説明

風力発電装置

【課題】ナセル台板の小型・軽量化を可能にするとともに、機器交換等のメンテナンス性にも優れている風力発電装置を提供する。
【解決手段】風力発電装置は、風車回転翼5が取り付けられて一体に回転するロータヘッド4と、軸受12を介してロータヘッド4を支持するナセル3と、ロータヘッド4を貫通し、一端がナセル3に固定支持される主軸11と、ロータヘッド4外に、ロータヘッド4のナセル3の反対側に配置される発電機20とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然エネルギーの風を回転力に変換する風車を用いて発電を行う風力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自然エネルギーである風力を利用して発電を行う風力発電装置が知られている。この種の風力発電装置は、支柱上に設置されたナセルに、風車回転翼を取り付けたロータヘッドと、このロータヘッドと一体に回転するよう連結された主軸と、風車回転翼に風力を受けて回転する主軸を連結した増速機と、増速機の軸出力によって駆動される発電機とを設けたものである。このように構成された風力発電装置においては、風力を回転力に変換する風車回転翼を備えたロータヘッド及び主軸が回転して軸出力を発生し、主軸に連結された増速機を介して回転数を増速した軸出力が発電機に伝達される。このため、風力を回転力に変換して得られる軸出力を発電機の駆動源とし、発電機の動力として風力を利用した発電を行うことができる。
【0003】
上述した従来の風力発電装置においては、通常の場合、増速機や発電機を備えたドライブトレインはナセルの内部に配置されている。このため、ドライブトレインをサポートするナセル台板等のフレームは、ドライブトレイン設置スペース等を確保するために比較的重量を有する構造となっていた。また、1軸受構造の場合には、増速機はロータヘッドの支持構造を兼ねているため、交換の際にロータヘッドを支持する方法が困難になるなどの問題もあった。
【0004】
また、ロータとナセルとの間に発電機を配置した構造もあるが、この場合は発電機の交換が不可能となる。
そして、ナセルの小型化及び軽量化を目的として、ロータヘッドの内部に、主軸から増速機を介して発電機に至るドライブトレインを設置した構成が提案されている。(たとえば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−188953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、風力発電装置は大出力化とともに大型化する傾向にあるため、支柱や基礎等の負担を軽減するためにもナセル台板構造を軽量化することが求められている。また、ナセル内に収納設置される発電機等のドライブトレイン構成機器について交換やメンテナンスを考慮すると、ナセル内に作業スペースを確保しておく必要があった。このような作業スペースの確保は、運転時に使用しないスペースを形成することになるので、ナセル形状を大型化させる要因になっていた。
【0007】
さらに、風力発電装置の大型化に伴い、ドライブトレインの構成機器等についても大型化して重量を増す傾向にあり、しかも、設置場所における作業条件も厳しくなっている。このため、特に現地における設置工事や機器交換等のメンテナンス作業については、これを容易にする構成が望まれる。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ナセル台板の小型・軽量化を可能にするとともに、機器交換等のメンテナンス性にも優れている風力発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するため、下記の手段を採用した。
本発明に係る風力発電装置は、風車回転翼が取り付けられて一体に回転するロータヘッドと、軸受を介して前記ロータヘッドを支持するナセルと、前記ロータヘッドを貫通し、一端が前記ナセルに固定支持される主軸と、前記ロータヘッド外に、前記ロータヘッドの前記ナセルの反対側に配置される発電機とを備えている。
なお、ロータヘッドのナセル反対側は、アップウインド型風力発電装置におけるロータヘッドの前方を意味し、さらに、ダウンウインド型風力発電装置におけるロータヘッドの後方を意味している。
【0009】
このような風力発電装置によれば、風車回転翼が取り付けられて一体に回転するロータヘッドと、軸受を介して前記ロータヘッドを支持するナセルと、前記ロータヘッドを貫通し、一旦が前記ナセルに固定支持される主軸と、前記ロータヘッド外に、前記ロータヘッドの前記ナセルの反対側に配置される発電機とを備えているので、ナセル内に収納設置される重い機器類を低減するとともに、メンテナンス時等に使用する目的で確保することが必要となるスペースを低減することができる。
【0010】
上記の発明において、前記発電機は、回転子と固定子を有し、前記回転子は、増速機を介して前記ロータヘッドの回転動力を受けることが好ましい。
また、上記の発明において、前記増速機は、前記ロータヘッドと前記発電機との間に配置されていることが好ましい。
また、上記の発明において、前記発電機は、回転子と固定子とを有し、前記固定子及び前記回転子のうちの少なくとも一方は、カップリングを介して支持されていることが好ましい。
【0011】
また、上記の発明において、前記発電機は、複数有することが好ましい。特に、複数の発電機を備えるマルチタイプを採用すれば、小型・軽量化や発電機交換等のメンテナンス性が向上する。さらに、複数の発電機を備えたマルチタイプの場合、発電機にトラブルが生じても風力発電装置全体の運転を停止する必要はなく、従って、残った正常な発電機による発電を継続することができる。
【0012】
上述した風力発電装置において、のドライブトレインは、発電機が増速機よりナセル側に配置されていれば、ドライブトレインの重心位置をナセル側(主軸受側)に近づけることができる。この場合、少なくとも発電機の一部を、好適には発電機と増速機の一部とをロータヘッド内に配設することが好ましく、これにより、ドライブトレインの重心位置をより一層ナセル側に近づけることができる。
また、発電機が増速機よりナセル側に配置されている場合には、発電機をナセルの内部に配置することにより、ドライブトレインの重心位置をより一層ナセル側に近づけることができる。
【発明の効果】
【0013】
上述した本発明の風力発電装置によれば、メンテナンス用等の目的でナセル内に確保しておかなければならない通常運転時に不要なスペースを低減し、ナセル自体を小型化してスマートな形状とすることができる。
