説明

顔料分散液、その製造方法、該顔料分散液を用いた感光性着色樹脂組成物、インクジェット用インク並びに電子写真印刷用トナー、及びカラーフィルター

【課題】微細な顔料や顔料濃度が高い場合においても顔料分散安定性に優れ、生産性が高い顔料分散液及びその製造方法、顔料分散安定性に優れながら、地汚れの問題がなく、密着性に優れ、顔料濃度の高い着色層を精度良く形成可能な着色樹脂組成物、当該樹脂組成物を用いたカラーフィルターを提供する。
【解決手段】少なくとも顔料(A)、3級以下のアミンを有する重合体(B)、アミンと反応可能な低分子化合物(C)、及び分散媒(D)を混合し、重合体(B)と低分子化合物(C)とを反応させながら、前記顔料(A)を分散させる顔料分散工程を有し、重合体(B)のアミンの総数に対する、低分子化合物(C)のアミンと反応する官能基の総数の割合を10〜70%、とすることを特徴とする顔料分散液の製造方法及び当該製造方法により製造された顔料分散液である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料の分散安定性に優れた顔料分散液及びその製造方法、該顔料分散液を用いた感光性着色樹脂組成物、インクジェット用インク並びに電子写真印刷用トナー及び該感光性着色樹脂組成物を用いたカラーフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
撮影機器ではCCDなどの撮像素子において、ディスプレーではLCDやPDPにおいて、カラー画像を記録・再現するためにカラーフィルターが使用されている。カラーフィルターは、一般的に、透明基板と、透明基板上に形成され、赤、緑、青の三原色の着色パターンからなる着色層と、各着色パターンを区画するように透明基板上に形成された遮光部とを有している。
このような着色層の形成方法としては、顔料分散法、染色法、電着法、印刷法などが知られている。中でも、分光特性、耐久性、パターン形状及び精度等の観点から、平均的に優れた特性を有する顔料分散法が最も広範に採用されている。
【0003】
顔料分散法では、例えば、顔料を含有する着色層用感光性樹脂組成物を透明基板上に設け、所望のパターン形状に露光した後現像して、各色の着色層をパターン状に形成する。このように着色層を形成する場合、現像後に着色層用感光性樹脂組成物の未溶解物が残存する(以下、”地汚れ”という場合がある)ことがある。着色層用感光性樹脂組成物の未溶解部が基板上の非画素部に残存した場合には、透過率やコントラストの低下、表示不良などを引き起こすほか、パターンエッジ部に残存した場合には、ITO膜の剥離や、液晶セル化工程でのシール性劣化を起こすなど、後工程にまで影響を及ぼすような問題が生じていた。
【0004】
近年、カラーフィルターの色再現性向上のため、着色層に対しては、より高透過、且つ高濃度であることが要求されている。高濃度の着色層を形成するためには、使用する着色層用樹脂組成物中の顔料濃度を上げる必要があるが、顔料の濃度を高くすることによって顔料の分散安定性が得られ難いという問題が発生している。また、顔料の濃度を高くすることによって、感光性や溶解性などの着色層形成性に寄与する成分が相対的に減少した結果、本来有していた層形成能が不十分になり、現像後に未露光部の着色層用感光性樹脂組成物が残存し易くなるといった問題(地汚れの増加)や、現像時に着色層用感光性樹脂組成物のパターン状硬化膜の基板との密着性が不十分となるといった問題が生じている。
【0005】
基板に未露光部の感光性樹脂組成物が残る地汚れの問題を解決するために、特許文献1では、着色樹脂組成物に分子量が800以下の有機カルボン酸無水物を配合する方法が提案されている。
しかしながら、特許文献1に開示されるような方法であっても、顔料濃度が高い場合の分散安定性を良好にした上で、地汚れの発生を十分に抑制することができなかった。また、露光後の硬化物の密着性を十分に高いものとすることが難しかった。
【0006】
また近年、より高精細、高輝度、高コントラストの画面が求められており、これに対してより微細な顔料の使用が検討されている。しかしながら、より微細な顔料は不安定であるため、分散安定性が得られ難いという問題が生じている。この問題を解決するために、極性を高くした顔料分散剤の使用(例えば、特許文献2)が提案されている。しかしながらこの場合、極性が高いことにより使用可能な溶剤の制約を受け、使用範囲が限定される。また、市販の顔料分散剤は、より微細な顔料の分散安定性を得るためには、必要量が多くなる傾向があり、現像性や製膜後の密着性等に不具合を生じやすく、顔料分散安定性と層形成性とのトレードオフ関係に陥って性能向上が困難であった。
【0007】
また、顔料を均一に分散する方法として、顔料、モノマーを含む水溶液に重合開始剤を加えて重合させ、顔料含有重合体水溶液を作る方法が提案されている(特許文献3)。しかしながら、この方法を有機溶剤に適用した場合、顔料が分散された水と有機溶剤との濡れ性が異なるため、重合後の溶液において顔料が沈降しやすいという問題がある。また、水溶液から顔料含有重合体を取り出すことはコスト高につながるという問題もある。
【0008】
また、ある特定の溶剤を分散助剤として添加することにより、顔料分散安定化を図る方法が提案されている(特許文献4)。しかしながら、この分散助剤を用いた分散安定化効果には限界があった。
【0009】
その他、顔料分散液は、インクジェット用インクや電子写真印刷用トナー、筆記用具、化粧品等にも用いられ、これらの分野においても微細な顔料の分散安定性が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−292316号公報
【特許文献2】特開2004−182787号公報
【特許文献3】特開平6−289214号公報
【特許文献4】特開2008−248109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記実情に鑑み、本発明は、微細な顔料や顔料濃度が高い場合においても顔料分散安定性に優れ、生産性が高い顔料分散液及びその製造方法、顔料分散安定性に優れながら、密着性に優れ、顔料濃度の高い着色層を精度良く形成可能な感光性着色樹脂組成物、インクジェット用インク、電子写真印刷用トナー、前記感光性樹脂組成物及び/またはインクジェット用インクを用いたカラーフィルターを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、鋭意検討の結果、分散媒中で、3級以下のアミンを有する重合体(B)と、当該アミンと反応する低分子化合物(C)とを反応させながら、顔料を分散させるin situ分散法によると、予め合成した分散剤を用いた場合とは全く異なる、より高い分散性能が得られ、更に、前記重合体(B)のアミンの総数に対する、前記低分子化合物(C)のアミンと反応する官能基の総数の割合を10〜70%とすることにより、分散安定性に格段に優れた顔料分散液を製造することができることを見出し、その結果、微細な顔料や顔料濃度が高い場合においても分散液粘度が抑えられ、顔料分散安定性に優れるという知見を見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明に係る顔料分散液の製造方法は、少なくとも顔料(A)、3級以下のアミンを有する重合体(B)、アミンと反応可能な低分子化合物(C)、及び分散媒(D)を混合し、前記重合体(B)と前記低分子化合物(C)とを反応させながら、前記顔料(A)を分散させる顔料分散工程を有し、且つ、前記重合体(B)のアミンの総数に対する、前記低分子化合物(C)のアミンと反応する官能基の総数の割合を10〜70%とすることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る顔料分散液は、前記本発明に係る顔料分散液の製造方法を用いて製造されたことを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、分散媒(D)中で、顔料(A)、3級以下のアミンを有する重合体(B)、アミンと反応可能な低分子化合物(C)を、前記重合体(B)のアミンの総数に対する、前記低分子化合物(C)のアミンと反応する官能基の総数を10〜70%、の割合で混合し、前記重合体(B)と前記低分子化合物(C)とを反応させながら、前記顔料(A)を分散することにより、微細な顔料や顔料濃度が高い場合においても顔料分散安定性に優れた顔料分散液を提供することができる。また、本発明によれば、本来分散性の悪い顔料であっても分散しやすくなるため、選択できる顔料の種類の幅を広げることができ、例えば、顔料分散性、分散安定性を保ちながら、所望の発色を有する顔料や、低価格の顔料を選択することもできる。
【0015】
更に、本発明によれば、従来のものよりも顔料分散剤の濃度を低くしても良好な顔料分散安定性が得られるため、現像性がよく、地汚れが発生しにくく、密着性が良く、輝度に優れ、電圧保持率が高い等、優れた特性を持つ着色組成物を作ることができる。また、分散液や着色組成物で顔料の経時的な凝集が起こりにくく、低粘度で粘度変化が少なく、粒度の経時変化の少ない着色組成物を得ることができる。
【0016】
前記3級以下のアミンを有する重合体(B)は、ブロック共重合体であることが、顔料分散安定性に優れる点から好ましい。
【0017】
本発明に係る顔料分散液及びその製造方法においては、前記低分子化合物(C)は、下記一般式(1)〜(3)よりなる群から選択される1種以上であることが、微細な顔料や顔料濃度が高い場合においても顔料分散安定性に優れ、更に、現像性に優れたものとすることができる点から好ましい。
【0018】
【化1】

【0019】
(一般式(1)〜(3)において、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、炭素数1〜20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、ビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは−O−Rを表し、Rは、炭素数1〜20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、ビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは炭素数1〜4のアルキレン基を介した(メタ)アクリロイル基を表す。また、一般式(3)において、Xは、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を表す。)
【0020】
本発明に係る顔料分散液及びその製造方法においては、前記重合体(B)のアミン価が10〜200mgKOH/gであることが、微細な顔料や顔料濃度が高い場合においても顔料分散安定性に優れる点から好ましい。
【0021】
本発明に係る顔料分散液及びその製造方法においては、前記低分子化合物(C)の分子量が50〜400であることが、微細な顔料や顔料濃度が高い場合においても顔料分散安定性に優れる点から好ましい。
【0022】
本発明に係る感光性着色樹脂組成物は、前記本発明に係る顔料分散液と、多官能性モノマー(E)、及び光重合開始剤(F)を含有することを特徴とする。
本発明の感光性着色樹脂組成物は、前記本発明に係る顔料分散液を用いることにより、顔料分散安定性に優れながら、地汚れの問題がなく、密着性に優れ、顔料濃度の高い着色層を精度良く形成可能な感光性着色樹脂組成物とすることができ、後述する本発明のカラーフィルターの製造に好適に用いられる。
【0023】
本発明に係るインクジェット用インクは、上記顔料分散液を用いることを特徴とする。本発明に係るインクジェット用インクは、上記顔料分散液を用いることにより凝集が発生しにくいので、吐出が安定し、吐出曲がりが起きにくく、かつ保存安定性に優れ、詰まりが発生しにくい。また本発明のインクジェット用インクは、後述する本発明のカラーフィルターの製造に好適に用いられる。
【0024】
本発明に係るカラーフィルターは、前記本発明に係る感光性着色樹脂組成物又は、本発明に係るインクジェット用インクを用いて形成された着色層を有することを特徴とする。
本発明のカラーフィルターは、前記本発明の顔料分散液を含有する、前記感光性着色樹脂組成物又は、前記インクジェット用インクを用いて形成された着色層を有するものであるため、基板に対する密着性が高い着色層とすることができる。その結果、透過率やコントラストの低下、表示不良、ITO膜の剥離や、液晶セル化工程でのシール性劣化等の問題が抑制されたカラーフィルターが得られる。また、前記感光性着色樹脂組成物は顔料濃度を高くしたり、微細顔料を用いても顔料分散安定性が高いため、このような感光性着色樹脂組成物を用いて形成された着色層を有することにより、色再現性の高いものや、高精細、高輝度、高コントラストなカラーフィルターとすることが可能になる。
【0025】
本発明に係る電子写真印刷用トナーは、上記顔料分散液を用いて製造されることを特徴とする。本発明に係る電子写真印刷用トナーは、上記顔料分散液を用いて製造されるため、着色力が向上し、より高濃度化することも可能となるので高精細な画像を得ることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、微細な顔料や顔料濃度が高い場合においても顔料分散安定性に優れ、生産性の高い顔料分散液及びその製造方法、顔料分散安定性に優れながら、地汚れの問題がなく、密着性に優れ、顔料濃度の高い着色層を精度良く形成可能な感光性着色樹脂組成物、吐出が安定し、保存安定性に優れたインクジェット用インク並びに着色力が高く高精細な画像を得ることができる電子写真印刷用トナー及び色再現性が高く、高精細、高輝度、高コントラストなカラーフィルターを提供するといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のカラーフィルターの一例を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の顔料分散液及びその製造方法、感光性着色樹脂組成物及びインクジェット用インク、カラーフィルター並びに電子写真印刷用トナー、について順に説明する。なお、本発明において、顔料分散液とは、顔料と分散媒とその他必要に応じて加えられた成分からなり、顔料を分散して得られる混合物のことである。顔料分散液と、必要に応じてバインダー樹脂や感光性成分や他の硬化性成分やレベリング剤、カップリング剤等の添加剤等を混合することにより、顔料分散性の高い着色樹脂組成物を調製することができる。
