説明

顔料分散体およびインキ

【課題】保存安定性を改善したカラーフィルター用顔料分散体および該組成物を用いた利用したインキの提供。
【解決手段】有機色素誘導体もしくは複素芳香族環誘導体2成分の比率をある範囲で組み合わせる事により保存安定性を改善したことを特徴とするカラーフィルタ用顔料分散体および該組成物を用いたカラーフィルタ用顔料インキ。少なくとも顔料、分散剤、溶剤および有機色素誘導体または複素芳香族環誘導体からなる顔料組成物において、有機色素誘導体もしくは複素芳香族環誘導体2成分の比率をある範囲で組み合わせる事により保存安定性を改善する事ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料粒子の微細な分散体を容易に得られ、かつ安定な状態に保つことを可能にする顔料分散体に関するものであり、さらに詳しくはカラーフィルタ用インキに好適に用いられる顔料分散体およびそれを用いたインキに関する。
【背景技術】
【0002】
印刷インキ、塗料等においては、顔料を微細な状態で分散させることにより、高い着色力を発揮させ、印刷物または塗加工物の鮮明な色調、光沢等の適性を持たせている。さらに、オフセットインキ、グラビアインキ、塗料、とりわけインクジェットインキ、カラーフィルタ用インキ等においては、高い鮮明性を得るため、顔料粒子を高度に微細化する必要がある。このとき顔料粒子を微細化する方法として現在広く用いられている方法に、ソルベントソルトミリング法、乾式粉砕法等が挙げられる。しかし、顔料と無機塩や溶剤など一般的に用いられる粉砕助剤等と共に仕込んだだけでは、粉砕時に起こる発熱や、分散助剤として添加した溶剤等により、顔料粒子の成長も同時に起こってしまったり、長時間機械的に力が加わることで、顔料粒子の状態が不安定になるため、結晶転移を起こすなどの変化を起こしたりして、時間とエネルギーをかけても、安定的に十分な微細化が得られない場合がある。しかも、特に乾式粉砕のみでは顔料粒子径にばらつきが出易いため、溶剤処理による整粒を行なうと微細な顔料粒子ほど結晶成長を起こし易く、制御が難しい。
【0003】
一方、顔料をより微細化していくと、顔料粒子間の凝集力が強くなり、インキや塗料が高粘度を示す場合が多い。しかも、この分散体を製造する際に、製品の分散機からの取り出し、分散機からタンク等への移送が困難となるばかりでなく、さらに悪い場合は貯蔵中にゲル化を起こし使用困難となることがある。
【0004】
このような問題を解決するためには、顔料分散剤を使用し、顔料とビヒクル間の親和性を良くし、分散体の安定化を図ることが知られており、これまでに様々な顔料分散剤が開示されている。例えば、有機顔料に酸性基、塩基性基、フタルイミドメチル基等の官能基を導入した顔料誘導体や、アクリルポリマーやポリエステル樹脂の一部に酸性基や塩基性基を導入した樹脂型分散剤が開発され、単独または併用にて使用されており、効果が得られている。
特許文献1では顔料を母体骨格として側鎖に塩基性基を置換基として有する顔料誘導体を含有する事により顔料の分散性を改善する事が開示されている。しかし、さらに高度に微細化した顔料を含むものは、上記に示した顔料誘導体では十分な粘度低下と貯蔵安定性が得られない。その上、強固に凝集した微細な顔料粒子をほぐしたときに高い光沢と透明性を得るまで分散するには多大なエネルギーを必要とする。
【0005】
そのため、高度に微細化された顔料粒子を分散して得られるカラーフィルタ用インキ等においても、高い分散性能と優れた粘度適性、及び貯蔵安定性をもつ顔料分散体が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−153780号公報
【特許文献2】特開2002−88269号公報
【特許文献3】特開平6−316676号公報 本発明はインキ、並びにこれを提供するための顔料分散体に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、顔料粒子が安定的に高度に微細化された顔料組成物を提供することであり、とりわけカラーフィルタ用インキといった顔料粒子の微細な分散が要求される用途に対して、低粘度で、経時安定性が飛躍的に優れた顔料インキを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、少なくとも顔料、分散剤、溶剤および有機色素誘導体または複素芳香族環誘導体(D)からなる顔料組成物であって、有機色素誘導体または複素芳香族環誘導体(D)が下記一般式(1)で示される有機色素誘導体または複素芳香族環誘導体(D1)と下記一般式(2)で示される有機色素誘導体または複素芳香族環誘導体(D2)とを含み、D1:D2の重量比が5:95〜40:60であることを特徴とするカラーフィルタ用顔料分散体であることを特徴とする。
一般式(1):
【0009】
【化1】


一般式(2):
【0010】
【化2】

【0011】
式中の記号は以下の意味を示す。
Q;有機色素残基、またはアントラキノン残基、または置換基を有してもよい複素環、または置換基を有してもよい芳香族化合物
X;直接結合、−CONH−Y−、SONH−Y−、または−CHNHCOCHNH−Y
(Y;置換基を有していてもよいアルキレン基またはアリーレン基)


【0012】
(Y;−NH−、または−O−)
(R、R;それぞれ独立に置換もしくは無置換のアルキル基またはRとRで少なくとも窒素原子を含むヘテロ環を形成していてもよい。)
m:1〜6の整数
n:1〜4の整数
【0013】
本発明は、さらに、顔料と有機色素誘導体または複素芳香族環誘導体(D)の比率が100:0.1から100:100であることを特徴とするカラーフィルタ顔料分散体に関する。
本発明は、さらに、分散剤が下記一般式で示される化合物である請求項1または2記載のカラーフィルタ用顔料分散体に関する。
一般式(3)
【0014】
【化3】

【0015】
( 式中、Rは数平均分子量50 0 〜 1 0 0 0 0 のポリエステル残基、yは1 〜 2 を表す。)
【0016】
本発明は、さらに、分散剤が芳香族カルボキシル基(A)を有し、芳香族トリカルボン酸無水物(B1)及び/または芳香族テトラカルボン酸無水物(B2)と水酸基を有する重合体(C)を反応させてなる化合物である請求項1または2記載のカラーフィルタ用顔料分散体に関する。
本発明は、さらに、水酸基を有する重合体(C)が、片末端に水酸基を有する重合体(C1)である請求項4記載のカラーフィルタ用顔料分散体に関する。
【0017】
本発明は、さらに、水酸基を有する重合体(C)が、側鎖に水酸基を有する重合体(C2)であることを特徴とする請求項4記載のカラーフィルタ用顔料分散体に関する。
本発明は、さらに、片末端に水酸基を有する重合体(C1)が、片末端に2つの水酸基を有する重合体(C3)であることを特徴とする請求項4記載のカラーフィルタ用顔料分散体に関する。
本発明は、さらに、上記の顔料分散体からなるカラーフィルター用顔料インキに関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明で得られた顔料分散体は、従来の有機色素誘導体または複素芳香族環誘導体を使用した顔料分散体よりも安定性に優れ、より微細な顔料を分散することが出来る。そのため、本発明の顔料分散体により作製されたカラーフィルタは、高いコントラスト比を達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
下記一般式(1)で表される有機色素誘導体または複素芳香族環誘導体(D1)と下記一般式(2)で表される有機色素誘導体または複素芳香族環誘導体(D2)からなる有機色素誘導体または複素芳香族環誘導体(D)の有機色素残基(Q)としては、例えば、フタロシアニン系色素、アゾ系色素、キナクリドン系色素、ジオキサジン系色素、アントラピリミジン系色素、アンサンスロン系色素、インダンスロン系色素、フラバンスロン系色素、ペリレン系色素、ペリノン系色素、チオインジコ系色素、イソインドリノン系色素、トリフェニルメタン系色素等の顔料骨格または染料骨格が挙げられる。
また複素環または芳香族環としては例えば、チオフェン、フラン、ピリジン、ピラゾール、ピロール、イミダゾール、イソインドリン、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、ベンズチアゾール、ベンズトリアゾール、インドール、キノリン、カルバゾール、アクリジン、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、フェナントレン等が挙げられる。
【0020】
本発明の顔料組成物において、下記一般式(1)で表される有機色素誘導体または複素芳香族環誘導体(D1)と下記一般式(2)で表される有機色素誘導体または複素芳香族環誘導体(D2)の重量比は5:95〜40:60が好ましく、更に好ましくは10:90〜25:75である。D1の比率が高い場合、もしくは極端に低いもしくは0の場合は粘度が高くなり、更に目的とする顔料組成物の長期保存安定性が確保できない。
【0021】
一般式(1):
【0022】
【化1】

【0023】
一般式(2):
【0024】
【化2】

【0025】
式中の記号は以下の意味を示す。
Q;有機色素残基、またはアントラキノン残基、または置換基を有してもよい複素環、または置換基を有してもよい芳香族化合物
X;直接結合、−CONH−Y−、SONH−Y−、または−CHNHCOCHNH−Y
(Y;置換基を有していてもよいアルキレン基またはアリーレン基)


