説明

食用油中の極性酸化防止剤のマイクロエマルジョン

本発明の基本原理は、油の媒体、特に食用油の中の極性酸化防止剤に富む留分からのマイクロエマルジョンの構成からなる。これらのマイクロエマルジョンは、その安定性及び均質性により異なる食品又は薬学的な生成物の中に含まれるのに適していることを特徴とする。本発明の最も新規な要素は、前記マイクロエマルジョンの中にこの溶媒の部分を残すことで、相互界面活性剤として働く、酸化防止剤の混合物である過剰な極性溶媒を、真空除去することによって臨界ミセル濃度(CMC)が達成されることである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の目的は、この明細書の表題に示されているように、食用油中の極性酸化防止剤のマイクロエマルジョンの過程を含む。
【背景技術】
【0002】
最近、ポリフェノール、及びビタミンCのようなその他の極性酸化防止剤が健康上有する特性に対して、関心があつまっている。そのようなタイプの製品は、様々な食品に自然と含まれている。それにも関わらず、それらの溶解度は限られており、それらの利用は、極性酸化防止剤が可溶でない食用油又はマーガリンのような製品に限定される。
【0003】
食用油のような非極性媒体の中に、分散によって極性酸化防止剤を分布させることもときおりなされている。通常、産業上は、それらはポリフェノール化合物の中で濃縮された抽出物を超微粉砕することにより実現され、そして、それらは油状の媒体の中で分散される。それにも関わらず、これらの分散は不安定であり、最後には前記分散されたコロイドのデカンテーションを行うこととなる。食用油中で安定な極性酸化防止剤の生成物を得るために、本発明の対象であるマイクロエマルジョンを用いることができる。エマルジョンとマイクロエマルジョンの主な違いは、その外観にある。分散によって得られるエマルジョンは高い濁り度を有するが、マイクロエマルジョンはほとんど透明である。これは、前記エマルジョンの滴の大きさのためである。光の波長と均しい又は大きい滴を含んでいるエマルジョンは、光を反射し、濁りの原因となる。しかしながら、マイクロエマルジョンの滴の大きさは光の波長よりも小さく、そのため、光との相互作用は直接衝突することに限られる。光は、ほとんど反射せずにマイクロエマルジョンを通り抜けるため、ほとんど透明に見える。それらが不安定となるごく少数の例外はあるが、マイクロエマルジョンは熱力学的に安定である。マイクロエマルジョンの自由表面エネルギーは二つの成分:伸長(正の寄与)と屈曲(負の寄与)を有する。一方が他方を補償し、全自由表面積は、約10−3nN/mと、とても小さくなる。さらに、マイクロエマルジョンは自発的に形成され、又はそれらの成分を混合するために攪拌する時間がほとんど必要ない。
【0004】
最初のマイクロエマルジョンの系が、シュールマン(Schulman)及びホーア(Hoar)によって説明されたとき(1943)、その内容について多くの論文が発表されていた。それにも関わらず、説明されていたシステムの多くは、薬学的な又は食用への使用には適していなかった。
【0005】
マイクロエマルジョンは、等方性があり及び熱力学的に安定であり、少なくとも3つの要素:基質、(ミセルの中に内包された)溶媒、及び界面活性剤、の混合物であって、普通は通常短鎖アルコール又はリポタンパク質である相互界面活性剤(co−surfactant)と併用されるもの、として一般的に定義されている(アボーファゼイル(Aboofazeli)及びローレンス(Lawrence)、1994)。マイクロエマルジョンは等方性の系であり、界面活性剤及び相互界面活性剤が、それら相互の分散を安定させるために、二つの混ざらない液体の分離面上にある(ボウレル(Bourrel)及びシェクター(Schechter)、1988)。
【0006】
マイクロエマルジョンは、次の特徴的な特性:相対的に大きな表面領域、とても小さな界面の表面張力、及び他のコロイド状の系と比較して大きな溶解量、を有する(エル−ノカリーら、1991)。
【0007】
マイクロエマルジョンは、両親媒性分子(界面活性剤)であるコロイド凝集体によって形成される。1つのミセルの中の分子の集合体の量(集合体の数)は、50から100の間である。
【0008】
それ以下だとミセルを検出せず、それ以上では追加された界面活性剤の分子全てがミセルを形成するという限界を分ける濃度の範囲は、相対的に小さい。界面活性剤の溶液の特性の多くは、前記濃度と対比してグラフを用いて表したとき、この範囲の上と下とでは異なった割合に変化するようである。
