説明

飲食用カップ

【課題】 使用時の口に対する触感が良好で、電子レンジで加熱調理されたときの良好な断熱性を備え、洗浄容易で長期の使用に耐える飲食用カップを提供する。
【解決手段】飲食用カップ1は、耐熱ガラス製で上広がりのほぼ截頭円錐筒状の内容器2と、この内容器の外側に断熱空間を形成して着脱自在に嵌合する合成樹脂製の外容器3とからなる。内容器2は、外周の上下2カ所に環状の係合溝6,7を持つ。内容器2の上縁部9は、環状の段部8を介在させて、それより下方部分に対して内径及び外径が拡大し上方へ上広がりに延びる。外容器3は、内容器2の各係合溝6,7に弾性的に係合する係合突起10,11を内周に持ち、上端は、内容器2の段部8の直下で終結する。それにより、外周が内容器2の上縁部9の外周とほぼ連続した平滑な外周面を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、インスタント食品等を収容して電子レンジで加熱調理するための容器として使用でき、加熱後にはそのまま食器として使用できる飲食用カップに関する。
【背景技術】
【0002】
調理済み冷凍食品、チルド食品、あるいは常温流通の無菌包装食品等を包装体ごと加熱調理しそのまま食卓に供する形式の商品について、最近、環境負荷低減の観点から、包装体から取り出し、繰り返し使用可能な食器に移し代えてから電子レンジで加熱調理し、食卓に供する形式への変更要請が高まっている。
下記の特許文献1等に、お湯を注入して調理する即席麺用の発泡プラスチックカップに代わる断熱性カップとして、プラスチックと板紙からなる二重壁の断熱カップが提案されている。これらは、電子レンジ加熱調理容器として使用でき、電子レンジで加熱された食品を熱いうちに電子レンジから取り出す際に、包装体の外側が熱くなく、素手で容易に取り出すことができるようにしたものである。
【特許文献1】特開平5−16977号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかるに、二重のプラスチックシート成形容器あるいは前述のプラスチックと紙の二重成形容器は、一度きりの使い捨て容器として提案されているもので、この構造を、再使用できる容器に適用するには次のような問題点がある。すなわち、プラスチックは口に対する触感が悪く、また食品の油やこれに溶け込んだ色素が容器に強固に付着して洗浄しにくいし、繰り返しの洗浄により表面が傷つきやすく長期の使用に耐えない。
本発明は、前述の問題点に鑑みてなされたもので、使用時の口当たりが良好で、電子レンジにより加熱調理されたときの良好な断熱性を備え、しかも洗浄容易で長期の使用に耐えると共に、外側面が平滑で手触りがよく、またプリント等による加飾性が良好な飲食用カップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明においては、上記課題を解決するために、耐熱ガラス製の内容器2と合成樹脂製の外容器3とで飲食用カップ1を構成する。外容器3は、合成樹脂で一体成形され、内容器2の外側に断熱空間Sを形成して着脱自在に嵌合する。内容器2は、上広がりのほぼ截頭円錐筒状の側壁4と、円形の底壁5とを有する。外容器3は、上広がりのほぼ截頭円錐筒状の側壁10と、円形の底壁11と、正面視において当該側壁10の下部の内側に隠蔽されるように、外容器3の半径方向へ弾性変位可能に形成された複数の係合片15とを有する。内容器2の側壁4は、外周の下部に、外容器3の係合片15が弾性的に離脱自在に係合する環状の係合溝6を具備する。外容器3の側壁10は、外周が平滑に連続する。
以上添付図面の参照番号を付して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0005】
この発明においては、内容器2が耐熱ガラス製、外容器3が合成樹脂製で、両者間に断熱空間Sが形成されるから、内容器2内に収容されて電子レンジで加熱された食品を熱いうちに電子レンジから取り出す際に、容器の外側が熱くなく、素手で容易に取り出すことができる。内容器2の外周の環状の係合溝6と外容器3の内周の係合片15とを弾性的に係合させる簡易な嵌合構造であるから、製造容易で安価に得られる。ガラス製内容器2の上縁部9が合成樹脂製外容器3の上端より上方へ延びているので、食に供するときにはガラス部位が口に接触することになる。このため、触感が良好で、心地よく飲食することができ、また内容器2の上縁部9に口吻が接することで、加熱された食品の熱を予め感知して安全に飲食することができる。