説明

飛灰処理用薬液貯留槽

【課題】貯留槽本体内の薬液の液位を反映して示す水位計を設け、電極式液面計により水位計の予め定められた水位を検知することで、飛灰処理用薬液が高粘性の薬液の場合でも、薬液貯留槽本体内の薬液が予め定められた液位に達したことを誤検知なく検知できるようにした飛灰処理用薬液貯留槽を提供すること。
【解決手段】飛灰処理用薬液を収容する貯留槽本体110と、貯留槽本体110の外側側面に鉛直方向に延びる姿勢で設けられ該貯留槽本体の液位を反映して示す水位計120と、水位計120に取り付けられた電極式液面計130とを備えていることを特徴とする飛灰処理用薬液貯留槽100である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混練機により飛灰と飛灰処理用の薬液(液状薬剤)とを混練して、飛灰中の重金属類の溶出防止がなされた飛灰処理物を生成するために前記混練機に供給する飛灰処理用薬液を貯留するための飛灰処理用薬液貯留槽に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ごみ焼却施設でごみの焼却に伴って発生する排ガス中には飛灰が含まれている。この排ガス中から分離された飛灰は、最終的には埋め立て処理される。しかし飛灰が重金属類(鉛、カドミウム、水銀、六価クロム、砒素、及びセレンなど)を含有する場合には、飛灰を埋め立てた後に雨水などで重金属類が溶出するおそれがあるため、これらの重金属が溶出しないように、飛灰処理用薬液によって飛灰を前もって処理して、飛灰中の重金属類の溶出防止がなされた飛灰処理物とする必要がある。
【0003】
そのため、ごみ焼却施設には、混練機により飛灰と飛灰処理用薬液とを混練して、飛灰中の重金属類の溶出防止がなされた飛灰処理物を生成するために前記混練機に供給する飛灰処理用薬液を貯留するための飛灰処理用薬液貯留槽が備えられている。図4は従来の飛灰処理用薬液貯留槽を示す概略構成図である。
【0004】
図4に示すように、飛灰処理用薬液貯留槽200は、飛灰処理用薬液(以下、単に薬液ともいう)を収容する例えばステンレス鋼製で中空断面円形の貯留槽本体210と、貯留槽本体210内に鉛直方向に延びる電極棒が挿入された状態で貯留槽本体210に装着され、貯留槽本体210内の薬液の上限液位(上限液面レベル)Lと下限液位(下限液面レベル)Lを検知する電極式液面計230と、貯留槽本体210の外側側面に設けられ、貯留槽本体210内の薬液の液位を示す液位計220とを備えて構成されている。貯留槽本体210内の薬液は、ポンプによって混練機に供給されるようになっている。また、貯留槽本体210内の薬液が下限液位Lを下回ると、例えばローリー車から薬液が補給されるようになっている。
【0005】
詳しくは、前記液位計220は、貯留槽本体210内の薬液の液位が目視にて確認できるようにしたものであり、透明又は半透明の材料(例えばガラス、合成樹脂)からなり中空断面円形で鉛直方向に延びる液位管221と、液位管221の下部を貯留槽本体210の下部に連通しその途中に下部開閉弁222aを有する下部連通管222と、液位管221の上部を貯留槽本体210の上部に連通しその途中に上部開閉弁223aを有する上部連通管223とにより構成されており、開閉弁222a,223aは通常、開かれており、液位管221内の液位は貯留槽本体210内の液位と一致するようになっている。
【0006】
また、前記電極式液面計230は、貯留槽本体210の上面に取り付けられた電極棒ホルダー231に複数、例えば3本の長さの異なる電極棒232a,232b,232cを取り付け、液面の上昇又は下降により長さの異なる電極棒の下端が液面に接し、又は離れることを利用して、液面に接した各電極棒の間の液絡による電気的導通によって予め定められた液位(液面位置)を検知するようにしたものである。
【0007】
すなわち、下限液位Lに達したことを検知するために電極棒232aはその先端が貯留槽本体210下部に位置し、上限液位Lに達したことを検知するために電極棒232bはその先端が貯留槽本体210上部に位置し、電極棒232cは液絡による電路を形成するために先端が電極棒232aよりもさらに貯留槽本体210下部に位置している。そして、混練機に供給されることで貯留槽本体210内の薬液が減少し、薬液の液面が下限液位Lにまで下降すると、電極棒232aと電極棒232c間がそれまでの導通状態から非導通状態となることで、薬液がその下限液位Lに達したことを検知できる。また、ローリー車から薬液が補給されることで、薬液の液面が上限液位Lにまで上昇すると、電極棒232bと電極棒232c間がそれまでの非導通状態から導通状態となることで、薬液がその上限液位Lに達したことを検知できるようになっている。なお、電極式液面計230による液面上下限警報は、ごみ焼却施設の中央制御室に表示されるようになっている。