【0009】
HLB(親水性油性バランス)の指標は、界面活性剤の親水性油性バランスを表す0から40までの任意の目盛りを有する。低いHLBの生成物は油により溶けやすく、一方、高いHLBの生成物は高い水溶性を有する。油中水滴のエマルジョンの系のHLB値は3から6の間、湿潤剤では7から9の間、水中油滴のエマルジョンでは8から15の間、洗浄剤では12から15の間、溶解剤では15から18の間、などである。
【0010】
本発明でマイクロエマルジョンを得るために用いることのできる界面活性剤のリストが、それに限定されるわけではないが、表1に示される。
【表1】

【0011】
レシチンは、商業用の目的で、油を生成できる種(特に大豆の種)から及び卵黄から得られる。レシチン分子においては、リン酸が、グリセリンの第一のヒドロキシ基、及びクロライド(Cl)基と結合する。大豆レシチンは33%のレシチンしか含まず、他の結合による15%以上のイニストリン脂質(inistophosphatides)及び約25%のケファリンを含む。例えば、マーガリンの製造過程で、表面張力を下げ及び水溶性の相の望ましい分布を得るために、レシチンが使用される(バルテ(Baltes) 1995)。
【0012】
純粋なエタノールは、マイクロエマルジョンを生成する際に、特にレシチン又はモノオレイン酸が界面活性剤として使用される際に、補助界面活性剤(co−surfactant)として作用する。さらに、それは、食用油における前記レシチンの可溶化するのに役立つ。普通、アルコールは食用に適していないが、このタイプの生成物においては、わずかな量(約5%)のエタノールであれば使用できる(オスボーン(Osborne)など、1991)。
【0013】
本発明の基本原理は、安定で、透明で、及び均質である無極性の基質(食用油)における極性マイクロエマルジョン(水、アルコール、又は両方の混合)を含み、極性酸化防止剤が、極性部分において可溶又は部分的に可溶である。
【0014】
色々な食用油は、前記マイクロエマルジョンを安定させるために基質として使用でき、オレイン酸、リノール酸、又はステアリン酸;例えば、オリーブオイル、ヒマワリ油等のような多価不飽和脂肪酸に富んでいるものが好ましい。
【0015】
少なくとも30%が飽和脂肪酸であるトリグリセリドを含む食用油だけが、マイクロエマルジョンを形成するために使用できる。これらの油の例が、表2に示されている。
【表2】

【0016】
本発明で使用できる極性溶媒は、アメリカ及びヨーロッパの食品規則において食品産業での使用が認可されている極性溶媒を含む。例えば、水とエタノールがある。
【0017】
本発明において、これらのマイクロエマルジョンを生成するために、色々なタイプの酸化防止剤を、好ましくはポリフェノール及びビタミンCを、使用できる。ポリフェノールの場合は、それらの溶解性のために、分子の重さが7000ダルトン以下のポリフェノールを好ましく用いることができる。本発明において最も良く使用されるポリフェノールを表3に示す。これらのマイクロエマルジョンを生成するためには、表3に示した以外のポリフェノールも用いることができる。さらに、アスコルビン酸(ビタミンC)を得るためには、かんきつ類、ぶどう等のような、色々な原料がある。
【0018】
【表3−1】

【0019】
【表3−2】

【0020】
参考文献
Swern.D. 1979.Bailey’s industrial oil and fat products.John Wiley and Sons,INC.
Saahadi F. and Nazck M.2004. Phenolics in food and natraceuticals. CRC press.
Aboofazeli.;Lawrence,M.J, Investigations in the formation and characterization of phospholipids microemulsions.II:Pseudo−ternary phase diagrams of systems containing water−lecithin−isopropyl myristate and alcohol: infuence of purity of lecithin. Int.J.Pharm.106(1994) 51−61.
