説明

顔料分散感光性樹脂組成物

【解決課題】顔料の分散性が高く、且つ、アルカリ現像液による現像性が高いことに加えて、硬化塗膜の耐薬品性が高い顔料分散感光性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】顔料(I)と、顔料分散剤(II)と、有機溶剤(III)と、アルカリ可溶性樹脂(IV)と、活性エネルギー線硬化性化合物(V)と、光重合開始剤(VI)と、を含有し、該顔料(I)が酸性官能基を有する酸性カーボンブラックであり、該顔料分散剤(II)が、(A1)酸性官能基及び酸性官能基の中和塩基のうちの1種又は2種と、(A2)塩基性官能基、塩基性官能基の中和塩基及びノニオン系極性分子鎖のうちの1種又は2種以上と、(B)低極性分子鎖と、(C)活性エネルギー線硬化性不飽和基と、を有するポリウレタン樹脂であることを特徴とする顔料分散感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトリソグラフィ法による画像形成に好適に用いられ、特に、液晶表示装置用カラーフィルターにおけるブラックマトリックスの形成に好適に用いられる顔料分散感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイは、液晶となる結晶材料に電極を装着し電圧を印加して液晶の分子配列を変えることにより入射光の透過を制御し、反射板と偏光板を組み合わせることにより、画像や文字などを表示するものである。そして、液晶ディスプレイは、消費電力が少なくて済むため、携帯電話、時計、カメラ、各種電気機器などの表示装置として、広く使用されている。
【0003】
この液晶ディスプレイをカラー化したカラー液晶ディスプレイは、画素ごとに青、赤、緑のカラーフィルターを付けて光の三原色をつくり、各画素の明暗を制御して色の変化を表現するものである。該カラーフィルターは、透明基板上に赤、青、緑の三原色の画素をつくり、各画素を透過する光量を制御して三原色の加色による発色によって、カラー表示を行うものである。
【0004】
そして、該カラーフィルターには、各画素間の漏光を防止し、コントラスト及び色純度の低下を防止するために、各画素間の光を遮断するための遮断層、すなわち、ブラックマトリックスが形成されている。ブラックマトリックスは、また、カラーフィルターに対向する基板上に設けられた液晶の駆動用電極あるいはTFT(薄膜トランジスタ)等のトランジスタを遮光する機能も有している。従って、ブラックマトリックスには、当然、遮光性に優れていることが要求される。
【0005】
また、表面平滑性が悪く、層厚が厚いと、三原色の色パターンを形成する際に、凹凸が生じるおそれがあるため、ブラックマトリックスには、表面が平滑で、層の厚さが薄いことも必要とされている。
【0006】
従来より、ブラックマトリックスには、(i)Cr、Ni、Al等の金属薄膜からなるブラックマトリックス、(ii)黒色顔料を分散した黒色有機樹脂膜からなるブラックマトリックス、が用いられてきた。このうち、(i)の金属薄膜からなるブラックマトリックスは、遮光度や光学濃度が高く解像度に優れている反面、光反射率が大きいので反射光による写り込みが生じ易く、表示品位が損なわれるという難点がある。
【0007】
一方、(ii)の黒色顔料を分散した黒色有機樹脂膜からなるブラックマトリックスは、上記のような難点が少ない。特に、カーボンブラックは、優れた黒色度を有する黒色顔料なので、カーボンブラックを分散した黒色有機樹脂膜からなるブラックマトリックスは、優れた性能を有する。
【0008】
黒色有機樹脂膜からなるブラックマトリックスは、カーボンブラック、顔料分散剤、アクリルモノマー、アクリルオリゴマー、樹脂、光重合開始剤などからなる顔料分散感光性樹脂組成物を用いて、フォトリソグラフィにより形成される。つまり、顔料分散感光性樹脂組成物を露光することにより、露光部が硬化して、未露光部はアルカリ現像液で取り除かれて、黒色有機樹脂膜からなるブラックマトリックスが形成される。そして、形成された黒色有機樹脂膜からなるブラックマトリックスの未露光部分に、三原色が埋め込まれて、カラーフィルターが造られる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
カーボンブラックを黒色顔料として用いる顔料分散感光性樹脂組成物としては、例えば、特開2000−227654号公報(特許文献1)に、(A)黒色顔料を含む着色剤、(B)アルカリ可溶性樹脂、(C)多官能性モノマーおよび(D)光重合開始剤を含有するブラックレジスト用感放射線性組成物であって、(A)着色剤がウレタン結合を有する化合物を含む分散剤により分散されていることを特徴とするブラックレジスト用感放射線性組成物が開示されている。
【0010】
フォトリソグラフィ法による画像形成用、特に、液晶表示装置用のカラーフィルターに用いられるフォトレジスト組成物には、カーボンブラックの分散性が高いことと、現像性が優れていることの両方が必要である。つまり、現像後に、非露光部分に残存物がなく、非露光部分のアルカリ可溶性が高く、非露光部分がアルカリ現像液によりきれいに溶け去ること、及び露光部がアルカリ現像液によって浸食されず、硬化した後の耐薬品性が優れていることが要求される。
【0011】
表面処理がされていないカーボンブラックは、有機溶媒や樹脂に配合されたときに、分散性が悪いので、均一な塗膜を形成することが極めて困難であり、また、アルカリ可溶性がない。そのため、特許文献1では、分散剤の配合量が多くなってしまうので、カーボンブラックの配合量が少なくなり、遮光性が低くなるという問題があった。
【0012】
そこで、カーボンブラックの表面に、スルホン酸、リン酸、カルボン酸、フェノール性水酸基などの酸性基を導入し、これに塩基性の分散剤を組み合わせて、酸性官能基を表面に有するカーボンブラック及び塩基性の分散剤を含有するフォトレジスト組成物とすることによって、カーボンブラックの分散性及びアルカリ可溶性を高めることが提唱されている。
【0013】
例えば、特開2004−198717号公報(特許文献2)には、(A)平均一次粒子径20〜60nm、DBP吸油量30〜100ml/100g、BET法による比表面積30〜150m/g、粒子表面のカルボキシル基の濃度0.2〜1.0μmol/mのカーボンブラック、(B)アミノ基及び/またはその第4級アンモニウム塩を有する共重合体、及び(C)有機溶剤を含有することを特徴とするカラーフィルターブラックマトリックスレジスト用カーボンブラック分散液組成物が開示されている。
【0014】
しかしながら、この場合、分散剤自身は塩基性であるため、アルカリ可溶性を持たない。そのため、光硬化性樹脂やモノマーの一部に、酸性の基を導入することで、全体のアルカリ可溶性のバランスを調節しているものの、未露光部に、カーボンブラックや塗膜の一部が残存し一掃できずに、カラーフィルターの汚れの原因となるという問題があった。また、この場合、光硬化性樹脂やモノマーに、アルカリ可溶性を負担させているため、当然、露光部にもアルカリ可溶性が発現してしまい、現像性が悪くなったり、耐薬品性が低くなる原因となるという問題があった。
【0015】
上記問題の解決を目的とするものとして、特開2007−254694号公報(特許文献3)に、1分子中に平均で2〜10個のイソシアネート基を含有し、前記イソシアネート基1個当たりの数平均分子量が100〜1000である多官能ポリイソシアネート化合物(a)中のイソシアネート基と、末端に水酸基を有し、さらにエチレン性不飽和基を有するアクリル重合体(b)中の水酸基とを反応させてなる感光性樹脂分散剤及びその分散剤を含む感光性顔料分散体組成物が開示されている。しかし、特許文献3では、分散剤自体が三次元架橋してしまうため塊状となり易く、分散剤としての形態を保つことが極めて困難であった。
【0016】
【特許文献1】特開2000−227654号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2004−198717号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2007−254694号公報(特許請求の範囲)
【0017】
従って、本発明の目的は、顔料の分散性が高く、且つ、アルカリ現像液による現像性が高いことに加えて、硬化塗膜の耐薬品性が高い顔料分散感光性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、上記従来技術における課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、(1)(A1)酸性官能基及び酸性官能基の中和塩基のうちの1種又は2種と、(A2)塩基性官能基、塩基性官能基の中和塩基及びノニオン系極性分子鎖のうちの1種又は2種以上と、(B)低極性分子鎖と、(C)活性エネルギー線硬化性不飽和基と、を有するポリウレタン樹脂である顔料分散剤は、顔料分散感光性樹脂組成物に、酸性官能基を有する酸性カーボンブラックの高い分散性と硬化膜の優れた耐薬品性とを付与できること、(2)更には、該(A1)、該(A2)、該(B)及び該(C)のうちの全部又は一部が、該ポリウレタン樹脂の側鎖を構成しているか又は側鎖に結合していることにより、ポリウレタン樹脂の分子が櫛の歯型に近づき、極性の高い基又は分子鎖は、溶媒に親和性を持ち、低極性分子鎖は、顔料粒子に親和性を有するので、顔料の分散性が向上すること、(3)更には、ポリウレタン樹脂の合成原料として、該(A2)とアミノ基を有するポリオール化合物及び該(B)とアミノ基を有するポリオール化合物を用いて得られるポリウレタン樹脂では、該アミノ基が顔料表面の酸性官能基等とイオン的親和性を発揮するため、顔料の分散性が向上すること、等を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0019】
すなわち、本発明(1)は、顔料(I)と、顔料分散剤(II)と、有機溶剤(III)と、アルカリ可溶性樹脂(IV)と、活性エネルギー線硬化性化合物(V)と、光重合開始剤(VI)と、を含有し、
該顔料(I)が、酸性官能基を有する酸性カーボンブラックであり、
該顔料分散剤(II)が、(A1)酸性官能基及び酸性官能基の中和塩基のうちの1種又は2種と、(A2)塩基性官能基、塩基性官能基の中和塩基及びノニオン系極性分子鎖のうちの1種又は2種以上と、(B)低極性分子鎖と、(C)活性エネルギー線硬化性不飽和基と、を有するポリウレタン樹脂であること
を特徴とする顔料分散感光性樹脂組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、顔料の分散性が高く、且つ、アルカリ現像液による現像性が高いことに加えて、硬化塗膜の耐薬品性が高い顔料分散感光性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の顔料分散感光性樹脂組成物は、顔料(I)と、顔料分散剤(II)と、有機溶剤(III)と、アルカリ可溶性樹脂(IV)と、活性エネルギー線硬化性化合物(V)と、光重合開始剤(VI)と、を含有し、
該顔料(I)が、酸性官能基を有する酸性カーボンブラックであり、
該顔料分散剤(II)が、(A1)酸性官能基及び酸性官能基の中和塩基のうちの1種又は2種と、(A2)塩基性官能基、塩基性官能基の中和塩基及びノニオン系極性分子鎖のうちの1種又は2種以上と、(B)低極性分子鎖と、(C)活性エネルギー線硬化性不飽和基と、を有するポリウレタン樹脂である、
顔料分散感光性樹脂組成物である。
【0022】
本発明の顔料分散感光性樹脂組成物に係る該顔料(I)は、酸性官能基を有する酸性カーボンブラックである。該酸性官能基を有する酸性カーボンブラックは、酸性官能基又は該酸性官能基の中和塩基により、表面が改質されたカーボンブラックである。言い換えると、該酸性官能基を有する酸性カーボンブラックは、表面に該酸性官能基を有するもの、あるいは、該酸性官能基の一部が塩基性化合物により中和されたものである。
【0023】
該酸性官能基を有する酸性カーボンブラックに結合される該酸性官能基又は該酸性官能基の中和塩基は、後述する本発明の顔料分散剤(II)に係る酸性官能基又は酸性官能基の中和塩基と同様である。これらのうち、該酸性官能基を有する酸性カーボンブラックに係る該酸性官能基としては、カルボキシル基及び水酸基の組合せが好ましい。
【0024】
該酸性官能基を有する酸性カーボンブラックにおいて、官能基が導入される前の顔料であるカーボンブラックとしては、チャネルブラック、ローラーブラック、ディスクブラックと呼ばれるコンタクト法で製造されたカーボンブラック、ガスファーネスブラック、オイルファーネスブラックと呼ばれるファーネスト法で製造されたカーボンブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックと呼ばれるサーマル法で製造されたカーボンブラック等が挙げられ、これらのうち、生産性に優れたファーネスブラックが好ましい。
【0025】
官能基導入前のカーボンブラックに、酸性官能基を導入し、該酸性官能基が導入されたカーボンブラックを得る方法としては、該官能基導入前のカーボンブラックを、高温下で遊離酸素と接触させて酸化することや、オゾン、NOなどの酸化剤によって酸化することや、臭素及び水によって常圧下又は加圧下で処理することや、硝酸や硫酸などの酸化性の溶液で酸化することや、また、これらを組合わせることや、過酸化水素によって酸化すること等の酸化法により、該官能基導入前のカーボンブラックに、カルボキシル基又は水酸基を導入する方法が挙げられる。また、該官能基導入前のカーボンブラックに、酸化法以外で、カルボキシル基、スルホン基、リン酸基などの酸性官能基を導入する方法としては、ジアゾカップリング法が挙げられる。該酸性官能基が導入されたカーボンブラック又はその酸性官能基の一部若しくは全部が塩基性化合物により中和されたカーボンブラックとしては、キャボット・スペシャリティ社製CAB−O−JET200、CAB−O−JET300、CAB−O−JET400などの水分散性のカーボンブラックが挙げられる。
【0026】
そして、該酸性官能基を有する酸性カーボンブラックは、表面に酸性官能基を有するので、ブラックマトリック形成用の顔料分散感光性樹脂組成物の顔料として、遮光性に優れ且つアルカリ現像性に優れる点で、好ましい。
【0027】
該酸性官能基を有する酸性カーボンブラックの平均一次粒子径が50nm以下、STSA比表面積が30m/g以上、DBP吸油量が80cm/100g以下、且つ、酸価が1.0〜20KOHmg/gであることが好ましい。そして、該酸性官能基を有する酸性カーボンブラックの平均一次粒子径は20〜50nmが特に好ましく、また、STSA比表面積は30〜130m/gが特に好ましく、また、DBP吸油量は40〜80cm/100gが特に好ましく、また、酸価は3.0〜10KOHmg/gが特に好ましい。
該酸性官能基を有する酸性カーボンブラックの平均一次粒子径が、50nmを超えると、溶媒に分散されたときのカーボンブラックの平均粒径が大きくなり、ブラックマトリックスの黒色度及び光遮蔽力が低くなり易い。また、該酸性官能基を有する酸性カーボンブラックのSTSA比表面積がが、30m/g未満だと、溶媒に分散されたときのカーボンブラックの平均粒径が大きくなり、ブラックマトリックスの黒色度及び光遮蔽力が低くなり易い。該酸性官能基を有する酸性カーボンブラックのDBP吸油量が、80cm/100gを超えると、樹脂との混合した際に、粘度が増大して、遮光層の平滑性が損なわれ易くなる。該酸性官能基を有する酸性カーボンブラックの酸価が、1.0KOHmg/g未満だと、凝集し易くなり、一方、20KOHmg/gを超えると、ポリウレタン樹脂との相溶性が低くなり易く、粘度上昇し易くなる。
なお、STSA比表面積は、窒素ガスを用いて測定する外部比表面積であり、自動比表面積測定装置(島津製作所製、Gemini 2375)を用いて、ASTM D6556“Standard Test Methods for Carbon Black-External Surface Area by Multipoint Nitrogen Adsorption”に記載の方法に準拠して測定した値である。比表面積としては、他には、カーボンブラックの細孔まで測定する全比表面積があるが、本発明では、カーボンブラックへの溶媒の浸入にあまり関係しない細孔まで測定する全比表面積は適切ではなく、外部比表面積で示した。
また、一次平均粒子径は、ASTM D3849に基づき、電子顕微鏡による算術平均により求めた。
【0028】
本発明の顔料分散感光性樹脂組成物に係る該顔料分散剤(II)は、
(A1)酸性官能基及び酸性官能基の中和塩基のうちの1種又は2種と、
(A2)塩基性官能基、塩基性官能基の中和塩基及びノニオン系極性分子鎖のうちの1種又は2種以上と、
(B)低極性分子鎖と、
(C)活性エネルギー線硬化性不飽和基と、
を有するポリウレタン樹脂である。
【0029】
つまり、該顔料分散剤(II)は、1分子中に、(A1)と(A2)と(B)と(C)とを必須成分として併せ持つ顔料分散剤である。
【0030】
該顔料分散剤(II)は、分子中の活性エネルギー線硬化性不飽和基を有しているので、露光部の硬化性を上げることができ、現像のコントラストが向上し、ひいては、露光部の耐薬品性が高い硬化膜が得られる。
【0031】
該顔料分散剤(II)は、主鎖がポリウレタンであるポリウレタン樹脂であり、その主鎖に結合して、あるいは、その主鎖に結合している側鎖に結合して、あるいは、その主鎖を構成する分子鎖として、(A1)と(A2)と(B)と(C)とを有する。
【0032】
該顔料分散剤(II)は、(A1)として、該酸性官能基か、該酸性官能基の中和塩基のうちのいずれか、あるいは、これらの両方を有する。
【0033】
該顔料分散剤(II)の(A1)に係る該酸性官能基としては、特に制限されず、カルボキシル基(−COOH)、水酸基(−OH)、スルホン酸基(−SOH)、リン酸エステル基(リン酸モノエステル、リン酸ジエステル、リン酸トリエステル基を含む)等が挙げられる。これらのうち、カルボキシル基又はスルホン基のいずれか、あるいは、カルボキシル基及びスルホン基の組合せが、好ましい。該酸性官能基は、1種であっても、2種以上の組合せであってもよい。
【0034】
該顔料分散剤(II)の(A1)に係る該酸性官能基の中和塩基としては、特に制限されず、本発明の顔料分散剤の(A1)に係る該酸性官能基が、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム等の塩基性化合物により中和された基である。例えば、該酸性官能基がカルボキシル基の場合、−COONa、−COONH等が挙げられる。該酸性官能基の中和塩基は、1種であっても、2種以上の組合せであってもよい。
【0035】
該顔料分散剤(II)は、(A2)として、該塩基性官能基か、該塩基性官能基の中和塩基か、該ノニオン系極性分子鎖のうちのいずれか、あるいは、これらの2種以上を有する。
【0036】
該顔料分散剤(II)の(A2)に係る該塩基性官能基としては、特に制限されず、脂肪族アミン基、脂環族アミン基、複素脂環アミン基、芳香族アミン基等の塩基性含窒素官能基等が挙げられる。該塩基性官能基は、1種であっても、2種以上の組合せであってもよい。
【0037】
該顔料分散剤(II)の(A2)に係る該塩基性官能基の中和塩基としては、特に制限されず、本発明の顔料分散剤の(A2)に係る該塩基性官能基が、例えば、塩酸、硫酸等の酸性化合物により中和された基である。該塩基性官能基の中和塩基は、1種であっても、2種以上の組合せであってもよい。
【0038】
該顔料分散剤(II)の(A2)に係る該ノニオン系極性分子鎖は、例えば、ポリオキシアルキレンエーテル分子鎖又はポリオキシプロピレンエーテル分子鎖、あるいは、これらの共重合物の分子鎖等のノニオン系極性分子鎖が挙げられる。該ノニオン系極性分子鎖は、1種であっても、2種以上の組合せであってもよい。そして、該ノニオン系極性分子鎖が、4以上のオキシエチレンエーテル繰り返し単位を有するポリオキシエチレンエーテル分子鎖であり、顔料分散剤の主鎖を構成するか又は顔料分散剤の主鎖若しくはその末端に結合する側鎖であることが、好ましい。
【0039】
また、該ノニオン系極性分子鎖が、下記一般式(2):
【0040】
【化9】

