説明

食物の摂取から独立した消化器疾患の治療方法

本発明は、消化器疾患の治療を必要とする患者に、食物の摂取と独立して患者に投与されることができる医薬組成物を投与することにより、消化器疾患を治療する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、内容を参照により本明細書に組み込む、2007年10月12日出願の米国特許出願第60/998754号および2008年10月10日出願の米国特許出願第12/249258号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、その治療を必要とする患者に、食物の摂取と独立して、患者に投与されることが可能な医薬組成物を投与することにより、消化器疾患を治療する方法に関する。具体的には、この方法で使用される医薬組成物は、各々が少なくとも1つのプロトンポンプ阻害薬を含む少なくとも2種の固形粒子を含む。
【背景技術】
【0003】
胃は消化器官である。胃は、嚢状の形状を有し、食道と腸との間に位置する。ほぼ全ての動物が胃を持っている。
【0004】
ヒトの胃は、横隔膜下にある腹腔内に斜めに位置する、筋性で弾性のある、洋梨形状の嚢である。胃は、体内における位置および内部にある食物の量に応じて、大きさと形状を変化させる。胃壁には、何百万もの胃腺が並んでおり、食事ごとに、胃腺から合わせて400−800mlの胃液が分泌される。3種類の細胞が、胃腺の中に見出される。これらの細胞とは、壁細胞、「主」細胞および粘液分泌細胞である。壁細胞は、H/Kアデノシントリホスファターゼとして知られている酵素を含有している。H/Kアデノシントリホスファターゼは、また、「アシッドポンプ」または「プロトンポンプ」とも呼ばれる。この膜貫通タンパク質は、ATPエネルギーを使って能動輸送によりHイオン(プロトン)を分泌する。胃液中のH濃度は、0.15Mまで高くなることができ、胃液のpHを1未満とする。
【0005】
プロトンポンプ阻害薬(または「PPI」)は、H/Kアデノシントリホスファターゼを阻害することにより胃酸の分泌を阻害するクラスの医薬化合物である。本技術分野において、プロトンポンプは活性状態または休眠状態のいずれかで存在できることが知られている。PPIは、活性なプロトンポンプにだけ結合する。PPIは、壁細胞中で代謝されて、活性スルフェンアミド代謝産物になり、これらの代謝産物が、プロトンポンプのスルフヒドリル基を不活性化することにより、水素イオンの分泌を低下させる(LangtryおよびWilde、「An update of its pharmacological properties and clinical efficacy in the management of acid−related disorders」、Drugs、54(3):473−500頁(1997年))。
【0006】
PPIは、活動性十二指腸潰瘍、胃潰瘍、胃食道逆流症(GERD)、重度のびらん性食道炎、低応答性系統的GERDおよびゾリンジャーエリソン症候群等の病理学的な分泌過剰症状の短期的治療のために、頻繁に処方される。これらの症状は、酸とペプシンの産生の不均衡(攻撃因子)ならびに粘膜、重炭酸塩およびプロスタグランジンの産生(防衛因子)により引き起こされる。上に列挙した症状は、健康または重病の患者で発生する可能性があり、相当な胃腸出血を伴うこともある。
【0007】
PREVACID(登録商標)の商品名で市販されているPPIである、ランソプラゾールは、置換ベンズイミダゾール、2−[[[3−メチル−4−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−2−ピリジル]メチル]スルフィニル]ベンズイミダゾールである。ランソプラゾールは、R−エナンチオマーおよびS−エナンチオマーを含むラセミ化合物である。ランソプラゾールのR−エナンチオマーは、デクスランソプラゾールとしても知られ、やはりPPIである(国際公開第2004/035020号を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2004/035020号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】LangtryおよびWilde、「An update of its pharmacological properties and clinical efficacy in the management of acid−related disorders」、Drugs、54(3):473−500頁(1997年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
PPIは、PPIによる治療を必要とする患者に、食物または食事の摂取または消費と組み合わせて投薬される。例えば、PREVACID(登録商標)(ランソプラゾール)のラベルには、PREVACID(登録商標)は、「食事の前に服用すべきである」と明記されており、同じくPPIである、NEXIUM(登録商標)(エソメプラゾールマグネシウム)のラベルには、「NEXIUM(登録商標)は、食事の少なくとも1時間前に服用すべきである」と明記されている。したがって、患者は、いつでも自分に都合のよい時間にPPIを服用することはできず、食物の摂取または消費と一緒または食物の摂取または消費の少なくとも1時間前に薬を服用することを忘れないようにしなければならない。患者の服薬遵守を改善するために、デクスランソプラゾール等のPPIを含む食物の摂取または消費と独立して患者に投薬されることができる医薬組成物が、本技術分野で必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要旨)
一実施形態において、本発明は、その治療を必要とする患者において消化器疾患を治療する方法に関する。この方法は、
治療有効量のプロトンポンプ阻害薬を含む医薬組成物を前記の患者に投与するステップを含み、この医薬組成物は、食物の摂取と独立して患者に投与されることが可能である。
【0012】
もう一実施形態において、本発明は、その治療を必要とする患者において消化器疾患を治療する方法に関する。この方法は、
治療有効量の
(a)活性薬剤および第1の腸溶コーティングを含む第1の固形粒子(第1の腸溶コーティングは、約5.0から約5.5のpHにおいて、固形粒子から活性薬剤を放出する。)および
(b)活性薬剤および第2の腸溶コーティングを含む第2の固形粒子(第2の腸溶コーティングは、約6.2から約6.8のpHにおいて、固形粒子から活性薬剤を放出する。)
を含み、
第1の固形粒子は、医薬品組成物の約15重量%から約50重量%を構成し、第2の固形粒子は、医薬品組成物の約50重量%から約85重量%を構成し、
さらに、医薬品組成物は食物の摂取と独立して患者に投与されることが可能である
医薬組成物を患者に投与するステップを含む。
【0013】
前述の方法において、第1の固形粒子は、顆粒とすることができる。さらに、第2の固形粒子も顆粒とすることができる。好ましくは、第1および第2の固形粒子はどちらも、それぞれ顆粒である。好ましくは、医薬組成物は、錠剤またはカプセル剤である。
【0014】
第1の固形粒子における活性薬剤は、デクスランソプラゾールとすることができる。第2の固形粒子における活性薬剤は、デクスランソプラゾールとすることができる。好ましくは、第1の固形粒子および第2の固形粒子における活性薬剤は、デクスランソプラゾールである。
【0015】
好ましくは、第1の腸溶コーティングは、pH約5.5を有し、メタクリル酸コポリマー分散物を含む。好ましくは、第2の腸溶コーティングは、pH約6.75を有し、3:1の比でメタクリル酸コポリマーB型とメタクリル酸コポリマーA型との混合物を含む。
【0016】
場合によって、第1の固形粒子は、活性薬剤と第1の腸溶コーティングとの間に保護層を含む。場合によって、第2の固形粒子は、活性薬剤と第2の腸溶コーティングとの間に保護層を含む。存在する場合、保護層は、サッカライド、サッカライドスターチまたはこれらの任意の組合せから作られることができる。
【0017】
前述の方法において、第1の固形粒子は、医薬組成物を約25%含み、第2の固形粒子は、医薬組成物を約75%含む。
【0018】
前述の方法に従って、治療されることのできる胃腸の症状としては、これらに限られないが、胸やけ、炎症性腸疾患、クローン病、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、消化性潰瘍、ストレス潰瘍、出血性消化性潰瘍、十二指腸潰瘍、感染性腸炎、結腸炎、憩室炎、胃酸過多症、消化不良、胃不全麻痺、ゾリンジャー−エリソン症候群、胃食道逆流症、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)関連疾患、短腸症候群、全身性肥満細胞症または好塩基球性白血病または高ヒスタミン血症に伴う分泌過剰状態、または前記の疾患のいずれかの組合せが挙げられる。
【0019】
第2の実施形態において、本発明は、その治療を必要とする患者において消化器疾患を治療する方法に関する。この方法は、
治療有効量の
(a)デクスランソプラゾースおよび第1の腸溶コーティングを含む第1の顆粒(第1の腸溶コーティングは、約5.5のpHにおいて、顆粒からデクスランソプラゾースを放出する)および
(b)デクスランソプラゾースおよび第2の腸溶コーティングを含む第2の顆粒(第2の腸溶コーティングは、約6.75のpHにおいて、顆粒からデクスランソプラゾースを放出する)
を含み、
第1の顆粒は、カプセルの約25重量%を構成し、第2の顆粒は、カプセルの約75重量%を構成し、
さらに、カプセルは食物の摂取と独立して患者に投与されることが可能である
カプセルを患者に投与するステップを含む。
【0020】
前述の方法において、第1の腸溶コーティングは、メタクリル酸コポリマー分散物を含み、第2の腸溶コーティングは、3:1の比でメタクリル酸コポリマーB型とメタクリル酸コポリマーA型との混合物を含む。さらに、前述の方法において、第1の顆粒は、デクスランソプラゾールと第1の腸溶コーティングとの間に保護層をさらに含むことができ、第2の顆粒は、デクスランソプラゾールと第2の腸溶コーティングとの間に保護層をさらに含むことができる。これらの顆粒の各々に含まれる保護層は、サッカライド、サッカライドスターチまたはこれらの任意の組合せから形成することができる。
【0021】
前述の方法に従って、治療されることのできる胃腸の症状としては、これらに限られないが、胸やけ、炎症性腸疾患、クローン病、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、消化性潰瘍、ストレス潰瘍、出血性消化性潰瘍、十二指腸潰瘍、感染性腸炎、結腸炎、憩室炎、胃酸過多症、消化不良、胃不全麻痺、ゾリンジャー−エリソン症候群、胃食道逆流症、ヘリコバクター・ピロリ関連疾患、短腸症候群、全身性肥満細胞症または好塩基球性白血病または高ヒスタミン血症に伴う分泌過剰状態、または前記の疾患のいずれかの組合せが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例2に記載されたA−Dのレジメンの各々につき、平均血漿TAK−390 MR濃度対時間プロフィールを示す図である。
【図2】実施例2に記載の胃内pHの結果は、絶食時/食物摂取後の様々な条件下におけるTAK−390の薬物動態変化は、TAK−390MRの薬力学に対して、関連する影響を及ぼさなかったことを示唆していることを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
定義
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される「a」、「an」および「the」は、明確にそうでない旨が断られていない限り、複数形も含むものとする。したがって、例えば、「活性薬剤」は、単一の活性薬剤および2つ以上の異なる活性薬剤の組合せを含む。
【0024】
本発明を記載および請求するに際し、下記の定義に従って、以下の用語が使用される。
【0025】
「活性薬剤」、「活性成分」および「薬物」という用語は、本明細書で変換可能に用いられ、一般式I(下記)の化合物、これらのアルカリ塩、これらの代謝産物またはこれらのプロドラッグ、これらの単一エナンチオマーの1つ、これらのアルカリ塩(例えば、Mg2+、Ca2+、NaまたはKの塩等)、これらの代謝産物またはこれらのプロドラッグ、または一般式Iの化合物の単一エナンチオマーの1つ、一般式Iの化合物の単一エナンチオマーのアルカリ塩、一般式Iの化合物の単一エナンチオマーの代謝産物または一般式Iの化合物の単一エナンチオマーのプロドラッグを指す:
【0026】
【化1】