Bourrel,M.; Schechter,R.S. Microemulsions and related systems. Formulations solvency and physical properties. Surfactant Science Series 30, Marcel Dekker, New York(1998),27.
Schulman,J.H.; Hoar,T.P. Transparent water in oil dispersions: oleophatic hydromicelle. Nature 152(1943),102−103
Von Corswant,C; Engstrom,S.; Soderman,O. Microemulsions based on soybean phosphatidylchlorine and triglycerides. Phase behaviour and microstructure. Langmuir 13(1997),5061−5070.
Osborne D.W.; Pesheeck,C.V.; Chipman R.J. Dioctyl sodium sulfosuccinate−sorbitan monolaurate microemulsions. In.“Microemulsions and emulsions in food,” El−Nokaly, M.; Cornell,D., Eds., ACS Symposium Series No.448, American Chemical Society, Washington DC,(1991), p.63−79.
【発明の開示】
【0021】
マイクロエマルジョンの生成過程は、人間が摂取するための使用が認められている極性溶媒(たとえば、エタノール、及び水又は両方の混合物)中の、可溶性の酸化防止剤の濃縮から始まる。最も広く使用されている酸化防止剤は、表3に示しているポリフェノール、ビタミンC、又はこれらの化合物の混合物である。
【0022】
本発明においては、極性酸化防止剤の天然の抽出物、又は有効成分を豊富に含む抽出物の濃縮物を好ましく用いることができる。
【0023】
その酸化防止剤がリッチなされた化合物は、100%天然物である。その前記過程は、植物の原料から得られる原材料から始めるので、抽出において高い濃縮レベルを得ることはいつも可能とは限らない。好ましくは、濃縮の生成過程は、部分的な濃縮過程に加えて、可溶化、ろ過、及び/又は遠心分離によって達成される。極性溶媒における酸化防止剤の濃縮に適している他の技術は、限外ろ過法、ナノろ過法、及び逆浸透である。特別な系では、固―液及び液―液分離、及び分子蒸留も用いることができる。
【0024】
このタイプの技術では、最終的で活性な化合物の濃度のばらつきは、他のもののなかでもとりわけ、原材料の多様性、熟成の程度、及び可溶性の状態といった色々な要因に依存する。
【0025】
ミセルを形成する最初の濃縮は、前記最終生成物において有効成分が適切な濃縮となる程度に、高くなければならない。沈殿を避けるために、この濃縮を保つことは重要である。例えば、前記溶媒(w/V)におけるフラボノイドの濃縮は、0.5%よりも高く、好ましくは5%より高く、例えば15%より高くしなければならず、好ましくは溶媒は水、エタノール、又は両方の混合物である。
【0026】
ここで使用されている極性の溶媒は、前記アメリカ及びヨーロッパの食品規則によって許可されているものである。
【0027】
本発明で使用されている前記濃縮物が天然の抽出物であるとき、前記溶媒中には酸化防止剤だけが存在するわけではない。抽出液の中に存在する他の化合物が、可溶な、不溶な、又は部分的に可溶な形で存在する。不純物は、クロロフィル、たんぱく質、精油、デンプン、繊維、及び極性留分の中で不溶な有機及び無機の分子のような高分子を含むこともある。これらの不純物の最大の限界は80%(w/V)であるが、30%(w/V)より低いこと、例えば10%(w/V)より低いことが推奨される。さらに、他のタイプの分散した成分を全く有することなく、水溶性であるこれらの酸化防止剤の化合物だけを生成するために、前記濃縮物を精製してもよい。
【0028】
ケイソウ土、活性炭、及びゼオライトといった不活性のろ過剤に吸着させるような、色々な方法によって、不純物の除去過程を行うことができる。限外ろ過法、ナノろ過法、及び逆浸透のような薄膜分離方式も、前記溶液を精製するために用いられる。使用される方法は、抽出物の性質に依存する。前記方法の一つまたは上述したいくつかの方法の組み合わせは、前記抽出物を生成するために使用できる。
