説明

飲酒状態判定装置、及び飲酒運転防止システム

【課題】被測定者のごまかし行為を抑制し、飲酒状態を正確に判定することが可能な飲酒状態判定装置、及び飲酒運転を効果的に防止できる飲酒運転防止システムを提供する。
【解決手段】飲酒運転防止システム2は、被測定者の呼気に含まれるエタノールの濃度を検知するアルコールセンサ6と、アルコールセンサ6に向かって呼気が吹き掛けられたことを、温度変化に基づいて検出する吹き掛け検出手段7と、吹き掛け検出手段7によって呼気の吹き掛けが検出された場合、アルコールセンサ6の出力に基づき、呼気に含まれるエタノールの濃度が基準値以上か否かを判定する濃度判定手段46とを備える。特に、吹き掛け検出手段7は、加熱コイルと、加熱コイルに一定電流を流す定電流回路とを備え、呼気の吹き掛けによる温度低下を、加熱コイルの電気抵抗の変化によって検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼気に含まれるエタノールの濃度を検出して飲酒状態を判定する飲酒状態判定装置、及びその飲酒状態判定装置を用いて飲酒運転を防止する飲酒運転防止システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
お酒には、脳の神経活動を抑制するエタノール(エチルアルコール)が含まれており、飲酒によって認知能力や状況判断能力が低下することから、エタノールの影響下にある状態では車両等の運転や機械の操作が禁止されている。特に、飲酒運転は大事故に繋がる可能性があることから、各企業や事業所では、飲酒運転を撲滅するための運動や検査が行われている。例えば、バス会社や運送会社では、乗務前に、飲酒状態判定装置(所謂「アルコールチェッカー」)による検査が自発的に行われている。
【0003】
この飲酒状態判定装置は、呼気中のエタノール濃度(血中エタノール濃度に相当)を検出する呼気吹き掛け式のアルコールセンサを備えており、検出されたエタノールの濃度が一定量に達している場合に、飲酒状態(酒気帯び状態を含む)と判定するように構成されている。なお、アルコールセンサは、マイクロヒータ上に薄膜の半導体素子を備えて構成されており、半導体素子の中に存在する電子が、呼気中のエタノールによって吸収されると、アルコールセンサ内の電気抵抗が変化するという特性を利用している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の飲酒状態判定装置によれば、例えば吹込み口を塞ぐなど呼気を吹き掛けないようにしても、呼気にエタノールが含まれない場合またはエタノールの濃度が極めて少ない場合と同様に、アルコールセンサ内の電気抵抗の変化が少なくなり、「正常」(飲酒状態ではない)と判定されてしまうという問題を有していた。つまり、上記のようなごまかし行為が行われることが懸念されていた。
【0005】
なお、一部の事業者では、このようなごまかし行為を困難にさせるため、検査状況を監視カメラで撮影して一定期間保存することも行われているが、これによれば装置全体が大掛かりなものになるとともに、運転者と管理者との信頼関係を損ねる虞もある。
【0006】
そこで、本発明は、上記の実状に鑑み、被測定者のごまかし行為を抑制し、飲酒状態を正確に判定することが可能な飲酒状態判定装置、及び飲酒運転を効果的に防止できる飲酒運転防止システム、を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の飲酒状態判定装置は、
「被測定者の呼気に含まれるエタノールの濃度を検知するアルコールセンサと、
該アルコールセンサに向かって呼気が吹き掛けられた際に生じる温度変化を検出し、該温度変化に基づいて呼気の吹き掛けを検出する吹き掛け検出手段と、
該吹き掛け検出手段によって呼気の吹き掛けが検出された場合、前記アルコールセンサの出力に基づき、呼気に含まれるエタノールの濃度が基準値以上か否かを判定する濃度判定手段と
を備える」
ことを特徴とするものである。
【0008】
ここで、「吹き掛け検出手段」は、加熱されているものに対して呼気を吹き掛けた際に、呼気の気流によって検知部の温度が低下する変化を検出するものであってもよく、定温状態または冷却されているものに対して呼気を吹き掛けた際に、呼気の温度(体温)によっての検知部の温度が上昇する変化を検出するものであってもよい。また、吹き掛け検出手段としては、温度センサを用いて構成することも可能であるが、コイルの特性を利用した簡単な電気回路で構成することも可能である。
