顔写真を撮影する際に、オペレータを手配したり全員を集合させなくてもすむのが好ましい。そこで、社員や生徒が共通で使用する場所(食堂や建物の入口など)に撮影装置を設置しておき、個人が適宜な時間に撮影することができれば便利である。ただし、データベースを内蔵・接続しているタイプのものは、共通場所に設置した場合、装置設置現場の責任者などがデータベースに不正にアクセスした場合などに個人情報が漏れるおそれがある。
【0006】
また、IDカード作成においては、個人情報のデータベースが存在しない場合であってもIDカードを任意に作成したい、あるいは、任意の人の会員証等のIDカードを簡易的に作成したい、などの要求がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであって、個人情報保護性に優れたIDカード用顔写真撮影装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の顔写真撮影装置は、 IDカード用の顔写真を撮影する装置であって、 被撮影者の顔を撮影するカメラと、 被撮影者の識別情報が記録された媒体から前記識別情報を読み取る手段と、 前記カメラで撮影された被撮影者の顔写真データを、前記読み取り手段から読み取られた被撮影者の識別情報と関連付けて保存する手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
前述の識別情報とは、例えば、画像ファイル名として被撮影者毎に付与された無作為の数字である。本発明によれば、被撮影者の顔写真データが、この画像ファイル名と関連付けられて顔写真撮影装置に保存される。ただし、被撮影者の氏名や社員番号は保存されない。画像ファイル名は被撮影者毎に付与された無作為の数字であるため、顔写真データと画像ファイル名から被撮影者の氏名や社員番号を照合することはできない。顔写真データと、その被撮影者の氏名や社員番号などを照合するには、これらの情報が保存されたデータベースが必要となるので、装置自体にセキュリティ性が高い個人情報が残ることがない。
【0010】
本発明においては、 前記識別情報読み取り手段に替えて、あるいはそれに加えて、前記識別情報を手動で打ち込む又は書き込む入力手段を有することもできる。
【0011】
IDカードに記載又は保存される個人情報を手動で入力し、その情報と撮影した顔写真とをIDカードに印刷することにより、事前に何の個人情報も得ていない任意の人のIDカードを随時発行できる。例えば、博物館や遊園地などの入場者の会員カードを随時発行できる。
【0012】
本発明においては、 前記カメラが上部ケーシングに収容されており、 前記識別情報読み取り手段が下部ケーシングに収容されており、 前記上部ケーシングが前記下部ケーシングに対して回動可能となるように連結されていて、 前記上部ケーシングのカメラの向きと前記下部ケーシングの操作パネルの向きとが一致したセルフ撮影位置と、両者の向きが異なるオペレータ撮影位置との両位置において撮影可能であることが好ましい。
【0013】
被撮影者自身が撮影を行うセルフ撮影の際は、一般的な自動顔写真撮影装置と同様に、上部ケーシングのカメラの向きが操作パネルの向きとが一致するようにセットして、被撮影者がカメラのレンズの前に位置して、操作パネルを操作しながら写真撮影を行う。一方、オペレータが撮影を行う場合は、上部ケーシングのカメラの向きが、操作パネルの向きと異なる方向、例えば反対方向を向くようにセットする。そして、被撮影者はカメラのレンズの前に位置し、オペレータは操作パネルの前に位置して、パネルを操作しながら写真撮影を行う。なお、カメラのレンズの向きと操作パネルの向きが一致するあるいは少しズレるようにセットした場合でも、オペレータによる撮影は可能である。しかし、短時間で大人数の写真撮影が必要な場合は、レンズの向きと操作パネルの向きとを反対に、あるいは90°以上の角度を持たせるようにセットした方が作業性がよい。
【0014】
さらに、本発明においては、前記上部ケーシングと前記下部ケーシング及び/又は前記下部ケーシングが分割・再組立容易であることが好ましい。
この場合、装置を複数の部分に分解できるので、装置の搬送の際に、梱包や持ち運びが容易になる。このような装置は、レンタルとして使用される場合が多いので、このように分解可能であることが搬送が楽になるため好ましい。特に、宅配便による輸送が可能なように、縦・横・高さの合計が1600mm以下で、重量が25kg以下に分割できることが好ましい。その観点からは、下部ケーシングもさらに分割可能であることが好ましい。
