説明

養毛・育毛剤

【課題】 従来技術は、15位に2つのヘテロ原子を有するプロスタグランジン化合物を活性成分として含む育毛促進用組成物、および、15−ケト−プロスタグランジン化合物を有効成分とする発毛・育毛剤を開示している。本発明の課題は、養毛・育毛効果をさらに高めるとともに、痒み等の副作用を抑制した養毛・育毛剤を提供することにある。
【解決手段】 15位に2つのヘテロ原子を有するプロスタグランジン化合物を、リポソーム化し、これを有効成分とする養毛・育毛剤。15−ケト−プロスタグランジン化合物を、リポソーム化し、これを有効成分とする養毛・育毛剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、養毛・育毛剤に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、15位に2つのヘテロ原子を有するプロスタグランジン化合物を活性成分として含む育毛促進用組成物を開示している。
また特許文献2は、15−ケト−プロスタグランジン化合物を有効成分とする発毛・育毛剤を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2007−518685号公報
【特許文献2】特開平10−287532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、養毛・育毛効果をさらに高めるとともに、痒み等の副作用を抑制した養毛・育毛剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、15位に2つのヘテロ原子を有するプロスタグランジン化合物を、リポソーム化し、これを有効成分とする養毛・育毛剤である。
請求項2に記載の発明は、15−ケト−プロスタグランジン化合物を、リポソーム化し、これを有効成分とする養毛・育毛剤である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、、養毛・育毛効果をさらに高めるとともに、痒み等の副作用を抑制した養毛・育毛剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
まず、15位に2つのヘテロ原子を有するプロスタグランジン化合物について説明する。
なお、本明細書および特許請求の範囲において用いるPG化合物の命名に際しては、特許文献1に記載の内容に従う。以下、引用する。下記式(A)に示すプロスタン酸の番号が用いられる。
【0008】
【化1】

【0009】
前記式(A)はC−20の基本骨格のものであるが、本発明では炭素数がこれによって限定されるものではない。即ち、式(A)においてPG化合物の基本骨格を構成する炭素の番号はカルボン酸を1とし5員環に向かって順に2〜7までをα鎖上の炭素に、8〜12までを5員環の炭素に、13〜20までをω鎖上に付しているが、炭素数がα鎖上で減少する場合、2位から順次番号を抹消して命名する。炭素数がα鎖上で増加する場合、カルボキシル基(C−1)の代わりに2位において対応する置換基を有する置換化合物として命名する。同様に炭素数がω鎖上で減少する場合、20位から順次番号を抹消して命名する。また、炭素数がω鎖上で増加する場合、21番目以後の炭素原子は置換基として命名する。また、立体配置に関しては、特に断りのない限り、上記基本骨格(A)の有する立体配置に従うものとする。
【0010】
また、例えばPGD、PGE、PGFは、9位および/または11位に水酸基を有するPG化合物をいうが、本発明では、9位および/または11位の水酸基に代えて他の基を有するものも包含する。これらの化合物を命名する場合、9−デヒドロキシ−9−置換−PG化合物あるいは11−デヒドロキシ−11−置換−PG化合物の形で命名する。なお、水酸基の代わりに水素を有するPG化合物は、単に9−あるいは11−デヒドロキシ−PG化合物と称する。
【0011】
前述のように、PG化合物の命名はプロスタン酸骨格に基づいて行うが、上記化合物がプロスタグランジンと類似の部分構造を有する場合には、簡略化のため「PG」の略名を利用することがある。この場合、α鎖の骨格炭素数が2個延長されたPG化合物、すなわちα鎖の骨格炭素数が9であるPG化合物は、2−デカルボキシ−2−(2−カルボキシエチル)−PG化合物と命名する。同様に、α鎖の骨格炭素数が11であるPG化合物は、2−デカルボキシ−2−(4−カルボキシブチル)−PG化合物と命名する。また、ω鎖の骨格炭素数が2個延長されたPG化合物、すなわちω鎖の骨格炭素数が10であるPG化合物は、20−エチル−PG化合物と命名する。なお、命名はこれをIUPAC命名法に基づいて行うことも可能である。
【0012】
アナログ(置換体を含む)または誘導体の例は、上記PG類のα鎖末端のカルボキシル基がエステル化された化合物、α鎖が延長された化合物、それらの生理学的に許容し得る塩、2−3位の炭素結合が2重結合あるいは5−6位の炭素結合が3重結合を有する化合物、3位、5位、6位、16位、17位、18位、19位および/または20位の炭素に置換基を有する化合物、9位および/または11位の水酸基の代りに低級アルキル基またはヒドロキシ(低級)アルキル基を有する化合物等である。
【0013】
本発明において3位、17位、18位および/または19位の好適な置換基としては、例えば炭素数1〜4のアルキル基が挙げられ、特にメチル基、エチル基が挙げられる。16位の好適な置換基としては、メチル、エチル等の低級アルキル、ヒドロキシ、塩素、フッ素等のハロゲン原子、およびトリフルオロメチルフェノキシ等のアリールオキシが挙げられる。17位の好適な置換基としては、メチル、エチル等の低級アルキル、ヒドロキシ、塩素、フッ素等のハロゲン原子、およびトリフルオロメチルフェノキシ等のアリールオキシが挙げられる。20位の好適な置換基としては、C1−4アルキルのような飽和または不飽和の低級アルキル基、C1−4アルコキシのような低級アルコキシ基、C1−4アルコキシ−C1−4アルキルのような低級アルコキシアルキルを含む。5位の好適な置換基としては、塩素、フッ素などのハロゲン原子を含む。6位の好適な置換基としては、カルボニル基を形成するオキソ基を含む。9位および/または11位にヒドロキシ基、低級アルキルまたはヒドロキシ(低級)アルキル置換基を有する場合のPG類の立体配置はα、βまたはそれらの混合物であってもかまわない。
