説明

顕微鏡システム、観察方法および観察プログラム

【課題】対象物を容易かつ迅速に観察することができる顕微鏡システム、顕微鏡システムを用いた観察条件調整方法および観察条件調整プログラムを提供する。
【解決手段】CPUは、カンチレバーのたわみ量を初期値に設定し(ステップS21)、そのたわみ量を保つように試料の表面にカンチレバーを往復走査させる(ステップS22)。CPUは、表示装置における同一のピクセルに対応する往路高さデータと復路高さデータとを1ピクセル毎に比較し、それらの差分の絶対値(差分値)を算出し、さらに算出された複数の差分値の総和を算出し(ステップS23)、算出された差分値の総和が予め定められたしきい値以下であるか否かを判別する(ステップS24)。CPUは、総和がしきい値以下である場合に現在のたわみ量を基準たわみ量として設定し(ステップS25)、総和がしきい値以下でない場合にたわみ量を再設定する(ステップS26)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査型プローブ顕微鏡による試料の観察が可能な顕微鏡システム、観察方法および観察プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、従来の光学顕微鏡または電子顕微鏡等とは全く異なる原理を利用した走査型プローブ顕微鏡(Scanning Probe Microscope:SPM)が開発され、注目を浴びている。
【0003】
走査型プローブ顕微鏡は、プローブと呼ばれる鋭く尖った探針を自由端に有するカンチレバーを備えている。上記の走査型プローブ顕微鏡の一例である原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)においては、探針を試料に近づけると、探針の先端を構成している原子と試料を構成している原子との間に原子間力が生じる。この原子間力によりカンチレバーの自由端が変位する。
【0004】
このカンチレバーの自由端の変位を電気的に測定しながら、探針を試料に沿って走査させることにより、試料の表面形状を示す三次元的な情報を得ることができる。例えば、カンチレバーの自由端の変位を一定に保つように探針と試料との距離を制御しながら探針を走査させると、探針の先端は試料表面の凹凸に沿って移動するので、探針の先端の位置情報から試料の表面形状を示す三次元的な情報を得ることができる。
【0005】
なお、走査型プローブ顕微鏡のその他の例としては、探針の原子と試料表面の原子との間に生じる原子間力を用いる代わりに、探針と試料との間に流れるトンネル電流を利用することにより試料表面の三次元的な情報を得ることも可能な走査型トンネル顕微鏡もある。
【0006】
また、光学顕微鏡と走査型プローブ顕微鏡とが一体化されたプローブ走査装置が開発されている。
【0007】
ここで、従来のプローブ走査装置の概略を図面を参照しながら説明する。なお、下記に示すプローブ走査装置は、光学顕微鏡と走査型プローブ顕微鏡の一例である原子間力顕微鏡とが一体的に構成されたものである(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
図11は、従来のプローブ走査装置を示す模式図である。
【0009】
図11に示すように、支持台901には、図示しないリニアガイドを介して光学系支持台902が上下方向に移動可能に設けられている。
【0010】
光学系支持台902には、対物レンズ907、変位計測光学系906および観察光学系904が取り付けられている。
【0011】
光学系支持台902上に設けられた光学系支持台粗動マイクロメーター903を調整することにより、対物レンズ907、変位計測光学系906および観察光学系904を一体的に上下に移動させることができる。
【0012】
また、光学系支持台902には、図示しないリニアガイドを介してスキャナ支持台915が上下方向に移動可能に設けられている。
【0013】
スキャナ支持台915には、探針微動用円筒型圧電素子908が固定されている。探針微動用円筒型圧電素子908の下端に探針支持リング909が設けられている。
【0014】
この探針支持リング909にカンチレバー918が取り付けられており、カンチレバー918の自由端に探針910が設けられている。なお、探針910は、探針支持リング909の中央の開口部分から突出するように設けられている。
【0015】
スキャナ支持台915上に設けられたスキャナ支持台粗動マイクロメーター914を調整することにより、スキャナ支持台915を光学系支持台902に対して上下方向に移動させることができる。
【0016】
一方、支持台901上には、試料走査用円筒型圧電素子913が固定されている。試料走査用円筒型圧電素子913上には試料台912が設けられており、試料台912上に試料911が載置される。
【0017】
上記のような構成により、光学顕微鏡による試料の観察と走査型プローブ顕微鏡による試料の観察とを一台のプローブ走査装置により行うことができる。
【特許文献1】特開平5−157554号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
ところで、上記のプローブ走査装置においては、予め走査型プローブ顕微鏡による試料911の観察条件を設定しておく必要がある。
【0019】
走査型プローブ顕微鏡による試料911の観察モードとして、探針910と試料911とを互いに接触する位置まで近付けて、試料911と試料台912とを相対的に移動させ、探針910を試料911の表面形状に沿って走査させるコンタクトモードがある。
【0020】
このコンタクトモードにおいて、カンチレバー918は、上述のように、その自由端に取り付けられた探針910を試料911の表面に十分近づけた状態で保持する。この状態で、探針910と試料911の表面との間に原子間力が生じることにより、カンチレバー918がたわむ。
【0021】
走査型プローブ顕微鏡による試料911の観察時には、使用者は、予め観察条件として、例えばカンチレバー918のたわみ量を設定する。
【0022】
ここで、変位計測光学系906により実際のたわみ量を測定し、カンチレバー918のたわみ量が設定された値で一定に保たれるように探針微動用円筒型圧電素子908をフィードバック制御する。それにより、試料911の表面形状を示す三次元的な情報が得られる。
【0023】
しかしながら、設定されたたわみ量の大きさが適切でない場合、走査型プローブ顕微鏡による試料911の観察を正確に行うことはできない。以下、適切とされるたわみ量を最適たわみ量と呼ぶ。
【0024】
例えば、設定されたたわみ量が最適たわみ量に比べて過度に大きい場合には、探針910および試料911の少なくとも一方が損傷してしまう。
【0025】
また、設定されたたわみ量が最適たわみ量に比べて過度に小さい場合には、探針910が試料911の形状に追従できず、試料911の表面形状を正確に得ることができない。
【0026】
ここで、最適たわみ量は、カンチレバー918の種類により異なる。そのため、使用者は、設定するたわみ量をカンチレバー918の種類ごとに予め定められた値に初期設定する。
【0027】
また、最適たわみ量は探針910の走査速度および試料911の表面形状等によっても変化する。そこで、使用者は、初期設定されたたわみ量を探針910の走査速度および試料911の表面形状等に応じて調整する。
【0028】
しかしながら、最適たわみ量は、カンチレバー918の種類が同一であっても、個々のカンチレバー918ごとにばらつきがある。
【0029】
したがって、カンチレバー918を交換すると、探針910の走査速度および試料911の表面形状等の条件が同じ場合でも、使用者によるたわみ量の調整量が異なる場合がある。その結果、従来、走査型プローブ顕微鏡による試料911の観察は、熟練を要するとともに迅速な作業が困難であった。
【0030】
本発明の目的は、試料を容易かつ迅速に観察することができる顕微鏡システム、顕微鏡システムを用いた観察方法および観察プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0031】
