説明

食品を安定化させるための脱カルシウム処理された乳タンパク質濃縮物

本発明は、食品または飲料物の安定化方法を提供する。本発明の方法は、脱カルシウム処理された乳タンパク質濃縮物を食品または飲料物に含めることを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質により安定化された食品を調製するための乳タンパク質濃縮物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
カゼイン塩、特にナトリウムカゼイン塩が長い間、食品産業では、水中油型エマルションの安定化において使用されている。
【0003】
様々なカゼイン塩が、典型的には、カゼインのスラリーをアルカリ(ナトリウムカゼイン塩については水酸化ナトリウム)に溶解し、噴霧乾燥することによって調製される。製造コストが大きく、風味がそれらの適用を制限し得る。カゼイン塩はそれら自身の正体のラベルを有する。カゼイン塩がラベルに示される製造物(例えば、チーズなど)は、二流品であると見なされる傾向がある。カゼイン塩はタンパク質が非常に高く、このことは、要求される適用には過度である場合がある。
【0004】
Poarch(米国特許第4,202,907号:特許文献1)は、改変されたナトリウムカゼイン塩が、カルシウムイオンを、好適なイオン交換樹脂による処理を使用してナトリウムイオンにより置換し、その後、処理物をレンネントと反応することによって牛乳から調製され得ることを開示する。この酵素改変されたナトリウムカゼイン塩は、挽肉とのゲル(ソーセージなど)の調製において有用である。熱が、混合物を固まらせ、ゲルを作製するために使用される。
【0005】
Stahl&Yuan(米国特許第4,450,182号:特許文献2)は、スキムミルクを、カルシウムイオンをナトリウムイオンまたはカリウムイオンにより置換するために弱酸型交換樹脂と接触させることによって、通気デザート、発泡冷凍デザート、および、発泡食品または泡立てた食品を調製するために有用な改変されたスキムミルク成分の調製を開示する。
【0006】
Yoshiya&Masakazuは、特開昭63−188346(特許文献3)において、高い溶解性、熱安定性、乳化および泡立ちを含む様々な有用な特性を有するカルシウム除去成分を作製するために、樹脂の一部が水素イオンにより満たされ、樹脂の残り部分がナトリウムイオンにより満たされる混合樹脂イオン交換プロセスを使用するスキムミルクの処理を開示する。これらの出願人はさらに、この混合床システムが、2つの樹脂を一様に混合することに注意を払うことが必要であるという点で、操作が簡単でないことを開示し、また、この混合樹脂技術およびその複雑な再生技術を使用しない場合、ナトリウム型での1つだけのイオン樹脂はpHにおける大きな望ましくない変化(pH6.6から8.9)を処理された牛乳の流れにおいて引き起こすこともまた開示する(Yoshiya&Masakazuの出願明細書の図1を参照のこと)。
【0007】
Bhaskarらは、国際特許出願公開第WO01/41578号(特許文献4)において、イオン交換を(カルシウムの一部をナトリウムにより置換するために)使用することによる、改善された溶解性を有する脱カルシウム処理された乳タンパク質濃縮物の調製を開示する。この成分は、チーズ製造者にその収量を増大させ、かつ、不溶物がチーズ塊の不良を引き起こすという問題を回避させるチーズ乳増量剤として有用である。チーズ乳増量適用において、最終的な食品組成は典型的には、改変されたMPC成分に由来する10%〜50%のタンパク質を含有する。
【0008】
Bhaskarらは、国際特許出願公開第WO01/41579号(特許文献5)において、十分に大きな割合のカルシウムイオンをスキムミルクにおいてナトリウムイオンにより置換することによる半透明な乳飲料の調製を開示する。
【0009】
本明細書において、参照が、特許明細書、他の外部文書または他の情報源に対してなされている場合、これは一般に、本発明の特徴を議論するための背景を提供するという目的のためである。別途具体的に言及されない限り、そのような外部文書に対する参照は、そのような文書またはそのような情報源が、何らかの権限において、先行技術であるか、または、この技術分野における共通の一般的な知識の一部を形成することを認めるものとして解釈してはならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4,202,907号
【特許文献2】米国特許第4,450,182号
【特許文献3】特開昭63−188346
【特許文献4】国際特許出願公開第WO01/41578号
【特許文献5】国際特許出願公開第WO01/41579号
【特許文献6】国際特許出願公開第WO2004/05791号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
水中油型エマルションを安定化させるための方法、および/または、安定化された製造物を提供すること、ならびに/あるいは、有用な選択肢を社会に提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、実質的な割合のカルシウムを一価カチオンにより置換するためのイオン交換によって処理され、かつ、乳化またはタンパク質安定化された食品製造物の調製において有用なタンパク質性成分を形成するために乾燥される乳タンパク質リテンテート(retentate)に関する。
【0013】
脱カルシウム処理された乳タンパク質濃縮物は、タンパク質安定化された食品製造物を調製するために使用することができる。特定の理論にとらわれることはないが、オイルまたは脂肪が水性媒体に分散される場合、あるいは、水が脂質相に分散される場合、タンパク質安定化された食品製造物は、乳化されるとして記載することができる。脂肪をほとんど含まない系において、安定化は驚くべきことに、テクスチャーに対する利益または低下したシネレシスの形態を取ることができる。
【0014】
1つの態様において、本発明は、脱カルシウム処理された乳タンパク質濃縮物を食品または飲料物に加えることを含む、食品または飲料物の安定化方法を提供する。
【0015】
別の態様において、本発明は、脱カルシウム処理された乳タンパク質濃縮物を、脂肪またはタンパク質の水性分散物と混合すること、および、続いて、得られた分散物を、水性の乳製造物、あるいは、水を含む別の食品または飲料物と混合することを含む、タンパク質安定化された食品または飲料物の調製方法を提供する。
【0016】
別の態様において、本発明は、脱カルシウム処理された乳タンパク質濃縮物を、水相および脂質相を含む組成物に含めること、および、この組成物を、安定化されたエマルションを形成するために混合することを含む、タンパク質安定化された食品または飲料物の調製方法を提供する。
【0017】
さらなる態様において、本発明は、脱カルシウム処理された乳タンパク質濃縮物を、脂肪の水性分散物と、好ましくは、油滴の形態での脂肪の水性分散物と混合すること、および、続いて、得られたエマルションを、水性の乳製造物、あるいは、水を含む別の食品または飲料物と混合することを含む、タンパク質安定化された食品または飲料物の調製方法を提供する。
【0018】
別の態様において、本発明は、タンパク質安定化された食品または飲料物を調製するためのさらなる方法を提供する。乾燥された乳タンパク質濃縮物が水性の流体に溶解される。この溶液に、脂質組成物が加えられ、剪断が、分散物またはエマルションを形成するために加えられる。
【0019】
別の態様において、本発明は、
(a)乾燥された乳タンパク質濃縮物を水性の流体に溶解すること、
(b)脂質組成物またはタンパク質組成物を加えること、および
(c)剪断を、分散物またはエマルションを形成するために加えること
を含む、タンパク質安定化された食品または飲料物の調製方法を提供する。
本発明において好ましくは、乳タンパク質濃縮物は、カルシウムイオンを1つだけのカチオン交換樹脂との接触によって一価カチオンにより置換することを使用して調製されている。
【0020】
好ましくは、乳タンパク質濃縮物はレンネットまたは他の酵素組成物により処理されない。
【0021】
本発明の方法によって作製される食品、飲料物およびエマルションは、食用の製造物を作製するために、様々な様式で処理することができ、例えば、
(a)濃縮することができ、例えば、限外濾過またはエバポレーションによって濃縮することができる;
(b)タンパク質、または、炭水化物、または、タンパク質もしくは炭水化物の混合物を含有する流れと混合することができる;
(c)低温殺菌または殺菌を含めて、加熱することができる;
(d)乾燥(例えば、噴霧乾燥)することができる;
(e)冷蔵することができる;
(f)冷凍することができる;
(g)必要に応じて使用される成分(例えば、増粘剤、香味剤、甘味料、酸味剤、着色剤、食塩、ビタミンおよび生物活性剤)と混合し、かつ、場合により、選択肢(a)〜選択肢(f)に従って処理することができる。通常、製造物は包装される。
【0022】
脱カルシウム処理された乳タンパク質濃縮物を使用して調製される食品組成物は好ましくは、(乾燥物基準[DB]で表されるとき)0.01%(w/w)〜10%(w/w)のこの成分を含有し、より好ましくは、0.1%DB〜5%DBの脱カルシウム処理されたMPCを含有する。
【0023】
さらなる態様において、本発明は、脱カルシウム処理された乳タンパク質濃縮物によって安定化された水中油型エマルションを含む乳化された製造物を提供する。
【0024】
本発明は、エマルションを形成するために使用される成分が最初、別個の水相および脂質相に存在する場合に特に有用である。例えば、本発明は、オイルを牛乳に取り込むために使用することができる。
【0025】
本発明はまた、タンパク質(例えば、カゼインミセルおよび不溶性タンパク質)の懸濁物を安定化させるために有用である。
【0026】
用語「乳タンパク質濃縮物」(MPC)は、(重量比で)非脂肪固形分(SNF)の40%越、好ましくは50%越、より好ましくは55%越、最も好ましくは70%越が乳タンパク質であり、カゼイン対乳清タンパク質の重量比が約95:5〜約50:50の間であり、好ましくは90:10〜70:30の間であり、最も好ましくは90:10〜80:20の間である乳タンパク質製造物を示す。様々なそのような濃縮物がこの技術分野では知られている。MPCは多くの場合、乳タンパク質としての%乾燥物が「MPC」に付けられることにより表される。例えば、MPC70は、乾燥物の70%を乳タンパク質として有するMPCである。一般に、MPCは、カゼインが濃縮された流れ、または、乳清タンパク質が濃縮された流れのどちらかを調製するための限外濾過を伴うプロセスによって調製される。これらの流れは、カゼイン対乳清タンパク質の所望される比率を得るために混合することができる。別の実施形態において、乳タンパク質濃縮物は、スキムミルクの流れを限外濾過によって調製された乳清タンパク質濃縮物の流れと混合すること、スキムミルクの流れまたは一緒になった流れのどちらかをカチオン交換によって処理すること、および、必要な場合には濃縮または乾燥することによって調製することができる。
【0027】
安定化された食品組成物を形成するために混合することでは、液滴サイズを好ましくは100ミクロン未満の平均値に小さくするために、より好ましくは50ミクロン未満の平均値に小さくするために、最も好ましくは20ミクロン未満の平均値に小さくするために剪断力を加えることが伴う。これは均質化によって達成することができる。
【0028】
いくつかの実施形態については、高剪断の撹拌、例えば、ブレードミキサー(例えば、Ultra TurraxまたはWaringブレンダー)での高剪断撹拌を使用することができる。
【0029】
「安定化された食品または飲料物」は、脱カルシウム処理されたMPCを含まない対応する食品または飲料物よりも大きいテクスチャーを有するか、または、異なる相への分離に対して安定であるかのどちらか一方または両方である食品または飲料物である。
【0030】
「安定化されたエマルション」は、脱カルシウム処理されたMPCを含まない対応するエマルションまたは混合物よりも分離に対して安定であるエマルションである。
【0031】
