説明

食器洗浄機用洗浄剤組成物

【課題】油汚れ、でんぷん汚れおよび茶渋汚れに対して優れた洗浄力を有する食洗機用洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】(A)下記一般式(I)で示される構造の配位子と、CuおよびMnから選ばれる1種以上の遷移金属を含む金属触媒、(B)過酸化水素、および水中で過酸化水素を発生する化合物から選ばれる1種以上の過酸化物、および(C)非イオン性界面活性剤を含有することを特徴とする食洗機用洗浄剤組成物。
[化1]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食器洗浄機用洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
食器洗浄機(以下、食洗機ということもある。)用洗浄剤組成物においては、油汚れ、でんぷん汚れおよび茶渋汚れをきれいに洗浄できる程度の高い洗浄力が求められている。
下記特許文献1には、特定の非イオン系界面活性剤を含む界面活性剤と、ビルダーと、洗剤用酵素と、漂白剤と、例えばMnTACN、ペンタアミンアセテートコバルト塩等の漂白触媒を含有する食洗機用洗剤組成物が開示されている。
【特許文献1】特表2000−502748号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の食洗機用洗浄剤組成物は必ずしも洗浄力が充分とはいえず、油汚れ、でんぷん汚れおよび茶渋汚れの全部に対して、より高い洗浄力を有する食洗機用洗浄剤組成物が求められている。
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、油汚れ、でんぷん汚れおよび茶渋汚れに対して優れた洗浄力を有する食洗機用洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するため、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、特定の構造を有する配位子と遷移金属を組み合わせてなる金属触媒、過酸化物および非イオン性界面活性剤を用いることにより、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の食洗機用洗浄剤組成物は、(A)下記一般式(I)で示される構造の配位子と、CuおよびMnから選ばれる1種以上の遷移金属を含む金属触媒、(B)過酸化水素、および水中で過酸化水素を発生する化合物から選ばれる1種以上の過酸化物、および(C)非イオン性界面活性剤を含有することを特徴とする。
【0005】
【化1】

【0006】
(式中、Xは水素原子、スルホン基、アミノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシ基、または一部が置換されていてもよいアルキル基を表す。Yは水素原子、アルカリ金属、またはアルカリ土類金属を表す。pは1または2の整数を表し、pが2の場合、Xは同一のものでも、異なるものでもよい。)
【0007】
前記(A)金属触媒が、前記一般式(I)で示される構造の配位子とCuとが結合した錯体および/又は前記配位子とMnとが結合した錯体を含有することが好ましい。
または前記金属触媒が、前記一般式(I)で示される構造の配位子と、水に溶解してCuイオンを生じる化合物および水に溶解してMnイオンを生じる化合物から選ばれる1種以上の遷移金属イオン源を、互いに接触しない状態で含むことが好ましい。
【0008】
前記(A)金属触媒と(B)過酸化物とが直接接触しない状態で含まれていることが好ましい。
(A)金属触媒と(B)過酸化物を非接触の状態で含むタブレット型に成型されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、油汚れ、でんぷん汚れおよび茶渋汚れに対して優れた洗浄力を有する食洗機用洗浄剤組成物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<(A)成分>
本発明における金属触媒(A)は、前記一般式(I)で示される構造の配位子とMn及びCuから選ばれる1種以上の遷移金属を含むものであり、該配位子と遷移金属とが錯体を形成していない状態で含まれていてもよく、前記配位子と遷移金属とが錯体を形成した状態で含まれていてもよい。
<配位子>
前記一般式(I)において、Xは水素原子、スルホン基、アミノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシ基、または置換基を有していてもよいアルキル基を表す。Xは、配位が安定し洗浄性能が向上する点からカルボキシ基であることが最も好ましい。
Xの数を表すpは1または2の整数を表し、1であることがより好ましい。pが2の場合、Xは同一のものでも、互いに異なるものでもよい。
また、pが1のとき、Xのピリジン環への結合位置は窒素原子(1位)に対して6位であることが好ましい。pが2のときも、少なくとも1つのXは6位に結合していることが好ましい。残りのXは3位、4位、5位のいずれに結合していてもよい。
【0011】
Yは水素原子、アルカリ金属、またはアルカリ土類金属を表す。アルカリ金属としてはNa、K等が挙げられる。アルカリ土類金属としてはCa(このとき「−C(O)O−Y」は「−C(O)O−Ca1/2」となる)等が挙げられる。
Yがアルカリ金属やアルカリ土類金属である場合を、「−C(O)O−M」(Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属を示す。)と示すと、一般式(I)で表される配位子を水等の溶媒中に投入すると、「−C(O)O−M」のうちの一部または全部が「−C(O)O」とアルカリ金属またはアルカリ土類金属イオンとなる。そして、「−C(O)O」は「遷移金属イオン」と錯体を形成する。
そのため、Yがアルカリ金属またはアルカリ土類金属であっても、配位子として用いることができる。
【0012】
前記構造式(I)で表される配位子の例としては、下記構造式(1)〜(5)で表されるものなどが挙げられるが、本発明はこれらの構造に限定されるものではなく、目的に応じて適宣選択することができ、1種もしくは2種以上を用いることができる。なお、代表的な例として、Yは水素原子として表記する。
【0013】
【化2】

【0014】
<遷移金属>
本発明において、上記一般式(I)で表される配位子と組み合わせて用いる遷移金属として、Mnおよび/またはCuが用いられる。
本発明では、一般式(I)で表される配位子と遷移金属とを予め結合して錯体を形成したものを用いてもよく(第1態様の金属触媒)、該配位子と遷移金属を、それぞれ別の化合物として混合してもよい(第2態様の金属触媒)。第1態様の金属触媒と第2態様の金属触媒とを併用してもよい。
【0015】
(第1態様の金属触媒)
「第1態様の金属触媒」は、前記一般式(I)で示される構造の配位子と遷移金属とが錯形成されてなる金属触媒である。
「一般式(I)で示される構造の配位子と遷移金属とがあらかじめ錯形成されてなる」とは、配位子と「遷移金属イオン」とを予め反応させて、配位子と「遷移金属イオン」とが結合して錯体となっているものを示す。
なお、「第1態様の金属触媒」においては、錯体を形成した後、この錯体に配位子及び/又は遷移金属イオンを加えることによって、遷移金属量や配位子の量を調整したものを用いることもできる。
【0016】
「第1態様の金属触媒」(錯体)の製造において、配位子と「遷移金属イオン」とを結合させるためには、単にこれらを溶媒中で混合しただけでは足りず、例えば、水または適当な有機溶媒に、配位子と「遷移金属イオン源」を溶解し、アルカリ剤の存在下で撹拌して反応させることが必要である。
【0017】
「遷移金属イオン源」は、水に溶解してCuイオンを生じる化合物および水に溶解してMnイオンを生じる化合物から選ばれる。具体的には水溶性金属塩が好ましい。例えば、マンガンの場合は、硝酸マンガン、硫酸マンガン、塩化マンガン、酢酸マンガン、過塩素酸マンガン、マンガンアセチルアセトナート等が、銅の場合は、硝酸銅、硫化銅、塩化銅、酢酸銅、クエン酸銅、シアン化銅、シュウ酸銅、塩化アンモニウム銅、酒石酸銅、過塩素酸銅等が好ましい。