本発明において(メタ)アクリル系樹脂とは、アクリル系樹脂及び/又はメタクリル系樹脂を、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及び/又はメタクリレートを、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を、意味する。
また、本発明において、「3級以下のアミンを有する重合体(B)」を単に「重合体(B)」という場合があり、また、「アミンと反応可能な低分子化合物(C)」を単に「低分子化合物(C)」という場合がある。
【0029】
I.顔料分散液及びその製造方法
本発明に係る顔料分散液の製造方法は、少なくとも顔料(A)、3級以下のアミンを有する重合体(B)、アミンと反応可能な低分子化合物(C)、及び分散媒(D)を混合し、前記重合体(B)と前記低分子化合物(C)とを反応させながら、前記顔料(A)を分散させる顔料分散工程を有し、且つ、前記重合体(B)のアミンの総数に対する、前記低分子化合物(C)のアミンと反応する官能基の総数の割合を10〜70%とすることを特徴とする。
また、本発明に係る顔料分散液は、上記製造方法により製造された顔料分散液であり、少なくとも顔料(A)、3級以下のアミンを有する重合体(B)、アミンと反応可能な低分子化合物(C)、及び分散媒(D)を混合し、前記重合体(B)と前記低分子化合物(C)とを反応させながら、前記顔料(A)を分散させる顔料分散工程を有し、且つ、前記重合体(B)のアミンに対する、前記低分子化合物(C)のアミンと反応する官能基の割合を10〜70%とすることによって得られることを特徴とする。
【0030】
本発明によれば、分散媒(D)中で、前記重合体(B)と前記低分子化合物(C)とを反応させながら、前記顔料(A)を分散させるin situ分散法により、予め合成した分散剤を用いて顔料を分散した場合とは全く異なる分散性能が得られ、更に、前記重合体(B)のアミンの総数に対する、前記低分子化合物(C)のアミンと反応する官能基の総数の割合を10〜70%とすることにより、より分散安定性に優れた顔料分散液を製造することができる。その結果、微細な顔料や顔料濃度が高い場合においても分散液粘度が抑えられ、顔料分散安定性に優れ、生産性が高い顔料分散液を提供することができる。また、分散しにくい顔料を使用して分散安定性の良い顔料分散液を得たり、分散剤添加量を相対的に減量することが出来る。
【0031】
本発明において、重合体(B)と低分子化合物(C)とを反応させながら、顔料(A)を分散させるとは、顔料(A)の顔料分散工程を開始前、開始後、または、同時に重合体(B)と低分子化合物(C)との当該反応を開始させ、当該反応が実質的に完了すると同時に、又は、当該反応が実質的に完了した後に該顔料分散工程が完了することをいう。
【0032】
前記予め合成した分散剤には、従来の市販されている顔料分散剤のほか、前記重合体(B)と前記低分子化合物(C)とを前記顔料(A)が存在しない状態で予め反応させて、前記重合体(B)と前記低分子化合物(C)反応が完了したものを顔料分散剤とした場合も含まれる。また、本発明の効果は、後述する比較例で示したように、前記重合体(B)と前記顔料(A)とを分散させた後に、前記低分子化合物(C)を添加しても得られるものではない。
【0033】
分散媒(D)中で、前記重合体(B)と前記低分子化合物(C)とを反応させながら、前記顔料(A)を分散させることにより、上述した効果を発揮する理由としては、以下のように推測される。
顔料分散剤にはアミンを有する重合体に、アミンと反応する化合物を反応させて、アミンの一部をカチオン化させた高分子分散剤が知られている。しかし前記タイプの顔料分散剤は極性が高く、自己凝集を起こしやすい性質がある。一方、顔料分散に必要な顔料分散剤の量は顔料の表面積に比例する。顔料を微細分散していくに従って顔料の表面積は増大していく。通常、顔料分散剤の量は顔料を微細化した時に安定化が図れるように調整するので、分散を開始した時点では顔料の表面積が小さく顔料分散剤は余剰状態となっており、このときに顔料分散剤は自己凝集を起こし易い。そのため、顔料分散剤の量を増加させる必要がある。このような場合、完全に顔料に吸着していない不必要な分散剤が存在するため、それらが凝集することで分散系全体の相溶性を阻害することが起こる。
それに対して、本発明によれば、分散場と反応場を同時に提供して顔料の分散を行うことにより、前記重合体(B)が前記低分子化合物(C)が顔料の近傍で反応するのでin situで発生した顔料分散剤が前記顔料(A)に、速やかにしかも効率的に吸着することができ、顔料分散剤の自己凝集が起きにくく、且つ、顔料の再凝集が起き難い理想的な分散系が得られる。
【0034】
更に、顔料近傍において前記重合体(B)と前記低分子化合物(C)からなる少量の顔料分散剤で良好な顔料分散性が得られるため、顔料に吸着していない不必要な顔料分散剤が殆ど存在しない。
また、前記重合体(B)のアミンの総数に対する、前記低分子化合物(C)のアミンと反応する官能基の総数の割合を10〜70%とすることにより、未反応の前記低分子化合物(C)がほとんど存在せず、更に、前記重合体(B)のアミン部分と、アミンと反応する低分子化合物(C)の反応物で遊離しているものがほとんど存在しない。
その結果、分散系内の樹脂部と分散媒(溶剤)との相溶性に悪影響がなく、安定した顔料分散性が得られる。
また、本発明によれば、前記重合体(B)と前記低分子化合物(C)とを予め合成させる工程が不要なため、生産性が高く、前記低分子化合物(C)の種類と量を適宜選択することによって、例えば1種類の前記重合体(B)を用意したとしても、分散する顔料の種類や目標とする分散度合い、当該分散液を含む着色組成物の目標物性に応じて、多様に対応することが出来る効果を奏する。
【0035】
本発明の顔料分散液は、顔料(A)、3級以下のアミンを有する重合体(B)と前記重合体のアミンと反応可能な低分子化合物(C)との反応物、及び分散媒(D)を少なくとも含有するが、更に必要に応じて他の成分を含んでもよいものである。以下、用いられる各成分を説明する。
【0036】
<顔料(A)>
本発明に用いられる顔料としては、公知の顔料を用いることができる。顔料は、顔料単体(着色性化合物そのもの)であってもよいが、顔料の特性を向上させるために顔料誘導体等の添加剤を含んでいても良い。顔料誘導体とは、顔料単体の骨格にスルホン基やカルボキシル基のような酸性基、アミノ基やアルキルアミド基のような塩基性基、フタルイミドメチル基、ニトロ基、スルホンアミド基等の官能基を付与し、顔料結晶の安定化、結晶成長の抑制、顔料の分散安定性向上等、様々な機能を顔料に付加する役割を持つ化合物である。また、顔料誘導体には、上記した酸性基や塩基性基に対イオンが付いた、塩も含まれる。顔料と顔料誘導体の組合せは顔料骨格部分が共通していても良いし、異なったものであっても良い。顔料は顔料誘導体による表面処理工程を予め行ない、顔料誘導体が含まれるものを顔料と称して市販されている場合が多い。また、顔料誘導体は分散を行なう際に、分散性を向上させる分散助剤として添加することも出来る。好ましい顔料誘導体としてはピグメントレッド254、ピグメントレッド255、ピグメントレッド264、ピグメントレッド177、ピグメントイエロー138、ピグメントブルー15:6等の顔料それぞれのスルホン酸モノ置換体やスルホンアミドモノ置換体が挙げられる。
【0037】
本発明において好ましく用いられる有機顔料の具体例を下記表1および表2に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
また、好ましく用いられる無機顔料としては、酸化チタン、亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、ベンガラ、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、チタンブラック、合成鉄黒、カーボンブラック等を挙げることができる。
なお、これらの顔料は単独で用いてもよく2種以上を混合して用いても良い。
【0041】
本発明の電子写真印刷用トナーに用いられる顔料としてはカーボンブラックやチタンホワイトなどのトナーの分野で用いられている各種顔料を使用することができる。また、染料を添加することもできる。黒色着色剤としては、カーボンブラック; コバルト、ニッケル、四三酸化鉄、酸化鉄マンガン、酸化鉄亜鉛、酸化鉄ニッケル等の磁性粒子; 等を挙げることができる。カラートナー用の顔料としては、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、シアン着色剤などを使用することができる。本発明において好ましく用いられるカラートナー用の顔料の具体例を下記表3〜5に示す。
【0042】
【表3】

【0043】
【表4】

【0044】
【表5】

【0045】
また、本発明に用いられる顔料の分散平均粒径としては、後に製造されるインクジェット用インク、電子写真印刷用トナー及び着色樹脂組成物を用いてカラーフィルターの着色層を形成した場合に、所望の発色が可能なものであれば特に限定されるものではなく、例えば、カラーフィルターの着色層に用いる着色樹脂組成物の場合、通常、0.01〜0.30μmの範囲内であることが好ましく、なかでも0.01〜0.10μmの範囲内であることが好ましい。本発明の顔料分散剤を用いた着色樹脂組成物を用いてカラーフィルターの着色層を形成した場合に、輝度、コントラストに優れた着色層とすることができるからである。なお、上記顔料の分散平均粒径は、光散乱方式の粒度分布測定装置により測定することができる。
【0046】
本発明の顔料分散液に用いられる顔料の含有量としては、のちに使用される用途に応じて、所望の発色が可能なものであれば特に限定されるものではなく、用いる顔料の種類によっても異なり特に限定されない。顔料分散液の固形分中において、50〜90重量%の範囲内であることが好ましく、なかでも60〜80重量%の範囲内であることが好ましい。上記顔料の含有量が、上記範囲より多くても少なくても、分散液の粘度の安定性を欠いたり、また分散粒径が適切な範囲でないものになる可能性があるからである。また、本発明において固形分とは、分散媒を除く全ての成分が含まれ、液状の化合物等も固形分に含まれる。顔料の他に顔料誘導体を含有する場合は、顔料と顔料誘導体の合計が上記範囲内にあることが好ましい。
【0047】
<3級以下のアミンを有する重合体(B)>
3級以下のアミンを有する重合体(B)(以下単に、重合体(B)と記載する場合がある)とは、少なくとも3級アミン、2級アミン及び1級アミンよりなる群から選択される1種以上のアミンの繰り返し単位を、少なくとも一部に有する重合体をいう。
【0048】
前記重合体(B)を用いることにより、分散安定性が向上する理由は以下のように推測される。
前記重合体(B)中のアミノ基は、下記化学式(1)の例に示されるように前記低分子化合物(C)と反応しカチオン化する。分子内の複数のアミノ基がカチオン化した場合、顔料の極性基とカチオン化されたアミノ基の電気的な相互作用により、前記重合体(B)と前記低分子化合物(C)の反応物である、in situで発生した顔料分散剤が顔料表面に吸着しやすくなり、顔料の分散安定性が向上するものと考えられる。さらに、前記重合体(B)中のアミンの総数に対する、前記低分子化合物(C)のアミンと反応する官能基の総数の割合を10〜70%、より好ましくは20〜50%とすることにより顔料の極性基との相互作用がより大きくなる。その結果、分散性安定性は向上し、分散性が優れたものとなる。アミンの総数とは前記重合体(B)中のアミノ基の数とアミノ基由来の官能基の数の総和をいう。
前記重合体(B)のアミンに対する、前記低分子化合物(C)のアミンと反応する官能基の割合が前記下限以下では吸着部位が少なすぎて吸着能力が不足し分散性が悪くなる、同じく前記上限以上では、カチオン化アミンが多く存在することによって隣り合うカチオン化アミンの強い反発が生じ、顔料がかえって吸着しにくくなり分散性が悪くなるものと考えられる。
【0049】
【化2】

【0050】
3級以下のアミンを有する重合体(B)の主鎖構造としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂等が挙げられる。中でも、(メタ)アクリル系樹脂が好ましい。
【0051】
3級以下のアミンを有する重合体(B)は、3級アミン、2級アミン、及び1級アミンよりなる群から選択される1種以上のアミンを繰り返し単位として有する重合体で、特に3級アミンを繰り返し単位として有する重合体が好ましい。3級アミンを有する重合体(B)は、他の樹脂(例えばアルカリ可溶性のアクリル系樹脂やエポキシ樹脂等)との反応性が低く、ゲル化等の原因になりにくく、また、重重合体(B)と前記低分子化合物(C)とを反応させながら、顔料(A)を分散させた時に分散性が優れるからである。アミンの重合体における位置関係は主鎖、側鎖、重合体末端、いずれにも限定されない。また、前記重合体(B)の構造は特に限定されないが、分散安定性の点からブロック共重合体であることが好ましい。
