説明

飲酒運転防止装置

【課題】車輌に運転者本人について確実にアルコールの検出を行い、酒気帯び運転又は飲酒運転を防止することができる飲酒運転防止装置を提供する。
【解決手段】還元ヘモグロビン成分に吸収される光を第1光源13から照射し、撮像素子12にて撮像する。撮像により得られた画像を基に、血管パターンの照合により運転者の個人認証を行う。次いで、アルコール成分に吸収される光を第2光源14から照射し、撮像素子12にて撮像する。撮像により得られた画像を基に、アルコール成分による光の吸収の有無を検出し、運転者がアルコールを摂取したか否かを判断する。アルコールを摂取している場合には、車輌のエンジン、シフトレバー又はステアリング等をロックする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輌の運転者による酒気帯び運転又は飲酒運転等を防止する飲酒運転防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車輌などの酒気帯び運転又は飲酒運転等は非常に危険であり、法律で禁止されている。しかしながら、近年においても酒気帯び運転又は飲酒運転に伴う事故は後を絶たず、社会問題化している。このため、運転者のアルコールの影響を測定する装置を用いて、運転者からアルコールが検出された場合には車輌の走行を禁止する機能を車輌に搭載することが求められている。例えば、運転者の呼気に含まれるアルコールを検出して車輌の走行を禁止する飲酒運転防止装置を搭載した車輌が既に実用化されている。
【0003】
また、近年においては車輌の盗難を防止するために、運転者の生体情報を個人認証に利用したセキュリティシステムが注目されている。このようなセキュリティシステムとしては、例えば運転者の指の指紋、目の虹彩又は指の血管パターン等の生体情報を用いることができる。特に、指の血管パターンを用いた個人認証は、虹彩を用いる場合のように目に光を照射することがないため運転者の真理的な抵抗感が少なく、指紋を用いる場合のように生体の表面の特徴を読み取るのではなく、生体の内部の特徴を読み取るため容易に偽造することができないという利点がある。
【0004】
特許文献1においては、生体認証技術及び健康診断技術を組み合わせることにより、高いセキュリティ及び安全性を実現することができる指認証装置が提案されている。この指認証装置は、近赤外光を発する光源及び近赤外光に対して感度のある撮像手段を備えて、撮像された指の血管パターン画像の特徴と、登録された正当な権利者の血管パターン画像の特徴とを比較照合し、相関が閾値より高いときに正当な権利者と認め、エンジンの始動又はドアの施開錠等のセキュリティ制御を行う。更に、認証と同時に指の脈波に関する情報を取得して運転者の健康・体調等の生体状態を計測し、計測結果に応じて通知又は警告等を行う。
【特許文献1】特開2003−146107号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の飲酒運転防止装置では、運転者の呼気からアルコールを検出するため、運転者は筒状の吹込口を口にくわえて呼気を吹き込む必要がある。しかし、車輌に常設する装置としては洗浄を行うことが容易ではないため、衛生面で問題がある。また、筒状の吹込口を運転者が口にくわえることなく、運転者が息を吹きかけて検出を行う構成とすることもできるが、呼気の量が正確でないため、アルコール検出の精度が低下するという問題がある。
【0006】
また、従来の飲酒運転防止装置の場合には、運転者以外の他者が呼気を吹き込むことにより、アルコールの検出を回避することが可能であるという問題がある。そこで、上述の生体情報による個人認証のシステムを併用して、確実に運転者のアルコール検出を行うことが考えられる。特許文献1においても、運転者の指の脈波から飲酒運転等の違法状態を導くと推定されるときには認証を取り消す旨が記載されているが、どのようにして飲酒運転等の違法状態を推定するかについての詳細な方法については言及されていない。脈波を基に飲酒運転の状態を推定することは容易ではない。また、脈波を測定するためには電極センサを用いて運転者の心電図を取得する必要があり、装置が高価であると共に、測定に時間を要するという問題がある。
【0007】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、アルコール成分に吸収される波長のアルコール吸収光成分を含む光を運転者の指へ照射して撮像を行い、撮像して取得した画像からアルコール吸収光成分が吸収されたか否かを検出すると共に、運転者の指の生体情報を基に個人認証を行って、検出結果及び認証結果に応じて車輌の走行可否を制御する構成とすることにより、確実に運転者本人についてアルコールの摂取を検出し、酒気帯び運転又は飲酒運転を防止することができる飲酒運転防止装置を提供することにある。
【0008】
また本発明の他の目的とするところは、血液の還元ヘモグロビン成分に吸収される波長の還元ヘモグロビン吸収光成分を含む光を運転者の指へ照射して撮像を行い、予め記憶した血管パターンとの比較により個人認証を行う構成とすることにより、生体内部の情報を基により確実に個人認証を行って、アルコール摂取の検出を行うことができる飲酒運転防止装置を提供することにある。
【0009】
また本発明の他の目的とするところは、車輌のドアが開錠された場合に、アルコールの検出及び個人認証を開始する構成とすることにより、車輌の走行開始前に確実に運転者のアルコール摂取の検出を行うことができる飲酒運転防止装置を提供することにある。
【0010】
また本発明の他の目的とするところは、運転者のアルコール摂取が検出された場合、又は運転者と認証されなかった場合には、車輌のステアリング、シフトレバー又はエンジンの始動をロックする構成とすることにより、車輌の盗難を防止することができ、酒気帯び運転又は飲酒運転を確実に防止できる飲酒運転防止装置を提供することにある。
【0011】
また本発明の他の目的とするところは、運転者のアルコール摂取が検出された場合に、ランプ点灯、文字表示、画像表示又は音声出力等により運転者へ警告を与える構成とすることにより、運転者にアルコール摂取が検出されたことを確実に認識させることができる飲酒運転防止装置を提供することにある。
【0012】
また本発明の他の目的とするところは、アルコール吸収光成分を含む光を照射する光源及び光を照射された運転者の指を撮像する撮像手段をシフトレバーに配設し、アルコールの摂取が検出された場合にシフトレバーを操作不可能にロックする構成とすることにより、アルコールを摂取した運転者による車輌の走行開始を確実に防止することができる飲酒運転防止装置を提供することにある。
【0013】
また本発明の他の目的とするところは、シフトレバーの握り部に凹部を形成し、凹部の側部にアルコール吸収光成分を含む光を照射する光源を配設し、凹部の底部に撮像手段を配設する構成とすることにより、シフトレバーを握る運転者の指にアルコール吸収光成分を含む光を確実に照射して撮像を行うことができる飲酒運転防止装置を提供することにある。
【0014】
また本発明の他の目的とするところは、シフトレバーの握り部に複数の凹部を形成して、各凹部に光源及び撮像手段を設けて、全ての撮像手段が撮像した画像を基にアルコール摂取の検出を行う構成とすることにより、より精度よくアルコール摂取の検出を行うことができる飲酒運転防止装置を提供することにある。