【0029】
前記精製の間、前記有効成分のうち一定の留分が失われることがある。同じように、前記選ばれた精製方法は、酸化防止剤の損失を最小にしなければならない。初めの酸化防止剤に関しては、有効成分の20%(w/V)を上回る損失がないことが適しており、好ましくは10%(w/V)より少ない、例えば3%(w/V)より少ない損失が適している。
【0030】
本発明の別の側面において、前記酸化防止剤の濃縮物は食用油と混合される。「濃縮物/食用油」の割合は、前記抽出物の性質に依存する。普通は、この割合は、1/1より少なくすべきであり、好ましくは1/2、又はさらに良いのは1/4である。これらの濃度において、前記極性溶媒の濃縮が過度であるため、臨界ミセル濃度には達しない。前記臨界ミセル濃度を達成するための前記過剰な溶媒を除去する方法を、さらに説明する。
【0031】
本発明において、好ましくは、食用油はマイクロエマルジョンを形成するために使用される。さらに、これらの油は、前記トリグリセリド中で、30%より少ない、好ましくは20%より少ない、例えば15%の、飽和脂肪酸のパーセンテージを有するものがあげられる。これらのタイプの油のサンプルは、オリーブ、ヒマワリ、又は綿実である(表2参照)。
【0032】
温度のような特定のパラメータは、前記混合の間、調節されるべきである。適切な温度は、0℃から65℃の間で、好ましくは40℃より低い温度である。
【0033】
抽出物の性質に依存して調節されることのある別のパラメータは、使用されるガスの構成又はタイプである。普通、空気の使用は前記抽出物及び前記食用油を混合するには十分であるが、例えば酸素、窒素のような不活性ガス、又は二酸化炭素といった他のガスを使用して酸素から有効成分を保護することもできる。
【0034】
前記不活性ガスはまた、酸化から食用油を保護する。
【0035】
前記抽出物及び前記油の混合は、もしできれば、タンクの中、又は他の適切な産業用の容器、もしできれば酸化を妨げるためにステンレス鋼の中、で行われることもある。
【0036】
前記混合物は、前記界面活性剤及び補助界面活性剤をいっせいに加える際に、前記留分を均質にするために、常にかき回されるべきである。前記マイクロエマルジョンは、界面活性剤及び相互界面活性剤を0.1から15%(w/V)含むことができる。
【0037】
本発明で使用される界面活性剤は、前記食品産業で許可されており、及びここで示された化合物の中でマイクロエマルジョンを構成することができる。
【0038】
最も広く使われているのは、リポタンパク質、モノグリセリド、ジグリセリド及びレシチン、モノグリセリドの脂肪酸エステル、スクロースの脂肪酸エステル、ソルビタンエステル、又はその他の化合物である(表1)。
【0039】
補助界面活性剤として、アルコール(例えばエタノール)、酸(例えば酢酸)、エステル(例えば乳酸ブチル)、又はこれらの混合物のような、非毒性の両親媒性分子が好ましい。
【0040】
前記補助界面活性剤又は補助溶媒(co−solvent)は、安定なマイクロエマルジョンを形成するために、成分の濃縮範囲の増加という作用を有する。さらに、味又は匂いの変更因子、防腐剤、又は別のタイプの機能的な添加物として、同じ補助界面活性剤を使用できる。
【0041】
臨界ミセル濃度を減少させるため、及び前記酸化防止剤のマイクロエマルジョンを分散させるため、前記マイクロエマルジョンに対して、塩も加えることができる。本発明では、可能であれば、塩化ナトリウムだけを使用すべきである。適切な濃度は、0.02から0.4mol/Lの間の範囲とすることができ、さらに適切なのは0.1から0.3mol/Lの間、例えば0.2mol/Lである。前記マイクロエマルジョンは、1つ又は複数の塩を含む。例えば水性相の中で0.2M又はそれ以上の大量の塩を取り込むために、前記相互酸化防止剤の存在は有用である。
【0042】
本発明によれば、酸化防止剤の濃縮物、食用油、及び酸化防止剤の量は、前記臨界ミセル濃度を達するための前記適切な割合の中には、普通は加えられない。
【0043】
普通、前記酸化防止剤の完全な溶解度を保証するために、前記極性溶媒は過度に与えられる。さらに、前記臨界ミセル濃度に達するまで、乾燥によって、過剰分は除かれる。
【0044】
