説明

顔料組成物の製造法

本発明は、重合体および顔料を混合して混合物を形成する工程および混合物を約70℃〜250℃の温度に加熱して顔料組成物を形成する工程を含む顔料組成物の製造法に関する。さらに、本発明の方法は顔料組成物を水性媒体中に分散させて水性分散体を形成する工程を含む。また、顔料組成物および水性顔料組成物は、これもまた記載されるインクジェット用インク組成物に用いられ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料組成物、顔料組成物の製造法ならびにこれらの顔料組成物を含む水性分散体およびインクジェット用インク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、インクジェット用インク組成物は、キャリアとして機能するビヒクル、および着色剤、例えば、染料又は顔料から成る。同様に、所望の全体的性能特性を達成するようにインクジェット用インクを調整するために、添加剤および/又は共溶媒が利用され得る。
【0003】
一般に、顔料は単独では液体ビヒクルに容易に分散可能ではない。インクジェット印刷に用いられ得る安定な顔料分散体を提供し得る様々な技術が開発されてきた。例えば、特定の分散剤中での分散性を改良するために、顔料に分散剤が添加され得る。分散剤の例として、水溶性重合体および界面活性剤が挙げられる。典型的には、これらの重合体分散剤は、溶解性および従って顔料安定性を維持するために、20000未満の分子量を有する。
【0004】
顔料の表面は種々の異なる官能基を含有し、また存在している基の種類は特定の種類の顔料に依存する。これら顔料の表面に、材料そして、特に重合体をグラフト化するためにいくつかの方法が開発されてきた。例えば、表面の基、例えばフェノールおよびカルボキシル基を含有するカーボンブラックに重合体が付着され得ることが示された。しかしながら、すべての顔料が同じ特定の官能基を有していないため、顔料の表面の固有の官能基に依存する方法は一般的には適用され得ない。
【0005】
同様に、種々の異なる付着した官能基を有する顔料を提供し得る変性顔料製品の製造法が開発されてきた。例えば、米国特許第5851280号は、例えば、有機基がジアゾニウム塩の一部であるジアジニウム反応による付着を含む顔料への有機基の付着方法を開示している。
【0006】
同様に、付着した重合体基を有する変性顔料を含んで変性顔料を調製するための他の方法が記載された。例えば、PCT公開第WO01/51566号は、第1の化学基と第2の化学基を反応させて第3の化学基を付着した顔料を形成することによる変性顔料の製造法を開示している。同様に、これらの顔料を含むインクジェット用インクを含有するインク組成物が記載されている。同様に、米国特許第5698016号は、両親溶媒性イオンを含有する組成物および少なくとも1つの有機基を付着したカーボンを含有する変性炭素製品を開示している。有機基は両親溶媒性イオンとは反対の電荷を有している。同様に、インクジェット用インク組成物を含めて、この組成物を加えた水性および非水性インクおよび塗料が開示されている。同様に、重合体被覆炭素製品およびその製造法が米国特許第6458458号に記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの方法は付着した基を有する変性顔料を提供するが、顔料組成物、特に重合体を含有する顔料組成物を製造し、その結果変性顔料の形成に有益な代替案を提供するための改良された製造プロセスの必要性が依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、重合体および顔料を混合して混合物を形成する工程、そして混合物を約70℃〜250℃の温度に加熱して顔料組成物を形成することを含む顔料組成物の製造法に関する。好適には、重合体は、カルボン酸基のアンモニウム塩を少なくとも1種含有する。同様に、この方法によって得られる顔料組成物が示される。
【0009】
さらに、本発明は、この明細書に記載される顔料組成物を形成しそして顔料組成物を水に分散させて水性顔料分散体を形成する工程を含む水性顔料分散体の製造法に関する。同様に、この方法によって得られる水性顔料分散体が開示される。
【0010】
さらに、本発明は、液体ビヒクルおよびこの明細書に記載された顔料組成物又はこの明細書に記載された顔料組成物を含有する水性顔料分散体のいずれかを含むインクジェット用インク組成物に関する。好適には、顔料組成物および水性顔料分散体は、この明細書に記載された方法を用いて製造され、また液体ビヒクルは水性ビヒクルである。
【0011】
当然のことながら、前記の概要および以下の詳細な説明のいずれも、典型的そして説明だけであり、請求項どおりに、本発明のさらなる説明を与えることが意図される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、顔料組成物および水性顔料分散体の製造法ならびに得られる顔料組成物および水性顔料分散体に関し、またそれらを含むインクジェット用インク組成物に関する。
【0013】
本発明の方法は、重合体および顔料を混合して混合物を形成する工程を含む。続いて、得られた混合物を加熱して重合体組成物を形成する。好適な態様において、本発明の方法は、さらに、水性媒体に重合体組成物を分散して水性顔料分散体を形成する工程を含む。これらの各工程は以下にさらに詳細に説明される。
【0014】