【0015】
また本発明の他の目的とするところは、シフトレバーのシフト操作を行う際に押圧操作するスイッチ部を、アルコール摂取が検出された場合に押圧操作不可能にロックする構成とすることにより、アルコールを摂取した運転者によるシフト操作を防止して、車輌の走行開始を確実に防止することができる飲酒運転防止装置を提供することにある。
【0016】
また本発明の他の目的とするところは、シフトレバーのスイッチ部への接触を検知する手段を設け、スイッチ部への接触を検知した場合にアルコール摂取の検出を行う構成とすることにより、シフトレバーのシフト操作前にアルコール摂取の検出を確実に行って、スイッチ部の押圧操作を確実にロックすることができる飲酒運転防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
第1発明に係る飲酒運転防止装置は、車輌に搭載され、アルコール成分に吸収される波長のアルコール吸収光成分を含む光を照射するアルコール用光源と、該アルコール用光源からの光を照射された被測定者の指を撮像する撮像手段と、該撮像手段が撮像して取得した画像を基に、前記被測定者の指による前記アルコール吸収光成分の吸収の有無を検出する検出手段と、前記被測定者の指に係る生体情報を基に個人認証を行う認証手段と、前記検出手段の検出結果及び前記認証手段の認証結果に応じて、前記車輌の走行可否を制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0018】
本発明においては、アルコール成分に吸収される波長のアルコール吸収光成分を含む光を運転者の指に照射する。運転者がアルコールを摂取している場合には、運転者の血液中にアルコール成分が含まれるため、照射した光のアルコール吸収光成分は指の血管部分にて吸収される。そこで、アルコール吸収光成分を受光して撮像を行うことができる撮像手段を用いて運転者の指を撮像し、撮像により取得した画像からアルコール吸収光成分が吸収されたか否かを検出することができる。また、同時に運転者の指に係る生体情報を取得して個人認証を行う構成とすることにより、アルコールを摂取していない他者によって運転者の代わりに検出が行われることを防止できる。
【0019】
また、第2発明に係る飲酒運転防止装置は、血液の還元ヘモグロビン成分に吸収される波長の還元ヘモグロビン吸収光成分を含む光を照射する還元ヘモグロビン用光源と、被測定者の指の血管パターンを記憶する記憶手段とを備え、前記撮像手段は、前記アルコール用光源からの光を照射された被測定者の指を撮像すると共に、前記還元ヘモグロビン用光源からの光を照射された被測定者の指を撮像するようにしてあり、前記認証手段は、前記還元ヘモグロビン用光源からの光を照射された被測定者の指を撮像して取得した画像と、前記記憶手段に記憶された血管パターンとの比較により個人認証を行うようにしてあることを特徴とする。
【0020】
本発明においては、血液の還元ヘモグロビン成分に吸収される波長の還元ヘモグロビン吸収光成分を含む光を運転者の指に照射し、還元ヘモグロビン吸収光成分を受光して撮像を行うことができる撮像手段を用いて運転者の指の血管パターンを撮像する。撮像により取得した画像と、予め記憶した血管パターンとを比較して個人認証を行うことができる。生体の内部の特徴に基づいて個人認証を行うため容易に偽造することができないという利点がある。更に、アルコール吸収光成分と還元ヘモグロビン吸収光成分とを受光して撮像を行う撮像手段を用いることによって、還元ヘモグロビン吸収光成分を照射する光源を備えるのみで他のハードウェアは上述のアルコール摂取の検出を行うためのハードウェアと共用できるため、飲酒運転防止装置の高コスト化を抑制することができる。
【0021】
また、第3発明に係る飲酒運転防止装置は、前記車輌のドアが開錠された場合に、前記検出手段による検出又は前記認証手段による個人認証を開始するようにしてあることを特徴とする。
【0022】
本発明においては、車輌のドアが開錠された場合(特に、外部から開錠された場合)には、運転者が車輌に乗り込んで運転を開始する可能性が高い。よって、この場合にアルコール摂取の検出及び個人認証に係る処理を開始することによって、運転者が車輌に乗車した後で迅速に検出及び認証を行うことができる。
【0023】
また、第4発明に係る飲酒運転防止装置は、前記制御手段が、前記検出手段により前記アルコール吸収光成分の吸収有りと検出された場合、又は前記認証手段により認証されなかった場合に、前記車輌のステアリングのロック、シフトレバーのロック、又はエンジンの始動のロックを行うようにしてあることを特徴とする。
【0024】
本発明においては、運転者のアルコール摂取が検出された場合、又は運転者と認証されなかった場合には、車輌のステアリングをロックする、シフトレバーをロックする、又はエンジンの始動をロックする等の制御を行う。これにより、車輌は走行を開始することができない。よって、認証されない運転者が車輌の運転を行うことはできないため、車輌の盗難を防止できる。また、運転者がアルコールを摂取した状態で車輌の運転を行うことができないため、酒気帯び運転又は飲酒運転を防止できる。
【0025】
また、第5発明に係る飲酒運転防止装置は、前記検出手段により前記アルコール吸収光成分の吸収有りと検出された場合に警告を行う警告手段を備えることを特徴とする。
【0026】
本発明においては、運転者のアルコール摂取が検出された場合には運転者に対する警告を行う。警告は、例えば計器パネルに設けた警告ランプを点灯する、ディスプレイに警告メッセージ若しくは警告画像等を表示する、又は音声による警告メッセージを出力する等の方法で行うことができる。これにより、アルコール摂取が検出されたことを運転者に認識させることができ、酒気帯び運転又は飲酒運転を防止することができる。
【0027】
また、第6発明に係る飲酒運転防止装置は、前記アルコール用光源及び前記撮像手段は、前記車輌のシフトレバーに配設してあり、前記検出手段により前記アルコール吸収光成分の吸収有りと検出された場合に、前記制御手段が前記シフトレバーを操作不可能にロックするようにしてあることを特徴とする。
【0028】
本発明においては、アルコール吸収光成分を含む光を照射する光源と、この光を照射された運転者の指を撮像する撮像手段とを車両のシフトレバーに配設する。車輌の走行を開始する際には必ずシフトレバーによるシフト操作を行う必要があるため、運転者はシフトレバーを握る必要がある。このときにアルコール摂取の検出を行うことによって、車輌の走行開始前に検出を行うことができる。検出の結果、運転者がアルコールを摂取している場合には、シフトレバーを操作不可能にロックすることで、車輌を走行不可能とすることができる。また、シフトレバーを操作不可能にロックするする構成であるため、車輌のエンジンを始動することは可能であり、車輌に搭載されたエアーコンディショナー、オーディオ装置及びカーナビゲーション装置等の使用を妨げることがない。
【0029】
また、第7発明に係る飲酒運転防止装置は、前記シフトレバーの握り部には運転者の指を収める凹部が形成してあり、前記アルコール用光源は、前記凹部の側部に設けてあり、前記凹部内に光を照射するようにしてあり、前記撮像手段は、前記凹部の底部分に設けてあることを特徴とする。
【0030】