式中、Hetは、
【0027】
【化2】

であり、Hetは、
【0028】
【化3】

であり、Xは、
【0029】
【化4】

である。(式中、
ベンズイミダゾール部分中のNは、R−Rによって置換されている環炭素原子の1つを、置換基を全くもたない窒素原子と場合によって交換可能であることを意味し、
、RおよびRは、同一でありまたは異なり、水素、アルキル、フッ素で場合によって置換されているアルコキシ、アルキルチオ、アルコキシアルコキシ、ジアルキルアミノ、ピペリジノ、モルホリノ、ハロゲン、フェニルおよびフェニルアルコキシであり、
およびRは、同一でありまたは異なり、水素、アルキルおよびアリールアルキルから選択され、
’は、水素、ハロゲン、トリフルオロメチル、アルキルまたはアルコキシであり、
−Rは、同一でありまたは異なり、水素、アルキル、アルコキシ、ハロゲン、ハロアルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、オキサゾリニル、トリフルオロアルキル、さらに置換されてもよい複素環から選択される、または隣接するR−R基は、さらに置換されていてもよい環状構造を形成し、
10は、水素であり、
11およびR12は、同一でありまたは異なり、水素、ハロゲンまたはアルキルから選択される。)
式Iによる好ましい化合物は:
【0030】
【化5】


