飲料用缶および飲料用缶の製造方法
【課題】飲料用缶を輸送する際の輸送効率を高める。
【解決手段】胴部21にテーパが付され、胴部21は開口が形成された側に向かうに従い直径が次第に大きくなっている。さらに説明すると、胴部21の一方端側に形成された開口の直径よりも胴部21の他方端における直径(蓋部材22の直径)の方が小さくなっている。このため一の胴部21は、この一の胴部21よりも下方に位置する他の胴部21の内部に入り込むことが可能となる。この結果、搬送時の搬送効率を高めることが可能となる。
【解決手段】胴部21にテーパが付され、胴部21は開口が形成された側に向かうに従い直径が次第に大きくなっている。さらに説明すると、胴部21の一方端側に形成された開口の直径よりも胴部21の他方端における直径(蓋部材22の直径)の方が小さくなっている。このため一の胴部21は、この一の胴部21よりも下方に位置する他の胴部21の内部に入り込むことが可能となる。この結果、搬送時の搬送効率を高めることが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料用缶および飲料用缶の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料が充填される缶本体部は、例えば、金属板を打ち抜きカップ状に成形するカップ成形工程、絞り加工およびしごき加工により有底の円筒体を形成するボディ成形工程、円筒体の上縁部を切り揃えるトリミング工程、円筒体の上端付近を縮径化すると共にフランジ部を形成するネック・フランジ工程により形成される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−95231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、飲料が充填された飲料缶の多くは、缶(飲料用缶)を製造する製造工程と、この缶に対し飲料を充填する充填工程とによって製造される。ここで一般に、缶の製造は容器の製造メーカにより行われる。そして製造された缶は飲料メーカまで輸送され、飲料メーカにて飲料の充填が行われる。ところで缶の輸送を行う際、缶を単に積み重ねただけでは、単位体積当たりに占める缶の体積が極めて小さくなり、輸送効率が悪くなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明が適用される飲料用缶は、一端部および他端部に開口を有する筒状部材と、筒状部材とは別の部材として構成されるとともに筒状部材の他端部に対して取り付けられ、筒状部材の他端部に設けられた開口を塞ぐ塞ぎ部材と、を備え、筒状部材の一端部に設けられた開口の直径よりも筒状部材の他端部の直径の方が小さいことを特徴とする飲料用缶である。
【0006】
ここで、塞ぎ部材には、飲み口が形成される際に開口される開口領域と、ユーザにより操作された際に開口領域を押圧し開口領域に開口を形成するタブとが設けられていることを特徴とすることができる。また、筒状部材の外周面には標記が付され、標記と開口領域とが予め定められた所定の位置関係を有するように筒状部材および/または塞ぎ部材の位置制御がなされたうえで、筒状部材に対し塞ぎ部材が取り付けられていることを特徴とすることができる。さらに、筒状部材の外周面には標記が付されるとともに、外周面には、標記と予め定められた位置関係を有して配置され所定の摩擦係数を有する第1の領域、および、標記と予め定められた位置関係を有して配置され第1の領域とは摩擦係数の異なる第2の領域が形成されていることを特徴とすることができる。また、第1の領域および第2の領域は、筒状部材の周方向において異なる位置に配置されていることを特徴とすることができる。さらに、第2の領域は、第1の領域の摩擦係数よりも小さい摩擦係数を有して形成されるとともに標記が向いている方向とは略直交する方向を向くように配置されていることを特徴とすることができる。
【0007】
また、本発明を飲料用缶の製造方法と捉えた場合、本発明が適用される飲料用缶の製造方法は、板状部材から、一端部および他端部に開口を有するとともに一端部の直径の方が他端部の直径よりも大きい筒状部材を形成する形成工程と、形成工程により形成された筒状部材の他端部に形成された開口を塞ぐ塞ぎ部材を他端部に対して固定する固定工程と、を有する飲料用缶の製造方法である。
【0008】
ここで、他端部に固定される塞ぎ部材には、飲み口が形成される際に開口される開口領域と、ユーザにより操作された際に開口領域を押圧し開口領域に開口を形成するタブとが設けられていることを特徴とすることができる。また、塞ぎ部材は、円盤状に形成され、固定工程では、塞ぎ部材に設けられた開口領域と筒状部材に付された標記とが予め定められた所定の位置関係を有するように筒状部材および/または塞ぎ部材を周方向に回転させ、回転を行った後、塞ぎ部材を筒状部材に固定することを特徴とすることができる。さらに、板状部材の表面に標記を印刷する印刷工程と、標記が印刷される箇所と予め定められた位置関係を有する箇所であって板状部材の表面に第1の摩擦係数を有する第1の領域を形成する第1の領域形成工程と、標記が印刷される箇所と予め定められた位置関係を有する箇所であって板状部材の表面に第2の摩擦係数を有する第2の領域を形成する第2の領域形成工程と、を更に含むことを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0009】
飲料用缶を積み重ねて輸送する際の輸送効率を、本発明を採用しない場合に比べ高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る容器を示した図である。
【図2】内部の飲料が飲まれる際の容器の状態を示した図である。
【図3】容器の製造工程を説明するための図である。
【図4】胴部の輸送時における状態を示した図である。
【図5】第2の実施形態における容器を示した図である。
【図6】第2の実施形態における胴部の輸送時の状態を示した図である。
【図7】本発明の実施形態に係る陳列装置の概略構成および容器を示した図である。
【図8】陳列装置の上面図である。
【図9】容器の表面状態を説明するための図である。
【図10】陳列装置における容器の動作を説明するための図である。
【図11】多色オフセット印刷を行う印刷機の一例を示した図である。
【図12】基体に対する処理を示した図である。
【図13】装着部材の装着処理を示した図である。
【図14】装着部材の取り外し処理を示した図である。
【図15】容器の梱包体を示した図である。
【図16】容器の梱包体を示した図である。
【図17】蓋部材の回転を説明するための図である。
【図18】蓋部材の回転を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
―第1の実施形態―
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る容器を示した図である。なお、同図(A)は正面図を示し、同図(B)は背面図を示し、同図(C)は上面図を示している。
【0012】
本図に示す容器20は、いわゆる3ピース缶であり、同図(A)に示すように、胴部21、蓋部材22、底部材25の3つの部材から構成されている。
筒状部材の一例としての胴部21は、円筒状に形成されるとともに上方に位置する一端部および下方に位置する他端部に開口を有している。また胴部21にはテーパが付され、胴部21は下方に向かうに従い直径(外径)が次第に大きくなるように形成されている。ここで胴部21は、板状の基材(ブランク材)が円筒にされた後、溶接処理が施されることで形成されている。このため胴部21は、同図(B)に示すように、容器20の高さ方向に沿った溶接部24を有している。
【0013】
塞ぎ部材の一例としての蓋部材22は、胴部21とは別部材として構成されている。また蓋部材22は、円盤状に形成され、円筒状に形成された胴部21の上縁部に対していわゆる巻き締めにより固定されている。これにより胴部21の一方端側に形成された開口が塞がれている。また、底部材25も円盤状に形成され、円筒状に形成された胴部21の下縁部に対していわゆる巻き締めにより固定されている。これにより胴部21の他方端側に形成された開口が塞がれている。
【0014】
ここで蓋部材22は、同図(C)に示すように、円形(円盤状)の基部41と、飲み口が形成される際にユーザにより操作され後述する開口予定領域44を押圧しこの開口予定領域44に開口を形成する開封用タブ42とを備えている。ここで、この開封用タブ42は、開口予定領域44と予め定められた位置関係を有して配置されている。また基部41には、その中心からずれた位置(偏心した位置)に、飲み口が形成される際に開口される開口予定領域(開口領域)44が形成されている。また基部41には、開口予定領域44を囲むスコア(破断予定線)41aが形成されている。
【0015】
開封用タブ42は、基部41の一方の面に対して取り付けられている。また、開封用タブ42は、基部41の上記一方の面に沿うように設けられるとともに、基部41と対向する対向面側からこの対向面とは反対側の面側に向けて貫通したリング孔42cを有している。さらに開封用タブ42は、基部41の中心部から基部41に外周縁側に向かって設けられている。また開封用タブ42は、剛性のある板状部材であり、基部41の中央部に設けられたリベット43により基部41に固定されている。即ち、開封用タブ42は、リベット43を介して基部41に固定される固定部42aを備えている。また、開封用タブ42は、固定部42aから基部41に沿って延びるリング部42bを備えている。
【0016】
ここで固定部42aは、開口予定領域44にオーバーラップするように配置されている。またリング部42bは、スコア41aから遠ざかる方向に伸びている。また本実施形態では、リング部42bが、リベット43が設けられた箇所を基準として容器20の一方側に設けられ、開口予定領域44が、リベット43が設けられた箇所を基準として容器20の他方側に設けられている。さらに説明すれば、開封用タブ42と開口予定領域44とは、同一の線上に配置されている。
【0017】
またリング部42bは、リング孔42cを有する環状のつまみ部である。そしてリング部42bの先端部に指を掛けて引き起すと、リベット43を支点として、固定部42aの先端部が下方へ移動する。これにより、いわゆる梃子の原理でスコア41aが破断される。この結果、開口予定領域44が開封され、内容物である飲料の注出が可能になる。
【0018】
また本実施形態における容器20では、胴部21の外周面に、文字や図形などを含む図柄が印刷されている。そしてこの図柄には、商品名、商標名など他の商品と識別するための第1識別標記23a、第2識別標記23bが含まれている(なお本明細書においては、以下単に「識別標記23」と称する場合がある。)。ここで、第1識別標記23aおよび第2識別標記23bは、図1(C)に示すように、容器20の周方向において、位相が180°ずれた状態で配置されている。なお、第1識別標記23aおよび第2識別標記23bは、同一の形態とすることもできるし異なる形態とすることもできる。
【0019】
次に開口予定領域44と識別標記23との関係を説明する。
本実施形態における容器20では、識別標記23と開口予定領域44は、予め定められた所定の位置関係を有して配置されている。付言すると、本実施形態では、識別標記23と開口予定領域44とが予め定められた位置関係となるように、蓋部材22の位置が制御されたうえで胴部21に対し蓋部材22が固定される。より具体的に説明すると、本実施形態では、胴部21に対して蓋部材22を取り付ける際に、胴部21の例えば識別標記23(溶接部24等でもよい)を検知し、胴部21の姿勢(回転角度)を把握する。その後、胴部21の姿勢(回転角度)に応じた角度だけ蓋部材22を周方向に回転させる。これにより、識別標記23および開口予定領域44が予め定められた位置関係を有するようになる。その後、蓋部材22を胴部21に固定する。
【0020】
なお、胴部21の姿勢に応じた蓋部材22の上記回転(蓋部材22の位置の制御)は、図17(蓋部材22の回転を説明するための図)に示すように、例えば、円運動するピンPNで開封用タブ42を側方から押圧することで行うことができる。なお図17に示す実施形態では、搬送ベルト810に形成された窪み820に蓋部材22が収容された状態で搬送ベルト810により蓋部材22が搬送されている。そして本実施形態では、蓋部材22に随伴しながらピンPNが移動し、このピンPNにより蓋部材22が回転される。
【0021】
また蓋部材22の回転は、例えば、図18(蓋部材22の回転を説明するための図)に示すように、蓋部材22を周方向に回転させるとともに開封用タブ42の移動経路上にピンPNを突出させ、このピンPNを用いて開封用タブ42の移動を規制することで行うことができる。詳細に説明すると、図18に示す実施形態では、窪み820内に位置する蓋部材22が、抗力付与部材865の対向位置まで到達すると、搬送ベルト810に傾斜が付与されているために抗力付与部材865に向かってスライド移動し、符号8Aに示すように抗力付与部材865に接触する。これにより、蓋部材22は反時計回り方向(周方向)に回転するようになる。その一方で、ソレノイドSをオフする。これにより、図18の符号8Aに示すように、回転部材864AのピンPNが、搬送ベルト810に向かって移動する。次いで、モータMを駆動し、ピンPNを下降させる。これにより開封用タブ42の移動経路上であって予め定められた位置に、ピンPNが位置するようになる。その後、図18の符号8Bに示すように、ピンPNに対して開封用タブ42が接触し、蓋部材22の回転が停止される。ここで、回転部材864A、ピンPN、モータM、ソレノイドSなどは、循環移動するベルト部材860に取り付けられている。なお上記では蓋部材22を周方向に回転させたが、胴部21を周方向に回転させることもできる。また、胴部21および蓋部材22の双方を周方向に回転させることもできる。