本発明の方法において、重合体および顔料を混合して混合物を形成する。好適には、重合体は、水溶解性重合体、例えば、ポリアルキレンオキサイド基を含有する重合体、第4級アンモニウム基を含有する重合体、ビニルアセテートの重合に続く加水分解による基を含有する重合体(例えばポリビニルアルコール)、ビニルピロリドンの重合による基を含有する重合体(例えば、ポリ−N−ビニルピロリドン)、および少なくとも1種の酸性基、例えばスルホン酸基又はカルボン酸基、又はナトリウム、カリウム、およびアンモニウム塩を含むそれらの塩を含有する重合体である。最も好適な重合体は少なくとも1種のカルボン酸基の塩、特に少なくとも1種のカルボン酸基のアンモニウム塩が含有する重合体である。この好適な態様のために、例えばカルボン酸基又はその塩を含有するモノマーの重合によって製造される重合体およびカルボン酸基又はその塩に変えられ得る基を含有するモノマーの重合によって製造される重合体を含むそのような基を有する任意の重合体が用いられてよい。重合体は、カルオン酸アンモニウム塩の基を含有する単独重合体又は共重合体であり得て、またランダム重合体、交互重合体、グラフト重合体、ブロック重合体、スター状重合体、および/又は櫛状重合体であり得る。好適には、重合体は、少なくとも10重量%、さらに好適には少なくとも20重量%、そして最も好適には少なくとも30重量%のカルボン酸基のアンモニウム塩を含有する。同様に、重合体は、少なくともその1個がアンモニウム塩の形をしている複数の種類のカルボン酸基を含んでよい。本発明の方法に役立つ重合体の例として、限定されないが、アンモニウムアクリレート又はアンモニウムメタクリレート重合体、例えばスチレンーアンモニウムアクリレート共重合体又はスチレンーアンモニウムメタクリレート共重合体が挙げられる。
【0015】
重合体の分子量は種々の要因により変わり得る。例えば、重合体分子量は重合体の安定性、得られた溶液の粘度のほかに重合体の形状(固体、ワックス、粘性液体、又は自由流動液体)に影響する。同様に、これは、以下にさらに詳細に説明される本発明の方法において用いられる混合および加熱の条件に影響し得る。好適には、重合体は、約20000未満、例えば約2000〜15000、さらに好適には約5000〜12000、そして最も好適には約8000〜10000の分子量を有する。
【0016】
顔料は、当業者に通常に使用される任意の種類の顔料、例えば黒色顔料および青色顔料、黒色顔料、褐色顔料、シアン顔料、緑色顔料、白色顔料、バイオレット顔料、マゼンタ顔料、赤色顔料、オレンジ色顔料、又は黄色顔料を含む他の有色顔料であり得る。同様に、異なる顔料の混合物も用いられ得る。黒色顔料の代表例としては、種々のカーボンブラック(ピグメントブラック7)、例えば、チャネルブラック、ファーネスブラックおよびランプブラックが挙げられ、そして例えばキャボット社から市販されている商標名のレガール(Regal)(登録商標)、ブラックパールズ(Black Pearls)(登録商標)、エルフテックス(Elftex)(登録商標)、モナーク(Monarch)(登録商標)、モーグル(Mogul)(登録商標)、およびブルカン(Vulcan)(登録商標)(例えば、ブラックパールズ(登録商標)2000、ブラックパールズ(登録商標)1400、ブラックパールズ(登録商標)1300、ブラックパールズ(登録商標)1100、ブラックパールズ(登録商標)1000、ブラックパールズ(登録商標)900、ブラックパールズ(登録商標)880、ブラックパールズ(登録商標)800、ブラックパールズ(登録商標)700、ブラックパールズ(登録商標)L、エルフテックス(登録商標)8、Monarch(登録商標)1400、Monarch(登録商標)1300、Monarch(登録商標)1100、Monarch(登録商標)1000、Monarch(登録商標)900、Monarch(登録商標)880、Monarch(登録商標)800、Monarch(登録商標)700、モーグル(登録商標)L、レガール(登録商標)330、レガール(登録商標)400、ブルカン(登録商標)P)が挙げられる。適した種類の有色顔料としては、例えば、アントラキノン、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジアゾ、モノアゾ、ピランスロン、ペリレン、ヘテロサイクリックイエロー、キナクリドン、および(チオ)インジゴイドが挙げられる。このような顔料は、バスフ社、エンゲルハルト社およびサンケミカル社を含む多くの調達先から粉末又はプレスケーキのいずれかの形状で市販されている。他の適した有色顔料の例はカラーインデックス、第3巻(ザ ササイアティー オブ ダイアーズ アンド カラーリスト、1982)に記載されている。好適には、顔料は、シアン顔料、マゼンタ顔料、黄色顔料、又は黒色顔料、例えばカーボンブラックである。
【0017】
顔料は、顔料の望まれる特性によって、窒素吸着法で測定される幅広い範囲のBET表面積を有し得る。当業者に周知であるように、高表面積は小さい粒子径に対応する。望まれる用途に応じた高表面積品がすぐに入手できない場合は、同様に、必要に応じて、顔料を小さい粒子径にするために顔料を周知の粒子縮小又は粉砕技術、例えばボールミル又はジェットミルに供し得るということは当業者によく認識されている。
【0018】
同様に、顔料は上述の任意の顔料を含む変性顔料であってよい。例えば、変性顔料は少なくとも1種のイオン基、イオン化可能な基、又はそれらの混合物を付着した顔料を含んでよい。例として、表面にイオン基および/又はイオン化可能な基を導入するために酸化剤を使用して酸化された顔料が挙げられる。この方法で製造された変性顔料は高い程度の酸素含有基を表面に有することが見出された。酸化剤としては、制限されないが、酸素ガス、オゾン、過酸化物、例えば、過酸化水素、過硫酸ナトリウムおよび過硫酸カリウムを含む過硫酸塩、次亜ハロゲン酸塩、例えば次亜塩素酸ナトリウム、酸化性酸、例えば硝酸、および遷移金属含有酸化剤、例えば過マンガン酸塩、四酸化オスミウム、酸化クロム、又は硝酸セリウムアンモニウムが挙げられる。同様に、酸化剤の混合物、特にガス状酸化剤の混合物、例えば酸素とオゾンとが用いられ得る。同様に、顔料表面にイオン基又はイオン化可能な基を導入するための他の表面変性法、例えば、塩素化およびスルホニル化が用いられ得る。
