説明

顔料含有インクを含むナノ粒子

新規な化合物、印刷される布、及び印刷又は被膜されたポリマー性布、絹布及び綿布に対する色強度及び汚れ堅牢性を改善する方法を提供する。新規な印刷用化合物は、シリカナノ粒子及び顔料に添加するシラン結合剤及び比較的少量のバインダーを有する水性混合物である。ナノ粒子及び結合剤は、約1:3から3:1の比率であることが好ましい。バインダーは、約0.1重量パーセントないし10重量パーセントの量で存在することができる。湿潤剤、分散剤、殺菌剤及び同様のものなどの、多くの他の任意の成分も存在することができる。印刷布の形成方法が示されており、該方法は、ナノ粒子と結合剤を混合し、水、顔料及びバインダーを添加し、粒子の大きさが約150nmないし200nmの大きさになるように混合物を粉砕し、化合物を付与して、印刷布を乾燥する段階を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
顔料含有インクの布に対する色強度及び堅牢性は、一般的には、インク混合物に添加されるポリマー性バインダーの量により制御される。しかしながら、布の「手触り」又は柔軟性に有害な変化をもたらすことなく、バインダーの添加量を増加させて、印刷した又は被膜した布に対する良好な顔料含有インクの堅牢性を達成することは、非常に困難である。ポリマー性バインダーの量が、良好な耐久性(又は堅牢性)を示すのに十分大きい場合は、布の手触りは、剛性又は粗いものとなる。バインダー布の手触りを一定に維持するためにバインダーの量を減少させると、良好な堅牢性、特に汚れに対する堅牢性が達成できない。
【0002】
織成又は不織のいずれの場合においても、布は、衣類、拭き布、及びオムツから自動車用カバーにいたるまで、広く種々異なる用途に使用される。これらの用途は、反対の特性及び特質を有する材料を必要とする。ある用途は、高度に湿潤可能な、例えば、オムツ及び女性用衛生製品のためのライナーなどの布、及び衣類のように柔軟な布、又は拭き布及びタオルのように吸収性のある布を必要とする一方、例えば、車及びボート用カバーのような防護用布などの、強度を必要とするものもあり、更には、例えば、殺菌消毒用ラップ及び手術用ガウンなどの医療用布のような、撥水性及びバリア特性を必要とするものもある。
【0003】
布に対する多くの用途は、関連性がなく、かつ逆の特性のように見えるが、共通の特性は、幾つかの方法でそれらに印刷することが望まれることである。この印刷は、宣伝、製品認識、装飾、しみを不明瞭にするなどの目的のために成される。不幸なことに、多くの布が使用される条件のために、完全に成功した印刷システムは開発されておらず、最も特定的には、室温で実施することができる印刷システムが開発されていない。
【0004】
したがって室温で塗布でき、かつ硬化しやすく、最も一般的な清浄用化学物質に曝した時、及びほとんどの使用条件の下で、布に残存するであろう、すなわち高い色強度及び汚れ堅牢性を有する印刷(インク)用化合物を形成することが本発明の目的である。形成された印刷用化合物で印刷される布を準備して、化合物で布に印刷する方法を提供することが本発明の別の目的である。
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,284,703号公報
【特許文献2】米国特許出願10/137052
【非特許文献1】AATCC著「Color Technology in the Textile Industry」第二版
【非特許文献2】Edwin P.Pluedemann著「Silane Coupling Agents」第二版18−22ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、一般的には、印刷又は被膜したポリマー性布、絹布、及び綿布上における、色強度及び汚れ堅牢性を改善するための、新規な化合物及び方法に向けられる。
【0007】
この新規な印刷用化合物は、顔料及び比較的少量のバインダーに添加するシリカナノ粒子及びシラン結合剤を有する水性混合物である。ナノ粒子及び結合剤は、好ましくは約1:3から約3:1までの比率とする。バインダーは、約0.1重量パーセントないし10重量パーセントの量で存在するようにすることができる。湿潤剤、分散剤、殺菌剤及び同様のものなどの多数の他の任意の成分も存在させることができる。
【0008】
化合物は、多くの技術を通して布に塗布されて、乾燥される。布は、水圧交絡したパルプ及びスパンボンド繊維、スパンボンド布、メルトブローン布、織成布及びスパンボンド及びメルトブローン布の積層体の複合布とすることができる。織成布は、綿、絹、ポリエステル又はナイロンとすることができる。
【0009】
本発明は更に、ナノ粒子、シラン結合剤、バインダー、及びインクを有し、水性で付与された化合物の乾燥残留物を有する印刷布を含む。
