説明

飲料充填装置

【課題】ボトルを殺菌する殺菌剤により検査部の機器が損傷を受けないようにする。
【解決手段】プリフォームからブロー成形によりボトル1を成形する成形部7と、ボトルを過酸化水素のミストで殺菌する殺菌部9と、ボトルを無菌エアでエアリンスするエアリンス部96と、ボトルに飲料を充填し密封する充填部とが連結され、成形部から殺菌部及びエアリンス部を経て充填部へとボトルを走行路上で連続走行させる走行手段が設けられ、殺菌部から充填部に至る箇所がチャンバー等で覆われ、成形部で成形されたボトルに検査を行う検査部8が、成形部と殺菌部との間に設けられ、検査部のチャンバー8aと殺菌部のチャンバー9aとの間に雰囲気遮断チャンバー79が設けられ、検査部のチャンバー内には清浄なエアが供給されるようにし、雰囲気遮断チャンバーは排気手段により排気される。これにより、検査部内の機器の過酸化水素による腐食を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボトルの成形からボトルの過酸化水素による殺菌を経て飲料の充填に至るまでを連続的に行う飲料充填装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の飲料充填装置として、プリフォームからブロー成形によりボトルを成形する成形部と、成形部で成形されたボトルを過酸化水素のミストで殺菌する殺菌部と、殺菌部で殺菌されたボトルをエアリンスするエアリンス部と、エアリンス部でエアリンスされたボトルに飲料を充填し密封する充填部とが連結され、成形部から殺菌部及びエアリンス部を経て充填部へとボトルを連続走行させる走行手段が設けられ、成形部から充填部に至る箇所がチャンバーで覆われたものが知られている。この飲料充填装置によれば、ボトルが成形段階で加えられた熱を利用して過酸化水素のミストによる殺菌効果を高めることができる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−111295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の飲料充填装置によれば、ボトルの成形からボトルの過酸化水素による殺菌を経て飲料の充填に至るまでを連続的に行うことができるが、成形したボトルをすべて殺菌工程及び充填工程へと送るので、ボトルの不良品にも飲料が充填されそのまま出荷されてしまうおそれがある。例えば、温度が不十分なままボトルが殺菌工程に送られた場合は、殺菌が不完全になることがあり、このようなボトルにも飲料が充填され出荷されてしまうというおそれがある。また、傷等の生じたボトルにも飲料が充填され出荷されてしまうというおそれがある。
【0005】
また、従来の飲料充填装置では、過酸化水素等の殺菌剤のミストをボトルに向かって吹き付けるようになっているが、このミストが飲料充填装置の各種の機器に付着し、これらを腐食させたり傷付けたりするという問題が生じている。
【0006】
さらに、従来の飲料充填装置では、例えばボトルの成形時の残熱を利用して殺菌剤による殺菌効果を高めようとしているが、ボトルを搬送する際にボトルがホイールのガイド等に接触して熱を奪われやすいので、殺菌効果が低減するおそれがある。
【0007】
したがって、本発明は、上記諸問題点を解消することができる飲料充填装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は次のような構成を採用する。
【0009】
なお、図面の参照符号を括弧付きで付するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0010】
すなわち、請求項1に係る発明は、加熱されたプリフォーム(6)からブロー成形によりボトル(1)を成形する成形部(7)と、成形部(7)で成形されたボトル(1)を過酸化水素のミスト(α)又はガス(β)で殺菌する殺菌部(9)と、殺菌部(9)で殺菌されたボトルを無菌エア(γ)でエアリンスするエアリンス部(96)と、エアリンス部(96)でエアリンスされたボトル(1)に飲料(a)を充填し密封する充填部(10)とが連結され、上記成形部(7)から上記殺菌部(9)及びエアリンス部(96)を経て上記充填部(10)へとボトル(1)を走行路上で連続走行させる走行手段が設けられ、少なくとも上記殺菌部(9)から上記充填部(10)に至る箇所がチャンバー(9a等)で覆われた飲料充填装置において、上記成形部(7)で成形されたボトル(1)について所定の検査を行う検査部(8)が、上記成形部(7)と上記殺菌部(9)との間にこれらに連結されるように設けられ、検査部(8)のチャンバー(8a)と殺菌部(9)のチャンバー(9a)との間には雰囲気遮断チャンバー(79)が設けられ、検査部(8)のチャンバー(9a)内にはエアの供給手段によって清浄なエアが供給されるようにし、雰囲気遮断チャンバー(79)からは排気手段によって排気されるようにした飲料充填装置を採用する。
【0011】
請求項2に記載されるように、請求項1に記載の飲料充填装置において、上記殺菌部(9)のチャンバー(9a)が上記雰囲気遮断チャンバー(79)に接する箇所に、上記殺菌部(9)のチャンバー(9a)内から過酸化水素のミスト又はガスをチャンバー(9a)外に排出する排気手段が設けられたものとすることができる。
【0012】
請求項3に記載されるように、請求項1に記載の飲料充填装置において、上記殺菌部(9)のチャンバー(9a)が上記雰囲気遮断チャンバー(79)に接する箇所に、エアカーテンを形成するエアノズル(90)が配置されたものとすることができる。
【0013】
請求項4に記載されるように、請求項1に記載の飲料充填装置において、上記走行手段は、上記成形部(7)から上記充填部(10)へと列状に配置されたホイール(36a等)と、各ホイールの回りでボトル(1)の首部(1a)を把持して旋回すると共にボトル(1)を上流側ホイールから下流側のホイールへと受け渡すグリッパ(28等)とを具備したものとすることができる。
【0014】
請求項5に記載されるように、請求項1に記載の飲料充填装置において、上記エアの供給手段にはヒータ(97)が設けられ、加熱された清浄なエアが検査部(8)のチャンバー(8a)内に供給されるものとすることができる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によれば、加熱されたプリフォーム(6)からブロー成形によりボトル(1)を成形する成形部(7)と、成形部(7)で成形されたボトル(1)を過酸化水素のミスト(α)又はガス(β)で殺菌する殺菌部(9)と、殺菌部(9)で殺菌されたボトルを無菌エア(γ)でエアリンスするエアリンス部(96)と、エアリンス部(96)でエアリンスされたボトル(1)に飲料(a)を充填し密封する充填部(10)とが連結され、上記成形部(7)から上記殺菌部(9)及びエアリンス部(96)を経て上記充填部(10)へとボトル(1)を走行路上で連続走行させる走行手段が設けられ、少なくとも上記殺菌部(9)から上記充填部(10)に至る箇所がチャンバー(9a等)で覆われた飲料充填装置において、上記成形部(7)で成形されたボトル(1)について所定の検査を行う検査部(8)が、上記成形部(7)と上記殺菌部(9)との間にこれらに連結されるように設けられ、検査部(8)のチャンバー(8a)と殺菌部(9)のチャンバー(9a)との間には雰囲気遮断チャンバー(79)が設けられ、検査部(8)のチャンバー(9a)内にはエアの供給手段によって清浄なエアが供給されるようにし、雰囲気遮断チャンバー(79)からは排気手段によって排気されるようにした飲料充填装置であるから、過酸化水素が検査部に侵入するのを阻止し、検査部内の機器の過酸化水素による腐食を防止することができる。
【0016】
請求項2に記載されるように、請求項1に記載の飲料充填装置において、上記殺菌部(9)のチャンバーが上記雰囲気遮断チャンバー(79)に接する箇所に、上記殺菌部(9)のチャンバー(9a)内から過酸化水素のミスト又はガスをチャンバー(9a)外に排出する排気手段が設けられた場合は、雰囲気遮断チャンバー(79)内に流入する過酸化水素をさらに低減し、検査部(8)内の機器の過酸化水素による腐食をより適正に防止することができる。
【0017】
請求項3に記載されるように、請求項1に記載の飲料充填装置において、上記殺菌部(9)のチャンバーが上記雰囲気遮断チャンバー(79)に接する箇所に、エアカーテンを形成するエアノズル(90)が配置された場合は、雰囲気遮断チャンバー(79)内に流入する過酸化水素をさらに低減し、検査部(8)内の機器の過酸化水素による腐食をより適正に防止することができる。
【0018】
請求項4に記載されるように、請求項1に記載の飲料充填装置において、上記走行手段は、上記成形部(7)から上記充填部(10)へと列状に配置されたホイール(36a等)と、各ホイールの回りでボトル(1)の首部(1a)を把持して旋回すると共にボトル(1)を上流側ホイールから下流側のホイールへと受け渡すグリッパ(28等)とを具備した場合は、ボトル(1)が宙吊り状態で搬送されるので、ボトル(1)が検査部(8)内を通過する際にガイド等他の部分に接触することによってボトル(1)の残熱が奪われないようにすることができる。
【0019】
請求項5に記載されるように、請求項1に記載の飲料充填装置において、上記エアの供給手段にはヒータ(97)が設けられ、加熱された清浄なエアが検査部(8)のチャンバー(8a)内に供給されるものとした場合は、ボトル(1)が検査部(8)内を通過する際にエアによってボトル(1)の残熱が奪われないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る飲料充填装置により製造された飲料包装体であるボトルの正面図である。
【図2】本発明に係る飲料充填装置の概略平面図である。
【図3】本発明に係る飲料充填装置で行われる工程を示し、(A)はプリフォームの飲料充填装置への供給、(B)はプリフォームの成形部への供給、(C)はプリフォームの加熱、(D)はブロー成形をそれぞれ示す。
【図4】本発明に係る飲料充填装置で行われる工程を示し、(E)は成形型からのボトルの排出、(F)はグリッパによるボトルの首部の把持、(G)はボトル胴部の検査、(H)はボトルの温度検査をそれぞれ示す。
【図5】本発明に係る飲料充填装置で行われる工程を示し、(I)はボトルのサポートリングの検査、(J)はボトルの首部天面の検査、(K)はボトル底部の検査をそれぞれ示す。
【図6】本発明に係る飲料充填装置で行われる工程を示し、(L)はボトルの過酸化水素の凝結ミストによる殺菌、(M)はボトルのエアリンス、(N)は飲料の充填、(O)はキャッピングによる密封をそれぞれ示す。
【図7】ボトルを搬送するグリッパをホイールと共に示す概略平面図である。
【図8】図2中、検査部の部分拡大図である。
【図9】図8中、IX−IX線矢視図である。
【図10】干渉防止手段を備えたグリッパをホイールと共に示す概略平面図である。
【図11】不良ボトル排除手段を備えたグリッパをホイールと共に示す概略平面図である。
【図12】(A)(B)は不良ボトル排除手段の非作動時、作動時を各々示す。
【図13】ミスト生成装置の部分切欠正面図である。
【図14】エアリンス装置の部分切欠正面図である。
【図15】陽圧化手段を示す説明図であり、図2中、XV−XV線矢視図である。
【図16】本発明の他の実施の形態に係る飲料充填装置の概略平面図である。
【図17】図16に示す飲料充填装置で行われる工程の一部を示し、(M1)はボトルの過酸化水素の凝結ミストによる殺菌の後に行われるボトルのエアリンス、(M2)はボトルの無菌水リンスをそれぞれ示す。
【図18】ボトルを上下反転させることができるグリッパを示し、(A)は一対の挟み片が開いた状態、(B)は閉じた状態をそれぞれ示す。
