説明

顔料分散型感放射線樹脂組成物および着色パターンの形成方法

【課題】光硬化後の耐久性、特に耐湿性が高い顔料分散型感放射線樹脂組成物および着色パターンの形成方法を提供する。
【解決手段】光重合性化合物と、光重合開始剤と、顔料と、溶剤とを含有してなる顔料分散型感放射線樹脂組成物において、さらに疎水性樹脂を含有させる。この疎水性樹脂を所定量含有させた顔料分散型感放射線樹脂組成物からなる光重合性着色組成物層に所定波長の光を選択的に照射し、現像することにより、耐久性に優れた着色パターンを作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化後の耐久性に優れた顔料分散型感放射線樹脂組成物および着色パターンの形成方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に好適な、光硬化後の耐久性に優れた顔料分散型感放射線樹脂組成物および着色パターンの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー液晶ディスプレイ等の各種多色表示体に備えられるカラーフィルターには、表示コントラストや発色効果を高めるために、R、G、Bなどの着色層間の境界部分にブラックマトリックスが設けられている。従来、このブラックマトリックスは主としてクロム薄膜をフォトエッチングすることにより形成されていた。クロム薄膜からなるブラックマトリックスは寸法精度が高く、信頼性も高い。しかしながら、クロム薄膜を形成するには、蒸着やスパッタ等の真空製膜工程が必要であり、基板の大型化に伴って装置も大型化し製造コストが高くなる。また、近年のバックライトの高強度化に伴い、特にTFT液晶ディスプレイにおいては、クロム薄膜の内面反射による表示コントラストの低下が問題となっていた。
【0003】
そこで、近年では、特許文献1に記載されるように、付加重合可能な不飽和性二重結合を有する化合物と黒色顔料と光重合開始剤とを含む光重合性組成物を基材上に塗布乾燥して光重合性組成物層を形成し、ホトリソグラフィー法により所望のブラックマトリックスパターンを形成するようになってきた。光重合性組成物を用いると、大気圧下でブラックマトリックスパターンを形成できることから製造コストを低減することができ、内面反射も起こりにくい。
【0004】
【特許文献1】特開平11−84125号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、カラー液晶ディスプレイ等の各種多色表示体では、前記ブラックマトリックスおよびカラーフィルターを基板に形成した後、液晶等の表示物質を上記基板および対向基板との間に封じ込めて表示パネルを作成する。形成された表示パネルでは、上記カラーフィルターが基板の内面に形成されているため、ブラックマトリクスおよびカラーフィルターの基板に対する密着性が劣化すると、液晶等の表示物質が漏洩して、表示パネルの不良となる。
【0006】
したがって、多色表示体の製造メーカーにおいては、多色表示体パネルを製造後、得られたパネルを、温度120℃、湿度100%、気圧2atmという過酷な条件下に放置し、液晶等の表示物質の漏洩の有無を検査することにより、製品の耐久性を確認している。
【0007】
前述のような過酷な耐久性試験に対して、現状の多色表示体は、耐久性が不十分であるとの結果が出ており、耐久性の向上が強く求められている。
【0008】
本発明者らは、前記耐久試験にて劣化が生じる原因を追及したところ、カラーマトリックスが現像性を確保するために親水性を呈しているため、耐久性試験における湿度100%という厳しい加湿条件下で、膨潤することにあることが、確認された。
【0009】
したがって、本発明の課題は、光硬化後の耐久性、特に耐湿性が高く、密着性の高い顔料分散型感放射線樹脂組成物および着色パターンの形成方法ならびにカラーフィルターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決するために、鋭意、実験、検討を重ねたところ、従来慣用の顔料分散型感放射線樹脂組成物に疎水性の樹脂を所定量添加することによって、光硬化後において予想を大幅に上回る耐久性が得られることを、知るに至った。
【0011】
本発明は、かかる知見に基づいてなされたものである。すなわち、本発明にかかる顔料分散型感放射線樹脂組成物は、光重合性化合物と、光重合開始剤と、顔料と、溶剤とを含有してなる顔料分散型感放射線樹脂組成物において、さらに疎水性樹脂を含有させたことを特徴とする。
【0012】
前記疎水性樹脂としては、スチレン−アクリル酸の共重合体が好適である。また、前記疎水性樹脂の含有量は、前記光重合性化合物100重量部に対して5重量部以上50重量部未満であることが、望ましい。含有量が5重量部以上にすることにより耐久性の向上させることができる。また、含有量を50重量部以下にすることにより、カラーマトリックスの現像時に残渣の発生を抑制することができる。
【0013】
前記光重合性化合物は、従来慣用のものを用いることができる。本発明では、光学濃度が高くても十分な光硬化性が得られる光重合性化合物を望ましくは使用する。かかる光重合性化合物としては、下記化学式(1)
【0014】
【化1】

(式中、nは、1〜20の整数であり、Yは、ジカルボン酸無水物の酸無水物基を除いた残基であり、Zは、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基を除いた残基であり、Xは、下記化学式(2)
【0015】
【化2】

で表される基であり、R1、R2は、H、CH3または
【0016】
【化3】

であり、R3は、HまたはCH3である。)
で表される化合物が、好適である。
【0017】
前記顔料としては、目的に応じて様々な色の顔料が用いられるが、通常のブラックマトリックスには黒色顔料が用いられる。このような黒色顔料としては、カーボンブラックまたはチタンブラックが適当である。
【0018】
本発明にかかる顔料分散型感放射線樹脂組成物を用いた着色パターンの形成方法は、前記組成の顔料分散型感放射線樹脂組成物からなる光重合性着色組成物層を基板上に形成し、前記組成物層に所定波長の光を選択的に照射し、現像して着色パターンを形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明にかかる顔料分散型感放射線樹脂組成物は、親水性ポリマー成分を母剤として含有する顔料分散型感放射線樹脂組成物に疎水性樹脂を所定量含有させることによって、予想を遙かに超える耐湿性、耐久性、ならびに密着性が得られるので、内部に液晶などの表示物質を封じ込めるカラーマトリックスを形成するための感光性着色樹脂組成物として好適に用いることができる。本発明の顔料分散型感放射線樹脂組成物をカラー液晶表示装置などの多色表示体パネルのカラーマトリックス作成用樹脂組成物として使用することにより、過酷な条件下でも液晶などの表示物質の漏洩が生じることのない多色表示体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明に係る顔料分散型感放射線樹脂組成物は、前述のように、光重合性化合物と、光重合開始剤と、顔料と、溶剤とを含有してなる顔料分散型感放射線樹脂組成物において、さらに疎水性樹脂を含有させたことを特徴とする。