(1)第1の発明に係る顕微鏡システムは、試料の表面形状を測定する顕微鏡システムであって、試料が載置される載置面を有する試料載置台と、探針を保持する保持部材と、試料載置台と探針とを載置面に平行な方向に相対的に走査させる走査手段と、探針と載置面上の試料との間の距離と一定の関係を有する物理量を検出する検出手段と、走査手段による走査時に、検出手段により検出される物理量が一定値になるように載置面に対して垂直な方向における保持部材の位置を変化させる駆動手段と、駆動手段により変化する保持部材の位置に対応する位置情報を取得するとともに、その位置情報から載置面上の試料の表面形状に関する形状情報を取得する取得手段と、物理量の一定値の設定時に、走査手段により保持部材を載置面上の試料の表面上の一方向および逆方向に相対的に移動させ、同一位置において取得手段により取得される位置情報の差が予め定められた範囲内になるように物理量の一定値を設定するとともに、物理量の一定値に対応する基準値を設定する設定手段と、物理量の一定値の調整時に、設定手段により設定された基準値を調整することにより物理量の一定値を調整するための調整手段とを備えるものである。
【0032】
この発明に係る顕微鏡システムにおいては、試料が試料載置台に載置され、走査手段により試料載置台と保持部材により保持された探針とが載置面に平行な方向に相対的に走査されるとともに、探針と載置面上の試料との間の距離と一定の関係を有する物理量が検出手段により検出される。
【0033】
このとき、検出手段により検出される物理量が一定値になるように載置面に対して垂直な方向における保持部材の位置が駆動手段により変化される。そして、取得手段により、保持部材の位置に対応する位置情報が取得されるとともに、その位置情報から載置面上の試料の表面形状に関する形状情報が取得される。このようにして、試料の表面形状が観察される。
【0034】
物理量の一定値の設定時には、設定手段が、走査手段により保持部材を載置面上の試料の表面上の一方向および逆方向に相対的に移動させ、同一位置において取得手段により取得される位置情報の差が予め定められた範囲内になるように物理量の一定値を設定する。また、設定手段は、物理量の一定値に対応する基準値を設定する。それにより、物理量の一定値がその保持部材の特性のばらつきにかかわらず最適な値に設定される。
【0035】
その後、使用者は、調整手段により基準値を調整することにより物理量の一定値を調整することができる。これにより、使用者は試料の観察条件に応じて物理量の一定値を容易に所望の値に調整することができる。その結果、試料を容易かつ迅速に観察することが可能となる。
【0036】
(2)検出手段により検出される物理量は、保持部材のたわみ量であってもよい。この場合、検出手段により検出されるたわみ量が一定値になるように載置面に対して垂直な方向における保持部材の位置が駆動手段により変化される。そして、取得手段により、保持部材の位置に対応する位置情報が取得されるとともに、その位置情報から載置面上の試料の表面形状に関する形状情報が取得される。
【0037】
たわみ量の一定値の設定時には、設定手段が、走査手段により保持部材を載置面上の試料の表面上の一方向および逆方向に相対的に移動させ、同一位置において取得手段により取得される位置情報の差が予め定められた範囲内になるようにたわみ量の一定値を設定する。また、設定手段は、たわみ量の一定値に対応する基準値を設定する。それにより、たわみ量の一定値がその保持部材の特性のばらつきにかかわらず最適な値に設定される。
【0038】
(3)調整手段は、設定手段により設定された基準値を初期基準値として表示するとともに初期基準値を基準として基準値の調整可能な範囲を表示する表示手段と、表示手段により表示された調整可能な範囲内の値を指定する指定手段と、指定手段により指定された値と初期基準値との差に応じて駆動手段を制御することにより物理量の一定値を調整する制御手段とを含んでもよい。
【0039】
この場合、表示手段により、基準値が初期基準値として表示され、初期基準値を基準とした基準値の調整可能な範囲が表示される。これにより、使用者は表示手段により表示される初期基準値と、基準値の調整可能な範囲とを容易に認識することができる。
【0040】
また、表示手段により表示された調整可能な範囲内の値が指定手段により指定される。指定された値と初期基準値との差に応じて駆動手段が制御手段により制御されることにより物理量の一定値が調整される。
【0041】
これにより、使用者は、指定手段により表示された調整可能な範囲内の所望の値を指定して、物理量の一定値を所望の値に容易に調整することができる。
【0042】
(4)表示手段は、初期基準値の画像および調整可能な範囲の画像を表示するとともに、初期基準値の画像を調整可能な範囲の画像上に表示し、指定手段は、初期基準値の画像を調整可能な範囲の画像上で移動させることにより調整可能な範囲内の値を指定してもよい。
【0043】
この場合、表示手段により初期基準値の画像および調整可能な範囲の画像が表示されるので、使用者は、初期基準値と、基準値を調整可能な範囲とを容易に認識することができる。
【0044】
また、使用者は、初期基準値の画像を調整可能な範囲の画像上で移動させることにより視覚的に所望の値を指定することができる。その結果、使用者は物理量の一定値を所望の値に容易に調整することができる。
【0045】
(5)表示手段は、調整可能な範囲の画像の階調または色彩を調整可能な範囲内の値に応じて変化させてもよい。
【0046】
この場合、使用者は調整可能な範囲内の値を階調または色彩により視覚的に認識することができる。その結果、使用者は物理量の一定値を所望の値に容易に調整することができる。
【0047】
(6)顕微鏡システムは、試料載置台に載置された試料の画像を取得する光学顕微鏡をさらに備えてもよい。
【0048】
この場合、光学顕微鏡により試料載置台に載置された試料の画像が取得される。それにより、使用者は、取得手段により表面形状に関する形状情報を取得すべき試料の領域を光学顕微鏡により探索することができる。
【0049】
(7)顕微鏡システムは、光学顕微鏡により取得された画像、および取得手段により取得された試料の表面形状に関する形状情報に基づく画像を表示する画像表示装置をさらに備えてもよい。
【0050】
この場合、光学顕微鏡により取得された画像、および取得手段により取得された試料の表面形状に関する形状情報に基づく画像が、画像表示装置により表示される。
【0051】
それにより、使用者は、光学顕微鏡により取得された画像、および取得手段により取得された試料の表面形状に関する形状情報に基づく画像を個別の表示装置を用いることなく容易に視認することができる。
【0052】
(8)第2の発明に係る観察方法は、載置面を有する試料載置台に載置された試料の表面形状を測定する顕微鏡システムを用いた観察方法であって、試料載置台と保持部材により保持された探針とを載置面に平行な方向に相対的に走査させつつ、探針と載置面上の試料との間の距離と一定の関係を有する物理量を検出するとともに、検出される物理量が一定値になるように載置面に対して垂直な方向における保持部材の位置を変化させるステップと、変化する保持部材の位置に対応する位置情報を取得するとともに、その位置情報から載置面上の試料の表面形状に関する形状情報を取得するステップと、物理量の一定値の設定時に、保持部材を載置面上の試料の表面上の一方向および逆方向に相対的に移動させ、同一位置において取得される位置情報の差が予め定められた範囲内になるように物理量の一定値を設定するとともに、物理量の一定値に対応する基準値を設定するステップと、物理量の一定値の調整時に、設定された基準値を調整することにより物理量の一定値を調整するステップとを備えるものである。
【0053】
この発明に係る観察方法においては、試料が試料載置台に載置され、試料載置台と保持部材により保持された探針とが載置面に平行な方向に相対的に走査されるとともに、探針と載置面上の試料との間の距離と一定の関係を有する物理量が検出される。