用語「テクスチャー」は大まかには、本発明の成分を含有する食品組成物のレオロジー特性を示す。レオロジー特性には、ゲルおよび発泡物の強度、ならびに、静的変形または動的変形のどちらかにさらされたときの粘度特性および応力ひずみ特性が含まれる。食物のテクスチャーは、取り扱いの容易さ、貯蔵寿命を保っている期間中、および、貯蔵寿命を規定する期間中における安定性に関して、また、製造物の官能特性の一部として最も重要なことに、すなわち、咀嚼時における消費者の知覚に関して重要である。
【0032】
「シネレシス」は、ゲルまたは発泡物が時間とともに次第に流体をしみ出すか、またはにじみ出す傾向を示す。一般に、チーズ製造では、シネレシスは、凝乳からの乳清の排除をもたらす所望される現象である(早いほど、良い)。大まかには、本発明において、シネレシスは、経時的な安定性が好ましい場合には製造物の望まれない特徴である。
【0033】
タンパク質分散物は、タンパク質が、連続相の中に懸濁または分散される粒子状形態またはミセル形態で存在する食品製造物である。
【0034】
本発明において使用される脱カルシウム処理されたMPCは国際特許出願公開WO01/41578の方法に従って調製することができる。
【0035】
脱カルシウム処理されたMPCは、
(a)(水分を含まない脂肪非含有重量基準で)少なくとも40%の乾燥物を水溶液/水性分散物において乳タンパク質として有するMPCを提供すること;
(b)水溶液/水性分散物におけるカルシウムイオンを、(1)1つだけの化学種の一価カチオンにより実質的に満たされたイオン交換体でのカチオン交換、(2)その後の透析および/または限外濾過および/または透析濾過によるpH4.6〜7への酸性化、あるいは、(3)キレート化剤の添加、および/または、カルシウムイオンの一部をキレート化剤もしくは金属イオン封鎖剤と結合させることの少なくとも1つから選ばれる方法によって除くこと
を含む方法によって調製することができる。
【0036】
カルシウムイオンの用語は広い意味で使用され、状況により、別のものが要求されない限り、イオン性カルシウムおよびコロイド状カルシウムを包含する。
【0037】
マグネシウムイオンの用語は広い意味で使用され、状況により、別のものが要求されない限り、イオン性マグネシウムおよびコロイド状マグネシウムを包含する。
【0038】
用語「1つだけの化学種により実質的に満たされる(された)」は、樹脂が、交換可能なイオンの少なくとも90%を1つだけの化学種として有し、好ましくは、交換可能なイオンの少なくとも95%を1つだけの化学種として有することを示す。具体的には、この用語は、樹脂が、異なる化学種を有する樹脂の混合によって調製されないことを示すか、または、樹脂が、2つ以上のタイプのイオンにより満たすことを提供するために計算された処理を受けていることを示す。本発明のこの態様においては、例えば、カチオン交換樹脂に結合したカチオンの少ない割合が、所望されるカチオンとの交換に対して抵抗性であってもよいことが意図される。
【0039】
別の方法において、脱カルシウム処理されたMPCは、
(a)低脂肪乳溶液(例えば、スキムミルク)を液体形態で提供すること;
(b)その溶液におけるカルシウムイオンを、(1)一価カチオン化学種を有する形態でのイオン交換体でのカチオン交換、または、(2)必要な場合にはその後の透析によるpH4.6〜7への酸性化;および
(c)乾燥物重量で少なくとも40%のタンパク質を有するMPCまたはMPIを形成するために、必要な場合には透析濾過とともに限外濾過によって得られる溶液を濃縮すること
を含む方法によって調製される。
【0040】
脱カルシウム処理されたMPCは、カルシウム含有量が、対応する非処理のMPCよりも低いMPCである。これらの製造物はまた一般には、対応する非処理の製造物よりも低い含有量の二価カチオン(例えば、マグネシウム)を有する。
【0041】
そのような脱カルシウム処理されたMPCは好ましくは乾燥され、その後、乳化される組成物に再溶解されるか、または、その水性成分に再溶解される。好ましくは、そのようなMPCは(水分非含有/脂肪非含有基準で)少なくとも55%のタンパク質を有し、より好ましくは少なくとも70%のタンパク質を有し、最も好ましくは少なくとも80%のタンパク質を有する。そのようなMPCは好ましくは、少なくとも30%のカルシウムが一価カチオンによって置換されており、より好ましくは、少なくとも55%のカルシウムが一価カチオンにより置換されており、より好ましくは、少なくとも70%のカルシウムが一価カチオンにより置換されている。好ましい一価カチオンはナトリウムイオンである。意図される他の一価カチオンには、カリウムまたはアンモニウムが含まれる。
【0042】
脱カルシウム処理されたMPCは熱処理することができる。国際特許出願公開WO2004/05791(特許文献1)は、変性された乳清タンパク質を有する脱カルシウム処理されたMPCである、熱処理およびカルシウム除去された乳タンパク質濃縮物(HY−MPC)を記載する。変性は、65℃を超える温度で、乳清タンパク質の変性を可能にするための十分な時間にわたって加熱することによって行われる。加熱は一般には6.0〜7.0のpHで行われ、好ましくは6.5〜7.0のpHで行われる。好ましくは、加熱は、この実施形態では少なくとも4分間である。
【0043】
好ましくは、脱カルシウム処理されたMPCは5%未満の水分含有量に乾燥されるか、または、過度な劣化を伴わない数ヶ月間にわたる乾燥成分の貯蔵を容易にする水分活性レベルに乾燥される。
【0044】
別の態様において、本発明の成分は、ブレンド混合物を作製するために少なくとも1つの他の成分と混合することができる。好ましくは、混合は乾式混合である。有用なブレンド混合物には、脱カルシウム処理されたMPCと、乳清タンパク質濃縮物(WPC)とのブレンド混合物が含まれる。
【0045】
本発明において使用される好ましいMPCは、カルシウムがカチオン交換法によって除かれている。好ましくは、カチオン交換は、強酸性基(好ましくは、スルホン酸基)を有する樹脂において行われている。
【0046】
本発明のこの実施形態および他の実施形態において使用される好ましい強酸型カチオン交換樹脂は、IMAC HP111E、または、SR1LNaなどの同等物である(これらはともにRohm&Haasによって製造される)。この樹脂はスチレンジビニルベンゼン共重合体マトリックスを有する。官能基は、Na+型で得ることができるか、または、代替では、K+型に変換することができるスルホン酸基である。Na+型またはK+型の使用が好ましい。
【0047】
カチオン交換体に適用されるMPCは好ましくは、5.6〜7.0の範囲でのpHを有し、より好ましくは、5.6〜6.2の範囲でのpHを有する。MPCまたはMPIがカラムを通過すると、そのpHが高くなる。pHが7.0を越えて高くなるならば、pHは一般には、口当たりをより良くするために約6.5〜7.0に調節される。
【0048】
カルシウム除去が、酸性化、ならびに、その後の透析および/または限外濾過および/または透析濾過によるものであるそれらの実施形態において、pHは、4.6〜7の範囲であるように調節され、より好ましくは4.6〜6.7の範囲であるように調節され、最も好ましくは4.8〜6.5の範囲であるように調節される。選ばれる膜は一般には、10,000ダルトン以下の公称分子量カットオフを有する。好ましい限外濾過膜は、公称分子量カットオフが10,000ダルトンであるKoch S4 HFK131タイプの膜である。pHの調節を、食品または飲料物のpHを調節するために好適である任意の酸を用いて、例えば、希HCl、希H2SO4、希酢酸、希乳酸、好ましくは希コハク酸を用いて行うことができる。この方法については、6.4〜7.0のpHをカルシウム除去後に得るために溶液を中和することが好ましい。この中和は好ましくは、任意の乾燥工程の前に行われる。
【0049】
カルシウム除去が、キレート化剤の添加によるものであるとき、使用される好ましいキレート化剤には、クエン酸、EDTA、食品用リン酸塩/ポリリン酸塩、食品用酸味剤、酒石酸、クエン酸塩および酒石酸塩が含まれる。好ましいキレート化剤は食品用の酸性化剤である。キレート化剤は、限外濾過段階または透析濾過段階の前、期間中または後で使用することができ、あるいは、限外濾過または透析濾過とは無関係に使用することができる。
【0050】
本発明の成分の適用は、水系の連続相における脂肪液滴分散物を伴う広範囲の様々な適用において脂肪エマルションの安定性を促進させることにおいて有用である。限定されない適用には、全乳、バターミルク、フィルドミルクおよび代用乳、粉乳およびフィルドミルク粉末、脂肪含有リテンテート、還元牛乳、リテンテートおよびクリーム、コーヒー用クリームおよびコーヒー用クリーム代用物、アイスクリーム、乳児用調製乳、ヨーグルト(固形ヨーグルト、撹拌型ヨーグルトおよび飲用ヨーグルトを含む)、ムース、スープ、ソース、リキュール、肉製品、ペットフード、マヨネーズ、スナック製品、チョコレート、菓子類ならびに脂肪含有ゲルなどが含まれる。
【0051】
本発明は、少なくとも50%の水を含む食品または飲料物のために特に好都合である。そのような食品には、ゲル化食品およびテクスチャー加工(textured)された食品が含まれる。
【0052】
成分として、本発明の脱カルシウム処理された乳タンパク質濃縮物は、本発明において使用される場合、可能性のある他の成分を上回る利点を有する。本発明の脱カルシウム処理された乳タンパク質濃縮物は、対応する非処理の乳タンパク質濃縮物よりも良好な溶解性特性、および、ナトリウムカゼイン塩よりも良好な風味を有する。本発明の脱カルシウム処理された乳タンパク質濃縮物は一般に、水溶液に分散させることが、非処理の乳タンパク質濃縮物またはカゼイン塩のどちらよりも容易である。本発明の脱カルシウム処理された乳タンパク質濃縮物はまた、スキムミルク製造物を上回る利点を有しており、例えば、より低いラクトース含有量、および、所与体積の粉末に対してのより大きい乳化活性を有する。より低いラクトース含有量は、ラクトースまたは炭水化物を避けることを望む消費者のために有用である。体積比でのより大きい乳化活性は、輸送の容易さおよびエマルションへの混合のために有益である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は、ナトリウムカゼイン塩(NaCas)、NaMPC−1、NaMPC−2およびMPC85についての(タンパク質基準での)乳化特性を示すグラフである。
【図2】図2は、その乳化特性に対する様々なMPCのカルシウム含有量の影響を示すグラフである。
【実施例】
【0054】
下記の実施例により、本発明の実施がさらに例示される。
【0055】
材料
下記の実験において使用される材料は下記の詳細に従ってコード化される。
(1)SMP(低温スキムミルク粉末、Fonterra Co−operative Group Limited、Auckland)
(2)MPC85(ALAPRO4850、Fonterra Co−operative Group Limited、Auckland)
(3)NaMPC−1(ALAPRO4861、Fonterra Co−operative Group Limited、Auckland)
(4)NaMPC−2(ALAPRO4862、Fonterra Co−operative Group Limited、Auckland)
(5)WPC−1(乳清タンパク質濃縮物131、Fonterra Co−operative Group Limited、Auckland、チーズ乳清由来のタンパク質濃縮物)
(6)WPC−2(乳清タンパク質濃縮物132、Fonterra Co−operative Group Limited、Auckland、酸乳清由来のタンパク質濃縮物)
(7)61.6%(w/w)NaMPC−2+38.4%(w/w)WPC80−2を含むNaMPC−2/WPC80−2ブレンド混合物
(8)対応する対照ブレンド混合物を、MPC85/WPC80−2を使用して上記基準で調製した。
(9)NaCaseinate(ALANATE180、ナトリウムカゼイン塩、Fonterra Co−operative Group Limited、Auckland)
(10)NaMPC−3(パイロットプラント製造の脱Ca処理MPC85−詳細については実施例9の後の付録を参照のこと)。
【0056】
上記成分についての組成が表1にまとめられる。
【0057】
【表1】

