説明

食品貯蔵庫

【課題】消費電力の増加を抑制しながら、小片集合体からなる食品を保存する場合でも良い食品保存状態を得ることのできる食品貯蔵庫を提供する。
【解決手段】切替室111内部に備えた密閉容器161内部に対して食品を収容した直後から脱気手段160による脱気工程と脱気解除工程とを行なう脱気サイクルを少なくとも一回行い、脱気解除工程において切替室111の所定温度よりも低い冷凍室113内のガスを密閉容器161内に導入することにより、例えば牛ミンチのように小片集合体からなる食品を保存する場合でも小片間の微小空間まで新しい空気を容易に通気可能となるので食品保存温度への移行を早めることができ保鮮性に優れた食品保存状態を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品貯蔵庫による食品保存に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、食品の安全や品質に対する認識が高まる中で食品貯蔵庫に対しては安全でおいしくかつ長期間保存できる技術が求められる。また、家庭用の食品貯蔵庫である冷蔵庫においても同様にそのような貯蔵庫を有する機種が好まれる傾向にあるが、単純に食品保存温度を低くすると冷蔵庫の消費電力量が増大してしまう。それに対して食品貯蔵庫内部を常圧よりも真空度の高い環境内で食品保存することで食品保存温度を下げずに食品の品質を維持して長期保存可能としたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
以下、図面を参照しながら、上記従来の食品貯蔵庫について説明する。
【0004】
図4は、従来の食品貯蔵庫の正面図である。図5は、従来の食品貯蔵庫の風路構成図である。図6は、従来の食品貯蔵庫の真空保存容器断面図である。図4から図6に示すように従来の食品貯蔵庫本体1は最上部に配置され3℃〜5℃程度の温度帯に冷却設定された冷蔵室10と、冷蔵室10に対して開閉自在に構成された冷蔵室ドア11と、冷蔵室10の下方に配置された貯氷室20と、貯氷室20に引出し開閉自在に構成された貯氷室ドア21と、貯氷室20と左右並列に配置され約9℃〜約−20℃程度の温度帯に冷却切替可能な切替室30と、切替室30に引出し開閉自在に構成された切替室ドア31と、貯氷室20と切替室30の下方に配置され3℃から7℃程度の温度帯に冷却設定された野菜室40と、野菜室40に引出し開閉自在に構成された野菜室ドア41と、野菜室40の下方の最下部に配置され−18℃から−20℃程度の温度帯に冷却設定された冷凍室50と、冷凍室50に引出し開閉自在に構成された冷凍室ドア51とから構成される。
【0005】
冷蔵室ドア11には各貯蔵室の温度や状態の設定をしたり現在の様子を表示する操作パネル60を備える。
【0006】
切替室30には切替室ドア31の開時に出し入れでき、内部の空気を脱気状態に保持可能な真空密閉保存容器70を備える。
【0007】
真空密閉保存容器70は例えばポリサルファンなどのしなりのある軟樹脂材料で形成された容器本体71、フタ72と、フタ72を容器本体に密閉固着するパッキン73と、フタ72に設けられ真空密閉保存容器70内の気体を外部に吐き出す通気孔74と、通気孔74を通じて内部から外部へは気体を流出するが外部から内部への気体流入は阻止可能な逆止弁75とから構成される。
【0008】
また、食品貯蔵庫本体1は貯蔵室内の空気と熱交換を行ない冷気を発生させる冷凍サイクル(図示せず)を備え、冷凍サイクルで発生した冷気を各貯蔵室に導入して所定の設定温度に冷却保持する冷却風路80を有する。
【0009】
冷却風路80には熱交換を行ない冷気を発生する冷却器81と、冷却器81で発生した冷気を送り出すファンモータ82と、冷凍室50まで冷気を導く冷凍室送風路83と、他の貯蔵室に冷気を導く各室送風路84と、各室送風路84内に備えられ各貯蔵室への冷気の導入量を調節する冷蔵ダンパ85、貯氷ダンパ86、切替ダンパ87、冷凍ダンパ88とを備える。
【0010】
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作を説明する。
【0011】