【0052】
さらに、繰り返し単位としてアミンを有さないAブロックと、繰り返し単位としてアミンを有するBブロックを有する、ABブロック共重合体あるいはABAブロック共重合体であることが好ましく、ABブロック共重合体であることが特に好ましい。
以下、前記重合体(B)がブロック共重合体である場合のA、B各ブロックについて説明する。
【0053】
前記繰り返し単位としてアミンを有さないAブロックとは、顔料分散剤として用いたとき、親溶媒性を有する部位である。
前記Aブロックは親溶媒性の部分で、アミノ基等の窒素原子含有官能基を有さず、下記エチレン性不飽和二重結合を持つ単量体と共重合する単量体、もしくはプレポリマーであれば、特に制限がなく、構成単位として好ましく用いることが出来る。例えば、スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系モノマー;酢酸ビニル;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸カプロラクトンエチル、(メタ)アクリル酸バレロラクトンエチル、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;等を共重合した、ブロック重合体であることが好ましい。
中でも、分散性が優れる点で、繰り返し単位としてメチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートがより好ましく用いられる。
【0054】
前記繰り返し単位としてアミンを有するBブロックとは、顔料吸着性を持つ部位である。
前記Bブロックの主鎖構造としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂等が挙げられる。中でも、(メタ)アクリル系樹脂が好ましい。
【0055】
前記Bブロックのアミン部分の構造は特に限定されないが、好適なものとしては、例えば、−NHR、−NR’R”があり、R、R’R”は置換基を有してもよいアルキル基、アリル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基などが挙げられる。好適なものとしては、例えば、―NR’R”であって、R’R”がアルキル基、アリール基、アラルキル基であり、さらに好適なものとしてはR’R”がアルキル基、具体的には例えばメチル基、エチル基(R’及びR”は同一であっても異なっていても良い)などが挙げられる。これらを含む好ましい繰り返し単位としては、例えば下記式で表される。
【0056】
【化3】

【0057】
[一般式(4)中、Rは水素原子又はメチル基、R及びR8’は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基、Aは、それぞれ独立に炭素数1〜8のアルキレン基、−[CH(R)−CH(R10)−O]x−CH(R)−CH(R10)−又は[(CH)y−O]z−(CH)y−で示される2価の基であり、R及びR10は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。
mは1〜200の整数、x及びzは1〜18の整数、yは1〜5の整数を示す。]
【0058】
アミンを有する繰り返し単位としてはジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートが好適に用いられる。
【0059】
Bブロック中、アミンを有さない繰り返し単位を含まないのが分散安定性を確保する上でもっとも好ましいが、所望の分散安定性が得られる範囲内でアミンを有さない繰り返し単位を含むことが出来る。Bブロック中、アミンを有さない繰り返し単位の割合は、0重量%〜40重量%が好ましく、0重量%〜20重量%がさらに好ましく、0重量%が最も好ましい。
【0060】
重合体(B)中の3級以下のアミン含有量としては、重合体(B)のアミン価が10〜200mgKOH/gとなる範囲であることが好ましく、更に10〜190mgKOH/gとなる範囲、より更に30〜170mgKOH/gとなる範囲であることが好ましい。重合体(B)のアミン価が上記範囲外の場合には、分散液の保存安定性が低下する恐れがある。なお、上記アミン価としては、JIS−K7237により求めることができる。
【0061】
前記3級以下のアミンを有する重合体(B)の重量平均分子量は、3,000〜70,000であることが好ましく、更に4,000〜60,000であることが好ましく、より更に5,000〜50,000であることが好ましく、5,000〜20,000であることがもっとも好ましい。前記重合体(B)の重量平均分子量が3,000未満の場合には、顔料分散性の安定性が低下する恐れがある。一方、前記重合体(B)の重量平均分子量が70,000を超える場合には、地汚れが発生したり、現像性が低下したり、分散媒との相溶性が低下する恐れがある。ここで、重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン換算値として求めることができる。
【0062】
3級以下のアミンを有する重合体(B)ば、好ましくはリビング重合法にて作成される。リビング重合法は公知のいずれの方法を用いても良く、アニオンリビング重合法、カチオンリビング重合法、ラジカルリビング重合法のいずれかを用いて作製することができる。
【0063】
3級以下のアミンを有する重合体(B)は、市販の顔料分散剤から適宜選択して用いてもよい。アミン部分が全てカチオン化していない顔料分散剤が好ましいが、アミン部分の一部がカチオン化しているものであっても使用することが出来る。アミンの一部がカチオン化している重合体を用いる場合は、後述するアミンと反応可能な低分子化合物(C)の配合量を調整し、当該重合体と、低分子化合物(C)とが反応を終えたときに、当該重合体のアミノ基およびアミノ基由来の官能基の総数と、カチオン化したアミノ基の総数の比が10%〜70%となっていればよい。市販の顔料分散剤としては、例えば、具体的な商品名として、BASF EFKA−4300, BASF EFKA−4330(以上、BASFジャパン社製)、Disperbyk161, Disperbyk162, Disperbyk 182, Disperbyk2001, BYK−LPN6919, BYK−LPN21116(以上、ビックケミー社製)、SOLSPERSE32000、SOLSPERSE33000(以上、ルーブリゾール社製)、アジスパーPB821、アジスパーPB822、アジスパーPB827(以上、味の素ファインテクノ(株)製)等を挙げることができる。
【0064】
3級以下のアミンを有する重合体(B)の配合量は、顔料を均一に分散することができれば特に限定されるものではないが、上記顔料100重量部に対して、5〜90重量部であることが好ましく、更に10〜70重量部であることが、顔料分散安定性の点から好ましい。上記3級以下のアミンを有する重合体(B)の配合量が、上記範囲より小さいと、上記顔料を均一に分散することが困難になり、上記範囲より大きいと、上記感光性着色樹脂組成物とした時に現像性が低下したり、地汚れが発生する恐れがあるからである。本発明によれば、顔料分散剤に相当する3級以下のアミンを有する重合体(B)の配合量を少なくすることができるので、上記顔料100重量部に対して、20〜50重量部と少量であっても、好適に用いられる。
【0065】
なお、3級以下のアミンを有する重合体(B)の反応物としては、典型的には、後述する低分子化合物(C)との反応物が挙げられる。
【0066】
<重合体のアミンと反応可能な低分子化合物(C)>
重合体のアミンと反応可能な低分子化合物(C)とは、分散媒中で組み合わせて用いる前記重合体(B)が有するアミンと反応可能な官能基を有する低分子化合物である。アミンと反応可能な低分子化合物としては、例えば、炭酸、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、硫酸、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アリール、ハロゲン化アリル、硫酸ジアルキル、アルキル又はアリールスルホン酸メチル類、炭酸エステル、リン酸エステル等が挙げられる。
【0067】
前記重合体のアミンと反応可能な低分子化合物(C)としては、中でも、下記一般式(1)〜(3)よりなる群から選択される1種以上であることが好ましい。このような化合物群から選択される化合物を用いる場合には、分散安定性に優れ、さらに現像性も優れるというメリットがある。
【0068】
【化4】

【0069】
(一般式(1)〜(3)において、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、炭素数1〜20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、ビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは−O−Rを表し、Rは、炭素数1〜20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、ビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは炭素数1〜4のアルキレン基を介した(メタ)アクリロイル基を表す。また、一般式(3)において、Xは、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を表す。)
【0070】
〜Rにおける炭素数1〜20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基としては、直鎖又は分岐鎖のいずれでも良く、また、環状構造を含んでいても良く、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、テトラデシル基、オクタデシル基などが挙げられる。好ましくは、炭素数1〜15の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基が挙げられ、更に好ましくは炭素数1〜8の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基が挙げられる。
【0071】
また、鋭意検討の結果、アミンと反応可能な官能基の構造の異なる低分子化合物(C)の分子量は、50〜400であることが好ましく、更に100〜350であることが好ましく、より更に100〜330であることが好ましいことを見出した。
【0072】
前記重合体のアミンと反応可能な低分子化合物(C)としては、具体的には例えば、メチルクロライド、メチルブロマイド、エチルクロライド、エチルブロマイド、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、n−ブチルクロライド、ヘキシルクロライド、オクチルクロライド、ドデシルクロライド、テトラデシルクロライド、ヘキサデシルクロライド、フェネチルクロライド、ベンジルクロライド、ベンジルブロマイド、ベンジルヨーダイド、クロロベンゼン、アリルクロライド、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジ−n−プロピル、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジ−n−プロピル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、メタンスルホン酸メチル、p−トルエンスルホン酸メチル、モノブチルリン酸、ジブチルリン酸、メチルリン酸、ジベンジルリン酸、ジフェニルリン酸、フェニルホスフィン酸、フェニルホスホン酸、ジメタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートなどが挙げられる。
好ましくはベンジルクロライド、p−トルエンスルホン酸メチル、ジブチルリン酸、フェニルホスフィン酸、フェニルホスホン酸、ジメタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、ジブチルリン酸が挙げられる。分散安定性が特に優れるからである。
【0073】
前記重合体のアミンと反応可能な低分子化合物(C)の配合量は、前記重合体(B)のアミンの総数に対する、前記低分子化合物(C)のアミンと反応する官能基の総数の割合は10〜70%が好ましく、20〜50%がより好ましい。前記重合体(B)のアミンの総数に対する、前記低分子化合物(C)のアミンと反応する官能基の総数の割合とは、前記重合体(B)中のアミノ基およびアミノ基由来の官能基の総数に対する、前記低分子化合物(C)のアミンと反応する官能基の総数の比率を言う。
【0074】
なお、前記低分子化合物(C)の反応物としては、典型的には、前記重合体(B)との反応物が挙げられる。
【0075】
<分散媒(D)>
本発明に係る顔料分散液には、顔料を分散させるために分散媒が含まれる。
本発明に用いられる分散媒としては溶剤と重合性単量体を挙げることができる。
上記溶剤は、例えば、後述する感光性着色組成物、インクジェット用インク等の分散媒として好ましく用いられ、また、上記重合性単量体は、例えば、後述する電子写真印刷用トナー、感光性インクジェット用インク等の分散媒として好ましく用いられる。
【0076】