【0021】
前記疎水性樹脂とは、例えば、付加重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有する親水性モノマーと、付加重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有する疎水性モノマーとの共重合体であって、疎水性モノマー単位の含有量が共重合体の構成モノマーの合計モル数に対してモル分率で、65〜95モル%、好ましくは75〜90モル%の樹脂をいう。また、この疎水性樹脂は、アルカリ可溶性を有するものである。ここで親水性モノマーとは、OH基、COOH基を有するモノマーであり、疎水性モノマーとは、OH基、COOH基を有していないモノマーである。
【0022】
この疎水性樹脂は、ポリスチレン換算重量平均分子量が5000〜50000であることが好ましく、6000〜15000であることがより好ましい。この範囲にすることにより、膜の硬度を向上し、残膜率も高くすることができる。
【0023】
疎水性モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、o−ビニルトルエン、m−ビニルトルエン、p−ビニルトルエン、p−クロルスチレン、o−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、p−メトキシスチレン、o−ビニルベンジルメチルエーテル、m−ビニルベンジルメチルエーテル、p−ビニルベンジルメチルエーテル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、インデンなどの芳香族ビニル化合物;
【0024】
メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、i−プロピルアクリレート、i−プロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルアクリレート、i−ブチルメタクリレート、sec−ブチルアクリレート、sec−ブチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、t−ブチルメタクリレート、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート、メトキシプロピレングリコールアクリレート、メトキシプロピレングリコールメタクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ジシクロペンタジエニルアクリレート、ジシクロペンタジエニルメタクリレート、などの不飽和カルボン酸エステル類;
【0025】
2−アミノエチルアクリレート、2−アミノエチルメタクリレート、2−ジメチルアミノエチルアクリレート、2−ジメチルアミノエチルメタクリレート、2−アミノプロピルアクリレート、2−アミノプロピルメタクリレート、2−ジメチルアミノプロピルアクリレート、2−ジメチルアミノプロピルメタクリレート、3−アミノプロピルアクリレート、3−アミノプロピルメタクリレート、3−ジメチルアミノプロピルアクリレート、3−ジメチルアミノプロピルメタクリレートなどの不飽和カルボン酸アミノアルキルエステル類;
【0026】
グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどの不飽和カルボン酸グリシジルエステル類;
【0027】
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル類;
【0028】
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、アリルグリシジルエーテルなどの不飽和エーテル類;
【0029】
アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、シアン化ビニリデンなどのシアン化ビニル化合物;
【0030】
アクリルアミド、メタクリルアミド、α−クロロアクリルアミド、N−2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−2−ヒドロキシエチルメタクリルアミドなどの不飽和アミド類;
【0031】
マレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドなどの不飽和イミド類;
【0032】
1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどの脂肪族共役ジエン類;などを挙げることができる。
【0033】
これらの疎水性モノマーは、それぞれ単独でも2種以上を混合して用いてもよい。
【0034】
親水性モノマーとしては、例えば、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、不飽和多価カルボン酸などの不飽和多価カルボン酸などの分子中に少なくとも1個のカルボキシル基を有する不飽和カルボン酸が挙げられる。
【0035】
ここで、不飽和モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、α−クロルアクリル酸、ケイ皮酸などが挙げられる。
【0036】
不飽和ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸などが挙げられる。
【0037】
不飽和多価カルボン酸は、その酸無水物であってもよく、具体的には、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などが挙げられる。また、不飽和多価カルボン酸は、そのモノ(2−メタクリロイロキシアルキル)エステルであってもよく、例えば、コハク酸モノ(2−アクリロイロキシエチル)、コハク酸モノ(2−メタクリロイロキシエチル)、フタル酸モノ(2−アクリロイロキシエチル)、フタル酸モノ(2−メタクリロイロキシエチル)などが挙げられる。さらに、不飽和多価カルボン酸は、その両末端ジカルボキシポリマーのモノ(メタ)アクリレートであってもよく、例えば、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノメタクリレートなどが挙げられる。これらの親水性モノマーは、それぞれ単独でも2種以上を混合して用いてもよい。
