説明

食肉加工製品の製造方法

【課題】油で揚げる食肉加工製品について、食感を損なうことなく、油の染み出しを防ぎ、歩留まりを向上させる方法及びその方法により得られた食肉加工品の提供。
【解決手段】食肉100質量部に対して、平均粒径が10μm以下の結晶セルロースを0.01〜10質量部混合し、油で揚げることを特徴とする食肉加工製品の製造方法により、達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油で揚げる食肉加工製品の油の染み出しを防止し、歩留まり及び食感を向上させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食肉を加工処理して、例えばハンバーグのような食肉加工製品とする場合、加熱による肉の収縮や肉汁のドリップにより歩留まりが悪くなる上に、エキス成分が抜け出てしまうため味が落ちてしまう。従来、これらの問題点を解決するために、天然ガム類の添加、リン酸塩の添加や、pH調整剤、大豆蛋白の添加などの方法を、単独もしくは複数を組み合わせて用いられてきた。
【0003】
例えば、特許文献1、2ではカラギーナンやカードランを含有するピックル液を食肉に注射し、離水防止、結着性向上などができると開示している。特許文献3では有機酸塩を用いた歩留まり向上方法について、特許文献4には寒天を用いた方法が開示されている。また、特許文献5には、平均粒径が10μm〜20μmの粒子成分の含量が70%以下である微細セルロースと半精製カラギーナンとを用いる方法が開示されている。ただし、ここで示している平均粒径は、非常に強い攪拌力で分散した場合の平均粒径である。この方法では、セルロースの吸水性および吸油性を利用して肉汁のドリップを抑制している。
【0004】
一方、チキンナゲットやミンチカツ、さつま揚げなど、油で揚げる食肉加工製品の歩留まりを向上する方法はほとんど知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−260927号公報
【特許文献2】特開平4−40849号公報
【特許文献3】特開平6−343423号公報
【特許文献4】特開平6−292538号公報
【特許文献5】特開平11−46723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これまでの技術で、食肉加工製品の縮みの防止、歩留まりを向上する方法は上述のとおりいくつか開示されている。しかし、特許文献1および特許文献2に記載されている天然ガム類は粘性が高いために食感が重くなりやすく、不自然な食感になってしまうという問題があった。特許文献3に記載されている有機酸塩やpH調整剤は、食肉のpHを変化させるため風味の違いを生じ、やはり不自然な食感になってしまうという問題があった。前記特許文献3では有機酸塩とセルロース類との併用が開示されている。しかし、有機酸塩が必須成分であるため、前記の問題点は解決されない。また、本願発明のように特定の粒径や形状をもつセルロースを用いると有機酸塩を用いなくても効果が得られることを見出すまでには至っていなかった。また、最も一般的に行われているリン酸塩の添加は、食感をカマボコ様に変化させてしまうことに加え、過剰なリン酸塩の摂取は体からのカルシウムの流出を促進するとも言われており、健康上もあまり好ましいものではなかった。また、リン酸塩と同様に一般的に行われている大豆蛋白を用いた場合は、効果を発揮する添加量とすると、独特の大豆臭が発生する場合があり、食感もパサツキ感が出てくるという問題があった。前述の特許文献4に記載されている寒天を用いた方法は、pHは食肉本来からの変化が少なく、寒天自体の風味もほとんどないため、縮みの防止、歩留まりや食感の向上に優れた方法である。しかし、該方法には、高温で加熱処理した場合に、歩留まり向上効果が出にくいという欠点があった。さらに、これらのいずれの方法でも油で揚げる製造工程を持つような食品加工製品では効果は不十分であった。
【0007】