【0054】
このとき、検出される物理量が一定値になるように載置面に対して垂直な方向における保持部材の位置が変化される。そして、保持部材の位置に対応する位置情報が取得されるとともに、その位置情報から載置面上の試料の表面形状に関する形状情報が取得される。このようにして、試料の表面形状が観察される。
【0055】
物理量の一定値の設定時には、保持部材が載置面上の試料の表面上の一方向および逆方向に相対的に移動され、同一位置において取得される位置情報の差が予め定められた範囲内になるように物理量の一定値が設定される。また、物理量の一定値に対応する基準値が設定される。それにより、物理量の一定値がその保持部材の特性のばらつきにかかわらず最適な値に設定される。
【0056】
その後、使用者は、基準値を調整することにより物理量の一定値を調整することができる。これにより、使用者は試料の観察条件に応じて物理量の一定値を容易に所望の値に調整することができる。その結果、試料を容易かつ迅速に観察することが可能となる。
【0057】
(9)第3の発明に係る観察プログラムは、置面を有する試料載置台に載置された試料の表面形状を測定する顕微鏡システムを制御するコンピュータにより実行可能な観察プログラムであって、試料載置台と保持部材により保持された探針とを載置面に平行な方向に相対的に走査させつつ、探針と載置面上の試料との間の距離と一定の関係を有する物理量を検出するとともに、検出される物理量が一定値になるように載置面に対して垂直な方向における保持部材の位置を変化させる処理と、変化する保持部材の位置に対応する位置情報を取得するとともに、その位置情報から載置面上の試料の表面形状に関する形状情報を取得する処理と、物理量の一定値の設定時に、保持部材を載置面上の試料の表面上の一方向および逆方向に相対的に移動させ、同一位置において取得される位置情報の差が予め定められた範囲内になるように物理量の一定値を設定するとともに、物理量の一定値に対応する基準値を設定する処理と、物理量の一定値の調整時に、設定された基準値を調整することにより物理量の一定値を調整する処理とを、コンピュータに実行させるものである。
【0058】
この発明に係る観察プログラムにおいては、試料が載置される試料載置台と保持部材により保持された探針とが載置面に平行な方向に相対的に走査されるとともに、探針と載置面上の試料との間の距離と一定の関係を有する物理量が検出される。
【0059】
このとき、検出される物理量が一定値になるように載置面に対して垂直な方向における保持部材の位置が変化される。そして、保持部材の位置に対応する位置情報が取得されるとともに、その位置情報から載置面上の試料の表面形状に関する形状情報が取得される。このようにして、試料の表面形状が観察される。
【0060】
物理量の一定値の設定時には、保持部材が載置面上の試料の表面上の一方向および逆方向に相対的に移動され、同一位置において取得される位置情報の差が予め定められた範囲内になるように物理量の一定値が設定される。また、物理量の一定値に対応する基準値が設定される。それにより、物理量の一定値がその保持部材の特性のばらつきにかかわらず最適な値に設定される。
【0061】
その後、使用者は、基準値を調整することにより物理量の一定値を調整することができる。これにより、使用者は試料の観察条件に応じて物理量の一定値を容易に所望の値に調整することができる。その結果、試料を容易かつ迅速に観察することが可能となる。
【発明の効果】
【0062】
本発明に係る顕微鏡システム、観察方法および観察プログラムにおいては、試料が試料載置台に載置され、試料載置台と保持部材により保持された探針とが載置面に平行な方向に相対的に走査されるとともに、探針と載置面上の試料との間の距離と一定の関係を有する物理量が検出される。
【0063】
このとき、検出される物理量が一定値になるように載置面に対して垂直な方向における保持部材の位置が変化される。そして、保持部材の位置に対応する位置情報が取得されるとともに、その位置情報から載置面上の試料の表面形状に関する形状情報が取得される。このようにして、試料の表面形状が観察される。
【0064】
物理量の一定値の設定時には、保持部材が載置面上の試料の表面上の一方向および逆方向に相対的に移動され、同一位置において取得される位置情報の差が予め定められた範囲内になるように物理量の一定値が設定され、その物理量の一定値に対応する基準値が設定される。それにより、物理量の一定値がその保持部材の特性のばらつきにかかわらず最適な値に設定される。
【0065】
その後、使用者は、基準値を調整することにより物理量の一定値を調整することができる。これにより、使用者は試料の観察条件に応じて物理量の一定値を容易に所望の値に調整することができる。その結果、試料を容易かつ迅速に観察することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0066】
本発明の一実施の形態に係る顕微鏡システム、観察方法および観察プログラムについて、図面を参照しつつ説明する。
【0067】
(1) 顕微鏡システムの構成
図1は、本発明の一実施の形態に係る顕微鏡システムの外観を示す図である。図1に示すように、本実施の形態に係る顕微鏡システム1は、プローブ走査装置1Aおよびパーソナルコンピュータ1Bからなる。プローブ走査装置1Aおよびパーソナルコンピュータ1Bは、互いにケーブルcaにより接続されている。
【0068】
図1では、プローブ走査装置1Aが斜視図で示され、パーソナルコンピュータ1Bは正面図で示されている。ここで、プローブ走査装置1Aの斜視図において、水平面内で直交する2方向をX方向およびY方向とし、X方向およびY方向に垂直な方向をZ方向とする。これらのX方向、Y方向およびZ方向の定義は、後述する図2、図4および図6においても同様である。
【0069】
(1−a) プローブ走査装置の構成
プローブ走査装置1Aについて説明する。図2は、図1のプローブ走査装置1Aの組立て斜視図である。
【0070】
図1および図2に示すように、本実施の形態に係るプローブ走査装置1Aは、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)10および光学顕微鏡20を一体的に備える。原子間力顕微鏡10および光学顕微鏡20は、顕微鏡連結部材40に取り付けられ、ベース筐体部50により保持される。
【0071】
図2に示すように、ベース筐体部50は、XY平面に平行となるように配置される底板51を有する。底板51の四隅には、Z方向に延びる支持脚53a,53b,53c,53dが取り付けられている。また、底板51の四辺には、4つの支持脚53a,53b,53c,53dおよび底板51を取り囲むように補強板52が取り付けられている。
【0072】
プローブ走査装置1Aの組立て時において、4つの支持脚53a,53b,53c,53dの上端部には、それぞれ弾性部材54a,54b,54c,54dが取り付けられる。
【0073】
顕微鏡連結部材40は、AFM固定部材41と光学顕微鏡固定部材42とが一体的に形成された構造を有する。AFM固定部材41は、略箱形状を有し、内部に試料載置台収容空間41sを有する。光学顕微鏡固定部材42は角筒形状を有し、内部に光学顕微鏡収容空間42sを有する。
【0074】
顕微鏡連結部材40においては、AFM固定部材41に原子間力顕微鏡10が取り付けられ、光学顕微鏡固定部材42に光学顕微鏡20が取り付けられる。これにより、原子間力顕微鏡10および光学顕微鏡20が一体的に連結される。
【0075】
顕微鏡連結部材40への原子間力顕微鏡10および光学顕微鏡20の取り付けの詳細は後述する。
【0076】
原子間力顕微鏡10および光学顕微鏡20が連結された状態で、XY平面内における顕微鏡連結部材40の上端部側の四隅が被支持部43a,43b,43c,43dとして各弾性部材54a,54b,54c,54dの上端部に取り付けられる。
【0077】
これにより、図1に示すように、顕微鏡連結部材40により互いに連結された原子間力顕微鏡10および光学顕微鏡20が、ベース筐体部50により弾性的に保持される。