【0019】
加えて、変性顔料は、有機基が少なくとも1種のイオン基、少なくとも1種のイオン化可能な基、又はそれらの混合物を含む少なくとも1種の有機基を付着した顔料を含有し得る。これらの変性顔料は、有機化学基が顔料に付着されるように当業者に周知の任意の方法を用いて製造され得る。例えば、変性顔料は、参照によってその内容がこの明細書に全体として組み入れられる米国特許第5554739号、米国特許第5707432号、米国特許第5837045号、米国特許第5851280号、米国特許第5885335号、米国特許第5895522号、米国特許第5900029号、米国特許第5922118号、および米国特許第6042643号、およびPCT公開第WO99/23174号に記載された方法を用いて製造され得る。そのような方法は、例えば、重合体および/又は界面活性剤を用いる分散型の方法と比べて顔料への基の安定した付着を与える。
【0020】
イオン基は、陰イオン又は陽イオンのいずれかであり得て、また無機又は有機の対イオン、例えば、Na+、K+、Li+、NH4+、NR’4+、アセテート、NO3-、SO42-、R’SO3-、R’OSO3-、OH-、およびCl-(R’は水素又は有機基、例えば置換又は非置換のアリール基および/又はアルキル基を示す。)を含む反対の電荷の対イオンと会合している。イオン化可能な基は使用媒体中でイオン基を形成可能である基である。陰イオン化可能な基は陰イオンを形成し、また陽イオン化可能な基は陽イオンを形成する。好適には、付着した基は有機基である。有機イオン基は、参照によってその記載がこの明細書に全体として組み入れられる米国特許第5698016号に記載されたそれら有機イオン基を含む。
【0021】
陰イオン基は、陰イオン(陰イオン化可能な基)、例えば酸性置換基を形成可能であるイオン化可能な置換基を有する基から生成され得るマイナスに荷電したイオン基である。同様に、それらはイオン化可能な置換基の塩に属する陰イオンであり得る。陰イオン基の代表的な例としては、−COO-、−SO3-、−OSO3-、−HPO3-、−OPO3-2および、−PO3-2が挙げられる。陰イオン化可能な代表的な例としては、−COOH、−SO3H、−PO32、−R’SH、−R’OH、および−SO2NHCOR’(R’は水素又は有機基、例えば置換又は非置換のアリール基および/又はアルキル基を示す)が挙げられる。例えば、付着した基は、カルボン酸基、スルホン酸基、硫酸エステル基、又はそれらの塩、例えばベンゼンカルボン酸基、ベンゼンジカルボン酸基、ベンゼントリカルボン酸基、ベンゼンスルホン酸基、又はそれらの塩を含み得る。同様に、付着した基はこれらの任意の置換誘導体であってよい。
【0022】
陽イオン基は、陽イオン(陽イオン化可能な基)、例えばプロトン化アミンを形成し得るイオン化可能な置換基から形成され得る正電荷を持つ有機イオン基である。例えば、アルキルアミン又はアリールアミンは、酸性媒体中でプロトン化されてアンモニウム基−NR’2+(R’は有機基、例えば置換又は非置換のアリールおよび/又はアルキル基を示す。)を形成してよい。同様に、陽イオン基は正電荷を持つ有機イオン基であってよい。例として、第4級アンモニウム基(−NR’3+)および第4級ホスホニウム基(−PR’3+)が挙げられる。ここに、R’は水素又は有機基、例えば置換又は非置換のアリールおよび/又はアルキル基を示す。
【0023】
変性顔料が付着した有機基を有する顔料を含むときは、有機基は重合体であってよい。好適には、重合体基は上述のイオン基又はイオン化可能な基を含む。従って、有機基は1つ以上のアニオン基又はアニオン化可能な基を含む重合体基であってよい。例として、制限されないが、多塩基酸、例えばポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−アクリル酸重合体などのアクリル酸又はメタクリル酸の共重合体、および無水マレイン酸含有重合体の加水分解誘導体が挙げられる。同様に、有機基は1つ以上の陽イオン基又は陽イオン化可能な基を含む重合体基であってよい。例として、制限されないが、線状又は分岐のポリアミン、例えばポリエチレンイミン(PEI)、エチレンイミン(例えばペンタエチレンアミン、PEA)のオリゴマーおよびポリエチレンイミンの誘導体が挙げられる。
【0024】