【図19】図18に示すグリッパを上下反転させるためのカム装置を示す部分切欠平面図である。
【図20】図16に示す飲料充填装置におけるエアリンス装置の部分切欠正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明を実施するための形態について説明する。
【0022】
<実施の形態1>
最初に、この飲料充填装置によって製造される飲料包装体について説明すると、この飲料包装体は、図1に示すように、容器であるボトル1と蓋であるキャップ2とを備える。符号aはボトル1内に充填された飲料を示す。
【0023】
ボトル1の胴部は略円筒形であるが、角筒形等その他の形状であってもよい。胴部の底は底部で閉じられ、上側には円形の開口を有した首部1aが設けられる。
【0024】
ボトル1の首部1aには雄ネジ3が形成され、キャップ2には雌ネジ4が形成され、雌雄ネジ4,3の螺合によりボトル1の首部1aの開口が密封される。また、ボトル1の首部1aには、雄ネジ4の下方においてサポートリング5が形成される。後述するように、ボトル1はサポートリング5を介してグリッパにより保持されつつ飲料充填装置内を走行する。
【0025】
ボトル1は、後述するように、略試験管状のPET製プリフォーム6をブロー成形することにより形成される。ボトル1は、PET製に限らずポリプロピレン、ポリエチレン等他の樹脂を用いることも可能である。プリフォーム6は、射出成形等により成形され、略試験管状の本体とボトル1と同様な首部1aとを備える。この首部1aにはプリフォーム6の成形と同時に雄ネジ3が形成される。
【0026】
キャップ2はポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂を材料にして射出成形等により形成され、キャップ2の成形と同時に雌ネジ4も形成される。
【0027】
次に、上記ボトル1に飲料aを充填する飲料充填装置について説明する。
【0028】
図2に示すように、この飲料充填装置は、ボトル1の成形部7と、成形されたボトル1を検査する検査部8と、ボトル1の殺菌部9と、ボトル1のエアリンス部96と、飲料aをボトル1に充填し密封する充填部10とを具備する。
【0029】
ボトルの成形部7はその全体がチャンバー7aにより覆われる。成形部7のチャンバー7aには、プリフォーム6の供給口とボトル1の排出口がそれぞれ設けられる。
【0030】
成形部7のチャンバー7aの近傍にはプリフォーム供給機11が設置される。プリフォーム供給機11には、図3(A)に示すプリフォーム6が多数装填される。プリフォーム供給機11は、プリフォームコンベア12によって、プリフォーム6を図3(A)のごとく首部1aを上にした正立状態にして成形部7内に供給口から一個ずつ送り込むようになっている。
【0031】
プリフォーム供給機11は公知の機械であるから、その詳細については説明を省略する。
【0032】
図2に示すように、成形部7のチャンバー7a内には、上流側ホイール列と、下流側ホイール列と、上流側と下流側の両ホイール列間に設けられるターンテーブル列とが配置される。
【0033】
上流側ホイール列内の始端ホイール13aは水平ホイールであり、上記プリフォームコンベア12に接続される。この始端ホイール13aの回りには、プリフォーム6の首部1aを把持する図示しないグリッパが一定ピッチで多数設けられる。始端ホイール13aの回転と共にこれらのグリッパも回転し、プリフォームコンベア12から供給されるプリフォーム6をサポートリング5の近傍で掴んで次の中間ホイール13bへと搬送する。中間ホイール13bは垂直に配置され、その回りには図示しないフォークが一定ピッチで多数設けられる。この中間ホイール13bはそのフォークで始端ホイール13aのグリッパに把持されたプリフォーム6をサポートリング5下で挟むようにしてプリフォーム6を受け取った後、上方に回転してプリフォーム6を倒立状態にする。終端ホイール13cは始端ホイール13aと同様なグリッパを有した水平ホイールであり、中間ホイール13bによって倒立状態にされたプリフォーム6をグリッパで把持して受け取る。
【0034】
ターンテーブル列は、環状に並べられた第一乃至第六のターンテーブル14a,14b,14c,14d,14e,14fを有する。これらのターンテーブル14a,14b,14c,14d,14e,14f間には無端体であるチェーン15が張られる。このチェーン15は第三のターンテーブル14cの回りで長く伸びて迂回路を形成する。このチェーン15の長く伸びた迂回路の箇所が、チャンバー7aに付設された加熱室16内を走行するようになっている。チェーン15は第一乃至第六のターンテーブル14a,14b,14c,14d,14e,14fの回転と共に図2中矢印で示される一方向に連続走行可能である。
【0035】
チェーン15には、図3(B)に示すマンドレル17が一定ピッチで多数連結される。マンドレル17はチェーン15に牽引されつつターンテーブル14a,14b,14c,14d,14e,14f上を起立状態で走行可能である。また、マンドレル17はチェーン15上でその軸回りに自転可能に支持される。
【0036】
第一のターンテーブル14aは上流側ホイール列の終端ホイール13cに連結されており、この終端ホイール13cのグリッパで保持された倒立状態のプリフォーム6の首部1a内に各マンドレル17が図3(B)に示すように入り込んでプリフォーム6を受け取る。
【0037】
上記加熱室16内の壁面には、図3(C)に示すように、ヒータ16aが設けられている。プリフォーム6を受け取ったマンドレル17は加熱室16内をヒータ16aに沿って走行し、各マンドレル17に保持されたプリフォーム6は図3(C)に示すごとくヒータ16aによって加熱される。この加熱によってプリフォーム6はブロー成形可能な温度まで上昇する。また、各マンドレル17は走行中その鍔部が図示しないレールに接触することによりプリフォーム6を伴って自転し、このためプリフォーム6はその首部1aよりも下方が均一に加熱される。
【0038】
上記第五のターンテーブル14eの回りには、図3(D)に示すようなブロー成形用金型18が一定ピッチで多数設けられる。ブロー成形用金型18は第五のターンテーブル14eの回転と共に回転可能である。
【0039】
ブロー成形用金型18は左右対称に二つ割り可能であり、第四のターンテーブル14dから加熱されたプリフォーム6が到来すると、第五のターンテーブル14eの回りで回転しつつ、図3(D)に示すように、プリフォーム6をマンドレル17ごと挟み込む。マンドレル17の中心には貫通孔が形成されており、続いてこの貫通孔内にブローノズル19がプリフォーム6内へと挿入される。そして、ブローノズル19からプリフォーム6内に空気等の気体が吹き込まれることによって、金型18の内部でボトル1が成形される。
【0040】
ブロー成形用金型18は第六のターンテーブル14fに接近したところで型開きし、ボトル1を解放する。ブロー成形用金型18から解放されたボトル1は、図4(E)のごとく、マンドレル17に保持された状態で第六のターンテーブル14fを経て第一のターンテーブル14aへと向かう。
【0041】
下流側ホイール列内の始端ホイール19aは、上記第一のターンテーブル14aに接続され、終端ホイール19bは成形部7のチャンバー7aの排出口に接している。
【0042】
始端ホイール19aは、第一のターンテーブル14aの回転によって図4(E)のごとくマンドレル17に保持されたボトル1が到来すると、図4(F)のごとく把持具98でボトルを把持してマンドレル17から抜き取り、正立状態へと上下に反転させる。
【0043】
終端ホイール19bは、図7に示すようなグリッパ28を有する。このグリッパ28はボトル1の首部1aをその外側から挟む一対の挟み片28a,28bを有する。一対の挟み片28a,28bの基部はそれぞれ垂直ピンでホイール19bに回動可能に支持される。また、挟み片28a,28bの基部には垂直ピンを介して一対の噛み合う歯車30a,30bが固定される。さらに、一方の歯車30bにはレバー31を介してカムフォロア31aが連結され、他方の歯車30aはレバー32及びスプリング33を介してホイール19bに連結される。このスプリング33の引張力により一対の挟み片30a,30bは開方向に常時付勢される。一方、カムフォロア31aが接するカム34がホイール19bの内側において図示しないフレームに固定される。
【0044】
これにより、ホイール19bが回転すると、カムフォロア31aとカム34との摺接作用によって、グリッパ28は一対の挟み片28a,28bを開いて始端ホイール19aのグリッパ20からボトル1の首部1aを受け入れた後にボトル1の首部1aを挟み込み、ボトル1を宙吊り状態で保持しつつ次の検査部8へと旋回する。グリッパ28が検査部8に到達したところで、カムフォロア31aとカム34との摺接作用によって一対の挟み片28a,28bが開き、ボトル1を検査部8側のホイール列に受け渡す。
【0045】
この終端ホイール19bのグリッパ28は、始端ホイール19aの把持具98からボトル1を受け取ると、図9に示すように、ボトル1の首部1aをサポートリング5よりも下方で把持して搬送する。
【0046】
図2に示すように、ボトル1の検査部8が上記ボトル1の成形部7に連結される。この検査部8もその全体がチャンバー8aにより覆われる。図15に示すように、成形部7のチャンバー7aとの間の隔壁35には、ボトル1の通過口35aが設けられる。
【0047】
検査部8のチャンバー8a内には、図2に示すように、上記成形部7側のボトル1の走行手段である終端ホイール19bに連結されるホイール列が接続される。具体的には、このホイール列は三個のホイール36a,36b,36cで構成され、それらの外周にボトル1の走行路が設定される。また、各ホイール36a,36b,36cの回りには上記終端ホイール19bにおけるグリッパ28と同様なグリッパ28が設けられる。グリッパ28は、各ホイール36a,36b,36cの回りでボトル1の首部1aを把持して旋回しながら、ボトル1を始端ホイール36aから中間ホイール36bを経て終端ホイール36cへと受け渡す。これにより、ボトル1は上記成形部7内の終端ホイール19bから検査部7内のホイール36a,36b,36cの回りの走行路上を連続走行する。グリッパ28は、走行中その挟み片28a,28bでボトル1の首部1aを把持することから、ボトル1は宙吊り状態で走行する。図9に示すように、グリッパ28は始端ホイール36aにおいてボトル1の首部1aをサポートリング5よりも上方で把持し、中間ホイール36bにおいてボトル1の首部1aをサポートリング5よりも下方で把持し、終端ホイール36cにおいてボトル1の首部1aをサポートリング5よりも上方で把持するようにして、検査部8内を上流から下流へとボトル1を搬送する。
【0048】
上記ボトル1の成形部7側の終端ホイール19bに接する上記検査部8内の始端ホイール36aには、上記ボトル成形部7側のターンテーブルやホイールが緊急停止した時に、成形部7側の終端ホイール19bに取り付けられたグリッパ28と検査部8側の始端ホイール36aのグリッパ28との間で干渉が生じないようにするために、グリッパ干渉防止手段が設けられている。
【0049】
グリッパ干渉防止手段を有するため、図10に示すように、検査部8内の始端ホイール36aのグリッパ37は上記グリッパ28とは異なる構造となっている。
【0050】
すなわち、図10に示すように、検査部8内の始端ホイール36aには、グリッパ37が所定のピッチで多数取り付けられ、各グリッパ37はボトル1の首部1aをその外側から挟む一対の挟み片37a,37bを有し、一対の挟み片37a,37bの基部はそれぞれ垂直ピンでホイール36aに回動可能に支持され、挟み片37a,37bの基部には垂直ピンを介して一対の噛み合う歯車38a,38bが固定される。