【0041】
(一般式(2)中、dは1〜4、eは5〜30である。)
で表わされるノニオン系極性分子鎖、下記一般式(3):
【0042】
【化10】

【0043】
(一般式(3)中、fは1〜4、gは5〜30、{h/(h+g)}<0.2である。)
で表わされるノニオン系極性分子鎖、又は下記一般式(4):
【0044】
【化11】

【0045】
(一般式(4)中、iは5〜30、jは0〜6である。)
で表わされるノニオン系極性分子鎖が、顔料の分散性が高くなる点で好ましい。
【0046】
該顔料分散剤(II)において、(A1)の該酸性官能基及び該酸性官能基の中和塩基、並びに(A2)の該塩基性官能基及び該塩基性官能基の中和塩基は、顔料分散剤の主鎖に結合していてもよく、あるいは、顔料分散剤の側鎖に結合していてもよい。また、該顔料分散剤(II)において、該ノニオン系極性分子鎖は、顔料分散剤の主鎖又はその末端に結合していてもよく、あるいは、顔料分散剤の側鎖に結合していてもよく、あるいは、顔料分散剤の主鎖を構成していてもよい。
【0047】
該顔料分散剤(II)は、該低極性分子鎖(B)を有する。該低極性分子鎖(B)は、油脂由来のアルキル基又はアルケニル基を有する分子鎖、あるいは、炭素数6以上のアルキル基又はアルケニル基を有する分子鎖、あるいは、炭素数4以上の分子単位を繰り返し単位として有する分子鎖、あるいは、ロジン骨格又は水添ロジン骨格で構成される分子鎖であり、これらのうちの1種又は2種以上の組合せであってもよい。該低極性分子鎖(B)に係る該炭素数6以上のアルキル基は、直鎖状、分岐状又は環状のいずれであってもよい。該低極性分子鎖(B)に係る該炭素数4以上の分子単位を繰り返し単位として有する分子鎖は、直鎖状、分岐状又は環状のいずれの分子単位を有するものであってもよい。
【0048】
なお、本発明で、例えば、炭素数6の分子単位とは、炭素数が6のアルキレン基の他に、例えば、炭素数が5のアルキレン基にメチル基が結合しているもの、炭素数が2のエチレン基にブトキシ基が結合しているものも含まれる。つまり、1つの分子単位中の炭素数が6であることを意味する。
【0049】
また、該低極性分子鎖(B)は、下記一般式(6):
【0050】
【化12】

【0051】
(一般式(6)中、sは5〜30である。)
で表わされる低極性分子鎖、下記一般式(7):
【0052】
【化13】

【0053】
(一般式(7)中、tは5〜30である。)
で表わされる低極性分子鎖、下記一般式(8):
【0054】
【化14】

【0055】
(一般式(8)中、uは5〜30である。)
で表わされる低極性分子鎖、炭素数4以上の分子単位を繰り返し単位として2個以上有するポリエステルからなる低極性分子鎖、炭素数4以上の分子単位を繰り返し単位として2個以上有するポリエーテルからなる低極性分子鎖、炭素数4以上の分子単位を繰り返し単位として2個以上有するポリカーボネートからなる低極性分子鎖、又は炭素数4以上の分子単位を繰り返し単位として2個以上有するポリカプロラクトンからなる低極性分子鎖が、顔料の分散性が高くなる点で好ましい。
【0056】
該顔料分散剤(II)において、該低極性分子鎖(B)は、顔料分散剤の主鎖又はその末端に結合していてもよく、あるいは、顔料分散剤の側鎖に結合していてもよく、あるいは、顔料分散剤の主鎖を構成していてもよい。
【0057】
該顔料分散剤(II)は、該活性エネルギー線硬化性不飽和基(C)を有する。該顔料分散剤(II)の(C)に係る該活性エネルギー線硬化性不飽和基とは、ビニル基、アクリロイル基、メタアクリロイル基等の該活性エネルギー線硬化性を有する不飽和基である。
【0058】
該顔料分散剤(II)において、該活性エネルギー線硬化性不飽和基は、顔料分散剤の主鎖又はその末端に結合していてもよく、あるいは、顔料分散剤の側鎖に結合していてもよく、あるいは、顔料分散剤の主鎖を構成していてもよい。
【0059】
該顔料分散剤(II)では、該(A1)、該(A2)、該(B)及び該(C)のうちの全部又は一部が、前記ポリウレタン樹脂の側鎖を構成しているか又は側鎖に結合していることが、ポリウレタン樹脂の分子が櫛の歯型に近づき、極性の高い基又は分子鎖は、溶媒に親和性を持ち、極性の低い分子鎖は、顔料粒子に親和性を有するので、顔料の分散性が向上する点で、好ましい。
【0060】
該顔料分散剤(II)では、該(C)の全部又は一部が、アクリロイル基又はメタアクリロイル基であり、該アクリロイル基又は該メタアクリロイル基の濃度が、0.2〜3mol/kgであることが好ましく、0.3〜2.5mol/kgであること特に好ましい。
【0061】
該顔料分散剤(II)としては、イソシアネート化合物と、水酸基又は活性水素を有する化合物とを反応させて得られるポリウレタン樹脂であり、
該水酸基又は活性水素を有する化合物の一部が、下記一般式(1):
【0062】
【化15】

【0063】
で表わされる水酸基又は活性水素を有する化合物及び下記一般式(5):
【0064】
【化16】

【0065】
で表わされる水酸基又は活性水素を有する化合物である顔料分散剤(以下、顔料分散剤(II−1)とも記載する。)が挙げられる。なお、該活性水素を有するとは、水酸基以外でイソシアネート化合物と反応する基、例えば、アミノ基を有することを指す。
【0066】
該顔料分散剤(II−1)は、ポリウレタン樹脂の重合原料として、該イソシアネート化合物と、該水酸基又は活性水素を有する化合物とを用いて、これらを反応させて得られたポリウレタン樹脂である。
【0067】
該顔料分散剤(II−1)に係る該イソシアネート化合物は、全部が、2官能のイソシアネート化合物であってもよく、あるいは、2官能のイソシアネート化合物と、3官能以上のイソシアネート化合物又は1官能のイソアネート化合物との組合せであってもよい。
【0068】
該顔料分散剤(II−1)に係る該水酸基又は活性水素を有する化合物は、全部が、該イソシアネート化合物と反応する水酸基又は活性水素を2つ以上有する化合物(多官能化合物)であってもよく、あるいは、該イソシアネート化合物と反応する水酸基又は活性水素を2つ以上有する化合物と、該イソシアネート化合物と反応する水酸基又は活性水素を1つ有する化合物(1官能化合物)の組合せであってもよい。なお、該水酸基又は活性水素を有する化合物として、該イソシアネート化合物と反応する水酸基を2つ以上有する化合物と、該イソシアネート化合物と反応する水酸基又は活性水素を1つ有する化合物との組合せの場合、該イソシアネート化合物と反応する水酸基又は活性水素を1つ有する化合物は、ポリウレタン樹脂の主鎖の末端となる。また、該イソシアネート化合物と反応する水酸基又は活性水素を2つ以上有する化合物を、ポリオールとも呼ぶ。
【0069】
前記一般式(1)中、R及びRは、−C2a−OH、−C2b−COO−C2c−OH又は水素原子であり、且つ、R及びRのうちの少なくとも一方は、−C2a−OH又は−C2b−COO−C2c−OHである。よって、R及びRのうちいずれか一方又は両方が、水酸基を有する。aは2〜6、bは2〜3、cは2〜4であり、R及びRは同一であっても異なってもよい。
【0070】
前記一般式(1)中、Rは、下記一般式(2):
【0071】
【化17】

【0072】
(一般式(2)中、dは1〜4、eは5〜30である。)
で表わされるノニオン系極性分子鎖、下記一般式(3):
【0073】
【化18】

【0074】
(一般式(3)中、fは1〜4、gは5〜30、{h/(h+g)}<0.2である。)
で表わされるノニオン系極性分子鎖、又は下記一般式(4):
【0075】
【化19】

