説明

顕微鏡装置及び分析装置

【課題】複数のパルス光の照射位置を、分析対象物表面の凹凸に応じて一致させる顕微鏡装置を提供する。
【解決手段】互いに異なる波長成分を含む複数のパルスレーザ光P12、P14´を発生する光源部21、23、41と、複数のパルスレーザ光P12、P14´を分析対象60に照射する光学系35と、複数のパルスレーザ光P12、P14´の照射によって分析対象60から発せられる第1の光P15を検出する第1の検出部62と、複数のパルスレーザ光P12、P14´の照射によって分析対象60から発せられる第2の光P16を検出する第2の検出部61と、第2の検出部61によって検出される第2の光P16の強度に基づいて複数のパルスレーザ光P12、P14´の照射位置を一致させるための調整部65、31とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる波長成分を含む複数のパルスレーザ光を分析対象に入射し、その結果分析対象から発せられる光を観察することにより、分析対象に含まれる物質を分析するための顕微鏡装置及び分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
顕微分光法による微量物質の検出は、分析装置における基本技術としての重要性が高く、多くの技術開発が行われてきた。一方、昨今の医療技術の進歩と共に、診断技術にもより一層の向上が求められることとなり、微量物質検出技術の医療診断技術への応用が試みられている。
【0003】
係る顕微分光技術として、コヒーレントアンチストークスラマン散乱法(Coherent Anti-stokes Raman Scattering;CARS)が知られている。これは、二種類又はそれ以上の光パルスを試料に入射し、それらの間に起こる非線形光学過程によって試料から発せられるシグナル光を観察するものである。
【0004】
例えば、図7に示されるようなエネルギー準位を持った分子をCARSによって観察することを考えると、まず、初期状態のエネルギー準位L1において、角周波数ωを持った第1のパルス光の入射によって試料の分子が仮想的に励起され、そのエネルギー準位が矢印Aで示すようにL3まで上がる。そして、角周波数ωを持った第2のパルス光を入射させることにより、分子のエネルギー準位は、仮想的な光子放出により矢印Bで示すようにL3からL2に下がる。さらに角周波数ωを持った第3のパルス光を入射させることにより、分子のエネルギー準位は、矢印Cで示すように、L3からL4に仮想的に上昇し、シグナル光の発生によって矢印Dで示すように、L4からL1に下がる。
【0005】
このように、角周波数ω、ω、ωを持った三種のパルス光の入射によって、いわゆる四光波混合過程が生じ、結果として角周波数ω+ω−ωを持つシグナル光が発生する。このようなシグナル光は、入射パルスの周波数差Δω=ω−ωが、観察すべき分子のエネルギー準位差に共鳴するときに特に強く現れる。現実に用いることの可能な光パルスを考慮すると、Δωが分子の振動モード周波数に一致するときに強いシグナルが得られることが考えられるため、このような振動モードを持つ分子の検出が可能となる。また、この手法は二種のパルス光を用いて上記第3のパルス光によって生ずる光学過程を第1のパルス光によって起こすことにより、2ω―ωの角周波数を持つシグナル光を検出することによっても実現される。
【0006】
このような原理を利用した顕微分光装置としては、例えば、図8に示される通り、二種のレーザパルス光源11、12、この光源からのパルス光を試料13の同一箇所に照射するための光学系14、試料13より放出されるCARS光を検出する装置15から構成されている。パルスレーザ光源11及び12から発せられるパルスレーザの波長を変化させることにより、試料13に含まれる特定分子から発せられるCARS光を選択的に検出することができる。
【0007】
非線形光学効果を用いる場合、一般に照射光に対して物質から発せられるシグナル光の強度は弱いため、パルス光を絞り込んで単位堆積あたりの強度を大きくする必要がある。この場合、例えば非特許文献1に示されているように、平面状にある対象物をスキャンしてCARS光による画像を得るようになされている。
【非特許文献1】Proc. Natl. Aca. Sci, Vol. 102, 16807-16812 (2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、対象物上をスキャンする装置においては、分析対象の表面に凹凸がある場合、複数のパルス光の照射位置が分析対象表面の凹凸によって変化することとなり、正確な分析を行うことが困難であった。
【0009】
このような技術的課題を解決するためになされた本発明の目的は、互いに異なる波長成分を含む複数のパルスレーザ光を分析対象に照射した際に非線形光学効果により発生する光を検出する顕微鏡装置及び分析装置において、複数のパルス光の照射位置を、分析対象物表面の凹凸に応じて一致させることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施の形態に係る特徴は、顕微鏡装置において、互いに異なる波長成分を含む複数のパルスレーザ光を発生する光源部と、複数のパルスレーザ光を分析対象に照射する光学系と、複数のパルスレーザ光の照射によって分析対象から発せられる第1の光を検出する第1の検出部と、複数のパルスレーザ光の照射によって分析対象から発せられる第2の光を検出する第2の検出部と、第2の検出部によって検出される第2の光の強度に基づいて複数のパルスレーザ光の照射位置を一致させるための調整部とを備えることである。