【0051】
さらに、一方の歯車38aにはレバー39を介してカムフォロア39aが連結される。レバー39のカムフォロア39aと反対側にはピン40a及び円弧状長孔40bを介して一方の挟み片37aに連結される。他方の挟み片37bは他方の歯車38bと一体であり、この挟み片37bにはピン41a及び円弧状長孔41bを介してピストン・シリンダ装置42のピストンロッド42aが連結される。ピストン・シリンダ装置42は、ホイール36aに支持される。歯車38a,38bとホイール36aとの間には、図示しないトーションバネが取り付けられ、このトーションバネのねじり力によって一対の挟み片37a,37bは閉方向に常時付勢される。また、カムフォロア39aがカム43に常時押し付けられる。
【0052】
これにより、検査部8側の始端ホイール36aが回転すると、カムフォロア39aとカム43との摺接作用によって、グリッパ37は一対の挟み片37a,37bを開いて成形部7側の終端ホイール19bのグリッパ28からボトル1の首部1aを受け入れた後にボトル1の首部1aを挟み込み、ボトル1を宙吊り状態で保持しつつ旋回する。挟み片37a,37bはトーションバネのねじり力に抗して開方向に回動し、その際、各ピン40a,41aが各円弧状長孔40b,41b内を摺動する。
【0053】
ところが、成形部7側で何らかの異常が発生して成形部7側のターンテーブル列やホイール列が緊急停止する場合がある。そのときは、図10に示すように、ピストン・シリンダ装置42のピストンロッド42aが縮動作し、閉じ状態にあった一対の挟み片37a,37bは約180度の角度で拡開する。これにより、成形部7側の終端ホイール19bに取り付けられたグリッパ28と検査部8側の始端ホイール36aのグリッパ37との間での干渉が防止される。この場合、この始端ホイール36aおよびこれに後続するホイール36b以降の列は回転し続けるので、検査部8内に導入されたボトル1は下流側へと走行し続ける。
【0054】
なお、グリッパ干渉防止手段としては、上記構成に限るものではなく、図7に示した構造のグリッパ28をピストン・シリンダ装置42等によってホイール36aの半径方向にスライド可能にし、干渉を回避する際にグリッパ28を半径方向内側へと引っ込めるようにしてもよい。また、図7に示したようなグリッパ28をホイール36aの上方又は下方に屈曲可能にピン等で軸支し、干渉を回避する際にグリッパ28を上方又は下方に屈曲させるようにしてもよい。
【0055】
図4(G)及び図8に示すように、検査部8内のチャンバー8a内で始端ホイール36aの回りの所定位置には、ボトル1の円筒形、角筒形等の胴部を撮像してボトル1の良否を判別するボトル胴部検査手段として、照明手段であるランプ44と撮像手段であるカメラ45が設けられている。ランプ44からの照射光がボトル1の胴部を透過し、カメラ45がその透過光を受けてボトル1の胴部を撮像する。このボトル1の胴部の画像は図示しない画像処理装置によって処理され、傷、異物、変色等の異常の存否について判別される。
【0056】
図4(H)、図5(I)(J)(K)及び図8に示すように、始端ホイール36aに隣接する中間ホイール36bに沿って、ボトル1の温度を検出してボトル1の良否を判別する温度検査手段として、温度センサ46と、ボトル1の首部1aのサポートリング5を撮像してボトル1の良否を判別するサポートリング検査手段として、照明手段のランプ47及び撮像手段のカメラ48と、ボトル1の首部1aの平坦かつ平滑であるべきリング状の天面1bを撮像してボトル1の良否を判別するボトル首部天面検査手段として、照明手段のランプ49及び撮像手段のカメラ50と、ボトル1の底部を撮像してボトル1の良否を判別するボトル底部検査手段として、照明手段のランプ51及び撮像手段のカメラ52とが、順に設けられる。
【0057】
なお、上記各種検査手段の配置順序は適宜入れ替え可能であり、位置も適宜変更可能である。また、適宜省略することも可能であり、他の検査項目のために他の検査手段を追加することも可能である。
【0058】
温度センサ46は、例えば赤外放射温度計であるが、他の温度計を使用することも可能である。この温度センサ46が、図4(H)に示すように、ボトル1の首部1aにおけるサポートリング5、底部にそれぞれ対向するように設置される。
【0059】
ボトル1は、成形部7での残熱を保持しつつグリッパ28に把持されて所定の速度で始端ホイール36a、中間ホイール36bの回りを走行しながら、温度センサ46によって表面の温度を検出される。このボトル1の残熱は後にボトル1を過酸化水素で適正に殺菌するために必要なもので、温度センサ46による検出温度は50℃以上であることが望ましい。
【0060】
これら二箇所の温度センサ46により検出されたボトル1の温度のいずれかが、所定の温度に達していない場合は、そのボトル1は不良品として判断される。すなわち所定の温度に達していないボトル1は後の過酸化水素による殺菌を行っても殺菌が不十分となる可能性がある。逆にボトル1の上記二箇所の温度がいずれも上記所定の温度に達しているボトル1は、後の過酸化水素による殺菌によって十分に殺菌され得る。
【0061】
なお、温度センサ46が対向するボトル1の上記二箇所は樹脂の肉厚が大きくコールドスポットを生じやすい部分であるが、温度センサ46は上記二箇所に限られるものではなく、ボトル1の形状、大きさ、成形金型の種類等に応じて適宜増減可能である。例えば、上記二箇所のうち特にコールドスポットを生じやすいボトル1の底部に対してのみ温度センサ46を設置することも可能である。
【0062】
また、ボトル1の薄肉部分は厚肉部分に比べて温度が低下しやすく熱が逃げやすいことから、例えばボトル1の胴部の薄い箇所に対向するように温度センサ46を設けるようにしてもよい。これにより、後の殺菌に必要最小限な温度の残熱を保ったボトル1のみを殺菌部9へと搬送することができる。
【0063】
図5(I)及び図8に示すように、サポートリング検査手段としてのランプ47は、ボトル首部1aのサポートリング5の上方に環状に設けられる。具体的には、LEDを環状に配置することによって構成される。カメラ48はランプ47の照明光がサポートリング5の上面で反射した光を受けるように配置される。このカメラ48によってサポートリング5が撮像される。このときグリッパ28の挟み片28a,28bは、図9に示すように、サポートリング5の下方で首部を把持しているので、サポートリング5の撮影がグリッパ28の挟み片28a,28bにより妨げられることはない。このサポートリング検査手段によってサポートリング5の特に上面の状態が重点的に検査される。
【0064】
カメラ48が写したこのサポートリング5の画像は、図示しない画像処理装置によって処理され、傷、変形等の異常の存否について判別される。サポートリング5は飲料包装体としてのボトル1の購入者等がキャップを開ける際に触れる可能性がある箇所であることから、傷や変形等の存在は好ましくない。傷や変形等がサポートリング5に許容値を超えて生じたボトル1は不良品と判断される。
【0065】
図5(J)及び図8に示すように、ボトル首部天面検査手段としてのランプ49は、ボトル首部1aの天面1bの上方に環状に設けられる。具体的には、LEDを環状に配置することによって構成される。カメラ50はランプ49の照明光が天面1bで反射した光を受けるように配置される。このカメラ50によって天面1bが撮像される。カメラ50が写したこの天面1bの画像は、図示しない画像処理装置によって処理され、傷、変形等の異常の存否について判別される。このボトル首部1aの天面1bは、キャップ2の天井(図1参照)が当たることによりボトル1内を密封する箇所であることから、平坦かつ平滑である必要がある。このため傷や変形等が天面1bに生じたボトル1は不良品と判断される。
【0066】
図5(K)及び図8に示すように、ボトル底部検査手段としてのランプ51は、ボトル1の底部の下方に環状に設けられる。具体的には、LEDを環状に配置することによって構成される。カメラ52はランプ51の照明光がボトル1の底部を透過した光を受けるようにボトル1の首部1aの上方に配置される。このカメラ52によってボトル1の底部が撮像される。カメラ52が写したボトル1の底部の画像は、図示しない画像処理装置によって処理され、傷、異物、変色等の異常の存否について判別される。
【0067】
なお、図示しないが検査部8内を走行するグリッパ28には、つや消し表面加工が施されている。これにより、上記各種ランプ47,49,51からの照明光がグリッパ28で反射することによる検査ミスが発生しないようにすることができる。また、検査部8のチャンバー8aには図示しない覗き窓が設けられるが、その窓にはチャンバー8a外の光がチャンバー8a内に入らないように遮光ガラスが設けられる。
【0068】
上記中間ホイール36bにその下流側から接する終端ホイール36cは、図11に示すように、上記中間ホイール36bのグリッパ28と同様なグリッパ28を有する。この終端ホイール36cが回転すると、カムフォロア31aとカム53との摺接作用によって、グリッパ28は一対の挟み片28a,28bを開いて中間ホイール36bのグリッパ28からボトル1の首部1aを受け入れた後にボトル1の首部1aを挟み込み、ボトル1を宙吊り状態で保持しつつ次の殺菌部9へと旋回する。グリッパ28が殺菌部9に到達したところで、カムフォロア31aとカム53との摺接作用によって一対の挟み片28a,28bが開き、ボトル1を殺菌部9側のホイールに受け渡す。カム53は終端ホイール36cの内側の図示しない静止フレームに固定される。
【0069】
この終端ホイール36cには、検査部8での検査により不良と判断されたボトル1を走行路から排除する排除手段が設けられる。
【0070】
排除手段は、図11及び図12に示すようなグリッパ開放機構を有する。グリッパ開放機構は、上記カムフォロア31aの枢軸54に更に追加された上記カムフォロア31aと同様な形状の追加カムフォロア31bと、この追加カムフォロア31bに接する上記カム53と一部分だけ形状が相違する追加カム55をカム53の下方に有する。また、上記カム53の一部分だけ別体とされ可動化された可動カム部53aを具備する。
【0071】
可動カム部53aは、静止した上記カム53の一部分が切り取られた跡に半径方向にスライド可能に挿入される。そして、ホイール36cの内側において図示しないフレームに連結されたピストン・シリンダ装置56のピストンロッド56aに連結される。また、追加カム55における上記可動カム部53aに対応した部分には追加カムフォロア31bが嵌り込む凹部55aが形成される。
【0072】
その他、排除手段には、図2及び図8中、符号57で示す不良ボトル排除用の筒状のシューターが設けられる。
【0073】
上記検査部8から不良品と判断されたボトル1について不良である旨の信号が発せられると、当初図12(A)に示すように伸状態にあったピストン・シリンダ装置が同図(B)に示すように縮動作し、可動カム部53aをカム53の半径方向内側へと後退させる。このため、追加カムフォロア31bが追加カム55の凹部55a内に没入し、グリッパ28の一対の挟み片28a,28bが二点鎖線で示す閉じ状態から実線で示す開状態に変化し、不良品のボトル1を解放する。不良品のボトル1はグリッパ28の下方に落下し、シューター57から所定の集積部へと送られる。良品のボトル1については、可動カム部53aが図12(A)の位置に保持されることから、排除手段の箇所を素通りし、殺菌部9へと向かう。
【0074】
図2に示すように、ボトル1の殺菌部9がボトル1の検査部8に連結される。この殺菌部9もその全体がチャンバー9aにより覆われる。
【0075】
