説明

顔料分散液、顔料分散液の製造方法、及びインク組成物

【課題】顔料濃度が高い分散液においても、分散安定性に優れた顔料分散液を提供する。
【解決手段】顔料が樹脂分散剤によって被覆された樹脂被覆顔料と、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体と、水とを含み、前記顔料の濃度が液全質量に対して12質量%以上である顔料分散液。前記顔料はアゾ系顔料であり、樹脂分散剤は、分散剤全質量の15質量%以下の親水性構造単位(A)と下記一般式(I)の疎水性構造単位(B)とを含み、芳香族感の含有割合が分散剤全質量の20%以下であって、構造単位(A)が少なくとも(メタ)アクリル酸に由来の構造単位を含む。


(Rは,H又はメチル基を、Arは置換又は無置換の芳香族環を表す。nは平均の繰り返し数を表し、1〜6である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料分散液、顔料分散液の製造方法、及びインク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録用の被記録媒体としては、様々な記録媒体が検討されており、高品位の画像を形成し得る技術が求められている。また、インクにおいても、耐水性や耐光性などを与えるインク材料として、顔料などの色材の検討が行なわれている。
ところが、普通紙に記録を行なうにあたって、発色濃度、定着性、解像度などにおいて、充分な性能が得られていない場合がある。特に、インクジェット記録を高速化する場合、シャトルスキャン方式ではなく、1回のヘッド操作で記録可能なシングルパス方式で高速記録する場合に問題であった。
このような高速記録する用途に適するインク組成物としては、疎水性樹脂分散剤を含むインクが好適に用いられる。
一方、インク組成物自体の保存安定性が良好で、印字画像に高光沢性を付与するとして、顔料と分散剤とウレタン変性ポリエステル樹脂とを含むインク組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4174666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の方法においては、インク組成物を用いて形成された画像の耐擦性や高い画像濃度を得るためには不十分であった。そこで、疎水性樹脂で被覆された顔料を用いたインクが好適に用いられるが、その場合において、インク組成物自体の安定性の点で、特に、顔料濃度が高い分散液における分散安定性、特に、沈降防止の点で不十分であった。
分散液中に沈降が生じると、例えば、インク組成物を調製したときの安定性や画像の耐擦性に支障を来たす傾向がある。
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、顔料濃度が高い分散液においても、分散安定性に優れた顔料分散液及びその製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、安定性及び画像耐擦性に優れたインク組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
<1>
顔料が樹脂分散剤によって被覆された樹脂被覆顔料と、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体と、水とを含み、前記顔料の濃度が液全質量に対して12質量%以上である顔料分散液。
<2>
前記顔料がアゾ系顔料である請求項1に記載の顔料分散液。
<3>
前記樹脂分散剤が、分散剤全質量の15質量%以下の親水性構造単位(A)と一般式(I)で表される疎水性構造単位(B)とを含み、芳香族環の含有割合が分散剤全質量の20質量%以下であって、前記親水性構造単位(A)が少なくとも(メタ)アクリル酸に由来の構造単位を含む上記<1>または<2>に記載の顔料分散液。
【0006】
【化1】



【0007】
〔式中、Rは、水素原子又はメチル基を表し、Arは無置換又は置換の芳香族環を表す。nは、平均の繰り返し数を表し、1〜6である。〕
【0008】
<4>
前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体の含有量が、前記顔料に対して0.5質量%以上27質量%以下である上記<1>〜<3>のいずれか1項に記載の顔料分散液。
<5>
前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体の含有量が、前記顔料に対して1質量%以上7質量%以下である上記<4>に記載の顔料分散液。
<6>
前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体の数平均分子量が10000以上30000以下である上記<1>〜<5>のいずれか1項に記載の顔料分散液。
<7>
前記樹脂分散剤の酸価が30mgKOH/g以上97.8mgKOH/g以下である上記<1>〜<6>のいずれか1項に記載の顔料分散液。
<8>
前記樹脂分散剤の分子量が重量平均分子量30000以上である上記<1>〜<7>のいずれか1項に記載の顔料分散液。
<9>
前記顔料が、アゾ系イエロー顔料である上記<2>〜<8>のいずれか1項に記載の顔料分散液。
<10>
顔料と樹脂分散剤と水と有機溶媒とを混合して分散する分散工程と、
分散後に前記有機溶媒及び水の少なくとも1部を除去する溶媒除去工程と、
を有する転相乳化法によって分散され、前記溶媒除去工程後にポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体を添加する添加工程と、
を有する顔料分散液の製造方法。
<11>
上記<1>〜<9>のいずれか1項に記載の顔料分散液、又は上記<10>に記載の製造方法により製造された顔料分散液、を少なくとも含有するインク組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、顔料濃度が高い分散液においても、分散安定性に優れた顔料分散液及びその製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、安定性及び画像耐擦性に優れたインク組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の顔料分散液、及びその製造方法、並びに、インク組成物(以下、「インク組成物」ともいう。)について説明する。
【0011】
<顔料分散液及びその製造方法>
本発明の顔料分散液は、顔料が樹脂分散剤によって被覆された樹脂被覆顔料とポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体と水とを含んで構成され、前記顔料の濃度が顔料分散液全質量の12質量%以上であることを特徴とする。
上記構成とすることにより、顔料濃度が高く、かつ、分散安定性に優れた顔料分散液とすることができる。
【0012】
<ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体>
本発明の顔料分散液は、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体(以下、単に「ブロック共重合体」ともいう。)を少なくとも1種含有する。顔料分散物に前記ブロック共重合体を含有することにより分散安定性が向上する。
本発明におけるブロック共重合体としては、該化合物が溶解した水溶液において水溶液の粘度が水に比べて大きくなる化合物であれば、特に制限はなく用いることができる。
また、ブロック共重合体は、ノニオン性であることが好ましい。前記ブロック共重合体がイオン性(カチオン性およびアニオン性)の高分子化合物であると、分散されている素材との相互作用によって、凝集を引き起こし、顔料分散液の保存安定性の劣化や、それを用いたインク組成物の吐出安定性の大幅な劣化を引き起こす。
【0013】
本発明におけるブロック共重合体は、更に水溶性であることが好ましく、100gの水に対する溶解度(25℃)が1g以上であることが好ましい。
これらのブロック共重合体としては、三洋化成工業(株)製ニューポールPEシリーズ(PE−61、62、64、68、71、74、75、78、108)、日本乳化剤(株)製ニューコールシリーズ(Newcol 3240、3280)等が挙げられる。
本発明に用いるブロック共重合体は、顔料分散液の安定性の観点から、数平均分子量が3000〜30000が好ましく、7000〜30000がより好ましく、9000〜30000がさらに好ましく、10000〜30000が特に好ましく、15000〜25000がもっとも好ましい。
数平均分子量が3000以上とすることにより、顔料分散液の安定効果が十分に得られ易く、またインク組成物に用いた場合の、添加量の増加による耐擦性の悪化の原因とならない点で好ましい。一方で、分子量が30000以下であると、少量で安定効果を得ることができ、吐出性が悪化しない点で好ましい。また、顔料分散液をインク組成物に用いた時のインクノズルからの吐出信頼性と耐擦性の両立の観点からも好ましい。
【0014】
また、ポリオキシプロピレン鎖の数平均分子量は、1500〜5000が好ましく、2000〜5000がさらに好ましく、3000〜4500がもっとも好ましい。ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体中のポリオキシエチレン鎖の占める割合は、20質量%以上が好ましく、40質量%以上がさらに好ましく、75質量%以上がもっとも好ましい。
【0015】
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体の曇点は、50℃以上が好ましく、75℃以上がさらに好ましく、100℃以上がもっとも好ましい。
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体の水への溶解度は1質量%以上が好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、10質量%以上がもっとも好ましい。
【0016】
本発明においてブロック共重合は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0017】
また、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体の添加量は、特に限定されないが、顔料分散液の保存安定性の観点から、顔料に対して0.5質量%以上30質量%以下が好ましく、0.5質量%以上27質量%以下がより好ましく、1質量%以上27質量%以下が更に好ましく、1質量%以上10質量%が特に好ましく、1質量%以上7質量%以下が最も好ましい。
0.5質量%以上とすることにより分散安定性が顕著に向上し、また、30質量%以下とすることにより、分散安定性を維持して粘度増加を抑えることができる点で好ましい。
【0018】
<樹脂分散剤によって被覆された顔料>
本発明の顔料分散液は、顔料が樹脂分散剤によって被覆された樹脂被覆顔料の少なくとも1種含有する。このため、本発明の顔料分散液は分散安定性に優れる。
本発明における顔料の具体的形態としては、本発明における樹脂分散剤(以下、「水不溶性樹脂」ともいう。)によって顔料の全部又は一部が被覆された形態である限り特に限定はない。
【0019】
本発明における樹脂分散剤は酸性基を有する繰り返し単位を含有することが好ましく、該酸性基を有する繰り返し単位は下記の親水性構造単位(A)に含まれることが好ましい。
【0020】
−樹脂分散剤−
本発明における樹脂分散剤は、顔料分散液及び後述のインク組成物中で安定的に存在することができ、凝集物の付着又は堆積を緩和し、付着した凝集物の除去の容易化の観点から、親水性構造単位(A)と疎水性構造単位(B)を含み、芳香族環の含有割合が樹脂分散剤の全質量の20質量%以下であって、前記疎水性構造単位(B)の少なくとも1種は前記一般式(I)で表される構造単位であり、前記親水性構造単位(A)の割合が樹脂分散剤の全質量の15質量%以下であり、前記親水性構造単位(A)が少なくとも(メタ)アクリル酸に由来の構造単位を含む構成が好ましい。
【0021】
【化2】