特に、複数の発電機よりなるマルチタイプの構成を採用すれば、小型化した発電機の交換等を行うメンテナンス作業が容易になるとともに、発電機にトラブルを生じた場合であっても発電出力を落とした状態での運転継続が可能となる。
【0014】
そして、風力発電装置を大型化しても、従来構造においてナセル内でドライブトレインを支持していたナセル台板側では、発電機や増速機のような大型で重い機器がなくなって主軸のみを支持すればよく、従って、ナセル台板の小型軽量化が可能となる。なお、従来構造と比較した場合、概ね10〜15%程度の軽量化が見込まれる。
特に、発電機を増速機よりナセル側に配置してドライブトレインの重心位置をナセル側(主軸受側)に近づけると、モーメントの低減により支持構造を軽量化することができるので、ドライブトレインやナセルを軽量でコンパクトな構造とすることが容易になる。
【0015】
また、ドライブトレインをロータヘッドの前方または後方に取り付けると、ロータヘッドカバーを取り外した場合、ドライブトレインが前方または後方へオーバーハングした状態になるので、ドライブトレイン及びその構成機器をクレーンにより交換する作業が容易になる。
特に、発電機を増速機よりナセル側に配置すれば、メンテナンスや交換頻度の高い増速機が端部側に位置して作業性の向上に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る風力発電装置の一実施形態を示す図で、第1の実施形態としてナセル周辺の要部を拡大して内部構成例を示す断面図である。
【図2】風力発電装置の全体構成例を示す図である。
【図3】第1の実施形態の変形例を示す断面図である。
【図4】本発明に係る風力発電装置の第2の実施形態として、ナセル周辺の要部を拡大して内部構成例を示す断面図である。
【図5】本発明に係る風力発電装置の第3の実施形態として、ナセル周辺の要部を拡大して内部構成例を示す断面図である。
【図6】本発明に係る風力発電装置の第4の実施形態として、ナセル周辺の要部を拡大して内部構成例を示す断面図である。
【図7】本発明に係る風力発電装置の第5の実施形態として、ナセル周辺の要部を拡大して内部構成例を示す断面図である。
【図8】第5の実施形態の第1変形例を示す断面図である。
【図9】第5の実施形態の第2変形例を示す断面図である。
【図10】本発明に係る風力発電装置の第6の実施形態として、ナセル周辺の要部を拡大して内部構成例を示す断面図である。
【図11】第6の実施形態の変形例を示す断面図である。
【図12】本発明に係る風力発電装置の第7の実施形態として、ナセル周辺の要部を拡大して内部構成例を示す断面図である。
【図13】第7の実施形態の第1変形例を示す断面図である。
【図14】第7の実施形態の第2変形例を示す断面図である。
【図15】本発明に係る風力発電装置の第8の実施形態として、ナセル周辺の要部を拡大して内部構成例を示す断面図である。
【図16】第8の実施形態の第1変形例を示す断面図である。
【図17】第8の実施形態の第2変形例を示す断面図である。
【図18】本発明に係る風力発電装置の第9の実施形態として、ナセル周辺の要部を拡大して内部構成例を示す断面図である。
【図19】本発明に係る風力発電装置の第10の実施形態として、ナセル周辺の要部を拡大して内部構成例を示す断面図である。
【図20A】本発明に係る風力発電装置の第11の実施形態として、ナセル周辺の要部を拡大して内部構成例を示す断面図である。
【図20B】図20AのA−A断面図である。
【図21】本発明に係る風力発電装置の第1参考例として、ナセル周辺の要部を拡大して内部構成例を示す断面図である。
【図22】第1参考例の第1変形例を示す断面図である。
【図23】第1参考例の第2変形例を示す断面図である。
【図24】第1参考例の第3変形例を示す断面図である。
【図25】本発明に係る風力発電装置の第2参考例として、ナセル周辺の要部を拡大して内部構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る風力発電装置の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図2に示す風力発電装置1は、基礎6上に立設される支柱2と、支柱2の上端に設置されるナセル3と、略水平な軸線周りに回転可能にしてナセル3に設けられるロータヘッド4とを有している。
ロータヘッド4には、その回転軸線周りに放射状にして複数枚の風車回転翼5が取り付けられている。これにより、ロータヘッド4の回転軸線方向から風車回転翼5に当たった風の力が、ロータヘッド4を回転軸線周りに回転させる動力に変換されるようになっている。なお、図示の風力発電装置1は、ナセル3の前方で風車回転翼5が回転するアップウインド型と呼ばれるものである。
【0018】
<第1の実施形態>
図1は、ナセル3の前方に配置されているロータヘッド4と、ロータヘッド4の前方に配設されているドライブトレイン10について、ロータヘッドカバー(不図示)を取り外した状態の内部構成例を示す要部の拡大断面図である。なお、以下に説明する実施形態において、ドライブトレイン10は、ロータヘッド4の回転が増速機を介することなくそのまま発電機20に伝達される構成とされる。
図1において、風車回転翼5を備えたロータヘッド4は、ナセル3から前方に突出する主軸11に軸受12を介して支持されている。すなわち、ロータヘッド4は、風車回転翼5に風を受けることにより、ナセル3に固定支持された主軸11の周りを風車回転翼5と一体に回転する。
【0019】
ナセル3に固定支持された主軸11の先端部側には、発電機20を構成する円筒形状の固定子21が設けられている。また、ロータヘッド4の前端面には、同じく発電機20を構成する円筒形状の回転子22が、固定子21とのギャップを維持するため、フレキシブルカップリング13を介して取り付けられている。なお、図示の構成ではフレキシブルカップリング13を用いているが、回転子22をロータヘッド4の前端面に直接固定する構造や、リジッドカップリングを介して固定する構造が基本となる。
この回転子22は固定子21より小径とされ、回転子22が固定子21の内側に配置されている。すなわち、この場合の発電機20では、ロータヘッド4とともに回転する回転子22が固定子21の内側を略同軸に回転するので、電磁誘導の法則により発電が行われるようになっている。
【0020】