内容器2の上縁部9が、下部に対して段部8を介して拡径したうえで、さらに上方へ延びているので、この部位で沸騰による食品の吹き上がりを吸収し、吹きこぼれを防止することができる。内容器2の外周面と外容器3の外周面とが平滑に連続しているので、使用感が良好であるし、凹凸がないので汚れの付着が少なく、洗浄も容易である。外容器3の側壁10は、外周が平滑に連続するため、加飾性が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図面について本発明の実施の形態を説明する。図1は飲食用カップの分解斜視図、図2は飲食用カップの正面図、図3は飲食用カップの断面図、図4は外容器の平面図、図5は外容器の底面図、図6は外容器の一部を切り欠いた斜視図である。
【0007】
飲食用カップ1は、耐熱ガラス製の内容器2と、この内容器2の外側に着脱自在に嵌合する合成樹脂製の外容器3とからなる。
【0008】
図3に示すように、内容器2は、上広がりのほぼ截頭円錐筒状の側壁4と、それの底部を塞ぐ円形の底壁5とからなる。底壁5に近い高さ位置の側壁4の外周には、環状係合溝6が形成される。側壁4の上部の内周には、即席麺等の食品Nの浮き止め用の環状凸部7が形成される。環状凸部7の上部には、段部8を介在させて外径が拡大する上縁部9が連続する。
【0009】
図3ないし図6に示すように、外容器3は、側壁10と底壁11とを有し、内容器2の外側に着脱自在に嵌合する。側壁10の下部に、正面視において当該側壁10の内側に隠蔽されるように底受部12が一体に形成される。この底受部12は、上縁において側壁10の内側に接続する環状側壁13と、この環状側壁13の下端に接続する前記円形の底壁11とを具備する。環状側壁13は、環状の主体部14と、この主体部14に対して外容器の半径方向へ弾性変位可能に一体に接続する係合片15とを具備する。係合片15は、円周方向に等間隔に3個配置され、それぞれ環状側壁13の主体部14に形成された開口14aに周縁を囲まれることによって形成される。この3個の係合片15は、側壁10の内側において、内容器の側壁4の係合溝6に弾性的に係合離脱自在に構成される。
【0010】
外容器3の側壁10は、上端が内容器2の段部8の直下で終結することにより、外周が内容器2の上縁部9の外周とほぼ連続した、全体に平滑な外周面を形成する。側壁10の内周には、内容器2の外周との間に断熱空間Sを形成するための複数のリブ16が形成される。
【0011】
外容器3の底部には、底受部12の環状側壁13を外周から締め付けるための弾性キャップ17が着脱自在に嵌合される。弾性キャップ17は、開口18aを有する円形の底壁18と、底壁18の縁部から立ち上がる締め付けリング19とを備える。締め付けリング19は、環状側壁13を外周から締め付けることにより、係合片15の弾性が経時により弱まり、内容器2の係合溝6との係合力が弱まることを防止する。また底壁18は、テーブルの上面等、カップ載置面とカップ1の底部との摩擦を大きくし、安定性を高める。
【0012】
図7ないし図10には、他の実施形態の飲食用カップ1を示す。図7は飲食用カップの断面図、図8は同飲食用カップの外容器の平面図、図9は同飲食用カップの底面図、図10は同飲食用カップの外容器の一部を切り欠いた斜視図である。図中、先の実施形態と同等の構成部分には同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0013】
この実施形態のカップ1においては、係合片15が、外容器3の側壁10の下部内側において、底壁11から立ち上がるように形成される。係合片15は、根元部15aにおいて、その背面(底壁11の半径方向外側対応面)と両側面(底壁11の円周方向対応面)の3面が、開口11aと切り込み11bに囲まれて底壁11から切り離され、かつ当該根元部15aは、良好な弾性を得るために湾曲している。また、根元部15aは、中央の開口11cにより二又に分かれている。20はリブであり、内容器2との嵌合時に、底壁11と内容器2との間に断熱空間Sを形成する。
【0014】