有機溶媒としては、エタノール、メタノール、アセトニトリル、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド等が挙げられ、エタノールが好ましい。有機溶媒の温度は10〜78℃が好ましく、15〜30℃がより好ましい。
アルカリ剤としてはトリエチルアミン、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等が挙げられ、特にトリエチルアミンが好ましい。アルカリ剤は、配位子に対して1〜10モル当量程度用いることが好ましい。反応温度は室温が好ましい。反応時間は1分以上が好ましく、1分〜5時間がより好ましく、5分〜1時間がさらに好ましい。
具体的には、まず有機溶媒中に、アルカリ剤を溶解させ、ついで配位子と遷移金属イオン源を撹拌しながらゆっくりと添加し、所定の反応温度で所定の反応時間攪拌した後、静置して沈殿を生成させる。静置時間は1時間〜1週間が好ましく、3〜24時間がより好ましい。生成した沈殿をろ過することにより、目的の錯体が得られる。通常は、得られた沈殿を乾燥させて粉体の錯体(金属触媒)を得る。
【0018】
「第1態様の金属触媒」を製造する際の、遷移金属イオン源と配位子の使用量比は、錯体構造に見合った割合で用いるか、または、どちらかを過剰量用い、錯体合成後、過剰分を取り除けばよい。また、一方を過剰に用いている場合であっても、該過剰成分を必ずしも取り除く必要はなく、そのまま用いてもよい。
【0019】
「第1態様の金属触媒」の場合、遷移金属イオン源として上記の水溶性金属塩を用いるのが好ましいが、有機溶媒可溶性塩や過マンガン酸カリウム等適宜適当な遷移金属イオン源を用いてもよい。本発明における「配位子と遷移金属イオンが結合した錯体」において、遷移金属1個あたりの、配位子の数は1個ないし複数個であってもよく、1分子の錯体を構成する遷移金属も1個ないし複数個であってもよい。従って、錯体は単核、複核、クラスターでもよい。また、多核の錯体を構成している遷移金属は同種であっても異種であってもよい。
遷移金属には一般式(I)で表される配位子の他に、水、水酸基、フェノール性水酸基、アミノ基、カルボキシ基、チオール基、ハロゲン等が配位してもよい。多核錯体の架橋種としては酸素、硫黄、ハロゲン原子等があげられる。
【0020】
本発明の食洗機用洗浄剤組成物において、「第1態様の金属触媒」が粒子状で存在する場合、その粒子径は、該金属触媒の溶解性および製造容易性の点から、平均粒子径が5〜40μmの範囲内であることが好ましく、5〜20μmがより好ましく、特に好ましい範囲は5〜15μmである。
ここでの平均粒子径は、粒度分布測定装置(LDSA−3400A(17ch)、東日コンピューターアプリケーションズ(株)製)を用いて測定した値であり、体積基準のメジアン径である。
【0021】
本発明の食洗機用洗浄剤組成物において、「第1態様の金属触媒」は、前記錯体の形態で配合されるほかに、該錯体と(a)バインダー化合物を含む造粒物(以下、金属触媒粒子(X)という。)の形態で配合されていてもよい。
「第1態様の金属触媒」を金属触媒粒子(X)の形態で配合すると、貯蔵時の保存安定性が向上する点で好ましい。該金属触媒粒子(X)中における「第1態様の金属触媒(錯体)」の含有量は、好ましくは1〜70質量%、より好ましくは5〜50質量%である。「第1態様の金属触媒」の含有量が上記範囲を超えると粒子状とした効果が十分に得られない場合があり、上記範囲より少ないと食洗機用洗浄剤組成物中の該金属触媒粒子(X)含有率が高くなりすぎ経済的でない。
必要に応じ、該金属触媒粒子(X)に(b)界面活性剤および/または(c)水不溶性又は水難溶性の繊維パウダー、および/または(d)水溶性無機塩が配合されてもよい。金属触媒粒子(X)に(b)界面活性剤を含有させると該粒子(X)の溶解性が向上する。また金属触媒粒子(X)に(c)水不溶性又は水難溶性の繊維パウダーを含有させると粒子の製造性が向上する。さらに、(d)水溶性無機塩を含有させることで粒子の嵩比重を制御し、輸送時等における食器洗浄器用洗浄剤組成物中での金属触媒粒子(X)の偏在化を抑制できる。
【0022】
(a)バインダー成分としては、融点が35〜70℃の水溶性化合物が好ましい。具体的には、ポリエチレングリコール、質量平均分子量1,000〜1,000,000のポリアクリル酸又はその塩から選ばれる1種以上が好ましい。2種以上を組み合わせてもよい。
ポリエチレングリコールとしては、ポリエチレングリコール1,000〜20,000(平均分子量500〜25,000)が好ましく、平均分子量2,600〜9,300のものがより好ましく、平均分子量5,000〜9,300のものがさらに好ましい。
なお、本発明におけるポリエチレングリコールの平均分子量は、化粧品原料基準(第2版注解)記載の平均分子量を示す。ポリアクリル酸やその塩の質量平均分子量は、ポリエチレングリコールを標準物質とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー法による測定値である。
粒子(X)中における(a)バインダー成分の含有量は0.5〜97質量%が好ましく、5〜95質量%がより好ましい。
【0023】
(b)界面活性剤成分としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩又はポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩あるいはこれらの混合物が好ましい。
【0024】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、アルキル基の炭素数が10〜15のものが好ましく、好ましくはエチレンオキサイド(以下EOと略す)及び/又はプロピレンオキサイド(以下POと略す)の付加体である。平均付加モル数はEO、PO、あるいはEOとPOの混合の何れの場合も、合計で好ましくは4〜30、より好ましくは5〜20であり、EO/POのモル比は、好ましくは5/0〜1/5、より好ましくは5/0〜1/2である。
α−オレフィンスルホン酸塩としてはアルキル基の炭素数が14〜18であるα−オレフィンスルホン酸のナトリウム又はカリウム塩が好ましい。
アルキルベンゼンスルホン酸塩としてはアルキル基の炭素数が10〜14である直鎖アルキルベンゼンスルホン酸のナトリウム又はカリウム塩が好ましい。
アルキル硫酸エステル塩としては、アルキル基の炭素数が10〜18であり、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩が好ましく、特にラウリル硫酸エステルナトリウム又はミリスチル硫酸エステルナトリウムが好ましい。
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩としては、炭素数10〜18のアルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩が好ましく、中でもナトリウム塩が好ましい。エチレンオキサイドの平均付加モル数は1〜10、好ましくは1〜5が好ましく、特にポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステルナトリウム(POE=2〜5)、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル硫酸エステルナトリウム(POE=2〜5)が好ましい。
【0025】
(b)成分は1種でもよく2種以上用いてもよい。
粒子(X)中における(b)界面活性剤成分の含有量は、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。この範囲を超えると、洗浄中の起泡量が過剰となり好ましくない。(b)界面活性剤成分を含有させる場合の該含有量の下限値は特に限定されないが、(b)界面活性剤成分の添加効果を充分に得るためには0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。