【0058】
実施例1 エマルションの活性試験方法および安定性試験方法
参考文献
James MJ & Patel PD(1988)、「タンパク質についての標準的水中油型乳化試験の開発」、Leatherhead Food Research Association Report No.631、Leatherhead、Surrey、England。
【0059】
Pearce KN & Kinsella JE(1978)、タンパク質の乳化特性:比濁法技術の評価、Journal of Agricultural & Food Chemistry、26、716〜723。
【0060】
試験原理
乳化は、安定性を助けるために分散相の粒子サイズ低下および表面の相互作用を必要とする。この試験では、27%のオイルエマルションが、0.1%タンパク質溶液およびオイルをUltra−Turraxミキサーにおいて15,000rpmで60秒間混合することによって調製される。界面でのタンパク質−オイルの相互作用が生じ、エマルションが形成される。タンパク質の乳化度を、得られたエマルションの吸光度(これは、エマルションの総表面積、すなわち、油滴の平均粒子サイズに関連する)を測定することによって見出すことができる。エマルションの安定性が、エマルションの吸光度を最初の読み取りの後30分で再び測定することによって見出される。
【0061】
装置
上載せ天秤
500mLステンレスチール製ビーカー
250mLビーカー
混合管
1mLピペット
分光光度計LKB Biochrom Ultospec II、および、1cm光路長の正方形サンプルセル
10mLシリンジ
250mL三角フラスコ
pH計
ボルテックスミキサー
水浴(60℃)
撹拌装置(撹拌用ブレードを含む)
Ultra−Turraxミキサー(Model T18またはT24)、シャフトS25N−18Gを有する。
ガラスジャー(60mL、42mm内径)(BDH Laboratory Apparatus カタログ番号215/0345/DI)
【0062】
ジャーの大きさは、空気が乳化期間中に排除されるようにしなければならない。
【0063】
ジャーの蓋の取り付け、ジャーが底部から5mmでUltra−Turraxのシャフトにネジ固定され得るようにされる。
【0064】
試薬
使用された分散性試験サンプル:
・NaCaseinate(対照1)(詳細は上記の通りである);
・MPC85(対照2)(詳細は上記の通りである);
・NaMPC−1(詳細は上記の通りである);
・NaMPC−2(詳細は上記の通りである)。
蒸留水または逆浸透水(RO)
植物油(ダイズ油)
【0065】
サンプル調製
水における分散剤(サンプル溶液)の調製
1.ステンレススチール製ビーカーおよび攪拌機ブレードの重量を測定し、記録する。
2.196(±0.5)gのRO水を計量する。
3.4gの成分サンプルを別のビーカーに計り取る。
4.水を深い渦流に撹拌し、成分サンプルをゆっくり加える。
5.高速度で2分間〜4分間撹拌して、完全に分散させる。
6.速度を遅くし、さらに56分間〜58分間(合計で60分間)撹拌する。
7.撹拌を止め、ビーカー、攪拌機および内容物を再び重量測定する。
8.十分なRO水を加えて、溶液を200gにする。
9.フラスコの風袋重量を測定し、0.1%の溶液を、10gのサンプル溶液をRO水により200gに希釈することによって調製する。
【0066】
エマルションの調製
1.38(±0.05)gのサンプル溶液をガラス製ジャーに計り取る。
2.14(±0.05)gのオイルを加える。
3.200mLのRO水を計って250mLのビーカー(それぞれのサンプルについて2つ)に入れる。
4.サンプル/オイルの溶液を15,000rpmで60秒間、ガラス製ジャーにおいて乳化させる。
5.直ちに10mLのエマルションをシリンジに引き上げ、直立に30分間立てたままにする。
6.エマルションの1mLをピペットに取り、ビーカー内の200mLのRO水に加える。
7.撹拌して混合する。
8.500nmでの希釈物エマルションの初期吸光度を(A5001)を読み取る。
9.30分後、底部の5mLのエマルションをシリンジから混合管の中に押し出す。
10.ボルテックスミキサーで混合する。
11.このエマルションの1mLをピペットに取り、ビーカー内のもう一方の200mLのRO水に加え、混合する。
12.500nmでの最終吸光度(A5002)を読み取る。
【0067】
計算
乳化活性=(A5001)
エマルション安定性(%)=A5002÷A5001×100
【0068】
結果
表2に、評価されたサンプルの組成およびエマルション安定化特性がまとめられる。
【0069】
【表2】