【0076】
(一般式(4)中、iは5〜30、jは0〜6である。)
で表わされるノニオン系極性分子鎖である。
【0077】
前記一般式(5)中、R及びRは、−C2p−OH、−C2q−COO−C2r−OH又は水素原子であり、且つ、R及びRのうちの少なくとも一方は、−C2p−OH又は−C2q−COO−C2r−OHである。よって、R及びRのうちいずれか一方又は両方が、水酸基を有する。pは2〜6、qは2〜3、rは2〜4であり、R及びRは同一であっても異なってもよい。
【0078】
前記一般式(5)中、Rは、下記一般式(6):
【0079】
【化20】

【0080】
(一般式(6)中、sは5〜30である。)
で表わされる低極性分子鎖、下記一般式(7):
【0081】
【化21】

【0082】
(一般式(7)中、tは5〜30である。)
で表わされる低極性分子鎖、下記一般式(8):
【0083】
【化22】

【0084】
(一般式(8)中、uは5〜30である。)
で表わされる低極性分子鎖、炭素数4以上の分子単位を繰り返し単位として2個以上有するポリエステルからなる低極性分子鎖、炭素数4以上の分子単位を繰り返し単位として2個以上有するポリエーテルからなる低極性分子鎖、炭素数4以上の分子単位を繰り返し単位として2個以上有するポリカーボネートからなる低極性分子鎖、又は炭素数4以上の分子単位を繰り返し単位として2個以上有するポリカプロラクトンからなる低極性分子鎖である。
【0085】
また、該顔料分散剤(II−1)は、(A2)及び(B)の他に、(A1)及び(C)を有しているので、該イソシアネート化合物と反応させる該水酸基又は活性水素を有する化合物のうち、前記一般式(1)で表わされる水酸基又は活性水素を有する化合物及び前記一般式(5)で表わされる水酸基又は活性水素を有する化合物以外の該水酸基又は活性水素を有する化合物の全部又は一部が、「(A1)有している該水酸基又は活性水素を有する化合物」、及び「(C)を有している該水酸基又は活性水素を有する化合物」である。また、該顔料分散剤(I−1)では、該イソシアネート化合物と反応させる該水酸基又は活性水素を有する化合物として、前記一般式(1)で表わされる水酸基又は活性水素を有する化合物、前記一般式(5)で表わされる水酸基又は活性水素を有する化合物、「(A1)を有している該水酸基又は活性水素を有する化合物」、及び「(C)を有している該水酸基又は活性水素を有する化合物」以外の水酸基又は活性水素を有する化合物を用いることができる。
【0086】
該顔料分散剤(II−1)は、該イソシアネート化合物と反応させる該水酸基又は活性水素を有する化合物として、前記一般式(1)で表わされる水酸基又は活性水素を有する化合物、及び前記一般式(5)で表わされる水酸基又は活性水素を有する化合物を用いているので、顔料分散剤中に、アミノ基を有している。そして、本発明の顔料分散感光性樹脂組成物では、顔料として、該酸性官能基を有する酸性カーボンブラックを用いており、該顔料分散剤(II−1)中のアミノ基が、該酸性官能基を有する酸性カーボンブラック中の酸性官能基又は酸性官能基の中和塩基と、イオン的親和性を発揮するので、該顔料の分散性が高くなる。
【0087】
該顔料分散剤(II)のうち、イソシアネート化合物と、水酸基又は活性水素を有する化合物とを反応させて得られるポリウレタン樹脂であり、該水酸基又は活性水素を有する化合物のうちの2官能の水酸基又は活性水素を有する化合物の合計モルに対する、側鎖として(A1)、(A2)、(B)又は(C)を有している2官能の水酸基又は活性水素を有する化合物の合計モルのモル%が、20〜100モル%であることが、該顔料の分散性が高くなる点で好ましい。つまり、該顔料分散剤(II)を製造する際に用いられる該水酸基又は活性水素を有する化合物のうち、2官能の該水酸基又は活性水素を有する化合物に着目し、2官能の該水酸基又は活性水素を有する化合物全部のモル数に対する、側鎖として(A1)を有している2官能の水酸基又は活性水素を有する化合物、側鎖として(A2)を有している2官能の水酸基又は活性水素を有する化合物、側鎖として(B)を有している2官能の水酸基又は活性水素を有する化合物、及び側鎖として(C)を有している2官能の水酸基又は活性水素を有する化合物の合計のモル数の割合が、20〜100モル%であることが、該顔料の分散性が高くなる点で好ましい。なお、側鎖としてYを有している2官能の水酸基又は活性水素を有する化合物とは、重合させたときに、Yが、ポリウレタン樹脂の側鎖になるような2官能の水酸基又は活性水素を有する化合物を指す。
【0088】
該顔料分散剤(II)の製造方法としては、特に制限されず、公知の方法が用いられる。
【0089】
該顔料分散剤(II)は、例えば、該酸性官能基及び該酸性官能基の中和塩基のうちの1種又は2種を有するポリオール(a1)と、該塩基性官能基、該塩基性官能基の中和塩基及び該ノニオン系極性分子鎖のうちの1種又は2種以上を有するポリオール(a2)と、該低極性分子鎖(B)を有するポリオール(b)と、該活性エネルギー線硬化性不飽和基及び水酸基を有する化合物(c)と、二官能以上のイソシアネート化合物(d)との反応によって得られる。この方法は、該(a1)、(a2)及び該(b)とが、該(d)を介してブロック的に繋げることができる点で好ましい。この方法では、側鎖として該酸性官能基及び該酸性官能基の中和塩基のうちの1種又は2種を有するポリオール(a1)、側鎖として該塩基性官能基、該塩基性官能基の中和塩基及び該ノニオン系極性分子鎖のうちの1種又は2種以上を有するポリオール(a2)、及び側鎖として該低極性分子鎖(B)を有するポリオール(b)を用いることにより、該(A1)、該(A2)、及び該(B)が櫛の歯型に側鎖として伸びた顔料分散剤が得られる点で、好ましい。なお、側鎖としてYを有するポリオールとは、重合させたときに、Yが、ポリウレタン樹脂の側鎖になるようなポリオールを指す。また、上記ポリオール化合物に加えて、該イソシアネート化合物(d)と反応する水酸基又は活性水素を1つ有し且つ(A1)を有するモノオール(1官能化合物)、該イソシアネート化合物(d)と反応する水酸基又は活性水素を1つ有し且つ(A2)を有するモノオール(1官能化合物)又は該イソシアネート化合物(d)と反応する水酸基又は活性水素を1つ有し且つ(B)を有するモノオール(1官能化合物)を併用することもできる。
【0090】
そして、該(a1)中の該酸性官能基が、本発明の顔料分散剤の(A1)の該酸性官能基に相当し、該(a1)中の該酸性官能基の中和塩基が、本発明の顔料分散剤の(A1)の該酸性官能基の中和塩基に相当し、該(a2)中の該塩基性官能基が、本発明の顔料分散剤の(A2)の該塩基性官能基に相当し、該(a2)中の該塩基性官能基の中和塩基が、本発明の顔料分散剤の(A2)の該塩基性官能基の中和塩基に相当し、該(a2)中の該ノニオン系極性分子鎖が、本発明の顔料分散剤の(A2)の該ノニオン系極性分子鎖に相当する。また、該(b)中の該低極性分子鎖が、本発明の顔料分散剤の(B)の該低極性分子鎖に相当する。また、該(c)中の該活性エネルギー線硬化性不飽和基が、本発明の顔料分散剤の(C)の該活性エネルギー線硬化性不飽和基に相当する。
【0091】
該(a1)としては、カルボキシル基(−COOH)、水酸基(−OH)、スルホン酸基(−SOH)、リン酸エステル基(リン酸モノエステル、リン酸ジエステル、リン酸トリエステル基を含む)及び硫酸エステル等の酸性官能基並びにそれらが塩基性化合物により中和された基のうちの1種又は2種以上を有するポリオール化合物が挙げられる。更に具体的には、該(a1)としては、トリメチロールプロパンモノリン酸エステル、トリメチロールプロパンモノ硫酸エステル、二塩基酸成分の少なくとも一部がナトリウムスルホ琥珀酸又はナトリウムスルホイソフタル酸であるポリエステルジオール、リシン、シスチン及び3,5−ジアミノカルボン酸などのジアミノカルボン酸類、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,5ジヒドロキシ安息香酸、ビス(ヒドロキシメチル)酢酸、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン酸、酒石酸、カルボキシル基含有ポリカプロラクトンジオール、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシエチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシプロピル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸などのジヒドロキシアルカン酸類、ジヒドロキシアルカン酸類のカプロラクトン付加物等が挙げられる。また、これらの酸性官能基が塩基性化合物により中和されたものが挙げられる。
【0092】
該(a2)としては、該塩基性官能基を有するポリオール化合物(a2)として、ジアルカノールアミン類などの水酸基と塩基性含窒素基を有する化合物等が挙げられる。更に具体的には、該塩基性官能基を有するポリオール化合物(a2)としては、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−メチルプロパノールアミンなどのN−モノアルキルジアルカノールアミン類、N,N−ジヒドロキシエチルグリシン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−カルボキシ−プロピオンアミド等のカチオン系ジオール;
ジメチルアミノエチルアクリレートとジエタノールアミン、ジプロパノールアミンなどのジアルカノールアミンとのマイケル付加反応物;
エチルアミン、ブチルアミンなどのモノアルキルアミンと2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートなどのヒドロキシアルキルアクリレートのマイケル付加反応物;ジメチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミンなどのジアルキルアミノアルキルアミンなどの3級アミンと1級アミンからなるジアミンと2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートなどのヒドロキシアルキルアクリレートのマイケル付加反応物;
N−アミノエチルピペリジン、N−アミノプロピルピペリジン、N−アミノエチル−4−ピペコリン、N−アミノプロピル−4−ピペコリン、N−アミノプロピルモロホリンなどの複素環アミンと1級アミンからなる化合物と2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートなどのヒドロキシアルキルアクリレートのマイケル付加反応物が挙げられる。
【0093】
該(a2)として、該ノニオン系極性分子鎖を有するポリオール化合物(a2)としては、ポリオキシエチレンエーテル鎖、ポリオキシエチレンエーテル−ポリオキシプロピレンエーテルグリコール共重合分子鎖などのノニオン系極性分子鎖を有するポリオール化合物が挙げられる。更に具体的には、該ノニオン系極性分子鎖を有するポリオール化合物(a2)としては、二塩基酸、ジオール類にエチレンオキサイドを付加して3以上のポリオキシエチレンエーテル繰り返し単位を有するポリオキシエチレンエーテルジオール;ポリオキシプロピレンエーテルグリコール又はポリオキシブチレンエーテルグリコールとポリオキシエチレンエーテルのブロック共重合ジオールのうちポリオキシエチレンエーテル鎖が60モル%以上を占めるブロック共重合ジオール;
ポリオキシエチレンエーテル鎖が60モル%以上を占めるブロック共重合ジオールポリマージオールとポリオキシエチレンエーテルのブロック共重合ジオールなどが、分子主鎖に極性基を有するジオールの代表として挙げられる。
また、該(a2)としては、下記一般式(11):
【0094】
【化23】