まず、食品貯蔵庫本体1の運転により冷却器81にて冷気が発生し、ファンモータ82で強制的に冷気を循環させながら必要に応じて各ダンパが作用することにより各貯蔵室が設定された温度に冷却保持される。
【0012】
また、切替室ドア31を開けて真空密閉保存容器70を取り出し、食品を収容後に再び真空密閉保存容器70を切替室30に入れると真空密閉保存容器70が冷却されるが、真空密閉保存容器70内部の体積変化は微小であるためボイルシャルルの法則により真空密閉保存容器70内部の圧力が減少する。
【0013】
この時、収容する食品の温度が高いほど温度差が大きいので圧力減少度が増す。容器本体71、フタ72の材料をポリカーボネイトのような硬い樹脂で形成した場合、温度の高い食品を収容すると環境ホルモンの一種であるビスフェノールAが流出する恐れがあるがポリサルファンは環境ホルモンの危険性が無いので安全に食品を保存できる。
【0014】
また、切替室30から取り出し時にしなりのあるフタ72を押圧するとフタ72の変形により真空密閉保存容器70内部の圧力が増すので通気孔74を通じて内部の気体が流出するが、押圧を解除しても逆止弁75により外部から内部への気体流入を阻止されたままフタ72の変形が解除されるので真空密閉保存容器70内部の圧力が更に減少する。
【0015】
いずれの場合においても圧力減少後の真空密閉保存容器70はパッキン73と逆止弁75とにより脱気状態を保持され、切替室30の設定温度が低いほど冷却されて高い真空度状態を実現することができる。
【0016】
このように高い真空度でかつ低温で食品を保存することにより細菌の増加、食品の酸化、酵素の反応を抑制することができ、常圧環境下でより低い温度で保存した場合と同等の保存期間が得られるので食品貯蔵庫本体1の消費電力量を増加させることなく使い勝手の良い食品貯蔵庫を得ることができる。
【特許文献1】特開2005−55031号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、上記従来の構成では温度の高い食品を収容する場合、ボイルシャルルの法則により、圧力変化度が大きくなるので、容器内圧力が低い状態になるため、食品保存に優れるが、例えばミンチやばら肉などの生肉で小片集合体からなる食品を保存する場合には初期の温度が低いので圧力減少度が小さくなり、更に密閉されているので食品内部まで冷却されるのにより長い時間を必要とする為、細菌の増加、食品の酸化、酵素の反応を抑制することが難しく良い食品保存状態を得られにくいという課題があった。例えば切替室30の設定を−8℃程度のソフトフリージングに設定してミンチを冷却する場合には−1℃〜−5℃の最大氷結晶生成帯の通過速度が遅いことで食品表面の変色度や細胞損傷度が大きくなるので外観や味の品質を劣化させてしまう。
【0018】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、小片集合体からなる食品などの内部まで冷却するのに時間を要する食品でも保鮮性に優れた食品保存状態を得られる食品貯蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記従来の課題を解決するために、本発明の食品貯蔵庫は、貯蔵室内に食品を収容した直後に脱気手段にて脱気し、所定時間後に貯蔵室の所定温度と異なる温度のガスを貯蔵室内に導入する脱気工程と脱気解除工程からなる脱気サイクルを少なくとも1回有するとしたものである。
【0020】
これによって、小片集合体からなる食品を保存する場合に、小片の微小空間まで所定温度の冷風を容易に通気可能となり、最も冷却速度が遅い食品内部の冷却を速めることができ、所定の保存温度までの到達時間が短縮できることで、食品全体における氷結晶生成帯の通過温度の高速化と所定温度以上の高温における暴露時間の短縮により保鮮性の向上が可能である。
【0021】
従来の方法で食品内部の冷却速度を本発明と同等レベルを得るためには、例えば、食品と冷却風の温度差を拡大する方法や冷却風の風量を増加させる必要がある。前者は冷凍サイクルの蒸発温度を低下させる必要があり消費電力の増加に加えて、冷却風の絶対湿度も低下し食品の乾燥を促進させ保鮮性が低下する。後者は風量増加により食品の乾燥を促進させ保鮮性が低下し、特に冷却風に直接暴露される食品表面は顕著である。
