説明

食用塩含有マイクロカプセル

本発明は、蛋白質−多糖類シェルマトリクスと食用塩含有活性材料を具えるマイクロカプセルを介して食品に食用塩を供給する組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
カルシウムを含む強化食品は、食品の生産者および開発者にとって進行中の挑戦である。大部分のカルシウム塩は水媒体に反応性が高く、特に熱処理中には往々にして望まない機能を呈し、沈殿、凝固、沈降、および砂のような食感といった感覚的な結果を生じる。難溶性または不溶性のカルシウム塩は、選択食品の調製にうまく組み入れられているが、これをサブミクロンの粒子サイズに粒状化する必要があるため広い用途では制限されていた。口当たりのよいインパクトにも拘わらず、微粉化により粒子の表面積が増大し、相互作用がより可能となる。さらに、粒子サイズを小さくする処理は、往々にして非常に労力がかかるとともにコスト高となる。
【0002】
食品の活性成分の活用および他の生物学的システムを拡げるアプローチはマイクロカプセル化であり、これによりミネラル、風味、匂い、または他の生物学的または無機的な活性物が保護マトリクスに捕らわれ、微環境からこれらが遮蔽され、これにより可動性と相互作用が制限されるが、より重要なのはその放出が制御される。
【0003】
マイクロカプセルのデザインおよび処理技術の優位な進歩がこの20年で報告されている。流動床粒状コーティング、スプレードライ、フリーズドライ、押し出し成形、同時押し出し成形、エマルジョン、コアセルべーション、およびこれらの組み合わせが、多様な活性成分のマイクロカプセル化に有効利用されてきた。これらの進歩にも拘わらず、ミネラル、特にカルシウムのカプセル化は、多くの技術滴理由、特に強化食品に必要な単体のカルシウムの高濃度により、課題が残っていた。例えば、現在の米国RDA(recommended daily allowance:一日所要量)では、カルシウムは大人で1200mgであり、対して亜鉛は11mg、鉄分は27mgである。
【0004】
米国特許6468568B1は、ホットメルト押し出し加工を用いて、ガラス状の砂糖気質に埋め込み、その後に所望の粒状サイズにグラインドすることにより、カルシウムや他のミネラルをカプセル化する押し出し加工システムを記載する。その後スループットおよび経済的利益に拘わらず、このプロセスを用いて製造されたマイクロカプセルの利用は表面散布または他の低湿度の用途に非常に限られていた。WO03/095085A1の特許は、エチレンジアミン酢酸塩(EDTA)および食品グレードのタンパク質により安定する食品添加アプリケーション用のカルシウムナノカプセルをクレームする。EDTAの存在は、規制とともにキレート剤の他のミネラルの生物学的利用能との潜在的干渉により、多くの食品システムでこのようなマイクロカプセルの利用がかなり制限される。WO2007/062723A1は、安定したナノサイズのカルシウムカプセルの調製において、安定化と生物学的利用能の向上を記載する。このような粒子を製造する技術的利点はあるが、この発明は2つの大きな制限がある。第1に、強化食品において達成されるカルシウムが低レベルであり、第2に、ナノ粒子の使用および/または食品添加物への組み込みの開示における食品製造業の最近の規制である。
【0005】
カルシウムとゼラチンを含む組成物が広範に用いられており、非常に少量のカルシウムがシェル材料を強化するのに混合されるが、強化食品の用途には適切ではない。米国特許出願公開2004/0091544A1には、セルロースまたはリン酸カルシウムの粒子をコートしてさらにゼラチンカプセルに包むかタブレット状に圧縮したインシュリンなどの医薬経口調剤が記載されている。
【0006】
日本国特許出願公開61−115019Aは、ゼラチン膜内のリン酸カルシウムを具える医薬調剤をクレームする。カプセルを経口投与すると、消化器系で迅速に溶けて薬剤がすぐに放出される。カプセル膜はゼラチン、グリセリン、カルシウムアパタイト、および水を混合して生成される。