【0009】
本発明の飲酒状態判定装置によれば、被測定者がアルコールセンサに向かって呼気を吹き掛けると、気流の発生または呼気の温度によって吹き掛け検出手段の温度が変化する。そこで、この場合には、呼気が吹き掛けられたと判断され、アルコールセンサの出力に基づき、呼気に含まれるエタノール濃度が基準値以上か否かを判定する。一方、吹込み口を塞ぐなどのごまかし行為が行われた場合には、呼気の吹き掛けが検出されないため、エタノール濃度の判定が行われず、ひいては誤って「正常(異常なし)」と判定されることがなくなる。つまり、呼気が吹き掛けられた場合にのみ、アルコールセンサによる飲酒状態の判定が行われるため、ごまかし行為による誤判定を防止することが可能となる。
【0010】
本発明の飲酒状態判定装置において、
「前記吹き掛け検出手段は、
導電性の加熱コイルと、
該加熱コイルに一定の電流を流す定電流回路と、
前記加熱コイルに加わる電圧を検出する電圧検出手段と、
前記加熱コイルの温度低下に伴って、前記電圧検出手段によって検出される電圧が基準電圧以下に低下した場合、呼気が吹き掛けられていると判定する電圧判定手段と
を備える」ように構成してもよい。
【0011】
これによれば、加熱コイルに定電流回路が接続されており、加熱コイルに流れる電流が一定に保たれている。なお、加熱コイルに電流が流れると、加熱コイルの温度が上昇し加熱コイルの電気抵抗が増加した状態となる。このような状態で、呼気が吹き掛けられて気流が発生すると、加熱コイルの温度が低下し、加熱コイルの電気抵抗が減少することになる。そこで、本発明では、加熱コイルに加わる電圧を検出し、この電圧が基準電圧以下に低下した場合、すなわち加熱コイルの電気抵抗が基準値よりも小さくなった場合には、呼気が吹き掛けられていると判定する。このように、温度変化によって加熱コイルの電気抵抗が変化するという特性を利用して、呼気が吹き掛けられているか否かを判定することから、吹き掛け検出手段の構成を比較的簡単なものとすることができる。
【0012】
本発明の飲酒運転防止システムは、
「上記の飲酒状態判定装置を備え、さらに、
車両の鍵を保管するための鍵保管機構と、
保管された前記鍵が取出せないように前記鍵保管機構を施錠する施錠手段と、
前記濃度判定手段により、呼気に含まれるエタノールの濃度が基準値よりも小さいと判定された場合、前記施錠手段を解錠し前記鍵の取出しを可能にする解錠制御手段と
を備える」
ことを特徴とするものである。
【0013】
ここで、「鍵保管機構」としては、複数の鍵を収容可能な箱状の保管庫(所謂「キーボックス」)であってもよく、鍵を一つずつ個別に施錠可能な施錠ユニットであってもよい。
【0014】
本発明の飲酒運転防止システムによれば、車両の鍵を保管する鍵保管機構には施錠手段が設けられており、鍵を自由に取出すことができないようになっている。被測定者が車両を運転する前(例えば乗務する前)に、飲酒状態の判定を行い、呼気に含まれるエタノール濃度が基準値よりも小さいと判定されると、施錠手段が解錠され鍵を鍵保管機構から取出すこと、すなわち車両を運転することが可能になる。換言すれば、エタノール濃度が基準値よりも小さいと判定されるまで車両用の鍵を取出すことができないため、飲酒状態のの判定を乗車前に義務付けることができ、飲酒運転を効果的に防止することが可能になる。
【発明の効果】
【0015】
このように、本発明によれば、呼気が吹き掛けられた場合にのみ、アルコールセンサによる飲酒状態の判定が行われるため、ごまかし行為による誤判定を防止でき、飲酒状態を正確に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】飲酒運転防止システムの構成を示すブロック図である。
【図2】吹き掛け検出手段の回路構成を示す電気回路図である。
