説明

顔料調製物およびインクジェット印刷インキ

本発明は、アルミニウム効果顔料、溶媒、および少なくとも1種の添加剤を含む顔料調製物を目的としているが、ここで前記アルミニウム効果顔料は、15μm未満の体積平均粒子サイズ分布曲線のd98値を有し、前記少なくとも1種の添加剤は、リン含有添加剤であり、前記溶媒は、25℃で1.8mPa・sに等しいかそれ以上の粘度を有している。本発明は、さらに、インクジェット印刷インキ、さらにはその使用をも目的としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料調製物、前記顔料調製物を含むインクジェット印刷インキ、および印刷方法に関し、さらにはインクジェット印刷インキを製造するための方法、およびインクジェット印刷インキにおける顔料調製物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷技術においては、印刷するための基材の表面にインクジェット印刷インキの小滴を直接噴射するので、印刷デバイスと基材表面の間には物理的な接触は存在しない。印刷表面上へのそれぞれの液滴の配置は、電子的に制御されている。インクジェット印刷技術は、一方では紙、板紙などの上に、他方ではたとえば缶、ビン、フォイルなどの製品の上に、各種のデータおよび画像を印刷するための重要な技術となってきた。インクジェット技術を使用すれば、たとえば卵のような壊れやすい対象物の上に直接印刷することも可能である。インクジェット技術によれば、これらのデータおよび画像を高速で印刷することが可能となる。
【0003】
これまでに、液滴を発生させるための各種の原理が開発されてきたが、そのようなものとしては、たとえば、静電技術、磁気技術、圧電技術、電熱技術、機械的マイクロバルブ技術、および火花放電技術などが挙げられる。液滴発生のタイプとは関係なく、インクジェット技術は、基本的には、二つの基本的カテゴリー、すなわち連続インクジェット(CIJ)技術と、衝撃またはドロップ・オン・デマンド(DOD)インクジェット技術とに分類される。
【0004】
連続インクジェット技術は、ノズルを通して加圧したインキを放出させてインキの液滴を発生させ、基材表面に連続的な流れで向かわせることを特徴としている。
【0005】
衝撃インクジェット技術は、インキの供給が大気圧またはほぼ大気圧に維持されている点で、連続インクジェット技術とは異なっている。インキの液滴は、必要に応じて液滴発生用変換器に制御された励起が印加された時のみノズルから吐出される。衝撃インクジェット(またはドロップ・オン・デマンド)技術は、主としてカラープリンターにおいて使用されている。
【0006】
近年になって、カラープリンターの開発が進んで、基本色のイエロー、シアンおよびマゼンタならびに場合によってはブラックを用いてカラー印刷物を得ることが可能となった。これらのカラーは、リソグラフィー印刷、グラビア印刷およびフレキソ印刷などの確立されている印刷方法におけるプロセスカラーとして広く使用されている。
【0007】
カラー印刷物の品質をさらに改良するために、特に写真印刷への応用が広まっていることから、いわゆる「スポットカラー」が使用されている。オフセット印刷においては、スポットカラーとは、単一の工程で印刷される純インキまたは混合インキによって発生される各種のカラーである。これらのスポットカラーには、4種の基本カラーに加えてオレンジおよびグリーン、または印刷画像の色域および鮮明さを拡張するような各種その他のカラーを含むことができる。
【0008】
EP 1 205 521には、インクジェットプロセスのための顔料調製物が開示されており、それによれば広く各種の顔料を使用することが可能である。顔料調製物を製造する際には、すべての成分をミルの中で微粉砕して、好ましくは粒子の99%が15μm未満の粒子サイズを有するような粒子サイズを得る。1μm未満の粒子サイズを有する顔料は、多かれ少なかれ球状の性質を有しており、印刷物にメタリックな外観を与えることは不可能である。
【0009】
JP 11−323223 Aには、pvd法を用いて製造したメタリック顔料を含むインクジェット印刷インキが開示されている。
【0010】
さらに、WO 2006/101054 A1には、pvd−メタリック顔料を含むインクジェット印刷インキの記載がある。
【0011】
しかしながら、従来技術のこれらのpvdメタリック顔料は、微粉砕の際に沈降し、凝集することが判った。これらの微粉砕されたpvd−顔料を印刷インキに導入すると、その凝集物が容易に脱凝集化せず、プリンターのインクジェットノズルを閉塞させる可能性がある。さらに、凝集したpvdメタリック顔料は、凝集していないpvdメタリック顔料に比較して、金属光輝が弱い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の一つの目的は、インクジェット印刷インキにおいて使用するのに特に適したアルミニウム効果顔料を含む顔料調製物、さらにはメタリックな外観を有する印刷物の製造を可能とするインクジェット印刷インキを提供することである。本発明のまた別な目的は、調製する際に集塊を起こしにくいアルミニウム効果顔料を含む顔料調製物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
その目的は、アルミニウム効果顔料、溶媒、および少なくとも1種の添加剤を含む顔料調製物を提供することにより解決されるが、ここで前記アルミニウム効果顔料は、15μm未満の体積平均粒子サイズ分布曲線のd98値を有し、前記少なくとも1種の添加剤は、リン含有添加剤であり、前記溶媒は、25℃で1.8mPa・sに等しいかそれ以上の粘度を有している。
【0014】
本発明の顔料調製物の好ましい実施態様は、従属請求項2〜24に規定されている。
【0015】
本発明の基礎をなす目的は、さらに、本発明の顔料調製物を含むインクジェット印刷インキによって解決される。
【0016】
本発明のインクジェット印刷インキの好ましい実施態様は、従属請求項26〜35に規定されている。
【0017】
さらに、本発明の目的は、請求項25〜35のいずれかのインクジェット印刷インキを、好ましくはインクジェットプリンターを使用して基材の表面の上に適用することを含む印刷方法によっても解決される。
【0018】
本発明の目的は、さらに、請求項25〜35のいずれか1項に記載のインクジェット印刷インキを製造する方法によっても解決されるが、その方法には、請求項1〜24のいずれか1項の顔料調製物を、インクジェット印刷インキの成分、たとえば溶媒、希釈剤、添加剤、および/または結合剤と、穏やかに混合する工程が含まれる。アルミニウム効果顔料を穏やかに混合するということは、その混合プロセスの間に前記アルミニウム効果顔料が損傷を受けない、すなわち、たとえば反射率のようなその優れた光学的性質が損なわれる恐れのあるねじれや曲げを実質的に受けることなく、実質的に微粉砕だけされるということを意味している。
【0019】
さらに、本発明の目的は、インクジェット印刷インキにおいて請求項1〜24のいずれか1項の顔料調製物を使用することによって解決される。
【0020】
最後に、本発明の目的は、請求項1〜24のいずれか1項に記載の顔料調製物を用いるか、または請求項25〜35のいずれか1項のインクジェット印刷インキを用いてコーティングされた物品によって解決される。そのような物品は、たとえば、紙、板紙、プラスチックまたは金属物質から製造されたフォイル、ラベル、ガラス、セラミック物質、プラスチック物質または金属物質から製造されたビンおよび容器、織物などとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を用いた場合、驚くべきことには、アルミニウム効果顔料をインクジェット印刷インキに組み入れた、高級なメタリックな外観を有するインクジェット印刷物を製造することが可能となることが見出された。
【0022】
驚くべきことには、本発明の顔料調製物中のアルミニウム効果顔料は、凝集する傾向が極めて低い、好ましくは凝集する傾向がまったく認められない。さらに驚くべきことには、PVD顔料、すなわち、物理的蒸着法で製造され、その後で得られた金属フィルムを微粉砕することによって得られた顔料でも、本発明の顔料調製物中では、凝集する傾向が極めて低い。
【0023】
恐らくは、この集塊する傾向が極めて抑制されている結果として、本発明の顔料調製物は、インクジェット印刷インキの中により容易に組み入れることができる、すなわち印刷インキの中に凝集物が入り込む高い危険性を避けることが可能であり、これが、本発明の印刷インキが改良された品質を有する理由である。
【0024】
驚くべきことには、顔料調製物を製造するために使用する溶媒の粘度が極めて重要であることが見出された。アルミニウム顔料を製造する際に使用する溶媒は、1.8mPa・sよりも高い粘度を有していなければならない。粘度は、好ましくは2.0mPa・s〜6mPa・sの範囲、さらに好ましくは2.6mPa・s〜3.3mPa・sの範囲である。
【0025】
粘度は、25℃の温度で、Brookfield回転粘度計LV Model DV−II+、およびスピンドルno.61を使用し、100rpmで求める。