【0022】
識別標記23と開口予定領域44との位置関係をさらに説明すると、本実施形態では、識別標記23と開口予定領域44とは、容器20の周方向において、位相が90°ずれた状態で配置されている。
図1(C)を参照してさらに説明すると、第1識別標記23aが一方向(図中右方向)を向いている場合に、開口予定領域44がこの一方向と直交する方向(図中下方向)に沿った状態で配置されるように、開口予定領域44および第1識別標記23aは配置されている。また第2識別標記23bが一方向(図中左方向)を向いている場合に、開口予定領域44がこの一方向と直交する方向(図中下方向)に沿った状態で配置されるように、開口予定領域44および第2識別標記23bは配置されている。
【0023】
さらに説明を行うと、容器20の軸心を基準とした場合、開口予定領域44は、この軸心から胴部21に向かう一方向に沿って配置されている。その一方で、第1識別標記23aおよび第2識別標記23bは、この一方向と直交する方向を向くように配置されている。さらに説明すると、開口予定領域44は、容器20の軸心から胴部21に向かう直線上に配置され、第1識別標記23aおよび第2識別標記23bは、この直線と直交する直線であって容器20の軸心を通る直線上に配置されている。付言すれば、第1識別標記23aおよび第2識別標記23bは、蓋部材22の中心と開口予定領域44とを通る仮想線を想定した場合に、この仮想線と直交する方向を向くように胴部21の外周面に付されている。
【0024】
ここで図2は、内部の飲料が飲まれる際の容器20の状態を示した図である。
本実施形態における容器20では、識別標記23と開口予定領域44とが上記のような位置関係を有して配置されている。このため、開口予定領域44に開口が形成され、この開口(飲み口)を通じて飲料が飲まれる際には、同図に示すように第2識別標記23bが側方を向く状態となる。また図示は省略するが、第1識別標記23aも側方を向く状態となる。
【0025】
ここで飲料等の商品の宣伝は通常テレビコマーシャル等により行われることが一般的であるが、飲料が飲まれる際に第三者から見える位置に識別標記23が配置されることによっても宣伝広告効果が生じうる。本実施形態における容器20では、飲料が飲まれる際に、上記のように識別標記23が側方を向き、第三者が認識可能となる位置に識別標記23が配置される。このため、宣伝広告効果を生じさせることができる。付言すれば、飲料を飲む者側に識別標記23が位置せず、第三者から認識可能な位置に識別標記23が位置するため、宣伝広告効果を生じさせることが可能となる。
【0026】
なお上記では識別標記23が側方を向く場合を一例に説明したが、飲料が飲まれる際に、飲料を飲む者側とは反対側に識別標記23が向いていても上記のような宣伝広告効果を生じさせることが可能となる。即ち、識別標記23が開口予定領域44とは反対側、即ちリング部42b側に付されていても宣伝広告効果を生じさせることが可能となる。付言すれば、開口予定領域44が偏心配置されている側とは反対側に識別標記23が付されていても宣伝広告効果を生じさせることが可能となる。また、飲料を飲む者に対しても識別標記23を見せたい場合は、開口予定領域44側とその反対側の両方に識別標記23を付すことができる。
【0027】
ここで容器20は、一般的に右手で持たれることが多い。左利きよりも右利きの方が一般的に多いためである。この結果、識別標記23が側方を向いたとしても、右手で持たれる箇所に付された識別標記23はこの右手によって隠されてしまう場合がある。このため、容器20における識別標記23は、右手で持たれたとしても隠れない位置に設けることがより好ましい。より具体的には、図1(C)における第2識別標記23bの位置に設けることが好ましい。この場合、右手により容器20が持たれたとしても、識別標記23は、右手により隠れず外部に露出する。
【0028】
次いで容器20の製造工程について説明する。
図3は、容器20の製造工程を説明するための図である。
本実施形態における容器20の製造工程では、まず、不図示のスチール板やブリキ板などの板状の基材(板状部材)の一方の面(容器20の内面となる面)に対して塗装を行う。なお、塗装に替えて例えば樹脂フィルムを貼付することもできる。次いで、この基材を加熱し、上記一方の面に対して施された塗装の焼き付けを行う。その後、例えば多色オフセット印刷により、上記基材の他方の面(容器20の外面となる面)に対して上記識別標記23を含む図柄の印刷を行う。次いで、基材の加熱を再度行い、印刷された図柄の焼き付けを行う。その後、図柄の焼き付けが行われた基材に対して剪断加工(切断加工)を施す。これにより、図3(A)に示すように、第1識別標記23aおよび第2識別標記23bを含む図柄を有し且つ略台形に形成された基材(ブランク材)が形成される。
【0029】
その後、不図示のフォーミング工程(円筒形成工程)にて丸められ両側部が重ね合わされた上記基材に対し溶接処理を行う。また溶接処理により完成した筒状体の一方の開口側および他方の開口側を金型に押し付け、フランジ加工を行う。これにより、上記にて説明した胴部21が完成する(図3(B)参照)。その後、別工程にて製造され上記開封用タブ42や開口予定領域44などを有した蓋部材22が、図3(C)に示すように、胴部21の上側の縁部に対していわゆる巻き締めに固定される。なおこの際、上述したとおり、蓋部材22の位置が制御されたうえで胴部21に対して蓋部材22が固定される。これにより、上記のとおり、胴部21に付された識別標記23と蓋部材22に形成された開口予定領域44とが、予め定められた所定の位置関係を有するようになる。
【0030】
その後、蓋部材22が下方に位置するように胴部21の上下が逆転され、胴部21の上部に位置する開口から飲料の充填が行われる(同図(D)参照)。その後、同図(E)に示すように胴部21に底部材25が載せられ、その後、いわゆる巻き締めによってこの底部材25が胴部21に固定される。これにより図1に示した容器20が完成する。なお、上記工程(A)〜(C)は容器の製造メーカにて実施されるのが一般的である。そして、工程(C)の完了後、蓋部材22が取り付けられた胴部21が飲料メーカへ輸送(搬送)され、飲料メーカにて、上記工程(D)、(E)が実施される。なお本明細書では、以下、蓋部材22が取り付けられた胴部21を基体29と称する場合がある。
【0031】
ここで図4は、胴部21の輸送時における状態を示した図である。本実施形態では、上記にて説明したように、胴部21にテーパが付され、胴部21は下方(開口が形成された側)に向かうに従い直径が次第に大きくなっている。さらに説明すると、本実施形態では、胴部21の一方端側に形成された開口の直径よりも胴部21の他方端における直径(蓋部材22の直径)の方が小さくなっている。このため本実施形態における一の胴部21は、図4に示すように、この一の胴部21よりも下方に位置する他の胴部21の内部に入り込むことが可能となっている。この結果、本実施形態における胴部21を採用した場合、輸送時の輸送効率を高めることが可能となる。付言すると本実施形態における胴部21を採用した場合、直径が高さ方向においてほぼ等しい胴部21に比べ、より多くの個数を運べるようになる。なお同図に示すように、積み重ねられた複数の胴部21のうちの最下部に位置する胴部21に対し固定された蓋部材22を覆う保護キャップHCを取り付けることもできる。
【0032】
なお本実施形態における製造方法を採用した場合、重心位置が容器20の下部側に位置する容器20を製造可能となる。付言すると、容器20が通常の状態で置かれた際に(開口予定領域44が容器20の上部に位置する状態で容器20が置かれた際に)重心位置が下部側に位置する容器20を製造可能となる。そしてこのような容器20は、重心位置が容器20の上部に位置する場合に比べ倒れにくくなる。
【0033】
ここで上記飲料メーカ側にて実施される処理について詳細に説明する。飲料メーカでは、まず、積み重ねられた状態で搬送されてきた基体29(蓋部材22が固定された胴部21)を個々の基体29にばらす処理を行う。この処理は、例えば図12(基体に対する処理を示した図)に示す装置により行われる。この装置は、基体29の上部に位置し基体29を吸引しながら搬送する搬送装置600、基体29の側方に位置し吸引される基体29の下部に位置する基体29の移動を抑えるストッパー610を備えている。このストッパー610は、基体29に接近する方向および離れる方向に移動可能に設けられた2つの可動片611から構成されており、基体29の端部に接触し基体29の移動を抑える。なお、基体29に接近する方向および離れる方向に移動可能に設けられ基体29の側部を押さえる押さえ片620を設けることもできる。
【0034】
また飲料メーカでは、基体29の各々に対して、キャップとして機能する装着部材を装着することができる。より具体的には、図13(装着部材の装着処理を示した図)に示すように、基体29のうちの飲み口が形成された側に対し、装着部材630を装着することができる。このように装着部材630を装着した場合、基体29の飲み口周辺の汚損等が防止される。なお、装着部材630の装着は、例えば同図に示す装着装置640により行うことができる。この装着装置640は、例えば、基体29を搬送する第1コンベア641、第1コンベア641により搬送されてきた基体29を吸引により持ち上げ搬送する搬送装置642、搬送装置642により持ち上げられている基体29へ装着部材630を装着する装着装置643、装着部材630の装着が終了した基体29を搬送する第2コンベア644により構成することができる。
【0035】
なお、上記装着部材630は、基体29への飲料の充填、底部材25の取り付けが終了した後、図14(装着部材の取り外し処理を示した図)に示すように、取り外し装置650によって取り外される。この取り外し装置650は、同図に示すように、容器20(基体29)の上下を反転させる反転装置651、反転装置651により反転された容器20から装着部材630を取り外す取り外し装置652を有している。ここで取り外し装置652は、搬送ベルト654の内部に配置され容器20を搬送ベルト654の内側から吸引する第1吸引部652Aと、装着部材630を吸引する第2吸引部652Bとを用いて、装着部材630の取り外しを行う。なお、取り外し装置652により取り外された装着部材630は、不図示の搬送装置により、上記装着装置640(図13参照)まで搬送される。そして装着装置640にて新たな基体29に装着される。
【0036】
なお飲料が充填され底部材25が取り付けられた容器20は、図15(容器の梱包体を示した図)の(A)および(B)に示すように、紙パックや透明フィルムなどの梱包材710より梱包され、梱包体700なった状態で出荷される。なお、図15(A)は梱包体700の正面図であり、図15(B)は梱包体700を上部から眺めた場合の断面図である。ここで容器20は、図15(B)に示すように、1個おきに(1缶おきに)天地を逆転させることができる。この場合、天地を逆転させない場合に比べ、梱包体700の体積を小さくすることができる。また容器20は、図15(A)に示すように、識別標記23が梱包材710の外側を向くように配置することもできる。この場合、宣伝広告効果が生じるようになる。なお、識別標記23を梱包材710の外側を向けるためには、容器20を周方向に回転させ識別標記23の向きを揃える必要があるが、この向きの揃えは、容器20に摩擦係数の異なる複数の領域を形成(後述)するとともに、後述する陳列装置30に付与された機能と同様の機能を容器20の搬送経路に設けることで行うことができる。
【0037】
なお容器20(胴部21)にテーパを付した場合、梱包材710の内部にデッドスペースが生じやすくなる。そしてこのようにデッドスペースが生じると、搬送中に容器20が揺れやすくなる。このため、図15(A)、(B)に示すように、梱包材710を折り込んだ折り込み部760を形成することが望ましくなる。なお上記では、6缶パック且つ1個おきに容器20の天地を逆転させた態様を説明したが、図16(容器の梱包体を示した図)の(A)に示すように、7缶をひとまとめにしてもよい。ここで図16(A)では、中心部に容器20を一つ配置し、この容器20の周囲に6個の容器20を配置している。なお図16(A)では、中心部に位置する容器20の天地を逆転させている。また図16(B)に示すように、中心部から外れた箇所に位置する容器20であって最も離れた関係にある2つの容器20の天地を逆転させることもできる。なお図16では、上記梱包材710の図示を省略している。
【0038】
―第2の実施形態―
図5は、第2の実施形態における容器20を示した図である。なお、本図でもいわゆる3ピース缶を例示している。ここで、同図(A)は正面図を示し、同図(B)は背面図を示し、同図(C)は上面図を示している。また第1の実施形態と同様の機能については、同様の符号を用いここではその説明を省略する。
【0039】
第1の実施形態では、下部側の直径の方が上部側の直径よりも大きい容器20を説明したが、図5に示すように、下部側の直径を上部側の直径よりも小さくすることもできる。さらに説明すると、本実施形態では、容器20の胴部21に付されたテーパが第1の実施形態と異なっている。具体的には、本実施形態における容器20の胴部21には、上方に向かうに従い直径が次第に大きくなるテーパが付されている。
【0040】
また本実施形態では、第1の実施形態と同様に、胴部21の一方の開口を塞ぐ蓋部材22と他方の開口を塞ぐ底部材25とが設けられている。ここで本実施形態では、胴部21の上方に位置する開口の方が下方に位置する開口よりも大きくなっているため、第1の実施形態と異なり、蓋部材22の直径の方が底部材25の直径よりも大きくなっている。なお本実施形態における開口予定領域44と識別標記23も、第1の実施形態と同様に、予め定められた位置関係を有して配置されている。付言すると、飲料が飲まれる際に第三者が認識可能となる位置に識別標記23が配置されるように、開口予定領域44および識別標記23が配置されている。
