説明

風力発電装置

【課題】強風時における風車の回転数を抑制して、ブレードの耐久性を確保するとともに、強風時の発電も可能とする。
【解決手段】この風力発電装置には、板状の複数のブレードと、複数のブレードが回転軸に対して湾曲するように取り付けられた風車と、風車の回転軸に連結されて、風車の動力が伝達され発電する発電機とが備えられている。風車には、ブレードを前記回転軸に固定するために、回転軸に所定の間隔をあけて固定される一対の固定具が備えられている。一対の固定具のうち、一方の固定具には、ブレードの一端部が固定されるとともに他方の固定具には、ブレードの他端部が固定されている。ブレードは、中央の狭幅部と、これを挟む拡幅の拡幅部とが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電装置に係り、特に、ねじったブレードを用いた風車を備えた風力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電装置に使用される一般的な風車においては、ブレードと呼ばれる複数の翼が、必要とされる電力を発電できるサイズで備えられている。一般的な風車であると、風向きに対するブレードのサイズが大きくなるので設置個所が限られてしまう。ここで、ねじったブレードを使用すれば、風力を効率的に回転力として作用させることができるので、一般的な風車よりも風向きに対するサイズが小型でありながら、一般的な風車と同程度の回転数を見込める風車が開発されている。(例えば非特許文献1,2、特許文献1参照)。
【非特許文献1】小島,「ねじれ円弧翼型水平軸風車の開発」,太陽エネルギー,日本太陽エネルギー学会,1996年5月,第22巻,第3号,p.25−31
【非特許文献2】小島,岸村,「ねじれ円弧翼型水平軸風車に関する研究」,太陽エネルギー,日本太陽エネルギー学会,1997年9月,第23巻,第5号,p.70−76
【特許文献1】特開2005−226475号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
風車は、風速が高まるにつれてその回転数も増加するものであり、台風などの強風時においては高速回転となってしまう。強風時にはブレードにかかる負荷が激増し、ブレードを破損させるおそれも高まるため、それを防止すべく所定の回転数以上では風車を停止させるブレーキ機構を搭載したものも開発されている。
しかしながら、ブレーキ機構を設けてしまうと、風力発電装置自体の製造コストも高まるだけでなく、停止時においては発電も停止されることになり、発電効率も低下することになっていた。
【0004】
本発明の課題は、強風時における風車の回転数を抑制して、ブレードの耐久性を確保するとともに、強風時の発電も可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明に係る風力発電装置は、
板状の複数のブレードと、
前記複数のブレードが回転軸に対して湾曲するように取り付けられた風車と、
前記風車の回転軸に連結されて、前記風車の動力が伝達され発電する発電機とを備え、
前記風車は、
前記ブレードを前記回転軸に固定するために、前記回転軸に所定の間隔をあけて固定される一対の固定具を備え、
前記一対の固定具のうち、一方の固定具には、前記ブレードの一端部が固定されるとともに他方の固定具には、前記ブレードの他端部が固定され、
前記ブレードは、中央の狭幅部と、これを挟む拡幅部とが形成されていることを特徴とする風力発電装置。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の風力発電装置において、
前記ブレードは、前記拡幅部から中央に向かって幅が狭くなる一対のテーパ部と、前記一対のテーパ部に連続して、前記拡幅部よりも狭い幅で一様な前記狭幅部とが形成されていて、前記テーパ部と前記狭幅部との境界部分の側辺は、凹曲線となっていることを特徴としている。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の風力発電装置において、
前記狭幅部の両側辺は、凹曲線となっていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ブレードの狭幅部の幅が拡幅部よりも狭く形成されているので、回転軸から離れた地点(狭幅部)が軽量化され、回転の慣性力も低減されることになる。これにより、風速の増加に基づく回転の増加率が抑えられることになる。また、狭幅部の軽量化によって、固定具とブレードとの連結部分に対する遠心力も低減されて、固定具とブレードとが破損してしまうことを防止することができる。この軽量化により、ブレード自体の自重も低減するので、低風速であっても風車の回転を開始させることができる。