本発明をより良く実行するために、前記溶媒の混合(可溶性の活性成分を含む)、食用油、界面活性剤、相互界面活性剤、及び任意の塩は、前記臨界ミセル濃度に達するまで、真空での蒸発に曝される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
【実施例1】
【0046】
実施例1.ローズマリーの抽出物のマイクロエマルジョン
メタノール1000Lを、7.3%のカルノシン酸を含む、乾燥され及び微粉砕されたローズマリーの葉100kgに加えた。固液抽出は、3つの段階:R(1/4)w/V、R(1/3)w/W、R(1/3)w/V、からなり、環境温度で、3時間抽出を行った。バイオマスの真空ろ過によって、抽出物900Lが得られた。次にこれを、真空ろ過によって、50mmHg及び45℃で濃縮し、濃縮された抽出物が約30L生成された。カルノシン酸の濃縮溶液に対して、水30Lを環境温度で加えた。水及びエタノールを除くために、前記溶液をデカントし、ろ過した。最終的な不溶性の生成物は、メタノール含有量が10ppmより少なくなった。
【0047】
不溶性の生成物は、17Kgの緑色の抽出液だが、18%w/wのカルノシン酸を含んでいた。この沈殿物を環境温度で溶かし、30Lのエタノールと絶えず撹拌し、そして、1時間、温度及び撹拌状態を維持しながら、活性炭0.7kgを溶液に加えた。この結果得られた脱色された溶液を、抽出液から活性炭及びクロロフィル留分を分けるために、真空ろ過した。最終的な抽出液は、クリーミーな茶色(creamy brown coloured)であった。この溶液に、ヒマワリ油30L及びレシチン0.3kgを加え、100mmHg及び40℃で、蒸発により濃縮した。クリーミーな茶色で粘性のあるマイクロエマルジョンが32kg生成するまで、真空蒸発によって、前記残留溶媒を取り除いた。
【実施例2】
【0048】
実施例2.オリーブの抽出物のマイクロエマルジョン
エタノールと水が70:30(v/v)である1000Lを、脂肪分が取り除かれ、乾燥され、及び微粉砕されたオリーブの粉100kgに加えた。前記オリーブは、次の成分:セルロース52%、プロテイン10%、灰分5%、及びポリフェノール1.1%を有していた。前記固液抽出は二つの段階:R(1/5)w/V及びR(1/5)w/V、からなった。
【0049】
前記抽出過程は、環境温度で3時間かかった。抽出物870Lを、ろ過及び限外ろ過によって生成した。前記ポリフェノールに富んでいる溶液を、濃縮液55Lを生成するまで、1000mmHg及び40℃において真空濃縮した。前記溶液は、全固形分252g/Lの濃縮物を有し、この内6%は抽出液中のポリフェノールであった。
【0050】
オリーブオイル55L、及びモノグリセリド及びジグリセリド1.3kgを、前記溶液に加え、それらを100mmHg及び40℃で蒸発させた。マイクロエマルジョン80kgを得るまで、真空乾燥で前記残留溶媒を部分的に取り除いた。前記ポリフェノールの濃縮物は1%であり、トータルの収率は80%であった。
【実施例3】
【0051】
実施例3.カカオの抽出物のマイクロエマルジョン
水1500Lを、乾燥され、未発酵の脂肪分が取り除かれたカカオ抽出物であって、微粉砕され10%のポリフェノールを含むもの100kgへ加えた。固液抽出は二つの段階:R1/8(w/V)及びR1/5(w/V)、からなっていた。
【0052】
前記抽出の時間は、大気圧及び30℃で3時間行った。抽出液1300Lをバイオマスの遠心分離によって生成し、それを100mmHg及び55℃で真空蒸発により濃縮し、約60Lの濃縮された抽出液を生成した。前記溶液の濃縮は、全固形分300g/Lであり、この内26%はポリフェノールであった。
【0053】
綿実油66L及びレシチン1kgを前記溶液に加え、30mmHg及び60℃で前記濃縮物を蒸発させた。前記残留溶媒を、マイクロエマルジョン73kgを生成するまで、真空ポンプによって部分的に取り除いた。前記ポリフェノールの濃縮は6.4%であり、収率は73%であった。
【0054】
明示された着想が立証されたので、請求項を記載するが、これは請求の範囲として請求する新規性なものを集約したものである。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、食用油中の極性酸化防止剤のマイクロエマルジョンなどとして利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空乾燥により過剰な極性溶媒を取り除くことによって、臨界ミセル濃度(CMC)を達成することを特徴とする、