【0041】
ここで第2の実施形態における容器20の製造方法について説明する。本実施形態における容器20の製造工程では、図3(A)、(B)に示した処理がまず行われ、第1の実施形態と同様に、胴部21が形成される。なお第1の実施形態では、図3(A)に示した工程にて、上辺よりも下辺が長い台形の基材を形成したが、この第2の実施形態では、図3(A)に示した工程にて、下辺よりも上辺が長い台形の基材を形成する。そして図3(B)で示した工程によって、上部の直径の方が下部の直径よりも大きい胴部21が形成される。
【0042】
その後、本実施形態では、胴部21の下部に対して底部材25が巻き締めにより取り付けられる。付言すると、第1の実施形態では蓋部材22が先に取り付けられたが、本実施形態では底部材25が先に取り付けられる。その後、上記と同様、底部材25が取り付けられた胴部21が飲料メーカへ輸送される。そして、底部材25が取り付けられた側とは反対側に位置する胴部21の開口から飲料の充填が行われる。そして最後に、この開口を塞ぐ蓋部材22が胴部21の上部に対し取り付けられる。
【0043】
図6は、第2の実施形態における胴部21の輸送時の状態を示した図である。
本実施形態における胴部21も、上方(開口が形成された側)に向かうに従い直径が次第に大きくなっている。さらに説明すると、本実施形態でも、胴部21の一方端側に形成された開口の直径よりも胴部21の他方端における直径(底部材25の直径)の方が小さくなっている。このため本実施形態でも、一の胴部21は、図6に示すように、この一の胴部21よりも下方に位置する他の胴部21の内部に入り込む。この結果、本実施形態でも、輸送時の輸送効率を高めることが可能となる。
【0044】
ところでコンビニエンスストア等において、容器20に付された上記識別標記23が購入者の取り出し方向を向いていないと、商品の識別がしにくくなるとともに、商品の陳列時の見栄えが悪くなる。このため、コンビニエンスストア等では、容器20の識別標記23が前方側など特定の方向に向いていることが好ましくなる。ここでコンビニエンスストア等に設置される陳列装置を以下のように構成し、また、上記にて説明した容器20の表面状態を以下に説明する状態とした場合、識別標記23を特定の方向に向けることが可能となる。
【0045】
図7は、本発明の実施形態に係る陳列装置の概略構成および容器を示した図である。なお以下の説明では、図1にて説明した容器20を一例に説明するが、図5に示した容器20に対しても以下で説明する機能を付与可能である。
【0046】
図7(A)に示すように本実施形態における陳列装置30は、図1にて説明した容器20を載せることが可能な載置部31と、容器20の移動経路を形成するとともに容器20の移動を案内するガイド32とを備えている。また、載置部31の一側辺に沿って配置され、容器20の移動を停止させる規制板34を備えている。ここで、規制板34は、透明に形成することが好ましい。
【0047】
ここで陳列装置30は、同図(B)に示すように、コンビニエンスストア、スーパーマーケットなどに設置される陳列ケース10の内部に収納される。この陳列ケース10は、直方体状に形成されたケース本体部10Aと、このケース本体部10Aに対して開閉可能に設けられたドア10Bとにより主要部が構成されている。ここで陳列装置30は、陳列ケース10に設けられた棚(不図示)の上に載せられる。この際、陳列装置30は、規制板34が設けられた側がドア10B側に位置するように設置される。また、載置部31は、規制板34が設けられた側が、規制板34が設けられた側とは反対側よりも下方に位置するように配置される。即ち、載置部31は、陳列ケース10の後方側から容器20が取り出される前方側(取り出し部側)に向かって下り傾斜した状態で配置される。
【0048】
ここで本実施形態における陳列ケース10は、後方側にもドアが設けられ(不図示)、後方側も開放可能となっている。そしてこの後方側より陳列装置30に容器20が投入される。即ち、陳列ケース10の後方側および陳列装置30の後方側に容器20の投入部が設けられた構成となっている。そして、投入された容器20は載置部31上をドア10B側に向かって移動する。なお、本明細書では、ドア10B側を前方側(前方)と称しドア10Bとは反対側を後方側(後方)と称する場合がある。また、陳列ケース10の幅方向(容器20が移動する方向に直交する方向)を横方向、幅方向と称する場合がある。
【0049】
陳列装置30についてさらに説明する。
図8は、陳列装置30の上面図である。
本実施形態における陳列装置30のガイド32は、容器20の移動経路に沿って配置されている。またガイド32は、容器20の移動経路の両側に設けられている。ここでガイド32は、例えばアルミニウムなどの金属材料や樹脂材料などにより形成される。
【0050】
載置部31は、幅方向に傾斜して配置されている。詳細には、一方のガイド32(図中左方のガイド32)側の方が他方のガイド32(図中右方のガイド32)側よりも下方に位置するように傾斜して配置されている。また載置部31は、上記のように前方側の方が後方側よりも下方に位置するように傾斜して配置されている。ここで同図における符号2A,2Bは、載置部31における傾斜の状態を示している。本明細書においては、以下、左方のガイド32を左方側ガイド32と称し右方のガイド32を右方側ガイド32と称する場合がある。
【0051】
さらに載置部31は、容器20が置かれる側の面に、載置部31の幅方向に並列配置された第1ローラ群311、第2ローラ群312、第3ローラ群313を備えている。ここで各ローラ群は、容器20の移動方向に沿った回転が可能であり且つ前後方向に並べられた複数のロール状部材314を有している。さらに本実施形態では、左方側ガイド32に、接触する容器20に対して摺動抵抗(摩擦抵抗)を付与する抵抗付与部33が設けられている。なお、図8(A)は、左方側ガイド32の全長に渡り抵抗付与部33が設けられた場合を例示し、図8(B)は、左方側ガイド32の一部に抵抗付与部33が設けられた場合を例示している。
【0052】
抵抗付与部33は、断面が円形であるほうが好ましい。容器20が前後方向や左右方向に傾いたとしても、抵抗付与部33と容器20との接触面積が変化しにくいためである。また、抵抗付与部33は、例えば、断面が円形の棒状部材に貼付される塩化ビニルなどにより構成されたビニールテープによっても構成することができる。また、抵抗付与部33は、EPDM(エチレン−プロピレンゴム)などのゴム部材によっても構成することができる。さらに、抵抗付与部33は、樹脂材料により形成することもできる。
【0053】
次に容器20について説明する。
図9は、容器20の表面状態を説明するための図である。
なお、図9(A)は容器20を一方側から図示したものであり、同図(B)は、容器20を他方側から図示したものである。また、同図(C)は同図(A)のS部における断面を示し、同図(D)は同図(A)のT部における断面を示している。なお図9では、蓋部材22(図1参照)に設けられた開口予定領域44や開封用タブ42等の図示を省略している。また図9(B)では溶接部24(図1(B)参照)の図示を省略している。
【0054】
本実施形態における容器20では、図9に示すように、また、上述のとおり、胴部21の外周面に、文字や図形などを含む図柄が印刷されている。そしてこの図柄に、商品名、商標名など他の商品と識別するための第1識別標記23a、第2識別標記23bが含まれている。ここで、第1識別標記23aおよび第2識別標記23bは、容器20の周方向において、位相が180°ずれて配置されている。
【0055】
また容器20は、同図(A)および(B)に示すように、胴部21の外周面に、第1領域R1〜第4領域R4を有している。ここでこれらの領域は、容器20の周方向において、第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3、第4領域R4の順に設けられている。なお、第1領域R1の表面状態および第3領域R3の表面状態は同様に構成されている。また、第2領域R2の表面状態および第4領域R4の表面状態は同様に構成されている。このため以下の説明では、第1領域R1および第2領域R2を中心に説明する。さらに本実施形態では、表面における摩擦係数は、第1領域R1(第3領域R3)>第2領域R2(第4領域R4)となっている。
【0056】
ここで同図(C)を参照し第2領域R2の表面状態についてまず説明する。
同図(C)に示すように、第2領域R2では、胴部21を構成しているスチール板やブリキ板等の基材50の表面にインキ層51が設けられている。また、インキ層51の表面にクレーター状の凹凸を有したトップコート層(最外層)52が設けられている。
【0057】
ここでインキ層51に用いるインキには、例えば金属印刷用のものを用いることができる。ここでインキの顔料(色量)としては、各種の有機顔料や無機顔料が用いられる。また、インキのビヒクルは、熱硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂等の樹脂を主成分としている。ここで熱硬化性樹脂としては、アルキッド型又はポリエステル型の樹脂等が用いられる。また、紫外線硬化性樹脂としては、紫外線ラジカル重合型、紫外線カチオン重合型の樹脂等が用いられる。さらに、インキには添加剤が含有されていても良い。添加剤としては、艶消し剤、ワックス類(天然系、石油系、合成系)、乾燥剤、分散剤、湿潤剤、架橋剤、ゲル化剤、増粘剤、皮張り防止剤、安定剤、消泡剤、光重合開始剤等が用いられる。
【0058】
またインキ層51は、いわゆるはじきインキにより形成されている。即ち、インキ層51は、このインキ層51の表面にトップコート層52を形成する塗料が塗られた場合にこの塗料をはじくインキにより形成されている。ここでトップコート層52における上記凹凸は、トップコート層52を形成する塗料がこのインキ層51によりはじかれることにより形成されたものである。
【0059】
なおトップコート層52を形成する塗料をインキ層51によりはじくためには(上記凹凸を形成するためには)、インキ層51の形成に用いるインキの表面張力を、トップコート層52の形成に用いる塗料の表面張力よりも5mN/m以上低く設定することが望ましい。換言すると、インキの表面張力が塗料の表面張力よりも低く、且つ、インキと塗料との間の表面張力の差が5mN/m以上であることが望ましい。ここでインキの表面張力の低下は、例えば、通常のインキにシリコーンを添加することにより行うことができる。
【0060】
一方、トップコート層52に用いる塗料は、熱硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂等の樹脂を主成分とするものであり、必要に応じてワックス成分を含有している。
熱硬化性樹脂としては、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、フラン−ホルムアルデヒド樹脂、キシレン−ホルムアルデヒド樹脂、ケトン−ホルムアルデヒド樹脂、アミノ樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂(例:ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスマレイミド樹脂、トリアリルシアヌレート樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、シリコーン樹脂、油性樹脂等が用いられる。
【0061】
さらに、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との組成物を用いても良い。この場合、熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル−マレイン酸−酢酸ビニル共重合体、アクリル重合体、飽和ポリエステル樹脂等が用いられる。これらの樹脂は、単独でも2種以上を組み合わせても使用できる。また、これらの樹脂組成物には、必要に応じて、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の公知の酸触媒が添加されていても良い。酸触媒を用いる場合は、酸触媒は樹脂に対して0.5〜1質量%添加するのが望ましい。また、これらの樹脂のうち、特に、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂と飽和ポリエステル樹脂との組成物や、熱硬化性アクリル樹脂とメラミン−ホルムアルデヒド樹脂との組成物を用いることが塗膜性能面で望ましい。
【0062】
一方、紫外線硬化性樹脂としては、例えば、カチオン硬化型樹脂、ラジカル硬化型樹脂等が用いられる。カチオン硬化型樹脂としては、紫外線硬化型エポキシ樹脂と光カチオン重合触媒との組成物等が用いられる。
【0063】
また、トップコート層52に用いる塗料において、上記の樹脂に架橋剤や増感剤を必要に応じて添加しても良い。架橋剤としては、種々のポリオール類(例:ε−カプロラクトントリオール)等が用いられる。増感剤としては、チオキサントン誘導体等が用いられる。さらに、トップコート層52に用いる塗料に、滑りを補うために、ワックス成分として天然系、石油系、合成系のワックス剤を単独で又は複合して添加しても良い。さらに、トップコート層52の表面のレベリング剤として、あるいは/更に、塗料状態での安定性を高めるためや初期滑り性をトップコート層52に付与するために、各種のシリコーンオイルを添加しても良い。
【0064】
なお、インキ層51およびトップコート層52の組成等の一例を挙げると以下のようになる。
[トップコート層52]
樹脂成分:ポリエステル30%、アクリル13%、アミノ55%、エポキシ2%
ワックス:石油系0.3%、天然系1%、合成系0.2%(樹脂成分に対し)
シリコーンオイル(混合):0.15%(樹脂成分に対し)