【0026】
(c)水不溶性又は水難溶性繊維パウダーとは、25℃脱イオン水100gに対する溶解度が0.1g未満の繊維パウダーである。繊維パウダーは、例えば繊維、凍結した繊維、または溶媒に分散させた繊維を、粉砕機等を用いて粉砕、破砕して得られる。
(c)水不溶性又は水難溶性の繊維パウダーの例としては、粉末セルロース、シルクパウダー、ウールパウダー、ナイロンパウダー、ポリウレタンパウダー等が挙げられる。
粉末セルロースは、針葉樹や広葉樹等の木材;麻類、ミツマタ、コウゾ、ガンピ、ワラ、バガス、タケ等の葉繊維、茎繊維、およびジン皮繊維;モメン、キワタ、カポック等の種子毛繊維等を精製したもの、必要に応じて部分的に加水分解したもの、または綿、麻、レーヨン等に加工されたものから得られ、非結晶性部分を有するものである。
(c)成分として、特に、天然繊維の粉末セルロース、シルクパウダー、ウールパウダーが好ましく、粉末セルロース、シルクパウダーがより好ましく、中でも粉末セルロースが好ましい。
【0027】
金属触媒粒子(X)に含有させる(c)水不溶性又は水難溶性繊維パウダーは、1種単独でもよく、2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
金属触媒粒子(X)中における(c)成分の含有量は、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。上記範囲を超えると、造粒が困難であったり、造粒物の強度が低下したりする場合がある。(c)成分を含有させる場合の該含有量の下限値は特に限定されないが、(c)成分の添加効果を充分に得るためには1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。
【0028】
(d)水溶性無機塩は、1種単独でもよく、2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。(d)成分種は特に制限されること無く用いることができ、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属と硫酸、硝酸、塩酸、燐酸、炭酸等の無機酸との塩が挙げられる。溶解性の面から硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、炭酸カリウムが好適に用いられる。
【0029】
金属触媒粒子(X)中における(d)成分の含有量は、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。上記範囲を超えると、造粒が困難であったり、造粒物の強度が低下したりする場合がある。(d)成分を含有させる場合の該含有量の下限値は特に限定されないが、(d)成分の添加効果を充分に得るためには1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。
【0030】
金属触媒粒子(X)の製造方法は、特に制限されず、(a)成分および必要に応じて他の成分を均一に混合した後、公知の造粒法を用いて造粒すればよい。
例えば、まず各成分を混合し、(a)成分を加熱溶融させつつ均一になるまで混合し、冷却固化させた後に、粉砕機で粉砕造粒を行なう方法を用いることができる。
金属触媒粒子(X)の平均粒子径は50〜5000μmの範囲が好ましく、100〜1000μmの範囲がより好ましい。この範囲であれば、粒子(X)の溶解性が良好であるとともに、粒子(X)の形態とすることによる貯蔵時の保存安定性の向上効果が良好に得られる。
ここでの平均粒子径は、下記に詳述する分級操作を用いた測定方法により求めた質量基準のメジアン径である。
【0031】
<平均粒子径の測定方法>
まず、測定対象物(サンプル)について、目開き1,680μm、1,410μm、1,190μm、1,000μm、710μm、500μm、350μm、250μm、149μmの9段の篩と受け皿を用いて分級操作を行った。分級操作は、まず受け皿の上方に該9段の篩を、上に向かって目開きが次第に大きくなるように積み重ね、最上部の目開き1,680μmの篩の上から100g/回のサンプルを入れた。次いで、蓋をしてロータップ型ふるい振盪機(飯田製作所社製、タッピング:156回/分、ローリング:290回/分)に取り付け、10分間振動させた後、それぞれの篩および受け皿上に残留したサンプルを篩目ごとに回収して、サンプルの質量を測定した。
受け皿と各篩との質量頻度を積算していくと、積算の質量頻度が、50%以上となる最初の篩の目開きをaμmとし、aμmよりも一段大きい篩の目開きをbμmとし、受け皿からaμmの篩までの質量頻度の積算をc%、またaμmの篩上の質量頻度をd%として、下記式(i)より平均粒子径(質量50%)を求めた。
【0032】
【数1】

【0033】
(第2の態様の金属触媒)
「第2の態様の金属触媒」は、前記一般式(I)で示される構造の配位子とMn及びCuから選ばれる1種以上の遷移金属を含む金属触媒である。
本態様の金属触媒において、「前記一般式(I)で示される構造の配位子とMn及びCuから選ばれる1種以上の遷移金属を含む」とは、少なくともこの配位子と、遷移金属の一部または全部とが錯体を形成し得る状態となっていることを意味する。
例えば、配位子と前記遷移金属イオン源を任意の形態で含み、水等の溶媒中に投入されたときに、該溶液中にて、前記配位子と「遷移金属イオン」とが錯体を形成して金属触媒となるものでもよい。
【0034】
具体的には、「第2の態様の金属触媒」は、配位子と遷移金属イオン源の混合物が好ましい。また、溶液中でこれらが混合されたことによって、遷移金属イオン源の一部または全部から生じた「遷移金属イオン」と、配位子とが錯体を形成していてもよい。
【0035】
遷移金属イオン源と配位子の添加量比は、配位子量が遷移金属量に対し、0.1〜30モル等量となるように添加するのが好ましく、0.5〜5モル等量がより好ましい。洗浄時に水と接触した際に錯形成させる場合は遷移金属に対して配位子を過剰モル量添加することが好ましいが、必要以上の多量の添加は経済的でない。
【0036】
「第2の態様の金属触媒」の製造方法としては、配位子と遷移金属イオン源とを、水等の溶媒中に投入して混合する方法が挙げられる。「第2の態様の金属触媒」の、配位子と遷移金属イオン源は、本発明の食洗機用洗浄剤組成物を製造する前に予め両者を混合しておくこともできるし、食洗機用洗浄剤組成物の製造工程において、過酸化水素等の他の材料や溶媒中に、配位子と遷移金属イオン源を別々に添加してもよい。また、固体の状態の配位子と固体状態の遷移金属イオン源とを含む混合物も、その後水等に投入されれば錯体を形成して触媒能を発揮できるので、本発明の金属触媒に包含される。
【0037】
「第2態様の金属触媒」の場合、本発明の食器洗浄機用洗浄剤組成物において、配位子と遷移金属イオン源とが、互いに接触し難い状態で含有されていることが好ましく、互いに接触しない状態で含有されていることがより好ましい。これにより貯蔵時の保存安定性がより向上する。
具体的には、配位子と遷移金属イオン源の一方または両方が、(a)バインダー化合物とともに造粒された粒子(以下、金属触媒粒子(Y)という。)の形態で食洗機用洗浄剤組成物に配合されていることが好ましい。
該金属触媒粒子(Y)は、配位子、遷移金属イオン源および(a)バインダー化合物を含む粒子(Y1)でもよく、配位子と(a)バインダー化合物を含み遷移金属イオン源を含まない粒子(Y2)でもよく、遷移金属イオン源および(a)バインダー化合物を含み、配位子を含まない粒子(Y3)であってもよい。またこれらのうちの2種以上を任意に組み合わせてもよい。
「第2態様の金属触媒」は、例えば粒子(Y1)からなっていてもよく、粒子(Y2)と粒子(Y3)の混合物でもよく、粒子(Y2)と遷移金属イオン源の混合物でもよく、粒子(Y3)と配位子の混合物でもよい。より好ましい形態は、粒子(Y2)と粒子(Y3)の混合物、または粒子(Y1)である。
また前記「第1態様の金属触媒」を含む粒子(X)と、粒子(Y2)または粒子(Y3)を併用してもよい。
【0038】