【0078】
原子間力顕微鏡10は、AFMスキャナ11および試料載置台30を備える。AFMスキャナ11は、顕微鏡連結部材40のAFM固定部材41上に取り付けられる。
【0079】
具体的には、図2に示すように、AFM固定部材41の上端部にAFMスキャナ支持部44が形成されている。AFMスキャナ支持部44は、平面視でL字状をなし、水平な上面を有する。この上面上にAFMスキャナ11が取り付けられる。
【0080】
AFMスキャナ11の下部には、図1に示すように、ミラーホルダ26および図示しないカンチレバー保持部が設けられている。ミラーホルダ26は光学顕微鏡20のミラー25を保持し、カンチレバー保持部は後述する探針が設けられたカンチレバーを保持する。
【0081】
原子間力顕微鏡10による試料Mの観察時には、カンチレバーのZ方向の変位、すなわち後述する圧電素子110(図4)に連結されたカンチレバー保持部のZ方向の変位がケーブルcaを通じてパーソナルコンピュータ1Bに送られる。それにより、パーソナルコンピュータ1Bは後述する表示装置にカンチレバーの変位に基づく画像を表示する。
【0082】
AFMスキャナ11のカンチレバーに設けられている探針を試料Mの表面に沿って走査させる構成の詳細は後述する。
【0083】
図2に示すように、試料載置台30は顕微鏡連結部材40の試料載置台収容空間41sに収容される。試料載置台30は、移動プレート30a、Z方向移動機構30bおよびXY方向移動機構30cを含む。
【0084】
図2によれば、XY方向移動機構30c上にZ方向移動機構30bが設けられ、Z方向移動機構30b上に移動プレート30aが設けられている。
【0085】
XY方向移動機構30cは2つのモータMa,Mbを有する。また、Z方向移動機構30bは図示しない1つのモータを有する。これらの3つのモータは、後述の図3の動作制御部81に接続されている。動作制御部81には、後述の図3のX方向電動スイッチSW1、Y方向電動スイッチSW2およびZ方向電動スイッチSW3が接続されている。図1および図2では、これらのスイッチSW1〜SW3を図示しないが、実際はプローブ走査装置1Aの正面側に各スイッチSW1〜SW3が設けられる。
【0086】
上記のX方向電動スイッチSW1、Y方向電動スイッチSW2およびZ方向電動スイッチSW3に代えて、移動プレート下降スイッチ、最下点スイッチおよび照明スイッチを設けてもよい。
【0087】
この場合、移動プレート下降スイッチは、試料Mが載置された移動プレート30aを下降させるために用いられる。最下点スイッチは、試料Mが載置された移動プレート30aを移動プレート30aがZ方向で移動可能な最下点に移動させるために用いられる。照明スイッチは、プローブ走査装置1A内に設けられる照明(図示せず)をオンまたはオフするために用いられる。
【0088】
使用者は、Z方向電動スイッチSW3を操作することによりZ方向移動機構30bを動作させる。これにより、試料Mが載置された移動プレート30aをZ方向(鉛直方向)に移動させることができる。
【0089】
また、使用者は、X方向電動スイッチSW1およびY方向電動スイッチSW2を操作することによりXY方向移動機構30cを動作させる。これにより、試料Mが載置された移動プレート30aをX方向およびY方向(水平方向)に移動させることができる。
【0090】
光学顕微鏡20は、レンズ格納部21、光軸変換部22、電動ズーム鏡筒23、CCD(電荷結合素子)カメラボックス24、ミラー25(図1)、ミラーホルダ26(図1)および遊動台座27を備える。光軸変換部22は光軸変換ミラー22aを内蔵する。
【0091】
電動ズーム鏡筒23は、後述の図3のズーム調整装置231およびフォーカス調整装置232を内蔵する。また、CCDカメラボックス24は後述の図3のCCDカメラ241を内蔵する。
【0092】
光学顕微鏡20のレンズ格納部21は、光軸変換部22に取り付けられ、光軸変換部22は、電動ズーム鏡筒23の上端部に取り付けられている。電動ズーム鏡筒23の下端部にCCDカメラボックス24が設けられている。光軸変換部22の内部では、光軸変換ミラー22aが電動ズーム鏡筒23の軸心の延長線上に配置されている。
【0093】
光学顕微鏡20の電動ズーム鏡筒23は、Z方向に平行な軸に対してやや傾斜するように遊動台座27により支持される。
【0094】
遊動台座27が、顕微鏡連結部材40の光学顕微鏡固定部材42上に取り付けられる。これにより、遊動台座27に支持された電動ズーム鏡筒23が光学顕微鏡収容空間42s内に収容される。
【0095】
なお、遊動台座27の光学顕微鏡固定部材42上への取り付けは、接続部材42c(図1)を光学顕微鏡固定部材42の上面にネジ止めし、固定された接続部材42cに遊動台座27をネジ止めすることにより行う。
【0096】
遊動台座27は、図示しない2つの移動機構を有する。一方の移動機構は、電動ズーム鏡筒23およびそれに取り付けられた各構成部をY方向に移動させることができる。また、他方の移動機構は、電動ズーム鏡筒23およびそれに取り付けられた各構成部を電動ズーム鏡筒23の軸心に沿う方向に移動させることができる。
【0097】
2つの移動機構は、ともに光学顕微鏡固定部材42上に設けられる光学顕微鏡移動操作部60に接続される。図1に示すように、光学顕微鏡移動操作部60には、Y方向操作ノブ60aおよび上下方向操作ノブ60bが設けられている。
【0098】
Y方向操作ノブ60aは遊動台座27の一方の移動機構を操作するために設けられ、上下方向操作ノブ60bは遊動台座27の他方の移動機構を操作するために設けられる。
【0099】
これにより、使用者は、Y方向操作ノブ60aを操作することにより光学顕微鏡20をY方向に移動させることができる。また、使用者は、上下方向操作ノブ60bを操作することにより光学顕微鏡20を電動ズーム鏡筒23の軸心に沿う方向に移動させることができる。
【0100】
ここで、試料Mが試料載置台30上に載置された状態で、ミラー25は試料Mの上方に位置する。この場合、図示しない光源から発せられる照明光が試料Mに照射され、その試料Mからの反射光がミラー25に照射される。
【0101】
試料Mからの反射光は、ミラー25により反射され、レンズ格納部21内のレンズを通して光軸変換部22内の光軸変換ミラー22aにより反射される。光軸変換ミラー22aによる反射光は、電動ズーム鏡筒23を通してCCDカメラボックス24に取り込まれる。それにより、CCDカメラボックス24内のCCDカメラに試料Mの画像が形成される。
【0102】
光学顕微鏡20による試料Mの観察時には、CCDカメラに形成された試料Mの画像がケーブルcaを通じてパーソナルコンピュータ1Bに送られる。それにより、パーソナルコンピュータ1Bは後述する表示装置に試料Mの画像を表示する。
【0103】
(1−b) 顕微鏡システムの制御系
顕微鏡システム1の制御系について説明する。図3は、顕微鏡システム1の制御系を説明するためのブロック図である。
【0104】
図3に示すように、本実施の形態に係る顕微鏡システム1において、プローブ走査装置1Aは、原子間力顕微鏡10、光学顕微鏡20、インターフェイス部80、動作制御部81、記憶部82、X方向電動スイッチSW1、Y方向電動スイッチSW2およびZ方向電動スイッチSW3を備える。
【0105】
原子間力顕微鏡10はAFMスキャナ11および試料載置台30を含み、光学顕微鏡20はズーム調整装置231、フォーカス調整装置232およびCCDカメラ241を含む。
【0106】
プローブ走査装置1Aにおいて、上記の各構成部は互いに電気的に接続されている。インターフェイス部80はケーブルcaを介してパーソナルコンピュータ1Bに接続されている。
【0107】
動作制御部81は、例えばCPU(中央演算処理装置)またはマイクロコンピュータ等を含み、プローブ走査装置1A内の他の構成部の動作を制御する。
【0108】
記憶部82は、例えばメモリからなり、各構成部の動作に関するプログラムを記憶する。
【0109】