以上のごとく、本発明の方法において、重合体および顔料を混合して混合物を形成する。この混合物は、それを製造するために用いられる重合体および顔料の種類によって、乾燥状であってよく又は分散体状あるいは懸濁液状であってよい。例えば、重合体は固体状(例えば粉末又はワックス)であるか又は液状(例えば、シロップ又はオイルなどの粘性又は非粘性の液体)であるかのいずれかであってよい。同様に、重合体は、水性又は非水性の重合体溶液状、懸濁液状、分散体状、又はエマルジョン状であってよい。好適には、重合体は、重合体溶液状であってよく、そして、特に、水又は水および水混和性溶媒、例えばアルコールの混合物を含む水性重合体溶液の状態であってよい。加えて、顔料は、乾燥状(例えば、粉末、ペレット、又はプレスケーキ)又は液体中での水性あるいは非水性の分散体状又は懸濁液状のいずれかであってよい。同様に、顔料は、約20〜80%の液体、例えば水を含む湿潤プレスケーキ状で、しかしなお固体状又は半固体状であってよい。好適には、顔料は、顔料懸濁液状又は顔料分散体状でそして、特に、水又は水および水混和性溶媒、例えばアルコールの混合物を含む水性顔料懸濁液又は顔料分散物である。重合体又は顔料のどちらかが液体媒体、例えば溶液、分散体、又は懸濁液を含む形態である場合は、その結果として得られる混合物は同じ形態である。また、重合体も顔料もどちらも液体媒体を含む形態でない場合は、得られる混合物は、例えば自由流動又は粘着性の粉末、ペースト、あるいはパテを含む固体又は半固体形状にあるであろう。最後に、重合体又は顔料の両方ではなくいずれかが、液体媒体を含む形態にある場合は、得られる混合物は用いられる液体媒体の量によって液体か固体のいずれかの形態を有するであろう。
【0025】
重合体および顔料は、成分および製造される混合物の形態に応じて当技術分野で周知の任意の技法又は装置を用いて混合され得る。例えば、重合体およびと顔料の両方が液体媒体を有する形態にないか又は得られる混合物が固体又は半固体の形態にある場合は、高負荷の混合条件が用いられ得る。そのような条件は、当業者にとって周知でありそして、材料を混合、混練、攪拌、均一化、分散、および/又は混ぜ合わせする種々の高負荷の混合機および同様の装置を用いることによって達成され得る。高負荷の混合機はバッチ式、半連続式、又は連続式の混合機であり得るが、連続式の混合機はバッチ処理装置に対して経済性と実用上の利点の両方を提供し、そして一般的に好適である。高負荷の混合機の例として、制限されないが、1又は2遊星形ミキサー、二軸遊星形ミキサー(特に1本の軸が鋸歯翼を有するそれら遊星形ミキサー)、らせん形ミキサー、例えば二重らせん形ミキサー又は双羽根コニカルミキサー、2重アーム混練ミキサー、例えばブラベンダーミキサー又はファレルミキサー、高負荷のミキサー、例えばヘンシェルミキサー又はパーペンマヤーミキサー、二本ロールミキサー又は三本ロールミキサー、および単軸又はダブル(2軸)スクリュー押出機が挙げられる。同様に、高負荷の混合条件として、真空の使用がもたらす低圧条件が挙げられる。
【0026】
例えば、重合体および/又は顔料が液体媒体を含む形態にあり、そして得られる混合物が同様にそのような形態にある場合は、高せん断混合が用いられ得る。それ故、混合はすりつぶし又は衝突作用、例えば液体せん断キャビテーションあるいは粒子径減少の他の手段を与え得る装置を用いた高せん断条件下に適した容器内で行われ得る。横型メディアミル、縦型メディアミル、例えば摩砕機、ボールミル、ハンマーミル、ピンディスクミル、流体エネルギーミル、ジェットミル、ソニケーター等のような異なるせん断装置が組合せて又は順番に用いられ得る。好適には、高せん断は高圧流体衝突リアクター内で起こる。他の例として、制限されないが、高圧ホモジナイザー、ローター固定子、流通装置、衝突分散機(メディア/ボール)などが挙げられる。
【0027】
重合体および顔料は、望ましい混合物を製造するために十分な時間および温度で混合され得る。混合する時間および温度の両方とも、例えば顔料の種類と形態および重合体の種類、分子量、および形態、そして各々の相対量を含めていくつかの要因によって決まる。典型的には、両成分は約5℃〜約70℃、好適には約15℃〜約50℃、さらに好適には約20℃〜約30℃の範囲の温度で混合される。温度の上昇は用いられる混合装置の種類によって混合工程の間に起こり得る。混合時間は、通常は約5分〜約24時間、好適には約10分〜約12時間、さらに好適には約30分〜約2時間である。
【0028】
混合物の製造後、本発明の方法は、混合物をさらに約70℃〜250℃の温度に加熱して顔料組成物を形成する工程を含む。加熱は、混合物の温度を望ましい温度範囲に上昇させることが可能な任意の周知の装置を用いて行われ得る。例として、加熱マントル、サーモカップル、サーマルバスなどが挙げられる。同様に、上に述べそして混合の間に温度を上昇させ得る高負荷混合機および高せん断混合機が含まれる。好適には、混合物は、約100℃〜200℃、さらに好適には約140℃〜185℃の温度に加熱される。加えて、加熱は不活性雰囲気、例えば窒素又はアルゴン下に行われ得る。
【0029】
混合物は、望ましい顔料組成物を形成するために十分な時間加熱される。この時間は、重合体の種類、反応の規模、および顔料:重合体の相対比を含めて種々の要因によって決まる。加えて、混合物が液体媒体を含む形態にあるか又は混合物が液体媒体を含む形態にある顔料あるいは重合体のいずれかを用いて製造された場合、媒体もまた加熱工程の間に除かれる。それ故、加熱工程は、媒体が蒸発する乾燥工程をも含んでよく、また加熱する時間は混合物を乾燥するために必要な時間を含むことになる。本発明の方法の好適な態様において、混合物は、相当量のカルボン酸基のアンモニウム塩をアンモニアに変化させ、アンモニアが加熱の間に除かれるに十分な時間加熱される。典型的には、混合物は約5分〜5日間の時間、例えば約1時間〜約3日間加熱される。当技術分野で周知の任意の乾燥方法が、例えばオーブン乾燥、噴霧乾燥、およびフラッシュ蒸発を含めて同様に加熱工程に用いられ得る。
【0030】