【0014】
さらに、上記アナログまたは誘導体は、ω鎖が天然のPG類より短い化合物のω鎖末端にアルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルキルオキシ基、フェノキシ基、フェニル基等の置換基を有する化合物であってもよい。
【0015】
本発明において用いられる好適なプロスタグランジン化合物群は、特許文献1に記載された化合物と同様である。以下、引用する。すなわち、好適なプロスタグランジン化合物は、下記式(I)で表される:
【0016】
【化2】

【0017】
[式中、L、MおよびNは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキル、低級アルカノイルオキシまたはオキソ(ここでLおよびMの少なくとも1つは水素以外の基であり、五員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい);
Aは、−CH、または−CHOH、−COCHOH、−COOHまたはそれらの官能性誘導体;
Bは、−CH−CH−、−CH=CH−または−C≡C−;
およびZは、酸素、窒素または硫黄;
およびRは置換されていてもよい低級アルキルであり、一緒につながって低級アルキレンを形成してもよい;
は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基で置換された飽和または不飽和二価低〜中級脂肪族炭化水素残基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は任意に酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい;そして、
Raは、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基で置換された飽和または不飽和の低〜中級脂肪族炭化水素残基;低級アルコキシ;低級アルカノイルオキシ;シクロ(低級)アルキル;シクロ(低級)アルキルオキシ;アリール;アリールオキシ;複素環基または複素環オキシ基]。
【0018】
本発明において用いられるより好ましいプロスタグランジン化合物は、式(II)で表される:
【0019】
【化3】

【0020】
[式中、LおよびMは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキル、低級アルカノイルオキシまたはオキソ(ただし、LおよびMの基のうちの少なくとも1つは、水素以外の基であり、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい);
Aは、−CHまたは−CHOH、−COCHOH、−COOHまたはそれらの官能性誘導体;
Bは、−CH−CH−、−CH=CH−または−C≡C−;
およびZは、酸素、窒素または硫黄;
およびRは置換されていてもよい低級アルキルであり、一緒につながって低級アルキレンを形成してもよい;,
およびXは、水素、低級アルキルまたはハロゲン;
は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環で置換された、二価の飽和または不飽和の低〜中級の脂肪族炭化水素残基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は任意に酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい;
は、単結合または低級アルキレン;そして、
は、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環または複素環オキシ基]。
【0021】
上記式中、RおよびRaの定義における「不飽和」の語は、主鎖および/または側鎖の炭素原子間の結合として、1つまたはそれ以上の二重結合および/または三重結合を孤立、分離または連続して含むことを意味する。通常の命名法に従って、連続する2つの位置間の不飽和結合は若い方の位置番号を表示することにより示し、連続しない2つの位置間の不飽和結合は両方の位置番号を表示して示す。
【0022】
「低〜中級脂肪族炭化水素」の語は、炭素原子数1〜14の直鎖または分枝鎖(ただし、側鎖は炭素原子数1〜3のものが好ましい)を有する炭化水素基を意味し、好ましくは炭素原子数1〜10、特に1〜8の炭化水素基である。
【0023】
「ハロゲン原子」の語は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を包含する。
【0024】
「低級」の語は、特にことわりのない限り炭素原子数1〜6を有する基を包含するものである。
【0025】
「低級アルキル」の語は、炭素原子数1〜6の直鎖または分枝状の飽和炭化水素基を意味し、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチルおよびヘキシルを含む。
【0026】
「低級アルキレン」の語は、炭素原子数1〜6の直鎖または分枝状の二価飽和炭化水素基を意味し、例えばメチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、t−ブチレン、ペンチレンおよびヘキシレンを含む。
【0027】