食用油中で極性酸化防止剤のマイクロエマルジョンを生成する方法。
【請求項2】
最も好都合な極性酸化防止剤が、
ポリフェノール、及び/又はビタミンC又はその混合物であることを特徴とする、
上記の請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記酸化防止剤が、植物の原料に由来することを特徴とする、
上記の請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記極性酸化防止剤が、
固液抽出、液−液抽出、又は分子蒸留を含む、天然物の可溶化、ろ過及び/又は遠心分離、及び部分的な濃縮過程によって生成されることを特徴とする、
上記の請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記極性酸化防止剤の濃縮物が、
不純物の一部が、活性炭、ケイソウ土、及びゼオライトなどのろ過補助剤に吸収されることにより、取り除かれる、浄化過程を経ることを特徴とする、
上記の請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記極性酸化防止剤が、
マイクロろ過、限外ろ過、ナノろ過、及び逆浸透などの薄膜分離技術によって、さらに濃縮されることを特徴とする、
請求項4に記載の方法。
【請求項7】
極性溶媒中での前記酸化防止剤の濃度が、
0.5%よりも大きいことを特徴とする、
上記の請求項に記載の方法。
【請求項8】
極性溶媒中での前記酸化防止剤の濃度が、
5%(w/V)よりも大きいことを特徴とする、
上記の請求項に記載の方法。
【請求項9】
極性溶媒中での前記酸化防止剤の濃度が、
15%であることを特徴とする、
上記の請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記極性酸化防止剤が、
国際食品規格によって許可された溶媒の中に溶解可能であることを特徴とする、
上記の請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記極性酸化防止剤の濃縮物が、
前記極性留分の中に、クロロフィル、タンパク質、精油、砂糖、食物繊維、及びその他の可溶及び不溶の分子などの他の不純物を含み、純粋な溶液でないことを特徴とする、
上記の請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記不純物の限界が、
60%(w/w)以下とすることを特徴とする、
上記の請求項に記載の方法。
【請求項13】
前記不純物の限界が、
30%(w/w)より小さくすることを特徴とする、
上記の請求項に記載の方法。
【請求項14】
前記不純物の限界が、
10%(w/w)とすることを特徴とする、
上記の請求項に記載の方法。
【請求項15】
最初の酸化防止剤に関して、有効成分の一定の留分が失われる場合に、
60%よりも低い損失とすることを特徴とする、
上記の請求項に記載の方法。
【請求項16】
最初の酸化防止剤に関して、有効成分の一定の留分が失われる場合に、
40%よりも低い損失とすることを特徴とする、
上記の請求項に記載の方法。
【請求項17】
最初の酸化防止剤に関して、前記有効成分の一定の留分が失われる場合に、
10%の損失とすることを特徴とする、
上記の請求項に記載の方法。
【請求項18】
前記酸化防止剤の濃縮物/食用油の割合が、
1/1よりも小さいことを特徴とする、
上記の請求項に記載の方法。
【請求項19】
前記酸化防止剤の濃縮物/食用油の割合が、
1/2よりも小さいことを特徴とする、
上記の請求項に記載の方法。
【請求項20】
前記酸化防止剤の濃縮物/食用油の割合が、
1/4よりも小さいことを特徴とする、
上記の請求項に記載の方法。
【請求項21】
前記食用油が、
前記トリグリセリド中の飽和脂肪酸の割合を、30%よりも低くすることを特徴とする、
上記の請求項に記載の方法。
このタイプの油の例として、オリーブ、ヒマワリ、綿実がある。
【請求項22】
前記食用油において、
前記トリグリセリド中の飽和脂肪酸の割合を、15%よりも低くすることを特徴とする、
上記の請求項に記載の方法。
【請求項23】
混合の温度が、
0℃から65℃の間であることを特徴とする、
上記の請求項に記載の方法。
【請求項24】
前記混合の温度が、
