説明

顕微鏡装置、および顕微鏡装置の制御方法

【課題】標本内部に刺激光を照射して、標本の界面付近の反応を観察する。
【解決手段】顕微鏡装置11では、コンフォーカル光学系19を介して標本12の各深さごとに照射されるレーザ光による標本12の各深さごとの蛍光断面画像を取得し、全反射照明光学系17を介して標本12の境界面で全反射するように照射されるレーザ光による標本12の境界面の蛍光画像を取得し、蛍光断面画像に基づいて指定される所定箇所にコンフォーカル光学系19を介して刺激光を照射し、刺激光が照射された後に、全反射照明光学系17を介して標本12の境界面で全反射するように照射されるレーザ光による標本12の境界面の蛍光画像を取得する。本発明は、例えば、全反射照明光学系およびコンフォーカル光学系を有する顕微鏡装置に適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡装置、および顕微鏡装置の制御方法に関し、特に、標本内部を刺激したことによる標本界面付近での反応を観察することができるようにした顕微鏡装置、および顕微鏡装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、共焦点レーザ走査顕微鏡や全反射顕微鏡などでは、蛍光染色された生物などの標本にレーザ光を照射し、そのレーザ光により励起された蛍光に基づいて標本を観察する蛍光観察が行われている。
【0003】
例えば、共焦点レーザ走査顕微鏡では、対物レンズの回折限界付近に絞られたレーザ光スポットを標本に走査しながら照射し、レーザ光の照射された部分で発生した蛍光が、光学的共役位置に置かれた微小開口を通して検出され、標本の観察が行われる。
【0004】
また、全反射顕微鏡では、カバーガラスに密着した標本にカバーガラス側から照明光を照射し、カバーガラスと標本との境界面で入射光が全反射する臨界角以上で入射された照明光の全反射領域でエバネッセント波を発生させ、標本の境界面近傍のエバネッセント波により励起された標本の境界面近傍蛍光により、標本の観察が行われる。このような境界面付近の観察では、観察像のコントラストが改善されるので、微弱光による現象を捉えることができる。
【0005】
さらに、特許文献1および2には、1台の顕微鏡装置を、共焦点レーザ走査顕微鏡および全反射顕微鏡として使用する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−270538号公報
【特許文献2】特開2004−85811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年、標本内部を刺激したことによる標本界面付近での反応を観察したいという要求がある。しかしながら、従来の顕微鏡装置では、観察面と同一の深さ方向に刺激光を照射して標本内部を刺激することはできるが、標本内部の特定した深さに刺激光を照射し、その後の標本の界面付近における反応を観察することは困難であった。
【0008】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、標本内部を刺激したことによる標本界面付近での反応を観察することができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の顕微鏡装置は、カバーガラスに密着した状態の標本に、前記標本と前記カバーガラスとの境界面で全反射するようにレーザ光を照射する全反射照明光学系と、前記標本の内部にレーザ光を集光するとともに走査するコンフォーカル光学系と、前記コンフォーカル光学系を介して、前記標本の内部を刺激する刺激光を発する刺激光光源とを備え、前記コンフォーカル光学系を介して前記標本の各深さごとに照射されるレーザ光による前記標本の各深さごとの蛍光断面画像を取得し、前記全反射照明光学系を介して前記標本の前記境界面で全反射するように照射されるレーザ光による前記標本の境界面の蛍光画像を取得し、前記蛍光断面画像に基づいて指定される所定箇所に前記コンフォーカル光学系を介して前記刺激光を照射し、前記刺激光が照射された後に、前記全反射照明光学系を介して前記標本の前記境界面で全反射するように照射されるレーザ光による前記標本の境界面の蛍光画像を取得する制御を行う制御部を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の顕微鏡装置の制御方法は、カバーガラスに密着した状態の標本に、前記標本と前記カバーガラスとの境界面で全反射するようにレーザ光を照射する全反射照明光学系と、前記標本の内部にレーザ光を