【0026】
さらに好ましくは、溶媒の蒸発数(evaporation number)が10〜300の範囲、好ましくは20〜250の範囲、さらに好ましくは80〜200の範囲である。蒸発数とは、20℃の温度でエーテルに対して相対的に定義されるもので、DIN 53170に規定されている。
【0027】
特に有用な溶媒は、アルコール、グリコールエーテル、エステル、ケトン、およびそれらの混合物からなる群より選択することができる。本発明においては、「溶媒」という用語は、単一の溶媒も溶媒混合物も、意味している。
【0028】
特に好ましい溶媒は、i−プロパノール、エタノール、ブタノール、ジイソブチルケトン、ブチルグリコール、ブチルグリコールアセテートである。
【0029】
アルミニウム効果顔料が凝集する傾向が極めて低いのは、上述の粘度を有する溶媒、リン含有添加剤を使用すること、さらには体積平均粒子サイズ分布曲線のd98値が15μm未満であることによる。
【0030】
溶媒の粘度と、特定の粒子サイズ分布と、さらには本発明の顔料調製物の製造時にリン含有添加剤を使用することとを特定に組み合わせることが、本発明の望ましい、実質的に非集塊性、好ましくは完全に非集塊性の顔料調製物を得るためには、極めて重要であると現時点では考えられる。
【0031】
顔料調製物は、たとえばボールミルまたはパールミル中でアルミニウム粒子を湿式研摩することによって得ることができるが、その場合、アルミニウム粒子が平らに伸ばされて、板状の形状となる。1.8mPa・sよりも高い粘度を有する溶媒(または溶媒混合物)とリン含有添加剤を、アルミニウム粒子と合わせて、ボールミルの中で摩砕する。
【0032】
出発材料として使用するアルミニウム粒子は、球状であるか、ほとんど球状であるのが好ましい。しかしながら、出発材料として不規則な形状のアルミニウム粒子や、針状のアルミニウム粒子を使用することもまた可能である。
【0033】
研摩したアルミニウム効果顔料を得るためのプロセスは、たとえばEP 1 613 702 A1に記載されている(この特許をここに引用することにより本明細書に取り入れたものとする)。
【0034】
別な方法として、本発明の顔料調製物を製造するためにpvdアルミニウム顔料を使用することも可能である。第一の工程においては、剥離層でコーティングした基材の上に、物理的蒸着法によってアルミニウムをアプライする。次いで、そのアルミニウム膜を剥離層から分離する。pvdアルミニウム顔料の製造は、たとえばUS 4,321,087から公知である。
【0035】
得られた大きい粒子を、1.8mPa・sを超える粘度を有する溶媒(または溶媒混合物)、さらにはリン含有添加剤の存在下で微粉砕して、本発明の顔料調製物を得る。微粉砕は、たとえば超音波分散法、ジェットミル法、またはコロイドミル法により実施することができる。
【0036】
本発明の好ましい実施態様においては、顔料調製物は、pvd技術を使用することなく、非偏平なアルミニウム粒子を湿式ボールミル摩砕またはパールミル摩砕することにより得られるアルミニウム顔料から製造される。
【0037】
アルミニウム効果顔料は微小板状の形状を有しており、そのためにそれらは、入射光を直接反射する微小な鏡のような機能を果たす。金属顔料のサイズが1μm未満(d50)にまで下がると、小さ過ぎて板状の鏡としては機能しなくなる。しかしながら、金属顔料フレークのサイズが1μm以上(d50値)では、驚くべきことには、これらの小さな金属フレークはまだアルミニウム効果顔料として機能する、すなわち、光を均一かつ直接的に反射することが可能である。
【0038】
平均サイズが15μmを超えると、その顔料は、インクジェット構成物のたとえばチューブ、チャンネル、フィルター、ノズルなどの構成物をもはや通過しない。全体の構成物のいくつかの部分で閉塞が起こり、インクジェットヘッド部が事実上操作不能となるであろう。
【0039】
50値、d98値、およびd100値は、レーザー散乱法によって測定した、体積平均粒子サイズ分布に関連するものである。そのような粒子サイズは、たとえばCilas 1064のような装置を用いて求められる。
【0040】
アルミニウム効果顔料を含む画像の最も魅力がある印象を観察者に対して与えるためには、アルミニウム効果顔料またはフレークがランダムではなく、基材の表面に対して実質的に平行に配列される必要がある。この場合には、入射光がかなり均一な様式で反射される。アルミニウム効果顔料がインクジェット印刷インキの中でランダムに配向された場合には、入射光もランダムに反射され、金属的な輝きが低減し、観察者にとっては魅力ないものとなってしまう。
【0041】
インクジェット印刷インキの液滴を基材の表面上に適用した後、たとえば加熱および/またはUV照射を加えることによって、インクジェット印刷インキを乾燥または硬化させる。このプロセスは、基材の上にインキを付着させた直後に起きる。乾燥または硬化のための時間は、通常、ほんの一瞬から数分までの範囲であるが、その乾燥または硬化の機構に依存する。驚くべきことには、この極めて短い時間の間に、アルミニウム効果顔料が印刷されたインキの表面に対して実質的に平行に配向する。
【0042】
理論に束縛されることなく言えば、本発明の顔料調製物中のアルミニウム効果顔料のサイズが小さいために、適用した直後にインキ液滴の中でアルミニウム効果顔料が極めて迅速に配向しやすくなっていると現在のところ考えられている。
【0043】
本発明の好ましい実施態様においては、本発明の顔料調製物中のアルミニウム効果顔料は、約1μm〜12μm、好ましくは約1.5μm〜8μm、最も好ましくは約2μm〜6μm未満の範囲のd98値(Cilas)を有している。
【0044】
本発明の顔料調製物において、d50値が1〜6μm、好ましくは2〜5μm(d50値、Cilas)の範囲である粒子直径または粒子サイズであれば、インクジェット印刷インキを印刷した後で得られるメタリック効果の面で極めて優れているということが判明した。
【0045】
本発明の顔料調製物における粒子サイズ分布曲線の少なくとも99%(d99)が、約14μmよりも低い範囲にあるのが好ましい。粒子サイズ分布曲線の少なくとも99%が、約12μmよりも低い範囲であればより好ましい。
【0046】
さらに、アルミニウム効果顔料の粒子サイズ分布(PSD)が極めて狭いのが好ましい。本発明の顔料調製物中のアルミニウム効果粒子の100%(d100)が、好ましくは15μm未満、さらに好ましくは12μm未満の粒子サイズを有している。
【0047】
本発明のまた別な好ましい実施態様においては、粒子サイズ分布曲線の100%が、0.5〜8μmの範囲、より好ましくは1〜7μmである。
【0048】
確立されているインクジェット印刷インキ技術を使用するためには、最高で12μmまでの直径を有するアルミニウム効果顔料を使用するのが主として好ましいが、その理由は、たとえばインクジェット構成物のジェットノズル開口部またはその他の部分が、通常、約20〜50μmの範囲であるからである。
【0049】
基本的には、アルミニウム効果顔料のサイズの上限は、たとえばチューブ、チャンネル、フィルターおよびジェット開口部のような印刷構成物全体の寸法によって決まる。印刷構成物は、インクジェット印刷インキに対してポンプとして機能することが可能であるものでなければならない。たとえば、インクジェットの印字ヘッドがより大きいジェット開口部を使用しているならば、より大きいアルミニウム効果顔料を使用することも可能である。
【0050】
アルミニウム効果顔料の平均サイズ、好ましくは絶対サイズ(d50値、Cilas)の、ジェット開口部の直径に対する比率は、有利には0.02〜0.5、好ましくは0.03〜0.2、最も好ましくは0.04〜0.12の範囲であるとされてきている。
【0051】
これらの平均サイズを有する微小板状の金属顔料は、通常使用されているジェット印字ヘッドのジェットノズルを通過するのに容易に適している。
【0052】
本発明の顔料調製物中のアルミニウム効果顔料は、実質的に面に平行に整列させたアルミニウム効果顔料について測定したX線回折図で、[111]反射または[222]反射ではないメインピークを示すのが好ましい。
【0053】
本発明の好ましい実施態様においては、本発明の顔料調製物中のアルミニウム効果顔料は、好ましくは球状またはほぼ球状の、アルミニウム粒子またはアルミニウムグリットを、ボールミル摩砕することにより得られる。ボールミル摩砕によって得られるこれらのアルミニウム顔料は、それらのX線回折パターンに関して、pvd−顔料とは顕著に異なっている。XRD法(X線反射回折)によって微小板状のアルミニウム効果顔料の特性解析をするためには、測定する前に顔料を実質的に面に平行な方向に配向させる。
【0054】
実質的に面に平行に整列させた本発明のアルミニウム効果顔料について測定したX線回折図(XRD)は、通常、[111]反射または[222]反射ではない、一つまたは二つのメインピークを示す。
【0055】
測定は、市場で入手可能なほとんどのX線回折計で実施することが可能である。
【0056】