式Iの最も好ましい化合物は、ランソプラゾールのR−エナンチオマーであるデクスランソプラゾールである。
【0031】
用語「投与する」、「投与している」、「投与した」または「投与」は、薬物を対象または患者に与える任意の方法を指す。投与の経路は、当業者に知られている任意の手段のよって定められることができる。このような手段には、これらに限られないが、経口、口腔、静脈内、皮下、筋肉内、吸入等が含まれる。
【0032】
本明細書で使われる用語「バイオアベイラビリティ」は、活性成分または薬物が、全身循環に入り、その中に留まることにより、作用部位に到達することが可能になる割合、範囲および持続時間を指す。より高いバイオアベイラビリティは、例えば、活性成分または薬物の作用の持続時間を増大させることにより、達成されることができる。活性成分または薬物のバイオアベイラビリティを決定するための方法は、当業者には、よく知られている。
【0033】
本明細書で使われる用語「慢性咳嗽」は、少なくとも1週間、好ましくは、少なくとも2週間、最も好ましくは、少なくとも3週間の期間、継続する咳を指す。PPIを使用して、慢性咳嗽を治療する方法は、Chung、「Clinc.Exp.Allergy」、35巻、245−246頁(2005年)に開示されている。
【0034】
用語「投薬形態」は、ある種の活性成分を所定の特定量(すなわち、投与量)を含むように作られた任意の固体、半固体もしくは液体の医薬組成物を指す。適切な投薬形態は、経口投与、口腔投与、直腸投与、局所もしくは粘膜送達または皮下埋め込み、またはその他の埋め込まれた薬物送達システム等用のものを含む医薬送達システムであることができる。好ましくは、本発明の医薬組成物の投薬形態は、固体であるとみなされるが、それらは液体または半固体の成分を含んでもよい。
【0035】
投薬形態の「有効量」または「治療有効量」は、毒性を示さず、所望の効果をもたらすのに十分な量の活性成分を意味する。「有効」となる活性成分の量は、個人の年齢および全体的な健康状態、特定の活性成分または活性成分等により、対象ごとに異なる。したがって、正確な「有効量」を規定することは必ずしも可能ではない。しかし、個々のケースにおける適切な「有効量」は、当業者であれば、日常の実験を使用して、決定することができる。
【0036】
本明細書で使われる用語「消化器疾患」は、例えば、胸やけ、炎症性腸疾患、クローン病、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、消化性潰瘍、ストレス潰瘍、出血性消化性潰瘍、十二指腸潰瘍、感染性腸炎、結腸炎、憩室炎、胃酸過多症、消化不良、胃不全麻痺、ゾリンジャー−エリソン症候群、これらに限られないが、症候性GERDおよび非症候性GERDを含む胃食道逆流症(「GERD」)(すなわち、酸の逆流)、ヘリコバクター・ピロリ関連疾患、全身性肥満細胞症または好塩基球性白血病、例えば神経外科、頭部外傷、重度の身体的外傷またはやけどに起因する高ヒスタミン血症に伴う分泌過剰状態を含む、患者の上部および下部の消化管の任意の疾病または疾患を指す。
【0037】
本明細書で使われる用語「下部消化管」は、回腸、結腸、盲腸および直腸を指す。
【0038】
用語「患者」は、動物、好ましくは、ヒトおよびヒト以外を含む哺乳類を指す。患者および対象という用語は、本明細書では、交換可能に使われる。
【0039】
「薬学的に許容される賦形剤」または「薬学的に許容される添加剤」の詳述等における「薬学的に許容される」は、生物学的に活性でないまたはそうでなくても有害ではない物質、すなわち、患者に投与する医薬組成物に、望ましくない生物学的影響を及ぼすことなく、組み込むことのできる物質を意味する。
【0040】
本明細書で使われる用語「安定剤」は、胃の酸性環境による活性成分または薬物の劣化を最小限に抑える任意の化学薬品、化合物または物質を指す。安定剤の例には、これらに限られないが、アルミニウム塩、アルミニウムの炭酸塩または重炭酸塩、IA族の金属またはIIA族の金属塩(これらに限られないが、ナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等)、IA族の金属またはIIA族の炭酸塩または重炭酸塩(ナトリウムの炭酸塩または重炭酸塩、マグネシウムの炭酸塩または重炭酸塩、カルシウムの重炭酸塩等)、ポリマー、アルギン酸ナトリウム、ステロール、脂肪アルコールおよびそれらの組合せが含まれる。
【0041】
安定剤として使用できるポリマーの例には、これらに限られないが、半透性ホモポリマー、半透性コポリマー等が含まれる。好ましくは、ポリマーは、セルロースエステル、セルロースエーテルおよびセルロースエステル−エーテルである。セルロース系ポリマーは、0より大きく、最大3(含む)までの無水グルコース単位の置換度(「DS」)を有する。置換度は、置換基によって置換されるまたは別の基に変換される無水グルコース単位上に最初に存在するヒドロキシル基の平均数を意味する。無水グルコース単位は、アシル、アルカノイル、アルケノイル、アロイル、アルキル、アルコキシ、ハロゲン、カルボアルキル、アルキルカルバメート、アルキルカルボネート、アルキルスルフォネート、アルキルスルファメート、半透性ポリマー形成基等の基によって部分的または完全に置換されることができる。
【0042】
半透性ポリマーの例としては、セルロースアシレート、セルロースジアシレート、セルローストリアシレート、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、モノ−、ジ−およびトリ−セルロースアルカニレート、モノ−、ジ−およびトリ−アルケニレート、モノ−、ジ−およびトリ−アロイレート(aroylate)等から成る群から選択される一員が含まれる。例示的なポリマーとしては、DSが1.8から2.3で、アセチル含有量が32から39.9%のセルロースアセテート、DSが1から2で、アセチル含有量が21から35%のセルロースジアセテート、DSが2から3で、アセチル含有量が34から44.8%のセルローストリアセテート等が挙げられる。より具体的なセルロース系ポリマーとしては、DSが1.8で、プロピオニル含有量が38.5%のセルロースプロピオネート、アセチル含有量が1.5から7%で、プロピオニル含有量が39から42%のセルロースアセテートプロピオネート、アセチル含有量が2.5から3%で、平均プロピオニル含有量が39.2から45%、ヒドロキシル含有量が2.8から5.4%のセルロースアセテートプロピオネート、DSが1.8で、アセチル含有量が13から15%、ブチリル含有量が34から39%のセルロースアセテートブチレート、アセチル含有量が2から29%、ブチリル含有量が17から53%、ヒドロキシル含有量が0.5から4.7%のセルロースアセテートブチレート、DSが2.6から3のセルローストリアシレート、例えば、セルローストリバレレート、セルローストリラメート(cellulose trilamate)、セルローストリパルミテート、セルローストリオクタノエートおよびセルローストリプロピオネート、DSが2.2から2.6のセルロースジエステル、例えば、セルロースジサクシネート、セルロースジパルミテート、セルロースジオクタノエート、セルロースジカプリレート等、および混合セルロースエステル、例えば、セルロースアセテートバレレート、セルロースアセテートサクシネート、セルロースプロピオネートサクシネート、セルロースアセテートオクタノエート、セルロースバレレートパルミテート、セルロースアセテートヘプトネート等が挙げられる。半透性ポリマーは、米国特許第4077407号明細書において知られており、「Encyclopedia of Polymer Science and Technology」、第3巻、325−354頁(1964年)、Interscience Publishers Inc.、ニューヨーク州ニューヨークに記載の手順により合成することができる。
【0043】
半透性ポリマーは、セルロースアセトアルデヒドジメチルアセテート、セルロースアセテートエチルカルバメート、セルロースアセテートメチルカルバメート、セルロースジメチルアミノアセテート、半透性ポリアミド、半透性ポリウレタン、半透性スルホン化ポリスチレン、米国特許第3173876号、第3276586号、第3541005号、第3541006号および第3546142号明細書に開示されている、アニオンとカチオンとの共沈により形成され、架橋された選択的半透性ポリマー、Loebらによって米国特許第3133132号明細書に開示された半透性ポリマー、半透性ポリスチレン誘導体、半透性ポリ(スチレンスルホン酸ナトリウム)、半透性ポリ(塩化ビニルベンジルトリメチルアンモニウム);および半透壁を透過する際の大気当たりの静水圧差または浸透圧差として表され、10−5から10−2(cc.mil/cm hr.atm)の液透過度を示す半透性ポリマーが含まれる。当業者に知られているポリマーは、米国特許第3845770号、第3916899号および第4160020号明細書ならびに「Handbook of Common Polymers」、ScottおよびRoff(1971年)、CRC Press、オハイオ州クリーブランドに記載されている。
【0044】
安定剤として使用可能なステロールの例としては、これらに限られないが、フィトステロール(エルゴステロール、スチグマステロール、シトステロール、ブラシカステロールおよびカンプエステロール等)、ズーステロール(コレステロールおよびラノステロール等)またはこれらの組合せが挙げられる。
【0045】
安定剤として使用可能な脂肪アルコールは、10−30個の炭素原子を有する、直鎖、飽和または不飽和の第1級アルコールであることができる。使用可能な脂肪アルコールの例としては、これらに限られないが、セチルアルコール、ミリスチルアルコールまたはステアリルアルコールが挙げられる。
【0046】
用語「治療する」および「治療」は、症状の重症度および/または頻度の軽減、症状および/または基礎的な原因の除去、症状および/またはそれらの基礎的な原因の発生の予防ならびに損傷の改善または矯正を指す。したがって、例えば、患者の「治療」には、罹患しやすい個人において、特定の疾患または有害な生理学的事象を予防することならびに障害または疾患の退行を抑制するまたは生じさせることにより、臨床的症状を示している個人を治療をすることが含まれる。
【0047】
本明細書で使われる用語「潰瘍」は、組織の損失を特徴とする、上部消化管粘膜の損傷を指す。このような潰瘍には、これらに限られないが、胃潰瘍、十二指腸潰瘍および胃炎が含まれる。
【0048】
本明細書で使われる用語「上部消化管」は、食道、胃、十二指腸および空腸を指す。
【0049】
胃の絶食時pHは、2から6のpHの間で変化する(pH7未満は、酸性pHとみなされる)。小腸のpHは、胃のpHよりもアルカリ性であり、十二指腸から回腸でさらに上昇する。本発明の活性成分は、当技術分野で知られている他のPPIと同様、酸に不安定である。本発明の活性成分は、酸性pHにおいて、急速に分解して、不活性化合物になる。錠剤またはカプセルが胃で溶解するとき、この錠剤またはカプセルは、胃の内容物と十分に混合される。胃の内容物は胃から十二指腸に移ると、十二指腸に存在する重炭酸塩によってゆっくりと中和される。したがって、pHは、胃の内容物が小腸を移行するに従って増加する。