集光するとともに走査するコンフォーカル光学系と、前記コンフォーカル光学系を介して、前記標本の内部を刺激する刺激光を発する刺激光光源とを備える顕微鏡装置の制御方法であって、前記コンフォーカル光学系を介して前記標本の各深さごとに照射されるレーザ光による前記標本の各深さごとの蛍光断面画像を取得し、前記全反射照明光学系を介して前記標本の前記境界面で全反射するように照射されるレーザ光による前記標本の境界面での蛍光画像を取得し、前記蛍光断面画像に基づいて指定される所定箇所に前記コンフォーカル光学系を介して前記刺激光を照射し、前記刺激光が照射された後に、前記全反射照明光学系を介して前記標本の前記境界面で全反射するように照射されるレーザ光による前記標本の境界面での蛍光画像を取得するステップを含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の顕微鏡装置、および顕微鏡装置の制御方法においては、コンフォーカル光学系を介して標本の各深さごとに照射されるレーザ光による標本の各深さごとの蛍光断面画像が取得され、全反射照明光学系を介して標本の境界面で全反射するように照射されるレーザ光による標本の境界面の蛍光画像が取得され、蛍光断面画像に基づいて指定される所定箇所にコンフォーカル光学系を介して刺激光が照射される。そして、刺激光が照射された後に、全反射照明光学系を介して標本の境界面で全反射するように照射されるレーザ光による標本の境界面での蛍光画像が取得される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の顕微鏡装置、および顕微鏡装置の制御方法によれば、標本内部を刺激したことによる標本界面付近での反応を観察することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を適用した顕微鏡装置の第1の実施の形態の構成例を示す図である。
【図2】顕微鏡装置により標本を観察する処理を説明するフローチャートである。
【図3】本発明を適用した顕微鏡装置の第2の実施の形態の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明を適用した顕微鏡装置の第1の実施の形態の構成例を示す図である。
【0016】
図1の顕微鏡装置11では、主に蛍光染色された生物などの標本12に対する観察が行われ、標本12は、カバーガラス13に密着した状態でシャーレ14に収容されている。
【0017】
例えば、顕微鏡装置11では、レーザユニット15−1から光ファイバ16−1を介して全反射照明光学系17に導入されたレーザ光が、全反射照明光学系17を介して、カバーガラス13と標本12との境界面で全反射するように照射される。そして、その全反射領域で発生するエバネッセント波により、カバーガラス13との境界面付近の標本12が励起されて蛍光が発生し、その蛍光による画像が撮像装置18により撮像される。
【0018】
また、顕微鏡装置11では、レーザユニット15−2から光ファイバ16−2を介してコンフォーカル光学系19に導入されたレーザ光が、コンフォーカル光学系19を介して、標本12に照射され、標本12の所定の深さでレーザ光のスポットがXY平面で走査される。そして、標本12内のスポットで発生した蛍光が、光学的に共役な位置に配置されているピンホール20を通過してPMT(Photo Multiplier Tube)21により検出されて、標本12のXY平面における画像が構築される。
【0019】
さらに、顕微鏡装置11では、コンフォーカル光学系19を介して標本12の内部を刺激するレーザ光(刺激光)が照射された後、全反射照明光学系17を介して標本12に照射されるレーザ光により、標本12の内部を刺激したことによる標本12の境界面付近の反応が観察される。
【0020】
このように、顕微鏡装置11では、全反射照明光学系17を介して照射されるレーザ光による観察と、コンフォーカル光学系19を介して照射されるレーザ光による観察とを行うことができ、それぞれのレーザ光の光路が、光路合成部22において合成される。つまり、顕微鏡装置11は、全反射照明光学系17とコンフォーカル光学系19とが同一の階層に配置されるように構成されている。
【0021】
顕微鏡装置11の対物レンズ27は、標本12を収容するシャーレ14の下方に配置されており、例えば、ピエゾ素子などの高速な駆動手段を有する対物レンズ駆動部28により、対物レンズ27の光軸L1に沿って移動可能とされている。なお、以下、適宜、対物レンズ27の光軸L1の方向をZ方向と称し、Z方向に直交する平面をXY平面と称する。