40℃以下であることを特徴とする、
上記の請求項に記載の方法。
【請求項25】
前記混合の温度が、
25℃であることを特徴とする、
上記の請求項に記載の方法。
【請求項26】
前記混合物において、前記マイクロエマルジョンを生成するために、界面活性剤及び/又は補助界面活性剤の濃度を、
0.01から15%の間にすることを特徴とする、
上記の請求項に記載の方法。
【請求項27】
使用されている前記界面活性剤は、
食品産業において一般的に使用されており、
それらは、
本発明で示されている化合物の中で、マイクロエマルジョンを形成することができ、
最も推奨できるものは、
リポタンパク質、モノグリセリド及びジグリセリド、プロピレングリコールの脂肪酸エステル、グリセリドの脂肪酸エステル、ソルビタンエステル、レシチン、またはその混合物であることを特徴とする、
上記の請求項に記載の方法。
【請求項28】
前記補助界面活性剤が、
無毒性であり、例えば、アルコール(エタノール)などの両親水性分子、酸(酢酸)、ブチル化したエステル又は両者の混合物であることを特徴とする、
上記の請求項に記載の方法。
【請求項29】
塩が、
0.02から0.4mol/Lの間の塩化ナトリウムの濃度で、前記混合物に加えられることを特徴とする、
上記の請求項に記載の方法。
【請求項30】
前記塩化ナトリウムの濃度は、
0.2mol/Lであることを特徴とする、
上記の請求項に記載の方法。
【請求項31】
極性溶媒の量は、
前記臨界ミセル濃度に達するために必要な量よりも多いことを特徴とする、
上記の請求項に記載の方法。
【請求項32】
前記過度の極性溶媒は、
前記マイクロエマルジョンを形成するために、前記臨界ミセル濃度に達するまで、真空蒸発によって取り除かれ、
前記過程の温度が70℃より低いことを特徴とする、
上記の請求項に記載の方法。
【請求項33】
前記過度の極性溶媒は、
前記マイクロエマルジョンを形成するために、前記臨界ミセル濃度に達するまで、真空蒸発によって取り除かれ、
前記過程の温度が60℃より低いことを特徴とする、
上記の請求項に記載の方法。
【請求項34】
前記過度の極性溶媒は、
前記マイクロエマルジョンを形成するために、前記臨界ミセル濃度に達するまで、真空蒸発によって取り除かれ、
前記過程の温度が40℃より低いことを特徴とする、
上記の請求項に記載の方法。
【請求項35】
前記過度の極性溶媒は、
前記マイクロエマルジョンを形成するために、前記臨界ミセル濃度に達するまで、真空蒸発によって取り除かれ、
前記使用圧力が300mbarより低いことを特徴とする、
上記の請求項に記載の方法。
【請求項36】
前記過度の極性溶媒は、
前記マイクロエマルジョンを形成するために、前記臨界ミセル濃度に達するまで、真空蒸発によって取り除かれ、
前記使用圧力が100mbarより低いことを特徴とする、
上記の請求項に記載の方法。
【請求項37】
混合及び真空蒸発段階において、ミセルを形成し、分散するために、前記集合体はかき混ぜられることを特徴とする、
上記の請求項に記載の方法。
【請求項38】
上記の請求項で説明された過程に従って生成され、
異なったタイプの食用油及び脂肪に対して、酸化作用を防止するものとして使用されることを特徴とする、
前記マイクロエマルジョンの利用。
例えば、これらのマイクロエマルジョンは、広い濃縮範囲で、マーガリン、バター及びその他食用油へ、簡単に加えることができる。
【請求項39】
最終生成物の特性を肯定的に修正する、他の化合物の溶剤として使用すること
;例えば、ローズマリー、カカオ、又はオリーブの香りを、脂肪エマルジョンの中の脂肪、油及び水へ加えることを特徴とする、
上記の請求項に記載の前記マイクロエマルジョンの利用。

【公表番号】特表2008−525004(P2008−525004A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547552(P2007−547552)
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【国際出願番号】PCT/ES2005/000191
【国際公開番号】WO2006/070026
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(507210443)
【氏名又は名称原語表記】NATRACEUTICAL INDUSTRIAL S.L.U.
【Fターム(参考)】