食用に適した生体適合性金属有機構造体
本開示は、非毒性出発材料から開発した多孔性の生体適合性金属有機構造体(bMOF)に関する。さらに、bMOF材料は、金属イオン、有機リンカーおよび反応条件に応じて、2次元または3次元網目構造として調製することができる。また本開示は、環境にやさしく、生体適合性のある生物学的薬剤の貯蔵および単離に有用なbMOF材料を提供する。さらに、bMOF材料は、薬剤の貯蔵および送達、食品における着香料および乾燥剤、触媒、組織工学、栄養補助食品、分離技術ならびに気体貯蔵で利用することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、35 U.S.C. §119に基づいて、2007年9月25日出願の米国仮特許出願第60/975,089号の優先権を主張する。なお、この出願の内容は、参照により本明細書中に組み入れるものとする。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般に、金属有機構造体(metal organic frameworks)を含んだ材料に関する。また本発明は、生物系ならびにバイオセンサーにおける分子の送達に有用な材料に関する。
【背景技術】
【0003】
既存の金属有機構造体は有毒であり、生体適合性に欠けている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
要約
本開示は、非毒性の出発材料から開発された多孔性の生体適合性金属有機構造体群(bMOFs)を提供する。こうしたbMOF材料は、薬剤の貯蔵および送達、食品における着香料および乾燥剤、触媒、組織工学、栄養補助食品、分離技術ならびに気体貯蔵で利用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、生物学的に有用な1次元、2次元および3次元-bMOFを設計および合成する手段を提供する。本開示の3次元-bMOFは多孔性であって、構造体の細孔内に薬剤を貯蔵することが可能であり、生体分子を吸収することが可能であり、組織工学および足場のための構造体として使用することが可能であり、栄養補助食品として機能を果たすための消化管内での膨張などを可能にする。
【0006】
本明細書に記載の材料は、金属イオン、有機リンカーおよび反応条件に応じて、2次元または3次元網目構造として調製することができる。有機リンカー(これらは構造体の必須部分を表す)の選択ならびに反応条件(例えば、温度、pH、溶媒系、反応物質比および反応時間など)の選択により、所望の構造体を得ることができる。
【0007】
本開示は、それぞれの金属核が少なくとも1つの他の核に結合している、複数の生体適合性金属核と;隣接する核を連結する複数の生体適合性結合配位子と;複数の細孔(この場合、複数の結合核はこの細孔を規定する)とを含む、生体適合性金属有機構造体(bMOF)を提供する。一態様では、複数の核は異なる。一態様では、少なくとも2つの核は異なる。別の態様では、複数の結合配位子は異なる。また別の態様では、本多孔性構造体は、官能基化して分析物またはゲスト種を結合させる。また別の実施形態では、これらの細孔は、大きさが異なっていてもよいし、同一であってもよい。
【0008】
また、本開示は、各金属クラスターが1種または複数の金属イオンを含む、複数の金属クラスターと;隣接する金属クラスターを連結する複数の非毒性荷電多座結合配位子とを含む、生体適合性の/環境にやさしい金属有機構造体を提供する。一実施形態では、本結合配位子は、1〜20個の炭素原子からなるアルキルまたはシクロアルキル基、1〜5個のフェニル環からなるアリール基、あるいは、1〜20個の炭素原子を有するアルキルもしくはシクロアルキル基または1〜5個のフェニル環からなるアリール基からなるアルキルアミンまたはアリールアミンを含み、この場合、多座官能基が配位子の基礎構造に共有結合している。多座官能性は、CO2H、CS2H、NO2、SO3H、Si(OH)3、Ge(OH)3、Sn(OH)3、Si(SH)4、Ge(SH)4、Sn(SH)4、PO3H、AsO3H、AsO4H、P(SH)3、As(SH)3、CH(RSH)2、C(RSH)3、CH(RNH2)2、C(RNH2)3、CH(ROH)2、C(ROH)3、CH(RCN)2、C(RCN)3(ここで、Rは、1〜5個の炭素原子を有するアルキル基であるか、1〜2個のフェニル環からなるアリール基である)、ならびにCH(SH)2、C(SH)3、CH(NH2)2、C(NH2)3、CH(OH)2、C(OH)3、CH(CN)2、およびC(CN)3からなる群から選択される構成要素(member)を使用して得ることができる。一実施形態では、結合成分/配位子はカルボン酸官能基を含む。さらに、本開示は、全て炭素か、または炭素と、環を構成している窒素、酸素、硫黄、硼素、リン、シリコンおよびアルミニウム原子との混合物のいずれかが含まれている1〜5個の環を含むシクロアルキルまたはアリール基本構造を包含する。
【0009】
一態様では、複数の多座結合配位子の各配位子は、2つ以上のカルボン酸塩を含む。別の態様では、金属イオンは、Li+、Na+、Rb+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Sc3+、Ti4+、Zr4+、Ta3+、Cr3+、Mo3+、W3+、Mn3+、Fe3+、Fe2+、Ru3+、Ru2+、Os3+、Os2+、Co3+、Co2+、Ni2+、Ni+、Pd2+、Pd+、Pt2+、Pt+、Cu2+、Cu+、Au+、Zn2+、Al3+、Ga3+、In3+、Si4+、Si2+、Ge4+、Ge2+、Sn4+、Sn2+、Bi5+、Bi3+、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。またさらなる態様では、多座結合配位子は、芳香族環または非芳香族環中に組み入れられている6個以上の原子(例えば、12個以上の原子)を有する。1種または複数の多座結合配位子は、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、レチノイン酸、パントテン酸、葉酸、ニコチン酸(nicitinic acid)、シュウ酸、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、α-リノール酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸、およびドコサヘキサエン酸からなる群から選択される親化合物のアニオンを含むことができる。
【0010】
本開示は、金属イオンと、次式:
【化1】
【0011】
(式中、Mは非毒性金属であり、Rは-H、-OH、-OR1、アリール、置換アリール、アルキル、置換アルキル、カルボキシル、アミノカルボニル、アルキルスルホニルアミノカルボキシル、アルコキシカルボニルおよびハロ(ここで、R1は-H、およびアリール、置換アリール、アルキル、置換アルキル、カルボキシル、アミノカルボニル、アルキルスルホニルアミノカルボキシル、アルコキシカルボニルおよびハロであってもよい)からなる群から選択される);
【化2】
【0012】
(式中、Mは非毒性金属であり、nは0、1、または2である);
【化3】
【0013】
(式中、Mは非毒性金属である);
【化4】
【0014】
(式中、Mは非毒性金属である);
【化5】
【0015】
(式中、Mは非毒性金属である);
【化6】
【0016】
(式中、Mは非毒性金属である);
【化7】
【0017】
(式中、Mは非毒性金属である);および、
【化8】
【0018】
(式中、Mは非毒性金属である)
からなる群から選択される一般構造を有する結合配位子とを含む、複数の金属クラスターを含んでなる構造体を提供する。
【0019】
さらに本開示のbMOFは、ゲスト種を含むことができる。このゲスト種は、MOFの表面積を増大させることができる。一態様では、ゲスト種は、生物学的薬剤(例えば、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、脂質、核酸または小分子剤)である。一態様では、生物学的薬剤は治療薬または診断薬である。
【0020】
また本開示は、開示のbMOFを含む栄養補助食品を提供する。こうしたbMOFは生体適合性であって、医薬品もしくは他の生物学的薬剤の送達、または胃腸管内での生物学的薬剤の吸着に使用することができる。別の実施形態では、bMOFは、胃腸管内でゲスト種が吸収されることにより膨張できるようにしてもよいし、所望の期間中に構造体が生物分解されるように製造してもよく、それによって、例えば、十分満足のいく刺激を提供することができる。
【0021】
本開示は、細孔内に薬剤を有しているbMOFを含む薬剤送達組成物を提供し、この場合、当該薬剤は腸管まで送達される(例えば腸溶性コーティング)。
【0022】
また別の態様では、本開示のbMOFを含む食品添加物を提供する。
【0023】
さらに本開示は、開示のMOFを含む気体貯蔵デバイスを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】開示のMOFの特徴を示す図である。
【図2】開示のMOFの特徴を示す図である。
【図3A】開示のbMOF構造(MgBDC1)を示す図である。(A) マグネシウム原子、酸素原子および炭素原子を含んでいるMgBDC-1中の二核クラスター。
【図3B】開示のbMOF構造(MgBDC1)を示す図である。(B) MgBDC-1の3D図面。
【図4A】開示のbMOF構造(MgDHBDC-1)を示す図である。(A) マグネシウム原子、酸素原子および炭素原子を含んでいるMgDHBDC-1中の六核クラスター。
【図4B】開示のbMOF構造(MgDHBDC-1)を示す図である。(B) MgDHBDC-1の3D図面。
【図5】マグネシウム原子、酸素原子および炭素原子を含んでいる、開示のMgOBA-1構造を示す図である。
【図6A】開示のbMOF構造を示す図である(MgBTC-1)。(A)は、マグネシウム、酸素および炭素を含んでいるMgBTC-1の二核クラスターを示す。
【図6B】開示のbMOF構造を示す図である(MgBTC-1)。(B)は、三方晶系結合が濃い色の三角形として表され、一方、薄いグレーの三角形が無機SBUを表していることを示す。空間は球体として図示している。
【図7】開示のbMOF構造体を示す図である(MgBTB-1)。八面体無機SBUおよび三頂点(tritopic)結合が形成する2D層状構造。
【図8A】開示のbMOF構造を示す図である(MgBTB-2)。(A) マグネシウム、酸素、炭素および窒素を含んでいるMgBTB-2の基本構成単位。
【図8B】開示のbMOF構造を示す図である(MgBTB-2)。(B) 三方晶系結合は三角形として表し、立方体は無機SBUを表す。空間は球体として図示している。
【図9A】開示のbMOFを示す図である(MgBTB-3)。(A) マグネシウム、酸素、炭素および窒素を含んでいるMgBTB-3の基本構成単位。
【図9B】開示のbMOFを示す図である(MgBTB-3)。(B) 無機SBUは四角形として図示している。空間は球体として図示している。
【図10】開示のbMOFを示す図である(MgBTB-4)。この構造は、2種類の無機SBU(淡色および濃色の三角形および八面体)、ならびに三方晶系結合から成る。空間は球体として図示している。
【図11A】開示のさらに別のbMOFを示す図である(MgBBC-1)。マグネシウム、酸素および炭素を含んでいるMgBBC-1の三核クラスター。
【図11B】開示のさらに別のbMOFを示す図である(MgBBC-1)。 (B)は、2D構造の空間充填モデルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
詳細な説明
本明細書では、また添付の特許請求の範囲において、「1つの〜」、「および」、および「この〜(本〜)」という単一を表現する形態は、その内容が明らかに特別の記載のない限り、複数の指示語を含んでいるものとする。よって、例えば、「1つの構造体」という記載には、複数のこうした構造体が含まれており、「この組成物」という記載には、1種または複数の組成物という記載が含まれている。
【0026】
また、「または(もしくは、あるいは)」の使用は、特段の記載のない限り、「および/または」を意味する。同様に、「含む、含んでいる(comprise、comprising、comprising)」、「包含する、包含している(include、includes、including)」は言い換え可能であり、限定を意図するものでない。
【0027】
さらに、各種実施形態の説明で「含む(comprising)」という用語を使用する場合、当業者には、一部の特定の実例において、実施形態は、「〜から実質的になる(consisting essentially of)」または「〜からなる(consisting of)」という言葉を使用して代替的に記載することができることが理解されよう。
【0028】
特に断りのない限り、本明細書で使用されている全ての技術的用語および科学用語は、本開示が属する当業者に通常理解される意味と同様の意味を有している。本明細書に記載されている方法および材料と同様または同等のものを本開示の方法および組成物の実施で使用することができるが、一例としての方法、デバイスおよび材料を本明細書に記載している。
【0029】
上記で、また本明細書全体にわたって論じた刊行物はいずれも、本出願の出願日前にそれらの開示が単独でなされている。本明細書に記載の一切の内容は、本発明者らは先行開示に基づいてかかる開示に先行する権利を有さないということを認めるものではない。
【0030】
薬剤貯蔵および送達材料としての非毒性成分を使用することを含むMOFの使用、または生物学的に非毒性なMOFの合成は、これまで報告されていない。既存のMOFと比較した場合の本開示MOFの利点は、組成物の非毒性特性である。さらに、このMOFは、構造体の細孔内のゲスト分子の存在にかかわらず、安定性が高い。
【0031】
本明細書では、「クラスター」とは、構造体で確認される反復単位または単位群を意味する。こうした構造体は、同一の反復クラスター構造を含んでいてもよいし、異なる反復クラスター構造を含んでいてもよい。クラスターは遷移金属および結合成分(結合配位子と呼ばれる場合もある)を含む。一緒に結合している複数のクラスターが構造体を規定する。
【0032】