殺菌部9のチャンバー9a内には、図2に示すように、上記検査部8側のボトル1の走行手段である終端ホイール36cに連結されるホイール列が接続される。具体的には、このホイール列は二個のホイール58a,58bで構成され、それらの外周にボトル1の走行路が設定される。また、各ホイール58a,58bの回りには、図7に示したグリッパ28と同様なグリッパ28が設けられる。
【0076】
グリッパ28は、各ホイール58a,58bの回りでボトル1の首部1aを把持して旋回しながら、ボトル1を始端ホイール58aから終端ホイール58bへと順に受け渡す。これにより、検査済みの良品ボトル1は上記検査部8内の終端ホイール36cから殺菌部9内の終端ホイール58bへと走行路上を連続走行する。グリッパ28は、走行中その挟み片28a,28bでボトル1の首部1aを把持することから、ボトル1は正立宙吊り状態で走行する。
【0077】
殺菌部9のチャンバー9a内において始端ホイール58aに下流側から接する中間ホイール58bの回りの所定位置には、図6(L)に示すように、ボトル1に殺菌剤である過酸化水素の凝結ミストαを供給する凝結ミスト供給手段としての噴霧管59が設けられる。噴霧管59はその先端のノズル孔がその直下を走行する良品ボトル1の首部1aの開口に正対しうるように定位置に固定される。
【0078】
また、図6(L)に示すように、必要に応じて噴霧管59の下方のボトル走行路に沿ってトンネル60が設けられる。
【0079】
噴霧管59は、一本であっても複数本であってもよく、上記中間ホイール58bの周囲に沿って設置される。図示例では中間ホイール58bの回りに設置されるが、他のホイールの回りに設置することも可能である。
【0080】
過酸化水素の凝結ミストαは、図13に示したミスト生成装置61によって噴霧し加熱した過酸化水素を凝結させることにより生成される。
【0081】
このミスト生成装置61は、殺菌剤である過酸化水素の水溶液を滴状にして供給する二流体スプレーである過酸化水素供給部62と、この過酸化水素供給部62から供給された過酸化水素の噴霧をその沸点以上、非分解温度以下に加熱して気化させる気化部63とを備える。過酸化水素供給部62は、過酸化水素供給路62a及び圧縮空気供給路62bからそれぞれ過酸化水素の水溶液と圧縮空気を導入して過酸化水素の水溶液を気化部63内に噴霧するようになっている。気化部63は内外壁間にヒータ63aを挟み込んだパイプであり、パイプ内に吹き込まれた過酸化水素の噴霧を加熱し気化させる。気化した過酸化水素のガスは噴霧管59から、ボトル1の首部1aの開口に向かって凝結ミストαとなって噴出する。
【0082】
ボトル1はホイール58bの回りをその首部1aを上に向けた状態で搬送され、その走行路の上方において噴霧管59の下端がボトル1の首部1aに向かって開口する。噴霧管59内に送られた過酸化水素の凝結ミストαは、噴霧管59の下端のノズル孔からボトル1の首部1aに向かって連続して吹き出る。そして、吹き出た過酸化水素の凝結ミストαは走行するボトル1の首部1aからボトル1内へ流入してボトル1の内面を殺菌し、他の過酸化水素の凝結ミストαはボトル1外へと流れてボトル1の外面を殺菌する。この時ボトル1はトンネル60内を走行することから、凝結ミストαはボトル1の外面にも満遍なく接触する。
【0083】
図2に示すように、ボトル1のエアリンス部96がボトル1の殺菌部9に連結される。このエアリンス部96もその全体がチャンバー96aにより覆われる。
【0084】
エアリンス部96のチャンバー96a内には、図2に示すように、上記殺菌部9側のボトル1の走行手段である終端ホイール58bに連結されるホイール列が接続される。具体的には、このホイール列は四個のホイール58c,58d,58e,92aで構成され、それらの外周にボトル1の走行路が設定される。また、各ホイール58c,58d,58e,92aの回りには、図7に示したグリッパ28と同様なグリッパ28が設けられる。
【0085】
グリッパ28は、各ホイール58c,58d,58e,92aの回りでボトル1の首部1aを把持して旋回しながら、ボトル1を始端ホイール58cから終端ホイール92aへと順に受け渡す。これにより、検査済みの良品ボトル1は上記殺菌部9内の終端ホイール58bからエアリンス部96内の終端ホイール92aへと走行路上を連続走行する。グリッパ28は、走行中その挟み片28a,28bでボトル1の首部1aを把持することから、ボトル1は正立宙吊り状態で走行する。
【0086】
上記中間ホイール58bに下流側から接する次段の中間ホイール58cの回りには、ボトル1に無菌の加熱エア又は常温エアを供給してボトル1を清浄化するエアリンス手段が設けられる。
【0087】
このエアリンス手段は、図6(M)及び図14に示すように、無菌の加熱エアγ又は常温エアを吐出するノズル64を備える。
【0088】
図14に示すように、所定の駆動源からの動力で回転するホイール58cが機台65上に起立する旋回軸66に水平に取り付けられる。ホイール58cの盤面からは支柱66aが上方に伸び、支柱66aの上端に上記加熱エアγが流入するマニホルド67が固定される。マニホルド67の上部中央からは旋回軸66の軸心の延長線上で導管68が上方に伸び、この導管68が機台65に連結されるチャンバー9aのフレーム部材にベアリング69を介して保持される。これにより、マニホルド67はホイール58cと一体で旋回軸66の回りを回転可能である。
【0089】
また、ホイール58cの盤面からは他の支柱70が上方に伸び、この支柱70の上部にボトル1のグリッパ28が取り付けられる。支柱70及びグリッパ28は所定のピッチでホイール58cの回りに多数配置される。多数のグリッパ28は支柱70を介してホイール58cに連結されるので、ホイール58cの回転と共に回転する。
【0090】
これらのグリッパ28は図7に示したものと同様な構造を有する。また、例えば殺菌部9のミスト発生装置61等に不具合が発生して殺菌不良のボトル1が生じた場合に、ボトル1を走行路から排除する排除手段として、図11および図12に示したものと同様な機構が設けられる。図2中、符号71で示されるものは、この排除手段によってボトル1の走行路から排除されるべき殺菌不良ボトル1を落下させるためのシューターである。
【0091】
マニホルド67の回りからは各グリッパ28に向って加熱エアγの供給管72がそれぞれ伸び、各供給管72の先端に上記ノズル64が取り付けられる。ノズル64は上記支柱70に固定され、その先端のノズル孔がグリッパ28に保持されたボトル1の首部1aの開口に正対する。これにより、ホイール58cが回転すると、ノズル64はグリッパ28に保持されたボトル1と共に旋回軸66の回りを旋回し、加熱エアγをボトル1内に吹き込む。
【0092】
上記マニホルド67の導管68の上端には、他の静止した導管74がシール部材75を介して接続される。導管68はマニホルド67と一体で導管74に対して回転し、シール部材75が両管68,74の接続部からの加熱エアγの漏れを防止する。
【0093】
導管74の上流側にはブロア76、ULPA(Ultra Low Penetration Air Filter)フィルタ77及び電熱器78で構成される熱風供給装置が設けられる。ブロア76から引き込まれた空気がULPAフィルタ77で浄化され、電熱器78で所定温度まで加熱され、加熱エアγとなって導管74内に送られる。加熱エアγは無菌エアであり、例えば100℃以上の温度に加熱される。この加熱エアγはマニホルド67へと至り、各供給管72を通ってノズル64からボトル1内へと吹き出し、或いはボトル1外に流出する。
【0094】
上記導管74からマニホルド67を経てノズル64へと至る管路はできるだけ短く形成されており、そのため加熱エアγは結露することなくボトル1に到達する。
【0095】
ノズル64からボトル1内に加熱エアγが吹き込まれると、ボトル1の内面の全面にムラなく接触し、上述のノズル59から吹き込まれた過酸化水素の余剰分を除去する。
【0096】
なお、加熱エアγの吹き込み時間は、ボトル1の内部に漂っている過酸化水素の凝結ミストαをすべて排出できる範囲で行えばよい。加熱エアγの温度がボトル1の耐熱温度以上である場合、その吹き込み時間があまり長いとボトル1が耐熱温度を超えて加熱され、変形等を生じることがあるので注意を要する。
【0097】
また、必要に応じて、加熱エアγに代えて常温の無菌化されたエアに、低濃度の過酸化水素の凝結ミストを混ぜて過酸化水素をガス化させ、結露しないようにノズル64へと供給するようにしてもよい。
【0098】
このように、ボトル1内に無菌化した加熱エアγが供給されエアリンス処理が行われることにより、ボトル1がその内面から加熱され、過酸化水素の凝結ミストαによる殺菌効果が高まる。
【0099】
図示例では上記ノズル64はボトル1外に出た状態でボトル1内に加熱エアγを吹き込むようになっているが、各ノズル64を上下動可能に設け、加熱エアγをボトル1内に吹き込む時に、ボトル1内に侵入させることも可能である。
【0100】
上述した少なくとも検査部8内の始端ホイール36aから殺菌部9内の終端ホイール92aに至る部分のグリッパ28は、成形部7でのボトル成形の際にボトル1に残留した熱が殺菌部9でのボトル1の殺菌に必要な程度まで保たれるよう走行速度が制御されるようになっている。
【0101】
すなわち、図2に示すように、検査部8には検査部7内の全ホイール36a,36b,36cを動力的に連動するように駆動するサーボモータS1が設けられ、殺菌部9及びエアリンス部96にも殺菌部9及びエアリンス部96内の全ホイール58a,58b,58c,58d,58e,92aを動力的に連動するように駆動するサーボモータS2が設けられる。これらのサーボモータS1,S2の制御によってグリッパ28の走行速度が調整され、その結果、ボトル成形時にボトル1に残留した熱が殺菌部9での殺菌に必要な程度まで保たれた状態で、グリッパ28に把持されたボトル1が噴霧管59の直下に到来する。また、殺菌部9で噴霧管59から過酸化水素の凝結ミストαを吹き付けられたボトルが、速やかにエアリンス部96に到達する。
【0102】
この噴霧管59の直下でのボトル1の温度は、50℃以上に保持されていることが望ましい。50℃以上に保持されていることで、過酸化水素の凝結ミストαによる殺菌効果が適正に発揮される。ことにボトル1の首部1a、底部等の肉の厚い部分、底部等の凝結ミストαの行き届き難い部分は殺菌し難い箇所であるが、成形後間もないボトル1にあっては、そのような部分が高温状態にあるので、少量の凝結ミストαによっても高い殺菌効果を得ることができる。
【0103】
この飲料充填装置では、検査部8内を上記成形部7内及び上記殺菌部9内よりも陽圧化するための陽圧化手段が設けられている。
【0104】
すなわち、図15に示すように、検査部8のチャンバー8aと殺菌部9のチャンバー9aとの間には雰囲気遮断チャンバー79が設けられる。成形部7のチャンバー7aと検査部8のチャンバー8aとの間には、ボトル1の通過口35aが開いた隔壁35が設けられ、この隔壁35と同様な隔壁80,81が、検査部8のチャンバー8aと雰囲気遮断チャンバー79との間、雰囲気遮断チャンバー79と殺菌部9のチャンバー9aとの間に各々設けられる。また、殺菌部9のチャンバー9aとエアリンス部96のチャンバー96aとの間にも、同様な隔壁82が噴霧管59から過酸化水素の凝結ミストαを噴霧する箇所と過酸化水素のガスβを噴出する箇所との間を隔てるように設けられる。
【0105】
そして、検査部8のチャンバー8aには清浄化されたエアの供給手段として、チャンバー8aに給気用ダクト83が連結され、この給気用ダクト83に給気用ブロア84とフィルタ85とヒータ97とが設けられる。ヒータ97によってエアが加熱され、このエアがチャンバー8a内を走行するボトル1に接触することから、ボトル1の冷却が防止され、あるいは更に加熱される。なお、ボトル1の成形の際の残熱が殺菌部9での殺菌効果に支障を来たさない程度のものであれば、このヒータ97による加熱は省略可能である。