【0007】
さらに、この技術状態のマイクロカプセルは、シェル材料の分解およびこれに続くマイクロカプセルからの鉱物塩の放出により、水媒体内での安定性に欠ける。この安定性欠如は、含水率の高いまたは平均的な強化食品の重大な欠陥である。
【0008】
このように、強化食品用の安定した供給システムであって、消費者の日々の要求に合致するカルシウムの高濃度を有し、最終製品の機能的または感覚的な面で有害作用がないものが求められていた。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、1以上の鉱物塩を包含する安定マイクロカプセルに関し、前記ミネラル塩はマイクロカプセル内に完全に隔離されている。本発明の文脈において、安定マイクロカプセルとは、当該マイクロカプセルが疎水性および/または親水性の媒体の双方でその形状とサイズを維持することを意味する。
【0010】
本発明の安定マイクロカプセルは、蛋白質−多糖類シェルマトリクスとコアとを具え、当該コアが食用油内の1以上の鉱物塩の水分散エマルジョンまたは溶液を含み、前記鉱物塩は前記マイクロカプセルのコアに内包され、前記鉱物塩は前記蛋白質−多糖類マトリクスから隔離されている。この組み合わせは、水媒体および高含水率の強化食品内でマイクロカプセルに安定性を提供する。マイクロカプセルの構造は、これらの鉱物の高い濃縮度との組み込みを実現し、食品の機能および食感に否定的ないかなる副作用も低減する。
【0011】
本発明の実施例では、安定マイクロカプセルの蛋白質は、限定しないが、ゼラチン、カゼイン、カゼイン塩、ホエープロテイン、ソイプロテイン、エンドウ豆プロテイン、小麦プロテイン、トウモロコシプロテイン、大麦プロテイン、タマゴプロテイン、筋肉プロテイン、他の野菜や塊茎のプロテイン、コンドロイチンなどの糖タンパク質、グルコサミノグリカンまたはレクチン、およびこれらの組み合わせを含む群から選択される。本発明の好適な実施例では、蛋白質はゼラチンである。
【0012】
本発明の実施例では、安定マイクロカプセルの多糖類は、限定しないが、寒天、イヌリンなどのフラクトオリゴ糖、化工または天然デンプン、アミロースやアミロペクチンを含むデンプン類、高低メトキシペクチンなどのペクチン、ナトリウムやアルギン酸カリウムなどのアルギン酸塩、アラビアゴム・ゲル化ゴム・ウェランゴム・トラガカントゴム・キサンゴム、グアールゴムまたはイナゴマメゴムなどの天然および合成ゴム、カルボキシメチルセルロース・ヒドロキシプロピルセルロース・ヒドロキシメチルセルロース・ヒドロキシブチルカルボキシメチルセルロース・ヒドロキシプロピルエチルセルロース・またはメチルエチルセルロースなどのセルロース、プルラン、アルファ−・ガンマ−・イオタ−・カッパ−・またはラムダ−カラゲナンなどのカラゲナン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。好適な実施例では、多糖類は寒天である。
【0013】
本発明の実施例において、鉱物塩は、可溶性または不溶性の鉱物塩であってもよい。好適には、可溶性または不溶性の鉱物塩は、二価の鉱物塩である。不溶性の鉱物塩とは、25°Cの水中で可溶性成分が好適に10−5以下の塩をいう。本発明のマイクロカプセルに含められる二価の塩は、限定しないが、リン酸三カルシウム、リン酸水素カルシウム、カルシウム二水素リン酸塩、カルシウム・ピロ燐酸塩、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、珊瑚カルシウム、カルシウム・ハイドロキシアパタイト、硫酸カルシウム、クエン酸カルシウム、塩化カルシウム、カルシウム・リンゴ酸エステル、乳酸カルシウム、アスコビル酸カルシウム、酢酸カルシウム、カルシウム琥珀酸塩、カルシウムピルベート(calcium piruvate)、クエン酸カルシウム・リンゴ酸エステル、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウム・グルコン酸塩、グルビオン酸カルシウム、カルシウム・グルセリルホスファート、カルシウムグルコヘプトネート(calcium