説明

食品用保湿剤

【課題】パンやホットケーキなどの小麦粉または粉製品に添加すると、パサパサ感を抑制し、しっとり感を持続、増強し、長時間にわたりそれを維持することができる添加剤を提供する。
【解決手段】無水グルコース単位当りのカルボキシメチル置換度が0.05〜0.4である水不溶性および/または水膨潤性のカルボキシメチルセルロース又はその塩を含有することを特徴とする食品用保湿剤。前記カルボキシメチルセルロースが、非結晶であることを特徴とする食品用保湿剤。パンやホットケーキなどの小麦粉や粉からなる粉製品にシットリ感を持続、増強し、長時間にわたりそれを維持すると共に、ボディー感を付与することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パン、ホットケーキなどの粉用食品において経時的または冷蔵・冷凍保存の乾燥(パサつき)を抑え、保湿性を高めることのできる添加剤を提供するものである。同時に、粉用食品への添加水分を増加させることにより、ボディー感の付与も可能とする。
【背景技術】
【0002】
一般にパン類食品(パン、ホットケーキなど)の粉用食品は、小麦粉(デンプン、グルテン含む)を主原料に、水、発泡剤(酵母、重層など)、食塩、卵、油脂、その他を原料とし、適時、混合、発酵、成型、最終発酵、過熱により製造される。これら、パン類食品に求められる性質は、大きな体積を有し、外観が均一で、内相(パンを切断した場合の切り口)は気泡が細かく均一であること、食感としては、時間を経てもパサつかずソフトでシットリとし、ボディー感を有することである。食感には、パン類食品の水分が重要となる。
パン類食品は、室内、冷蔵庫に放置されると経時的に固化する現象が見られる。これは、乾燥(水分の現象)、デンプンの老化などにより引き起こされるが、これらの防止にはグルテンを多く含む小麦粉を使用して吸水量を増やすこと、糖類、油脂、卵、乳化剤等を多く使用することなどが効果的と言われている。これらの課題を解決するため、酵素などの添加剤(特許文献1〜5)、老化防止・遅延剤(特許文献6)、スコルビン酸を含む添加剤(特許文献7)を添加することか開示されている。
しかし、これらの添加剤のあるものは、パン類食品の風味の低下、コストアップ、またカロリー増加などを招くことになる。また、均一な内相、ソフトでしっとりした食感、風味、保存性の面で十分な効果が得られていない。
【0003】
【特許文献1】特開平9−135656
【特許文献2】特公平7−48972
【特許文献3】特開昭47−43254
【特許文献4】特開昭55−138352
【特許文献5】特公昭43−5701
【特許文献6】特開平9−224549
【特許文献7】特開平11−123046
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記のような従来技術の問題を解決するために創案されたものであり、パンやホットケーキなどの小麦粉または粉製品に添加すると、パサパサ感を抑制し、しっとり感を持続、増強し、長時間にわたりそれを維持することができ、粉からなる食品(パン、ホットケーキ)等に利用できる添加剤を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、軽度にカルボキシメチルされ、水不溶性・水膨潤性のカルボキシメチルセルロース又はその塩が、食品にしっとり感を付与することができることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0006】
即ち、本発明は以下を提供する。
[1]無水グルコース単位当りのカルボキシメチル置換度が0.05〜0.4である水不溶性および/または水膨潤性のカルボキシメチルセルロース又はその塩を含有することを特徴とする食品用保湿剤。