本発明に用いられる溶剤としては、本発明に用いられる各成分とは反応せず、これらを溶解もしくは均一に分散可能な溶剤であれば良く、特に限定されない。具体的には、シクロヘキシルアセテート;メトキシブチルアセテート(MBA);エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のジエチレングリコールモノアルキルエーテル類;ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート等のジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールジメチルエーテル等の他のエーテル類;シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等のケトン類;2−ヒドロキシプロピオン酸エチル等の乳酸アルキルエステル類;3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、ぎ酸n−アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸n−ブチル、酪酸エチル、酪酸イソプロピル、酪酸n−ブチル、ピルビン酸エチル等の他のエステル類;γ−ブチロラクトン、3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート等を挙げることができる。これらの溶剤は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0077】
本発明に用いられる重合性単量体としては本発明に用いられる各成分とは反応せず、これらを溶解もしくは均一に分散可能な重合性単量体であれば良く、特に限定されない。粘度としては200mPa・s以下が好ましく、50mPa・s以下がより好ましく、10mPa・s以下がさらに好ましい。
好ましい例としては、モノビニル単量体、(メタ)アクリレート類、モノオレフィン単量体を挙げることができ、具体的には、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルイミダゾール、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アリルグリシジルエーテル、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−メチルフェニルマレイミド、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エチレン、プロピレン、ブチレン等を挙げることができる。これらの重合性単量体は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0078】
本発明に係る顔料分散液は、以上のような分散媒を、当該分散媒を含む顔料分散液の全量に対して、通常は60〜85重量%の割合で用いて調製する。分散媒が少なすぎると、粘度が上昇し、顔料分散性が低下しやすい。また、分散媒が多すぎると、顔料濃度が低下し、後に製造される着色樹脂組成物を調製後、目標とする色度座標に達成することが困難な場合がある。
【0079】
<その他の成分>
本発明の顔料分散液は、必要に応じて本発明の目的を妨げない範囲において、その他の成分を含んでいても良い。たとえば、その後の着色樹脂組成物を調製する際に、着色樹脂組成物を構成する感光性組成物と前記顔料分散液が相溶しやすくするためのポリマー(バインダー樹脂)を含んでいても良い。このようなポリマーは選択により、顔料分散補助樹脂としても機能する。また、ポリマーの選択により、後述するインクジェット用インク、電子写真印刷用トナー、カラーフィルター用の他、筆記用インクや化粧品に適した顔料分散剤を調整することができる。
【0080】
その他、必要に応じて本発明の目的を妨げない範囲において、濡れ性向上のための界面活性剤、密着性向上のためのシランカップリング剤、消泡剤、ハジキ防止剤、酸化防止剤、凝集防止剤、紫外線吸収剤などを添加することができる。
【0081】
[バインダー樹脂]
本発明に用いられるバインダー樹脂としては、特に限定されるものではない。カラーフィルターの製造に用いる場合は、耐熱性および、製造工程において使用される有機溶剤への耐性を有する樹脂であることが好ましい。具体的には、エポキシ系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などの感光性または非感光性の樹脂を挙げることができる。
【0082】
上述したなかでも、特に好ましい樹脂としては、カルボキシル基等の酸性官能基を有するアルカリ可溶性樹脂を挙げることができる。カルボキシル基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、カルボキシル基含有不飽和単量体と、他の共重合可能なエチレン性不飽和単量体との共重合体が好ましく、さらに分子内にエポキシ基と、エチレン性不飽和基とを併せ持つ化合物、例えばグリシジル(メタ)アクリレートなどを付加させ、側鎖にエチレン性不飽和基を導入したものも好ましい。
【0083】
カルボキシル基不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、フタル酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等が好ましく、(メタ)アクリル酸が特に好ましい。なお、カルボキシル基含有不飽和単量体は、単独もしくは数種類を組み合わせることができる。
【0084】
エチレン性不飽和単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルエチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ベンジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシル(メタ)エチルアクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート等、および、これらのマクロモノマー類;N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−メチルフェニルマレイミド等のN置換マレイミド類等、N−ビニルピロリドン等を挙げることができる。なお、エチレン性不飽和単量体は、単独もしくは数種類を組み合わせることができる。
【0085】
バインダー樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、3,000〜30,000であることが好ましく、更に5,000〜25,000であることが、現像性、及び密着性の点から好ましい。
【0086】
上記バインダー樹脂を用いる場合の含有量は、固形分の100重量部当り、通常、1〜60重量部の範囲内であることが好ましく、中でも5〜40重量部の範囲内であることが好ましい。上記範囲より少ないと、後述の感光性着色樹脂組成物とした時に硬化性が不十分となり、良好なパターンを形成できない恐れがあるからである。また、上記範囲より多いと、後述の感光性着色樹脂組成物とした時に現像性が悪化したり、地汚れが発生しやすくなる恐れがあるからである。
【0087】
<顔料分散液の製造方法>
本発明に係る顔料分散液の製造方法は、少なくとも顔料(A)、3級以下のアミンを有する重合体(B)、アミンと反応可能な低分子化合物(C)、及び分散媒(D)を混合し、前記重合体(B)と前記低分子化合物(C)とを反応させながら、前記顔料(A)を分散させる顔料分散工程を有し、前記重合体(B)のアミンの総数に対する、前記低分子化合物(C)のアミンと反応する官能基の総数の割合を10〜70%とすることを特徴とする。
【0088】
分散媒(D)中で、3級以下のアミンを有する重合体(B)と当該アミンと反応する低分子化合物(C)とを反応させながら、前記顔料(A)を分散させた上記本発明に係る顔料分散液を含有することにより、上述した効果を発揮する理由としては、以下のように推測される。
従来の方法では顔料に対する顔料分散剤の吸着効率が悪いため、十分な分散性を得るためには顔料分散剤の添加量を多くする必要があった。顔料分散剤は現像性能、基材密着性能を殆ど持たないため、顔料分散剤の増加は地汚れの発生、密着性の低下を招いていた。
それに対し本発明によれば、顔料分散剤量は必要最小限のため、現像性能、基材密着性能に対し、悪影響が起き難い。また、分散剤の量が減ることにより硬化成分を増やすことができ、硬化性、密着性を上げることができる。さらに、3級以下のアミンを有する重合体(B)と反応させる低分子化合物(C)の構造により、前記重合体(B)に現像性能、基材密着性能等の任意の性能を付加することが可能なため、良好な分散性能を保持しながら目的に応じた様々な性能の分散液を得ることが可能である。
【0089】
更に、前記繰り返し単位として3級以下アミンを有する重合体(B)のアミンの総数に対する、アミンと反応する低分子化合物(C)のアミンと反応する官能基の総数の割合を10〜70%、より好ましくは20〜50%とすることにより、分散安定性に優れた顔料分散液を製造することができる。分散時にアミンと反応する低分子化合物を添加して反応させれば、予めアミンの一部分が反応(カチオン化)している分散剤を用いてもよく、重合体のアミン部分と、予め反応しているアミン部分及び分散時に反応させたアミン部分の総和との比率が10〜70%、より好ましくは20〜50%であれば分散安定性に優れた顔料分散液を製造することができる。
【0090】
本発明の製造方法により製造された顔料分散液は、良好な顔料分散安定性が得られる。
以下、本発明の顔料分散液の製造方法について詳しく説明する。
【0091】
まず、顔料(A)、3級以下アミンを有する重合体(B)、アミンと反応可能な低分子化合物(C)、分散媒(D)及び、必要に応じてバインダー樹脂等のその他の成分を準備する。このとき、3級以下アミンを有する重合体(B)のアミンの総数に対する、アミンと反応可能な低分子化合物(C)のアミンと反応する官能基の総数の割合が10〜70%となるように調整しておくことが好ましい。
【0092】
次に、上記準備した各成分を混合する混合工程について説明する。
混合の手順は、特に限定されず、分散媒(D)に1成分ずつを配合し混合してもよく、分散媒(D)に全ての成分を配合した後に混合してもよい。また、少なくとも分散媒(D)に顔料(A)を配合した段階で、他の全ての成分を加える前に分散を開始し、分散中に残りの成分を加えても良く、分散完了前に、または、分散完了と同時に、前記重合体(B)と前記低分子化合物(C)の反応が実質的に完了していればよい。
【0093】
各成分を分散媒(D)に配合する順番は、特に限定されず、任意の順番で配合すればよく、各成分を分割して配合、添加してもよい。
また、例えば、予め、前記重合体(B)のみを配合した分散媒(D)や、前記低分子化合物(C)のみを配合した分散媒(D)等のように単一成分のみを配合した分散媒を準備し、これらを混ぜ合わせることにより、配合し、混合することもできる。
【0094】
低分子化合物(C)は、上記の混合工程において、全量を混合しても、一部を混合してもよく、また、上記の混合工程では加えず、分散開始後に全量を添加してもよい。これらの場合、残りの低分子化合物(C)は、後述する顔料分散工程において分割して、または全量を添加することができる。分散完了前に、または、分散完了と同時に、前記重合体(B)と前記低分子化合物(C)の反応が実質的に完了していればよい。
分散が進み、顔料が微細化するに従って凝集や、これに伴う分散液の高粘度化が起きやすくなるので、残りの低分子化合物(C)を加えるタイミングは本発明の効果を奏する範囲で調整する。
【0095】
前記重合体(B)と前記低分子化合物(C)とが反応を開始するタイミングは、用いる低分子化合物(C)の種類によって異なり、混合と同時に反応を開始するものや、加熱により反応を開始するもの等がある。
反応を開始するために加熱を要する場合、その加熱の方法は特に限定されないが、後述する顔料分散工程の際に発生する熱によっても、反応を開始することができる。
【0096】
顔料分散工程における、顔料分散方法は特に限定されず、種々の分散機を用いて顔料を分散することができる。分散処理を行うための分散機としては、2本ロール、3本ロール等のロールミル、振動ボールミル等のボールミル、ペイントコンディショナー、高圧分散機、超音波分散機、連続ディスク型ビーズミル、連続アニュラー型ビーズミル等のビーズミルが挙げられる。ビーズミルの好ましい分散条件として、使用するビーズ径は0.03〜3.00mmが好ましく、より好ましくは0.05〜2.0mmである。また、上記分散方法を用いる前に、ディゾルバー等で予備分散を行ってもよい。
【0097】
顔料分散工程は、前記反応が開始する前に開始してもよいし、前記反応が開始してから前記反応が実質的に完了するまでの間に開始してもよい。その開始のタイミングは特に限定されないが、前記反応が開始してから、できるだけ時間をあけずに当該顔料分散工程を開始するのが、顔料分散剤の自己凝集を抑制できる点から好ましい。
【0098】
一度に製造する顔料分散液の量が多い場合は、特にタイムラグが発生しやすいが、この場合であっても、前記顔料分散工程は、前記反応が実質的に開始してから6時間以内に開始することが好ましく、2時間以内に開始することが更に好ましく、30分以内に開始することが特に好ましい。
顔料分散時間は、用いる分散機や、製造量等によって適宜調整されるものであり、特に限定されないが、通常1時間〜15時間程度行えばよい。
【0099】
好ましい製造の手順としては、分散媒に重合体(B)を配合、混合した後、低分子化合物(C)と顔料を加えてから、ディゾルバー等で予備分散し、さらにビーズミルで分散を行なう方法が挙げられる。また、バインダー樹脂を上記いずれかの段階でも、好ましく添加することができる。
【0100】
本発明の顔料分散液は、後述するカラーフィルター用感光性着色樹脂組成物の予備調製用の他、様々な用途に用いられ、感光性成分が不要な着色樹脂組成物、又は熱硬化性着色樹脂組成物の予備調製用としても用いることができる。他の用途としては、例えば、カラーフィルター作製以外に用いられる感光性樹脂組成物、インクジェット用インク、電子写真印刷用トナー、筆記用インク、化粧品などが挙げられる。