「結合成分」とは、1種の生体適合性金属または複数の生体適合性金属をそれぞれ結合する、一座、二座または多座化合物を意味する。本明細書では、「結合配位子」または「結合成分」とは、2種以上の金属を配位結合させる化学種(中性分子およびイオンを含む)であって、生成される構造体中の空間領域またはチャンネルを規定するものを意味する。本開示の結合配位子は非毒性分子である。本開示の方法および組成物に有用な結合配位子の例としては、クエン酸、リンゴ酸および酒石酸が挙げられる。他の結合成分または配位子としては、例えば、メタン酸、エタン酸、プロパン酸、ブタン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、安息香酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘミメリト酸、トリメリト酸、トリメシン酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシ酪酸、マンデル酸、グリセリン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸およびアスコルビン酸が挙げられる。
【0033】
結合成分/配位子は、1〜20個の炭素原子からなるアルキルまたはシクロアルキル基、1〜5個のフェニル環からなるアリール基、あるいは、1〜20個の炭素原子を有するアルキルもしくはシクロアルキル基または1〜5個のフェニル環からなるアリール基からなるアルキルアミンまたはアリールアミンを含み、この場合、多座官能基が配位子の基礎構造に共有結合している。多座官能基は、CO2H、CS2H、NO2、SO3H、Si(OH)3、Ge(OH)3、Sn(OH)3、Si(SH)4、Ge(SH)4、Sn(SH)4、PO3H、AsO3H、AsO4H、P(SH)3、As(SH)3、CH(RSH)2、C(RSH)3、CH(RNH2)2、C(RNH2)3、CH(ROH)2、C(ROH)3、CH(RCN)2、C(RCN)3(ここで、Rは、1〜5個の炭素原子を有するアルキル基であるか、1〜2個のフェニル環からなるアリール基である)、ならびにCH(SH)2、C(SH)3、CH(NH2)2、C(NH2)3、CH(OH)2、C(OH)3、CH(CN)2、およびC(CN)3からなる群から選択することができる。一実施形態では、結合成分/配位子はカルボン酸官能基を含む。さらに、本開示は、全て炭素か、または環を構成している窒素、酸素、硫黄、硼素、リン、シリコンおよびアルミニウム原子と炭素との混合物のいずれかが含まれている1〜5個の環を含むシクロアルキルまたはアリール基本構造を包含する。
【0034】
本開示の別の態様は、適切な鋳型剤(templating agent)の存在下で、適切な配合の配位子を含有する溶液(その一部は、本明細書に記載した多座官能基を含有しており、その他の部分は一座官能基を含有している)に、金属塩の溶液を添加することにより、結晶性金属有機微小孔性材料を合成することができることを提供する。
【0035】
一態様では、結合配位子は1種または複数のカルボン酸塩を含む。例えば、結合配位子はポリカルボン酸であってもよい。本明細書では、「ポリカルボン酸」という用語は、ジカルボン酸、トリカルボン酸、テトラカルボン酸、ペンタカルボン酸などのモノマーポリカルボン酸、ならびにそれらの無水物および組み合わせ、さらにまた、高分子ポリカルボン酸、ならびにそれらの無水物、コポリマーおよび組み合わせを意味する。
【0036】
例示すると、モノマーポリカルボン酸はジカルボン酸であってもよく、例えば、これらに限定されるものではないが、不飽和脂肪族ジカルボン酸、飽和脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、不飽和環状ジカルボン酸、飽和環状ジカルボン酸、それらのヒドロキシ置換誘導体などが挙げられる。あるいは、例としては、ポリカルボン酸そのものはトリカルボン酸であってもよく、これらに限定されるものではないが、不飽和脂肪族トリカルボン酸、飽和脂肪族トリカルボン酸、芳香族トリカルボン酸、不飽和環状トリカルボン酸、飽和環状トリカルボン酸、それらのヒドロキシ置換誘導体などが挙げられる。こうしたポリカルボン酸はいずれも、ヒドロキシ、ハロ、アルキル、アルコキシなどで場合により置換されていてもよいことは理解されよう。一変形形態では、ポリカルボン酸は、飽和脂肪族トリカルボン酸のクエン酸である。他の適切なポリカルボン酸は、例えば、これらに限定されるものではないが、アコニット酸、アジピン酸、アゼライン酸、ブタンテトラカルボン酸二水素化物、ブタントリカルボン酸、クロレンド酸、シトラコン酸、ジシクロペンタジエン-マレイン酸付加物、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、ジペンテンおよびマレイン酸の付加物、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、完全マレアート化ロジン、マレエート化トール油脂肪酸、フマル酸、グルタル酸、イソフタル酸、イタコン酸、アルコールに次いでカルボン酸に過酸化カリウムで酸化されるマレエート化ロジン、マレイン酸、リンゴ酸、メサコン酸、3-4カルボキシル基を導入するために反応させたビフェノールAまたはビスフェノールF、シュウ酸、フタル酸、セバシン酸、コハク酸、酒石酸、テレフタル酸、テトラブロモフタル酸、テトラクロロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、トリメリト酸、トリメシン酸など、ならびにそれらの無水物および組み合わせが挙げられる。
【0037】
本開示は、金属イオンと、次式からなる群から選択される一般構造を有する結合配位子とを含むクラスターを提供する:
【化9】
【0038】
(式中、Mは非毒性金属であり、Rは-H、-OH、-OR1、アリール、置換アリール、アルキル、置換アルキル、カルボキシル、アミノカルボニル、アルキルスルホニルアミノカルボキシル、アルコキシカルボニルおよびハロ(ここで、R1は-H、およびアリール、置換アリール、アルキル、置換アルキル、カルボキシル、アミノカルボニル、アルキルスルホニルアミノカルボキシル、アルコキシカルボニルおよびハロであってもよい)からなる群から選択される);
【化10】
【0039】
(式中、Mは非毒性金属であり、nは0、1、または2である);
【化11】
【0040】
(式中、Mは非毒性金属である);
【化12】
【0041】
(式中、Mは非毒性金属である);
【化13】
【0042】
(式中、Mは非毒性金属である);
【化14】
【0043】
(式中、Mは非毒性金属である);
【化15】
【0044】
(式中、Mは非毒性金属である);および、
【化16】
【0045】
(式中、Mは非毒性金属である)。
【0046】
しかし、金属イオンおよび結合成分を含むクラスターを表す、上記の一般式I〜VIIIについては、結合成分を修飾または誘導体化することができることは理解されよう。例えば、式IIで示した結合成分は、以下のように修飾することができる:
【化17】
【0047】
(式中、R1〜15の各基は、独立して、-H、-OH、-OR16、アリール、置換アリール、アルキル、置換アルキル、カルボキシル、アミノカルボニル、アルキルスルホニルアミノカルボキシル、アルコキシカルボニルおよびハロからなる群から選択され、この場合、R16は-H、およびアリール、置換アリール、アルキル、置換アルキル、カルボキシル、アミノカルボニル、アルキルスルホニルアミノカルボキシル、アルコキシカルボニルおよびハロであってもよい)。
【0048】
「アルキル」という用語は、炭素原子の一価飽和鎖であって、場合により分岐していてもよいものを意味し;「シクロアルキル」という用語は、炭素原子の一価鎖であって、その一部が環を形成しているものを意味し;「アルケニル」という用語は、少なくとも1つの二重結合を含む炭素原子の一価不飽和鎖であって、場合により分岐していてもよいものを意味し;「シクロアルケニル」という用語は、炭素原子の一価不飽和鎖であって、その一部が環を形成しているものを意味し;「ヘテロシクリル」という用語は、炭素原子およびヘテロ原子(この場合、ヘテロ原子は窒素、酸素および硫黄から選択される)の一価鎖であって、その一部(少なくとも1つのヘテロ原子を含む)が環を形成しているものを意味し;「アリール」という用語は、フェニル、ナフチルなどの、炭素原子の芳香族の単環または多環を意味し;「ヘテロアリール」という用語は、炭素原子と、窒素、酸素および硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子の芳香族単環または多環、例えば、ピリジニル、ピリミジニル、インドリル、ベンゾオキサゾリルなどを意味する。アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニルおよびヘテロシクリルは、それぞれ、独立して選択される基、例えばアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、カルボン酸およびその誘導体(エステル、アミドおよびニトリルを含む)、ヒドロキシ、アルコキシ、アシルオキシ、アミノ、アルキルおよびジアルキルアミノ、アシルアミノ、チオなど、ならびにそれらの組み合わせで場合により置換されていてもよいことを理解されたい。さらに、アリールおよびヘテロアリールは、それぞれ、1個または複数の独立して選択される置換基、例えばハロ、ヒドロキシ、アミノ、アルキルまたはジアルキルアミノ、アルコキシ、アルキルスルホニル、シアノ、ニトロなどで場合により置換されていてもよいことも理解されたい。
【0049】
また本開示は、同一のまたは異なる複数のクラスター(この場合、当該クラスターは構造体を形成する)を含む、生体適合性金属有機構造体(bMOF)を提供する。
【0050】
本明細書では、「構造体」とは、2次元または3次元構造を有する反復クラスターの構造体を意味する。
【0051】
非毒性化学種とは、生物有機体と接触した時、細胞アポトーシスまたは死滅に直接的な影響を有していないか、有していても限定されている、化学物質を意味する。こうした物質は、生物学的に安全で、生物学的に不活性で、かつ生体適合し得るということもできる。
【0052】
本明細書では、「非結合配位子」とは、金属に配位結合されるが、リンカーとしては作用しない化学種を意味する。
【0053】
本明細書では、「ゲスト」とは、構造体と一体化しているとはみなされない開放系構造体(open framework)固体の空間領域内に存在する任意の化学種を意味する。具体例としては次のものが挙げられる:合成プロセスの間に空間領域を満たす溶媒分子、例えば、(拡散による)浸漬の間に、または溶媒分子を排気した後に、溶媒と交換される他の分子(例えば吸着実験における気体など)。ゲスト種は、本開示の構造体によって「運ばれる」薬剤、治療薬または診断薬であってもよい。本明細書で用いられる化学種としては、ペプチド、ポリペプチド、核酸分子および脂肪酸などを挙げることができる。一般的に、薬剤は構造体の空間を満たすか、部分的に満たし得る有機小分子を含む。
【0054】
また別の実施形態では、構造体は足場として組織工学に使用することができるが、この場合、細胞成長をサポートするように細胞または細胞間マトリックス物質(例えば、コラーゲン、エラスチンなど)が構造体に充填される。本構造体は生体適合し得るので、細胞は構造体上で成長および増殖することができる。
【0055】
本明細書では、「電荷平衡種」とは、構造体の電荷を平衡化する荷電ゲスト種を意味する。非常に多くの場合、この種は、すなわち、水素結合を介して構造体に強力に結合される。この種は、排気時に分解してより小さな荷電化学種を残置することができるか、同等に荷電されている種と交換することもできるが、一般的には、この種は分解(collapse)することなく金属有機構造体の細孔から取り出すことはできない。
【0056】
本明細書では、「空間充填剤」は、合成中に、開放系構造体の空間領域を充填するゲスト種を意味する。なお、永久的多孔性を呈する材料は、空間充填剤が加熱および/または排気によって除去された後、原型を保ち続ける。具体例としては、溶媒分子または分子状の電荷平衡種が挙げられる。後者は加熱により分解することもでき、それによって、それらの気体状生成物は容易に排気され、より小さな電荷平衡種(すなわちプロトン)が細孔に残る。空間充填剤は、鋳型剤(templating agents)と呼ばれる場合もある。
【0057】
本明細書では、「接触可能(accessible)金属部位」とは、金属クラスター中の部位であって、特に、配位子のような化学成分が付着するのに利用することができる金属クラスター中の金属に隣接する位置を意味する。
【0058】
本明細書では、「開放系金属部位」とは、金属クラスター中の部位であって、特に、配位子または他の化学成分が当該位置から除去されることで、金属クラスター(具体的には金属クラスター中の金属)への結合時に利用され得る電子密度を有する化学種の吸着に対して金属クラスターを反応性にする、金属クラスター中の金属に隣接する位置を意味する。
【0059】
本明細書では、「金属クラスター」とは、本開示のbMOF中に存在する任意の金属を含有する成分を意味する。この定義は、単一の金属原子または金属イオンから、場合により配位子または共有結合で結合している基を含んでいてもよい一群の金属または金属イオンを包含する。
【0060】
本開示の一実施形態では、bMOFを含む生物体への生物学的薬剤送達用ビヒクルを提供する。本実施形態のbMOFは、複数の金属クラスターおよび隣接の金属クラスターを連結する複数の荷電多座非毒性結合配位子を包含する。金属クラスターは、それぞれ1種または複数の金属イオンおよび少なくとも1つの開放系金属部位を含んでいる。bMOFは、生物体(例えば、ヒトをはじめとする哺乳動物)に送達すべき分子を捕捉/結合する1つまたは複数の部位を含んでいるのが有利である。この実施形態では、1つまたは複数の部位は、少なくとも1つの開放系金属部位を含んでいる。本開示の構造体で捕捉/貯蔵され得る生物学的薬剤は、細孔内に適合することができ、かつ1つまたは複数の部位への結合時に利用可能である電子密度を含む、すべての生体分子を包含する。こうした電子密度は、その中に含有されている2個の原子間に多重結合を有する分子、または孤立電子対を有する分子を包含する。
【0061】
本実施形態の変更形態では、開放系金属部位は、前駆体金属有機構造体の活性化により形成される。この活性化は、精製において、金属クラスターから1種または複数の化学成分を除去することを必要とする。一般的に、こうした成分は、金属クラスター内部の金属または金属イオンに錯体化されているか、結合されている配位子である。さらに、こうした成分としては、水、金属クラスター内に含有されている溶媒分子、ならびに金属クラスターおよび/またはその中に含有されている金属原子またはイオンへの結合に利用可能な電子密度を有する他の化学成分といった種が挙げられる。こうした電子密度には、その中に含有されている2つの原子間に多重結合を有する分子、または孤立電子対を有する分子が含まれる。
【0062】