粒子(Y1)中における、配位子と遷移金属イオン源の合計の含有量は、1〜70質量%が好ましく、5〜50質量%がより好ましい。該含有量が上記範囲を超えると粒子(Y1)の形態とした効果が十分に得られない場合があり、上記範囲より少ないと食洗機用洗浄剤組成物中の該金属触媒粒子(Y1)含有率が高くなりすぎ経済的でない。
粒子(Y2)中における配位子の含有量は、1〜70質量%が好ましく、5〜50質量%がより好ましい。該含有量が上記範囲を超えると粒子(Y2)の形態とした効果が十分に得られない場合があり、上記範囲より少ないと同じく経済的に効率が悪い。
粒子(Y3)中における遷移金属イオン源の含有量は、1〜70質量%が好ましく、5〜50質量%がより好ましい。該含有量が上記範囲を超えると粒子(Y3)の形態とした効果が十分に得られない場合があり、上記範囲より少ないと同様に、経済的な効率が悪い。
【0039】
また、金属触媒粒子(Y)に(b)界面活性剤および/または(c)水不溶性又は水難溶性の繊維パウダーが配合されていることがより好ましい。金属触媒粒子(Y)に(b)界面活性剤を含有させると該粒子(Y)の溶解性が向上する。また金属触媒粒子(Y)に(c)水不溶性又は水難溶性の繊維パウダーを含有させると粒子の製造性が向上する。さらに、(d)無機塩を含有させることで粒子の嵩比重を制御し、輸送時等における食器洗浄器用洗浄剤組成物中での金属触媒粒子(Y)の偏在化を抑制できる。
金属触媒粒子(Y)における、(a)、(b)、(c)、および(d)成分は、その好ましい態様および好ましい使用量も含めて上記金属触媒粒子(X)におけるものと、それぞれ同様である。
金属触媒粒子(Y)は、前記金属触媒粒子(X)と同様に、公知の造粒法を用いて造粒できる。
金属触媒粒子(Y)の好ましい粒子径は、前記金属触媒粒子(X)と同様である。
【0040】
本発明の食洗機用洗浄剤組成物は、食器と接触する洗浄液中における遷移金属の濃度が金属として0.001〜300ppmであることが好ましく、0.005〜30ppmがより好ましい。該遷移金属の量が0.001ppm以下では、十分な洗浄効果が得られず、また、300ppm以上では、過酸化水素の分解を過剰に促進し、効果が低下する場合がある。かかる洗浄液中における遷移金属量は、本発明の食洗機用洗浄剤組成物における金属触媒(A)の含有量と、食洗機用洗浄剤組成物の使用量によって調整できる。
本発明の食洗機用洗浄剤組成物における金属触媒(A)の含有量は、洗浄性能の点からは0.001質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましい。また上限は貯蔵時の安定性の点から10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
【0041】
<(B)過酸化物>
(B)成分は過酸化水素、及び水中で過酸化水素を発生する化合物から選ばれる。本発明を粉末または固体状の製品として製剤化する場合においては、水に溶解して過酸化水素を発生する化合物が用いられる。そのような物質としては、例えば、アルカリ金属の過炭酸塩、過硼酸塩、過燐酸塩、過珪酸塩、過硫酸塩などが挙げられ、これらの中でも、過硼酸ナトリウム、過炭酸ナトリウム、及びこれらの水和物が好ましい。
【0042】
本発明の食洗機用洗浄剤組成物において、(A)金属触媒と(B)過酸化物とが直接接触しない状態で含まれていることが好ましい。
そのためには、(A)金属触媒を造粒物の形態で用いるか、(B)成分を表面に被覆剤が付与された被覆粒子の形態で用いるか、これらの両方の形態を採用することが好ましい。少なくとも(A)金属触媒として、造粒されていない第1態様の金属触媒、造粒されていない配位子、または造粒されていない遷移金属イオン源のいずれかが使用される場合は、(B)成分を被覆粒子の形態で用いることが好ましい。
あるいは後述するように、(A)成分と(B)成分とを非接触の状態で含有するタブレットの形態を採用すれば、造粒されていない(A)成分および/または被覆されていない(B)成分を用いることが可能である。
【0043】
(B)成分の被覆粒子は公知の製法で製造できる。また市販品からも入手できる。
被覆粒子における被覆剤としてはホウ酸、ホウ酸塩、ケイ酸、ケイ酸塩、マグネシウム塩、又はパラフィンやワックス等の水不溶性有機化合物が挙げられる。例えば、ホウ酸で被覆された過炭酸ナトリウムは特開昭59−196399号公報等に記載されている公知の方法で製造することができる。
(B)成分の被覆粒子の平均粒子径は200〜1000μmが好ましく、より好ましくは300〜800μmである。
ここでの平均粒子径は、上述した分級操作を用いた測定方法により求めた質量基準のメジアン径である。
【0044】
本発明の食洗機用洗浄剤組成物における過酸化物(B)の含有量は、洗浄性能の点からは2質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。また上限は、効果が飽和するので経済性の点から75質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
【0045】
<(C)非イオン性界面活性剤>
(C)成分は非イオン性界面活性剤であり、食器洗浄機用洗浄剤という用途の特性上、低泡性であることが好ましく、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。本発明で用いる(C)成分としては特に限定されないが、例えば、下記一般式(II)で示されるポリオキシアルキレン型非イオン性界面活性剤が(B)成分と共存する系における安定性が良好であり、好適に用いられる。
【0046】
−O−(EO)(AO)H ・・・(II)
但し、式中、Rは炭素数8〜20、好ましくは10〜16のアルキル基またはアルケニル基であり、直鎖であっても分岐鎖を有していてもよい。EOはエチレンオキサイド、AOはC3〜5のアルキレンオキサイドである。n及びmは平均付加モル数を表し、nは1〜20、mは1〜20である。
【0047】
上記一般式(II)の出発原料である高級アルコールとしては、天然または合成の、1級または2級アルコール、具体的には、オクチルアルコール、デシルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、アラキルアルコール等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらの高級アルコールは単独でも混合されていてもよく、天然でも合成でもよく、ドバノックス(登録商標)、ダイヤドール(登録商標)、ネオドール(登録商標)、サフォール(登録商標)等の1級合成アルコールや、椰子油高級アルコール等の天然アルコール、更にはソフタノール(登録商標)等の2級アルコールがあげられる。このうち、ドデシルアルコール、ミリスチルアルコール、トリデカノール、ドバノックス(登録商標)、ダイヤドール(登録商標)、ネオドール(登録商標)、サフォール(登録商標)等の1級合成アルコールや椰子油高級アルコール等の天然アルコールが好ましい。
【0048】
AOはC3〜5のアルキレンオキサイドであり、好ましくはプロピレンオキサイド(PO)、ブチレンオキサイド(BO)である。AOの平均付加モル数mは1〜20が好ましく、より好ましくは2〜10である。
また、エチレンオキサイド(EO)の平均付加モル数nは、1〜20が好ましく、より好ましくは2〜10である。
【0049】
更に、上記一般式(II)のポリオキシアルキレンアルキルエーテルにおいて、エチレンオキサイドが狭い付加モル分布でアルコールに付加していることが好ましい。具体的には、特開平1−164437号公報及び特開2000−61304号公報記載の方法を用いれば、狭いEO付加モル分布をもったポリオキシエチレンアルキルエーテルを容易に得ることができる。これにAOを所定量付加重合することにより、上記一般式(II)に示す非イオン性界面活性剤が得られる。
【0050】
一般式(II)で示されるポリオキシアルキレン型非イオン性界面活性剤は市販品から入手できる。好ましい例としては、ソフタノールEPシリーズ(日本触媒社製)、プルラファックシリーズ(BASF社製)、レオックス、レオコン、ライオノールシリーズ(ライオン社製)等が例示できる。ただし、これらに限定されるものではない。
