説明

食品焼成装置

【課題】食品の品質の向上を図ると共に、生産性及び経済性を高める。
【解決手段】本発明に係る食品焼成装置10は、表面に複数の食品焼成凹部24が形成され且つ背面に加熱ユニットが設置された一対の焼成板14と、一対の焼成板14を互いに側方に回動可能且つ食品焼成凹部24が略一致した状態で重合可能なように一対の焼成板14の各一方の側部23側を連結支持する支持部22と、一対の焼成板14の各一方の側部23側の反対側の他方の側部30側から正面側に突出するように設けられた把手31とを備え、焼成板14には各食品焼成凹部24と外部とを連通する連通路29が形成されており、連通路29の外側末端開口部29a,29bは側方に向かって開放されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たい焼きやチーズドック等の食品を焼成するために使用する食品焼成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、たい焼きやチーズドック等の食品を焼成するために食品焼成装置が使用されている。この食品焼成装置は、二枚一対の焼成板を備え、該焼成板の表面に形成された食品焼成凹部内に液体状の生地を充填し、焼成板の背面からの加熱によってある程度の加熱調理を行った状態で各食品焼成凹部が合わさるように一対の焼成板を重合させることで食品を焼成するようになっている。
【0003】
従来のこの種の食品焼成装置としては、例えば、たい焼きを焼成する際に良く使用されるもので前記一対の焼成板がそれぞれ側方に回動可能な両開きタイプの食品焼成装置(例えば、特許文献1参照)や、或いは、チーズドックを焼成する際に良く使用されるもので前記一対の焼成板のうちの一方の焼成板のみが前後方向に回動可能な片開きタイプの食品焼成装置(例えば、特許文献2参照)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−102009号公報
【特許文献2】特開2007−130149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記した従来の食品焼成装置では、食品を焼成する間、食品焼成凹部によって焼成板の内部に密閉空間が形成されるため、該密閉空間の圧力及び沸点温度が上昇し、食品の表面が硬くなり過ぎたり、焼きムラが発生したり、生地の膨らむスピードが早すぎたりするおそれがあり、食品の品質を高めることが難しいといった問題があった。特に、上記した従来の片開きタイプの食品焼成装置では、この種の問題は深刻であった。
【0006】
また、上記した従来の片開きタイプの食品焼成装置により食品を焼成する場合には、回動しない他方の焼成板の食品焼成凹部に対して、生地を流し込み、具材を入れ、さらに生地が膨らむ前に再度生地を流し込んだ後に、前記一方の焼成板を回動させて前記他方の焼成板に重合させる必要があり、一度に焼成できる食品の個数はせいぜい6個が限界であった。したがって、生産性及び経済性の向上が図り難いといった問題があった。
【0007】
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたものであり、食品の品質の向上を図ると共に、生産性及び経済性を高めることのできる食品焼成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するため、本発明に係る食品焼成装置は、表面に複数の食品焼成凹部が形成され且つ背面に加熱ユニットが設置された一対の焼成板と、該一対の焼成板を互いに側方に回動可能且つ前記食品焼成凹部が略一致した状態で重合可能なように前記一対の焼成板の各一方の側部側を連結支持する支持部と、前記一対の焼成板の前記各一方の側部側の反対側の他方の側部側から正面側に突出するように設けられた把手とを備え、前記焼成板には前記各食品焼成凹部と外部とを連通する連通路が形成されており、該連通路の外側末端開口部は側方に向かって開放されていることを特徴とする。
【0009】
そして、本発明に係る食品焼成装置において、前記連通路は、前記食品焼成凹部を挟んで互いに対向する位置に配置された複数の溝により構成されているのが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る食品焼成装置は、上方に開口部が形成され且つ内部に前記加熱ユニットの加熱温度を管理する温度管理部が設けられた機枠と、前記焼成板の側方を通って前記温度管理部と前記加熱ユニットとを電気的に接続する配線ケーブルとを備え、前記一対の焼成板は前記機枠の上方開口部を閉塞するように設けられ、前記支持部は前記機枠の上端部に設けられ、前記連通路の外側末端開口部は前記配線ケーブルから離間した位置に設けられているのが好ましい。