【0022】
また、標本12の反対側となる対物レンズ27の光軸L1上には、対物レンズ27側から順に、ハーフミラー29、集光レンズ30、およびミラー31が配置されており、ミラー31により反射された光軸L2上には、フィルタ32と、撮像装置18の受光面33とが配置されている。
【0023】
即ち、全反射照明光学系17を介して標本12に照射されるレーザ光によって、カバーガラス13との境界面近傍の標本12から発せられる蛍光は、対物レンズ27およびハーフミラー29を介して、集光レンズ30により集光されてミラー31により反射された後、フィルタ32によりフィルタリングされて撮像装置18の受光面33に結像する。
【0024】
また、ハーフミラー29により分岐される光路の光軸L3上には、ハーフミラー29側から順に、リレーレンズ34および35、ハーフミラー36、視野絞り37、並びに、集光レンズ38および39が配置されており、その先に、光ファイバ16−1の端部が配置されている。
【0025】
即ち、光ファイバ16−1から射出されたレーザ光は、集光レンズ38および39により集光され、その焦点位置に配置されている視野絞り37により絞られた後、ハーフミラー36を透過し、リレーレンズ34および35によりリレーされてハーフミラー29に入射する。そして、ハーフミラー29により反射されたレーザ光は、対物レンズ27により標本12の境界面で全反射するように照射される。
【0026】
また、ハーフミラー36により分岐された光路の光軸L4上には、ハーフミラー36側から順に、集光レンズ40および41、XYスキャナ42、ダイクロイックミラー43、集光レンズ44、ピンホール20、フィルタ45、並びに、PMT21が配置されている。また、ダイクロイックミラー43により分岐された光路の光軸L5上には、ダイクロイックミラー46、およびコリメータレンズ47が配置されており、その先に、光ファイバ16−2の端部が配置されている。
【0027】
即ち、光ファイバ16−2から射出されたレーザ光は、コリメータレンズ47により平行な光束とされ、ダイクロイックミラー46を透過して、ダイクロイックミラー43により反射された後、XYスキャナ42に入射する。そして、XYスキャナ42により、標本12のXY平面で走査するようにスキャンされたレーザ光は、集光レンズ40および41を介してハーフミラー36で反射され、リレーレンズ34および35によりリレーされた後、ハーフミラー29により反射されて、対物レンズ27により標本12の内部でスポットを形成するように照射される。
【0028】
そして、そのスポットで発生した蛍光は、励起用のレーザ光と逆の光路を通過して、XYスキャナ42によりデスキャンされた後、ダイクロイックミラー43を透過して、集光レンズ44により集光される。そして、その蛍光は、集光レンズ44の焦点距離に配置されているピンホール20によりセクショニングされ、フィルタ45によりフィルタリングされた後、PMT21に入射する。
【0029】
このように、顕微鏡装置11では、リレーレンズ34および35、ハーフミラー36、視野絞り37、並びに、集光レンズ38および39により、全反射照明光学系17が構成されている。また、顕微鏡装置11では、リレーレンズ34および35、ハーフミラー36、集光レンズ40および41、XYスキャナ42、ダイクロイックミラー43、集光レンズ44、ピンホール20、フィルタ45、PMT21、ダイクロイックミラー46、並びに、コリメータレンズ47により、コンフォーカル光学系19が構成されている。
【0030】
また、ダイクロイックミラー46により分岐された光路の光軸L6上には、シャッタ48、AOTF(Aoucst Optic Tunable Filter)49、極短パルスレーザ50が配置されている。
【0031】
レーザユニット15−1および15−2は、波長が405nmであるレーザ光の光源であるレーザ光源51−1および51−2と、波長が488nmであるレーザ光の光源であるレーザ光源52−1および52−2とをそれぞれ有している。
【0032】
レーザユニット15−1において、レーザ光源51−1から射出されるレーザ光は、シャッタ53−1、ダイクロイックミラー54−1、AOTF55−1、シャッタ56−1、および集光レンズ57−1を介して、光ファイバ16−1に入射する。また、レーザ光源52−1から射出されるレーザ光は、シャッタ58−1を介してミラー59−1およびダイクロイックミラー54−1により反射されて、AOTF55−1、シャッタ56−1、および集光レンズ57−1を介して、光ファイバ16−1に入射する。
【0033】