【0022】
このように、本発明は従来に比して前述した保鮮性向上に加えて、冷却風と食品との熱交換面積が格段に増加するため、本発明の脱気手段の動作による必要エネルギー量は従来の必要エネルギー量(消費電力量)に比べて小さくなり、省エネルギー化を図ることができる。
【0023】
また、例えば−8℃に冷却保存する場合には−18℃の冷気を、20℃に加温保存する場合には30℃の暖気を導入することで小片の内部までの熱伝達速度が増すので更に保鮮性に優れた食品保存状態を得ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の食品貯蔵庫は、消費電力の増加を抑制しながら、小片集合体からなる食品を保存する場合でも保鮮性に優れた食品保存状態を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
請求項1に記載の発明は、開口部を有する断熱箱体と、前記開口部を開閉する扉と、前記断熱箱体内部の貯蔵室を所定温度に保持可能な恒温化手段と、前記貯蔵室内部を脱気する脱気手段と、前記脱気手段による脱気作用を解除する脱気解除手段とからなり、前記貯蔵室内に食品を収容した直後から脱気サイクルを少なくとも一回行い、前記脱気サイクルは、前記脱気手段にて前記貯蔵室内を脱気する脱気工程と、前記脱気工程が終了した所定時間後に前記脱気解除手段にて脱気解除を行う脱気解除工程とからなり、前記脱気解除手段は前記貯蔵室の所定温度と異なる温度のガスを前記貯蔵室内に導入することにより、これによって、小片集合体からなる食品を保存する場合に、小片の微小空間まで所定温度の冷風を容易に通気可能となり、最も冷却速度が遅い食品内部の冷却を速めることができ、所定の保存温度までの到達時間が短縮できることで、食品全体における氷結晶生成帯の通過温度の高速化と所定温度以上の高温における暴露時間の短縮により保鮮性の向上が可能である。
【0026】
従来の方法で食品内部の冷却速度を本発明と同等レベルを得るためには、例えば、食品と冷却風の温度差を拡大する方法や冷却風の風量を増加させる必要がある。前者は冷凍サイクルの蒸発温度を低下させる必要があり消費電力の増加に加えて、冷却風の絶対湿度も低下し食品の乾燥を促進させ保鮮性が低下する。後者は風量増加により食品の乾燥を促進させ保鮮性が低下し、特に冷却風に直接暴露される食品表面は顕著である。
【0027】
このように、本発明は従来に比して前述した保鮮性向上に加えて、冷却風と食品との熱交換面積が格段に増加するため、本発明の脱気手段の動作による必要エネルギー量は従来の必要エネルギー量(消費電力量)に比べて小さくなり、省エネルギー化を図ることができる。
【0028】
また、例えば−8℃に冷却保存する場合には−18℃の冷気を、20℃に加温保存する場合には30℃の暖気を導入することで小片の内部までの熱伝達速度が増すので更に保鮮性に優れた食品保存状態を得ることができる。
【0029】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、貯蔵室内には扉開時に前記貯蔵室内から取り出して開閉自在な密閉容器を備え、恒温化手段は前記密閉容器外周を所定温度のガスが流れることで前記密閉容器を所定温度に保持し、前記密閉容器内部のみに脱気とガス導入とを行なうとすることにより、貯蔵室全体を脱気する場合に比べて脱気空間を限定することで脱気手段の簡素化を図ることができコストダウンを図ることができる。
【0030】
また、扉開時に密閉容器のみ取り出して食品を出し入れできるので食品収容の手間が軽減でき、使い勝手を良くすることができる。
【0031】
また、小片集合体からなる食品を保存した場合、脱気した後の真空度やガス導入量によっては瞬間的なガスの流入により小片が飛散する可能性があり、密閉容器とすることで貯蔵室全体を掃除する手間が省け、密閉容器自身は取り出して容易に洗うことができるので清掃性を向上させることができる。