本開示の別の実施形態では、複数の金属核と、隣接する金属クラスターを連結する複数の荷電非毒性多座結合配位子とを含む、生体適合性金属有機構造体を提供する。各金属核は、1種または複数の金属イオンと少なくとも1つの接触可能な金属部位を含んでいる。一般的には、金属イオンはアルカリ土類金属であり、配位子は生体適合性の酸である。金属有機構造体は、生体分子または気体を結合または貯蔵するための1または複数の部位を含んでいるのが有利である。この実施形態では、1または複数の部位は、少なくとも1つの接触可能な金属部位を含んでいる。本開示の気体貯蔵材料中に貯蔵され得る気体は、気体を貯蔵するための1つまたは複数の部位に結合するために利用可能な電子密度を含む気体分子が挙げられる。こうした気体の適切な例としては、これらに限定されるものではないが、アンモニア、アルゴン、二酸化炭素、一酸化炭素、水素およびそれらの組み合わせからなる群から選択される成分を含む気体が挙げられる。この実施形態の一変形形態では、接触可能な金属部位は開放系金属部位である。
【0063】
本開示の実施形態で使用される金属有機構造体は、生体分子または気体を吸着する複数の細孔を含む。一変形形態では、複数の細孔は単一モード型のサイズ分布を有する。別の変形形態では、複数の細孔は複数モード型の(例えば、二重モード型の)サイズ分布を有する。
【0064】
上記で述べた材料の実施形態の別の変形形態では、金属有機構造体は、1種または複数の金属イオンを含む金属クラスターを包含する。別の変形形態では、金属有機構造体は、2種以上の金属イオンを含む金属クラスターを包含する。さらに別の変形形態では、金属有機構造体は、3種以上の金属イオンを含む金属核を包含する。金属イオンは、Li+、Na+、Rb+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Sc3+、Ti4+、Zr4+、Ta3+、Cr3+、Mo3+、W3+、Mn3+、Fe3+、Fe2+、Ru3+、Ru2+、Os3+、Os2+、Co3+、Co2+、Ni2+、Ni+、Pd2+、Pd+、Pt2+、Pt+、Cu2+、Cu+、Au+、Zn2+、Al3+、Ga3+、In3+、Si4+、Si2+、Ge4+、Ge2+、Sn4+、Sn2+、Bi5+、Bi3+、およびそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【0065】
本開示の環境にやさしい金属有機構造体は、各金属核が1種または複数の金属イオンを含む複数の金属核と、隣接する金属核を連結する複数の非毒性荷電多座結合配位子とを含む。一態様では、複数の多座結合配位子の各配位子は、2つ以上のカルボン酸塩を含む。また別の態様では、多座結合配位子は、芳香族環または非芳香族環中に組み入れられている12個以上の原子を有している。さらなる態様では、1種または複数の多座結合配位子は、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、レチノイン酸、パントテン酸、葉酸、ニコチン酸、シュウ酸、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、α-リノール酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸、およびドコサヘキサエン酸からなる群から選択される親化合物のアニオンを含む。
【0066】
本開示で用いられる金属有機構造体は、場合によりさらに非結合配位子を含む。ある変形形態では、非結合配位子は、O2-、硫酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、二リン酸塩、三リン酸塩、亜リン酸塩、塩化物、塩素酸塩、臭化物、臭素酸塩、ヨウ化物、ヨウ素酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、硫化物、硫化水素塩、セレン化物、セレン酸塩、セレン酸水素塩、テルル化物、テルル酸塩、テルル酸水素塩、窒化物、リン化物、砒化物、砒酸塩、砒酸水素塩、砒酸二水素塩、アンチモン化物、アンチモン酸塩、アンチモン酸水素塩、アンチモン酸二水素塩、フッ化物、硼化物、硼酸塩、硼酸水素塩、過塩素酸塩、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、過臭素酸塩、亜臭素酸塩、次亜臭素酸塩、過ヨウ素酸塩、亜ヨウ素酸塩、次亜ヨウ素酸塩、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0067】
本開示の金属有機構造体は、場合により、空間充填剤、吸着化学種、ゲスト種およびそれらの組み合わせをさらに含む。本開示の一部の変形形態では、空間充填剤、吸着化学種およびゲスト種は、金属有機構造体の表面積を増大する。適切な空間充填剤は、例えば、以下からなる群から選択される成分を含む:
(i) 1〜20個の炭素原子を有する直鎖状、分枝状または環状の脂肪族基を含有するアルキルアミンおよびその対応アルキルアンモニウム塩;
(ii) 1〜5個のフェニル環を有するアリールアミンおよびその対応アリールアンモニウム塩;
(iii) 1〜20個の炭素原子を有する直鎖状、分枝状または環状の脂肪族基を含有するアルキルホスホニウム塩;
(iv) 1〜5個のフェニル環を有するアリールホスホニウム塩;
(v) 1〜20個の炭素原子を有する直鎖状、分枝状または環状の脂肪族基を含有するアルキル有機酸およびその対応塩;
(vi) 1〜5個のフェニル環を有するアリール有機酸およびその対応塩;
(vii) 1〜20個の炭素原子を有する直鎖状、分枝状または環状の脂肪族基を含有する脂肪族アルコール;
(viii) 1〜5個のフェニル環を有するアリールアルコール;
(a) 硫酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、二リン酸塩、三リン酸塩、亜リン酸塩、塩化物、塩素酸塩、臭化物、臭素酸塩、ヨウ化物、ヨウ素酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、O2-、二リン酸塩、硫化物、硫化水素塩、セレン化物、セレン酸塩、セレン酸水素塩、テルル化物、テルル酸塩、テルル酸水素塩、窒化物、リン化物、砒化物、砒酸塩、砒酸水素塩、砒酸二水素塩、アンチモン化物、アンチモン酸塩、アンチモン酸水素塩、アンチモン酸二水素塩、フッ化物、硼化物、硼酸塩、硼酸水素塩、過塩素酸塩、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、過臭素酸塩、亜臭素酸塩、次亜臭素酸塩、過ヨウ素酸塩、亜ヨウ素酸塩、次亜ヨウ素酸塩からなる群から選択される無機陰イオン、および前記無機陰イオンの対応酸および塩;
(b) アンモニア、二酸化炭素、メタン、酸素、アルゴン、窒素、エチレン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、ナフタレン、チオフェン、ピリジン、アセトン、1,2-ジクロロエタン、塩化メチル、テトラヒドロフラン、エタノールアミン、トリエチルアミン、トリフルオロメチルスルホン酸、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、クロロホルム、ブロモホルム、ジブロモメタン、ヨードホルム、ジヨードメタン、ハロゲン化有機溶媒、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、1-メチル-2-ピロリジノン、アミド溶媒、メチルピリジン、ジメチルピリジン、ジエチルエーテル、およびこれらの混合物。吸着化学種の例としては、アンモニア、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、アミン、メタン、酸素、アルゴン、窒素、アルゴン、有機色素、多環式有機分子、香味剤、小分子治療剤および診断薬、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。ゲスト種の例は、約100g/mol未満の分子量を有する有機分子、約300g/mol未満の分子量を有する有機分子、約600g/mol未満の分子量を有する有機分子、約600g/molより大きな分子量を有する有機分子である。一部の変形形態では、吸着化学種、ゲスト種および空間充填剤は、事前選択された化学種、ゲスト種または空間充填剤と金属有機構造体とを接触させることにより、金属有機構造体内に導入される。本開示の別の変形形態では、金属有機構造体は、当該金属有機構造体の表面積を増大する相互貫入金属有機構造体を含む。
【0068】
本開示のさらなる別の実施形態において、上記材料の形成方法を提供する。本金属有機構造体は、溶媒ならびにLi+、Na+、Rb+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Sc3+、Ti4+、Zr4+、Ta3+、Cr3+、Mo3+、W3+、Mn3+、Fe3+、Fe2+、Ru3+、Ru2+、Os3+、Os2+、Co3+、Co2+、Ni2+、Ni+、Pd2+、Pd+、Pt2+、Pt+、Cu2+、Cu+、Au+、Zn2+、Al3+、Ga3+、In3+、Si4+、Si2+、Ge4+、Ge2+、Sn4+、Sn2+、Bi5+、Bi3+およびそれらの組み合わせからなる群から選択される金属イオンを含む溶液を多座結合配位子と混合し、前駆体bMOFを形成させることにより形成する。多座結合配位子は、2つ以上のカルボン酸塩、またはクエン酸、リンゴ酸、酒石酸、レチノイン酸、パントテン酸、葉酸、ニコチン酸、シュウ酸、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、α-リノール酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸、およびドコサヘキサエン酸からなる群から選択される親化合物のアニオンを含んでいてもよい。
【0069】
本開示のbMOFは、スキームIまたはIIのいずれかを使用することにより形成することができる。
【化18】
【0070】
式中、Mは非毒性金属カチオンである。この実施形態では、結合成分はテレフタル酸またはその誘導体として示す。スキームIの方法を使用すると、式Xで表す構造体を生成することができる。
【化19】
【0071】
式中、Mは非毒性金属カチオンである。この実施形態では、結合成分はトリメシン酸またはその誘導体として示す(nは1、2または3である)。
【0072】
本開示で用いられる金属有機構造体は、場合により、非結合配位子をさらに含む。変形形態において、非結合配位子は、O2-、硫酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、二リン酸塩、三リン酸塩、亜リン酸塩、塩化物、塩素酸塩、臭化物、臭素酸塩、ヨウ化物、ヨウ素酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、硫化物、硫化水素塩、セレン化物、セレン酸塩、セレン酸水素塩、テルル化物、テルル酸塩、テルル酸水素塩、窒化物、リン化物、砒化物、砒酸塩、砒酸水素塩、砒酸二水素塩、アンチモン化物、アンチモン酸塩、アンチモン酸水素塩、アンチモン酸二水素塩、フッ化物、硼化物、硼酸塩、硼酸水素塩、過塩素酸塩、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、過臭素酸塩、亜臭素酸塩、次亜臭素酸塩、過ヨウ素酸塩、亜ヨウ素酸塩、次亜ヨウ素酸塩、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0073】
本開示の一変形形態では、1種または複数の配位子は、前駆体MOFを加熱することにより除去される。一般的に、この変形形態では、前駆体MOFは約30℃〜約300℃の温度に加熱される。別の変形形態では、1種または複数の配位子は、前駆体MOFを真空に暴露することにより除去される。一般的に、この真空は、圧力が10-3 torr未満であることを特徴とする。他の変形形態では、約10-5 torr〜約700 torrである。本開示のさらなる別の変形形態において、1種または複数の配位子は、MOF前駆体を加熱すると同時に、MOF前駆体を真空に曝露することにより除去される。さらなる別の変形形態では、本開示の方法において用いられる溶液は、空間充填剤を含んでいてもよい。好適な空間充填剤の具体例は、上記で挙げている。これらのそれぞれの変形形態の改善例において、MOF前駆体の1種または複数の配位子は、後で引き続き行われる加熱および/または真空曝露により更に容易に除去される別の1種または複数の配位子と交換することができる。
【0074】
別の態様では、上述の構造体は、構造体の表面積を増大させる相互貫入構造体を包含していてもよい。本開示の構造体はそのような相互貫入を含まないのが有利であるが、相互貫入構造体の包含物を用いて表面積を増大させてもよい状況もある。
【0075】
本開示の構造体は、in vitroまたはin vivoにおける吸着デバイスとして使用することができる。吸着(sorption)とは、原子または分子と標的物質との会合をもたらすプロセスを意味する包括的用語である。吸着には、吸着(adsorption)および吸収の両方が含まれる。吸収は、例えばスポンジによる水の吸収といった、塊状の多孔質材料中へ原子または分子が移動するプロセスを意味する。吸着は、固体表面または液体表面上にバルク相(すなわち固体、液体または気体)から原子または分子が移動するプロセスを意味する。吸着という用語は、液体および気体に接する固体表面の意味で用いることができる。固体表面上に吸着された分子は一般に吸着質と呼ばれ、これらが吸着される表面は基質または吸着体と呼ばれる。吸着は、通常、等温線(すなわち吸着体上の吸着質の量とその圧力(気体の場合)または濃度(液体の場合)とを関係させる関数)を介して記載される。一般に、脱着は吸着の逆の意味であり、表面上に吸着されている分子がバルク相へ逆転移されるプロセスである。
【0076】
以下の実施例は限定されるものではなく、本発明の各種実施形態を説明するものである。当業者には、本発明の趣旨および特許請求の範囲内に数多くの変形形態が存在することは理解されよう。
【実施例】
【0077】
本開示の一次元(1D)、二次元(2D)および三次元(3D)の環境にやさしい金属有機構造体(efMOFまたはbMOF)を合成し、PXRD、単結晶X線解析およびTGAによって特性決定した。例えば、以下の合成経路を用いて本開示の組成物の特定の種を生成することができる:
(a) 1D-efMOFの合成:
【化20】
【0078】
(b) 2D-efMOFの合成:
【化21】
【0079】
(c) 3D-efMOFの合成:
【化22】
【0080】
図1は、Mg3(クエン酸)2(H2O)6・8H2OおよびCa(MaI)・2H2Oの特徴を示す。
【0081】
図2は、Ca3(クエン酸)2(H2O)2・8H2OおよびCa(Tar)(H2O)2・2H2Oの特徴を示す。
【0082】
MgBDC-1
テレフタル酸(H2BDC、240mg)および硝酸マグネシウム六水和物 Mg(NO3)2・6H2O (128mg)の固体混合物を、20mLバイアル中のN,N-ジエチルホルムアミド(13mL)および2.0Mの水性HNO3溶液(40μL)に溶解させた。60μLのジイソプロピルアミンおよび2mLのDEFを4mLバイアル中で混合した。この4mLバイアルを20mLバイアルに入れ、拡散させた。この20mLバイアルに蓋をし、85℃の恒温加熱器中に72時間置いた。図3にMgBDC-1の構造体を示す。