【0026】
(Y;−NH−、または−O−)
(R、R;それぞれ独立に置換もしくは無置換のアルキル基またはRとRで少なくとも窒素原子を含むヘテロ環を形成していてもよい。)
m:1〜6の整数
n:1〜4の整数
【0027】
また有機色素誘導体または複素芳香族環誘導体(D1)と有機色素誘導体または複素芳香族環誘導体(D2)で構成される有機色素誘導体または複素芳香族環誘導体(D)の添加量は顔料100重量部に対し、好ましくは0.1〜100重量部、更に好ましくは1〜40重量部である。顔料100重量部に対し有機色素誘導体または複素芳香族環誘導体(D)が0.1重量部未満、あるいは100重量部を超えると分散性が悪くなる場合がある。
【0028】
本発明の顔料分散体に使用する顔料に関しては、例えば以下の有機顔料が使用できる。
アゾ系、アンサンスロン系、アンスラピリミジン系、アントラキノン系、イソインドリノン系、イソインドリン系、インダンスロン系、キナクリドン系、キノフタロン系、ジオキサジン系、ジケトピロロピロール系、チアジンインジゴ系、チオインジゴ系、ピランスロン系、フタロシアニン系、フラバンスロン系、ペリノン系、ペリレン系、ベンズイミダゾロン系などが挙げられ、好ましくはPigment Blue15,15:1,15:3,15:4,15:6,60、Pigment Violet19,23,29,30,37,40,50、Pigment Red9,48,49,52,53,57,97,122,144,146,149,166,168,177、178,179,185,206,207,209,220,221,238,242,254,255、Pigment Yellow12,13,14,17,20,24,74,83,86,93,94,95,109,110,117,120,125,128,137,138,139,147,148,150,151,154,155,166,168,180,185、199、Pigment Orange13,36,37,38,43,51,55,59,61,64,71,74、Pigment Green7,10,36、37、58等が使用できる。
【0029】
本発明の顔料分散体に使用する分散剤は以下のような化合物が挙げられる。例えば、ポリエステル系、アクリル系、ウレタン系の直鎖状または櫛状の樹脂からなるものや界面活性剤が使用できる。
【0030】
樹脂型顔料分散剤としては、直鎖状樹脂の主鎖または末端、櫛状樹脂の主鎖または側鎖に、ブロックまたはランダムに塩基性基、酸性基、芳香族基等を有するものが好ましい。具体的には、ポリウレタン、ポリアクリレートなどのポリカルボン酸エステル、不飽和ポリアミド、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸(部分)アミン塩、ポリカルボン酸アンモニウム塩、ポリカルボン酸アルキルアミン塩、ポリシロキサン、長鎖ポリアミノアマイドリン酸塩、水酸基含有ポリカルボン酸エステルや、これらの変性物、ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離のカルボキシル基を有するポリエステルとの反応により形成されたアミドやその塩などが用いられる。また、(メタ)アクリル酸−スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどの水溶性樹脂や水溶性高分子化合物、ポリエステル系、変性ポリアクリレート、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド付加物、燐酸エステル等が用いられる。これらは、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0031】
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ソーダ、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、スチレン−アクリル酸共重合体のアルカリ塩、ステアリン酸ナトリウム、アルキルナフタリンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸モノエタノールアミン、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリン酸モノエタノールアミン、ステアリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、スチレン−アクリル酸共重合体のモノエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルなどのアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリエチレングリコールモノラウレートなどのノニオン性界面活性剤;アルキル4級アンモニウム塩やそれらのエチレンオキサイド付加物などのカオチン性界面活性剤;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインなどのアルキルベタイン、アルキルイミダゾリンなどの両性界面活性剤が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0032】
市販の樹脂型顔料分散剤としては、例えば、ソルスパーズ13240、20000、24000、26000、28000、31000、76500などの各種ソルスパーズ分散剤(以上日本ルーブリゾール株式会社製)、ディスパービック110、111、160、161、162、163、164、167、170、182、2000、2001、2020、2025、2050、2070、2096、2150などの各種ディスパービック分散剤(以上ビックケミー製)、アジスパーPB711、PB411、PB111、PB814、PB821、PB822などの各種アジスパー分散剤(以上味の素ファインテクノ製)、エフカ46、47、4300、4330、4340などのエフカ分散剤(以上エフカ・アディティブス社製)などが挙げられる。
【0033】
本発明における顔料分散体で用いられる分散剤として、より安定性が向上するという点で下記一般式(3)及び/または芳香族カルボキシル基を有する分散剤(A)で示される分散剤が好ましい。
一般式(3)
【0034】
【化3】

【0035】
( 式中、Rは数平均分子量500〜10000のポリエステル残基、yは1〜2を表す。)更に好ましい数平均分子量は500〜3000である。
【0036】
一般式(3)で示されるリン酸エステルは、片末端に水酸基を有するポリエステル残基をリン酸エステル化して得ることができる。片末端に水酸基を有するポリエステル残基は、モノアルコールを開始剤としてε−カプロラクトン等の開環付加をすることによって得ることができる。
モノアルコールは、分子内に1つの水酸基を持つものであれば特に限定されるものではなく、1級、2級、3級アルコールの何れも使用可能である。例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、sec−ブタノール、tert− ブタノール、ペンタノール、アミルアルコール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ノナノール、デカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ヘキサデシルアルコール等並びにその混合物が用いられる。
【0037】
片末端に水酸基を有するポリエステル残基は、モノアルコールを開始剤として、ε−カプロラクトン等を開環付加することによって得ることができる。ε−カプロラクトンの付加反応は、公知の方法、例えば、脱水管、コンデンサーを接続した反応器にモノアルコール、ε−カプロラクトン、重合触媒を仕込み、窒素気流下で行うことができる。低沸点のモノアルコールを用いる場合には、オートクレーブを用いて加圧下で反応させることができる。反応には、無溶剤またはトルエン、キシレンの様な適当な脱水溶媒を使用することもできる。反応に使用した溶媒は、反応終了後、蒸留等の操作により取り除くか、あるいはそのまま製品の一部として使用することもできる。
【0038】
反応温度は120℃〜220℃、好ましくは160℃〜210℃の範囲で行う。反応温度が120℃未満では反応速度がきわめて遅く、220℃を越えるとε−カプロラクトンの付加反応以外の副反応、たとえばε−カプロラクトン付加体のε−カプロラクトンモノマーへの分解、環状のε−カプロラクトンダイマーの生成等が起こりやすい。モノアルコール1モルに対するε−カプロラクトンの付加モル数は、1〜50 モル、好ましくは、3〜20モルである。付加モル数が、1モルより少ないと、分散剤としての効果を得にくくなり、50モルより大きいと反応物の分子量が大きくなりすぎ、分散性、流動性の低下を招く傾向がある。
【0039】
重合触媒としては、例えば、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモ
ニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムヨード、テトラブチルアンモニウムヨード、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムヨードなどの四級アンモニウム塩、テトラメチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラメチルホスホニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムブロミド、テトラメチルホスホニウムヨード、テトラブチルホスホニウムヨード、ベンジルトリメチルホスホニウムクロリド、ベンジルトリメチルホスホニウムブロミド、ベンジルトリメチルホスホニウムヨード、テトラフェニルホスホニウムクロリド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムヨードなどの四級ホスホニウム塩の他、トリフェニルフォスフィンなどのリン化合物、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸ナトリウムなどの有機カルボン酸塩、ナトリウムアルコラート、カリウムアルコラートなどのアルカリ金属アルコラートの他、三級アミン類、有機錫化合物、有機アルミニウム化合物、有機チタネート化合物、及び塩化亜鉛などの亜鉛化合物等が挙げられる。触媒の使用量は0.1ppm〜3000ppm、好ましくは1ppm〜100ppmである。触媒量が3000ppmを越えると樹脂の着色が激しくなり、製品の安定性に悪影響を与える傾向がある。逆に、触媒の使用量が1ppm未満では環状エステルの開環重合速度が極めて遅くなる傾向がある。
【0040】
片末端に水酸基を有するポリエステル残基は、五酸化リン、ポリリン酸、オルトリン酸、オキシ塩化リン等のリン酸化剤の1種あるいは2種以上組み合わせて反応させることにより、リン酸エステル化を行うことができる。これらのうち、塩酸ガス等の副生がなく、特殊な設備が不要であることから、オルトリン酸、ポリリン酸および五酸化リンからなる群より選ばれる1種以上のリン酸エステル化剤が好ましい。なかでもオルトリン酸換算含有量116%のポリリン酸が好ましい。
【0041】
リン酸エステル化剤の仕込み比は、片末端に水酸基を有するポリエステル残基の水酸基に対する、リン酸エステル化剤中のリン原子の比が0.5〜1.5であることが好ましく、1.0〜1.3であることが更に好ましく、1.05〜1.2であることが最も好ましい。これは、エポキシ基に対するリン原子の比が0.5未満では、水酸基に対するリン酸エステル化が不十分となったり、リン酸ジエステルの副生量が増加したりする傾向があり、1 .5を超えると、添加量に見合う増量効果は得られない傾向がある。
【0042】
一般式(3)で示されるリン酸エステルにおいて、y=1とy=2の存在比が100:0 〜100:30であると、顔料分散性が良好になり好ましい。
また、一般式(3)で示されるリン酸エステルにおいて、Rがポリカプロラクトン残基であると、顔料分散性、乾燥溶解性、基材密着性が良好になり好ましい。数平均分子量500〜3000のポリカプロラクトン残基がより好ましい。
【0043】
芳香族カルボキシル基を有する分散剤(A)
本発明の芳香族カルボキシル基を有する分散剤(A)は、数平均分子量が500〜30,000であることが好ましい。500未満であっても、30,000を越えても顔料分散体の粘度、及び粘度安定性が悪くなる場合があるので好ましくない。
また、本発明の芳香族カルボキシル基を有する分散剤(A)は、酸価が10〜200mgKOH/gであることが好ましい。
【0044】
本発明の芳香族カルボキシル基を有する分散剤(A)は、その分子内に芳香族カルボキシル基を有するものである。その製造方法には、例えば、水酸基を有する重合体(C)に芳香族トリカルボン酸無水物(B1)及び/または芳香族テトラカルボン酸二無水物(B2)を反応させる製造方法1、芳香族カルボキシル基を有する単量体を用いて重合体を作る製造方法2、水酸基を有する単量体を重合しながら芳香族トリカルボン酸無水物(B1)及び/または芳香族テトラカルボン酸二無水物(B2)を反応させる製造方法3、のいずれかが挙げられる。この中で、顔料分散性の観点から、分散剤(A)中の芳香族カルボキシル基の個数をより制御し易い製造方法1により作られたものが好ましい。
【0045】
〈重合体(C)〉
本発明の芳香族カルボキシル基を有する分散剤の前駆体として使用する水酸基を有する重合体(C)としては、片末端に水酸基を有する重合体(C1)と、側鎖に水酸基を有する重合体(C2)とに分けられる。更に、片末端に水酸基を有する重合体(C1)として、片末端に2つの水酸基を有する重合体(C3)が好ましい。
【0046】
〔重合体(C1)〕
まず、片末端に水酸基を有する重合体(C1)について説明する。本発明に用いる片末端に水酸基を有する重合体(C1)としては、片末端に水酸基を有するポリエステル及び/またはポリエーテル系重合体(C1−1)と、片末端に水酸基を有するビニル系重合体(C1−2)とが挙げられる。
[ポリエステル及び/またはポリエーテル系重合体(C1−1)]
片末端に水酸基を有するポリエステル及び/またはポリエーテル系重合体(C1−1)としては、下記一般式(4)で示されるものが好ましい。
一般式(4):
【0047】
【化4】