【0050】
薬物吸収の正確な場所は、胃、小腸または消化管全体であるのか、明確ではない。本発明の発明者らは、活性成分が小腸の上部において部位固有の吸収を示すことを発見した(実施例4を参照)。具体的には、小腸の上部、すなわち、pHがより酸性である、十二指腸の領域、上部空腸の領域または十二指腸および上部空腸の領域の組合せにおいて、活性成分の吸収は、著しく高まる。
本発明の説明
ランソプラゾール、オメプラゾール等のプロトンポンプ阻害薬(PPI)は、食物の摂取(例えば、朝食等の食事の摂取時等)に伴って患者に経口投与されることは、当技術分野で公知である。事実、PREVACID(登録商標)(ランソプラゾール)のラベルには、「PREVACID(登録商標)は、食事の前に服用すべきである」と明記されている。もう1つ例を挙げると、NEXIUM(登録商標)(エソメプラゾールマグネシウム)のラベルには、「NEXIUM(登録商標)は、食事の少なくとも1時間前に服用すべきである」と明記されている。しかし、食物の摂取と組み合わせた、このようなPPIの投与は、PPIの全身暴露を低下させる。本発明者らは、医薬組成物が食物または食事の摂取または消費と独立して患者に投与されることのできる、少なくとも1つのPPIを含む医薬組成物によって患者を治療する方法を発見した。本発明者らは、また、本発明の医薬組成物をこの治療を必要とする患者に投与することは、予期しない、驚くべき利点を示すことも発見した。具体的には、PREVACID(登録商標)等のPPIを、高脂肪食と一緒に投与することは、CmaxおよびAUCの値に、それぞれ約50%から70%の減少が生じることが当技術分野では知られている。これは、このような高脂肪食と一緒に投与した後のPPIの全身暴露における大幅な減少である。同様に、高脂肪食後15分以内にNEXIUM(登録商標)を投与することは、この吸収およびバイオアベイラビリティにマイナスの影響が生じることが示されている(CmaxおよびAUCの両方)(Sostck MBら、「Br J Clin Pharmacol.」、64巻、386−390頁(2007年)を参照)。しかし、本発明者らは、高脂肪食と一緒に本発明の医薬組成物を投与することは、このような高脂肪食の投与後、PPIの全身暴露の増加に繋がることを発見した。例えば、本明細書に示されるように、本発明者らは、高脂肪食と一緒に、90mg投与量のデクスランソプラゾールを経口投与すると、CmaxおよびAUCの値に、それぞれ約37%の増加が生じることを発見した。
【0051】
本発明の方法は、食物または食事の摂取または消費と独立して、その治療を必要とする患者に、医薬組成物を投与することを伴う。本発明の方法において使用される医薬組成物は、少なくとも1つの活性薬剤の少なくとも2つの異なる種類の固形粒子を、治療的に有効な量含む。好ましくは、固形粒子は1種または複数の顆粒である。医薬組成物は、異なる種類の固形粒子を任意の数含むことができるが、医薬組成物が少なくとも2つの異なる種類の固形粒子を含んでいることが好ましい。医薬組成物を含む粒子は、単一の活性成分を含むことができ、または1つもしくは複数の活性成分の混合物を含むことができる。さらに、異なる粒子のそれぞれは、異なる活性成分を含むことができる。しかし、少なくとも1種の粒子が、活性成分として、デクスランソプラゾールを含んでいることが好ましい。医薬組成物に含まれる粒子のそれぞれは、同一の活性成分、すなわち、デクスランソプラゾールを含むことがより好ましい。上述の通り、医薬組成物は、少なくとも2種の固形粒子を含む。
【0052】
一態様において、第1の固形粒子は、活性薬剤および腸溶コーティングを含む。もう1つの態様において、第2の固形粒子は、活性薬剤および腸溶コーティングを含む。さらに別の態様において、第1の固形粒子は、活性薬剤および第1の腸溶コーティングを含み、第2の固形粒子は、活性薬剤(第1の固形粒子中の活性薬剤と同一であるまたは異なることができるが、同一の活性薬剤であることが好ましい)および第2の腸溶コーティングを含む。
【0053】
第1の固形粒子は、活性薬剤および場合によって、1つまたは複数の薬学的に許容される安定剤(これに限られないが、炭酸マグネシウム等)、1つまたは複数の薬学的に許容されるポリマー、1つまたは複数の薬学的に許容されるバインダー(ヒドロキシルプロピルセルロース等)、1つまたは複数の薬学的に許容される崩壊錠(これに限られないが、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルボキシメチルセルロースナトリウム(FMC International Co.,Ltd.により製造されたAc−Di−Sol)、ポリビニルピロリドンおよび低置換ヒドロキシプロピルセルロースまたはこれらの任意の組合せ、1つまたは複数の賦形剤およびこれらの任意の組合せを含むコアを含む。これらに限られないが、直接混合、乾式造粒(ローラー圧縮)、湿式造粒(高せん断造粒)、製粉または篩、乾燥(湿式造粒が使用される場合)、押出し/球形化、ボーリング(balling)または圧縮および場合によっては、コーティング等の当技術分野で知られている慣用の技法を使用することにより、コアを製造することができる。または、当技術分野で知られている慣用の技法を使用することにより、不活性な(すなわち化学作用を起こさない)担体または球体に活性薬剤を噴霧することにより、コアを形成することもできる。バインダーは、不活性な担体に活性薬剤を噴霧するときに使用することができる。活性薬剤を噴霧することのできる不活性な担体または球体は、当技術分野でよく知られている。具体的には、使用することのできるそのような球体の例としては、これらに限られないが、スクロースの球体、スクロースおよびスターチの球体(Freund Industrial Co.,Ltd.によって製造されているNON−PARIEL−101、NON−PARIEL−105等)または結晶性セルロース球体もしくは結晶性セルロースおよびラクトースの球形に造粒した生成物が挙げられる。活性薬剤を不活性な担体または球体に噴霧すると、活性薬剤層が形成される。
【0054】
固形粒子は、コアと腸溶コーティングとの間に保護層または中間層を含むこともできる。保護層の目的は、活性薬剤(または活性薬剤層)が腸溶コーティングに直接接触するのを防止することである。当技術分野で知られている慣用の技法を使用することにより、保護層が、コアの上または周囲に形成される。例えば、中間層の成分は、精製水等により希釈され、活性薬剤を含むコアをコーティングするために、混合物を液体形状で噴霧することができる。保護層が塗布されている時点で、ヒドロキシプロピルセルロース等の結合剤(バインダーとしても知られている)を、場合によって、使用することができる(または、ヒドロキシプロピルセルロースを、バインダーとしてコアに含めることもできる)。
【0055】
その内容を参照により本明細書に組み込む国際公開第2004/035020号に記載されているように、保護層は、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、TC−5等)、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルセルロースおよびヒドロキシエチルメチルセルロース等のポリマー系基礎材料と一緒に適切に調合されたサッカライド、例えば、スクロース(精製された白糖(粉砕された白糖(粉砂糖)および粉砕されていない白糖)等、スターチサッカライド、例えば、コーンスターチ、ラクトース、蜂蜜および糖アルコール(D−マンニトール、エリスリトール等)から作ることができる。1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤、例えば、これらに限られないが、1つまたは複数の膜形成剤(ヒプロメロース2910等)、1つまたは複数の流動促進剤(タルク等)、1つまたは複数のマスキング剤、1つまたは複数の顔料(二酸化チタン等)、1つまたは複数の抗付着剤(タルク等)、1つまたは複数の帯電防止剤(酸化チタン、タルク等)またはこれらの任意の組合せも、必要であれば、保護層に加えられることができる。活性薬剤を含む固形粒子1重量部に対して、保護層は、約0.02重量部から約1.5重量部、好ましくは、約0.05重量部から約1重量部の量で塗布される。
【0056】
前述の通り、第1の顆粒は、第1の腸溶コーティングも含む。第1の腸溶コーティングは、コアを取り囲み、約5.0から約5.5のpHにおいて、固形粒子から活性薬剤を放出する。好ましくは、第1の腸溶コーティングは、約5.5のpHにおいて、固形粒子から活性薬剤を放出する。この第1の腸溶コーティングは、小腸の近位部および遠位部で約5.0から約5.5のpHにおいて、固形粒子から活性薬剤を放出する。
【0057】
第1の腸溶コーティングは、コアの上にコーティングされ、コアを取り囲む(コアは、保護層を含んでいても含んでいなくてもよい)。約5.0から約5.5のpHにおいて、活性薬剤の放出をもたらす腸溶コーティングであれば、医薬組成物中で使用されることができる。第1の腸溶コーティングの例は、EUDRAGIT(登録商標)L30D−55(Evonik Industries、ドイツ)およびEUDRAGIT(登録商標)100−55等のメタクリル酸コポリマー分散物である。第1の腸溶コーティングに使用することのできる材料の他の例としては、これらに限られないが、ヒプロメロースフタレート(HP−50またはHP−55)、ポリビニルアセテートフタレート、セルロースアセテートフタレート、ヒプロメロースアセテートサクシネートが挙げられる。
【0058】
やはり前述の通り、医薬組成物は少なくとも第2の固形粒子を含む。この第2の固形粒子の成分は、第1の固形粒子について(すなわち、コア、保護層等の点で)上で記載した成分と同一である。第1の固形粒子と第2の固形粒子の違いは、腸溶コーティング、具体的には、第2の腸溶コーティングである。第2の腸溶コーティングは、コアを取り囲み、約6.2から約6.8のpHにおいて、固形粒子から活性薬剤を放出する。好ましくは、第2の腸溶コーティングは、約6.75のpHにおいて、固形粒子から活性薬剤を放出する。第2の腸溶コーティングは、小腸のより遠位部で約6.2から約6.8のpHにおいて、固形粒子から活性薬剤を放出する。
【0059】
第2の腸溶コーティングは、コアの上にコーティングされ、コアを取り囲む(コアは、保護層を含んでいる場合も含んでいない場合もあり得る)。約6.2から約6.8のpHにおいて、活性薬剤の放出をもたらす腸溶コーティングであれば、医薬組成物中で使用することができる。第2の腸溶ポリマーの例は、メタクリル酸コポリマーB型とメタクリル酸コポリマーA型の混合物である。メタクリル酸コポリマーB型およびメタクリル酸コポリマーA型の比は、4:1から1:4、好ましくは、3:1である。メタクリル酸コポリマーB型の例は、EUDRAGIT(登録商標)S−100であり、メタクリル酸コポリマーA型は、EUDRAGIT(登録商標)L−100である。第2の腸溶コーティングとして、場合によって、使用することのできるもう1つの材料は、ヒプロメロースアセテートサクシネートまたは様々な置換度を有する、異なる等級のヒプロメロースアセテートサクシネート、例えば、以下の表Aに示されているもの等の混合物である。
【0060】
【表1】