【0095】
(一般式(11)中、Rは炭素数が4〜27のアルキル基であり、w+xは5〜50である。)
で表わされるジオール類が挙げられる。
【0096】
また、該(a2)としては、3つ以上のポリオキシエチレンエーテル繰り返し単位を有するメトキシポリオキシエチレンエーテルアクリレートなどのアルコキシポリオキシエチレンエーテルアクリレートと、ジエタノールアミン又はジプロパノールアミンなどのジアルカノールアミンとをマイケル付加反応して得られるジオールなどが、分子側鎖に極性分子鎖を有するジオールの代表として挙げられる。
また、ポリウレタン樹脂の側鎖として、3つ以上のオキシエチレンエーテル繰り返し単位を有するノニオン系分子側鎖を導入するための該(a2)としては、前記一般式(1)で表わされる水酸基又は活性水素を有する化合物が挙げられる。そして、前記一般式(1)で表わされる水酸基又は活性水素を有する化合物が、顔料の分散性が高くなる点で好ましい。
【0097】
該(b)としては、炭素数が4以上の分子単位を繰り返し単位として2個以上有する高分子ポリオールが挙げられる。該高分子ポリオール(b)としては、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートジオール及びポリエーテルポリオールなどが挙げられる。また、該高分子ポリオール(b)としては、ブタジエンジオールなどの高分子ジオール等が挙げられる。また、該高分子ポリオール(b)としては、ロジン骨格又は水添ロジン骨格を有する化合物のポリマージオールが挙げられる。該高分子ポリオール(b)の分子量は、好ましくは数平均分子量で500〜3000である。
【0098】
該高分子ポリオール(b)は、好ましくは各分子単位の炭素数がいずれも4以上であって、且つ全分子単位の炭素数の平均が6以上である分子単位を繰り返し単位として2個以上有するものである。
【0099】
該ポリエステルポリオール(b)としては、以下のポリオール、ポリオール同効成分のうちの1種又は2種以上と、多塩基酸及びそれら無水物等のうちの1種又は2種以上とが縮合反応することによって得られるものが挙げられる。
【0100】
該ポリエステルポリオール(b)の原料である、分子単位の炭素数が4以上のポリオールとしては、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、シクロヘキシルジメタノール、ひまし油変性ジオール、ひまし油変性ポリオール等を挙げることができる。
【0101】
該ポリエステルポリオール(b)の原料である、該ポリオール同効成分としては、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ラウリルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル及びステアリルグリシジルエーテル等のアルキルモノグリシジルエーテル類、並びにアルキルグリシジルエステル(製品名カージュラE10:シェルジャパン製)等のモノエポキシ化合物のうちの1種又は2種以上が挙げられる。
【0102】
該ポリエステルポリオール(b)の原料である、該多塩基酸及びそれらの無水物としては、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸及びダイマー酸等の脂肪族二塩基酸並びにそれらの無水物、ドデセニル無水琥珀酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸及び無水トリメリット酸等の芳香族多塩基酸並びにそれらの無水物、無水ヒドロフタル酸及びジメチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族多塩基酸並びにそれらの無水物等が挙げられる。
【0103】
また、該ポリオール、該ポリエステルポリオール(b)などの水酸基末端化合物を出発物質としてε−カプロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトンなどのラクトン環を持つモノマーの開環付加重合によって得られるポリエステルポリオールもポリエステルポリオール(b)の例として挙げられる。
【0104】
該ポリカーボネートジオール(b)としては、1,6ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオールなどのジオールを原料にしたポリカーボネートジオールが挙げられる。
【0105】
該ポリエーテルポリオール(b)としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールFなどを出発物質として、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン、ブチレンオキサイドを付加させたポリエーテルポリオールが挙げられる。
【0106】
該ブタジエンジオール(b)としては、下記一般式:
【0107】
【化24】

【0108】
(式中、k=0.2、l=0.2、m=0.6である。nは正の整数を示す。)
で表わされるポリブタジエンジオールPoly bd R−15HT、R−45T(出光興産社製)や、ポリイソプレンジオールPoly ip(出光興産社製)や、下記一般式:
【0109】
【化25】

【0110】
(式中、nは正の整数を示す。)
で表わされるα、ω―ポリブタジエングリコールG−1000、G−2000、G−3000(日本曹達社製)などが挙げられる。
【0111】
該ロジン骨格又は水添ロジン骨格を有する化合物のポリマージオール(b)としては、パインクリスタルD−6011、Dー6240(荒川化学工業社製)が挙げられる。
【0112】
該(b)としては、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートジオール及びエーテルポリオール等の油脂由来のアルキル基を有するジオール、ブタジエンジオール等の炭素数4以上のアルキル基を有するジオールが挙げられる。
【0113】
該(b)としては、炭素数6以上のアルキル基又はアルケニル基を有するポリオール(b)として、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール等の分子鎖の両末端に水酸基を有するジオール類;側鎖としてエステル基を介して炭素数6以上のアルキル基又はアルケニル基を有するジオール類、例えば、下記一般式(9):
【0114】
【化26】

【0115】
(一般式(9)中、Rは、炭素数6以上のアルキル基又はアルケニル基である。)
で表わされるジオール;側鎖としてエーテル基を介して炭素数6以上のアルキル基又はアルケニル基を有するジオール類、例えば、下記一般式(10):
【0116】
【化27】

【0117】
(一般式(10)中、Rは、炭素数6以上のアルキル基又はアルケニル基である。)
で表わされるジオールが挙げられる。
【0118】
該(b)としては、下記一般式(12):
【化28】