glucoheptonate)、カルシウムパンガメート(calcium pangamate)、硫酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、ピロ燐酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、クエン酸マグネシウム、クエン酸三マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、マグネシウム乳酸塩、アスパラギン酸マグネシウム、レブリン酸マグネシウム、マグネシウムピドレート(magnesium pidolate)、マグネシウムオロレート(magnesium ororate)、およびこれらの組み合わせを含む。本発明の好適な実施例では、二価の鉱物塩はリン酸三カルシウムである(TCP)。
【0014】
本発明のマイクロカプセル内の鉱物塩の量は、マイクロカプセルの合計重量の0.01−60%であり、好適には0.1−40%、最も好適には1−20%である。
【0015】
安定マイクロカプセルに含まれるエマルジョンの食用オイルは、食品用油で、大豆油、パームナッツ油、ヤシ油、菜種油、サフラワー油、アマニ油、マツヨイグサ油、胡麻油、ヒマワリ油、キャノーラ油、綿実油、ババスー油、オリーブオイルあるいは藻類油のような植物油、ラード、牛脂、船舶油のような動物性の脂肪、イワシ油、肝油、メンハーデン油、サケ油、ニシン油、サバ油あるいはアンチョビオイルのような魚油、またはこれらの組み合わせを含む群から選択され、これらは分留することができ、部分的に、水素化合および/またはエステル交換されてもよい。
【0016】
食用の減カロリーまたは低カロリーあるいは消化不能脂肪、スクロースポリエステルなどの人口脂肪あるいは合成脂肪、野菜の源から派生する自然発生トリグリセリド、脂肪酸の人口トリグリセリドまたは天然トリグリセリド、Promega(登録商標)、Omacor(登録商標)、またはLovaza(登録商標)といったポリ不飽和の脂肪酸(PUFA)のアルキルエステルまたはトリグリセリドの商業的混合物、中鎖トリグリセリドオイル(MCT油)、およびこれらの組み合わせを用いてもよい。本発明の好適な実施例では、食用油は中鎖トリグリセリドオイル(MCT油)である。MCT油は、好適に6−12の炭素原子の長さの脂肪酸鎖を有し、より好適には8−12の炭素原子を有する。本発明で用いられる中鎖トリグリセリドは、例えば、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド(Crodamol(登録商標)GTC/C)、グリセリルトリカプリレート/カプレート(Miglyol(登録商標)810および812)、Neobee(登録商標)M5、Bergabest MCTオイル、トウモロコシ油、落花生油、グリセリン単オレイン酸塩(Pecol(登録商標)FCC)あるいはLabrafac(登録商標)CC、およびこれらの組み合わせの商用混合物を含む。
【0017】
本発明の安定マイクロカプセルは、任意で、1以上の可塑剤を含んでもよい。可塑剤は、限定しないが、グリセリン、ソルビトール、マルチトール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グルコース、スクロース、ラノリン、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、ステアリン酸やパルミチン酸のような脂肪酸の金属塩、ステアリン酸カリウム、グリセリルレシチン、モノステアリン酸グリセリン、プロピレングリコール単ステアリン酸塩、アセチル化されたモノグリセリドあるいはグリセリルトリアセテートのようなアセチル化グリセリド、クエン酸トリエチル・クエン酸トリブチル・アセチルクエン酸トリブチルあるいはアセチルクエン酸トリエチルのようなクエン酸のアルキルエステル、フタル酸ジエチルのようなフタル酸、例えば天然または合成ワックス、蜜蝋といった動物性ワックス・ブラジルロウヤシなどの植物ワックス、キャンデリアまたはオーリクリーワックス、大豆油や綿実油のような水素と化合した植物油、ポリウレタンワックスのような石油ワックス、ポリエチレンワックス、固形パラフィンワックスやマイクロクリスタリンワックス、オゾケライトなどの鉱蝋、脂肪ワックス、モノステアリン酸ソルビタン、牛脂などのワックス類、およびこれらの混合物を含む。