本発明においては、「実質的に面に平行な整列」という用語は、顔料の少なくとも80%が、基材表面に対して±15度以内の許容度で、基材表面に平行に配向されていることを意味している。
【0057】
「[111]面」という表示法は、ミラー指数を指している。[111]面は、面心立方格子の最密充填対角面である。
【0058】
本発明のアルミニウム効果顔料の[111]反射は、たとえあったとしても、弱い。[222]反射はさらに弱く、おそらく検出不能であろう。
【0059】
本発明のアルミニウム効果顔料のメインピークは、[200]面および/または[220]面のそれらである。メインピークが[200]面の一つであるのが、特に好ましい。
【0060】
本発明のアルミニウム効果顔料の[111]/[200]ピーク強度比は、常に<1である。それが<0.5であれば好ましく、<0.1であれば最も好ましい。
【0061】
この結果は、pvd−顔料の場合とは対照的であって、これらの顔料では、[111]面または[222]面の反射に相当するメインピークを必ず示す。これらの結果は、箔の上にスパッタされたアルミニウムが、上述の反射率を有する実質的に単結晶を形成するというよく知られている事実を反映している。
【0062】
これらの結果は、研摩プロセスの間の、アルミニウム効果顔料の塑性変形状態の性質を反映したものであると考えられる。溶融アルミニウムをアトマイズすることによって通常得られる、通常多結晶であるアルミニウム粉体には、研摩体として通常ボールまたは球体を使用した変形研摩プロセスの際に強い剪断力がかかる。微結晶が相互に対して剪断を受け、最密充填の[111]面が剪断面を示す。当然のことであるが、研摩プロセスは微小板の表面に対して直角の方向におこるので、[111]面は面の表面から破壊される。その結果、研摩プロセスが進行するにつれて、[111]面および二次の[222]面のピーク強度が低下する。それと同時に、[200]面および[220]面に相当するピークが強くなり、最後にメインピークとなる。
【0063】
湿式ボールミル摩砕法またはパールミル摩砕法を使用して本発明の顔料調製物を製造するためには、最初にアルミニウムを溶融させ、次いで十分に確立されている技術を用いてアトマイズさせる。アトマイゼーションによって得られた球状の粒子を、次いでパールミルまたはボールミル中で摩砕して、所望の粒子サイズのアルミニウム効果顔料を得る。金属粒子をボールミル摩砕またはパールミル摩砕するプロセスは、「ホールプロセス(Hall process)」として当業者には公知の確立されたプロセスである。
【0064】
極めて薄い顔料を得るためには、2〜13mg/球の重量を有する材料から製造した球状のボールを使用しなければならない。好適なボールはガラス球である。さらに、板状の形状である本発明のアルミニウム効果顔料を製造するための出発材料としては、微細なアルミニウムグリットを使用するのが好ましい。
【0065】
これらの薄いアルミニウム効果顔料を製造するのに使用する、アルミニウムグリットの平均粒子サイズd50は、<20μm、より好ましくは<15μm、さらにより好ましくは<10μm、もっとより好ましくは<8μmである。本発明のさらに別な好ましい実施態様においては、その平均粒子サイズ分布が次のようであることを特徴とする:d10<3μm、d50<5μm、d90<8μm。
【0066】
極めて狭い厚み分布を有する極めて薄いアルミニウム効果顔料、たとえば平均厚みh50が15〜80nmで、Δhが30〜70%未満のアルミニウム効果顔料を含む顔料調製物を得るためには、サイズ分布が狭い極めて微細なアルミニウムグリットを出発材料として使用するのが好ましい。好ましくは、dgrit,10が<3.0μm、dgrit,50が<5.0μm、dgrit,90が<8.0μmの粒子サイズ特性を有するアルミニウムグリットを使用する。より好ましくは、dgrit,10が<0.6μm、dgrit,50が<2.0μm、dgrit,90が<4.0μmの粒子サイズ特性を有するアルミニウムグリットを使用する。
【0067】
SEM画像(SEM:走査型電子顕微鏡)を計数することによって求めた、アルミニウム効果顔料の平均厚みh50が、15〜150nmであるのが好ましい。
【0068】
基材の上に本発明のインクジェット印刷インキを適用した後の、その印刷されたインクジェット印刷インキの極めて魅力があるアルミニウム効果は、これらの極めて薄い平均厚みを有する金属顔料を用いた場合に達成可能であることが判明した。
【0069】
本発明の顔料調製物中のアルミニウム効果顔料は、以下において説明するようにして、それらのSEM画像を計数することによって求めて、15〜150nmの平均厚みh50を有する。平均厚みh50が15〜100nmであればより好ましく、20〜80nmであればさらにより好ましい。
【0070】
さらに、極めて好ましい平均厚みh50は30〜80nm未満である。そのように薄いアルミニウム効果顔料を用いることによって、極めて高い輝き効果を達成することができる。高光沢性および高フロップ性に加えて、印刷物は、pvd−顔料に通常典型的な、液状金属効果の外観も有している。
【0071】
平均厚みh50が80〜130nmであれば、輝きは低いが、それでもある程度のメタリック効果は得ることができる。
【0072】
50が15nm未満になると、その顔料は透過性が高くなりすぎ、反射性能が低下するためもはや極めて暗く見える。h50が150nmを超えると、そのアルミニウム効果顔料の光学的性能が低下し、顔料物質が無駄になるが、その理由は、隠蔽力、すなわち重量あたりのアルミニウム効果顔料の被覆力として計算される比被覆力が低下するためである。
【0073】
粒子厚みは、通常、水被覆力の測定(DIN 55923による)および/または走査型電子顕微鏡法(SEM)によって求める。水被覆力の測定では平均厚みが得られるだけであって、粒子厚みの分布は得られない。
【0074】
この理由から、本発明のアルミニウム効果顔料の平均厚みはSEMによって求めた。通常、少なくとも100個の粒子を分析して、代表する統計値を得る。
【0075】
アルミニウム効果顔料の走査型電子顕微鏡(SEM)の画像を計数し、式(I)に従ってそれぞれの数値で重み付けした累積分布から計算した厚み分布の相対幅Δh(「厚みスパン」)は30〜140%が好ましい。
Δh=100(h90−h10)/h50 (I)
[式中、h90は、アルミニウム効果顔料の絶対高さの90%をカバーする顔料の数値であり、h10は絶対高さの10%をカバーする顔料の数値であり、h50は絶対高さの50%をカバーする顔料の数値である]
【0076】
そのような顔料は、主としてWO 2004/087816 A2に開示されている(この特許をここに引用することにより本明細書に取り入れたものとする)。しかしながら、本発明のアルミニウム効果顔料は、体積平均粒子サイズ分布曲線のd98値が15μm未満であり、好ましくは、SEM画像からの計数により求めた平均厚みh50が15〜150nmと粒子特性が特定の組合せになっている点で、WO 2004/087812 A2から公知のものとは異なっている。
【0077】
より好ましい実施態様においては、厚み分布の相対幅Δhが、30〜100%、さらに好ましくは30〜70%、なおさらに好ましくは30%〜50%の範囲である。平均厚みh50が15〜80nmで、Δhが30〜70%未満のアルミニウム効果顔料が、極めて好ましい。
【0078】
そのように薄い粒子厚み分布曲線を有する本発明の顔料調製物におけるアルミニウム効果顔料は、驚くべきことには、基材の上に本発明のインクジェット印刷インキを適用した後の光学効果として、極めて高い光沢性およびフロップ効果と、pvd−アルミニウム顔料に極めて類似した液状金属効果とを与えることが判明した。
【0079】
所望の高レベルの光学効果を得るためには、Δhが低いことが必要である。140%を超えるΔhを有する顔料は、インクジェット印刷インキの中で適切にスタッキングされない。さらに、配向するための時間が極めて短いために、最適に良好な配向が達成できるのは、Δhが140%未満、好ましくは100%未満の顔料の場合だけである。
【0080】
本発明のインクジェット印刷インキには、請求項に記載されているような、粒子サイズおよび粒子厚みの分布曲線のスパンがかなり狭い、極めて薄いアルミニウム効果顔料が含まれており、それによって、本発明のインクジェット印刷インキを適用する間およびその後に、実質的に全部のアルミニウム効果顔料を均一かつ短時間で配向させることが可能となっている。
【0081】
本発明の顔料調製物におけるアルミニウム効果顔料は、研摩法によって得られる従来からのアルミニウム効果顔料に比較して、極めて高い隠蔽力を示す。
【0082】
本発明のアルミニウム効果顔料は、好ましくは110nm未満、より好ましくは75nm未満のh90値を有する厚み分布曲線を示す。厚み分布のh95値は、好ましくは150nm未満、より好ましくは120nm未満である。さらに、h99値は、好ましくは140nm未満、より好ましくは90nm未満である。
【0083】
本発明のアルミニウム効果顔料の厚み分布がそのように狭いために、印刷されたインクジェット印刷インキの印刷物におけるスタッキング性が極めて良好となる。したがって、本発明のこれらの顔料は、極めて良好な光沢性とフロップ効果を示す。