これらのことにより、強風時における風車の回転数が抑制されて、ブレードの耐久性を確保でき、強風時における発電も可能となる。
【0009】
また、狭幅部のみが拡幅部よりも幅が狭く形成されているので、回転軸の軸方向から見た投影面積は、幅が均一なブレードと比較しても大幅に低減されていない。つまり、風が当たる面積はある程度確保しつつも、ブレードに対する負荷は低減できるので、発電効率を極力確保しつつも、耐久性が高められることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本実施形態の風力発電装置について説明する。図1は、風力発電装置1を示す正面図であり、図2は図1の風力発電装置1の側面図である。
【0011】
図1及び図2に示すように風力発電装置1には、円柱形状の基台21が備えられている。基台21の上端部には、水平方向に開口した円筒状のカバー6が水平方向に回動自在に設けられている。カバー6の内部には、風車5と、風車5の回転軸51の先端部を回転自在に支持する第1支持部71と、前記回転軸51の後端部を回転自在に支持する第2支持部72とが配設されている。第2支持部72の後方には、発電機22が設けられていて、この発電機22の駆動軸221と、風車5の回転軸51とは連結されている。
また、カバー6の上端部には、風向きに沿うようにカバー6や風車5を回動させるためのガイド板61が設けられている。
【0012】
図3は風車5の概略構成を示す説明図であり、図3(a)は正面図、図3(b)は側面図である。図3に示すように、風車5には、発電機22の駆動軸221に連結される回転軸51と、回転軸51に所定の間隔をあけて固定される一対の固定具52a,52bと、一対の固定具52a,52bのうち、一方の固定具52aに一端部が固定されるとともに他方の固定具52bに他端部が固定されて、回転軸51に対して湾曲するように取り付けられる複数の板状のブレード53とが設けられている。なお、図3(b)の塗り潰し部分はブレード53の表面側を示しており、斜線部はブレード53の裏面側を示している。
【0013】
図4は固定具52a,52bの概略構成を示す説明図であり、図4(a)は正面図、図4(b)は側面図である。図4に示すように、固定具52a,52bの中央には回転軸51が貫通されて固定される貫通孔521が形成されている。そして、固定具52a,52bの貫通孔521の周囲には、貫通孔521の軸方向に対して所定の角度αで傾いたねじれ面522が、ブレード53の枚数に対応して複数形成されている。このねじれ面522にブレード53の端部を接触させれば、図3に示すように好適なねじれ角でブレード53がねじれるようになっている。また、ねじれ面522には、ブレード53を固定するためのネジ孔523が形成されている。
【0014】
なお、ブレード53のねじれ角は、一対の固定具52a,52bの間隔や、ブレード53の枚数、形状、サイズ等により適宜選択することが好ましく、予め設計時に種々のシミュレーションや実験等を行って最適なねじれ角度を求めることが必要である。そして、この導き出された最適なねじれ角度に対応するようにねじれ面522の角度αも設定しておかなければならない。また、ブレード53が疲労破断することを予防するために、ねじれ面522の円弧端部を面取りしておくことが好ましい。
【0015】
図5は、回転軸51に取り付けられる前のブレード53を示す正面図である。図5に示すようにブレード53の一端部531及び他端部532は、固定具52a,52bのねじれ面522と略同形状に形成されている。また、ブレード53の一端部531及び他端部532には、これら一端部531及び他端部532と略同形状の補強板533が重ねられていて、溶接等により固着されている。一端部531,他端部532及び補強板533には、ねじれ面522上のネジ孔523に重なる貫通孔534が形成されており、これらの貫通孔534と、ネジ孔523とを合わせてネジ止めすれば、固定具52a,52bにブレード53を好適なねじれ角で固定できるようになっている。
【0016】
ブレード53は、中央の狭幅部538と、これを挟む拡幅部536とが形成されている。つまり、ブレード53の狭幅部538は、ブレード53の一端部531及び他端部532から狭幅部538まで連続する一対の拡幅部536よりも幅が狭く形成されている。具体的に説明すると、拡幅部536は、一端部531及び他端部532から狭幅部538にかけて均等な幅H1で形成されている。一方、狭幅部538は、拡幅部536から中央に向かって幅が狭くなる一対のテーパ部537に連続して、拡幅部536よりも狭い幅H2で一様となるように形成されている。