また、上述した実施形態では、回転子22を固定子21の内側に配置した構成を採用しているが、たとえば図3に示す変形例のように、固定子21を回転子22の内側に配置した構成としてもよい。すなわち、図3に示すドライブトレイン10′は増速機のない構成とされ、主軸11の先端部に回転子22より小径の固定子21が固定して取り付けられ、ロータヘッド4の前端面にフレキシブルカップリング13を介して取り付けられた回転子22が固定子21の外側を回転する。この場合の回転子22についても、フレキシブルカップリング13を用いた構造に限定されることはなく、ロータヘッド4の前端面に直接固定する構造や、リジッドカップリングを介して固定する構造が基本となる。
このように、固定子21及び回転子22の内外配置については、どちらの配置を採用しても電磁誘導の法則による発電が可能である。
【0021】
このように、風車回転翼5に風を受けて生じる回転力を発電機20へ伝達するドライブトレイン10,10′がロータヘッド4の前方に配設された構成により、ナセル3内に生じる余分なスペースを低減することができる。すなわち、ナセル3内には発電機20等のドライブトレイン構成機器類を収納設置する必要がないため、これら大型で高重量の機器類を支持するナセル台板(不図示)の荷重負担は大幅に軽減される。このため、風力発電装置1を大型化しても、ナセル3内のナセル台板側では主軸11のみを支持すればよく、従って、ナセル台板の小型軽量化が可能となる。
【0022】
また、ロータヘッド4から発電機20まで回転力を伝達するドライブトレイン10,10′をロータヘッド4の前方に配設したので、ナセル3内に生じる余分なスペース、すなわちメンテナンス等の作業スペースとして確保するスペースを低減できるようになり、ナセル3自体が必要最小限の空間を有するように小型化してスマートな形状とすることができる。
また、ドライブトレイン10,10′をロータヘッド4の前方へ取り付けると、ロータヘッドカバーを取り外した場合、ドライブトレイン10がロータヘッド4の前方へオーバーハングした状態になるので、ドライブトレイン10,10′及び発電機20等の構成機器をクレーンにより交換する作業が容易になる。
【0023】
<第2の実施形態>
続いて、本発明に係る風力発電装置について、第2の実施形態を図4に基づいて説明する。なお、上述した実施形態と同様の部分には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
本実施形態のドライブトレイン10Aは、ロータヘッド4の回転を増速して発電機20へ伝達するため、ロータヘッド4と発電機20との間に増速機30を備えている。この場合の増速機30はプラネタリ型の1段増速機であり、図中の符号31が太陽歯車、符号32が遊星歯車である。
【0024】
上述した増速機30は、主軸11の前端部側に軸受12を介して回転自在に支持された太陽歯車31と、ロータヘッド4の前端面にリジッドカップリング14を介して支持された複数個の遊星歯車32とが噛合し、さらに、遊星歯車32とケーシング33の内周面に形成されたギア部33aとが噛合するものであり、太陽歯車31の円周方向へ等ピッチに配置された遊星歯車32が、ロータヘッド4と一体に太陽歯車31の周りを自転しながら旋回する。この結果、太陽歯車31及び遊星歯車32のギア比に応じて、太陽歯車31はロータヘッド4の回転数から増速されて回転する。
なお、遊星歯車32の支持構造については、上述したリジッドカップリング14を用いる構造及び遊星歯車32を直接固定する構造も可能であるが、フレキシブルカップリングを介して固定する構造が基本となる。
【0025】
一方、発電機20は、固定子21が主軸11の先端部に固定されており、太陽歯車31と一体に連結された回転子22が固定子21の内側を略同軸に回転する。すなわち、この実施形態の発電機20は、固定子21とロータヘッド4の回転数から増速されて回転する回転子22との間に電磁誘導を生じさせて発電するようになっている。なお、図示は省略したが、増速機30の遊星段の後に、1軸のみならず多軸の出力軸を有する構成のマルチタイプ発電機を採用してもよい。このマルチタイプ発電機は、たとえば図16から図18に基づいて後述する実施形態のように、増速機が2段遊星もしくは平行歯車によって構成される多軸の出力軸を有し、各出力軸により複数の発電機を駆動するものである。
このような構成としても、上述した第1の実施形態と同様に、ナセル3内には発電機20等のドライブトレイン構成機器類を収納設置する必要がないため、これら大型で高重量の機器類を支持するナセル台板(不図示)の荷重負担は大幅に軽減される。このため、風力発電装置1を大型化しても、ナセル3内のナセル台板側では主軸11のみを支持すればよく、従って、ナセル台板の小型軽量化が可能となる。
【0026】
また、ロータヘッド4から発電機20まで回転力を伝達するドライブトレイン10Aをロータヘッド4の前方に配設したので、ナセル3内に生じる余分なスペースを低減できるようになり、ナセル3自体が必要最小限の空間を有するように小型化してスマートな形状とすることができる。
また、ドライブトレイン10Aをロータヘッド4の前方へ取り付けると、ロータヘッドカバーを取り外した場合、ドライブトレイン10がロータヘッド4の前方へオーバーハングした状態になるので、ドライブトレイン10A及び発電機20等の構成機器をクレーンにより交換する作業が容易になる。
【0027】
<第3の実施形態>
続いて、本発明に係る風力発電装置について、第3の実施形態を図5に基づいて説明する。なお、上述した実施形態と同様の部分には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
本実施形態のドライブトレイン10Bは、ロータヘッド4の回転を増速して発電機20へ伝達するため、ロータヘッド4と発電機20との間に増速機30Aを備えている。この場合の増速機30Aはスター型の1段増速機であり、図中の符号31Aが太陽歯車、符号32Aが遊星歯車である。スター型の増速機30Aにおける遊星歯車32Aは、固定側の主軸11に支持されて回転自在であり、外周側でロータヘッド4と一体に回転するケーシング33Aの内周面に形成されたギア部33aと噛合している。
【0028】
従って、ケーシング33Aがロータヘッド4と同一の回転数で回転し、ケーシング33Aのギア部33a、遊星歯車32A及び太陽歯車31Aのギア比に応じて太陽歯車31Aが増速される。この場合の回転子22は太陽歯車31Aと同軸であるから、この実施形態の発電機20も、固定子21とロータヘッド4の回転数から増速されて回転する回転子22との間に電磁誘導を生じさせて発電するようになっている。なお、この実施形態においても、発電機20に代えて、マルチタイプ発電機を採用してもよい。