【0084】
本発明のまた別な実施態様においては、顔料調製物に、実質的に面に平行に整列させたアルミニウム効果顔料について測定したX線回折図が[111]反射または[222]反射であるメインピークを示す、アルミニウム効果顔料が含まれる。これらのアルミニウム顔料は、好ましくはpvdアルミニウム顔料である。
【0085】
先にも述べたように、そのような本発明の顔料調製物は、基材から剥離させたアルミニウム粒子を、1.8mPa・sを超える粘度を有する溶媒(または溶媒混合物)およびリン含有添加剤の存在下で微粉砕することにより得られる。
【0086】
アルミニウム効果顔料、好ましくはそのようにして得られたpvd−アルミニウム顔料は、好ましくは15〜60nmの範囲、さらに好ましくは20〜50nmの範囲の、SEM画像から計数することによって求めた、平均厚みh50を有する。
【0087】
これらのアルミニウム効果顔料は、好ましくは、先に説明した式(I)によって計算して、30%〜50%の厚み分布の相対幅Δhを有する。
Δh=100(h90−h10)/h50 (I)
【0088】
ボールミル摩砕法またはpvd法のいずれで製造されたものであっても、本発明の顔料調製物におけるアルミニウム効果顔料のアスペクト比fは、好ましくは約30〜500の範囲、より好ましくはアスペクト比は約35〜300の範囲、最も好ましくは40〜200の範囲である。アスペクト比は、平均粒子サイズを平均粒子厚みで割り算した比率であって、次式(II)で表される。
【0089】
【数1】

【0090】
これらのアスペクト比は、インクジェット印刷インキを基材の表面に適用した後に、アルミニウム効果顔料を配向させるのに要する時間を最短とするために有用であることが見出された。
【0091】
本発明のインクジェット印刷インキのために使用される本発明の顔料調製物におけるアルミニウム効果顔料は、リーフィングタイプのものであっても、非リーフィングタイプのものであってもよい。本発明の好ましい実施態様においては、アルミニウム効果顔料はリーフィング顔料である。リーフィング顔料は、それ自体が配向した形で、すなわち基材の上に印刷した後に、インクジェット印刷インキの表面でその基材の表面に実質的に平行に配列するが、それに対して、非リーフィング顔料は、それ自体がインクジェット印刷インキの中で、それが適用された基材と乾燥した印刷インキとの間に均一に配列する。
【0092】
本発明においてはリーフィング性のアルミニウム効果顔料を使用するのが好ましく、それによって、得られる印刷画像が、観察者に対して、極めて高い輝きで艶のある外観を与える。そのリーフィング挙動は、たとえばステアリン酸を用いてアルミニウム効果顔料をコーティングすることによって導入することができる。
【0093】
pvd−プロセスによって製造された従来技術のアルミニウム顔料を含むインクジェット印刷インキは、インクジェット印刷インキの中でアルミニウム粒子が集塊したり沈降したりする、ある種の問題点を有していた。
【0094】
驚くべきことには、アルミニウム顔料が特定のサイズ分布を有し、さらに1.8mPa・sを超える粘度を有する溶媒(または溶媒混合物)およびリン含有添加剤を含む本発明の顔料調製物を含む、本発明のインクジェット印刷インキにおいては、これらの問題点の深刻さが顕著に低減される。
【0095】
本発明のまた別な好ましい実施態様においては、腐食防止物質の層でアルミニウム効果顔料をコーティングする。
【0096】
その腐食防止物質は、金属酸化物および/または有機ポリマー物質の包埋層で作ることができる。
【0097】
その金属酸化物層は、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化鉄、およびそれらの混合物を含んでいるのが好ましい。腐食防止層としてシリカを使用するのが最も好ましい。この金属酸化物層、好ましくは酸化ケイ素層の平均厚みは、好ましくは10〜40nmの間、さらに好ましくは15nm〜30nmの間である。
【0098】
金属酸化物の層は、攪拌したアルミニウム効果顔料の存在下で、可溶性の金属塩を加水分解することによって、金属顔料の表面に適用してもよい。たとえば、金属塩化物の塩は水中で加水分解することができる。
【0099】
アルミニウム効果顔料を金属酸化物の層を用いてコーティングするために、ゾル−ゲルプロセスを使用するのが好ましい。たとえば、アルコール系媒体中で、アルミニウム効果顔料、十分な量の水、および場合によっては酸または塩基のような触媒を撹拌しながら、テトラアルコキシシラン、たとえば、テトラエトキシシランまたはテトラメトキシシランを加水分解することによって、SiOの包埋層を適用してもよい。
【0100】
ポリマー物質としては、たとえば、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、またはその他各種好適な有機ポリマー物質を挙げることができる。
【0101】
また別な実施態様においては、リン含有添加剤には、少なくとも1種のホスフィン酸、ホスフィン酸エステル、ホスホン酸、ホスホン酸エステル、リン酸、および/またはリン酸エステルが含まれる。
【0102】
リン酸またはリン酸エステルは次の一般式(III)を有し:
(O)P(OR)(OR)(OR) (III)
ホスホン酸またはホスホン酸エステルは次の一般式(IV)を有し:
(O)PR(OR)(OR) (IV)
ホスフィン酸またはホスフィン酸エステルは次の一般式(V)を有する。
(O)PR(OR) (V)
[式中、R、R、およびRは互いに独立して、H、または場合によってはたとえばO、S、および/またはNのようなヘテロ原子を含む、1〜30Cを有する有機残基であり、そして、RおよびRは独立して、場合によってはたとえばO、S、および/またはNのようなヘテロ原子を含む、1〜30Cを有する有機残基である]
【0103】
有機残基のR、R、R、RまたはRはすべて互いに独立して、分岐状または直鎖状のアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキルである。
【0104】
好ましくは、有機残基は、場合によってはたとえばO、S、および/またはNのようなヘテロ原子を含む、1〜24C、好ましくは6〜18Cの直鎖状または分岐状のアルキルである。
【0105】
特に有用なのは、好ましくは6〜24C、さらに好ましくは6〜18Cのアルキル残基を有するアルキルホスホン酸である。特に好ましいのは、オクタンホスホン酸またはドデシルホスホン酸である。
【0106】
、R、およびRがHであるならば、それぞれ、式(III)はリン酸を表し、式(IV)はホスホン酸を表し、そして式(V)はホスフィン酸を表す。
【0107】
本発明の好ましい実施態様においては、リン含有添加剤は、50〜150mgKOH/gリン含有添加剤の範囲の酸価を有する。酸価が70〜120mgKOH/gリン含有添加剤の範囲であれば、さらに好ましい。
【0108】
本発明のまた別な実施態様においては、リン含有添加剤が、65〜120mgKOH/gリン含有添加剤の範囲のアミン価を有する。アミン価が80〜100mgKOH/gリン含有添加剤の範囲であれば、さらに好ましい。
【0109】
驚くべきことには、置換されていても非置換であってもよいが、少なくとも1個の酸性基または酸性の置換基と少なくとも1個のアミン基とを有するリン含有添加剤は、本発明の顔料調製物中のアルミニウム顔料の集塊を強く抑制するのに特に有効である。
【0110】
本発明の好ましい実施態様においては、リン含有添加剤は、50〜150mgKOH/gの範囲の酸価と、65〜100mgKOH/gの範囲のアミン価とを有している。酸価が70〜120mgKOH/gの範囲で、アミン価が80〜100mgKOH/gの範囲であれば、さらに好ましい。
【0111】
本発明のまた別な実施態様においては、リン含有添加剤は、500〜50000g/molの範囲、好ましくは550〜25000g/molの範囲、さらに好ましくは600〜20000g/molの範囲の分子量を有している。
【0112】
少なくとも1個のリン酸基、リン酸エステル基、ホスホン酸基、ホスホン酸エステル基、ホスフィン酸基および/またはホスフィン酸エステル基、ならびに、好ましくは、さらに少なくとも1個のアミン基を有するリン含有添加剤が、本発明の顔料調製物においては特に有効であることが判明した。これらの化合物は、500〜50000g/molの範囲、好ましくは550〜25000g/molの範囲、さらに好ましくは600〜20000g/molの範囲の分子量を有しているのが好ましい。
【0113】
各種のリン含有添加剤の混合物を使用することが可能であることはもちろんであり、また好ましい。
【0114】
本発明の顔料調製物においては、次のリン含有添加剤が特に有用である:Disperbyk−102、106、111、180、190、191および192(BYK−Chemie GmbH、Wesel、Germany)。
【0115】