本発明においては、シフトレバーの握り部に凹部を形成し、凹部の側部に光源を配してアルコール吸収光成分を含む光を凹部内に照射する。これにより、シフトレバーを握る運転者の指に確実に光を照射することができる。また、凹部の底部に配した撮像手段により撮像を行う。これにより、光を照射された指の撮像を確実に行うことができる。
【0031】
また、第8発明に係る飲酒運転防止装置は、前記凹部が、前記シフトレバーの握り部に複数形成してあり、前記アルコール用光源及び前記撮像手段は、各凹部にそれぞれ設けてあり、前記検出手段は、全ての前記撮像手段が撮像した画像を基に検出を行なうようにしてあることを特徴とする。
【0032】
本発明においては、シフトレバーの握り部に複数の凹部を形成し、各凹部に光源及び撮像手段を設ける。これにより、シフトレバーを握る運転者の複数の指に対して光の照射及び撮像を行うことができる。また、複数の撮像手段が撮像した画像を基にアルコール摂取の検出を行うことによって、検出精度を高めることができる。
【0033】
また、第9発明に係る飲酒運転防止装置は、前記シフトレバーのシフト操作を行う際に押圧操作を必要とするスイッチ部を備え、前記制御手段は、前記スイッチ部を押圧操作不可能にロックするようにしてあることを特徴とする。
【0034】
本発明においては、シフトレバーのシフト操作を行う際に押圧操作するスイッチ部をシフトレバーに設ける。アルコール摂取が検出された場合には、このスイッチ部を押圧操作不可能にロックすることによって、容易に且つ確実にシフトレバーをシフト操作不可能にロックすることができる。
【0035】
また、第10発明に係る飲酒運転防止装置は、前記スイッチ部への接触を検知する接触検知手段を備え、該接触検知手段が接触を検知した場合に、前記検出手段による検出を行うようにしてあることを特徴とする。
【0036】
本発明においては、シフトレバーに設けたスイッチ部への接触を検知する手段を設けて、スイッチ部への接触を検知した場合にアルコール摂取の検出を行う。シフトレバーをシフト操作する場合にはスイッチ部を押圧操作する必要があり、スイッチ部を押圧操作するためにはスイッチ部に接触する必要があるため、スイッチ部が押圧操作される前にアルコール摂取の検出を行うことができ、確実にスイッチ部を押圧操作不可能にロックすることができる。
【発明の効果】
【0037】
第1発明による場合は、アルコール吸収光成分を含む光を運転者の指へ照射して撮像を行い、撮像して取得した画像からアルコール吸収光成分が吸収されたか否かを検出すると共に、運転者の指の生体情報を基に個人認証を行って、検出結果及び認証結果に応じて車輌の走行可否を制御する構成とすることにより、アルコールを摂取していない他者によって運転者の代わりに検出が行われることを防止でき、確実に運転者本人についてアルコールの摂取を検出することができる。よって、運転者の酒気帯び運転又は飲酒運転を確実に防止できるため、酒気帯び運転又は飲酒運転に伴う事故の発生を防止することができ、交通安全に寄与することができる。
【0038】
また、第2発明による場合は、還元ヘモグロビン吸収光成分を含む光を運転者の指へ照射して撮像を行い、予め記憶した血管パターンとの比較により個人認証を行う構成とすることにより、個人認証を確実に行うことができるため、運転者の酒気帯び運転又は飲酒運転をより確実に防止できる。また、アルコール摂取の検出を行うためのハードウェアと個人認証を行うためのハードウェアの多くを共用することができ、飲酒運転防止装置の高コスト化を抑制することができるため、飲酒運転防止装置を低価格で提供し、より広く普及させることができる。
【0039】
また、第3発明による場合は、車輌のドアが開錠された場合に、アルコールの検出及び個人認証を開始する構成とすることにより、運転者が車輌に乗車した後で迅速に検出及び認証を行うことができるため、飲酒運転防止装置の利便性を高めることができる。
【0040】
また、第4発明による場合は、運転者のアルコール摂取が検出された場合、又は運転者と認証されなかった場合には、車輌のステアリング、シフトレバー又はエンジンの始動をロックする構成とすることにより、認証されない運転者が車輌の運転を行うことはできず、また、運転者がアルコールを摂取した状態で車輌の運転を行うことができない。よって、車輌の盗難を確実に防止できると共に、酒気帯び運転又は飲酒運転を確実に防止でき、酒気帯び運転又は飲酒運転に伴う事故の発生を防止することができる。
【0041】
また、第5発明による場合は、運転者のアルコール摂取が検出された場合には、ランプ点灯、文字表示、画像表示又は音声出力等により運転者へ警告を与える構成とすることにより、アルコール摂取が検出されたことを運転者に認識させることができるため、酒気帯び運転又は飲酒運転を防止することができ、酒気帯び運転又は飲酒運転に伴う事故の発生を防止することができる。
【0042】
また、第6発明による場合は、光源及び撮像手段をシフトレバーに配設し、アルコールの摂取が検出された場合にシフトレバーを操作不可能にロックする構成とすることにより、車輌の走行開始前に運転者のアルコール摂取の検出を行うことができ、検出結果に応じて車輌の走行開始を確実に防止することができるため、運転者の酒気帯び運転又は飲酒運転をより確実に防止でき、酒気帯び運転又は飲酒運転に伴う事故の発生をより確実に防止することができる。
【0043】
また、第7発明による場合は、シフトレバーの握り部に形成した凹部の側部にアルコール吸収光成分を含む光を照射する光源を配設し、凹部の底部に撮像手段を配設する構成とすることにより、シフトレバーを握る運転者の指に確実に光を照射して撮像を行うことができるため、アルコール摂取の検出精度を高めることができる。よって、確実に運転者の酒気帯び運転又は飲酒運転を防止することができる。
【0044】
また、第8発明による場合は、シフトレバーの握り部に複数の凹部を形成して、各凹部に光源及び撮像手段を設け、全ての撮像手段が撮像した画像を基にアルコール摂取の検出を行う構成とすることにより、アルコール摂取の検出精度をより高めることができるため、より確実に運転者の酒気帯び運転又は飲酒運転を防止することができる。
【0045】
また、第9発明による場合は、シフトレバーのシフト操作を行う際に押圧操作するスイッチ部を設け、アルコール摂取が検出された場合にスイッチ部を押圧操作不可能にロックする構成とすることにより、容易且つ確実にシフトレバーをシフト操作不可能にロックすることができ、車輌の走行開始を確実に防止することができるため、より確実に運転者の酒気帯び運転又は飲酒運転を防止することができる。
【0046】
また、第10発明による場合は、シフトレバーのスイッチ部への接触を検知する手段を設け、スイッチ部への接触を検知した場合にアルコール摂取の検出を行う構成とすることにより、スイッチ部の押圧操作前に確実にスイッチ部を押圧操作不可能にロックすることができるため、シフトレバーをシフト操作不可能にロックすることができ、車輌の走行開始を確実に防止することができる。よって、運転者の酒気帯び運転又は飲酒運転をより確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
(実施の形態1)