【0011】
さらに、本発明に係る食品焼成装置は、前記焼成板の背面側に設けられるカバーを備え、該カバーには前記食品焼成凹部と異なる種類の食品焼成凹部が形成された焼成板が着脱可能となっていてもよい。
【0012】
さらにまた、本発明に係る食品焼成装置の前記食品焼成凹部はチーズドックの形状を成していてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る食品焼成装置によれば、食品の品質の向上を図ると共に、生産性及び経済性を高めることができる等種々の優れた効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る食品焼成装置の外観を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る食品焼成装置の内部構造を示す断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る食品焼成装置において、小型のチーズドックの食品焼成凹部が形成された焼成板を示す平面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る食品焼成装置において、たい焼きの食品焼成凹部が形成された焼成板を示す平面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る食品焼成装置において、今川焼きの食品焼成凹部が形成された焼成板を示す平面図である。
【図6】図3の変形例を示す平面図である。
【図7】図5の変形例を示す平面図である。
【図8】図3の別の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の説明では、本発明をチーズドックの焼成装置に適用した場合について例示して説明する。
【0016】
図1は本発明の実施形態に係る食品焼成装置の外観を示す斜視図であり、本発明に係る食品焼成装置10は、上方に開口部11が形成されると共に内部に温度管理部12が設けられた機枠13と、機枠13の上方開口部11を閉塞するように設けられた二枚一対の二組の焼成板14と、焼成板14の側方を通って温度管理部12と前記加熱ユニットとを電気的に接続する配線ケーブル34とを備えて構成されている。
【0017】
機枠13は、調理者が立つ側を正面とした場合の左右側壁面及び背壁面を構成するメインパネル15と、正面側に位置して各組の焼成板14の電源スイッチ16及び各焼成板14の温度調節を行うボリュームスイッチ17とが設置されたフロントパネル18と、フロントパネル18に設けられて調理材料が各スイッチ16,17に滴下するのを防止する庇部19と、メインパネル15の下部に固定されて温度管理部12を支持するベースパネル20と、メインパネル15の上端に固定された矩形枠形状のフレーム21とを備えている。
【0018】
また、このフレーム21上には、支持部22が突設されており、この支持部22は各組単位で互いに重合可能となるように各焼成板14を回動可能に連結支持している。そして、支持部22は、各焼成板14の正面側及び背面側で対向し且つ各焼成板14の一方の側部23側でフレーム21に固定された(又は一体の)支持脚部25と、支持脚部25に支持軸26を介して一端が回動可能に連結されると共に他端が各焼成板14の正面及び背面に固定される連結フレーム27,28とを備えている。
【0019】
温度管理部12は、電源スイッチ16のON/OFF操作に連動して各組の焼成板14の加熱開始/停止を制御すると共に、電源スイッチ16がONになっている時に、各焼成板14の加熱温度をボリュームスイッチ17のレベルに応じて調整する。また、温度管理部12は、例えば、各焼成板14に設けた温度センサ(図示せず)の検知温度に応じて各焼成板14の空焚きといった過度の加熱等の制御も行う。
【0020】
各焼成板14は、従来のものより重い重量(例えば、8.5〜9kg/枚)を有する鉄、アルミや真鍮の鋳物製であり、その表面には、例えば、テフロン(登録商標)加工等の表面処理加工が施され、加熱調理中のチーズドックの焦げ付き等が抑制される。そして、各焼成板14の表面には、それぞれに複数(図示では5個)のチーズドック焼成凹部24が形成されており、各焼成板14の重合時に各チーズドック焼成凹部24が略一致するようになっている。