【0008】
ところが、貯留槽本体210に貯留される薬液がその粘度が100mPa・s以上のような高粘性薬液の場合、電極式液面計230による誤検知が発生する。
【0009】
例えば下限液位Lを検知するに際し、図5の(a)に示すように、電極棒232aの先端から液面まで薬液が垂下し、あるいは、同図(b)に示すように、電極棒232a先端から延びた薬液と電極棒232cとが橋絡し、液面が下限液位Lよりも下降しているにもかかわらず、電極棒232aと電極棒232c間が非導通状態とならず、液面下限警報が出力されないことになってしまう。そのため、液面計として電極式液面計を導入することができないため、液面の遠隔監視ができない。そこで、高粘性薬液の場合でも電極式液面計が使用できる低コストの飛灰処理用薬液貯留槽が求められている。
【0010】
【特許文献1】特開2003−94005号公報(図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、貯留槽本体内の薬液の液位を反映して示す水位計を設け、電極式液面計により水位計の予め定められた水位を検知することで、飛灰処理用薬液が高粘性の薬液の場合でも、薬液貯留槽本体内の薬液が予め定められた液位に達したことを誤検知なく確実に検知することができるようにした、飛灰処理用薬液貯留槽を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の課題を解決するため、本願発明では、次の技術的手段を講じている。
【0013】
請求項1の発明は、混練機により飛灰と飛灰処理用薬液とを混練して、飛灰中の重金属類の溶出防止がなされた飛灰処理物を生成するために前記混練機に供給する飛灰処理用薬液を貯留するための飛灰処理用薬液貯留槽であって、飛灰処理用薬液を収容する貯留槽本体を備え、飛灰処理用薬液を収容する貯留槽本体と、前記貯留槽本体の外側側面に鉛直方向に延びる姿勢で設けられ該貯留槽本体内の液位を反映して示す水位計と、前記水位計に取り付けられた電極式液面計とを備えていることを特徴とする飛灰処理用薬液貯留槽である。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1記載の飛灰処理用薬液貯留槽において、前記飛灰処理用薬液が粘度100mPa・s以上の高粘性の薬液であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の飛灰処理用薬液貯留槽は、貯留槽本体内の薬液の液位を反映して示す水位計を設け、電極式液面計により前記水位計の予め定められた水位を検知するようにしたものであるから、飛灰処理用薬液が高粘性の薬液の場合でも、電極式液面計の電極棒と該高粘性薬液とが接触することがなくて、貯留槽本体内の薬液が予め定められた液位に達したことを誤検知なく確実に検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。図1は本発明の一実施形態による飛灰処理用薬液貯留槽を示す概略構成図である。
【0017】
図1に示すように、飛灰処理用薬液貯留槽100は、薬液を収容する例えばステンレス鋼製で中空断面円形の貯留槽本体110と、貯留槽本体110の外側側面に取り付けられた水位計120と、水位計120の水位管121に取り付けられた電極式液面計130とにより構成されている。貯留槽本体110内に収容された薬液は、ポンプによって混練機に供給されるようになっている
【0018】
前記水位計120は、貯留槽本体110の外側側面に設けられ、透明又は半透明の材料(例えばガラス、合成樹脂)からなり中空断面円形で鉛直方向に延びる水位管121と、この水位管121の下部を貯留槽本体110の下部に連通しその途中に下部開閉弁122aを有する下部連通管122と、水位管121の上部を貯留槽本体110の上部に連通しその途中に上部開閉弁123aを有する上部連通管123とにより構成されている。
【0019】
水位管121の上面の着脱可能な蓋体には、電極式液面計130の電極棒ホルダー131が取り付けられ、この電極棒ホルダー131に、この実施形態では、貯留槽本体110内の薬液Lが下限液位Lに達したことを検知するために先端が水位管121下部に位置する電極棒132aと、先端が電極棒132aよりもさらに水位管121下部に位置する電極棒132cとが取り付けられている。なお、電極棒132a,132cは、図示しない信号処理回路部に接続されている。水位管121は、既設の液位管に代えて、が挿入可能なように内径をより大きくするなどしたものである。