【0106】
検査部8のチャンバー8a内にエア供給手段によって清浄なエアが吹き込まれることにより、検査部8のチャンバー8a内は大気圧よりも高い例えば3Pa程度に陽圧化される。
【0107】
雰囲気遮断チャンバー79には排気手段として、排気用ダクト86が連結され、この排気用ダクト86に排気用ブロア87とフィルタ88とが設けられる。殺菌部9のチャンバー9aにおける雰囲気遮断チャンバー79に隣接した箇所にも必要に応じて排気用のダクト89が連結され、この排気用ダクト89が上記雰囲気遮断チャンバー79に連結された排気用ダクト86に接続される。この排気手段による排気によって、雰囲気遮断チャンバー79内は大気圧と同程度の0Paに維持される。
【0108】
また、後述する充填部10のチャンバー10aには、図示しないが、清浄化されたエアの供給手段として、給気用ダクトがチャンバー10aに連結され、この給気用ダクトに給気用ブロアとフィルタとが設けられる。このエア供給手段によって、充填部10のチャンバー10a内に清浄なエアが大体20〜100Pa程度の圧力で吹き込まれる。このエアはエアリンス部96のチャンバー96a内を経て殺菌部9のチャンバー9a内へと流れ、殺菌部9のチャンバー9a内を大体10Pa程度に陽圧化した後に、殺菌部9のチャンバー9aのダクト89及び雰囲気遮断チャンバー79のダクト86からチャンバー9a,79外へと流れる。
【0109】
その他、上記成形部7のチャンバー7a内は略大気圧と同程度の0Paに維持される。また、雰囲気遮断チャンバー79と殺菌部9のチャンバー9aとの間の隔壁81におけるボトル1の通過口81aには、この通過口81aをエアカーテンで遮断するためのエアノズル90が必要に応じて設けられる。
【0110】
このような陽圧化手段により、殺菌部9のチャンバー9a内に流入した過酸化水素のミストα及びガスβはダクト89からチャンバー9a外へ排出され、また、検査部8のチャンバー8a内に流入した浄化されたエアは成形部7のチャンバー7aの方及び雰囲気遮断チャンバー79の方へと流れ、検査部8のチャンバー8a内への汚染されたエアや過酸化水素を含むエアの流入を阻止する。また、ボトル1の走行に伴って成形部7のチャンバー7aから検査部8のチャンバー8a内へとエアが引き込まれたとしても、このエアは雰囲気遮断チャンバー79からの排気によって、殺菌部9のチャンバー9a内への流入を阻止されるので、殺菌部9内の汚染が適正に防止される。
【0111】
図2に示すように、上記エアリンス部96には充填部10が連結される。
【0112】
この充填部10もその全体がチャンバー10aにより覆われる。エアリンス部96のチャンバー96aとの間には、図示しない隔壁が設けられ、この隔壁にボトル1の通過口が設けられる。
【0113】
充填部10のチャンバー10a内には、図2に示すように、上記エアリンス部96側のボトル1の走行手段である終端ホイール92aに連結されるホイール列が接続される。
【0114】
具体的には、このホイール列は四個のホイール94c,94d,94e,94fで構成され、それらの外周にボトル1の走行路が設定される。また、各ホイール94c,94d,94e,94fの回りには、図7に示したグリッパ28と同様なグリッパ28が設けられる。
【0115】
充填部10のチャンバー10a内において、グリッパ28は各ホイール94c,94d,94e,94fの回りでボトル1の首部1aを把持して旋回しながら、ボトル1を始端ホイール94cから終端ホイール94fへと順に受け渡す。これにより、ボトル1は充填部10内を始端ホイール94cから終端ホイール94fへと連続走行する。グリッパ28は、走行中その挟み片28a,28bでボトル1の首部1aを把持することから、ボトル1は正立した宙吊り状態で走行する。
【0116】
充填部10のチャンバー10a内において、始端ホイール94cは大径のホイールとされ、このホイール94cの回りの所定位置に、飲料充填機が設置される。図6(N)に示すように、この飲料充填機のノズル95によってボトル1内に予め殺菌処理された飲料aが充填される。このノズル95はボトル1と同期的に走行するようになっており、ボトル1に伴走しながらボトル1内に一定量の飲料aを充填する。
【0117】
また、飲料充填機よりも下流における中間ホイール94eの回りの所定位置には、キャッパーが設置される。図6(O)に示すように、このキャッパーによってボトル1の首部1aにキャップ2が取り付けられる。これにより、ボトル1が密封される。
【0118】
この飲料aが充填され、キャップ2で密封されたボトル1は、終端ホイール94fのグリッパ28から解放され、チャンバー10aの出口から飲料充填装置の外部に排出される。
【0119】
なお、飲料充填機及びキャッパーは公知の装置であるから、それらの詳細な説明は省略する。
【0120】
その他、図2に示すように、充填部10には、その内部のホイール94c,94d,94e,94fを所定の組み合わせで動力的に連動するように駆動するサーボモータS5,S6が二基設けられる。そのうちの第一のサーボモータS5は飲料充填機の置かれる始端ホイール94cを駆動するようになっており、第二のサーボモータS6は飲料充填機の置かれる中間ホイール94cよりも下流側のホイール94d,94e,94fを駆動するようになっている。
【0121】
これにより、上記検査部8、殺菌部9、エアリンス部96、充填部10の各部におけるホイールやグリッパの構造が互いに異なったものであっても、上記サーボモータS1,S2,S5,S6の制御によって、グリッパの同期的な駆動が可能となり、ボトル1を成形部7から充填部10へと円滑に連続走行させることができる。
【0122】
なお、上記実施の形態では、成形部7は図示しない通常の電動モータにより駆動されるようになっているが、成形部7のホイールやターンテーブルもサーボモータによって駆動することも可能である。
【0123】
次に、上記飲料充填装置の作用について説明する。
【0124】
(1)最初に、図3(A)に示すようなプリフォーム6が用意される。プリフォーム6は図示しない射出成形によって成形された後に、この飲料充填装置のプリフォーム供給機11に入れられる。
【0125】
プリフォーム供給機11のコンベア12によってプリフォーム6が成形部7内に供給される。
【0126】
(2)コンベア12によって図3(A)のごとく成立状態で搬送されて来たプリフォーム6は、成形部7内において連続回転する始端ホイール13aのグリッパに受け取られ、中間ホイール13bのグリッパによって倒立状態とされる。
【0127】
この倒立状態のプリフォーム1は、図3(B)のごとく第一のターンテーブル14aのマンドレル17にその首部1aから被せられる。
【0128】
プリフォーム6が被せられたマンドレル17は、図3(C)に示すように、自転しながら加熱室16内を走行し、プリフォーム6はマンドレル17と共に自転しつつ加熱室16内を連続走行する。これにより、プリフォーム6は均一に加熱されてブロー成形可能な温度まで上昇する。
【0129】
(3)加熱されたプリフォーム6は、図3(D)に示すように、ブロー成形用金型18により挟まれ、マンドレル17を貫通するブローノズル19からエアが吹き込まれる。これにより、金型18内でボトル1が成形される。
【0130】
成形されたボトル1は、金型18の型開きによって、金型18外にマンドレル17ごと取り出され、図4(E)に示すように、倒立状態で第六のターンテーブル14fを経て第一のターンテーブルへ14aと向かう。
【0131】
(4)第一のターンテーブル14aにおいてマンドレル17に保持されたボトル1は、図4(F)に示すように、始端ホイール19aの把持具98によって把持され、正立状態にされる。このとき把持具98はボトル1の首部1aのサポートリング5よりも上側を把持する。続いて、終端ホイール19bの図7に示すようなグリッパ28によってボトル1が受け取られる。このときグリッパ28は、図9に示すように、ボトル1の首部1aのサポートリング5よりも下側を把持する。
【0132】
(5)検査部8の始端ホイール36aのグリッパ37が成形部7の終端ホイール19bからボトル1の首部1aのサポートリング5よりも上側を把持して受け取る。このボトル1はグリッパ37に保持されつつ旋回運動を行う。
【0133】
この旋回運動の間に、図4(G)に示すように、ボトル胴部検査手段によってボトル1の胴部が検査される。この検査では、カメラ45により撮影されたボトル1の胴部の画像が図示しない画像処理装置によって処理され、傷、異物、変色等の異常の存否について判別される。
【0134】
(6)ボトル1は始端ホイール36aのグリッパ37から中間ホイール36bのグリッパ28に受け渡され、この中間ホイール36bのグリッパ28によって、図4(H)及び図9に示すように、首部1aのサポートリング5よりも下側が把持されて旋回運動を行う。
【0135】
この旋回運動の間に、図4(H)に示すように、温度検査手段の温度センサ46によってボトル1の温度が検出される。温度センサ46による検出温度が例えば50℃に達しないときはそのボトル1は不良品と判断される。
【0136】
(7)続いて、図5(I)に示すように、サポートリング検査手段によって、ボトル1のサポートリング5の表面状態が検査される。この検査では、カメラ48により撮影されたサポートリング5の上面の画像が図示しない画像処理装置によって処理され、傷、変形等の異常の存否について判別される。
【0137】
(8)サポートリング5の検査に続き、図5(J)に示すように、ボトル首部天面検査手段によって、ボトル首部1aの天面1bの表面状態が検査される。この検査では、カメラ50により撮影されたボトル首部1aの天面1bの画像が図示しない画像処理装置によって処理され、傷、変形等の異常の存否について判別される。
【0138】
(9)ボトル首部1aの天面1bの検査に続き、図5(K)に示すように、ボトル底部検査手段によって、ボトル1の底部が検査される。この検査では、カメラ52により撮影されたボトル底部の画像が図示しない画像処理装置によって処理され、傷、異物、変色等の異常の存否について判別される。
【0139】
(10)上記各種検査を経たボトル1は検査部8の終端ホイール36cの図11に示したグリッパ28に保持される。各種検査手段のいずれかによって異常信号が発せられると、図12に示すように、グリッパ開放機構が作動し、グリッパ28の一対の挟み片28a,28bが二点鎖線で示す閉じ状態から実線で示す開状態に変化し、不良品のボトル1を解放する。
【0140】
これにより、ボトル1の胴部、底部、首部天面1b、サポートリング5に傷等が発生した不良品のボトル1が走行路から排除され、また、後の殺菌工程で過酸化水素によって殺菌しても十分な殺菌効果を得られない温度のボトル1も走行路から排除される。
【0141】
一方、良品のボトル1については、可動カム部53aが図12(A)の位置に保持されることから、排除手段の箇所を素通りし、殺菌部9へと向かう。
【0142】
(11)良品のボトル1は検査部8の終端ホイール36cのグリッパ28から殺菌部9の始端ホイール58aのグリッパ28に受け渡され、以後下流側のホイールのグリッパ28へと受け渡されながら連続走行する。
【0143】
良品のボトル1は中間ホイール58bの回りをグリッパ28で保持されつつ走行する際、図6(L)に示すように、噴霧管59の直下を通る。これにより、噴霧管59から吐出される過酸化水素の凝結ミストαがボトル1に向かって吹き付けられ、ボトル1の内面と外面が殺菌される。上述したように、適度に熱が残留した良品のボトル1のみが到来するので、これらのボトル1は過酸化水素の凝結ミストαによって適正に殺菌された後に下流側へと走行する。
【0144】