【0101】
II.感光性着色樹脂組成物
本発明に係る感光性着色樹脂組成物は、上記本発明に係る顔料分散液と、多官能性モノマー(E)、及び光重合開始剤(F)を含有することを特徴とする。顔料分散液の分散媒としては溶剤が用いられる。本発明によれば、上記本発明に係る顔料分散液を含有する樹脂組成物を用いることにより、顔料分散安定性に優れながら、地汚れの問題がなく、密着性に優れ、顔料濃度の高い着色層を精度良く形成可能な着色樹脂組成物とすることができる。本発明の感光性着色樹脂組成物は、後述するカラーフィルターの製造に好適に用いることができる。
【0102】
以下、本発明の感光性着色樹脂組成物を後述するカラーフィルターの製造に用いる場合について説明する。
カラーフィルター用感光性樹脂組成物は、上記本発明に係る顔料分散液、並びに、多官能性モノマー(E)、及び光重合開始剤(F)を少なくとも含有するが、更に必要に応じて他の成分を含んでもよいものである。以下、用いられる各成分を説明する。
尚、上記本発明に係る顔料分散液に含まれ得る成分については、上記顔料分散液の箇所において説明したものと同様のものを用いることができるので、ここでの説明は省略する。
【0103】
<多官能性モノマー(E)>
本発明のカラーフィルター用感光性着色樹脂組成物に含まれる多官能性モノマーとしては、重合可能なものであれば特に限定されるものではないが、通常、エチレン性不飽和二重結合を2つ以上含むものである。
このような多官能性モノマーとしては、なかでも、アクリロイル基またはメタクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0104】
上記多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、長鎖脂肪族ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、プロピレンジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、アクリル化イソシアヌレート、ビス(アクリロキシネオペンチルグリコール)アジペート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジ(メタ)アクリレート、リン酸ジ(メタ)アクリレート、亜鉛ジ(メタ)アクリレート等の二官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0105】
また、多官能(メタ)アクリレートとしては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、リン酸トリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ウレタントリ(メタ)アクリレート、エステルトリ(メタ)アクリレート、ウレタンヘキサ(メタ)アクリレート、エステルヘキサ(メタ)アクリレート、コハク酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の三官能以上の(メタ)アクリレートが挙げられる。
これらの多官能(メタ)アクリレートは、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用して使用してもよい。
【0106】
特に、本発明の感光性着色樹脂組成物に優れた光硬化性(高感度)が要求される場合には、多官能(メタ)アクリレートが、重合可能な二重結合を1分子中に2つ(二官能)以上有することが好ましく、さらに3つ(三官能)以上有することが好ましい。
【0107】
上記多官能性モノマーの含有量は、感光性着色樹脂組成物中の固形分に対して、5〜60重量%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは10〜40重量%の範囲内である。上記多官能性モノマーの含有量が少なすぎると十分に硬化が進まず、露光箇所が溶出する場合があるからである。また、上記多官能性モノマーを有する化合物の含有量が多すぎると未露光箇所でも現像できなくなる場合があるからである。
【0108】
<光重合開始剤(F)>
本発明に用いられる光重合開始剤(F)は、一般的にカラーフィルターの製造に用いられるものを使用することができる。1種に限定されず、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0109】
このような光重合開始剤としては、具体的には、紫外線のエネルギーによりフリーラジカルを発生する化合物であって、ベンゾイン、ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン誘導体またはそれらのエステルなどの誘導体;キサントン、ジエチルチオキサントンおよびイソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン誘導体;イルガキュアOXE−01、イルガキュアOXE−02(以上BASFジャパン社製)、ADEKA OPT−N−1919(旭電化製)などのオキシムエステル化合物、クロロスルフォニル、クロロメチル多核芳香族化合物、クロロメチル複素環式化合物、クロロメチルベンゾフェノン類などの含ハロゲン化合物;トリアジン類;フルオレノン類;ハロアルカン類;光還元性色素と還元剤とのレドックスカップル類;有機硫黄化合物;過酸化物などが挙げられる。
【0110】
更に、光重合開始剤としては、具体的には、ミヒラーケトン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−エチルアントラキノン、フェナントレン等の芳香族ケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル類、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン、2−(o−クロロフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール2量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール2量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2,4,5−トリアリールイミダゾール2量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メチルフェニル)イミダゾール2量体、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン、2−トリクロロメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(p−シアノスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(p−メトキシスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール等のハロメチルチアゾール化合物、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−p−メトキシスチリル−S−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(1−p−ジメチルアミノフェニル−1,3−ブタジエニル)−S−トリアジン、2−トリクロロメチル−4−アミノ−6−p−メトキシスチリル−S−トリアジン、2−(ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−S−トリアジン、2−(4−エトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−S−トリアジン、2−(4−ブトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−S−トリアジン等のハロメチル−S−トリアジン系化合物、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパノン、1,2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1, 1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、ベンジルメチルケタール、ジメチルアミノベンゾエート、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、2−n−ブトキシエチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、エタノン、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(o−アセチルオキシム)、4−ベンゾイル−メチルジフェニルサルファイド、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルフォリルニル)フェニル]−1−ブタノン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイド、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルフォリニル)−1−プロパノン、1,2−オクタジオン等が挙げられる。
【0111】
また、3級アミン構造を有する光重合開始剤を用いることができる。3級アミン構造を有する光重合開始剤は、分子内に酸素クエンチャーである3級アミン構造を有するため、光重合開始剤から発生したラジカルが酸素により失活し難く、感度を向上させることができるといった利点を有する。
上記3級アミン構造を有する光重合開始剤の市販品としては、例えば、イルガキュア907、イルガキュア369(以上、BASFジャパン製)、ハイキュアABP(川口薬品製)などが挙げられる。
【0112】
本発明に用いられる光重合開始剤の含有量としては、カラーフィルターの着色層を形成することができるものであれば良いが、本発明の感光性着色樹脂組成物の固形分中に、3〜40重量%の範囲内であることが好ましく、なかでも、5〜35重量%の範囲内であることが好ましい。上記光重合開始剤の含有量が、上記範囲より少ないと、ラジカル重合を十分に進行させることができず、硬化が不十分となり、硬化性が低下する恐れがあるからである。また、上記範囲より多いと、ラジカル発生量が多すぎてラジカル重合による高分子化が十分に起きなかったり、副反応が起こりやすく経時安定性を損なう恐れがあるからである。
【0113】
<その他の成分>
更に、カラーフィルター用感光性着色樹脂組成物には、必要に応じて、その他の成分を含有することができる。中でも、上述したバインダー樹脂のうち、カルボキシル基等の酸性官能基を有するアルカリ可溶性樹脂を含有することが現像性の点から好ましい。
【0114】
カラーフィルター用感光性着色樹脂組成物には、更に、増感剤、重合停止剤、連鎖移動剤、レベリング剤、可塑剤、界面活性剤、消泡剤、シランカップリング剤等の添加剤を含んでいても良い。
【0115】
<感光性着色樹脂組成物における配合割合>
本発明の感光性着色樹脂組成物における顔料(A)の含有量としては、本発明の感光性着色樹脂組成物を用いてカラーフィルターの着色層を形成した場合に、所望の発色が可能なものであれば特に限定されるものではなく、用いる顔料の種類によっても異なるが、上記感光性着色樹脂組成物の固形分中において、1〜70重量%の範囲内であることが好ましく、なかでも10〜60重量%の範囲内であることが好ましい。上記顔料の含有量が、上記範囲より多いと、本発明の感光性着色樹脂組成物を用いてカラーフィルターの着色層を形成した場合に、現像性が低下したり、地汚れが発生する可能性があるからである。また、上記範囲より少ないと、本発明の感光性着色樹脂組成物を用いてカラーフィルターの着色層を形成した場合に、着色層を発色が十分なものとすることができない可能性があるからである。
【0116】
本発明の感光性着色樹脂組成物における3級以下のアミンを有する重合体(B)と前記重合体のアミンと反応可能な低分子化合物(C)及び/又はそれらの反応物の含有量としては、上記本発明の顔料分散液において述べたように顔料を基準として適宜選択されるものである。目安としては、3級以下のアミンを有する重合体(B)と前記重合体のアミンと反応可能な低分子化合物(C)及び/又はそれらの反応物の合計の含有量は、感光性着色樹脂組成物の固形分中において、1重量%〜60重量%の範囲内であることが好ましく、2質量%〜30質量%の範囲内であることがより好ましく、4質量%〜20質量%の範囲内であることが特に好ましい。上記合計の含有量が、感光性着色樹脂組成物の固形分中において、1質量%未満の場合には、顔料を均一に分散することが困難になる恐れがある。一方、上記合計の含有量が、感光性着色樹脂組成物の固形分中において、60質量%を超える場合には、硬化性や現像性、輝度の低下を招く恐れがある。
【0117】
本発明の感光性着色樹脂組成物に用いられる溶剤の含有量としては、着色層を精度良く形成することができるものであれば特に限定されるものではない。通常、上記感光性着色樹脂組成物中に、65重量%〜95重量%の範囲内であることが好ましく、なかでも70重量%〜90重量%の範囲内であることが好ましい。上記溶剤の含有量が、上記範囲内であることにより、塗布性に優れたものとすることができるからである。
【0118】