試料載置台30は、X方向移動モータ、Y方向移動モータおよびZ方向移動モータを有する。これらのモータは、それぞれ、図2のモータMa、モータMbおよびZ方向移動機構30bのモータに相当する。
【0110】
使用者によりX方向電動スイッチSW1が操作されると、動作制御部81はX方向移動モータを動作させる。使用者によりY方向電動スイッチSW2およびZ方向電動スイッチSW3が操作された場合も、同様に、動作制御部81はY方向移動モータおよびZ方向移動モータを動作させる。
【0111】
その結果、上述のように、図1の試料Mが載置された移動プレート30aをX方向、Y方向およびZ方向に移動させることが可能となる。
【0112】
図3において、光学顕微鏡20に含まれるズーム調整装置231は光学顕微鏡20の倍率を調整する。また、フォーカス調整装置232は光学顕微鏡20の焦点位置を調整する。
【0113】
使用者が後述するパーソナルコンピュータ1Bの入力装置95により光学顕微鏡20の倍率を入力すると、パーソナルコンピュータ1Bから動作制御部81に光学顕微鏡20の倍率を示す信号が与えられる。これにより、動作制御部81は、与えられた信号に基づいてズーム調整装置231を動作させる。その結果、光学顕微鏡20の倍率が調整される。
【0114】
また、使用者が後述するパーソナルコンピュータ1Bの入力装置95により光学顕微鏡20の焦点位置を入力すると、パーソナルコンピュータ1Bから動作制御部81に光学顕微鏡20の焦点位置を示す信号が与えられる。これにより、動作制御部81は、与えられた信号に基づいてフォーカス調整装置232を動作させる。その結果、光学顕微鏡20の焦点位置が調整される。
【0115】
光学顕微鏡20のCCDカメラ241は、試料Mの画像をパーソナルコンピュータ1Bに出力する。これにより、後述するパーソナルコンピュータ1Bの表示装置91に光学顕微鏡20により観察される試料Mの画像が表示される。
【0116】
パーソナルコンピュータ1Bは、インターフェイス部90、表示装置91、ROM(リードオンリメモリ)92、RAM(ランダムアクセスメモリ)93、CPU94、入力装置95、記録媒体駆動装置96および外部記憶装置97を備える。
【0117】
インターフェイス部90は、ケーブルcaを介してプローブ走査装置1Aに接続されている。
【0118】
表示装置91は、液晶表示パネルまたはCRT(陰極線管)等からなり、原子間力顕微鏡10により観察される試料Mの画像および光学顕微鏡20により観察される試料Mの画像を表示する。
【0119】
ROM92にはシステムプログラムが記憶される。記録媒体駆動装置96は、CD(コンパクトディスク)ドライブ、DVD(デジタルバーサタイルディスク)ドライブ等からなり、CD、DVDドライブ等の記録媒体98に対してデータの読み書きを行う。
【0120】
記録媒体98には、後述するたわみ量設定プログラムおよびたわみ量調整プログラムが記録されている。
【0121】
入力装置95は、キーボードおよびマウス等からなり、使用者が種々の指令およびデータの入力をするために用いられる。本実施の形態では、例えば後述する初期値およびカンチレバーの種類がキーボードにより入力され、後述する調整値がマウスにより指定される。
【0122】
外部記憶装置97は、ハードディスク装置等からなり、記録媒体駆動装置96を介して記録媒体98から読み込まれたたわみ量設定プログラムおよびたわみ量調整プログラムを記憶する。
【0123】
CPU94は、外部記憶装置97に記憶されたたわみ量設定プログラムおよびたわみ量調整プログラムをRAM93上で実行し、パーソナルコンピュータ1Bの各構成部を制御するとともに、プローブ走査装置1Aに種々の信号を出力する。
【0124】
なお、記録媒体98の代わりにROM等の半導体メモリ、ハードディスク装置等の他の記録媒体を用いてもよい。また、たわみ量設定プログラムおよびたわみ量調整プログラムをインターネットを通して外部記憶装置97にダウンロードしてもよい。
【0125】
(1−c) コンタクトモードを用いる原子間力顕微鏡の制御系の詳細
プローブ走査装置1Aの原子間力顕微鏡10の制御系の詳細を説明する。ここで、コンタクトモードとは、原子間力顕微鏡10において、後述の探針を試料Mに接触する位置まで近付けて試料表面に沿って走査させる観察モードである。
【0126】
図4は、図1の原子間力顕微鏡10のコンタクトモードを用いる場合の制御系を示すブロック図である。
【0127】
原子間力顕微鏡10は、板バネ状のカンチレバー100、探針101および圧電素子110を含む。
【0128】
カンチレバー100の先端に探針101が設けられている。この探針101を探針101と試料Mとの間で原子間力が生じるように試料Mに近付ける。これにより、カンチレバー100が上下方向にたわむ。
【0129】
AFMスキャナ11内に設けられた圧電素子110により試料M表面に沿った探針101の走査が行われる。圧電素子110は、試料M表面に沿って探針101を走査させるために、カンチレバー100をX方向およびY方向に移動させる。
【0130】
なお、探針101を固定した状態で試料載置台30の移動プレート30a(図1)をX方向およびY方向に移動させることにより、試料M表面に沿った探針101の走査を行ってもよい。また、圧電素子110の代わりにボイスコイルモータを用いてもよい。
【0131】
圧電素子110は、カンチレバー100のたわみ量を一定に保つように、すなわち、探針101と試料Mとの間に生じる原子間力を一定に保つようにカンチレバー100をZ軸方向に動作させる。探針101と試料Mとの間の原子間力を一定に保つために圧電素子110に印加した電圧値の変化に基づいてZ方向におけるカンチレバー100の位置情報が取得される。この位置情報から試料Mの3次元的な表面形状に関する形状情報が取得される。これにより、その形状情報を画像化することが可能となる。
【0132】
なお、圧電素子110は、動作制御部81により制御される。動作制御部81は、CPU131、変位検出部132、Z方向サーボ回路133およびX−Y方向サーボ回路134を含む。
【0133】
Z方向サーボ回路133は、カンチレバー100の探針101がZ方向に動作するように圧電素子110を制御する。また、X−Y方向サーボ回路134は、カンチレバー100の探針101がX方向およびY方向に移動するように圧電素子110を制御する。変位検出部132については後述する。
【0134】
ここで、試料M表面の凹凸により生じるカンチレバー100のたわみ量を一定に保つための原子間力顕微鏡10における動作について説明する。
【0135】
カンチレバー100には、例えば歪ゲージ等を含む変位センサが内蔵される。これにより、カンチレバー100の微小な変位に応じた信号が出力される。
【0136】
変位センサの出力信号は、動作制御部81の変位検出部132に与えられる。それにより変位検出部132は、カンチレバー100のたわみ量を検出する。
【0137】
動作制御部81のCPU131は、変位検出部132により検出されたカンチレバー100のたわみ量に基づいて、このたわみ量を一定に保つように圧電素子110を制御する。
【0138】
動作制御部81は、図3のインターフェイス部80を介してパーソナルコンピュータ1Bに接続されている。これにより、上述のように、カンチレバー100のZ方向の変位(カンチレバー保持部のZ方向の変位)がケーブルcaを通じてパーソナルコンピュータ1Bに送られる。それにより、パーソナルコンピュータ1Bの図3の表示装置91に、試料Mの3次元的な形状情報に基づく画像が映し出される。
【0139】
なお、本実施の形態においては、原子間力顕微鏡10の測定モードとして、コンタクトモードを用いているが、これに限定されるものではなく、探針101を試料Mに接触させることなく探針101を共振させ、試料M表面の近傍を走査させるノンコンタクトモード(ダンピングモード)を用いてもよい。
【0140】
上記では、カンチレバー100のたわみ量を検出するために、カンチレバー100に変位センサを内蔵する自己検知方式が用いられているが、レーザ光をカンチレバー100に照射し、カンチレバー100からの反射光を光検出器により検出してカンチレバー100のたわみ量を検出する光てこ方式を用いてもよい。