より具体的には、HF等級を使用して、6.8で開始される放出のpHを得ることができた。さらに、HFまたはHG等級およびMFまたはMG等級を1:3の比で混合して、約6.2のpHで開始される活性薬剤の放出のpHを得ることができた。約6.5のpHにおける活性薬剤の放出は、HF対MFの比を5:3にすることで得ることができた。pH約6.75における活性薬剤の放出は、HF対MFの比を15:1にすることで得ることができた。pH6.4における活性薬剤の放出は、HF対MFの比を1:1にすることで得ることができた。
【0061】
1つもしくは複数の薬学的に許容される賦形剤(これらに限られないが、1つもしくは複数のマスキング剤(酸化チタン等)等)、1つもしくは複数の抗付着剤(タルク等)、1つもしくは複数の流動促進剤(タルク等)、1つもしくは複数の帯電防止剤(酸化チタン、タルク等)、1つもしくは複数の顔料(二酸化チタン等)、1つもしくは複数の可塑剤(ポリエチレングリコール、トリエチルシトレート等)または1つもしくは複数の界面活性剤(Polysorbate80等)またはこれらの任意の組合せも、必要であれば、第1の腸溶コーティング、第2の腸溶コーティングまたは第1の腸溶コーティングおよび第2の腸溶コーティングの両方に加えることができる。使用することのできる可塑剤および界面活性剤の追加の例は、その内容を参照により本明細書に組み込む国際公開第2004/035020号に記載されている。
【0062】
第1および第2の固形粒子中で使用される第1および第2の腸溶コーティングの量は、コーティングが塗布される前の各固形粒子の総量に対して、約10重量%から約70重量%、好ましくは、約10重量%から約50重量%、より好ましくは、約15重量%から約30重量%である。
【0063】
第1の固形粒子は、医薬組成物の約15重量%から約50重量%、好ましくは、約25重量%の量で組成物中に存在する。第2の固形粒子は、医薬組成物の約50重量%から約85重量%、好ましくは、約75重量%の量で医薬組成物中に存在する。その結果、医薬組成物中に含まれる第1の固形粒子対第2の固形粒子の好ましい比は、3:1である。
【0064】
前述の通り、発明者らは、高脂肪食と一緒に本発明の医薬組成物を投与することは、このような高脂肪食の投与後、活性薬剤の全身暴露の増加に繋がることを発見した。いかなる理論によっても束縛されることを望まないが、全身暴露のこの増加の発見は、第2の固形粒子およびそれらの食物との特異的な相互作用の結果であると考えられる。
【0065】
本発明の方法は、消化器疾患、特に、これらに限られないが、症候性GERD、消化不良および胸やけの治療に用いることが特に望ましい。加えて、本発明の方法は、慢性咳嗽に苦しんでいる患者の治療に使用することもできる。
【0066】
多種類の連続的薬物放出投薬形態が、当技術分野で公知である。例えば、制御または持続放出およびパルス放出(pulsed release)投薬形態が知られている。本発明において、マトリクス系、浸透圧ポンプおよび膜制御系(「貯留系」とも称される)も含め、いかなる種類の連続的薬物放出投薬形態でも、使用することができる。これらの系の各々について、以下でさらに詳細に説明する。このような投薬形態の詳しい議論は、以下の文献にもある:(i)「Handbook of pharmaceutical controlled release technology」、D.L.Wise編、Marcel Dekker,Inc.、ニューヨーク州ニューヨーク(2000年)および(ii)「Treatise on controlled drug delivery,fundamentals,optimization,and applications」、A.Kydonieus編、Marcel Dekker,Inc.、ニューヨーク州ニューヨーク(1992年)。
【0067】
マトリクス系は、当技術分野でよく知られている。マトリクス系において、薬物はポリマーおよび場合によって、通常の賦形剤の中に均一に分散される。このいわゆる混合物を、一般に、圧力下で圧縮し、錠剤を製造する。薬物は拡散および浸食により、この錠剤から放出される。マトリクス系は、一般に、水に溶ける親水性ポリマーまたは水に溶けない疎水性ポリマー(ワックスを含む)等の薬学的に許容されるポリマーを用いる。当業者であれば、当技術分野で知られている慣用の技法を使用して、使用すべき薬学的に許容されるポリマーの種類を容易に判断することができる。
【0068】
本発明の医薬組成物は、一般に、薬学的に許容される賦形剤も含む。当技術分野でよく知られているように、医薬賦形剤は、固形投薬形態に、ごく普通に組み込まれている。これは、通常、製造工程を容易にする目的および医薬組成物の性能を高める目的のために行われる。一般的な賦形剤としては、これらに限られないが、希釈剤または増量剤、潤滑剤、バインダー等が挙げられる。
【0069】
希釈剤または充填剤は、例えば、個々の投与量のかさを錠剤圧縮に適した大きさに増大する目的で加えることができる。適切な希釈剤は、これらに限られないが、粉砂糖、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、微結晶性セルロース、ラクトース、マンニトール、カオリン、塩化ナトリウム、乾燥スターチ、キシリトールおよびソルビトールが挙げられる。
【0070】
潤滑剤は、様々な理由で医薬組成物に組み込むことができる。潤滑剤は、圧縮および射出時の顆粒とダイ壁との摩擦を減少させる。これによって、例えば、顆粒が打錠機に付着するのを防ぎ、打錠機からより容易に顆粒を射出するようになる。適切な潤滑剤の例としては、これらに限られないが、タルク、ステアリン酸、植物油、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ステアリルフマル酸ナトリウム、シリカゲル、グリセリルベヘナート、これらの混合物および潤滑特性を有するその他の物質が挙げられる。
【0071】
流動促進剤も、一般に、顆粒の流動特性を改善する目的で、医薬組成物に組み込むことができる。適切な流動促進剤の例としては、これらに限られないが、タルク、二酸化シリコンおよびコーンスターチが挙げられる。
【0072】
バインダーも、本発明の医薬組成物に組み込むことができる。バインダーは、一般に、投薬形態の製造に造粒ステップを用いる場合に、使用される。適切なバインダーの例としては、ポビドン(ポリビニルピロリドン等)、糖(スクロース等)、キサンタンガム、セルロースガム、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒプロメロース、微晶質セルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、マルトデキストリンゼラチン、スターチ、アルファ化デンプンおよびその他の凝集特性を有する薬学的に許容される物質が挙げられる。
【0073】
医薬組成物に組み込むことのできるその他の賦形剤としては、吸収促進剤、吸収剤、発泡剤、乳化剤、崩壊剤、保湿剤、防腐剤、溶解遅延剤(solution retarder)、溶解性増大剤(solubility enhancing agent)、緩衝剤、界面活性剤、懸濁剤、甘味料、湿潤剤または製薬業界で一般に使用されているその他の薬学的に許容される任意の賦形剤が挙げられる。
【0074】
本発明で使用することができる「吸収促進剤」の例としては、これに限られないが、第4級アンモニウム化合物が挙げられる。本発明で使用することができる「吸収剤」の例としては、これらに限られないが、カオリンおよびベントナイトが挙げられる。本発明で使用することができる「発泡剤」の例としては、発泡剤のカップル(effervescent couple)、例えば、これらに限られないが、有機酸および炭酸塩または重炭酸塩が挙げられる。適切な有機酸としては、これらに限られないが、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、アジピン酸、コハク酸およびアルギン酸ならびに無水物および酸性塩が挙げられる。適切な炭酸塩および重炭酸塩としては、これらに限られないが、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、グリシンカーボネートナトリウム(sodium glycine carbonate)、L−リシンカーボネート(L−lysine carbonate)およびアルギニンカーボネート(arginine carbonate)が挙げられる。本発明で使用することができる「乳化剤」の例としては、これらに限られないが、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(例えば、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油等)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、ソルビタンの脂肪酸エステルまたはこれらの物質の混合物等が挙げられる。本発明で使用することができる「崩壊剤」の例としては、これらに限られないが、軽度に架橋されたポリビニルピロリドン、コーンスターチ、ジャガイモスターチ、トウモロコシスターチおよび加工スターチ、寒天、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、アルギン酸、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、グリコール酸スターチナトリウムおよびこれらの混合物が挙げられる。本発明で使用することができる「保湿剤」の例としては、これに限られないが、グリセロールがある。本発明で使用することができる「防腐剤」の例としては、これらに限られないが、ソルビン酸カリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸およびその塩、パラヒドロキシ安息香酸のその他のエステル、例えば、ブチルパラベン等、アルコール、例えば、エチルまたはベンジルアルコール等、フェノール化合物、例えば、フェノールまたは第4級化合物、例えば、塩化ベンザルコニウム等が挙げられる。本発明で使用することができる「溶解遅延剤」の例としては、これに限られないが、パラフィンが挙げられる。本発明で使用することができる「溶解性増大剤」の例としては、これらに限られないが、共溶媒、例えば、エタノールまたはプロピレングリコール等、界面活性剤およびポリマー系物質、例えば、ポリソルベート、ポリアルキレングリコール、ポロキサマーまたはポリビニルピドリドンおよび油性脂肪酸およびそれらのモノ−またはジグリセリルエステル、例えば、リノール酸またはモノラウリン酸グリセリル等が挙げられる。本発明で使用することができる適切な「緩衝剤」の例としては、これらに限られないが、リン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩およびヒスチジンの緩衝剤が挙げられる。用語「界面活性剤」は、本発明において、通常の意味で使われる。両性、非イオン性、カチオン性またはアニオン性であるかに関係なく、どのような界面活性剤でも適切である。適切な界面活性剤の例としては、これらに限られないが、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンのモノオレエート、モノラウレート、モノパルミテート、モノステアレートまたは別のエステル、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(DOSS)、レシチン、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、コレステロール、ポリオキシエチレンリシン油、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリド、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、Tween(登録商標)20およびTween(登録商標)80(ICI Speciality Chemicals社)等、市販されているTween(登録商標)製品)、ポリエチレングリコール(例えば、Carbowax3550(登録商標)およびCarbowax934(登録商標)(Union Carbide社))、ポロキサマー(例えば、酸化エチレンおよび酸化プロピレンのブロックコポリマーであるPluronic F68(登録商標)およびPluronic F108(登録商標))、ポリオキシエチレンヒマシ油の誘導体またはこれらの混合物が挙げられる。本発明で使用することができる「懸濁剤」の例としては、これらに限られないが、カルボキシメチルセルロース、ビーガム(veegum)、トラガカント、ベントナイト、メチルセルロースおよびポリエチレングリコールが挙げられる。本発明で使用することができる「甘味料」の例としては、これらに限られないが、任意の天然または人工甘味料、例えば、スクロース、キシリトール、サッカリンナトリウム、シクラメート、アスパルテームおよびアセスルファム(acsulfame)が挙げられる。矯味剤の例は、Magnasweet(登録商標)、バブルガム香料および果実香料等である。本発明で使用することができる「湿潤剤」の例としては、これらに限られないが、ラウリル硫酸アンモニウムおよびラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0075】
医薬組成物において使用される賦形剤の量は、一般に、マトリクス系で使用される量に相当する。賦形剤、充填剤等の総量は、一般に、医薬組成物の約10重量%から約80重量%までの間で変動する。
【0076】
医薬組成物のマトリクス投薬形態は、通常、当技術分野でよく知られている標準技法を使用して調製される。一般に、これらは、ポリマー、充填剤、薬物およびその他の賦形剤を乾式混合した後、適切な顆粒が得られるまで、アルコールを使用して、混合物を顆粒化することにより調製される。顆粒化は、当技術分野で知られている方法により実施される。湿った顆粒は、流動層乾燥機で乾燥され、篩にかけられ、適切な大きさに粉砕される。乾燥した顆粒に潤滑剤が混合され、最終的な医薬組成物が得られる。
【0077】
浸透圧ポンプ系において、錠剤のコアは、少なくとも1つのオリフィスを有する半透膜によって包み込まれる。この半透膜は、水は透過させるが、薬物は透過させない。この系が体液にさらされると、水は半透膜を通過し、浸透圧賦形剤および活性薬物を含む錠剤のコアに到達する。浸透圧が医薬組成物中で増加するので、圧力を均一にしようとして、薬物がオリフィスを通じて放出される。
【0078】
より複雑なポンプにおいては、錠剤のコアは、内部が複数の区画に分かれている。例えば、第1の区画は薬物を含み、第2の区画は、流体と接触すると、膨潤するポリマーを含むことができる。摂取後、このポリマーは所定の速度で膨潤し、薬物を含んでいる区画を浸食し、同じ速度で医薬組成物から薬物を強制的に放出させる。0次放出プロフィールが望ましいときには、このような医薬組成物が、しばしば使用される。
【0079】
浸透圧ポンプは、当技術分野でよく知られており、文献に記載されている。その全てを参照により本明細書に組み込む米国特許第4088864号、第4200098号および第5573776号明細書に、浸透圧ポンプおよびそれらの製造方法が記載されている。オメプラゾール等の化合物を含んでいる浸透圧ポンプが、その内容を参照により本明細書に組み込む米国特許第5178867号明細書に記載されている。
【0080】
一般的なガイドラインとして、浸透圧ポンプは、一般に、浸透的に活性な薬物(または浸透的に活性な薬剤または浸透剤と組み合わせた浸透的に不活性な薬物)の錠剤を圧縮した後、外部水性流体は透過させるが、薬物および/または浸透剤は通過させない半透膜で錠剤をコーティングすることにより形成される。半透膜壁に、1つまたは複数の送達オリフィスを穿孔することができる。または、膜壁に浸出性孔形成材料を組み込むことによって、その場で膜壁に1つまたは複数のオリフィスを形成することができる。操作において、外部水性流体は半透膜壁を通って吸収されて、薬物および/または塩と接触し、薬物の溶液または懸濁液を形成する。新鮮な流体が半透膜を通って吸収されるにつれて、この薬物の溶液または懸濁液はオリフィスから排出される。
【0081】
前述した通り、浸透圧ポンプは、複数の分かれた区画を含むことができる。第1の区画は、前述した通り、薬物を含むことができ、第2の区画は、膨潤親水性ポリマーの層から成る膨張性のある推進メンバー(expandable driving member)を含むことができ、これは薬物が占める容積を減少させることにより、長時間にわたり、制御された速度でデバイスから薬物を送達するように動作する。または、これらの区画は、薬物を別々の投与量含むこともできる。