本発明の感光性着色樹脂組成物に必要に応じて用いられる、アルカリ可溶性樹脂のような前記バインダー樹脂の含有量としては、上記感光性着色樹脂組成物の固形分中において、1質量%〜70質量%の範囲内であることが好ましく、5質量%〜60質量%の範囲内であることがより好ましく、10質量%〜40質量%の範囲内であることが硬化性及び現像性の点から特に好ましい。
【0119】
本発明の感光性着色樹脂組成物に用いられる、界面活性剤の含有量としては、上記感光性着色樹脂組成物の固形分中において、0.001重量%〜5重量%の範囲内であることが好ましい。
【0120】
<感光性着色樹脂組成物の製造方法>
カラーフィルター用感光性着色樹脂組成物の製造方法は、予め、上記本発明に係る顔料分散液を準備し、当該顔料分散液を用いて調製すれば、特に限定されない。当該顔料分散液に、多官能性モノマー(E)、光重合開始剤(F)、及びその他の成分を添加して、均一に混合乃至分散させても良い。或いは、多官能性モノマー(E)、光重合開始剤(F)、及びその他の成分を溶剤と混合、分散又は溶解した感光性成分溶液を調製して、準備した顔料分散液と感光性成分溶液とを混合し、必要に応じて分散処理を行うことによって、カラーフィルター用感光性着色樹脂組成物を製造しても良い。
【0121】
IV.インクジェット用インク
本発明のインクジェット用インクは、前記本発明の顔料分散液を含有することを特徴とする。前記本発明の顔料分散液を含有することにより、吐出が安定し、吐出曲がりが起こりにくく、かつ、詰まりが発生しにくいインクジェット用インクが得られる。
本発明のインクジェット用インクは、後述するカラーフィルターの製造に好適に用いることができる。
【0122】
本発明のインクジェット用インクは、上記顔料分散液をそのまま用いることができるが、必要に応じて結着樹脂やその他の添加剤が、本発明の効果を害しない範囲内において含有される。その他の添加剤としては、例えば、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。その他の添加剤は、顔料分散液の製造後、該分散液に添加するのが一般的であるが、製造時に添加してもよい。得られたインクを用いて、様々な文字やパターンを印刷することができる。
【0123】
本発明のインクジェット用インクを後述するカラーフィルターの製造に用いる場合は、上記本発明に係る顔料分散液を少なくとも含有すれば、熱硬化性インクジェット用インク、感光性インクジェット用インクのいずれのインクも使用することが出来る。
【0124】
本発明に係わる熱硬化型のインクジェット用インクを後述するカラーフィルターの製造に用いる場合は上記本発明に係る顔料分散液、熱硬化性樹脂、溶剤を少なくとも含有する。顔料分散液の分散媒は溶剤が好ましく用いられる。更に、必要に応じて、熱重合開始剤や他の成分を含んでもよい。
【0125】
上記熱硬化型のインクジェット用インクに用いられる熱硬化性樹脂としては1分子中に2個以上のエポキシ基を有する樹脂が好ましく用いられ、好ましいエポキシ基としては、グリシジル基、オキシエチレン基、エポキシシクロヘキシル基を挙げることができる。
エポキシ樹脂の好ましい重量平均分子量は3000〜20000である。
【0126】
1分子中に2個以上のエポキシ基を有する樹脂の具体例としては、ビスフェノールA 型エポキシ樹脂、ビスフェノールF 型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA 型エポキシ樹脂、ビスフェノールS 型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA 型エポキシ樹脂、ビスフェノールA 含核ポリオール型エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリオキザール型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂などを挙げることが出来、特に好ましい具体例としてはEHPE3150(ダイセル化学工業(株)製)などの脂環式エポキシ樹脂、エピコート157S70(ジャパンエポキシレジン(株)製)などのビスフェノールA型ノボラック系エポキシ樹脂を挙げることが出来る。
また、その他の1分子中に2個以上のエポキシ基を有する樹脂としては、1分子にエポキシ基とエチレン性不飽和二重結合とを有するモノマーとエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを共重合させた、重量平均分子量が5000〜20000のアクリル系共重合体を挙げることが出来る。上記1分子にエポキシ基とエチレン性不飽和二重結合とを有するモノマーとしてはグリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレートを挙げることが出来る。エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーとしては、モノ(メタ)アクリレート類を挙げることができ、更に、これらと共重合する化合物を挙げることができる。好ましい例としはシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートなどの脂環式炭化水素含有アクリレートを挙げることが出来、黄変性、耐熱性が優れる点で好ましい。
【0127】
上記熱硬化性樹脂の含有量はインクの固形分中、5重量%〜20重量%で、より好ましくは10重量%〜15重量%である。上記含有量の下限を満たさない場合は十分な熱硬化性が得られない恐れがあり、上限を超える場合は保存安定性が劣る恐れがある。
本発明の熱硬化型のインクジェット用インクには上記エポキシ樹脂とともにカラーフィルター用樹脂として用いられてきた感光性樹脂や非感光性樹脂を用いても良い。
【0128】
本発明の熱硬化型のインクジェット用インクに用いる溶剤としては分散液に用いる溶剤として挙げたものを好適に用いることが出来る、特に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ブチルカルビトールアセテートが好ましい。これら溶剤は単独でも、2種類以上を組合せて用いてもよく、インク全体に対して、60重量%〜85重量%の割合で用いる。溶剤量が下限を満たさない場合は粘度が上がりすぎたり、分散安定性が不十分となる可能性がある、上限を超える場合は顔料濃度が低すぎて所望の色を出すことが難しくなる恐れがある。
【0129】
本発明の熱硬化型のインクジェット用インクには熱重合開始剤を用いることも出来る。上記熱重合開始剤には特に制限はないが、酸無水物であることが、保存安定性がよく、発熱量が少ない点から好ましい。
酸無水物としては、多価カルボン酸無水物が挙げられ、具体的には、無水フタル酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水シトラコン酸、無水マレイン酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水ジメチルテトラヒドロフタル酸、無水ハイミック酸などの脂肪族または脂環族ジカルボン酸二無水物などの脂肪族多価カルボン酸二無水物;無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸などの芳香族多価カルボン酸無水物を挙げることができる。
上記熱重合開始剤は1種類でも2種類以上を組み合わせてもよく、熱硬化性樹脂100重量部あたり、1〜100重量部が好ましく、さらに好ましくは5〜50重量部である。上記配合量の下限に満たない場合は硬化性が不十分になることがあり、上限を超えると塗膜の基板に対する密着性が劣ることがある。
【0130】
カラーフィルターに用いる熱硬化性インクジェット用インクの製造方法は、特に限定されないが、本発明の顔料分散液に、熱硬化性樹脂、必要に応じて熱重合開始剤、及びその他の成分を添加して、均一に混合乃至分散させて好ましく製造することができる。
【0131】
本発明に係わる感光性のインクジェット用インクを後述するカラーフィルターの製造に用いる場合は、上記本発明に係る顔料分散液、並びに、上記多官能性モノマー(E)、及び上記光重合開始剤(F)を少なくとも含有するが、更に必要に応じて他の成分を含んでもよい。分散媒としては溶剤及び/または重合性単量体が用いられる。
尚、各成分は、上記顔料分散液並びに上記感光性着色樹脂組成物の項において説明したものと同様のものとすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0132】
カラーフィルターに用いられる感光性インクジェット用インク中、多官能性モノマー(E)の含有量は、インクジェット用インク中の固形分に対して、5〜60重量%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは10〜40重量%の範囲内である。上記多官能性モノマーの含有量が少なすぎると十分に硬化が進まず、露光箇所が溶出する場合があるからである。また、上記多官能性モノマーを有する化合物の含有量が多すぎると未露光箇所でも現像できなくなる場合があり、また、インクジェットヘッドにつまりが発生する場合があるからである。
【0133】
前記カラーフィルターに用いられる感光性インクジェット用インク中、光重合開始剤(F)の含有量としては、カラーフィルターの着色層を形成することができるものであれば良いが、本発明の感光性インクジェット用インクの固形分中に、3〜40重量%の範囲内であることが好ましく、なかでも、5〜35重量%の範囲内であることが好ましい。上記光重合開始剤の含有量が、上記範囲より少ないと、ラジカル重合を十分に進行させることができず、硬化が不十分となり、硬化性が低下する恐れがあるからである。また、上記範囲より多いと、ラジカル発生量が多すぎてラジカル重合による高分子化が十分に起きなかったり、副反応が起こりやすく経時安定性を損なう恐れがあるからである。
【0134】
カラーフィルターに用いる感光性インクジェット用インクの製造方法は、特に限定されない。本発明の顔料分散液に、多官能性モノマー(E)、光重合開始剤(F)、及びその他の成分を添加して、均一に混合乃至分散させても良い。或いは、多官能性モノマー(E)、光重合開始剤(F)、及びその他の成分を分散媒(D)と混合、分散又は溶解した感光性成分溶液を調製して、準備した顔料分散液と感光性成分溶液とを混合し、必要に応じて分散処理を行うことによって、感光性インクジェット用インクを製造しても良い。
【0135】
III.カラーフィルター
次に、本発明のカラーフィルターについて説明する。本発明のカラーフィルターは、上記感光性着色樹脂組成物を又はインクジェット用インクを用いて形成された着色層を有するものである。
【0136】
このような本発明のカラーフィルターについて、図を参照して説明する。図1は、本発明のカラーフィルターの一例を示す概略断面図である。図1に例示するように、カラーフィルター10は、透明基板1と、上記透明基板1上にパターン状に形成され、開口部を有する遮光部2と、上記遮光部2の開口部上に形成された着色層3とを有するものである。
ここで、上記着色層は、上記本発明の感光性着色樹脂組成物又は、上記本発明のインクジェット用インクを用いて形成されたものである。
【0137】
本発明によれば、上記本発明に係る感光性着色樹脂組成物又は、上記本発明のインクジェット用インクを用いて形成された着色層を有するものであるため、カラーフィルターを、基板に対する密着性が高い着色層とすることができる。その結果、透過率やコントラストの低下、表示不良、ITO膜の剥離や、液晶セル化工程でのシール性劣化等の問題が抑制されたカラーフィルターが得られる。また、前記感光性着色樹脂組成物又は、前記本発明のインクジェット用インクは顔料濃度を高くしたり、微細顔料を用いることができるため、このような感光性着色樹脂組成物を用いて形成された着色層を有することにより、色再現性の高いものや、高精細、高輝度、高コントラストなカラーフィルターとすることが可能になる。
以下、本発明のカラーフィルターの各構成について説明する。
【0138】
<透明基板>
本発明のカラーフィルターにおける透明基板としては、可視光に対して透明な基材であればよく、特に限定されず、一般的なカラーフィルターに用いられる透明基板を使用することができる。具体的には、石英ガラス、無アルカリガラス、合成石英板等の可撓性のない透明なリジッド材、あるいは、透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明なフレキシブル材が挙げられる。
当該透明基板の厚みは、特に限定されるものではないが、本発明のカラーフィルターの用途に応じて、例えば100μm〜1mm程度のものを使用することができる。
【0139】
<遮光部>
本発明のカラーフィルターにおける遮光部は、透明基板上にパターン状に形成されるものであって、一般的なカラーフィルターに遮光部として用いられるものと同様とすることができる。インクジェット方式により着色層を形成する場合、遮光部は、インクを所定領域に付着させるための隔壁であり、各着色層の間及び着色層形成領域の外側を取り囲むように設けられることにより、表示画像のコントラストを向上させることができる。
【0140】
遮光部は、スパッタリング法、真空蒸着法等によるクロム等の金属薄膜であっても良い。或いは、遮光部は、樹脂バインダー中にカーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子を含有させた樹脂層であってもよい。遮光性粒子を含有させた樹脂層の場合には、感光性レジストを用いて現像によりパターニングする方法、遮光性粒子を含有するインクジェットインクを用いてパターニングする方法、感光性レジストを熱転写する方法等がある。
遮光部の厚さは、金属薄膜の場合は0.1〜0.2μm程度とし、遮光性樹脂層の場合は、0.5〜2.5μm程度とする。
【0141】
<着色層>
着色層は、上記感光性着色樹脂組成物又は、上記本発明のインクジェット用インクを用いて形成されたものである。