レーザユニット15−2は、レーザユニット15−1と同様に構成されている。また、レーザユニット15−2のレーザ光源51−2から射出される波長405nmのレーザ光は、標本12の内部を刺激するための刺激光として使用され、レーザ光源52−2から射出される波長488nmのレーザ光は、標本12から発せられる蛍光による断面画像を取得するための励起光として使用される。
【0034】
また、顕微鏡装置11は、その各部を制御する制御部60を備えている。例えば、制御部60は、対物レンズ駆動部28を制御して、対物レンズ27をZ方向に駆動させたり、XYスキャナ42を制御して、レーザユニット15−2から発せられるレーザ光(刺激光)を標本12の内部における所定のXY平面内の任意の箇所に照射させたりする。
【0035】
次に、図2のフローチャートを参照して、顕微鏡装置11による標本12の観察する処理について説明する。
【0036】
ステップS11において、顕微鏡装置11は、コンフォーカル光学系19を介して標本12に照射されるレーザ光(励起光)を使用し、標本12の各深さでの断面画像を取得する。
【0037】
即ち、制御部60は、レーザユニット15−1のシャッタ53−1および58−1、並びに、レーザユニット15−2のシャッタ53−2を閉鎖するとともに、レーザユニット15−2のシャッタ58−2を開放させて、レーザ光源52−2から発せられる波長488nmのレーザ光を標本12に照射させ、そのレーザ光スポットにより発生する蛍光を、ピンホール20を介してPMT21により検出させ、PMT21からの出力に基づいて断面画像を構築する。そして、XYスキャナ42によるレーザ光スポットのスキャンによって1枚の断面画像が取得されるたびに、例えば、0.1μmずつレーザ光スポットが標本12の内側に移動されるように、対物レンズ駆動部28を制御して対物レンズ27を移動させる。
【0038】
そして、例えば、標本12全体の断面画像が取得されると、ユーザは、それらの断面画像に基づいて、刺激したい箇所の座標(Z座標およびXY座標)を、図示しない入力装置により指定し、制御部60は、その座標を記憶する。
【0039】
ステップS12において、顕微鏡装置11は、全反射照明光学系17を介して標本12に照射されるレーザ光を使用し、標本12の境界面近傍での画像を取得する。
【0040】
即ち、制御部60は、レーザユニット15−1のシャッタ53−1、並びに、レーザユニット15−2のシャッタ53−2および58−2を閉鎖するとともに、レーザユニット15−1のシャッタ58−1を開放させて、レーザ光源52−1から発せられる波長488nmのレーザ光を標本12に照射させる。そして、そのレーザ光がカバーガラス13と標本12との境界面で全反射することにより発生するエバネッセント波によって発生する蛍光による画像を撮像装置18で撮像させる。また、制御部60は、このときの対物レンズ27のZ方向の位置を記憶する。
【0041】
ステップS13において、顕微鏡装置11は、標本12の内部を刺激する。
【0042】
即ち、制御部60は、ステップS11において指定されたZ座標にレーザ光が照射されるように、対物レンズ駆動部28を制御して対物レンズ27を移動させるとともに、ステップS11において指定されたXY座標にレーザ光が照射されるように、XYスキャナ42を制御する。そして、制御部60は、レーザユニット15−1のシャッタ53−1および58−1、並びに、レーザユニット15−2のシャッタ58−2を閉鎖するとともに、レーザユニット15−2のシャッタ53−2を開放させて、レーザ光源51−2から発せられる波長405nmのレーザ光を標本12に照射させる。
【0043】
ステップS14において、顕微鏡装置11は、レーザ光により内部が刺激された標本12の境界面近傍での画像を取得する。
【0044】
即ち、制御部60は、対物レンズ駆動部28を制御して、ステップS12の処理で記憶したZ方向の位置に対物レンズ27を移動させ、ステップS12での処理と同様に、レーザ光源52−1から発せられる波長488nmのレーザ光を標本12に照射させる。そして、そのレーザ光がカバーガラス13と標本12との境界面で全反射することにより発生するエバネッセント波によって発生する蛍光による画像を撮像装置18で撮像させる。
【0045】
ステップS15において、顕微鏡装置11は、レーザ光により内部が刺激された標本12の各深さでの断面画像を、ステップS11での処理と同様に取得し、処理は終了する。
【0046】