【0070】
図1は、本発明の成分が、驚くほど良好なエマルション安定化効果を有すること、すなわち、ナトリウムカゼイン塩対照と同等またはそれよりも良好なエマルション安定化効果を有したことを示す。類似するタンパク質含有量を有し、しかし、より大きいカルシウム濃度およびより低いレベルのナトリウムを有する他のサンプルは、エマルション安定化において効果がより小さかったか、または、効果的でなかった。カルシウムレベルを変化させることによるエマルション安定性における傾向が、表1からのデータとともに、図2に示される。
【0071】
実験を、高くした乳清タンパク質:カゼイン比率(50:50)を使用して繰り返す。
【0072】
溶液を2%(w/w)のタンパク質基準で調製した。
MPC85 2.41gを100gの溶液にした。
NaMPC−2 2.44gを100gの溶液にした。
NaMPC−2/WPC−2ブレンド混合物 2.48gを100gの溶液にした。
MPC85/WPC−2ブレンド混合物 2.48gを100gの溶液にした。
【0073】
これらの溶液は10gをRO水により200gに希釈して、乳化試験で使用される0.1%のタンパク質溶液を作製した。試験方法は上記で開示される通りである。
【0074】
NaMPC−2、および、WPCとのブレンド混合物についての最後のエマルション試験の結果が表3にまとめられ、図3に例示される。
【0075】
【表3】