【0011】
また、本発明の実施の形態に係る特徴は、分析装置において、互いに異なる波長成分を含む複数のパルスレーザ光を発生する光源部と、複数のパルスレーザ光を分析対象に照射する光学系と、複数のパルスレーザ光の照射によって分析対象から発せられる第1の光を検出する第1の検出部と、複数のパルスレーザ光の照射によって分析対象から発せられる第2の光を検出する第2の検出部と、第2の検出部によって検出される第2の光の強度に基づいて複数のパルスレーザ光の照射位置を一致させるための調整部と、第1の検出部の検出結果に基づいて分析対象に含まれる物質を分析する分析部とを備えることである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、互いに異なる波長成分を含む複数のパルスレーザ光を分析対象に照射した際に非線形光学効果により発生する光を検出する顕微鏡装置及び分析装置において、複数のパルスレーザ光の照射位置を、分析対象物表面の凹凸に応じて一致させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。以下の図面の記載において、同一の部分には同一の符号を付し、重複する記載は省略する。また、図面は模式的なものであり、各部の寸法等は現実のものと異なる。
【0014】
(第1の実施の形態)
図1に示すように、本実施の形態に係る顕微鏡装置20は、互いに異なる波長成分を含む複数のパルスレーザ光P12、P14´を発生する光源部(21、23、41)と、複数のパルスレーザ光を分析対象(60)に照射する光学系(25、35、31、43、51)と、複数のパルスレーザ光の照射によって分析対象(60)から発せられる第1の光(P15)を検出する第1の検出部62と、複数のパルスレーザ光の照射によって分析対象(60)から発せられる第2の光(P16)を検出する第2の検出部(61)と、第2の検出部(61)によって検出される第2の光(P16)の強度に基づいて複数のパルスレーザ光P12、P14´の照射位置を一致させるための調整部(65、51、53)とを備える。また、分析装置は、顕微鏡装置20に加えて分析対象(60)に含まれる物質を分析する分析部(66)を備える。
【0015】
図1において、光源21は、中心波長800nm、半値幅100fsec(フェムト秒)、繰り返しレート80MHz、平均出力300mWのパルスレーザ光P11を発する。因みに、光源21において発せられるパルスレーザ光P11の半値幅は、10fsecから10psec(ピコ秒)の間の値が好ましい。すなわち、パルス光を用いた測定においては、周波数領域での信号取得と、時間領域での信号取得とが考えられ、周波数領域での信号取得では、パルス光スペクトルが狭帯域であるほうが測定周波数の精度が高く、時間領域での信号取得では、広帯域光を用いるほうが時間分解能を高くすることができ、取得方法によって最適なパルス光源を用いることが要求される。本実施の形態において、周波数領域での信号取得を行う場合は、測定対象である分子の振動周波数を10meV(振動モードエネルギー)以内の精度で求めることが要求されるため、スペクトル幅が数meV(振動モードエネルギー)である数psec(半値幅)程度のパルス光を用いることが好ましい。また、時間領域での測定を行う場合は、分子の振動周期が100fsec以上であることから、時間分解能として数十fsec程度の精度が必要となる。この場合は、パルス光の時間幅は10fsec程度が得られていることが望ましい。従って、パルス幅としては、10fsec〜10psecのレーザ光を用いることが好ましく、さらに必要とされる精度によってそれらの中間にあたるパルス幅のレーザ光を用いることも可能となる。
【0016】
ビームスプリッタ22は、光源21から発せられたパルスレーザ光P11を2分割し、その一方(パルスレーザ光P12)をガルバノミラー25に導くとともに、他方(パルスレーザ光P13)をフォトニック結晶ファイバ23に導く。
【0017】
ガルバノミラー25は、モータ26によって矢印aで示す方向に回動し得る回動軸27に支持されており、ビームスプリッタ22から到来したパルスレーザ光P12を反射させてポリゴンミラー31へ導くとともに、モータ26による回動軸27の回動動作によって、ポリゴンミラー31へ導かれるパルスレーザ光P12を、y方向に走査させる。
【0018】
ポリゴンミラー31は、モータ33によって矢印bで示す方向に回動し得る回動軸32に支持されており、ガルバノミラー25から到来したパルスレーザ光P12を反射させて対物レンズ35に導くとともに、モータによる回動軸32の回動動作によって、対物レンズ35に導かれるパルスレーザ光P11を、x方向に走査させる。
【0019】
このように、対物レンズ35に入射される第1のパルスレーザ光P12は、ガルバノミラー25及びポリゴンミラー31の回動動作によって、x方向及びy方向に走査可能となっている。
【0020】
一方、フォトニック結晶ファイバ23は、入力パルス強度に応じて該入力パルスを広帯域化して出力する光ファイバであり、ビームスプリッタ22から得られるパルスレーザ光P13を、波長が600nm〜1200nmのスーパーコンティニュウム光(超広帯域光)P14に変換する。
【0021】
フィルタ41は、フォトニック結晶ファイバ23から出射されるスーパーコンティニュウム光P14の波長を900nm〜1200nmの範囲に制限する。この波長域が制限されたパルスレーザ光P14´は、ミラー42において反射されてガルバノミラー43に導かれる。