【0051】
本発明の食洗機用洗浄剤組成物における(C)成分の合計含有量は、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。(C)成分の含有量が0.1質量%未満では食器の洗浄仕上がりが不十分となる場合があり、20質量%を超えても効果が飽和するので好ましくない。
【0052】
<その他の成分>
本発明の食洗機用洗浄剤組成物には、本発明の効果を妨げない範囲で、上記以外の他の成分を含有させてもよい。他の成分は、用途等に応じて公知の慣用成分を用いることができる。
例えばその他の成分として、過酸前駆体、ビルダー、酵素、香料、消泡剤、及びMn、Cu以外の金属などを併用することができる。特に、食器と接触する洗浄液のpHが5〜12、好ましくはpH6〜11となるように、必要に応じてpH調整剤を含有させることが好ましい。
【0053】
(ビルダー)
ビルダーとしては、特に制限はなく、本発明の効果を損ねない範囲で必要に応じて適宜選択できる。例えば、ゼオライト等のアルミノ珪酸塩、アルカリ金属の炭酸塩、炭酸水素塩、硼酸塩、燐酸塩、ポリ燐酸塩、トリポリ燐酸塩、ケイ酸塩、硫酸塩、炭酸塩とケイ酸塩の複合体などの無機ビルダー;ニトリロトリ酢酸、メチルグリシンジ酢酸、乳酸、クエン酸、グリコール酸、コハク酸、及びポリアクリル酸、マレイン酸アクリル酸共重合体等のポリカルボン酸及びこれらの塩などの有機ビルダーがあげられる。これらは1種又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0054】
(酵素)
酵素としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。酵素の反応性から分類すると、ハイドロラーゼ類、オキシドレダクターゼ類、リアーゼ類、トランスフェラーゼ類及びイソメラーゼ類を挙げることができるが、本発明にはいずれも適用できる。特に好ましいのは、プロテアーゼ、エステラーゼ、リパーゼ、ヌクレアーゼ、セルラーゼ、アミラーゼ及びペクチナーゼ等であり、これらを1種又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0055】
(香料)
香料としては、特に制限はなく、特開2002−146399号公報に記載されているものなど、目的に応じて適宜選択できる。例えば、脂肪族炭化水素、テルペン炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素類、脂肪族アルコール、テルペンアルコール、芳香族アルコール等のアルコール類、脂肪族エーテル、芳香族エーテル等のエーテル類、脂肪族オキサイド、テルペン類のオキサイド等のオキサイド類、脂肪族アルデヒド、テルペン系アルデヒド、水素化芳香族アルデヒド等、チオアルデヒド、芳香族アルデヒド等のアルデヒド類、脂肪族ケトン、テルペンケトン、水素化芳香族ケトン、脂肪族環状ケトン、非ベンゼン系芳香族ケトン、芳香族ケトン等のケトン類、アセタール類、ケタール類、フェノール類、フェノールエーテル類、脂肪酸、テルペン系カルボン酸、水素化芳香族カルボン酸、芳香族カルボン酸等の酸類、酸アマイド類、脂肪族ラクトン、大環状ラクトン、テルペン系ラクトン、水素化芳香族ラクトン、芳香族ラクトン等のラクトン類、脂肪族エステル、フラン系カルボン酸族エステル、脂肪族環状カルボン酸エステル、シクロヘキシルカルボン酸族エステル、テルペン系カルボン酸エステル、芳香族カルボン酸エステル等のエステル類、ニトロムスク類、ニトリル、アミン、ピリジン類、キノリン類、ピロール、インドール等の含窒素化合物等の合成香料及び動物、植物からの天然香料、天然香料及び/又は合成香料を含む調合香料の1種又は2種以上を混合して使用することができる。
【0056】
(消泡剤)
消泡剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宣選択できるが、シリコーン/シリカ系のものが好ましい。
【0057】
(pH調整剤)
pH調整剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宣選択できるが、前記ビルダーに記載のアルカリ剤のほか、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等がアルカリ剤として挙げられる。また、酸としては、前記ビルダーに記載の有機酸類のほか、リン酸2水素カリウム等のアルカリ金属リン酸2水素塩や硫酸、塩酸等を使用することができる。これらは1種又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0058】
(過酸前駆体)
過酸前駆体は、過酸化水素と反応してペルオキソ化合物を生成するものであれば、特に制限はなく、必要に応じて適宜選択でき、例えば、デカノイルオキシ安息香酸、デカノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデカノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、ノナノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、テトラアセチルエチレンジアミン等が挙げられる。これらの中でも、漂白効果の点から4−デカノイルオキシ安息香酸、4−ノナノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、テトラアセチルエチレンジアミンが好ましい。
(その他)
そのほか、植物抽出エキス、食器表面保護剤(アルミン酸Na、硫酸亜鉛等の両性金属含有化合物)などを適宜配合してもよい。
【0059】
本発明の食洗機用洗浄剤組成物は、粉末状またはタブレット型が好ましい。タブレット型の場合、(A)成分と(B)成分とを非接触の状態で含有する形態のタブレットが好ましい。例えば、(A)成分と(B)成分とをそれぞれ独立して成型した混合タブレット型、(A)成分と(B)成分とがそれぞれ別相に含有された状態で一体化されている多相タブレット型、または(A)成分と(B)成分とがそれぞれ区分された分室に収容された状態で一体化されているマルチチャンバータブレット型の形態が好ましい。これらの形態を採用すれば、食洗機用洗浄剤組成物に、(A)成分として造粒されていない第1形態の金属触媒、造粒されていない配位子、または造粒されていない遷移金属のいずれかが含有されていても、(A)成分と(B)成分との直接接触を抑えて良好な保存安定性を得ることができる。
【0060】
タブレット型の洗浄剤組成物は、配合される成分からなる粉体原料を圧縮成型する方法で製造できる。圧縮成型の方法は、特に制限されるものではなく、タブレット型洗剤において採用されている公知の打錠機、打錠条件によって行うことができる。この際、特開2002−146399公報に記載されている融着粒子を本発明の効果を妨げない範囲で添加してもよい。打錠圧は、特に制限されるものではないが、5〜10kN、特に6〜9kNとすると、好適である。打錠圧が高すぎると十分な崩壊性が得られない場合があり、低すぎると強度が得られ難い場合がある。また、同様の理由により、成型直後のタブレットについて、錠剤強度計(製品名:TD−50、岡田精工社製)を用い、毎分20mmの速度で加圧アームを動かし、タブレットの直径方向に力を加えて、崩れるまでの最大応力をタブレット強度として測定したとき、成型直後のタブレット強度が30〜70N、特に40〜60Nとなるように打錠すると、好適である。
【0061】
混合タブレット型の洗浄剤組成物は、例えば(A)成分を含有し(B)成分を含有しないタブレットと、(B)成分を含有し(A)成分を含有しないタブレットをそれぞれ成型し、両者を混合することにより得られる。