本発明の好適な実施例では、可塑剤はグリセリンである。可塑剤成分は、マイクロカプセルの合計重量の0.01−10%、好適には0.05−8%、最も好適には0.1−5%の範囲である。
【0018】
マイクロカプセルに付加的な浮力を提供し、与えられた液体の底に留まってしまうのを低減するために、本発明のマイクロカプセルは、任意で1以上のワックスを含んでもよい。このワックスは、マイクロカプセルの基質をなすか、および/またはマイクロカプセルの表面の外側コーティングとして適用することができる。ワックスは、天然または合成ワックス、蜜蝋などの動物性ワックス、ブラジルロウヤシなどの植物ワックス、キャンデリアまたはオーリクリーワックス、大豆油や綿実油のような水素と化合した植物油、ポリウレタンワックスのような石油ワックス、ポリエチレンワックス、固形パラフィンワックスやマイクロクリスタリンワックス、オゾケライトなどの鉱蝋、脂肪ワックス、モノステアリン酸ソルビタン、牛脂、およびこれらの混合物を含む群から選択される。
【0019】
本発明の実施例では、本発明の安定マイクロカプセルの直径は、0.1ミクロン−15mm、好適には1ミクロン−10mm、最も好適には10ミクロン−5mmである。
【0020】
本発明の安定マイクロカプセルは、食品および医薬品業界で知られる別の様々な技術で容易することができる。これにはスプレードライ、フリーズドライ、押し出し、同時押し出し、エマルジョン、コアセルべーション、およびこれらの組み合わせを含む。好適な実施例において、マイクロカプセルはコアセルべーションプロセスで準備される。
【0021】
本発明はまた、本発明の安定マイクロカプセルを形成するコアセルべーションプロセスを提供し、ここでマイクロカプセルはオイルバス内で形成され回収される。多糖類、蛋白質、および鉱物塩のオイルエマルジョンが重力制御滴下機構により冷却されたオイルバス内へ形成される。冷却されたオイルバスは、疎水性および/または親水性媒体の双方における他くの用途のためにマイクロカプセルに付加的な安定性を提供する。滴下の距離は、溶液の粘度および/または所望の滴下サイズに応じて調整することができる。
【0022】
本発明のコアセルべーションプロセスで用いるオイルバスのオイルは、食品グレードオイルの群から選択することができ、好適にはMCTである。オイルバスの温度は30℃以下、好ましくは15℃以下、最も好ましくは1−10℃である。
【0023】
好適な実施例において、本発明のプロセスのコアセルベートマイクロカプセルは、ゼラチンおよび寒天を含む水位相と、MCT油に分散されたスルホン酸三カルシウムを含むエマルジョンフェーズを混合することにより構成される。
【0024】
本発明はまた、本発明の安定マイクロカプセルを含む強化食品を提供する。本発明の強化食品は、ミネラルが豊富であるが、苦みや白亜質、ざらつきや砂のような食感といった感覚的な反作用を示すことがない。
【0025】
本発明の強化食品は、マイクロカプセルの重量の0.5−50%、好適には1−40%、最も好適には5−30%を含む。
【0026】
本発明の実施例において、マイクロカプセルに含まれる強化食品の鉱物塩は、カルシウムの鉱物塩である。
【0027】
本発明の実施例において、安定マイクロカプセルは、天然または人口ソースの1以上の食品グレードの防腐剤を含んでもよい。この防腐剤は、限定しないが、例えばソルビン酸、二酸化硫黄、ナトリウム亜硫酸水素塩、カリウム水素亜硫酸塩、プロピオン酸カルシウム、硝酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、乳酸および乳酸塩、グルコン酸塩、およびその混合を含む。