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る飲酒運転防止装置の構成を示す模式図であり、(a)に全体図を示し、(b)に拡大断面図を示してある。また、図2は、本発明の実施の形態1に係る飲酒運転防止装置の構成を示すブロック図である。図において1は車輌の運転席の前側に設けられた合成樹脂製のインストルメントパネルである。図1に例示する車輌は、車輌の右側に運転席が設けられた所謂右ハンドル車であり、インストルメントパネル1には運転席に乗車した運転者100の左手が届く範囲内に飲酒運転防止装置のセンサ部5が設けてある。
【0048】
飲酒運転防止装置のセンサ部5は、インストルメントパネル1の表面に運転者100の指101が収まる大きさに形成された凹部2を有している。凹部2の内側の両側面部には、凹部2内へ(即ち、凹部2に収められた指101へ)特定波長の光を照射する第1光源13及び第2光源14がそれぞれ設けてある。また、凹部2の底面部は、少なくとも第1光源13及び第2光源14が発する光を透過する材質で構成してあり、インストルメントパネル1内には凹部2の底面部を透過した光を集光するレンズ11と、集光された光による撮像を行う撮像素子12とを有する撮像部10が備えられている。センサ部5の第1光源13、第2光源14及び撮像素子12は、インストルメントパネル1内に配設された回路基板17に電気的に接続してあり、回路基板17には、例えば第1光源13及び第2光源14を駆動する光源駆動部15などの電気回路が構成してある。
【0049】
また、車輌の適所には、センサ部5の動作を制御すると共に、センサ部5から与えられるデータを基に種々の処理を行うECU(Electronic Control Unit)30が搭載してある。ECU30は、ROM(Read Only Memory)32、RAM(Random Access Memory)33、認証用記憶部34、接続部35及び通信部36と、これらの動作を制御する制御部31とを備えている。
【0050】
制御部31は、具体的にはCPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)等により構成してあり、ROM32に予め記憶されたプログラム及びデータを読み出して実行することにより、種々の制御処理及び演算処理等を行うようにしてある。ROM32は、マスクROM、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)又はフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ素子により構成してあり、ECU30の動作に必要な種々のソフトウェアプログラムがあらかじめ記憶してある。RAM33は、制御部31が制御処理又は演算処理等を行う際に発生する一時的なデータを記憶するものであり、SRAM(Static RAM)又はDRAM(Dynamic RAM)等の書き換え可能なメモリ素子により構成してある。また、RAM33には撮像部10により撮像された画像を記憶しておくこともできる。
【0051】
センサ部5とECU30とは複数の接続ケーブルにて接続してあり、ECU30には接続ケーブルを接続するための接続部35が設けてある。これにより、ECU30の制御部31は、センサ部5の光源駆動部15に駆動命令を与えて第1光源13及び第2光源14の点灯/消灯を制御することができる。また、ECU30は、センサ部5の撮像部10にて撮像された画像を通信ケーブルを介して取得し、RAM33に一時的に記憶することができる。
【0052】
また、認証用記憶部34は、車輌の運転を許可された一又は複数の運転者100について、指101の血管パターンが画像データとして記憶してある。認証用記憶部34は、EEPROM又はフラッシュメモリ等のデータ書き換えが可能な不揮発性のメモリ素子により構成してあり、車輌の製造者などが運転者100の血管パターンを予め記憶することができるようにしてある。
【0053】
また、ECU30の通信部36は、車輌に搭載されたステアリング制御部51、エンジン制御部53及び警告部55等のその他の装置又は回路等が接続されたCAN(Controller Area Network)などのネットワークNWに接続するためのものである。通信部36は
ネットワークNWを介してその他の装置又は回路等との間でデータ又はメッセージ等の送受信を行うようにしてある。ECU30の制御部31は、通信部36により制御メッセージをステアリング制御部51、エンジン制御部53又は警告部55等へ送信することによって、これら各部の動作を制御することができるようにしてある。
【0054】
ステアリング制御部51は、車輌のステアリング装置の制御を行うものであり、ECU30からロック要求メッセージを受信した場合には、運転者100がステアリングの操作を行うことができないようにロックするようにしてある。同様に、エンジン制御部53は、車輌のエンジンの制御を行うものであり、ECU30からロック要求メッセージを受信した場合には、車輌のエンジンを始動することができないようにロックするようにしてある。
【0055】
警告部55は、例えばインストルメントパネル1に設けられた警告ランプであり、インストルメントパネル1のセンサ部5の近傍に配設してある。ECU30が通信部36から警告部55へ警告ランプの点灯要求メッセージを送信することにより、警告ランプを点灯して運転者100へ警告を与えることができるようにしてある。なお、車輌に液晶ディスプレイなどの表示装置が搭載されている場合には、この表示装置に文字又は画像を表示して警告を行う構成であってもよく、車輌にスピーカなどの音声出力装置が搭載されている場合には、警告音又は警告メッセージ等を音声出力装置により出力して警告を行う構成であってもよい。
【0056】
本発明に係る飲酒運転防止装置が備える第1光源13は、人体の血液に含まれる還元ヘモグロビン成分により吸収される波長の光成分を含む光を照射するようにしてある。また、第2光源14は、アルコール成分に吸収される波長の光成分を含む光を照射するようにしてある。これに対して、センサ部5に設けられた撮像部10の撮像素子12は、還元ヘモグロビン成分に吸収される波長の光成分及びアルコール成分に吸収される波長の光成分を受光して撮像を行うようにしてある。これは、例えば両波長の光成分にのみ感応する撮像素子を用いることで実現することができる。また、少なくとも両波長の光成分が含まれる光に感応する撮像素子と、両波長の光成分のみを透過する光学フィルタとを用いることで実現することもできる。
【0057】
図3は、本発明に係る飲酒運転防止装置による個人認証及びアルコール検出の方法を説明するための模式図であり、撮像部10にて撮像される画像の一例を示してある。上述のようにセンサ部5の第1光源13は還元ヘモグロビンに吸収される光を照射する。第1光源13からの光を運転者100の指101に照射した場合、指101の血管には血液が流れており、血液中には還元ヘモグロビンが含まれるため、血管にて光が吸収される。このときに撮像部10が撮像した画像では指101の血管パターン105が暗く撮像される(図3(a)参照)。この血管パターン105は運転者100に固有のパターンであり、認証用記憶部34に予め記憶された血管パターンの画像と一致するか否かを調べることによって、運転者100が正当な権限を有する者であるか否かを判定する、即ち個人認証を行うことができる。なお、図3(a)に示す画像例は、第1光源13が還元ヘモグロビンに吸収される光を照射した場合であり、静脈の血管パターン105が撮像された例である。