【0022】
前記一般式(I)において、Rは水素原子又はメチル基を表し、好ましくはメチル基である。
【0023】
Arは、無置換又は置換の芳香族環を表す。芳香族環が置換されている場合の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、水酸基、又はシアノ基などを挙げることができ、縮環を形成していてもよい。縮環を形成している場合、例えば、炭素数8以上の縮環型芳香環、芳香環が縮環したヘテロ環、又は2以上連結した芳香環が挙げられる。
【0024】
前記「炭素数8以上の縮環型芳香環」は、少なくとも2以上のベンゼン環が縮環した芳香環、少なくとも1種の芳香環と該芳香環に縮環して脂環式炭化水素で環が構成された炭素数8以上の芳香族化合物である。具体的な例としては、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、フェナントレン、アセナフテンなどが挙げられる。
前記「芳香環が縮環したヘテロ環」とは、ヘテロ原子を含まない芳香族化合物(好ましくはベンゼン環)と、ヘテロ原子を有する環状化合物とが縮環した化合物である。ここで、ヘテロ原子を有する環状化合物は、5員環又は6員環であることが好ましい。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子が好ましい。ヘテロ原子を有する環状化合物は、複数のヘテロ原子を有していてもよい。この場合、ヘテロ原子は互いに同じでも異なっていてもよい。芳香環が縮環したヘテロ環の具体例としては、フタルイミド、アクリドン、カルバゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾールなどが挙げられる。
前記「2以上連結した芳香環」とは、2個以上の芳香環(好ましくはベンゼン環)が単結合または2価の連結基、または3価の連結基で結合されている化合物をいう。2価の連結基としては、炭素数1〜4のアルキレン基、−CO−、−O−、−S−、−SO−、−SO−、およびそれらの組合せからなる群より選ばれる2価の連結基であることが好ましい。3価の連結基としてはメチン基が挙げられる。
ここで、芳香環は互いに複数の連結基で結合されていても良く、複数の連結基は同じであっても異なっていても良い。芳香環(ベンゼン環)の数としては、2〜6個が好ましく、2〜3個がより好ましい。芳香環(ベンゼン環)が2個以上連結された化合物の具体例としては、ビフェニル、トリフェニルメタン、ジフェニルメタン、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルホン等が挙げられる。
【0025】
Arで表される芳香族環は、エステル基とエチレンオキシド鎖とを介して樹脂分散剤の主鎖に結合し、芳香族環が主鎖に直接結合しないので、疎水性の芳香族環と親水性構造単位との間に適切な距離が維持され、樹脂分散剤は顔料との間で相互作用しやすく、強固に吸着して分散性が高められる。
中でも、Arとしては、無置換又は置換のベンゼン環、無置換のナフタレン環が好ましく、無置換のベンゼン環が特に好ましい。
【0026】
nは、顔料分散液に含まれる樹脂被覆顔料の樹脂分散剤におけるエチレンオキシ鎖を平均した繰り返し数を表す。nの範囲は、1〜6であり、好ましくは1〜2である。
【0027】
前記一般式(I)で表される構造単位を形成するモノマーの具体例としては、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等、及び下記のモノマーなどを挙げることができる。
【0028】
【化3】



【0029】
前記一般式(I)で表される構造単位のうち、分散安定性の点で、Rがメチル基であって、Arが無置換のベンゼン環であって、nが1〜2である場合が特に好ましい。
【0030】
本発明における樹脂分散剤の全質量における一般式(I)で表される構造単位の含有割合は、30〜70質量%の範囲が好ましく、より好ましくは40〜50質量%の範囲である。この含有割合は、30質量%以上であると分散性に優れ、70質量%以下であると凝集体の付着・堆積を抑えると共に付着した凝集物の除去性(メンテナンス性)に優れ、白抜け等の画像故障の発生を抑制することができる。
【0031】
以下、本発明における一般式(I)で表される構造単位を含む樹脂分散剤の具体例を示す。但し、本発明においては、下記に限定されるものではない。具体例中、a,b,cはそれぞれの組成(質量%)を表す。
【0032】
【化4】

【0033】
【化5】

【0034】
【化6】



【0035】
樹脂分散剤構造中のモノマーの数値は、それぞれの組成(質量%)を表す。
【0036】
本発明における樹脂分散剤は、上記一般式(I)で表される構造単位に加えて、下記の一般式(II)で表される構造単位を有することも好ましい。
【0037】
【化7】