多相タブレット型の洗浄剤組成物は、例えば、(A)成分を含有し(B)成分を含有しない粉体原料と、(B)成分を含有し(A)成分を含有しない粉体原料を、順に積層した状態で圧縮成型する方法により二層型のタブレットとしてもよく、または(A)成分を含有し(B)成分を含有しない粉体原料と、(A)成分も(B)成分も含有しない粉体原料と、(B)成分を含有し(A)成分を含有しない粉体原料を、順に積層した状態で圧縮成型する方法により三層型のタブレットとしてもよい。
マルチチャンバータブレット型の洗浄剤組成物において、例えばフィルム状部材によって各分室を区分してもよい。該フィルム状部材の材質は特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチンなどの水溶性高分子が好適に用いられる。各分室に成分を収容する方法は特に制限されるものではなく、本発明の効果を妨げない範囲で任意の方法によって行うことができる。具体的な製法として、例えば、前記高分子素材からなるフィルム状部材を熱成形させるなどしてポケットを形成し、該ポケット内に収容させる成分を充填し、該ポケットを同一又は別のフィルム物質でシ−ルすることによって封入体を作製し、該封入体を圧縮成型機内に配して、タブレット状に圧縮成型する方法を採用できる。互いに異なる成分が封入された複数の封入体を圧縮成型機内に配し、一括的に圧縮成型することにより、互いに異なる成分が収容された分室が一体化された形態のタブレットが得られる。
また、封入体の製造において、例えば、前記ポケットを、開口部の周囲にフランジ部を有する凹状に形成し、ポケット内に成分を充填後、開口部をシール部材で覆って、ポケットのフランジ部とシール部材とをヒートシールする方法を用いることができる。またヒートシールに限らず、赤外線、高周波、超音波、レーザー、溶媒、振動又は回転溶接などその他のシール方法も使用しうる。水又はフィルム物質の水溶液のような接着剤も使用しうる。例えば、WO01/36290に開示されているような射出成形のようなその他の容器製造法もある。容器の製造法の更なる詳細は、CA−A−1,112,534のような公知技術から知ることができる。
【0062】
本発明によれば、油汚れ、でんぷん汚れおよび茶渋汚れに対して優れた洗浄力を有する食洗機用洗浄剤組成物が得られる。特に後述の実施例に示されるように(A)金属触媒と(B)過酸化物を共存させることによりでんぷん分解効果が顕著に向上するほか、除菌効果も得られる。したがって、本発明によれば、優れた洗浄力を有するとともに除菌効果をも備えた食洗機用洗浄剤組成物が得られる。
特に(A)金属触媒として、配位子と遷移金属とが結合した錯体を用いると洗浄開始直後から優れた洗浄力を示し、実質的に短時間での洗浄が可能となる。
特に、(A)金属触媒として、配位子と遷移金属イオン源を、それぞれ含有させると、使用前における(B)成分との反応を抑制することができ、優れた保存安定性が得られる。
また、(A)金属触媒と(B)過酸化物を、これらが直接接触しない状態で含有させることにより保存安定性が向上し、保存後も優れた洗浄力が安定して得られる。
特に(A)金属触媒と(B)過酸化物を非接触の状態で含むタブレット型に成型することにより、保存安定性に優れたタブレット型の食器洗浄機用洗浄剤組成物が得られる。またタブレット型であるので、使用時の計量が簡単であり、使い勝手もよい。
【実施例】
【0063】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下において、「%」は特に断りのない限り「質量%」である。
[合成例A−1:配位子(1)のマンガン錯体の合成]
65℃エタノール800ml中に、下記化学式で示される配位子(1)としての2,6−ピリジンジカルボン酸20.0g(119.7mmol)、及び硫酸マンガン(II)1水和物10.1g(59.8mmol)を溶解し、トリエチルアミン11.0g(108.7mmol)を攪拌しながらゆっくりと添加した。室温で10分間攪拌した後、15時間静置した。生成した沈殿をろ過し、目的とする2,6−ピリジンジカルボン酸のマンガン錯体(金属触媒A−1)16.9g(収率73.2%、金属含有量14.5質量%)を得た。
【0064】
【化3】

【0065】
[合成例A−2:配位子(1)の銅錯体の合成]
65℃エタノール800ml中に2,6−ピリジンジカルボン酸20.2g(119.7mmol)及び塩化銅(II)2水和物10.0g(58.7mmol)を溶解し、トリエチルアミン14.6g(144.3mmol)を攪拌しながらゆっくりと添加した。室温で10分間攪拌した後、混合溶液が300mlとなるまで濃縮し、15時間静置した。生成した沈殿をろ過し、目的とする2,6−ピリジンジカルボン酸の銅錯体(金属触媒A−2)18.1g(収率77.9%、金属含有量15.5質量%、平均粒子径20μm)を得た。
【0066】
このように、本発明における金属触媒は、簡便かつ短時間のプロセスにより、高い収率で製造可能である。
【0067】
[合成例A−3:(金属触媒A−1)を含む造粒物]
合成例A−1で得られた2,6−ピリジンジカルボン酸のマンガン錯体1gに、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム(ライオン(株)製、製品名:リポランPJ−400)1g、セルロースパウダー(レッテンマイヤー社製、製品名:Arbocel FD600/30)を1g、ポリエチレングリコール(ライオン(株)製、製品名:PEG#6000)を7g添加し十分に混合した後、約70℃の水浴中で加熱溶融しながら45分間混合した。冷却後、固化した混合品を粉砕し、篩にかけて所望の粒度に揃えることで目的物(金属触媒A−3、金属含有量1.5質量%、平均粒子径20μm)を得た。
【0068】
[合成例A−4:配位子および遷移金属塩を含む造粒物]
2,6−ピリジンジカルボン酸0.87g及び硫酸マンガン(II)7水和物0.71gに、前記セルロースパウダー1g、前記PEG#6,000を7.42g添加し十分に混合した後、約70℃の水浴中で加熱溶融しながら30分間混合した。冷却後、固化した混合品を粉砕し、篩にかけて所望の粒度に揃えることで目的物(金属触媒A−4、金属含有量0.14質量%、平均粒子径20μm)を得た。
【0069】
[合成例A−5:配位子を含む造粒物]
2,6−ピリジンジカルボン酸1.75g、前記α−オレフィンスルホン酸ナトリウム1g、前記セルロースパウダー1gに、前記PEG#6,000を6.25g添加し十分に混合した後、約70℃の水浴中で加熱溶融しながら50分程度混合した。冷却後、固化した混合品を粉砕し、篩にかけて所望の粒度に揃えることで目的物(配位子A−5、平均粒子径20μm)を得た。
【0070】
[合成例A−6:遷移金属イオン源を含む造粒物]
硫酸マンガン(II)1水和物0.85gに、前記PEG#6,000を9.15g添加し十分に混合した後、約70℃の水浴中で加熱溶融しながら45分間混合した。冷却後、固化した混合品を粉砕し、篩にかけて所望の粒度に揃えることで目的物(遷移金属塩A−6、金属含有量0.28質量%、平均粒子径20μm)を得た。
【0071】
[合成例C−1:非イオン性界面活性剤]
溶液aとして、硝酸マグネシウム6水和物68.03g、硝酸アルミニウム9水和物47.69g、および硝酸マンガン6水和物24.43gを450gの脱イオン水に溶解した溶液を調製した。
溶液bとして、炭酸ナトリウム13.47gを450gの脱イオン水に溶解した溶液を調製した。
溶液aと溶液bを、予め1800gの脱イオン水を仕込んだ触媒調製槽に、NaOH水溶液でpHを9に保つとともに、温度45℃に保ちながら45分で滴下した。1時間熟成した後、ろ別し、沈殿を6リットルの脱イオン水で洗浄し、噴霧乾燥することにより30gの複合金属水酸化物を得た。これを窒素雰囲気下800℃で焼成することで、酸化マグネシウムを主成分とする複合金属酸化物触媒19gを得た。
【0072】
次に、オートクレーブ中に、化合物名:C12、C13合成高級アルコール、製品名:Neodol23(C12,13:シェル社製)の120g及び上記で得た複合金属酸化物触媒0.3gを仕込み、オートクレーブ内を窒素で置換した後、攪拌しながら昇温した。続いて、温度を180℃、圧力を3atmに維持しつつ、エチレンオキサイド82gを導入し、反応させた。得られたポリオキシアルキレンエーテルの平均エチレンオキサイド付加モル数は3であった。
