説明

顔料とリポソームを含む化粧料

【課題】水不溶性の化粧料用顔料を含む化粧料にリポソームを安定に配合することにより、化粧料の性質を改善する手段を提供することが本発明の課題である。
【解決手段】本発明により、以下の成分(A)〜(B);
(A)水不溶性の化粧料用顔料、リン脂質、および、ポリビニルピロリドン又は、ビニルピロリドンとビニルアセテートからなるコポリマーとを含有する顔料混合物
(B)リポソーム分散物、
を含むことを特徴とする化粧料が与えられた。本発明の化粧料は、粉体を配合してもリポソームの安定性が高く、且つ配合された粉体の分散性が優れているという特徴を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の顔料混合物とリポソーム分散液を含有することにより、リポソームの安定性と顔料の分散性が向上した化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
脂質の閉鎖小胞であるリポソームは主として医薬分野においてドラッグデリバリーシステムとして応用されてきたが、現在は化粧料分野でも応用されている。リポソームを化粧料に応用することは、例えば特開平3-197408号公報にも記載されており、化粧料の長期安定性を図るためにリポソームを分散させた化粧料が開示されている。更に特開2003-335618号公報において、比表面積が80m/g以上の疎水化無水ケイ酸、多価アルコール、水、及びリポソームを含有する含水粉末化粧料により、充分なエモリエント感がある化粧料を得られることが開示されている。
【0003】
一方従来の顔料分散技術を用いた水中油型、あるいは水性の粉体含有化粧料にリポソームを配合すると、粉体によってリポソームが破壊されてしまい、安定に配合することができなかった。粉体の持つ吸着性や接触酸化性などの表面活性によってリン脂質の二分子膜が不安定化されてしまうことがその原因であろうと考えられている。そのために、水性の化粧料において粉体とリポソームを併用することはこれまで成功していなかった。
【0004】
【特許文献1】特開平3-197408号公報
【特許文献2】特開2003-335618号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
よって本発明の課題は、水不溶性の化粧料用顔料を含む化粧料にリポソームを安定に配合することにより、化粧料の性質を改善する新たな手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、以下の成分;
(A)水不溶性の化粧料用顔料、リン脂質、および、ポリビニルピロリドン又は、ビニルピロリドンとビニルアセテートからなるコポリマーとを含有する顔料混合物
(B)リポソーム分散液、
を含むことを特徴とする化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、顔料混合物とリポソーム分散液を含む化粧料が与えられた。本発明の化粧料は、粉体を配合してもリポソームの安定性が高く、且つ配合された粉体の分散性が優れているという特徴を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に本発明の構成について詳しく説明する。本発明は(A)顔料混合物と、(B)リポソーム分散液を含む化粧料を提供するものである。
【0009】
本発明の化粧料における成分(A)である顔料混合物は、水不溶性の化粧料用顔料、リン脂質、および、ポリビニルピロリドン又は、ビニルピロリドンとビニルアセテートからなるコポリマーを含有する混合物である。その配合量は特には限定されないが、着色や感触等の観点から、化粧料全体に対して0.5〜50質量%が好ましい。
【0010】
本発明において該顔料混合物に含まれる水不溶性の化粧料用顔料は、球状、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、金属粉体類、複合粉体類等、化粧料に一般に使用される粉体を挙げることができる。
【0011】
具体的に例示すれば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、硫酸バリウム等の白色無機顔料、酸化鉄、カーボンブラック、チタン・酸化チタン焼結物、酸化クロム、水酸化クロム、紺青、群青等の有色無機顔料、タルク、白雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、合成雲母、絹雲母(セリサイト)、合成セリサイト、カオリン、炭化珪素、ベントナイト、スメクタイト、無水ケイ酸、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、珪ソウ土、ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、窒化ホウ素等の白色体質粉体、二酸化チタン被覆雲母、二酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化鉄雲母チタン、紺青処理雲母チタン、カルミン処理雲母チタン、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末等の光輝性粉体、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン−アクリル共重合樹脂等のコポリマー樹脂、ポリプロピレン系樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂等の有機高分子樹脂粉体、ステアリン酸亜鉛、N−アシルリジン等の有機低分子性粉体、シルク粉末、セルロース粉末等の天然有機粉体、赤色201号、赤色202号、赤色205号、赤色226号、赤色228号、橙色203号、橙色204号、青色404号、黄色401号等の有機顔料粉体、赤色3号、赤色104号、赤色106号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号等のジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料粉体あるいは更にアルミニウム粉、金粉、銀粉等の金属粉体、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン含有二酸化珪素、酸化亜鉛含有二酸化珪素等の複合粉体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これら粉体はその一種又は二種以上を用いることができ、更に複合化したものを用いても良い。