【0058】
また、センサ部5の第2光源14はアルコール成分に吸収される光を照射する。運転者100がアルコールを摂取している場合には、アルコール成分が血液中に含まれるため、指101の血管にて光が吸収される。よって、このときに撮像部10が撮像した画像では、指101の血管パターン107が暗く撮像される(図3(b1)参照)。なお、アルコール成分は指101の動脈及び静脈の両方の血管に含まれるため、図3(b1)に示す画像例では、動脈及び静脈を含む血管パターン107が撮像されている。
【0059】
これに対して、運転者100がアルコールを摂取していない場合には、アルコール成分が血液中に含まれないため、第2光源14からの光は吸収されない。よって、このときに撮像部10が撮像した画像では、指101の血管パターンは撮像されない(図3(b2)参照)。よって、ECU30の制御部31は、第2光源14の光を照射して撮像部10が撮像した画像を基に、血管パターン107が画像に写されているか否かによって、運転者100がアルコールを摂取しているか否かを判断することができる。
【0060】
図4は、本発明の実施の形態1に係る飲酒運転防止装置が行うアルコール検出処理の手順を示すフローチャートである。本発明に係る飲酒運転防止装置は、車輌のドアが開錠された場合(特に、外部からドアが開錠された場合)に処理を開始するようにしてある。ただし、これは一例であり、運転者100が飲酒運転防止装置の起動スイッチを操作した場合に処理を開始するなど、他のタイミングで処理を開始する構成であってもよい。
【0061】
まず、飲酒運転防止装置のECU30の制御部31は、車輌のドアが開錠されたか否かを調べ(ステップS1)、開錠されていない場合には(S1:NO)、開錠されるまで待機する。車輌のドアが開錠された場合(S1:YES)、光源駆動部15に駆動命令を与えてセンサ部5の第1光源13を点灯し(ステップS2)、個人認証の準備を行う。次いで、撮像部10にて撮像を行い(ステップS3)、撮像により取得した画像と認証用記憶部34に記憶された血管パターンとの比較を行う(ステップS4)。比較の結果、撮像した画像の血管パターン105と認証用記憶部34に記憶された血管パターンとが一致したか否かを調べ(ステップS5)、一致しない場合には(S5:NO)、ステップS3へ戻り、撮像及び血管パターンの比較を繰り返し行う。
【0062】
撮像した画像の血管パターン105と認証用記憶部34に記憶された血管パターンとが一致した場合(S5:YES)、第1光源13を消灯して(ステップS6)、第2光源14を点灯する(ステップS7)。次いで、撮像部10にて撮像を行い(ステップS8)、撮像により取得した画像を基に、第2光源14が照射した光が吸収されたか否かを調べる(ステップS9)。第2光源14が照射した光が吸収されていない場合(S9:NO)、運転者100についてアルコール成分が検出されなかった旨を通知して(ステップS10)、処理を終了する。このときの未検出の通知は、例えば警告部55に通知のためのランプを設けてこれを点灯する構成としてもよく、車輌に表示装置が搭載されている場合にはこの表示装置に文字又は画像を表示して警告を行う構成でもよく、車輌に音声出力装置が搭載されている場合には音声出力により通知を行う構成としてもよい。
【0063】
ステップS9にて、第2光源14が照射した光が吸収されていた場合(S9:YES)、運転者100がアルコールを摂取している可能性があると判断できるため、ステアリング制御部51及びエンジン制御部53にロック要求メッセージを送信して、運転者100がステアリングの操作を行うことができないようにロックすると共に、車輌のエンジンを始動することができないようにロックする(ステップS11)。次いで、警告部55に警告ランプの点灯要求メッセージを送信することにより、警告ランプを点灯して運転者100への警告を与え(ステップS12)、処理を終了する。
【0064】
以上の構成の飲酒運転防止装置においては、還元ヘモグロビン成分に吸収される光を第1光源13が照射して、このときに撮像して取得した画像を基に個人認証を行うと共に、アルコール成分に吸収される光を第2光源14が照射して、このときに撮像して取得した画像を基に運転者100がアルコールを摂取しているか否かを検出する構成とすることによって、車輌を運転する正当な運転者100であるか否かを判断してアルコール検出を行うことができるため、アルコールを摂取していない他者が検出を行うなどの行為を防止でき、酒気帯び運転又は飲酒運転を確実に防止することができる。また、個人認証及びアルコール検出について、光源をそれぞれ別に設けるのみで、その他のハードウェアは共用できるため、飲酒運転防止装置のコストを低減することができる。
【0065】
なお、本実施の形態においては、個人認証を運転者100の指101の血管パターンを基に行う構成としたが、これに限るものではなく、指101の指紋を基に個人認証を行う構成としてもよい。また、アルコール成分を摂取しているか否かの検出のみを行って、個人認証は行わない構成としてもよい。また、運転者100がアルコールを摂取している場合に、車輌のステアリング及びエンジンをロックする構成としたが、これに限るものではなく、車輌のその他の機構、例えばシフトレバーなどを操作不能にロックする構成としてもよく、ロックは行わずに警告のみを行う構成としてもよい。
【0066】
(実施の形態2)
図5は、本発明の実施の形態2に係る飲酒運転防止装置の構成を示す模式図であり、(a)に全体図を示し、(b)に拡大図を示してある。また、図6は、本発明の実施の形態2に係る飲酒運転防止装置の構成を示す模式的断面図であり、図7は、本発明の実施の形態2に係る飲酒運転防止装置の構成を示すブロック図である。実施の形態2の飲酒運転防止装置は、車輌のシフトレバー201にセンサ部5が設けられた構成である。
【0067】
図示の車輌は所謂AT(オートマティック・トランスミッション)車であり、運転者100はシフトレバー201を「P(パーキング)」、「R(リバース)」、「N(ニュートラル)」、「D(ドライブ)」、「2(セカンド)」及び「1(ファースト)」のいずれかの位置にスライド移動させるシフト操作を行うことによって、車輌の走行モードを変更することができる。シフトレバー201は、運転者100がシフト操作を行う際に握るグリップ部202と、車輌のギア制御機構などに接続されるシャフト部203とにより構成されている。グリップ部202にはスイッチ部204が設けてあり、運転者100はスイッチ部204を押圧操作することによって、シフトレバー201をシフト操作することができるようにしてあり、スイッチ部204を押圧操作せずにシフト操作(少なくとも「P」から「R」へのシフト操作)することができないようにしてある。
【0068】
実施の形態2の飲酒運転防止装置においては、シフトレバー201のグリップ部202に4つの凹部205が形成してある。4つの凹部205は、運転者100がグリップ部202を握る場合に、人差し指、中指、薬指及び小指が収まる位置にそれぞれ形成してある。また、各凹部205は、少なくとも各指の第1関節及び第2関節について、少なくとも内側半分程度が収まる深さ及び長さに形成してある。
【0069】