[2]前記カルボキシメチルセルロースが、非結晶であることを特徴とする請求項1記載の食品用保湿剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明の添加剤を小麦粉または粉製品に添加すると、それらの製品への加水量を増加できため、シットリ感、ボディー感を付与することができる。また、発酵等による発泡後の気泡同士の合一を防いで気泡の崩壊を防ぐので、キメの細かな泡を生成するため、食感も向上する。加えて、室温、冷蔵、冷凍保管時の乾燥を防ぐため、長時間にわたってシットリ感を保持することができる。さらに、本添加剤はセルロースを基本骨格としているため、整腸作用などの食物繊維が有する作用を有し、健康増進にも有益であるともに、人間の体内では分解できないので、添加された食品のカロリーアップにならない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の食品用添加剤は、無水グルコース単位当りのカルボキシメチル置換度が0.05〜0.4である水不溶性および/または水膨潤性のカルボキシメチルセルロース又はその塩を主成分として含有するものである。
[カルボキシメチルセルロース又はその塩]
カルボキシメチルセルロース又はその塩は、セルロースを構成するグルコース残基中の水酸基がカルボキシメチルエーテル基に置換された構造を持つ。カルボキシルセルロースは、塩の形態であっても良く、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム塩などの金属塩などとすることができる。本発明においてセルロースとは、D−グルコピラノースがβ−1,4グリコシド結合で連なった構造の多糖を意味し、無水グルコースを基本単位とする。一般に起源、製法等から、天然セルロース、再生セルロース、微細セルロース、非結晶領域を除いた微結晶セルロース等に分類される。天然セルロースとしては、晒または未晒木材パルプ、精製リンター、酢酸菌等の微生物によって生産されるセルロース等が例示される。晒又は未晒パルプの原料は特に限定されず、例えば、木材、木綿、わら、竹等が挙げられる。また、晒又は未晒パルプの製造方法も特に限定されず、機械的方法、化学的方法、あるいはその中間で二つを組み合わせた方法でも良く、例えば、メカニカルパルプ、ケミカルパルプ、砕木パルプ、亜硫酸パルプ、クラフトパルプ等が挙げられる。さらに、製紙用パルプの他に、化学的に精製され、主として薬品に溶解して使用する、人造繊維、セロハンなどの主原料となる溶解パルプを用いてもよい。再生セルロースとしては、セルロースを銅アンモニア溶液、セルロースザンテート溶液、モルフォリン誘導体など何らかの溶媒に溶解し、改めて紡糸されたものが例示される。微細セルロースとは、上記天然セルロースや再生セルロースをはじめとするセルロース系素材を酸加水分解、アルカリ加水分解、酵素分解、爆砕処理、振動ボールミル処理等によって解重合処理したものや、前記セルロース系素材を機械的に処理したものが例示される。
【0009】
本発明においてカルボキシメチル置換度(エーテル化度ともいう)とは、セルロースを構成する無水グルコース単位1モル当りの水酸基(−OH)のうちカルボキシメチルエーテル基(−OCH2COOH)に置換されているもののモル数を示している。なお、カルボキシメチル置換度はDSと略すことがある。本発明のカルボキシメチルセルロース又はその塩は、カルボキシメチル置換度が0.05〜0.4であることが必要である。カルボキシメチル置換度が0.05未満では、カルボキシメチルエーテル基に由来する吸水、膨潤部分が十分形成されず、本発明の特徴とするしっとり感付与、保湿性能を発揮することができない。一方、0.4を超えると水溶性部分が増加して水への溶解が起こり易くなり、本発明の特徴を十分に発揮できない。
【0010】
当該カルボキシメチル置換度は、試料中のカルボキシメチルセルロースを中和するのに必要な水酸化ナトリウム等の塩基の量を測定して確認することができる。この場合、カルボキシメチルエーテル塩の場合には、測定前に予めカルボキシメチルセルロースに変換しておく。測定の際には、塩基、酸を用いた逆滴定、フェノールフタレイン等の指示薬を適宜組み合わせることができる。
【0011】
本発明のカルボキシメチルセルロース又はその塩は、非結晶である方が好ましい。カルボキシメチル置換度が上記範囲を満たしていても、非結晶でなければ、化学的反応性、吸水性に乏しい結晶領域が残っていることに起因して、泡質改善効果、気泡安定性能が落ちる可能性がある。