【0083】
MgDHBDC-1
2,5-ジヒドロキシテレフタル酸(H2DHBDC、40mg)および硝酸マグネシウム六水和物 Mg(NO3)2・6H2O (150mg)の固体混合物を、20mLバイアル中のN,N-ジエチルホルムアミド(8mL)、蒸留水(1mL)および2.0Mの水性HNO3溶液(20μL)の混合物に溶解させた。20μLのジイソプロピルアミンおよび2mLのN,N-ジエチルホルムアミドを4mLバイアル中で混合した。この4mLバイアルを20mLバイアルに入れ、拡散させた。この20mLバイアルに蓋をし、65℃の恒温加熱器中に60日間置いた。図4は、MgDHBD-1の構造体を示す。
【0084】
MgOBA-1
4,4'-オキシビス(安息香酸)(H2OBA、50.0mg)および硝酸マグネシウム六水和物 Mg(NO3)2・6H2O (10.0mg)の固体混合物を、20mLバイアル中のN,N-ジメチルホルムアミド(5mL)中に溶解させた。20μLのジイソプロピルアミンおよび2mLのN,N-ジメチルホルムアミドを4mLバイアル中で混合した。この4mLバイアルを20mLバイアルに入れ、拡散させた。この20mLバイアルに蓋をし、65℃の恒温加熱器中に10日間置いた。図5は、MgOBA-1の構造体を示す。
【0085】
MgBTC-1
トリメシン酸(H3BTC、50.0mg)および硝酸マグネシウム六水和物 Mg(NO3)2・6H2O (150.0 mg)の固体混合物を、20mLバイアル中のN,N-ジエチルホルムアミド(5mL)、エタノール(3mL)および2-エチル-1-ヘキサノール(2mL)中に溶解させた。このバイアルに蓋をし、85℃の恒温加熱器中に3日間置いた。図6は、MgBTC-1の構造体を示す。
【0086】
MgBTB-1
1,3,5-トリ(4'-カルボキシ-4,4'-ビフェニル)ベンゼン(H3BTB、43.5mg)および酢酸マグネシウム四水和物 Mg(OAc)2・4H2O (5.0mg)の固体混合物を、4-mLバイアル中のN,N-ジメチルアセトアミド(3mL)およびジメチルアミン(20μL)の混合物中に溶解させた。このバイアルに蓋をし、120℃の恒温加熱器中に3日間置いた。図7は、MgBTB-1の構造体を示す。
【0087】
MgBTB-2
4,4',4''-ベンゼン-1,3,5-トリイル-トリ-安息香酸 (H3BTB、10.0mg)および硝酸マグネシウム六水和物 Mg(NO3)2・6H2O(6.0mg)の固体混合物を、4mLバイアル中のN,N-ジエチルホルムアミド(2.5mL)および蒸留水(0.50mL)の混合物中に溶解させた。このバイアルに蓋をし、100℃の恒温加熱器中に7日間置いた。図8は、MgBTB-2の構造体を示す。
【0088】
MgBTB-3
4,4',4''-ベンゼン-1,3,5-トリイル-トリ-安息香酸 (H3BTB、10.0mg)および酢酸マグネシウム四水和物 Mg(OAc)2・4H2O (5.0mg)の固体混合物を、20mLバイアル中のN-メチルピロリドン(2mL)および蒸留水(1mL)の混合物に溶解させた。20μLのトリエチルアミンおよび2mLのN-メチルピロリドンを4mLバイアル中で混合した。この4mLバイアルを20mLバイアルに入れ、拡散させた。この20mLバイアルに蓋をし、65℃の恒温加熱器中に7日間置いた。図9は、MgBTB-3の構造体を示す。
【0089】
MgBTB-4
4,4',4''-ベンゼン-1,3,5-トリイル-トリ-安息香酸 (H3BTB、30.0mg)および酢酸マグネシウム四水和物 Mg(OAc)2・4H2O (40.0mg)の固体混合物を、20mLバイアル中のN,N-ジエチルホルムアミド(10mL)および2.0Mの水性HNO3溶液(120μL)の混合物に溶解させた。10μLのN,N-ジイソプロピルアミンおよび2mLのN,N-ジエチルホルムアミドを4mLバイアル中で混合させた。この4mLバイアルを20mLバイアルに入れ、拡散させた。この20mLバイアルに蓋をし、65℃の恒温加熱器中に7日間置いた。図10は、MgBTB-5の構造体を示す。
【0090】
MgBBC-1
4,4',4''-ベンゼン-1,3,5-トリイル-トリ-ビフェニルカルボン酸 (H3BBC、30.0mg)および硝酸マグネシウム六水和物 Mg(NO3)2・6H2O(4.0mg)の固体混合物を、4mLバイアル中のN,N-ジエチルホルムアミド(1.5mL)、蒸留水(0.30mL)および2Mの水性HNO3溶液(20μL)の混合物に溶解させた。このバイアルに蓋をし、100℃の恒温加熱器中に5日間置いた。図11は、MgBBC-1の構造体を示す。
【表1】
【0091】
多数の実施形態および特徴を上記に記載したが、本開示の内容または添付の特許請求の範囲によって定義した本発明の範囲から逸脱することなく、これらの記載した実施形態および特徴の変更および変形形態が得られることは、当業者には理解されよう。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、35 U.S.C. §119に基づいて、2007年9月25日出願の米国仮特許出願第60/975,089号の優先権を主張する。なお、この出願の内容は、参照により本明細書中に組み入れるものとする。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般に、金属有機構造体(metal organic frameworks)を含んだ材料に関する。また本発明は、生物系ならびにバイオセンサーにおける分子の送達に有用な材料に関する。
【背景技術】
【0003】
既存の金属有機構造体は有毒であり、生体適合性に欠けている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
要約
本開示は、非毒性の出発材料から開発された多孔性の生体適合性金属有機構造体群(bMOFs)を提供する。こうしたbMOF材料は、薬剤の貯蔵および送達、食品における着香料および乾燥剤、触媒、組織工学、栄養補助食品、分離技術ならびに気体貯蔵で利用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、生物学的に有用な1次元、2次元および3次元-bMOFを設計および合成する手段を提供する。本開示の3次元-bMOFは多孔性であって、構造体の細孔内に薬剤を貯蔵することが可能であり、生体分子を吸収することが可能であり、組織工学および足場のための構造体として使用することが可能であり、栄養補助食品として機能を果たすための消化管内での膨張などを可能にする。
【0006】
本明細書に記載の材料は、金属イオン、有機リンカーおよび反応条件に応じて、2次元または3次元網目構造として調製することができる。有機リンカー(これらは構造体の必須部分を表す)の選択ならびに反応条件(例えば、温度、pH、溶媒系、反応物質比および反応時間など)の選択により、所望の構造体を得ることができる。
【0007】
本開示は、それぞれの金属核が少なくとも1つの他の核に結合している、複数の生体適合性金属核と;隣接する核を連結する複数の生体適合性結合配位子と;複数の細孔(この場合、複数の結合核はこの細孔を規定する)とを含む、生体適合性金属有機構造体(bMOF)を提供する。一態様では、複数の核は異なる。一態様では、少なくとも2つの核は異なる。別の態様では、複数の結合配位子は異なる。また別の態様では、本多孔性構造体は、官能基化して分析物またはゲスト種を結合させる。また別の実施形態では、これらの細孔は、大きさが異なっていてもよいし、同一であってもよい。
【0008】
また、本開示は、各金属クラスターが1種または複数の金属イオンを含む、複数の金属クラスターと;隣接する金属クラスターを連結する複数の非毒性荷電多座結合配位子とを含む、生体適合性の/環境にやさしい金属有機構造体を提供する。一実施形態では、本結合配位子は、1〜20個の炭素原子からなるアルキルまたはシクロアルキル基、1〜5個のフェニル環からなるアリール基、あるいは、1〜20個の炭素原子を有するアルキルもしくはシクロアルキル基または1〜5個のフェニル環からなるアリール基からなるアルキルアミンまたはアリールアミンを含み、この場合、多座官能基が配位子の基礎構造に共有結合している。多座官能性は、CO2H、CS2H、NO2、SO3H、Si(OH)3、Ge(OH)3、Sn(OH)3、Si(SH)4、Ge(SH)4、Sn(SH)4、PO3H、AsO3H、AsO4H、P(SH)3、As(SH)3、CH(RSH)2、C(RSH)3、CH(RNH2)2、C(RNH2)3、CH(ROH)2、C(ROH)3、CH(RCN)2、C(RCN)3(ここで、Rは、1〜5個の炭素原子を有するアルキル基であるか、1〜2個のフェニル環からなるアリール基である)、ならびにCH(SH)2、C(SH)3、CH(NH2)2、C(NH2)3、CH(OH)2、C(OH)3、CH(CN)2、およびC(CN)3からなる群から選択される構成要素(member)を使用して得ることができる。一実施形態では、結合成分/配位子はカルボン酸官能基を含む。さらに、本開示は、全て炭素か、または炭素と、環を構成している窒素、酸素、硫黄、硼素、リン、シリコンおよびアルミニウム原子との混合物のいずれかが含まれている1〜5個の環を含むシクロアルキルまたはアリール基本構造を包含する。
【0009】
一態様では、複数の多座結合配位子の各配位子は、2つ以上のカルボン酸塩を含む。別の態様では、金属イオンは、Li+、Na+、Rb+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Sc3+、Ti4+、Zr4+、Ta3+、Cr3+、Mo3+、W3+、Mn3+、Fe3+、Fe2+、Ru3+、Ru2+、Os3+、Os2+、Co3+、Co2+、Ni2+、Ni+、Pd2+、Pd+、Pt2+、Pt+、Cu2+、Cu+、Au+、Zn2+、Al3+、Ga3+、In3+、Si4+、Si2+、Ge4+、Ge2+、Sn4+、Sn2+、Bi5+、Bi3+、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。またさらなる態様では、多座結合配位子は、芳香族環または非芳香族環中に組み入れられている6個以上の原子(例えば、12個以上の原子)を有する。1種または複数の多座結合配位子は、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、レチノイン酸、パントテン酸、葉酸、ニコチン酸(nicitinic acid)、シュウ酸、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、α-リノール酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸、およびドコサヘキサエン酸からなる群から選択される親化合物のアニオンを含むことができる。
【0010】
本開示は、金属イオンと、次式:
【化1】
【0011】
(式中、Mは非毒性金属であり、Rは-H、-OH、-OR1、アリール、置換アリール、アルキル、置換アルキル、カルボキシル、アミノカルボニル、アルキルスルホニルアミノカルボキシル、アルコキシカルボニルおよびハロ(ここで、R1は-H、およびアリール、置換アリール、アルキル、置換アルキル、カルボキシル、アミノカルボニル、アルキルスルホニルアミノカルボキシル、アルコキシカルボニルおよびハロであってもよい)からなる群から選択される);
【化2】
【0012】
(式中、Mは非毒性金属であり、nは0、1、または2である);
【化3】
【0013】
(式中、Mは非毒性金属である);
【化4】
【0014】
(式中、Mは非毒性金属である);
【化5】
【0015】
(式中、Mは非毒性金属である);
【化6】
【0016】
(式中、Mは非毒性金属である);
【化7】
【0017】
(式中、Mは非毒性金属である);および、
【化8】
【0018】
(式中、Mは非毒性金属である)
からなる群から選択される一般構造を有する結合配位子とを含む、複数の金属クラスターを含んでなる構造体を提供する。
【0019】
さらに本開示のbMOFは、ゲスト種を含むことができる。このゲスト種は、MOFの表面積を増大させることができる。一態様では、ゲスト種は、生物学的薬剤(例えば、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、脂質、核酸または小分子剤)である。一態様では、生物学的薬剤は治療薬または診断薬である。
【0020】
また本開示は、開示のbMOFを含む栄養補助食品を提供する。こうしたbMOFは生体適合性であって、医薬品もしくは他の生物学的薬剤の送達、または胃腸管内での生物学的薬剤の吸着に使用することができる。別の実施形態では、bMOFは、胃腸管内でゲスト種が吸収されることにより膨張できるようにしてもよいし、所望の期間中に構造体が生物分解されるように製造してもよく、それによって、例えば、十分満足のいく刺激を提供することができる。
【0021】
本開示は、細孔内に薬剤を有しているbMOFを含む薬剤送達組成物を提供し、この場合、当該薬剤は腸管まで送達される(例えば腸溶性コーティング)。
【0022】
また別の態様では、本開示のbMOFを含む食品添加物を提供する。
【0023】
さらに本開示は、開示のMOFを含む気体貯蔵デバイスを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】開示のMOFの特徴を示す図である。
【図2】開示のMOFの特徴を示す図である。
【図3A】開示のbMOF構造(MgBDC1)を示す図である。(A) マグネシウム原子、酸素原子および炭素原子を含んでいるMgBDC-1中の二核クラスター。
【図3B】開示のbMOF構造(MgBDC1)を示す図である。(B) MgBDC-1の3D図面。
【図4A】開示のbMOF構造(MgDHBDC-1)を示す図である。(A) マグネシウム原子、酸素原子および炭素原子を含んでいるMgDHBDC-1中の六核クラスター。
【図4B】開示のbMOF構造(MgDHBDC-1)を示す図である。(B) MgDHBDC-1の3D図面。
【図5】マグネシウム原子、酸素原子および炭素原子を含んでいる、開示のMgOBA-1構造を示す図である。
【図6A】開示のbMOF構造を示す図である(MgBTC-1)。(A)は、マグネシウム、酸素および炭素を含んでいるMgBTC-1の二核クラスターを示す。
【図6B】開示のbMOF構造を示す図である(MgBTC-1)。(B)は、三方晶系結合が濃い色の三角形として表され、一方、薄いグレーの三角形が無機SBUを表していることを示す。空間は球体として図示している。
【図7】開示のbMOF構造体を示す図である(MgBTB-1)。八面体無機SBUおよび三頂点(tritopic)結合が形成する2D層状構造。