表面張力:33mN/m
厚さ:5μm
[インキ層51](はじきインキ)
主樹脂:アルキッド樹脂
顔料:TiO2
表面張力:28mN/m
厚さ:2μm
【0065】
なお上記は、第2領域R2の形成方法の一例を説明したものであり、例えば特開2002−361172号公報に開示されている技術を用いて第2領域R2を形成してもよい。即ち、トップコート層52を形成する塗料をインキ層51の表面で斑状に凝集させることで凹凸を形成し第2領域R2を形成してもよい。
【0066】
次いで、同図(D)を参照し第1領域R1の表面状態について説明する。
同図(D)に示すように第1領域R1では、上記と同様、基材50の表面にインキ層51が設けられている。また、インキ層51の表面に、上記第2領域R2におけるトップコート層52よりも表面が平滑に形成されたトップコート層(最外層)52が設けられている。
【0067】
ここで第1領域R1におけるインキ層51は、トップコート層52を形成する塗料をはじかないインキ(通常インキ)を用いて形成している。付言すれば、インキ層51を形成するインキは、表面張力がトップコート層52を形成する塗料の表面張力と等しいか又はそれよりも高いインキが用いられている。このため第1領域R1では、トップコート層52を形成する塗料がはじかれず、トップコート層52の表面は、第2領域R2におけるトップコート層52に比べ平滑となる。なお、インキ層51を形成するインキの基本的な組成等は上記と同様である。トップコート層52を形成する塗料の基本的な組成等は上記と同様である。
【0068】
なお、第1識別標記23aは第1領域R1に形成され、第2識別標記23bは第3領域R3に形成されている。また、第1識別標記23aおよび第2識別標記23bは、上記インキ層51により形成されている。
【0069】
次に、陳列装置30における容器20の動作について説明する。
図10は、陳列装置30における容器20の動作を説明するための図である。なお本図では第1ローラ群311、第2ローラ群312、第3ローラ群313(図8参照)の図示を省略している。
載置部31の後方に容器20が置かれると(符号4A参照)、この容器20は左方側ガイド32によって案内されながら前方に向かって移動する。そしてこの際、第1領域R1が抵抗付与部33に接触する状態にあると、第1領域R1と抵抗付与部33との間における滑りが抑制され(第1領域R1に抗力が付与され)、容器20は、時計回りの回転を行いながら前方へ移動する(符号4B参照)。
【0070】
そして符号4Cのように、第2領域R2が抵抗付与部33に接触する状態となると、第2領域R2と抵抗付与部33との間で滑りが生じ、容器20の回転は停止する。その後、容器20は左方側ガイド32により案内されながら前方に向かって移動(スライド)する。これにより、陳列装置30の前方に達した容器20は、第2識別標記23bが前方を向いた状態となる。付言すると、本実施形態では、第2領域R2と第2識別標記23bは、予め定められた所定の位置関係を有して配置されている。より詳細には、第2領域R2が左方側(一方向)を向いている場合に第2識別標記23bが前方(一方向と交差する方向、一方向と直交する方向)を向くように配置されている。このため、第2領域R2が抵抗付与部33に接触した状態となると、第2識別標記23bが前方を向く。
【0071】
ここで、第2領域R2が抵抗付与部33に接触した場合、第2領域R2と抵抗付与部33とは点接触に近い状態で接触する。付言すれば、第2領域R2と抵抗付与部33とは接触面積が低下する状態となる。このため、第2領域R2と抵抗付与部33との間で上記滑りが生じるものと考えられる。なお識別標記23が前方を向いた後は、左方側ガイド32から容器20へ付与される摺動抵抗を極力小さいものとすることが好ましい。このため、図8(B)では、抵抗付与部33を容器20の移動経路における途中まで配置し、所定位置から容器20の取り出し部にかけては抵抗付与部33を設けない構成としている。
【0072】
また本実施形態では、載置部31に幅方向における傾斜を付与しているが、例えば抵抗付与部33よりも前方は、幅方向における傾斜を付与しない構成とすることもできる。この場合も、左方側ガイド32から容器20に作用する摺動抵抗が低下し容器20が回転しにくくなる。また上記では載置部31に対し幅方向の傾斜を付与することで容器20を抵抗付与部33に接触させたが、幅方向における傾斜を付与しないでも容器20を抵抗付与部33に接触させることができる。例えば、右方側ガイド32側に板バネ等の付勢部材を設け、この付勢部材を用いて容器20を抵抗付与部33に接触させることができる。
【0073】
ここで第1領域R1〜第4領域R4の形成方法についてより詳細に説明する。
本実施形態における容器20の製造工程では、上記のとおり、多色オフセット印刷によって、基材の一方の面(容器20の外面となる面)に対し、識別標記23を含む図柄の印刷が行われる。ここで第1領域R1〜第4領域R4は、この多色オフセット印刷を行う際に形成することができる。
【0074】
図11は、多色オフセット印刷を行う印刷機の一例を示した図である。
同図に示す印刷機500は、図柄に対応した印刷版を有し上記インキ層51を形成するインキを基材に塗布するインキ塗布装置520、インキ塗布装置520に対向配置され転写部Teを通過する基材を支持する支持ロール550、上記トップコート層52を形成する塗料を塗布する塗料塗布ロール560、塗料塗布ロール560の対向位置に配置され通過する基材を支持する支持ロール561を備える。
【0075】
インキ塗布装置520は、基材に接触する印刷用シリンダ522、印刷用シリンダ522の外周面にインキを供給するインキ供給装置521を備えている。ここで印刷用シリンダ522は、外周面に印刷版を有しインキ供給装置521により供給されたインキを基材に転写する。なお本図では図示を省略しているが、インキ塗布装置520は、基材の搬送経路に沿って、色毎に複数設けられている。そして本印刷機500では、基材の表面に対し、複数設けられたインキ塗布装置520の各々から異なる色のインキが順次載せられる。これにより、基材の表面には、図柄に対応したインキ像が形成される。その後、本印刷機500では、塗料塗布ロール560によって、上記インキ像が転写された基材(インキ層51が形成された基材)の表面に対して塗料が塗布される。これによって上記トップコート層52が形成される。
【0076】
ここでこのような印刷機500を用いる場合、上記第2領域R2におけるインキ層51を担当する印刷用シリンダ522から塗料をはじく機能を有したインキを基材に載せることにより、第2領域R2と、この第2領域R2に隣り合う第1領域R1、第3領域R3との間に表面の違いを形成することができる。なお上記では、塗料塗布ロール560から基材に対し塗料を供給したが、基材の搬送方向における最下流側に位置するインキ塗布装置520から上記塗料を供給することもできる。また上記では説明を省略したが、隣接するインキ塗布装置520間においてインキの乾燥を適宜行うことができる。
【0077】
なお上記ではいわゆるはじきインキを用いて、第2領域R2に凹凸を形成したが、例えば発泡剤を含有したいわゆる発泡インキを用いてインキ層51を形成し、第2領域R2に凹凸を形成してもよい。また上記では、第2領域R2に凹凸を付与することで摺動抵抗を減じたが、フッ素樹脂などを第2領域R2に貼付したり塗布したりして摺動抵抗を減じてもよい。この場合、テフロン(登録商標)加工が施されたテープなどを貼付するとより簡便である。同様に、フッ素系の樹脂(PTFE、PFA、PVDF等)及びそれらのテープ、あるいは、超高分子量ポリエチレンフィルム等の摩擦抵抗の小さいフィルムテープが使用できる。
【0078】
さらに、第2領域R2におけるトップコート層52を形成する塗料をいわゆるマット塗料とすることで第2領域R2に凹凸を付与し、摺動抵抗を減じてもよい。なおこの場合は、塗料の塗り分けが必要となる。即ち、第2領域R2に対してはマット塗料を塗布し、第1領域R1に対してはマット塗料ではない塗料を塗布する必要がある。また、第2領域R2におけるトップコート層52の表面に更にマット塗料を塗布することで第2領域R2に凹凸を付与し、この領域における摺動抵抗を減じてもよい。また、第2領域R2におけるインキ層51をはじきインキにより形成するとともに、このインキ層51の表面にマット塗料を用いてトップコート層52を形成してもよい。
【0079】
ここでマット塗料とは、ガラス、シリカ、樹脂等の光を散乱させる粒子が含有され、通常の塗料よりも光沢度が低下する塗料である。マット塗料には、上記のようにガラス、シリカ、樹脂等の粒子が含まれているため、その表面に凹凸が形成される。このためマット塗料を用いた場合にも、左方側ガイド32と第2領域R2との摺動抵抗が小さくなり上記のような滑りを発生させることが可能となる。
【0080】
また例えば、第1領域R1〜第4領域R4におけるトップコート層52をマット塗料により形成した後、第1領域R1および第3領域R3に対して、表面を平滑にする塗料(例えば、上記ガラス等が含まれていない塗料)を塗布してもよい。即ち、マット塗料を塗布することで容器20の全周を滑りやすくした後、第1領域R1および第3領域R3に表面を平滑にする塗料を塗布し、第1領域R1および第3領域R3を滑りにくくしてもよい。また例えば、第1領域R1〜第4領域R4におけるトップコート層52をマット塗料により形成した後、このトップコート層52よりも摩擦係数の小さな、例えば前掲のテフロン(登録商標)系のテープやシールなどを第2領域R2および第4領域R4に貼付してもよい。
【0081】
さらに上記では第2領域R2および第4領域R4に凹凸を形成するとともに、第1領域R1および第3領域R3における表面を、第2領域R2および第4領域R4における表面よりも平滑にすることで識別標記23を前方に向けた。ところで容器20の回転/非回転には、例えばトップコート層52を構成する材料なども影響する。このため、第1領域R1および第3領域R3に凹凸が形成され、第2領域R2および第4領域R4が平滑に形成される場合であっても識別標記23を前方に向けることが可能な場合がある。即ち、本実施形態では、識別標記23が設けられた箇所を平滑にするとともに識別標記23が設けられていない箇所に凹凸を付与したが、このような形態に限られず、摩擦係数の異なる少なくとも2つの領域を識別標記23に対応させて形成しておけば識別標記23を前方に向けることが可能となる。
【符号の説明】
【0082】
21…胴部、22…蓋部材、23a…第1識別標記、23b…第2識別標記、42…開封用タブ、44…開口予定領域、R1…第1領域、R2…第2領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料用缶および飲料用缶の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料が充填される缶本体部は、例えば、金属板を打ち抜きカップ状に成形するカップ成形工程、絞り加工およびしごき加工により有底の円筒体を形成するボディ成形工程、円筒体の上縁部を切り揃えるトリミング工程、円筒体の上端付近を縮径化すると共にフランジ部を形成するネック・フランジ工程により形成される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−95231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、飲料が充填された飲料缶の多くは、缶(飲料用缶)を製造する製造工程と、この缶に対し飲料を充填する充填工程とによって製造される。ここで一般に、缶の製造は容器の製造メーカにより行われる。そして製造された缶は飲料メーカまで輸送され、飲料メーカにて飲料の充填が行われる。ところで缶の輸送を行う際、缶を単に積み重ねただけでは、単位体積当たりに占める缶の体積が極めて小さくなり、輸送効率が悪くなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明が適用される飲料用缶は、一端部および他端部に開口を有する筒状部材と、筒状部材とは別の部材として構成されるとともに筒状部材の他端部に対して取り付けられ、筒状部材の他端部に設けられた開口を塞ぐ塞ぎ部材と、を備え、筒状部材の一端部に設けられた開口の直径よりも筒状部材の他端部の直径の方が小さいことを特徴とする飲料用缶である。
【0006】
ここで、塞ぎ部材には、飲み口が形成される際に開口される開口領域と、ユーザにより操作された際に開口領域を押圧し開口領域に開口を形成するタブとが設けられていることを特徴とすることができる。また、筒状部材の外周面には標記が付され、標記と開口領域とが予め定められた所定の位置関係を有するように筒状部材および/または塞ぎ部材の位置制御がなされたうえで、筒状部材に対し塞ぎ部材が取り付けられていることを特徴とすることができる。さらに、筒状部材の外周面には標記が付されるとともに、外周面には、標記と予め定められた位置関係を有して配置され所定の摩擦係数を有する第1の領域、および、標記と予め定められた位置関係を有して配置され第1の領域とは摩擦係数の異なる第2の領域が形成されていることを特徴とすることができる。また、第1の領域および第2の領域は、筒状部材の周方向において異なる位置に配置されていることを特徴とすることができる。さらに、第2の領域は、第1の領域の摩擦係数よりも小さい摩擦係数を有して形成されるとともに標記が向いている方向とは略直交する方向を向くように配置されていることを特徴とすることができる。
【0007】
また、本発明を飲料用缶の製造方法と捉えた場合、本発明が適用される飲料用缶の製造方法は、板状部材から、一端部および他端部に開口を有するとともに一端部の直径の方が他端部の直径よりも大きい筒状部材を形成する形成工程と、形成工程により形成された筒状部材の他端部に形成された開口を塞ぐ塞ぎ部材を他端部に対して固定する固定工程と、を有する飲料用缶の製造方法である。
【0008】