【0021】
また、各焼成板14の表面には各チーズドック焼成凹部24と外部とを連通する連通路として溝29が形成されている。この溝29は、各チーズドック焼成凹部24を左右側方から挟む対向する位置に各チーズドック焼成凹部24に対して複数(図示では2個)ずつ配設されており、溝29の外側末端開口部29a,29bは配線ケーブル34から離間した位置において側方に向かって開放されている。
【0022】
なお、溝29の外側末端開口部29a,29bを配線ケーブル34から離間した位置に開放するとは、チーズドックの焼成時に外側末端開口部29a,29bから排出される蒸気が配線ケーブル34に当たる可能性のある配線ケーブル34の近接位置を避けて外側末端開口部29a,29bを配置する趣旨であり、例えば、配線ケーブル34の近接位置にある一方の外側末端開口部29aを閉塞する代わりに反対側の溝29及び他方の外側末端開口部29bの断面積を大きくしたり、或いは、配線ケーブル34の近接位置にある溝29を配線ケーブル34から離間した位置にある他のチーズドック焼成凹部24の溝29にバイパスしたりすること等を含む趣旨である。
【0023】
各焼成板14には、各焼成板14の一方の側部23の反対側の他方の側部30側から正面側に突出するように把手31が設けられており、この把手31を操作することにより焼成板14が支持部22を支点に回動し、互いに重合するようになっている。
【0024】
各焼成板14の背面には、カバー32が設けられ、カバー32には固定部材33を介して焼成板14が着脱可能となっている。そして、カバー32には、配線ケーブル34の焼成板14側の接続箇所を覆うように配線カバー35が固定されており、この配線カバー35には、各焼成板14の回動時における配線ケーブル34の一端引込部分の負荷を軽減するために蛇腹状等の保護ブーツ36が設けられている。また、配線ケーブル34の他端には、例えば、丸型の接続コネクタ37が設けられており、この接続コネクタ37を温度管理部12に設けられた丸型の被接続コネクタ38と連結することによって電源供給等が行われる。
【0025】
上記したような構成を備えた食品焼成装置10によってチーズドックを焼成する場合、左右の焼成板14をそれぞれ水平に拡げ、両方の焼成板14の各チーズドック焼成凹部24内に生地を流し込み、具材を入れる。そして、前記加熱ユニットによって生地をある程度加熱した上で、支持部22を支点に一方の焼成板14を回動させて他方の焼成板14に重合させ、さらに前記加熱ユニットにより加熱調理し、所定形状のチーズドックを焼成する。
【0026】
このように本発明の実施の形態に係る食品焼成装置10によれば、チーズドックを焼成する間、焼成板14の重量により生地に適度の圧力が作用する共に、チーズドック焼成凹部24の内部で発生する蒸気が溝29を通って外部に放出される。これにより、チーズドック焼成凹部24の内部の圧力及び沸点温度が異常に上昇することがないため、食品の表面が硬くなり過ぎたり、焼きムラが発生したり、生地の膨らむスピードが早すぎたりすることがなく、チーズドックの品質を高めることができる。
【0027】
また、従来は片開きタイプの食品焼成装置で焼成していたチーズドックを本発明の実施の形態に係る食品焼成装置10で焼成することにより、一度に多数のチーズドックを短時間で焼成することができるようになるため、生産性及び経済性を高めることができる。
【0028】
さらに、上記した構成を備えることにより、本発明の実施の形態に係る食品焼成装置10は、例えば、今川焼き等の膨張率の大きいチーズドック以外の焼き菓子等の食品にも使用することができるようになる。そして、食品の焼成中に溝29を通って食品の香り(例えば、チーズドックのチーズの香り、たい焼きの小豆の香り、焼きドーナツのバターの香り等)が外部に拡散されることにより、消費者の購買意欲を高めることができ、集客率の向上を期待することができる。
【0029】
また、溝29の外側末端開口部29a,29bを側方に向かって開放させることにより、食品の焼成中に発生する蒸気が調理者に当たることがなく、調理作業の環境を良好に維持することができる。さらに、溝29の外側末端開口部29a,29bを配線ケーブル34から離間した位置に配設することにより、食品焼成凹部24の内部で発生した高温(100℃以上)の蒸気が配線ケーブル34に当たることがなく、調理作業の安全性を高めることができると共に、食品焼成装置10の耐久性を高めることができる。