【0012】
更に本発明の化粧料の顔料混合物において使用できるリン脂質として、卵黄レシチン、大豆レシチンまたはこれらの水素添加リン脂質、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルコリン、及びスフィンゴミエリンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのリン脂質はその一種又は二種以上を用いることができる。
【0013】
更に本発明の化粧料の顔料混合物において使用されるポリビニルピロリドンの好適な分子量範囲は1万〜50万であるが、特には限定されるものではない。
【0014】
更にビニルピロリドンとビニルアセテートからなるコポリマーとして使用できるものは特に限定されないが、分子量が2万〜50万の範囲内であることが好ましい。該コポリマーにおけるビニルピロリドン/ビニルアセテートの組成比も特に限定されないが、3/7から9/1の範囲内、特に6/4程度であることが好ましい。またビニルピロリドンとビニルアセテートからなるコポリマーとして本発明において使用可能なものの例として、アコーンKS(大阪有機化学工業社製)、PVP/VA-S630(ゼネラルアニソン社製)、PVP/VAE-735(ISPヴァンダイク社製)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0015】
本発明の化粧料における成分(A)に用いられる水不溶性の化粧料用顔料、リン脂質、および、ポリビニルピロリドン又は、ビニルピロリドンとビニルアセテートからなるコポリマーの配合比率は特には限定されない。しかし該顔料混合物は、それに限定されるものではないが、成分(A)全体を100質量%とした場合、化粧料用顔料を0.1〜60質量%、リン脂質を0.1〜20質量%、該ビニルピロリドンとビニルアセテートからなるコポリマーを0.01〜10質量%の配合比で含有することが好ましい。なおこれらの成分(A)の構成成分を精製水などの水相に分散させ、他の成分と配合することは更に好ましい。
【0016】
本発明の化粧料における上記成分(B)、すなわちリポソーム分散液の配合量は特には限定されないが、化粧料全体に対して0.1〜90質量%が好ましい。そして該リポソームの主成分であるリン脂質の配合量としては、化粧料全体に対して0.005〜5質量%であることが好ましい。また該リポソーム分散液は、それに限定されるものではないが、その構成成分として、成分(B)全体を100質量%とした場合、リン脂質を0.01〜10質量%、コレステロールを0.001〜2質量%、グリセリン及び/又は1,3-ブチレングリコールを0.01〜30質量%の配合比で含有する水分散液が好ましい。
【0017】
本発明の化粧料に用いるリポソームを製造するために使用できるリン脂質として、卵黄レシチン、大豆レシチンまたはこれらの水素添加リン脂質、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルコリン、及びスフィンゴミエリンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのリン脂質はその一種又は二種以上を用いることができる。
【0018】
なお本発明におけるリポソームは、リン脂質を水性成分に分散させることにより形成する脂質二分子膜により形成される閉鎖小胞であり、その膜内に薬剤を内包することにより、より効果的にその薬剤の効能を発揮させることができる。またリポソームは皮膚貯留性が高いために、膜成分であるリン脂質による保湿効果の持続性が高い。本発明に使用するリポソームは、リン脂質を水に分散させ、ホモミキサーや高圧乳化機を用いて均一に分散させ、リポソーム分散液とするなど、常法に従って各成分を混合する方法によって製造することができる。
【0019】
更に本発明の化粧料における上記成分(C)、即ち水溶性高分子の配合量は特には限定されないが、化粧料全体に対して0.001〜0.5質量%が好ましい。この水溶性高分子は化粧料に粘度を付与し、安定性を更に向上させるとともに、伸びの良さやみずみずしさといった化粧料の使用感を良好にする為に用いられる。本発明において使用できる該水不溶性の化粧料用顔料は、通常化粧料で使用されるものであれば特に限定されない。その具体例として、例えば、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアーガム、カラギーナン、ジェランガム、ハイメトキシペクチン、ローメトキシペクチン、スクレロチウムガム、寒天、水膨潤性粘土鉱物等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を用いることができる。
【0020】