リン含有添加剤は、それぞれ顔料調製物の全重量を基準にして、0.01〜15重量%の範囲、好ましくは0.05〜10重量%の範囲、さらに好ましくは0.1〜5重量%の範囲の量で使用するのが好ましい。また別の好ましい実施態様においては、リン含有添加剤は、それぞれ顔料調製物の全重量を基準にして、0.15〜4重量%の範囲、好ましくは0.2〜3重量%の範囲の量で使用するのが好ましい。
【0116】
本発明の顔料調製物中のアルミニウム効果顔料の量は、顔料調製物の全重量を基準にして、好ましくは1〜40重量%の範囲、さらに好ましくは5〜20重量%の範囲である。
【0117】
顔料調製物中の溶媒(または溶媒混合物)の量は、顔料調製物の全重量を基準にして、好ましくは99〜60重量%の範囲、さらに好ましくは96〜80重量%の範囲である。
【0118】
本発明の顔料調製物には、さらなる添加剤を、顔料調製物の全重量を基準にして、通常は0〜10重量%の範囲、さらに好ましくは0.3〜5重量%の範囲で含むことができるが、そのような添加剤としては、たとえば、研摩助剤、殺虫剤、pH安定剤、消泡剤、艶消剤、UV安定剤、着色剤、たとえば有機もしくは無機の染料もしくは顔料、およびそれらの混合物などが挙げられる。
【0119】
本発明のインクジェット印刷インキは、本発明の顔料調製物をインクジェット印刷インキの中に組み入れることによって得ることができる。
【0120】
本発明のインクジェット印刷インキ中のアルミニウム効果顔料の量は、インクジェット印刷インキの全重量を基準にして、好ましくは約1〜30重量%の範囲、より好ましくは約2〜20重量%の範囲である。
【0121】
本発明のまた別な好ましい実施態様においては、アルミニウム効果顔料の含量は、インクジェット印刷インキの全重量を基準にして、約2.5〜8重量%の範囲である。
【0122】
本発明のまた別な実施態様においては、インクジェット印刷インキが結合剤を含む。これらのインクジェット印刷インキは溶媒系であるのが好ましい。結合剤の量は、インクジェット印刷インキの全重量を基準にして、1〜99重量%の範囲である。
【0123】
インクジェット印刷インキを適用する基材の性質に応じて、インクジェット印刷インキの中に結合剤を存在させるか、または存在させない。結合剤が基材の一部となっている、たとえば粘着性物質を含む特殊なインクジェット印刷紙のような場合には、インクジェット印刷インキが結合剤を含んでいる必要はない。
【0124】
本発明のまた別な好ましい実施態様においては、インクジェット印刷インキは、(1種または複数の)溶媒系または水系であり、インクジェット印刷インキの全重量を基準にして、約1〜50重量%の範囲の結合剤を含む。さらに、結合剤の含量を、インクジェット印刷インキの全重量を基準にして、約2〜35重量%とするのが好ましい。結合剤の含量が約3〜25重量%の範囲であれば、より好ましい。
【0125】
照射硬化性インクジェット印刷インキ、特にUVインクジェット印刷インキのためのまた別な好ましい実施態様においては、希釈剤が、結合剤としても機能する反応性希釈剤である。反応性希釈剤、たとえば液状オリゴマーおよびモノマーの量は、インクジェット印刷インキの全重量を基準にして、1〜99重量%、好ましくは10〜95%、より好ましくは40〜90重量%の範囲である。
【0126】
すなわち、本発明の実施態様においては、反応性希釈剤が結合剤ともなり得る。
【0127】
結合剤は、インクジェット印刷インキにおいて通常使用されるいかなる結合剤であってもよい。好ましい結合剤は以下のような結合剤であるが、これらに限定される訳ではない:UV硬化性アクリル系モノマーおよびオリゴマー、さらには各種のタイプの樹脂、たとえば、炭化水素樹脂、変性ロジン樹脂、ポリエチレングリコール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、変性セルロースもしくは変性ナイロン樹脂、もしくは有機溶媒に可溶性のその他の樹脂、またはそれらの混合物。
【0128】
溶媒系または水系インクジェット印刷インキが、インクジェット印刷インキの全重量を基準にして、約10〜95重量%の量の溶媒含量を有しているのが好ましい。本発明のまた別な好ましい実施態様においては、溶媒含量が約20〜94重量%であり、より好ましくは50〜93重量%である。
【0129】
インクジェット印刷インキ技術に好適な各種の溶媒または溶媒混合物を使用することができる。好適な溶媒は、水、アルコール、エステル、エーテル、チオエーテル、グリコールエーテル、グリコールエーテルアセテート、アミン、アミド、ケトン、および/または炭化水素、またはそれらの混合物である。
【0130】
アルコールの例は、アルキルアルコール、たとえば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、フッ素化アルコール、またはそれらの混合物である。
【0131】
ケトン溶媒の例は、アセトン、メチルエチルケトンもしくはシクロヘキサノン、ジイソブチルケトン、メチルプロピルケトン、ジアセトンアルコール、N−メチルピロリドン、またはそれらの混合物である。
【0132】
エステルの例は、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸1−メトキシ−2−プロピル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチルもしくはプロピオン酸エチル、グリコールエーテルアセテート、ブチルグリコールアセテート、またはそれらの混合物である。
【0133】
エーテル溶媒の例は、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールエーテル、特にエチレングリコールエチルエーテルもしくはエチレングリコールメチルエーテル(それらは商標Cellosolve(登録商標)として市販されている)、メトキシプロパノール、またはそれらの混合物である。
【0134】
さらに、有機溶媒の好適な例は、常温常圧下で液状であるジエチレングリコール化合物と、常温常圧下で液状であるジプロピレングリコールまたは1−メトキシ−2−ブチルグリコール化合物との混合物を含む。
【0135】
アミン溶媒の例は、トリエタノールアミンおよびジメチルエタノールアミンである。アミド溶媒の例は、N−メチルピロリドンおよび2−ピロリドンである。
【0136】
炭化水素は以下のものからなる群より選択されうる:テルペン炭化水素、たとえば、ピネン、リモネン、テルピノレン;脂肪族炭化水素、たとえば、ヘプタン、ミネラルスピリッツ、ストッダード溶媒;ならびに芳香族炭化水素、たとえば、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ、ならびにそれらの混合物。
【0137】
また別な実施態様においては、本発明のインクジェット印刷インキが、照射硬化性インキ、特にUV硬化性インキであって、溶媒を、インクジェット印刷インキの全重量を基準にして約0〜50重量%の量で含む。その溶媒含量が0〜10重量%であればより好ましいが、その理由は、UV硬化性インキにおいては、溶媒は通常不要であるからである。本発明の特に好ましい実施態様においては、UV硬化性インクジェット印刷インキは溶媒を含まない。
【0138】
本発明のまた別な実施態様においては、インクジェット印刷インキは、Brookfield粘度計LV Model DV−II+でスピンドルno.61を使用し、100rpm、温度21℃で測定して、約1〜100mPa・sの範囲の粘度を有している。インクジェット印刷インキの粘度は、好ましくは約3mPa・s〜30mPa・sの範囲、より好ましくは5〜20mPa・sの範囲である。
【0139】
粘度は、使用される印字ヘッドのタイプ、その上に印刷される基材、および/またはインクジェット印刷インキの組成に合わせて調節することができる。
【0140】
本発明のまた別な実施態様においては、インクジェット印刷インキは、20〜50mN/mの表面張力を有する。表面張力が20mN/m未満であると、インクジェット印刷インキ組成物が、インクジェット記録のためのプリンターヘッドの表面上で濡れて広がったり、そこからしみ出したりして、場合によっては、インキ液滴の吐出が困難となる。表面張力が50mN/mを超えると、インキ組成物が記録媒体の表面上で濡れて広がらず、場合によっては、良好な印刷の実施ができなくなる。
【0141】
インクジェット印刷インキは、添加剤、たとえば分散剤、抗沈降剤、潤滑剤、湿潤剤、界面活性剤、浸透剤、またはそれらの混合物を含んでいるのが好ましい。
【0142】
分散剤は、インクジェット印刷インキのすべての成分、より詳しくはアルミニウム効果顔料を均質に分散させて、もしあるとしても、いかなる集塊の傾向も回避するのに役立つ。分散剤は、インクジェット印刷インキのすべての成分の均質な分散性を改良することができるが、それは使用する成分の性質に依存する可能性がある。分散剤は、脂肪酸またはその混合物からなる群より選択されるのが好ましい。
【0143】