【0038】
前記疎水性樹脂の含有量は、前記光重合性化合物100重量部に対して5重量部以上50重量部未満であることが、望ましい。含有量が5重量部以上にすることにより耐久性の向上させることができる。また、含有量を50重量部以下にすることにより、カラーマトリックスの現像時に残渣の発生を抑制することができる。
【0039】
前記光重合性化合物は、水もしくはアルカリ水溶液にて現像可能な慣用の光重合性化合物が用いられる。
【0040】
この光重合性化合物としては、付加重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有する化合物が挙げられる。
【0041】
ここで、「付加重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有する化合物」(以下、「エチレン性化合物」という。)とは、光重合性黒色組成物が所定波長の光線の照射を受けたとき、光重合開始剤の作用により付加重合硬化するようなエチレン性不飽和二重結合を少なくとも1つ有する化合物であって、前記のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体又は側鎖若しくは主鎖にエチレン性不飽和二重結合を有する重合体である。また、前記単量体はいわゆる高分子物質に相対する差違化した概念であって、狭義の「単量体」にとどまらず、二量体、三量体、オリゴマーを含有する。
【0042】
前記単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸、脂肪族(ポリ)ヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル、芳香族(ポリ)ヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル、不飽和カルボン酸と多価カルボン酸および前述の脂肪族(ポリ)ヒドロキシ化合物、芳香族(ポリ)ヒドロキシ化合物等の多価ヒドロキシ化合物とのエステル化反応により得られるエステル、不飽和カルボン酸アミド、不飽和カルボン酸ニトリル等が挙げられる。
【0043】
具体的には、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、エチレングリコールモノメチルエーテルアクリレート、エチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート、エチレングリコールモノエチルエーテルアクリレート、エチレングリコールモノエチルエーテルメタクリレート、グリセロールアクリレート、グリセロールメタクリレート、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールプロパンテトラアクリレート、テトラメチロールプロパンテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、カルドエポキシジアクリレート、カルドエポキシジメタクリレート、これら例示化合物のアクリレート、メタクリレートを、フマレート、マレエート、クロトネート、イタコネートに代えたものや、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸、ヒドロキノンモノアクリレート、ヒドロキノンモノメタクリレート、ヒドロキノンジアクリレート、ヒドロキノンジメタクリレート、レゾルシンジアクリレート、レゾルシンジメタクリレート、ピロガロールジアクリレート、ピロガロールトリアクリレート、アクリル酸とフタル酸およびジエチレングリコールとの縮合物、アクリル酸とマレイン酸およびジエチレングリコールとの縮合物、メタクリル酸とテレフタル酸およびペンタエリスリトールとの縮合物、アクリル酸とアジピン酸およびブタンジオールとグリセリンとの縮合物、エチレンビスアクリルアミド、エチレンビスメタクリルアミド、フタル酸ジアリルのアリルエステル、ジビニルフタレートなどが有用である。
【0044】
また、側鎖もしくは主鎖にエチレン性不飽和二重結合を有する重合体としては、例えば、不飽和二価カルボン酸とジヒドロキシ化合物との重縮合反応により得られるポリエステル、不飽和二価カルボン酸とジアミンとの重縮合反応により得られるポリアミド、イタコン酸、プロピリデンコハク酸、エチリデンマロン酸とジヒドロキシ化合物との重縮合反応により得られるポリエステル、イタコン酸、プロピリデンコハク酸、エチリデンマロン酸とジアミンとの重縮合反応により得られるポリアミド、フェノールノボラック型エポキシアクリレート、フェノールノボラック型エポキシメタクリレート、クレゾールノボラック型エポキシアクリレート、クレゾールノボラック型エポキシメタクリレート、ビスフェノールA型エポキシアクリレート、ビスフェノールS型エポキシアクリレート、ウレタンアクリレートオリゴマー、ウレタンメタクリレートオリゴマーなどが挙げられる。前記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂にさらに多塩基酸無水物を反応させたものであってもよい。また、側鎖にヒドロキシ基やハロゲン化アルキル基のごとき反応活性を有する官能基を有する重合体、例えばポリビニルアルコール、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリエピクロルヒドリンなどとアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸との高分子反応により得られる重合体なども使用できる。中でも、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルの単量体を特に好ましく用いることができる。
【0045】
この光重合性化合物は、顔料分散型感放射線樹脂組成物における固形分100重量部に対して、5〜70重量部、好ましくは、10〜60重量部、より好ましくは20〜50重量部で用いられる。上記の範囲にすることにより、良好なパターンを形成することができ、解像性および残膜率を向上させることができる。なお、固形分とは、顔料分散型感放射線樹脂組成物に含まれる溶剤以外の成分の総和を示す。
【0046】
また、本発明では、側鎖もしくは主鎖にエチレン性不飽和二重結合を有する重合体を好ましいものとして使用する。なかでも、光学濃度と光硬化性を同時に向上させることのできる下記一般式(1)で示される光重合性化合物を望ましくは使用する。
【0047】
【化4】

【0048】