前述の特許文献5に開示されている微細セルロースと精製カラギーナンを用いる方法では、微細セルロースの平均粒径を20μm以下、好ましくは12μm以下と規定しており、実施例では微細セルロースの平均粒径は8〜11μmのものを用いている。しかし、該明細書の[0020]に記載されている平均粒径の測定方法から明らかなように、この平均粒径は、実際の食肉加工製品の製造工程では使用されない強力な攪拌力で分散をして測定されたものである。特許文献5の微細セルロースを、実際の製造工程における攪拌力で分散し平均粒径を測定した場合、粒径は20μm程度となる。このように、特許文献5では、実際の平均粒径が20μm程度でも歩留まりの向上機能を発揮しているといえるが、その対象は焼成する食肉加工品(ハンバーグ)などであり、油で揚げる食肉加工製品では効果が発揮できなかった。本発明は、現実的な製造設備を用い、加熱処理として油で揚げる工程を含む食肉加工製品の食感を損なわずに歩留まりを向上し、油の染み出しを防止できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、弱い攪拌力で分散した時でも特定の粒径以下となる結晶セルロースを用いることにより、油で揚げる工程を含む食肉加工製品で、油の染み出しを抑制し、歩留まりを向上させられることを見出し、本発明を成すに至った。すなわち本発明は下記の通りである。
(1)食肉100質量部に対して、平均粒径が10μm以下の結晶セルロースを0.01〜10質量部混合し、油で揚げることを特徴とする食肉加工製品の製造方法。
(2)さらに部分アルファー化澱粉を混合することを特徴とする、(1)に記載の食肉加工製品の製造方法。
(3)食肉、結晶セルロース、部分アルファー化澱粉の質量比が100:(0.01〜10):(0.01〜10)であることを特徴とする、(2)に記載の食肉加工製品の製造方法。
(4)食肉加工製品がチキンナゲット、メンチカツ又はさつま揚げである、(1)〜(3)のいずれかに記載の食肉加工製品の製造方法。
(5)食肉100質量部に対して、平均粒径が10μm以下の結晶セルロースを0.01〜10質量部含有する、油で揚げられた食肉加工製品。
(6)食肉100質量部に対して、さらに部分アルファー化澱粉を0.01〜10質量部含有する、(5)に記載の油で揚げられた食肉加工製品。
(7)食肉加工製品がチキンナゲット、メンチカツ又はさつま揚げである(5)又は(6)に記載の食肉加工製品。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、油で揚げる食肉加工製品の食感を損なわずに、油の染み出しを抑制し、歩留まりを向上できる方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明につき詳しく説明する。本発明で言う結晶セルロースとは、例えば木材パルプ、精製リンターなどのセルロース系素材を、酸加水分解、アルカリ酸化分解、酵素分解などにより解重合処理して得られる平均重合度30〜400、結晶性部分が10%を超えるものをいう。本発明の結晶セルロースとして、結晶セルロースと水溶性高分子とを複合体化した結晶セルロース製剤を用いても構わない。
【0011】
本発明で言う平均粒径は、具体的な測定方法は実施例に記載しているが、セルロース換算で1質量%の分散液となるように一般的な1〜2Lのステンレスビーカーに、結晶セルロース及び脱イオン水を、攪拌が十分できる量、例えば、2Lビーカーに1500mlを仕込み、半径30〜40mmの4枚パドル翼を取り付けたプロペラ攪拌機を用いて25℃、500rpmで20分間、水に分散させた場合の平均粒径のことを言う。例えばセオラスDX−2(商品名、旭化成ケミカルズ株式会社製)が、このような平均粒径10μm以下の要件を満たした結晶セルロースである。結晶セルロースの粒径は、強力な攪拌機、例えばエースホモジナイザー(日本精機製AM−T)などにより、10000回転/分以上の回転数で5分程度分散した粒径をさすことが多いが、この条件は非常に強い分散条件であるため、実際の食肉加工製品を製造する際にかかる攪拌力よりも遥かに強いものである。よって該条件で測定した粒径と、実際の製造工程で使用したときの結晶セルロースの平均粒径、すなわち実際の製品中の結晶セルロースの平均粒径とは大きく乖離したものであった。
【0012】
本発明ではより実際の分散力、実際の製品中の結晶セルロースの平均粒径に近い値となるように弱い分散条件での平均粒径を定義しており、より意味のある値となっている。もちろん、予め強力な攪拌機で予備分散して平均粒径が10μm以下にして使用することも可能であるが、通常の食肉加工製品の製造設備において、そのような強力な攪拌機を所持していることは極めて稀である。
【0013】