【0022】
ガルバノミラー43は、モータ44によって矢印cで示す方向に回動し得る回動軸45に支持されており、フィルタ41から到来したパルスレーザ光P14´を反射させてポリゴンミラー51へ導くとともに、モータ44による回動軸45の回動動作によって、ポリゴンミラー51へ導かれるパルスレーザ光P14´をy方向に走査させる。
【0023】
ポリゴンミラー51は、モータ53によって矢印dで示す方向に回動し得る回動軸52に支持されており、ガルバノミラー43から到来したパルスレーザ光P14´を反射させて対物レンズ35に導くとともに、モータによる回動軸52の回動動作によって、対物レンズ35に導かれるパルスレーザ光P14´をx方向に走査させる。
【0024】
このように、対物レンズ35に入射されるパルスレーザ光P14´は、ガルバノミラー43及びポリゴンミラー51の回動動作によって、x方向及びy方向に走査可能となっている。対物レンズ35は、パルスレーザ光P12及びP14´を分析対象物60の表面に集光させる。
【0025】
かくして、図2に示すように、顕微鏡装置20を制御するコンピュータ65は、モータ33、53を駆動制御してポリゴンミラー31、51を回転させることにより、パルスレーザ光P12及びP14´をx方向に主走査させるとともに、モータ26、44を駆動制御してガルバノミラー25、43を断続的に回動させることにより、これらのパルスレーザ光をy方向に副走査させることができる。これにより、分析対象物60の表面に照射されるこれら2つのパルスレーザ光P12及びP14´を走査させることができる。この場合、この顕微鏡装置20を制御するコンピュータ65は、ポリゴンミラー31、51及びガルバノミラー25、43の回転量を調整することにより、分析対象物60の表面が平面である限りにおいて、2つのパルスレーザ光P12及びP14´を分析対象物60の表面の一点に集光させながらこれらを走査させるとともに、この走査制御に加えて後述する照射位置の調整処理により、分析対象物60の表面に凹凸がある場合にも、2つのパルスレーザ光P12及びP14´を常に一点に集光させながらこれらを走査させるようになされている。
【0026】
このように、分析対象物60の表面の一点に2つのパルスレーザ光P12及びP14´を集光させることにより、非線形光学過程によりコヒーレントアンチストークスラマン散乱光(CARS光)C1が発生する。このコヒーレントアンチストークスラマン散乱光C1は、対物レンズ35及びハーフミラー55を介してダイクロイックミラー56に導かれる。
【0027】
ダイクロイックミラー56は、コヒーレントアンチストークスラマン散乱光C1を、波長650nmの光P16と波長720nmの光P15とに分ける。波長650nmの光P16は、検出器61に入射され、また、波長720nmの光P15は、検出器62に入射される。検出器61は、入射した波長650nmの光P16をフォトダイオード又は光電子増倍管等によって光電変換することにより、CARS光信号S1を得る。また、検出器62は、入射した波長720nmの光P15をフォトダイオード又は光電子増倍管等によって光電変換することにより、CARS光信号S2を得る。CARS光信号S1は、コンピュータ65に入力され、また、CARS光信号S2は、コンピュータ66に入力される。
【0028】
コンピュータ66は、CARS光信号S2に基づいて、分析対象物60に含まれる検出対象である物質の分布を画像表示する。
【0029】
すなわち、2つのパルスレーザ光P12及びP14´が分析対象物60の表面に集光されると、その集光位置に検出対象である物質が存在する場合には、2つのパルスレーザ光P12及びP14´の角周波数ω及びωに対して、ω=2ω―ωで表される角周波数ωを持つシグナル光が発生する。この角周波数の関係を波長λの関係式で表すと、パルスレーザ光P12(すなわちパルスレーザ光P11)の波長をλ、パルスレーザ光P14´の波長をλ、検出器61、62において検出するコヒーレントアンチストークスラマン散乱光C1(シグナル光)の波長をλとすると、1/λ=2/λ−1/λとなる。この波長λを持つシグナル光が発生した場合に、検出対象である物質が分析対象に存在することが分かり、その強度によって濃度が分かる。
【0030】
この実施の形態の場合、波長λが720nmであるコヒーレントアンチストークスラマン散乱光C1(シグナル光)を発生する物質を検出対象としており、これに応じて、パルスレーザ光P11の波長λを800nmに設定するとともに、波長λとして900nmを含むパルスレーザ光P14´をフォトニック結晶ファイバ23によって得るようになされている。なお、フォトニック結晶ファイバ23から出力されるスーパーコンティニュウム光P14は、600nm〜1200nmの波長を含むが、検出対象から発せられるコヒーレントアンチストークスラマン散乱光C1(シグナル光)の波長が720nmであることにより、分析対象物60に入射されるパルスレーザ光P14´と分析対象物60から発せられるコヒーレントアンチストークスラマン散乱光C1(シグナル光)との波長が重複しないように、フィルタ41によって600nm以上900nm未満の波長帯域を制限している。
【0031】
かくして、分析対象物60に照射されるパルスレーザ光P12及びP14´は、ガルバノミラー25、43及びポリゴンミラー31、51の回転動作によって分析対象物60の表面を走査し、コンピュータ66は、検出器62において検出されたCARS光信号S2に基づいて、分析対象物60の表面の状態を画像表示する。この画像のなかで波長が720nmの光が発生している部分が他の部分に比べて明るく表示されることとなり、この部分に検出対象である物質が存在することが分かり、さらにその輝度によって物質の濃度を判断することができる。