【図8A】開示のbMOF構造を示す図である(MgBTB-2)。(A) マグネシウム、酸素、炭素および窒素を含んでいるMgBTB-2の基本構成単位。
【図8B】開示のbMOF構造を示す図である(MgBTB-2)。(B) 三方晶系結合は三角形として表し、立方体は無機SBUを表す。空間は球体として図示している。
【図9A】開示のbMOFを示す図である(MgBTB-3)。(A) マグネシウム、酸素、炭素および窒素を含んでいるMgBTB-3の基本構成単位。
【図9B】開示のbMOFを示す図である(MgBTB-3)。(B) 無機SBUは四角形として図示している。空間は球体として図示している。
【図10】開示のbMOFを示す図である(MgBTB-4)。この構造は、2種類の無機SBU(淡色および濃色の三角形および八面体)、ならびに三方晶系結合から成る。空間は球体として図示している。
【図11A】開示のさらに別のbMOFを示す図である(MgBBC-1)。マグネシウム、酸素および炭素を含んでいるMgBBC-1の三核クラスター。
【図11B】開示のさらに別のbMOFを示す図である(MgBBC-1)。 (B)は、2D構造の空間充填モデルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
詳細な説明
本明細書では、また添付の特許請求の範囲において、「1つの〜」、「および」、および「この〜(本〜)」という単一を表現する形態は、その内容が明らかに特別の記載のない限り、複数の指示語を含んでいるものとする。よって、例えば、「1つの構造体」という記載には、複数のこうした構造体が含まれており、「この組成物」という記載には、1種または複数の組成物という記載が含まれている。
【0026】
また、「または(もしくは、あるいは)」の使用は、特段の記載のない限り、「および/または」を意味する。同様に、「含む、含んでいる(comprise、comprising、comprising)」、「包含する、包含している(include、includes、including)」は言い換え可能であり、限定を意図するものでない。
【0027】
さらに、各種実施形態の説明で「含む(comprising)」という用語を使用する場合、当業者には、一部の特定の実例において、実施形態は、「〜から実質的になる(consisting essentially of)」または「〜からなる(consisting of)」という言葉を使用して代替的に記載することができることが理解されよう。
【0028】
特に断りのない限り、本明細書で使用されている全ての技術的用語および科学用語は、本開示が属する当業者に通常理解される意味と同様の意味を有している。本明細書に記載されている方法および材料と同様または同等のものを本開示の方法および組成物の実施で使用することができるが、一例としての方法、デバイスおよび材料を本明細書に記載している。
【0029】
上記で、また本明細書全体にわたって論じた刊行物はいずれも、本出願の出願日前にそれらの開示が単独でなされている。本明細書に記載の一切の内容は、本発明者らは先行開示に基づいてかかる開示に先行する権利を有さないということを認めるものではない。
【0030】
薬剤貯蔵および送達材料としての非毒性成分を使用することを含むMOFの使用、または生物学的に非毒性なMOFの合成は、これまで報告されていない。既存のMOFと比較した場合の本開示MOFの利点は、組成物の非毒性特性である。さらに、このMOFは、構造体の細孔内のゲスト分子の存在にかかわらず、安定性が高い。
【0031】
本明細書では、「クラスター」とは、構造体で確認される反復単位または単位群を意味する。こうした構造体は、同一の反復クラスター構造を含んでいてもよいし、異なる反復クラスター構造を含んでいてもよい。クラスターは遷移金属および結合成分(結合配位子と呼ばれる場合もある)を含む。一緒に結合している複数のクラスターが構造体を規定する。
【0032】
「結合成分」とは、1種の生体適合性金属または複数の生体適合性金属をそれぞれ結合する、一座、二座または多座化合物を意味する。本明細書では、「結合配位子」または「結合成分」とは、2種以上の金属を配位結合させる化学種(中性分子およびイオンを含む)であって、生成される構造体中の空間領域またはチャンネルを規定するものを意味する。本開示の結合配位子は非毒性分子である。本開示の方法および組成物に有用な結合配位子の例としては、クエン酸、リンゴ酸および酒石酸が挙げられる。他の結合成分または配位子としては、例えば、メタン酸、エタン酸、プロパン酸、ブタン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、安息香酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘミメリト酸、トリメリト酸、トリメシン酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシ酪酸、マンデル酸、グリセリン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸およびアスコルビン酸が挙げられる。
【0033】
結合成分/配位子は、1〜20個の炭素原子からなるアルキルまたはシクロアルキル基、1〜5個のフェニル環からなるアリール基、あるいは、1〜20個の炭素原子を有するアルキルもしくはシクロアルキル基または1〜5個のフェニル環からなるアリール基からなるアルキルアミンまたはアリールアミンを含み、この場合、多座官能基が配位子の基礎構造に共有結合している。多座官能基は、CO2H、CS2H、NO2、SO3H、Si(OH)3、Ge(OH)3、Sn(OH)3、Si(SH)4、Ge(SH)4、Sn(SH)4、PO3H、AsO3H、AsO4H、P(SH)3、As(SH)3、CH(RSH)2、C(RSH)3、CH(RNH2)2、C(RNH2)3、CH(ROH)2、C(ROH)3、CH(RCN)2、C(RCN)3(ここで、Rは、1〜5個の炭素原子を有するアルキル基であるか、1〜2個のフェニル環からなるアリール基である)、ならびにCH(SH)2、C(SH)3、CH(NH2)2、C(NH2)3、CH(OH)2、C(OH)3、CH(CN)2、およびC(CN)3からなる群から選択することができる。一実施形態では、結合成分/配位子はカルボン酸官能基を含む。さらに、本開示は、全て炭素か、または環を構成している窒素、酸素、硫黄、硼素、リン、シリコンおよびアルミニウム原子と炭素との混合物のいずれかが含まれている1〜5個の環を含むシクロアルキルまたはアリール基本構造を包含する。
【0034】
本開示の別の態様は、適切な鋳型剤(templating agent)の存在下で、適切な配合の配位子を含有する溶液(その一部は、本明細書に記載した多座官能基を含有しており、その他の部分は一座官能基を含有している)に、金属塩の溶液を添加することにより、結晶性金属有機微小孔性材料を合成することができることを提供する。
【0035】
一態様では、結合配位子は1種または複数のカルボン酸塩を含む。例えば、結合配位子はポリカルボン酸であってもよい。本明細書では、「ポリカルボン酸」という用語は、ジカルボン酸、トリカルボン酸、テトラカルボン酸、ペンタカルボン酸などのモノマーポリカルボン酸、ならびにそれらの無水物および組み合わせ、さらにまた、高分子ポリカルボン酸、ならびにそれらの無水物、コポリマーおよび組み合わせを意味する。
【0036】
例示すると、モノマーポリカルボン酸はジカルボン酸であってもよく、例えば、これらに限定されるものではないが、不飽和脂肪族ジカルボン酸、飽和脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、不飽和環状ジカルボン酸、飽和環状ジカルボン酸、それらのヒドロキシ置換誘導体などが挙げられる。あるいは、例としては、ポリカルボン酸そのものはトリカルボン酸であってもよく、これらに限定されるものではないが、不飽和脂肪族トリカルボン酸、飽和脂肪族トリカルボン酸、芳香族トリカルボン酸、不飽和環状トリカルボン酸、飽和環状トリカルボン酸、それらのヒドロキシ置換誘導体などが挙げられる。こうしたポリカルボン酸はいずれも、ヒドロキシ、ハロ、アルキル、アルコキシなどで場合により置換されていてもよいことは理解されよう。一変形形態では、ポリカルボン酸は、飽和脂肪族トリカルボン酸のクエン酸である。他の適切なポリカルボン酸は、例えば、これらに限定されるものではないが、アコニット酸、アジピン酸、アゼライン酸、ブタンテトラカルボン酸二水素化物、ブタントリカルボン酸、クロレンド酸、シトラコン酸、ジシクロペンタジエン-マレイン酸付加物、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、ジペンテンおよびマレイン酸の付加物、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、完全マレアート化ロジン、マレエート化トール油脂肪酸、フマル酸、グルタル酸、イソフタル酸、イタコン酸、アルコールに次いでカルボン酸に過酸化カリウムで酸化されるマレエート化ロジン、マレイン酸、リンゴ酸、メサコン酸、3-4カルボキシル基を導入するために反応させたビフェノールAまたはビスフェノールF、シュウ酸、フタル酸、セバシン酸、コハク酸、酒石酸、テレフタル酸、テトラブロモフタル酸、テトラクロロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、トリメリト酸、トリメシン酸など、ならびにそれらの無水物および組み合わせが挙げられる。
【0037】
本開示は、金属イオンと、次式からなる群から選択される一般構造を有する結合配位子とを含むクラスターを提供する:
【化9】
【0038】
(式中、Mは非毒性金属であり、Rは-H、-OH、-OR1、アリール、置換アリール、アルキル、置換アルキル、カルボキシル、アミノカルボニル、アルキルスルホニルアミノカルボキシル、アルコキシカルボニルおよびハロ(ここで、R1は-H、およびアリール、置換アリール、アルキル、置換アルキル、カルボキシル、アミノカルボニル、アルキルスルホニルアミノカルボキシル、アルコキシカルボニルおよびハロであってもよい)からなる群から選択される);
【化10】
【0039】
(式中、Mは非毒性金属であり、nは0、1、または2である);
【化11】
【0040】
(式中、Mは非毒性金属である);
【化12】
【0041】
(式中、Mは非毒性金属である);
【化13】
【0042】
(式中、Mは非毒性金属である);
【化14】
【0043】
(式中、Mは非毒性金属である);
【化15】
【0044】
(式中、Mは非毒性金属である);および、
【化16】
【0045】
(式中、Mは非毒性金属である)。
【0046】
しかし、金属イオンおよび結合成分を含むクラスターを表す、上記の一般式I〜VIIIについては、結合成分を修飾または誘導体化することができることは理解されよう。例えば、式IIで示した結合成分は、以下のように修飾することができる:
【化17】
【0047】
(式中、R1〜15の各基は、独立して、-H、-OH、-OR16、アリール、置換アリール、アルキル、置換アルキル、カルボキシル、アミノカルボニル、アルキルスルホニルアミノカルボキシル、アルコキシカルボニルおよびハロからなる群から選択され、この場合、R16は-H、およびアリール、置換アリール、アルキル、置換アルキル、カルボキシル、アミノカルボニル、アルキルスルホニルアミノカルボキシル、アルコキシカルボニルおよびハロであってもよい)。
【0048】
「アルキル」という用語は、炭素原子の一価飽和鎖であって、場合により分岐していてもよいものを意味し;「シクロアルキル」という用語は、炭素原子の一価鎖であって、その一部が環を形成しているものを意味し;「アルケニル」という用語は、少なくとも1つの二重結合を含む炭素原子の一価不飽和鎖であって、場合により分岐していてもよいものを意味し;「シクロアルケニル」という用語は、炭素原子の一価不飽和鎖であって、その一部が環を形成しているものを意味し;「ヘテロシクリル」という用語は、炭素原子およびヘテロ原子(この場合、ヘテロ原子は窒素、酸素および硫黄から選択される)の一価鎖であって、その一部(少なくとも1つのヘテロ原子を含む)が環を形成しているものを意味し;「アリール」という用語は、フェニル、ナフチルなどの、炭素原子の芳香族の単環または多環を意味し;「ヘテロアリール」という用語は、炭素原子と、窒素、酸素および硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子の芳香族単環または多環、例えば、ピリジニル、ピリミジニル、インドリル、ベンゾオキサゾリルなどを意味する。アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニルおよびヘテロシクリルは、それぞれ、独立して選択される基、例えばアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、カルボン酸およびその誘導体(エステル、アミドおよびニトリルを含む)、ヒドロキシ、アルコキシ、アシルオキシ、アミノ、アルキルおよびジアルキルアミノ、アシルアミノ、チオなど、ならびにそれらの組み合わせで場合により置換されていてもよいことを理解されたい。さらに、アリールおよびヘテロアリールは、それぞれ、1個または複数の独立して選択される置換基、例えばハロ、ヒドロキシ、アミノ、アルキルまたはジアルキルアミノ、アルコキシ、アルキルスルホニル、シアノ、ニトロなどで場合により置換されていてもよいことも理解されたい。
【0049】
また本開示は、同一のまたは異なる複数のクラスター(この場合、当該クラスターは構造体を形成する)を含む、生体適合性金属有機構造体(bMOF)を提供する。
【0050】
本明細書では、「構造体」とは、2次元または3次元構造を有する反復クラスターの構造体を意味する。
【0051】
非毒性化学種とは、生物有機体と接触した時、細胞アポトーシスまたは死滅に直接的な影響を有していないか、有していても限定されている、化学物質を意味する。こうした物質は、生物学的に安全で、生物学的に不活性で、かつ生体適合し得るということもできる。
【0052】
本明細書では、「非結合配位子」とは、金属に配位結合されるが、リンカーとしては作用しない化学種を意味する。
【0053】
本明細書では、「ゲスト」とは、構造体と一体化しているとはみなされない開放系構造体(open framework)固体の空間領域内に存在する任意の化学種を意味する。具体例としては次のものが挙げられる:合成プロセスの間に空間領域を満たす溶媒分子、例えば、(拡散による)浸漬の間に、または溶媒分子を排気した後に、溶媒と交換される他の分子(例えば吸着実験における気体など)。ゲスト種は、本開示の構造体によって「運ばれる」薬剤、治療薬または診断薬であってもよい。本明細書で用いられる化学種としては、ペプチド、ポリペプチド、核酸分子および脂肪酸などを挙げることができる。一般的に、薬剤は構造体の空間を満たすか、部分的に満たし得る有機小分子を含む。