油で揚げる工程を含まない食肉加工製品では、分散が不十分なほうが歩留まり向上の効果を発揮する。しかし、油で揚げる工程を含む食肉加工製品では、結晶セルロースを十分に分散させないと、歩留まり向上の機能が不十分となる。そのため、本願では、あらかじめ実際の製造工程で使用される条件と同程度の攪拌条件である攪拌機でも分散可能なように、分散助剤を含んだ結晶セルロース製剤を用いることが好ましい。そのような結晶セルロース製剤の製造例は後述する。
【0014】
本発明で言う食肉としては、牛肉、豚肉、猪肉、羊肉、鹿肉、馬肉、鯨肉、鶏肉、魚肉、もしくはこれらの二以上の混合物であり、本発明の食肉加工製品とは、前記の食肉を油で揚げる加熱処理工程を経るものである。例えばチキンナゲット、ミンチカツ、さつま揚げ、揚げ身、はんぺん、コロッケ、から揚げなどが挙げられる。本発明は、上記の食肉と結晶セルロースをニーディングなどで混練する工程、若しくは結晶セルロースを分散したピックル液を食肉に注射する工程と、油で揚げる加熱処理工程を施して食肉加工製品を製造することに関連し、前記食肉中に結晶セルロースを混合することにより、加熱処理をしたあとの製品の歩留まりを向上し、油の染み出し及び食感が悪化するのを抑制するものである。本発明の食肉加工製品は、加熱処理として油で揚げる工程を必ず経るものであるが、その他の加熱処理、例えば蒸したり焼いたりといった加熱処理の一つもしくは複数と組み合わせてもよい。油で揚げる際は、一般的なフライヤーや真空フライヤーで行うことができる。フライに用いる油も通常用いられる油脂から適宜選択すればよく、例えば、パーム油、米油、大豆油、菜種油、綿実油、ごま油、サフラワー油、ヤシ油、牛脂、豚油、これらの硬化油、エステル化油、ジアシルグリセロール、中鎖脂肪酸などが挙げられる。これらは一種類もしくは二種類以上を混合したものでもよい。フライの温度や時間は、製品の大きさや形状により適宜調整されるものであるが、通常のフライ温度は150℃〜205℃、好ましくは170〜190℃である。フライ時間は1〜10分程度である。
【0015】
本発明において効率的に歩留まり及び食感を向上させるためには、結晶セルロースの平均粒径は10μm以下のものを用いることが好ましい。10μm以下であると、十分な歩留まり向上効果が得られる。下限は特に制限はないが、実質的には1μm未満のものは製造が極めて困難である。
【0016】
ところで、ハンバーグなどの焼成し、油で揚げる工程のない食肉加工食品でも、結晶セルロースなどの食物繊維類を用いると歩留まりが向上することが知られている。この場合、結晶セルロース等の粒径が大きいほど吸水性及び吸油性が良い。このため、大きい粒径の結晶セルロース等を用いると、ドリップが減り、歩留まり向上効果は良好となるが、逆に食感は悪化する。このため、食感に悪影響の出ない範囲で粒径の大きいものを用いる必要があった。このことは下記の参考例として示している。一方、油で揚げる食肉加工食品においては、驚くべきことに、結晶セルロースの粒径が小さいもののほうが歩留まり向上効果が高いという、逆の結果が得られた。
【0017】
結晶セルロースを食肉に混合する際の添加方法は、特に限定はない。食肉に直接添加することはもちろん、食肉加工製品を製造する際に用いる調味料等の粉末と予め粉混合して添加、調味液や水、卵などに懸濁し添加、その他の原料と共に添加、他の原料を食肉に混合した後に最後に添加、などの方法が考えられるが、いずれの方法でも構わない。混合方法も一般的なニーダーやミキサー等による混合でよく、特に制限はないが、結晶セルロースが偏在しないように混合することは、必要である。
【0018】
本発明の食肉加工製品には、食肉や玉ねぎ、卵、パン粉などの食品素材、結晶セルロース以外に、単糖類、オリゴ糖類、糖アルコール類、澱粉類、加工澱粉類、油脂類、蛋白類、アミノ酸類、食塩、各種リン酸塩類、乳化剤、増粘安定剤、ゲル化剤、酸味料、pH調整剤、香料、保存料、色素など食品に使用できる成分を適宜配合してもよい。
【0019】
また、本発明では部分アルファー化澱粉を結晶セルロースと併用すると、より風味が増すため好ましい。食肉、結晶セルロース、部分アルファー化澱粉の質量比が100:(0.01〜10):(0.01〜10)の範囲で使用するのが好ましい。より好ましくは100:(0.1〜5):(0.1〜5)である。部分アルファー化澱粉は、予め結晶セルロースと混合しておいて用いてもよいし、食肉加工製品を製造する際に別々に添加してもよい。
【0020】
ここでいう部分アルファー化澱粉とは、澱粉を湿熱処理により部分的にアルファー化したものである。その原料は特に制限はなく、とうもろこし澱粉、小麦澱粉、米澱粉、馬鈴薯澱粉などいずれの澱粉原料でもよい。部分アルファー化澱粉のなかでも、澱粉粒の内部がより多くアルファー化され、外郭部はアルファー化の程度が低いものが好ましい。具体的には冷水可溶分が6質量%以下のものが好ましい。冷水可溶分が6質量%以下のとき、糊成分の流出が少なく、良好な食感を維持できる。