【0048】
〔一般式(4)中、
は、炭素原子数1〜20、酸素原子数0〜12、及び窒素原子数0〜3の1価の末端基であり、
は、−O−、−S−、または−N(Rb)−(但し、Rbは水素原子または炭素原子数1〜18の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基)であり、
は、−OHであり、
は、−RO−で示される繰り返し単位であり、
は、−C(=O)RO−で示される繰り返し単位であり、
は、−C(=O)RC(=O)−ORO−で示される繰り返し単位であり、
は、炭素原子数2〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、または炭素原子数3〜8のシクロアルキレン基であり、
は、炭素原子数1〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、または炭素原子数4〜8のシクロアルキレン基であり、
は、炭素原子数2〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、炭素原子数2〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルケニレン基、炭素原子数3〜20のシクロアルキレン基、または炭素原子数6〜20アリーレン基であり、
は、−CH(R10)−CH(R11)−であり、
10とR11は、どちらか一方が水素原子であり、もう一方が炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数6〜20のアリール基、アルキル部分の炭素原子数1〜20のアルキルオキシメチレン基、アルケニル部分の炭素原子数2〜20のアルケニルオキシメチレン基、アリール部分の炭素原子数6〜20でアリール部分が場合によりハロゲン原子で置換されていることのあるアリールオキシメチレン基、N−メチレン−フタルイミド基であり、
は、前記R、−C(=O)R−、または−C(=O)RC(=O)−OR−であり、
は、0〜100の整数であり、
は、0〜60の整数であり、
は、0〜30の整数であり、
但しm+m+mは1以上100以下であり、
一般式(4)における前記繰り返し単位G〜Gの配置は、その順序を限定するものではなく、一般式(4)で表される重合体において、基Zと基Rとの間に繰り返し単位G〜Gが任意の順序で含まれていることを示し、更に、それらの繰り返し単位G〜Gは、それぞれランダム型またはブロック型のどちらでもよい。〕
【0049】
前記一般式(4)は、Zが炭素数1〜18の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であることが、顔料分散体の低粘度化及び保存安定性の観点から好ましい。
【0050】
また、別の形態として、前記一般式(4)の中でZがエチレン性不飽和二重結合を有することが好ましい。この場合、芳香族カルボキシル基を有する分散剤に活性エネルギー線硬化性を付与することができる。
また、前記一般式(4)の中で、mが3〜15の整数であることが、顔料分散体の低粘度化及び保存安定性の観点から好ましい。
また、前記一般式(4)の中で、m=0、m=0の場合、Zは炭素数1〜7の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であるか、若しくはエチレン性不飽和二重結合を有することが好ましい。
【0051】
前記一般式(4)で示される片末端に水酸基を有するポリエステル及び/またはポリエーテル系重合体(C1-1)は、公知の方法で製造することができ、モノアルコール、1級モノアミン、2級モノアミン、及びモノチオールの群から選択される化合物を開始剤として、アルキレンオキサイド、ラクトン、ラクチド、ジカルボン酸無水物、及びエポキシドの群から選択される環状化合物を開環重合して容易に得られる。
【0052】
モノアルコールとしては、水酸基を一つ有する化合物であればいかなる化合物でも構わない。例示すると、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、イソペンタノール、1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、イソオクタノール、2−エチルヘキサノール、1−ノナノール、イソノナノール、1−デカノール、1−ドデカノール、1−ミリスチルアルコール、セチルアルコール、1−ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、2−オクチルデカノール、2−オクチルドデカノール、2−ヘキシルデカノール、ベヘニルアルコール、またはオレイルアルコール等の脂肪族モノアルコール類;
【0053】
ベンジルアルコール、フェノキシエチルアルコール、パラクミルフェノキシエチルアルコール等の芳香環を有するモノアルコール類;あるいは、
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノプロピルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノエチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノプロピルエーテル、テトラプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、またはテトラジエチレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル類等が挙げられる。
【0054】
モノアルコールとしてエチレン性不飽和二重結合を有するモノアルコールを使用してもよい。この場合、生成される芳香族カルボキシル基を有する分散剤に、活性エネルギー線硬化性能を付与することができる。
【0055】
前記のエチレン性不飽和二重結合を有する基の例としては、ビニル基、または(メタ)アクリロイル基(なおここで、以降「(メタ)アクリロイル」または「(メタ)アクリレート」と表記する場合には、それぞれ「アクリロイル及び/またはメタクリロイル」または「メタアクリレート及び/またはアクリレート」を示すものとする。)が挙げられるが、好ましいのは(メタ)アクリロイル基である。これら二重結合を有する基の種類は、一種類でもよいし、複数種類でもよい。
【0056】
エチレン性不飽和二重結合を有するモノアルコールとしては、エチレン性不飽和二重結合を1個、2個、及び3個以上含む化合物を用いることができる。エチレン性不飽和二重結合の数が1個のモノアルコールとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(なお、「(メタ)アクリレート」と表記する場合には、アクリレート及び/またはメタクリレートを示すものとする。以下同じ。)、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、エチル2−(ヒドロキシメチル)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、または4−ヒドロキシブチルビニルエーテル等が挙げられる。エチレン性不飽和二重結合の数が2個のモノアルコールとしては、例えば、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、またはグリセリンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。エチレン性不飽和二重結合の数が3個のモノアルコールとしては、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エチレン性不飽和二重結合の数が5個のモノアルコールとしては、例えば、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートが挙げられる。
【0057】
このうち、ペンタエリスリトールトリアクリレート及びジペンタエリスリトールペンタアクリレートは、それぞれ、ペンタエリスリトールテトラアクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物として得られるので、生成される分散剤の分子量を制御するためにはHPLC(高速液体クロマトグラフィ)法や水酸基価の測定によりモノアルコール体の比率を決定する必要がある。モノアルコール体の数とG〜Gを形成する原料の比率により、分散剤の分子量が決まるからである。
【0058】
前記のモノアルコールのうち、エチレン性不飽和二重結合の数が2個以上のものは、硬化性の点で活性エネルギー線硬化型顔料組成物に用いる場合に好ましい。
【0059】
1級モノアミンとしては、例えば、
メチルアミン、エチルアミン、1−プロピルアミン、イソプロピルアミン、1−ブチルアミン、イソブチルアミン、tert−ブチルアミン、1−ペンチルアミン、イソペンチルアミン、3−ペンチルアミン、1−ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、4−メチル−2−ペンチルアミン、1−ヘプチルアミン、1−オクチルアミン、イソオクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、1−ノニルアミン、イソノニルアミン、1−デシルアミン、1−ドデシルアミン、1−ミリスチルアミン、セチルアミン、1−ステアリルアミン、イソステアリルアミン、2−オクチルデシルアミン、2−オクチルドデシルアミン、2−ヘキシルデシルアミン、ベヘニルアミン、またはオレイルアミン等の脂肪族1級モノアミン類;
3−メトキシプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−プロポキシプロピルアミン、3−ブトキシプロピルアミン、2−エチルヘキシロキシプロピルアミン、3−イソブチロキシプロピルアミン、3−デシロキシプロピルアミン、または3−ミリスチロキシプロピルアミン等のアルコキシアルキル1級モノアミン類;あるいは、
ベンジルアミン等の芳香族1級モノアミンが挙げられる。
2級モノアミンとしては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−1−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−1−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−1−ペンチルアミン、ジイソペンチルアミン、ジ−1−ヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジ−(4−メチル−2−ペンチル)アミン、ジ−1−ヘプチルアミン、ジ−1−オクチルアミン、イソオクチルアミン、ジ−(2−エチルヘキシル)アミン、ジ−1−ノニルアミン、ジイソノニルアミン、ジ−1−デシルアミン、ジ−1−ドデシルアミン、ジ−1−ミリスチルアミン、ジセチルアミン、ジ−1−ステアリルアミン、ジイソステアリルアミン、ジ−(2−オクチルデシル)アミン、ジ−(2−オクチルドデシル)アミン、ジ−(2−ヘキシルデシル)アミン、N−メチルエチルアミン、N−メチルブチルアミン、N−メチルイソブチルアミン、N−メチルプロピルアミン、N−メチルヘキシルアミン、ピペラジン、またはアルキル置換ピペラジン等の脂肪族2級モノアミン類が挙げられる。
【0060】
モノチオールとしては、例えば、メチルチオール、エチルチオール、1−プロピルチオール、イソプロピルチオール、1−ブチルチオール、イソブチルチオール、tert−ブチルチオール、1−ペンチルチオール、イソペンチルチオール、3−ペンチルチオール、1−ヘキシルチオール、シクロヘキシルチオール、4−メチル−2−ペンチルチオール、1−ヘプチルチオール、1−オクチルチオール、イソオクチルチオール、2−エチルヘキシルチオール、1−ノニルチオール、イソノニルチオール、1−デシルチオール、1−ドデシルチオール、1−ミリスチルチオール、セチルチオール、1−ステアリルチオール、イソステアリルチオール、2−オクチルデシルチオール、2−オクチルドデシルチオール、2−ヘキシルデシルチオール、ベヘニルチオール、またはオレイルチオール等の脂肪族モノチオール類;あるいは、チオグリコール酸メチル、チオグリコール酸オクチル、チオグリコール酸メトキシブチルなどのチオグリコール酸アルキルエステル、メルカプトプロピオン酸メチル、メルカプトプロピオン酸オクチル、メルカプトプロピオン酸メトキシブチル、またはメルカプトプロピオン酸トリデシル等のメルカプトプロピオン酸アルキルエステル類が挙げられる。
【0061】
本発明で言うモノアルコール、1級モノアミン、2級モノアミン、及びモノチオールからなる群から選ばれる化合物は、前記例示に限定されることなく、水酸基、1級アミノ基、2級アミノ基、またはチオール基を一つ有する化合物であればいかなる化合物も用いることができ、また、単独で用いても、2種類以上を併用して用いても構わない。
ここで、モノアルコール、1級モノアミン、2級モノアミン、またはモノチオールのそれぞれ水酸基、1級アミノ基、2級アミノ基、またはチオール基を除いた部分が、前記一般式(4)におけるZを構成する。
【0062】
前記例示したモノアルコール、1級モノアミン、2級モノアミン、及びモノチオールからなる群から選ばれる化合物を開始剤として、アルキレンオキサイド、ラクトン、ラクチド、及びジカルボン酸無水物とエポキシドとの組合せからなる群から選ばれる環状化合物を開環重合して、前記一般式(4)で示される重合体のうちZが−OHのものを製造することができる。但し、ジカルボン酸無水物とエポキシドとの組み合わせは、必ず、同時に用いられ、交互に重合させる。
【0063】
ここで、アルキレンオキサイド、ラクトン、ラクチド、及びジカルボン酸無水物とエポキシドとの組合せからなる群から選ばれる環状化合物の反応順序は、どのようなものでもよく、例えば、一段階目として、前記開始剤にアルキレンオキサイドを重合した後、二段階目にラクトンを重合し、更に三段階目にジカルボン酸無水物とエポキシドとを交互に重合することもできる。この例では、二段階目にラクトンを重合するときの開始剤は、一段階目に重合されている片末端に水酸基を有するアルキレンオキサイド重合体となる。また、三段階目にジカルボン酸無水物とエポキシドとを交互に重合するときの開始剤は、二段階目までに重合されている片末端に水酸基を有するアルキレンオキサイド重合体とラクトン重合体のブロック共重合体となる。本発明の製造方法では、以降に説明する前記一般式(4)で示される重合体を製造する場合の開始剤として、このような前記一般式(4)で示される重合体のうちZが−OHのものや、後述する一般式(6)で示される重合体も開始剤となりうる。
【0064】
前記の環状化合物の反応順序は、一段階目のアルキレンオキサイド、二段階目のラクトン、三段階目のジカルボン酸無水物とエポキシドとの組合せに限定されず、アルキレンオキサイド、ラクトン(及び/またはラクチド)、及びジカルボン酸無水物とエポキシドとの組合せを任意の順序で、それぞれ1ないし複数回に亘って実施することができる。あるいは、アルキレンオキサイド、ラクトン(及び/またはラクチド)、及びジカルボン酸無水物とエポキシドとの組合せについて、全ての開環重合を実施せずに、それらの内から、任意の環状化合物を選択して、開環重合を実施することもできる。
【0065】
アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、1,4−ブチレンオキサイド、2,3−ブチレンオキサイド、または1,3−ブチレンオキサイド等が挙げられ、これらを、単独あるいは2種以上併用して用いることができる。2種以上のアルキレンオキサイドを併用するときの結合形式は、ランダム及び/またはブロックのいずれでもよい。開始剤1モルに対するアルキレンオキサイドの重合モル数は、0〜100が好ましい。
【0066】
アルキレンオキサイドの重合は、公知方法、例えばアルカリ触媒の存在下、100〜200℃の温度で、加圧状態で行うことができる。モノアルコールの水酸基にアルキレンオキサイドを重合して得られる片末端に水酸基を有するアルキレンオキサイド重合体は市販されており、例えば、日本油脂社製ユニオックスシリーズ、日本油脂社製ブレンマーシリーズ等があり、前記一般式(4)で示される重合体のうちZが−OHでG〜Gの繰り返し単位のうちGのみを有するものとして本発明の芳香族カルボキシル基を有する分散剤の原料にそのまま使用することもできる。市販品を具体的に例示すると、ユニオックスM−400、M−550、M−2000、ブレンマーPE−90、PE−200、PE−350、AE−90、AE−200、AE−400、PP−1000、PP−500、PP−800、AP−150、AP−400、AP−550、AP−800、50PEP−300、70PEP−350B、AEPシリーズ、55PET−400、30PET−800、55PET−800、AETシリーズ、30PPT−800、50PPT−800、70PPT−800、APTシリーズ、10PPB−500B、10APB−500B等がある。
【0067】
ここで、アルキレンオキサイドのアルキレン基が、前記一般式(4)における繰り返し単位G中のRを構成する。
【0068】
ラクトンとしては、具体的にはβ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、またはアルキル置換されたε−カプロラクトン、が挙げられ、この内、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、またはアルキル置換されたε−カプロラクトンを使用するのが開環重合性の点で好ましい。
【0069】
本発明の製造方法において、ラクトンは、前記例示に限定されることなく用いることができ、また単独で用いても、2種類以上を併用して用いても構わない。2種類以上を併用して用いることで結晶性が低下し室温で液状になる場合があるので、作業性の点と、他の樹脂との相溶性の点で好ましい。
【0070】
ラクチドとしては、下記一般式(5)で示されるものが好ましい(グリコリドを含む)。
一般式(5):
【0071】
【化5】