重合体および顔料は各成分の形態によって種々の割合で混合さ得る。例えば、重合体および顔料のいずれもが液体媒体を含まない形態で加えられる場合、各成分の量は、好適には顔料:重合体の重量比が約5:1〜1:5の範囲、さらに好適には顔料:重合体の重量比が約5:1〜1:1の範囲、そして特に顔料:重合体の重量比が約2:1〜1:1の範囲であり得る。顔料および/又は重合体が液体媒体を含む形態にある場合、各成分の量は顔料又は重合体の濃度による。重合体の溶液、分散体、懸濁液、又はエマルジョン濃度は、典型的には約0.1重量%〜25重量%、好適には約1重量%〜20重量%、そしてさらに好適には約2重量%〜10重量%に及ぶ。顔料の分散体又は懸濁液は、典型的には約1重量%〜25重量%、好適には約2重量%〜20重量%、そしてさらに好適には約5重量%〜15重量%に及ぶ。加えられる量又は用いられる濃度は顔料:重合体の割合が上記の範囲内に入るように調整され得る。
【0031】
本発明の方法において、重合体および顔料を混合して混合物を形成し、そして混合物を加熱して顔料組成物を形成する。得られる顔料組成物は、50%より多い、好適には60%より多い、さらに好適には70%より多い顔料を含む。それ故、本発明の顔料組成物は、重合体組成物、例えば塗料、インク等とは、これらの組成物が重合体中に分散された顔料を含むことから異なる。典型的な塗料およびインクは50重量%未満の顔料を含む塗膜又は画像を形成する。
【0032】
理論に制約されることは望まないが、重合体およびと顔料の混合物が加熱された後に、顔料の表面には付加的な反応は起こらないが重合体に化学的および/又は物理的変化が起こると考えられる。それ故、本発明の方法は、顔料の重合体との反応を引き起こさず、むしろ重合体自体の変化を引き起こすと考えられる。例えば、重合体が少なくとも1種のカルボン酸基のアンモニウム塩を含む場合、加熱で、カルボン酸のアンモニウム塩基がカルボン酸基に変化すると考えられる。同時に、あるいは別々に、重合体は、加熱の間に重合体の分子量が増加する架橋反応を受け得る。従って、得られる重合体組成物は顔料とそれを製造するために用いられた重合体とは異なった重合体とを含むと考えられる。この発明の方法は、別の代替方法よりも高水準の付着した重合体を有する顔料組成物を製造することが可能であることが分かってきた。
【0033】
本発明の方法は、重合体組成物を分散させて顔料分散体を形成する工程をさらに含み得る。好適には、重合体組成物は、水又は水と水混和性溶媒との混合液を含む水性媒体中に分散され、それによって水性顔料の分散体を形成する。水性媒体を含む混合物から顔料組成物が形成される場合、この工程は再分散工程とも呼ばれてよく、そして水性媒体はこの場合と同じでも異なってもよい。この分散(又は再分散)工程のために顔料分散体を製造する技術分野で周知の任意の方法が用いられ得る。例えば、高せん断混合条件を用いて分散体が形成されてよいし、また上記の任意の装置又は方法が用いられ得る。好適な方法には、塩基の単独での又は高せん断混合条件と組み合わせての使用が含まれる。例えば、水可溶性塩基、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、そして水酸化アンモニウムを含むOH-イオンを含有する塩基である水酸化物試薬が顔料組成物を分散させるために用いられ得る。水酸化物試薬の混合物は勿論のこと他の水酸化物塩も同様に用いられ得る。さらに、水性媒体中でOH-イオンを生成する他のアルカリ試薬も同様に用いられ得る。例として、炭酸塩、例えば炭酸ナトリウム、重炭酸塩、例えば重炭酸ナトリウム、およびアルコキシド、例えばナトリウムメトキシドおよびナトリウムエトキシドが挙げられる。
【0034】
従って、本発明は、さらに、上記の顔料組成物を含む水性顔料分散体に関する。用いられる顔料組成物の量は、顔料と重合体との相対量に依存するが、約0.1〜25重量%の顔料を含む水性顔料分散体を製造するのに十分であろう。本発明の水性顔料分散体は、最小の追加成分を用いて製造され得るが、改良された分散安定性を含めて水性顔料分散体に種々の特性を与えるために適した添加剤が同様に含まれてよい。他の添加剤として、本発明のインクジェット用インク組成物に関して以下にさらに詳細に記載されるそれら添加剤を含んでよい。
【0035】
本発明の水性顔料組成物は、分散体中に共存し得る不純物あるいは望ましくない遊離種を除くためにさらに浄化および分級されてよい。例えば、水性顔料分散体は、未反応原料、副生成物塩および他の反応不純物を除くために、例えばろ過、遠心分離、又はこの2つの方法の組合せによって洗浄されてよい。同様に、生成物はこの分野の当業者に周知の技術を用いて例えば蒸発により分離し又はろ過および乾燥により回収され得る。同様に、分散体を浄化しまた相当量の遊離イオン種および不要種を除くために膜又はイオン交換を用いた限外ろ過/透析の周知技術が用いられ得る。同様に、浄化工程では任意の対イオン交換工程が起こり得て、その際に周知のイオン交換技術、例えば限外ろ過、逆浸透、イオン交換カラムなどを利用して、水性顔料分散体の一部を形成する対イオンが代替の対イオン(例えば、両親媒性イオンを含めて)と交換又は置換される。交換され得る対イオンの特定例としては、限定されないがNa+、K+、Li+、NH4+、Ca2+、およびMg2+が挙げられる。
【0036】
本発明の顔料組成物および水性顔料分散体は、限定されないがインク、塗料、プラスチック、紙、布地、およびゴム製品を含む種々の用途で有用であり得る。特に、これらはインクジェット用インク組成物、特に水性インクジェット用インク組成物に効果的であることが分った。
【0037】
それ故、同様に、本発明は、a)液体ビヒクルおよびb)本発明の顔料組成物又は本発明の水性顔料分散体のいずれかを含むインクジェット用インク組成物に関する。好適には、顔料組成物又は水性顔料分散体は、詳細に上記した本発明の方法を用いて製造される。
【0038】