【0012】
カルボキシメチルセルロース又はその塩が非結晶であることは、X線回折による測定により確認することができる。具体的には、X線回折の測定の結果、非結晶領域に由来する2θ=18.5°の回折ピーク以外には結晶領域に由来する回折ピークを生じないことが確認されれば、非結晶であるということができる。例えば、セルロースI型結晶では、X線回折による測定で2θ=22.6°に002面の回折強度に由来するピークを生じる。
これに対し、本発明のカルボキシメチルセルロース又はその塩の場合は、微結晶セルロースを原料に使用した場合でも2θ=22.6°の回折ピークは消失している方が好ましい。
[カルボキシメチルセルロース又はその塩の水不溶性および/または水膨潤性]
本発明のカルボキシメチルセルロース又はその塩は、水不溶性および/または水膨潤性を示す。すなわち、水不溶性及び水膨潤性のうちの少なくとも一方を示すことが必要であり、好ましくは両方を示すものである。
【0013】
水不溶性とは、試料を水に1〜2重量%添加して3〜6時間撹拌後の状態を目視判定して不溶であれば水不溶性と判断することができる。
【0014】
一方、水膨潤性とは、水に浸漬等接触した場合に体積が増加する(膨潤する)ことを示す。例えば、レーザー回折・散乱式粒度分布計で測定される体積累計50%粒子径に於いて、水を分散媒として測定した値のメタノールを分散媒として測定した値に対する比(水を分散媒として測定した値/メタノールを分散媒として測定した値)として表現することができ、該数値が2.0以上であることが好ましい。2.0未満では吸水、膨潤が不十分となり泡質改善効果、気泡安定性能が十分発揮されない。尚、上限は、カルボキシメチルセルロース又はその塩が水不溶性を示す範囲であれば、特に限定はない。レーザー回折・散乱式粒度分布計としては、水、メタノールのそれぞれを分散媒とした場合の測定が可能であれば特に限定されず、例えば、マイクロトラック Model−9220−SRA(日機装(株)製)等を用いることができる。
【0015】
[カルボキシメチルセルロース又はその塩の製造]
本発明のカルボキシメチルセルロース又はその塩を製造するにあたっては、公知のカルボキシメチルセルロース又はその塩の製法を適用することができる。即ち、原料セルロースをマーセル化剤(アルカリ)で処理してマーセル化セルロース(アルカリセルロース)を調製した後に、エーテル化剤を添加してエーテル化反応させることで本発明のカルボキシメチルセルロース又はその塩を製造することができる。
【0016】
原料のセルロースとしては、上述のセルロースであれば特に制限なく用いることができるが、セルロース純度が高いものが好ましく、特に、溶解パルプ、リンターを用いることが好ましい。これらを用いることにより、純度の高い非結晶のカルボキシメチルセルロース又はその塩を得ることができる。
【0017】
マーセル化剤としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属塩等を使用することができる。エーテル化剤としてはモノクロロ酢酸、モノクロロ酢酸ソーダ等を使用することができる。
【0018】
水溶性の一般的なカルボキシメチルセルロース(DS0.5以上)の製法の場合のマーセル化剤とエーテル化剤のモル比は、エーテル化剤としてモノクロロ酢酸を使用する場合では2.00〜2.45が一般的に採用される。その理由は、2.00以下であるとエーテル化反応が不十分となるため、未反応のモノクロロ酢酸が残って無駄が生じること、及び2.45以上であると過剰のマーセル化剤とモノクロロ酢酸による副反応が進行してグリコール酸アルカリ金属塩が生成するため、不経済であることにある。
【0019】
しかしながら、本発明のカルボキシメチルセルロース又はその塩を得るためには極めて軽度にカルボキシメチルエーテル基を導入する必要がある。そのために、添加するエーテル化剤のモル数を低くすると、一般的に採用されているモル比ではマーセル化剤の添加モル数も少なくすることになる。その結果、セルロース内部、特に化学的反応性に乏しい結晶部分でのマーセル化は不十分となり、結晶構造が完全には破壊されないこともある。