「低級アルコキシ」の語は、低級アルキルが上述と同意義である低級アルキル−O−基を意味する。
【0028】
「ヒドロキシ(低級)アルキル」の語は、少なくとも1つのヒドロキシ基で置換された上記のような低級アルキルを意味し、例えばヒドロキシメチル、1−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシエチルおよび1−メチル−1−ヒドロキシエチルが挙げられる。
【0029】
「低級アルカノイルオキシ」の語は、式RCO−O−(ここで、RCO−は上記のような低級アルキル基が酸化されて生じるアシル基、例えばアセチル)で示される基を意味する。
【0030】
「シクロ(低級)アルキル」の語は、炭素原子3個以上を含む上記のような低級アルキル基が閉環して生ずる環状基を意味し、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルを含む。
【0031】
「シクロ(低級)アルキルオキシ」の語は、シクロ(低級)アルキルが上述と同意義であるシクロ(低級)アルキル−O−基を意味する。
【0032】
「アリール」の語は、非置換または置換の芳香族炭化水素環基を包含し、(好ましくは単環式基の)、例えばフェニル、トリル、キシリルが例示される。置換基としては、ハロゲン原子、ハロ(低級)アルキル(ここで、ハロゲン原子および低級アルキルは前記の意味)が含まれる。
【0033】
「アリールオキシ」の語は、式ArO−(ここで、Arは上記のようなアリール)で示される基を意味する。
【0034】
「複素環基」の語としては、置換されていてもよい炭素原子および、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる1種または2種のヘテロ原子を1〜4個、好ましくは1〜3個含む、5〜14員環、好ましくは5〜10員環の、単環式〜3環式、好ましくは単環式の複素環基が含まれる。複素環基としては、フリル基、チエニル基、ピロリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、フラザニル基、ピラニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジル基、ピラジニル基、2−ピロリニル基、ピロリジニル基、2−イミダゾリニル基、イミダゾリジニル基、2−ピラゾリニル基、ピラゾリジニル基、ピペリジノ基、ピペラジニル基、モルホリノ基、インドリル基、ベンゾチエニル基、キノリル基、イソキノリル基、プリニル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、フェナントリジニル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズイミダゾリニル基、ベンゾチアゾリル基、フェノチアジニル基などが例示される。置換基としてはハロゲン、ハロゲン置換低級アルキル基(ここで、ハロゲン原子および低級アルキル基は前記の意味)が例示される。
【0035】
「複素環オキシ基」の語は、式HcO−(ここでHcは上記のような複素環基)で示される基を意味する。
【0036】
Aの「官能性誘導体」の語は、塩(好ましくは、医薬上許容し得る塩)、エーテル、エステルおよびアミド類を含む。
【0037】
適当な「医薬上許容し得る塩」としては、慣用される非毒性塩を含み、無機塩基との塩、例えばアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩等)、アンモニウム塩;または有機塩基との塩、例えばアミン塩(例えばメチルアミン塩、ジメチルアミン塩、シクロヘキシルアミン塩、ベンジルアミン塩、ピペリジン塩、エチレンジアミン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、トリス(ヒドロキシメチルアミノ)エタン塩、モノメチル−モノエタノールアミン塩、プロカイン塩、カフェイン塩等)、塩基性アミノ酸塩(例えばアルギニン塩、リジン塩等)、テトラアルキルアンモニウム塩等が挙げられる。これらの塩類は、例えば対応する酸および塩基から常套の反応によってまたは塩交換によって製造し得る。
【0038】
エーテルの例としてはアルキルエーテル、例えば、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、イソブチルエーテル、t−ブチルエーテル、ペンチルエーテル、1−シクロプロピルエチルエーテル等の低級アルキルエーテル;オクチルエーテル、ジエチルヘキシルエーテル、ラウリルエーテル、セチルエーテル等の中級または高級アルキルエーテル;オレイルエーテル、リノレニルエーテル等の不飽和エーテル;ビニルエーテル、アリルエーテル等の低級アルケニルエーテル;エチニルエーテル、プロピニルエーテル等の低級アルキニルエーテル;ヒドロキシエチルエーテル、ヒドロキシイソプロピルエーテル等のヒドロキシ(低級)アルキルエーテル;メトキシメチルエーテル、1−メトキシエチルエーテル等の低級アルコキシ(低級)アルキルエーテル;例えばフェニルエーテル、トシルエーテル、t−ブチルフェニルエーテル、サリチルエーテル、3,4−ジメトキシフェニルエーテル、ベンズアミドフェニルエーテル等の所望により置換されたアリールエーテル;およびベンジルエーテル、トリチルエーテル、ベンズヒドリルエーテル等のアリール(低級)アルキルエーテルが挙げられる。
【0039】