(一般式(12)中、vは4〜27である。)
で表わされるジオール類が挙げられ、このうち、vが11、17、21のものが好ましい。
【0119】
該(b)としては、前記一般式(5)で表わされる水酸基又は活性水素を有する化合物が挙げられる。そして、該(b)のうち、前記一般式(5)で表わされる水酸基又は活性水素を有する化合物が、好ましい。
【0120】
該(c)としては、活性エネルギー線硬化性を有するビニル基又は(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する化合物が挙げられる。
【0121】
該ビニル基及び水酸基を有する化合物(c)として、モノヒドロキシエチルビニルエーテル、モノヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノヒドロキシロビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル等が挙げられる。
【0122】
該(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する化合物(c)として、モノヒドロキシアクリルメタクリレート、モノヒドロキシトリアクリレート、モノヒドロキシペンタアクリレートや、ジヒドロキシモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
また、これらにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン又はε−カプロラクトンを付加重合した化合物等であっても良い。
【0123】
該(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する化合物(c)に係る該モノヒドロキシアクリルメタクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のモノヒドロキシモノ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ライトエステルG−201P(共栄社化学製)などが挙げられる。
【0124】
該(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する化合物(c)に係る該モノヒドロキシトリアクリレートとしては、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどが挙げられる。
【0125】
該(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する化合物(c)に係る該モノヒドロキシペンタアクリレートとしては、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートなどが挙げられる。
【0126】
該(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する化合物(c)に係る該ジヒドロキシモノ(メタ)アクリレートとしては、グリセリンモノ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0127】
更には、該(c)としては、(メタ)アクリロイル基とイソシアネート基を有する化合物に40℃以下の低温でジエタノールアミン、ジプロパノールアミンなどのジアルカノールアミンを反応して得られる(メタ)アクリロイル基が1つと水酸基が2つ同一分子内にあるジオール化合物が挙げられ、これらを用いると、分子側鎖に(メタ)アクリロイル基を導入することができる。
【0128】
該(d)としては、例えば、1,6ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート及びリジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;該脂肪族ジイソシアネートの三量体;低分子トリオールと該脂肪族イソシアネートのアダクト体等の脂肪族ポリイソシアネートや、あるいは、イソホロンジイソシアネート、水添MDI、水添トリレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、イソプロピリデンシクロヘキシル−4,4’−ジイソシアネート及びノルボルネンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート;該脂環族ジイソシアネートの三量体;低分子トリオールと該脂環族イソシアネートのアダクト体等の脂環族ポリイソシアネートや、あるいは、キシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネートの三量体;低分子トリオールと該芳香脂肪族イソシアネートのアダクト体等の芳香脂環族ポリイソシアネートや、あるいは、4、4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;トリフェニルメタントリイソシアネート;該芳香族ジイソシアネートの三量体;低分子トリオールと該芳香族イソシアネートのアダクト体等の芳香族ポリイソシアネートや、あるいは、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート等の3官能以上のポリイソシアネートや、あるいは、コスモネートLL(三井化学(株)製:カルボジイミド化した4,4’− ジフェニルメタンジイソシアネートと4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの混合物)や、あるいは、カルボジライトV−05(日清紡株式会社製:ポリカルボジイミド基を有する末端脂肪族ポリイソシアネート化合物)等のカルボジイミド基を有するポリイソシアネート化合物類等が挙げられる。また、これらは、1種又は2種以上の併用であってもよい。
【0129】
以下に、該酸性官能基及び該酸性官能基の中和塩基のうちの1種又は2種を有するポリオール(a1)、該塩基性官能基、該塩基性官能基の中和塩基及び該ノニオン系極性分子鎖のうちの1種又は2種以上を有するポリオール(a2)と、該低極性分子鎖(B)を有するポリオール(b)と、該活性エネルギー線硬化性不飽和基及び水酸基を有する化合物(c)と、2官能以上のイソシアネート化合物(d)との反応により、本発明の分散剤を製造する方法を例示する。
【0130】
該(a1)と、該(a2)と、該(b)と、該(c)と、該(d)のモル比を、それぞれ[a1]、[a2]、[b]、[c]、[d]とすると、以下の反応条件で、該(a1)と該(a2)と該(b)と該(d)とを反応させる第1段階の反応を行い、イソシアネート基末端のポリウレタン樹脂を得る。
第1段階の反応条件:{([a1]+[a2]+[b])/[d]}≦1
次いで、得られたイソシアネート基末端のウレタン樹脂と、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレ−ト、4−ヒドロキシブチルアクリレートなどの該(c)とを反応させる第2段階の反応を行い、活性エネルギー線性不飽和基が側鎖又は末端の本発明の分散剤を得ることができる。
また、該(b)と共に、(メタ)アクリロイル基又はビニル基などの不飽和二重結合を有するポリオールを用いることで、分子鎖中に不飽和基を導入することができる。
【0131】
該イソシアネート基末端のポリウレタン樹脂のイソシアナート基に、N,N’−ジメチルエタノールアミンのようなN,N’−ジアルカノールアミンを反応させ、末端基をアミンとすることもできる。
【0132】
また、必要に応じ、該イソシアネート基末端のポリウレタン樹脂に、ジオール、アミン、アミノアルコール等を反応させ、分子鎖を伸長させることもできる。
【0133】
上記反応は、無溶媒下又は有機溶媒中で行われる。反応溶媒としては、イソシアネート基と反応しない公知の任意の溶媒が挙げられ、水分や、塩基、強酸等の不純物が少ない溶媒が好ましい。反応温度は、40〜120℃が好ましく、反応温度が低過ぎると反応時間が長くなり、また、反応温度が高過ぎるとイソシアナートの多量化が起こる可能性がある。
【0134】
上記反応では、必要に応じて、公知の任意の触媒を用いることができる。該触媒としては、ジブチル錫ジサクシネート、ジブチル錫ジラウリレート、オクチル酸第一錫などの錫系触媒、トリエチレンジアミン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、DBU塩などのアミン系ウレタン触媒が挙げられる。
【0135】
本発明の顔料分散感光性樹脂組成物に係る該有機溶剤(III)としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メトキシブチルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン、ベンゼン、クロロホルム、ジクロロメタン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラハイドロフラン、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0136】
本発明の顔料分散感光性樹脂組成物に係る該アルカリ可溶性樹脂(IV)は、アルカリ現像の際に、アルカリ現像液に溶解する樹脂であり、通常、感光性樹脂組成物のアルカリ可溶性樹脂として用いられるものであれば、特に制限されない。該アルカリ可溶性樹脂(IV)としては、例えば、特公昭56−40329号公報に開示されているエポキシ樹脂骨格のアクリレートに酸無水物を反応させて得られる、分子中に酸性官能基を導入したアルカリ可溶性のエポキシ樹脂骨格のアクリレートが挙げられる。また、該アルカリ可溶性樹脂(IV)としては、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基を有するモノマーと、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、スチレン等との共重合体が挙げられる。
【0137】
本発明の顔料分散感光性樹脂組成物に係る該活性エネルギー線硬化性化合物(V)は、赤外線、紫外線、電子線、X線等を照射させることにより硬化する樹脂、モノマー又はオリゴマーであり、特に制限されず、例えば、通常、感光性樹脂組成物の活性エネルギー線硬化性樹脂、モノマー又はオリゴマーとして用いられる化合物が挙げられる。該活性エネルギー線硬化性化合物(V)としては、(メタ)アクリロイル基を有する樹脂、モノマー又はオリゴマー、あるいは、ビニル基を有する樹脂、モノマー又はオリゴマーが挙げられる。具体的には、該活性エネルギー線硬化性化合物(V)としては、(メタ)アクリレートオリゴマーとして、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられ、これらは、2種類以上の併用であってもよい。
【0138】
また、該活性エネルギー線硬化性化合物(V)としては、1官能(メタ)アクリレートとして、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、アミル、2−エチルヘキシル、イソオクチル、ノニル、ド デシル、ヘキサデシル、オクタデシル、シクロヘキシル、ベンジル、メトキシエチル、ブトキシエチル、フェノキシエチル、ノニルフェノキシエチル、グリシジル、ジメチルアミノエチル、ジエチルアミノエチル、イソボルニル、ジシクロペンタニル、ジシクロペンテニル、ジシクロペンテニロキシエチル等の置換基を有する(メタ)アクリレート;N−ビニルピロリドン;N−ビニルカプロラクタム;N−メチルモロホリン等が挙げられ、これらは、2種類以上の併用であってもよい。
【0139】
また、該活性エネルギー線硬化性化合物(V)としては、多官能(メタ)アクリレートとして、例えば、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5 −ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、トリシクロデカンジメタ ノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに2モルのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジ又はトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性アルキルリン酸(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは、2種類以上の併用であってもよい。
【0140】
該活性エネルギー線硬化性化合物(V)としては、(メタ)アクリレートオリゴマーとして、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられる。これらは、1種又は2種類以上の併用であってもよい。
【0141】