ただし、前記一般式(1)において、nは1〜20の整数であり、Yはジカルボン酸無水物の酸無水物基を除いた残基であり、Zはテトラカルボン酸二無水物の酸無水物基を除いた残基であり、Xは、下記一般式(2)
【0049】
【化5】

で表される基であり、R1、R2は、H、CH3または
【0050】
【化6】

であり、R3は、HまたはCH3である。
【0051】
ここで、「酸無水物基」とは、「−CO−O−CO−基」をいう。また、ジカルボン酸無水物としては、例えば無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水クロレンド酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水グルタル酸などが挙げられる。
【0052】
また、テトラカルボン酸二無水物としては、例えば無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物等の芳香族多価カルボン酸無水物が挙げられる。
【0053】
これら光重合性化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
前記一般式(1)で示される光重合性化合物は、特開2001−354735号公報に記載の方法により得ることができる。一般式(1)で示される光重合性化合物は重合鎖内にジカルボン酸無水物残基を実質上有していないことから、重合鎖内にジカルボン酸無水物残基を有する化合物とは異なり、同じ固形分濃度でも、溶液粘度を制御し易く、塗布時の作業性の改善、コーティング特性の向上、膜厚の均一化を図ることができる。
【0055】
また、前記一般式(1)で示される光重合性化合物は、付加重合可能なエチレン性不飽和二重結合を化合物中に少なくとも二つ有し、光重合性黒色組成物が光重合開始剤を活性化させる所定波長の光線の照射を受けたとき、光学濃度が高くても、光重合開始剤の作用により付加重合して硬化することができる。逆に言えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターのブラックマトリックスパターンを形成する時に、本発明の顔料分散型感放射線樹脂組成物を用いれば、黒色顔料の含有量を多くして遮光性を高くすることができる。このため、表示コントラストが高く、R、G、Bの発色の美しいカラーフィルターを製造することができる。
【0056】
また、側鎖もしくは主鎖にエチレン性不飽和二重結合を有する重合体に加えて、光重合性化合物としての多官能性モノマーを組み合わせることが好ましい。この多官能性モノマーは、重合可能なエチレン性不飽和結合を2個以上を有するモノマーである。このような多官能性モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート等が好ましく、特にトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートおよびジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが好ましい。前記多官能性モノマーは、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。本発明において、多官能性モノマーの使用量は、光重合性化合物100重量部に対して、15〜50重量部の範囲で配合されることが好ましい。この範囲にすることにより光硬化性を一層向上させることができる。
【0057】
特に、側鎖もしくは主鎖にエチレン性不飽和二重結合を有する重合体100重量部に対して、疎水性樹脂が5重量部以上50重量部未満であることにより、密着性を向上させることができる。
【0058】
本発明で用いることのできる光重合開始剤としては、例えば、2,2−ビス(2−クロロフェニル)−4,5,4'、5'−テトラフェニル−1,2'−ビイミダゾール(以下、B−CIM(保土ヶ谷化学社製))、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、3,3−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4,4'−ビスジメチルアミノベンゾフェノン(以下、ミヒラーズケトン)、4,4'−ビスジエチルアミノベンゾフェノン(以下、EAB−F(保土ヶ谷化学社製))、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−ベンゾイル−4'−メチルジメチルスルフィド、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸ブチル、4−ジメチルアミノ安息香酸−2−エチルヘキシルエステル、4−ジメチルアミノ安息香酸−2−イソアミルエステル、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、トリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、ベンジル−β−メトキシエチルアセタール、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、o−ベンゾイル安息香酸メチル、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、4,4'−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、p−ジメチルアミノアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジベンゾスベロン、α,α−ジクロロ−4−フェノキシアセトフェノン、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(3−ブロモ−4−メトキシ)フェニル−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(p−メトキシ)スチリル−s−トリアジン等のトリアジン化合物などを挙げることができる。
【0059】
また、上記の他に、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサンテン、2−メチルチオキサンテン、2−イソプロピルチオキサンテン等のイオウ化合物や、2−エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン等のアントラキノン類や、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、クメンパーオキシド等の有機過酸化物や、2−メルカプトベンゾイミダール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール等のチオール化合物等を用いることもできる。