【実施例】
【0021】
実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、これらによって本発明は何ら制限されるものではない。なお、測定及び評価は以下の通りに行った。
【0022】
<平均粒径>
(1)固形分濃度が1%、総量1300〜1700mlの水分散液となるようにサンプルと純水を2Lステンビーカーに量り取り、汎用攪拌翼かい十字(半径35mm)を取り付けたプロペラ攪拌機(スリーワンモーターHEIDON(商品名)BL−600)を用いて25℃、500rpmで20分間分散した。
(2)レーザー回折散乱装置(堀場製作所製 LA−910、超音波分散1分)により積算体積が50%になる値(メジアン径)を読み取り、平均粒径とした。
【0023】
[製造例1]
60℃の温水10kgを用意し、軽く攪拌しながら、結晶性セルロース80質量%とカラヤガム10質量%とデキストリン10質量%からなる乾燥状態のセルロース複合体(商品名:セオラスRC−N81、旭化成ケミカルズ(株)製)を1.35kg加えた後、分散助剤として、デキストリン(商品名:パインデックス#3、松谷化学工業(株)製)1.65kgを加え、さらに20分間攪拌した。この分散溶解液を高圧ホモジナイザー(APV社製)を用いて15MPaの圧力で2パスして混合処理したのち、スプレードライヤーを用いて入り口温度が90〜100℃、出口温度が70〜80℃の条件で噴霧乾燥して、易分散性の結晶セルロース製剤Aを得た。この結晶セルロース製剤Aは、分散助剤を加えて高圧ホモジナイザーで処理し、スプレードライで乾燥しているので、非常に分散し易い結晶セルロース製剤であり、一般的な食肉加工製品の製造工程において分散可能なものである。
【0024】
[実施例1、2、比較例1〜4](チキンナゲットでの評価)
表1の処方にてチキンナゲットを作成した。実施例1、2は結晶セルロース成分として、製造例1の結晶セルロース製剤A(平均粒径8μm、結晶セルロース36質量%の製剤)を食肉100質量部に対して1.1質量部(結晶セルロースとして0.4質量部)を添加し、比較例1、2は結晶セルロース成分を無添加とし、比較例3、4は結晶セルロース成分として平均粒径25μmのセオラスUF−F702(製品名、旭化成ケミカルズ株式会社製、結晶セルロース100%)を食肉100質量部に対して1.1質量部添加した例である。
【0025】
表1にある鶏胸肉とラード以外の成分は、予め粉体のまま混合した。鶏肉(ムネ肉)を包丁で叩いて繊維状に割いた後、ラード、粉体混合品を練りこみ、この練りこみ品15gを成型し、薄力粉で打ち粉し、バッター液(配合;薄力粉45.7g、とうもろこし粉45g、アルファー化デンプン5g、砂糖3g、食塩1g、クチナシ色素0.15g、全卵液50g、水100g)につけた。実施例1及び比較例1、3では180℃で1分間揚げた後、−20℃で18時間冷凍し、再度170℃で3分間揚げた。実施例2及び比較例2、4では、170℃で4分間揚げた後、−20℃で18時間冷凍し、電子レンジで600Wにて4分間加熱した。それぞれの練りこみ後の重量と最終重量を比較して、最終重量/練りこみ後の重量×100を歩留まりとして計算した。また、官能試験はパネラー3名(20代女性、30代及び50代の男性)で行い、硬さ、スパイシー感を評価した。
【0026】
その結果、歩留まりは実施例1で140.5%、実施例2で144.6%であったのに対し、比較例1で111.7%、比較例2が126.2%、比較例3が124.8%、比較例4が127.9%であった。この結果から、実施例1、2において良好な歩留まりとなることが判明した。また官能試験では結晶セルロース成分を添加した実施例1、2は、結晶セルロース成分を添加していない比較例1、2と比べて肉質が柔らかくジューシーであり、好ましい食感であった。一方、比較例3は肉質が柔らか過ぎ、比較例4は逆に肉質が硬過ぎる食感となった。また、実施例2、比較例2及び4のレンジ加熱後のチキンナゲットをキッチンペーパの上におき、10分後の油の染み出し状況を目視にて観察したところ、比較例4、実施例2では、油の染み出しが少なかった。一方、比較例1はこれらと比較して、明らかに油の染み出しが多かった。以上の結果を表2にまとめて示す。
【0027】
【表1】