凹部205の両側部には、還元ヘモグロビン成分に吸収される波長の光成分を含む光を照射する第1光源13と、アルコール成分に吸収される波長の光成分を含む光を照射する第2光源14とが対向する位置にそれぞれ設けてある。また、凹部205の底面部分は、少なくとも第1光源13及び第2光源14が発する光を透過する材質で構成してあり、グリップ部202内には、凹部205の底面部分を透過した光を集光するレンズ11と、集光された光による撮像を行う撮像素子12とが配設してある。
【0070】
これらの第1光源13、第2光源14、レンズ11及び撮像素子12等により構成されるセンサ部5は、グリップ部202の4つの凹部205にそれぞれ設けてある。また、車輌の適所にはECU30が搭載してあり、4つのセンサ部5及びスイッチ部204がECU230に接続してある。
【0071】
また、ECU230の通信部36にはネットワークNWを介してシフトレバー制御部57が接続してある。シフトレバー制御部57は、ECU230からのロック要求メッセージを受信した場合に、シフトレバー201をシフト操作不可能にロックすると共に、ロック解除要求メッセージを受信した場合に、シフトレバー201のロックを解除してシフト操作可能とする制御を行うようにしてある。なお、シフトレバー制御部57は、シフトレバー201を「P」の位置でシフト操作不可能にロックするようにしてある。
【0072】
ECU230は、車輌のドアが開錠された場合に各センサ部5を起動して処理を開始するようにしてある。ただし、センサ部5の起動条件はドアの開錠でなくてもよく、例えば車輌のエンジンが始動された場合、又は運転者100がシフトレバー201のグリップ部202に触れた場合等に起動を行う構成としてもよい。
【0073】
まず、ECU230は、各センサ部5の光源駆動部15に第1光源13の駆動命令を与えることによって第1光源13を点灯する。次いで、ECU230は、シフトレバー201のスイッチ部204が押圧操作された場合に撮像部10による撮像を行って、認証用記憶部34に記憶された血管パターンとの比較により個人認証を行う。個人認証に成功した場合には、ECU230は第1光源13を消灯して第2光源14を点灯し、撮像部10による撮像を行って、アルコール成分による光の吸収の有無を調べることにより、アルコール摂取の有無を検出する。
【0074】
個人認証に失敗した場合又はアルコール摂取ありと検出された場合には、ECU230は通信部36にネットワークNWを介して接続されたシフトレバー制御部57にロック要求メッセージを送信することにより、シフトレバー201をシフト操作不可能にロックするようにしてある。また、個人認証に成功し且つアルコールの摂取していないと検出された場合には、ECU230はシフトレバー制御部57にロック解除要求メッセージを送信することにより、シフトレバー201のロックを解除するようにしてある。なお、シフトレバー201は初期状態においてはロックされているものとする。
【0075】
図8及び図9は、本発明の実施の形態2に係る飲酒運転防止装置が行うアルコール検出処理の手順を示すフローチャートである。まず、ECU230の制御部31は、車輌のドアが開錠されたか否かを調べ(ステップS31)、開錠されていない場合には(S31:NO)、開錠されるまで待機する。車輌のドアが開錠された場合(S31:YES)、光源駆動部15に駆動命令を与えて4つのセンサ部5の第1光源13を点灯し(ステップS32)、個人認証の準備を行う。
【0076】
次いで、制御部31は、シフトレバー201のスイッチ部204が操作されたか否かを調べ(ステップS33)、操作されていない場合には、(S33:NO)、スイッチ部204が操作されるまで待機する。スイッチ部204が操作された場合(S33:YES)、制御部31は各撮像部10にて撮像を行い(ステップS34)、撮像により取得した画像と認証用記憶部34に記憶された血管パターンとの比較をそれぞれ行う(ステップS35)。比較の結果から、制御部31は、撮像した画像の血管パターンと認証用記憶部34に記憶された血管パターンとが全て一致したか否かを調べる(ステップS36)。
【0077】
撮像した画像の血管パターンと記憶された血管パターンとが全て一致した場合(S36:YES)、制御部31は、第1光源13を消灯して(ステップS37)、第2光源14を点灯する(ステップS38)。次いで、制御部31は撮像部10にて撮像を行い(ステップS39)、撮像により取得した画像を基に、第2光源14が照射した光が吸収されたか否かを調べる(ステップS40)。
【0078】
第2光源14が照射した光が吸収されていない場合(S40:NO)、制御部31はシフトレバー制御部57へロック解除要求メッセージを送信することによって、シフトレバー201のロックを解除し(ステップS41)、運転者100についてアルコール成分が検出されなかった旨を通知して(ステップS42)、処理を終了する。
【0079】
ステップS36にて撮像した画像の血管パターンと記憶された血管パターンとが1つでも一致しなかった場合(S36:NO)、又はステップS40にて第2光源14が照射した光が吸収されていた場合(S40:YES)、制御部31はシフトレバー制御部57へロック要求メッセージを送信することによって、シフトレバー201をシフト操作不可能にロックし(ステップS43)、警告部55に警告ランプの点灯要求メッセージを送信することにより、警告ランプを点灯して運転者100への警告を与え(ステップS44)、処理を終了する。
【0080】
以上の構成の実施の形態2に係る飲酒運転防止装置においては、車輌のシフトレバー201に凹部205を形成してセンサ部5を設け、運転者100がシフトレバー201を操作する際にアルコール摂取の検出及び個人認証を行う構成とすることにより、車輌を走行させるためにはシフトレバー201を必ず操作する必要があることから、車輌の走行開始前に確実にアルコール摂取の検出及び個人認証を行うことができる。また、アルコールの摂取が検出された場合又は個人認証に失敗した場合には、シフトレバー201をシフト操作不可能にロックする構成とすることによって、車輌の走行開始を妨げることができる。よって、飲酒運転又は酒気帯び運転を確実に防止することができ、飲酒運転又は酒気帯び運転に伴う事故の発生を確実に防止することができる。
【0081】
また、シフトレバー201のグリップ部202に形成した凹部205の側部に第1光源13及び第2光源14を配設し、凹部205の底部にレンズ11及び撮像素子12を配設する構成とすることにより、シフトレバー201をシフト操作する際に運転者100がグリップ部202を握る手の指に確実に光を照射することができ、光が照射された指を確実に撮像することができる。よって、アルコール摂取の検出及び個人認証の精度を高めることができ、より確実に飲酒運転又は酒気帯び運転を防止することができる。また、グリップ部202に4つの凹部を形成し、各凹部にセンサ部5を設ける構成とすることにより、運転者の4つの指についてアルコール摂取の検出及び個人認証を行うことができるため、アルコール摂取の検出及び個人認証の精度をより高めることができる。
【0082】
なお、実施の形態2においては、AT車のシフトレバー201に飲酒運転防止装置を搭載する構成としたが、これに限るものではなく、MT(マニュアル・トランスミッション)車のシフトレバーに同様の構成を適用してもよい。また、シフトレバー201に4つの凹部205を形成し、各凹部205にセンサ部5をそれぞれ設ける構成としたが、これに限るものではなく、凹部205及びセンサ部5の配設数を3つ以下としてもよい。