【0010】
ナノ粒子と結合剤を混合し、水、顔料及びバインダーを添加し、粒子サイズが約150ないし200nmになるまで混合物を粉砕し、化合物を付与し、更に印刷布を乾燥する段階を含む、印刷布の形成方法もまた提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明者らは、インクの良好な色堅牢性及び強度の色強度が、シリカナノ粒子及びシラン結合剤を、少量のポリマー性バインダーとともに使用することにより達成できることを発見した。本発明者らは、0.5から20重量パーセントのシラン結合剤を有する約0.1から10重量パーセントのシリカナノ粒子が、アクリル又はポリウレタンポリマー性バインダーを有する顔料含有インクシステムにおける、汚れに対する堅牢性及び色強度を改善できることを発見した。
【0012】
本発明の化合物は、ポリエステル、ポリオレフィン、綿、ナイロン、絹などの疎水性及び親水性布に、スクリーン式印刷、デジタル式印刷、浸漬型被膜形成、スピン型被膜形成スプレー塗布などの、当業者に知られているあらゆる多くの手段によって付与することができ、布は、織成又は不織とすることができる。
【0013】
新しいインクに使用される布の基本重量又は成分には、何の制約もない。したがって、ボンデッドカーデッドウエブ、スパンボンド布又はメルトブローン布、及び米国特許第5,284,703号に記載されており、一実施形態がHydroknit(登録商標)材料として商業的に知られているパルプを含む布のような、織成布及び不織布を使用することができる。このような布は、単一層実施形態、又は接着剤、ニードルパンチ法、熱点接着法、通気式接着法、及び当業者に知られているあらゆる他の方法を含む、多くの異なる積層技術により形成することができる多層積層体の一成分とすることができる。
【0014】
何らかの特定の理論に縛られるものではないが、シラン結合剤は、有機ポリマーと無機シリカナノ粒子との間で架橋結合することができ、結合剤の添加が、高い色強度を備えて被膜布の耐久性を増進することができると、本発明者らは考える。従来のインク配合は、アクリル及びポリウレタンバインダーなどのポリマー性バインダーを添加することによって、堅牢性特性の改善をはかるものである。しかしながら、発明者は、添加されるバインダーの量と汚れ堅牢性改善の程度との間に、何の著しい関係もないことがわかった。同様に本発明者らは、シリカナノ粒子のみとポリマー性バインダーとでは、汚れ堅牢性を著しくは改善しないことを見出した。しかしながら、シリカ粒子及びシラン結合剤は、以下に示すようなアクリル及びポリウレタンバインダーなどのポリマー性バインダーの結合効果を改善することができる。シラン結合剤を有するシリカナノ粒子は、ポリマーとポリマーとの間、又はポリマーと顔料との間、又はポリマーと布表面との間の架橋結合により、ポリマー性バインダーの結合を促進することができると、本発明者らは考える。
【0015】
汚れに対する色堅牢性は、AATCCテスト法8−1996に従って、5インチx7インチ(127mmx178mm)のテストされる材料片を、イリノイ州60613シカゴのRavenswood Ave.4114のAtlas Electric Device Companyより入手可能な、汚れ計測器CM−5型内に配置して計測される。汚れ計測器は、サンプルを横切って、一定の大きさの力で予め定められた回数だけ綿布を前後に叩くか又は擦り付けるものである。サンプルから綿に転写された色は、スケールで比較され、5は、綿に何の色も付かないことを示し、1は、綿に多量の色が付くことを意味する。数字が大きいことは、比較的色堅牢性の高いサンプルであることを示す。比較用スケールは、ノースカロライナ州27709、リサーチトライアングルパーク、PO Box12215の、American Association of Textile Chemists and Colorists(AATCC)より入手可能である。
【0016】
色強度(K/S)は、バージニア州レストンのHunter Associates Laboratory,Inc.(hunterlab.com)より入手可能なHunterlab Miniscan XE−Plus分光測光計を使用して計測された。類似した色間の差は、ΔE*値が3より大きい値を示すかどうかで比較することが可能である。この場合には、L***色値測定及びΔE*計算(CIE1976 Commission Internationale de l’Eclairage)は、Hunterlab Miniscan XE−Plus分光測光計を使用して、操作者の手により成される。平均不透明度は、一般的には、各々のフィルターを使用して、3回の測定の平均の合計とする。デルタE*は、次のような方程式によって計算される。