エステルとしては、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、1−シクロプロピルエチルエステル等の低級アルキルエステル;ビニルエステル、アリルエステル等の低級アルケニルエステル;エチニルエステル、プロピニルエステル等の低級アルキニルエステル;ヒドロキシエチルエステル等のヒドロキシ(低級)アルキルエステル;メトキシメチルエステル、1−メトキシエチルエステル等の低級アルコキシ(低級)アルキルエステルのような脂肪族エステル;および例えばフェニルエステル、トリルエステル、t−ブチルフェニルエステル、サリチルエステル、3,4−ジメトキシフェニルエステル、ベンズアミドフェニルエステル等の所望により置換されたアリールエステル;ベンジルエステル、トリチルエステル、ベンズヒドリルエステル等のアリール(低級)アルキルエステルが挙げられる。
【0040】
Aのアミドは、式−CONR’R’’;(式中、R’およびR’’;はそれぞれ水素、低級アルキル、アリール、アルキル−またはアリール−スルホニル、低級アルケニルおよび低級アルキニル)で示される基を意味し、例えばメチルアミド、エチルアミド、ジメチルアミド、ジエチルアミド等の低級アルキルアミド;アニリド、トルイジド等のアリールアミド;メチルスルホニルアミド、エチルスルホニルアミド、トリルスルホニルアミド等のアルキル−もしくはアリール−スルホニルアミド等が挙げられる。
【0041】
好ましいLおよびMの例は、ヒドロキシ、オキソを含み、特にMおよびLがヒドロキシであるいわゆるPGFタイプと称される5員環構造を有するものを含む。
【0042】
好ましいAは、−COOH、その医薬上許容し得る塩、エステルまたはアミドである。
【0043】
好ましいBは−CH−CH−であり、いわゆる13,14−ジヒドロタイプと称されるものである。
【0044】
好ましいXおよびXの例はフッ素であり、いわゆる16,16−ジフルオロタイプと称されるものである。
【0045】
好ましいRは、炭素原子数1〜10であり、特に好ましくは炭素原子数6〜10の炭化水素残基である。脂肪族炭化水素における少なくとも1の炭素原子は酸素、窒素または硫黄で置換されていてもよい。
【0046】
の具体例としては、例えば、次のものが挙げられる:
−CH−CH−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH=CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH=CH−、
−CH−C≡C−CH−CH−CH−、
−CH−CH−CH−CH−O−CH−、
−CH−CH=CH−CH−O−CH2−、
−CH2−C≡C−CH−O−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH=CH−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH=CH−、
−CH−C≡C−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH(CH)−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH(CH)−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH=CH−CH−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH=CH−、
−CH−C≡C−CH−CH−CH−CH−CH−、および、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH(CH)−CH−。
【0047】
好ましいRaは、1−10炭素原子、より好ましくは1−8炭素原子を有する炭化水素である。Raは1の炭素原子を有する1または2の側鎖を有していてもよい。
【0048】
好ましいZおよびZは酸素である。
【0049】
およびRは好ましくは一緒につながってC2またはC3アルキレンを形成する。
【0050】
上記式(I)および(II)における環、および、α−および/またはω−鎖の配置は、天然PG類の配置と同じであっても異なっていてもよい。しかしながら、本発明は、天然タイプの配置を有する化合物と非天然タイプの配置を有する化合物の混合物も包含する。
【0051】
本発明においては、個々の互変異性体、その混合物または光学異性体、その混合物、ラセミ体、その他の立体異性体等の異性体も、同じ目的に使用することが可能である。
【0052】
本発明において、好ましいプロスタグランジン化合物は、13,14-ジヒドロ-15,15-エチレンジオキシ-20-エチル-PGF2α イソプロピルエステル、13,14-ジヒドロ-15,15-エチレンジオキシ-17-フェニル-18,19,20-トリノール-PGF2αイソプロピルエステル、13,14-ジヒドロ-15,15-トリメチレンジオキシ-20−エチル−PGF2α イソプロピルエステル、13,14-ジヒドロ-15,15-ジメトキシ-20−エチル−PGF2α イソプロピルエステルおよび13,14-ジヒドロ-15,15-エチレンジオキシ-20−エチル−PGF2α エチルエステルである。特に、13,14-ジヒドロ-15,15-エチレンジオキシ-20-エチル-PGF2αエチルエステルが好ましく用いられる。
【0053】
次に、15−ケト−プラスタグランジン化合物について説明する。当該化合物は、公知の化合物であり、国際公開WO2005/018646号パンフレットに記載され、好ましい範囲も同様である。以下、引用する。
本発明において用いられる15−ケトPG類は15位に水酸基の代わりにオキソ基を有するあらゆるPG誘導体類であり得、13−14位に1つの2重結合を有する15−ケト−PGタイプ1化合物類、13−14位と5−6位に2つの2重結合を有する15−ケト−PGタイプ2化合物類、5−6位、13−14位、および17−18位に3つの2重結合を有する15−ケト−PGタイプ3化合物類、あるいはこれら化合物の13−14位の2重結合が単結合となった13,14−ジヒドロ−15−ケト−PG化合物類などが例示される。