さらに、オートクレーブの温度180℃、圧力を3atmに維持しつつ、プロピレンオキサイド108gを導入し、反応させた。得られたポリオキシアルキレンエーテルの平均プロピレンオキサイド付加モル数は3であった。反応液を80℃まで冷却した後、触媒を濾別した。このようにして非イオン性界面活性剤(C−1)を得た。
【0073】
[試験例1:でんぷん分解効果]
炭酸ナトリウム39.6mmol/L水溶液に、濃度5質量%となるように「とうもろこしでんぷん(Starch,Corn)を加えた。95℃で60分加温し、でんぷんを膨潤させ、40℃まで温度を下げた後に、過酸化水素17.6mmol/L、上記合成例A−1により得られた金属触媒(A−1)を0.05mmol/L加えてサンプルを調製した。これとは別に、上記金属触媒(A−1)に代えて上記合成例A−2により得られた金属触媒(A−2)を同様に加えてサンプルを調製した。
これらのサンプルをそれぞれ40℃に保持し、前記金属触媒の添加から60分後に(株)東京計器製 B型粘度計 BL型を用いて粘度を測定し、でんぷんの分解状況を調べた。その結果を図1に示す。
またブランク(1)として、上記の組成から金属触媒を除いたほかは同様にした場合の結果を図1に合わせて示す。
【0074】
図1の結果に示されるように、(A−1)または(A−2)を添加した場合は、ブランク(1)に比べて粘度が大幅に低下している。
でんぷんは、α−グルコースがグリコシド結合で重合した高分子化合物であり、試験例1のように、95℃の温水に溶解させた後、40℃まで温度を下げると、粘度が非常に高い状態となる。これに対して金属触媒(A−1)または(A−2)を添加した場合は、グリコシド結合部分に対する作用が生じ、でんぷんがオリゴ糖などに分解されたために粘度が低下したと考えられる。
したがって、かかる金属錯体(マンガン錯体、銅錯体)を含有する本発明の食器洗浄機用洗浄剤組成物によれば、高いでんぷん分解効果が得られる。
【0075】
[試験例2:でんぷん分解効果]
炭酸ナトリウム39.6mmol/L水溶液に、濃度5質量%となるように、とうもろこしでんぷん(Starch,Corn)を加えた。95℃で60分加温し、でんぷんを膨潤させ、40℃まで温度を下げた後に、過酸化水素17.6mmol/L、配位子(1)としての2,6−ピリジンジカルボン酸0.1mmol/L、および塩化銅(II)0.05mmol/Lを加えた。40℃に保ちながら、60分後に(株)東京計器製 B型粘度計 BL型を用いて粘度を測定し、でんぷんの分解状況を調べた。結果を図2に示す。
またブランク(2)として、上記の組成から配位子と塩化銅を除いたほかは同様にした場合の結果を図2に合わせて示す。
図2の結果から明らかのように、上記配位子と塩化銅を別々に添加した場合でも、高いでんぷん分解効果が得られることが分かる。
【0076】
[試験例3:除菌効果]
過炭酸ナトリウム(三菱瓦斯化学(株)製 SPC−G)30ppm、炭酸ナトリウム(旭硝子(株)製 粒灰)30ppm、上記合成例A−2で得られた金属触媒(A−2:配位子(1)の銅錯体)0.3ppmを含有する試験液9.9mlを調製した。そこへ菌数が10個/mlとなるように調整された黄色ブドウ球菌母液(IF012732)を0.1mL添加し、均一に攪拌した。10分後に1mL採取し、9mLのSCDLP培地(Soybean−Casein Digest Broth with Lectin & Polysorbate 80:和光純薬工業(株)製)に加え、10倍希釈液とした。
上記黄色ブドウ球菌母液に代え、菌数が10個/mlとなるように調整された大腸菌母液(IF03972)を0.1mL添加したほかは同様にして10倍希釈液を得た。
各希釈液から1.0mLをシャーレに採取し、SCDLP寒天培地(Soybean−Casein Digest Ager with Lectin & Polysorbate 80:和光純薬工業(株)製)15mLを加えて均一化し、37℃で2日間培養した後、コロニーをカウントして生存菌数を求めた。黄色ブドウ球菌に対する結果を図3に示し、大腸菌に対する結果を図4に示す。
ブランク(3−1)(3−2)として、イオン交換水に上記各菌母液をそれぞれ希釈した場合の結果を図3,4に合わせて示す。またブランク(4−1)(4−2)として、上記の組成から金属触媒(A−2)を除いたほかは同様にした場合の結果を図3,4に合わせて示す。
図3,4の結果から明らかのように、金属錯体を含有する本発明の食器洗浄機用洗浄剤組成物によれば高い除菌効果が得られることがわかる。
【0077】
[実施例および比較例]
<食器洗浄器用洗剤組成物>
上記合成例で得た各成分および下記の市販成分を用い、表1,2に示す配合で各成分を混合して粉末状の食器洗浄機用洗浄剤組成物を調製した。表1,2における配合割合の単位は質量%である。
得られた食器洗浄機用洗浄剤組成物について、下記の方法で洗浄力および保存安定性について評価した。その結果を表1,2に示す。
【0078】
表1,2に示す各成分は以下の通りである。
B−1:被覆過炭酸ナトリウム:三菱瓦斯化学社製、商品名:SPC−D、ケイ酸とホウ酸ナトリウムでコーティングした過炭酸ナトリウム。
B−2:過炭酸ナトリウム:三菱瓦斯化学社製、商品名:SPC−G。被覆なし。
B−3:過硼酸ナトリウム:三菱瓦斯化学社製、商品名:ペルボン。被覆なし。
【0079】
C−2:ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、BASF社製、プルラファックLF403。
C−3:ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、日本触媒社製、ソフタノールEP90100。
【0080】
AA/MA−1:アクリル酸マレイン酸共重合体、BASF社製、商品名:ソカランCP5。
AA/MA−2:アクリル酸マレイン酸共重合体、BASF社製、商品名:ソカランCP7。
AA:ポリアクリル酸、BASF社製、商品名:ソカランPA50。
クエン酸:クエン酸三ナトリウム、磐田化学社製、商品名:クエン酸ナトリウム。
MGDA:メチルグリシンジ酢酸3ナトリウム、BASF社製、商品名:Trilon M。
炭酸塩:炭酸ナトリウム、旭硝子社製、商品名:粒灰。
複合塩:炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム複合物、ローディア社製、商品名:ナビオン15。
アミラーゼ:ノボザイムズ社製、商品名:デュラミル120T。
プロテアーゼ:ノボザイムズ社製、商品名:エバラーゼ8.0T。
植物抽出物:豊玉香料社製、ローズマリーエキス。
アルミン酸:アルミン酸ナトリウム、住友化学社製、NAP−120。
消泡剤:ダウ コーニング社製、商品名:2−4248S。
香料:特開2002−146399号公報の表11〜18に記載の香料組成物。
無水ケイ酸:トクヤマ社製、トクシールNP。
硫酸塩:無水硫酸ナトリウム、日本化学社製、無水芒硝K2。
【0081】
また、表3に示す製造条件でタブレット状の食器洗浄機用洗浄剤組成物を製造し、下記の方法で洗浄力および保存安定性について評価した。その結果を表3に示す。
表3に示す実施例15〜22における成分組成は、実施例15、16は実施例3と同じであり、実施例17、18、22は実施例9と同じであり、実施例19〜21は実施例14と同じである。
実施例15は、全成分を均一に混合した後、これを圧縮打錠した。
実施例16は、全成分を均一に混合したものを、ポリビニルアルコールからなるフィルム((株)クラレ社製、製品名:クラリアHH、厚さ:40μm。以下PVAフィルムという。)で形成されたポケット内に収容した状態で圧縮打錠して、PVAフィルムで被覆されたタブレット状とした。
実施例17は、全原料を、A成分(金属触媒)とC成分(非イオン性界面活性剤)を含み、B成分を含まない第1原料と、B成分を含み、A成分とC成分を含まない第2原料に分けた。A〜C成分以外の他の原料は、均一に混合した後に2等分して、第1原料および第2原料にそれぞれ配合して均一に混合した。そして、第1原料を打錠機にセットし、その上に第2原料を積層させた状態で、一括的に圧縮打錠して2層型のタブレット状とした。