ΔE*=SQRT[(L*標準−L*サンプル)2+(a*標準−a*サンプル)2+(b*標準−b*サンプル)2
【0017】
ΔE*が大きくなると、色濃度の変化が大きくなる。テストは、ASTM DM224−93及びASTM E308−90にしたがって実施される。ΔE*の値が、つや消し仕上げをした基材に対して3.0より小さい場合は、この色変化/差は、人間の目では観察することができないと一般的には考えられる。光学濃度計テストの詳細な説明は、AATCC(American Association of Textile Chemists&Colorists)より1997年に出版された「Color Technology in the Textile Industry」第二版より入手可能である。
【0018】
ここで使用されるナノ粒子は、使用者により望まれる特定の特性を与えるために、アルミニウム、銀、銅、ニッケル及び金などの金属分子を添加して変成させたシリカナノ粒子である。これらは、撥水性、抗菌活性及び表面張力変成を含む。
【0019】
金属変成シリカナノ粒子は、ナノ粒子と金属イオンを含む溶液を混合することにより形成される。このような溶液は、一般的には、金属化合物を溶媒に溶解させることにより形成され、溶液内に自由金属イオンを形成する。金属イオンは、電位差によりナノ粒子に引き込まれて吸収される。ナノ粒子の変成の更なる説明は、2002年4月30日付けの米国特許出願10/137052に記載されており、引用により組み込まれる。
【0020】
遷移金属とシリカ粒子との間に強い結合を形成するために、多くの技術を利用することができる。例えば、シリカゾルは、一般的には、約pH7より大きい値で、特定的にはpH9−10の間で安定すると考えられる。水に溶解されると、遷移金属の塩は酸性となる(例えば、塩化銅はおよそpH4.8である。)。したがって、このような酸性遷移金属塩は、塩基性シリカゾルと混合すると、pH値が低くなり、金属塩がシリカ粒子の表面上に沈殿する。これは、シリカ粒子の安定性を弱めるものである。更に、小さいpH値では、シリカ粒子の表面上に存在するシラノール基の数が減少する。遷移金属は、このようなシラノ−ル基と結合するので、遷移金属の粒子容量は、低いpH値では小さくなる。金属とシリカ粒子が結合して、「配位結合」及び/又は「共有結合」を形成することが可能である。このことは、使用中(例えば、洗濯後)に、自由金属の状態となる可能性を減少させるような、種々異なる利点を有することができる。
【0021】
酸性遷移金属塩(例えば塩化銅)の添加が原因となるpH低下の影響を改善するために、遷移金属と混合する時に、シリカ粒子のpHに対して選択的制御を使用することが望ましい。pHの選択的制御は、当業者に知られている、周知のあらゆる種々異なる緩衝作用システムを使用して達成することができる。
【0022】
多くの適当な金属変成シリカナノ粒子が、商業的に入手可能である。これらの例としては、日本の東京所在の、日産化学株式会社の無機材料部門から入手できるSNOWTEX(登録商標)−C、SNOWTEX(登録商標)−AK及びSNOWTEX(登録商標)−OXSナノ粒子がある。
【0023】
一般的に言うと、シラン結合剤は、その表面に存在するシラノール基(Si−OH)を通して、シリカ粒子に共有結合することができる。特定的には、シラン結合剤のケイ素原子は、シラノール基の酸素と共有結合を形成することができる。シラン結合剤がシリカ粒子と共有結合すると、有機官能基は遷移金属と配位結合を形成することができる。例えば、銅は、アミノプロピルトリエトキシシラン結合剤に存在する異なるアミノ基と配位結合を形成することができる。
【0024】
シランは、当技術分野において、様々な物質をガラスに結合する場合に、有効な結合剤として知られている。例えば、シラン結合剤は、ガラス繊維が補強のために樹脂に添加されて、ガラス繊維表面と該樹脂の間に結合を形成するために、ガラス繊維産業において長い間使用されてきた。このような結合においては、シラン結合剤のケイ素原子は、ガラスのケイ素原子と結合又は引力を形成するが、シラン結合剤の炭水化物部分は、炭水化物樹脂と結合又は引力を形成すると、一般的には考えられる。この共有結合理論は、1991年第二版のニューヨーク州ニューヨークのPlenum PressのEdwin P.Pluedemannによる「シラン結合剤」18−22ページに記載されている。したがって、シラン結合剤が、インクの色堅牢性を促進又は改善することは、ある程度驚きであった。
【0025】
本発明に有益なシランは、炭水化物半組成物、すなわち有機アルコキシシランを含む有機シランを含むものであり、次のような組成式である。
【数1】