【0038】
一般式(II)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Lは置換又は無置換のフェニレン基を表す。Lは単結合又は2価の連結基を表す。Arは炭素数8以上の縮環型芳香環、芳香環が縮環したヘテロ環、又は2個以上連結したベンゼン環から誘導される1価の基を表す。
【0039】
前記一般式(II)において、Rは水素原子又はメチル基を表し、好ましくはメチル基を表す。
【0040】
は置換又は無置換のフェニレン基を表す。Lとしては、無置換のフェニレン基が好ましい。
は単結合又は2価の連結基を表す。前記2価の連結基としては、好ましくは炭素数1〜30の連結基であり、より好ましくは炭素数1〜25の連結基であり、更に好ましくは炭素数1〜20の連結基であり、特に好ましくは炭素数1〜15の連結基である。
中でも、最も好ましくは、炭素数1〜25(より好ましくは1〜10)のアルキレンオキシ基、イミノ基(−NH−)、スルファモイル基、及び、炭素数1〜20(より好ましくは1〜15)のアルキレン基やエチレンオキシド基[−(CHCHO)−,n=1〜6]などの、アルキレン基を含む2価の連結基等、並びにこれらの2種以上を組み合わせた基などである。
【0041】
Arは、炭素数8以上の縮環型芳香環、芳香環が縮環したヘテロ環、又は2個以上連結したベンゼン環から誘導される1価の基を表す。
【0042】
前記「炭素数8以上の縮環型芳香環」は、少なくとも2以上のベンゼン環が縮環した芳香環、少なくとも1種の芳香環と該芳香環に縮環して脂環式炭化水素で環が構成された炭素数8以上の芳香族化合物である。
具体的な例としては、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、フェナントレン、アセナフテンなどが挙げられる。
【0043】
前記「芳香環が縮環したヘテロ環」とは、ヘテロ原子を含まない芳香族化合物(好ましくはベンゼン環)と、ヘテロ原子を有する環状化合物とが縮環した化合物である。ここで、ヘテロ原子を有する環状化合物は、5員環又は6員環であることが好ましい。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子が好ましい。ヘテロ原子を有する環状化合物は、複数のヘテロ原子を有していてもよい。この場合、ヘテロ原子は互いに同じでも異なっていてもよい。
芳香環が縮環したヘテロ環の具体例としては、フタルイミド、アクリドン、カルバゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾールなどが挙げられる。
前記2個以上連結したベンゼン環から誘導される1価の基としては、ベンゼンが2個以上連結した化合物から原子を1個除いて誘導される基を表す。
前記ベンゼンが2個以上連結した化合物とは、2個以上のベンゼンが単結合または2価の連結基、または3価の連結基で結合されている化合物をいう。2価の連結基としては、炭素数1〜4のアルキレン基、−CO−、−O−、−S−、−SO−、−SO−、およびそれらの組合せからなる群より選ばれる2価の連結基であることが好ましい。3価の連結基としてはメチン基が挙げられる。
ここで、ベンゼン環は互いに複数の連結基で結合されていても良く、複数の連結基は同じであっても異なっていても良い。ベンゼン環の数としては、2〜6個が好ましく、2〜3個がより好ましい。ベンゼンが2個以上連結された化合物の具体例としては、ビフェニル、トリフェニルメタン、ジフェニルメタン、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルホン等が挙げられる。
【0044】
前記一般式(II)で表される構造単位を形成するモノマーの具体例としては、下記のモノマーなどを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0045】
【化8】

【0046】
上記一般式(II)で表される構造単位中のArとしては、アクリドン又はフタルイミドから誘導される1価の基であることが、被覆された顔料の安定性の観点から好ましく、更に、アクリドンから誘導される1価の基であることが好ましい。
前記一般式(II)で表される構造単位のうち、顔料の分散安定性の点で、Rはメチル基であって、Lは無置換のフェニレン基であって、Lは2価の連結基(好ましくはメチレン)であって、Arはアクリドンから誘導される1価の基であることが好ましい。
【0047】
樹脂分散剤の全質量における、一般式(II)で表される構造単位の含有割合は、5〜25質量%の範囲が好ましく、より好ましくは10〜18質量%の範囲である。
この含有割合は、5質量%以上であると白抜け等の画像故障の発生を顕著に抑制できる傾向となり、また、25質量%以下とすると共重合体の重合反応溶液(例えば、メチルエチルケトン)中での溶解性低下による製造適性上の問題が生じない傾向となり好ましい。
【0048】
以下、本発明における一般式(II)で表される構造単位を含む樹脂分散剤の具体例を示す。但し、本発明においては、下記に限定されるものではない。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
【表3】



【0052】
本発明における樹脂分散剤は、顔料分散液及びインク組成物中で安定的に存在することができ、凝集物の付着又は堆積を緩和し、付着した凝集物の除去の容易化の観点から、親水性構造単位(A)と疎水性構造単位(B)とを含み、樹脂分散剤全質量に対し、芳香族環の含有割合が20質量%以下の樹脂であることが好ましく、10質量%以上20質量%以下がより好ましい。
ここで、前記疎水性構造単位(B)には、前記一般式(I)で表される構造単位の少なくとも1つの構造単位を含有することが好ましい。
【0053】
本発明における樹脂分散剤は、前記一般式(I)で表される構造単位及び前記一般式(II)で表される構造単位に加え、更に一般式(I)および一般式(II)で表される構造単位以外の他の疎水性構造単位(B)を有してもよい。
該疎水性構造単位(B)としては、親水性構造単位(A)に属しない(例えば親水性の官能基を有しない)、例えば(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、スチレン類、及びビニルエステル類などのビニルモノマー類、主鎖をなす原子に連結基を介して芳香環を有する疎水性構造単位、等に由来の構造単位を挙げることができる。これらの構造単位は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0054】
前記(メタ)アクリレート類としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、中でも、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートが好ましく、特にメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートが好ましい。
前記(メタ)アクリルアミド類としては、例えば、N−シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−(2−メトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアリル(メタ)アクリルアミド、N−アリル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類が挙げられる。
前記スチレン類としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、n−ブチルスチレン、tert−ブチルスチレン、メトキシスチレン、ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、クロロメチルスチレン、酸性物質により脱保護可能な基(例えばt−Bocなど)で保護されたヒドロキシスチレン、ビニル安息香酸メチル、及びα−メチルスチレン、ビニルナフタレン等などが挙げられ、中でも、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
前記ビニルエステル類としては、例えば、ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルメトキシアセテート、及び安息香酸ビニルなどのビニルエステル類が挙げられる。中でも、ビニルアセテートが好ましい。
【0055】
前記「主鎖をなす原子に連結基を介して芳香環を有する疎水性構造単位」は、共重合体の主鎖を形成している原子に連結基を介して連結する芳香環の共重合体中における割合が15〜27質量%である構造単位が好ましく、15〜25質量%である構造単位がより好ましく、15〜20質量%である構造単位が更に好ましい。
芳香環は、連結基を介して共重合体の主鎖をなす原子と結合され、共重合体の主鎖をなす原子に直接結合しない構造を有するので、疎水性の芳香環と親水性構造単位との間に適切な距離が維持されるため、共重合体と顔料との間で相互作用が生じやすく、強固に吸着して分散性がさらに向上する。
【0056】
前記「主鎖をなす原子に連結基を介して芳香環を有する疎水性構造単位」としては、前記一般式(I)又は前記一般式(II)で表される構造単位以外としては、下記一般式(III)で表される構造単位が好適に挙げられる。
【0057】
【化9】

【0058】
前記一般式(III)において、R11は、水素原子、メチル基、又はハロゲン原子を表す。
また、L11は、−COO−、−OCO−、−CONR12−又は−O−、を表し、R12は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基を表す。なお、L11で表される基中の*印は、主鎖に連結する結合手を表す。
【0059】
12は、単結合、又は炭素数1〜30の2価の連結基を表し、2価の連結基である場合は、好ましくは炭素数1〜25の連結基であり、より好ましくは炭素数1〜20の連結基であり、更に好ましくは炭素数1〜15の連結基である。
中でも、特に好ましくは、イミノ基(−NH−)、スルファモイル基、及び、炭素数1〜20(より好ましくは1〜15)のアルキレン基やエチレンオキシド基[−(CHCHO)−,n=1〜6]などの、アルキレン基を含む2価の連結基等、並びにこれらの2種以上を組み合わせた基などである。
【0060】
前記一般式(III)において、Ar11は、芳香環から誘導される1価の基を表す。
Ar11で表される芳香環としては、特に限定されないが、ベンゼン環、炭素数8以上の縮環型芳香環、芳香環が縮環したヘテロ環、又は2個以上連結したベンゼン環が挙げられる。炭素数8以上の縮環型芳香環、及び芳香環が縮環したヘテロ環の詳細については既述の通りである。
【0061】
以下、その他の疎水性構造単位を形成し得るモノマーの具体例を挙げる。但し、本発明においては、下記具体例に制限されるものではない。
【0062】
【化10】