【0032】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、脱気後に導入するガスの湿度がガス導入先の湿度と異なるとしたものであり、例えば加温保存する場合には乾燥による食品劣化を必要に応じて高湿度のガスを導入することによって劣化を抑制できる。また、冷却保存する場合には逆に乾燥したガスを導入することによって密閉容器内の食品への霜付きを軽減することによって劣化を抑制できる。
【0033】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の発明において、脱気手段は脱気後所定の真空度を保持可能な逆止弁を有し、ガス導入は逆止弁の開放により行なうとするものであり、事前に脱気していることで逆止弁の開放により自動的にガスの導入が行なわれるのでガス導入に対する構造を簡素化でき、コストダウンを図ることができる。
【0034】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の発明において、脱気後のガス導入流量は0.15m/min以上であるとするものであり、小片集合体からなる食品を保存した場合でも小片間の微小空間でのガス流通量が増加することで熱伝達速度が増大し更に良い保存状態を得ることができる。
【0035】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0036】
(実施の形態1)
図1は本発明の本実施の形態1における食品貯蔵庫の正面図、図2は同実施の形態の食品貯蔵庫の縦断面図、図3は同実施の形態の食品貯蔵庫の要部縦断面図である。
【0037】
図1から図3において、食品貯蔵庫100の筐体である断熱箱体101は樹脂にて形成された内箱102と金属磁性体にて形成された外箱103との間に断熱材104を充填したものであり、前面開口部101aを有し、仕切壁105,106,107,108により、上部より冷蔵室109、製氷室110、切替室111、野菜室112、冷凍室113と複数の貯蔵室を形成している。但し、製氷室110と切替室111とはそれぞれ左右並列に配置されている。
【0038】
また、各貯蔵室には全閉時に前面開口部101aを閉塞するように断熱箱体101と連結され、各固有の厚さの断熱壁を有する冷蔵室ドア109a、製氷室ドア110a、切替室ドア111a、野菜室ドア112a、冷凍室ドア113aを備える。
【0039】
また、冷蔵室ドア109aは右側上下端をそれぞれ回転軸を有する上部ヒンジ114と下部ヒンジ115とで断熱箱体101と回動開閉自在に連結されている。
【0040】
その他の貯蔵室ドアは引出し式であり、それぞれ製氷室レール部材110b(図示せず)、切替室レール部材111b(図示せず)、野菜室レール部材112b(図示せず)、冷凍室レール部材113b(図示せず)にて断熱箱体101と各貯蔵室とを連結され、前後方向に開閉自在に構成されている。
【0041】
更に各貯蔵室ドアの断熱箱体101側の面は全閉時に前面開口部101aとの間に5mm程度の空間116を有し、空間116は各貯蔵室ドアの断熱箱体101側の面の上下左右4辺に設けられたマグネットを有するガスケット117の磁力にて前面開口部101aにガスケット117を吸着させることで閉塞され、各貯蔵室は略密閉にシールされる。
【0042】
また断熱箱体101には食品貯蔵庫100を運転時に冷却する冷凍サイクル118(図示せず)を有する。
【0043】
冷凍サイクル118が作用することにより、冷蔵室109と野菜室112とは約5℃の冷蔵温度帯に、製氷室110と冷凍室113とは約−18℃の冷凍温度帯に冷却保持され、切替室111は約0℃のチルド温度帯,約−1〜−5℃程度のパーシャル温度帯,約−10℃の熟成冷凍温度帯,約−18℃の冷凍温度帯と複数の冷却保持温度帯に変更可能に構成されている。
【0044】
パーシャル温度帯においては弱設定で約−1℃、中設定で約−3℃、強設定で約−5℃と更に細かく分類されており、使用者の好みの微凍結状態を選択できる。
【0045】
また、各貯蔵室の湿度は冷凍サイクル118の運転状況により変動するが、通常は冷却保持温度帯が低いほど湿度は低くなる。
【0046】
また、食品貯蔵庫100は使用者が水を補充することにより自動で氷を作ることができる自動製氷機能を有する。