ここで、他端部に固定される塞ぎ部材には、飲み口が形成される際に開口される開口領域と、ユーザにより操作された際に開口領域を押圧し開口領域に開口を形成するタブとが設けられていることを特徴とすることができる。また、塞ぎ部材は、円盤状に形成され、固定工程では、塞ぎ部材に設けられた開口領域と筒状部材に付された標記とが予め定められた所定の位置関係を有するように筒状部材および/または塞ぎ部材を周方向に回転させ、回転を行った後、塞ぎ部材を筒状部材に固定することを特徴とすることができる。さらに、板状部材の表面に標記を印刷する印刷工程と、標記が印刷される箇所と予め定められた位置関係を有する箇所であって板状部材の表面に第1の摩擦係数を有する第1の領域を形成する第1の領域形成工程と、標記が印刷される箇所と予め定められた位置関係を有する箇所であって板状部材の表面に第2の摩擦係数を有する第2の領域を形成する第2の領域形成工程と、を更に含むことを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0009】
飲料用缶を積み重ねて輸送する際の輸送効率を、本発明を採用しない場合に比べ高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る容器を示した図である。
【図2】内部の飲料が飲まれる際の容器の状態を示した図である。
【図3】容器の製造工程を説明するための図である。
【図4】胴部の輸送時における状態を示した図である。
【図5】第2の実施形態における容器を示した図である。
【図6】第2の実施形態における胴部の輸送時の状態を示した図である。
【図7】本発明の実施形態に係る陳列装置の概略構成および容器を示した図である。
【図8】陳列装置の上面図である。
【図9】容器の表面状態を説明するための図である。
【図10】陳列装置における容器の動作を説明するための図である。
【図11】多色オフセット印刷を行う印刷機の一例を示した図である。
【図12】基体に対する処理を示した図である。
【図13】装着部材の装着処理を示した図である。
【図14】装着部材の取り外し処理を示した図である。
【図15】容器の梱包体を示した図である。
【図16】容器の梱包体を示した図である。
【図17】蓋部材の回転を説明するための図である。
【図18】蓋部材の回転を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
―第1の実施形態―
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る容器を示した図である。なお、同図(A)は正面図を示し、同図(B)は背面図を示し、同図(C)は上面図を示している。
【0012】
本図に示す容器20は、いわゆる3ピース缶であり、同図(A)に示すように、胴部21、蓋部材22、底部材25の3つの部材から構成されている。
筒状部材の一例としての胴部21は、円筒状に形成されるとともに上方に位置する一端部および下方に位置する他端部に開口を有している。また胴部21にはテーパが付され、胴部21は下方に向かうに従い直径(外径)が次第に大きくなるように形成されている。ここで胴部21は、板状の基材(ブランク材)が円筒にされた後、溶接処理が施されることで形成されている。このため胴部21は、同図(B)に示すように、容器20の高さ方向に沿った溶接部24を有している。
【0013】
塞ぎ部材の一例としての蓋部材22は、胴部21とは別部材として構成されている。また蓋部材22は、円盤状に形成され、円筒状に形成された胴部21の上縁部に対していわゆる巻き締めにより固定されている。これにより胴部21の一方端側に形成された開口が塞がれている。また、底部材25も円盤状に形成され、円筒状に形成された胴部21の下縁部に対していわゆる巻き締めにより固定されている。これにより胴部21の他方端側に形成された開口が塞がれている。
【0014】
ここで蓋部材22は、同図(C)に示すように、円形(円盤状)の基部41と、飲み口が形成される際にユーザにより操作され後述する開口予定領域44を押圧しこの開口予定領域44に開口を形成する開封用タブ42とを備えている。ここで、この開封用タブ42は、開口予定領域44と予め定められた位置関係を有して配置されている。また基部41には、その中心からずれた位置(偏心した位置)に、飲み口が形成される際に開口される開口予定領域(開口領域)44が形成されている。また基部41には、開口予定領域44を囲むスコア(破断予定線)41aが形成されている。
【0015】
開封用タブ42は、基部41の一方の面に対して取り付けられている。また、開封用タブ42は、基部41の上記一方の面に沿うように設けられるとともに、基部41と対向する対向面側からこの対向面とは反対側の面側に向けて貫通したリング孔42cを有している。さらに開封用タブ42は、基部41の中心部から基部41に外周縁側に向かって設けられている。また開封用タブ42は、剛性のある板状部材であり、基部41の中央部に設けられたリベット43により基部41に固定されている。即ち、開封用タブ42は、リベット43を介して基部41に固定される固定部42aを備えている。また、開封用タブ42は、固定部42aから基部41に沿って延びるリング部42bを備えている。
【0016】
ここで固定部42aは、開口予定領域44にオーバーラップするように配置されている。またリング部42bは、スコア41aから遠ざかる方向に伸びている。また本実施形態では、リング部42bが、リベット43が設けられた箇所を基準として容器20の一方側に設けられ、開口予定領域44が、リベット43が設けられた箇所を基準として容器20の他方側に設けられている。さらに説明すれば、開封用タブ42と開口予定領域44とは、同一の線上に配置されている。
【0017】
またリング部42bは、リング孔42cを有する環状のつまみ部である。そしてリング部42bの先端部に指を掛けて引き起すと、リベット43を支点として、固定部42aの先端部が下方へ移動する。これにより、いわゆる梃子の原理でスコア41aが破断される。この結果、開口予定領域44が開封され、内容物である飲料の注出が可能になる。
【0018】
また本実施形態における容器20では、胴部21の外周面に、文字や図形などを含む図柄が印刷されている。そしてこの図柄には、商品名、商標名など他の商品と識別するための第1識別標記23a、第2識別標記23bが含まれている(なお本明細書においては、以下単に「識別標記23」と称する場合がある。)。ここで、第1識別標記23aおよび第2識別標記23bは、図1(C)に示すように、容器20の周方向において、位相が180°ずれた状態で配置されている。なお、第1識別標記23aおよび第2識別標記23bは、同一の形態とすることもできるし異なる形態とすることもできる。
【0019】
次に開口予定領域44と識別標記23との関係を説明する。
本実施形態における容器20では、識別標記23と開口予定領域44は、予め定められた所定の位置関係を有して配置されている。付言すると、本実施形態では、識別標記23と開口予定領域44とが予め定められた位置関係となるように、蓋部材22の位置が制御されたうえで胴部21に対し蓋部材22が固定される。より具体的に説明すると、本実施形態では、胴部21に対して蓋部材22を取り付ける際に、胴部21の例えば識別標記23(溶接部24等でもよい)を検知し、胴部21の姿勢(回転角度)を把握する。その後、胴部21の姿勢(回転角度)に応じた角度だけ蓋部材22を周方向に回転させる。これにより、識別標記23および開口予定領域44が予め定められた位置関係を有するようになる。その後、蓋部材22を胴部21に固定する。
【0020】
なお、胴部21の姿勢に応じた蓋部材22の上記回転(蓋部材22の位置の制御)は、図17(蓋部材22の回転を説明するための図)に示すように、例えば、円運動するピンPNで開封用タブ42を側方から押圧することで行うことができる。なお図17に示す実施形態では、搬送ベルト810に形成された窪み820に蓋部材22が収容された状態で搬送ベルト810により蓋部材22が搬送されている。そして本実施形態では、蓋部材22に随伴しながらピンPNが移動し、このピンPNにより蓋部材22が回転される。
【0021】
また蓋部材22の回転は、例えば、図18(蓋部材22の回転を説明するための図)に示すように、蓋部材22を周方向に回転させるとともに開封用タブ42の移動経路上にピンPNを突出させ、このピンPNを用いて開封用タブ42の移動を規制することで行うことができる。詳細に説明すると、図18に示す実施形態では、窪み820内に位置する蓋部材22が、抗力付与部材865の対向位置まで到達すると、搬送ベルト810に傾斜が付与されているために抗力付与部材865に向かってスライド移動し、符号8Aに示すように抗力付与部材865に接触する。これにより、蓋部材22は反時計回り方向(周方向)に回転するようになる。その一方で、ソレノイドSをオフする。これにより、図18の符号8Aに示すように、回転部材864AのピンPNが、搬送ベルト810に向かって移動する。次いで、モータMを駆動し、ピンPNを下降させる。これにより開封用タブ42の移動経路上であって予め定められた位置に、ピンPNが位置するようになる。その後、図18の符号8Bに示すように、ピンPNに対して開封用タブ42が接触し、蓋部材22の回転が停止される。ここで、回転部材864A、ピンPN、モータM、ソレノイドSなどは、循環移動するベルト部材860に取り付けられている。なお上記では蓋部材22を周方向に回転させたが、胴部21を周方向に回転させることもできる。また、胴部21および蓋部材22の双方を周方向に回転させることもできる。
【0022】
識別標記23と開口予定領域44との位置関係をさらに説明すると、本実施形態では、識別標記23と開口予定領域44とは、容器20の周方向において、位相が90°ずれた状態で配置されている。
図1(C)を参照してさらに説明すると、第1識別標記23aが一方向(図中右方向)を向いている場合に、開口予定領域44がこの一方向と直交する方向(図中下方向)に沿った状態で配置されるように、開口予定領域44および第1識別標記23aは配置されている。また第2識別標記23bが一方向(図中左方向)を向いている場合に、開口予定領域44がこの一方向と直交する方向(図中下方向)に沿った状態で配置されるように、開口予定領域44および第2識別標記23bは配置されている。
【0023】
さらに説明を行うと、容器20の軸心を基準とした場合、開口予定領域44は、この軸心から胴部21に向かう一方向に沿って配置されている。その一方で、第1識別標記23aおよび第2識別標記23bは、この一方向と直交する方向を向くように配置されている。さらに説明すると、開口予定領域44は、容器20の軸心から胴部21に向かう直線上に配置され、第1識別標記23aおよび第2識別標記23bは、この直線と直交する直線であって容器20の軸心を通る直線上に配置されている。付言すれば、第1識別標記23aおよび第2識別標記23bは、蓋部材22の中心と開口予定領域44とを通る仮想線を想定した場合に、この仮想線と直交する方向を向くように胴部21の外周面に付されている。
【0024】
ここで図2は、内部の飲料が飲まれる際の容器20の状態を示した図である。
本実施形態における容器20では、識別標記23と開口予定領域44とが上記のような位置関係を有して配置されている。このため、開口予定領域44に開口が形成され、この開口(飲み口)を通じて飲料が飲まれる際には、同図に示すように第2識別標記23bが側方を向く状態となる。また図示は省略するが、第1識別標記23aも側方を向く状態となる。
【0025】
ここで飲料等の商品の宣伝は通常テレビコマーシャル等により行われることが一般的であるが、飲料が飲まれる際に第三者から見える位置に識別標記23が配置されることによっても宣伝広告効果が生じうる。本実施形態における容器20では、飲料が飲まれる際に、上記のように識別標記23が側方を向き、第三者が認識可能となる位置に識別標記23が配置される。このため、宣伝広告効果を生じさせることができる。付言すれば、飲料を飲む者側に識別標記23が位置せず、第三者から認識可能な位置に識別標記23が位置するため、宣伝広告効果を生じさせることが可能となる。
【0026】
なお上記では識別標記23が側方を向く場合を一例に説明したが、飲料が飲まれる際に、飲料を飲む者側とは反対側に識別標記23が向いていても上記のような宣伝広告効果を生じさせることが可能となる。即ち、識別標記23が開口予定領域44とは反対側、即ちリング部42b側に付されていても宣伝広告効果を生じさせることが可能となる。付言すれば、開口予定領域44が偏心配置されている側とは反対側に識別標記23が付されていても宣伝広告効果を生じさせることが可能となる。また、飲料を飲む者に対しても識別標記23を見せたい場合は、開口予定領域44側とその反対側の両方に識別標記23を付すことができる。
【0027】
ここで容器20は、一般的に右手で持たれることが多い。左利きよりも右利きの方が一般的に多いためである。この結果、識別標記23が側方を向いたとしても、右手で持たれる箇所に付された識別標記23はこの右手によって隠されてしまう場合がある。このため、容器20における識別標記23は、右手で持たれたとしても隠れない位置に設けることがより好ましい。より具体的には、図1(C)における第2識別標記23bの位置に設けることが好ましい。この場合、右手により容器20が持たれたとしても、識別標記23は、右手により隠れず外部に露出する。
【0028】
次いで容器20の製造工程について説明する。
図3は、容器20の製造工程を説明するための図である。