【0032】
ここで、この実施の形態においては、検出対象である物質に加えて、分析対象物60の全体に亘って常時存在する物質(例えば、細胞膜を形成する脂質分子)を検出するようになされており、この物質の検出結果に基づいて2つのパルスレーザ光P12及びP14´の照射位置を一致させる調整を行う。
【0033】
すなわち、フォトニック結晶ファイバ23及びフィルタ41によって得られるパルスレーザ光P14´の波長帯域(900nm〜1200nm)は、波長1040nmを含むように設定されている。この波長をλとして、上述の波長λの関係式から、波長λ=650nmのコヒーレントアンチストークスラマン散乱光C1(シグナル光)がそれに対応した特定の物質の存在により発生することが分かる。この波長λ=650nmのコヒーレントアンチストークスラマン散乱光C1(シグナル光)を発生させる特定の物質が脂質分子である。因みに、脂質分子のC−H伸縮運動に由来するコヒーレントアンチストークスラマン散乱光C1(シグナル光)は、照射光(パルスレーザ光P12)からの周波数シフトが、波数換算で2800cm−1乃至3200cm−1の間にある。この波長のコヒーレントアンチストークスラマン散乱光C1(シグナル光)は、ダイクロイックミラー56によって検出器61に入射され、この検出機61によってCARS光信号S1に変換された後、コンピュータ65に入力される。
【0034】
かくして、ガルバノミラー25、43及びポリゴンミラー31、51の回転動作によって、パルスレーザ光P12及びP14´が分析対象物60の表面を走査すると、波長が650nmのコヒーレントアンチストークスラマン散乱光C1(シグナル光)が常に発生することになり、CARS光信号S1が検出器61から常時出力される。
【0035】
分析対象物60においては、照射される2つのパルスレーザ光(パルスレーザ光P12及びP14´)が同一箇所に照射される場合に、発生するコヒーレントアンチストークスラマン散乱光C1(シグナル光)の光強度が最大となり、その結果CARS光信号S1の出力が最大となる。
【0036】
従って、コンピュータ65は、検出器61から得られるCARS光信号S1の値が常に最大となるようにポリゴンミラー51の回転位置を調整して、2つのパルスレーザ光(パルスレーザ光P12及びP14´)が互いに同一箇所を照射するように制御しながら、これら2つのパルスレーザ光が分析対象物60の表面を走査するようになされている。この場合、コンピュータ65は、ポリゴンミラー51を回転させるためのモータ53を制御することにより、一方のパルスレーザ光P14´の照射位置を調整するようになされている。
【0037】
図3は、コンピュータ65による照射位置の制御手順を示し、コンピュータ65は、ステップST11において、ガルバノミラー25、43及びポリゴンミラー31、51を回転させることにより、2つのパルスレーザ光(パルスレーザ光P12及びP14´)を走査させる。なお、図2に示す制御手順を実行する前処理として、コンピュータ65は、ステップST11において、ガルバノミラー25、43及びポリゴンミラー31、51の回転位置を調整することにより、2つのパルスレーザ光P12及びP14´が分析対象物60の同一箇所を照射するように調整されているものとする。
【0038】
ステップST11において2つのパルスレーザ光P12及びP14´が分析対象物60の表面を走査すると、コンピュータ65は、ステップST12に移って、検出器61から得られるCARS光信号S1の信号レベルを測定し、続くステップST13において、CARS光信号S1の信号レベルが10nWよりも小さいか否かを判断する。ここで否定結果が得られると、このことは、分析対象物60の表面を走査する2つのパルスレーザ光P12及びP14´が同じ位置を照射していることを意味しており、コンピュータ65は、ステップST13からステップST14に移って、検査を終了するか否かを判断する。
【0039】
ステップST14において否定結果が得られると、このことは、2つのパルスレーザ光が分析対象物60の表面を走査中であることを意味しており、コンピュータ65は、ステップST14から上述のステップST11に戻って、2つのパルスレーザ光による走査を続行する。
【0040】
これに対してステップST14において肯定結果が得られると、このことは、分析対象物60に対する2つのパルスレーザ光の走査が終了したことを意味しており、コンピュータ65は、当該制御手順を終了する。因みに、コンピュータ65は、ガルバノミラー25、43及びポリゴンミラー31、51の回転位置に基づいて、分析対象物60に対する2つのパルスレーザ光の照射位置を把握しており、この照射位置に基づいて、分析対象物60の表面の全てを走査終了したか否かを判断することができる。
【0041】
一方、ステップST13において肯定結果が得られると、このことは、2つのパルスレーザ光P12及びP14´の照射位置がずれていることを意味しており、コンピュータ65は、ステップST13からステップST15に移って、2つのパルスレーザ光P12及びP14´の照射位置を調整する。
【0042】