【0082】
半透膜の代表的な材料には、当技術分野で浸透膜および逆浸透膜として知られている半透性ポリマー、例えば、セルロースアシレート、セルロースジアシレート、セルローストリアシレート、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、寒天アセテート(agar acetate)、アミローストリアセテート、βグルカンアセテート、アセトアルデヒドジメチルアセテート、セルロースアセテートエチルカルバメート、ポリアミド、ポリウレタン、スルホン化ポリスチレン、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートメチルカルバメート、セルロースアセテートサクシネート、セルロースアセテートジメチルアミノアセテート、セルロースアセテートエチルカルバメート、セルロースアセテートクロルアセテート、セルロースジパルミテート、セルロースジオクタノエート、セルロースジカプリレート、セルロースジペンタンレート、セルロースアセテートバレレート、セルロースアセテートサクシネート、セルロースプロピオネートサクシネート、メチルセルロース、セルロースアセテートp−トルエンスルホネート、セルロースアセテートブチレート、米国特許第3173876号、第3276586号、第3541005号、第3541006号および第3546142号明細書で開示されたポリアニオンとポリカチオンとの共沈により形成される架橋された選択的半透性ポリマー、米国特許第3133132号明細書にLoebおよびSourirajanによって開示された半透性ポリマー、軽度に架橋されたポリスチレン誘導体、架橋されたポリ(スチレンスルホン酸ナトリウム)、ポリ(塩化ビニルベンジルトリメチルアンモニウム)、米国特許第4160020号明細書に開示の置換度が最大1で、アセチル含有量が最大50%のセルロースアセテート、置換度が1から2で、アセチル含有量が21から35%のセルロースジアセテート、置換度が2から3で、アセチル含有量が35から44.8%のセルローストリアセテートが挙げられる。
【0083】
ポンプに存在する浸透剤は、薬物自体が、十分に浸透的に活性ではないときに使用することができ、ポンプに入って来る流体に可溶な浸透的に有効な化合物であり、外部流体に対して、半透壁を横切る浸透圧勾配を示す。本発明の目的に有用な、浸透的に有効な浸透剤は、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、硫酸カリウム、炭酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、硫酸リチウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、d−マンニトール、尿素、ソルビトール、イノシトール、ラフィノース、スクロース、グルコース、親水性ポリマー、例えば、セルロースポリマーおよびこれらの混合物等が挙げられる。浸透剤は、通常、過剰量で存在し、粒子、粉末、顆粒等、どのような物理的な形態を取ることもできる。本発明に適した浸透剤の大気中、浸透圧は、0より大きく、通常、最大約500atmまたはそれ以上である。
【0084】
膨張性のある推進メンバーは、一般に、水および水性生体液と相互作用し、膨潤または膨張し、平衡状態になる、膨潤性の親水性ポリマーである。ポリマーは、水中で膨潤し、ポリマー構造体中に吸収した水の相当部分を保持できる能力を示す。ポリマーは、極めて高い程度まで、膨潤または膨張し、通常は、2から50倍の容積増加を示す。ポリマーは架橋されていても、架橋されていなくてもよい。膨潤性の親水性ポリマーは、軽度に架橋されることが可能で、このような架橋は、共有イオン結合または水素結合により形成される。ポリマーは、植物、動物または合成由来のものとすることができる。本発明のために使用することのできる親水性ポリマーには、30,000から5,000,000の分子量を有するポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート);カッパカラギーナン、10,000から360,000の分子量を有するポリビニルピロリドン;アニオン性およびカチオン性ヒドロゲル;高分子電解質錯体;低量の残留アセテートを有し、グリオキサール、ホルムアルデヒドもしくはグルタルアルデヒドによって架橋され、200から30,000の重合度を有するポリ(ビニルアルコール);メチルセルロースの混合物;架橋された寒天およびカルボキシメチルセルロース;コポリマー中の無水マレイン酸1モル当たり、0.001から約0.5モルの飽和架橋剤を使用して架橋されたスチレン、エチレン、プロピレン、ブチレンもしくはイソブチレンによって無水マレイン酸の微粉化コポリマーの分散物を形成することにより製造される水不溶性、水膨潤性コポリマー;N−ビニルラクタムの水膨潤性ポリマー等が挙げられる。
【0085】
本明細書で使われる用語「オリフィス」は、浸透系から薬物を放出する目的に適した手段または方法を指す。この表現は、機械的手順によって半透膜に穿孔されている、1つまたは複数の開口またはオリフィスを包含する。または、半透膜に、例えば、ゼラチンプラグなどの浸食性要素を組み込むことによっても、オリフィスを形成することができる。半透膜が薬物を通過させられるだけ十分に透過的である場合、膜の細孔は、血漿閾値を満たすのに十分な量の活性成分を放出するのに十分であることもあり得る。このような場合、膜壁に孔または他のオリフィスが穿孔されていないが、用語「通路」は、膜壁内の細孔を指す。浸透通路ならびに通路の最大および最小寸法の詳しい説明は、その開示を参照により本明細書に組み込む米国特許第3845770号および第3916899号明細書に開示されている。
【0086】
浸透圧ポンプは、標準的な技法により製造することができる。例えば、一実施形態において、通路に隣接する区画の1つの領域に収容することのできる薬物およびその他の成分を、薬物が占めることになる区画の領域の内側寸法に相当する寸法を有する固形になるようにプレスする、または薬物およびその他の成分および溶媒を、ボールミリング、カレンダリング、撹拌またはロールミリング等の従来の方法により、固形または半固形の形態に混合した後、選択された形状になるようにプレスする。次に、親水性ポリマーの層を、同様の方法で薬物の層と接触するように配置し、2つの層を半透性壁で囲む。薬物処方および親水性ポリマーの層状化は、従来の二層プレス技法によって作ることができる。プレスした形状を壁形成物質に成形、吹き付けまたは浸漬することによって、壁を適用することができる。壁を適用するために使用することのできるもう1つの、現在好ましい技法は、空気懸濁法(air suspension procedure)である。この方法は、壁が薬剤−親水性ポリマー複合物に適用されるまで、プレスされた薬剤および乾燥した親水性ポリマーを、気流および壁形成組成物の中で、懸濁および転動させることから成る。空気懸濁法は、米国特許第2799241号明細書、J.Am.Pharm.Assoc.、第48巻、451−459頁(1979年)に記載されている。他の標準的な製造手順は、「Modern Plastics Encyclopedia」、第46巻、62−70頁(1969年)および「Pharmaceutical Sciences」、Remington、第14版、1626−1678頁(1970年)、Mack Publishing Company発行、ペンシルバニア州イーストンに記載されている。
【0087】
貯留系も、当技術分野でよく知られている。この技術は、一般に、マイクロカプセル化、粒剤化技術またはコーティングされた錠剤とも呼ばれる。薬物の粒子を、薬学的に許容されるポリマーによってカプセル化する。このポリマーおよびその相対量によって、貯留層から消化管への薬物拡散に対する所定の抵抗力がもたらされる。この薬物は、粒剤から消化管へ徐々に放出され、化合物の所望の持続放出をもたらす。
【0088】
医薬組成物のこれらの投薬形態は、当技術分野でよく知られている。その両方を参照により本明細書に組み込む米国特許第5286497号および第5737320号明細書に、このような投薬形態およびそれらの製造方法が記載されている。その全部を参照により本明細書に組み込む米国特許第5354556号、第4952402号および第4940588号明細書は、特に、そのような技術を使用して、医薬組成物の持続放出を作り出すことを考案している。ただし、さらなる指針として、ペレットが薬物のコアで、場合によって、従来の賦形剤を伴って形成される。次に、このコアを1つまたは複数の薬学的に許容されるポリマーによってコーティングする。多くの場合、コーティングするポリマーは、大部分を占める薬学的に許容される水に溶けないポリマーとわずかな部分を占める薬学的に許容される水に溶けるポリマーとの混合物である。
【0089】
中心コアは、当技術分野で知られているいくつかの技法により調製することができる。一般に、薬物が従来の統合剤によって不活性担体に結合される。不活性担体は、一般に、スターチまたは糖球体である。薬物は、不活性担体に結合される前に、一般に、処理を迅速にする目的および医薬組成物の最終投薬形態の特性を改善する目的のために、通常の賦形剤とブレンドされる。これらの賦形剤は、マトリクス系について上述したものと同一である。これらの賦形剤の量は、大きく変動可能であるが、通常の量で使用される。次に、バインダーまたは結合剤を利用して、粉末化した薬物のブレンドを固体担体に結合することにより、中心コアが生成される。これは、当技術分野で知られている医薬粒剤を生成するための方法により、達成することができる。適切な方法には、従来のコーティングパン、自動コーティング機または回転造粒機(rotogranulator)の利用が含まれる。これらの中心コアの生成について、Pharmaceutical Pelletization Technology、第I版、GhebreSellassie、Marcel Dekker,Inc.、ニューヨーク州ニューヨーク(1989年)により詳しく記載されている。
【0090】
貯留系の第2の主要要素は、ポリマー系コーティングである。前述の通り、ポリマー系コーティングは、粒剤に、それらの放出特性を与える役割を果たす。ポリマー系コーティングは、当技術分野で知られている方法および技法を利用して、中心コアに適用されることができる。適切なコーティングデバイスの例としては、流動床コーティング機(fluid bed coater)およびパンコーティング機(pan coater)が挙げられる。適用技法については、i)「Aqueous polymeric coatings for pharmaceutical pharmaceutical compositions」、J.W.McGinity編、Marcel Dekker,Inc.、ニューヨーク州ニューヨーク(1997年)およびii)「Pharmaceutical compositions:Tablets」、第3巻、H.A.Lieberman,L.LachmanおよびJ.B.Schwartz編、Marcel Dekker,Inc.、ニューヨーク州ニューヨーク、77−287頁(1990年)により詳しく記載されている。
【0091】
適切なポリマーの例としては、エチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート(比較的低分子量、中分子量または比較的高分子量)、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、セルローストリアセテート、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、ポリ(オクタデシルアクリレート)、ポリ(エチレン)、低密度ポリ(エチレン)、高密度ポリ(エチレン)、ポリ(プロピレン)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ビニルイソブチルエーテル)、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(塩化ビニル)またはポリウレタンまたはこれらの混合物が挙げられる。
【0092】
粒剤を調製した後、それらを当技術分野で知られているように、カプセルに充填する。または、当技術分野の従来の技法を使用して、プレスして、錠剤にすることもできる。
【0093】
パルス放出系は、薬物組成物の調節された放出投薬形態の残る1つの広義のカテゴリーであり、これも当技術分野でよく知られている。パルス放出系は、通常、所定の期間または放出部位により区別される第1の薬物放出および第2の薬物放出を伴う。パルス放出系は、また、即時放出と持続放出との組合せを含むこともできる。医薬組成物のパルス放出投薬形態には、複数の製剤構成が適切である。
【0094】
例えば、浸透圧ポンプは、パルス型薬物放出の目的にも適切であり、その両方を参照により本明細書に組み込む米国特許第5017381号および第5011692号明細書に記載されている。一般に、薬物を含んでいる浸透圧ポンプを形成した後、薬物の層によってオーバーコーティングし、1回はコーティング層から、もう1回は浸透圧ポンプからの、薬物の2回の放出に備える。
【0095】
粒子または顆粒系も、薬物のパルス放出を提供する目的のために提案されている。薬物のパルス放出系は、一般に、薬物含有粒子の別々の群を使用することで、パルス放出を達成する。群によって異なるコーティングポリマー、例えば、上述したポリマー等を採用することで、異なる時点または場所で薬物が放出される。例えば、異なる溶解pHを有するポリマーが、一般に、この目的に使用される。したがって、1つの顆粒群は、pH6で溶解を開始するポリマーでコーティングし、もう1つの顆粒群は、pH6.5で溶解を開始するポリマーでコーティングすることにより、パルス放出を達成する。このようにして、第1群の顆粒は、上部小腸で薬物を放出し、第2群の顆粒は、さらに下流で、したがって、時間がより経過してから、薬物を放出する。
【0096】
本発明の医薬組成物は、錠剤、丸薬またはカプセルに緩く詰めることのできる顆粒の形態で、経口投与されることができる。錠剤は、当技術分野で知られている技法により調製することができ、治療的に有効な量の活性成分およびこのような技法により錠剤を形成するのに必要な賦形剤を含む。
【0097】
当業者であれば、前記の教示を考慮に入れることで、本明細書に記載の少なくとも2つの固形粒子を含む医薬組成物を容易に処方することができる。
【0098】
本明細書で簡単に考察された通り、本発明の医薬組成物は、消化器疾患を罹患しており、この治療を必要とする患者を治療するのに使用することができる。このような患者は、第1の固形粒子および第2の固形粒子を治療的に有効な量含んでいる本発明の医薬組成物を前記患者に投与することにより、治療することができる。さらに、本発明の医薬組成物は、慢性咳嗽を患っていて、この治療を必要とする患者を治療するのに使用することもできる。このような患者は、第1および第2の固形粒子を治療的に有効な量含んでいる本発明の医薬組成物を前記患者に投与することにより、治療することができる。
【実施例】
【0099】
次に、本発明の実施例を例示の目的で記載するが、これらは制限する意図はない。
【0100】
実施例1
デクスランソプラゾールカプセル
デクスランソプラゾールカプセル(TAK−390MRカプセル)は、TAK−390の血中濃度の持続をもたらすように設計されている。これは、2種類のコーティングされた腸溶顆粒を1つのカプセルに合わせることで達成される。1種類の顆粒は、pHが約5.0−5.5に達すると、小腸の近位領域で薬物を放出する。2番目の種類の顆粒は、pHが約6.2−6.8に達すると、腸内のより遠位で薬物を放出する。2種類の顆粒の成分は、腸溶コーティング層を除き、同一である。
【0101】
pH5.0−5.5での放出顆粒(顆粒LL)
pH約5.0−5.5において薬物を放出する顆粒は、メタクリル酸コポリマー分散物によってコーティングされている。
【0102】
pH6.2−6.8での放出顆粒(顆粒H)
pH約6.2−6.8において放出する顆粒は、メタクリル酸コポリマーA型(pH6で放出)とB型(pH7で放出)との混合物によってコーティングされている。
【0103】
以下の表1に、TAK−390MRカプセルにおいて使用されているポリマーの種類および顆粒の種類ごとの割合を示す。
【0104】
【表2】