本実施形態における容器20の製造工程では、まず、不図示のスチール板やブリキ板などの板状の基材(板状部材)の一方の面(容器20の内面となる面)に対して塗装を行う。なお、塗装に替えて例えば樹脂フィルムを貼付することもできる。次いで、この基材を加熱し、上記一方の面に対して施された塗装の焼き付けを行う。その後、例えば多色オフセット印刷により、上記基材の他方の面(容器20の外面となる面)に対して上記識別標記23を含む図柄の印刷を行う。次いで、基材の加熱を再度行い、印刷された図柄の焼き付けを行う。その後、図柄の焼き付けが行われた基材に対して剪断加工(切断加工)を施す。これにより、図3(A)に示すように、第1識別標記23aおよび第2識別標記23bを含む図柄を有し且つ略台形に形成された基材(ブランク材)が形成される。
【0029】
その後、不図示のフォーミング工程(円筒形成工程)にて丸められ両側部が重ね合わされた上記基材に対し溶接処理を行う。また溶接処理により完成した筒状体の一方の開口側および他方の開口側を金型に押し付け、フランジ加工を行う。これにより、上記にて説明した胴部21が完成する(図3(B)参照)。その後、別工程にて製造され上記開封用タブ42や開口予定領域44などを有した蓋部材22が、図3(C)に示すように、胴部21の上側の縁部に対していわゆる巻き締めに固定される。なおこの際、上述したとおり、蓋部材22の位置が制御されたうえで胴部21に対して蓋部材22が固定される。これにより、上記のとおり、胴部21に付された識別標記23と蓋部材22に形成された開口予定領域44とが、予め定められた所定の位置関係を有するようになる。
【0030】
その後、蓋部材22が下方に位置するように胴部21の上下が逆転され、胴部21の上部に位置する開口から飲料の充填が行われる(同図(D)参照)。その後、同図(E)に示すように胴部21に底部材25が載せられ、その後、いわゆる巻き締めによってこの底部材25が胴部21に固定される。これにより図1に示した容器20が完成する。なお、上記工程(A)〜(C)は容器の製造メーカにて実施されるのが一般的である。そして、工程(C)の完了後、蓋部材22が取り付けられた胴部21が飲料メーカへ輸送(搬送)され、飲料メーカにて、上記工程(D)、(E)が実施される。なお本明細書では、以下、蓋部材22が取り付けられた胴部21を基体29と称する場合がある。
【0031】
ここで図4は、胴部21の輸送時における状態を示した図である。本実施形態では、上記にて説明したように、胴部21にテーパが付され、胴部21は下方(開口が形成された側)に向かうに従い直径が次第に大きくなっている。さらに説明すると、本実施形態では、胴部21の一方端側に形成された開口の直径よりも胴部21の他方端における直径(蓋部材22の直径)の方が小さくなっている。このため本実施形態における一の胴部21は、図4に示すように、この一の胴部21よりも下方に位置する他の胴部21の内部に入り込むことが可能となっている。この結果、本実施形態における胴部21を採用した場合、輸送時の輸送効率を高めることが可能となる。付言すると本実施形態における胴部21を採用した場合、直径が高さ方向においてほぼ等しい胴部21に比べ、より多くの個数を運べるようになる。なお同図に示すように、積み重ねられた複数の胴部21のうちの最下部に位置する胴部21に対し固定された蓋部材22を覆う保護キャップHCを取り付けることもできる。
【0032】
なお本実施形態における製造方法を採用した場合、重心位置が容器20の下部側に位置する容器20を製造可能となる。付言すると、容器20が通常の状態で置かれた際に(開口予定領域44が容器20の上部に位置する状態で容器20が置かれた際に)重心位置が下部側に位置する容器20を製造可能となる。そしてこのような容器20は、重心位置が容器20の上部に位置する場合に比べ倒れにくくなる。
【0033】
ここで上記飲料メーカ側にて実施される処理について詳細に説明する。飲料メーカでは、まず、積み重ねられた状態で搬送されてきた基体29(蓋部材22が固定された胴部21)を個々の基体29にばらす処理を行う。この処理は、例えば図12(基体に対する処理を示した図)に示す装置により行われる。この装置は、基体29の上部に位置し基体29を吸引しながら搬送する搬送装置600、基体29の側方に位置し吸引される基体29の下部に位置する基体29の移動を抑えるストッパー610を備えている。このストッパー610は、基体29に接近する方向および離れる方向に移動可能に設けられた2つの可動片611から構成されており、基体29の端部に接触し基体29の移動を抑える。なお、基体29に接近する方向および離れる方向に移動可能に設けられ基体29の側部を押さえる押さえ片620を設けることもできる。
【0034】
また飲料メーカでは、基体29の各々に対して、キャップとして機能する装着部材を装着することができる。より具体的には、図13(装着部材の装着処理を示した図)に示すように、基体29のうちの飲み口が形成された側に対し、装着部材630を装着することができる。このように装着部材630を装着した場合、基体29の飲み口周辺の汚損等が防止される。なお、装着部材630の装着は、例えば同図に示す装着装置640により行うことができる。この装着装置640は、例えば、基体29を搬送する第1コンベア641、第1コンベア641により搬送されてきた基体29を吸引により持ち上げ搬送する搬送装置642、搬送装置642により持ち上げられている基体29へ装着部材630を装着する装着装置643、装着部材630の装着が終了した基体29を搬送する第2コンベア644により構成することができる。
【0035】
なお、上記装着部材630は、基体29への飲料の充填、底部材25の取り付けが終了した後、図14(装着部材の取り外し処理を示した図)に示すように、取り外し装置650によって取り外される。この取り外し装置650は、同図に示すように、容器20(基体29)の上下を反転させる反転装置651、反転装置651により反転された容器20から装着部材630を取り外す取り外し装置652を有している。ここで取り外し装置652は、搬送ベルト654の内部に配置され容器20を搬送ベルト654の内側から吸引する第1吸引部652Aと、装着部材630を吸引する第2吸引部652Bとを用いて、装着部材630の取り外しを行う。なお、取り外し装置652により取り外された装着部材630は、不図示の搬送装置により、上記装着装置640(図13参照)まで搬送される。そして装着装置640にて新たな基体29に装着される。
【0036】
なお飲料が充填され底部材25が取り付けられた容器20は、図15(容器の梱包体を示した図)の(A)および(B)に示すように、紙パックや透明フィルムなどの梱包材710より梱包され、梱包体700なった状態で出荷される。なお、図15(A)は梱包体700の正面図であり、図15(B)は梱包体700を上部から眺めた場合の断面図である。ここで容器20は、図15(B)に示すように、1個おきに(1缶おきに)天地を逆転させることができる。この場合、天地を逆転させない場合に比べ、梱包体700の体積を小さくすることができる。また容器20は、図15(A)に示すように、識別標記23が梱包材710の外側を向くように配置することもできる。この場合、宣伝広告効果が生じるようになる。なお、識別標記23を梱包材710の外側を向けるためには、容器20を周方向に回転させ識別標記23の向きを揃える必要があるが、この向きの揃えは、容器20に摩擦係数の異なる複数の領域を形成(後述)するとともに、後述する陳列装置30に付与された機能と同様の機能を容器20の搬送経路に設けることで行うことができる。
【0037】
なお容器20(胴部21)にテーパを付した場合、梱包材710の内部にデッドスペースが生じやすくなる。そしてこのようにデッドスペースが生じると、搬送中に容器20が揺れやすくなる。このため、図15(A)、(B)に示すように、梱包材710を折り込んだ折り込み部760を形成することが望ましくなる。なお上記では、6缶パック且つ1個おきに容器20の天地を逆転させた態様を説明したが、図16(容器の梱包体を示した図)の(A)に示すように、7缶をひとまとめにしてもよい。ここで図16(A)では、中心部に容器20を一つ配置し、この容器20の周囲に6個の容器20を配置している。なお図16(A)では、中心部に位置する容器20の天地を逆転させている。また図16(B)に示すように、中心部から外れた箇所に位置する容器20であって最も離れた関係にある2つの容器20の天地を逆転させることもできる。なお図16では、上記梱包材710の図示を省略している。
【0038】
―第2の実施形態―
図5は、第2の実施形態における容器20を示した図である。なお、本図でもいわゆる3ピース缶を例示している。ここで、同図(A)は正面図を示し、同図(B)は背面図を示し、同図(C)は上面図を示している。また第1の実施形態と同様の機能については、同様の符号を用いここではその説明を省略する。
【0039】
第1の実施形態では、下部側の直径の方が上部側の直径よりも大きい容器20を説明したが、図5に示すように、下部側の直径を上部側の直径よりも小さくすることもできる。さらに説明すると、本実施形態では、容器20の胴部21に付されたテーパが第1の実施形態と異なっている。具体的には、本実施形態における容器20の胴部21には、上方に向かうに従い直径が次第に大きくなるテーパが付されている。
【0040】
また本実施形態では、第1の実施形態と同様に、胴部21の一方の開口を塞ぐ蓋部材22と他方の開口を塞ぐ底部材25とが設けられている。ここで本実施形態では、胴部21の上方に位置する開口の方が下方に位置する開口よりも大きくなっているため、第1の実施形態と異なり、蓋部材22の直径の方が底部材25の直径よりも大きくなっている。なお本実施形態における開口予定領域44と識別標記23も、第1の実施形態と同様に、予め定められた位置関係を有して配置されている。付言すると、飲料が飲まれる際に第三者が認識可能となる位置に識別標記23が配置されるように、開口予定領域44および識別標記23が配置されている。
【0041】
ここで第2の実施形態における容器20の製造方法について説明する。本実施形態における容器20の製造工程では、図3(A)、(B)に示した処理がまず行われ、第1の実施形態と同様に、胴部21が形成される。なお第1の実施形態では、図3(A)に示した工程にて、上辺よりも下辺が長い台形の基材を形成したが、この第2の実施形態では、図3(A)に示した工程にて、下辺よりも上辺が長い台形の基材を形成する。そして図3(B)で示した工程によって、上部の直径の方が下部の直径よりも大きい胴部21が形成される。
【0042】
その後、本実施形態では、胴部21の下部に対して底部材25が巻き締めにより取り付けられる。付言すると、第1の実施形態では蓋部材22が先に取り付けられたが、本実施形態では底部材25が先に取り付けられる。その後、上記と同様、底部材25が取り付けられた胴部21が飲料メーカへ輸送される。そして、底部材25が取り付けられた側とは反対側に位置する胴部21の開口から飲料の充填が行われる。そして最後に、この開口を塞ぐ蓋部材22が胴部21の上部に対し取り付けられる。
【0043】
図6は、第2の実施形態における胴部21の輸送時の状態を示した図である。
本実施形態における胴部21も、上方(開口が形成された側)に向かうに従い直径が次第に大きくなっている。さらに説明すると、本実施形態でも、胴部21の一方端側に形成された開口の直径よりも胴部21の他方端における直径(底部材25の直径)の方が小さくなっている。このため本実施形態でも、一の胴部21は、図6に示すように、この一の胴部21よりも下方に位置する他の胴部21の内部に入り込む。この結果、本実施形態でも、輸送時の輸送効率を高めることが可能となる。
【0044】
ところでコンビニエンスストア等において、容器20に付された上記識別標記23が購入者の取り出し方向を向いていないと、商品の識別がしにくくなるとともに、商品の陳列時の見栄えが悪くなる。このため、コンビニエンスストア等では、容器20の識別標記23が前方側など特定の方向に向いていることが好ましくなる。ここでコンビニエンスストア等に設置される陳列装置を以下のように構成し、また、上記にて説明した容器20の表面状態を以下に説明する状態とした場合、識別標記23を特定の方向に向けることが可能となる。
【0045】
図7は、本発明の実施形態に係る陳列装置の概略構成および容器を示した図である。なお以下の説明では、図1にて説明した容器20を一例に説明するが、図5に示した容器20に対しても以下で説明する機能を付与可能である。
【0046】
図7(A)に示すように本実施形態における陳列装置30は、図1にて説明した容器20を載せることが可能な載置部31と、容器20の移動経路を形成するとともに容器20の移動を案内するガイド32とを備えている。また、載置部31の一側辺に沿って配置され、容器20の移動を停止させる規制板34を備えている。ここで、規制板34は、透明に形成することが好ましい。
【0047】
ここで陳列装置30は、同図(B)に示すように、コンビニエンスストア、スーパーマーケットなどに設置される陳列ケース10の内部に収納される。この陳列ケース10は、直方体状に形成されたケース本体部10Aと、このケース本体部10Aに対して開閉可能に設けられたドア10Bとにより主要部が構成されている。ここで陳列装置30は、陳列ケース10に設けられた棚(不図示)の上に載せられる。この際、陳列装置30は、規制板34が設けられた側がドア10B側に位置するように設置される。また、載置部31は、規制板34が設けられた側が、規制板34が設けられた側とは反対側よりも下方に位置するように配置される。即ち、載置部31は、陳列ケース10の後方側から容器20が取り出される前方側(取り出し部側)に向かって下り傾斜した状態で配置される。
【0048】
ここで本実施形態における陳列ケース10は、後方側にもドアが設けられ(不図示)、後方側も開放可能となっている。そしてこの後方側より陳列装置30に容器20が投入される。即ち、陳列ケース10の後方側および陳列装置30の後方側に容器20の投入部が設けられた構成となっている。そして、投入された容器20は載置部31上をドア10B側に向かって移動する。なお、本明細書では、ドア10B側を前方側(前方)と称しドア10Bとは反対側を後方側(後方)と称する場合がある。また、陳列ケース10の幅方向(容器20が移動する方向に直交する方向)を横方向、幅方向と称する場合がある。