このような構成としても、上述した実施形態と同様に、ナセル3内には発電機20等のドライブトレイン構成機器類を収納設置する必要がないため、これら大型で高重量の機器類を支持するナセル台板(不図示)の荷重負担は大幅に軽減される。
【0029】
<第4の実施形態>
続いて、本発明に係る風力発電装置について、第4の実施形態を図6に基づいて説明する。なお、上述した実施形態と同様の部分には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
本実施形態のドライブトレイン10Cは、増速機能を有していないタイプであり、発電機20の構成が異なっている。すなわち、この場合の発電機20は、固定子21の外側を回転子22が回転して発電するように構成されている。
【0030】
固定子21は、ナセル3の前端面にフレキシブルカップリング13を介して固定支持されている主軸11の先端部に、さらにフレキシブルカップリング13を介して取り付けられている。図示の例ではフレキシブルカップリング13を2段としたが、1段や3段以上の多段としてもよく、さらにはクイルシャフトも包含する。なお、フレキシブルカップリング13としては、ギヤカップリング、ダイヤフラム、多盤式、マイクロブッシュ等を含むものとする。
【0031】
ロータヘッド4は、ナセル3の前端面及び固定子21の後端面に設けた支持部に、軸受12Aを介して回転自在に支持されている。ここで使用する軸受12Aは、径方向及び軸方向の荷重に対応するとともに、たとえば複列テーパコロ軸受や3ローラ軸受等のようにモーメントの支持が可能である。そして、ロータヘッド4の前端面には、一体に回転する回転子22が取り付けられている。すなわち、この場合の発電機20では、ロータヘッド4とともに回転する回転子22が固定子21の外側を略同軸に回転するので、電磁誘導の法則により発電が行われるようになっている。
このような構成としても、上述した実施形態と同様に、ナセル3内には発電機20等のドライブトレイン構成機器類を収納設置する必要がないため、これら大型で高重量の機器類を支持するナセル台板(不図示)の荷重負担は大幅に軽減される。
なお、ナセル3とロータヘッド4との支持関係については、ロータヘッド4が軸受12Aの外周側を回転する外輪回転型に限定されることはなく、ロータヘッド4が軸受12Aの内周側を回転する内輪回転型(後述する図13参照)を採用してもよい。
【0032】
<第5の実施形態>
続いて、本発明に係る風力発電装置について、第5の実施形態を図7に基づいて説明する。なお、上述した実施形態と同様の部分には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
本実施形態のドライブトレイン10Dは、第4の実施形態と同様に増速機能を有していないタイプであり、発電機20の構成が異なっている。すなわち、この場合の発電機20は、固定子21の内側を回転子22が回転して発電するように構成されている。
【0033】
この場合の回転子22は、ロータヘッド4の前端面にリジッドカップリング14を介して取り付けられている。さらに、回転子22と固定子21との間に軸受12Aを設けてあるので、ロータヘッド4と一体に回転する回転子22は、主軸11の先端部に固定支持されている固定子21に対して回転可能となる。なお、回転子22の取り付けは、上述したリジッドカップリング14を用いる構造に限定されることはなく、ロータヘッド4の前端面に直接固定された構造としてもよい。
【0034】
すなわち、この場合の発電機20では、ロータヘッド4とともに回転する回転子22が固定子21の内側を略同軸に回転するので、電磁誘導の法則により発電が行われるようになっている。
なお、ナセル3とロータヘッド4との支持関係については、ロータヘッド4が軸受12Aの外周側を回転する外輪回転型に限定されることはなく、ロータヘッド4が軸受12Aの内周側を回転する内輪回転型(後述する図13参照)を採用してもよい。
【0035】
また、図8に示す構成のドライブトレイン10D′は、図7の第1変形例である。この第1変形例は、発電機20の回転子22を支持する構造が異なっている。
すなわち、この変形例の発電機20は、2段のフレキシブルカップリング13を備えている主軸11の先端に固定子21が取り付けられ、回転子22はロータヘッド4と一体に固定子21の内側を回転して発電する。
【0036】
この場合の回転子22は、主軸11に一対の軸受12を介して回転可能に支持されている。そして、回転子22の回転を支持する主軸11の先端部側と、主軸11の他端側を支持するナセル3との間には、2段のフレキシブルカップリング13が設けられている。このため、風力発電装置1の回転系と構造系との間がフレキシブルカップリング13により縁切りされ、回転系から構造系への入力伝達を抑制するとともに、固定子21と回転子22との間のギャップを所定の範囲内に維持することができる。
【0037】
また、図9に示す構成のドライブトレイン10D″は、図7の第2変形例である。この第2変形例は、主軸11が一対の軸受12を介してロータヘッド4の回転を支持している。この場合の主軸11は、ロータヘッド4の回転を支持するナセル3側の部分と、回転子22の回転を支持する先端部側の部分との間に、回転系と構造系との間を縁切りする1段のフレキシブルカップリング13を備えている。
【0038】
このような第2変形例の構成としても、風力発電装置1の回転系と構造系との間はフレキシブルカップリング13により縁切りされ、回転系から構造系への入力伝達を抑制するとともに、固定子21と回転子22との間のギャップを所定の範囲内に維持することができる。
【0039】
ところで、図示の第2変形例ではフレキシブルカップリング13を1段としたが、上述した第1変形例のように、ナセル3側の端部にフレキシブルカップリングを追加して2段としてもよい。
なお、上述した変形例においては、回転子12を支持する一対の軸受12に代えて、たとえば複列テーパコロ軸受を用いてモーメントを除去する構成としてもよい。
【0040】
<第6の実施形態>
続いて、本発明に係る風力発電装置について、第6の実施形態を図10に基づいて説明する。なお、上述した実施形態と同様の部分には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