【0054】
また別の実施形態では、構造体は足場として組織工学に使用することができるが、この場合、細胞成長をサポートするように細胞または細胞間マトリックス物質(例えば、コラーゲン、エラスチンなど)が構造体に充填される。本構造体は生体適合し得るので、細胞は構造体上で成長および増殖することができる。
【0055】
本明細書では、「電荷平衡種」とは、構造体の電荷を平衡化する荷電ゲスト種を意味する。非常に多くの場合、この種は、すなわち、水素結合を介して構造体に強力に結合される。この種は、排気時に分解してより小さな荷電化学種を残置することができるか、同等に荷電されている種と交換することもできるが、一般的には、この種は分解(collapse)することなく金属有機構造体の細孔から取り出すことはできない。
【0056】
本明細書では、「空間充填剤」は、合成中に、開放系構造体の空間領域を充填するゲスト種を意味する。なお、永久的多孔性を呈する材料は、空間充填剤が加熱および/または排気によって除去された後、原型を保ち続ける。具体例としては、溶媒分子または分子状の電荷平衡種が挙げられる。後者は加熱により分解することもでき、それによって、それらの気体状生成物は容易に排気され、より小さな電荷平衡種(すなわちプロトン)が細孔に残る。空間充填剤は、鋳型剤(templating agents)と呼ばれる場合もある。
【0057】
本明細書では、「接触可能(accessible)金属部位」とは、金属クラスター中の部位であって、特に、配位子のような化学成分が付着するのに利用することができる金属クラスター中の金属に隣接する位置を意味する。
【0058】
本明細書では、「開放系金属部位」とは、金属クラスター中の部位であって、特に、配位子または他の化学成分が当該位置から除去されることで、金属クラスター(具体的には金属クラスター中の金属)への結合時に利用され得る電子密度を有する化学種の吸着に対して金属クラスターを反応性にする、金属クラスター中の金属に隣接する位置を意味する。
【0059】
本明細書では、「金属クラスター」とは、本開示のbMOF中に存在する任意の金属を含有する成分を意味する。この定義は、単一の金属原子または金属イオンから、場合により配位子または共有結合で結合している基を含んでいてもよい一群の金属または金属イオンを包含する。
【0060】
本開示の一実施形態では、bMOFを含む生物体への生物学的薬剤送達用ビヒクルを提供する。本実施形態のbMOFは、複数の金属クラスターおよび隣接の金属クラスターを連結する複数の荷電多座非毒性結合配位子を包含する。金属クラスターは、それぞれ1種または複数の金属イオンおよび少なくとも1つの開放系金属部位を含んでいる。bMOFは、生物体(例えば、ヒトをはじめとする哺乳動物)に送達すべき分子を捕捉/結合する1つまたは複数の部位を含んでいるのが有利である。この実施形態では、1つまたは複数の部位は、少なくとも1つの開放系金属部位を含んでいる。本開示の構造体で捕捉/貯蔵され得る生物学的薬剤は、細孔内に適合することができ、かつ1つまたは複数の部位への結合時に利用可能である電子密度を含む、すべての生体分子を包含する。こうした電子密度は、その中に含有されている2個の原子間に多重結合を有する分子、または孤立電子対を有する分子を包含する。
【0061】
本実施形態の変更形態では、開放系金属部位は、前駆体金属有機構造体の活性化により形成される。この活性化は、精製において、金属クラスターから1種または複数の化学成分を除去することを必要とする。一般的に、こうした成分は、金属クラスター内部の金属または金属イオンに錯体化されているか、結合されている配位子である。さらに、こうした成分としては、水、金属クラスター内に含有されている溶媒分子、ならびに金属クラスターおよび/またはその中に含有されている金属原子またはイオンへの結合に利用可能な電子密度を有する他の化学成分といった種が挙げられる。こうした電子密度には、その中に含有されている2つの原子間に多重結合を有する分子、または孤立電子対を有する分子が含まれる。
【0062】
本開示の別の実施形態では、複数の金属核と、隣接する金属クラスターを連結する複数の荷電非毒性多座結合配位子とを含む、生体適合性金属有機構造体を提供する。各金属核は、1種または複数の金属イオンと少なくとも1つの接触可能な金属部位を含んでいる。一般的には、金属イオンはアルカリ土類金属であり、配位子は生体適合性の酸である。金属有機構造体は、生体分子または気体を結合または貯蔵するための1または複数の部位を含んでいるのが有利である。この実施形態では、1または複数の部位は、少なくとも1つの接触可能な金属部位を含んでいる。本開示の気体貯蔵材料中に貯蔵され得る気体は、気体を貯蔵するための1つまたは複数の部位に結合するために利用可能な電子密度を含む気体分子が挙げられる。こうした気体の適切な例としては、これらに限定されるものではないが、アンモニア、アルゴン、二酸化炭素、一酸化炭素、水素およびそれらの組み合わせからなる群から選択される成分を含む気体が挙げられる。この実施形態の一変形形態では、接触可能な金属部位は開放系金属部位である。
【0063】
本開示の実施形態で使用される金属有機構造体は、生体分子または気体を吸着する複数の細孔を含む。一変形形態では、複数の細孔は単一モード型のサイズ分布を有する。別の変形形態では、複数の細孔は複数モード型の(例えば、二重モード型の)サイズ分布を有する。
【0064】
上記で述べた材料の実施形態の別の変形形態では、金属有機構造体は、1種または複数の金属イオンを含む金属クラスターを包含する。別の変形形態では、金属有機構造体は、2種以上の金属イオンを含む金属クラスターを包含する。さらに別の変形形態では、金属有機構造体は、3種以上の金属イオンを含む金属核を包含する。金属イオンは、Li+、Na+、Rb+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Sc3+、Ti4+、Zr4+、Ta3+、Cr3+、Mo3+、W3+、Mn3+、Fe3+、Fe2+、Ru3+、Ru2+、Os3+、Os2+、Co3+、Co2+、Ni2+、Ni+、Pd2+、Pd+、Pt2+、Pt+、Cu2+、Cu+、Au+、Zn2+、Al3+、Ga3+、In3+、Si4+、Si2+、Ge4+、Ge2+、Sn4+、Sn2+、Bi5+、Bi3+、およびそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【0065】
本開示の環境にやさしい金属有機構造体は、各金属核が1種または複数の金属イオンを含む複数の金属核と、隣接する金属核を連結する複数の非毒性荷電多座結合配位子とを含む。一態様では、複数の多座結合配位子の各配位子は、2つ以上のカルボン酸塩を含む。また別の態様では、多座結合配位子は、芳香族環または非芳香族環中に組み入れられている12個以上の原子を有している。さらなる態様では、1種または複数の多座結合配位子は、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、レチノイン酸、パントテン酸、葉酸、ニコチン酸、シュウ酸、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、α-リノール酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸、およびドコサヘキサエン酸からなる群から選択される親化合物のアニオンを含む。
【0066】
本開示で用いられる金属有機構造体は、場合によりさらに非結合配位子を含む。ある変形形態では、非結合配位子は、O2-、硫酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、二リン酸塩、三リン酸塩、亜リン酸塩、塩化物、塩素酸塩、臭化物、臭素酸塩、ヨウ化物、ヨウ素酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、硫化物、硫化水素塩、セレン化物、セレン酸塩、セレン酸水素塩、テルル化物、テルル酸塩、テルル酸水素塩、窒化物、リン化物、砒化物、砒酸塩、砒酸水素塩、砒酸二水素塩、アンチモン化物、アンチモン酸塩、アンチモン酸水素塩、アンチモン酸二水素塩、フッ化物、硼化物、硼酸塩、硼酸水素塩、過塩素酸塩、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、過臭素酸塩、亜臭素酸塩、次亜臭素酸塩、過ヨウ素酸塩、亜ヨウ素酸塩、次亜ヨウ素酸塩、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0067】
本開示の金属有機構造体は、場合により、空間充填剤、吸着化学種、ゲスト種およびそれらの組み合わせをさらに含む。本開示の一部の変形形態では、空間充填剤、吸着化学種およびゲスト種は、金属有機構造体の表面積を増大する。適切な空間充填剤は、例えば、以下からなる群から選択される成分を含む:
(i) 1〜20個の炭素原子を有する直鎖状、分枝状または環状の脂肪族基を含有するアルキルアミンおよびその対応アルキルアンモニウム塩;
(ii) 1〜5個のフェニル環を有するアリールアミンおよびその対応アリールアンモニウム塩;
(iii) 1〜20個の炭素原子を有する直鎖状、分枝状または環状の脂肪族基を含有するアルキルホスホニウム塩;
(iv) 1〜5個のフェニル環を有するアリールホスホニウム塩;
(v) 1〜20個の炭素原子を有する直鎖状、分枝状または環状の脂肪族基を含有するアルキル有機酸およびその対応塩;
(vi) 1〜5個のフェニル環を有するアリール有機酸およびその対応塩;
(vii) 1〜20個の炭素原子を有する直鎖状、分枝状または環状の脂肪族基を含有する脂肪族アルコール;
(viii) 1〜5個のフェニル環を有するアリールアルコール;
(a) 硫酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、二リン酸塩、三リン酸塩、亜リン酸塩、塩化物、塩素酸塩、臭化物、臭素酸塩、ヨウ化物、ヨウ素酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、O2-、二リン酸塩、硫化物、硫化水素塩、セレン化物、セレン酸塩、セレン酸水素塩、テルル化物、テルル酸塩、テルル酸水素塩、窒化物、リン化物、砒化物、砒酸塩、砒酸水素塩、砒酸二水素塩、アンチモン化物、アンチモン酸塩、アンチモン酸水素塩、アンチモン酸二水素塩、フッ化物、硼化物、硼酸塩、硼酸水素塩、過塩素酸塩、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、過臭素酸塩、亜臭素酸塩、次亜臭素酸塩、過ヨウ素酸塩、亜ヨウ素酸塩、次亜ヨウ素酸塩からなる群から選択される無機陰イオン、および前記無機陰イオンの対応酸および塩;
(b) アンモニア、二酸化炭素、メタン、酸素、アルゴン、窒素、エチレン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、ナフタレン、チオフェン、ピリジン、アセトン、1,2-ジクロロエタン、塩化メチル、テトラヒドロフラン、エタノールアミン、トリエチルアミン、トリフルオロメチルスルホン酸、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、クロロホルム、ブロモホルム、ジブロモメタン、ヨードホルム、ジヨードメタン、ハロゲン化有機溶媒、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、1-メチル-2-ピロリジノン、アミド溶媒、メチルピリジン、ジメチルピリジン、ジエチルエーテル、およびこれらの混合物。吸着化学種の例としては、アンモニア、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、アミン、メタン、酸素、アルゴン、窒素、アルゴン、有機色素、多環式有機分子、香味剤、小分子治療剤および診断薬、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。ゲスト種の例は、約100g/mol未満の分子量を有する有機分子、約300g/mol未満の分子量を有する有機分子、約600g/mol未満の分子量を有する有機分子、約600g/molより大きな分子量を有する有機分子である。一部の変形形態では、吸着化学種、ゲスト種および空間充填剤は、事前選択された化学種、ゲスト種または空間充填剤と金属有機構造体とを接触させることにより、金属有機構造体内に導入される。本開示の別の変形形態では、金属有機構造体は、当該金属有機構造体の表面積を増大する相互貫入金属有機構造体を含む。
【0068】
本開示のさらなる別の実施形態において、上記材料の形成方法を提供する。本金属有機構造体は、溶媒ならびにLi+、Na+、Rb+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Sc3+、Ti4+、Zr4+、Ta3+、Cr3+、Mo3+、W3+、Mn3+、Fe3+、Fe2+、Ru3+、Ru2+、Os3+、Os2+、Co3+、Co2+、Ni2+、Ni+、Pd2+、Pd+、Pt2+、Pt+、Cu2+、Cu+、Au+、Zn2+、Al3+、Ga3+、In3+、Si4+、Si2+、Ge4+、Ge2+、Sn4+、Sn2+、Bi5+、Bi3+およびそれらの組み合わせからなる群から選択される金属イオンを含む溶液を多座結合配位子と混合し、前駆体bMOFを形成させることにより形成する。多座結合配位子は、2つ以上のカルボン酸塩、またはクエン酸、リンゴ酸、酒石酸、レチノイン酸、パントテン酸、葉酸、ニコチン酸、シュウ酸、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、α-リノール酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸、およびドコサヘキサエン酸からなる群から選択される親化合物のアニオンを含んでいてもよい。
【0069】
本開示のbMOFは、スキームIまたはIIのいずれかを使用することにより形成することができる。
【化18】
【0070】
式中、Mは非毒性金属カチオンである。この実施形態では、結合成分はテレフタル酸またはその誘導体として示す。スキームIの方法を使用すると、式Xで表す構造体を生成することができる。
【化19】
【0071】
式中、Mは非毒性金属カチオンである。この実施形態では、結合成分はトリメシン酸またはその誘導体として示す(nは1、2または3である)。
【0072】