(12)殺菌部9内で過酸化水素の凝結ミストαを吹き付けられたボトル1は、中間ホイール58cの回りをグリッパ28で保持されつつ走行する際、図6(M)に示すように、ノズル64から加熱エアγを吹き付けられる。これにより、ボトル1の内面と外面がエアリンスされ、ボトル1の内外面に付着した余剰の過酸化水素が除去される。
【0145】
殺菌部9で噴霧管59から過酸化水素の凝結ミストαを吹き付けられたボトル1は、0.5秒〜5秒以内にエアリンス部96内へと到達するのが望ましい。0.5秒未満では滅菌に必要な時間が短すぎて滅菌効果が不十分であり、5秒よりも長い場合は過酸化水素がボトル1のPET壁内層まで浸透し、過酸化水素の残留値が高くなり、後述する実施の形態2における無菌水リンス部91を設けなければならなくなる。
【0146】
ここで、その根拠を示す試験結果を次に示す。
【0147】
本発明者等は、容量500mlのPETボトルを用いて、B.subtilis芽胞に対する滅菌効果と残留過酸化水素濃度を測定した。その結果は下表1の通りである。
【0148】
【表1】

【0149】
評価方法は、次の通りである。
滅菌効果(Log Reduction)=Log(付着菌数/生残菌数)
指標菌:B.subtilis var.niger ATCC9372
残留過酸化水素濃度測定:酸素電極法にて測定
滅菌工程:ブロー成形型からボトルを離型し、過酸化水素の凝結ミストをボトルに噴霧し、エアリンスした。過酸化水素の供給は30μLとした。ボトルを離型後30秒以内に過酸化水素の凝結ミストを噴霧した。これは、離型後ボトルの温度が高いほど過酸化水素による滅菌効果が高く、ボトルから熱が逃げて冷めると過酸化水素がボトルのPET壁表面に凝結し、PET内層に吸着されやすくなるからである。
【0150】
表1から明らかなように、過酸化水素を噴霧後、2秒後にエアリンスを開始すると、残留過酸化水素が0.5ppm未満になり、かつ、滅菌効果が6Log以上になる。
【0151】
(13)図15に示すように、ボトル1が成形部7から検査部8を経て殺菌部9へと至るボトル1の走行路には陽圧化手段が設けられることによって、殺菌部9のチャンバー9a内に流入した過酸化水素のミストαの余剰分はダクト86,89からチャンバー9a外へ排出され、また、検査部8のチャンバー8a内に流入した浄化されたエアは成形部7のチャンバー7aの方及び雰囲気遮断チャンバー79の方へと流れ、検査部8のチャンバー8a内への汚染されたエアや過酸化水素を含むエアの流入を阻止する。
【0152】
また、ボトル1の走行に伴って成形部7のチャンバー7aから検査部8のチャンバー8a内へとエアが引き込まれたとしても、このエアは雰囲気遮断チャンバー79からの排気によって、殺菌部9のチャンバー9a内への流入を阻止されるので、殺菌部9内の汚染が適正に防止される。
【0153】
(14)ボトル1が検査部8を通って殺菌部9以降へと搬送されているとき、成形部7側で何らかの異常が発生して成形部7側のホイール列が緊急停止した場合は、図11に示すように、ピストン・シリンダ装置42のピストンロッド42aが縮動作し、閉じ状態にあった一対の挟み片37a,37bが同図(B)に示すように約180度の角度で拡開する。
【0154】
これにより、成形部7側の終端ホイール19bに取り付けられたグリッパ28と検査部8側の始端ホイール36aのグリッパ37との間での干渉が防止される。
【0155】
また、この始端ホイール36aおよびこれに後続するホイールの列は回転し続けるので、検査部8内に導入されたボトル1は下流側へと走行し続ける。したがって、正常に成形されたボトル1は検査部8での検査を受け、さらに検査部8を通過したボトル1は殺菌部9へと向かうことになり、ボトル1の無駄が防止される。また、成形部7は停止しても検査部8以降は稼動が可能であるから、ボトル1は殺菌部9以降を連続走行し続け、殺菌部9内で停止することによる過酸化水素の過剰付着や、ボトル1の冷却による殺菌不良等が防止され、適正なボトル1にのみ飲料が充填されることとなる。
【0156】
(15)エアリンスされたボトル1は、充填部10へと至り、ホイール94cの回りをグリッパ28により把持されつつ走行する際に、図6(N)に示すように、飲料充填機のノズル95から飲料aを所定量充填される。
【0157】
(16)飲料aが充填されたボトル1は、ホイール94eの回りをグリッパ28に把持されて走行し、その際、図6(O)に示すように、キャッパーによってその首部1aにキャップ2を被せられる。これにより、ボトル1は密封され飲料包装体とされる。
【0158】
飲料包装体となったボトル1は、この飲料充填装置から外部に送り出される。
【0159】
<実施の形態2>
次に、上記ボトル1に飲料aを充填する飲料充填装置の実施の形態2について説明する。
【0160】
図16に示すように、この飲料充填装置は、ボトル1の成形部7と、成形されたボトル1を検査する検査部8と、ボトル1の殺菌部9と、ボトル1のエアリンス部96と、ボトル1の無菌水リンス部91と、飲料aをボトル1に充填し密封する充填部10とを具備する。
【0161】
ボトルの成形部7から殺菌部9に至る部分は、実施の形態1におけるものと同じであるから、それらの説明は省略する。
【0162】
図16に示すように、ボトル1のエアリンス部96がボトル1の殺菌部9に連結される。このエアリンス部96もその全体がチャンバー96aにより覆われる。
【0163】
エアリンス部96のチャンバー96a内には、図16に示すように、上記殺菌部9側のボトル1の走行手段である終端ホイール58bに連結されるホイール列が接続される。具体的には、このホイール列は三個のホイール58c,58d,58eで構成され、それらの外周にボトル1の走行路が設定される。また、各ホイール58c,58d,58eの回りには、図7に示したグリッパ28と同様なグリッパ28が設けられる。
【0164】
グリッパ28は、各ホイール58c,58d,58eの回りでボトル1の首部1aを把持して旋回しながら、ボトル1を始端ホイール58cから終端ホイール58eへと順に受け渡す。これにより、検査済みの良品ボトル1は上記殺菌部9内の終端ホイール36bからエアリンス部96内の終端ホイール58eへと走行路上を連続走行する。グリッパ28は、走行中その挟み片28a,28bでボトル1の首部1aを把持することから、ボトル1は正立宙吊り状態で走行する。
【0165】
始端ホイール58cの回りには、ボトル1に殺菌剤である過酸化水素のガスβ加熱エアγに混ぜて供給してボトル1を清浄化するエアリンス手段が設けられる。
【0166】
このエアリンス手段は、図17(M1)及び図20に示すように、過酸化水素ガスβの混ざった加熱エアγを吐出するノズル64を備える。
【0167】
図20に示すように、所定の駆動源からの動力で回転するホイール58cが機台65上に起立する旋回軸66に水平に取り付けられる。ホイール58cの盤面からは支柱66aが上方に伸び、支柱66aの上端に上記過酸化水素のガスβの混ざった加熱エアγが流入するマニホルド67が固定される。マニホルド67の上部中央からは旋回軸66の軸心の延長線上で導管68が上方に伸び、この導管68が機台65に連結されるチャンバー9aのフレーム部材にベアリング69を介して保持される。これにより、マニホルド67はホイール58cと一体で旋回軸66の回りを回転可能である。
【0168】
また、ホイール58cの盤面からは他の支柱70が上方に伸び、この支柱70の上部にボトル1のグリッパ28が取り付けられる。支柱70及びグリッパ28は所定のピッチでホイール58cの回りに多数配置される。多数のグリッパ28は支柱70を介してホイール58cに連結されるので、ホイール58cの回転と共に回転する。
【0169】
これらのグリッパ28は図7に示したものと同様な構造を有する。また、例えば殺菌部9のミスト発生装置61等に不具合が発生して殺菌不良のボトル1が生じた場合に、ボトル1を走行路から排除する排除手段として、図11および図12に示したものと同様な機構が設けられる。図2中、符号71で示されるものは、この排除手段によってボトル1の走行路から排除されるべき殺菌不良ボトル1を落下させるためのシューターである。
【0170】
マニホルド67の回りからは各グリッパ28に向って過酸化水素のガスβの混ざった加熱エアγの供給管72がそれぞれ伸び、各供給管72の先端に上記ノズル64が取り付けられる。ノズル64は上記支柱70に固定され、その先端のノズル孔がグリッパ28に保持されたボトル1の首部1aの開口に正対する。これにより、ホイール58cが回転すると、ノズル64はグリッパ28に保持されたボトル1と共に旋回軸66の回りを旋回し、過酸化水素のガスβの混ざった加熱エアγをボトル1内に吹き込む。
【0171】
上記マニホルド67の導管68の上端には、配管74aがシール部材75を介して接続される。導管68はマニホルド67と一体で配管74aに対して回転し、シール部材75が両管68,74aの接続部からのガスβの漏れを防止する。配管74aには図13に示したミスト生成装置61が複数基取り付けられ、各ミスト生成装置61から過酸化水素の凝結ミストαが配管74a内に供給される。ミスト生成装置61の稼動する台数は、ボトル1の殺菌に必要とされるガスβの量等に応じて決定される。
【0172】
配管74aの上流側にはブロア76、ULPA(Ultra Low Penetration Air Filter)フィルタ77及び電熱器78で構成される熱風供給装置が設けられる。ブロア76から引き込まれた空気がULPAフィルタ77で浄化され、電熱器78で所定温度まで加熱され、熱風γとなって加熱管74a内に送られる。加熱エアγは過酸化水素の露点以上の例えば100℃以上の温度に加熱された無菌エアである。この加熱エアγはミスト生成装置61から送られる過酸化水素の凝結ミストαをガス化させてマニホルド67へと搬送する。この過酸化水素のガスβの混ざった加熱エアγが、各供給管72を通ってノズル64からボトル1内へと吹き出し、或いはボトル1外に流出する。
【0173】
上記配管74aからマニホルド67を経てノズル64へと至る管路はできるだけ短く形成されており、そのため過酸化水素のガスβは結露することなく熱風γに乗ってボトル1に到達する。
【0174】
ノズル64からボトル1内に過酸化水素のガスβの混ざった加熱エアγが吹き込まれると、過酸化水素のガスβがボトル1の内面の全面にムラなく接触し、ボトル1の内面を速やかに殺菌する。
【0175】
この加熱エアγ中に混入される過酸化水素のガスβの濃度は、望ましくは1mg/L(Lは混合気中の過酸化水素ガスの容積)〜10mg/L、より望ましくは2mg/L〜8mg/Lである。
【0176】
このように、ボトル1内に無菌化した加熱エアγと過酸化水素のガスβを供給してエアリンス処理を行うことにより、ボトル1が内面から加熱され、過酸化水素の凝結ミストα及びガスβによる殺菌効果が高まる。また、加熱エアγ中に含まれる過酸化水素のガスβにより、上記過酸化水素の凝結ミストαによって殺菌が不十分であった例えばボトル1内の底部等がより確実に殺菌される。
【0177】
なお、過酸化水素のガスβを含んだ加熱エアγの吹き込み時間は、ボトル1の内部に漂っている過酸化水素の凝結ミストαをすべて排出でき、かつ過酸化水素の凝結ミストαによる殺菌不良を補うことができる範囲で行えばよい。過酸化水素のガスβを含んだ加熱エアγの温度がボトル1の耐熱温度以上である場合、その吹き込み時間があまり長いとボトル1が耐熱温度を超えて加熱され、変形等を生じることがあるので注意を要する。過酸化水素のガスβを含んだ加熱エアγの吹き込み時間は例えば2〜5秒に設定される。
【0178】
また、必要に応じて、加熱エアγに代えて常温の無菌化されたエアに、低濃度の過酸化水素の凝結ミストを混ぜて過酸化水素をガス化させ、結露しないようにノズル64へと供給するようにしてもよい。
【0179】