【0072】
〔一般式(5)中、
12及びR13は、それぞれ独立して、水素原子、飽和若しくは不飽和の直鎖若しくは分枝の炭素原子数1〜20のアルキル基であり、
14及びR15は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、並びに飽和若しくは不飽和の直鎖若しくは分枝の炭素原子数1〜9の低級アルキル基である。〕
本発明の芳香族カルボキシル基を有する分散剤の原料として、特に好適なラクチドは、ラクチド(3,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン)、及びグリコリド(1,4−ジオキサン−2,5−ジオン)である。また、本発明の芳香族カルボキシル基を有する分散剤の原料として前記ラクトンまたはラクチドのうち、ラクトンが用いられるのが好ましい。
【0073】
ラクトン及び/またはラクチドの開環重合は、公知方法、例えば、脱水管、コンデンサーを接続した反応器に、開始剤、ラクトン及び/またはラクチド、及び重合触媒を仕込み、窒素気流下で行うことができる。低沸点のモノアルコールを用いる場合には、オートクレーブを用いて加圧下で反応させることができる。また、モノアルコールにエチレン性不飽和二重結合を有するものを使用する場合は、重合禁止剤を添加し、乾燥空気流下で反応を行うことが好ましい。
【0074】
開始剤1モルに対するラクトン及び/またはラクチドの重合モル数は、1〜60モルの範囲が好ましく、更には2〜20モルが好ましく、最も好ましくは3〜15モルである。
【0075】
ラクトン及び/またはラクチドの重合触媒としては、公知のものを制限なく使用することができるが、例えば、
テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムヨード、テトラブチルアンモニウムヨード、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、またはベンジルトリメチルアンモニウムヨード等の四級アンモニウム塩;
テトラメチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラメチルホスホニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムブロミド、テトラメチルホスホニウムヨード、テトラブチルホスホニウムヨード、ベンジルトリメチルホスホニウムクロリド、ベンジルトリメチルホスホニウムブロミド、ベンジルトリメチルホスホニウムヨード、テトラフェニルホスホニウムクロリド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、またはテトラフェニルホスホニウムヨード等の四級ホスホニウム塩;
トリフェニルフォスフィン等のリン化合物;
酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、安息香酸カリウム、または安息香酸ナトリウム等の有機カルボン酸塩;
ナトリウムアルコラート、またはカリウムアルコラート等のアルカリ金属アルコラート;三級アミン類;
有機錫化合物、有機アルミニウム化合物、または有機チタネート化合物等の有機金属化合物;あるいは、
塩化亜鉛等の亜鉛化合物等が挙げられる。
触媒の使用量は0.1ppm〜3000ppm、好ましくは1ppm〜1000ppmである。触媒量が3000ppmを超えると、樹脂の着色が激しくなる場合がある。逆に、触媒の使用量が0.1ppm未満ではラクトン及び/またはラクチドの開環重合速度が極めて遅くなるので好ましくない。
【0076】
ラクトン及び/またはラクチドの重合温度は100℃〜220℃、好ましくは、110℃〜210℃の範囲で行う。反応温度が100℃未満では反応速度がきわめて遅く、220℃を超えるとラクトン及び/またはラクチドの付加反応以外の副反応、たとえばラクトン付加体のラクトンモノマーへの解重合、環状のラクトンダイマーやトリマーの生成等が起こりやすい。
【0077】
ここで、ラクトンまたはラクチドのエステル基以外の部分が、前記一般式(4)における繰り返し単位G中のRを構成する。
【0078】
ジカルボン酸無水物としては、例えば、コハク酸無水物、マレイン酸無水物、フタル酸無水物、イタコン酸無水物、グルタル酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、またはクロレンデック酸無水物等が挙げられる。
【0079】
エポキシドとしては、例えば、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、p−ターシャリーブチルフェニルグリシジルエーテル、2,4−ジブロモフェニルグリシジルエーテル、3−メチル−ジブロモフェニルグリシジルエーテル(ただし、ブロモの置換位置は任意である)、アリルグリシジルエーテル、エトキシフェニルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルフタルイミド、またはスチレンオキシド等が挙げられる。
【0080】
ジカルボン酸無水物とエポキシドとは開始剤に対して同時に使用され、交互に反応する。このとき、開始剤の水酸基、1級アミノ基、2級アミノ基、またはチオール基に対して、まずジカルボン酸無水物の酸無水物基が反応してカルボキシル基を生じ、次いでこのカルボキシル基にエポキシドのエポキシ基が反応して水酸基を生じる。更に、この水酸基にジカルボン酸無水物の酸無水物基が反応するというように、以下、順次、前記と同様の反応を進行させることができる。開始剤1モルに対するジカルボン酸無水物及びエポキシドの重合モル数はそれぞれ0〜30モルが好ましい。また、ジカルボン酸無水物とエポキシドとの反応比率([D]/[E])は、
【0081】
0.8≦[D]/[E]≦1.0
([D]はジカルボン酸無水物のモル数であり、[E]はエポキシドのモル数である)
であることが好ましい。0.8未満であるとエポキシドが残り好ましくなく、1.0を超えると、片末端に水酸基を有する重合体が得られず、片末端にカルボキシル基を有する重合体ができるので好ましくない。
【0082】
ジカルボン酸無水物とエポキシドとの交互重合は、好ましくは50℃〜180℃、より好ましくは、60℃〜150℃の範囲で行う。反応温度が50℃未満となる場合や180℃を超える場合では反応速度がきわめて遅い。
【0083】
ここで、ジカルボン酸無水物のジカルボン酸無水物基以外の部分が前記一般式(5における繰り返し単位G中のRを構成し、エポキシドの環状エーテルを形成する酸素原子以外の部分が前記一般式(4)における繰り返し単位G中のRを構成する。
【0084】
前記一般式(4)で示される重合体を製造するときに、エチレン性不飽和二重結合を有するモノアルコール、ジカルボン酸無水物、またはエポキシドを使用する場合は、重合禁止剤を使用することが好ましい。重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、p−ベンゾキノン、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、フェノチアジン等が好ましく、これらを単独若しくは併用で0.01%〜6%、好ましくは、0.05%〜1.0%の範囲で用いる。
片末端に水酸基を有するビニル系重合体(C1−2)
片末端に水酸基を有するビニル系重合体(C1−2)としては、下記一般式(6)で示される重合体が好ましい。
一般式(6):
【0085】
【化6】