以上のように、顕微鏡装置11では、レーザユニット15−1のシャッタ53−1および58−1、並びに、レーザユニット15−2のシャッタ53−2およびシャッタ58−2と対物レンズ駆動部28とが連動して制御されるので、標本12の各深さでの断面画像を取得する処理、標本12の内部を刺激する処理、および、標本12の境界面近傍での画像を取得する処理を行うことができる。特に、対物レンズ駆動部28により対物レンズ27を高速で移動させることができるので、標本12の内部を刺激した直後の標本12の境界面近傍での反応を観察することができる。
【0047】
また、顕微鏡装置11では、ステップS11において、コンフォーカル光学系19で標本12の各深さでの断面画像を取得するので、それらの断面画像に基づいて、標本12の内部の刺激する箇所を指定することができる。制御部60は、指定された箇所を記憶し、対物レンズ駆動部28およびXYスキャナ42を制御して、その箇所を刺激することができる。そして、標本12の内部が刺激されたことによる、標本12の境界面での反応と、標本12の内部での反応とをそれぞれ観察することができる。
【0048】
なお、顕微鏡装置11では、刺激光により標本12の内部を刺激した後、全反射照明光学系17を介して照射されるレーザ光による標本12の境界面近傍での画像を取得する処理と、コンフォーカル光学系19を介して照射されるレーザ光(励起光)による標本12の刺激箇所より深い断面での画像を取得する処理とを、交互に繰り返して行うことができる。これにより、標本12の表面および内部における反応を連続的に観察することができる。
【0049】
また、例えば、標本12の内部の刺激する箇所を複数指定し、適宜、標本12の内部の刺激する箇所を変更しながら、標本12の境界面での反応を観察してもよい。
【0050】
なお、レーザユニット15−1および15−2から射出されるレーザ光のON/OFFの切り替えを、AOTF55−1および55−2を利用して行うことができる。また、AOTF55−1および55−2により、標本12に照射されるレーザ光の光量を調整することができる。
【0051】
また、対物レンズ27をZ方向に動かす替わりに、シャーレ14が載置されるステージ(図示せず)をZ方向に動かすように構成してもよい。
【0052】
さらに、ステップS13の標本12の内部刺激を、レーザ光源51−2から発せられる波長405nmのレーザ光に代えて、極短パルスレーザ50から発せられる約810 nmのレーザ光を照射することによっても実現できる。2光子励起現象が起こるのはレーザ光の集光位置付近のみなので、極めて局所的な刺激が可能となる。
【0053】
なお、顕微鏡装置11は、全反射照明光学系17とコンフォーカル光学系19とが同一の階層に配置されるように構成されているが、全反射照明光学系17とコンフォーカル光学系19とが異なる階層に配置されるように構成してもよい。即ち、顕微鏡装置11では、光路合成部22のハーフミラー36により、全反射照明光学系17の光路とコンフォーカル光学系19の光路とが合成されるが、例えば、光路合成部22を使用せずに、全反射照明光学系17の光路とコンフォーカル光学系19の光路とが合成されないように顕微鏡装置11を構成することができる。
【0054】
次に、図3は、本発明を適用した顕微鏡装置の第2の実施の形態の構成例を示す図である。なお、図3の顕微鏡装置100において、図1の顕微鏡装置11と同一の構成要素には、同一の符号が付されており、適宜、その説明を省略する。
【0055】
図3の顕微鏡装置100は、全反射照明光学系17とコンフォーカル光学系19とが階層状に配置されるように構成されている。
【0056】
即ち、顕微鏡装置100は、図1の顕微鏡装置11のミラー31に替えてハーフミラー101が用いられており、ハーフミラー101の先にコンフォーカル光学系19が設けられている。そして、コンフォーカル光学系19からのレーザ光は、ハーフミラー101を透過して、光軸L1に沿って標本12に照射される。
【0057】
このように構成されている顕微鏡装置100においても、顕微鏡装置11と同様に、標本12の各深さでの断面画像を取得する処理、標本12の内部を刺激する処理、および、標本12の境界面近傍での画像を取得する処理を行うことができる。
【0058】
なお、上述のフローチャートを参照して説明した各処理は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいは個別に実行される処理(例えば、並列処理あるいはオブジェクトによる処理)も含むものである。
【0059】
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0060】