【0063】
親水性構造単位(A)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸に由来の構造単位が好ましく、樹脂分散剤中には少なくともアクリル酸もしくはメタクリル酸のいずれか又は両方を含むことが好ましい。このほかの親水性構造単位(A)としては、非イオン性の親水性基を有するモノマーに由来の構造単位が挙げられ、例えば、親水性の官能基を有する(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、及びビニルエステル類等の、親水性の官能基を有するビニルモノマー類を挙げることができる。
【0064】
「親水性の官能基」としては、水酸基、アミノ基、(窒素原子が無置換の)アミド基、及び後述のポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のアルキレンオキシドが挙げられる。
【0065】
非イオン性の親水性基を有する親水性構造単位を形成するモノマーとしては、エチレン性不飽和結合等の重合体を形成しうる官能基と非イオン性の親水性の官能基とを有していれば、特に制限はなく、公知のモノマーから選択することができる。具体的な例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、アミノエチルアクリレート、アミノプロピルアクリレート、アルキレンオキシド重合体を含有する(メタ)アクリレートを好適に挙げることができる。
【0066】
非イオン性の親水性基を有する親水性構造単位(A)は、対応するモノマーの重合により形成することができるが、重合後のポリマー鎖に親水性の官能基を導入してもよい。
【0067】
非イオン性の親水性基を有する親水性構造単位は、アルキレンオキシド構造を有する親水性の構造単位がより好ましい。アルキレンオキシド構造のアルキレン部位としては、親水性の観点から、炭素数1〜6のアルキレン部位が好ましく、炭素数2〜6のアルキレン部位がより好ましく、炭素数2〜4のアルキレン部位が特に好ましい。また、アルキレンオキシド構造の重合度としては、1〜120が好ましく、1〜60がより好ましく、1〜30が特に好ましい。
【0068】
また、非イオン性の親水性基を有する親水性構造単位は、水酸基を含む親水性の構造単位であることも好ましい態様である。構造単位中の水酸基数としては、特に制限はなく、樹脂分散剤の親水性、重合時の溶媒や他のモノマーとの相溶性の観点から、1〜4が好ましく、1〜3がより好ましく、1〜2が特に好ましい。
【0069】
上記において、例えば、親水性構造単位の含有割合は、前述した疎水性構造単位(B)の割合で異なる。例えば、樹脂分散剤がアクリル酸及び/又はメタクリル酸〔親水性構造単位(A)〕と前述の疎水性構造単位(B)とのみから構成される場合、アクリル酸及び/又はメタクリル酸の含有割合は、「100−(疎水性構造単位の質量%)」で求められる。
【0070】
本発明における樹脂分散剤としては、親水性構造単位(A)と疎水性構造単位(B)(前記一般式(I)で表される構造単位、前記一般式(II)で表される構造単位、一般式(III)で表される構造単位を含む)との組成は各々の親水性、疎水性の程度にも影響するが、親水性構造単位(A)の割合が樹脂分散剤の全質量の15質量%以下であることが好ましい。このとき、疎水性構造単位(B)は、樹脂分散剤の質量全体に対して、80質量%を超える割合であるのが好ましく、85質量%以上であるのがより好ましい。
親水性構造単位(A)の含有量が15質量%以下であると、単独で水性媒体中に溶解する成分量が抑えられ、顔料の分散などの諸性能が良好になり、インクジェット記録時には良好なインク吐出性が得られる。
【0071】
親水性構造単位(A)の好ましい含有割合は、樹脂分散剤の全質量に対して、0質量%を超え15質量%以下の範囲であり、より好ましくは3〜15質量%の範囲であり、更に好ましくは3〜13質量%の範囲であり、特に好ましくは8〜13質量%の範囲である。
【0072】
親水性構造単位(A)は、一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0073】
本発明における樹脂分散剤は、上記の中でも、親水性構造単位(A)が(メタ)アクリル酸であって、疎水性構造単位(B)が(i)一般式(I)で表される構造単位(好ましくはフェノキシエチル(メタ)アクリレート由来の構造単位))及び(ii)一般式(II)で表される構造単位(好ましくは前述のM−25/M−27、M−28/M−29由来の構造単位の少なくとも1種を含むことが好ましい。
特に、本発明における樹脂分散剤は、親水性構造単位(A)が(メタ)アクリル酸であって、疎水性構造単位(B)が上記(i)及び(ii)の少なくとも1種を含み、かつ(iii)前記以外の疎水性構造単位(B)(好ましくはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート)を更に含むことが好ましい。
【0074】
本発明における樹脂分散剤の酸価としては、顔料分散性、保存安定性の観点から、30mgKOH/g以上97.8mgKOH/g以下であることが好ましく、30mgKOH/g以上85mgKOH/g以下であることがより好ましく、50mgKOH/g以上85mgKOH/g以下であることが特に好ましい。
なお、酸価とは、樹脂分散剤の1gを完全に中和するのに要するKOHの質量(mg)で定義され、JIS規格(JISK0070、1992)記載の方法により測定されるものである。
【0075】
本発明における樹脂分散剤の分子量としては、重量平均分子量(Mw)で3万以上が好ましく、3万〜15万がより好ましく、更に好ましくは3万〜10万であり、特に好ましくは3万〜8万である。分子量が3万以上であると、分散剤としての立体反発効果が良好になる傾向があり、分散安定性が良くなる。
また、数平均分子量(Mn)では1,000〜100,000の範囲程度のものが好ましく、3,000〜50,000の範囲程度のものが特に好ましい。数平均分子量が前記範囲内であると、顔料における被覆膜としての機能又はインク組成物の塗膜としての機能を発揮することができる。本発明における樹脂分散剤は、アルカリ金属や有機アミンの塩の形で使用されることが好ましい。
【0076】
また、本発明における樹脂分散剤の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)としては、1〜6の範囲が好ましく、1〜4の範囲がより好ましい。分子量分布が前記範囲内であると、顔料分散液における分散安定性、及び顔料分散液を含むインク組成物の分散安定性、吐出安定性を高められる。
【0077】
数平均分子量及び重量平均分子量は、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(いずれも東ソー(株)製)のカラムを使用したGPC分析装置により、溶媒THFにて示差屈折計により検出し、標準物質としてポリスチレンを用いて換算することにより表される分子量である。
【0078】
本発明における樹脂分散剤は、種々の重合方法、例えば溶液重合、沈澱重合、懸濁重合、塊状重合、乳化重合により合成することができる。重合反応は、回分式、半連続式、連続式等の公知の操作で行なうことができる。重合の開始方法は、ラジカル開始剤を用いる方法、光又は放射線を照射する方法等がある。これらの重合方法、重合の開始方法は、例えば、鶴田禎二「高分子合成方法」改定版(日刊工業新聞社刊、1971)や大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊、124〜154頁に記載されている。
前記重合方法のうち、特にラジカル開始剤を用いた溶液重合法が好ましい。溶液重合法で用いられる溶剤は、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール等の種々の有機溶剤が挙げられる。溶剤は、1種単独で又は2種以上を併用してもよい。また、水との混合溶媒として用いてもよい。重合温度は、生成するポリマーの分子量、開始剤の種類などと関連して設定する必要があり、通常は0℃〜100℃程度であるが、50〜100℃の範囲で重合を行なうことが好ましい。反応圧力は、適宜選定可能であるが、通常は1〜100kg/cmであり、特に1〜30kg/cm程度が好ましい。反応時間は、5〜30時間程度である。得られた樹脂は、再沈殿などの精製を行なってもよい。
【0079】
<顔料>
本発明における顔料としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、有機顔料、無機顔料が含まれる。
【0080】
有機顔料としては、例えば、アゾ系顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、アゾ系顔料、多環式顔料などがより好ましい。
前記アゾ系顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などが挙げられる。
上記の中でも、色相の観点から、アゾ系イエロー顔料が好ましい。
アゾ系イエロー顔料としては、C.I.ピグメント イエロー 3,14,55,74、83,95、152が挙げられ、特にC.I.ピグメント イエロー 74が好ましい。
前記多環式顔料としては、例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料などが挙げられる。
前記染料キレートとしては、例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなどが挙げられる。
【0081】
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー、カーボンブラックなどが挙げられる。これらの中でも、カーボンブラックが特に好ましい。なお、カーボンブラックとしては、例えば、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたものが挙げられる。
【0082】
本発明において顔料は、1種単独で用いてもよいし、上記の各群内もしくは各群間より複数種選択してこれらを組み合わせて使用してもよい。
【0083】
顔料(p)と本発明における樹脂分散剤(r)との比率(p:r)は、重量比で100:15〜100:140が好ましく、より好ましくは100:15〜100:50である。比率(p:r)は、樹脂分散剤が100:15の割合以上であると分散安定性と耐擦性が良化する傾向にあり、樹脂分散剤が100:140の割合以下であると分散安定性が良化する傾向がある。
【0084】
本発明における樹脂被覆顔料(カプセル化顔料)は、樹脂分散剤及び顔料等を用いて従来の物理的、化学的方法によって製造することができる。例えば、特開平9−151342号、特開平10−140065号、特開平11−209672号、特開平11−172180号、特開平10−25440号、又は特開平11−43636号の各公報に記載の方法により製造することができる。具体的には、特開平9−151342号及び特開平10−140065号の各公報に記載の転相法と酸析法等が挙げられ、中でも、分散安定性の点で転相法が好ましい。