【0028】
本発明の実施例において、限定しないが、例えばブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ターシャルブチルヒドロキノン(tertiary butylhidroquinone)(TBHQ)、没食子酸プロピルのような没食子酸エステル、ビタミンE酢酸塩のようなトコフェロール、アスコルビン酸、アスコルビン酸パルミテートあるいはアスコルビン酢酸塩などのアスコルビン酸塩類およびエステル、およびこれらの混合物もまた含まれる。
【0029】
本発明の実施例において、本発明の安定マイクロカプセルはまた、限定しないが、着色剤、香味料、風味相乗剤、砂糖、甘味料、酸味料、苦味料、収斂剤、塩味料などの味覚調整剤、およびこれらの混合物を含んでもよい。
【0030】
本発明の強化食品は、人間および動物の消費に適しており、またベビーフード、医療職、スポーツ食、機能食、または栄養バーといった特別目的の食品とすることもできる。本発明の実施例では、強化食品は、限定しないが、ゼリー菓子、フルーツや野菜の加工食品、ミルク、幼児食、ヨーグルト、チーズ、バター、マーガリン、ミルクセーキ、またはアイスクリームなどの乳製品、豆乳、大豆ヨーグルト、または大豆チーズなどの大豆製品、アーモンドやライスミルクなどの野菜ミルク、飲料、シロップ、プリンなどのデザート、カスタードや他のペースト状またはクリーム状食品、チューインガム、チョコレート、チューイキャンディー、ハードキャンディー、ボイルキャンディー、キャラメル、ファッジ、ゼリー、グミ、ゼラチンキャンディーなどの糖菓、またはハード・ソフトのパン製品を含む。マイクロカプセルは、強化食品に直接添加されてもよいし、個別の袋で提供されてもよい。本発明のマイクロカプセルは、インスタントのデザートのゼリー状食品や子供用食品に直接添加されてもよい。
【0031】
本発明の実施例において、強化食品は、当該強化食品の単位部分で大人の必要なミネラルのRDA(一日所要量)を100%含む。本発明のマイクロカプセルに組み込まれる鉱物塩の高濃度により、強化食品が大人用のRDA摂取量に十分な量を含有する。本発明の好適な実施例では、ミネラルはカルシウムである。
【0032】
本発明はまた、大人に必要なミネラルのRDAを100%供給する方法を提供し、これは本発明のマイクロカプセルを含む強化食品を投与するステップを含む。好適には、このミネラルはカルシウムである。
【0033】
本発明はまた、骨脱塩、骨粗鬆症あるいは余分なカルシウム必要量の治療および/または予防する方法を提供し、これは本発明のカルシウムのマイクロカプセルを含む強化食品の必要量を投与するステップを含む。例えば、妊娠中、授乳期、または閉経後の女性にはRDAを越える余分なカルシウム摂取が推奨されている。
【0034】
したがって、本発明は、骨脱塩、骨粗鬆症または更なるカルシウム需要の治療または予防のための強化食品の製品におけるマイクロカプセルの利用も提供する。
【0035】
本発明はさらに以下の非限定的な実施例により説明され、ここではすべての部分、パーセンテージ、大きさ、および比率が重量であり、温度は他に示さない限り°Cである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、ライカMZFLIII共焦点顕微鏡で撮ったTCP含有マイクロカプセル断面の共焦点の25倍拡大顕微鏡写真を示し、カルシウムのコアが寒天−ゼラチンのコアセルべーションシェルで囲まれている。特にカルシウムが染色され(VonKossa法)、カルシウム成分が増大して増加強度を示している(0−15%TCP)。染色は、カルシウムが完全にマイクロカプセルのコア内に内包され、蛋白質−多糖類マトリクスから完全に隔離されていることを示す。
【実施例】
【0037】