【0015】
本発明のIDカード発行装置は、 前記のいずれかに記載の顔写真撮影装置と、 前記顔写真及び識別情報をカードに印刷するプリンタと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、撮影された顔写真が、被撮影者毎に付与された識別情報(例えば、無作為に選択された数字)と関連付けられて保存されるが、被撮影者の氏名や社員番号などの個人情報は、写真撮影装置内に保存されない。つまり、個人に関する秘匿されるべき情報は写真撮影装置に保存されないので、個人情報保護性に優れた顔写真撮影装置等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係る顔写真撮影装置の外観を模式的に示す斜視図である。
【図2】図1の顔写真撮影の下部ケーシング内の構造を示す図である。
【図3】図1の顔写真撮影装置のブロック図である。
【図4】撮影カードの一例を示す図である。
【図5】図1の顔写真撮影装置の上部ケーシングと下部ケーシングとの連結部の構造の一例を示す図であり、図5(A)は側断面図、図5(B)は平面図である。
【図6】図1の顔写真撮影装置の使用例を示す図であり、図6(A)は被撮影者自身によるセルフ撮影、図6(B)はカメラマンによる撮影例を示す。
【図7】図6(A)は社員証、図6(B)は会員カードの例を示す図である。
【図8】図1の顔写真撮影装置の撮影手順の一例を示すフローチャートである。
【図9】図1の顔写真撮影装置の操作パネルの表示例を示す図である。
【図10】図1の顔写真撮影装置の操作パネルの表示例を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態に係るIDカード発行装置のIDカード発行手順の一例を示すフローチャートである。
【図12】図11のIDカード発行装置の操作パネルの表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1、2、3を参照して、本発明の実施の形態に係る顔写真撮影装置の外観を説明する。
顔写真撮影装置1は、図1、2に示すように、上部ケーシング10と下部ケーシング30とを有する。両ケーシング10、30内には、カメラ11、スピーカー12、ランプ13、操作パネル33、制御部37、媒体挿入部34、媒体読み取り部35、媒体回収箱36などが収容されている。また、両ケーシング10、30は後述する回転機構により連結されているとともに、分離可能である。
【0019】
上部ケーシング10は、直方体状の形状であり、図1の右側に示す面10aが、被撮影者が対向する前面となる。上部ケーシング10内部にはカメラ11、スピーカー12、ランプ13が主に収容されている。
【0020】
カメラ11は、被撮影者を撮影するデジタルカメラであり、光学レンズ、同レンズを駆動するモータ、CCD等の撮像素子、A/D変換器などを備える。カメラは、光学レンズが上部ケーシングの前面10a中央のやや上部から前方に突き出るように配置されている。レンズから入力された画像は撮像素子で光電変換され、A/D変換器でデジタルデータに変換される。このデジタルデータは、後述する、下部ケーシング30内に収容された制御部37に送られる。
【0021】
スピーカー12は、被撮影者に撮影手順を示す音声を発するものであり、上部ケーシング前面10aのカメラ11のレンズの両側に配置されている。音声は、制御部37のメモリなどに記録されている。
ランプ13は、スピーカー12から発せられる音声に従って撮影開始をカウントダウンするものであり、この例では、3個のランプが、上部ケーシング前面10aのカメラ11のレンズの下方に縦に並んで配置されている。
【0022】
カメラ11、スピーカー12、ランプ13の信号線や電源ラインは、上部ケーシング10の下面に開けられた開口(図4の符号10b)から下方の下部ケーシング30内に延びている。
【0023】
下部ケーシング30は、上部ケーシング10よりも一回り大きい略直方体状であり、上面と前面との間の角に傾斜面31が形成されている。下部ケーシング30には、操作パネル33、媒体挿入部34、媒体読み取り部35、媒体回収箱36、制御部37等が収容されている。
【0024】
操作パネル33は、下部ケーシング30の傾斜面31に配置されており、タッチ式の入力画面(キーボードやテンキー、タッチボタンなど)や、情報を表示する表示画面を表示する液晶パネルである。表示画面には、制御部37から送られる情報が表示されるととともに、入力画面から入力された情報が制御部37に入力される。