有機溶媒を使用する場合には、本発明のインクジェット印刷インキ組成物は、分散剤を含むことができる。分散剤としては、通常のインキ組成物、たとえばグラビアインキ、オフセットインキ、凹版インキまたはスクリーン印刷インキなどで使用されているいかなる分散剤も使用することができる。特に、有機溶媒の溶解パラメーターが8〜11である場合に効果的に機能する分散剤を使用するのが好ましい。そのような分散剤としては、市販品を使用することも可能であって、その具体例としては以下のものが挙げられる:Solsperse 20000、24000、3000、32000、32500、33500、34000、および35200(Avecia K.K.)、またはDisperbyk−102、106、111、161、162、163、164、166、180、190、191、および192(BYK−Chemie GmbH)。
【0144】
さらに好ましい実施態様においては、本発明のインクジェット印刷インキ組成物は、抗沈降剤を含む。この物質で、インキの中のフレーク状のアルミニウム効果顔料が沈降することを防止することが期待される。例としては以下のものが挙げられる:Byk(登録商標)−405と熱分解法シリカとの組合せ、変性尿素、たとえばByk(登録商標)−410およびByk(登録商標)−411、またはワックス、たとえばByk Ceramat(登録商標)237、Ceramat(登録商標)250、Cerafak(登録商標)103、Cerafak(登録商標)106、またはCeratix(登録商標)8461。
【0145】
水性インキ配合物においては、Byk(登録商標)−420が特に好ましい。
【0146】
潤滑剤は、印字ヘッド構造の中での、インクジェット印刷インキの通過性を改良するのに役立つ。潤滑剤は、脂肪酸、たとえばステアリン酸もしくはオレイン酸、脂肪酸エステル、およびそれらの混合物からなる群より選択されるのが好ましい。
【0147】
湿潤剤は、水性インクジェット印刷インキ中で使用して、特に印字ヘッドの中にあるときの乾燥を回避する。湿潤剤は、蒸発速度を抑制し、ジェットオリフィスで蒸発が起きた場合に染料の沈降を防止する。湿潤剤は、ポリオール、たとえば、グリコール、グリセリン、ソルビトール、ポリビニルアルコール、およびそれらの混合物からなる群より選択されるのが好ましい。
【0148】
微生物の生長を防止するために、インクジェット印刷インキの中に殺虫剤を組み入れることができる。たとえば、ポリヘキサメチレンビグアニド、イソチアゾロン、イソチアゾリノン、たとえば、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(CIT)、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(MIT)など、またはそれらの混合物を使用することができる。
【0149】
アルミニウム効果顔料に加えて、各種の着色剤をインクジェット印刷インキの中に組み入れることができる。たとえば、各種のブラック着色剤、たとえば、C.I.ソルベントブラック27、28、29、35、45;各種のブルー着色剤、たとえば、C.I.ダイレクトブルー86、199;C.I.ソルベントブルー25、44、48、67、70;各種のレッド着色剤、たとえば、C.I.アシッドレッド52;C.I.ソルベントレッド49、172;C.I.ディスパースレッド60;C.I.ピグメントレッド122;C.I.および/または各種のイエロー着色剤、たとえば、アシッドイエロー23;C.I.ダイレクトイエロー86;C.I.ディスパースイエロー119;C.I.ソルベントイエロー162;ソルベントイエロー146;C.I.ピグメントイエロー17などを、本発明のインクジェット印刷インキとの組合せで使用することができる。
【0150】
本発明の基礎をなす目的は、さらに、請求項1〜18のいずれか1項のインクジェット印刷インキを、基材の表面上に好ましくはインクジェットプリンターを使用して適用し、印刷する方法の提供により解決される。
【0151】
基材は、塗工紙または非塗工紙、塗工板紙または非塗工板紙、プラスチック、金属、セラミックス、ガラス、織物、およびそれらの組合せからなる群より選択するのが好ましい。最も好ましい基材はプラスチックである。
【0152】
本発明のインクジェット印刷インキは、市販されているインクジェットプリンターを使用して、基材に適用することができる。インクジェットプリンターが、アルミニウム効果顔料含有のインクジェット印刷インキを保持するための容器を有しているのが好ましい。印刷する前に、印刷装置のノズルまたはその他の部品を閉塞させる可能性がある、残存している可能性がある凝集粒子を除去するのに適したメッシュサイズを有する篩に、アルミニウム効果顔料含有のインクジェット印刷インキを通過させて、篩別するのが好ましい。
【0153】
本発明の目的は、さらに、請求項21〜31のいずれか1項に記載のインクジェット印刷インキを製造するための方法によって解決されるが、それには、本発明のアルミニウム効果顔料を、インクジェット印刷インキの成分、たとえば、(1種または複数の)結合剤、(1種または複数の)溶媒、(1種または複数の)添加剤など、先に詳しく説明したようなものと、穏やかに混合することが含まれる。
【0154】
本発明のインクジェット印刷インキ組成物は、たとえば、以下の方法により調製することができる:最初に、特定の粒子サイズ分布にあるアルミニウム効果顔料、1.8mPa・sより高い粘度を有する溶媒(または溶媒混合物)、およびリン含有添加剤、場合によっては分散剤、および液状溶媒および/または液状結合剤および/または希釈剤を含む本発明の顔料調製物を、アルミニウム効果顔料を損傷しないように、穏やかに混合する。次いで、インクジェット印刷インキを、ボールミル、パールミル、ビーズミル、超音波、ジェットミルなどにより調製し、所望のインクジェット印刷インキ特性となるように調節を実施する。次いで、場合によっては、液状溶媒および/または添加剤、たとえば分散助剤、粘度調節剤および/またはバインダー樹脂を添加するか、または撹拌下で付加的に添加し、それによって本発明のインクジェット印刷インキを得る。
【0155】
本発明のインクジェット印刷インキは、好ましくは、1〜50mPa・sの範囲の粘度(温度25℃でBrookfield粘度計LV Model DV−II+でスピンドルno.61を使用し100rpmで測定)、20〜80mN/mの範囲の表面張力(温度25℃でdu Nouy’s Ring Methodにより測定)、6〜11の範囲のpH(水系印刷インキ中)、0.2〜5mS/cmの範囲の伝導率(温度25℃でDIN 53779により測定)を有している。
【0156】
特許請求された方法の重要な見地は、先にも説明したように、混合プロセスの間にアルミニウム効果顔料が損傷を受けないということである。特別の性能を維持するためには、アルミニウム効果顔料の微小板構造を保持しなければならない。アルミニウム効果顔料を曲げたりねじったりすると、その特有の鏡面性が著しく損なわれることになる。
【0157】
たとえば、本発明のインクジェット印刷インキの成分は、超音波浴を使用し、次いで磁気撹拌によって穏やかに混合することができる。
【0158】
本発明のインクジェット印刷インキは、各種のインクジェット印刷インキ技術を用いて使用することができる。本発明のインクジェット印刷インキ組成物は、各種のインクジェット記録系に適用することができる。すなわち、各種のインクジェット記録系、たとえば、静電引力を利用してインクジェット印刷インキが吐出される電場制御系、圧電素子の駆動圧力を利用してインキが吐出されるドロップ・オン・デマンド系(または加圧パルス系)、さらには、高熱によって気泡を形成させ、それを成長させることにより発生する圧力を利用してインキが吐出されるバブル系または加熱系などに適用することができる。
【0159】
本発明のインクジェット印刷インキは、連続インクジェット(CIJ)または、衝撃もしくはドロップ・オン・デマンド(DOD)インクジェット技術を用いて使用するのが好ましい。
【0160】
本発明について、以下の非限定的な実施例によってさらに説明する。好ましい実施態様のみを示し、説明していることを理解されたい。当業者には自明のことであるが、本発明のコンセプトの基礎となっている精神と範囲から外れることなく、各部分のある種の変更、各種の改変および再配列をすることが可能であり、添付の請求項の範囲に示されている限りを除き、本明細書に示され説明された特定の形態に限定される訳ではない。
【0161】
実施例1(顔料A)
a)アルミニウムのアトマイズおよびアルミニウムグリットの分離:
アルミニウムのバレルを工業炉(Company Induga;容量、2.5トン)の中に連続的に供給し溶融させた。プレクッカーにおいて、溶融アルミニウムの温度を720℃に保持した。インジェクターの原理で動作する数本のインジェクターをその溶融物の中に浸漬した。アルミニウム溶融物を、垂直上方にアトマイズさせた。アトマイズ用ガスは圧縮して約20バールとし、約700℃にまで加熱した。不活性ガス(窒素)の中を飛行している間に、アルミニウムグリットを冷却、固化させた。アルミニウムグリットをサイクロン中で捕集すると、14〜17μmのd50を特徴とするグリットが得られた。さらなる分離で、グリットをマルチサイクロンに供給すると、2.3〜2.8μmのd50値を有するグリットが得られた。最終的には、極めて微細なグリットがフィルター中に捕集された。このグリットは、d10値が0.4μm、d50値が1.9μm、d90値が3.8μmであった。