B型魚油、ブルーム番号240(pH5.71)が、イタリアのLapiGelatin社から取得され、寒天はQuimivita社(スペイン)から供給された。微粒子サイズ(平均3ミクロン)のリン酸三カルシウム、TCPはBudenheim社(ドイツ)から供給され、C−8:C−12の比率60:40のMCT油(Bergabestブランド)がドイツのSternchemie Lipid Technology社から供給された。魚油、IncromegaTG3322(トリグリセリド、最低60%のオメガ−3PUFA)およびIncromegaE3322(エチルエステル、最低60%のオメガ−3PUFA)がイギリスのCRODA社から供給された。蜜蝋はオランダのSonneborn Refined Products B.V.社である。ドライゼリーパウダーは、スペイン・アリカンテのHacendado社から供給された。これらの実験のすべての水は、蒸留され脱イオン化されている。
【実施例1】
【0038】
実施例1:カルシウムマイクロカプセルの調製

成分 %
中鎖トリグリセリドオイル 8.0%
リン酸三カルシウム(TCP) 5.0%
グリセリン 0%
寒天 1.0%
B型ゼラチン(魚由来) 11.0%
水 75.0%
i.TCPエマルジョンの調製:リン酸三カルシウム(10g)を水(26g)に混合し、MCT油(16g)とグリセリン(2g)にultra−turraxミキサに全部混合してエマルジョンを構成した。
ii.ゼラチン/寒天混合体の調製:ゼラチン(22g)を水(60g)に30分間水和させ、50℃に加熱した。寒天(2g)は、水(62g)に分散して55℃に加熱し、直ぐに熱したゼラチン溶液に添加して完全に混合した。
【0039】
TCPエマルジョンをゼラチン/寒天調製物に迅速に添加して、均一の厚い量を構成すべく継続的に混合した。後者を0.5mmの穴から冷たい(4℃)のMCT油バスに液適した。得られたマイクロカプセルは濾過またはデカンテーションにより回収された。
【実施例2】
【0040】
実施例2:可塑剤としてグリセリンを用いたカルシウムマイクロカプセルの調製

成分 %
中鎖トリグリセリドオイル 8.0%
リン酸三カルシウム(TCP) 5.0%
グリセリン 1%
寒天 1.0%
B型ゼラチン(魚由来) 11.0%
水 74.0%
【0041】
マイクロカプセルは、可塑剤グリセリンをゼラチン/寒天調製物に添加する以外は、実施例1と同じ方法で調製された。
【実施例3】
【0042】
実施例3:魚油マイクロカプセルの調製

成分 %
魚油(PUFA) 8.0%
リン酸三カルシウム(TCP) 5.0%
グリセリン 1%
寒天 1.0%
B型ゼラチン(魚由来) 11.0%
水 74.0%
【0043】
マイクロカプセルは、TCPエマルジョン中のMCT油を魚油に代えた以外は、実施例1と同じ方法で調製された。
【実施例4】
【0044】
実施例4:ワックス含有マイクロカプセルの調製

成分 %
溶融蜜蝋(50:50) 8.0%
リン酸三カルシウム(TCP) 5.0%
グリセリン 1%
寒天 1.0%
B型ゼラチン(魚由来) 11.0%
水 74.0%
【0045】
マイクロカプセルは、TCPエマルジョン中のMCT油の一部を蜜蝋に部分的に代えた以外は、実施例1と同じ方法で調製された。コアセルベート混合体は、オイルバスに液滴する前に65℃に維持された。
【実施例5】
【0046】
実施例5:ワックスコートされたマイクロカプセルの調製
実施例1で調製されたマイクロカプセルをさらに、蜜蝋の薄膜でコートした。100gのカルシウムカプセルが回転パンコースターに配置し、溶融蜜蝋の細かい噴霧を行ってカプセルに十分なコーティングを達成した。
【実施例6】
【0047】
実施例6:ゼリー状デザートへのカルシウムマイクロカプセルの混和
水(250ml)を煮沸し、レモン味のドライゼリーパウダー(15g)の商品をゆっくりと添加した。混合物をさらに(製造元の指示に従って)パウダーが完全に溶けるまで攪拌した。冷水(250ml)を加え、ゼラチン溶液の温度が約30℃に落ちるまで連続的に混合した。実施例1のカルシウム含有マイクロカプセル(15g)を加え、調製物を軽く混合して4℃まで冷蔵庫で少なくとも3時間冷やした。本発明のマイクロカプセルは、製品の貯蔵寿命(3ヶ月)にわたりゼリー調製物内で安定して見られた。