【0141】
(2) 顕微鏡システムによる試料の観察手順
顕微鏡システム1による試料Mの観察手順について説明する。図5は、本発明の一実施の形態に係る顕微鏡システム1の操作手順の一例を示すフローチャートである。
【0142】
図5に示すように、使用者は、図1の試料載置台30の移動プレート30a上に試料Mを載置し(ステップS1)、光学顕微鏡20による試料Mの観察を行う(ステップS2)。
【0143】
このステップS2において、使用者は、例えば光学顕微鏡20の倍率の調整、原子間力顕微鏡10による試料Mの観察対象領域の探索、および原子間力顕微鏡10による試料Mの観察対象領域の指定等を行う。
【0144】
なお、原子間力顕微鏡10による試料Mの観察対象領域の探索時において、使用者は例えば光学顕微鏡20の位置調整を行う。具体的には、上述の圧電素子110により探針101が移動可能な領域の中心と、光学顕微鏡20による観察視野の中心とが一致するように、光学顕微鏡20の位置を調整する。この位置調整は、使用者が図1のY方向操作ノブ60aおよび上下方向操作ノブ60bを操作することにより行われる。
【0145】
次いで、使用者は、原子間力顕微鏡10による試料Mの観察条件を設定する(ステップS3)。
【0146】
使用者による観察条件の設定には、図4のカンチレバー100のたわみ量の調整が含まれる。なお、本実施の形態において、使用者によるカンチレバー100のたわみ量の調整は、後述する顕微鏡システム1のたわみ量設定処理後に行われる。
【0147】
このように、使用者は、観察条件の設定として少なくともカンチレバー100のたわみ量の調整を行った後、原子間力顕微鏡10による試料Mの観察を行う(ステップS4)。その結果、使用者は観察対象領域における試料Mの正確な3次元形状を得ることができる。
【0148】
(3) 適切なたわみ量の自動設定
本実施の形態に係る顕微鏡システム1においては、例えばカンチレバー100の取り付け時またはカンチレバー100の交換時に、カンチレバー100のたわみ量が自動的にそのカンチレバー100に適切とされるたわみ量(後述の基準たわみ量)に設定される。
【0149】
たわみ量設定処理の詳細を説明する。図6は、顕微鏡システム1によるたわみ量設定処理の詳細を説明するための図である。
【0150】
図6(a)に示すように、たわみ量設定処理の開始時において、原子間力顕微鏡10では、探針101が試料M上に近づけられ、探針101を保持するカンチレバー100が一定のたわみ量を保つように試料Mの任意の1ライン上を往復走査される。図6(a)では、X方向位置P1,P2間でカンチレバー100を往復走査する例が示されている。
【0151】
このときのたわみ量を初期値と呼ぶ。初期値は、予めパーソナルコンピュータ1Bの外部記憶装置97(図3)に記憶されている。また、使用者は入力装置95(図3)を操作することにより所望の初期値を外部記憶装置97に記憶させてもよい。
【0152】
ここで、初期値が実際に試料Mを観察する際に適切とされるたわみ量よりも十分に小さい場合を想定する。ここでいう適切なたわみ量とは、カンチレバー100に設けられた探針101が走査方向にかかわらず十分に試料Mの表面に追従するときのカンチレバー100のたわみ量をいう。
【0153】
この場合、X方向位置P1からX方向位置P2にかけての往路(実線矢印)では、探針101がカンチレバー100により引っ張られるように試料Mの表面上を走査される。また、X方向位置P2からX方向位置P1にかけての復路(点線矢印)では、探針101がカンチレバー100により押し進められるように試料Mの表面上を走査される。
【0154】
そのため、初期値が適切なたわみ量よりも十分に小さい場合、試料Mの表面に対する探針101の追従性は、往路と復路とで大きく異なる。
【0155】
その結果、図6(b)に示すように、試料Mの1ライン上で測定される試料Mの表面形状、すなわちカンチレバー100が走査されることにより測定される試料Mの表面の高さ(Z方向位置)の変化が、往路(実線)と復路(点線)とで大きく異なる。この場合、試料Mの正確な3次元形状を得ることはできない。
【0156】
以下の説明において、往路で測定される試料Mの高さに関するデータを往路高さデータと称し、復路で測定される試料Mの高さに関するデータを復路高さデータと称する。
【0157】
上記のように、往路高さデータと復路高さデータとが大きく異なる場合、原子間力顕微鏡10では、カンチレバー100が初期値よりも所定量大きいたわみ量を保つように試料Mの表面上を再度往復走査される。それにより、新たなたわみ量が再設定され、そのたわみ量で試料Mの表面形状が再測定される。図6(c)に、新たに設定されたたわみ量での試料Mの測定結果が示されている。
【0158】
このように、たわみ量設定処理時においては、カンチレバー100のたわみ量の再設定、および試料Mの表面形状の測定が繰り返される。その結果、図6(d)に示すように、往路高さデータと復路高さデータとがほぼ等しくなったときのたわみ量が基準たわみ量として設定される。
【0159】
なお、本実施の形態に係る顕微鏡システム1において、たわみ量設定処理時に図6(b)〜図6(d)に示す測定結果は図3の表示装置91には表示されないが、使用者が基準たわみ量を手動により設定する場合には、表示装置91に試料Mの測定結果が表示される。
【0160】
したがって、使用者による基準たわみ量の手動設定時において、使用者は表示装置91に表示される試料Mの測定結果に基づいてカンチレバー100のたわみ量を調整し、基準たわみ量を設定する。
【0161】
上記の例では、基準たわみ量の設定は、往路高さデータと復路高さデータとがほぼ等しくなった場合に行われるが、基準たわみ量の設定基準については後述する。
【0162】
たわみ量設定処理の流れを説明する。たわみ量設定処理は、外部記憶装置97に記憶されるたわみ量設定プログラムをパーソナルコンピュータ1BのCPU94(図3)が実行することにより行われる。
【0163】
図7は、たわみ量設定プログラムのフローチャートである。顕微鏡システム1によるたわみ量設定処理は、使用者が入力装置95を操作してCPU94にたわみ量設定プログラムを実行する旨の指令を与えることにより開始される。
【0164】
図7に示すように、CPU94は、初めに外部記憶装置97から予め設定されている初期値を読み込み、カンチレバー100のたわみ量を初期値に設定する(ステップS21)。
【0165】
次に、CPU94は、設定されたたわみ量を保つように試料Mの表面にカンチレバー100を往復走査させる(ステップS22)。ここで、ステップS22の最初の処理において設定されたたわみ量は上述の初期値である。
【0166】
このステップS22の処理により、試料Mの1ライン上の往路高さデータおよび復路高さデータが取得される。
【0167】
そこで、CPU94は、表示装置91の画面上における同一のピクセルに対応する往路高さデータと復路高さデータとを1ピクセル毎に比較し、それらの差分の絶対値(以下、差分値と呼ぶ。)を算出し、さらに算出された複数の差分値の総和を算出する(ステップS23)。
【0168】
続いて、CPU94は、算出された差分値の総和が予め定められたしきい値以下であるか否かを判別する(ステップS24)。差分値の総和がしきい値以下である場合、CPU94は、現在のたわみ量を基準たわみ量として設定する(ステップS25)。
【0169】
ここで、ステップS24において用いられるしきい値は、予めカンチレバーの種類等に応じて決定されており、外部記憶装置97に記憶されている。
【0170】
ステップS24において、差分値の総和がしきい値以下でない場合、CPU94は、カンチレバー100のたわみ量を所定量変化させることによりたわみ量を再設定する(ステップS26)。そして、CPU94はステップS22〜S24の処理を繰り返す。
【0171】
(4) たわみ量の調整
上述のように、本実施の形態に係る顕微鏡システム1においては、顕微鏡システム1のたわみ量設定処理後、実際の試料Mの観察前に使用者が入力装置95(図3)を操作してカンチレバー100のたわみ量の調整を行う。