【0085】
本発明の顔料分散液の製造方法は、顔料と樹脂分散剤と水と有機溶媒とを混合して分散する分散工程と、分散後に前記有機溶媒及び水の少なくとも1部を除去する溶媒除去工程と、を有する転相乳化法によって分散され、前記溶媒除去工程後にポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体を添加する添加工程と、を有して構成される。
即ち、顔料分散液の製造方法は、顔料と樹脂分散剤と有機溶媒と水とを用いて転相乳化法によって分散液を得、その後にブロック共重合体を添加して顔料分散液を製造する方法である。
転相乳化法は、基本的には、自己分散能又は溶解能を有する樹脂と顔料との混合溶融物を水に分散させる工程を有する方法である。ここで、混合溶融物とは、溶解せず混合した状態、溶解して混合した状態、又はこれら両者の状態のいずれの状態を含むものをいう。「転相法」のより具体的な製造方法は、特開平10−140065号に記載の方法が挙げられる。
【0086】
本発明の顔料分散液は、樹脂分散剤を用い、例えば、下記の工程(1)〜工程(3)を含む方法により樹脂被覆顔料の分散物として調製して得ることができる。
また、本発明のインク組成物は、この調製工程を設け、得られた樹脂被覆顔料の分散物、即ち、顔料分散液を水及び有機溶媒と共に用いて調製することができる。
工程(1):顔料、樹脂分散剤、有機溶媒及び水、更に好ましくは中和剤を含有する混合物を攪拌等により混合し、分散機等により分散処理して分散物を得る工程(分散工程)
工程(2):前記分散物から前記有機溶媒及び水の少なくとも1部を除去する工程(溶媒除去工程)
工程(3):前記揮発性の有機溶媒の除去後、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体を添加して顔料分散液を得る工程(添加工程)
を設けて構成するものであり、必要に応じて、他の工程を有していてもよい。
本発明の顔料分散液の製造方法は、前記構成とすることにより、分散安定性が良好で、インク組成物を調製したときには画像中の白抜け故障の発生を抑制し、良好な画像の記録が行なえる。
【0087】
攪拌方法には特に制限はなく、一般に用いられる混合攪拌装置や、必要に応じて超音波分散機や高圧ホモジナイザー、ビーズミル等の分散機を用いることができる。
【0088】
ここで用いる有機溶媒としては、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、及びエーテル系溶媒が好ましく挙げられる。前記アルコール系溶媒としては、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、エタノール等が挙げられる。前記ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。前記エーテル系溶媒としては、ジブチルエーテル、ジオキサン等が挙げられる。これらの溶媒の中では、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒とイソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒が好ましく、メチルエチルケトンがさらに好ましい。
【0089】
中和剤は、前記工程(1)に用いられることが好ましく、前記樹脂分散剤の酸性基の一部又は全部が中和されて、前記樹脂分散剤が水中で安定した分散状態を形成するために用いられる。
中和剤としては、例えば、アルコールアミン類(例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−エチル−1,3プロパンジオールなど)、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)、アンモニウム水酸化物(例えば、水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物)、ホスホニウム水酸化物、アルカリ金属炭酸塩などが挙げられ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好適に用いられる。
中和剤は、樹脂被覆顔料粒子の分散剤を作製する際に、顔料分散剤に含まれる酸基を中和することができ、顔料分散剤の酸価に対して0.5〜1.5当量となる量を用いることが好ましく、0.5〜1当量の範囲内であることが好ましい。
【0090】
前記工程(2)では、前記工程(1)で得られた分散物から、減圧蒸留等の常法により有機溶媒を留去して水系へと転相することで、顔料の粒子表面が樹脂分散剤で被覆された樹脂被覆顔料粒子の分散物を得ることができる。得られた分散物中の有機溶媒は実質的に除去されており、ここでの有機溶媒の量は、好ましくは0.2質量%以下であり、更に好ましくは0.1質量%以下である。
【0091】
分散処理は、例えば、ボールミル、ロールミル、ビーズミル、高圧ホモジナイザー、高速攪拌型分散機、超音波ホモジナイザ−などを用いて行なうことができる。
【0092】
より具体的には、例えば、
(1)酸性基を有する樹脂分散剤又はそれを有機溶媒に溶解した溶液と塩基性化合物(中和剤)とを混合して中和する工程と、
(2)得られた混合液に顔料を混合して懸濁液とした後に、分散機等で顔料を分散して顔料分散液を得る工程と、
(3)有機溶媒及び水の少なくとも一部を例えば蒸留して除くことによって、顔料を、酸性基を有する特定樹脂分散剤で被覆し、水性媒体中に分散させて顔料分散液とする工程と、
(4)前記有機溶媒の除去後、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体を添加して顔料分散液を得る工程(添加工程)
を含む方法である。
なお、必要に応じて、特開平11−209672号公報及び特開平11−172180号の記載を参照することができる。
【0093】
本発明における樹脂分散剤によって被覆される顔料の濃度(含有量)としては、顔料分散液中の分散安定性、濃度の観点から、顔料分散液全質量に対して12質量%以上であることを必要とするが、12〜20質量%が好ましく、12〜18質量%がより好ましく、12〜15質量%が特に好ましい。
【0094】
顔料分散液の製造方法は、例えば、顔料、顔料分散物、有機溶媒、イオン交換水をディスパー混合し、更にマイクロフルダイザー(超高圧ホモジナイザー)で処理することにより行なわれる。
前記分散処理は、分散装置で1回処理すればよいが、顔料分散液の保存安定性向上の観点から、多くの回数処理することがより好ましく、更に、生産性の観点を鑑みた場合処理回数は、3〜12回処理が好ましく、3〜10回処理がより好ましく、5〜10回処理が特に好ましい。
【0095】
本発明において、顔料分散液は上記成分以外に、更に必要に応じてその他の添加剤を用いてもよい。該その他の添加剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、後述のインク組成物の項に記載の界面活性剤、他の成分等を含んでもよい。
【0096】
[インク組成物]
本発明のインク組成物は、本発明の顔料分散液を少なくとも含有して構成され、更に必要に応じて、有機溶媒及び水を含み、更に中和剤を含んでいることが好ましい。
【0097】
本発明のインク組成物はインクジェット記録用として好適に用いられる。
インク組成物は、顔料分散液の製造方法により製造された顔料分散液を含むことにより、顔料分散液は良好な分散状態の濃厚化液で、長期での保存安定性に優れることから、得られたインク組成物は白抜け故障の発生を抑制し、良好な画像の記録ができるものとなる。
【0098】
本発明のインク組成物は、上記の顔料分散液に加え、耐擦性向上の観点から樹脂粒子を、表面張力の調整の観点から界面活性剤を加えることが好ましい。また、必要に応じて、例えば、紫外線吸収剤、褪色防止剤、防黴剤、防錆剤、酸化防止剤、乳化安定剤、防腐剤、消泡剤、粘度調整剤、分散安定剤、キレート剤等の他の成分を含有してもよい。
【0099】
前記樹脂粒子としては、例えば、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン系樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋スチレン系樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン系樹脂、パラフィン系樹脂、フッ素系樹脂等の粒子、又はこれらを含むポリマーラテックスを用いることができる。
アクリル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、スチレン系樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋スチレン系樹脂を好ましい例として挙げることができる。
【0100】
樹脂粒子の重量平均分子量は、1万以上20万以下が好ましく、より好ましくは10万以上20万以下である。
樹脂粒子の平均粒径は、10nm〜1μmの範囲が好ましく、10〜200nmの範囲がより好ましく、20〜100nmの範囲が更に好ましく、20〜50nmの範囲が特に好ましい。
樹脂粒子の添加量は、インクに対して、0.5〜20質量%が好ましく、3〜20質量%がより好ましく、5〜15質量%がさらに好ましい。
樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)は、30℃以上であることが好ましく、40℃以上がより好ましく、50℃以上がさらに好ましい。
また、ポリマー粒子の粒径分布に関しては、特に制限はなく、広い粒径分布を持つもの、又は単分散の粒径分布を持つもののいずれでもよい。また、単分散の粒径分布を持つポリマー微粒子を、2種以上混合して使用してもよい。
【0101】
本発明におけるインク組成物は、界面活性剤の少なくとも1種を含有することが好ましい。界面活性剤は、表面張力調整剤として用いられ、ノニオン系、カチオン系、アニオン系、ベタイン系の界面活性剤が挙げられる。
界面活性剤は、インクジェット法で良好に打滴するために、インク組成物の表面張力を20〜60mN/mに調整できる量を含有するのが好ましい。中でも、界面活性剤の含有量は、表面張力を20〜45mN/mに調整できる量が好ましく、より好ましくは25〜40mN/mに調整できる量である。
【0102】
界面活性剤としては、分子内に親水部と疎水部を合わせ持つ構造を有する化合物等が有効に使用することができ、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤のいずれも使用することができる。
【0103】