ここでZは、ラジカル重合化条件の下で反応することが可能な、ビニル基、アリル基又は他の二重結合基を表し、R1、R2、及びR3は、メトキシ基、エトキシ基、及び他のアルコキシ基、アミノ基、エポキシ基、ウレイド基、及びビニル基などの反応基、塩素又は臭素ハロゲン、アセトキシ基などのエステル或いは−O−Si又はアルキル又はアリル炭水化物基などの非反応基を表す。3つのR基は、すべて同じもの又は異なるものとすることができるが、加水分解による反応剤として機能するために、少なくとも1つのR基は、反応性としなければならない。
【0026】
使用することができる適当な有機官能シラン結合剤の幾つかの例としては、これらに制限するものではないが、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、5−へキセニルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、4−ビニルフェニルトリメトキシシラン、3−(4−ビニルフェニル)プロピルトリメトキシシラン、4−ビニルフェニルメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、及びこれらの部分的加水分解物を含む。
【0027】
これらのシランに対しては、Huls America Inc.、Chisso Corp.、OSI Specialities Inc.及びDow Corning Corporationを含む多くの供給者が存在する。ここで使用するための例示的シランは、日本のチッソ株式会社からのSILO−ACE S−510(登録商標)という商標名で入手可能な、3−グリシジロキシプロピルトリメトキシシラン(GPTS)(CAS2602−34−8)及びウイスコンシン州ミルウオーキーのSigma−Aldrich Chemicalより入手可能な(3−アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)(CAS919−30−2)を含む。
【0028】
本発明で使用されるシランは、混合される熱可塑性ポリマーの0.01重量パーセントないし10重量パーセントの量で存在するべきである。より特定的には、約0.1重量パーセントないし2.5重量パーセントの量が、より特定的には約1重量パーセントの量が十分な量であると考えられる。
【0029】
本発明に有用なシランは、通常は、室温及び大気圧のもとで液状のものであるが、粉末又は細粒の形態の固体であってもよく、これは混合処理を比較的簡単なものとする。
【0030】
ここで使用されるのに適当なバインダーは、アクリル、ポリウレタン及びポリエステルバインダーを含むが、より一般的には、配合された印刷用インクとして当業者に知られている、あらゆる適当なバインダーを使用することができる。例示的バインダーは、Soluryl R40及びSnowtexシリーズのバインダー(以下の表2参照)を含む。バインダーは、粉砕用基材で、0.1重量パーセントないし10重量パーセントの量で、より特定的には約4重量パーセントないし約7重量パーセントの量で存在することができる。
【0031】
顔料は、染料のような液体ではなく、粒状着色物体を有する化合物を意味する。本発明を実施する場合に使用することができる顔料は、配合に使用されるナノ粒子、結合剤、及びバインダーと確実に相互作用することができるあらゆるものを含む。このような顔料の非限定的例としては、カーボンブラック、エマコールブルー、エマコールカーマイン、イルガホア顔料、カーボジェットイエロー、及びプリントフィックスレッドを含む。
【0032】
本発明の新しいインク化合物を準備する方法は、シリカナノ粒子に結合剤を表面添加することから始めることができる。これは、室温でpHが6から8、又は、より特定的には約7で、ナノ粒子をシラン結合剤に3:1から1:3、より特定的には2:1ないし1:2、最も特定的には約1:1の割合で曝すことにより達成される。ナノ粒子と結合剤の混合は、発熱反応を起こして、存在する反応剤の量に応じて、数時間の間60℃から70℃の温度になり、最後には室温に戻る。
【0033】
次いで、顔料粉砕用基材は、顔料、必要な場合は分散剤、バインダー、及び水、並びに望まれる任意の成分に、上記のようにして準備された結合剤変成ナノ粒子を混合することにより準備される。0.3mm又は0.4mmの直径のZrビーズからなる粉砕用ビーズが、顔料粉砕用基材に添加され、混合物は、粒子の大きさが約150mmないし200mmになるまで粉砕される。混合物の最終濃度は、インクに対し約15から20重量パーセントである。
【0034】
次いで、表面張力を調整するために必要であれば、粉砕用基材は、一般的には、水、湿潤剤、殺菌剤、腐蝕抑制剤、及び表面活性剤と混合される。湿潤剤は、ポリエチレングリコール、(PEG)200、400、600、グリセリン、ジエチレングリコール(DEG)、及び2−ピロリジドンを含む。この段階の後では、インクは約から5重量パーセントの濃度を有する。
【0035】
インクは次に、布地又は布に付与されて、約110℃から120℃で乾燥される。硬化処理は、乾燥段階なしに実施することができるが、布の良好な熱固定は水を完全に取り除いた後に達成することができることから、別個の乾燥段階を有することが望まれる。
【0036】