置換体または誘導体の例は、上記PG化合物のα鎖末端のカルボキシル基がエステル化された化合物、生理学的に許容し得る塩、2−3位の炭素結合が2重結合あるいは5−6位の炭素結合が3重結合を有する化合物、3位、5位、6位、16位、17位、18位、19位および/または20位の炭素に置換基を有する化合物、9/11位の水酸基の代りに低級アルキル基またはヒドロキシ(低級)アルキル基を有する化合物等である。
本発明において3位、17位、18位および/または19位の炭素原子に結合する置換基としては、例えば炭素数1〜6のアルキル基があげられ、特にメチル基、エチル基があげられる。16位の炭素原子に結合する置換基としては、例えばメチル基、エチル基などの低級アルキル基、水酸基あるいは塩素、ふっ素などのハロゲン原子、トリフルオロメチルフェノキシ等のアリールオキシ基があげられる。17位の炭素原子の置換基としては、塩素、フッ素等のハロゲン原子が挙げられる。20位の炭素原子に結合する置換基としては、C1−4アルキルのような飽和または不飽和の低級アルキル基、C1−4アルコキシのような低級アルコキシ基、C1−4アルコキシ−C1−4アルキルのような低級アルコキシアルキルを含む。5位の炭素原子の置換基としては、塩素、フッ素などのハロゲン原子を含む。6位の炭素原子の置換基としては、カルボニル基を形成するオキソ基を含む。9位および11位の炭素原子にヒドロキシ基、低級アルキルまたは低級(ヒドロキシ)アルキル置換基を有する場合、これらの基の立体配置はα,βまたはそれらの混合物であってもかまわない。
さらに、上記誘導体は、ω鎖が天然のPG類より短い化合物のω鎖末端にアルコキシ基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルオキシ基、フェノキシ基、フェニル基等の置換基を有するものであってもよい。
特に好ましい化合物としては、13−14位の炭素結合が単結合となった13,14−ジヒドロ−15ケト−PG化合物、20位の炭素に低級アルキル(特にエチル)基を有する化合物(15−ケト−20−低級アルキル(特にエチル)−PG化合物)、5員環の9位および11位の炭素に水酸基を有する化合物(15−ケト−PGF化合物)があげられる。
本発明で使用される好ましい化合物は、下記式(I)によって示されるものである:
【0054】
【化4】

【0055】
[式中、L、MおよびNは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキル、低級アルカノイルオキシまたはオキソ(ただし、LおよびMの基のうちの少なくとも1つは、水素以外の基であり、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい);
Aは、−CH、−CHOH、−COCHOH、−COOHまたはそれらの官能性誘導体;
Bは、−CH−CH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH−CH−CH−、−CH=CH−CH−、−CH−CH=CH−、−C≡C−CH−または−CH−C≡C−;
Zは、
【0056】
【化5】

【0057】
(RおよびRは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシあるいはヒドロキシ(低級)アルキル、但しRおよびRが同時にヒドロキシおよび低級アルコキシとなることはない);
は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環で置換された、二価の飽和または不飽和の低〜中級の脂肪族炭化水素残基(脂肪族炭化水素の少なくとも1つの炭素原子は任意に酸素、窒素あるいは硫黄と置き換えられていてもよい);そして、
Raは、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環または複素環オキシで置換された、飽和または不飽和の低〜中級脂肪族炭化水素残基(脂肪族炭化水素の少なくとも1つの炭素原子は任意に酸素、窒素あるいは硫黄と置き換えられていてもよい);シクロ(低級)アルキル基;シクロ(低級)アルキルオキシ基;アリール基;アリールオキシ基;複素環基;複素環オキシ基]。
上記化合物のうち、特に好ましい化合物の一群としては、式(II)で表されるものである:
【0058】
【化6】

【0059】
[式中、LおよびMは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキル、低級アルカノイルオキシまたはオキソ(ただし、LおよびMの基のうちの少なくとも1つは、水素以外の基であり、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい);
Aは、−CH、−CHOH、−COCHOH、−COOHまたはそれらの官能性誘導体;
Bは、−CH−CH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH−CH−CH−、−CH=CH−CH−、−CH−CH=CH−、−C≡C−CH−または−CH−C≡C−;
Zは、
【0060】
【化7】

【0061】
(RおよびRは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシあるいはヒドロキシ(低級)アルキル、但しRおよびRが同時にヒドロキシおよび低級アルコキシとなることはない);
およびXは、水素、低級アルキルまたはハロゲン;
は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環で置換された、二価の飽和または不飽和の低〜中級の脂肪族炭化水素残基(脂肪族炭化水素の少なくとも1つの炭素原子は任意に酸素、窒素あるいは硫黄と置き換えられていてもよい);
は、単結合または低級アルキレン(低級アルキレンの少なくとも1つの炭素原子は任意に酸素、窒素あるいは硫黄と置き換えられていてもよい);そして、