【0025】
媒体挿入部34は、傾斜面31の操作パネル33の側方に形成されており、媒体として、例えば、図4に示すような撮影カード100が挿入される。撮影カード100は被撮影者の個々に準備されたハガキ状の紙片であり、例えば、被撮影者の社員番号101、氏名102、被撮影者毎に付与された画像ファイル名103と、これらの情報がコード化されたQRコード104が印刷されている。画像ファイル名103とは、例えば、“000001”、“000002”など、被撮影者毎に付与された無作為の数字である。QRコードの他に、二次元バーコードや磁気記録式のコードなどを使用することもできる。媒体読み取り部35は、下部ケーシング30内に配置されており、媒体挿入部34に挿入された媒体の情報を読み取る。この例では、QRコードリーダーが使用される。読み取られた情報は制御部37に送られる。媒体読み取り部35の下方には、媒体回収ボックス36が配置されており、読み取り後の媒体を回収することもできる。
【0026】
制御部37は、下部ケーシング30内に配置され、CPUやメモリなどから構成される。CPUは、前述の各部と電気的に接続されており、各部に制御信号を出力するとともに、各部からの信号が入力される。また、CPUにはカメラ11から送られた撮影画像を画像処理するプログラムが備えられている。このプログラムにより、撮影された画像に対して自動的にトリミングや寸法の調整が行われる。調整方法としては、既存の画像処置技術が適用される。例えば、顔の目や鼻、口の位置を検出して、写真のフレームの中の顔が写った位置を特定し、顔が中心にくるようにトリミングして適宜な寸法に拡大或いは縮小する(例えば、特開2003−92726参照)。このような機能を備えることにより、被撮影者の身長や立ち位置が許容範囲内であれば、顔がほぼ中心となるようにプリントすることができる。
【0027】
撮影された顔写真データは、QRコードリーダーで撮影カード100から読み取られた被撮影者の画像ファイル名103と関連付けられて、例えばJPEGファイルとしていったん制御部37のメモリに保存される。ただし、被撮影者の氏名や社員番号は保存されない。顔写真データは画像ファイル名と関連付けられて装置に保存されるが、画像ファイル名は前述のように被撮影者毎に付与された無作為の数字であるため、顔写真データと画像ファイル名から被撮影者の氏名や社員番号を照合することはできない。顔写真データと、その被撮影者の氏名や社員番号などを照合するには、これらの情報が保存されたデータベースが必要となる。
【0028】
下部ケーシング30の上面には、制御部37と、上部ケーシング10内に収容されているカメラ11、スピーカー12、ランプ13とを接続するラインを通す開口(図3の符号30a)が開けられている。この開口30aは、上部ケーシング10に形成された開口10bと同軸上に形成されるとともに、同開口と同じ径であることが好ましい。
【0029】
さらに、下部ケーシング30内にプリンタ50を備えることもできる。この場合は、この顔写真撮影装置を、例えば、イベント会場などで、簡易的なIDカードを発行する装置として適用できる。プリンタ50としては、例えば、熱転写式のカラープリンタを使用できる。プリンタ50には、フィーダを介して基体ストック部51が接続しており、基体をプリンタ50に供給する。また、カード排出部52もプリンタ50に接続しており、印刷済みのカードが、下部ケーシング30の前面に露出した排出口52から排出される。基体は、基体ストック部51からプリンタ50に給紙され、制御部37から送られた顔写真と個人情報とが印刷されてIDカードが作成される。IDカードは排出部52から排出される。
【0030】
図5を参照して、上部ケーシング10と下部ケーシング30との連結部の構造の一例を説明する。
前述のように上部ケーシング10は下部ケーシング30から取り外し可能で、かつ、下部ケーシング30に対して水平面上を反転可能に取り付けられている。さらに、両ケーシング10、30には、上部ケーシング10が下部ケーシング30に対して180°以上回転しないような回転規制部が設けられている。
【0031】
上部ケーシング10の下面には、内側に凹んだ凹部21が形成されている。また、同ケーシングの左右の側面下端の中央には、外方向に張り出した取り付け片23が設けられている。同片23には、ボルトBが通される孔24が開けられている。一方、下部ケーシング30の上面には、この孔24と同軸上を延びるネジ孔41が開けられている。上部ケーシング30の孔24からボルトBを通して下部ケーシング30のネジ孔41に螺合させることにより、上下のケーシング10、30が固定される。