このように、ボトル1内に過酸化水素ガスβを含んだ無菌の加熱エアγが供給されエアリンス処理が行われることにより、ボトル1がその内面から加熱され、過酸化水素の凝結ミストα及び過酸化水素ガスβによる殺菌効果が高まる。また、加熱エアγ中に含まれる過酸化水素のガスβにより、上記噴霧管64から供給される過酸化水素の凝結ミストαによる殺菌が不十分であった例えばボトル1内の底部がより確実に殺菌される。
【0180】
図示例では上記ノズル64はボトル1外に出た状態でボトル1内に過酸化水素ガスβを含んだ加熱エアγを吹き込むようになっているが、各ノズル64を上下動可能に設け、過酸化水素ガスβを含んだ加熱エアγをボトル1内に吹き込む時に、ボトル1内に侵入させることも可能である。また、異物除去を目的として、ボトル1を反転させた状態からノズルを挿入し、エアリンスを行ってもよい。
【0181】
上述した少なくとも検査部8内の始端ホイール36aから殺菌部9内の終端ホイール58bに至る部分のグリッパ28は、成形部7でのボトル成形の際にボトル1に残留した熱が殺菌部9でのボトル1の殺菌に必要な程度まで保たれるよう走行速度が制御されるようになっている。
【0182】
すなわち、図16に示すように、検査部8には検査部7内の全ホイール36a,36b,36cを動力的に連動するように駆動するサーボモータS1が設けられ、殺菌部9及びエアリンス部96にも殺菌部9及びエアリンス部96内の全ホイール58a,58b,58c,58d,58eを動力的に連動するように駆動するサーボモータS2が設けられる。これらのサーボモータS1,S2の制御によってグリッパ28の走行速度が調整され、その結果、ボトル成形時にボトル1に残留した熱が殺菌部9での殺菌に必要な程度まで保たれた状態で、グリッパ28に把持されたボトル1が噴霧管59の直下に到来する。また、殺菌部9で噴霧管59から過酸化水素の凝結ミストαを吹き付けられたボトル1が、速やかにエアリンス部96に到達する。
【0183】
この噴霧管59の直下でのボトル1の温度は、50℃以上に保持されていることが望ましい。50℃以上に保持されていることで、過酸化水素の凝結ミストαによる殺菌効果が適正に発揮される。ことにボトル1の首部1a、底部等の肉の厚い部分、底部等の凝結ミストαの行き届き難い部分は殺菌し難い箇所であるが、成形後間もないボトル1にあっては、そのような部分が高温状態にあるので、少量の凝結ミストαによっても高い殺菌効果を得ることができる。
【0184】
この飲料充填装置においても、検査部8内を上記成形部7内及び上記殺菌部9内よりも陽圧化するための陽圧化手段が、実施の形態1の場合と同様にして設けられる。陽圧化手段の構成は実施の形態1におけるものと同様であるから、その詳細な説明は省略する。
【0185】
図16に示すように、上記エアリンス部96には無菌水リンス部91が連結される。この無菌水リンス部91もその全体がチャンバー91aにより覆われる。殺菌部9のチャンバー9aとの間には、図示しない隔壁が設けられ、この隔壁にボトル1の通過口が設けられる。
【0186】
無菌水リンス部91のチャンバー91a内には、図16に示すように、上記殺菌部9側のボトル1の走行手段である終端ホイール58eに連結されるホイール列が接続される。具体的には、このホイール列は三個のホイール92a,92b,92cで構成され、それらの外周にボトル1の走行路が設定される。
【0187】
また、始端ホイール92a及び終端ホイール92cの回りには、図7に示したグリッパ28と同様なグリッパ28が設けられる。
【0188】
大径の中間ホイール92bの回りには、図18(A)(B)に示すようなグリッパ20が一定ピッチで多数設けられる。
【0189】
グリッパ20は、ボトル1の首部1aをその外側から挟む一対の挟み片20a,20bを有する。一対の挟み片20a,20bは基部21にそれぞれ垂直ピン22で回動可能に支持され、引張スプリング23により常時閉じ方向に引っ張られる。これにより、図18(B)に示すように一対の挟み片20a,20bはボトル1の首部1aを常時把持しようとする。基部21には、円柱形の垂直軸24が双方の挟み片20a,20bの根元と嵌り合った状態で始端ホイール19aの半径方向でスライドしうるように取り付けられ、この垂直軸24に連結されたカムフォロア25が同じく始端ホイール19aの半径方向にスライド可能に取り付けられる。
【0190】
中間ホイール92bの内方には、カムフォロア25の溝に係合し、所定の位置でカムフォロア25及び垂直軸24を始端ホイール19aの半径方向にスライドさせ、グリッパ20の挟み片20a,20bを開状態又は閉状態に切り換えるための図示しないカムが配置される。中間ホイール92bが回転してグリッパ20がホイール92aのグリッパ28に保持されたボトル1に対向すると、このグリッパ20の挟み片20a,20bがボトル1の首部1aをサポートリング5よりも下側で把持し、ボトル1を宙吊り状態にして搬送する。
【0191】
また、このグリッパ20には、図18(A)(B)に示すように、始端ホイール19aの周方向に突出する水平枢軸26が設けられ、この水平枢軸26を介して始端ホイール19aに支持される。一方、図19に示すように、始端ホイール19aの旋回軸を中心にして円弧状に湾曲するカム27が設けられている。このカム27に各グリッパ20が接触するようになっている。中間ホイール92bの旋回によりグリッパ20がボトル1を受け取って旋回すると、カム27の案内によりグリッパ20が水平枢軸26を支点にしてボトル1ごと上下反転する。これにより、図17(M1)(M2)に示すようにボトル1も上下反転してその首部1aが下向きの倒立状態となる。
【0192】
図17(M1)のようにエアリンス部96内を通過したボトル1は、この無菌水リンス部91内において、始端ホイール92aの回りをグリッパ28により正立状態で把持されて走行し、図17(M2)に示すように、中間ホイール92bのグリッパ20によって倒立状態にされて走行する。その際、首部1aから温水ノズル93が挿入され、ボトル1内に無菌水の温水wを注入される。温水wはボトル1内を洗浄し、首部1aからボトル1外に流出する。この温水wによる洗浄後、ボトル1は中間ホイール92bのグリッパ20によって再び正立状態に戻され、終端ホイール92cのグリッパ28によって受け取られ、次の充填部10へと搬送される。
【0193】
温水wは無菌水であり、その温度は60℃〜70℃程度であるが、常温であってもよい。
【0194】
図16に示すように、上記無菌水リンス部91には充填部10が連結される。
【0195】
この充填部10もその全体がチャンバー10aにより覆われる。無菌水リンス部91のチャンバー91aとの間には、図示しない隔壁が設けられ、この隔壁にボトル1の通過口が設けられる。
【0196】
充填部10のチャンバー10a内には、図16に示すように、上記無菌水リンス部91側のボトル1の走行手段である終端ホイール92cに連結されるホイール列が接続される。
【0197】
具体的には、このホイール列は六個のホイール94a,94b,94c,94d,94e,94fで構成され、それらの外周にボトル1の走行路が設定される。また、各ホイール94a,94b,94c,94d,94e,94fの回りには、図7に示したグリッパ28と同様なグリッパ28が設けられる。
【0198】
充填部10のチャンバー10a内において、グリッパ28は各ホイール94a,94b,94c,94d,94e,94fの回りでボトル1の首部1aを把持して旋回しながら、ボトル1を始端ホイール94aから終端ホイール94fへと順に受け渡す。これにより、ボトル1は充填部10内を始端ホイール94aから終端ホイール94fへと連続走行する。グリッパ28は、走行中その挟み片28a,28bでボトル1の首部1aを把持することから、ボトル1は正立した宙吊り状態で走行する。
【0199】
充填部10のチャンバー10a内において、所定の中間ホイール94cは大径のホイールとされ、このホイール94cの回りの所定位置に、飲料充填機が設置される。図6(N)に示すように、この飲料充填機のノズル95によってボトル1内に予め殺菌処理された飲料aが充填される。このノズル95はボトル1と同期的に走行するようになっており、ボトル1に伴走しながらボトル1内に一定量の飲料aを充填する。
【0200】
また、飲料充填機よりも下流における中間ホイール94eの回りの所定位置には、キャッパーが設置される。図6(O)に示すように、このキャッパーによってボトル1の首部1aにキャップ2が取り付けられる。これにより、ボトル1が密封される。
【0201】
この飲料aが充填され、キャップ2で密封されたボトル1は、終端ホイール94fのグリッパ28から解放され、チャンバー10aの出口から飲料充填装置の外部に排出される。
【0202】
その他、図16に示すように、無菌水リンス部91には、その内部のホイール92a,92b,92cを動力的に連動するように駆動するサーボモータS3が設けられる。また、充填部10には、その内部のホイール94a,94b,94c,94d,94e,94fを所定の組み合わせで動力的に連動するように駆動するサーボモータS4,S5,S6が三基設けられる。そのうちの第一のサーボモータS4は飲料充填機の置かれる中間ホイール94bよりも上流側のホイール94a,94bを駆動するようになっており、第二のサーボモータS5は飲料充填機の置かれる中間ホイール94cを駆動するようになっており、第三のサーボモータS6は飲料充填機の置かれる中間ホイール94cよりも下流側のホイール94d,94e,94fを駆動するようになっている。
【0203】
これにより、上記検査部8、殺菌部9、エアリンス部96、無菌水リンス部91、充填部10の各部におけるホイールやグリッパの構造が互いに異なったものであっても、上記サーボモータS1〜S6の制御によって、グリッパの同期的な駆動が可能となり、ボトル1を成形部7から充填部10へと円滑に連続走行させることができる。
【0204】
なお、上記実施の形態2でも、成形部7は図示しない通常の電動モータにより駆動されるようになっているが、成形部7のホイールやターンテーブルもサーボモータによって駆動することも可能である。
【0205】
次に、上記飲料充填装置の作用について説明する。
【0206】
(1)最初に、図3(A)に示すようなプリフォーム6が用意される。プリフォーム6は図示しない射出成形によって成形された後に、この飲料充填装置のプリフォーム供給機11に入れられる。
【0207】
プリフォーム供給機11のコンベア12によってプリフォーム6が成形部7内に供給される。
【0208】
(2)コンベア12によって図3(A)のごとく成立状態で搬送されて来たプリフォーム6は、成形部7内において連続回転する始端ホイール13aのグリッパに受け取られ、中間ホイール13bのグリッパによって倒立状態とされる。
【0209】
この倒立状態のプリフォーム1は、図3(B)のごとく第一のターンテーブル14aのマンドレル17にその首部1aから被せられる。
【0210】
プリフォーム6が被せられたマンドレル17は、図3(C)に示すように、自転しながら加熱室16内を走行し、プリフォーム6はマンドレル17と共に自転しつつ加熱室16内を連続走行する。これにより、プリフォーム6は均一に加熱されてブロー成形可能な温度まで上昇する。
【0211】
(3)加熱されたプリフォーム6は、図3(D)に示すように、ブロー成形用金型18により挟まれ、マンドレル17を貫通するブローノズル19からエアが吹き込まれる。これにより、金型18内でボトル1が成形される。
【0212】
成形されたボトル1は、金型18の型開きによって、金型18外にマンドレル17ごと取り出され、図4(E)に示すように、倒立状態で第六のターンテーブル14fを経て第一のターンテーブルへ14aと向かう。
【0213】