は、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環または複素環オキシ]。
上記式中、RおよびRaにおける「不飽和」の語は、主鎖および/または側鎖の炭素原子間の結合として、少なくとも1つまたはそれ以上の2重結合および/または3重結合を孤立、分離または連続して含むことを意味する。通常の命名法に従って、連続する2つの位置間の不飽和は若い方の位置番号を表示することにより示し、連続しない2つの位置間の不飽和は両方の位置番号を表示して示す。
「低〜中級脂肪族炭化水素」の語は、炭素数1〜14の直鎖または分枝鎖(ただし、側鎖は炭素数1〜3のものが好ましい)を有する炭化水素を意味し、好ましくはRの場合炭素数1〜10、特に6〜10の炭化水素であり、Raの場合炭素数1〜10、特に1〜8の炭化水素である。
「ハロゲン」の語は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を包含する。
「低級」の語は、特にことわりのない限り炭素原子数1〜6を有する基を包含するものである。
「低級アルキル」の語は、炭素原子数1〜6の直鎖または分枝鎖の飽和炭化水素基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチルおよびヘキシルを含む。
「低級アルコキシ」の語は、低級アルキルが上述と同意義である低級アルキル−O−を意味する。
「ヒドロキシ(低級)アルキル」の語は、少なくとも1つのヒドロキシ基で置換された上記のような低級アルキルを意味し、例えばヒドロキシメチル、1−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシエチルおよび1−メチル−1−ヒドロキシエチルである。
「低級アルカノイルオキシ」の語は、式RCO−O−(ここで、RCO−は上記のような低級アルキルが酸化されて生じるアシル、例えばアセチル)で示される基を意味する。
「シクロ(低級)アルキル」の語は、炭素原子3個以上を含む上記のような低級アルキル基が閉環して生ずる環状基であり、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルを含む。
「シクロ(低級)アルキルオキシ」の語は、シクロ(低級)アルキルが上述と同意義であるシクロ(低級)アルキル−O−を意味する。
「アリール」の語は、非置換でも置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基を包含し、好ましくは単環性の、例えばフェニル、トリル、キシリルが例示される。置換基としては、ハロゲン、ハロゲン置換低級アルキル基(ここで、ハロゲンおよび低級アルキル基は前記の意味)が含まれる。
「アリールオキシ」の語は、式ArO−(ここで、Arは上記のようなアリール基)で示される基を意味する。
「複素環」としては、置換基を有していてももよい炭素原子および炭素原子以外に窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる1種または2種のヘテロ原子を1乃至4個、好ましくは1乃至3個含む、5乃至14員、好ましくは5乃至10員の、単環式乃至3環式、好ましくは単環式の複素環基が例示される。複素環基としては、フリル基、チエニル基、ピロリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、フラザニル基、ピラニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジル基、ピラジニル基、2−ピロリニル基、ピロリジニル基、2−イミダゾリニル基、イミダゾリジニル基、2−ピラゾリニル基、ピラゾリジニル基、ピペリジノ基、ピペラジニル基、モルホリノ基、インドリル基、ベンゾチエニル基、キノリル基、イソキノリル基、プリニル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、フェナントリジニル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズイミダゾリニル基、ベンゾチアゾリル基、フェノチアジニル基などが例示される。置換基としてはハロゲン、ハロゲン置換低級アルキル基(ここで、ハロゲンおよび低級アルキル基は前記の意味)が例示される。
「複素環オキシ」の語は、式HcO−(ここでHcは上記のような複素環基)で示される基を意味する。
Aの「官能性誘導体」の語は、塩(好ましくは、医薬上許容し得る塩)、エーテル、エステルおよびアミド類を含む。
適当な「医薬上許容し得る塩」としては、慣用される非毒性塩を含み、無機塩基との塩、例えばアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩等)、アンモニウム塩、有機塩基との塩、例えばアミン塩(例えばメチルアミン塩、ジメチルアミン塩、シクロヘキシルアミン塩、ベンジルアミン塩、ピペリジン塩、エチレンジアミン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、トリス(ヒドロキシメチルアミノ)エタン塩、モノメチル−モノエタノールアミン塩、プロカイン塩、カフェイン塩等)、塩基性アミノ酸塩(例えばアルギニン塩、リジン塩等)、テトラアルキルアンモニウム塩等が挙げられる。これらの塩類は、例えば対応する酸および塩基から常套の反応によってまたは塩交換によって製造し得る。