このステップST15において、コンピュータ65は、まず、モータ53を制御することにより、ポリゴンミラー51の回転位置を微調整して、一方のパルスレーザ光P14´の照射位置をx方向に微調整する。このようにして、2つのパルスレーザ光P12及びP14´の相対的な照射位置を微調整する。そして、コンピュータ65は、ステップST16に移って、この一方のパルスレーザ光P14´の照射位置が微調整された状態で、検出器61から出力されるCARS光信号S1の信号レベルを測定し、続くステップST17においてCARS光信号S1の信号レベルが10nWよりも小さいか否かを判断する。
【0043】
このステップST17において肯定結果が得られると、このことは、上述のステップS15における調整では2つのパルスレーザ光の照射位置が一致しないことを意味しており、この場合、コンピュータ65は、上述のステップST15に戻って、さらにパルスレーザ光P14´の照射位置を微調整する。この微調整において、コンピュータ65は、例えば、パルスレーザ光P14´の照射位置を前回微調整した方向(x方向)と同一方向にさらに移動させる調整、又は逆方向に移動させる調整等を行う。ステップST17において肯定結果が得られる間は、ステップST15においてパルスレーザ光P14´の照射位置の微調整を繰り返すことにより、2つのパルスレーザ光P12及びP14´は、やがて照射位置が一致することとなる。そして、この場合、コンピュータ65は、ステップST17において否定結果を得ることにより、ステップST17からステップST18に移って、検査を終了するか否かを判断する。ここで否定結果が得られると、このことは、2つのパルスレーザ光が分析対象物60の表面を走査中であることを意味しており、コンピュータ65は、ステップST18から上述のステップST11に戻って、2つのパルスレーザ光による走査を続行する。
【0044】
これに対してステップST18において肯定結果が得られると、このことは、分析対象物60に対する2つのパルスレーザ光の走査が終了したことを意味しており、コンピュータ65は、当該制御手順を終了する。
【0045】
以上説明した構成の顕微鏡装置20において、2つのパルスレーザ光P12及びP14´の照射位置を検出器61からのフィードバックによって調整する処理を行わずに、これら2つのパルスレーザ光P12及びP14´を分析対象物60の表面に照射して走査させると、分析対象物60の表面の凹凸に応じて2つのパルスレーザ光の照射位置が変化する。この変化が発生すると、分析対象物60の表面にこれら2つのパルスレーザ光が集中しなくなることにより、これら2つのパルスレーザ光の照射により発生するコヒーレントアンチストークスラマン散乱光C1(シグナル光)の発光強度も小さくなる。この結果、検出器61、62から出力されるCARS光信号S1、S2の信号レベルが低くなる。
【0046】
このように検出器61からのフィードバックによる照射位置の調整が行われていない状態においては、分析対象物60の表面の凹凸によってCARS光信号S1、S2の信号レベルが変化する。
【0047】
ここで、コヒーレントアンチストークスラマン散乱光C1(シグナル光)により、分析対象物60に含まれる特定物質の検出を行う場合、検出器62から出力されるCARS光信号S2の信号レベルに基づいてこの特定物質の濃度分布を検出することができるが、分析対象物60の表面の凹凸によってコヒーレントアンチストークスラマン散乱光C1(シグナル光)の強度が変化すると、正確な濃度分布を検出することが困難になる。そこで、本実施の形態に係る顕微鏡装置20においては、分析対象物60の全体に亘って常時存在する普遍的な物質(例えば脂質)からのコヒーレントアンチストークスラマン散乱光C1(シグナル光)を検出器61によって検出することにより、該物質の分布による強度変化が含まれないコヒーレントアンチストークスラマン散乱光C1(シグナル光)を得ることができる。すなわち、この検出器61において検出されるコヒーレントアンチストークスラマン散乱光C1(シグナル光)の強度は、分析対象物60の表面の凹凸の状態を反映するものであり、コンピュータ65は、検出器61から出力されるCARS光信号S1をモニタ信号として用い、この信号のレベルが10nWを下回った場合に、2つのパルスレーザ光P12及びP14´の照射位置が分析対象物表面の凹凸によりずれているものとしてパルスレーザ光の照射位置を調整する。これに対して、CARS光信号S1が10nWを超えている場合は、2つのパルスレーザ光P12及びP14´の照射位置が一致していることになり、この場合は走査を続行する。因みに、分析対象物60に常時存在する物質(例えば脂質)の濃度が一様でない場合であっても、2つのパルスレーザ光P12及びP14´の照射位置が一致していれば、CARS光信号S1が10nW以上のレベルを維持しながら、その濃度に応じて変化することになり、また検出器61及び62に導かれる光は、ダイクロイックミラー56によって分けられていることにより、検出器62において検出目的である物質の分布を正しく反映したCARS光信号S2を得ることができる。
【0048】