【0020】
本発明のカルボキシメチルセルロース又はその塩を調製する際には、極めて軽度にカルボキシメチル化することが必要である。さらには、セルロース内部、特に化学的反応性に乏しい結晶部分の結晶構造を破壊する、すなわち非結晶性である方が好ましい。結晶構造を破壊するためには、セルロース内部も十分なマーセル化を行うために結晶構造を完全に破壊するに十分なマーセル化剤を添加するとともに、エーテル化剤の添加モル数は少量とすることが好ましい。マーセル化剤の添加量は、原料セルロースの無水グルコース単位当り、通常は1.0〜4.0モル、好ましくは1.2〜3.0モルとなるように調整することができる。前記マーセル化剤の添加量は、本発明で添加することのできるエーテル化剤に対し、通常は過剰である。過剰のマーセル化剤はエーテル化反応の際には副反応の原因となり不経済である。従って、エーテル化剤を添加する前に、反応系中に残存するマーセル化剤と添加するエーテル化剤のモル比(マーセル化剤/エーテル化剤)が2.0〜3.0、好ましくは2.2〜2.8になるように予めマーセル化剤を圧搾脱液して除去するか、鉱酸、有機酸などで中和しておくことが好ましい。
【0021】
本発明のセルロース誘導体の製造に使用する溶媒としては、低級アルコールを挙げることができる。具体的にはメタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール、第3級ブタノール等の単独、または2種以上の混合物と水の混合媒体などである。溶媒の使用量は、一般に、原料セルロースに対し3〜20重量倍とすることができる。尚、低級アルコールと水の合計に対する低級アルコールの割合は60〜95重量%とすることができる。
【0022】
マーセル化処理は、原料セルロースと溶媒、マーセル化剤を混合して行うことができる。この際、反応温度は、通常0〜70℃、好ましくは10〜60℃である。また、反応時間は通常15分〜4時間、好ましくは30分〜2時間である。その後エーテル化処理を行うが、その前に必要に応じて、過剰のマーセル化剤を圧搾脱液して除去するか、鉱酸か有機酸で中和しておいてもよい。エーテル化処理では、エーテル化剤を原料セルロースに添加してエーテル化反応を行う。得られるカルボキシメチルセルロース又はその塩の性質、特にカルボキシメチル置換度は、原料セルロースの種類、エーテル化反応の反応系の溶媒組成、機械的条件、反応温度及び反応時間、その他の要因によって変化する。そのため、前記置換度が0.05〜0.4の範囲となるように、反応条件、特にエーテル化剤の添加量を調整することが必要となる。前記置換度にする際のエーテル化剤の添加量は、一般的には、無水グルコース単位当たり0.05〜1.0モルとすることができる。エーテル化反応の反応温度は、通常50〜90℃、好ましくは60〜80℃である。反応時間は通常30分〜6時間、好ましくは1時間〜3時間である。
【0023】
反応終了後、残存するアルカリ金属塩を鉱酸または有機酸で中和する。必要に応じて副生する無機塩、有機酸塩等を含水メタノールで洗浄して除去し、乾燥、粉砕、分級して本発明のカルボキシメチルセルロース又はその塩を得る。特に乾式粉砕や湿式粉砕を施すと、より微細化されたカルボキシメチルセルロース又はその塩を得ることができる。乾式粉砕で用いる装置としてはハンマーミル、ピンミル等の衝撃式ミル、ボールミル、タワーミル等の媒体ミル、ジェットミル等が例示される。湿式粉砕で用いる装置としてはホモジナイザー、マスコロイダー、パールミル等の装置が例示される。
【0024】
本発明のカルボキシメチルセルロース又はその塩は、高い親水性を示ため、水中では吸水、膨潤して容積比の高いゲル状物質となり、メタノール等の有機溶媒中では吸液も膨潤もしないことが多い。この変化は、レーザー回折・散乱式粒度分布計で測定すると、その平均粒子径は水を分散媒として測定した値とメタノールを分散媒として測定した値の比が2.0以上のときに顕著である。
【0025】
[本発明の添加剤中のカルボキシメチルセルロース又はその塩の含有量]