【0047】
自動製氷機能は冷蔵室109内に備えられた給水タンク150と、製氷室110内に備えられた自動製氷メカ151と、給水タンク150と自動製氷メカ151とを連結する給水経路152とを有する。
【0048】
使用者が給水タンク150のみを取り出して水道などの水を補充し、再び給水タンク150を冷蔵室109内の所定の位置に設置すると、所定のタイミングで自動で給水経路152を通じて給水タンク150から自動製氷メカ151に所定量の水が供給され、製氷室110内の冷凍温度雰囲気中で冷却され氷となる。
【0049】
また、製氷室110内には製氷室容器153を備え、製氷室容器153は製氷室ドア110aの開閉に伴って前後方向に移動可能に構成され、自動製氷機能が氷ができたことを検知すると自動製氷メカ151が離氷して製氷室容器153に氷を貯留する。
【0050】
その後再び自動製氷メカ151に所定量の水が供給されることで連続的な自動製氷が可能となるが、水を供給するたびに給水タンク150の水が減少していくので再度給水タンク150を取り出して水を補充する必要がある。
【0051】
本自動製氷機能は約1日で給水タンク150の最大貯水量を製氷できる能力を有する。
【0052】
また、切替室111には脱気手段160と、密閉容器161と、ドア開閉検知手段162(図示せず)を備える。
【0053】
密閉容器161は切替室ドア111aの開閉に伴って前後方向に移動可能で、切替室ドア111a開時には密閉容器161のみ取り出し可能に構成されている。
【0054】
また、脱気手段160は密閉容器161よりも切替室110の奥側に固定配置され、切替室ドア111a閉時には密閉容器161と連結し、ドア開閉検知手段162が切替室ドア111aが閉状態であることを検知すると密閉容器161内部のみを脱気及び脱気解除によるガス導入を行う脱気手段と脱気解除手段とを兼ね備えており、切替室ドア111a開時には密閉容器161との連結を解除するよう構成、制御されている。
【0055】
もし、脱気手段160動作時に切替室ドア111aが開けられた場合にはドア開閉検知手段162からの信号により、ただちに脱気手段160の動作を停止するように制御されている。
【0056】
また、切替室ドア111a開時には冷凍サイクル118の動作により発生した冷気が切替室111の冷却保持温度帯に応じて温度、もしくは冷気の流量や流入時間を変えながら切替室111内に流入し、密閉容器161外周を流れることで密閉容器161を所定温度に冷却保持する。
【0057】
密閉容器161は金属などの良熱伝導性材料で形成された容器本体170と、透明な樹脂材料で構成された容器フタ171と、容器本体170と容器フタとを密閉固着する締結部材172とから構成される。
【0058】
容器本体170は略直方体形状であり上面開口部全周に縁取られた容器フランジ170aと、奥側側面に設けられた容器通気孔170bとを有する。
【0059】
容器フタ171は容器本体171より一回り大きい略方形板状であり、容器フランジ170aと対向する位置全周に設けられたフタフランジ171aと、フタフランジ171aの下面側でフタフランジ171aの全周に設けられゴムなどの軟質材料で形成されたシール部材171bとを有する。
【0060】
締結部材172はゴムなどの軟質材料で形成され、断面略コの字形状の両端部が開放されたひも状であり、締結時には容器フランジ170aとフタフランジ171aとを上下辺で挟み込んで全周覆うことで容器本体170と容器フタ171とを密閉固着する。
【0061】
脱気手段160は脱気を行なう脱気部180と、切替室ドア111a閉時に容器通気孔170bと対向して密閉容器161と脱気部180とを連結する連結部190と、連結部190に備えられ密閉容器161内部との通気を所定のタイミングで開放もしくは遮断切替可能な連結部逆止弁191と、脱気部180と連結部190との間から分岐して他端を冷凍室113内に開放した導入部200と、導入部200の切替室111内に備えられ冷凍室113との通気を所定のタイミングで開放もしくは遮断切替可能な導入部逆止弁201と、ドア開閉検知手段162と連動して脱気部180,連結部逆止弁191,導入部逆止弁201をそれぞれ所定のタイミングで動作させる制御手段210(図示せず)を有する。