更に、本発明の化粧料は水中油型乳化化粧料であることが好ましく、油剤及び界面活性剤を配合することができる。本発明の化粧料における上記油剤は特に限定されるものではないが、伸びの良さ等の使用感や、保湿効果等の一般的化粧料としての目的のために配合される。油剤の種類は、化粧料に一般に使用される動物油、植物油、合成油等の起源の固形油、半固形油、液体油、揮発性油等の性状を問わず、炭化水素類、油脂類、ロウ類、硬化油類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類等が挙げられる。具体的には、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、ポリイソブチレン、ポリブテン、モンタンワックス、ポリエチレンワックス、カルナウバワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス等の炭化水素類、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル又はフィトステロール・べへニル・オクチルドデシル)等のアミノ酸系エステル油剤、シア脂等の多価アルコール脂肪酸エステル、ヘキサグリセリン脂肪酸エステル、デカグリセリン脂肪酸エステル及び、(アジピン酸・2−エチルへキサン酸・ステアリン酸)グリセリルオリゴエステル、ジペンタエリトリット12−ヒドロキシステアリン酸エステル、コレステロール、コレスタノール、デヒドロコレステロール、ラノリン脂肪酸コレステリル、イソステアリン酸コレステリル、12−ヒドロキシステアリン酸コレステリル、リシノール酸コレステリル、マカデミアナッツ油脂肪酸コレステリル等のコレステロール誘導体やフィトステロール誘導体、ラノリン、吸着精製ラノリン、液状ラノリン、還元ラノリン、酢酸液状ラノリン、ラノリンアルコール、水素添加ラノリンアルコール、ラノリン脂肪酸等のラノリン誘導体及びそれらをポリオキシアルキレンで変性した油剤、モクロウ、オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油等の油脂類、ミツロウ、ゲイロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス等のロウ類、ホホバ油、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、ロジン酸ペンタエリトリットエステル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール等のエステル類、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸類、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、トリメチルシロキシケイ酸、高重合度メチルポリシロキサン、高重合度メチルフェニルポリシロキサン、高重合度ジメチルポリシロキサン、アルコキシ変性ポリシロキサン等のシリコーン類、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油剤類等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を用いることができる。中でも、極性が低く、単独でリン脂質を溶解しないものがよい。
【0021】
更に本発明の化粧料における上記界面活性剤は特に限定されるものではないが油剤を安定に乳化する目的のために配合される。界面活性剤の種類は、通常化粧料に用いられている界面活性剤であれば、何れでも良く、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤が挙げられる。
【0022】
また本発明の化粧料には、その発明の効果を妨げない範囲で、上記した成分に加えて、通常の化粧料に使用される各種の任意成分を、例えば、低級アルコール、香料、防腐剤、キレート剤、酸化防止剤、ビタミン類、消炎剤、清涼剤、動物抽出物、植物抽出物などの美容成分の一種又は二種を適宜配合することができる。
【0023】
本発明の顔料とリポソーム分散液を含む化粧料の用途は特には限定されないが、具体的な製品としては、乳液、クリーム、美容液等のスキンケア化粧料、日焼け止め料、ファンデーション、下地化粧料、コントロール、アイカラー等のメイクアップ化粧料等を挙げることができる。中でも、メイクアップ化粧料を製造することは、顔料粉体による化粧効果と、滑らかな使用性、保湿感といった点において効果が顕著に現れて好ましい。
【0024】
なお従来技術において述べた様に、顔料を含むことによりメイクアップ効果を持つリポソーム配合化粧料はこれまで存在しなかった。一方従来のメイクアップ化粧料で保湿感を求めると、油剤や界面活性剤等を増やすことが考えられるが、使用感がべたついたり、粉体の凝集で保存安定性不良が発生するなどの好ましくない効果をもたらす結果となった。化粧料用顔料を含む本発明のリポソーム配合化粧料は、そのような不都合をもたらすことなく、リポソームを配合することにより、リポソームが持つ優れた保湿効果と、メイクアップ効果とを併せ持った化粧料を提供することが可能である。
【0025】
本発明の処理を施した顔料は、水中分散性が高いだけでなく、リポソームと共存させてもリポソームに対する破壊傾向が小さく、リポソームの安定性を格段に上昇させることができる。リン脂質による顔料の被覆が見かけ上の表面活性の低下作用と、その周囲に存在すると想定されるポリビニルピロリドン(PVP)又は、ポリビニルピロリドンとビニルアセテートからなるコポリマー(PVP/VA)が保護コロイド作用による立体障害で、リポソームと粉体が接触する機会を減らす作用が奏効しているのではないかと考えられる。また本発明で用いられる顔料混合物は水中油型の分散剤における粉分散性の向上にも同時に寄与するので、顔料の擬集性を抑えることで、保存安定性を保つことができる。
【実施例】
【0026】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。なおこれらは本発明を何ら限定するものではない。
【0027】
(リポソームの安定性試験)
以下の表1に示した組成のリポソームファンデーションを調製し、表2に示した組成から作成した色素内包リポソームを用いて、リポソームの安定性試験を行った。
【表1】