【0086】
〔一般式(6)中、Zは、ビニル重合体の重合停止基であり、Zは、−OH、または−R20(OH)であり、R20は、炭素原子数1〜18の3価の炭化水素基であり、R16及びR17は、それぞれ独立に水素原子またはメチル基であり、R18及びR19は、いずれか一方が水素原子、他の一方が芳香族基、または−C(=O)−Z−R21(但し、Zは、−O−若しくは−N(R22)−であり、R21、R22は、水素原子、炭素原子数1〜18の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、または置換基として芳香族基を有する炭素原子数1〜18の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であり、Zは、−O−R23−、または−S−R23−であり、R23は、直接結合、または炭素数1〜18の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基であり、nは、2〜50である。〕
前記一般式(6)で示される重合体はエチレン性不飽和単量体を重合せしめたビニル系重合体である。
【0087】
前記一般式(6)で示される重合体の繰り返し単位の部分、すなわち、{−〔C(R16)(R18)−C(R17)(R19)〕n−}は、相互に同一のものからなる(ホモポリマー)であっても、異なるものからなる(コポリマー)でもよい。前記一般式(5)で示される重合体の好ましい形態は、R16及びR17が、いずれか一方が水素原子、他の一方が水素原子またはメチル基であり、R18及びR19は、いずれか一方が水素原子、他の一方が−C(=O)−O−R24(R24は炭素原子数1〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基で置換基として芳香族基を有していることができるもの)であり、−Z−Zが−S−CHCH−OH、若しくはS−CHCH(OH)CH−OH、の場合である。
【0088】
前記一般式(6)中のZ、すなわち、ビニル重合体の重合停止基は、通常のエチレン性不飽和単量体の重合を通常の方法で実施した場合に導入される任意の公知重合停止基であり、当業者には自明である。具体的には、例えば、重合開始剤由来の基、連鎖移動剤由来の基、溶剤由来の基、またはエチレン性不飽和単量体由来の基であることができる。Zがこれらのいずれの化学構造を有していても、本発明の分散剤は、重合停止基Zの影響を受けずに、その効果を発揮することができる。
【0089】
前記一般式(6)で示される重合体のうちZが−OHのものは、公知の方法で製造することができ、例えば、水酸基とチオール基とを有する化合物とエチレン性不飽和単量体とを混合して加熱することで得ることができる。
分子内に水酸基とチオール基とを有する化合物としては、例えば、メルカプトメタノール、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1−プロパノール、1−メルカプト−2−ブタノール、または2−メルカプト−3−ブタノール等が挙げられる。
【0090】
前記一般式(6)で示される重合体のうちZが−R20(OH)のものは、公知の方法で製造することができ、例えば、水酸基2つとチオール基1つとを有する化合物とエチレン性不飽和単量体とを混合して加熱することで得ることができる。この場合に片末端に水酸基を有する重合体(C)の中でも、もっとも好ましい態様である片末端に2つの水酸基を有する重合体(C3)となる。
【0091】
分子内に水酸基2つとチオール基1つとを有する化合物としては、例えば、1−メルカプト−1,1−メタンジオール、1−メルカプト−1,1−エタンジオール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール(チオグリセリン)、2−メルカプト−1,2−プロパンジオール、2−メルカプト−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メルカプト−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1−メルカプト−2,2−プロパンジオール、2−メルカプトエチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、または2−メルカプトエチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール等が挙げられる。
【0092】
好ましくは、エチレン性不飽和単量体100重量部に対して、1〜30重量部の水酸基とチオール基とを有する化合物を用い、塊状重合または溶液重合を行う。反応温度は好ましくは40〜150℃、より好ましくは50〜110℃、反応時間は好ましくは3〜30時間、より好ましくは5〜20時間である。水酸基とチオール基を有する化合物が、1重量部未満では、分子量が大きくなり、分散体の粘度が高くなり好ましくない場合がある。30重量部を超えると、分子量が小さくなり、溶媒親和性のビニル重合体部分による立体反発効果が少なくなるため好ましくない場合がある。
【0093】
チオール基はエチレン性不飽和単量体を重合するためのラジカル発生基となるため、該重合には必ずしも別の重合開始剤は必要ではないが、使用することもできる。該重合開始剤を使用する場合は、エチレン性不飽和単量体100重量部に対して、0.001〜5重量部が好ましい。
【0094】
重合開始剤としては、例えば、アゾ系化合物及び有機過酸化物を用いることができる。アゾ系化合物の例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2’−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、または2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]等が挙げられる。有機過酸化物の例としては、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、またはジアセチルパーオキシド等が挙げられる。これらの重合開始剤は、単独で、若しくは2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0095】
エチレン性不飽和単量体としては、アクリル単量体とアクリル単量体以外の単量体とが挙げられる。アクリル単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、またはエトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類、あるいは、(メタ)アクリルアミド(なお、「(メタ)アクリルアミド」と表記した場合には、アクリルアミド及び/またはメタクリルアミドを示すものとする。以下同じ。)、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、またはアクリロイルモルホリン等の(メタ)アクリルアミド類が挙げられる。
【0096】
また、前記アクリル単量体以外の単量体としては、例えば、スチレン、またはα−メチルスチレン等のスチレン類、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、またはイソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、あるいは、酢酸ビニル、またはプロピオン酸ビニル等の脂肪酸ビニル類が挙げられる。アクリル単量体以外の前記単量体を、前記アクリル単量体と併用することもできる。
【0097】
また、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体を単独で用いるか、若しくは前記単量体と併用することもできる。カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、ε−カプラロラクトン付加アクリル酸、ε−カプラロラクトン付加メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、またはクロトン酸等が挙げられ、1種または2種以上を選択することができる。
【0098】
前記一般式(6)で示される重合体を製造する工程では、無溶剤または場合によって溶剤を使用することができる。溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、キシレン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、またはジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等が用いられるが、特にこれらに限定されるものではない。これらの重合溶媒は、2種類以上混合して用いてもよい。
【0099】
使用する溶剤量はエチレン性不飽和単量体100重量部に対して、0〜300重量部が好ましく、更には0〜100重量部が好ましい。使用した溶媒は、反応終了後、蒸留等の操作により取り除くか、あるいはそのまま、分散剤の製品の一部として使用することもできる。
【0100】
側鎖に水酸基を有する重合体(C2)
本発明の側鎖に水酸基を有する重合体(C2)は、水酸基を有するエチレン性不飽和単量体と必要に応じその他のエチレン性不飽和単量体を重合せしめて得ることができる。水酸基を有するエチレン性不飽和単量体としては、
水酸基を有する(メタ)アクリレート系単量体、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2(若しくは3)−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2(若しくは3若しくは4)−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、またはシクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、またはエチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート等のアルキル−α−ヒドロキシアルキルアクリレート、あるいは、
水酸基を有する(メタ)アクリルアミド系単量体、例えば、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、またはN−(2−ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド等のN−(ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミド、あるいは、
水酸基を有するビニルエーテル系単量体、例えば、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−(または3−)ヒドロキシプロピルビニルエーテル、または2−(若しくは3−若しくは4−)ヒドロキシブチルビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル、あるいは、
水酸基を有するアリルエーテル系単量体、例えば、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、2−(または3−)ヒドロキシプロピルアリルエーテル、または2−(若しくは3−若しくは4−)ヒドロキシブチルアリルエーテル等のヒドロキシアルキルアリルエーテル等が挙げられる。