【0083】
なお、実施の形態2に係る飲酒運転防止装置のその他の構成は、実施の形態1に係る飲酒運転防止装置の構成と同様であるため、対応する箇所には同じ符号を付して説明を省略する。
【0084】
(実施の形態3)
実施の形態2に係る飲酒運転防止装置は、シフトレバー201に設けられたセンサ部5などが車両の適所に搭載されたECU230に接続され、シフトレバー201をシフト操作不可能にロックするシフトレバー制御部57がECU230に接続された構成であるが、実施の形態3に係る飲酒運転防止装置はシフトレバー内にセンサ部及びロック機構等が内蔵された構成である。図10は、本発明の実施の形態3に係る飲酒運転防止装置の構成を示すブロック図である。
【0085】
実施の形態3の飲酒運転防止装置は、実施の形態2の飲酒運転防止装置と同様に(図5参照)、車輌のシフトレバーのグリップ部302に4つのセンサ部5とスイッチ部204が配された構成である。ただし、実施の形態3の飲酒運転防止装置は、スイッチ部204への接触を検知する接触検知部305と、スイッチ部204を押圧操作不可能にロックするロック機構306とを備えると共に、各部の制御を行う制御部308と、認証処理を行うための血管パターンが記憶された認証用記憶部334とがシフトレバーのグリップ部302に内蔵されている点が実施の形態2の飲酒運転防止装置と異なる。
【0086】
各センサ部5の光源駆動部15は、制御部308の制御により第1光源13及び第2光源14を駆動して点灯するようにしてある。また、各センサ部の撮像部10により撮像された画像は制御部308へ与えられ、制御部308は与えられた画像を基にアルコール摂取の検出及び個人認証等の処理を行うようにしてある。
【0087】
接触検知部305は、例えば静電容量の変化を検知することによって人の接触を検知するタッチセンサなどであり、検知結果を制御部308へ与えるようにしてある。これにより、制御部308はスイッチ部204が押圧操作される前に、運転者100がスイッチ部204に触れたことを判別することができる。
【0088】
ロック機構306は、例えばアクチュエータ又は歯車機構等で構成されるものであり、制御部308の制御に応じて、スイッチ部204が押圧操作不可能となるように機械的にロックを行うようにしてある。スイッチ部204は、シフトレバーをシフト操作する際に押圧操作する必要があるため、スイッチ部204をロックすることによってシフトレバーをシフト操作不可能にロックすることができる。なお、初期状態において、ロック機構306は、スイッチ部204を押圧操作不可能にロックしているものとする。
【0089】
制御部308は、スイッチ部204に対する運転者100の接触を接触検知部305にて検知した場合に、各センサ部5の第1光源13を点灯して個人認証を開始するようにしてある。また、個人認証に成功した場合、制御部308は、各センサ部5の第1光源13を消灯して第2光源14を点灯し、アルコール摂取の検出を行うようにしてある。制御部308は、個人認証に失敗した場合又はアルコールの摂取が検出された場合には、ロック機構306によりスイッチ部204を押圧操作不可能にロックし、アルコールの摂取が検出されなかった場合には、スイッチ部204のロックを解除するようにしてある。
【0090】
図11は、本発明の実施の形態3に係る飲酒運転防止装置が行うアルコール検出処理の手順を示すフローチャートである。まず、制御部308は、接触検知部305によりスイッチ部204への運転者100の接触があったか否かを調べ(ステップS61)、接触がない場合には(S61:NO)、接触検知部305により接触が検知されるまで待機する。
【0091】
スイッチ部204への接触があった場合(S61:YES)、制御部308は各センサ部5の光源駆動部15へ駆動命令を与えることにより第1光源13を点灯し(ステップS62)、撮像部10による撮像を行う(ステップS63)。次いで、制御部309は認証用記憶部334から予め記憶された血管パターンを読み出して、撮像により取得した画像と認証用記憶部334に記憶された血管パターンとの比較をそれぞれ行う(ステップS64)。比較の結果から、制御部308は、撮像した画像の血管パターンと認証用記憶部34に記憶された血管パターンとが全て一致したか否かを調べる(ステップS65)。
【0092】
撮像した画像の血管パターンと記憶された血管パターンとが全て一致した場合(S65:YES)、制御部308は、各センサ部5の第1光源13を消灯して(ステップS66)、第2光源14を点灯する(ステップS67)。次いで、制御部308は撮像部10にて撮像を行い(ステップS68)、撮像により取得した画像を基に、第2光源14が照射した光が吸収されたか否かを調べる(ステップS69)。
【0093】
第2光源14が照射した光が吸収されていない場合(S69:NO)、制御部308はロック機構306によるスイッチ部204のロックを解除して(ステップS70)、処理を終了する。ステップS65にて撮像した画像の血管パターンと記憶された血管パターンとが1つでも一致しなかった場合(S65:NO)、又はステップS69にて第2光源14が照射した光が吸収されていた場合(S69:YES)、制御部308はロック機構306によりスイッチ部204を押圧操作不可能にロックして(ステップS71)、処理を終了する。
【0094】
以上の構成の実施の形態3に係る飲酒運転防止装置は、アルコール摂取の検出及び個人認証を行うためのセンサ部5、スイッチ部204を押圧操作不可能にロックするロック機構306、並びにこれらを制御する制御部308等の全てをシフトレバーのグリップ部302に内蔵する構成とすることによって、車輌にECU及びシフトレバー制御部等を搭載する必要がない。よって、飲酒運転防止装置を搭載していない車輌であっても、シフトレバーのグリップ部を実施の形態3のグリップ部302に交換するのみで飲酒運転防止の機能を実現することができる。
【0095】
なお、実施の形態3においては、接触検知部305によりスイッチ部204への接触を検知した場合にアルコール摂取の検出及び個人認証の処理を開始する構成としたが、これに限るものではなく、スイッチ部204の押圧操作が開始されたことを検知して、押圧操作の初期段階でアルコール摂取の検出及び個人認証の処理を行い、押圧操作が完了する前にロック機構306によりロックを行う構成としてもよい。また、接触検知部305がスイッチ部204への接触を検知する構成としたが、これに限るものではなく、例えばセンサ部5が設けられるグリップ部302の凹部に対する接触を検知する構成としてもよく、グリップ部302全体について接触を検知する構成としてもよい。また、アルコール摂取が検知された場合、ロック機構306によりスイッチ部204を操作不可能に機械的にロックする構成としたが、これに限るものではなく、例えばスイッチ部204に対する操作を電気的に検知する構成であれば、アルコール摂取が検知された場合にスイッチ部204に対する操作の検知を無効化するなど、電気的にスイッチ部204を操作不可能にロックする構成としてもよい。
【0096】