【実施例7】
【0048】
実施例7:底にフルーツが入ったヨーグルトへのカルシウムマイクロカプセルの混和
実施例1のマイクロカプセルを3gゆっくりと100gのフルーツに混ぜ、90℃で3分間低温殺菌した。低温殺菌後の調製物をヨーグルトにトッピングし、直ぐに4℃の冷蔵庫に配置した。調製物の安定性をチェックし、カルシウムマイクロカプセルが4℃で21日以上損なわれずに見られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定マイクロカプセルであって、蛋白質−多糖類シェルマトリクスとコアとを具え、当該コアが食用油内の1以上の鉱物塩の水分散エマルジョンまたは溶液を含み、前記鉱物塩は前記マイクロカプセルのコアに内包され、前記鉱物塩は前記蛋白質−多糖類マトリクスから隔離されていることを特徴とするマイクロカプセル。
【請求項2】
請求項1のマイクロカプセルにおいて、前記シェルマトリクスの蛋白質は、ゼラチン、カゼイン、カゼイン塩、ホエープロテイン、野菜や塊茎のプロテイン、ソイプロテイン、エンドウ豆プロテイン、小麦プロテイン、トウモロコシプロテイン、大麦プロテイン、タマゴプロテイン、筋肉プロテイン、糖タンパク質、コンドロイチン、グルコサミノグリカン、レクチン、およびこれらの組み合わせを含む群から選択されることを特徴とするマイクロカプセル。
【請求項3】
請求項1のマイクロカプセルにおいて、前記シェルマトリクスの多糖類は、寒天、フラクトオリゴ糖、イヌリン、化工デンプン、天然デンプン、デンプン類、アミロース、アミロペクチン、ペクチン、低メトキシペクチン、高メトキシペクチン、アルギン酸塩、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、天然ゴム、合成ゴム、アラビアゴム、ゲル化ゴム、ウェランゴム(welan gum)、トラガカントゴム(gum tragacanth)、キサンゴム、グアールゴム、イナゴマメゴム、セルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシブチルカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、メチルエチルセルロース、プルラン、カラゲナン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とするマイクロカプセル。
【請求項4】
請求項1のマイクロカプセルにおいて、前記鉱物塩は二価の鉱物塩であることを特徴とするマイクロカプセル。
【請求項5】
請求項4のマイクロカプセルにおいて、前記二価の鉱物塩は、リン酸三カルシウム、リン酸水素カルシウム、ピロ燐酸カルシウム、炭酸カルシウム、珊瑚カルシウム、カルシウム・ハイドロキシアパタイト、硫酸カルシウム、クエン酸カルシウム、塩化カルシウム、リンゴ酸カルシウム、乳酸カルシウム、アスコビル酸カルシウム、酢酸カルシウム、カルシウム琥珀酸塩、カルシウムピルベート(calcium piruvate)、クエン酸リンゴ酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウム・グルコン酸塩、グルビオン酸カルシウム、カルシウム・グルセリルホスファート、カルシウムグルコヘプトネート(calciumu glucoheptonate)、カルシウムパンガメート(calcium pangamate)、硫酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、ピロ燐酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、塩化マグネシウム、クエン酸マグネシウム、クエン酸三マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、アスパラギン酸マグネシウム、レブリン酸マグネシウム、マグネシウムピドレート(magnesium pidolate)、マグネシウムオロレート(magnesium ororate)、およびこれらの組み合わせを含む群から選択されることを特徴とするマイクロカプセル。