本発明を実施するのに使用することができる布にインクを付与するのに、多くの方法がある。当業者に知られているあらゆる他の適当な方法も使用することができる。非限定的な方法の例としては、以下に簡単に述べているような、前計量システム及び後計量システムを含む。
【0037】
前計量システム(最初から余分なインクが塗布されない)
スロット型:この方法は、スロットを備えたヘッドを利用する。被膜形成材料は、このスロットを通して直接基材上に適量塗布される。
【0038】
直接グラビア印刷:被膜形成材料は、グラビア印刷ロールの小さいセルの中にある。基材は、グラビア印刷ロールと直接接触して、セル内の被膜形成材料が、基材上に転写される。
【0039】
反転転写ロールを備えたオフセットグラビア印刷:直接グラビア印刷と類似しているが、グラビア印刷ロールは被膜形成材料を別のロールに転写する。この別のロールが、基材と接触するようになる。
【0040】
カーテン式被膜形成:これは、多数のスロットを備えた被膜形成ヘッドである。異なる化合物である被膜形成材料は、基材と接触する前に、これらのスロットを通して計量され、与えられた距離で落ちる。
【0041】
スライド(カスケード)式被膜形成:この方法は、カーテン式被膜形成と類似しているが、被膜形成材料の多層は、被膜形成ヘッドを出る時に基材と直接接触する。被膜形成ヘッドと基材の間には開口ギャップはない。
【0042】
前回転ロール・反対方向回転ロール式被膜形成(転写ロール式被膜形成として知られてる):
これは、重なったロールからなり、計量目的のために、1つのロールから次のロールに被膜形成材料を転写する。最後のロールが、基材と接触する。基材の移動方向及び最後のロールの回転に応じて、前回転ロール式又は反対方向回転ロール式被膜形成のいずれかとなる。
【0043】
押出式被膜形成:この技術はスロット型に類似しているが、被膜形成材料は室温では固体である。材料は、被膜形成ヘッド内で溶融温度に加熱されて、スロットを通して基材に直接液体状で適量塗布される。冷却すると、材料は再び固体になる。
【0044】
回転スクリーン:被膜形成材料は、スクリーン表面を有するロールに給送される。ロール内部のブレードが、スクリーンを通して被膜形成材料を外側に押し付けて、基材に転写する。
【0045】
スプレーノズル塗布:被膜形成材料は、スプレーノズルを通して、直接基材に押し付けられる。望ましい量の被膜を塗布することができる(前計量システム)。或いは、基材はスプレーノズルによって飽和量まで塗布されて、ニップローラーを通過することにより余分な材料を絞ることができる(後計量方法)。
【0046】
フレキソ印刷:被膜形成材料は、ロール上の隆起したパターン化した表面上に転写される。次にこのパターン化したロールは、被膜形成材料を基材に転写する。
【0047】
デジタル式布印刷:被膜形成用すなわち印刷用のインクは、インクジェットカートリッジ内に入れられる。布基材が、印刷用インクジェットヘッドの下に導入されて、インクが基材上に噴射され、印刷される画像を形成する。
【0048】
後計量(最初は過度にインクが塗布され、続いて取り除かれる):
ロッド式被膜形成機:被膜形成材料が基材表面に塗布されて、余分な材料は、ロッドにより取り除かれる。メイヤーロッドが、この余分な被膜を除去するために使用される主たる方法である。
【0049】
エアーナイフ式被膜形成:被膜形成材料が基材の表面に塗布されて、余分な材料は、高圧空気を使用して吹き飛ばすことにより取り除かれる。
【0050】
ナイフ式被膜形成:被膜形成材料が基材の表面に塗布されて、余分な材料は、ナイフ形態のヘッドにより取り除かれる。
【0051】
ブレード式被膜形成:被膜形成材料が基材の表面に塗布されて、余分な材料は、平坦なブレードの形態のヘッドにより取り除かれる。
【0052】
絞りロールを伴う浸漬式被膜(飽和)形成:基材は、塗布されるように材料内に浸漬される。飽和した基材は次に、2つのローラーを通して引っ張られて、余分な材料は絞り取られる。
【0053】
スピン型被膜形成:被膜される基材は、高速で回転する。被膜形成材料が回転する基材に塗布されて、余分な材料は回転により縁から飛ばされる。
【0054】
溢流泉式被膜形成:被膜形成材料は、溢流泉ヘッドにより基材に塗布される。余分な材料はブレードにより取り除かれる。
【0055】
ブラシ塗布:被膜形成材料がブラシにより基材に塗布される。余分な材料は、基材表面におけるブラシの動きによって調整される。
【0056】
インクの汚れ堅牢性を高めるために、印刷布は、次に「硬化」されなければならない。硬化は、室温で、十分な湿分に布を曝し、更に汚れ堅牢性増加させるように十分な時間付与される。硬化は、布基材の型及び厚さ、並びに環境要因に応じて、約150℃−200℃で十分な時間行われる。例えば、綿は、180℃で3分間の硬化時間が必要である。ナイロンは、150℃で3分間が必要であり、PETは、180℃で3分間の硬化時間が必要である。(時間はおよそであることに留意する。)
【0057】
顔料粉砕用基材の例:結合剤のないインク、バインダー、ナノ粒子
顔料粉砕用基材(表1)は、5個の異なるバインダーを添加した後、堅牢性を比較するために形成された。これらの実施例においては、結合剤は混合物に添加されなかった。これらのバインダーポリマーは、以下の表2に示されている。
表1