【0032】
上部ケーシング10の凹部21には、配線が通される開口10bの中心を中心にして環状の回転テーブル25が固定されている。回転テーブル25としては、例えば、ベアリング式のものを使用できる。回転テーブル25の下面は、上部ケーシング10の下面(取り付け片23の下面)とほぼ同じ面よりもやや下方に突き出ていることが好ましい。また、回転テーブル25の下面に、ゴムなどで作製された滑り止め部材が取り付けられていると、上部ケーシング10の安定性が良くなるので好ましい。上下シーシング10、30を固定しているボルトBを外すと、上部ケーシング10は下部ケーシング30から分離可能となり、上部ケーシング10に対して縦軸回りの力を加えると、回転テーブル25により上部ケーシング10は下部ケーシング30に対して開口10bの中心を中心にして回転する。
【0033】
回転規制部は、上部ケーシング10の凹部21に形成された突出部27と、下部ケーシング30の上面に形成されたストッパー43とからなる。突出部27は、開口10bの周囲のリング状部28と、リング状部28の外周の一部から外方向に張り出した円弧部29とからなる。円弧部29の中心角度は90°である。突出部27の高さは、凹部21の深さよりも低い。
【0034】
ストッパー43は、下部ケーシング30の上面の開口30aからやや外側に、円弧状に形成されている。平面視において、ストッパー43は、上部ケーシング10の突出部27のリング状部28より外側で、円弧部29と同じ径方向の位置に形成されている。ストッパー43の中心角度は90°である。
【0035】
回転規制作用について図5(B)を参照して説明する。図5(B)は、上部ケーシングの突出部と下部ケーシングのストッパーとの平面上の位置関係を示す図である。
図5(B)の実線に示す姿勢を、上下ケーシング10、30の前面が同じ向きを向いている姿勢とする。この図では、上部ケーシング10の前面10aが図の下側を向いているとする。この姿勢において、上部ケーシング10の突出部27の円弧部29は、図の右側の端面29aが、下部ケーシング30のストッパー43の右側の端面43aに当接している。上部ケーシング10を図の時計方向に回転させると、図5(B)の二点鎖線で示すように、やがて、突出部27の円弧部29の左側の端面29bが、ストッパー43の左側の端面43bに当接して、上部ケーシング10の回転が規制される。この姿勢においては、上部ケーシング10は、下部ケーシング30に対して180°回転し、前面10aが下部ケーシング30の前面(操作パネル31側の面)の反対側に回転したことになる。そして、上部ケーシング10はこれ以上回転不能であるので、上部ケーシング10の下部ケーシング30に対する回転角度が180°に規制される。
【0036】
上部ケーシング10の回転手段や回転規制手段として他の手段を使用することもできる。また、上部ケーシング10の回転角度を任意に設定できるようにしてもよい。
【0037】
図6を参照して、IDカード作成装置1の使用例を説明する。
被撮影者が自分で撮影する場合は、図6(A)に示すように、上部ケーシング10の前面10aと下部ケーシング30の傾斜面31を同じ向きに合わせる。そして、被撮影者P1が前面側に立って操作パネル33を操作しながら撮影を行う。
一方、オペレータが撮影する場合は、図6(B)に示すように、前述の方法で上部ケーシング10を下部ケーシング30に対して回転させて、上部ケーシング10の前面10aを下部ケーシング30の傾斜面31の向きと反対方向に向かせる。そして、被撮影者P1は上部ケーシング10の前面10aに立ち、オペレータP2が傾斜面31の側に立って操作パネル33を操作する。
【0038】
このIDカード作成装置1を搬送したり収納する場合は、前述のように、ボルトBを外して、上部ケーシング10と下部ケーシング30とを分離可能な状態として、カメラなどの配線を制御部から外す。これにより、上部ケーシング10と下部ケーシング30とが分離され、梱包や持ち運びしやすくなる。
【0039】
なお、下部ケーシング30をさらに複数の部位に分割可能とすることもできる。この場合、分割した部位を、縦・横・高さの合計が1600mm以下、重量が25kg以下とすることが好ましい。これにより、遠隔地への輸送時に各々の部位を宅配便で輸送できる。
【0040】