本実施形態のドライブトレイン10Eは、プラネタリ型1段の増速機30を採用したものである。また、このドライブトレイン10Eは、2段のフレキシブルカップリング13を備えている主軸11の先端に固定子21が取り付けられ、回転子22は太陽歯車31と一体に回転する。この太陽歯車31は、ロータヘッド4と一体に自転しながら太陽歯車31の周りを旋回する遊星歯車32により、ロータヘッド4の回転数から増速されて回転する。
【0041】
すなわち、この場合の発電機20では、太陽歯車31とともに回転する回転子22が固定子21の内側を略同軸に回転するので、電磁誘導の法則により発電が行われるようになっている。なお、この実施形態においても、発電機20に代えて、たとえば図18に基づいて後述する2段増速のようなマルチタイプ発電機を採用してもよい。
【0042】
また、図11に示す変形例のように、ロータヘッド4の回転支持構造として、軸受12を介して主軸11に支持されるとともに、フレキシブルカップリング13を1段としたドライブトレイン10E′を採用してもよい。この変形例において、発電機20は上述した本実施形態と同様の構成となるから、マルチタイプ発電機の採用も可能である。
なお、ナセル3とロータヘッド4との支持関係については、ロータヘッド4が軸受12Aの外周側を回転する外輪回転型に限定されることはなく、ロータヘッド4が軸受12Aの内周側を回転する内輪回転型(後述する図13参照)を採用してもよい。
【0043】
<第7の実施形態>
続いて、本発明に係る風力発電装置について、第7の実施形態を図12に基づいて説明する。なお、上述した実施形態と同様の部分には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
本実施形態のドライブトレイン10Fは、スター型1段の増速機30Aを採用したものである。また、このドライブトレイン10Fは、2段のフレキシブルカップリング13を備えている主軸11の先端に遊星歯車32Aを支持し、さらに、先端部側には固定子21が取り付けられている。一方、回転子22は、固定子21の後端面に回転可能に支持された太陽歯車31Aと同軸に連結されている。
【0044】
そして、ケーシング33がロータヘッド4と一体に回転することにより、ケーシング33のギア部33a、遊星歯車32A及び太陽歯車31Aが噛合しているので、ギア比に応じてロータヘッド4の回転数から増速されて回転子22も回転する。すなわち、この場合の発電機20では、太陽歯車31Aとともに回転する回転子22が固定子21の内側を略同軸に回転するので、電磁誘導の法則により発電が行われるようになっている。なお、この実施形態においても、発電機20に代えて、たとえば図19に基づいて後述するような2段増速のマルチタイプ発電機を採用することが可能である。
【0045】
また、図13に示す構成は、図12の第1変形例である。すなわち、ナセル3とロータヘッド4との支持関係が異なっており、図12はロータヘッド4が軸受12Aの外周側を回転する外輪回転型、図13はロータヘッド4が軸受12Aの内周側を回転する内輪回転型である。なお、この第1変形例においても、発電機20に代えてマルチタイプ発電機の採用が可能である。
また、図14に示す構成は、図12の第2変形例である。すなわち、ロータヘッド4の回転支持構造として、軸受12を介して主軸11に支持されるとともに、フレキシブルカップリング13を1段としたドライブトレイン10F″を採用してもよい。なお、この第2変形例においても、発電機20に代えてマルチタイプ発電機の採用が可能である。
【0046】
<第8の実施形態>
続いて、本発明に係る風力発電装置について、第8の実施形態を図15に基づいて説明する。なお、上述した実施形態と同様の部分には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
本実施形態のドライブトレイン10Gは、ロータヘッド4の回転を増速して発電機20へ伝達するため、ロータヘッド4と発電機20との間に増速機30Bを備えている。この増速機30Bは平行型2段増速機であり、図中の符号31Aは従動歯車、32A,32Bは従動歯車、33aはケーシング33Aの内周面に形成されたギア部である。
【0047】
この増速機30Bは、ロータ4の前端面に直接固定されているケーシング33Aが一体に回転することにより、ギア部33aと噛合する遊星歯車32Aを回転させる。この遊星歯車32Aは、主軸11の先端部側にフレキシブルカップリング13を介して固定支持されているケーシング部材33Bにより、軸受12を介して回転可能に支持されている。
さらに、上述した従動歯車32Aは、大径の従動歯車32Bと同軸に連結されている。この遊星歯車32Bは、回転子22と同軸にした従動歯車31Aと噛合している。このため、ロータ4の回転は、ギア部33a、遊星歯車32A,32B及び太陽歯車31Aのギア比に応じて増速された回転数で回転子22を回転させる。すなわち、この場合の発電機20は、太陽歯車31Aとともに回転する回転子22が固定子21の内側を略同軸に回転するので、電磁誘導の法則により発電が行われるようになっている。なお、この実施形態においても、発電機20に代えてマルチタイプ発電機の採用が可能である。
【0048】
また、図16に示す構成は図15の第1変形例、図17に示す構成は図15の第2変形例である。すなわち、ナセル3とロータヘッド4との支持関係が異なっており、図16はロータヘッド4が軸受12Aの外周側を回転する外輪回転型、図17はロータヘッド4が軸受12Aの内周側を回転する内輪回転型であり、他の構成については図15の実施形態と同じである。なお、これらの第1変形例及び第2変形例においても、発電機20に代えてマルチタイプ発電機の採用が可能である。
【0049】
<第9の実施形態>
続いて、本発明に係る風力発電装置について、第9の実施形態を図18に基づいて説明する。なお、上述した実施形態と同様の部分には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
本実施形態のドライブトレイン10Hは、図10に示した第6の実施形態の増速機30を2段増速にした増速機30Cを採用するとともに、2段増速後の出力軸を複数にして小型の発電機を駆動するマルチタイプ発電機40を採用したものである。このマルチタイプ発電機40は、小型で出力の小さい子発電機41を複数個組み合わせた構成とされる。図示の子発電機41は、上述した発電機20と同様に、固定子22の内側で回転子21が回転して発電するものである。
【0050】