【0172】
たわみ量の調整時において、使用者はカンチレバー100の種類を入力し、表示装置91(図3)に表示される調整用スライドバーを入力装置95のマウスにより操作する。
【0173】
調整用スライドバーについて説明する。図8は、たわみ量の調整時に表示装置91に表示される調整用スライドバーを示す図である。
【0174】
図8によれば、調整用スライドバーVは、スライドラインV1、移動ボタンV2,V3、つまみV4およびグラデーションラインV5を含む。
【0175】
使用者は、入力装置95のマウスを用いてつまみV4または移動ボタンV2,V3を操作することによりたわみ量の調整値を指定する。それにより、カンチレバー100のたわみ量の調整を行うことができる。
【0176】
図8において、スライドラインV1は、調整値に対応する長さで表示される。スライドラインV1上に表示されたつまみV4を移動させることにより任意の調整値を指定することができる。また、移動ボタンV2,V3をマウスでクリック操作することにより調整値を1ずつ増減することができる。
【0177】
グラデーションラインV5には、調整値に対応する階調、または調整値に対応する色彩が表示される。それにより、使用者は調整値を指定する際に、感覚的にたわみ量の調整値を認識することができる。
【0178】
たわみ量を調整する際に、カンチレバー100を試料Mの1ライン上で走査させた後、上述の測定結果を表示装置91に表示させる。この場合、使用者は、カンチレバー100のたわみ量の調整結果を認識することができる。
【0179】
調整値の1単位に相当するたわみ量は、予め図3の外部記憶装置97に記憶されたたわみ量テーブルにおいてカンチレバー100の種類に関連付けられた調整単位により決定される。
【0180】
図9は、たわみ量テーブルの一例を示す図である。図9に示すように、たわみ量テーブルでは、例えばカンチレバー100の種類と、調整単位とが互いに関連付けされている。
【0181】
図9の例では、カンチレバー100の種類A、BおよびCの各々に調整単位1nm、2nmおよび3nmが関連付けされている。これにより、たわみ量の調整時に使用者がカンチレバー100の種類をAと入力した場合、調整値の1単位に相当するたわみ量は1nmに決定される。
【0182】
使用者のたわみ量の調整時に行われる顕微鏡システム1のたわみ量調整処理の流れを説明する。たわみ量調整処理は、外部記憶装置97に記憶されるたわみ量調整プログラムをパーソナルコンピュータ1BのCPU94(図3)が実行することにより行われる。
【0183】
図10は、たわみ量調整プログラムのフローチャートである。顕微鏡システム1によるたわみ量調整処理は、使用者が入力装置95を操作してCPU94にたわみ量調整プログラムを実行する旨の指令を与えることにより開始される。
【0184】
初めに、CPU94は、使用者の操作により入力装置95からカンチレバー100の種類が入力されたか否かを判別する(ステップS31)。カンチレバー100の種類が入力された場合、CPU94は、外部記憶装置97に記憶されている上述のたわみ量テーブルに基づいて、入力されたカンチレバー100の種類に関連付けられた調整単位を読み込む(ステップS32)。一方、カンチレバー100の種類が入力さない場合、CPU94は、ステップS31の動作を繰り返す。
【0185】
次に、CPU94は図8の調整用スライドバーVを表示装置91に表示する(ステップS33)。なお、この処理は上記のステップS31およびステップS32の前に行われてもよい。
【0186】
ここで、CPU94は、使用者が入力装置95により調整用スライドバーVを操作することにより調整値が指定されたか否かを判別する(ステップS34)。
【0187】
調整値が指定された場合、CPU94は、指定された調整値および読み込んだ調整単位に基づいてカンチレバー100の実際のたわみ量の調整量を算出する(ステップS35)。そして、CPU94は、算出された調整量に基づいてカンチレバー100のたわみ量の調整を行う(ステップS36)。それにより、たわみ量調整処理が終了する。
【0188】
(5) 効果
本実施の形態に係る顕微鏡システム1においては、試料Mが試料載置台30の移動プレート30a上に載置され、AFMスキャナ11の圧電素子110によりカンチレバー100に取り付けられた探針101がXY方向に走査されるとともに、探針101と移動プレート30a上の試料Mとの間の距離と一定の関係を有するカンチレバー100のたわみ量が変位検出部132により検出される。
【0189】
このとき、検出されるたわみ量が一定値になるようにZ方向におけるカンチレバー100の位置がAFMスキャナ11の圧電素子110により変化される。そして、CPU94、動作制御部81および圧電素子110により、カンチレバー100の位置に対応する位置情報が取得されるとともに、その位置情報から移動プレート30a上の試料Mの表面形状に関する形状情報が取得される。このようにして、試料Mの表面形状が観察される。
【0190】
基準たわみ量の設定時には、CPU94が、カンチレバー100を移動プレート30a上の試料Mの表面上の一方向および逆方向に相対的に移動させ、同一位置において取得される位置情報の差が予め定められた範囲内になるように基準たわみ量を設定する。また、CPU94は、基準たわみ量に対応する基準値を設定する。それにより、基準たわみ量がそのカンチレバー100の特性のばらつきにかかわらず最適な値に設定される。
【0191】
その後、使用者は、CPU94により基準たわみ量に対応する基準値を調整することにより基準たわみ量を調整することができる。これにより、使用者は試料Mの観察条件に応じて基準たわみ量を容易に所望の値に調整することができる。その結果、試料Mを容易かつ迅速に観察することが可能となる。
【0192】
本実施の形態では、コンタクトモードを用いる原子間力顕微鏡10を備えるプローブ走査装置1Aについて説明したが、ノンコンタクトモードを用いる原子間力顕微鏡10を備えるプローブ走査装置1Aにおいても上記と同様の効果を得ることができる。
【0193】
ここで、ノンコンタクトモードとは、上述のように、原子間力顕微鏡10において、自由端に探針101を備え、所定の大きさで振動するカンチレバー100を振動の大きさが一定に保たれるように試料表面に沿って走査させる観察モードである。この場合、上記のたわみ量に代えてカンチレバー100の実効振幅を試料Mの観察条件として用いる。
【0194】
また、本実施の形態に係る観察方法は、試料M表面に探針101を近接させ、その探針101を一定のたわみ量で支持するカンチレバー100の位置情報に基づいて試料Mの形状情報を得ることが可能な顕微鏡システム1であれば、原子間力顕微鏡10以外の走査型プローブ顕微鏡を備える他の顕微鏡システムにも適用できる。
【0195】
原子間力顕微鏡10以外の走査型プローブ顕微鏡としては、例えば走査型トンネル顕微鏡、走査型磁気力顕微鏡および静電気力顕微鏡等がある。
【0196】
(6) 請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以上、本発明の一実施の形態に係る顕微鏡システム、観察方法および観察プログラムにおいて、試料載置台30の移動プレート30aの上面は載置面に相当し、カンチレバー100は保持部材に相当し、X方向およびY方向は載置面に平行な方向に相当し、AFMスキャナ11の圧電素子110は走査手段に相当し、カンチレバー100のたわみ量は物理量に相当し、パーソナルコンピュータ1BのCPU94、プローブ走査装置1Aの動作制御部81および圧電素子110は取得手段に相当する。
【0197】
また、カンチレバー100に内蔵された変位センサおよび変位検出部132は検出手段に相当し、基準たわみ量は物理量の一定値に相当し、試料載置台30のZ方向移動機構30bおよびXY方向移動機構30cは駆動手段に相当し、Z方向におけるカンチレバー100の位置情報は位置情報に相当し、カンチレバー100が走査されることにより測定される試料Mの表面の高さ(Z方向位置)は形状情報に相当し、パーソナルコンピュータ1BのCPU94は設定手段、制御手段および調整手段に相当する。