界面活性剤のインク組成物中における含有量は、特に制限はなく、1質量%以上が好ましく、より好ましくは1〜10質量%であり、更に好ましくは1〜3質量%である。
【0104】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ニッケル錯塩系紫外線吸収剤、などが挙げられる。
【0105】
褪色防止剤としては、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。有機の褪色防止剤としてはハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類などがあり、金属錯体としてはニッケル錯体、亜鉛錯体などがある。
【0106】
防黴剤としては、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン−1−オキシド、p−ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、ソルビン酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウムなどが挙げられる。これらはインク中に0.02〜1.00質量%使用するのが好ましい。
【0107】
防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライトなどが挙げられる。
【0108】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、りん系酸化防止剤などが挙げられる。
【0109】
キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラミル二酢酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0110】
固体湿潤剤としては、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトール、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース等の糖類;糖アルコール類;ヒアルロン酸類;尿素類等を挙げることができる。
【0111】
−インク組成物の物性−
本発明におけるインク組成物の表面張力(25℃)としては、20mN/m以上60mN/m以下であることが好ましい。より好ましくは、20mN以上45mN/m以下であり、更に好ましくは、25mN/m以上40mN/m以下である。
表面張力は、Automatic Surface Tensiometer CBVP−Z(協和界面科学株式会社製)を用い、水性インクを25℃の条件下で測定されるものである。
【0112】
また、本発明におけるインク組成物の20℃での粘度は、1.2mPa・s以上15.0mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは2mPa・s以上13mPa・s未満であり、更に好ましくは2.5mPa・s以上10mPa・s未満である。
粘度は、VISCOMETER TV−22(TOKI SANGYO CO.LTD製)を用い、水性インクを20℃の条件下で測定されるものである。
【0113】
本発明におけるインク組成物は、多色のカラー画像(例えばフルカラー画像)の形成に用いることができる。フルカラー画像の形成には、マゼンタ色調のインク組成物、シアン色調のインク組成物、及びイエロー色調のインク組成物を用いることができ、さらに色調を整えるために、ブラック色調のインク組成物を用いることができる。
また、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の色調以外のレッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)、白色(W)の色調のインク組成物や、いわゆる印刷分野における特色のインク組成物等を用いることができる。
上記の各色調のインク組成物は、着色剤として用いる顔料の色相を所望により変更することにより調製できる。
【実施例】
【0114】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。尚、特に断りの無い限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0115】
(合成例1)
〜樹脂分散剤P−1の合成〜
攪拌機、冷却管を備えた1000mlの三口フラスコに、メチルエチルケトン88gを加えて窒素雰囲気下で72℃に加熱し、これにメチルエチルケトン50gにジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート0.85g、フェノキシエチルメタクリレート50g、メタクリル酸13g、及びメチルメタクリレート37gを溶解した溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間反応した後、メチルエチルケトン2gにジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート0.42gを溶解した溶液を加え、78℃に昇温して4時間加熱した。得られた反応溶液は過剰量のヘキサンに2回再沈殿させ、析出した樹脂を乾燥させて、フェノキシエチルメタクリレート/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(樹脂分散剤P−1)96.5gを得た。
得られた樹脂分散剤の組成は、H−NMRで確認し、GPCより求めた重量平均分子量(Mw)は41900であった。さらに、JIS規格(JIS K 0070:1992)記載の方法により、このポリマーの酸価を求めたところ、84.7mgKOH/gであった。
【0116】
(合成例2)
−樹脂分散剤P−2〜P−11の合成−
前記樹脂分散剤P−1の合成において、フェノキシエチルメタクリレート、メタクリル酸、メチルメタクリレート、エチルメタクリレートについて、それぞれ下記表4に記載のモノマーの種類及び比率になるように変更したこと以外は、樹脂分散剤P−1の合成と同様にして、樹脂分散剤P−2〜P−11を合成した。
なお下記表4および表2には樹脂分散剤P−1における方法と同様の方法で測定した重量平均分子量および酸価を記す。
【0117】
(実施例1)
−樹脂被覆顔料粒子の分散物の調製−
イエロー顔料(C.I.ピグメントイエロー74)15部と、上記の樹脂分散剤P−1を6部と、メチルエチルケトン17部と、1規定 NaOH水溶液8部と、イオン交換水54部とを混合し、ディスパー混合し、更に分散機(マイクロフルイダイザーM−140K、150MPa)で10パス処理した。続いて、得られた分散物を減圧下、55℃でメチルエチルケトンを除去し、さらに一部の水を除去し、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(ニューポールPE−108、三洋化成工業(株)製)を顔料固形分に対して2%となるように添加し、さらに水を添加して顔料濃度が15質量%の樹脂被覆顔料粒子の分散物を得た。
【0118】
−樹脂被覆顔料粒子の粒子径の測定−
得られた樹脂被覆顔料粒子の分散物について、ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)製)を用い、動的光散乱法により体積平均粒径を測定した。測定は、樹脂被覆顔料粒子の分散物10μlに対してイオン交換水10mlを加えて測定用サンプル液を調製し、これを25℃に調温して行なった。測定結果は下記表4に示す。
【0119】
−顔料分散物の評価−
高さ25cmのビュレット内に顔料分散液を充填し、1週間静置後、下部2cm、上部2cmの分散液を採取し、純水にて1万倍に希釈して極大吸収波長での吸光度を測定し、顔料濃度の差を求めた。測定には、V−570型分光光度計(日本分光株式会社製)を使用した。
<評価基準>
A:上下で濃度差が1%未満。
B:上下で濃度差が1%以上2%未満。
C:上下で濃度差が2%以上5%未満。
D:上下で濃度差が5%以上7%未満。
E:上下で濃度差が7%以上。
【0120】
(実施例2)
イエロー顔料(C.I.ピグメントイエロー74)15部と、上記の樹脂分散剤P−2を6部と、メチルエチルケトン17部と、1規定 NaOH水溶液7.4部と、イオン交換水54.6部とを混合し、ディスパー混合し、更に分散機(マイクロフルイダイザーM−140K、150MPa)で10パス処理した。続いて、得られた分散物を減圧下、55℃でメチルエチルケトンを除去し、さらに一部の水を除去し、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(ニューポールPE−108、三洋化成工業(株)製)を顔料固形分に対して2%となるように添加し、さらに水を添加して顔料濃度が15質量%の樹脂被覆顔料粒子の分散物を得た。
顔料粒子径の測定、顔料分散物の評価については実施例1と同様に行った。結果は表4に示す。
【0121】
(実施例3)
イエロー顔料(C.I.ピグメントイエロー74)15部と、上記の樹脂分散剤P−3を6部と、メチルエチルケトン17部と、1規定 NaOH水溶液6.8部と、イオン交換水55.2部とを混合し、ディスパー混合し、更に分散機(マイクロフルイダイザーM−140K、150MPa)で10パス処理した。続いて、得られた分散物を減圧下、55℃でメチルエチルケトンを除去し、さらに一部の水を除去し、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(ニューポールPE−108、三洋化成工業(株)製)を顔料固形分に対して2%となるように添加し、さらに水を添加して顔料濃度が15質量%の樹脂被覆顔料粒子の分散物を得た。
顔料粒子径の測定、顔料分散物の評価については実施例1と同様に行った。結果は表4に示す。
【0122】
(実施例4)
イエロー顔料(C.I.ピグメントイエロー74)15部と、上記の樹脂分散剤P−4を6部と、メチルエチルケトン17部と、1規定 NaOH水溶液6.2部と、イオン交換水55.8部とを混合し、ディスパー混合し、更に分散機(マイクロフルイダイザーM−140K、150MPa)で10パス処理した。続いて、得られた分散物を減圧下、55℃でメチルエチルケトンを除去し、さらに一部の水を除去し、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(ニューポールPE−108、三洋化成工業(株)製)を顔料固形分に対して2質量%となるように添加し、さらに水を添加して顔料濃度が15質量%の樹脂被覆顔料粒子の分散物を得た。
顔料粒子径の測定、顔料分散物の評価については実施例1と同様に行った。結果は表4に示す。
【0123】
(実施例5)