また、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基を2つ有する単量体も挙げられる。更に、エポキシ基等の環状エーテル基を有するエチレン系不飽和単量体に、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体を反応させたものや、あるいは(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体に、単官能エポキシ化合物等の単官能環状エーテル化合物を反応させたもの等も挙げられる。
【0101】
また、上記のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルキル−α−ヒドロキシアルキルアクリレート、N−(ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシアルキルビニルエーテルヒドロキシアルキルアリルエーテル、またはグリセロールモノ(メタ)アクリレートに、アルキレンオキサイド及び/またはラクトンを付加して得られるエチレン性不飽和単量体も、本発明方法において、水酸基を有するエチレン性不飽和単量体として用いることができる。付加されるアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、または1,2−、1,4−、2,3−、若しくは1,3−ブチレンオキサイドが挙げられ、これらの2種以上の併用系も用いることができる。2種以上のアルキレンオキサイドを併用するときの結合形式は、ランダム及び/またはブロックのいずれでもよい。付加されるラクトンとしては、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、または炭素原子数1〜6のアルキル基で置換されたε−カプロラクトンが挙げられ、これらの2種以上の併用系も用いることができる。アルキレンオキサイドとラクトンを両方とも付加したものでも構わない。
【0102】
水酸基を有するエチレン性不飽和単量体と他のエチレン性不飽和単量体との共重合比は、重合後の一分子に平均で少なくとも0.3〜177個の水酸基が入るように決められるのが好ましい。
その他のエチレン性不飽和単量体としては、例えば、前記一般式(6)で示される重合体を製造する工程で説明したアクリル単量体とアクリル単量体以外の単量体とが挙げられ、任意に使用することができる。
【0103】
重合開始剤としては、例えば、前記一般式(6)で示される重合体を製造する工程で説明したアゾ系化合物、または有機過酸化物を用いることができる。該重合開始剤を使用する場合は、エチレン性不飽和単量体100重量部に対して、0.01〜20重量部が好ましい。
【0104】
重合溶剤としては、例えば、前記一般式(6)で示される重合体を製造する工程で説明した溶剤を同じ様に用いることができる。
【0105】
OH樹脂と酸無水物の反応
次に、片末端に水酸基を有する重合体(C1)または側鎖に水酸基を有する重合体(C2)とトリカルボン酸無水物(B1)「及び/またはテトラカルボン酸二無水物(B2)とを反応させる工程について説明する。
【0106】
前記の片末端に水酸基を有する重合体(C1)または側鎖に水酸基を有する重合体(C2)の水酸基と、芳香族トリカルボン酸無水物(B1)及び/または芳香族テトラカルボン酸二無水物(B2)の無水物基とを反応させることによって、本発明の芳香族カルボキシル基を有する分散剤を得ることができる。
【0107】
芳香族トリカルボン酸無水物(B1)としては、例えば、ベンゼントリカルボン酸無水物(1,2,3−ベンゼントリカルボン酸無水物、トリメリット酸無水物(1,2,4−ベンゼントリカルボン酸無水物)など)、ナフタレントリカルボン酸無水物(1,2,4−ナフタレントリカルボン酸無水物、1,4,5−ナフタレントリカルボン酸無水物、2,3,6−ナフタレントリカルボン酸無水物、1,2,8−ナフタレントリカルボン酸無水物など)、3,4,4’−ベンゾフェノントリカルボン酸無水物、3,4,4’−ビフェニルエーテルトリカルボン酸無水物、3,4,4’−ビフェニルトリカルボン酸無水物、2,3,2’−ビフェニルトリカルボン酸無水物、3,4,4’−ビフェニルメタントリカルボン酸無水物、または3,4,4’−ビフェニルスルホントリカルボン酸無水物等を挙げることができる。
【0108】
芳香族テトラカルボン酸二無水物(B2)としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、エチレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、プロピレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、ブチレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、M−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物、または9,9−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン二無水物等を挙げることができる。
【0109】
本発明で使用される芳香族トリカルボン酸無水物(B1)及び芳香族テトラカルボン酸二無水物(B2)は、前記に例示した化合物に限らず、どのような構造をしていてもかまわない。これらは単独で用いても、併用してもかまわない。本発明に使用されるものは、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸二無水物が好ましい。
【0110】
重合体(C)の水酸基のモル数を<H>、芳香族トリカルボン酸無水物(B1)または芳香族テトラカルボン酸二無水物(B2)のカルボン酸無水物基のモル数を<N>としたとき、反応比率は0.3≦<H>/<N>≦3が好ましく、更に好ましくは0.5≦<H>/<N>≦2の場合である。特に重合体(C1)に重合体(C3)を用いる場合は、1<<H>/<N>≦2であることが好ましい。もし、<H>/<N><1で反応させる場合は、残存する酸無水物を必要量の水で加水分解しても、単官能アルコールでアルコリシスしてもよい。
【0111】
重合体(C2)を用いる場合は、一分子に0.3個から3個の芳香族トリカルボン酸及び/または芳香族テトラカルボン酸が導入せしめるのが好ましい。具体的には重合体(C2)の数平均分子量を測定し、その測定値が[X]であった場合、芳香族トリカルボン酸無水物(B1)を使用する場合は樹脂[X]gに対して0.3モル以上3モル以下の芳香族トリカルボン酸無水物を反応させれば良い。一方、芳香族テトラカルボン酸二無水物(B2)を使用する場合は樹脂[X]gに対して0.15モル以上1.5モル以下の芳香族テトラカルボン酸二無水物を反応させれば良い。これは、芳香族テトラカルボン酸二無水物は酸無水物基を2つ有するため、重合体(C2)分子を橋掛けするため芳香族トリカルボン酸無水物(B1)を使用する場合の半分の量で良いためである。
【0112】
重合体(C)と、芳香族トリカルボン酸無水物(B1)または芳香族テトラカルボン酸二無水物(B2)との反応には触媒を用いてもかまわない。触媒としては、例えば、3級アミン系化合物が使用でき、例えばトリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N−メチルモルホリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、または1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等が挙げられる。
【0113】
重合体(C)と、芳香族トリカルボン酸無水物(B1)または芳香族テトラカルボン酸二無水物(B2)との反応は無溶剤で行ってもよいし、適当な脱水有機溶媒を使用してもよい。反応に使用した溶媒は、反応終了後、蒸留等の操作により取り除くか、あるいはそのまま分散剤の製品の一部として使用することもできる。使用する溶剤は、特に限定はないが、前記一般式(6)で示される重合体を製造する工程で説明した溶剤を同じ様に用いることができる。
【0114】
重合体(C)と、芳香族トリカルボン酸無水物(B1)または芳香族テトラカルボン酸二無水物(B2)との反応温度は、好ましくは50℃〜180℃、より好ましくは60℃〜160℃の範囲で行う。反応温度が50℃未満では反応速度が遅く、180℃を超えると反応して開環した酸無水物が、再度環状無水物を生成し、反応が終了しにくくなる場合がある。
【0115】
本発明の顔料分散体に使用する溶剤は、例えばプロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、メチルイソブチルケトン、n−ブチルアルコールおよびその異性体、n−ペンチルアルコールおよびその異性体、n−ヘキシルアルコールおよびその異性体、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、1,3−ブチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシブタノール、1,3−ブチレングリコール、トリアセチン、3,3,5−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−オン、エチレングリコールモノエチルエーテル、γ−ブチロラクトン、酢酸イソアミル、3−エトキシプロピオン酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、3−メトキシプロピオン酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸プロピル等が挙げられる。これらの溶剤は、単独でもしくは混合して用いることができる。
【0116】
溶剤は、顔料分散体中の固形分100重量部に対して、100〜4000重量部、好ましくは150〜1000重量部の量で用いることができる。
【0117】
次に、本発明の顔料分散体を使用したインキは、本発明の顔料分散体と顔料担体を含有する。
【0118】
顔料担体は、樹脂、その前駆体またはそれらの混合物により構成される。本発明のインキを用いてカラーフィルタを製造する場合には、樹脂として、可視光領域の400〜700nmの全波長領域において透過率が80%以上、特に95%以上の透明樹脂を用いることが好ましい。
【0119】
樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、および感光性樹脂等が挙げられる。樹脂の前駆体としては、放射線照射により硬化して樹脂を生成するモノマーまたはオリゴマーが挙げられ、これらを単独で、または2種以上混合して用いることができる。
【0120】
顔料担体は、顔料分散体中の顔料組成物100重量部に対して、30〜700重量部、好ましくは60〜450重量部の量で用いることができる。また、樹脂とその前駆体との混合物を顔料担体として用いる場合には、樹脂は、顔料分散体中の顔料組成物100重量部に対して、20〜400重量部、好ましくは50〜250重量部の量で用いることができる。また、樹脂の前駆体は、顔料分散体中の顔料組成物100重量部に対して、10〜300重量部、好ましくは10〜200重量部の量で用いることができる。