カプセルおよび説明
顆粒をHPMC(ヒプロメロース)カプセルに充填する。
【0105】
賦形剤
HPMCカプセルを除き、賦形剤は全て公定書基準(compendial)である。TAK−390MRカプセルは、ヒトまたは動物に由来する成分を少しも含んでいない。
【0106】
組成
以下の表2および表3に、30mg、60mgおよび90mgカプセルの組成を記載する。表2に、顆粒LLの組成に対する値の範囲を示す。表3に、顆粒Hの組成に対する値の範囲を示す。
【0107】
【表3】

【0108】
【表4】

【0109】
顆粒LLおよびHを作り、カプセルに充填するための方法を、以下に記載する。
【0110】
デクスランソプラゾール顆粒LLおよび顆粒Hを作るための方法。
デクスランソプラゾール顆粒LL
1.撹拌により、バインダーを溶媒に溶解し、バインダー溶液を調製する。
2.デクスランソプラゾール、安定剤、希釈剤および崩壊剤から成る層化粉末を、混合により、調製する。
3.糖球体を帯電させ、開放型回転造粒機の中で転動させる。
4.糖球体に、バインダー溶液を噴霧しながら、層化粉末で層状にする。
5.乾燥させた顆粒を篩にかける。
6.分散機を使用して、顔料を溶媒中に分散させる。
7.撹拌により、膜形成剤を溶媒中に溶解させる。
8.顔料、抗付着剤および溶媒の懸濁液と膜形成剤の溶液とを、撹拌棒を使用して混合することにより、中間コーティング溶液を調製する。
9.流動床コーティング機中で、デクスランソプラゾール顆粒に、中間コーティング溶液でコーティングする。
10.分散機を使用して、顔料を溶媒中に分散させる。
11.可塑剤および界面活性剤を、撹拌により、溶媒中に溶解させる。
12.撹拌棒を使用して、顔料、抗付着剤、メタクリル酸コポリマー分散物および溶媒の懸濁液を、可塑剤および界面活性剤の溶液と混合することにより、顆粒LL用の腸溶コーティング溶液を調製する。
13.流動床コーティング機中で、デクスランソプラゾール顆粒に、顆粒L用の腸溶コーティング溶液でコーティングする。
14.コーティングした顆粒を篩にかける。
15.デクスランソプラゾール顆粒LLを、拡散ミキサーの中で、帯電防止剤および流動促進剤と混合する。
【0111】
デクスランソプラゾール顆粒H
1.撹拌により、バインダーを溶媒中に溶解させ、バインダー溶液を調製する。
2.デクスランソプラゾール、安定剤、希釈剤および崩壊剤から成る層化粉末を、混合により、調製する。
3.糖球体を帯電させ、開放型回転造粒機の中で転動させる。
4.糖球体に、バインダー溶液を噴霧しながら、層化粉末で層状にする。
5.顆粒を篩にかける。
6.分散機を使用して、顔料を溶媒中に分散させる。
7.撹拌により、膜形成剤を溶媒中に溶解させる。
8.顔料、抗付着剤および溶媒の懸濁液と膜形成剤の溶液とを、撹拌棒を使用して混合することにより、中間コーティング溶液を調製する。
9.流動床コーティング機中で、デクスランソプラゾール顆粒に、中間コーティング溶液でコーティングする。
10.篩にかけた顆粒を真空乾燥機で乾燥させる。
11.メタクリル酸コポリマーB型、メタクリル酸コポリマーA型および可塑剤を、撹拌により、無水アルコールおよび精製水の混合液に溶解させる。
12.撹拌棒を使用して、抗付着剤を、メタクリル酸コポリマーB型、メタクリル酸コポリマーA型、可塑剤、無水アルコールおよび精製水の溶液と混合することにより、顆粒H用の腸溶コーティング溶液を調製する。
13.流動床コーティング機中で、顆粒に、顆粒H用の腸溶コーティング溶液でコーティングする。
14.コーティングした顆粒を篩にかける。
15.デクスランソプラゾール顆粒Hを、拡散ミキサーの中で、帯電防止剤および流動促進剤と混合する。
【0112】
デクスランソプラゾールカプセル
デクスランソプラゾール顆粒LLおよびデクスランソプラゾール顆粒Hを、カプセル封入機を使用して、カプセルに充填する。
【0113】
実施例2
TAK−394MRの薬物動態学および薬力学に対する食物の影響およびタイミング:投薬の柔軟性の証拠
緒言
プロトンポンプ阻害薬(PPI)は、活動的に分泌中のプロトンポンプにだけ結合する。したがって、投薬ガイドラインは、通常、壁細胞活性の最大刺激が発生するときに薬物が利用可能になるように、食事の30から60分前にPPIを投与することを推奨している。しかし、高脂肪の朝食の15分以内にエソメプラゾールを投薬することは、その吸収およびバイオアベイラビリティにマイナスの作用を及ぼすことが示された(CmaxおよびAUCの両方)(Sostek MBら、Br J Clin Pharmacol.、64巻、386−390頁(2007年))。GERDコントロール不良の患者のうち、54パーセント(%)が、食事との関連で、最適状態に及ばずにPPIを服用している。したがって、食物摂取と関係なく投与することのできるPPIは、投薬の柔軟性をもたらし、服薬遵守にプラスの影響をもたらす可能性がある。
【0114】
試験の目的
この試験の目的は、実施例1において記載したように調製されたTAK−390MRを90mg単回経口投与した後、TAK−390の薬物動態学(PK)および薬力学(PD)に対する食物の作用を評価することであった。
【0115】
方法
試験の設計
この試験は、1つのセンターで実施された第1相非盲検無作為単回投与四元交差試験であった。健康な成人被験者を、期間1の第1日目に、患者が4つの異なる投薬レジメンを受け取る順番を決定する4つの順序グループの1つに無作為に分けた(以下の表4を参照)。4つの交差期間の各々の間、被験者は、第1日目にプラセボを単回投与され、一晩絶食した後、3日目のおよそ午前8:00に90mgのTAK−390MRを単回投与された。1つの期間における最終投与から、次の期間の初回投与までの間に、少なくとも5日間の最短ウォッシュアウト間隔を置いた。
【0116】
被験者選定基準
スクリーニングにおいて、H.ピロリ(H.pylori)の試験結果が陰性であった、18−55歳の健康な男性および女性の被験者が、この研究に参加するのに適格であった。
【0117】
薬物動態学的評価および統計分析
TAK−390MRのPKプロフィールを、投薬前および各期間の3日目の投薬後24時間期間にわたり、血液採取によって評価した。TAK−390のPKパラメータは標準的なノンコンパートメント方法を使用して概算し、以下を含めた:tlag=薬物投与から定量の下限より高い最初に観察された濃度までの時間の遅延、tmax=観察された最高血漿濃度に到達するまでの時間、Cmax=観察された最高血漿濃度、およびAUC=血漿濃度下の領域対0時間から最後に定量可能な濃度(AUC)および0時間から無限大(AUC)までの時間曲線。
【0118】
絶食時投薬レジメン(A)に比較した、食物の作用(摂食後投薬レジメンB、CまたはD)の統計評価を、点推定法およびTAK−390のCmax、AUCおよびAUCの率に対する90%CIを使用して実施した。2つの投薬レジメンからの率に対する90%CIが、0.80および1.25の生物学的等価範囲内にある場合、食物は影響を及ぼさないと結論した。
【0119】
薬力学的評価および統計分析
Medtronic Digitrapper(登録商標)pH 記録機(Medtronic,Inc.、ミネソタ州ミネアポリス)を使用して、24時間継続胃内pHモニタリングによって、各期間の1日目および3日目に投薬レジメンごとに薬理反応を測定した。
【0120】
2つのPDパラメータ、平均胃内pHおよび投薬後24時間におけるpH>4の時間%を15分間隔でのpH測定値の平均値を使用して計算した。1日目の値を、各投薬レジメンのベースラインとして扱った。
【0121】
投薬レジメンごとに、ベースライン(1日目)および3日目のPDパラメータならびにベースラインからの変化を、記述統計学を使用して要約した。
【0122】
ベースラインから3日目までのPDパラメータの変化についてのANOVAモデルを使用して、異なる絶食時/摂食後条件下でのPDに対するTAK−390のPKの変化の作用を評価した。試験の統計的有意性レベルは、0.05だった。
【0123】
安全性評価
有害事象(AE)報告、併用薬の使用、12リード心電図、健康診断、バイタルサイン測定および実験室評価によって、安全性をモニタリングした。
【0124】
結果
人口統計
4つの順序グループに無作為に分け、少なくとも2つの投薬レジメンを完了した48名の被験者のうち46名を、PKおよびPD分析に含めた。48名の被験者全員を安全性分析に含めた。被験者は主に男性(60%)であり、年齢は19−53歳(平均値±SD=32±11歳)にわたった。77パーセント(%)は、白人であり、23パーセント(%)は、黒人であった。彼らの平均値±SD身長は、172±10cmであり、彼らの平均値±SD体重は、76±12kgだった。
【0125】
薬物動態学
TAK−390MRを摂食後状態で投与したとき(投薬レジメンB)、TAK−390MRを絶食状態で投与したとき(投薬レジメンA)に比べて、TAK−390のtlagは、平均約1時間遅延され、tmaxは、平均約2時間遅延された(以下の表5を参照)。TAK−390MRを、高脂肪の朝食の5分前(投薬レジメンC)または30分前(投薬レジメンD)に投与したとき、TAK−390のtlagおよびtmaxの平均値は、TAK−390MRを絶食状態で投与したとき(投薬レジメンA)に得られた値と類似していた。TAK−390MRを摂食後状態で投与する(投薬レジメンB)または食事の5分前に投与する(投薬レジメンC)と、TAK−390のCmaxおよびAUCの平均値は、17−31%増加したが、絶食状態で投与したとき(投薬レジメンA)に比べて、食事の30分前(投薬レジメンD)に投与したときは、生物学的に等価だった(以下の表6を参照)。図1に、投薬レジメンごとの平均血漿TAK−390濃度対時間プロフィールを示す。
【0126】
薬力学
全体として、胃内pH の結果は、異なる絶食/摂食後状態下でのTAK−390PKにおける変化は、TAK−390MRのPDに対して関係する影響を及ぼさなかったことを示唆している(表7および図2を参照)。平均胃内pHについて、投薬後24時間間隔にわたるベースラインからの変化(3日目−1日目)には、摂食後投薬レジメンと絶食時投薬レジメンとの対比較のどれにも、統計的に有意な差は生じなかった。対比較において発生した唯一の統計的に有意な差は、胃内pH>4となる時間の割合について、摂食後(投薬レジメンB)および絶食時(投薬レジメンA)の間にあり、2つの投薬レジメン間の差は8%だった。
【0127】
安全性
TAK−390MRを絶食時または様々な摂食後の条件下で投与したとき、研究安全性パラメータのどれにも、一貫した、臨床的に重要な変化は観察されなかった。被験者19名(40%)が、少なくとも1回の治療で発現した有害事象(AE)を経験した。少なくとも1回のAEを経験している被験者の数には、投薬レジメン間でほとんど差はなかった。死亡または重大なAEは発生しなかったが、被験者1名は、投薬レジメンCにおいて、期間1に続くウォッシュアウト間隔中に、AE(肝酵素増加)を発生したため、早期に試験を中止した。
【0128】
結論
様々な摂食後の条件下でのTAK−390MRの投与に続く、TAK−390の暴露は、絶食状態と比較して、有意であるが、軽度の増加を示した(Cmaxは、12−31%増加、AUCは、9−12%増加。)。様々な絶食/摂食後条件下の投薬に続く、TAK−390PKにおける変化は、胃内pHに関係する違いを生み出さなかった。pHの結果は、TAK−390MRは、食物または食事のタイミングに関係なく、投与することができることを示唆している。食物の摂取と関係なく投与可能なPPIは、投薬の柔軟性を向上し、服薬遵守にプラスの影響を及ぼすことができる。
【0129】
【表5】