【0062】
制御手段210は脱気工程においては脱気手段として脱気部180の動作と連結逆止弁191の解放とを行ない密閉容器161内部を脱気する。
【0063】
また、脱気工程を所定時間動作させる、あるいは所定圧力に到達すると脱気解除工程へ移行し、脱気解除手段として連結逆止弁191と導入部逆止弁とを同時に開放することで冷凍室113内の空気を密閉容器161内へ導入する。
【0064】
これら脱気工程と脱気解除工程とを一連で行うサイクルを脱気サイクルとする。
【0065】
また、容器通気孔170b,連結部190,連結部逆止弁191,連結部導入部200,導入部逆止弁201はガス導入時の流量が0.15m/min以上となるように構成されている。
【0066】
また、制御手段210は脱気手段160の動作時において脱気を行なっている時には連結部逆止弁191のみを開放し、ガス導入時には連結部逆止弁191と導入部逆支弁201とを共に開放するように設定されている。
【0067】
一方、脱気手段160停止時においては切替室ドア111aが閉まっている時は連結部逆止弁191と導入部逆支弁201とを共に遮断し、切替室ドア111aが開いている時には連結部逆止弁191のみを開放するように設定されている。
【0068】
また、連結部逆止弁191と導入部逆支弁201とは例えば食品貯蔵室100が動作せずに制御手段210からの指示が無い場合には遮断状態であるように構成されている。
【0069】
例えば、本実施の食品貯蔵庫100においては切替室111の設定温度を−10℃、密閉容器161の容量を20L、1回の脱気で大気圧から約30kPa減圧、切替室ドア111a閉後10秒後に脱気開始、60秒間脱気後120秒間脱気保持、冷凍室113内の空気を導入して脱気解除し60秒間保持後再び脱気開始という脱気サイクルを240秒おきに9回行ない、最後10回目の脱気状態を保持したまま保存すると約100gの牛ミンチの−10℃到達時間が通常6時間かかるのに対して約4時間ほどに短縮できる。
【0070】
また、食品貯蔵庫100が置かれる設置床面220から食品貯蔵庫100の断熱箱体101の上端部までの高さをH11、切替室ドア111a(=製氷室ドア110a)上端部までの高さをH12、野菜室ドア112a上端部までの高さをH13、冷凍室ドア113a上端部までの高さをH14、冷凍室ドア113a凸形状下端部までの高さをH15と設定し、例えば本実施の形態の食品貯蔵庫ではH11を1730mm、H12を860mm、H13を677mm、H14を342mm、H15を6.5mmと設定している。
【0071】
また、食品貯蔵庫100の幅をW2、奥行きをD2と設定し、同じく本実施の形態の食品貯蔵庫100ではW2を680mm、D2を690mmと設定している。
【0072】
更に、冷蔵室ドア109aの高さをh11、切替室ドア111a(=製氷室ドア110a)の高さをh12、野菜室ドア32aの高さをh13、冷凍室ドア33aの左右端部の高さをh14と設定し、同じく本実施の形態の食品貯蔵庫ではh11を859mmとして最も大きくし、h13を320mm、h14を330mmとして一番下の冷凍室113を野菜室112よりも大きくし、h12を最も小さい177.5mmに設定している。これによって食品貯蔵庫100の高さに対する冷蔵室ドア30aの割合はh11/H11×100=49.7%で概ね1/2となっている。なお、正確に言うと冷蔵室109の区画高さは冷蔵室ドア109a高さと異なるが、本実施の形態では冷蔵室ドア109a高さにて代替するものとする。
【0073】
以上のように構成された食品貯蔵庫について、以下その作用を説明する。
【0074】
まず、冷凍サイクル38の作用により切替室111は−10℃に、他の貯蔵室も各設定温度に冷却保持される。
【0075】
切替室ドア111aを開けて密閉容器161を取り出し、締結部材172を外して容器フタ171を開けると食品の出し入れができる。
【0076】
密閉容器161を取り出す時には制御手段210により連結部逆止弁191が開放されているので容易に密閉容器161と連結部190との連結が解除でき、密閉容器161内部は大気圧に戻る。