エーテルの例としてはアルキルエーテル、例えば、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、イソブチルエーテル、t−ブチルエーテル、ペンチルエーテル、1−シクロプロピルエチルエーテル等の低級アルキルエーテル、オクチルエーテル、ジエチルヘキシルエーテル、ラウリルエーテル、セチルエーテル等の中級または高級アルキルエーテル、オレイルエーテル、リノレニルエーテル等の不飽和エーテル、ビニルエーテル、アリルエーテル等の低級アルケニルエーテル、エチニルエーテル、プロピニルエーテル等の低級アルキニルエーテル、ヒドロキシエチルエーテル、ヒドロキシイソプロピルエーテルのようなヒドロキシ(低級)アルキルエーテル、メトキシメチルエーテル、1−メトキシエチルエーテル等の低級アルコキシ(低級)アルキルエーテル、および例えばフェニルエーテル、トシルエーテル、t−ブチルフェニルエーテル、サリチルエーテル、3,4−ジメトキシフェニルエーテル、ベンズアミドフェニルエーテル等の所望により置換されたアリールエーテル、ベンジルエーテル、トリチルエーテル、ベンズヒドリルエーテル等のアリール(低級)アルキルエーテルが挙げられる。
エステルとしては、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、1−シクロプロピルエチルエステル等の低級アルキルエステル、ビニルエステル、アリルエステル等の低級アルケニルエステル、エチニルエステル、プロピニルエステル等の低級アルキニルエステル、ヒドロキシエチルエステルのようなヒドロキシ(低級)アルキルエステル、メトキシメチルエステル、1−メトキシエチルエステル等の低級アルコキシ(低級)アルキルエステルのような脂肪族エステルおよび例えばフェニルエステル、トリルエステル、t−ブチルフェニルエステル、サリチルエステル、3,4−ジメトキシフェニルエステル、ベンズアミドフェニルエステル等の所望により置換されたアリールエステル、ベンジルエステル、トリチルエステル、ベンズヒドリルエステル等のアリール(低級)アルキルエステルが挙げられる。
Aのアミドとしては、式−CONR’R”で表される基を意味する。ここで、R’およびR”はそれぞれ水素原子、低級アルキル、アリール、アルキル−あるいはアリール−スルホニル、低級アルケニルおよび低級アルキニルであり、例えば、メチルアミド、エチルアミド、ジメチルアミド、ジエチルアミド等の低級アルキルアミド、アニリドおよびトルイジドのようなアリールアミド、メチルスルホニルアミド、エチルスルホニルアミドおよびトリルスルホニルアミド等のアルキル−もしくはアリール−スルホニルアミド等が挙げられる。
好ましいLおよびMの例は、ヒドロキシであり、いわゆるPGFタイプと称される5員環構造を有するものである。
好ましいAの例は、−COOH、その医薬上許容し得る塩、エステル、アミドである。
好ましいBの例は、−CH−CH−であり、いわゆる13,14−ジヒドロタイプと称される構造を有するものである。
好ましいXおよびXは水素およびハロゲンを含み、好ましくは両方が水素であるか、または少なくとも一方がハロゲンである。XおよびXの両方がハロゲン、特にフッ素である化合物は、いわゆる16,16−ジフルオロタイプと称される構造を有するものであり、これもまた好ましい。
好ましいRは炭素数1〜10の炭化水素であり、特に好ましくは炭素数6〜10の炭化水素である。また、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は任意に酸素、窒素あるいは硫黄と置き換えられていてもよい。
の具体例としては、例えば、次のものが挙げられる。
−CH−CH−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH=CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH=CH−、
−CH−C≡C−CH−CH−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH(CH)−CH−、
−CH−CH−CH−CH−O−CH−、
−CH−CH=CH−CH−O−CH2−、
−CH2−C≡C−CH−O−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH=CH−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH=CH−、
−CH−C≡C−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH(CH)−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH=CH−CH−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH=CH−、
−CH−C≡C−CH−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH(CH)−CH−、
など。
好ましいRaは末端がアリール基またはアリールオキシ基で置換された炭素数1〜10、好ましくは1〜8の炭化水素である。ここで、少なくとも1つの炭素原子は任意に酸素、窒素あるいは硫黄と置き換えられていてもよい。
上記式(I)および(II)中、環、αおよび/またはω鎖の配置は、天然のPG類の配置と同様かまたは異なっていてもよい。しかしながら、本発明は、天然の配置を有する化合物および非天然の配置を有する化合物の混合物も包含する。
本発明の典型的な化合物の例は、13,14−ジヒドロ−15−ケト−20−エチル−PGF化合物あるいは13,14−ジヒドロ−15−ケト−17−フェニル−18,19,20−トリノール−プロスタグランジンF化合物およびその誘導体あるいはアナログであり、あるいは13,14−ジヒドロ−17−フェニル−18,19,20−トリノール−PGF2αイソプロピルエステル、16−(3−トリフルオロメチルフェノキシ)−17,18,19,20−トリノール−PGF2αイソプロピルエステルあるいは17−フェニル−18,19,20−トリノール−PGF2αN−エチルアミドである。