【図3】飲酒運転防止システムにおける処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態である飲酒運転防止システム2について説明する。図1に示すように、飲酒運転防止システム2は、コントローラ3を備えている。コントローラ3は、演算及び制御を行う中央処理装置(CPU)と、読み出し専用メモリ(ROM)及びランダムアクセスメモリ(RAM)からなる記憶装置とを備えて構成されている。コントローラ3には、二次元コードを読取り可能な二次元コードリーダー4と、被測定者(例えば乗務員)の静脈パターンを検出可能な静脈検出手段5と、被測定者の呼気に含まれるエタノール濃度を検知するアルコールセンサ6と、アルコールセンサ6に向かって呼気が吹き掛けられたことを検出する吹き掛け検出手段7とが接続されており、これらの入力装置に基づいた処理が、予め入力されたプログラムに従って行われるようになっている。また、コントローラ3の出力側にはキーボックス8の施錠手段30及び発光表示器31が接続されており、これらをコントローラ3によって制御することが可能となっている。ここで、コントローラ3、アルコールセンサ6、及び吹き掛け検出手段7を組合せたものが本発明の飲酒状態判定装置に相当する。
【0018】
各構成について詳細に説明する。二次元コードリーダー4は、社員コードが記録された二次元コード13(例えばQRコード(商標))を読取るために設けられている。二次元コード13は、クリアカバー11に印刷されており、クリアカバー11の中に収容された被測定者(乗務員)の運転免許証12と一緒に携帯することが可能になっている。なお、二次元コードリーダー4は、市販されている周知のものであるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0019】
静脈検出手段5は、被測定者の手の指に近赤外線光を照射するとともに、皮下組織にある静脈中の還元ヘモグロビンが近赤外線を吸収して黒く映し出される模様(静脈パターン)を認識するものであり、近赤外線光を照射する照射手段(図示しない)を備えている。この静脈パターンは人によって異なっているため、予め登録しておいた静脈パターンと比較照合することで本人認証(生体認証)を行うことが可能である。
【0020】
アルコールセンサ6は、吹込管(図示しない)内を流れる呼気、すなわち吹き掛けられた呼気に含まれるアルコール成分を検出するものであり、半導体素子である薄膜の酸化スズ膜(図示しない)と、酸化スズ膜を一定温度に加熱するマイクロヒータ(図示しない)とを備えて構成されている。これによれば、エタノールの酸化反応に伴う電気抵抗の変化を検出することで、呼気中に含まれるエタノール濃度を検出することが可能である。
【0021】
吹き掛け検出手段7は、アルコールセンサ6に向かって呼気が吹き掛けられたこと、すなわち吹込管内に空気流が生じたことを、加熱コイル15の温度変化に基づいて検出するものである。具体的には、図2に示すように、白金製の加熱コイル15と、加熱コイル15に一定の電流を流す定電流回路16と、加熱コイル15に加わる電圧を検出する電圧検出手段17と、加熱コイル15の温度低下に伴って、検出される電圧が基準電圧以下に低下した場合、呼気が吹き掛けられていると判定する電圧判定手段18とを具備している。定電流回路16は、加熱コイル15に接続されたPNPトランジスタ19と、PNPトランジスタ19のエミッタに接続された抵抗20と、PNPトランジスタ19のベースに電流制限抵抗21を介して接続されたオペアンプ22と、を備えて構成され、オペアンプ22の−入力端子が、PNPトランジスタ19と抵抗20との間に接続されている。電圧検出手段17及び電圧判定手段18は、コンパレータ23と、コンパレータ23の+入力端子に一定の基準電圧を印加する抵抗24,25とを備えており、コンパレータ23の−入力端子が、PNPトランジスタ19と加熱コイル15との間に接続されている。つまり、加熱コイル15に加わる電圧が、抵抗24,25の分圧によって設定された基準電圧よりも小さくなると、コンパレータ23から出力される信号(OUT)が「Lo」から「Hi」に切り替わるように構成されている。
【0022】
ところで、加熱コイル15の電気抵抗は、環境温度(室温)の変化によっても変動する。つまり、室温が変化すると、加熱コイル15に加わる電圧が変動することから、呼気の吹き掛けを誤認識するおそれがある。そこで、本例では、温度補正回路(図示しない)をさらに備えており、吹き掛け検査が行われる前の待機時に、加熱コイル15に加わる電圧に基づいてその時点の室温を推定し、その推定温度を基に基準電圧を補正するようにしている。これにより信頼性の高い判定を行うことが可能になっている。