【0077】
食品を収容して密閉容器161を切替室111内に収容すると、ドア開閉検知手段162が切替室ドア111aの閉状態を検知して脱気開始、60秒間脱気後120秒間脱気保持、冷凍室113内の空気を導入して脱気解除し60秒間保持後再び脱気開始という脱気サイクルを240秒おきに9回繰返し10回目の脱気状態を保持したまま−10℃まで冷却される。
【0078】
脱気時には制御手段210により連結部逆止弁191のみが開放され、脱気部180が動作することで密閉容器160内部のみが大気圧から約30kPa低い真空度まで脱気される。
【0079】
一方、冷凍室113内の空気導入時には制御手段210により連結部逆止弁191と導入部逆支弁201とが共に開放されることで密閉容器161内部と冷凍室113内との圧力差により自動的に冷凍室113内部の空気が密閉容器161内部に導入される。
【0080】
この時、冷凍室113の方が切替室111の設定温度より低いので密閉容器161内部にはより低い温度かつより低い湿度の空気が導入されることになる。
【0081】
したがって、密閉容器161内部の食品は霜が付きにくい環境内で急速に冷凍される。
【0082】
以上のように本実施の形態においては切替室111内部に脱気手段である脱気部180及び脱気解除手段である連結部逆止弁191を備えた脱気手段160を有し、切替室111内に食品を収容した直後に脱気手段160にて脱気して所定時間後に所定時間後に切替室111の設定温度と異なる冷凍室113内部の空気を脱気解除手段により密閉容器161内部に導入する、脱気工程と脱気解除工程からなる脱気サイクルを少なくとも1回有することにより、例えば牛ミンチのように小片集合体からなる食品を保存する場合でも小片間の微小空間まで新しい空気を容易に通気可能となるので食品保存温度への移行を早めることができ保鮮性に優れた食品保存状態を得ることができる。
【0083】
また、脱気解除時に導入するガスを切替室111より温度の低い冷凍室113内のガスとすることでより食品保存温度への移行を早めることができ保鮮性に優れた食品保存状態を得ることができる。
【0084】
脱気手段160を作用させることにより食品貯蔵庫100の消費電力が増加する場合もあるが、切替室111の設定温度を下げて冷凍サイクル118の冷凍能力向上もしくは運転率を増加させる場合に比べると増加分は微小であり消費電力量の抑制を図ることもできる。
【0085】
また、切替室111内に切替室ドア111a開時に切替室111内から取り出して開閉自在な密閉容器161を備え、恒温化手段は密閉容器161外周を冷凍サイクル118で発生した所定温度の冷気を流すことで密閉容器161を所定温度に保持し、密閉容器161内部のみに脱気と空気導入を行なうとすることにより、切替室111全体を脱気する場合に比べて脱気空間を限定することで脱気手段160の簡素化を図ることができコストダウンを図ることができる。
【0086】
また、切替室ドア111a開時に密閉容器161のみ取り出して食品を出し入れできるので食品収容の手間が軽減でき、使い勝手を良くすることができる。
【0087】
また、小片集合体からなる食品を保存して空気導入時に瞬間的な空気の流入により小片が飛散した場合でも、切替室111全体を掃除する手間が省け、密閉容器161自身は取り出して容易に洗うことができるので清掃性を向上させることができる。
【0088】
脱気後に導入する冷凍室113内部の湿度が密閉容器161内部の湿度より低いことにより密閉容器161内の食品への霜付きを軽減することによって劣化を抑制できる。
【0089】
また、脱気手段160は脱気後所定の真空度を保持可能な連結部逆止弁191と導入部逆止弁201とを有し、冷凍室113内部の空気導入を連結部逆止弁191と導入部逆止弁201との同時開放により行なうことにより自動的に空気の導入が行なわれるので空気導入に対する構造を簡素化でき、コストダウンを図ることができる。
【0090】
また、脱気後の空気導入流量を0.15m/min以上とすることにより、小片集合体からなる食品を保存した場合でも小片間の微小空間での空気流通量が増加することで熱伝達速度が増大し更に保鮮性に優れた保存状態を得ることができる。