【0060】
これらの光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。特に、B−CIMとEAB−Fは単独でも他のものを組み合わせても好ましく用いられる。
【0061】
具体的な組み合わせとしては、例えば、B−CIMと、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1−オン又は2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オンとの組み合わせ、B−CIMと2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(3−ブロモ−4−メトキシ)フェニル−s−トリアジン又は2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(p−メトキシ)スチリル−s−トリアジンとの組み合わせ、B−CIMと、2−メチル−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1−オン又は2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オンと、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(3−ブロモ−4−メトキシ)フェニル−s−トリアジン又は2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(p−メトキシ)スチリル−s−トリアジンとの組み合わせ、EAB−Fと2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オンとの組み合わせ、トリアジンとEAB−Fと2−メルカプトベンゾイミダゾールとp−メトキシスチリルトリアジンとの組み合わせ、2−メルカプトベンゾイミダゾールとp−メトキシスチリルトリアジンとの組み合わせ等を挙げることができる。
【0062】
上記光重合開始剤は、黒色顔料が顔料分散型感放射線樹脂組成物における固形分の総和100重量部中に、0.1〜30重量部であることが好ましく、0.5〜20重量部であることがより好ましい。光重合開始剤が、上記の範囲内であると、高感度化して露光時間が短縮され生産性を向上させることができる。
【0063】
顔料としては、ブラックマトリクスおよびカラーフィルタ用途における顔料を用いればよく、特に好ましくは有機顔料が用いられる。
【0064】
前記有機顔料としては、例えば、カラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists 社発行)においてピグメント(Pigment)に分類されている化合物、具体的には、下記のようなカラーインデックス(C.I.)番号が付されているものを挙げることができる。
【0065】
C.I.ピグメントイエロー1、3、11、12、13、14、15、16、17、20、24、31、53、55、60、61、65、71、73、74、81、83、86、93、95、97、98、99、100、101、104、106、108、109、110、113、114、116、117、119、120、125、126、127、128、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、155、156、166、167、168、175、180、185;
【0066】
C.I.ピグメントオレンジ1、5、13、14、16、17、24、34、36、38、40、43、46、49、51、55、59、61、63、64、71、73;
【0067】
C.I.ピグメントバイオレット1、19、23、29、30、32、36、37、38、39、40、50;
【0068】
C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48:1、48:2、48:3、48:4、49:1、49:2、50:1、52:1、53:1、57、57:1、57:2、58:2、58:4、60:1、63:1、63:2、64:1、81:1、83、88、90:1、97、101、102、104、105、106、108、112、113、114、122、123、144、146、149、150、151、155、166、168、170、171、172、174、175、176、177、178、179、180、185、187、188、190、192、193、194、202、206、207、208、209、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、242、243、245、254、255、264、265;
【0069】
C.I.ピグメントブルー1、2、15、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64、66;
【0070】
C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントグリーン37;
【0071】
C.I.ピグメントブラウン23、C.I.ピグメントブラウン25、C.I.ピグメントブラウン26、C.I.ピグメントブラウン28;
C.I.ピグメントブラック1、ピグメントブラック7。
【0072】
本願の顔料分散型感放射線樹脂組成物においては、特にブラックマトリクス用途に用いられ、特に黒色顔料が好適に用いられる。
【0073】
黒色顔料としては、カーボンブラック又はチタンブラックを好ましく使用できる。この他、Cu、Fe、Mn、Cr、Co、Ni、V、Zn、Se、Mg、Ca、Sr、Ba、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Hg、Pb、Bi、Si及びAl等の各種金属酸化物、複合酸化物、金属硫化物、金属硫酸鉛又は金属炭酸塩等の無機顔料も用いることができる。
【0074】
カーボンブラックとしては、チェンネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、ランプブラックなど公知のカーボンブラックを用いることができるが、特にチャンネルブラックは遮光性に優れることから好適に用いることができる。また、樹脂被覆カーボンブラックを用いることもできる。
【0075】
具体的には、カーボンブラックとカーボンブラック表面に存在するカルボキシル基、ヒドロキシル基、カルボニル基と反応性を有する樹脂とを混合し、50〜380度で加熱して得た樹脂被覆カーボンブラックや、水−有機溶剤混合系又は水−界面活性剤混合系にエチレン性モノマーを分散し、重合開始剤の存在下でラジカル重合又はラジカル共重合させて得た樹脂被覆カーボンブラックなどが挙げられる。この樹脂被覆カーボンブラックは樹脂被覆のないカーボンブラックに比べて導電性が低いことから、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターとして用いた場合に電流のリークが少なく、信頼性の高い低消費電力のディスプレイが形成できる。