【0049】
陳列装置30についてさらに説明する。
図8は、陳列装置30の上面図である。
本実施形態における陳列装置30のガイド32は、容器20の移動経路に沿って配置されている。またガイド32は、容器20の移動経路の両側に設けられている。ここでガイド32は、例えばアルミニウムなどの金属材料や樹脂材料などにより形成される。
【0050】
載置部31は、幅方向に傾斜して配置されている。詳細には、一方のガイド32(図中左方のガイド32)側の方が他方のガイド32(図中右方のガイド32)側よりも下方に位置するように傾斜して配置されている。また載置部31は、上記のように前方側の方が後方側よりも下方に位置するように傾斜して配置されている。ここで同図における符号2A,2Bは、載置部31における傾斜の状態を示している。本明細書においては、以下、左方のガイド32を左方側ガイド32と称し右方のガイド32を右方側ガイド32と称する場合がある。
【0051】
さらに載置部31は、容器20が置かれる側の面に、載置部31の幅方向に並列配置された第1ローラ群311、第2ローラ群312、第3ローラ群313を備えている。ここで各ローラ群は、容器20の移動方向に沿った回転が可能であり且つ前後方向に並べられた複数のロール状部材314を有している。さらに本実施形態では、左方側ガイド32に、接触する容器20に対して摺動抵抗(摩擦抵抗)を付与する抵抗付与部33が設けられている。なお、図8(A)は、左方側ガイド32の全長に渡り抵抗付与部33が設けられた場合を例示し、図8(B)は、左方側ガイド32の一部に抵抗付与部33が設けられた場合を例示している。
【0052】
抵抗付与部33は、断面が円形であるほうが好ましい。容器20が前後方向や左右方向に傾いたとしても、抵抗付与部33と容器20との接触面積が変化しにくいためである。また、抵抗付与部33は、例えば、断面が円形の棒状部材に貼付される塩化ビニルなどにより構成されたビニールテープによっても構成することができる。また、抵抗付与部33は、EPDM(エチレン−プロピレンゴム)などのゴム部材によっても構成することができる。さらに、抵抗付与部33は、樹脂材料により形成することもできる。
【0053】
次に容器20について説明する。
図9は、容器20の表面状態を説明するための図である。
なお、図9(A)は容器20を一方側から図示したものであり、同図(B)は、容器20を他方側から図示したものである。また、同図(C)は同図(A)のS部における断面を示し、同図(D)は同図(A)のT部における断面を示している。なお図9では、蓋部材22(図1参照)に設けられた開口予定領域44や開封用タブ42等の図示を省略している。また図9(B)では溶接部24(図1(B)参照)の図示を省略している。
【0054】
本実施形態における容器20では、図9に示すように、また、上述のとおり、胴部21の外周面に、文字や図形などを含む図柄が印刷されている。そしてこの図柄に、商品名、商標名など他の商品と識別するための第1識別標記23a、第2識別標記23bが含まれている。ここで、第1識別標記23aおよび第2識別標記23bは、容器20の周方向において、位相が180°ずれて配置されている。
【0055】
また容器20は、同図(A)および(B)に示すように、胴部21の外周面に、第1領域R1〜第4領域R4を有している。ここでこれらの領域は、容器20の周方向において、第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3、第4領域R4の順に設けられている。なお、第1領域R1の表面状態および第3領域R3の表面状態は同様に構成されている。また、第2領域R2の表面状態および第4領域R4の表面状態は同様に構成されている。このため以下の説明では、第1領域R1および第2領域R2を中心に説明する。さらに本実施形態では、表面における摩擦係数は、第1領域R1(第3領域R3)>第2領域R2(第4領域R4)となっている。
【0056】
ここで同図(C)を参照し第2領域R2の表面状態についてまず説明する。
同図(C)に示すように、第2領域R2では、胴部21を構成しているスチール板やブリキ板等の基材50の表面にインキ層51が設けられている。また、インキ層51の表面にクレーター状の凹凸を有したトップコート層(最外層)52が設けられている。
【0057】
ここでインキ層51に用いるインキには、例えば金属印刷用のものを用いることができる。ここでインキの顔料(色量)としては、各種の有機顔料や無機顔料が用いられる。また、インキのビヒクルは、熱硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂等の樹脂を主成分としている。ここで熱硬化性樹脂としては、アルキッド型又はポリエステル型の樹脂等が用いられる。また、紫外線硬化性樹脂としては、紫外線ラジカル重合型、紫外線カチオン重合型の樹脂等が用いられる。さらに、インキには添加剤が含有されていても良い。添加剤としては、艶消し剤、ワックス類(天然系、石油系、合成系)、乾燥剤、分散剤、湿潤剤、架橋剤、ゲル化剤、増粘剤、皮張り防止剤、安定剤、消泡剤、光重合開始剤等が用いられる。
【0058】
またインキ層51は、いわゆるはじきインキにより形成されている。即ち、インキ層51は、このインキ層51の表面にトップコート層52を形成する塗料が塗られた場合にこの塗料をはじくインキにより形成されている。ここでトップコート層52における上記凹凸は、トップコート層52を形成する塗料がこのインキ層51によりはじかれることにより形成されたものである。
【0059】
なおトップコート層52を形成する塗料をインキ層51によりはじくためには(上記凹凸を形成するためには)、インキ層51の形成に用いるインキの表面張力を、トップコート層52の形成に用いる塗料の表面張力よりも5mN/m以上低く設定することが望ましい。換言すると、インキの表面張力が塗料の表面張力よりも低く、且つ、インキと塗料との間の表面張力の差が5mN/m以上であることが望ましい。ここでインキの表面張力の低下は、例えば、通常のインキにシリコーンを添加することにより行うことができる。
【0060】
一方、トップコート層52に用いる塗料は、熱硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂等の樹脂を主成分とするものであり、必要に応じてワックス成分を含有している。
熱硬化性樹脂としては、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、フラン−ホルムアルデヒド樹脂、キシレン−ホルムアルデヒド樹脂、ケトン−ホルムアルデヒド樹脂、アミノ樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂(例:ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスマレイミド樹脂、トリアリルシアヌレート樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、シリコーン樹脂、油性樹脂等が用いられる。
【0061】
さらに、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との組成物を用いても良い。この場合、熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル−マレイン酸−酢酸ビニル共重合体、アクリル重合体、飽和ポリエステル樹脂等が用いられる。これらの樹脂は、単独でも2種以上を組み合わせても使用できる。また、これらの樹脂組成物には、必要に応じて、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の公知の酸触媒が添加されていても良い。酸触媒を用いる場合は、酸触媒は樹脂に対して0.5〜1質量%添加するのが望ましい。また、これらの樹脂のうち、特に、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂と飽和ポリエステル樹脂との組成物や、熱硬化性アクリル樹脂とメラミン−ホルムアルデヒド樹脂との組成物を用いることが塗膜性能面で望ましい。
【0062】
一方、紫外線硬化性樹脂としては、例えば、カチオン硬化型樹脂、ラジカル硬化型樹脂等が用いられる。カチオン硬化型樹脂としては、紫外線硬化型エポキシ樹脂と光カチオン重合触媒との組成物等が用いられる。
【0063】
また、トップコート層52に用いる塗料において、上記の樹脂に架橋剤や増感剤を必要に応じて添加しても良い。架橋剤としては、種々のポリオール類(例:ε−カプロラクトントリオール)等が用いられる。増感剤としては、チオキサントン誘導体等が用いられる。さらに、トップコート層52に用いる塗料に、滑りを補うために、ワックス成分として天然系、石油系、合成系のワックス剤を単独で又は複合して添加しても良い。さらに、トップコート層52の表面のレベリング剤として、あるいは/更に、塗料状態での安定性を高めるためや初期滑り性をトップコート層52に付与するために、各種のシリコーンオイルを添加しても良い。
【0064】
なお、インキ層51およびトップコート層52の組成等の一例を挙げると以下のようになる。
[トップコート層52]
樹脂成分:ポリエステル30%、アクリル13%、アミノ55%、エポキシ2%
ワックス:石油系0.3%、天然系1%、合成系0.2%(樹脂成分に対し)
シリコーンオイル(混合):0.15%(樹脂成分に対し)
表面張力:33mN/m
厚さ:5μm
[インキ層51](はじきインキ)
主樹脂:アルキッド樹脂
顔料:TiO2
表面張力:28mN/m
厚さ:2μm
【0065】
なお上記は、第2領域R2の形成方法の一例を説明したものであり、例えば特開2002−361172号公報に開示されている技術を用いて第2領域R2を形成してもよい。即ち、トップコート層52を形成する塗料をインキ層51の表面で斑状に凝集させることで凹凸を形成し第2領域R2を形成してもよい。
【0066】
次いで、同図(D)を参照し第1領域R1の表面状態について説明する。
同図(D)に示すように第1領域R1では、上記と同様、基材50の表面にインキ層51が設けられている。また、インキ層51の表面に、上記第2領域R2におけるトップコート層52よりも表面が平滑に形成されたトップコート層(最外層)52が設けられている。
【0067】
ここで第1領域R1におけるインキ層51は、トップコート層52を形成する塗料をはじかないインキ(通常インキ)を用いて形成している。付言すれば、インキ層51を形成するインキは、表面張力がトップコート層52を形成する塗料の表面張力と等しいか又はそれよりも高いインキが用いられている。このため第1領域R1では、トップコート層52を形成する塗料がはじかれず、トップコート層52の表面は、第2領域R2におけるトップコート層52に比べ平滑となる。なお、インキ層51を形成するインキの基本的な組成等は上記と同様である。トップコート層52を形成する塗料の基本的な組成等は上記と同様である。
【0068】
なお、第1識別標記23aは第1領域R1に形成され、第2識別標記23bは第3領域R3に形成されている。また、第1識別標記23aおよび第2識別標記23bは、上記インキ層51により形成されている。
【0069】
次に、陳列装置30における容器20の動作について説明する。
図10は、陳列装置30における容器20の動作を説明するための図である。なお本図では第1ローラ群311、第2ローラ群312、第3ローラ群313(図8参照)の図示を省略している。
載置部31の後方に容器20が置かれると(符号4A参照)、この容器20は左方側ガイド32によって案内されながら前方に向かって移動する。そしてこの際、第1領域R1が抵抗付与部33に接触する状態にあると、第1領域R1と抵抗付与部33との間における滑りが抑制され(第1領域R1に抗力が付与され)、容器20は、時計回りの回転を行いながら前方へ移動する(符号4B参照)。
【0070】
そして符号4Cのように、第2領域R2が抵抗付与部33に接触する状態となると、第2領域R2と抵抗付与部33との間で滑りが生じ、容器20の回転は停止する。その後、容器20は左方側ガイド32により案内されながら前方に向かって移動(スライド)する。これにより、陳列装置30の前方に達した容器20は、第2識別標記23bが前方を向いた状態となる。付言すると、本実施形態では、第2領域R2と第2識別標記23bは、予め定められた所定の位置関係を有して配置されている。より詳細には、第2領域R2が左方側(一方向)を向いている場合に第2識別標記23bが前方(一方向と交差する方向、一方向と直交する方向)を向くように配置されている。このため、第2領域R2が抵抗付与部33に接触した状態となると、第2識別標記23bが前方を向く。
【0071】
ここで、第2領域R2が抵抗付与部33に接触した場合、第2領域R2と抵抗付与部33とは点接触に近い状態で接触する。付言すれば、第2領域R2と抵抗付与部33とは接触面積が低下する状態となる。このため、第2領域R2と抵抗付与部33との間で上記滑りが生じるものと考えられる。なお識別標記23が前方を向いた後は、左方側ガイド32から容器20へ付与される摺動抵抗を極力小さいものとすることが好ましい。このため、図8(B)では、抵抗付与部33を容器20の移動経路における途中まで配置し、所定位置から容器20の取り出し部にかけては抵抗付与部33を設けない構成としている。
【0072】
また本実施形態では、載置部31に幅方向における傾斜を付与しているが、例えば抵抗付与部33よりも前方は、幅方向における傾斜を付与しない構成とすることもできる。この場合も、左方側ガイド32から容器20に作用する摺動抵抗が低下し容器20が回転しにくくなる。また上記では載置部31に対し幅方向の傾斜を付与することで容器20を抵抗付与部33に接触させたが、幅方向における傾斜を付与しないでも容器20を抵抗付与部33に接触させることができる。例えば、右方側ガイド32側に板バネ等の付勢部材を設け、この付勢部材を用いて容器20を抵抗付与部33に接触させることができる。