表2

【0058】
表2の5個の異なるポリマーが、各々1重量パーセントで顔料粉砕用基材(上記した表1)に添加され、色強度(K/S)及び汚れ堅牢性が評価された。バインダーポリマーのない対照例も、テストされた。ポリマーが、顔料粉砕用基材(表1に示されているような、顔料+Solsperse(分散剤)+Snowtex AK)に添加されて、Polyester Twill Fabricが、ポリマー性バインダーを有する/有さない顔料粉砕用基材内に浸漬され、各々を120℃で乾燥して、180℃で3分間硬化させた。
【0059】
硬化後、布を生水で洗浄し、ポリエステル布の表面から固定していない顔料を取り除いた。汚れ堅牢性及び色強度(K/S)が、洗浄されたポリエステル布を使用して評価された。
【0060】
表3の結果は、バインダーのない顔料粉砕用基材と比較した場合に、汚れ堅牢性或いは色強度のいずれにも、顕著な改善は見られなかったことを示している。
表3

【0061】
汚れ堅牢性を改善するために顔料に添加されるポリマーの別の例が、以下の表4に示されている。溶液は、日本のSanyocolor Inc.から得られるエマコールブルー顔料、Snowtex(登録商標)−AKシリカナノ粒子(幾つかの例において)、及び韓国のHanwha Chemical Co.から得られるSoluryl R−40アクリル系バインダーで、示された重量パーセントで形成された。これらの様々な溶液は、PET、綿及び絹布上に、浸漬式被膜形成によって被膜され、120℃で乾燥して、180℃で3分間硬化させた。汚れ堅牢性は、AATCC 8−1996テスト法で評価され、K/S値は、上記したようなHunter lab Miniscan XE−Plusを使用して計測された。
表4