次に、本発明の顔写真撮影装置1で、社員証用の顔写真を撮影する例と、本発明の顔写真撮影装置1を適用した簡易IDカード発行装置で、イベント会場などで使用される会員カードを作成する例とを説明する。社員証には、図7(A)に示すように、会社のロゴマークや住所とともに、社員の顔写真Pと印刷情報D(氏名、社員番号、所属など)が印刷されている。会員カードには、図7(B)に示すように、顔写真Pと印刷情報D(イベント名、氏名や会員番号、有効期限など)が印刷されている。
【0041】
まず、図8〜図9を参照して、図6(A)に示す社員証に印刷される顔写真Pを印刷する例を説明する。
予め被撮影者毎に、図4に示すような撮影カード100を準備しておく。撮影時、被撮影者は撮影カード100を持参する。そして、S1において、被撮影者によるセルフ撮影か、専用のカメラマンによる撮影かを選択する。カメラマンによる撮影の場合は、S2に進み、前述の方法で、上部ケーシング10を下部ケーシング30に対して180°回転させる。これにより、レンズ11の向きと操作パネル33の向きとが反対方向になり、オペレータは操作パネル33の前面に立って操作することができ、作業性が良くなる。
【0042】
S1においてセルフ撮影が選択された後、あるいは、S1においてカメラマン撮影が選択されてS2で上部ケーシング10の反転作業が完了した後、S3に進む。S3においては、撮影カードがあるかないかを選択する。この例では撮影カードが準備されているので、撮影カードありを選択する。すると、S4に進み、操作パネル31上に、図9(A)に示すような、「撮影カードを読み取り部に挿入して下さい。」という画面が操作パネルに表示される。被撮影者又はカメラマンは、装置1の媒体挿入部34に撮影カード100を挿入する。
S3で撮影カードが準備されていない場合については、後述する別の例で説明する。
【0043】
撮影カード100が挿入されると、QRコード104がQRコードリーダーで読み取られ、S6において、図9(B)に示すように、操作パネル上に、被撮影者の社員番号、氏名、画像ファイル名が表示される。同時に操作パネルには、「間違いがないか確認してください」、「戻る」、「OK」等の画面が表示される。撮影カード100は、読み取り後回収箱36(図3参照)に回収される。また、撮影カード100は被撮影者が持ち帰ってもよい。
【0044】
被撮影者又はカメラマンは、S7において、操作パネルに表示された情報(図9(B)参照)が正しいかどうかを判定し、正しくなければ、「戻る」をタッチし、入力ステップから繰り返す。正しい場合は、「OK」をタッチし、S8に進み、写真撮影を行う。この際、操作パネル上には、図10(A)に示すように、「撮影」画面が表示される。被撮影者又はカメラマンがこの画面をタッチすると、この例では3秒後に撮影が実行される。この際、撮影実行までのカウントダウンが開始され、上部ケーシング10のスピーカー12から、「3」、「2」、「1」のカウントダウン音声が発せられ、ランプ13がカウントダウンに合わせて消灯する。この際、複数枚の写真を撮影してもよい。
【0045】
撮影が終了すると、S9に進み、写真を確認する。この際、図10(B)に示すように、操作パネルには。写真と、「撮り直し」、「OK」の画面が表示される。複数枚撮影した場合は、複数枚の写真が表示される。そして、S10に進み、写真の撮り直しが必要かどうかが選択され、取り直しが必要な場合は、「撮り直し」にタッチし、S8に戻って再度写真撮影を行う。複数枚撮影した場合は、登録する写真を選択する。撮り直しが不要な場合は、「OK」の画面にタッチする。
【0046】
その後、S11に進み、撮影された顔写真データが、画像ファイル名と関連付けられてメモリに保存される。
保存された顔写真データと画像ファイル名とは、有線又は無線によって、あるいは、持ち運び可能な記録媒体に保存されて、IDカード発行システムやデータベースに送られる。IDカード発行システムでは、IDカードの基体に、被撮影者の社員番号や氏名とともに顔写真データが印刷されてIDカードが発行される。
【0047】
以上説明したように、本発明の顔写真撮影装置1では、顔写真データが、被撮影者毎に無作為に付与された識別情報(この例では画像ファイル名)と関連付けて保存されるが、被撮影者の氏名や社員番号は保存されない。画像ファイル名は被撮影者毎に付与された無作為の数字であるため、顔写真データと画像ファイル名から被撮影者の氏名や社員番号を照合することはできない。顔写真データと、その被撮影者の氏名や社員番号などを照合するには、これらの情報が保存されたデータベースが必要となるので、装置自体にセキュリティ性が高い個人情報が残ることがない。