また、この場合の増速機30Cは、図10に示したプラネタリ型1段の増速機30に平歯車を組み合わせた2段増速機である。この増速機30Cは、太陽歯車31の出力軸に平行歯車を組み合わせて2段増速としたものであり、外歯の第1歯車35が太陽歯車31と一体に回転し、第1歯車35の外周に配設されて噛合する外歯の第2歯車36を増速して回転させるものである。すなわち、第1歯車35より歯数の少ない第2歯車36を周方向へ等ピッチに分配して複数設置し、各第2歯車36の出力軸に子発電機41の回転子21を取り付けた構成とされる。なお、図示の例では第2歯車36が等ピッチに分配されているが、等ピッチに限定されるものではない。
【0051】
このような構成とすれば、ロータヘッド4の回転が増速機30Cにより2段増速され、各子発電機41の回転子21を固定子22の内側で回転させるので、各子発電機41において電磁誘導の法則による発電が行われ、各子発電機41の発電量を合計した値がマルチタイプ発電機40の総発電量となる。従って、各子発電機41の小型・軽量化が可能となるので、高所作業となるメンテナンス作業や故障等のトラブル発生時における修理・交換作業が容易になる。また、複数ある子発電機41のトラブルが全てに同時発生する確率は低いので、トラブルが発生した子発電機41のみを発電停止することにより、総発電量は低下するものの、風力発電装置全体が運転停止になることを防止できる。
【0052】
<第10の実施形態>
続いて、本発明に係る風力発電装置について、第10の実施形態を図19に基づいて説明する。なお、上述した実施形態と同様の部分には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
本実施形態のドライブトレイン10Iは、図12に示した第7の実施形態の増速機30Aを2段増速にした増速機30Dを採用するとともに、2段増速後の出力軸を複数にして小型の発電機を駆動するマルチタイプ発電機40を採用したものである。このマルチタイプ発電機40は、小型の子発電機41を複数個組み合わせた構成とされる。図示の子発電機41は、上述した発電機20と同様に、固定子22の内側で回転子21が回転して発電するものである。
【0053】
また、この場合の増速機30Dは、図12に示したスター型1段の増速機30Aに平歯車を組み合わせた2段増速機である。この増速機30Dは、太陽歯車31Aの出力軸に平行歯車を組み合わせて2段増速としたものであり、外歯の第1歯車35が太陽歯車31Aと一体に回転し、第1歯車35の外周に配設されて噛合する外歯の第2歯車36を増速して回転させるものである。すなわち、第1歯車35より歯数の少ない第2歯車36を周方向へ等ピッチに分配して複数設置し、各第2歯車36の出力軸に子発電機41の回転子21を取り付けた構成とされる。
【0054】
このような構成としても、ロータヘッド4の回転が増速機30Dにより2段増速され、各子発電機41の回転子21を固定子22の内側で回転させるので、各子発電機41において電磁誘導の法則による発電が行われ、各子発電機41の発電量を合計した値がマルチタイプ発電機40の総発電量となる。従って、各子発電機41の小型・軽量化が可能となるので、高所作業となるメンテナンス作業や故障等のトラブル発生時における修理・交換作業が容易になる。また、複数ある子発電機41のトラブルが全てに同時発生する確率は低いので、トラブルが発生した子発電機41のみを発電停止することにより、総発電量は低下するものの、風力発電装置全体が運転停止になることを防止できる。
【0055】
<第11の実施形態>
続いて、本発明に係る風力発電装置について、第11の実施形態を図20A及び図20Bに基づいて説明する。なお、上述した実施形態と同様の部分には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
本実施形態のドライブトレイン10Jは、2段の平行歯車を組み合わせて構成された増速機30Eを採用し、2段増速後の出力軸を複数にして小型の発電機を駆動するマルチタイプ発電機40を採用したものである。このマルチタイプ発電機40は、小型の子発電機41を複数個組み合わせた構成とされる。図示の子発電機41は、上述した発電機20と同様に、固定子22の内側で回転子21が回転して発電するものである。
【0056】
この場合の増速機30Eは、ロータヘッド4と一体に回転する外歯の主動歯車37と、主動歯車37の外周に等ピッチに配設されて噛合する複数の第1従動歯車38と、により第1段増速機構が構成されている。さらに、第1段増速機構の第1従動歯車38には、それぞれに同軸の第2従動歯車39Aが設けられ、各第2従動歯車39Aとそれぞれ噛合する第3従動歯車39Bを設けることにより、第2段増速機構が構成されている。従って、増速機30Eは、シャフト4の回転を2段階に増速した回転数が第3従動歯車39Bの回転軸から出力され、各第3従動歯車39Bと同軸に取り付けられた回転子21を固定子22の内側で回転させることにより、子発電機41による発電が可能となる。
なお、図示の例では第1従動歯車38が等ピッチに配設されているが、等ピッチに限定されることはない。
【0057】
このような構成とすれば、ロータヘッド4の回転が増速機30Eにより2段増速され、各子発電機41の回転子21を固定子22の内側で回転させるので、各子発電機41において電磁誘導の法則による発電が行われ、各子発電機41の発電量を合計した値がマルチタイプ発電機40の総発電量となる。従って、各子発電機41の小型・軽量化が可能となり、高所作業となるメンテナンス作業や故障等のトラブル発生時における修理・交換作業が容易になる。また、複数ある子発電機41のトラブルが全てに同時発生する確率は低いので、トラブルが発生した子発電機41のみを発電停止することにより、総発電量は低下するものの、風力発電装置全体が運転停止になることを防止できる。
【0058】
ところで、上述した第3従動歯車39Bは、図20Aに示すように、第2従動歯車39Aの内側、すなわち主軸11側に配置されている。しかし、この位置に第3従動歯車39Bを配置すると、全体の外径寸法が子発電機41により規定されることはないため、コンパクト化に適した配置構成となる。しかし、同軸となる子発電機41の形状等によっては、子発電機41どうしが互いに干渉して設置できないことも考えられる。
【0059】
そこで、図20Bに示すように、第3従動歯車39Bと第2従動歯車39Aとの位置関係においては、配置(噛合)する方向に下記のような変形例が可能である。