本発明の添加剤の主成分は、カルボキシメチルセルロース又はその塩であり、添加剤中の含有量は、50重量%以上、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。
【0026】
[本発明の添加剤中のその他の成分]
本発明の添加剤には、カルボキシメチルセルロースまたはその塩の他に、必要に応じて、界面活性剤、水溶性高分子などを添加しても良い。
[添加する食品]
本発明の添加剤を添加する食品としては、シットリ感、ボディー感を長時間維持する必要のある食品であるが、具体的には、パン、ホットケーキ類が挙げられる。
【0027】
[食品中の本発明の添加剤の含有量]
食品中の本発明の添加剤の含有量は、0.05重量%以上、好ましくは0.1重量%以上である。含有量が0.05重量より少ないと十分な泡質改善効果、気泡安定性能を発揮しない。
【実施例】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を実施例により説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。尚、配合量を示す「部」はすべて「重量部」を示す。
【0029】
[実施例1]
回転数を100rpmに調節した二軸ニーダーにイソプロピルアルコール(IPA)522部と水酸化ナトリウム30部を水58部に溶解したものを加え、市販の溶解パルプ(NDPS、日本製紙ケミカル(株)製)を絶乾で100部仕込んだ。30℃で90分間攪拌、混合しマーセル化セルロースを調製後、酢酸を26部添加して過剰のマーセル化剤を中和する。更に攪拌しつつ90%IPA45部に溶解したモノクロロ酢酸11部を添加し、70℃に昇温して90分間エーテル化反応させた。反応終了後、中和、脱液、乾燥、粉砕して無水グルコース単位当りのカルボキシメチル置換度(DS)0.16のカルボキシメチルセルロースナトリウムを得た。これを本発明の添加剤とした。
【0030】
[実施例2]
回転数を100rpmに調節した二軸ニーダーにイソプロピルアルコール(IPA)522部と水酸化ナトリウム33部を水58部に溶解したものを加え、市販の溶解パルプ(NDPS、日本製紙ケミカル(株)製)を絶乾で100部仕込んだ。30℃で90分間攪拌、混合しマーセル化セルロースを調製後、酢酸を16部添加して過剰のマーセル化剤を中和する。更に攪拌しつつ90%IPA45部に溶解したモノクロロ酢酸19部を添加し、70℃に昇温して90分間エーテル化反応させた。反応終了後、中和、脱液、乾燥、粉砕してDS0.28のカルボキシメチルセルロースナトリウムを得た。これを本発明の添加剤とした。
【0031】
[実施例3]
回転数を100rpmに調節した二軸ニーダーにイソプロピルアルコール(IPA)522部と水酸化ナトリウム38部を水58部に溶解したものを加え、市販の溶解パルプ(NDPS、日本製紙ケミカル(株)製)を絶乾で100部仕込んだ。30℃で90分間攪拌、混合しマーセル化セルロースを調製後、酢酸を13部添加して過剰のマーセル化剤を中和する。更に攪拌しつつ90%IPA45部に溶解したモノクロロ酢酸26部を添加し、70℃に昇温して90分間エーテル化反応させた。反応終了後、中和、脱液、乾燥、粉砕してDS0.38のカルボキシメチルセルロースナトリウムを得た。これを本発明の添加剤とした。。
【0032】
[実施例4]
回転数100rpmに調節した二軸ニーダーにイソプロピルアルコール(IPA)435部と水酸化ナトリウム39.5部を水65部に溶解したものを加え、市販の溶解パルプ(NDPS、日本製紙ケミカル(株)製)を絶乾で100部仕込んだ。45℃で30分攪拌、混合しマーセル化セルロースを調整後、50%モノクロル酢酸のIPA溶液9.0部を加え、70℃に昇温して90分間エーテル化反応させた。反応終了後、中和、脱液、乾燥、粉砕してDS0.06のカルボキシメチルセルロースナトリウムを得た。これを本発明の添加剤とした。
【0033】
[実施例5]