【0073】
ここで第1領域R1〜第4領域R4の形成方法についてより詳細に説明する。
本実施形態における容器20の製造工程では、上記のとおり、多色オフセット印刷によって、基材の一方の面(容器20の外面となる面)に対し、識別標記23を含む図柄の印刷が行われる。ここで第1領域R1〜第4領域R4は、この多色オフセット印刷を行う際に形成することができる。
【0074】
図11は、多色オフセット印刷を行う印刷機の一例を示した図である。
同図に示す印刷機500は、図柄に対応した印刷版を有し上記インキ層51を形成するインキを基材に塗布するインキ塗布装置520、インキ塗布装置520に対向配置され転写部Teを通過する基材を支持する支持ロール550、上記トップコート層52を形成する塗料を塗布する塗料塗布ロール560、塗料塗布ロール560の対向位置に配置され通過する基材を支持する支持ロール561を備える。
【0075】
インキ塗布装置520は、基材に接触する印刷用シリンダ522、印刷用シリンダ522の外周面にインキを供給するインキ供給装置521を備えている。ここで印刷用シリンダ522は、外周面に印刷版を有しインキ供給装置521により供給されたインキを基材に転写する。なお本図では図示を省略しているが、インキ塗布装置520は、基材の搬送経路に沿って、色毎に複数設けられている。そして本印刷機500では、基材の表面に対し、複数設けられたインキ塗布装置520の各々から異なる色のインキが順次載せられる。これにより、基材の表面には、図柄に対応したインキ像が形成される。その後、本印刷機500では、塗料塗布ロール560によって、上記インキ像が転写された基材(インキ層51が形成された基材)の表面に対して塗料が塗布される。これによって上記トップコート層52が形成される。
【0076】
ここでこのような印刷機500を用いる場合、上記第2領域R2におけるインキ層51を担当する印刷用シリンダ522から塗料をはじく機能を有したインキを基材に載せることにより、第2領域R2と、この第2領域R2に隣り合う第1領域R1、第3領域R3との間に表面の違いを形成することができる。なお上記では、塗料塗布ロール560から基材に対し塗料を供給したが、基材の搬送方向における最下流側に位置するインキ塗布装置520から上記塗料を供給することもできる。また上記では説明を省略したが、隣接するインキ塗布装置520間においてインキの乾燥を適宜行うことができる。
【0077】
なお上記ではいわゆるはじきインキを用いて、第2領域R2に凹凸を形成したが、例えば発泡剤を含有したいわゆる発泡インキを用いてインキ層51を形成し、第2領域R2に凹凸を形成してもよい。また上記では、第2領域R2に凹凸を付与することで摺動抵抗を減じたが、フッ素樹脂などを第2領域R2に貼付したり塗布したりして摺動抵抗を減じてもよい。この場合、テフロン(登録商標)加工が施されたテープなどを貼付するとより簡便である。同様に、フッ素系の樹脂(PTFE、PFA、PVDF等)及びそれらのテープ、あるいは、超高分子量ポリエチレンフィルム等の摩擦抵抗の小さいフィルムテープが使用できる。
【0078】
さらに、第2領域R2におけるトップコート層52を形成する塗料をいわゆるマット塗料とすることで第2領域R2に凹凸を付与し、摺動抵抗を減じてもよい。なおこの場合は、塗料の塗り分けが必要となる。即ち、第2領域R2に対してはマット塗料を塗布し、第1領域R1に対してはマット塗料ではない塗料を塗布する必要がある。また、第2領域R2におけるトップコート層52の表面に更にマット塗料を塗布することで第2領域R2に凹凸を付与し、この領域における摺動抵抗を減じてもよい。また、第2領域R2におけるインキ層51をはじきインキにより形成するとともに、このインキ層51の表面にマット塗料を用いてトップコート層52を形成してもよい。
【0079】
ここでマット塗料とは、ガラス、シリカ、樹脂等の光を散乱させる粒子が含有され、通常の塗料よりも光沢度が低下する塗料である。マット塗料には、上記のようにガラス、シリカ、樹脂等の粒子が含まれているため、その表面に凹凸が形成される。このためマット塗料を用いた場合にも、左方側ガイド32と第2領域R2との摺動抵抗が小さくなり上記のような滑りを発生させることが可能となる。
【0080】
また例えば、第1領域R1〜第4領域R4におけるトップコート層52をマット塗料により形成した後、第1領域R1および第3領域R3に対して、表面を平滑にする塗料(例えば、上記ガラス等が含まれていない塗料)を塗布してもよい。即ち、マット塗料を塗布することで容器20の全周を滑りやすくした後、第1領域R1および第3領域R3に表面を平滑にする塗料を塗布し、第1領域R1および第3領域R3を滑りにくくしてもよい。また例えば、第1領域R1〜第4領域R4におけるトップコート層52をマット塗料により形成した後、このトップコート層52よりも摩擦係数の小さな、例えば前掲のテフロン(登録商標)系のテープやシールなどを第2領域R2および第4領域R4に貼付してもよい。
【0081】
さらに上記では第2領域R2および第4領域R4に凹凸を形成するとともに、第1領域R1および第3領域R3における表面を、第2領域R2および第4領域R4における表面よりも平滑にすることで識別標記23を前方に向けた。ところで容器20の回転/非回転には、例えばトップコート層52を構成する材料なども影響する。このため、第1領域R1および第3領域R3に凹凸が形成され、第2領域R2および第4領域R4が平滑に形成される場合であっても識別標記23を前方に向けることが可能な場合がある。即ち、本実施形態では、識別標記23が設けられた箇所を平滑にするとともに識別標記23が設けられていない箇所に凹凸を付与したが、このような形態に限られず、摩擦係数の異なる少なくとも2つの領域を識別標記23に対応させて形成しておけば識別標記23を前方に向けることが可能となる。
【符号の説明】
【0082】
21…胴部、22…蓋部材、23a…第1識別標記、23b…第2識別標記、42…開封用タブ、44…開口予定領域、R1…第1領域、R2…第2領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部および他端部に開口を有する筒状部材と、
前記筒状部材とは別の部材として構成されるとともに当該筒状部材の前記他端部に対して取り付けられ、当該筒状部材の当該他端部に設けられた前記開口を塞ぐ塞ぎ部材と、
を備え、
前記筒状部材の前記一端部に設けられた前記開口の直径よりも当該筒状部材の前記他端部の直径の方が小さいことを特徴とする飲料用缶。
【請求項2】
前記塞ぎ部材には、飲み口が形成される際に開口される開口領域と、ユーザにより操作された際に当該開口領域を押圧し当該開口領域に開口を形成するタブとが設けられていることを特徴とする請求項1記載の飲料用缶。
【請求項3】
前記筒状部材の外周面には標記が付され、
前記標記と前記開口領域とが予め定められた所定の位置関係を有するように前記筒状部材および/または前記塞ぎ部材の位置制御がなされたうえで、当該筒状部材に対し当該塞ぎ部材が取り付けられていることを特徴とする請求項2記載の飲料用缶。
【請求項4】
前記筒状部材の外周面には標記が付されるとともに、当該外周面には、当該標記と予め定められた位置関係を有して配置され所定の摩擦係数を有する第1の領域、および、当該標記と予め定められた位置関係を有して配置され当該第1の領域とは摩擦係数の異なる第2の領域が形成されていることを特徴する請求項1乃至3の何れかに記載の飲料用缶。
【請求項5】
前記第1の領域および前記第2の領域は、前記筒状部材の周方向において異なる位置に配置されていることを特徴とする請求項4記載の飲料用缶。
【請求項6】
前記第2の領域は、前記第1の領域の摩擦係数よりも小さい摩擦係数を有して形成されるとともに前記標記が向いている方向とは略直交する方向を向くように配置されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の飲料用缶。
【請求項7】
板状部材から、一端部および他端部に開口を有するとともに当該一端部の直径の方が当該他端部の直径よりも大きい筒状部材を形成する形成工程と、
前記形成工程により形成された前記筒状部材の前記他端部に形成された前記開口を塞ぐ塞ぎ部材を当該他端部に対して固定する固定工程と、
を有する飲料用缶の製造方法。
【請求項8】
前記他端部に固定される前記塞ぎ部材には、飲み口が形成される際に開口される開口領域と、ユーザにより操作された際に前記開口領域を押圧し当該開口領域に開口を形成するタブとが設けられていることを特徴とする請求項7記載の飲料用缶の製造方法。
【請求項9】
前記塞ぎ部材は、円盤状に形成され、
前記固定工程では、前記塞ぎ部材に設けられた前記開口領域と前記筒状部材に付された標記とが予め定められた所定の位置関係を有するように当該筒状部材および/または当該塞ぎ部材を周方向に回転させ、当該回転を行った後、当該塞ぎ部材を当該筒状部材に固定することを特徴とする請求項8記載の飲料用缶の製造方法。
【請求項10】
前記板状部材の表面に標記を印刷する印刷工程と、
前記標記が印刷される箇所と予め定められた位置関係を有する箇所であって前記板状部材の前記表面に第1の摩擦係数を有する第1の領域を形成する第1の領域形成工程と、
前記標記が印刷される箇所と予め定められた位置関係を有する箇所であって前記板状部材の前記表面に第2の摩擦係数を有する第2の領域を形成する第2の領域形成工程と、
を更に含むことを特徴とする請求項7乃至9の何れかに記載の飲料用缶の製造方法。
【請求項1】
一端部および他端部に開口を有する筒状部材と、
前記筒状部材とは別の部材として構成されるとともに当該筒状部材の前記他端部に対して取り付けられ、当該筒状部材の当該他端部に設けられた前記開口を塞ぐ塞ぎ部材と、
を備え、
前記筒状部材の前記一端部に設けられた前記開口の直径よりも当該筒状部材の前記他端部の直径の方が小さいことを特徴とする飲料用缶。
【請求項2】
前記塞ぎ部材には、飲み口が形成される際に開口される開口領域と、ユーザにより操作された際に当該開口領域を押圧し当該開口領域に開口を形成するタブとが設けられていることを特徴とする請求項1記載の飲料用缶。
【請求項3】
前記筒状部材の外周面には標記が付され、
前記標記と前記開口領域とが予め定められた所定の位置関係を有するように前記筒状部材および/または前記塞ぎ部材の位置制御がなされたうえで、当該筒状部材に対し当該塞ぎ部材が取り付けられていることを特徴とする請求項2記載の飲料用缶。
【請求項4】
前記筒状部材の外周面には標記が付されるとともに、当該外周面には、当該標記と予め定められた位置関係を有して配置され所定の摩擦係数を有する第1の領域、および、当該標記と予め定められた位置関係を有して配置され当該第1の領域とは摩擦係数の異なる第2の領域が形成されていることを特徴する請求項1乃至3の何れかに記載の飲料用缶。
【請求項5】
前記第1の領域および前記第2の領域は、前記筒状部材の周方向において異なる位置に配置されていることを特徴とする請求項4記載の飲料用缶。
【請求項6】
前記第2の領域は、前記第1の領域の摩擦係数よりも小さい摩擦係数を有して形成されるとともに前記標記が向いている方向とは略直交する方向を向くように配置されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の飲料用缶。
【請求項7】
板状部材から、一端部および他端部に開口を有するとともに当該一端部の直径の方が当該他端部の直径よりも大きい筒状部材を形成する形成工程と、
前記形成工程により形成された前記筒状部材の前記他端部に形成された前記開口を塞ぐ塞ぎ部材を当該他端部に対して固定する固定工程と、
を有する飲料用缶の製造方法。
【請求項8】
前記他端部に固定される前記塞ぎ部材には、飲み口が形成される際に開口される開口領域と、ユーザにより操作された際に前記開口領域を押圧し当該開口領域に開口を形成するタブとが設けられていることを特徴とする請求項7記載の飲料用缶の製造方法。
【請求項9】
前記塞ぎ部材は、円盤状に形成され、
前記固定工程では、前記塞ぎ部材に設けられた前記開口領域と前記筒状部材に付された標記とが予め定められた所定の位置関係を有するように当該筒状部材および/または当該塞ぎ部材を周方向に回転させ、当該回転を行った後、当該塞ぎ部材を当該筒状部材に固定することを特徴とする請求項8記載の飲料用缶の製造方法。
【請求項10】
前記板状部材の表面に標記を印刷する印刷工程と、
前記標記が印刷される箇所と予め定められた位置関係を有する箇所であって前記板状部材の前記表面に第1の摩擦係数を有する第1の領域を形成する第1の領域形成工程と、
前記標記が印刷される箇所と予め定められた位置関係を有する箇所であって前記板状部材の前記表面に第2の摩擦係数を有する第2の領域を形成する第2の領域形成工程と、
を更に含むことを特徴とする請求項7乃至9の何れかに記載の飲料用缶の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−184078(P2011−184078A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52301(P2010−52301)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【出願人】(000186854)昭和アルミニウム缶株式会社 (155)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【出願人】(000186854)昭和アルミニウム缶株式会社 (155)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]