本発明の顔料分散感光性樹脂組成物に係る該光重合開始剤(VI)は、通常、感光性樹脂組成物に用いられる光重合開始剤であれば、特に制限されない。該光重合開始剤(VI)としては、例えば、ベンゾインイソブチルエーテル、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ベンジル、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルエトキシフォスフィンオキシド、6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モロフォリノプロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド等が好適に用いられ、さらにこれら以外の分子開裂型のものとして、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オンおよび2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン等が併用されても良いし、さらに水素引き抜き型光重合開始剤である、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、イソフタルフェノン、4−ベンゾイル−4'−メチル−ジフェニルスルフィド等も併用されても良い。
【0142】
また、該光重合開始剤(VI)に対し、増感剤として、例えば、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p−ジエチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、N,N−ジメチルベンジルアミンおよび4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等の、該アルカリ可溶性樹脂及び該活性エネルギー線硬化性化合物と付加反応を起こさないアミン類が併用されても良い。もちろん、該光重合開始剤(VI)や該増感剤は、活性エネルギー線硬化性化合物(V)への溶解性に優れ、活性エネルギー線の透過性を阻害しないものが好ましい。
【0143】
また、本発明の顔料分散感光性樹脂組成物は、更に、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、キシレン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、クリプタル樹脂、エポキシ樹脂、アルキルベンゼン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等の耐熱性又は流動性に優れた樹脂を含有することができる。
【0144】
また、本発明の顔料分散感光性樹脂組成物は、必要に応じて、分散安定性助剤、禁止剤、塗膜平滑助剤、その他添加剤を含有することができる。
【0145】
本発明の顔料分散感光性樹脂組成物は、例えば、先ず、該有機溶剤(III)に、該顔料(I)及び該顔料分散剤(II)を加え、ビーズミル等のホモジナイザー装置により混合することにより、該顔料(I)を該顔料分散剤(II)により該有機溶剤(III)に分散させた顔料分散液を調製し、次いで、該有機溶剤(III)に、該顔料分散液、該アルカリ可溶性樹脂(IV)、該活性エネルギー線硬化性化合物(V)及び該光重合開始剤(VI)を加え、必要に応じて、分散安定性助剤、禁止剤、塗膜平滑助剤、その他添加剤を加えて、混合することにより製造される。
【0146】
本発明の顔料分散感光性樹脂組成物中の該顔料(I)の含有量は、好ましくは1.5〜15重量%、特に好ましくは3〜10重量%である。また、該顔料分散剤(II)の含有量は、該顔料(I)100重量部に対して、好ましくは2〜100重量部であり、特に好ましくは5〜30重量部であり、該アルカリ可溶性樹脂(IV)の含有量は、該顔料(I)100重量部に対して、好ましくは5〜200重量部であり、該活性エネルギー線硬化性化合物(V)の含有量は、該顔料(I)100重量部に対して、好ましくは5〜20重量部であり、該光重合開始剤(VI)の含有量は、該顔料(I)100重量部に対して、好ましくは1〜15重量部、特に好ましくは3〜12重量部である。
【0147】
本発明の顔料分散感光性樹脂組成物は、フォトリソグラフィ法により硬化塗膜を形成する顔料分散感光性樹脂組成物として用いられる。特に、本発明の顔料分散感光性樹脂組成物は、カラー液晶ディスプレイのカラーフィルター用のブラックマトリックスを形成させるための顔料分散感光性樹脂組成物として好適に用いられる。
【0148】
本発明の顔料分散感光性樹脂組成物を用いてブラックマトリックスを形成する方法としては、例えば、本発明の顔料分散感光性樹脂組成物を基板に塗布後、フォトリソグラフィー法により、ブラックマトリックスを形成する方法、本発明の顔料分散感光性樹脂組成物を印刷、スピンコート等により基板に塗布し、乾燥し、次いで、マスク密着、露光し、次いで、アルカリ現像して、基板上に任意の像を形成するリソグラフィー法により、ブラックマトリックスを形成する方法が挙げられる。
【0149】
本発明の顔料分散感光性樹脂組成物は、該顔料(I)の分散性が高く、アルカリ現像液による現像性が高く、且つ、耐薬品性が優れている硬化膜を与えることができる。
【0150】
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。なお、実施例及び比較例における部並びに表中の数値は、重量部を表す。
【実施例】
【0151】
<酸性カーボンブラック−1の調製>
STSA比表面積50m/g、DBP吸油量62cm/100g、平均一次粒子径が36nmのカーボンブラック100gを、オゾン処理器中に入れて、オゾン発生機(日本オゾン社製、IOT−4A6)により、発生電圧200V、オゾン発生量5mg/sの条件で2時間保持して、オゾンによる気相酸化処理を行い、酸性カーボンブラック−1(TK−1)を得た。該TK−1の酸価は3.5KOHmg/gであった。
【0152】
<酸性カーボンブラック−2の調製>
STSA比表面積50m/g、DBP吸油量62cm/100g、平均一次粒子径が36nmのカーボンブラック100gに代えて、STSA比表面積54m/g、DBP吸油量50cm/100g、平均一次粒子径が38nmのカーボンブラック100gとする以外は、酸性カーボンブラック−1の調製と同様の方法で行い、酸性カーボンブラック−2(TK−2)を得た。該TK−2の酸価は4.5KOHmg/gであった。
【0153】
<酸性カーボンブラック−3の調製>
STSA比表面積50m/g、DBP吸収量62cm/100g、平均一次粒子径が36nmのカーボンブラック100gを、濃度0.05mmol/gのペルオキソ2硫酸ナトリウム水溶液1500mlに添加して、0.12s−1、反応温度60℃の条件で、10時間撹拌混合し、液相酸化処理した。酸化処理後のカーボンブラック分散液を、限外濾過膜(旭化成社製AHP−1010、分画分子量50000)で、残存する塩を精製除去した後、ろ過し、乾燥して、酸性カーボンブラック−3(TK−3)を得た。該TK−3の酸価は9.5KOHmg/gであった。
【0154】
<カーボンブラック−4>
STSA比表面積50m/g、DBP吸収量62cm/100g、平均一次粒子径が36nmのカーボンブラックを、カーボンブラック−4(TK−4)とした。
【0155】
<酸性カーボンブラック−5の調製>
STSA比表面積50m/g、DBP吸収量62cm/100g、平均一次粒子径が36nmのカーボンブラック100gに代えて、STSA比表面積130m/g、DBP吸収量104cm/100g、平均一次粒子径が20nmのカーボンブラック100gとする以外は、酸性カーボンブラック−3の調製と同様の方法で行い、酸性カーボンブラック−5(TK−5)を得た。該TK−5の酸価は25.4KOHmg/gであった。
【0156】
<ポリウレタン分散剤の合成1>
撹拌、乾燥窒素、吹き込み管、冷却管付きのフラスコに、N−ジエタノールアミン11.2部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート250部、カレンズMOI 8.2部を、撹拌しながら25℃で加えて、40℃まで昇温し、40℃で2時間撹拌した。次いで、ライトアクリレート130A(メトキシポリオキシエチレンエーテルアクリレート:共栄社化学製、臭素価34.9Br/100g)48.6部を加え、80℃に昇温して、4時間反応させた。次いで、60℃まで冷却し、ひまし油ジオールHS−2G−150R(豊国製油製)54.2部、クラレポリエステルジオールP−2050(数平均分子量2066、株式会社クラレ製)183部、パインクリスタルD−6011(荒川化学製)25部、ジメチロールブタン酸21部、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート45部、イソホロンジイソシアネート69部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート83部を加えて、60℃で5時間反応させた。次いで、分子中に水酸基と(メタ)アクリロイル基を有するライトアクリレートG−201P(共栄社化学製)22部、N−ジメチルアミノエタノール7.9部、ジブチル錫ラウリレート0.1部、メトキノン0.3部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート167部を加え、70℃で5時間反応させて、ポリウレタン分散剤ASP−1を得た。該ASP−1は、不揮発分48.0重量%、(メタ)アクリロイル基濃度が0.47meq/g、酸価が16KOHmg/g、アミン価が9.9mg/gであった。
このとき、反応に用いた全水酸基を有する化合物中、側鎖として(A1)を有するポリオール及び側鎖として(A2)を有するポリオールは合計で51mol%、側鎖として(B)を有するポリオールは14.5mol%、側鎖として(C)を有するポリオールは、11mol%、主鎖として(B)を有するポリオールは23.5mol%であった。なお、主鎖として分子鎖Zを有するポリオールとは、重合させたときに、該分子鎖Zが、ポリウレタン樹脂の主鎖になるようなポリオールを指す。
【0157】
<ポリウレタン分散剤の合成2>
撹拌、乾燥窒素、吹き込み管、冷却管付きのフラスコに、N−ジエタノールアミン19.6部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート250部、カレンズMOI 7.6部を、撹拌しながら25℃で加えて、40℃まで昇温し、40℃で2時間撹拌した。次いで、ライトアクリレート130A(メトキシポリオキシエチレンエーテルアクリレート:共栄社化学製、臭素価34.9Br/100g)45部、ライトアクリレートNP−4EA(ノニルフェニルポリオキシエチレンエーテルアクリレート、共栄社化学製)17.7部を加え、80℃に昇温して、4時間反応させた。次いで、60℃まで冷却し、ひまし油ジオールHS−2G−150R(豊国製油製)60部、クラレポリエステルジオールP−2050(数平均分子量2066、株式会社クラレ製)163部、ジメチロールブタン酸29.1部、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート49.5部、イソホロンジイソシアネート76.4部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート83部を加えて、60℃で5時間反応させた。次いで、分子中に水酸基と(メタ)アクリロイル基を有するライトアクリレートG−201P(共栄社化学製)23.4部、N−ジメチルアミノエタノール9.1部、ジブチル錫ラウリレート0.1部、メトキノン0.3部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート167部を加え、70℃で5時間反応させて、ポリウレタン分散剤ASP−2を得た。該ASP−2は、不揮発分48.3重量%、(メタ)アクリロイル基濃度が0.49meq/g、酸価が22KOHmg/g、アミン価が11.5mg/gであった。
このとき、反応に用いた全ポリオール中、側鎖として(A1)を有するポリオール及び側鎖として(A2)を有するポリオールは合計で54.1mol%、側鎖として(B)を有するポリオールは22mol%、側鎖として(C)を有するポリオールは、9mol%、主鎖として(B)を有するポリオールは14.5mol%であった。
【0158】
<比較分散剤>
・ソルスパース44000(以下、分散剤Sとも記載する。):ルーブリゾール社製、酸価12KOHmg/g、不揮発分50%
【0159】
(実施例1〜4、比較例1〜3)
<カーボンブラック分散組成物の調製>
表1に示す量のカーボンブラックと、分散剤(固形分換算)と、t−ブチルハイドロキノン(tBHQ)と、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)とを、プライミクス社製TKホモミクサーにて、30分間プレ分散した後、1mmφジルコニアビーズを用い、ウィリー・エ・バッコーフェン社製ダイノーミルKDL型にて2時間分散させ、顔料分散液を得た(表1)。
【0160】
【表1】