通常は、インクジェット用インク組成物は、キャリヤーとして機能するビヒクル、および着色剤、例えば染料又は顔料からなる。インクを調整して望ましい機能を達成するために、添加剤および/又は共溶媒が混和され得る。好適には、本発明のインクジェット用インク組成物用の液体ビヒクルは水性ビヒクルであり、従ってインクジェット用インク組成物は水性インクジェット用インク組成物である。水性ビヒクルは変性有機着色剤分散体の製造法の関連で上記と同じであり得る。
【0039】
本発明のインクジェット用インク組成物に用いられる顔料組成物又は水性顔料分散体は、上記と同じでありそしてインクジェット用インクの機能に悪影響を及ぼすことなく望ましい画像の質(例えば、光学密度)を提供するために有効な量で存在する。例えば、典型的には、顔料組成物又は水性顔料分散体は、インクの約0.1重量%〜20重量%の範囲の量の顔料を含むインクジェット用インク組成物を提供するために用いられる。同様に、着色剤の混合物も用いられ得る。加えて、例えば、引用によってその全体として組み入れられる米国特許第5630868号、第5803959号、第5837045号、および第5922118号に記載のように変性顔料生成物を含む配合物処方を用いることも本発明の範囲内である。
【0040】
本発明のインクジェット用インク組成物は最小限の追加成分(添加剤および/又は共溶媒)と処理工程で形成され得る。しかしながら、組成物の安定性を維持しながら多くの望ましい特性を与えるために、これらのインクジェット用インク組成物に適した添加剤が同様に混和されてよい。例えば、組成物のコロイド安定性をさらに高めるために界面活性剤が添加されてよい。他の添加剤は当技術分野に周知でありそして保湿剤、バイオサイド、結合剤、乾燥促進剤、浸透剤などを含む。個々の添加剤の量はさまざまな要因によって異なるが通常は0%〜40%の範囲の量で存在する。
【0041】
加えて、本発明のインクジェット用インク組成物は色のバランスを修正しそして光学密度を調整するためにさらに染料を混和してよい。そのような染料として、食用色素、FD&C染料、酸性染料、直接染料、反応染料、銅フタロシアニン誘導体、ナトリウム塩、アンモニウム塩、カリウム塩、リチウム塩などを含むフタロシアニンスルホン酸誘導体が挙げられる。
【0042】
インクジェット用インク組成物は上記の顔料組成物および水性顔料分散体のための上述の方法を用いて純化および/又は分別され得る。この様な方法で、良好な全体的特性をもつインクジェット用インクを製造するために不要な不純物又は望ましくない大粒子が除かれ得る。
【0043】
本発明は、本来一例となるだけであることが意図される以下の実施例によってさらに明確にされる。
【実施例】
【0044】
実施例1〜4−水性顔料分散体の製造
以下の実施例は本発明の方法を用いた本発明の水性顔料分散体の製造について説明する。
実施例1
【0045】
30gのジョンクリル(Joncryl)683(8000〜10000の分子量Mwおよび、165の酸価を有する水可溶性のスチレン−アクリル共重合体、ジョンソン重合体社から入手可能)、12.5mLの高濃度水酸化アンモニウム、および655mLの脱イオン(DI)水をシルバーソン・ローター−ステーター混合機を用いて全固形分が完全に溶解するまで混合した。この急速攪拌溶液に37.5gのPY74を未乾燥ケーク(20%含水率、サンケミカル社から入手可能)として加えた。次いで、その結果得られた混合物をシルバーソン・ローター−ステーター混合機を用いて1000〜5000RPMでの高せん断混合条件下に室温で1時間攪拌した。得られた黄色の混合物をパイレックス(登録商標)蒸発皿(およそ全体の1/3)に注ぎそしてクラスAのオーブンに置いた。次いで、混合物を175℃で18時間加熱して、固形の黄色顔料組成物を形成した。
【0046】
得られた顔料組成物を室温まで冷却し、そして400mLのDI水と、続いて90mLの1MNaOHと混合し、次いでシルバーソン・ローター−ステーター混合機を用いて高せん断混合条件下に分散させた。混合は1000〜5000RPMで1時間続けた。この間にpHを一定時間ごとに検査しそして追加の1MNaOHでpHが12.5より大であるように調整した。次いで、得られた水性顔料分散体は、容積平均(mV)粒子径が180nm[マイクロトラック(Microtrac)(登録商標)パーティクルサイズアナライザーを用いて測定]未満までマイソニックス(Misonix)プローブ超音波分解機(マイソニックス・ソニケーター3000)で氷浴中で超音波分解された。
【0047】
ポリスルホン中空繊維膜(孔径:0.05μm)およびメーキャップ液として0.1MNaOHを用いた透析ろ過によって水性顔料分散体を純化した。未透過液(リテンテート)の固形物含量は透析ろ過の間を通じて10%に調整されそして保持された。塩基10ボリュームの後、メーキャップ液はDI水に変えられそして、透過ろ液の伝導度が250マイクロジーメンス未満まで透析ろ過が続けられた。最終濃度は固形物10%に調整された。最後に、分散体は、最終の容積平均(mV)粒子径が約100nm未満までマイソニックス(Misonix)プローブ超音波分解機(マイソニックス・ソニケーター3000)により氷浴中で超音波分解された。
【0048】
得られた本発明の水性黄色顔料分散体の特性は以下の表1に示される。
実施例2
【0049】
103gのピグメントレッド122の押圧ケーク(71%含水率、サンケミカル社から入手可能)がPY74に代えて用いられたことを除いて実施例1に記載と同様の方法を用いて、本発明の水性赤色顔料分散体が製造された。加熱工程のオーブン温度は150℃であった。
【0050】
得られた本発明の水性赤色顔料分散体の特性は以下の表1に示される。
実施例3
【0051】