【0023】
一方、図1に示すように、キーボックス8は、複数の車両の鍵を保管する箱状の保管庫であり、車両の鍵を勝手に取出すことができないように施錠手段30が設けられている。この施錠手段30の構成は、特に限定されるものではないが、本例では、キーボックス8の開閉蓋をロックする機構として電磁石(図示しない)を内臓しており、電磁石の電磁力、吸着力を利用して鉤部材(図示しない)を動作させることにより、開閉蓋を施解錠させることが可能になっている。
【0024】
また、キーボックス8の上面には、発光表示器31が立設されている。発光表示器31は、下側から順に積層された緑色発光部32、黄色発光部33、紫色発光部34、及び赤色発光部35からなり、一つの発光部を選択的に発光させることで、エタノール濃度に対応した色の光を放射させることが可能になっている。また、図示しないが、キーボックス8には音発生手段も備えられており、エタノール濃度に対応させて互いに異なる音を発生させることも可能になっている。ここで、キーボックス8が本発明の鍵保管機構に相当する。
【0025】
ところで、コントローラ3には、データベース40が構築されている。データベース40には、社員コード41と、事前に登録された乗務員の静脈パターン42と、乗務員の氏名等の運転者情報43とが記憶されている。なお、静脈パターン42及び運転者情報43は、社員コード41に関連付けて記憶されており、社員コード41を基に、その乗務員の静脈パターン42及び運転者情報43を特定することが可能になっている。
【0026】
また、コントローラ3には、機能的な構成として、社員コード照合手段44、静脈パターン照合手段45、及び濃度判定手段46が備えられている。社員コード照合手段44は、二次元コードリーダー4によって二次元コード13から社員コードを読出すとともに、読出された社員コードが、データベース40に記憶されたいずれかの社員コード41に一致するか否かを判定するものである。静脈パターン照合手段45は、データベース40から社員コードに対応する静脈パターン42(登録パターン)を読出すとともに、読出された静脈パターン42(登録パターン)が、静脈検出手段5によって検出された静脈パターン(検出パターン)に一致するか否かを照合するものである。
【0027】
濃度判定手段46は、静脈パターン照合手段45によって静脈パターンが一致し、且つ吹き掛け検出手段7によって呼気の吹き掛けが検出された場合にのみ実行されるものであり、アルコールセンサ6の出力に基づき、呼気中に含まれるエタノール濃度を検出するとともに、エタノールの濃度が基準値(例えば0.15mg)以上の場合に、飲酒状態と判定するものである。
【0028】
また、コントローラ3には、解錠制御手段47及びレベル報知制御手段48が備えられている。解錠制御手段47は、呼気中のエタノール濃度が基準値(0.15mg)未満の場合に、施錠手段30を解錠(例えば電磁石に通電)して鍵の取出しを可能にするものである。なお、キーボックス8には、複数の鍵が保管されているが、鍵の取出しを、管理者の立会いの下で、または管理者によって行われるようにすることで、他の乗務員に対応する鍵が、被測定者によって取出されることを防ぐことが可能である。
【0029】
また、レベル報知制御手段48は、検出されたエタノール濃度に応じて発光表示器31を発光させるものである。具体的には、エタノール濃度が、0.04mg以下の場合には緑色発光部32を点灯させ、0.05〜0.14mgの場合には黄色発光部33を点灯させ、0.15〜0.24mgの場合には紫色発光部34を点灯させ、0.25mg以上の場合には赤色発光部35を点灯させるようになっている。また、レベル報知制御手段48は、発光表示器31の発光と同時に、検出されたエタノール濃度に応じた音も発生させるようになっている。
【0030】
次に、コントローラ3における処理の流れを図3のフローチャートに基づき説明する。まず、運転免許証12をクリアカバー11に収容されたまま所定の位置に載置するように音声または表示画面で案内し(ステップS1)、クリアカバー11に印刷された二次元コード13から社員コードを読取る(ステップS2)。その後、読取った社員コードを、データベース40に登録された社員コード41と照合し、一致した場合には(ステップS3においてYES)、静脈検出手段5に対して指を置くように案内する(ステップS4)。その後、被測定者の静脈パターンを検出し(ステップS5)、検出した静脈パターンを、データベース40に予め登録された静脈パターン42、すなわち被測定者の社員コードに対応する静脈パターン42と照合する(ステップS6)。そして、二つの静脈パターンが一致した場合には(ステップS6においてYES)、飲酒状態の判定処理を行う。