【0076】
黒色顔料としては、補助顔料として有機顔料を加えても良い。有機顔料は黒色顔料の補色を呈するものを適切に選択して加えることにより次の様な効果が得られる。例えば、カーボンブラックは赤みがかった黒色を呈する。したがって、カーボンブラックに補助顔料として赤色の補色である青色を呈する有機顔料を加えることによりカーボンブラックの赤みが消え、全体としてより好ましい黒色を呈する。
【0077】
黒色顔料における有機顔料の量は、黒色顔料と有機顔料の総和100重量部に対して、10〜80重量部の範囲で用いると好ましく、より好ましくは20〜60重量部であり、最も好ましくは20〜40重量部である。
【0078】
上記の黒色顔料及び有機顔料は、顔料を分散剤を用いて適当な濃度で分散させた溶液を用いることができる。例えば、黒色顔料としては、特殊色料工業製のマルコ5333ブラック(カーボン濃度20%含有)、御国色素製のカーボン分散液CFブラックEX−1455(高抵抗カーボン24%含有)、御国色素製のチタンブラック分散液CFブラックEX−1610(黒チタン顔料20%含有)を挙げることができる。また、有機顔料としては、例えば、御国色素製のブルー顔料分散液CFブルーUM(ブルー顔料20%含有)、御国色素製のバイオレット分散液OM(バイオレット顔料10%含有)等を挙げることができる。
【0079】
また、分散剤としては、ポリエチレンイミン系、ウレタン樹脂系、アクリル樹脂系の高分子分散剤が好ましく用いられる。
【0080】
上記顔料は、顔料分散型感放射線樹脂組成物における固形分の総和100重量部中に、10〜60重量部であることが好ましく、20〜55重量部であることがより好ましく、30〜50重量部であることがより一層好ましい。この範囲内にすることにより、十分な色濃度を得ることができる。
【0081】
また、本発明の顔料分散型感放射線樹脂組成物を用いて黒色パターンを形成する際には、後述するように、基板上に本発明の顔料分散型感放射線樹脂組成物を塗布、乾燥して光重合性黒色組成物層を形成する。
【0082】
前記溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、2−メトキシブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、4−メトキシブチルアセテート、2−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−エチル−3−メトキシブチルアセテート、2−エトキシブチルアセテート、4−エトキシブチルアセテート、4−プロポキシブチルアセテート、2−メトキシペンチルアセテート、3−メトキシペンチルアセテート、4−メトキシペンチルアセテート、2−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−4−メトキシペンチルアセテート、4−メチル−4−メトキシペンチルアセテート、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルシソブチルケトン、エチルイソブチルケトン、炭酸メチル、炭酸エチル、炭酸プロピル、炭酸ブチル、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。中でも3−メトキシブチルアセテートを好ましく用いることができる。
【0083】
上記溶剤は、顔料分散型感放射線樹脂組成物の固形分(溶剤以外の成分)の濃度を5〜100質量%、好ましくは20〜50質量%の範囲となるように含有することができる。この範囲にすることにより、塗布性を向上させるとともに、平坦性を良好にすることができる。
【0084】
本発明の顔料分散型感放射線樹脂組成物に、必要に応じて増感剤、熱重合禁止剤、可塑剤、界面活性剤、消泡剤、その他の添加剤を更に添加することができる。
【0085】
増感剤としては、具体的にはエオシンB(C.I.No.45400)、エオシンJ(C.I.No.45380)、アルコール可溶性エオシン(C.I.No.45386)、シアノシン(C.I.No.45410)、ベンガルローズ、エリスロシン(C.I.No.45430)、2,3,7−トリヒドロキシ−9−フェニルキサンテン−6−オン、およびローダミン6Gなどのキサンテン色素、チオニン(C.I.No.52000)、アズレA(C.I.No.52005)およびアズレC(C.I.No.52002)などのチアジン色素、ピロニンB(C.I.No.45005)、およびピロニンGY(C.I.No.45005)などのピロニン色素や3−アセチルクマリン、3−アセチル7−ジエチルアミノクマリンなどのクマリン化合物が挙げられる。
【0086】
熱重合禁止剤としてはヒドロキノン、ヒドロキノンモノエチルエーテル、p−メトキシフェノール、ピロガロール、カテコール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、β−ナフトールなどが使用できる。
【0087】
可塑剤としては、ジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート、トリエチレングリコールジカプリレート、ジメチルグリコールフタレート、トリクレジルホスフェート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート、トリアセチルグリセリンなどが使用できる。
【0088】
界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系の各種活性剤などが使用できる。また、消泡剤としてはシリコーン系、フッ素系各種消泡剤などが使用できる。
【0089】
本発明の着色パターンの形成方法は、1)顔料分散型感放射線樹脂組成物の調整、2)基板上への顔料分散型感放射線樹脂組成物層の形成、3)露光、4)現像、5)ポストベークの工程で基本的に形成することができる。
以下、各工程を説明する。
【0090】
1)顔料分散型感放射線樹脂組成物の調製
前記顔料分散型感放射線樹脂組成物、必要により結合剤、溶剤、増感剤、熱重合禁止剤、可塑剤、界面活性剤、消泡剤等を加えて3本ロールミル、ボールミル、サンドミル、ジェットミル等でよく分散、混練する。
【0091】
2)顔料分散型感放射線樹脂組成物層の形成