【0161】
<顔料分散感光性樹脂組成物の製造>
上記で得た該顔料分散液35部、メタクリル酸/メタクリル酸メチル共重合体(25/75、Mw20000)10部、ビスフェノールA型エポキシアクリレート樹脂(Mw3000)7部、トリメチロールプロパントリアクリレート7部、イカルガキュア(R)907(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製重合開始剤)3部、9−フェニルアクリジン(新日鉄化学社製)2部、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン(保土ヶ谷化学EAB−F)1部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート35部を、プライミクス社製TKホモミクサーにて30分間プレ分散した後、井上製作所社製3本ロールミルにて2時間混練し、その後、孔径2μmのフィルターでろ過して、顔料分散感光性樹脂組成物を得た。
【0162】
<顔料分散感光性樹脂組成物の粘度及び粒径>
上記で得た顔料分散感光性樹脂組成物について、粘度と粒径を測定した。また、分散安定性を確認するために、密閉容器中40℃に保管し、4週間後にも、粘度と粒径を測定した。
粘度の測定には、E型粘度計(東機産業製、TVE−20L)を用い、温度25℃における粘度を測定した。
また、粒径の測定には、ヘテロダインレーザードップラー方式粒度分布測定装置(マイクロトラック社製 UPA model 9340)を用い、粘度調整の溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用いて、顔料分散感光性樹脂組成物中のカーボンブラック粒子凝集体の粒度分布曲線から、50%累積度数の値(体積基準)を平均粒径、99%累積度数の値(体積基準)を最大粒径として求めた。
なお、粘度が20〜50mPasのときは「○」とし、50Pasを超えたときは「×」とした。その結果を表2に示す。
【0163】
<ブラックマトリックスの形成>
上記のようにして製造した顔料分散感光性樹脂組成物を、厚さ1mmの清浄な表面を有するガラス基板上に、スリットコーターを用いて塗布した後、温度120℃2分間乾燥して、光重合性黒色組成物層を形成した。
次いで、線幅が20μm(ブラックマトリックスとなる部分の幅が20μm)のマスクを介してアイグラフィクス社製露光装置アイ・インバータ・グランデージECS−401GXにて、340J/cmの条件で紫外線照射した。その後、炭酸カリウム0.25%水溶液で、25℃60秒間スプレー現像後、オーブン中で200℃30分間ポストベークして、ブラックマトリックスを形成した。その結果を表2に示す。
【0164】
<ブラックマトリックスの評価>
・未露光部分の汚れ
未露光部現像後の汚れを光学顕微鏡で観察した。汚れが全く見られないときは「○」とし、露光部と未露光部の界面において極僅かに汚れが見られたときは「△」とし、未露光部に汚れが見られたときは「×」とした。その結果を表2に示す。
【0165】
・露光部硬化性
MEKラビング試験:UV硬化塗膜を電子天秤の上に乗せてメチルエチルケトン(MEK)を漬した綿棒で、100gの加重で押し付けながら、1秒間に1往復の速さで、20〜30mmの距離の同じ所を5往復擦り、塗膜の剥がれを観察する。
MEKラビングを5回行い、硬化塗膜が全くとれなかったときは「○」とし、表面が取れたときは「△」とし、下地まで達し取れたときは「×」とした。その結果を表2に示す。
【0166】
・黒色度
マクベス濃度計(コルモーゲン製、RD−927)を用いて透過光学的濃度(OD値)を測定し、膜厚1μm当たりの光学的濃度を求め、OD値3.5以上を「○」とし、3.5未満を「×」とした。その結果を表2に示す。
【0167】
【表2】