【0048】
次に、図11、図12を参照して、図7(B)に示す会員カードを発行する例を説明する。この例では、プリンタ50を備える顔写真撮影装置1をIDカード発行装置として使用する。
この場合も、S1のセルフ撮影選択ステップと、S2の上部ケーシング反転ステップは、前述の例と同様である。この例では、会員カードの所有者は、その会に参加した任意の人であるため、前述の例と異なり予め撮影カードが準備されていない。そこで、S3の、撮影カードがあるかないかを選択するステップにおいて、撮影カードなしを選択する。なお、このような会員カードを発行する場合は、このステップを省略して直接S5に進んでもよい。
【0049】
S5では、操作パネル33に、図12(A)に示すような、キーボードやテンキーなどの入力画面と、入力した情報が表示される表示画面が表示される。被撮影者又はカメラマンは、キーボードから、氏名や会員番号、そのイベントに則した情報などを入力する。入力した情報は、随時表示画面に表示され、その都度正誤を訂正する。入力後、S6において、図12(B)に示すように、操作パネル上に、被撮影者の「氏名」や「会員番号」などの入力された情報とともに、「間違いがないか確認してください」、「戻る」、「OK」等の画面が表示される。
【0050】
その後のステップ(S7〜S10)は、前述の例と同様であるが、この例ではS11において、撮影された顔写真と入力された情報とが、基体ストック部51から供給された基体の所定の部分に印刷されてIDカードが作成される。作成されたIDカードは、S12においてカード排出部52から排出される。
【0051】
以上説明したように、本発明のIDカード発行装置によれば、任意の人の顔写真と情報(氏名や会員番号など)とが印刷されたIDカードを簡易に作成することもできる。
また、課金装置を備えることにより、課金式とすることができる。
【符号の説明】
【0052】
1 IDカード発行装置
10 上部ケーシング 11 カメラ
12 スピーカー 13 ランプ
21 凹部 23 取り付け片
24 孔 25 回転テーブル
27 突出部 28 リング状部
29 円弧部
30 下部ケーシング 31 傾斜面
33 操作パネル 34 媒体挿入部
35 媒体読み取り部 36 媒体回収箱
37 制御部 41 ネジ孔
43 ストッパー 50 プリンタ
51 基体ストック部 52 カード排出部
100 撮影カード 101 社員番号
102 氏名 103 画像ファイル名
104 QRコード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IDカード用の顔写真を撮影する装置であって、
被撮影者の顔を撮影するカメラと、
被撮影者の識別情報が記録された媒体から前記識別情報を読み取る手段と、
前記カメラで撮影された被撮影者の顔写真データを、前記読み取り手段から読み取られた被撮影者の識別情報と関連付けて保存する手段と、
を備えることを特徴とする顔写真撮影装置。
【請求項2】
前記識別情報読み取り手段に替えて、あるいはそれに加えて、前記識別情報を手動で打ち込む又は書き込む入力手段を有することを特徴とする請求項1に記載の顔写真撮影装置。
【請求項3】
前記カメラが上部ケーシングに収容されており、
前記識別情報読み取り手段が下部ケーシングに収容されており、
前記上部ケーシングが前記下部ケーシングに対して回動可能となるように連結されていて、
前記上部ケーシングのカメラの向きと前記下部ケーシングの操作パネルの向きとが一致したセルフ撮影位置と、両者の向きが異なるオペレータ撮影位置との両位置において撮影可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の顔写真撮影装置。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載の顔写真撮影装置と、
前記顔写真及び識別情報をカードに印刷するプリンタと、
を備えることを特徴とするIDカード発行装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−150101(P2011−150101A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10631(P2010−10631)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(503221724)株式会社アイアンドディ (2)
【Fターム(参考)】