このように、本実施の形態においては、本来の目的とするCARS光(放出光)とは異なる波長を持つCARS光(放出光)を参照信号として用いて2つのパルスレーザ光P12及びP14´の照射位置を一致させる点を特徴としている。一般に、分析対象中における特定分子の分布を画像化して得るためには、放出光強度が分子の濃度に応じて増加することを利用して、放出光強度を画像の濃淡として表現するようになされている。放出光の波長は、検出すべき目的分子、例えばタンパク分子によって決定されるが、この波長を持つ放出光の強度は、複数のパルスレーザ光の照射位置が一致しているか否かに依存するため、一致していることが保証されなければ正確な分布状況を画像情報として取り出すことはできない。ここで、一般に生体試料においては、例えば細胞膜を形成している脂質分子のように、分析対象物以外の物質で普遍的に存在するものがある。本実施の形態においては、このような普遍的に存在する分子に由来する放出光をモニタ信号として取り出し、パルスレーザ光P12及びP14´による照射位置の誤差を補正する。このような放出光は、例えば脂質分子のC−H伸縮運動に由来する信号として、CARS光では照射されるパルスレーザ光からの周波数シフトが波数換算で2800cm−1乃至3200cm−1の間にある。この信号強度を一定にするような調整機構を備えることにより、分析対象物60の凹凸によらず分析対象物60の表面の同一箇所にパルスレーザ光P12及びP14´を照射することが可能となり、分析対象物60中の目的分子の分布状況を精密に測定することが可能となる。なお、本実施の形態においては、分析対象物60の表面にパルスレーザ光P12及びP14´を集光する場合について述べたが、これに限らず、例えば表面から一定の深さにある箇所に集光させるようにしてもよい。
【0049】
なお、分析対象物60として、例えば図4に示すように、深さD=20μm、凹部幅W1=50μm、凸部幅W2=60μmの凹凸が形成された表面に、直径が1μmのポリスチレン球71を並べ、さらに該表面にキャスターオイルを塗布したものを用い、この分析対象物60の表面に顕微鏡装置20によってパルスレーザ光P12及びP14´を照射し、走査させることにより、コンピュータ66においてポリスチレン球71の分布状況を画像表示することができた。
【0050】
以上の構成によれば、分析対象物60の全体に亘って常に存在する物質から発せられるコヒーレントアンチストークスラマン散乱光C1(シグナル光)の強度に基づいて、2つのパルスレーザ光P12及びP14´の照射位置を相対的に調整するようにしたことにより、分析対象物60の表面の凹凸状態の影響を受けることなく、検出対象である物質の分布状況を測定することができる。
【0051】
(第2の実施の形態)
図5に示すように、第2の実施の形態に係る顕微鏡装置120は、誘導パラメトリック蛍光(SPF;stimulated parametric fluorescence)方式の顕微鏡装置であり、第1の実施の形態に係る顕微鏡装置20の場合と同様にして、分析対象物60において普遍的に存在する物質から発せられる蛍光(SPF光)を抽出して、2つのパルスレーザ光の照射位置を相対的に調整するようになされている。なお、図5において、図1との対応部分には同一符号を付し、重複した説明は省略する。因みに、この実施の形態において、顕微鏡装置120に分析部(コンピュータ66)を加えることにより分析装置が構成される。
【0052】
図5において、光源121は、中心波長600nm、半値幅100fsec、繰り返しレート80MHz、平均出力300mWのパルスレーザ光P101を発する。このパルスレーザ光P101は、ガルバノミラー25及びポリゴンミラー31を介して対物レンズ35に入射される。
【0053】
また、光源122は、中心波長800nm、半値幅100fsec、繰り返しレート80MHz、平均出力300mWのパルスレーザ光P102を発する。このパルスレーザ光P102は、ミラー111において反射してハーフミラー112に導かれる。
【0054】
さらに、光源123は、中心波長621nm、半値幅100fsec、繰り返しレート80MHz、平均出力300mWのパルスレーザ光P103を発する。このパルスレーザ光P103は、ハーフミラー112に入射される。ハーフミラー112は、光源122からのパルスレーザ光P102と、光源123からのパルスレーザ光P103とを合わせることによりパルスレーザ光P104を得る。
【0055】
ハーフミラー112によって合わせられたパルスレーザ光P104は、ミラー42、ガルバノミラー43及びポリゴンミラー51を介して対物レンズ35に入射され、分析対象物60の表面に照射される。
【0056】
分析対象物60の表面に照射されるパルスレーザ光P101及びP104は、ポリゴンミラー31、51による主走査と、ガルバノミラー25及び43による副走査により、分析対象物60の表面を走査する。
【0057】
本実施の形態に係る顕微鏡装置120は、誘導パラメトリック蛍光法により分析対象物60に含まれる物質の検出を行うようになされている。この誘導パラメトリック蛍光法は、図6のエネルギーダイアグラムに示すように、2本のパルスレーザ光P101及びP104を分析対象物60に照射することにより、該照射位置に存在する物質に応じて、SPF光(蛍光)K1を得るものである。このSPF光K1は、ダイクロイックミラー56によって2つのSPF光P105、P106に分けられて、その一方のSPF光P106は検出器61に入射され、他方のSPF光P105は、検出器62に入射される。この場合、パルスレーザ光P101の角周波数をω、パルスレーザ光P102(P103)の角周波数をω、とすると、角周波数がω=2ω−ωであるSPF光P105(P106)を得る。
【0058】
この角周波数の関係を波長λの関係式で表すと、パルスレーザ光P101の波長をλ、パルスレーザ光P102(P103)の波長をλ、分析対象から得られるSPF光K1(すなわちダイクロイックミラー56において分けられたSPF光P105(P106)の波長をλとすると、1/λ=2/λ−1/λとなる。この波長λを持つSPF光が発生した場合に、検出対象である物質が分析対象に存在することが分かり、その強度によって濃度が分かる。