【0130】
【表6】

【0131】
【表7】

【0132】
【表8】

【0133】
当業者であれば、本発明が目的を遂行し、言及された目標および利点ならびに本発明に固有の目標および利点を得るために、特に適していることを容易に理解する。本明細書に記載された分子複合体、方法、手順、治療、分子、特有の化合物は、好ましい実施形態を現在、代表する、例示的なものであり、本発明の範囲を制限する意図はない。当業者には、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、本明細書に開示された本発明に、様々な置換および改変を加えることができることが、容易に明白である。
【0134】
本明細書に言及されている全ての特許および刊行物は、本発明が関係する当業者のレベルを示すものである。全ての特許および刊行物は、個々の刊行物が参照により組み込むと明確におよび個別的に示された場合と変わらない範囲で、参照により本明細書に組み込む。
【0135】
適切に本明細書に例示的に記載された発明は、本明細書に明確に開示されていない何らかの要素(1つまたは複数)、制限(1つまたは複数)が欠落した状態で実践されることもあり得る。したがって、例えば、本明細書の各例において、用語「含む(comprising)」、「から本質的に成る(consisting essentially of)」および「成る(consisting of)」は、他の2つの用語のいずれかと置換することができる。採用されている用語および表現は、制限ではなく、記述することばとして使用されているものであり、このような用語および表現の使用には、表記および記載された特長またはその一部の等価物を除外する意図はなく、様々な改変が特許請求される本発明の範囲内で可能であると理解される。したがって、本発明は、好ましい実施形態および任意で選択される特長によって明確に開示されているが、開示された本明細書のコンセプトの改変および変型は、当業者によって、用いられることが可能であること、ならびにこのような改変および変型は、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の範囲内に入るものとみなされることを理解されるべきである。
【0136】
さらに、本発明の特長および態様が、マーカッシュグループに関して記載されている場合、それによって、本発明がマーカッシュグループの任意の個々のメンバーまたはメンバーのサブグループに関しても記載されていることは、当業者であれば理解されよう。例えば、Xが、臭素、塩素およびヨウ素から成る群から選択されると記載されている場合、Xが臭素であるという請求項およびXが臭素および塩素であるという請求項は、完全に記載されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食物の摂取と独立して患者に投与されることの可能な、プロトンポンプ阻害薬を含む投薬形態の治療有効量を含む医薬組成物を患者に投与するステップ
を含む、その治療を必要とする患者において消化器疾患を治療する方法。
【請求項2】
治療有効量の
(a)活性薬剤および第1の腸溶コーティングを含む第1の固形粒子(第1の腸溶コーティングは、約5.0から約5.5のpHにおいて、固形粒子から活性薬剤を放出する。)および
(b)活性薬剤および第2の腸溶コーティングを含む第2の固形粒子(第2の腸溶コーティングは、約6.2から約6.8のpHにおいて、固形粒子から活性薬剤を放出する。)
を含み、
第1の固形粒子は、医薬品組成物の約15重量%から約50重量%を構成し、第2の固形粒子は、医薬品組成物の約50重量%から約85重量%を構成し、
さらに、医薬品組成物は食物の摂取と独立して患者に投与されることが可能である
医薬組成物を患者に投与するステップを含む、その治療を必要とする患者において消化器疾患を治療する方法。
【請求項3】
第1の固形粒子中の活性薬剤がデクスランソプラゾールである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
第2の固形粒子中の活性薬剤がデクスランソプラゾールである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
第1の固形粒子および第2の固形粒子中の活性薬剤がデクスランソプラゾールである、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
第1の腸溶コーティングが約5.5のpHを有する、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
第1の腸溶コーティングがメタクリル酸コポリマー分散物を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
第2の腸溶コーティングが約6.75のpHを有する、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
第2の腸溶コーティングが、3:1の比でメタクリル酸コポリマーB型とメタクリル酸コポリマーA型の混合物を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
第1の固形粒子が、活性薬剤と第1の腸溶コーティングとの間に保護層を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
第2の固形粒子が、活性薬剤と第2の腸溶コーティングとの間に保護層を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
保護層が、スクロース、ヒプロメロース、非腸溶コーティングまたはこれらの任意の組合せである、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
非腸溶コーティングがヒドロキシプロピルセルロースである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
第1の固形粒子が、医薬組成物の約25%を構成し、第2の固形粒子が医薬組成物の約75%を構成する、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
第1の固形粒子が顆粒である、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
第2の固形粒子が顆粒である、請求項2に記載の方法。
【請求項17】
医薬組成物が錠剤またはカプセル剤である、請求項2に記載の方法。
【請求項18】
胃腸の症状が、胸やけ、炎症性腸疾患、クローン病、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、消化性潰瘍、ストレス潰瘍、出血性消化性潰瘍、十二指腸潰瘍、感染性腸炎、結腸炎、憩室炎、胃酸過多症、消化不良、胃不全麻痺、ゾリンジャー−エリソン症候群、胃食道逆流症、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)関連疾患、短腸症候群、全身性肥満細胞症または好塩基球性白血病または高ヒスタミン血症に伴う分泌過剰状態である、請求項2に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−500595(P2011−500595A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−529082(P2010−529082)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【国際出願番号】PCT/US2008/079520
【国際公開番号】WO2009/049160
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(509022185)タケダ・フアーマシユーテイカルズ・ノース・アメリカ・インコーポレイテツド (8)
【Fターム(参考)】