【0076】
実施例2A ヨーグルトテクスチャー改善剤としてのNaMPCの適用
この試験は、MPCおよびWPCに基づく、可能性のある様々なヨーグルトテクスチャー改善剤溶液を調べるために行われた。3つのMPC、1つの標準物、および、2つの脱カルシウム処理サンプル(市販の製造物およびパイロットプラントの製造物)を、60:40のカゼイン対乳清タンパク質の比率で2つのWPCのうちの1つ(これは酸乳清またはチーズ乳清のどちらかに由来する)と混合した。サンプルを、SMPを使用して同じタンパク質レベルに標準化されたサンプルと比較し、同様にまた、乳清タンパク質と混合されたナトリウムカゼイン塩の使用と比較した。ナトリウムカゼイン塩を対照として乳清タンパク質により処理した。
【0077】
目的
・MPCおよびWPCの組合せに基づくヨーグルトテクスチャー改善剤として作用する様々な乳タンパク質の可能性を調べた。
・カゼイン塩を典型的なヨーグルトテクスチャー改善剤システムにおいてNaMPCにより置き換えることの影響を観察した。
【0078】
材料および方法
カゼイン源
・NaCaseinate(詳細は上記の通りである)
・MPC85(詳細は上記の通りである)
・NaMPC−2(詳細は上記の通りである)
・NaMPC−3(詳細は上記の通りである)
乳清タンパク質源
・WPC−1(詳細は上記の通りである)
・WPC−2(詳細は上記の通りである)
【0079】
実験
ヨーグルトテクスチャー改善剤を、60:40のカゼイン対乳清比率を得るために、カゼイン源をWPC−1またはWPC−2のどちらかと混合することによって調製した。
使用されたモデルシステムは、総タンパク質が4.5%であるスキムミルクヨーグルトであり、ヨーグルトテクスチャー改善剤が0.6%タンパク質のレベルで加えられ、タンパク質の残りがスキムミルク粉末に由来した。ヨーグルトシステムにおける総固形分を、同等量のラクトースの添加により釣り合わせることによって等しくした。
【0080】
ヨーグルト製造
ヨーグルトを下記の方法に従って調製した:
1.乾燥成分を重量測定し、予備混合する。
2.粉末を50℃〜56℃の湯において再結合し、10分間〜15分間撹拌して、粉末を水和させる(4Lのバッチサイズ)。
3.150/50bar(Rannie、Copenhagen)で55℃において均質化する。
4.蒸気浴で85℃に加熱し、15分間保つ。
5.氷で10℃に急冷し、その後、培養物を加えるために準備ができるまで冷蔵する。
6.ミルクを約40℃に加温し、ミルクに乳酸スターター培養物YC−380(Chr Hansen、デンマーク)を0.0255g/Lで接種し、42℃でpH4.5にまでインキュベーションする(およそ5時間〜6時間)。
7.25℃〜20℃に氷で冷却する。(撹拌型ヨーグルトについては、ヨーグルトが冷えるとき、凝塊を穏やかにばらばらにする)。
8.撹拌型ヨーグルトについては、ヨーグルトをなめらかにするために、圧力を用いることなく均質化し(Rannie、Copenhagen)、プラスチック製ポトル容器に注ぐ。
9.包装し、冷蔵する。
【0081】
ヨーグルトモデル:
組成:
4.5%のタンパク質
約0.2%の脂肪
総固形分 12.79%
【0082】
撹拌型ヨーグルトの見かけ粘度
撹拌型ヨーグルトの粘度を、MV1カップおよびシリンダーを装着したHaake VT500 Viscometer(Haake Mess−Technik,GmbH、Karlsruhe)を使用して測定した。粘度測定を10℃で行った(冷蔵庫から出した直後のヨーグルトサンプル)。剪断速度を3分かけて0s-1から120s-1に増大させ、その後、30秒かけて0s-1に下げた。50s-1におけるmPa×s(1mPa×s=1cP)としての見かけ粘度値を剪断速度増加時の掃引から記録した。試験を異なるポトル容器から二連で行った。
【0083】
固形ヨーグルトのテクスチャープロフィル
固形ヨーグルトのテクスチャープロフィルを、Universal TA−XT2 Texture AnalyserをStable Micro Systems(Godalming、英国)から得られるリアルタイムグラフィックスおよびデータ取得ソフトウエアパッケージ(XTRA Dimension)とともに使用して測定した。
【0084】
直径が13mm(0.5インチ)のEboniteプローブを設定距離(20mm)について一定の速度(1mm/s)で(冷蔵庫から出された5℃での)ヨーグルトサンプルの中に垂直に駆動させ、その後、プローブを5mm/sのより速い速度で引き抜いた。時間に対する力(g)としての応答を測定した。ヨーグルトへの最初の侵入によって生じる力(第1ピーク−破砕力)、および、力/時間曲線下の正の面積(没入作動力)を記録した。試験を異なるポトル容器から三連で行った。結果が表4にまとめられる。
【0085】
TA−XT2設定
圧縮および開始への復帰における力
パラメーター:先行試験速度=2.0mm/s。
試験速度=1.0mm/s。
事後試験速度=5.0mm/s。
破裂試験距離=1.0mm。
距離=20mm
力=0.34Nまたは35g
時間=25秒。
カウント=5
トリガー:タイプ=Auto
トリガー力=5g
プロット停止=トリガーが戻った時
中断:検出=Off
力の読み取り(単位):g
【0086】
【表4】

【0087】
本発明の成分ブレンド混合物は、カゼイン塩および乳清タンパク質のブレンド混合物と同程度の成績を有した。
【0088】
実施例2B ヨーグルトテクスチャー安定化におけるカチオン改変タンパク化合物ブレンド混合物の適用および比較
材料および方法
カゼイン源
・NaCaseinate(詳細は上記の通りである)
・NaMPC−2(詳細は上記の通りである)
・ナトリウムカゼイン塩[EM7](DMV Internationa、Veghel、オランダ)
乳清タンパク質源
・WPC−2(詳細は上記の通りである)
・WPC80−1[Ultra Whey80、80%タンパク質DB、乳清タンパク質濃縮物](Volactive Functional Food Products、Royston、英国)
・WPC80−2[Ultra Whey80LF、80%タンパク質DB、乳清タンパク質濃縮物](Volactive Functional Food Products、Royston、英国)
【0089】
実験
4つのサンプルを調製した:NaCaseinate+WPC−2(対照1)、ならびに、WPC80−1およびWPC80−2のブレンド混合物を伴うナトリウムカゼイン塩[EM7](対照2)(詳細については表5を参照のこと)、加えて、60:40のカゼイン対乳清比率を得るためのNaMPC−2:表5。
【0090】
使用されたモデルシステムは、総タンパク質が4.5%であるスキムミルクヨーグルトであり、ヨーグルトテクスチャー改善剤が1%のタンパク質で加えられ、タンパク質の残りがスキムミルク粉末に由来した。ヨーグルトシステムにおける総固形分をラクトースの使用によって標準化した。
【0091】
【表5】

【0092】
表5に由来する4つのブレンド混合物を表6におけるヨーグルト配合物に配合した。
【0093】
【表6】

【0094】
結果
表7における粘度結果では、NaMPC−2−WPCブレンド混合物のテクスチャー付与成績が、代替の市販成分から調製されたブレンド混合物と比較された。
【0095】
【表7】

【0096】
NaMPC成分は、WPCと混合されたとき、ナトリウムカゼイン塩−WPCのブレンド混合物と同じくらい良好なテクスチャーを与えた。
【0097】
実施例3 ヨーグルトテクスチャーに対する脱カルシウム処理の程度の影響
材料および方法
・SMP(詳細は上記の通りである)
・MPC85(詳細は上記の通りである)
・NaMPC−1(詳細は上記の通りである)
・NaMPC−2(詳細は上記の通りである)
【0098】
実験
サンプルを、ヨーグルトテクスチャー改善剤成分において0%から80%超までの様々な脱カルシウム処理物を得るために、SMP、MPC85、ならびに、NaMPC−1およびNaMPC−2のブレンド混合物を使用して調製した。
3.5%のタンパク質および4.5%のタンパク質を伴うモデルシステムが使用され、1%(それぞれの場合において)がヨーグルトテクスチャー改善剤成分に由来した。このモデルシステムでは、残りのタンパク質がスキムミルク粉末によって供給された(すなわち、それぞれ、2.5%および3.5%)。
テクスチャー改善剤粉末の組成が表8に示される。
【0099】
【表8】

【0100】
結果
培養後の48時間および168時間で得られる、Haake粘度計を50s-1の剪断速度で使用して測定されたヨーグルト粘度の結果が表9に示される。それぞれの点は2回の粘度測定の平均値である。
【0101】
【表9】

【0102】
傾向は、ヨーグルトテクスチャー改善剤成分からのカルシウムの除去が、ヨーグルトサンプルの最終粘度を、対照と比較して著しく増大させたことを示している。
【0103】
実施例4 ナトリウムカゼイン塩に取って代わるためのNaMPC−2を使用するスープ
目的:この実験では、NaMPC−2の安定化特性がモデルスープシステムにおいてNaCaseinateと比較された。
背景:ナトリウムカゼイン塩が多くの場合、(脂肪エマルション安定化として)白くするという目的のために、または、タンパク質強化のためにスープにおいて使用される。このスープレシピは、代替タンパク質の乳化特性を比較するために、十分な脂肪とともに選択された。
成分および配合:
スープサンプルを調製するための配合が表10に示される。
【0104】
【表10】