【0121】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ブチラール樹脂、スチレン−マレイン酸共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、アルキッド樹脂、ポリスチレン、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂、環化ゴム系樹脂、セルロース類、ポリエチレン、ポリブタジエン、ポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0122】
また、熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フマル酸樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
【0123】
感光性樹脂としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等の反応性の置換基を有する高分子に、イソシアネート基、アルデヒド基、エポキシ基等の反応性の置換基を有する(メタ)アクリル化合物やケイヒ酸を反応させて、(メタ)アクリロイル基、スチリル基等の光架橋性基を該高分子に導入した樹脂が用いられる。また、スチレン−無水マレイン酸共重合物やα−オレフィン−無水マレイン酸共重合物等の酸無水物を含む線状高分子をヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル化合物によりハーフエステル化したものも用いられる。
【0124】
樹脂の前駆体であるモノマーおよびオリゴマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、1, 6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、エステルアクリレート、メチロール化メラミンの(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート等の各種アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、スチレン、酢酸ビニル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、アクリロニトリル等が挙げられる。
【0125】
本発明のインキを紫外線等の光照射により硬化する場合には、光重合開始剤が添加される。光重合開始剤としては、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン等のアセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール等のベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサンソン、2−クロルチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン等のチオキサンソン系光重合開始剤、2,4,6−トリクロロ−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ピペロニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−スチリル−s−トリアジン、2−(ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(ピペロニル)−6−トリアジン、2,4−トリクロロメチル(4’−メトキシスチリル)−6−トリアジン等のトリアジン系光重合開始剤、ボレート系光重合開始剤、カルバゾール系光重合開始剤、イミダゾール系光重合開始剤等が用いられる。光重合開始剤は、着色組成物中の顔料組成物100重量部に対して、5〜200重量部、好ましくは10〜150重量部の量で用いることができる。
【0126】
上記光重合開始剤は、単独でまたは2種以上混合して用いることができるが、増感剤として、α−アシロキシムエステル、アシルフォスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、ベンジル、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、エチルアンスラキノン、4,4’−ジエチルイソフタロフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン等の化合物を併用することもできる。増感剤は、着色組成物中の光重合開始剤100重量部に対して、0.1〜60重量部の量で用いることができる。
【0127】
本発明のインキには、分散体の経時粘度を安定化させるために貯蔵安定剤を含有させることができる。また、基材との密着性を高めるためにシランカップリング剤等の密着向上剤を含有させることもできる。
【0128】
また、本発明のインキには、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、熱重合防止剤、可塑剤、表面保護剤、平滑剤、塗布助剤、密着向上剤、塗布性向上剤または現像改良剤などの添加剤を添加することができる。
【0129】
本発明における顔料分散体の製造方法としては、従来公知の混練り機、分散機を使用した製造工程を用いる事ができる。使用する分散機の例としては、2本ロールミル、3本ロールミル、ニーダー、加圧ニーダー、連続ニーダー、エクストルーダー、連続エクストルーダー、ボールミル、アトライター、サンドミル、コボールミル、アジテーターミル、スーパーミル、ショットミル、ピンミル、ジェットミル、ディスクミル、ホモジナイザー、バスケットミル、ペブルミル、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、プラネタリーミキサー、ディゾルバー、超音波分散機などを単独あるいは2種以上組み合わせて用いる事ができる。
【0130】
分散に使用するビーズはガラス、スチール、セラミックなど種々の素材が使用できるが、磨耗や破損等による異物混入の影響を避けるためにセラミック製が良く、特にジルコニア等の硬度の高いものが好ましい。
ビーズのサイズは使用する顔料や目標とする性能によって選択するが、微細化された顔料を分散して高いコントラストを達成するためには細かいビーズの方が好ましく、本発明の効果を最大限に得るためには0.5μm以下が望ましい。
【0131】
また、ビーズミル等で分散した後、30〜80℃の加温状態にて数時間〜1週間保存するエージングといわれる後処理や、超音波分散機や衝突型ビーズレス分散機を用いた後処理を行うと、顔料分散体の安定性に対して有効である。
【0132】
以下に本発明の有機色素誘導体を用いた実施例を示し説明する。各例において、特に指定しない限り「部」とは重量部を、「%」とは重量%をそれぞれ表す。
分散剤の製造例
【0133】
〈一般式(3)の製造例〉
製造例1
窒素ガス導入管、コンデンサ、攪拌機を備えた反応容器に、ラウリルアルコール186g 、ε−カプロラクトンモノマー571g 、テトラブチルチタネート0 .6gを仕込み、窒素ガスで置換した後、120℃ で3時間加熱、撹拌した。カプロラクトンモノマーの消失を、テトラハイドロフランを溶離液とするGPC( ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)のRI検出器により確認した。40℃以下に冷却した後、オルトリン酸換算含有量116%のポリリン酸84.5gと混合し、徐々に昇温し、80℃ で6時間、攪拌しながら加熱し、Rの数平均分子量760 、y=1と2の存在比が100:12の分散剤K1 を得た。反応物の酸価は、166であった。
【0134】
〈芳香族カルボキシル基を有する分散剤(A)の製造例〉
製造例2
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応槽に、1−ドデカノール62.6部、ε−カプロラクトン287.4部、触媒としてモノブチルスズ(IV)オキシド0.1部を仕込み、窒素ガスで置換した後、120℃で4時間加熱、撹拌した。固形分測定により98%が反応したことを確認した後、ここに無水ピロメリット酸36.6部を加え、120℃で2時間反応させた。酸価の測定で98%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを確認し反応を終了し分散剤を得た。このようにして固形分当たりの酸価49mgKOH/g、数平均分子量(Mn)2,500の芳香族カルボキシル基を有する分散剤A1を得た。
【0135】
製造例3
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応槽に、メチルメタクリレート100部、n−ブチルアクリレート100部、メトキシプロピルアセテート40部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を80℃に加熱して、3‐メルカプト‐1,2‐プロパンジオール12部を添加した後、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.2部を20回に分けて30分ごとに加え、80℃のまま12時間反応し、固形分測定により95%が反応したことを確認した。次に、ピロメリット酸無水物30部、メトキシプロピルアセテート190部、触媒として1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン0.40部を追加し、120℃で7時間反応させた。98%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを滴定で確認し反応を終了し、固形分当たりの酸価42mgKOH/g、数平均分子量(Mn)4,100である芳香族カルボキシル基を有する分散剤A2を得た。
【0136】
製造例4
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応槽に、メトキシプロピルアセテート60部を仕込み110℃に昇温し、反応容器内を窒素置換した後、滴下槽から、メチルメタクリレート40部、ベンジルメタクリレート28部、ブチルアクリレート20部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート12部、メトキシプロピルアセテート40部、及びジメチル−2,2’−アゾビスジイソブチレート6部を予め均一に混合した混合液を2時間かけて滴下し、その後3時間、同じ温度で攪拌を続け、反応を終了した。このようにして、数平均分子量が3,800であり、一分子中の水酸基の平均個数3.5個である中間体を得た。該中間体を固形分で100部、トリメリット酸無水物5.1部、及びジメチルベンジルアミン0.1部を仕込み、100℃で6時間反応させた。このようにして、一分子あたりのトリメリット酸の平均個数が1個、固形分当たりの酸価30mgKOH/g、数平均分子量(Mn)4,000である芳香族カルボキシル基を有する分散剤A3を得た。
【0137】
[実施例1]
Pigment Green36(リオノールグリーン 6YK:東洋インキ製造製) 11部、有機色素誘導体(D3) 0.2部、有機色素誘導体(D4) 0.8部、分散剤A1 4.0部、アクリル樹脂(酸価100、Mw17000) 4.0部、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート 80.0部を混合し、直径0.5mmのジルコニアビーズを充填したサンドミルを用いて5時間分散した。
【0138】
有機色素誘導体(D3)
【0139】
【化7】