【0028】
(製造方法)
1.成分1〜16を三本ローラーを用いて混合し、成分Aの顔料混合物を作成した。
2.成分17〜21を70℃で混合し、さらにそれを高圧処理して均一な脂質二重膜を形成させることにより、成分Bのリポソーム分散物を作製した。
3.成分22〜26及び27〜29を70℃にて乳化し、30,31を添加し、乳化物を得た。
4.前記1〜3を混合し、リポソームファンデーションを調製した。
【0029】
表1に示した各サンプルは、以下のような特徴を有する。
本発明品1〜3:本発明による顔料混合物とリポソーム分散物を用いたファンデーション。
比較品1:顔料混合物中にPVP/VAを含まず、リン脂質とポリビニルアルコールで顔料を分散させたファンデーション。
比較品2:顔料混合物中にリン脂質とPVP/VAを含まず、ノニオン界面活性剤で顔料を分散させたファンデーション。
比較品3:顔料混合物中にPVP/VAを含まず、リン脂質のみで顔料を分散させたファンデーション。
【0030】
【表2】

【0031】
表2の組成でリポソームを作製した後、透析によってリポソーム外相の色素を除去することで、外相には色素は存在せず、リポソーム内相のみに色素を内包したリポソームを作成することができる。高圧乳化機を使用してリポソームを作成し、透析膜(VISKASE SESALES CORP社製CAT.NO.UC36−32−100)中に入れて二週間程度透析を行うことで、外相の色素をほぼ完全に除去することができる。
【0032】
上記色素内包リポソーム1mlと前記試料(本発明品1〜3および比較品1〜3)10mlを混合し、透析膜に入れて150ml精製水中で12時間透析した。リポソームの粒径は、少なくとも100nm以上であり、透析膜は5nm程度のものしか通過できないため、試料によって色素内包リポソームが破壊されない限り、色素は透析膜を通過することはない。一方膜が破壊されたリポソームから出た色素は、透析膜の外に出てくることになる。このため、透析膜外に出てきた色素の濃度が高いほど、リポソームを破壊する傾向が大きいと判断することができる。
【0033】
透析後の透析膜外層の吸光度を以下に示す。上述したように、透析膜外に出てきた色素の濃度により、リポソームの破壊を評価することができる。
【表3】