第1変形例の配置例では、図20Bに2点鎖線で示すように、増速機30Eの最も外周側に第3従動歯車39B′を配設して第2従動歯車39Aと噛合させればよい。このような配置を採用すると、子発電機41どうしの干渉は防止できるものの、ドライブトレイン10I及び増速機30Eの外径寸法が子発電機41の外周位置により決まるため、装置全体の外径寸法大型化が懸念される。
【0060】
第2変形例の配置例では、図20Bに1点鎖線で示すように、上述した第3従動歯車39B,39B′の中間的な位置、すなわち、第2従動歯車39Aの周方向へ90度程度移動させた位置に第3従動歯車39B″を配設して第2従動歯車39Aと噛合させてもよい。このような配置を採用すると、コンパクト化と子発電機41どうしの干渉防止とを両立した配置構成となる。
このように、第3従動歯車39B,39B′,39B″の位置については、両変形例の中間的な位置も含め、諸条件に応じた最適位置を適宜選択すればよい。
【0061】
<第1参考例>
以下では、本発明に係る風力発電装置について、第1参考例を図21に基づいて説明する。なお、上述した実施形態と同様の部分には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
第1参考例のドライブトレイン10Kは、ロータヘッド4の回転を増速して発電機20へ伝達するため、増速機30A及び発電機20を備えている。この場合の増速機30Aはスター型の1段増速機であり、図中の符号31Aが太陽歯車、符号32Aが遊星歯車である。スター型増速機30Aにおける遊星歯車32Aは、固定側の主軸11に支持されて回転自在であり、外周側でロータヘッド4と一体に回転するケーシング33Aの内周面に形成されたギア部33aと噛合している。
【0062】
このドライブトレイン10Kは、発電機20が増速機30Aよりナセル3側に配置された構成とされる。すなわち、上述した各実施形態のドライブトレインとは軸方向の配置順序が逆となり、ナセル3側に発電機20が配置されるとともに、先端部側に増速機30Aが配置されている。そして、図示の構成例では、発電機20の少なくとも一部がロータヘッド4の内部に位置しており、この結果、ドライブトレイン10Kの重心位置がナセル3側(主軸受となる軸受12A側)に近づけられている。
【0063】
また、図22に示す第1変形例のドライブトレイン10K′では、発電機20が増速機30Aよりナセル3側に配置されることに加えて、発電機20と増速機30Aの一部とがロータヘッド4の内部に配設されている。すなわち、第1変形例の構成は、図21に示した実施形態のドライブトレイン10Kをできるだけナセル3側へ移動させ、発電機20の全体及び増速機30Aの大部分をロータヘッド4の内部に配置することにより、ドライブトレイン10K′の重心位置をより一層ナセル3側に近づけたものである。
【0064】
従って、上述したドライブトレイン10K,10K′は、ケーシング33Aがロータヘッド4と同一の回転数で回転し、ケーシング33Aのギア部33a、遊星歯車32A及び太陽歯車31Aのギア比に応じて太陽歯車31Aが増速される。この場合の回転子22は太陽歯車31Aと同軸であるから、この実施形態の発電機20も、固定子21とロータヘッド4の回転数から増速されて回転する回転子22との間に電磁誘導を生じさせて発電するようになっている。
このように構成されたドライブトレイン10K,10K′は、発電機20が増速機30Aよりナセル3側に配置され、少なくとも一部がロータヘッド4の内部に配置されているので、ドライブトレイン自体の重心位置をナセル3側に近づけることができる。
【0065】
このため、軸受12Aに作用するモーメントが低減され、支持構造を軽量化することができる。すなわち、軸受12Aを支持するナセル3の負荷が軽減され、その分だけナセル3の構造を簡略化して軽量化することができる。
また、ドライブトレイン10K,10K′についても、主軸11が短くなるなどして軽量でコンパクトな構造とすることができる。
【0066】
また、ドライブトレイン10K,10K′のメンテナンスや機器交換を行う場合には、ロータヘッドカバーを取り外すと、増速機30Aが端部側に存在している。増速機30Aは、発電機20と比較してメンテナンスの頻度や機器交換の可能性が高いので、発電機20側をそのままにして作業を実施できる配置はメンテナンス等の作業性向上にも有効である。
【0067】
また、上述したドライブトレイン10K,10K′のように、発電機20を増速機30Aよりナセル3側に配置する構成は、たとえば図23に示す第2変形例の増速機10Lや図24に示す第3変形例の増速機10Mを採用するなど、増速機や発電機の組合せが限定されることはない。なお、図23及び図24において、上述した実施形態と同様の部分には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0068】
図23に示す第2変形例では、スター+プラネタリ型2段の増速機30Fを備えたドライブトレイン10Lが採用されている。この場合、発電機20及び増速機30Fの約半分がロータヘッド4内に配置されているので、重心位置がナセル3側に近づいて軽量化やコンパクト化が可能となる。また、このドライブトレイン10Lでは、先増速機30Fが端部側に位置しているので、メンテナンス等の作業性も良好である。
【0069】
さらに、図24に示す第3変形例では、2段の平行歯車を組み合わせて構成された増速機30G備えたドライブトレイン10Mが採用されている。この場合も、発電機20及び増速機30Gの約半分がロータヘッド4内に配置されているので、重心位置がナセル3側に近づいて軽量化やコンパクト化が可能となる。また、このドライブトレイン10Mでは、増速機30Gが先端部側に位置しているので、メンテナンス等の作業性も良好である。
【0070】
<第2参考例>
次に、本発明に係る風力発電装置について、第2参考例を図25に基づいて説明する。なお、上述した実施形態及び参考例と同様の部分には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
本参考例のドライブトレイン10Nは、ロータヘッド4の回転を増速して発電機20へ伝達するため、増速機30F及び発電機20を備えている。この場合の増速機30Fは、上述した第1参考例における第2変形例(図23参照)と同様に構成されたスター+プラネタリ型2段の増速機であり、増速機30Fの約半分がロータヘッド4内に配置されている。しかし、発電機20については、全体が支持架台14に剛支持または防振ゴム等により柔支持されてナセル3の内部に配置されている。