【表2】

【0028】
[参考例](ハンバーグでの評価)
参考として、油で揚げる工程を含まない食肉加工製品の例を示す。表3の基本処方に対して、表4に示すように各添加剤(参考例2は、特開平11−46723号公報(特許文献5)の実施例1の複合体Dを該文献に従って作成したものを用いた。なお、表4中の平均粒径は本願明細書にて開示した方法で添加剤を水に分散した時の結晶セルロース成分の平均粒径である。他は製品名、旭化成ケミカルズ株式会社製)を外割りで加えてハンバーグを作成した。参考例7のセオラスDX−2は結晶セルロース製剤Aと同等の分散性を持った結晶セルロース製剤である。参考例4では部分アルファー化澱粉(製品名 PCS、旭化成ケミカルズ株式会社製)を結晶セルロースと併用した。
【0029】
まず、玉ねぎを3mm程度にみじん切りし、みじん切りした玉ねぎ約400gを電子レンジで600Wで10分間調理し、容器をラップで覆って10分蒸して表2に従って所定量に小分けした。パン粉、食塩、こしょう、ナツメグ、グルタミン酸ソーダ(調味料)をポリ袋に量り取り、粉で十分に混合した。フードプロセッサー(OHMICHI SANGYO社製 POT−33)の容器に牛豚合挽ミンチ、調理した玉ねぎ、全卵、トマトケチャップ、ポリ袋で混合した粉混合物を入れて、2000rpmで10秒攪拌し、一度、容器内壁の付着物を掻き落して、再度、2000rpmで20秒攪拌した。空気を抜きながら約70gの団子を作り、ハンバーグ成型器に入れて成型し重量を測定した。成型物をオーブンレンジ230℃で11分間焼成し、ドリップ液の重量、ハンバーグの重量を測定した。室温で30℃以下まで放冷し、−20℃で3日間保管した。レンジで2個ずつを600Wにて3分間加熱解凍して官能評価を実施した。官能評価はパネラー3名(20代女性、30代及び50代の男性)で行い、美味しさ、ジューシー感、ネチャ付感、パサツキ感を添加剤無添加の比較例5と比較して下記の基準にしたがって5段階評価で行い、各人の評価点の平均点を算出した。その平均点の結果を表5に示す。
(ハンバーグの官能評価)
美味しさ (優)5 参考例6と比べて、明らかに美味しい。
(良)4 参考例6と比べて、どちらかといえば美味しい。
(普)3 参考例6と違いが分からない。
(可)2 参考例6と比べて、どちらかというと美味しくない。
(不可)1 参考例6と比べて、明らかにまずい。

ジューシー感 (優)5 参考例6と比べて、明らかにジューシー。
(良)4 参考例6と比べて、どちらかといえばジューシー。
(普)3 参考例6と違いが分からない。
(可)2 参考例6と比べて、どちらかというとジューシー感がない。
(不可)1 参考例6と比べて、明らかにジューシー感がない。