【0162】
b)フレークを形成させるための研摩
ボールミル(長さ:32cm、幅:19cm)に、4kgのガラス球(直径:2mm)、75gのa)からの微細アルミニウムグリットを含む200gのミネラルスピリットおよび3.75gのオレイン酸を供給した。次いで、その混合物を、58rpmの回転速度で15時間かけて摩砕した。生成物をボールから分離し、次いで25μmの篩を使用して篩別した。微細な顔料を濃縮して、約50重量%の顔料を含むペーストとした。
【0163】
この研摩手順によって、h10=35nm、h50=54nm、h90=70nmの厚み分布を有する、極めて薄いアルミニウムフレークが得られた。厚み分布は、SEMを用いて約100個の顔料粒子を計数することによって求めたが、これについてはWO 2004/087816 A2にさらに記載されている。レーザー回折法(Cilas 1064)により求めた粒子サイズ分布からは、d10=7μm、d50=13μm、d90=20μmが得られた。
【0164】
c)顔料を微粉砕するための研摩:
ボールミルに、10gのb)の顔料のペースト、1gのDisperbyk 103(リン酸基含有分散剤、Byk−Chemie GmbH、Wesel、Deutschland)、0.2gのオクチルホスホン酸、および89gのブチルグリコールを供給した。その混合物を、0.3〜0.7mmの直径を有するセラミックボール混合物4kgと共に、750rpmで1時間摩砕した。この手順の後で、得られた調製物中のアルミニウム顔料は、8μm未満のd100を有していた。得られた顔料分散体を濃縮して、顔料濃度が約30重量%の顔料とした。この顔料調製物を直接使用して、インクジェット印刷インキを調製した。
【0165】
実施例2(顔料B):
ボールミルに、10gの市販されているpvd顔料であるMetalure(登録商標)L 55700(ECKART GmbH、Fuerth、Deutschland、d98値:21μm、d100値:30μm)の分散体(10重量%顔料)、1gのDisperbyk 180(リン酸基含有分散剤、酸価:95mgKOH/g添加剤、アミン価:95mgKOH/g添加剤;Byk−Chemie GmbH、Wesel、Deutschland)、0.2gのオクチルホスホン酸、および80gの1−メトキシ−2−プロパノールを供給した。その混合物を、0.3〜0.7mmの直径を有するセラミックボール混合物4kgと共に、750rpmで1時間摩砕した。この手順の後で、得られた調製物からのアルミニウム顔料は、8μm未満のd100を有していた。得られた顔料分散体を濃縮して、顔料濃度が約5重量%の顔料とした。この顔料調製物を直接使用して、インクジェット印刷インキを調製した。
【0166】
顔料C:
実施例2の研摩手順を繰り返したが、ただし、Disperbyk添加剤に代えて、2gのオクチルホスホン酸だけを使用した。
【0167】
印刷インキの調製
印刷インキ1(ドロップ・オン・デマンド印刷用):
7gの顔料調製物(顔料A)

インキビヒクル印刷インキ1:
40gの1−ヘキサノール(溶媒)
12gの1−メトキシ−2−プロパノール(溶媒)
22gのArizona 0201−147(ポリアミド樹脂、Arizona chemical Savannah、GA、USA製)
【0168】
溶媒ブレンド物を加熱して75℃とし、樹脂を徐々に添加する。中速ミキサーを用いてその混合物を撹拌し、樹脂粒子を全部溶解させる。そのできあがった樹脂溶液を冷却して室温としてから、サブミクロンメディアフィルターを通して濾過する。
【0169】
インクジェット印刷インキの調製:
7部の顔料Bを74部のインキビヒクルAにゆっくりと添加し、中速分散器を用いて15分間連続的に撹拌する。次いで超音波浴中でその混合物をさらに5分間処理する。次いで、20μmメッシュのフィルターを通してできあがったインクジェット印刷インキを濾過して、製造プロセスの間にできた望ましくない大きな粒子または集塊物を除去する。
【0170】
印刷:
できあがったインクジェット印刷インキを、撹拌機を用いて連続的に撹拌することが可能な容器に移す。インクジェット印刷インキを、印字ヘッドの作動に必要な周辺機器を取り付けた印字ヘッド構造の中に供給する。吐出温度を調節して、8〜20mPa・sの範囲の所望の流体粘度となるようにする。
印字ヘッド:Spectra Nova PH 256/80 AAA
サポートシステム:Spectra Apollo 1印字ヘッドサポートキット
条件:吐出温度70℃
吐出周波数1.5kHz
【0171】
印刷インキ2(ドロップ・オン・デマンド印刷用):
47gの顔料調製物(顔料C)

ビヒクル印刷インキ2:
49.5gのブチルグリコールアセテート(溶媒)
20gのJoncryl 611(ポリアクリレート樹脂、Spec.Chem.S.R.L.から入手可能)
0.5gのFluorad FC 4430(界面活性剤、3M Speciality Materialsから入手可能)
【0172】
印刷インキ1と同一の手順を繰り返したが、ただし、70gのビヒクル印刷インキ2に47gの顔料調製物(顔料C)を添加した。
【0173】
印刷:
できあがったインクジェット印刷インキを、撹拌機を用いて連続的に撹拌することが可能な容器に移す。インクジェット印刷インキを、印字ヘッドの作動に必要な周辺機器を取り付けた印字ヘッド構造の中に供給する。吐出温度を調節して、8〜20mPa・sの範囲の所望の流体粘度となるようにする。
印字ヘッド:Spectra Nova PH 256/80 AAA
サポートシステム:Spectra Apollo 1印字ヘッドサポートキット
条件:吐出温度70℃
吐出周波数1.5kHz
【0174】
印刷インキ3(連続ジェット印刷用)
45gの顔料調製物(顔料B)

ビヒクル印刷インキ3:
66gのメチルエチルケトン(溶媒)
3gのDegalan(アクリレート樹脂、Roehm GmbH、Germanyから入手可能)
1gのNaSCN(導電剤)
【0175】
印刷インキ4(ドロップ・オン・デマンド印刷用)
120gの顔料調製物(顔料C)

ビヒクル印刷インキ4:
54.2gの水(溶媒)
20gのジエチレングリコール(溶媒)
5gの1,6ヘキサンジオール(乾燥抑制剤)
5gのJoncryl 661(ポリアクリレート樹脂、Spec.Chem.S.R.L.から入手可能)
0.5gのGenapol X080(界面活性剤、Clariant、Germanyから入手可能)
0.3gのActicide MBS(殺虫剤)
【0176】
印刷インキ1と同一の手順を繰り返したが、ただし、85gのビヒクル印刷インキ2に120gの顔料調製物(顔料C)を添加した。
【0177】
印刷:
できあがったインクジェット印刷インキを、撹拌機を用いて連続的に撹拌することが可能な容器に移す。インクジェット印刷インキを、印字ヘッドの作動に必要な周辺機器を取り付けた印字ヘッド構造の中に供給する。吐出温度を調節して、8〜20mPa・sの範囲の所望の流体粘度となるようにする。
印字ヘッド:HP 51645A
プリンター:HP Desk Jet 880C
条件:普通紙/ベスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム効果顔料、溶媒、および少なくとも1種の添加剤を含む顔料調製物であって、
前記アルミニウム効果顔料が、15μm未満の体積平均粒子サイズ分布曲線のd98値を有し、
前記少なくとも1種の添加剤が、リン含有添加剤であり、そして
前記溶媒が、25℃で1.8mPa・sに等しいかそれ以上の粘度を有する、
顔料調製物。
【請求項2】
前記アルミニウム効果顔料が、12μm未満、好ましくは8μm未満のd98値を有する、請求項1に記載の顔料調製物。
【請求項3】
前記アルミニウム効果顔料が、12μm未満、好ましくは8μm未満のd100値を有する、請求項1または2のいずれか1項に記載の顔料調製物。
【請求項4】
前記アルミニウム効果顔料が、1〜6μmの範囲のd50値を有する、先行する請求項のいずれか1項に記載の顔料調製物。
【請求項5】
前記アルミニウム効果顔料が、ボールミル摩砕されたアルミニウム粒子である、先行する請求項のいずれか1項に記載の顔料調製物。
【請求項6】
前記アルミニウム効果顔料が、実質的に面に平行に整列させた前記アルミニウム効果顔料について測定したX線回折図で、[111]反射または[222]反射ではないメインピークを示す、先行する請求項のいずれか1項に記載の顔料調製物。
【請求項7】
前記アルミニウム効果顔料が、SEM画像の計数により求めて、15〜150nmの範囲、好ましくは20〜80nmの範囲の平均厚みh50を有する、先行する請求項のいずれか1項に記載の顔料調製物。
【請求項8】
前記アルミニウム効果顔料が、次式(I)によって計算して、30%〜150%の厚み分布の相対幅Δhを有する、先行する請求項のいずれか1項に記載の顔料調製物。
Δh=100(h90−h10)/h50 (I)
[式中、h90は、前記アルミニウム効果顔料の絶対高さの90%をカバーする顔料の数値であり、h10は絶対高さの10%をカバーする顔料の数値であり、h50は絶対高さの50%をカバーする顔料の数値である]