【0059】
この実施の形態の場合、波長λが480nmであるSPF光K1(P105)を発生する物質を検出対象としており、これに応じて、光源121から出力されるパルスレーザ光P101の波長λを600nmに設定するとともに、光源122は、波長λが800nmであるパルスレーザ光P102を出力するようになされている。波長λが480nmであるSPF光P105は、分析対象物60において得られるSPF光K1からダイクロイックミラー56によって分けられて検出器62に入射される。検出器62は、このSPF光P105を光電変換することにより、SPF光信号S102を得、これをコンピュータ66に出力する。コンピュータ66は、このSPF光信号S102に基づいて、検出対象である物質の分布を得ることができる。
【0060】
また、この実施の形態の場合、分析対象物60に普遍的に存在する物質(例えば脂質)から得られるSPF光P106を検出器61によって検出し、この検出結果に基づいて、2つのパルスレーザ光P101及びP104の照射位置を一致させるようになされている。この普遍的に存在する物質から得られるSPF光P106の波長λは580nmであり、これに応じて、光源121から出力されるパルスレーザ光P101の波長λを600nmに設定するとともに、光源123は、波長λが621nmであるパルスレーザ光P103を出力するようになされている。波長λが580nmであるSPF光P106は、分析対象物60において得られるSPF光K1からダイクロイックミラー56によって分けられて検出器61に入射される。検出器61は、SPF光P106を光電変換することにより、SPF光信号S101を得る。このSPF光信号S101は、SPF光P106の強度に応じて信号レベルが変化する。
【0061】
コンピュータ65は、図3において上述した処理と同様にして、検出器61から得られるSPF光信号S101の信号レベルを検出し、この信号レベルが10nW未満である場合には、ポリゴンミラー51の回転位置を調整することにより、信号レベルが常に10nW以上となるように制御する。これにより、分析対象物60の表面に凹凸がある場合であっても、分析対象物60の表面を走査する2つのパルスレーザ光P101及びP104の照射位置を常に一致させることができる。
【0062】
このように照射位置が調整されたパルスレーザ光P101及びP104によって分析対象物60から得られるSPF光P105は、検出対象である物質の分布及び濃度を正確に表すこととなる。
【0063】
以上の構成によれば、分析対象物60の全体に亘って常に存在する物質から発せられるSPF光K1(P106)の強度に基づいて、2つのパルスレーザ光P101及びP104の照射位置を相対的に調整するようにしたことにより、分析対象物60の表面の凹凸状態の影響を受けることなく、検出対象である物質の分布状況を測定することができる。
【0064】
(他の実施の形態)
なお上述の実施の形態においては、分析対象物60に普遍的に存在する物質として脂質を選択し、この脂質において発生するCARS光またはSPF光を基に2つのパルスレーザ光の照射位置を相対的に調整する場合について述べたが、脂質に限らず、分析対象物60の全体にわたって常に存在する物質であればよく、その物質においてCARS光またはSPF光が発生するような波長のパルスレーザ光を照射するようにすればよい。
【0065】
また上述の実施の形態においては、分析対象物60に照射する2つのパルスレーザ光のうちの一方を調整することによりこれら2つのパルスレーザ光の相対的な照射位置を調整してこれらの照射位置を一致させるようにしたが、2つのパルスレーザ光の照射位置をそれぞれ調整することにより、それらの照射位置を一致させるようにしてもよい。
【0066】
また上述の実施の形態においては、2つのパルスレーザ光の照射位置をポリゴンミラー51により一致させる場合について述べたが、ガルバノミラー43による調整を加えるようにしてもよい。
【0067】
また上述の実施の形態においては、分析対象物60の表面に2つのパルスレーザ光P12及びP14´(P101及びP104)を集光させる場合について述べたが、これに限らず、例えば表面から一定の深さにある箇所に集光させるようにしてもよい。
【0068】
また上述の実施の形態においては、分析対象物60において発生したCARS光またはSPF光をパルスレーザ光の入射側において取り込む場合について述べたが、本発明はこれに限られるものではなく、パルスレーザ光の入射側とは反対側において取り込むようにしてもよい。
【0069】
また上述の実施の形態においては、ポリスチレン球の分布を測定する場合について述べたが、本発明はこれに限られるものではなく、他の種々の物質を検出する場合に広く適用することができる。この場合、分析対象物60に照射するパルスレーザ光の波長を検出目的の物質に対応させればよい。
【0070】
また上述の実施の形態においては、2種類のパルスレーザ光P12及びP14´(P101及びP104)を分析対象物60に照射する場合について述べたが、本発明はこれに限られるものではなく、3種類以上のパルスレーザ光を照射する場合においても適用することができる。例えば3種類のパルスレーザ光の照射位置を一致させる場合、まず2つのパルスレーザ光の照射位置を一致させた後、残りのパルスレーザ光の照射位置をこれらに一致させるようにすればよい。
【0071】