実施例18は、実施例17と同様の第1原料と第2原料を、それぞれPVAフィルムからなるポケット内に収容した状態のものを、打錠機に積層してセットし、一括的に圧縮打錠して2層型のタブレット状とした。各層はPVAフィルムによって区分された分室となっている。
実施例19は、実施例17と同様にして2層型のタブレット状とした。
実施例20は、実施例18と同様にして、各層がPVAフィルムによって区分された分室となっている2層型のタブレット状とした。
実施例21は、実施例18において、第1原料をB成分以外の全成分とし、第2原料をB成分のみとした以外は、実施例18と同様にして、各層がPVAフィルムによって区分された分室となっている2層型のタブレット状とした。
実施例22は、実施例17と同様の第1原料と第2原料を、それぞれ個別に圧縮打錠して2種類のタブレットを作製し、これらを混合した。
【0082】
<洗浄力評価法>
以下のモデル汚垢を作成し、自動食器洗い乾燥機「松下電器産業(株)製、機種NP−40SX2」に装填し、各例で調製した食器洗浄機用洗浄剤組成物6gを使用して標準コース洗浄を行った。仕上がり具合をそれぞれの評価基準に基づいて官能評価した。
[茶渋洗浄力:茶渋モデル汚垢の洗浄]
紅茶を飲み干してから25℃、50%RH条件下に1ヶ月間放置した紅茶汚垢の付いたコーヒーカップ(内径70mm、高さ70mm)3個をモデル汚垢とした。
評価基準:
◎:汚れは全く残留しておらず、ざらつき等の違和感も感じられない。
○:汚れの残留は目視では認められないが、ざらつき等の違和感を感じる。
△:汚れの残留が目視で若干認められる。
×:汚れが落ちていない。
【0083】
[でんぷん汚れ洗浄力:でんぷんモデル汚垢の洗浄]
味の素社製レトルトおかゆ3gを茶碗に塗布し、電子レンジ(500w)で2分間加熱したもの3個をモデル汚垢とした。
評価基準:
◎:汚れは全く残留しておらず、ヨウ素液にて染色もされない。
○:汚れの残留は目視では認められないが、ヨウ素液にて染色される。
△:汚れの残留が目視で認められ、ヨウ素液にて著しく染色される。
×:汚れがほとんど落ちていない。
【0084】
[油再汚染防止能:油モデル汚垢の洗浄]
牛脂/ラード/バター/サラダ油=3/3/3/1の混合油3gを塗布した皿と、レトルトカレー(ボンカレーゴールド21 辛口)3gを塗布した皿と、清浄なポリプロピレン製弁当箱(縦110mm、横170mm、高さ35mm。)を同時に洗浄し、洗浄後の弁当箱の状態を官能評価した。
なお、食洗機内においては洗浄液が循環して食器全体に繰り返し接触するため、油の洗浄力が不充分であると、元々油汚れが付着していなかった食器に油が付着した状態となる油再汚染が生じる。したがって、油汚れ食器の共存下で、油が付着し易いポリプロピレン製の食器を洗浄したときの油再汚染が少ないほど、油汚れの洗浄力が良好であることを示す。
評価基準:
◎:油は全く付着しておらず、違和感も感じられない。
○:油の付着は目視では認められないが、ヌルつき等の違和感を感じる。
△:油の付着が目視で若干認められる。
×:油がべっとりと付着している。
【0085】
<保存安定性の評価法>
[過酸化物安定性]
容器(詰替えパウチ2層構造、外からPET/LLDPE=12μm/120μm、直径0.3mmのピンホール有り)に、食器洗浄機用洗浄剤組成物600gを入れ、45℃−25℃リサイクル条件(45℃・湿度85%8時間,25℃・湿度60%16時間)にて1ヶ月保存後、(B)成分(B−1、B−2、B−3の合計)の濃度(質量%)を定量分析した。
こうして得られた濃度の値から、下記数式(1)により残存率(単位:%)を求め、下記評価基準に基づいて評価した。
残存率(%)=(保存後の濃度)/(保存前の初期濃度)×100 ・・・(1)
(過酸化物安定性の評価基準)
◎:残存率が80%以上。
○:残存率が60%以上80%未満。
△:残存率が40%以上60%未満。
×:残存率が40%未満。
【0086】
[アミラーゼ安定性およびプロテアーゼ安定性]
上記過酸化物安定性の評価法と同様にして、容器に、食器洗浄機用洗浄剤組成物を入れ、45℃−25℃リサイクル条件にて1ヶ月保存後、アミラーゼの含有量およびプロテアーゼの濃度(質量%)をそれぞれ定量分析した。
こうして得られた濃度の値から、上記数式(1)により残存率(単位:%)を求め、下記評価基準に基づいて評価した。
(アミラーゼおよびプロテアーゼ安定性の評価基準)
○:残存率が60%以上。
△:残存率が30%以上60%未満。
×:残存率が30%未満。
【0087】
【表1】

【0088】
【表2】

【0089】
【表3】

【0090】
表1,2の結果より、実施例1〜14の洗浄剤組成物は、油汚れ、でんぷん汚れおよび茶渋汚れに対する洗浄力が、いずれも良好であった。
これに対して(C)成分を含み、(A)成分と(B)成分の一方または両方を含まない比較例1〜4、6では、油汚れの洗浄は良好であったものの、でんぷん汚れおよび茶渋汚れに対する洗浄力が不充分であった。特に(A)成分と(B)成分の両方を含まない比較例6はでんぷん汚れおよび茶渋汚れの洗浄力が著しく劣っていた。
また(B)成分を含み、(A)成分および(C)成分を含まない比較例5は、いずれの洗浄力も不充分であり、特に油汚れに対する洗浄力が劣っていた。
さらに、(A)成分として、バインダー成分等とともに造粒する工程を経て得られたA−3〜A−6を用いた実施例6〜14では、良好な保存安定性が得られた。
また、表3の結果より、タブレット状としても良好な洗浄力および保存安定性が得られることが認められた。
多相タブレットについては、第一相及び第二相を一体成型しても、それぞれのタブレットどうしを混合しても同等の結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】試験例の結果を示す図である。
【図2】試験例の結果を示す図である。
【図3】試験例の結果を示す図である。
【図4】試験例の結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(I)
【化1】

(式中、Xは水素原子、スルホン基、アミノ基、水酸基、ニトロ基、カルボキシ基、または一部が置換されていてもよいアルキル基を表す。Yは水素原子、アルカリ金属、またはアルカリ土類金属を表す。pは1または2の整数を表し、pが2の場合、Xは同一のものでも、異なるものでもよい。)
で示される構造の配位子と、CuおよびMnから選ばれる1種以上の遷移金属を含む金属触媒、
(B)過酸化水素、および水中で過酸化水素を発生する化合物から選ばれる1種以上の過酸化物、および
(C)非イオン性界面活性剤を含有することを特徴とする食器洗浄機用洗浄剤組成物。
【請求項2】
前記(A)金属触媒が、前記一般式(I)で示される構造の配位子とCuとが結合した錯体および/又は前記配位子とMnとが結合した錯体を含有することを特徴とする請求項1記載の食器洗浄機用洗浄剤組成物。
【請求項3】
前記(A)金属触媒が、前記一般式(I)で示される構造の配位子と、水に溶解してCuイオンを生じる化合物および水に溶解してMnイオンを生じる化合物から選ばれる1種以上の遷移金属イオン源を含むことを特徴とする請求項1記載の食器洗浄機用洗浄剤組成物。
【請求項4】
前記(A)金属触媒と(B)過酸化物とが直接接触しない状態で含まれていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の食器洗浄機用洗浄剤組成物。
【請求項5】
前記(A)金属触媒と(B)過酸化物を非接触の状態で含むタブレット型に成型された、請求項1〜4記載の食器洗浄機用洗浄剤組成物。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−37885(P2008−37885A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−209844(P2006−209844)
【出願日】平成18年8月1日(2006.8.1)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】