【請求項9】
前記アルミニウム効果顔料が、35%〜70%の範囲、好ましくは30%〜50%の範囲の厚み分布の相対幅Δhを有する、請求項8に記載の顔料調製物。
【請求項10】
前記アルミニウム効果顔料が、15〜80nmの平均厚みh50、および好ましくは30〜70%未満のΔhを有する、請求項8または9に記載の顔料調製物。
【請求項11】
前記アルミニウム効果顔料が、実質的に面に平行に整列させた前記アルミニウム効果顔料について測定したX線回折図で、[111]反射または[222]反射であるメインピークを示す、請求項1〜4のいずれか1項に記載の顔料調製物。
【請求項12】
前記アルミニウム効果顔料が、PVD−アルミニウム顔料である、請求項11に記載の顔料調製物。
【請求項13】
前記アルミニウム効果顔料が、SEM画像の計数により求めて、15〜60nmの範囲、好ましくは20〜50nmの範囲の平均厚みh50を有する、請求項11または12に記載の顔料調製物。
【請求項14】
前記アルミニウム効果顔料が、次式(I)によって計算して、30%〜50%の厚み分布の相対幅Δhを有する、請求項11〜13のいずれか1項に記載の顔料調製物。
Δh=100(h90−h10)/h50 (I)
[式中、h90は、前記アルミニウム効果顔料の絶対高さの90%をカバーする顔料の数値であり、h10は絶対高さの10%をカバーする顔料の数値であり、h50は絶対高さの50%をカバーする顔料の数値である]
【請求項15】
前記アルミニウム効果顔料が、30〜500の範囲のアスペクト比d50/h50を有する、先行する請求項のいずれか1項に記載の顔料調製物。
【請求項16】
前記リン含有添加剤が、少なくとも1種のホスホン酸、ホスホン酸エステル、リン酸、リン酸エステル、ホスフィン酸および/またはホスフィン酸エステルを含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の顔料調製物。
【請求項17】
前記リン含有添加剤が、50〜150mgKOH/gリン含有添加剤の範囲の酸価を有する、先行する請求項のいずれか1項に記載の顔料調製物。
【請求項18】
前記リン含有添加剤が、65〜120mgKOH/gリン含有添加剤の範囲のアミン価を有する、先行する請求項のいずれか1項に記載の顔料調製物。
【請求項19】
前記リン含有添加剤が、50〜150mgKOH/g樹脂の範囲の酸価、および65〜120mgKOH/gの範囲のアミン価を有する樹脂である、先行する請求項のいずれか1項に記載の顔料調製物。
【請求項20】
前記リン含有添加剤が、次の一般式(III)を有するリン酸もしくはリン酸エステルであるか:
(O)P(OR)(OR)(OR) (III)
および/または前記リン含有添加剤が、次の一般式(IV)を有するホスホン酸もしくはホスホン酸エステルであるか:
(O)PR(OR)(OR) (IV)
および/または前記リン含有添加剤が、次の一般式(V)を有するホスフィン酸もしくはホスフィン酸エステルである
(O)PR(OR) (V)
[式中、R、R、およびRは互いに独立して、H、または場合によってはたとえばO、S、および/またはNのようなヘテロ原子を含む、1〜30Cを有する有機残基であり、そして、RおよびRは独立して、場合によってはたとえばO、S、および/またはNのようなヘテロ原子を含む、1〜30Cを有する有機残基であり、そして、有機残基のR、R、R、RおよびRはすべて互いに独立して、分岐状または直鎖状のアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキルである]、
請求項16に記載の顔料調製物。
【請求項21】
前記リン含有添加剤が、R=R=Hを有し、そしてRが6〜18C原子の分岐状または直鎖状のアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキルであるホスホン酸を含むかそのホスホン酸である、請求項20に記載の顔料調製物。
【請求項22】
前記アルミニウム効果顔料が、腐食防止物質の層でコーティングされている、先行する請求項のいずれか1項に記載の顔料調製物。
【請求項23】
前記腐食防止物質が、金属酸化物および/または有機ポリマーである、請求項22に記載の顔料調製物。
【請求項24】
前記金属酸化物が、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化鉄、およびそれらの混合物または組合せからなる群より選択される、請求項22または23に記載の顔料調製物。
【請求項25】
請求項1〜24のいずれか1項に記載の顔料調製物を含む、インクジェット印刷インキ。
【請求項26】
少なくとも1種の結合剤をさらに含む、請求項25に記載のインクジェット印刷インキ。
【請求項27】
前記結合剤が、前記インクジェット印刷インキの全重量を基準にして、約1〜99重量%の量で存在する、請求項25または26に記載のインクジェット印刷インキ。
【請求項28】
前記インクジェット印刷インキが、溶媒または水またはそれらの混合物をベースとし、結合剤を、前記インクジェット印刷インキの全重量を基準にして、約1〜50重量%の量で含む、請求項25〜27のいずれか1項に記載のインクジェット印刷インキ。
【請求項29】
前記インクジェット印刷インキが、照射硬化性インキであり、前記希釈剤が、反応性希釈剤である、請求項25〜28のいずれか1項に記載のインクジェット印刷インキ。
【請求項30】
前記溶媒および/または希釈剤が、水、アルコール、エステル、エーテル、チオエーテル、グリコールエーテル、グリコールエーテルアセテート、アミン、アミド、ケトン、炭化水素、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項25〜29のいずれか1項に記載のインクジェット印刷インキ。
【請求項31】
前記インクジェット印刷インキが、溶媒系または水系インキであって、前記溶媒または水が、前記インクジェット印刷インキの全重量を基準にして、約10〜95重量%の量で含まれる、請求項25〜30のいずれか1項に記載のインクジェット印刷インキ。
【請求項32】
前記インクジェット印刷インキが、溶媒を前記インクジェット印刷インキの全重量を基準にして、約0〜50重量%の量で含む照射硬化性インキである、請求項29に記載のインクジェット印刷インキ。
【請求項33】
インクジェット印刷インキが、分散剤、潤滑剤、湿潤剤、界面活性剤、浸透剤またはそれらの混合物からなる群よりなる少なくとも1種の添加剤をさらに含む、請求項25〜32のいずれか1項に記載のインクジェット印刷インキ。
【請求項34】
前記アルミニウム効果顔料が、前記インクジェット印刷インキの全重量を基準にして、約1〜30重量%の量で含まれる、先行する請求項25〜33のいずれか1項に記載のインクジェット印刷インキ。
【請求項35】
前記インクジェット印刷インキが、Brookfield粘度計LV Model DV−II+でスピンドルno.61を使用し、100rpm、温度25℃で測定して、約1〜100mPa・sの範囲の粘度を有する、先行する請求項25〜34のいずれか1項に記載のインクジェット印刷インキ。
【請求項36】
請求項25〜35のいずれかに記載のインクジェット印刷インキを、好ましくはインクジェットプリンターを使用して基材の表面の上に適用することを含む、印刷方法。
【請求項37】
前記基材が、塗工紙および非塗工紙、塗工板紙および非塗工板紙、プラスチック、金属、セラミックス、ガラス、織物、ならびにそれらの組合せからなる群より選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
請求項1〜24のいずれか1項に記載の顔料調製物を、インクジェット印刷インキの成分、たとえば溶媒、希釈剤、添加剤および/または結合剤と穏やかに混合することを含む、請求項25〜35のいずれか1項に記載のインクジェット印刷インキの製造方法。
【請求項39】
インクジェット印刷インキにおける、請求項1〜24のいずれか1項に記載の顔料調製物の使用。
【請求項40】
請求項1〜24のいずれか1項に記載の顔料調製物、または請求項25〜35のいずれか1項に記載のインクジェット印刷インキを用いてコーティングされた物品。

【公表番号】特表2011−508030(P2011−508030A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−540054(P2010−540054)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【国際出願番号】PCT/EP2008/010888
【国際公開番号】WO2009/083176
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(502099902)エッカルト ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (48)
【氏名又は名称原語表記】Eckart GmbH
【Fターム(参考)】