81gのピグメントブルー15:4の押圧ケーク(63%含水率、サンケミカル社から入手可能)がPY74に代えて用いられたことを除いて実施例1に記載と同様の方法を用いて、本発明の水性青色顔料分散体が製造された。加熱工程のオーブン温度は150℃であった。
【0052】
得られた本発明の水性青色顔料分散体の特性は以下の表1に示される。
実施例4
【0053】
30gのブラックパール(登録商標)700のカーボンブラック(BP700、キャボット社から入手可能)がPY74に代えて用いられたことを除いて実施例1に記載と同様の方法を用いて、本発明の水性黒色顔料分散体が製造された。加熱工程のオーブン温度は150℃であった。
【0054】
得られた本発明の水性黒色顔料分散体の特性は以下の表1に示される。
比較例1
【0055】
黒色顔料と重合体とを混合後、得られた混合物がオーブン中で加熱されなかったことを除いて実施例4と同様の方法を用いて、水性黒色顔料分散体が製造された。
【0056】
得られた比較の水性黒色顔料分散体の特性は以下の表1に示される。
水性顔料分散体の特性
【0057】
実施例1〜4および比較例1の水性顔料分散体の特性が以下の表1に示される。
【表1】

上記の実施例で説明されたように、粒子径はマイクロトラック(Microtrac)(登録商標)パーティクルサイズアナライザーを用いて測定され、そして報告される値は容積平均粒径(mV)である。ナトリウムイオン濃度はオリオンのナトリウムイオン選択プローブを用いて測定し、そして固形分1g当たりのナトリウムのμgとして報告される。付着体の割合(%)はTA装置のTGA2950型を用いた熱重量分析(TGA)から計算された。TGA分析では、以下の温度プロファイル(特に断りのない限り):110℃まで10℃/分、110℃で10分間保持、800℃まで10℃/分で加熱を続け、そして800℃で10分間保持、に従って窒素雰囲気下に分析された。付着体の割合(%)は、最終製品の110℃と800℃とでの重量損失を出発原料のそれと比較して決定された。
【0058】
表1の結果が示すように、顔料とカルボン酸基のアンモニウム塩を含む重合体とを混合しそして続いて加熱により調製された本発明の顔料組成物は、高レベルの付着重合体を有し、そして同時にまた良好な(低い)顔料粒径を有する水性顔料分散体を調製した。付着した重合体の量は用いられた顔料の種類と大きさによって変わると予想される。しかしながら、同じ種類の顔料を用いて調製された2つの分散体を比較する(実施例4と比較例1、両方が同じ黒色顔料を使用)と、2つの結果は、小さい粒子径分散体は勿論本発明の方法を用いると著しく高い付着レベルを明確に示す。
実施例5〜8−インクジェット用インク組成物の調製
【0059】
実施例1〜4の水性顔料分散体を用いて以下の表2に示される配合で本発明のインクジェット用インク組成物が調製された。
【表2】

【0060】
実施例8の黒色インクジェット用インク組成物がHP45カートリッジに入れられそしてHP P1000熱式インクジェットプリンターから印刷された。印刷は3つの異なった普通紙:HPブライトホワイト(HPBW)、ハマーミルコピープラス(HCP)、そしてゼロックス4024(4024)を用いて行われた。実施例5〜7のカラーインクジェット用インク組成物は種々の光沢基材にキャノンi550熱式インクジェットプリンターから印刷された。本発明の各インクジェット用インク組成物は望ましい全体特性を有する印刷画像をうまく作り出して印刷することが分かった。
【0061】
例えば、実施例8の黒色インクジェット用インク組成物を用いて印刷された画像がOD、乾燥時間、蛍光スミア、および耐水性を評価された。結果は以下の表3に示される。
【表3】

表3で、乾燥時間とは、印刷された画像の表面をこすった一枚の紙へインクがカラー移動を示さない時の時間を秒で呼ぶ。蛍光スミアとは、2通過蛍光擦りの間に移動した顔料のOD(酸および塩基の蛍光の平均値)をいう。最後に、耐水性とは、印刷5分後の印刷画像上に45°の角度で1000μLの水が垂らされたときに顔料の流出が起こるかどうかをいう。表3の結果は、本発明のインクジェット用インク組成物は良好な全体特性を有する印刷画像を作り出すために用いられ得ることを示している。
【0062】
本発明の好適な態様の前述の記載は説明および解説のために示されている。開示された正確な形態に本発明が網羅されているあるいは限定されることは意図されない。修正および変更は、上記の教示を踏まえて可能であり、あるいは本発明を実施すると入手可能である。種々の態様にまた意図される個々の用途に適しているように種々の修正を伴って当業者が本発明を利用することを可能とするために、本発明の本質およびその実際の応用を説明するために、実施例は選択されそして記載されている。本発明の範囲はここに添付の請求項、そしてそれらの均等によって規定されることを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程:
i) 少なくとも1種のカルボン酸基のアンモニウム塩を含む重合体および顔料を混合して混合物を形成すること、そして
ii) 混合物を約70℃〜250℃の温度に加熱して顔料組成物を形成すること
を含む顔料組成物の製造法。
【請求項2】
重合体が、水性重合体溶液の形態にある請求項1に記載の製造法。
【請求項3】
顔料が、水性顔料懸濁液又は分散体の形態にある請求項1に記載の製造法。
【請求項4】
重合体および顔料が高負荷又は高せん断混合条件下に混合される請求項1に記載の製造法。
【請求項5】
顔料および重合体が、重量比(顔料:重合体)が5:1〜1:5で混合される請求項1に記載の製造法。
【請求項6】
重量比(顔料:重合体)が、5:1〜1:1である請求項5に記載の製造法。