回転数100rpmに調節した二軸ニーダーにイソプロピルアルコール(IPA)435部と水酸化ナトリウム29.6部を水65部に溶解したものを加え、市販の晒クラフトパルプ(日本製紙ケミカル(株)製)を絶乾で100部仕込んだ。30℃で1時間攪拌、混合しマーセル化セルロースを調整後、50%モノクロル酢酸のIPA溶液14.0部を加え、70℃に昇温し90分反応させた。反応終了後、中和、脱液、乾燥、粉砕してDS0.11のカルボキシメチルセルロースナトリウムを得た。これを本発明の添加剤とした。
【0034】
[実施例6]
回転数100rpmに調節した二軸ニーダーにイソプロピルアルコール(IPA)522部と水酸化ナトリウム44.4部を水78部に溶解したものを加え、脱脂木粉100部を仕込んだ。45℃で30分攪拌、混合しマーセル化セルロースを調整後、50%モノクロル酢酸のIPA溶液28.0部を加え、70℃に昇温し90分反応させた。反応終了後、中和、脱液、乾燥、粉砕してDS0.23のカルボキシメチルセルロースナトリウムを得た。これを本発明の添加剤とした。。
【0035】
[実施例7]
回転数を100rpmに調節した二軸ニーダーにイソプロピルアルコール(IPA)522部と水酸化ナトリウム23部を水58部に溶解したものを加え、市販の溶解パルプ(NDPS、日本製紙ケミカル(株)製)を絶乾で100部仕込んだ。30℃で90分間攪拌、混合しマーセル化セルロースを調製後、更に攪拌しつつ90%IPA45部に溶解したモノクロロ酢酸23部を添加し、70℃に昇温して90分間エーテル化反応させた。反応終了後、中和、脱液、乾燥、粉砕してDS0.34のカルボキシメチルセルロースナトリウムを得た。これを本発明の添加剤とした。
【0036】
[比較例1]
回転数を100rpmに調節した二軸ニーダーにイソプロピルアルコール(IPA)522部と水酸化ナトリウム30部を水58部に溶解したものを加え、市販の溶解パルプ(NDPS、日本製紙ケミカル(株)製)を絶乾で100部仕込んだ。30℃で90分間攪拌、混合しマーセル化セルロースを調製後、更に攪拌しつつ90%IPA45部に溶解したモノクロロ酢酸9部を添加し、70℃に昇温して90分間エーテル化反応させた。反応終了後、中和、脱液、乾燥、粉砕してDS0.03のカルボキシメチルセルロースナトリウムを得た。これを添加剤とした。
【0037】
[比較例2]
回転数を100rpmに調節した二軸ニーダーにイソプロピルアルコール(IPA)522部と水酸化ナトリウム49部を水78部に溶解したものを加え、市販の溶解パルプ(NDPS、日本製紙ケミカル(株)製)を絶乾で100部仕込んだ。30℃で90分間攪拌、混合しマーセル化セルロースを調製後、更に攪拌しつつ90%IPA45部に溶解したモノクロロ酢酸37部を添加し、70℃に昇温して90分間エーテル化反応させた。反応終了後、中和、脱液、乾燥、粉砕してDS0.45のカルボキシメチルセルロースナトリウムを得た。これを添加剤とした。
【0038】
[比較例3]
回転数を100rpmに調節した二軸ニーダーにイソプロピルアルコール(IPA)522部と水酸化ナトリウム32.4部を水78部に溶解したものを加え、市販の溶解パルプ(NDPS、日本製紙ケミカル(株)製)を絶乾で100部仕込んだ。30℃で90分間攪拌、混合しマーセル化セルロースを調製後、50%モノクロル酢酸のIPA溶液5.0部を加え、70℃に昇温し90分反応させた。反応終了後、中和、脱液、乾燥、粉砕してDS0.005のカルボキシメチルセルロースナトリウムを得た。これを添加剤とした。
【0039】
[無水グルコース単位当りのカルボキシメチル置換度(DS)の測定]
試料約2.0gを精秤して、300ml共栓付き三角フラスコに入れた。硝酸メタノー
ル(無水メタノール1Lに特級濃硝酸100mlを加えた液)100mlを加え、3時間振とうして、カルボキシメチルセルロースナトリウム(Na−CMC)をカルボキシメチルセルロース(H−CMC)にした。その絶乾H−CMC1.5〜2.0gを精秤し、300ml共栓付き三角フラスコに入れた。80%メタノール15mlでH−CMCを湿潤し、0.1N−NaOH100mlを加え、室温で3時間振とうした。指示薬として、フェノールフタレインを用いて、0.1N−H2SO4で過剰のNaOHを逆滴定した。DSは滴定に要した0.1N−H2SO4の量(ml)を次式に代入して算出した。