【0017】
図6は、図5中の円S内の拡大図であり、テーパ部537と狭幅部538との境界部分539を示している。この図6に示すように、テーパ部537と狭幅部538との境界部分539の側辺は、テーパ部537と狭幅部538との側辺に対して滑らかに連続する凹曲線となっている。
【0018】
図7は、発電機22の内部構成を示す側面図である。この図7に示すように、発電機22には、風車5の回転軸51と連結される駆動軸221と、駆動軸221の基端部に取り付けられた磁性体であるコア222と、コア222に対して所定の間隔を開けて、当該コア222の周囲を覆うコイル223と、コイル223及び蓄電池(図示省略)を接続するケーブル224とが設けられている。風車5の回転によって駆動軸221が回転すると、コア222がコイル223内で回転し、コイル223内に電力が発生する。この電力は、ケーブル224を介して蓄電池に蓄えられることになる。
【0019】
次に、本実施形態の作用について説明する。
風力発電装置1の作用について図1及び図2を参照して説明すると、風がガイド板61やカバー6に当たると、その風力に応じてカバー6及び風車5が基台21を中心に回動し、風向きに対応した位置に配置される。カバー6内を通過する風が、ブレード53に当たると、風車5の回転に伴って回転軸51が回転する。さらに回転軸51の回転に伴って駆動軸221が回転すると発電機22が作動し発電が開始される。この発電によって得られた電力は蓄電池に供給されて蓄えられる。
【0020】
次に、本実施形態の風車5と従来の風車10との風速に対する回転数を比較する。
まず、従来の風車10について説明するが、上記の風車5と同一の部分については同一符号を付してその説明を省略する。図8は、例えば特許文献1に開示された従来の風車10に用いられるブレード11を示す正面図である。図8に示すようにブレード11は、上記実施形態のブレード53とは異なり、一端部111から他端部112までの間が一様な等幅に形成されている。以下、この等幅な部分を等幅部113と称す。この等幅部113の幅H3をブレード53の拡幅部536の幅H1と同じ値にした従来のブレード11を固定具52a,52bに固定したものが風車10となる(図9参照)。なお、図9中、一点鎖線部Tが上記実施形態のブレード53である。
【0021】
そして、従来の風車10と、本実施形態の風車5とのそれぞれに対して、回転軸51に沿った風を付与し、その風速を異ならせて、回転数の変動を調べた。図10は、従来の風車10と、本実施形態の風車5との風速及び回転数の関係を示す風速−回転数線図である。風速が5m/s〜15m/sでは、両風車5,10ともにほぼ同等の回転数を示しているが、15m/sよりも風速が高まると、従来の風車10よりも本実施形態の風車5の方が増加率が小さくなり、風速30m/sでも回転数が3000rpmを下回ることになった。本実施形態の風車5では、ブレード53の狭幅部538の幅が拡幅部536よりも狭く形成されているために、回転軸51から最も離間した地点の重量が軽くなる。これにより高速回転時における遠心力が低下して回転方向に対する慣性力も弱まることになる。
【0022】
一方、回転し始める風速は、従来の風車10では2.6m/sであるが、本実施形態の風車5では1.9m/sとなった。これは本実施形態の風車5の方がブレード53の軽量化が図られているために、低速な風速で回転し始めることとなる。
【0023】
以上のように、本実施形態の風力発電装置1によれば、ブレード53の狭幅部538の幅が拡幅部536よりも狭く形成されているので、風から受ける空気抵抗が減ることになり、強風時における回転数を抑制することができる。さらに、回転軸51から離れた地点(狭幅部538)が軽量化されるために、回転の慣性力も低減され、風速の増加に基づく回転の増加率も抑えられることになる。また、狭幅部538の軽量化によって、固定具52a,52bとブレード53との連結部分に対する遠心力も低減されて、固定具52a,52bとブレード53とが破損してしまうことを防止することができる。
これらのことにより、強風時における風車の回転数が抑制されて、ブレードの耐久性を確保でき、強風時における発電も可能となる。
【0024】
また、狭幅部538のみが拡幅部536よりも幅が狭く形成されているので、回転軸51の軸方向から見た投影面積は、幅が均一なブレード11と比較しても大幅に低減されていない(図9(b)参照)。つまり、風が当たる面積はある程度確保しつつも、ブレード53に対する負荷は低減できるので、発電効率を確保しつつも、耐久性が高められることになる。
【0025】