【請求項6】
請求項1のマイクロカプセルにおいて、前記鉱物塩は、前記マイクロカプセルの合計重量の0.01−60%の範囲の量であることを特徴とするマイクロカプセル。
【請求項7】
請求項1のマイクロカプセルにおいて、前記エマルジョンの食用オイルは、野菜油、大豆油、パームナッツ油、ヤシ油、菜種油、サフラワー油、アマニ油、マツヨイグサ油、胡麻油、ヒマワリ油、キャノーラ油、綿実油、ババスー油、オリーブオイル、藻類油、動物性脂肪、ラード、牛脂、船舶油、魚油、イワシ油、肝油、メンハーデン油、サケ油、ニシン油、サバ油、アンチョビオイル、食用減脂肪、低カロリー脂肪、消化不能脂肪、代替脂肪(fat substitutes)、合成脂肪、スクロースポリエステル、野菜の源から派生する自然発生トリグリセリド、脂肪酸の人口トリグリセリド、脂肪酸の天然トリグリセリド、アリキルエステルまたはポリ不飽和脂肪酸(PUFA)のトリグリセリドの商業的混合物、中鎖トリグリセリド油(MCT油)、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、グリセリルトリカプリル酸塩/カプリン酸塩、トウモロコシ油、落花生油、グリセリン単オレイン酸塩、これらの部分的な硬化油は生物およびこれらの組み合わせを含む群から選択されることを特徴とするマイクロカプセル。
【請求項8】
請求項1のマイクロカプセルにおいて、前記マイクロカプセルが、1以上の可塑剤を含むことを特徴とするマイクロカプセル。
【請求項9】
請求項1のマイクロカプセルにおいて、前記マイクロカプセルが、基質または外側コーティングに1以上のワックスを含むことを特徴とするマイクロカプセル。
【請求項10】
請求項1の安定マイクロカプセルを構成するコアセルべーションプロセスであって、オイルバス内で前記マイクロカプセルを形成し回収するステップを具えることを特徴とするプロセス。
【請求項11】
請求項1のマイクロカプセルを含むことを特徴とする強化食品。
【請求項12】
請求項11の強化食品において、前記マイクロカプセルの0.5%−50%の重量を具えることを特徴とする強化食品。
【請求項13】
請求項11の強化食品において、前記強化食品は、ゼリー菓子、フルーツや野菜の加工食品、乳製品、ミルク、幼児食、ヨーグルト、チーズ、バター、マーガリン、ミルクセーキおよびアイスクリーム、大豆製品、豆乳、大豆ヨーグルト、大豆チーズ、野菜ミルク、アーモンドミルク、ライスミルク、飲料、シロップ、デザート、プリン、カスタード、ペースト状食品、クリーム状食品、および糖菓を含む群から選択されることを特徴とする強化食品。
【請求項14】
請求項11の強化食品において、当該強化食品の単位部分ごとに大人の必要なミネラルのRDA(一日所要量)を100%含むことを特徴とする強化食品。
【請求項15】
骨脱塩、骨粗鬆症、あるいは追加のカルシウム必要性の治療および/または予防するための強化食品の調製における、請求項1の安定マイクロカプセルの使用。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2013−503611(P2013−503611A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527232(P2012−527232)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【国際出願番号】PCT/EP2010/005362
【国際公開番号】WO2011/026612
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(505464877)
【氏名又は名称原語表記】LIPOFOODS, S.L.
【住所又は居所原語表記】C/ Isaac Peral, N° 17, Pol. Ind. Cami Ral, E−08850 Gava (ES).
【Fターム(参考)】