【0198】
さらに、CPU94が設定する基準たわみ量は基準値に相当し、図8の調整用スライドバーにおいて、たわみ量の調整時に表示されるつまみV4の位置に対応する調整値は初期基準値に相当し、図8の調整用スライドバーにおいて、スライドラインV1の長さに対応する調整値の範囲は基準値の調整可能な範囲に相当する。
【0199】
また、表示装置91は表示手段および画像表示装置に相当し、入力装置95のマウスおよびキーボードは指定手段に相当する。
【産業上の利用可能性】
【0200】
本発明は、光学顕微鏡、原子間力顕微鏡および走査型電子顕微鏡等を用いる顕微鏡システムに有効に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0201】
【図1】本発明の一実施の形態に係る顕微鏡システムの外観を示す図である。
【図2】図1のプローブ走査装置の組立て斜視図である。
【図3】顕微鏡システムの制御系を説明するためのブロック図である。
【図4】図1の原子間力顕微鏡のコンタクトモードを用いる場合の制御系を示すブロック図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る顕微鏡システムの操作手順の一例を示すフローチャートである。
【図6】顕微鏡システムによるたわみ量設定処理の詳細を説明するための図である。
【図7】たわみ量設定プログラムのフローチャートである。
【図8】たわみ量の調整時に表示装置に表示される調整用スライドバーを示す図である。
【図9】たわみ量テーブルの一例を示す図である。
【図10】たわみ量調整プログラムのフローチャートである。
【図11】従来のプローブ走査装置を示す模式図である。
【符号の説明】
【0202】
1 顕微鏡システム
1A プローブ走査装置
1B パーソナルコンピュータ
10 原子間力顕微鏡
11 AFMスキャナ
20 光学顕微鏡
30 試料載置台
30a 移動プレート
30b Z方向移動機構
30c XY方向移動機構
81 動作制御部
91 表示装置
94 CPU
95 入力装置
100 カンチレバー
101 探針
110 圧電素子
132 変位検出部
M 試料
V1 スライドライン
V4 つまみ
V5 グラデーションライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の表面形状を測定する顕微鏡システムであって、
試料が載置される載置面を有する試料載置台と、
探針を保持する保持部材と、
前記試料載置台と前記探針とを前記載置面に平行な方向に相対的に走査させる走査手段と、
前記探針と前記載置面上の試料との間の距離と一定の関係を有する物理量を検出する検出手段と、
前記走査手段による走査時に、前記検出手段により検出される物理量が一定値になるように前記載置面に対して垂直な方向における前記保持部材の位置を変化させる駆動手段と、
前記駆動手段により変化する前記保持部材の位置に対応する位置情報を取得するとともに、その位置情報から前記載置面上の試料の表面形状に関する形状情報を取得する取得手段と、
前記物理量の一定値の設定時に、前記走査手段により前記保持部材を前記載置面上の試料の表面上の一方向および逆方向に相対的に移動させ、同一位置において前記取得手段により取得される位置情報の差が予め定められた範囲内になるように前記物理量の一定値を設定するとともに、前記物理量の一定値に対応する基準値を設定する設定手段と、
前記物理量の一定値の調整時に、前記設定手段により設定された基準値を調整することにより前記物理量の一定値を調整するための調整手段とを備えることを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項2】
前記検出手段により検出される物理量は、前記保持部材のたわみ量であることを特徴とする請求項1記載の顕微鏡システム。
【請求項3】
前記調整手段は、
前記設定手段により設定された基準値を初期基準値として表示するとともに初期基準値を基準として基準値の調整可能な範囲を表示する表示手段と、
前記表示手段により表示された調整可能な範囲内の値を指定する指定手段と、
前記指定手段により指定された値と前記初期基準値との差に応じて前記駆動手段を制御することにより前記物理量の一定値を調整する制御手段とを含むことを特徴とする請求項1または2記載の顕微鏡システム。
【請求項4】
前記表示手段は、前記初期基準値の画像および前記調整可能な範囲の画像を表示するとともに、前記初期基準値の画像を前記調整可能な範囲の画像上に表示し、
前記指定手段は、前記初期基準値の画像を前記調整可能な範囲の画像上で移動させることにより前記調整可能な範囲内の値を指定することを特徴とする請求項3記載の顕微鏡システム。
【請求項5】
前記表示手段は、前記調整可能な範囲の画像の階調または色彩を前記調整可能な範囲内の値に応じて変化させることを特徴とする請求項3または4記載の顕微鏡システム。
【請求項6】
試料載置台に載置された試料の画像を取得する光学顕微鏡をさらに備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の顕微鏡システム。
【請求項7】
前記光学顕微鏡により取得された画像、および前記取得手段により取得された前記試料の表面形状に関する形状情報に基づく画像を表示する画像表示装置をさらに備えることを特徴とする請求項6記載の顕微鏡システム。
【請求項8】
載置面を有する試料載置台に載置された試料の表面形状を測定する顕微鏡システムを用いた観察方法であって、
前記試料載置台と保持部材により保持された探針とを前記載置面に平行な方向に相対的に走査させつつ、前記探針と前記載置面上の試料との間の距離と一定の関係を有する物理量を検出するとともに、前記検出される物理量が一定値になるように前記載置面に対して垂直な方向における前記保持部材の位置を変化させるステップと、
前記変化する保持部材の位置に対応する位置情報を取得するとともに、その位置情報から前記載置面上の試料の表面形状に関する形状情報を取得するステップと、
前記物理量の一定値の設定時に、前記保持部材を前記載置面上の試料の表面上の一方向および逆方向に相対的に移動させ、同一位置において取得される位置情報の差が予め定められた範囲内になるように前記物理量の一定値を設定するとともに、前記物理量の一定値に対応する基準値を設定するステップと、
前記物理量の一定値の調整時に、前記設定された基準値を調整することにより前記物理量の一定値を調整するステップとを備えることを特徴とする観察方法。
【請求項9】
載置面を有する試料載置台に載置された試料の表面形状を測定する顕微鏡システムを制御するコンピュータにより実行可能な観察プログラムであって、
前記試料載置台と保持部材により保持された探針とを前記載置面に平行な方向に相対的に走査させつつ、前記探針と前記載置面上の試料との間の距離と一定の関係を有する物理量を検出するとともに、前記検出される物理量が一定値になるように前記載置面に対して垂直な方向における前記保持部材の位置を変化させる処理と、
前記変化する保持部材の位置に対応する位置情報を取得するとともに、その位置情報から前記載置面上の試料の表面形状に関する形状情報を取得する処理と、
前記物理量の一定値の設定時に、前記保持部材を前記載置面上の試料の表面上の一方向および逆方向に相対的に移動させ、同一位置において取得される位置情報の差が予め定められた範囲内になるように前記物理量の一定値を設定するとともに、前記物理量の一定値に対応する基準値を設定する処理と、
前記物理量の一定値の調整時に、前記設定された基準値を調整することにより前記物理量の一定値を調整する処理とを、
前記コンピュータに実行させることを特徴とする観察プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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