【0105】
方法
1.バターを、ちょうど溶けるまで低温(加熱1)でレンジ上部に載せたビーカーの中で溶かす。
2.かき混ぜながらSMPおよび乳タンパク質粉末を入れ、十分に混合する。
3.他の乾燥粉末のすべてを乾式混合する。
4.乾燥ブレンド混合物をフードプロセッサーにおいて1分間、脂肪/タンパク質混合物と一緒にする。
5.熱水(約80℃)を加え、直ちに、Barmixブレンダーを速度#1を約30秒間使用して分散させる。
【0106】
評価
略式の官能パネル調査を、配合物を評価するために、工程5の直後、同じ日に使用した。評価された時のスープの温度はおよそ40℃〜50℃であった。評価から得られる重要な点は下記の通りであった:
1.顕著な違いが、風味、色およびテクスチャーに関して2つの配合物の間になかった。
2.両方のスープは口当たりがよく、快い風味およびテクスチャーを有した。
3.目に見える油層が配合物のどちらにも見られなかった。
NaMPC−2は、スープシステムにおいてNaCaseinateに代わる同等な代用物として作用するとしての能力を有した。
【0107】
実施例5 泡立てられたトッピング配合物におけるNaMPCの安定化特性
材料:
・製菓用脂肪、Confectionary Fat92(Goodman Fielder Food Service New Zealand Limited、Auckland)
・コーンシロップ(Penford)
・スクロース、Chelsea、グラニュー糖標準物1A(NZ Sugar Refining Co.、Auckland)
・NaCaseinate(詳細は上記の通りである)
・NaMPC−2(詳細は上記の通りである)
・MPC85(詳細は上記の通りである)
・ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアラート(Polysorbate60、これはBronson&Jacobsによって供給される)
・ソルビタンモノステアラート(Liposorb S、これはBronson&Jacobsによって供給される)
・キサンタンガム、Grinsted、Xanthan80(Danisco)
・グアーガム、NP36(Danisco)
【0108】
配合:
1%タンパク質を使用して調製されたサンプルの配合が表11に示される。
【0109】
【表11】

【0110】
エマルションの調製
脂肪を熱水で融解した。乾燥成分を一緒に混合した。Polysorbate60を、計り取る前に溶かし、乾燥ブレンド混合物に加えた。成分をすべて、Heidolph RZR1頭上式撹拌機(Heidolph、Kehleim、ドイツ)により一緒に混合した。混合物を60℃に加熱し、予備エマルションを、Ultra turrax T50ミキサー(IKA Works Inc.、Wilmington、NC、28405、米国)を最高速度で1分間用いて混合することによって調製した。予備エマルションを75℃に加熱し、APV Rannie LABタイプ12.5Hホモジナイザー(APV Rannie、Albertslund、デンマーク)により52/3.5MPa(520/35bar)で均質化した。サンプルを氷/水浴で5℃に冷却し、熟成するために4℃での冷所に置いた。
【0111】
サンプルの評価
冷所で45分間熟成した後、エマルションを泡立ち試験に供した。250gのエマルションをHobart N−50ミキサー(Hobart、North York、Ontario、カナダ)のボウルに入れた。エマルションを、終点に達したことが判定されるまで速度3で泡立てた。これは、泡立て器が泡の中に明確な切り口を作ったときであった。この時間をホイップ時間として記録した。泡立てられたエマルションが、長期間泡立てたときでさえ、堅錬りにならなかったならば、そのエマルションは不適当であると見なされた。
【0112】
泡立てられたエマルションを絞り袋に入れた。120mLのLK容器の風袋重量を測定し、この容器を泡立てられていないエマルションで満たした。泡立てられたエマルションを同じ容器に絞り出し、余分なホイップをへらで上部から取り除いた。容器および内容物を重量測定した。その後、超過量を下記のように計算した:
超過量=((非泡立てエマルションの重量−泡立てエマルションの重量)/泡立てエマルションの重量)x100
【0113】
ホイップの堅錬り具合を、Helipath標準物、および、0.3rpmで回転するF T字形バースピンドルを使用してBrookfield DV−1(Brookfield Engineering、Middleboro、MA、02346、米国)粘度計により評価した。
【0114】
ホイップの安定性を、絞り出されたロゼットを作製し、ロゼットを冷所に24時間保つことによって評価した。ロゼットを調べ、主観的判断を、ホイップの何らかの実質的な崩壊が存在していたかに関して行った。
【0115】
結果および考察
泡立てられたクリームサンプルの評価の概要が表12に示される。
【0116】
【表12】

MPC85エマルションがより短い時間(90秒)および長時間にわたって泡だてられたが、安定なホイップがどちらの場合においても生じなかった。
【0117】
泡立てられたトッピングシステムにおけるタンパク質の機能は、製造プロセス期間中における一次乳化剤としてである。タンパク質は、安定なエマルションを提供するために脂肪/水の境界に優先的に結合する。熟成プロセスの期間中、乳化剤はタンパク質を境界から追い出し、このことが、エマルションにおける不安定性が、脂肪球の相互作用および安定なホイップ構造の形成を促進させるために要求されるとき、泡立てプロセスを助ける。この適用における優れたタンパク質がナトリウムカゼイン塩であり、使用レベルは通常、約1%のタンパク質である。これらの実験では、1%タンパク質のレベルにおいて、NaMPC−2乳タンパク質濃縮物がナトリウムカゼイン塩と同様に機能したことが示された。MPC85は劣っており、安定な泡立ち構造を形成しなかった。
【0118】
実施例6 コーヒーホワイトニング適用におけるNaMPCの評価
1.材料:
・製菓用脂肪CF92(Goodman Fielder Food Service New Zealand Limited、Auckland)
・グルコースシロップ(A1975)
・NaCaseinate(詳細は上記の通りである)
・NaMPC−2(詳細は上記の通りである)
・GMS[グリセロールモノステアラート](Admul(商標)MG42−04K)
・モノグリセリドの酒石酸エステル(Panodan160、Danisco)
・カラギーナン(Lactarin CM2220、FMC)
・リン酸水素二カリウム(BDH Lab Supplies、Poole、Dorset、英国)
・Nestle Alta Ricaダーク凍結乾燥インスタントコーヒー
・クエン酸
【0119】
2.配合:
【表13】

【0120】
3.コーヒー用クリームエマルションの調製
乾燥成分を混合した。グルコースシロップ、熱水および脂肪をステンレススチール製ビーカーに入れ、内容物を熱水/蒸気浴で加熱して、脂肪を溶かした。乾燥成分を、内容物をHeidoliph RZR1撹拌機(Heidolph、Kelheim、ドイツ)により撹拌しながら加えた。混合物の温度を60℃にし、予備エマルションをUltra−turrax T50高剪断ミキサーによるおよそ8,000r.p.m.での1分間の撹拌によって作製した。温度を熱水/蒸気浴で75℃に上げ、APV Rannie LAB Type 12.5Hホモジナイザーにより20/5MPa(200/50bar)で均質化した。エマルションをおよそ8℃に冷却し、4℃での冷温室に移した。
【0121】
4.コーヒー用クリームエマルションの評価
4.1 ホワイトニング
コーヒー(2.5g)を250gのビーカーに計り取り、沸騰水を200mLの目盛りに加えた。コーヒー用クリームエマルション(20mL)を直ちにFinnpipette(Labsystems Ltd)により加えた。その後、得られる白濁コーヒーを、Hunterlab Miniscan XE Plus色度計(Hunter Associates Lab Inc、Reston、Virginia、米国)による色彩分析に供した。
【0122】
4.2 フェザリング
コーヒーを、6.25gのコーヒーを沸騰水により500mLにすることにより作製した。コーヒーを25℃に冷却した。pHが5.23として測定された。さらなる量のコーヒーを同様に作製し、pHを、5.0、4.9および4.8にそれぞれ調節した。100グラムのコーヒーを電子レンジで85℃に加熱し、10mLのコーヒー用クリームエマルションを加えた。その後、観察を、エマルションの何らかの崩壊が存在するかについて行った。
【0123】
5.結果および考察
5.1 ホワイトニング
色彩分析の結果が表1に示される。
【0124】
【表14】