また上述の実施の形態においては、分析対象物60に2つのパルスレーザ光を照射するとともに、検出対象である物質からCARS光またはSPF光を生じさせるための波長と、普遍的に存在する物質からCARS光またはSPF光を生じさせるための波長とを一方のパルスレーザ光に含むようにしたが、これら2つの波長成分を別々のパルスレーザ光によって照射するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】第1の実施の形態に係る顕微鏡装置を示すブロック図である。
【図2】2つのパルスレーザ光による分析対象物の表面の走査状態を示す概略図である。
【図3】図1の顕微鏡装置のコンピュータによる照射位置の制御手順を示すフローチャートである。
【図4】分析対象物の構成を示す側面図である。
【図5】第2の実施の形態に係る顕微鏡装置を示すブロック図である。
【図6】図5の顕微鏡装置における誘導パラメトリック蛍光法の説明に供するエネルギーダイアグラムである。
【図7】コヒーレントアンチストークスラマン散乱法の説明に供する概略図である。
【図8】コヒーレントアンチストークスラマン顕微鏡を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0073】
20、120、220 顕微鏡装置
21、121、122、123 光源
22 ビームスプリッタ
23 フォトニック結晶ファイバ
25、43 ガルバノミラー
26、33、44、53 モータ
31、51 ポリゴンミラー
35 対物レンズ
41 フィルタ
42、111 ミラー
55、112 ハーフミラー
56 ダイクロイックミラー
60 分析対象物
61、62 検出器
65 コンピュータ
C1 コヒーレントアンチストークスラマン散乱光(CARS光)C1
K1 SPF光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる波長成分を含む複数のパルスレーザ光を発生する光源部と、
前記複数のパルスレーザ光を分析対象に照射する光学系と、
前記複数のパルスレーザ光の照射によって前記分析対象から発せられる第1の光を検出する第1の検出部と、
前記複数のパルスレーザ光の照射によって前記分析対象から発せられる第2の光を検出する第2の検出部と、
前記第2の検出部によって検出される第2の光の強度に基づいて前記複数のパルスレーザ光の照射位置を一致させるための調整部と
を備えることを特徴とする顕微鏡装置。
【請求項2】
前記光源部は、
第1の波長を持つ第1のパルスレーザ光と前記第1の波長とは異なる第2の波長及び前記第1及び第2の波長とは異なる第3の波長を持つ第2のパルスレーザ光とを発生することを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡装置。
【請求項3】
前記第2の検出器によって検出される第2の光は、前記分析対象に普遍的に存在する物質から発せられる光であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の顕微鏡装置。
【請求項4】
前記普遍的に存在する物質は、脂質であることを特徴とする請求項3に記載の顕微鏡装置。
【請求項5】
前記第2の検出器によって検出される第2の光の波長と前記複数のパルスレーザ光のいずれかの波長との差が波数換算で2800cm−1乃至3200cm−1の間にあることを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡装置。
【請求項6】
前記調整部は、前記第2の検出器によって検出される第2の光の強度が一定値以上となるように前記複数のパルスレーザ光の照射位置を相対的に調整することを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡装置。
【請求項7】
前記分析対象から発せられる第1及び第2の光は、コヒーレントアンチストークスラマン散乱光であることを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡装置。
【請求項8】
前記分析対象から発せられる第1及び第2の光は、誘導パラメトリック蛍光であることを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡装置。
【請求項9】
前記パルスレーザ光の半値幅は10フェムト秒乃至10ピコ秒の間にあることを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡装置。
【請求項10】
互いに異なる波長成分を含む複数のパルスレーザ光を発生する光源部と、
前記複数のパルスレーザ光を分析対象に照射する光学系と、
前記複数のパルスレーザ光の照射によって前記分析対象から発せられる第1の光を検出する第1の検出部と、
前記複数のパルスレーザ光の照射によって前記分析対象から発せられる第2の光を検出する第2の検出部と、
前記第2の検出部によって検出される第2の光の強度に基づいて前記複数のパルスレーザ光の照射位置を一致させるための調整部と、
前記第1の検出部の検出結果に基づいて前記分析対象に含まれる物質を分析する分析部と
を備えることを特徴とする分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−76361(P2008−76361A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−259368(P2006−259368)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】