イエロー顔料(C.I.ピグメントイエロー74)15部と、上記の樹脂分散剤P−5を6部と、メチルエチルケトン17部と、1規定 NaOH水溶液5.5部と、イオン交換水56.5部とを混合し、ディスパー混合し、更に分散機(マイクロフルイダイザーM−140K、150MPa)で10パス処理した。続いて、得られた分散物を減圧下、55℃でメチルエチルケトンを除去し、さらに一部の水を除去し、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(ニューポールPE−108、三洋化成工業(株)製)を顔料固形分に対して2%となるように添加し、さらに水を添加して顔料濃度が15質量%の樹脂被覆顔料粒子の分散物を得た。
顔料粒子径の測定、顔料分散物の評価については実施例1と同様に行った。結果は表4に示す。
【0124】
(実施例6)
イエロー顔料(C.I.ピグメントイエロー74)15部と、上記の樹脂分散剤P−6を6部と、メチルエチルケトン17部と、1規定 NaOH水溶液5部と、イオン交換水57部とを混合し、ディスパー混合し、更に分散機(マイクロフルイダイザーM−140K、150MPa)で10パス処理した。続いて、得られた分散物を減圧下、55℃でメチルエチルケトンを除去し、さらに一部の水を除去し、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(ニューポールPE−108、三洋化成工業(株)製)を顔料固形分に対して2%となるように添加し、さらに水を添加して顔料濃度が15質量%の樹脂被覆顔料粒子の分散物を得た。
顔料粒子径の測定、顔料分散物の評価については実施例1と同様に行った。結果は表4に示す。
【0125】
(実施例7)
樹脂分散剤を表4に記載の樹脂分散剤に変更した以外は、実施例1と同様にして顔料分散物の作製、評価を行った。結果は表4に示す。
【0126】
(実施例8)
樹脂分散剤を表4に記載の樹脂分散剤に変更した以外は、実施例2と同様にして顔料分散物の作製、評価を行った。結果は表4に示す。
【0127】
(実施例9)
樹脂分散剤を表4に記載の樹脂分散剤に変更した以外は、実施例3と同様にして顔料分散物の作製、評価を行った。結果は表4に示す。
【0128】
(実施例10)
樹脂分散剤を表4に記載の樹脂分散剤に変更した以外は、実施例4と同様にして顔料分散物の作製、評価を行った。結果は表4に示す。
【0129】
(実施例11)
樹脂分散剤を表4に記載の樹脂分散剤に変更した以外は、実施例5と同様にして顔料分散物の作製、評価を行った。結果は表4に示す。
【0130】
(実施例12〜22)
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(ニューポールPE−108、三洋化成工業製)及びその添加量を表4に記載のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(ニューポールPE−68、三洋化成工業(株)製)及び添加量に変更した以外は、それぞれ実施例1〜11と同様にして樹脂被覆顔料粒子の分散物の作製、評価を行った。結果は表4に示す。
【0131】
(実施例23〜33)
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(ニューポールPE−108、三洋化成工業製)及びその添加量を表4に記載のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(ニューポールPE−78、三洋化成工業(株)製)及び添加量に変更した以外は、それぞれ実施例1〜11と同様にして樹脂被覆顔料粒子の分散物の作製、評価を行った。結果は表4に示す。
【0132】
(実施例34〜44)
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(ニューポールPE−108、三洋化成工業製)を表4に記載のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(ニューポールPE−128、三洋化成工業(株)製)に変更した以外は、それぞれ実施例1〜11と同様にして樹脂被覆顔料粒子の分散物の作製、評価を行った。結果は表4に示す。
【0133】
(比較例1〜11)
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(ニューポールPE−108、三洋化成工業(株)製)を添加しない以外は、それぞれ実施例1〜11と同様にして樹脂被覆顔料粒子の分散物の作製、評価を行った。結果は表4に示す。
【0134】
(実施例45〜47)
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(ニューポールPE−108、三洋化成工業(株)製)の顔料に対する添加量を表5に記載の量に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って樹脂被覆顔料粒子の分散物の作製、評価を行った。結果は表5に示す。
【0135】
(実施例48〜50)
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(ニューポールPE−108、三洋化成工業(株)製)の顔料に対する添加量を表5に記載の量に変更した以外は、実施例2と同様の操作を行って樹脂被覆顔料粒子の分散物の作製、評価を行った。結果は表5に示す。
【0136】
(実施例51〜54)
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(ニューポールPE−108、三洋化成工業(株)製)の顔料に対する添加量を表5に記載の量に変更した以外は、実施例3と同様の操作を行って樹脂被覆顔料粒子の分散物の作製、評価を行った。結果は表5に示す。
【0137】
(実施例55〜57)
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(ニューポールPE−108、三洋化成工業(株)製)の顔料に対する添加量を表5に記載の量に変更した以外は、実施例4と同様の操作を行って樹脂被覆顔料粒子の分散物の作製、評価を行った。結果は表5に示す。
【0138】
(実施例58〜60)
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(ニューポールPE−108、三洋化成工業(株)製)の顔料に対する添加量を表5に記載の量に変更した以外は、実施例5と同様の操作を行って樹脂被覆顔料粒子の分散物の作製、評価を行った。結果は表5に示す。
【0139】
(実施例61〜63)
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(ニューポールPE−108、三洋化成工業(株)製)の顔料に対する添加量を表5に記載の量に変更した以外は、実施例8と同様の操作を行って樹脂被覆顔料粒子の分散物の作製、評価を行った。結果は表5に示す。
【0140】
(実施例64〜67)
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(ニューポールPE−108、三洋化成工業(株)製)の顔料に対する添加量を表5に記載の量に変更した以外は、実施例9と同様の操作を行って樹脂被覆顔料粒子の分散物の作製、評価を行った。結果は表5に示す。
【0141】
(実施例68〜70)
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(ニューポールPE−108、三洋化成工業(株)製)の顔料に対する添加量を表5に記載の量に変更した以外は、実施例10と同様の操作を行って樹脂被覆顔料粒子の分散物の作製、評価を行った。結果は表5に示す。
【0142】
(実施例71)
実施例2において、顔料濃度を13質量%となるように調製した以外は同様にして、樹脂被覆顔料粒子の分散物の作製、評価を行った。結果は表5に示す。
【0143】
(実施例72)
イエロー顔料(C.I.ピグメントイエロー74)17部と、上記の樹脂分散剤P−2を6.8部と、メチルエチルケトン17部と、1規定 NaOH水溶液8.5部と、イオン交換水50.7部とを混合し、ディスパー混合し、更に分散機(マイクロフルイダイザーM−140K、150MPa)で10パス処理した。続いて、得られた分散物を減圧下、55℃でメチルエチルケトンを除去し、さらに一部の水を除去し、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(ニューポールPE−108、三洋化成工業(株)製)を顔料固形分に対して2%となるように添加し、さらに水を添加して顔料濃度17質量%の樹脂被覆顔料粒子の分散物を得た。
顔料粒子径の測定、顔料分散物の評価については実施例1と同様に行った。結果は表5に示す。
【0144】
(実施例73)
実施例3において、顔料濃度を13質量%となるように調製した以外は同様にして、樹脂被覆顔料粒子の分散物の作製、評価を行った。結果は表5に示す。
【0145】
(実施例74)
イエロー顔料(C.I.ピグメントイエロー74)17部と、上記の樹脂分散剤P−3を6.8部と、メチルエチルケトン17部と、1規定 NaOH水溶液7.8部と、イオン交換水51.4部とを混合し、ディスパー混合し、更に分散機(マイクロフルイダイザーM−140K、150MPa)で10パス処理した。続いて、得られた分散物を減圧下、55℃でメチルエチルケトンを除去し、さらに一部の水を除去し、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(ニューポールPE−108、三洋化成工業(株)製)を顔料固形分に対して2%となるように添加し、さらに水を添加して顔料濃度17質量%の樹脂被覆顔料粒子の分散物を得た。
顔料粒子径の測定、顔料分散物の評価については実施例1と同様に行った。結果は表5に示す。
【0146】
(比較例12、13)
比較例2において、顔料濃度をそれぞれ10質量%、5質量%となるように調製した以外は同様にして、樹脂被覆顔料粒子の分散物の作製、評価を行った。結果は表5に示す。
【0147】
(比較例14、15)
実施例2において、顔料濃度をそれぞれ10質量%、5質量%となるように調製した以外は同様にして、樹脂被覆顔料粒子の分散物の作製、評価を行った。結果は表5に示す。
【0148】
(比較例16、17)
比較例3において、顔料濃度をそれぞれ10質量%、5質量%となるように調製した以外は同様にして、樹脂被覆顔料粒子の分散物の作製、評価を行った。結果は表5に示す。
【0149】
(比較例18、19)
実施例3において、顔料濃度をそれぞれ10質量%、5質量%となるように調製した以外は同様にして、樹脂被覆顔料粒子の分散物の作製、評価を行った。結果は表5に示す。
【0150】
(比較例20〜23)
実施例71〜74において、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(PE−108)を添加しない以外は、それぞれ同様にして、表5に記載の樹脂被覆顔料粒子の分散物の作製、評価を行った。結果は表5に示す。
【0151】
【表4】