表2に示すように、実施例1〜4は、比較例1と同等の粘度及び平均粒径、最大粒径であり、カーボンブラックの分散剤として開発された比較例と同等の分散性を示すことがわかる。また黒色度が高いことも分散性が優れると言う査証である。実施例と比較例の未露光部の汚れを比較することによって酸性カーボンブラックと酸性の基を有する分散剤の組み合わせで、アルカリ可溶性に優れ、現像性が比較例に比べ優れていることが判る。実施例と比較例をMEKラビングで比較した露光部の硬化性は、顔料分散剤が活性エネルギー線硬化性不飽和基を持つ例では、メチルエチルケトンによって溶解、或いは膨潤する塗膜の耐性を示しており、顔料分散剤が活性エネルギー線硬化性不飽和基を持たない例に比べて優れる事が知れる。以上より、本発明はカーボンブラックの高い分散性、優れた現像性を提供できることがわかる。
比較例2は、表面酸性ではない通常のカーボンブラックを使用した例であるが、4週間後に粘度及び粒径が大きくなり、分散安定性が乏しいことがわかる。比較例3はDBP吸油量が請求項3から外れたカーボンブラックを使用した例であるが、ポリウレタン樹脂との相溶性が悪くなり、粘度上昇している。また分散性も乏しく、遮光層の平滑性が損なわるため黒色度が低くなってしまっている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料(I)と、顔料分散剤(II)と、有機溶剤(III)と、アルカリ可溶性樹脂(IV)と、活性エネルギー線硬化性化合物(V)と、光重合開始剤(VI)と、を含有し、
該顔料(I)が、酸性官能基を有する酸性カーボンブラックであり、
該顔料分散剤(II)が、(A1)酸性官能基及び酸性官能基の中和塩基のうちの1種又は2種と、(A2)塩基性官能基、塩基性官能基の中和塩基及びノニオン系極性分子鎖のうちの1種又は2種以上と、(B)低極性分子鎖と、(C)活性エネルギー線硬化性不飽和基と、を有するポリウレタン樹脂であること
を特徴とする顔料分散感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記酸性官能基を有する酸性カーボンブラックの平均一次粒子径が50nm以下、STSA比表面積が30m/g以上、DBP吸油量が80cm/100g以下、且つ、酸価が1.0〜20KOHmg/gであることを特徴とする請求項1記載の顔料分散感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記顔料分散剤(II)の前記(A1)、前記(A2)、前記(B)及び前記(C)のうちの全部又は一部が、前記ポリウレタン樹脂の側鎖であるか又は側鎖に結合していることを特徴とする請求項1又は2いずれか1項記載の顔料分散感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記顔料分散剤(II)の前記(A1)が、カルボキシル基であることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の顔料分散感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記顔料分散剤(II)の前記(A2)が、4つ以上のオキシエチレンエーテル繰り返し単位を有するポリオキシエチレンエーテル分子鎖であることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の顔料分散感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記顔料分散剤(II)が、イソシアネート化合物と、水酸基又は活性水素を有する化合物とを反応させて得られるポリウレタン樹脂であり、
該水酸基又は活性水素を有する化合物の一部が、下記一般式(1):
【化1】


(一般式(1)中、R及びRは、−C2a−OH、−C2b−COO−C2c−OH又は水素原子であり、且つ、R及びRのうちの少なくとも一方は、−C2a−OH又は−C2b−COO−C2c−OHである。aは2〜6、bは2〜3、cは2〜4であり、R及びRは同一であっても異なってもよい。Rは、下記一般式(2):
【化2】


(一般式(2)中、dは1〜4、eは5〜30である。)
で表わされるノニオン系極性分子鎖、下記一般式(3):
【化3】


(一般式(3)中、fは1〜4、gは5〜30、{h/(h+g)}<0.2である。)
で表わされるノニオン系極性分子鎖、又は下記一般式(4):
【化4】


(一般式(4)中、iは5〜30、jは0〜6である。)
で表わされるノニオン系極性分子鎖である。)
で表わされる水酸基又は活性水素を有する化合物、及び下記一般式(5):
【化5】


(一般式(5)中、R及びRは、−C2p−OH、−C2q−COO−C2r−OH又は水素原子であり、且つ、R及びRのうちの少なくとも一方は、−C2p−OH又は−C2q−COO−C2r−OHである。pは2〜6、qは2〜3、rは2〜4であり、R及びRは同一であっても異なってもよい。Rは、下記一般式(6):
【化6】


(一般式(6)中、sは5〜30である。)
で表わされる低極性分子鎖、下記一般式(7):
【化7】


(一般式(7)中、tは5〜30である。)
で表わされる低極性分子鎖、下記一般式(8):
【化8】


(一般式(8)中、uは5〜30である。)
で表わされる低極性分子鎖、又は炭素数4以上の分子単位を繰り返し単位として2個以上有するポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート若しくはポリカプロラクトン低極性分子鎖である。)
で表わされる水酸基又は活性水素を有する化合物であること
を特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の顔料分散感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記顔料分散剤(II)が、イソシアネート化合物と、水酸基又は活性水素を有する化合物とを反応させて得られるポリウレタン樹脂であり、
該水酸基又は活性水素を有する化合物のうちの2官能の水酸基又は活性水素を有する化合物の合計モル数に対する、側鎖として(A1)、(A2)、(B)又は(C)を有している2官能の水酸基又は活性水素を有する化合物の合計モル数のモル%が、20〜100モル%であること
を特徴とする請求項1〜6いずれか1項記載の顔料分散感光性樹脂組成物。

【公開番号】特開2010−37427(P2010−37427A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−201638(P2008−201638)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(000219576)東海カーボン株式会社 (155)
【Fターム(参考)】