【0071】
このドライブトレイン10Nでは、増速機30Fの出力軸と、ナセル3内に設置された発電機20の回転子22との間が、両端にフレキシブルカップリング13を介在させた主軸11により連結されている。なお、図中の符号13′はナセル3と増速機30Fとの間に介在させたトルクアームブッシュであるが、トルクアームブッシュ13′に代えて上述したフレキシブルカップリング13を使用してもよい。
【0072】
このような構成とすれば、発電機20の全体がナセル3内に配置されるとともに、増速機30Fの約半分がロータヘッド4内に配置されているので、ドライブトレイン10Nの重心位置がより一層ナセル3側に近づいて軽量化やコンパクト化は容易になる。また、このドライブトレイン10Nにおいても、先増速機30Fが端部側に位置しているので、メンテナンス等の作業性も良好である。
【0073】
上述した本発明によれば、ロータヘッド4から発電機20または子発電機41まで回転力を伝達するドライブトレイン10,10A〜Nをロータヘッド4のナセル反対側、すなわち、上述したアップウインド型ではナセル3の前方に配設したので、メンテナンス用等の目的でナセル3内に確保しておかなければならない通常運転時に不要なスペースを低減することができる。従って、ナセル3の小型化が可能となる。さらに、風力発電装置1を大型化しても、ナセル台板の小型軽量化が可能となる。
【0074】
また、ドライブトレイン10,10A〜Nをロータヘッド4の前方に取り付けることにより、ロータヘッドカバーを取り外すとドライブトレイン4が前方へオーバーハングした状態になる。従って、高所にあるドライブトレイン及びその構成機器をクレーンにより交換する作業が容易になる。
特に、メンテナンス機会の多い増速機を先端部側に配置したドライブトレイン10K,10K′,10L,10M,10Nの構成では、ロータヘッドカバーを取り外すと発電機をそのままにして、すなわち、発電機を設置したままの状態で増速機に関するメンテナンス等の作業を実施できるため、良好な作業性を得ることができる。
【0075】
また、上述した各実施形態において、たとえば可動側と固定側との間で必要になる電源や制御信号等の伝達構造を考慮した場合、フレキシブルカップリング13を用いた構成(たとえば、図8,図10,図18及び図19等を参照)は、スリップリングの配置が容易になるといった利点を有している。
また、小型・軽量化の面では、マルチタイプ発電機40を採用した構成が有利であり、一般的には、図18や図19に示すように、2段増速の増速機とマルチタイプ発電機40とを組み合わせた構成が特に有利である。
【0076】
また、径の大きい歯車については、内歯より外歯の方が安価に製造できる。
さらに、主軸11等の荷重伝達経路に関する効率化を考慮すると、たとえば図18及び図19に示すように、負荷が小さいため径を細くして軽量化できる構成が望ましい。
従って、図18に示した第9の実施形態や、図19に示した第10の実施形態の構成は、上述したフレキシブルカップリング13、マルチタイプ発電機40及び外歯の歯車を用いた構成に加えて、荷重伝達経路の効率化に有利な構成となっていることから、小型軽量化の達成に有利な条件を略全て備えた構成となる。
【0077】
ところで、上述した実施形態においては、風力発電装置がアップウインド型の場合について説明したが、ダウンウインド型にも適用可能である。
ダウンウインド型の場合、ドライブトレインがナセル3の後方に配設されることとなり、上述したアップウインド型と同様の作用効果を得ることができる。
また、増速機がナセル側に配置される場合、ドライブトレインを構成する増速機及び発電機については、その構成要素の一部がロータヘッド及び/またはナセルの内部に配置されてもよい。
【0078】
すなわち、本発明では、ドライブトレインを構成する増速機及び/または発電機について、ロータヘッド外に発電機を備え、この発電機がロータヘッドのナセルの反対側に配置され構成とすることができる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、たとえば増速機の構成や発電機の構成等に関する組合せの変更、あるいは、軸受及びカップリングに関する組合せの変更など、その要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 風力発電装置
2 支柱
3 ナセル
4 ロータヘッド
5 風車回転翼
10,10A〜10N ドライブトレイン
11 主軸
20 発電機
30A〜30G 増速機
40 マルチタイプ発電機
41 子発電機


【特許請求の範囲】
【請求項1】
風車回転翼が取り付けられて一体に回転するロータヘッドと、
軸受を介して前記ロータヘッドを支持するナセルと、
前記ロータヘッドを貫通し、一端が前記ナセルに固定支持される主軸と、
前記ロータヘッド外に、前記ロータヘッドの前記ナセルの反対側に配置される発電機とを備える風力発電装置。
【請求項2】
前記発電機は、回転子と固定子を有し、
前記回転子は、増速機を介して前記ロータヘッドの回転動力を受けることを特徴とする請求項1に記載の風力発電装置。
【請求項3】
前記増速機は、前記ロータヘッドと前記発電機との間に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の風力発電装置。
【請求項4】
前記発電機は、回転子と固定子とを有し、前記固定子及び前記回転子のうちの少なくとも一方は、カップリングを介して支持されていることを特徴とする請求項1に記載の風力発電装置。
【請求項5】
前記発電機は、複数有することを特徴とする請求項1に記載の風力発電装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20A】
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【図20B】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2012−225350(P2012−225350A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−181751(P2012−181751)
【出願日】平成24年8月20日(2012.8.20)
【分割の表示】特願2009−519741(P2009−519741)の分割
【原出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】