【0142】
当該着色層の配列としては、特に限定されず、例えば、ストライプ型、モザイク型、トライアングル型、4画素配置型等の一般的な配列とすることができる。また、着色層の幅、面積等は任意に設定することができる。
前記着色層の厚みとしては、通常、1〜5μmの範囲内であり、1〜2.5μmの範囲であることが好ましい。
【0143】
本発明の感光性樹脂組成物を用いた場合の着色層の形成方法は、まず、青(B)用、緑(G)用及び赤(R)用の顔料がそれぞれ配合された前記感光性樹脂組成物を用意する。次に、透明基板上に当該感光性樹脂組成物を塗布し、感光性樹脂層を形成する。これをリソグラフィー工程により所望の形状にパターニングすることにより、単色のパターンが得られる。これを3色繰り返すことにより、着色層が得られる。
【0144】
本発明の熱硬化性のインクジェット用インクを用いた場合の着色層の形成方法は、まず、青用、緑用及び赤用の顔料がそれぞれ配合された前記インクジェット用インクを用意する。ぞして、透明基板の表面に、遮光部のパターンにより画成された各色(R、G、B)の着色層形成領域に、対応する色のインクジェット用インクをインクジェット方式によって選択的に付着させてインク層を形成する。
次に、各色のインク層を乾燥し必要に応じてプリベークした後、加熱することによりインク層が硬化して着色層が得られる。
【0145】
V.電子写真印刷用トナー
本発明の電子写真印刷用トナー(以下、単にトナーということがある)は、前記本発明の顔料分散液を用いて製造されていることを特徴とする。本発明の顔料分散液を用いることにより、着色力が高く、また、顔料濃度を従来より高いものとすることができるため、本発明の電子写真印刷用トナーを用いて作成された画像はより高精細なものとなる。
【0146】
本発明の電子写真印刷用トナーは、上記本発明に係る顔料分散液に、電荷制御剤及び離型剤を添加して製造されることが好ましい。
【0147】
前記電荷制御剤は、トナーの帯電性を向上させるために用いられる。
帯電制御剤としては、一般にトナー用の帯電制御剤として用いられているものであれば、特に限定されないが、帯電制御剤の中でも、重合性単量体との相溶性が高く、安定した帯電性(帯電安定性)をトナー粒子に付与させることができることから、正帯電性又は負帯電性の帯電制御樹脂が好ましく、さらに、正帯電性トナーを得る観点からは、正帯電性の帯電制御樹脂がより好ましく用いられる。
正帯電性の帯電制御剤としては、ニグロシン染料、4級アンモニウム塩、トリアミノトリフェニルメタン化合物及びイミダゾール化合物、並びに、好ましく用いられる帯電制御樹脂としてのポリアミン樹脂、並びに4級アンモニウム基含有共重合体、及び4級アンモニウム塩基含有共重合体等が挙げられる。
負帯電性の帯電制御剤としては、Cr、Co、Al、及びFe等の金属を含有するアゾ染料、サリチル酸金属化合物及びアルキルサリチル酸金属化合物、並びに、好ましく用いられる帯電制御樹脂としてのスルホン酸基含有共重合体、スルホン酸塩基含有共重合体、カルボン酸基含有共重合体及びカルボン酸塩基含有共重合体等が挙げられる。
本発明では、帯電制御剤を、モノビニル単量体100質量部に対して、通常、0.01〜10質量部、好ましくは0.03〜8質量部の割合で用いることが望ましい。帯電制御剤の添加量が、0.01質量部未満の場合にはカブリが発生することがある。一方、帯電制御剤の添加量が10質量部を超える場合には印字汚れが発生することがある。
【0148】
前記離型剤は、定着ロールへの付着を防止するために用いられる。
離型剤を添加することにより、定着時におけるトナーの定着ロールからの離型性を改善できる。離型剤としては、一般にトナーの離型剤として用いられるものであれば、特に制限無く用いることができる。例えば、低分子量ポリオレフィンワックスや、その変性ワックス;ホホバ等の植物系天然ワックス;パラフィン等の石油ワックス;オゾケライト等の鉱物系ワックス;フィッシャートロプシュワックス等の合成ワックス;ジペンタエリスリトールエステル等の多価アルコールエステル;等が挙げられる。トナーの保存性と低温定着性のバランスが取れることから、多価アルコールエステルが好ましい。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記離型剤は、モノビニル単量体100質量部に対して、好ましくは0.1〜30質量部用いられ、更に好ましくは1〜20質量部用いられる。
【0149】
電子写真印刷用トナーの製造方法としては、公知のものが挙げられ、特に限定されず、粉砕法、重合法をいずれも用いることができる。重合法としては、乳化重合凝集法、分散重合法、懸濁重合法及び、溶解懸濁法等が挙げられる。
【0150】
粉砕法を用いる場合は、まず本発明の顔料分散液に、電荷制御剤、離型剤及びその他の成分を添加し、混合する。混合は、例えば、ボールミル、V型混合機、ヘンシェルミキサー(:商品名)、高速ディゾルバー、インターナルミキサー、フォールバーグ等を用いて行う。次に、上記により得られた混合物を、加圧ニーダー、二軸押出混練機、ローラ等を用いて加熱しながら混練する。得られた混練物を、ハンマーミル、カッターミル、ローラミル等の粉砕機を用いて、粗粉砕する。更に、ジェットミル、高速回転式粉砕機等の粉砕機を用いて微粉砕した後、風力分級機、気流式分級機等の分級機により分級することにより所望の粒径のトナー粒子が得られる。
【0151】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0152】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。
【0153】
(アミンを有する重合体(B);重合体溶液B1の製造)
500mL丸底4口セパラブルフラスコに冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、攪拌機、温度計を装備し、テトラヒドロフラン(THF)250重量部及び開始剤のジメチルケテンメチルトリメチルシリルアセタール2.32重量部を添加用ロートを介して加え、窒素置換を充分に行った。触媒としてテトラブチルアンモニウムm−クロロベンゾエートの1モル/Lアセトニトリル溶液0.2重量部をシリンジで注入し、メタクリル酸メチル(以下、MMAということがある)93.3重量部を添加用ロートを用い、60分かけて滴下した。セパラブルフラスコを氷浴で冷却しながら、温度を40℃未満に保った。次いで、1時間後、メタクリル酸ジメチルアミノエチル(以下、DMMAということがある)40.0重量部を20分で滴下した。1時間反応後、メタノール0.5質量部を加え、反応を停止させた。得られた共重合体THF溶液はヘキサン中で再沈殿させ、濾過、真空乾燥して精製し、重合体を得た。このようにして得られたアミンを有する重合体60重量部にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PGMEAということがある)40重量部を加えて均一混合し、重合体溶液B1を得た。重合体溶液B1はRI検出器を装備した東ソー社製、HLC−8220を用い、展開溶媒をTHFとし、分子量標準ポリマーを標準ポリスチレンとして、GPCを測定し分子量分布及び質量平均分子量を求めた。また、アミン価は115mgKOH/gだった。質量平均分子量Mw:9900、数平均分子量Mn:8320、分子量分布Mw/Mnは1.19であった(MMA/DMMA質量比は7/3)。
【0154】
(重合体Bのアミンのカチオン化率の測定方法)
NMR試料管にカチオン化したアミンを有する重合体(精製物)とクロロホルム−D1NMR用をそれぞれ9質量%、91質量%で混合した溶液を1g入れ、13C−NMRスペクトルを核磁気共鳴装置(日本電子製、FT NMR、JNM−AL400)を用い、室温、積算回数10000回の条件にて測定した。得られたスペクトルデータのうち、窒素原子に隣接する炭素原子ピークとカチオン化していない窒素原子に隣接する炭素原子ピークの積分値の比率より、アミン総数に対する、カチオン化しているアミン数の比率(%)を算出し、理論的なカチオン化比率(%)と相違ないことを確認した。
この方法により求められた値をアミンのカチオン化比率という場合がある。
【0155】
(酸基含有バインダー樹脂1の製造)
ベンジルメタクリレート30gとスチレン38gとメタクリル酸18gとt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日本油脂製 パーブチルO)10gとの混合液を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート150gを入れた重合槽中に、窒素気流下100℃で、3時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間加熱することにより樹脂溶液を得た。この樹脂の重量平均分子量はポリスチレン換算で8000であった。
次に、得られた樹脂溶液に、グリシジルメタクリレート14g、トリエチルアミン0.2g、p−メトキシフェノール0.05gを加え、110℃で10時間加熱して、反応を行った。得られた酸基含有バインダー樹脂溶液は固形分40重量%、酸価75mgKOH/g、重量平均分子量はポリスチレン換算で10000であった。
【0156】
(実施例1:顔料分散液の製造)
3級以下のアミンを有する重合体(B)として重合体溶液B1(PGMEA溶液、固形分60重量%)を10.2重量部、上記酸基含有バインダー樹脂1(固形分40重量%)を6.5重量部、及び分散媒(D)としてPGMEAを69.9重量部配合し、ディゾルバーで攪拌混合して均一溶解させた。当該この溶液に、重合体のアミンと反応可能な低分子化合物(C)としてライトエステルP−2M(商品名、共栄社化学製)0.38重量部及び顔料(A)としてC.I.ピグメントレッド254を13.0重量部を加え、ディゾルバーで攪拌混合した。混合した液を0.1mmのジルコニアビーズで、ビーズミルを用いて、前記重合体(B)と前記低分子化合物(C)とを反応させながら、前記顔料(A)を分散し、実施例1の顔料分散液を製造した。ライトエステルP−2MとC.I.ピグメントレッド254を加えてから、分散を開始するまでは30分以内だった。重合体(B)のアミンの総数に対する、低分子化合物(C)のアミンと反応する官能基の総数の割合(以下、アミンのカチオン化比率と記載する)は10%。前述のNMRの測定で理論的なカチオン化比率と測定結果が相違ないことを確認した。
ここでMMA;メチルメタクリレート、DMMA;ジメチルアミノエチルメタクリレート、BzMA;ベンジルメタクリレート、MAA;メタクリル酸、PGMEA;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートである。
【0157】
(実施例2:顔料分散液の製造)
重合体溶液B1を9.13重量部、上記酸基含有バインダー樹脂1を6.5重量部、PGMEAを70.3重量部、ライトエステルP−2Mを1.02重量部、C.I.ピグメントレッド254を13.0重量部とした以外は、実施例1と同様にして、実施例2の顔料分散液を製造した。アミンのカチオン化比率は30%。実施例1と同様にNMRで、測定、確認を行なった。
【0158】
(実施例3:顔料分散液の製造)
重合体溶液B1を8.28重量部、上記酸基含有バインダー樹脂1を6.5重量部、PGMEAを70.7重量部、ライトエステルP−2Mを1.53重量部、C.I.ピグメントレッド254を13.0重量部とした以外は、実施例1と同様にして、実施例3の顔料分散液を製造した。アミンのカチオン化比率は50%。実施例1と同様にNMRで、測定、確認を行なった。
【0159】
(実施例4:顔料分散液の製造)
重合体溶液B1を7.57重量部、上記酸基含有バインダー樹脂1を6.5重量部、PGMEAを71.0重量部、ライトエステルP−2Mを1.96重量部、C.I.ピグメントレッド254を13.0重量部とした以外は、実施例1と同様にして、実施例4の顔料分散液を製造した。アミンのカチオン化比率は70%。実施例1と同様にNMRで、測定、確認を行なった。
【0160】
(実施例5:顔料分散液の製造)
重合体溶液B1を10.10重量部、上記酸基含有バインダー樹脂1を6.5重量部、PGMEAを70.0重量部、重合体のアミンと反応可能な低分子化合物(C)としてベンジルクロライドを0.44重量部、C.I.ピグメントレッド254を13.0重量部とした以外は、実施例1と同様にして、実施例5の顔料分散液を製造した。アミンのカチオン化比率は30%。実施例1と同様にNMRで、測定、確認を行なった。
【0161】
(実施例6:顔料分散液の製造)
重合体溶液B1を9.78重量部、上記酸基含有バインダー樹脂1を6.5重量部、PGMEAを70.1重量部、重合体のアミンと反応可能な低分子化合物(C)としてP−トルエンスルホン酸メチルを0.63重量部、C.I.ピグメントレッド254を13.0重量部とした以外は、実施例1と同様にして、実施例6の顔料分散液を製造した。アミンのカチオン化比率は30%。実施例1と同様にNMRで、測定、確認を行なった。
【0162】
(実施例7:顔料分散液の製造)
重合体溶液Bとして市販の分散剤 BYK6919(ビックケミー社製、アミン価;121mgKOH/g)を9.13重量部、上記酸基含有バインダー樹脂を6.5重量部、PGMEAを70.3重量部、ライトエステルP−2Mを1.02重量部、C.I.ピグメントレッド254を13.0重量部とした以外は、実施例1と同様にして、実施例7の顔料分散液を製造した。アミンのカチオン化比率は30%。実施例1と同様にNMRで、測定、確認を行なった。
【0163】
(実施例8:顔料分散液の製造)