【0125】
5.2 フェザリング
数個の「斑点」が、天然のpHで白濁させたコーヒーの表面に存在したことが認められた。このことは、少量のエマルションが崩壊していたと考えられることを示している。違いが、NaCaseinateを含有するコーヒー用クリームと、NaMPC−2を含有するコーヒー用クリームとの間にほとんどなかった。これらのコーヒー用クリームエマルションはわずかに0.4%のタンパク質を含有しただけであり、これに対して、市販のコーヒー用クリームは通常、少なくとも1%のタンパク質を含有する。低いタンパク質含有量を使用することによって、タンパク質タイプ間のより大きな差異化を可能にするためのより大きく強調されたシステムを作製することが意図された。pH5.0において、エマルションのわずかな分離が、ナトリウムカゼイン塩を含有するエマルションに関して認められ、しかし、NaMPC−2サンプルは、天然pHのコーヒーの場合のように、わずかな斑点を有しただけであった。pH4.9では、結果がより明瞭に得られ、ナトリウムカゼイン塩エマルションは完全に崩壊し、NaMPC−2エマルションはほんの一部が崩壊していた。pH4.8では、すべてのエマルションがホットコーヒーにおいて崩壊した。
【0126】
6.結論
NaMPC−2はコーヒー用クリームエマルションを問題なく安定化する。NaMPC−2エマルションのホワイトニング作用はナトリウムカゼイン塩エマルションのホワイトニング作用と同程度であった。
フェザリングに対する抵抗性が、NaMPC−2の場合、ナトリウムカゼイン塩エマルションの場合よりもわずかに良好であった。
【0127】
実施例7 キャラメル配合物の安定化
実験:
標準的キャラメル(対照)、1%(w/w)添加NaMPC−2を含有するキャラメル、および、2%(w/w)添加NaMPC−2を含有するキャラメルを、Steiner他(2003)によって記載される手順に従って調製した。配合物が表15に示される。
パーム油およびレシチンをソースパンに加え、レンジにおいて弱火で融解する。
糖を加え、コーンシロップ、加糖練乳[SCSM]および水を同時に加える(NaMPC−2を糖と50:50の比率(すなわち、1%のNaMPC−2については6g+6g)で予備混合する)。
混合物が100℃になるまで、速度#3を単ブレードとともに使用するビーターミキサー(Black&Decker Pulsar手持ち型電気式かき混ぜ器、Model MP30)を使用して混合する。
大さじで撹拌し、キャラメルを119℃に調理する。100℃からのおおよその調理時間を測定する。
丸い金属製の平鍋(直径:18cm、深さ:3cm)に移し、平鍋を冷水に入れ、次いで、何らかの水分の取り込み/喪失を防止するためにプラスチックで覆うことによって冷却する。キャラメルを3日間にわたって周囲状況で放置し、その後、評価する。
【0128】
【表15】

【0129】
NaMPC−2を含有するキャラメルの評価
遊離脂肪/粘着性:
事前に重量測定された15cm直径の#2Whatmanろ紙をキャラメルの表面に10分間置いた。ろ紙を取り除き、再び重量測定した。
【0130】
【表16】

【0131】
外見:
大きな違いがサンプルの外見においてなかった。全体的なコメントが表17にまとめられる。
【0132】
【表17】

【0133】
略式官能:
4名のパネル評価員がキャラメルの風味およびテクスチャー特性を略式評価した。
風味およびテクスチャーの評価が表18にまとめられる。
【0134】
【表18】

【0135】
備考:*コールドフロー(スランピング)は、それ自身の重量のもとでの経時的な製造物の変形性の尺度として定義することができる(Foegeding&Steiner、2002)。この場合には、コールドフローは切断後のキャラメル塊の流れを示す。対照については、切断の何らかの証拠が20分以内に消えてなくなり、これに対して、NaMPC含有サンプルについては、スランピングが少なくとも2時間は何ら明白ではなかった。
【0136】
考察
キャラメル配合物へのNaMPC−2の添加は驚きべき利点をもたらした:
・菓子製品または棒状の栄養補給物における層として使用されたときなどの様々な適用において、また、キャンディーにおいて重要である、コールドフローにおける低下。
・表面粘着性における低下。包装されたキャンディーについては重要。
・増大したキャラメル/牛乳風味。
【0137】
参考文献:
Foegeding EA & Steiner AE(2002)、キャラメルの粘着性およびテクスチャーに影響を及ぼす要因、The Manufacturing Confectioner、82(5)、81〜88。
Steiner AE、Foegeding EA & Drake,M(2003)、キャラメルテクスチャーの記述的分析、Journal of Srnsory Studies、18、277〜289。
【0138】
実施例8 肉システムにおける安定化−ソーセージ配合物
この計画における注目される大きな要因は、ソーセージに含有される脂肪含有量、乳タンパク質成分およびタンパク質濃度であった。
これらの要因の影響を調べるために、下記を含む要因実験を設計した:
・乳タンパク質タイプ:
NaCaseinate(詳細については上記を参照のこと)
MPC−85(詳細については上記を参照のこと)
NaMPC−2(詳細については上記を参照のこと)
NaMPC−1(詳細については上記を参照のこと)
スキムミルク粉末(詳細については上記を参照のこと)
対照タンパク質なし
・タンパク質濃度:1%
2%
・脂肪含有量:150g
250g
【0139】
ソーセージ配合物を、標準的なソーセージ配合を表19Aおよび表19Bに示されるように変更することによって構築した[サンプル1〜12]。1組の反復実験用サンプルもまた調製した。これは表19Aおよび表19Bに示される[サンプル25〜36]。
【0140】
これらの乳タンパク質成分および組成情報がFonterra Co−operative Group Limited(Palmerston North)によって提供された。
【0141】
1.ソーセージの作製
豚肉脂肪をGoodman Fielder Meat Works(Longburn)から調達し、グレイビー牛肉をPreston’s Butchery(Palmerston North)から調達した。
【0142】
1.2 プレソーセージの作製
1.すべての器具(挽肉器、ナイフ、ボウル、まな板など)を使用前に殺菌する。
2.グレイビー牛肉を見た目に90%超の赤身の肉にし、血の塊などを除く。
3.脂肪および牛肉を、挽肉器に通すことができる握りこぶし大の塊に切断する。
4.脂肪を5mmプレートに通して細かく切り、その直後、牛肉を5mmプレートに通して細かく切り、別個のボウルに集める。
5.細かく切った脂肪および牛肉をそれぞれの配合のための必要量でポリエチレン袋に計り取り、必要とされるまで−24℃で冷凍する。
【0143】
1.3 ソーセージの製造
1.細かく切った牛肉および脂肪を、必要とされる12時間前に冷凍庫から取り出し、冷蔵室に置くことによって3℃〜4℃に調節する。
2.細かく切った牛肉、塩、リン酸塩およびスパイスのすべてをボウルチョッパーに加える。
3.ボウルチョッパーを始動させ、氷水の1/3を30秒かけてゆっくり加える。
4.粉乳タンパク質を加え、残り量の水を60秒かけてゆっくり加えながら切り刻む。
5.脂肪を加え、30秒間切り刻む。
6.必要ならば、小麦粉を加え、さらに60秒間切り刻む。
7.バッターを取り出し、ソーセージ充填機に入れ、空気をできる限り抜く。
8.バッターを30mmのソーセージ外皮に詰め、縛る。
9.ソーセージを50kPaの真空度により真空パックする。
10.3℃〜4℃で一晩保存する。
11.必要とされるまで−24℃で冷凍する。
【0144】
【表19A】