あらかじめ表面を清浄にした基板上に上記調製した顔料分散型感放射線樹脂組成物を塗布する。基板としてはガラス、ポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂などの材料が挙げられる。また、基板と顔料分散型感放射線樹脂組成物との密着性を向上させるためにシランカップリング剤を顔料分散型感放射線樹脂組成物に添加するか、または基板に予め塗布しておいてもよい。顔料分散型感放射線樹脂組成物の塗布にはロールコーター、リバースコーター、バーコーターなどの接触転写型塗布装置やスピンナー、カーテンフローコータなどの非接触型塗布装置が用いられる。特に厚膜の場合には複数回塗布するか前記塗布装置の数種を併用するのがよい。顔料分散型感放射線樹脂組成物の塗布後は、室温にて数時間〜数日放置するか、温風ヒーター、赤外線ヒーター中に数十分〜数時間入れて溶剤を除去し、塗布膜厚1〜10μm程度の顔料分散型感放射線樹脂組成物層とする。
【0092】
3)露光
顔料分散型感放射線樹脂組成物層の形成後、ネガマスクを介して、露光を行う。露光に用いる所定波長の光線とは、光重合開始剤が活性化しラジカルを発生するような波長の光を発する活性化光線であり、具体的には紫外線、エキシマレーザー光、エックス線、ガンマ線、電子線が好適である。照射光量は用いる顔料分散型感放射線樹脂組成物の組成に応じて若干変わるが、30〜2000mJ/cm2の範囲が好ましい。
【0093】
4)現像
露光処理後、現像液を用いて浸漬法、スプレー法などにより現像が行われる。この現像液としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどアルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、リン酸塩、ピロリン酸塩、ベンジルアミン、ブチルアミン等の第1級アミン、ジメチルアミン、ジベンジルアミン、ジエタノールアミンなどの第2級アミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミンなどの第3級アミン、モルホリン、ピペラジン、ピリジンなどの環状アミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのポリアミン、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルベンジルアンモニウムヒドロキシドなどのアンモニウムヒドロキシド類、トリメチルスルホニウムヒドロキシド、ジエチルメチルスルホニウムヒドロキシド、ジメチルベンジルスルホニウムヒドロキシドなどのスルホニウムヒドロキシド類、その他コリンなどの水溶液が使用される。
【0094】
5)ポストベーク
ポストベーク工程では、現像して形成した着色パターンの強度と耐薬品性、耐熱性を付与するために、温度を150〜250℃の範囲となるように調整するとよい。
【0095】
上記したように、本発明の顔料分散型感放射線樹脂組成物及びこの顔料分散型感放射線樹脂組成物を用いて形成した着色パターンは、特に耐湿性および密着性に富んでおり、液晶ディスプレイ等のカラーフィルター用に好適である。中でも、ブラックマトリクスは、基板に対して接触する面積が大きいため、基板との密着性を大きく左右する。したがって、本願の顔料分散型感放射線樹脂組成物(顔料として黒色顔料を使用)は、ブラックマトリクスを形成するために特に好適である。
【0096】
さらに、他の色の着色層として、上記で形成されたブラックマトリクスが形成された基板に、本願の顔料分散型感放射線樹脂組成物を上記と同様に塗布、乾燥、露光、現像して所定の色の着色層を、ブラックマトリクスの所定の位置(開口部)にパターン(ストライプまたはドット等)が形成されるようにする。例えば、RGBの着色層を製造する場合には、R,G,Bの各色の本願の顔料分散型感放射線樹脂組成物(顔料として赤色顔料、緑色顔料、青色顔料を使用)を用いて、前記着色パターンの形成方法の工程を繰り返し、3色の着色層を形成する。これにより、カラーフィルターを製造することができる。この各色の着色層についても、耐湿性および密着性に富んでおりに好適である。
【0097】
また、上記の様に基板上に本発明の顔料分散型感放射線樹脂組成物を用いてブラックマトリックスパターンとなる黒色パターンを形成し、染色法、印刷法、顔料分散法等により、R、G、B等に色付けすることによっても、経時的に高湿下に置かれても膨潤により耐久性が劣化することがない液晶ディスプレイ等のカラーフィルターを製造することができる。
【実施例】
【0098】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。以下に示す実施例は、本発明を好適に説明する例示に過ぎず、なんら本発明を限定するものではない。
【0099】
(実施例1〜4)
1.光重合性化合物Aの製造
特開2001−354735号公報に従い、500ml四つ口フラスコ中で、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂235g(エポキシ当量235)と、テトラメチルアンモニウムクロライド110mgと、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール100mgと、アクリル酸72.0gとをフラスコ内に25ml/分の速度で空気を吹き込みながら90〜100度で加熱溶解した。
【0100】
次に、溶液が白濁した状態のまま徐々に昇温し、120度に加熱して完全溶解させた。このとき、溶液は次第に透明粘稠になるが、酸価が1.0kgKOH/g未満になるまで攪拌を継続した。酸価が1.0kgKOH/g未満になるまでには12時間を要した。
【0101】
その後、室温まで冷却し、無色透明で固体状のビスフェノールフルオレン型エポキシアクリレート(下記式(3))を得た。
【0102】
【化7】

【0103】
このように得られたビスフェノールフルオレン型エポキシアクリレート307.0gにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート600gを加えて溶解した後、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物80.5g及び臭化テトラエチルアンモニウム1gを混合し、徐々に昇温して110〜115度で4時間反応させた。酸無水物基の消失を確認した後、1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸38.0gを混合し、90度で6時間反応させ、前記一般式(1)で示される光重合性化合物Aを得た。なお、前記一般式(1)において、R1及びR2はそれぞれHである。また、式中のY/Zモル比=50.0/50.0であった。酸無水物の消失は赤外吸収スペクトルにより確認した。
【0104】