また、ブレード53のテーパ部537狭幅部538との境界部分539の側辺が、凹曲線となっているので、ブレード53の回転に基づく変形によって、境界部分539に応力が集中することを抑制することができる。これにより、ブレード53の耐久性がより高められることになる。
【0026】
ここで、図5に示す狭幅部538の幅H2は、拡幅部536の幅H1の0.10〜0.90倍であることが好ましい。遠心力の低減とブレード53の強度とのバランスを考慮すると、0.40〜0.50倍であることがさらに好ましい。
また、狭幅部538とテーパ部537との長さL1は、ブレード53の全長L2の0.29〜0.67倍であることが好ましい。遠心力の低減と投影面積の広さとのバランスを考慮すると、0.30〜0.4倍であることがさらに好ましい。もしくは、前記長さL1は、回転軸51の軸方向から見た投影図(図3(a)参照)における回転軸51からブレード53の最外端までの距離L3の0.10〜0.50倍の範囲内に収まるように設定されていることが好ましい。
【0027】
なお、本発明は上記実施形態に限らず適宜変更可能であるのは勿論である。
例えば、本実施形態では、ブレード53の狭幅部538の側辺が、テーパ部537の直線状な側辺と狭幅部538の直線状な側辺との組合せから形成されている場合を例示して説明したが、図11に示すようにブレード53aの狭幅部535aの側辺が、凹曲線となっていてもよい。この場合においても、ブレード53aの回転に基づく変形によって、一箇所に応力が集中することを抑制することができ、ブレード53aの耐久性をより高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施形態の風力発電装置を示す正面図である。
【図2】図1の風力発電装置の側面図である。
【図3】図1の風力発電装置に備わる風車の概略構成を示す説明図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図4】図3の風車に備わる固定具の概略構成を示す説明図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図5】図3の風車に備わるブレードを示す正面図である。
【図6】図5中の円S内の拡大図である。
【図7】図1の風力発電装置に備わる発電機の内部構成を示す側面図である。
【図8】従来の風車に備わるブレードを示す正面図である。
【図9】従来の風車と本実施形態の風車とを比較するための説明図であり、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【図10】従来の風車と、本実施形態の風車との風速及び回転数の関係を示す風速−回転数線図である。
【図11】図5のブレードの変形例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 風力発電装置
5 風車
6 カバー
10 風車
11 ブレード
21 基台
22 発電機
51 回転軸
52a,52b 固定具
53 ブレード
61 ガイド板
111 一端部
112 他端部
113 等幅部
221 駆動軸
222 コア
223 コイル
224 ケーブル
531 一端部
532 他端部
533 補強板
534 貫通孔
536 拡幅部
537 テーパ部
538 狭幅部
539 境界部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の複数のブレードと、
前記複数のブレードが回転軸に対して湾曲するように取り付けられた風車と、
前記風車の回転軸に連結されて、前記風車の動力が伝達され発電する発電機とを備え、
前記風車は、
前記ブレードを前記回転軸に固定するために、前記回転軸に所定の間隔をあけて固定される一対の固定具を備え、
前記一対の固定具のうち、一方の固定具には、前記ブレードの一端部が固定されるとともに他方の固定具には、前記ブレードの他端部が固定され、
前記ブレードは、中央の狭幅部と、これを挟む拡幅部とが形成されていることを特徴とする風力発電装置。
【請求項2】
請求項1記載の風力発電装置において、
前記ブレードは、前記拡幅部から中央に向かって幅が狭くなる一対のテーパ部と、前記一対のテーパ部に連続して、前記拡幅部よりも狭い幅で一様な前記狭幅部とが形成されていて、前記テーパ部と前記狭幅部との境界部分の側辺は、凹曲線となっていることを特徴とする風力発電装置。
【請求項3】
請求項1記載の風力発電装置において、
前記狭幅部の両側辺は、凹曲線となっていることを特徴とする風力発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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