本開示で用いられる金属有機構造体は、場合により、非結合配位子をさらに含む。変形形態において、非結合配位子は、O2-、硫酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、二リン酸塩、三リン酸塩、亜リン酸塩、塩化物、塩素酸塩、臭化物、臭素酸塩、ヨウ化物、ヨウ素酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、硫化物、硫化水素塩、セレン化物、セレン酸塩、セレン酸水素塩、テルル化物、テルル酸塩、テルル酸水素塩、窒化物、リン化物、砒化物、砒酸塩、砒酸水素塩、砒酸二水素塩、アンチモン化物、アンチモン酸塩、アンチモン酸水素塩、アンチモン酸二水素塩、フッ化物、硼化物、硼酸塩、硼酸水素塩、過塩素酸塩、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、過臭素酸塩、亜臭素酸塩、次亜臭素酸塩、過ヨウ素酸塩、亜ヨウ素酸塩、次亜ヨウ素酸塩、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0073】
本開示の一変形形態では、1種または複数の配位子は、前駆体MOFを加熱することにより除去される。一般的に、この変形形態では、前駆体MOFは約30℃〜約300℃の温度に加熱される。別の変形形態では、1種または複数の配位子は、前駆体MOFを真空に暴露することにより除去される。一般的に、この真空は、圧力が10-3 torr未満であることを特徴とする。他の変形形態では、約10-5 torr〜約700 torrである。本開示のさらなる別の変形形態において、1種または複数の配位子は、MOF前駆体を加熱すると同時に、MOF前駆体を真空に曝露することにより除去される。さらなる別の変形形態では、本開示の方法において用いられる溶液は、空間充填剤を含んでいてもよい。好適な空間充填剤の具体例は、上記で挙げている。これらのそれぞれの変形形態の改善例において、MOF前駆体の1種または複数の配位子は、後で引き続き行われる加熱および/または真空曝露により更に容易に除去される別の1種または複数の配位子と交換することができる。
【0074】
別の態様では、上述の構造体は、構造体の表面積を増大させる相互貫入構造体を包含していてもよい。本開示の構造体はそのような相互貫入を含まないのが有利であるが、相互貫入構造体の包含物を用いて表面積を増大させてもよい状況もある。
【0075】
本開示の構造体は、in vitroまたはin vivoにおける吸着デバイスとして使用することができる。吸着(sorption)とは、原子または分子と標的物質との会合をもたらすプロセスを意味する包括的用語である。吸着には、吸着(adsorption)および吸収の両方が含まれる。吸収は、例えばスポンジによる水の吸収といった、塊状の多孔質材料中へ原子または分子が移動するプロセスを意味する。吸着は、固体表面または液体表面上にバルク相(すなわち固体、液体または気体)から原子または分子が移動するプロセスを意味する。吸着という用語は、液体および気体に接する固体表面の意味で用いることができる。固体表面上に吸着された分子は一般に吸着質と呼ばれ、これらが吸着される表面は基質または吸着体と呼ばれる。吸着は、通常、等温線(すなわち吸着体上の吸着質の量とその圧力(気体の場合)または濃度(液体の場合)とを関係させる関数)を介して記載される。一般に、脱着は吸着の逆の意味であり、表面上に吸着されている分子がバルク相へ逆転移されるプロセスである。
【0076】
以下の実施例は限定されるものではなく、本発明の各種実施形態を説明するものである。当業者には、本発明の趣旨および特許請求の範囲内に数多くの変形形態が存在することは理解されよう。
【実施例】
【0077】
本開示の一次元(1D)、二次元(2D)および三次元(3D)の環境にやさしい金属有機構造体(efMOFまたはbMOF)を合成し、PXRD、単結晶X線解析およびTGAによって特性決定した。例えば、以下の合成経路を用いて本開示の組成物の特定の種を生成することができる:
(a) 1D-efMOFの合成:
【化20】
【0078】
(b) 2D-efMOFの合成:
【化21】
【0079】
(c) 3D-efMOFの合成:
【化22】
【0080】
図1は、Mg3(クエン酸)2(H2O)6・8H2OおよびCa(MaI)・2H2Oの特徴を示す。
【0081】
図2は、Ca3(クエン酸)2(H2O)2・8H2OおよびCa(Tar)(H2O)2・2H2Oの特徴を示す。
【0082】
MgBDC-1
テレフタル酸(H2BDC、240mg)および硝酸マグネシウム六水和物 Mg(NO3)2・6H2O (128mg)の固体混合物を、20mLバイアル中のN,N-ジエチルホルムアミド(13mL)および2.0Mの水性HNO3溶液(40μL)に溶解させた。60μLのジイソプロピルアミンおよび2mLのDEFを4mLバイアル中で混合した。この4mLバイアルを20mLバイアルに入れ、拡散させた。この20mLバイアルに蓋をし、85℃の恒温加熱器中に72時間置いた。図3にMgBDC-1の構造体を示す。
【0083】
MgDHBDC-1
2,5-ジヒドロキシテレフタル酸(H2DHBDC、40mg)および硝酸マグネシウム六水和物 Mg(NO3)2・6H2O (150mg)の固体混合物を、20mLバイアル中のN,N-ジエチルホルムアミド(8mL)、蒸留水(1mL)および2.0Mの水性HNO3溶液(20μL)の混合物に溶解させた。20μLのジイソプロピルアミンおよび2mLのN,N-ジエチルホルムアミドを4mLバイアル中で混合した。この4mLバイアルを20mLバイアルに入れ、拡散させた。この20mLバイアルに蓋をし、65℃の恒温加熱器中に60日間置いた。図4は、MgDHBD-1の構造体を示す。
【0084】
MgOBA-1
4,4'-オキシビス(安息香酸)(H2OBA、50.0mg)および硝酸マグネシウム六水和物 Mg(NO3)2・6H2O (10.0mg)の固体混合物を、20mLバイアル中のN,N-ジメチルホルムアミド(5mL)中に溶解させた。20μLのジイソプロピルアミンおよび2mLのN,N-ジメチルホルムアミドを4mLバイアル中で混合した。この4mLバイアルを20mLバイアルに入れ、拡散させた。この20mLバイアルに蓋をし、65℃の恒温加熱器中に10日間置いた。図5は、MgOBA-1の構造体を示す。
【0085】
MgBTC-1
トリメシン酸(H3BTC、50.0mg)および硝酸マグネシウム六水和物 Mg(NO3)2・6H2O (150.0 mg)の固体混合物を、20mLバイアル中のN,N-ジエチルホルムアミド(5mL)、エタノール(3mL)および2-エチル-1-ヘキサノール(2mL)中に溶解させた。このバイアルに蓋をし、85℃の恒温加熱器中に3日間置いた。図6は、MgBTC-1の構造体を示す。
【0086】
MgBTB-1
1,3,5-トリ(4'-カルボキシ-4,4'-ビフェニル)ベンゼン(H3BTB、43.5mg)および酢酸マグネシウム四水和物 Mg(OAc)2・4H2O (5.0mg)の固体混合物を、4-mLバイアル中のN,N-ジメチルアセトアミド(3mL)およびジメチルアミン(20μL)の混合物中に溶解させた。このバイアルに蓋をし、120℃の恒温加熱器中に3日間置いた。図7は、MgBTB-1の構造体を示す。
【0087】
MgBTB-2
4,4',4''-ベンゼン-1,3,5-トリイル-トリ-安息香酸 (H3BTB、10.0mg)および硝酸マグネシウム六水和物 Mg(NO3)2・6H2O(6.0mg)の固体混合物を、4mLバイアル中のN,N-ジエチルホルムアミド(2.5mL)および蒸留水(0.50mL)の混合物中に溶解させた。このバイアルに蓋をし、100℃の恒温加熱器中に7日間置いた。図8は、MgBTB-2の構造体を示す。
【0088】
MgBTB-3
4,4',4''-ベンゼン-1,3,5-トリイル-トリ-安息香酸 (H3BTB、10.0mg)および酢酸マグネシウム四水和物 Mg(OAc)2・4H2O (5.0mg)の固体混合物を、20mLバイアル中のN-メチルピロリドン(2mL)および蒸留水(1mL)の混合物に溶解させた。20μLのトリエチルアミンおよび2mLのN-メチルピロリドンを4mLバイアル中で混合した。この4mLバイアルを20mLバイアルに入れ、拡散させた。この20mLバイアルに蓋をし、65℃の恒温加熱器中に7日間置いた。図9は、MgBTB-3の構造体を示す。
【0089】
MgBTB-4
4,4',4''-ベンゼン-1,3,5-トリイル-トリ-安息香酸 (H3BTB、30.0mg)および酢酸マグネシウム四水和物 Mg(OAc)2・4H2O (40.0mg)の固体混合物を、20mLバイアル中のN,N-ジエチルホルムアミド(10mL)および2.0Mの水性HNO3溶液(120μL)の混合物に溶解させた。10μLのN,N-ジイソプロピルアミンおよび2mLのN,N-ジエチルホルムアミドを4mLバイアル中で混合させた。この4mLバイアルを20mLバイアルに入れ、拡散させた。この20mLバイアルに蓋をし、65℃の恒温加熱器中に7日間置いた。図10は、MgBTB-5の構造体を示す。
【0090】
MgBBC-1
4,4',4''-ベンゼン-1,3,5-トリイル-トリ-ビフェニルカルボン酸 (H3BBC、30.0mg)および硝酸マグネシウム六水和物 Mg(NO3)2・6H2O(4.0mg)の固体混合物を、4mLバイアル中のN,N-ジエチルホルムアミド(1.5mL)、蒸留水(0.30mL)および2Mの水性HNO3溶液(20μL)の混合物に溶解させた。このバイアルに蓋をし、100℃の恒温加熱器中に5日間置いた。図11は、MgBBC-1の構造体を示す。
【表1】
【0091】
多数の実施形態および特徴を上記に記載したが、本開示の内容または添付の特許請求の範囲によって定義した本発明の範囲から逸脱することなく、これらの記載した実施形態および特徴の変更および変形形態が得られることは、当業者には理解されよう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれの金属核が少なくとも1つの他の核に結合されている、複数の生体適合性金属核と、
隣接する核を連結する複数の生体適合性結合配位子と、
複数の細孔(ここで、複数の結合核は前記細孔を規定する)と
を含む、生体適合性金属有機構造体(bMOF)。
【請求項2】
複数の核が異種成分からなる、請求項1に記載のbMOF。
【請求項3】
複数の結合配位子が異種成分からなる、請求項1または2に記載のbMOF。
【請求項4】
それぞれの金属核が1種または複数の金属イオンを含む、複数の金属核と、
隣接する金属クラスターを連結する複数の非毒性荷電多座結合配位子と
を含む、環境にやさしい金属有機構造体(bMOF)。
【請求項5】
複数の多座結合配位子のそれぞれの配位子が2つ以上のカルボン酸塩を含む、請求項4に記載の環境にやさしい金属有機構造体。
【請求項6】
金属イオンがLi+、Na+、Rb+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Sc3+、Ti4+、Zr4+、Ta3+、Cr3+、Mo3+、W3+、Mn3+、Fe3+、Fe2+、Ru3+、Ru2+、Os3+、Os2+、Co3+、Co2+、Ni2+、Ni+、Pd2+、Pd+、Pt2+、Pt+、Cu2+、Cu+、Au+、Zn2+、Al3+、Ga3+、In3+、Si4+、Si2+、Ge4+、Ge2+、Sn4+、Sn2+、Bi5+、Bi3+、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項4に記載の環境にやさしい金属有機構造体。
【請求項7】
多座結合配位子が芳香族環または非芳香族環に組み込まれている12個以上の原子を有する、請求項4に記載の環境にやさしい金属有機構造体。
【請求項8】
1種または複数の多座結合配位子がクエン酸、リンゴ酸、酒石酸、レチノイン酸、パントテン酸、葉酸、ニコチン酸、シュウ酸、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、α-リノール酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸、およびドコサヘキサエン酸からなる群から選択される親化合物のアニオンを含む、請求項4に記載の環境にやさしい金属有機構造体。
【請求項9】
ゲスト種をさらに含む、請求項1または4に記載のbMOF。
【請求項10】
ゲスト種がbMOFの表面積を増大させる、請求項9に記載のbMOF。
【請求項11】
ゲスト種が生物学的薬剤である、請求項9に記載のbMOF。
【請求項12】
生物学的薬剤がタンパク質、脂質、核酸または小分子剤である、請求項11に記載のbMOF。
【請求項13】
生物学的薬剤が治療薬である、請求項11または12に記載のbMOF。
【請求項14】
生物学的薬剤が診断用薬である、請求項11または12に記載のbMOF。
【請求項15】
金属有機構造体の表面積を増大させる相互貫入bMOFをさらに含む、請求項1または4に記載のbMOF。
【請求項16】
吸着化学種をさらに含む、請求項1または4に記載のbMOF。
【請求項17】
吸着化学種がアンモニア、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、アミン、メタン、酸素、アルゴン、窒素、アルゴン、有機色素、多環式有機分子、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項16に記載のbMOF。
【請求項18】
請求項1または4に記載のbMOFを含む栄養補助食品。
【請求項19】
請求項1または4に記載のbMOFを含む薬剤送達剤。
【請求項20】
請求項1または4に記載のbMOFを含む気体貯蔵デバイス。
【請求項21】
それぞれの金属クラスターが1種または複数の金属イオンを含む複数の金属クラスターを、隣接する金属クラスターを連結する1種または複数の非毒性荷電多座結合配位子と反応させることを含む、環境にやさしい金属有機構造体の製造方法。
【請求項22】
それぞれの金属核が少なくとも1つの他の核に結合されている、複数の生体適合性金属核と、
少なくとも2つのカルボン酸塩を含む、隣接する核を連結する複数の生体適合性結合配位子と、
複数の細孔(ここで、複数の結合核は細孔を規定し、生体分子が化学的に多孔性構造体の細孔表面に結合されている)と
を含む、多孔性構造体材料。
【請求項23】
結合配位子がクエン酸、リンゴ酸および酒石酸からなる群から選択される、請求項22に記載の多孔性構造体材料。
【請求項24】
結合配位子がメタン酸、エタン酸、プロパン酸、ブタン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、安息香酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘミメリト酸、トリメリト酸、トリメシン酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシ酪酸、マンデル酸、グリセリン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸およびアスコルビン酸からなる群から選択されるメンバーを含む、請求項22に記載の多孔性構造体材料。