【0062】
例えば、6重量パーセントのSoluryl R−40及び1.1重量パーセントのSnowtex(登録商標)−AKが、絹布においては最も高い堅牢性を得たが、6重量パーセントのアクリル系バインダーの布の手触りは良いものではないことに留意するべきである。汚れ堅牢性におけるアクリル系ポリマーの量の効果は、表4に示されているように、大きいものではなかった。シリカナノ粒子の存在は、色強度を改善するように見えるが、汚れ堅牢性を確かに改善するものではない。
【0063】
顔料レッド溶液(エマコールカーマイン混合物)が、日本のSanyocolorから得られるエマコールカーマイン(30%)を23.5g、韓国のHanwha Chemical Co.から得られるSoluryl S372顔料分散剤を46.1g、及び水を277.8gを混合して準備された。示された重量パーセントのSoluryl R−40アクリル系バインダー、及びSnowtex(登録商標)−AK(幾つかの例において)が、以下の表5に示されるように添加された。布は、浸漬式被膜形成をされ、180℃で3分間加熱処理された。これらの結果は、アクリル系バインダーの量、ナノ粒子の存在、及び汚れ堅牢性特性の間に特に顕著な関係はないことを示している。
表5

【0064】
ナノ粒子及びシラン結合剤あり及びなしの布浸漬式被膜形成テスト
PET、綿、及び絹布は、表6に示したように、インク内に浸漬され、一晩中開放空気で乾燥された。乾燥した布は、小型実験室用ステント形成機を使用して、180℃で3分間硬化させて、流水で洗浄し、乾燥した。成分が添加されて、浸漬する前にZrビード粉砕機を使用して、2時間粉砕させた。粉砕後、混合物は、Whatmann濾紙(No1及びNo5)を使用して濾過した。
表6

【0065】
色値(K/S、L、a、b)及び汚れに対する堅牢性が評価された。結果は、表7、8及び9に示されている。
表7

表8

表9

上記した表7、8及び9に示されているように、Snowtex(登録商標)−AK及びシラン結合剤が、ポリマー性バインダーシステムを有する顔料含有インクに添加されたものの色強度及び汚れ堅牢性の改善は、ポリマー性バインダーのみを添加した場合よりも、より明らかであった。
【0066】
ナノ粒子及びシラン結合剤あり及びなしの商業的インク
4つの商業的に入手可能な顔料含有インクが、Snowtex(登録商標)−AK及び3−グリシジロキシプロピルトリメトキシシラン(GPTS)あり及びなしの場合でテストされた。3つの異なる布を顔料含有インク配合物内に浸漬させて、180℃で3分間乾燥/加熱処理し、流水で洗浄した。色強度及び汚れ堅牢性が比較され、その結果が表10、11、12及び12Aに示されている。
表10

表11

表12

表12A

【0067】
顔料含有インクの4つのすべての色は、Snowtex(登録商標)−AK及びGPTSを添加することにより、汚れ堅牢性又は色強度を大きく改善することが示された。絹布においては顕著な改善は見られなかったが、ポリエステル布においては、色強度又は汚れ堅牢性に特徴的な改善が見られた。
【0068】
ナノ粒子及びシラン結合剤を有するインクに対するデジタルインクジェット印刷機テスト
広いフォーマットを有するデジタルインクジェット印刷機のためのインクが準備され、インクジェット式テストが、ポリエステル、綿及び絹に実行された。粉砕用基材の成分が、0.3mmの直径のZrビードを有する高速ビードミルを使用して、2時間ボールミルにより粉砕された。
表13
粉砕用基材の準備