ネチャ付感 (優)5 参考例6と比べて、明らかにネチャ付きがない。
(良)4 参考例6と比べて、どちらかといえばネチャ付きがない。
(普)3 参考例6と違いが分からない。
(可)2 参考例6と比べてどちらかといえばネチャ付く感じがする。
(不可)1 参考例6と比べて、明らかにネチャ付く。

パサツキ感 (優)5 参考例6と比べて、明らかにパサツキがない。
(良)4 参考例6と比べて、どちらかといえばパサツキがない。
(普)3 参考例6と違いが分からない。
(可)2 参考例6と比べて、どちらかというとパサツキ感がする。
(不可)1 参考例6と比べて、明らかにパサツキ感がある。粉っぽい。
【0030】
【表3】

【0031】
【表4】

【0032】
【表5】

【0033】
平均粒径が10μmを超える結晶セルロースを用いている、参考例1〜5においてはいずれも歩留まりが向上しているだけでなく、美味しさやジューシー感が向上しており、特に部分アルファー化澱粉を添加した参考例4では、官能評価が良好な結果となった。参考例7では平均粒径8.1μmの結晶セルロース製剤を用いているが、若干歩留まりが悪く、官能評価ではネチャ付感が強くなっていた。
【0034】
参考例では加熱処理が焼成であり、結晶セルロールの平均粒径が大きい方が歩留まりが良い結果となっている。一方、加熱処理が油で揚げる場合(実施例1、2、比較例1〜4)では反対の結果となっている。
【0035】
[実施例3、4、比較例5](さつま揚げでの評価)
イワシのすり身600gに、ゴボウ1/2本とニンジン40gのさきがき、溶き卵1/2個分、白味噌大さじ2杯、醤油小さじ1/2杯、酒大さじ1杯、塩小さじ1/2杯に対し、実施例3ではセオラスDX−2(製品名、旭化成ケミカルズ株式会社製)を2.8質量%(結晶セルロース換算で1質量%)添加した。実施例4では、セオラスDX−2に加えてさらにPCS(製品名、旭化成ケミカルズ株式会社製、冷水可溶分3%の部分アルファー化デンプン)を3質量%添加した。比較例5ではセオラスDX−2を0.025質量%(結晶セルロース換算で0.009質量%)添加した。それぞれの混合物は、小判型に成型し、油で170℃にて5分間揚げた。その後、油を十分に切り、揚げた前後の重量を測定して歩留まりを計算した。実施例3では歩留まりが95%、実施例4では97%であったのに対し、比較例5では91%となった。このため実施例3、4では、比較例5に比べて、良好な歩留まりとなった。食感も、実施例3、4は、比較例5に比べジューシーであり、実施例4が最もジューシーで、且つ美味しかった。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は食肉加工製品の油の染み出しを防止し、歩留まり及び食感を向上できるので食肉加工製品の製造に好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食肉100質量部に対して、平均粒径が10μm以下の結晶セルロースを0.01〜10質量部混合し、油で揚げることを特徴とする食肉加工製品の製造方法。
【請求項2】
さらに部分アルファー化澱粉を混合することを特徴とする、請求項1に記載の食肉加工製品の製造方法。
【請求項3】
食肉、結晶セルロース、部分アルファー化澱粉の質量比が100:(0.01〜10):(0.01〜10)であることを特徴とする、請求項2に記載の食肉加工製品の製造方法。
【請求項4】
食肉加工製品がチキンナゲット、メンチカツ又はさつま揚げである、請求項1〜3のいずれかに記載の食肉加工製品の製造方法。
【請求項5】
食肉100質量部に対して、平均粒径が10μm以下の結晶セルロースを0.01〜10質量部含有する、油で揚げられた食肉加工製品。
【請求項6】
食肉100質量部に対して、さらに部分アルファー化澱粉を0.01〜10質量部含有する、請求項5に記載の油で揚げられた食肉加工製品。
【請求項7】
食肉加工製品がチキンナゲット、メンチカツ又はさつま揚げである請求項5又は6に記載の食肉加工製品。

【公開番号】特開2011−72285(P2011−72285A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−229505(P2009−229505)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】