なお、実施の形態3に係る飲酒運転防止装置のその他の構成は、実施の形態2に係る飲酒運転防止装置の構成と同様であるため、対応する箇所には同じ符号を付して説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の実施の形態1に係る飲酒運転防止装置の構成を示す模式図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る飲酒運転防止装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る飲酒運転防止装置による個人認証及びアルコール検出の方法を説明するための模式図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る飲酒運転防止装置が行うアルコール検出処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態2に係る飲酒運転防止装置の構成を示す模式図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係る飲酒運転防止装置の構成を示す模式的断面図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る飲酒運転防止装置の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の実施の形態2に係る飲酒運転防止装置が行うアルコール検出処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施の形態2に係る飲酒運転防止装置が行うアルコール検出処理の手順を示すフローチャートである。
【図10】本発明の実施の形態3に係る飲酒運転防止装置の構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の実施の形態3に係る飲酒運転防止装置が行うアルコール検出処理の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0098】
1 インストルメントパネル
2 凹部
5 センサ部
10 撮像部(撮像手段)
11 レンズ
12 撮像素子
13 第1光源(還元ヘモグロビン用光源)
14 第2光源(アルコール用光源)
15 光源駆動部
30 ECU(検出手段、認証手段、制御手段)
31 制御部
34 認証用記憶部(記憶手段)
51 ステアリング制御部
53 エンジン制御部
55 警告部(警告手段)
57 シフトレバー制御部
100 運転者
101 指
105 血管パターン
201 シフトレバー
202 グリップ部(握り部)
203 シャフト部
204 スイッチ部
205 凹部
230 ECU(検出手段、認証手段、制御手段)
302 グリップ部(握り部)
305 接触検知部
306 ロック機構
308 制御部(検出手段、認証手段、制御手段)
334 認証用記憶部(記憶手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輌に搭載され、
アルコール成分に吸収される波長のアルコール吸収光成分を含む光を照射するアルコール用光源と、
該アルコール用光源からの光を照射された被測定者の指を撮像する撮像手段と、
該撮像手段が撮像して取得した画像を基に、前記被測定者の指による前記アルコール吸収光成分の吸収の有無を検出する検出手段と、
前記被測定者の指に係る生体情報を基に個人認証を行う認証手段と、
前記検出手段の検出結果及び前記認証手段の認証結果に応じて、前記車輌の走行可否を制御する制御手段と
を備えることを特徴とする飲酒運転防止装置。
【請求項2】
血液の還元ヘモグロビン成分に吸収される波長の還元ヘモグロビン吸収光成分を含む光を照射する還元ヘモグロビン用光源と、
被測定者の指の血管パターンを記憶する記憶手段と
を備え、
前記撮像手段は、前記アルコール用光源からの光を照射された被測定者の指を撮像すると共に、前記還元ヘモグロビン用光源からの光を照射された被測定者の指を撮像するようにしてあり、
前記認証手段は、前記還元ヘモグロビン用光源からの光を照射された被測定者の指を撮像して取得した画像と、前記記憶手段に記憶された血管パターンとの比較により個人認証を行うようにしてあること
を特徴とする請求項1に記載の飲酒運転防止装置。
【請求項3】
前記車輌のドアが開錠された場合に、前記検出手段による検出又は前記認証手段による個人認証を開始するようにしてあること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の飲酒運転防止装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記検出手段により前記アルコール吸収光成分の吸収有りと検出された場合、又は前記認証手段により認証されなかった場合に、前記車輌のステアリングのロック、シフトレバーのロック、又はエンジンの始動のロックを行うようにしてあること
を特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の飲酒運転防止装置。
【請求項5】
前記検出手段により前記アルコール吸収光成分の吸収有りと検出された場合に警告を行う警告手段を備えること
を特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の飲酒運転防止装置。
【請求項6】
前記アルコール用光源及び前記撮像手段は、前記車輌のシフトレバーに配設してあり、
前記検出手段により前記アルコール吸収光成分の吸収有りと検出された場合に、前記制御手段が前記シフトレバーを操作不可能にロックするようにしてあること
を特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載の飲酒運転防止装置。
【請求項7】
前記シフトレバーの握り部には運転者の指を収める凹部が形成してあり、
前記アルコール用光源は、前記凹部の側部に設けてあり、前記凹部内に光を照射するようにしてあり、
前記撮像手段は、前記凹部の底部分に設けてあること
を特徴とする請求項6に記載の飲酒運転防止装置。
【請求項8】
前記凹部は、前記シフトレバーの握り部に複数形成してあり、
前記アルコール用光源及び前記撮像手段は、各凹部にそれぞれ設けてあり、
前記検出手段は、全ての前記撮像手段が撮像した画像を基に検出を行なうようにしてあること
を特徴とする請求項7に記載の飲酒運転防止装置。
【請求項9】
前記シフトレバーのシフト操作を行う際に押圧操作を必要とするスイッチ部を備え、
前記制御手段は、前記スイッチ部を押圧操作不可能にロックするようにしてあること
を特徴とする請求項6乃至請求項8のいずれか1つに記載の飲酒運転防止装置。
【請求項10】
前記スイッチ部への接触を検知する接触検知手段を備え、
該接触検知手段が接触を検知した場合に、前記検出手段による検出を行うようにしてあること
を特徴とする請求項9に記載の飲酒運転防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−302915(P2008−302915A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−177461(P2007−177461)
【出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】