重合体溶液B1を5.48重量部、上記酸基含有バインダー樹脂1を9.75重量部、PGMEAを71.2重量部、ライトエステルP−2Mを0.61重量部、C.I.ピグメントブルー15:6を13.0重量部とした以外は、実施例1と同様にして、実施例8の顔料分散液を製造した。アミンのカチオン化比率は30%。実施例1と同様にNMRで、測定、確認を行なった。
【0164】
(実施例9:顔料分散液の製造)
重合体溶液B1を5.48重量部、上記酸基含有バインダー樹脂1を9.75重量部、PGMEAを71.2重量部、ライトエステルP−2Mを0.61重量部、C.I.ピグメントグリーン58を9.1重量部及びC.I.ピグメントイエロー150を3.9重量部とした以外は、実施例1と同様にして、実施例9の顔料分散液を製造した。アミンのカチオン化比率は30%。実施例1と同様にNMRで、測定、確認を行なった。
【0165】
(比較例1:顔料分散液の製造)
重合体溶液B1を10.83重量部、上記酸基含有バインダー樹脂1を6.5重量部、PGMEAを69.7重量部、ライトエステルP−2Mを添加なし、C.I.ピグメントレッド254を13.0重量部とした以外は、実施例1と同様にして、比較例1の顔料分散液を製造した。
【0166】
(比較例2:顔料分散液の製造)
重合体溶液B1を9.13重量部、上記酸基含有バインダー樹脂1を6.5重量部、PGMEAを70.3重量部、ライトエステルP−2Mを添加なし、C.I.ピグメントレッド254を13.0重量部として、実施例1と同様に分散後、ライトエステルP−2Mを1.02重量部を加えて、ディゾルバーで均一に攪拌混合した以外は、実施例1と同様にして、比較例2の顔料分散液を製造した。アミンのカチオン化比率は30%。実施例1と同様にNMRで、測定、確認を行なった。
【0167】
(比較例3:顔料分散液の製造)
[比較顔料分散剤1の合成]
重合体溶液B1を45.67重量部、ライトエステルP−2Mを5.1重量部、PGMEA 111.73重量部とを配合し、室温で2時間撹拌して、固形分20重量%の比較顔料分散剤1を合成した。アミンのカチオン化比率は30%。実施例1と同様にNMRで、測定、確認を行なった。
[顔料分散液の調製]
分散剤として上記合成した比較顔料分散剤1の溶液(固形分20重量%)32.5重量部、上記酸基含有バインダー樹脂1を6.5重量部、PGMEAを48.0重量部、ライトエステルP−2Mを添加なし、C.I.ピグメントレッド254を13.0重量部とした以外は、実施例1と同様にして、比較例3の顔料分散液を製造した。
【0168】
(比較例4:顔料分散液の製造)
重合体溶液B1を10.52重量部、上記酸基含有バインダー樹脂1を6.5重量部、PGMEAを69.8重量部、ライトエステルP−2Mを0.19重量部、C.I.ピグメントレッド254を13.0重量部とした以外は、実施例1と同様にして、比較例4の顔料分散液を製造した。アミンのカチオン化比率は5%。実施例1と同様にNMRで、測定、確認を行なった。
【0169】
(比較例5:顔料分散液の製造)
重合体溶液B1を6.97重量部、上記酸基含有バインダー樹脂1を6.5重量部、PGMEAを71.2重量部、ライトエステルP−2Mを2.32重量部、C.I.ピグメントレッド254を13.0重量部とした以外は、実施例1と同様にして、比較例5の顔料分散液を製造した。アミンのカチオン化比率は90%。実施例1と同様にNMRで、測定、確認を行なった。
【0170】
(比較例6:顔料分散液の製造)
重合体溶液Bとして市販の分散剤 BYK6919(ビックケミー社製、アミン価;121mgKOH/g)を10.83重量部、上記酸基含有バインダー樹脂1を6.5重量部、PGMEAを69.7重量部、ライトエステルP−2Mを添加なし、C.I.ピグメントレッド254を13.0重量部とした以外は、実施例1と同様にして、比較例6の顔料分散液を製造した。
【0171】
(実施例10〜16及び比較例7〜12:着色感光性樹脂組成物)
実施例1〜7及び比較例1〜6の顔料分散液をそれぞれ用い、下記に示す組成を、ディゾルバーを使用して均一に混合して、実施例10〜16及び比較例7〜12の着色感光性樹脂組成物を調整した。
<感光性着色樹脂組成物の組成>
・各顔料分散液:39.56重量部
・上記酸基含有バインダー樹脂1:7.41重量部
・多官能モノマー(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、商品名 KAYARAD DPHA、日本化薬社製):4.44重量部
・光重合開始剤(IRGACURE369、BASFジャパン社製):0.93重量部
・光重合開始剤(IRGACURE907、BASFジャパン社製):0.93重量部
・シランカップリング剤(KBE−503、信越化学社製):0.36重量部
・溶剤(PGMEA):26.74重量部
・溶剤(3−メチル−3−メトキシブチルアセテート):20.00重量部
得られた着色感光性樹脂組成物のそれぞれの固形分は18重量%であった。
【0172】
(実施例17:着色感光性樹脂組成物)
実施例8の顔料分散液をそれぞれ用い、下記に示す組成を、ディゾルバーを使用して均一に混合して、実施例17の着色感光性樹脂組成物を調整した。
<感光性着色樹脂組成物の組成>
・実施例8の顔料分散液:27.69重量部
・上記酸基含有バインダー樹脂1:12.24重量部
・多官能モノマー(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、商品名 KAYARAD DPHA、日本化薬社製):4.28重量部
・光重合開始剤(IRGACURE907、BASFジャパン社製):3.06重量部
・シランカップリング剤(KBE−503、信越化学社製):0.36重量部
・溶剤(PGMEA):32.73重量部
・溶剤(3−メチル−3−メトキシブチルアセテート):20.00重量部
得られた着色感光性樹脂組成物の固形分は18重量%であった。
【0173】
(実施例18:着色感光性樹脂組成物)
実施例9の顔料分散液をそれぞれ用い、下記に示す組成を、ディゾルバーを使用して均一に混合して、実施例18の着色感光性樹脂組成物を調整した。
<感光性着色樹脂組成物の組成>
・実施例9の顔料分散液:49.13重量部
・上記酸基含有バインダー樹脂1:6.48重量部
・多官能モノマー(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、商品名 KAYARAD DPHA、日本化薬社製):3.81重量部
・光重合開始剤(IRGACURE907、BASFジャパン社製):0.44重量部・光重合開始剤(SPEEDCURE1311A、シーベルヘグナー社製):0.78重量部
・2−メルカプトベンゾチアゾール :0.15重量部
・シランカップリング剤(KBE−503、信越化学社製):0.36重量部
・溶剤(PGMEA):19.19重量部
・溶剤(3−メチル−3−メトキシブチルアセテート):20.00重量部
得られた着色感光性樹脂組成物の固形分は18重量%であった。
【0174】
[評価]
(1)顔料分散液の粘度評価
実施例及び比較例で得られた各顔料分散液について、振動型粘度計を用いて、25.0±1.0℃における粘度を測定した。粘度評価について下記基準で評価を行った。
○:10mPa・s以下。
△:11mPa・s以上20mPa・s以下。
×:21mPa・s以上。
【0175】
(2)顔料分散液の分散安定性
実施例及び比較例で得られた各顔料分散液について、25℃で7日間保存前後の粘度を上記と同様に測定し、保存前後の粘度の変化率を比較した。分散安定性について下記基準で評価を行った。
○:保存前後の粘度の変化率が5%未満。
△:保存前後の粘度の変化率が5%以上10%未満。
×:保存前後の粘度の変化率が10%以上。
【0176】
(3)着色層の形成
アルカリ洗浄済みのガラス基板上に、上記感光性着色樹脂組成物をスピンコーティングし、上記感光性着色樹脂組成物からなる着色層形成用層を形成した後、室温3分間、80℃のホットプレート上で3分間加熱することによりプリベイクさせ、乾燥させた。次いで、乾燥後の上記着色層形成用層を、超高圧水銀灯を用いて100mJ/cmでマスク露光し硬化させた。
次いで、0.05wt%水酸化カリウム(KOH)を現像液として用いてスピン現像し、現像液に60秒間接液させた後に純水で洗浄することで現像処理を行った。その後、パターン形成された基板を230℃のオーブン内で30分間ポストベイクした。ポストベイク後の着色層形成用層からなる着色層の膜厚は、1.9μmであった。
【0177】
(4)密着性
1μm〜100μmの線幅のラインパターンを露光し、現像後に溶解されずに密着しているラインパターンの最小線幅を測定し、下記基準で評価した。結果を表に示す。
○:10μm以下の線幅のラインが密着している。
△:10μmより大きく、20μm以下の線幅のラインが密着している。
×:20μm以下の線幅のラインが密着しない。
【0178】
(5)現像性
上記着色層の形成において、未露光部が溶解し、現像されるまでの時間を測定し、下記基準で評価を行った。現像の終了は、目視により判断した。結果を表3に示す。
○:10秒〜30秒で現像が終了する。
△:31秒〜60秒で現像が終了する。
×:60秒以内で現像が終了しない。
【0179】
【表6】

【0180】
結果は、表6のとおりであった。すなわち、本発明の製造方法で製造された実施例1〜7の顔料分散液は、低粘度でかつ分散安定性が高いものとなった。更に、これらの顔料分散液を含有する実施例10〜18の感光性着色樹脂組成物を用いて製造された着色層は密着性に優れ、現像性が高いものとなった。実施例10、14及び18の現像性は他のものと比べるとやや低いものとなったが、実用上問題のない範囲であった。
一方、分散工程後に低分子化合物(C)を添加した比較例2の顔料分散液や、分散前に3級以下のアミンを有する重合体(B)と、アミンと反応可能な低分子化合物(C)とを予め反応させた比較例3の顔料分散液は、粘性が高く、分散安定性の低いものとなった。
また、アミンのカチオン化率が5%となる比較例4の顔料分散液とアミンのカチオン化率が90%となる比較例5の顔料分散液においても、粘性が高く、分散安定性の低いものとなり、低分子化合物(C)を添加しない比較例1と比較例6の顔料分散液も同様の結果となった。
【符号の説明】
【0181】
1 基板
2 遮光部
3 着色層
10 カラーフィルター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも顔料(A)、3級以下のアミンを有する重合体(B)、アミンと反応可能な低分子化合物(C)、及び分散媒(D)を混合し、前記重合体(B)と前記低分子化合物(C)とを反応させながら、前記顔料(A)を分散させる顔料分散工程を有し、且つ、前記重合体(B)のアミンの総数に対する、前記低分子化合物(C)のアミンと反応する官能基の総数の割合を10〜70%とすることを特徴とする、顔料分散液の製造方法。
【請求項2】
前記重合体(B)は、ブロック共重合体であることを特徴とする、請求項1に記載の顔料分散液の製造方法。
【請求項3】
前記低分子化合物(C)は、下記一般式(1)〜(3)よりなる群から選択される1種以上であることを特徴とする、請求項1又は2のいずれかに記載の顔料分散液の製造方法。
【化1】

(一般式(1)〜(3)において、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、炭素数1〜20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、ビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは−O−Rを表し、Rは炭素数1〜20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、ビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは炭素数1〜4のアルキレン基を介した(メタ)アクリロイル基を表す。また、一般式(3)において、Xは、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を表す。)
【請求項4】
前記重合体(B)のアミン価が、10〜200mgKOH/gであることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の顔料分散液の製造方法。
【請求項5】
前記低分子化合物(C)の分子量が、50〜400であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の顔料分散液の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の顔料分散液の製造方法を用いて製造されることを特徴とする顔料分散液。
【請求項7】
請求項6に記載の顔料分散液と、多官能性モノマー(E)、及び光重合開始剤(F)を含有することを特徴とする、感光性着色樹脂組成物。
【請求項8】
請求項6に記載の顔料分散液を含有することを特徴とする、インクジェット用インク。
【請求項9】
請求項7に記載の感光性樹脂組成物又は、請求項8に記載のインクジェット用インクを用いて形成された着色層を有することを特徴とする、カラーフィルター。
【請求項10】
請求項6に記載の顔料分散液を用いて製造されることを特徴とする電子写真印刷用トナー。

【図1】
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【公開番号】特開2012−82280(P2012−82280A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228218(P2010−228218)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000183923)株式会社DNPファインケミカル (268)
【Fターム(参考)】