A=((100×F'−0.1N−H2SO4(ml)×F)×0.1)/H−CMCの絶
乾重量(g)
DS=0.162×A/(1−0.058×A)(mol/C6)
A:H−CMC1gを中和するのに必要な1N−NaOHの量(ml)
F:0.1N−H2SO4のfactor
F':0.1N−NaOHのfactor
【0040】
[結晶化度の測定]
セルロースI型の結晶化度は、試料のX線回折を測定することで求めた。X線回折の測定は、試料をガラスセルに乗せ、X線回折測定装置(RAD−2Cシステム、理学電気社製)を用いて測定した。結晶化度の算出はSeagelらの手法(L.Seagel,J.J.Greely et al,Text.Res.J.,29,786,1959)、並びにKamideらの手法(K.Kamide,et al,polymer J.,17,909,1985)を用いて行い、X線回折図の2θ=4°〜32°の回折強度をベースラインとして、2θ=22.6°の002面の回折強度と2θ=18.5°のアモルファス部分の回折強度から次式により算出した。
xc=(I002C−Ia)/I002C×100
xc=セルロースI型の結晶化度(%)
I002C:2θ=22.6°,002面の回折強度
Ia :2θ=18.5°,アモルファス部分の回折強度
【0041】
[膨潤度の測定]
レーザー回折・散乱式粒度分布計(マイクロトラック Model−9220−SRA、日機装(株)製)により測定される体積累計50%粒子径(平均粒子径)において、膨潤溶媒である水を分散媒に用いて測定した値の非膨潤溶媒であるメタノールを分散媒に用いて測定した値に対する比を膨潤度とした。
【0042】
[溶解性試験]
実施例および比較例の添加剤2gを水100ml中に加え、スターラーで3時間撹拌後、その状態を目視判定した。尚、評価は以下の様に定めた。尚、試料のうち一部でも不溶性を示せばその部分を分離、抽出等して不溶性のカルボキシメチルセルロース又はその塩として利用可能である。よって、下記評価のうち「×」のほか「△」である試料は、水不溶性を示すものと判断できる。
○:溶解、△:一部溶解、×:不溶
【0043】
【表1】

【0044】
[ホットケーキの食感試験]
市販のホットケーキミックス(日本製粉株式会社製ホットケーキミックス)に、牛乳、卵を加え、実施例および比較例の添加剤を1重量%添加し、5分後、ホットプレート(160℃、5分)で焼き、調理直後、4時間後、20時間後のホットケーキのしっとり感を、パネラー8人で5段階評価(良5〜1劣)した。その平均点を表2に示す。
【0045】
[ロールパンの食感試験]
市販の強力粉(銘柄:日清カメリア)に、食塩、砂糖、牛乳、卵、バター、ドライイーストを加え、実施例および比較例の添加剤を1重量%添加し、常法に従ってロールパンを製造。製造後、4時間後、20時間後のロールパンのしっとり感を、パネラー8人で5段階評価(良5〜1劣)した。その平均点を表2に示す。
【0046】
【表2】

【0047】
表2の結果から明らかなように、実施例の添加剤は、ホットケーキのしっとり感を長時間にわたり持続させることが分かる。
表2の結果から明らかなように、実施例の添加剤は、ロールパンのしっとり感を長時間にわたり持続させることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無水グルコース単位当りのカルボキシメチル置換度が0.05〜0.4である水不溶性および/または水膨潤性のカルボキシメチルセルロース又はその塩を含有することを特徴とする食品用保湿剤。
【請求項2】
前記カルボキシメチルセルロースが、非結晶であることを特徴とする請求項1記載の食品用保湿剤。

【公開番号】特開2010−226983(P2010−226983A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−76448(P2009−76448)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(502368059)日本製紙ケミカル株式会社 (86)
【Fターム(参考)】