【0152】
【表5】

【0153】
表4、表5から明らかな通り、本発明の構成を有する実施例は、安定性が低下する顔料濃度範囲であっても、いずれも良好な安定性を示すことが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料が樹脂分散剤によって被覆された樹脂被覆顔料と、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体と、水とを含み、前記顔料の濃度が液全質量に対して12質量%以上である顔料分散液。
【請求項2】
前記顔料がアゾ系顔料である請求項1に記載の顔料分散液。
【請求項3】
前記樹脂分散剤が、分散剤全質量の15質量%以下の親水性構造単位(A)と一般式(I)で表される疎水性構造単位(B)とを含み、芳香族環の含有割合が分散剤全質量の20質量%以下であって、前記親水性構造単位(A)が少なくとも(メタ)アクリル酸に由来の構造単位を含む請求項1または請求項2に記載の顔料分散液。
【化1】



〔式中、Rは、水素原子又はメチル基を表し、Arは無置換又は置換の芳香族環を表す。nは、平均の繰り返し数を表し、1〜6である。〕
【請求項4】
前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体の含有量が、前記顔料に対して0.5質量%以上27質量%以下である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の顔料分散液。
【請求項5】
前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体の含有量が、前記顔料に対して1質量%以上7質量%以下である請求項4に記載の顔料分散液。
【請求項6】
前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体の数平均分子量が10000以上30000以下である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の顔料分散液。
【請求項7】
前記樹脂分散剤の酸価が30mgKOH/g以上97.8mgKOH/g以下である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の顔料分散液。
【請求項8】
前記樹脂分散剤の分子量が重量平均分子量30000以上である請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の顔料分散液。
【請求項9】
前記顔料が、アゾ系イエロー顔料である請求項2〜請求項8のいずれか1項に記載の顔料分散液。
【請求項10】
顔料と樹脂分散剤と水と有機溶媒とを混合して分散する分散工程と、
分散後に前記有機溶媒及び水の少なくとも1部を除去する溶媒除去工程と、
を有する転相乳化法によって分散され、前記溶媒除去工程後にポリオキシエチレンポリオキシプロピンブロック共重合体を添加する添加工程と、
有する顔料分散液の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の顔料分散液、又は請求項10に記載の製造方法により製造された顔料分散液、を少なくとも含有するインク組成物。

【公開番号】特開2011−74256(P2011−74256A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−227994(P2009−227994)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】