11 顕微鏡装置, 12 標本, 13 カバーガラス, 14 シャーレ, 15−1および15−2 レーザユニット, 16−1および16−2 光ファイバ, 17 全反射照明光学系, 18 撮像装置, 19 コンフォーカル光学系, 20 ピンホール, 21 PMT, 22 光路合成部, 27 対物レンズ, 28 対物レンズ駆動部, 29 ハーフミラー, 30 集光レンズ, 31 ミラー, 32 フィルタ32, 33 受光面, 34および35 リレーレンズ, 36 ハーフミラー, 37 視野絞り, 38および39 集光レンズ, 40および41 集光レンズ, 42 XYスキャナ, 43 ダイクロイックミラー, 44 集光レンズ, 45 フィルタ, 46 ダイクロイックミラー, 47 コリメータレンズ, 48 シャッタ, 49 AOTF, 50 極短パルスレーザ, 51−1および51−2 レーザ光源, 52−1および52−2 レーザ光源, 53−1および53−2 シャッタ, 54−1および54−2 ダイクロイックミラー, 55−1および55−2 AOTF, 56−1および56−2 シャッタ, 57−1および57−2 集光レンズ, 58−1および58−2 シャッタ, 59−1および59−2 ダイクロイックミラー, 60 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カバーガラスに密着した状態の標本に、前記標本と前記カバーガラスとの境界面で全反射するようにレーザ光を照射する全反射照明光学系と、
前記標本の内部にレーザ光を集光するとともに走査するコンフォーカル光学系と、
前記コンフォーカル光学系を介して、前記標本の内部を刺激する刺激光を発する刺激光光源と
を備え、
前記コンフォーカル光学系を介して前記標本の各深さごとに照射されるレーザ光による前記標本の各深さごとの蛍光断面画像を取得し、
前記全反射照明光学系を介して前記標本の前記境界面で全反射するように照射されるレーザ光による前記標本の境界面の蛍光画像を取得し、
前記蛍光断面画像に基づいて指定される所定箇所に前記コンフォーカル光学系を介して前記刺激光を照射し、
前記刺激光が照射された後に、前記全反射照明光学系を介して前記標本の前記境界面で全反射するように照射されるレーザ光による前記標本の境界面の蛍光画像を取得する
制御を行う制御部を有する
ことを特徴とする顕微鏡装置。
【請求項2】
前記刺激光が照射された後に、前記コンフォーカル光学系を介して前記標本の各深さごとに照射されるレーザ光による前記標本の各深さごとの蛍光断面画像を取得する
ことを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡装置。
【請求項3】
前記刺激光が照射された後に、前記全反射照明光学系を介して前記標本の前記境界面で全反射するように照射されるレーザ光による前記標本の境界面の蛍光画像を取得する処理と、前記コンフォーカル光学系を介して前記標本の各深さごとに照射されるレーザ光による前記標本の所定の深さの蛍光断面画像を取得する処理とを繰り返して行う
ことを特徴とする請求項1または2に記載の顕微鏡装置。
【請求項4】
顕微鏡装置の制御方法において、
前記顕微鏡装置は、
カバーガラスに密着した状態の標本に、前記標本と前記カバーガラスとの境界面で全反射するようにレーザ光を照射する全反射照明光学系と、
前記標本の内部にレーザ光を集光するとともに走査するコンフォーカル光学系と、
前記コンフォーカル光学系を介して、前記標本の内部を刺激する刺激光を発する刺激光光源と
を備え、
前記コンフォーカル光学系を介して前記標本の各深さごとに照射されるレーザ光による前記標本の各深さごとの蛍光断面画像を取得し、
前記全反射照明光学系を介して前記標本の前記境界面で全反射するように照射されるレーザ光による前記標本の境界面の蛍光画像を取得し、
前記蛍光断面画像に基づいて指定される所定箇所に前記コンフォーカル光学系を介して前記刺激光を照射し、
前記刺激光が照射された後に、前記全反射照明光学系を介して前記標本の前記境界面で全反射するように照射されるレーザ光による前記標本の境界面の蛍光画像を取得する
ステップを含むことを特徴とする顕微鏡装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−17965(P2011−17965A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−163579(P2009−163579)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】