(4)第一のターンテーブル14aにおいてマンドレル17に保持されたボトル1は、図4(F)に示すように、始端ホイール19aの把持具98によって把持され、正立状態にされる。このとき把持具98はボトル1の首部1aのサポートリング5よりも上側を把持する。続いて、終端ホイール19bの図7に示すようなグリッパ28によってボトル1が受け取られる。このときグリッパ28は、図9に示すように、ボトル1の首部1aのサポートリング5よりも下側を把持する。
【0214】
(5)検査部8の始端ホイール36aのグリッパ37が成形部7の終端ホイール19bからボトル1の首部1aのサポートリング5よりも上側を把持して受け取る。このボトル1はグリッパ37に保持されつつ旋回運動を行う。
【0215】
この旋回運動の間に、図4(G)に示すように、ボトル胴部検査手段によってボトル1の胴部が検査される。この検査では、カメラ45により撮影されたボトル1の胴部の画像が図示しない画像処理装置によって処理され、傷、異物、変色等の異常の存否について判別される。
【0216】
(6)ボトル1は始端ホイール36aのグリッパ37から中間ホイール36bのグリッパ28に受け渡され、この中間ホイール36bのグリッパ28によって、図4(H)及び図9に示すように、首部1aのサポートリング5よりも下側が把持されて旋回運動を行う。
【0217】
この旋回運動の間に、図4(H)に示すように、温度検査手段の温度センサ46によってボトル1の温度が検出される。温度センサ46による検出温度が例えば50℃に達しないときはそのボトル1は不良品と判断される。
【0218】
(7)続いて、図5(I)に示すように、サポートリング検査手段によって、ボトル1のサポートリング5の表面状態が検査される。この検査では、カメラ48により撮影されたサポートリング5の上面の画像が図示しない画像処理装置によって処理され、傷、変形等の異常の存否について判別される。
【0219】
(8)サポートリング5の検査に続き、図5(J)に示すように、ボトル首部天面検査手段によって、ボトル首部1aの天面1bの表面状態が検査される。この検査では、カメラ50により撮影されたボトル首部1aの天面1bの画像が図示しない画像処理装置によって処理され、傷、変形等の異常の存否について判別される。
【0220】
(9)ボトル首部1aの天面1bの検査に続き、図5(K)に示すように、ボトル底部検査手段によって、ボトル1の底部が検査される。この検査では、カメラ52により撮影されたボトル底部の画像が図示しない画像処理装置によって処理され、傷、異物、変色等の異常の存否について判別される。
【0221】
(10)上記各種検査を経たボトル1は検査部8の終端ホイール36cの図11に示したグリッパ28に保持される。各種検査手段のいずれかによって異常信号が発せられると、図12に示すように、グリッパ開放機構が作動し、グリッパ28の一対の挟み片28a,28bが二点鎖線で示す閉じ状態から実線で示す開状態に変化し、不良品のボトル1を解放する。
【0222】
これにより、ボトル1の胴部、底部、首部天面1b、サポートリング5に傷等が発生した不良品のボトル1が走行路から排除され、また、後の殺菌工程で過酸化水素によって殺菌しても十分な殺菌効果を得られない温度のボトル1も走行路から排除される。
【0223】
一方、良品のボトル1については、可動カム部53aが図12(A)の位置に保持されることから、排除手段の箇所を素通りし、殺菌部9へと向かう。
【0224】
(11)良品のボトル1は検査部8の終端ホイール36cのグリッパ28から殺菌部9の始端ホイール58aのグリッパ28に受け渡され、以後下流側のホイールのグリッパ28へと受け渡されながら連続走行する。
【0225】
良品のボトル1は中間ホイール58bの回りをグリッパ28で保持されつつ走行する際、図6(L)に示すように、噴霧管59の直下を通る。これにより、噴霧管59から吐出される過酸化水素の凝結ミストαがボトル1に向かって吹き付けられ、ボトル1の内面と外面が殺菌される。上述したように、適度に熱が残留した良品のボトル1のみが到来するので、これらのボトル1は過酸化水素の凝結ミストαによって適正に殺菌された後に下流側へと走行する。
【0226】
(12)過酸化水素の凝結ミストαにより殺菌されたボトル1は、中間ホイール58cの回りをグリッパ28で保持されつつ走行する際、図6(M)に示すように、ノズル64から過酸化水素のガスβと熱風γを吹き付けられる。これにより、ボトル1の内面と外面がエアリンスされ、ボトル1の内外面に付着した過酸化水素が除去される。
【0227】
(13)図15に示すように、ボトル1が成形部7から検査部8を経て殺菌部9へと至るボトル1の走行路には陽圧化手段が設けられることによって、殺菌部9のチャンバー9a内に流入した過酸化水素のミストα及びガスβの余剰分はダクト86,89からチャンバー9a外へ排出され、また、検査部8のチャンバー8a内に流入した浄化されたエアは成形部7のチャンバー7aの方及び雰囲気遮断チャンバー79の方へと流れ、検査部8のチャンバー8a内への汚染されたエアや過酸化水素を含むエアの流入を阻止する。
【0228】
また、ボトル1の走行に伴って成形部7のチャンバー7aから検査部8のチャンバー8a内へとエアが引き込まれたとしても、このエアは雰囲気遮断チャンバー79からの排気によって、殺菌部9のチャンバー9a内への流入を阻止されるので、殺菌部9内の汚染が適正に防止される。
【0229】
(14)ボトル1が検査部8を通って殺菌部9以降へと搬送されているとき、成形部7側で何らかの異常が発生して成形部7側のホイール列が緊急停止した場合は、図11に示すように、ピストン・シリンダ装置42のピストンロッド42aが縮動作し、閉じ状態にあった一対の挟み片37a,37bが同図(B)に示すように約180度の角度で拡開する。
【0230】
これにより、成形部7側の終端ホイール19bに取り付けられたグリッパ28と検査部8側の始端ホイール36aのグリッパ37との間での干渉が防止される。
【0231】
また、この始端ホイール36aおよびこれに後続するホイールの列は回転し続けるので、検査部8内に導入されたボトル1は下流側へと走行し続ける。したがって、正常に成形されたボトル1は検査部8での検査を受け、さらに検査部8を通過したボトル1は殺菌部9へと向かうことになり、ボトル1の無駄が防止される。また、成形部7は停止しても検査部8以降は稼動が可能であるから、ボトル1は殺菌部9以降を連続走行し続け、殺菌部9内で停止することによる過酸化水素の過剰付着や、ボトル1の冷却による殺菌不良等が防止され、適正なボトル1にのみ飲料が充填されることとなる。
【0232】
(15)殺菌部9内で過酸化水素の凝結ミストαを吹き付けられたボトル1はエアリンス部96内へと入り、上記ホイール58cの回りで図17(M1)に示すようにエアリンスされる。エアリンスによって、ボトル1に付着した過酸化水素の余剰分がボトルから除去される。
【0233】
(16)エアリンスされたボトル1は、エアリンス部96の終端ホイール58eのグリッパ28から無菌水リンス部91内へと送られ、無菌水リンス部91内のホイール92a,92b,92cの周りを上流側から下流側へと走行する。中間ホイール92bのグリッパ20によってボトル1は上下反転し、図17(M2)のごとく内部を無菌の温水wで洗浄される。これにより、ボトル1内から余剰の過酸化水素等が除去される。
【0234】
上記エアリンスのエアに過酸化水素のガスβが含まれていない場合は、この無菌水リンスは省略可能であるが、必要に応じて無菌水リンスを行ってもよい。
【0235】
洗浄された後のボトル1は、グリッパ20の反転動作によって、首部1aが上を向いた正立状態に戻される。
【0236】
(17)無菌水リンスされたボトル1は、充填部10へと至り、ホイール94cの回りをグリッパ28により把持されつつ走行する際に、図6(N)に示すように、飲料充填機のノズル95から飲料aを所定量充填される。
【0237】
(18)飲料aが充填されたボトル1は、ホイール94eの回りをグリッパ28に把持されて走行し、その際キャッパーによって、図6(O)に示すように、その首部1aにキャップ2を被せられる。これにより、ボトル1は密封され飲料包装体とされる。
【0238】
飲料包装体となったボトル1は、この飲料充填装置から外部に送り出される。
【0239】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されることなく種々の形態にて実施可能である。
【0240】
例えば、本発明の飲料充填装置が適用される容器はPETボトルに限定されず、種々の樹脂製容器に適用することができる。また、飲料も単なる液体だけでなく、粒状物、塊等を含んだものや、高粘度のものも充填可能である。ボトルの成形もインジェクションブローに限定されず、ダイレクトブロー、射出成形等各種の成形方法によって成形可能である。
【符号の説明】
【0241】
1…ボトル
1a…ボトルの首部
6…プリフォーム
7…成形部
8…検査部
8a,9a…チャンバー
9…殺菌部
10…充填部
28…グリッパ
36a…ホイール
79…雰囲気遮断チャンバー
90…エアノズル
96…エアリンス部
97…ヒータ
α…過酸化水素の凝結ミスト
β…過酸化水素のガス
γ…無菌エア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱されたプリフォームからブロー成形によりボトルを成形する成形部と、成形部で成形されたボトルを過酸化水素のミスト又はガスで殺菌する殺菌部と、殺菌部で殺菌されたボトルを無菌エアでエアリンスするエアリンス部と、エアリンス部でエアリンスされたボトルに飲料を充填し密封する充填部とが連結され、上記成形部から上記殺菌部及びエアリンス部を経て上記充填部へとボトルを走行路上で連続走行させる走行手段が設けられ、少なくとも上記殺菌部から上記充填部に至る箇所がチャンバーで覆われた飲料充填装置において、上記成形部で成形されたボトルについて所定の検査を行う検査部が、上記成形部と上記殺菌部との間にこれらに連結されるように設けられ、検査部のチャンバーと殺菌部のチャンバーとの間には雰囲気遮断チャンバーが設けられ、検査部のチャンバー内にはエアの供給手段によって清浄なエアが供給されるようにし、雰囲気遮断チャンバーからは排気手段によって排気されるようにしたことを特徴とする飲料充填装置。
【請求項2】
請求項1に記載の飲料充填装置において、上記殺菌部のチャンバーが上記雰囲気遮断チャンバーに接する箇所に、上記殺菌部のチャンバー内から過酸化水素のミスト又はガスをチャンバー外に排出する排気手段が設けられていることを特徴とする飲料充填装置。
【請求項3】
請求項1に記載の飲料充填装置において、上記殺菌部のチャンバーが上記雰囲気遮断チャンバーに接する箇所に、エアカーテンを形成するエアノズルが配置されていることを特徴とする飲料充填装置。
【請求項4】
請求項1に記載の飲料充填装置において、上記走行手段は、上記成形部から上記充填部へと列状に配置されたホイールと、各ホイールの回りでボトルの首部を把持して旋回すると共にボトルを上流側ホイールから下流側のホイールへと受け渡すグリッパとを具備したことを特徴とする飲料充填装置。
【請求項5】
請求項1に記載の飲料充填装置において、上記エアの供給手段にはヒータが設けられ、加熱された清浄なエアが検査部のチャンバー内に供給されるようにしたことを特徴とする飲料充填装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−179943(P2010−179943A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−26035(P2009−26035)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】