【請求項7】
重合体が、少なくとも1種のカルボン酸基のアンモニウム塩を少なくとも10重量%含む請求項1に記載の製造法。
【請求項8】
重合体が、少なくとも1種のカルボン酸基のアンモニウム塩を少なくとも20重量%含む請求項7に記載の製造法。
【請求項9】
重合体が、少なくとも1種のカルボン酸基のアンモニウム塩を少なくとも30重量%含む請求項7に記載の製造法。
【請求項10】
重合体が、アンモニウムアクリレート重合体又はアンモニウムメタクリレート重合体である請求項1に記載の製造法。
【請求項11】
重合体が、スチレン−アンモニウムアクリレート重合体又はスチレン−アンモニウムメタクリレート重合体である請求項1に記載の製造法。
【請求項12】
混合物が噴霧乾燥機を用いて加熱される請求項1に記載の製造法。
【請求項13】
顔料が、青色顔料、黒色顔料、褐色顔料、シアン顔料、緑色顔料、白色顔料、バイオレット顔料、マゼンタ顔料、赤色顔料、黄色顔料、又はそれらの混合物を含む請求項1に記載の製造法。
【請求項14】
下記の工程:
i) 少なくとも1種のカルボン酸基のアンモニウム塩を含む重合体および顔料を混合して混合物を形成すること、
ii) 混合物を約70℃〜250℃の温度に加熱して顔料組成物を形成すること、そして
iii) 顔料組成物を水性媒体中に分散させて水性顔料分散体を形成すること
を含む水性顔料分散体の製造法。
【請求項15】
顔料組成物が高せん断混合条件下に分散される請求項14に記載の製造法。
【請求項16】
顔料組成物が塩基の添加によって分散される請求項14に記載の製造法。
【請求項17】
a)液体ビヒクルおよびb)顔料組成物を含んでなり、顔料組成物が、下記の工程:
i) 少なくとも1種のカルボン酸基のアンモニウム塩を含む重合体および顔料を混合して混合物を形成すること、そして
ii) 混合物を約70℃〜250℃の温度に加熱して顔料組成物を形成すること
を含む方法で製造されるインクジェット用インク組成物。
【請求項18】
重合体が、水性重合体溶液の形態にある請求項17に記載のインクジェット用インク組成物。
【請求項19】
顔料が、水性顔料懸濁液又は分散体の形態にある請求項17に記載のインクジェット用インク組成物。
【請求項20】
重合体および顔料が高負荷又は高せん断混合条件下に混合される請求項17に記載のインクジェット用インク組成物。
【請求項21】
顔料および重合体が、重量比(顔料:重合体)が5:1〜1:5で混合される請求項17に記載のインクジェット用インク組成物。
【請求項22】
重量比(顔料:重合体)が、5:1〜1:1である請求項21に記載のインクジェット用インク組成物。
【請求項23】
重合体が、少なくとも1種のカルボン酸基のアンモニウム塩を少なくとも10重量%含む請求項17に記載のインクジェット用インク組成物。
【請求項24】
重合体が、少なくとも1種のカルボン酸基のアンモニウム塩を少なくとも20重量%含む請求項23に記載のインクジェット用インク組成物。
【請求項25】
重合体が、少なくとも1種のカルボン酸基のアンモニウム塩を少なくとも30重量%含む請求項23に記載のインクジェット用インク組成物。
【請求項26】
重合体が、アンモニウムアクリレート重合体又はアンモニウムメタクリレート重合体である請求項17に記載のインクジェット用インク組成物。
【請求項27】
重合体が、スチレン−アンモニウムアクリレート重合体又はスチレン−アンモニウムメタクリレート重合体である請求項17に記載のインクジェット用インク組成物。
【請求項28】
混合物が噴霧乾燥機を用いて加熱される請求項17に記載のインクジェット用インク組成物。
【請求項29】
顔料が、青色顔料、黒色顔料、褐色顔料、シアン顔料、緑色顔料、白色顔料、バイオレット顔料、マゼンタ顔料、赤色顔料、黄色顔料、又はそれらの混合物を含む請求項17に記載のインクジェット用インク組成物。
【請求項30】
液体ビヒクルが水性ビヒクルである請求項17に記載のインクジェット用インク組成物。
【請求項31】
a)液体ビヒクルおよびb)水性顔料分散体を含んでなり、水性顔料分散体が、下記の工程:
i) 少なくとも1種のカルボン酸基のアンモニウム塩を含む重合体および顔料を混合して混合物を形成すること、
ii) 混合物を約70℃〜250℃の温度に加熱して重合体および顔料を含む顔料組成物を形成すること、そして
iii) 顔料組成物を水性媒体中に分散させて水性顔料分散体を形成すること
を含む方法によって製造されるインクジェエトインク組成物。
【請求項32】
顔料組成物が高せん断混合条件下に分散される請求項31に記載のインクジェット用インク組成物。
【請求項33】
顔料組成物が塩基の添加によって分散される請求項31に記載のインクジェット用インク組成物。
【請求項34】
液体ビヒクルが水性ビヒクルである請求項31に記載のインクジェット用インク組成物。

【公表番号】特表2009−503151(P2009−503151A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−522982(P2008−522982)
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/028319
【国際公開番号】WO2007/014007
【国際公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(391010758)キャボット コーポレイション (164)
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION
【Fターム(参考)】