【0031】
飲酒状態の判定処理では、まず、被測定者に対して呼気を吹き掛けることを案内する(ステップS7)とともに、タイマーTをスタートする(ステップS8)。その後、吹き掛け検出手段7によって呼気の吹き掛けが検出されると(ステップS9においてYES)、アルコールセンサ6によってエタノール濃度を測定する(ステップS10)。そして、測定されたエタノール濃度が基準値未満の場合には(ステップS11においてYES)、飲酒状態ではないと判断し、キーボックス8の施錠手段30を解錠する(ステップS12)とともに、エタノール濃度に応じた発光部(緑色発光部32または黄色発光部33)を点灯する(ステップS13)。一方、ステップS11において、エタノール濃度が基準値以上の場合には(NO)、ステップS12をスキップしてステップS13に移行し、エタノール濃度に応じた発光部(紫色発光部34または赤色発光部35)を点灯する。
【0032】
なお、タイマーTをスタートさせてから所定時間経過しても呼気の吹き掛けが検出されない場合には(ステップS9においてNO,ステップS14においてYES)、異常状態(すなわち測定不能状態)である判定し、その旨を報知する(ステップS15)。また、ステップS3において、読取った社員コードが登録されている社員コード41に一致しない場合には(NO)、ステップS15に移行し、異常状態であることを報知する。また、ステップS6において、検出した静脈パターンが、社員コードに対応した静脈パターン42に一致しない場合にも(NO)、ステップS15に移行し、異常状態であることを報知する。
【0033】
このように、本例の飲酒運転防止システム2によれば、呼気が吹き掛けられた場合にのみ、アルコールセンサ6による飲酒状態の判定が行われるため、吹込み口を塞ぐ等のごまかし行為による誤判定を防止することができる。すなわち、飲酒状態を正確に判定することが可能となる。
【0034】
特に、温度変化によって加熱コイル15の電気抵抗が変化するという特性を利用して、呼気が吹き掛けられているか否かを判定することから、吹き掛け検出手段7の構成を比較的簡単なものとすることができる。
【0035】
また、本例の飲酒運転防止システム2によれば、エタノール濃度が基準値よりも小さいと判定されるまで車両用の鍵を取出すことができないため、エタノール濃度の判定を乗務前に義務付けることができ、飲酒運転を効果的に防止することができる。
【0036】
また、本例の飲酒運転防止システム2によれば、運転免許証12を収容するクリアカバー11に、社員コードを示す二次元コード13が印刷されているため、乗車前に運転免許証12の携帯を確認することができ、ひいては運転免許証12の不携帯による違反行為を未然に防止することが可能となる。
【0037】
また、本例の飲酒運転防止システム2によれば、静脈パターンによって生体認証を行い、本人であることが確認された場合にのみ、飲酒状態の判定が可能となるため、別人に成りすましての測定を防止することができる。
【0038】
さらに、本例の飲酒運転防止システム2によれば、キーボックス8に発光表示器31及び音発生手段が設けられ、エタノール濃度に対応した発光色及び音で知らせることから、飲酒状態か否かだけではなく、飲酒状態の程度も容易に把握させることができる。このため、例えば、エタノール濃度が酒気帯びに該当しない低レベルであっても、呼気にエタノールが含まれている場合には、車両の運転を控えさせる等の安全対策を施すことができ、ひいてはアルコールの影響下にある運転を確実に防止することが可能となる。
【0039】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0040】
すなわち、上記実施形態では、鍵保管機構として、複数の鍵を収容可能なキーボックス8を備え、施錠手段30によってキーボックス8から鍵が取出せないように構成するものを示したが、それぞれの鍵に対して個別に施錠手段を備え、飲酒状態ではないと判定された際、その被測定者に対応する施錠手段のみを解錠させるようにしてもよい。これによれば、他人の鍵を取出すことができなくなるため、管理者を設けなくても、不正な行為を防止することが可能となる。