飲食用カップ1は、例えば、図3に示すように、その中に即席麺Nと水Wを入れ、電子レンジで加熱調理した後、取り出して、麺を他の食器のような容器に移し替えることなく食卓にのせ、食に供するように使用する。内容器2が耐熱ガラス製、外容器3が合成樹脂製で、両者ともマイクロ波低損失であり、それ自体は電子レンジで加熱されにくい。また、両者間に断熱空間Sが形成されているから、内容器2内に収容されて電子レンジで加熱された食品を熱いうちに電子レンジから取り出す際に、容器の外側が熱くなく、素手で容易に取り出すことができる。内容器2の外周の環状の係合溝6と外容器3の内周の係合片15とを弾性的に係合させる簡易な嵌合構造であるから、製造容易で安価に得られる。ガラス製内容器2の上縁部9が合成樹脂製外容器3の上端より上方へ延びているので、食に供するときにはガラス部位が口に接触することになる。このため、触感が良好で、心地よく飲食することができ、また内容器2の上縁部9に口吻が接することで、加熱された食品の熱を予め感知して、注意深く安全に飲食することができる。内容器の上縁部9が、下部に対して段部8を介して拡径したうえで、さらに上方へ延びているので、この部位で沸騰による食品の吹き上がりを吸収し、吹きこぼれを防止することができる。内容器2の上縁部9の外周面と外容器3の外周面とが平滑に連続しているので、使用感が良好であるし、凹凸がないので汚れの付着が少なく、洗浄も容易である。特に、外容器3の側壁10の外周は平滑であるから、印刷等による装飾が容易に行える。内容器2と外容器3とを分離して洗浄することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】飲食用カップの分解斜視図である。
【図2】飲食用カップの正面図である。
【図3】飲食用カップの断面図である。
【図4】飲食用カップの外容器の平面図である。
【図5】飲食用カップの外容器の底面図である。
【図6】飲食用カップの外容器の一部を切り欠いた斜視図である。
【図7】他の実施形態の飲食用カップの断面図である。
【図8】他の実施形態の飲食用カップの外容器の平面図である。
【図9】他の実施形態の飲食用カップの底面図である。
【図10】他の実施形態の飲食用カップの外容器の一部を切り欠いた斜視図である。
【符号の説明】
【0016】
1 飲食用カップ
2 内容器
3 外容器
4 側壁
5 底壁
6 係合溝
7 環状凸部
8 段部
9 上縁部
10 側壁
11 底壁
11a 開口
11b 切り込み
11c 開口
12 底受部
13 環状側壁
14 環状主体部
14a 開口
15 係合片
15a 根元部
16 リブ
17 弾性キャップ
18 底壁
18a 開口
19 締め付けリング
20 リブ
S 断熱空間
N 即席麺
W 水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱ガラス製の内容器と;この内容器の外側に断熱空間を形成して着脱自在に嵌合するように合成樹脂で一体成形された外容器とからなり;前記内容器は、上広がりのほぼ截頭円錐筒状の側壁と、円形の底壁とを有し;前記外容器は、上広がりのほぼ截頭円錐筒状の側壁と、円形の底壁と、正面視において当該側壁の下部の内側に隠蔽されるように外容器の半径方向へ弾性変位可能に形成された複数の係合片とを有し;前記内容器の側壁は、外周の下部に、前記外容器の係合片が弾性的に離脱自在に係合する環状の係合溝を具備し;前記外容器の側壁は、外周が平滑に連続することを特徴とする飲食用カップ。
【請求項2】
前記外容器の側壁の下部に、正面視において当該側壁の内側に隠蔽されるように底受部が一体に形成され;この底受部は、上縁において前記外容器の側壁の内側に接続する環状側壁と、この環状側壁の下端に接続する前記円形の底壁とを具備し;前記環状側壁は、環状の主体部と、この主体部に対して外容器の半径方向へ弾性変位可能に一体に接続する前記係合片とを具備し;この係合片が、前記外容器の側壁の内側において、前記内容器の側壁の係合溝に弾性的に係合離脱自在に構成されることを特徴とする請求項1に記載の飲食用カップ。
【請求項3】
前記係合片が、前記底受部の環状側壁の主体部に形成された開口に周縁を囲まれることによって形成されることを特徴とする請求項2に記載の飲食用カップ。
【請求項4】
前記係合片が、前記外容器の側壁の下部内側において、底壁から立ち上がるように形成されることを特徴とする請求項1に記載の飲食用カップ。
【請求項5】
前記係合片は、根元部において、その背面と両側面の3面が、開口と切り込みに囲まれて底壁から切り離され、かつ当該根元部15aは、良好な弾性を得るために湾曲していることを特徴とする請求項4に記載の飲食用カップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−278957(P2008−278957A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−123739(P2007−123739)
【出願日】平成19年5月8日(2007.5.8)
【出願人】(599090637)ハリオグラス株式会社 (10)
【出願人】(000226976)日清食品株式会社 (127)
【Fターム(参考)】