【0140】
有機色素誘導体(D4)
【0141】
【化8】

【0142】
[実施例2]
実施例1においてPigment Green36をPigment RED254(イルガフォアレッド B−CF:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)に変えた以外は同様にして顔料分散体を得た。
[実施例3]
実施例1においてPigment Green36をPigment Yellow150(E4GN:ランクセス製)に変えた以外は同様にして顔料分散体を得た。
[実施例4]
実施例1において有機色素誘導体(D3)を0.1部、有機色素誘導体(D4)を0.9部に変えた以外は同様にして顔料分散体を得た。
[実施例5]
実施例1において有機色素誘導体(D3)を0.45部、有機色素誘導体(D4)を0.55部に変えた以外は同様にして顔料分散体を得た。
[実施例6]
実施例2において有機色素誘導体(D3)を0.1部、有機色素誘導体(D4)を0.9部に変えた以外は同様にして顔料分散体を得た。
[実施例7]
実施例2において有機色素誘導体(D3)を0.45部、有機色素誘導体(D4)を0.55部に変えた以外は同様にして顔料分散体を得た。
[実施例8]
実施例1において分散剤A1をK1に変えた以外は同様にして顔料分散体を得た。
【0143】
[実施例9]
実施例4において分散剤A1をK1に変えた以外は同様にして顔料分散体を得た。
[実施例10]
実施例5において分散剤A1をK1に変えた以外は同様にして顔料分散体を得た。
[実施例11]
実施例1において分散剤A1をA2に変えた以外は同様にして顔料分散体を得た。
[実施例12]
実施例4において分散剤A1をA2に変えた以外は同様にして顔料分散体を得た。
[実施例13]
実施例5において分散剤A1をA2に変えた以外は同様にして顔料分散体を得た。
[実施例14]
実施例1において分散剤A1をA3に変えた以外は同様にして顔料分散体を得た。
[実施例15]
実施例4において分散剤A1をA3に変えた以外は同様にして顔料分散体を得た。
[実施例16]
実施例5において分散剤A1をA3に変えた以外は同様にして顔料分散体を得た。
【0144】
[比較例1]
実施例1において有機色素誘導体(D3)を0部、有機色素誘導体(D4)を1部に変えた以外は同様にして顔料分散体を得た。
[比較例2]
実施例1において有機色素誘導体(D3)を1部、有機色素誘導体(D4)を0部に変えた以外は同様にして顔料分散体を得た。
[比較例3]
実施例1において有機色素誘導体(D3)を0.8部、有機色素誘導体(D4)を0.2部に変えた以外は同様にして顔料分散体を得た。
[比較例4]
比較例1においてPigment Green36をPigment RED254(イルガフォアレッド B−CF:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)に変えた以外は同様にして顔料分散体を得た。
[比較例5]
比較例2においてPigment Green36をPigment RED254(イルガフォアレッド B−CF:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)に変えた以外は同様にして顔料分散体を得た。
【0145】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0146】
本発明は従来の技術では難しかった高度に微細化された顔料の分散を可能にし、非常に高いコントラストを達成することが可能となるため、高品位のテレビやモニター等への展開が期待できる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも顔料、分散剤、溶剤および有機色素誘導体または複素芳香族環誘導体(D)からなる顔料組成物であって、有機色素誘導体または複素芳香族環誘導体(D)が下記一般式(1)で示される有機色素誘導体または複素芳香族環誘導体(D1)と下記一般式(2)で示される有機色素誘導体または複素芳香族環誘導体(D2)とを含み、D1:D2の重量比が5:95〜40:60であることを特徴とするカラーフィルタ用顔料分散体。
一般式(1):
【化1】


一般式(2):
【化2】


式中の記号は以下の意味を示す。
Q;有機色素残基、またはアントラキノン残基、または置換基を有してもよい複素環、または置換基を有してもよい芳香族化合物
X;直接結合、−CONH−Y−、SONH−Y−、または−CHNHCOCHNH−Y
(Y;置換基を有していてもよいアルキレン基またはアリーレン基)



(Y;−NH−、または−O−)
(R、R;それぞれ独立に置換もしくは無置換のアルキル基またはRとRで少なくとも窒素原子を含むヘテロ環を形成していてもよい。)
m:1〜6の整数
n:1〜4の整数
【請求項2】
顔料と有機色素誘導体または複素芳香族環誘導体(D)の比率が100:0.1から100:100であることを特徴とする請求項1記載のカラーフィルタ用顔料分散体。
【請求項3】
分散剤が下記一般式(3)で示される化合物である請求項1または2記載のカラーフィルタ用顔料分散体。
一般式(3)
【化3】


( 式中、Rは数平均分子量50 0 〜 1 0 0 0 0 のポリエステル残基、yは1 〜 2 を表す。)
【請求項4】
分散剤が芳香族カルボキシル基を有する分散剤(A)で、芳香族トリカルボン酸無水物(B1)及び/または芳香族テトラカルボン酸無水物(B2)と水酸基を有する重合体(C)を反応させてなる化合物である請求項1または2記載のカラーフィルタ用顔料分散体。
【請求項5】
水酸基を有する重合体(C)が、片末端に水酸基を有する重合体(C1)である請求項4記載のカラーフィルタ用顔料分散体。
【請求項6】
水酸基を有する重合体(C)が、側鎖に水酸基を有する重合体(C2)であることを特徴とする請求項4記載のカラーフィルタ用顔料分散体。
【請求項7】
片末端に水酸基を有する重合体(C1)が、片末端に2つの水酸基を有する重合体(C3)であることを特徴とする請求項4記載のカラーフィルタ用顔料分散体。
【請求項8】
請求項1から7いずれか記載のカラーフィルタ用顔料分散体からなるカラーフィルタ用顔料インキ。


【公開番号】特開2010−163500(P2010−163500A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−5261(P2009−5261)
【出願日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】