【0041】
また、上記実施形態では、検出されたエタノール濃度が基準値よりも小さいとき、キーボックス8の施錠手段30を解錠するものを示したが、飲酒状態の判定結果が記載された検査記録を印刷するようにしてもよい。そして、この場合、管理者が、検査記録を確認してから被測定者に鍵を手渡すようにすれば、飲酒状態の判定結果に基づいた鍵の管理が可能になる。
【0042】
また、飲酒状態の判定結果をコントローラ3のデータベース40に記憶させるようにしてもよい。また、各事業所に飲酒運転防止システム2を設置するとともに、それぞれの飲酒運転防止システム2によって判定された飲酒状態の判定結果、またはデータベース40に記憶された判定結果を、LAN等の通信ネットワークを介して本社のホストコンピュータに送信するようにしてもよい。さらに、飲酒状態判定装置を携帯可能に構成し、飲酒状態判定装置によって得られた判定結果を、通信手段を介して会社や事業所のコンピュータに送信するようにしてもよい。これによれば、長距離運転手等、遠方にいる乗務員においても、乗務前に飲酒状態を判定させることができるとともに、その結果を会社等で一元的に管理することが可能になる。
【0043】
さらに、上記実施形態では、静脈パターンを検出することで本人認証(生体認証)を行うものを示したが、指紋、瞳の中の虹彩、声紋、または顔形等、を検出する周知の生体認証を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0044】
2 飲酒運転防止システム
6 アルコールセンサ(飲酒状態判定装置)
7 吹き掛け検出手段(飲酒状態判定装置)
8 キーボックス(鍵保管機構)
15 加熱コイル
16 定電流回路
17 電圧検出手段
18 電圧判定手段
30 施錠手段
46 濃度判定手段(飲酒状態判定装置)
47 解錠制御手段
【先行技術文献】
【特許文献】
【0045】
【特許文献1】特開2004−305494号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定者の呼気に含まれるエタノールの濃度を検知するアルコールセンサと、
該アルコールセンサに向かって呼気が吹き掛けられた際に生じる温度変化を検出し、該温度変化に基づいて呼気の吹き掛けを検出する吹き掛け検出手段と、
該吹き掛け検出手段によって呼気の吹き掛けが検出された場合、前記アルコールセンサの出力に基づき、呼気に含まれるエタノールの濃度が基準値以上か否かを判定する濃度判定手段と
を備えることを特徴とする飲酒状態判定装置。
【請求項2】
前記吹き掛け検出手段は、
導電性の加熱コイルと、
該加熱コイルに一定の電流を流す定電流回路と、
前記加熱コイルに加わる電圧を検出する電圧検出手段と、
前記加熱コイルの温度低下に伴って、前記電圧検出手段によって検出される電圧が基準電圧以下に低下した場合、呼気が吹き掛けられていると判定する電圧判定手段と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の飲酒状態判定装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2の飲酒状態判定装置を備え、
さらに、
車両の鍵を保管するための鍵保管機構と、
保管された前記鍵が取出せないように前記鍵保管機構を施錠する施錠手段と、
前記濃度判定手段により、呼気に含まれるエタノールの濃度が基準値よりも小さいと判定された場合、前記施錠手段を解錠し前記鍵の取出しを可能にする解錠制御手段と
を備えることを特徴とする飲酒運転防止システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−220726(P2011−220726A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87500(P2010−87500)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【出願人】(596170217)株式会社ユタカ電子製作所 (1)
【Fターム(参考)】