【0069】
インク配合物
粉砕後、以下の化学物質が、表13の粉砕用基材に添加されて、最終インク配合物が形成された。
表14

【0070】
表14からの配合物を印刷するために使用された印刷機は、Mimaki Textile−jet TX2−1600であった。配合されたインクを印刷するのに、特に問題はなかった。布用印刷機のインクジェットカートリッジからのインクジェットでは、シリカナノ粒子及びシラン結合剤からは、何も逆の効果はなかった。CYMK(シアン、イエロー、マゼンタ、ブラック)を含むシリカナノ粒子を有する8色の顔料含有インクが、表14に示されているのと同じ方法で準備された。
【0071】
顔料含有インクの色堅牢性が、以下の表15、16及び17に示されている。
表15
綿布に対する堅牢性結果

表16
絹布に対する堅牢性結果

表17
ポリエステル布に対する堅牢性結果

【0072】
当業者に認識されているように、本発明に対する変更及び修正は、当業者の能力の範囲内とみなされる。このような変更の例は、上記した特許に含まれており、これらの各々は、本明細書に一貫性がある範囲で引用によりここに組み入れられる。このような変更及び修正は、本発明の範囲内であると、発明者により意図されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、インク、バインダー、シリカナノ粒子及びシラン結合剤を含むことを特徴とする印刷用化合物。
【請求項2】
前記ナノ粒子と結合剤は、3:1から1:3の比率で存在することを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記ナノ粒子は、約0.1重量パーセントないし10重量パーセントの量で存在することを特徴とする請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
前記バインダーは、約0.1重量パーセントないし10重量パーセントの量で存在することを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
分散剤を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
前記シラン結合剤は、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、5−へキセニルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、4−ビニルフェニルトリメトキシシラン、3−(4−ビニルフェニル)プロピルトリメトキシシラン、4−ビニルフェニルメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、及びこれらの混合物及び部分的加水分解物から成るグループから選択されることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
前記ナノ粒子は、アルミニウム、銅、ニッケル、銀、金及びこれらの混合物から成るグループから選択された金属イオンを有することを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
水圧交絡したパルプとスパンボンド繊維との複合布、スパンボンド布、メルトブローン布、織成布、及びスパンボンド布とメルトブローン布の積層体から成るグループから選択される基材上に印刷されることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
前記基材は、綿、絹、ポリエステル又はナイロンから形成される織成布であることを特徴とする請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
水性で付与された0.1ないし10重量パーセントのナノ粒子、0.1ないし10重量パーセントのシラン結合剤、0.1ないし10重量パーセントのバインダー、及びインクを含む化合物の乾燥した残留物を有することを特徴とする印刷布。
【請求項11】
前記シラン結合剤は、3−グリシジロキシプロピルトリメトキシシランと3−アミノプロピルトリエトキシシラン、及びこれらの混合物から成るグループから選択されることを特徴とする請求項10に記載の印刷布。
【請求項12】
水圧交絡したパルプ及びスパンボンド繊維の複合布、スパンボンド布、メルトブローン布、織成布、及びスパンボンド布とメルトブローン布の積層体から成るグループから選択されることを特徴とする請求項10に記載の印刷布。
【請求項13】
乾燥前に、前記化合物は、スロット型、直接グラビア印刷、反転転写ロールを備えたオフセットグラビア印刷、カーテン式被膜形成、スライド式被膜形成、前回転・反対方向回転ロール式被膜形成、押出式被膜形成、回転スクリーン、スプレーノズル塗布、フレキソ印刷、ロッド式被膜形成、エアーナイフ式被膜形成、ナイフ式被膜形成、ブレード式被膜形成、絞りロールを伴う浸漬式被膜形成、スピン型被膜形成、溢流泉式被膜形成、ブラシ塗布から成るグループから選択される方法によって、前記布に塗布されることを特徴とする請求項10に記載の印刷布。
【請求項14】
シリカナノ粒子とシラン結合剤を1:3から3:1の比率で混合し、
水、バインダー及び顔料を添加し、
粒子の大きさが150nmから200nmになるように粉砕して、粉砕化合物を形成し、
前記化合物を前記布に付与し、
前記布を乾燥する、
段階を含むことを特徴とする印刷布の形成方法。

【公表番号】特表2008−545847(P2008−545847A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−514607(P2008−514607)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【国際出願番号】PCT/US2005/019162
【国際公開番号】WO2006/130144
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(504460441)キンバリー クラーク ワールドワイド インコーポレイテッド (396)
【Fターム(参考)】