2.顔料分散型感放射線樹脂組成物の調整
上記光重合性化合物A(55%固形分)150gと、ペンタエリスリトールテトラアクリレート30gと、光重合開始剤としてB−CIM2gと2−メチル−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパンー1−オン(イルガキュア907:チバスペシャリティーケミカルズ製)5gと2−メルカプトベンゾイミダゾール5gと、疎水性樹脂としてスチレン−アクリル酸共重合体(Mw=7500、スチレン:アクリル酸=80:20(モル比))7.5g、15g、30g、75gと、黒色顔料としての顔料分散液マルコ5333ブラック(カーボン濃度20%、特殊色料工業製)500gと、溶剤としての3−メトキシブチルアセテート300gとを攪拌機で2時間混合し、メンブレンフィルター5μmで濾過して、黒色顔料を分散させた4種類の顔料分散型感放射線樹脂組成物(実施例1〜4)を調整した。
【0105】
3.ブラックマトリックスパターンの形成
上記で調整した4種類の顔料分散型感放射線樹脂組成物を、厚さ1mmの清浄な表面を有するガラス基板上にスピンコーター(TR25000:東京応化工業(株)製)を用いて乾燥膜厚が1.4μmとなるように塗布し、90度で2分間乾燥して4種類の顔料分散型感放射線樹脂組成物層(光重合性黒色組成物層)を形成した。
【0106】
次いで、4種類の各光重合性黒色組成物層にネガマスクを介して紫外線を選択的に照射した。露光量は、300mJ/cm2行った。その後、0.04重量%水酸化カリウム水溶液で25度、80秒間スプレー現像後、オーブン中で220℃で30分間ポストベークして、20μmラインを含む黒色パターンとしての4種類のブラックマトリックスパターンを形成した。
【0107】
(比較例1)
前記実施例において、スチレン−アクリル酸共重合体を添加しないこと以外同様にして、ガラス基板上に顔料分散型感放射線樹脂組成物層を形成し、さらにブラックマトリックスを得るとともに液晶パネルを作成した。
【0108】
(比較例2)
前記実施例において、スチレン−アクリル酸共重合体を90g添加したこと以外同様にして、ガラス基板上に顔料分散型感放射線樹脂組成物層を形成し、さらにブラックマトリックスを得るとともに液晶パネルを作成した。
【0109】
(現像性の評価)
前記実施例1〜4と比較例1,2において、ブラックマトリックスを現像した時の現像残渣の有無を観察した。その結果を下記表1に示す。現像残渣がある場合の評価を×で示し、残渣がない場合の評価を○で示した。
【0110】
(ブラックマトリックスの耐久性評価)
前記実施例1〜4と比較例1,2において作成したブラックマトリクスを、120℃、100RH%、2atm環境下に、5時間放置して、ブラックマトリクスの剥がれの有無と程度を確認した。その結果を下記表1に示した。表1において、剥がれが少しでもあった場合の評価を×で示し、剥がれほぼ無く実用可能な場合の評価を○で示し、剥がれのない良好な場合を◎で示した。
【0111】
【表1】

【0112】
表1から明らかなように、実施例1〜4で作成したブラックマトリクスは耐久性試験後も剥がれを生じていない。これに対して、比較例1では剥がれが生じた。また、比較例2では剥がれは生じていないが、ブラックマトリックスを現状下時点で現像残渣が発生しており、パターン不良があり、実用上問題が生じた。
【産業上の利用可能性】
【0113】
以上説明したように、本発明にかかる顔料分散型感放射線樹脂組成物は、顔料分散型感放射線樹脂組成物に疎水性樹脂を所定量含有させることによって、予想を遙かに超える耐湿性、耐久性が得られるので、内部に液晶などの表示物質を封じ込めるカラーマトリックスを形成するための感光性着色樹脂組成物として好適に用いることができる。
【0114】
本発明の顔料分散型感放射線樹脂組成物をカラー液晶表示装置などの多色表示体パネルのカラーマトリックス作成用樹脂組成物として使用することにより、過酷な条件下でも液晶などの表示物質の漏洩が生じることのない多色表示体を得ることができる。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
光重合性化合物と、光重合開始剤と、顔料と、溶剤とを含有してなる顔料分散型感放射線樹脂組成物において、
さらに疎水性樹脂を含有させたことを特徴とする顔料分散型感放射線樹脂組成物。
【請求項2】
前記疎水性樹脂がスチレン−アクリル酸の共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の顔料分散型感放射線樹脂組成物。
【請求項3】
前記疎水性樹脂の含有量が前記光重合性化合物100重量部に対して5重量部以上50重量部未満であることを特徴とする請求項1または2に記載の顔料分散型感放射線樹脂組成物。
【請求項4】
前記光重合性化合物が下記化学式(1)
【化1】

(式中、nは、1〜20の整数であり、Yは、ジカルボン酸無水物の酸無水物基を除いた残基であり、Zは、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基を除いた残基であり、Xは、下記化学式(2)
【化2】

で表される基であり、R1、R2は、H、CH3または
【化3】

であり、R3は、HまたはCH3である。)
で表される化合物を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の顔料分散型感放射線樹脂組成物。
【請求項5】
前記顔料が黒色顔料であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の顔料分散型感放射線樹脂組成物。
【請求項6】
前記黒色顔料がカーボンブラックまたはチタンブラックであることを特徴とする請求項5に記載の顔料分散型感放射線樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の顔料分散型感放射線樹脂組成物からなる光重合性着色組成物層を基板上に形成し、前記組成物層に所定波長の光を選択的に照射し、現像して着色パターンを形成することを特徴とする着色パターンの形成方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の顔料分散型感放射線樹脂組成物を光硬化させて形成したことを特徴とするパターン。
【請求項9】
請求項8に記載のパターンを備えることを特徴とするカラーフィルター。


【公開番号】特開2007−10795(P2007−10795A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−188893(P2005−188893)
【出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】