【請求項25】
結合配位子がギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、ケト酸、ピルビン酸、アセト酢酸、安息香酸およびサリチル酸からなる群から選択されるメンバーを含む、請求項22に記載の多孔性構造体材料。
【請求項26】
結合配位子がアルダル酸、シュウ酸、マロン酸、リンゴ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、トリカルボン酸、イソクエン酸、アコニット酸、およびプロパン-1,2,3-トリカルボン酸(トリカルバリル酸、カルバリル酸)からなる群から選択される、請求項22に記載の多孔性構造体材料。
【請求項27】
構造体が次の一般式:
【化1】
(式中、Mは非毒性金属であり、Rは、-H、-OH、-OR1、アリール、置換アリール、アルキル、置換アルキル、カルボキシル、アミノカルボニル、アルキルスルホニルアミノカルボキシル、アルコキシカルボニルおよびハロからなる群から選択され、ここで、R1は、-H、ならびにアリール、置換アリール、アルキル、置換アルキル、カルボキシル、アミノカルボニル、アルキルスルホニルアミノカルボキシル、アルコキシカルボニルおよびハロであってもよい)
を有する反復単位を含む、請求項22に記載の多孔性構造体材料。
【請求項28】
構造体が次の一般式:
【化2】
(式中、Mは非毒性金属であり、nは0、1、または2である)
を有する反復単位を含む、請求項22に記載の多孔性構造体材料。
【請求項29】
構造体が次の一般式:
【化3】
(式中、Mは非毒性金属である)
を有する反復単位を含む、請求項22に記載の多孔性構造体材料。
【請求項30】
構造体が次の一般式:
【化4】
(式中、Mは非毒性金属である)
を有する反復単位を含む、請求項22に記載の多孔性構造体材料。
【請求項31】
構造体が次の一般式:
【化5】
(式中、Mは非毒性金属である)
を有する反復単位を含む、請求項22に記載の多孔性構造体材料。
【請求項32】
構造体が次の一般式:
【化6】
(式中、Mは非毒性金属である)
を有する反復単位を含む、請求項22に記載の多孔性構造体材料。
【請求項33】
構造体が次の一般式:
【化7】
(式中、Mは非毒性金属である)
を有する反復単位を含む、請求項22に記載の多孔性構造体材料。
【請求項34】
構造体が次の一般式:
【化8】
(式中、Mは非毒性金属である)
を有する反復単位を含む、請求項22に記載の多孔性構造体材料。
【請求項35】
構造体が金属酸化物を含む、請求項22に記載の多孔性構造体材料。
【請求項36】
生体適合性結合配位子が1〜20個の炭素原子からなるアルキルまたはシクロアルキル基、1〜5個のフェニル環からなるアリール基、あるいは、1〜20個の炭素原子を有するアルキルもしくはシクロアルキル基または1〜5個のフェニル環からなるアリール基からなるアルキルまたはアリールアミンを含み、ここで、多座官能基が配位子に共有結合している、請求項22に記載の多孔性構造体材料。
【請求項37】
多座官能基がCO2H、CS2H、NO2、SO3H、Si(OH)3、Ge(OH)3、Sn(OH)3、Si(SH)4、Ge(SH)4、Sn(SH)4、PO3H、AsO3H、AsO4H、P(SH)3、As(SH)3、CH(RSH)2、C(RSH)3、CH(RNH2)2、C(RNH2)3、CH(ROH)2、C(ROH)3、CH(RCN)2、C(RCN)3(ここで、Rは、1〜5個の炭素原子を有するアルキル基であるか、1〜2個のフェニル環からなるアリール基である)、ならびにCH(SH)2、C(SH)3、CH(NH2)2、C(NH2)3、CH(OH)2、C(OH)3、CH(CN)2、およびC(CN)3からなる群から選択することができる、請求項36に記載の多孔性構造体材料。
【請求項38】
請求項22〜37のいずれか1項に記載の多孔性構造体材料を含む栄養補助食品。
【請求項39】
被験体に請求項22〜37のいずれか1項に記載の多孔性構造体を投与することを含む、被験体への薬剤の送達方法。
【請求項40】
薬剤がペプチド、ポリペプチド、タンパク質、核酸、脂肪酸または小分子である、請求項39に記載の方法。
【請求項1】
それぞれの金属核が少なくとも1つの他の核に結合されている、複数の生体適合性金属核と、
隣接する核を連結する複数の生体適合性結合配位子と、
複数の細孔(ここで、複数の結合核は前記細孔を規定する)と
を含む、生体適合性金属有機構造体(bMOF)。
【請求項2】
複数の核が異種成分からなる、請求項1に記載のbMOF。
【請求項3】
複数の結合配位子が異種成分からなる、請求項1または2に記載のbMOF。
【請求項4】
それぞれの金属核が1種または複数の金属イオンを含む、複数の金属核と、
隣接する金属クラスターを連結する複数の非毒性荷電多座結合配位子と
を含む、環境にやさしい金属有機構造体(bMOF)。
【請求項5】
複数の多座結合配位子のそれぞれの配位子が2つ以上のカルボン酸塩を含む、請求項4に記載の環境にやさしい金属有機構造体。
【請求項6】
金属イオンがLi+、Na+、Rb+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Sc3+、Ti4+、Zr4+、Ta3+、Cr3+、Mo3+、W3+、Mn3+、Fe3+、Fe2+、Ru3+、Ru2+、Os3+、Os2+、Co3+、Co2+、Ni2+、Ni+、Pd2+、Pd+、Pt2+、Pt+、Cu2+、Cu+、Au+、Zn2+、Al3+、Ga3+、In3+、Si4+、Si2+、Ge4+、Ge2+、Sn4+、Sn2+、Bi5+、Bi3+、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項4に記載の環境にやさしい金属有機構造体。
【請求項7】
多座結合配位子が芳香族環または非芳香族環に組み込まれている12個以上の原子を有する、請求項4に記載の環境にやさしい金属有機構造体。
【請求項8】
1種または複数の多座結合配位子がクエン酸、リンゴ酸、酒石酸、レチノイン酸、パントテン酸、葉酸、ニコチン酸、シュウ酸、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、α-リノール酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸、およびドコサヘキサエン酸からなる群から選択される親化合物のアニオンを含む、請求項4に記載の環境にやさしい金属有機構造体。
【請求項9】
ゲスト種をさらに含む、請求項1または4に記載のbMOF。
【請求項10】
ゲスト種がbMOFの表面積を増大させる、請求項9に記載のbMOF。
【請求項11】
ゲスト種が生物学的薬剤である、請求項9に記載のbMOF。
【請求項12】
生物学的薬剤がタンパク質、脂質、核酸または小分子剤である、請求項11に記載のbMOF。
【請求項13】
生物学的薬剤が治療薬である、請求項11または12に記載のbMOF。
【請求項14】
生物学的薬剤が診断用薬である、請求項11または12に記載のbMOF。
【請求項15】
金属有機構造体の表面積を増大させる相互貫入bMOFをさらに含む、請求項1または4に記載のbMOF。
【請求項16】
吸着化学種をさらに含む、請求項1または4に記載のbMOF。
【請求項17】
吸着化学種がアンモニア、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、アミン、メタン、酸素、アルゴン、窒素、アルゴン、有機色素、多環式有機分子、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項16に記載のbMOF。
【請求項18】
請求項1または4に記載のbMOFを含む栄養補助食品。
【請求項19】
請求項1または4に記載のbMOFを含む薬剤送達剤。
【請求項20】
請求項1または4に記載のbMOFを含む気体貯蔵デバイス。
【請求項21】
それぞれの金属クラスターが1種または複数の金属イオンを含む複数の金属クラスターを、隣接する金属クラスターを連結する1種または複数の非毒性荷電多座結合配位子と反応させることを含む、環境にやさしい金属有機構造体の製造方法。
【請求項22】
それぞれの金属核が少なくとも1つの他の核に結合されている、複数の生体適合性金属核と、
少なくとも2つのカルボン酸塩を含む、隣接する核を連結する複数の生体適合性結合配位子と、
複数の細孔(ここで、複数の結合核は細孔を規定し、生体分子が化学的に多孔性構造体の細孔表面に結合されている)と
を含む、多孔性構造体材料。
【請求項23】
結合配位子がクエン酸、リンゴ酸および酒石酸からなる群から選択される、請求項22に記載の多孔性構造体材料。
【請求項24】
結合配位子がメタン酸、エタン酸、プロパン酸、ブタン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、安息香酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘミメリト酸、トリメリト酸、トリメシン酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシ酪酸、マンデル酸、グリセリン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸およびアスコルビン酸からなる群から選択されるメンバーを含む、請求項22に記載の多孔性構造体材料。
【請求項25】
結合配位子がギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、ケト酸、ピルビン酸、アセト酢酸、安息香酸およびサリチル酸からなる群から選択されるメンバーを含む、請求項22に記載の多孔性構造体材料。
【請求項26】
結合配位子がアルダル酸、シュウ酸、マロン酸、リンゴ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、トリカルボン酸、イソクエン酸、アコニット酸、およびプロパン-1,2,3-トリカルボン酸(トリカルバリル酸、カルバリル酸)からなる群から選択される、請求項22に記載の多孔性構造体材料。
【請求項27】
構造体が次の一般式:
【化1】
(式中、Mは非毒性金属であり、Rは、-H、-OH、-OR1、アリール、置換アリール、アルキル、置換アルキル、カルボキシル、アミノカルボニル、アルキルスルホニルアミノカルボキシル、アルコキシカルボニルおよびハロからなる群から選択され、ここで、R1は、-H、ならびにアリール、置換アリール、アルキル、置換アルキル、カルボキシル、アミノカルボニル、アルキルスルホニルアミノカルボキシル、アルコキシカルボニルおよびハロであってもよい)
を有する反復単位を含む、請求項22に記載の多孔性構造体材料。
【請求項28】
構造体が次の一般式:
【化2】
(式中、Mは非毒性金属であり、nは0、1、または2である)
を有する反復単位を含む、請求項22に記載の多孔性構造体材料。
【請求項29】
構造体が次の一般式:
【化3】
(式中、Mは非毒性金属である)
を有する反復単位を含む、請求項22に記載の多孔性構造体材料。
【請求項30】
構造体が次の一般式:
【化4】
(式中、Mは非毒性金属である)
を有する反復単位を含む、請求項22に記載の多孔性構造体材料。
【請求項31】
構造体が次の一般式:
【化5】
(式中、Mは非毒性金属である)
を有する反復単位を含む、請求項22に記載の多孔性構造体材料。
【請求項32】
構造体が次の一般式:
【化6】
(式中、Mは非毒性金属である)
を有する反復単位を含む、請求項22に記載の多孔性構造体材料。
【請求項33】
構造体が次の一般式:
【化7】
(式中、Mは非毒性金属である)
を有する反復単位を含む、請求項22に記載の多孔性構造体材料。
【請求項34】
構造体が次の一般式:
【化8】
(式中、Mは非毒性金属である)
を有する反復単位を含む、請求項22に記載の多孔性構造体材料。
【請求項35】
構造体が金属酸化物を含む、請求項22に記載の多孔性構造体材料。
【請求項36】
生体適合性結合配位子が1〜20個の炭素原子からなるアルキルまたはシクロアルキル基、1〜5個のフェニル環からなるアリール基、あるいは、1〜20個の炭素原子を有するアルキルもしくはシクロアルキル基または1〜5個のフェニル環からなるアリール基からなるアルキルまたはアリールアミンを含み、ここで、多座官能基が配位子に共有結合している、請求項22に記載の多孔性構造体材料。
【請求項37】
多座官能基がCO2H、CS2H、NO2、SO3H、Si(OH)3、Ge(OH)3、Sn(OH)3、Si(SH)4、Ge(SH)4、Sn(SH)4、PO3H、AsO3H、AsO4H、P(SH)3、As(SH)3、CH(RSH)2、C(RSH)3、CH(RNH2)2、C(RNH2)3、CH(ROH)2、C(ROH)3、CH(RCN)2、C(RCN)3(ここで、Rは、1〜5個の炭素原子を有するアルキル基であるか、1〜2個のフェニル環からなるアリール基である)、ならびにCH(SH)2、C(SH)3、CH(NH2)2、C(NH2)3、CH(OH)2、C(OH)3、CH(CN)2、およびC(CN)3からなる群から選択することができる、請求項36に記載の多孔性構造体材料。
【請求項38】
請求項22〜37のいずれか1項に記載の多孔性構造体材料を含む栄養補助食品。
【請求項39】
被験体に請求項22〜37のいずれか1項に記載の多孔性構造体を投与することを含む、被験体への薬剤の送達方法。
【請求項40】
薬剤がペプチド、ポリペプチド、タンパク質、核酸、脂肪酸または小分子である、請求項39に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【公表番号】特表2011−517309(P2011−517309A)
【公表日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527153(P2010−527153)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/077741
【国際公開番号】WO2009/042802
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(500445295)ザ レジェンツ オブ ザ ユニヴァースティ オブ カリフォルニア (28)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/077741
【国際公開番号】WO2009/042802
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(500445295)ザ レジェンツ オブ ザ ユニヴァースティ オブ カリフォルニア (28)
【Fターム(参考)】
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