【0034】
以上の実験から、粉体顔料にリン脂質と、PVP又はPVP/VAを共に添加し、表面処理をすることは、リポソームの破壊の抑制に有効であることが示された。すなわち本発明における顔料処理はリポソームの安定性に干渉せず、且つ粉体顔料の水中分散性が高いことが分かる。また目視観察により保存安定性を検討したところ、本発明品は保存安定性も良好であったが、比較品については保存中に分離等が見られる場合もあった。
【0035】
(肌効果試験)
表1における本発明品1と比較品2を用いて、本発明品1を2週間連続して使用することにより肌の水分量(うるおい)と柔軟性が改善される効果を、下記の評価方法により検証した。
【0036】
連用試験方法:7人のパネルの前腕部を、本発明品1の塗布部位と、比較品2の塗布部位に分画して各々のサンプルを塗布し、8時間後に所定の洗顔料で洗い流した。この塗布と洗浄を2週間続け、試験前後の肌の水分量と柔軟性を調べた。測定は、洗顔後、一定条件の環境試験室(温度22℃、湿度50%)にて、入室後15分以上経過してから行った。水分量の測定と柔軟性の測定は、以下のようにして行った。
【0037】
水分量の測定:各パネルの上記各部位について、SKICON200EX(IBS社製)を用いて皮表角層の水分量を測定した。試験前の値を100として試験後の肌の水分量を算出し、全パネルの平均値を求めた。
【0038】
柔軟性の測定:各パネルの上記各部位について、Venustron(AXIOM社製)を用いて、20g(±10%)加重時のΔF(肌のかたさ)を測定した。(試験後のΔF)−(試験前のΔF)を計算して求め、負の値であれば肌の柔軟性が改善されたとして評価した。
【0039】
本発明品1と比較品2を塗布した肌において、水分量と柔軟性を測定した結果を表4に示す。
【表4】

【0040】
表4に示されるように、本発明品1を塗布した肌において測定された水分量と柔軟性は共に、比較品2よりも高かった。よって本発明品1は、肌の水分量を改善し、肌の柔軟性の向上させる効果を持つ。すなわち、本発明品1の使用によって、メイクアップ効果を付与すると同時に皮膚のうるおい感や弾力性が向上するなど、高いスキンケア効果も与えることができる。
【0041】
更に以下の表5の処方に従って、リポソーム分散物を配合した本発明によるリキッドファンデーションを調製した。
【0042】
【表5】

【0043】
(製造方法)
1.成分1〜8を適量のエタノール中で混合し、二本ローラーを用いてエタノールを揮発させながら混錬し、顔料混合物を作製した。
2.成分10〜14を70℃で混合し、更にそれを高圧処理してリポソーム分散物を作製した。
3.成分15〜21を混合し、高分子膨潤物を得た。
4.前記1を成分9に分散し、前記2、3を加えて、リキッドファンデーションを調製した。
【0044】
以上のようにして得られたリポソーム含有ファンデーションは、保湿性に優れ、メイクアップ効果を付与すると同時に、肌のうるおい感や柔軟性を向上させる高いスキンケア効果をも与えることができるものであった。
【0045】
更に以下の表6の処方に従って、リポソーム分散物を配合した本発明による下地化粧料を調製した。
【0046】
【表6】

【0047】
(製造方法)
1.成分1〜9を三本ローラーを用いて混錬し、顔料混合物を作製した。
2.成分10〜14を70℃で混合し、更にそれを高圧処理してリポソーム分散物を作製した。
3.成分15〜19を混合し、高分子膨潤物と得た。
4.成分20〜25及び26〜31を70℃で乳化し、冷却して乳化物を得た。
5.前記1〜4を混合し、下地化粧料を得た。
【0048】
以上のようにして得られたリポソーム含有下地化粧料は、保湿性に優れ、メイクアップ効果を付与すると同時に、肌のうるおい感や柔軟性を向上させる高いスキンケア効果をも与えることができるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明により、顔料混合物とリポソーム分散液を含む化粧料が与えられた。本発明の化粧料は、粉体を配合してもリポソームの安定性が高く、且つ配合された粉体の分散性が優れているという特徴を有する。そのような本発明の化粧料は、ファンデーションを初めとして、スキンケア化粧料、メイクアップ化粧料等の性能の改善に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(A)〜(B);
(A)水不溶性の化粧料用顔料、リン脂質、および、ポリビニルピロリドン又は、ビニルピロリドンとビニルアセテートからなるコポリマーとを含有する顔料混合物、
(B)リポソーム分散液、
を含むことを特徴とする化粧料。
【請求項2】
前記リン脂質が、卵黄リン脂質、大豆リン脂質、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルコリン、スフィンゴミエリンからなる群から選択される一種又は二種以上であることを特徴とする請求項1記載の化粧料。
【請求項3】
更に成分(C)として水溶性高分子を含有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の化粧料。
【請求項4】
前記化粧料が、水中油型乳化化粧料であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1つの請求項に記載の化粧料。

【公開番号】特開2007−269720(P2007−269720A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−99115(P2006−99115)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】