【0030】
さらに、焼成板14がカバー32に着脱可能に設けられているため、チーズドック焼成凹部24と異なる種類の食品焼成凹部(例えば、図3に示すような1/3程の小サイズのチーズドック焼成凹部24や、図4に示すようなたい焼き焼成凹部24’や、図5に示すような今川焼き焼成凹部24”)が形成された焼成板14’,14’’に交換することができる。なお、図4の場合には、たい焼き焼成凹部24’の周囲に縁部40が突設されているため、溝29はこの縁部40の一部分を切欠することにより形成される。
【0031】
さらにまた、重量の異なる焼成板に交換することもでき、これにより、食品焼成中の内部圧力を上げ、食品表面のパリパリ感を強弱したり、或いは食品の密度を変えたりすることができ、消費者の好みに合った食品を容易且つ確実に焼成することができる。
【0032】
なお、上記した実施の形態では、連通路として一対の焼成板14の両方に溝29を形成させた場合について説明したが、これは単なる例示に過ぎず、一方の焼成板14にのみ溝を形成させたり、或いは一方又は両方の焼成板14に孔を形成させたりしてもよい。
【0033】
また、図6に示すように、隣接する小サイズのチーズドック焼成凹部24間を連通するようにバイパス溝29’を形成したり、或いは、図7に示すように、配線ケーブル34の近接位置を避けて反対側に溝29”を形成したり、或いは、図8に示すように、配線ケーブル34の近接位置を避けるために一方の外側末端開口部29aを閉塞し、その代わりに隣接する小サイズのチーズドック焼成凹部24間を連通するようにバイパス溝29’を形成すると共に反対側の溝29”及び他方の外側末端開口部29b”の断面積を大きくしたりする等、各種変更が可能である。
【符号の説明】
【0034】
10 食品焼成装置
11 開口部
12 温度管理部
13 機枠
14 焼成板
22 支持部
23 一方の側部
24 食品焼成凹部
29 溝(連通路)
29a,29b 外側末端開口部
30 他方の側部
31 把手
32 カバー
34 配線ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に複数の食品焼成凹部が形成され且つ背面に加熱ユニットが設置された一対の焼成板と、
該一対の焼成板を互いに側方に回動可能且つ前記食品焼成凹部が略一致した状態で重合可能なように前記一対の焼成板の各一方の側部側を連結支持する支持部と、
前記一対の焼成板の前記各一方の側部側の反対側の他方の側部側から正面側に突出するように設けられた把手と、
を備え、前記焼成板には前記各食品焼成凹部と外部とを連通する連通路が形成されており、該連通路の外側末端開口部は側方に向かって開放されていることを特徴とする食品焼成装置。
【請求項2】
前記連通路は、前記食品焼成凹部を挟んで互いに対向する位置に配置された複数の溝により構成されている請求項1に記載の食品焼成装置。
【請求項3】
上方に開口部が形成され且つ内部に前記加熱ユニットの加熱温度を管理する温度管理部が設けられた機枠と、
前記焼成板の側方を通って前記温度管理部と前記加熱ユニットとを電気的に接続する配線ケーブルと、
を備え、前記一対の焼成板は前記機枠の上方開口部を閉塞するように設けられ、前記支持部は前記機枠の上端部に設けられ、前記連通路の外側末端開口部は前記配線ケーブルから離間した位置に設けられている請求項1又は2に記載の食品焼成装置。
【請求項4】
前記焼成板の背面側に設けられるカバーを備え、該カバーには前記食品焼成凹部と異なる種類の食品焼成凹部が形成された焼成板が着脱可能となっている請求項1〜3のいずれか1の請求項に記載の食品焼成装置。
【請求項5】
前記食品焼成凹部はチーズドックの形状を成している請求項1〜4のいずれか1の請求項に記載の食品焼成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−167113(P2011−167113A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33042(P2010−33042)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(396007557)株式会社大和田製作所 (6)
【Fターム(参考)】