【0145】
【表19B】

【0146】
2.0 試験
2.1 水を保持または滲出するバッターの傾向(未加工のソーセージ肉)
1.ソーセージバッターのおよそ0.3gのサンプルを1枚のWhatman#1ろ紙の上で重量測定し、重量を記録する。
2.2枚のガラスシートの間に置く。
3.1キログラムの重りにより20秒間圧縮する。
4.バッター薄膜の内側円および水分の外側円の面積をプラニメーターにより測定する。
5.相対的水分滲出傾向(WEP)を下記式によって求める:
WEP=(水分面積−バッター面積)/バッター面積
【0147】
本発明のためには、より低いWEP値が、より大きい値(すなわち、より多くの水がバッターに保持されている)よりも好ましいことに留意すること。
6.3回の三連読み取りを行う。
【0148】
表20には、調べられた12個の配合物からのWEP値がまとめられる(それぞれの配合物が反復実験された)。
【0149】
【表20】

【0150】
表20における結果は、ナトリウム改変MPC成分が、対照よりも、未加工の挽肉系における改善された水分保持を与えたことを示した。
【0151】
実施例9
1000LのUF透過液を、100kgの乾燥された透過液粉末(MPC85の製造の副産物として調製されたもの)を水において再構成することによって調製する。十分な脱カルシウム処理MPC成分(乾燥物基準で85%のタンパク質、および、およそ0.3%のカルシウム)を、3%のタンパク質濃度を達成するために溶液に加える。混合後、溶液を約50℃に加温し、ホモジナイザーにポンプ送液する。ホモジナイザーに供給するラインにおいて、ダイズ油が、流動流における約4%の脂質割合を得るために連続的に添加される。ホモジナイザーは、200Bar(第1段階)、50Bar(第2段階)で稼動する2段階デバイスである。均質化された流れが多段流下薄膜型蒸発装置においておよそ50%の固形分に濃縮され、噴霧乾燥される。乾燥された粉末のサンプルが、10%(w/w)溶液を得るために水に加えられ、安定な溶液を得るために混合される。
【0152】
付録
脱カルシウム処理されたMPC85(NaMPC−3)の製造
約900LのMPIリテンテートがFonterra Hautapu工場から調達された。この流れは約16%の総固形分および90%のタンパク質含有量を有した。これに100Lのスキムミルクを加えて、約15.3%の総固形分および86.0%のタンパク質含有量を有した100LのMPC85の流れを作製した。このMPC85の流れを400Lの脱塩水により希釈して、固形分含有量が約10%である1400Lの希釈されたMPC85を作製した。希釈されたMPC85の流れのpHを、200Lの3%乳酸を使用して6.9〜5.9に調節した。pH調節されたMPC85の流れが、脱カルシム処理MPC85の流れを製造するために、事前に調製された125Lの強カチオン樹脂(ROHM&HAAS、AMBERLITE SR1LNa)カラムに通される。その後、この流れを、エバポレーション工程および乾燥工程を使用して脱水して、下記の組成を有する脱カルシム処理されたMPC85成分を製造した:
【0153】
脂肪 水分 タンパク質 ラクトース 灰分 カルシウム
(カルシウムを含む)
1.8% 4.0% 82% 5.0% 7.2% 0.3%
【0154】
含む
含むという用語は、本明細書において使用される場合、「から少なくとも部分的になる」を意味する。すなわち、その用語を含む本明細書および請求項における記述を解釈するとき、それぞれの記述においてその用語によって始められる特徴は、すべてが存在する必要があり、しかし、他の特徴もまた存在し得ることを意味する。
【0155】
実施例は例示である
上記実施例は、本発明の実施を例示するものである。本発明は数多くの改変および変形とともに行われ得ることが当業者によって理解される。例えば、使用される脱カルシウム処理されたMPCはタンパク質濃度およびカルシウム含有量において様々な変化を示すことができ、脱カルシウム処理方法は変化させることができ、脱カルシウム処理率および乾燥手順もまた変化させることができる。同様に、脂質成分および水性成分の割合および性質を変化させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱カルシウム処理された乳タンパク質濃縮物を食品または飲料物に加えることを含む、食品または飲料物の安定化方法。
【請求項2】
脱カルシウム処理された乳タンパク質濃縮物を、水相および脂質相を含む組成物に含めること、および、この組成物を、安定化されたエマルションを形成するために混合することを含む、タンパク質安定化された食品または飲料物の調製方法。
【請求項3】
脱カルシウム処理された乳タンパク質濃縮物を、脂肪またはタンパク質の水性分散物と混合すること、および、続いて、得られた分散物を、水性の乳製造物、あるいは、水を含む別の食品または飲料物と混合することを含む、タンパク質安定化された食品または飲料物の調製方法。
【請求項4】
(a)乾燥された乳タンパク質濃縮物を水性の流体に溶解すること、
(b)脂質組成物またはタンパク質組成物を加えること、および
(c)分散物またはエマルションを形成するために剪断を加えること
を含む、タンパク質安定化された食品または飲料物の調製方法。
【請求項5】
前記安定化された食品または飲料物が乾燥物基準で0.01%(w/w)〜10%(w/w)の脱カルシウム処理されたMPCを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記安定化された食品または飲料物が乾燥物基準で0.1%(w/w)〜5%(w/w)の脱カルシウム処理されたMPCを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記乳タンパク質濃縮物が、50%を越える非脂肪固形分を乳タンパク質として含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記乳タンパク質濃縮物が、55%を越える非脂肪固形分を乳タンパク質として含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記乳タンパク質濃縮物が、70%を越える非脂肪固形分を乳タンパク質として含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記乳タンパク質濃縮物は、少なくとも30%のカルシウムが一価カチオンによって置換されている、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記乳タンパク質濃縮物におけるカルシウムがナトリウムまたはカリウムによって置換されている、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記乳タンパク質濃縮物におけるタンパク質に対してカルシウムの少なくとも30%が酸限外濾過および透析濾過によって除かれている、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記カルシウム除去が、一価カチオンを有するイオン交換樹脂でのカチオン交換によるものである、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記一価カチオンがナトリウムイオンである、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
カルシウム除去が、ナトリウムイオンを有する1つだけのイオン交換樹脂でのカチオン交換によるものである、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記タンパク質安定化された食品または飲料物が少なくとも50%の水を含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記タンパク質安定化された食品または飲料物が、ゲル化またはテクスチャー付与された食品または飲料物である、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記食品または飲料物が、全乳、バターミルク、フィルドミルクおよび代用乳、粉乳およびフィルドミルク粉末、脂肪含有リテンテート、還元牛乳、リテンテートおよびクリーム、コーヒー用クリームおよびコーヒー用クリーム代用物、アイスクリーム、乳児用調製乳、ヨーグルト(固形ヨーグルト、撹拌型ヨーグルトおよび飲用ヨーグルトを含む)、ムース、スープ、ソース、リキュール、肉製品、ペットフード、マヨネーズ、スナック製品、チョコレート、菓子類ならびに脂肪含有ゲルよりなる群から選択される、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記食品または飲料物が、コーヒー用クリーム、コーヒー用クリーム代用物、ヨーグルト、スープ、ソース、肉製品およびキャラメルよりなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記タンパク質安定化された食品または飲料物が水中油型エマルションを含む、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記安定化された食品または飲料物が食品であり、また、ヨーグルトである、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記タンパク質安定化された食品または飲料物がタンパク質分散物を含む、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−502182(P2010−502182A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526559(P2009−526559)
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【国際出願番号】PCT/NZ2007/000231
【国際公開番号】WO2008/026940
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(509059549)フォンテラ コ−オペレイティブ グループ リミティド (5)
【Fターム(参考)】