【0020】
次に、この飛灰処理用薬液貯留槽100における水位計120の動作について説明する。図2は図1における貯留槽本体内に薬液を上限液位まで供給するときのことを説明するための図である。
【0021】
貯留槽本体110内には、薬液として、粘度が100mPa・s以上の高粘性で、比重が水より大きい薬液Lが収容されるようになっている。まず、貯留槽本体110内に薬液を上限液位まで供給する場合、水位計120の下部連通管122の下部開閉弁122aが閉じられた状態で貯留槽本体110内に薬液Lがその上限液位Lまで供給される。次いで、水位管121の蓋体が電極式液面計130とともに取り外され、水位管121内に所定量の水Wが注水されてから、水位管121に前記蓋体が電極式液面計130とともに取り付けられる。この後、下部開閉弁122aが開かれる。上部開閉弁123aも開かれている。
【0022】
その結果、図2に示すように、貯留槽本体110における薬液LのAB面よりの高さをhとし、水位管121における水WのAB面よりの高さをhとすると、水位管121における水Wの高さhは、h=(ρ/ρ)hとなる。ρは薬液Lの比重、ρは水の比重であり、例えば、(ρ/ρ)=1.2とすると、h=1.2×hとなる。
【0023】
そして、混練機に貯留槽本体110内の薬液Lが供給されてその高さhがしだいに低くなるにしたがって、水位管121内の水Wは、その高さhがh=(ρ/ρ)hの関係を保ってしだいに低下することとなる。
【0024】
図3は図1における貯留槽本体内の薬液が下限液位に達したときのことを説明するための図である。
【0025】
図3に示すように、貯留槽本体110の薬液Lが下限液位Lに達すると、水位管121内の電極棒132aと電極棒132c間がそれまでの導通状態から非導通状態となり、これにより貯留槽本体110の薬液Lが下限液位Lに達したことが検知される。
【0026】
このように、本実施形態の飛灰処理用薬液貯留槽100は、貯留槽本体110内の薬液Lの液位を反映して示す水位計120を設け、電極式液面計130により水位計120の水位管121の予め定められた水位Wを検知するようにしたものであるから、飛灰処理用薬液Lが高粘性薬液の場合でも、電極式液面計130の電極棒132a,132cと該高粘性薬液Lとが接触することがなくて、貯留槽本体110内の薬液が下限液位Lに達したことを誤検知なく確実に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態による飛灰処理用薬液貯留槽を示す概略構成図である。
【図2】貯留槽本体内に薬液を上限液位まで供給するときのことを説明するための図である。
【図3】図1における貯留槽本体内の薬液が下限液位に達したときのことを説明するための図である。
【図4】従来の飛灰処理用薬液貯留槽を示す概略構成図である。
【図5】電極式液面計による誤検知を説明するための図である。
【符号の説明】
【0028】
100…飛灰処理用薬液貯留槽
110…貯留槽本体
120…水位計
121…水位管
122…下部連通管
122a…下部開閉弁
123…上部連通管
123a…上部開閉弁
130…電極式液面計
131…電極棒ホルダー
132a,132c…電極棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
混練機により飛灰と飛灰処理用薬液とを混練して、飛灰中の重金属類の溶出防止がなされた飛灰処理物を生成するために前記混練機に供給する飛灰処理用薬液を貯留するための飛灰処理用薬液貯留槽であって、飛灰処理用薬液を収容する貯留槽本体と、前記貯留槽本体の外側側面に鉛直方向に延びる姿勢で設けられ該貯留槽本体内の液位を反映して示す水位計と、前記水位計に取り付けられた電極式液面計とを備えていることを特徴とする飛灰処理用薬液貯留槽。
【請求項2】
前記飛灰処理用薬液が粘度100mPa・s以上の高粘性の薬液であることを特徴とする請求項1記載の飛灰処理用薬液貯留槽。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−46016(P2008−46016A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−222507(P2006−222507)
【出願日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(000192590)株式会社神鋼環境ソリューション (534)
【Fターム(参考)】