【0091】
なお、本実施の形態では脱気後の圧力を大気圧から約30kPa低い真空度、サイクルを10回としたが、食品の保存状態が許す範囲内であれば圧力減少度は小さく、サイクルは少ない方が食品の乾燥や小片集合体からなる食品の飛散を抑制できるので望ましい。
【0092】
また、脱気手段160の動作をドア開閉検知手段162と連動させるとしたが、例えば冷蔵室ドア109aに脱気手段160の動作スイッチを設けて手動で脱気手段160の動作を開始するとしても良い。その場合には脱気手段160の動作時間が減るので脱気手段160の長期信頼性に関連する部分を簡素化してコストダウンを図ったり、先に密閉容器161に収容していた食品を不用意に乾燥させてしまうことを防止できる。
【0093】
また、本実施の形態では最下部に冷凍室113を設けたが、冷凍室113を切替室111の下にして野菜室112を最下部に配置すると導入部200を小さくできるのでコストダウンを図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
以上のように、本発明にかかる食品貯蔵庫は、消費電力の増加を抑制しながら小片集合体からなる被保存物を早急に設定温度まで冷却もしくは加温できるので、その他の保温器の用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の実施の形態1における食品貯蔵庫の正面図
【図2】同実施の形態の食品貯蔵庫の縦断面図
【図3】同実施の形態の食品貯蔵庫の要部縦断面図
【図4】従来の食品貯蔵庫の正面図
【図5】従来の食品貯蔵庫の風路構成図
【図6】従来の食品貯蔵庫の真空保存容器断面図
【符号の説明】
【0096】
100 食品貯蔵庫
101 断熱箱体
101a 前面開口部
111 切替室(貯蔵室)
111a 切替室ドア(扉)
113 冷凍室(貯蔵室)
160 脱気手段
161 密閉容器
170 容器本体
180 脱気部
190 連結部
191 連結部逆止弁
200 導入部
201 導入部逆止弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する断熱箱体と、前記開口部を開閉する扉と、前記断熱箱体内部の貯蔵室を所定温度に保持可能な恒温化手段と、前記貯蔵室内部を脱気する脱気手段と、前記脱気手段による脱気作用を解除する脱気解除手段とからなり、前記貯蔵室内に食品を収容した直後から脱気サイクルを少なくとも一回行い、前記脱気サイクルは、前記脱気手段にて前記貯蔵室内を脱気する脱気工程と、前記脱気工程が終了した所定時間後に前記脱気解除手段にて脱気解除を行う脱気解除工程とからなり、前記脱気解除手段は前記貯蔵室の所定温度と異なる温度のガスを前記貯蔵室内に導入することを特徴とする食品貯蔵庫。
【請求項2】
貯蔵室内には扉開時に前記貯蔵室内から取り出して開閉自在な密閉容器を備え、恒温化手段は前記密閉容器外周を所定温度のガスが流れることで前記密閉容器を所定温度に保持し、前記密閉容器内部のみに脱気とガス導入を行なうことを特徴とする請求項1に記載の食品貯蔵庫。
【請求項3】
脱気後に導入するガスの湿度がガス導入先の湿度と異なることを特徴とする請求項1または2に記載の食品貯蔵庫。
【請求項4】
脱気手段は脱気後所定の真空度を保持可能な逆止弁を有し、ガス導入は逆止弁の開放により行なうことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の食品貯蔵庫。
【請求項5】
脱気後のガス導入流量は0.15m/min以上であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の食品貯蔵庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−41804(P2009−41804A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−205301(P2007−205301)
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】