本発明において、PG化合物の13,14位の炭素結合が単結合であり、15位がケト(=O)である場合、11位のヒドロキシと15位のオキソ間のヘミアセタール形成により、ケト−ヘミアセタール平衡を生ずる場合がある。
例えば、XおよびXの両方がハロゲン、特にフッ素の場合は、互変異性体として、二環式化合物が存在することが確認されている。
このような互変異性体が存在する場合、両異性体の存在比率は他の部分の構造または置換基の種類により変動し、場合によっては一方の異性体が圧倒的に存在することもあるが、本発明で用いるPG化合物はこれら両者を含むものとする。
さらに、本発明に用いられる15−ケト−PG化合物は、二環式化合物およびそのアナログまたは誘導体を含む。二環式化合物は下記式(III)で示される。
【0062】
【化8】

【0063】
[式中、Aは−CHOH、−COCHOH、−COOHまたはその官能性誘導体;
’およびX2’は水素、低級アルキル、またはハロゲン;
Yは
【0064】
【化9】

【0065】
R4’およびR5’は、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキルであり、R4’およびR5’は同時にヒドロキシおよび低級アルコキシであることはない。
は非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環で置換された、二価の飽和または不飽和の低〜中級の脂肪族炭化水素残基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1個の炭素原子は任意に酸素、窒素または硫黄と置き換えられていてもよい;
Ra’は、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環または複素環オキシで置換された、飽和または不飽和の低〜中級脂肪族炭化水素残基(脂肪族炭化水素の少なくとも1つの炭素原子は任意に酸素、窒素あるいは硫黄と置き換えられていてもよい);シクロ(低級)アルキル基;シクロ(低級)アルキルオキシ基;アリール基;アリールオキシ基;複素環基;複素環オキシ基;
’は水素、低級アルキル、シクロ(低級)アルキル、アリールまたは複素環基]。
さらに本発明に用いられる化合物は、異性体の存在の有無にかかわりなくケト型の構造式または命名法によって表わすことがあるが、これは便宜上のものであってヘミアセタール型の化合物を排除しようとするものではない。
本発明においては、個々の互変異性体、その混合物または光学異性体、その混合物、ラセミ体、その他の立体異性体等の異性体も、同じ目的に使用することが可能である。
本発明に使用する化合物のあるものは、米国特許第5073569号、米国特許第5166174号、米国特許第5221763号、米国特許第5212324号、米国特許第5739161号、米国特許第6242485号(これらの文献はいずれも引用により本願明細書に含まれる)等に記載の方法によって製造し得る。
【0066】
本発明において、リポソーム化は、公知の各手段を採用することができ、とくに制限されない。
例えば、構成成分としてはリン脂質、本発明のPG化合物および水が挙げられる。リン脂質としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、卵黄レシチン、大豆レシチン等の天然リン脂質、ジオレオイルホスファチジルコリン等の合成リン脂質、前記リン脂質の不飽和炭素鎖を水素により飽和とした水素添加リン脂質、あるいはその他大腸菌等の微生物から抽出されるリン脂質等が挙げられる。これらリン脂質は、一種または二種以上を組み合わせて用いることができる。この中で、水素添加卵黄リン脂質、水素添加大豆リン脂質、水素添加ホスファチジルコリン、水素添加ホスファチジルセリンから選ばれる一種またはニ種以上が好ましい。
また、リポソーム調製時には、界面活性剤、防腐剤、油剤、着色剤、水溶性高分子、酸類、塩類等を必要に応じて添加してもよい。
得られたリポソームの粒径は、エクストルーダー、高圧乳化機、超音波等を用いて調整可能であり、例えば1nm〜1000nm、好ましくは5nm〜500nm、さらに好ましくは10nm〜200nmである。
【0067】
本発明の養毛・育毛剤におけるプロスタグランジン化合物の量は、十分な養毛・育毛効果および副作用防止効果を提供するのに有効であり、製品の製造における困難性をもたらさない量であり得る。量は養毛・育毛剤の総重量当たり0.0001-10.0 wt% (乾燥重量)であり得、好ましくは、0.001 - 5.0 wt%である。
【0068】
本発明では、メントール誘導体を併用するのも好ましい形態である。メントール誘導体は化粧品または医薬品に用いられるいずれのメントールであってもよく、例えば、l-メントールおよびdl-メントールが挙げられる。メントール誘導体は市販されているか、または、ハッカ類(Mentha herbs)、例えばペパーミントから抽出することによって得ることが出来る。メントール誘導体は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
【0069】
本発明の養毛・育毛剤におけるメントール誘導体の量は、抗炎症、抗肌荒れ、抗フケ、抗痒み、育毛促進および/または抜け毛予防効果を提供するのに有効な量であり得る。さらに量の上限は、養毛・育毛剤が好ましくない刺激の感覚を提供せず、製品の製造における困難性をもたらさないように決定すべきである。
【0070】
本発明の養毛・育毛剤におけるメントール誘導体の量は、養毛・育毛剤の総量当たり0.001 - 5.0 wt%であり得、好ましくは、0.01 - 3.0 wt%である。
【0071】
本発明では、増粘性化合物を併用するのも好ましい形態である。増粘性化合物とは水性媒体に溶解又は分散して粘稠性を生じる高分子物質を意味する。増粘性化合物をPG化合物と配合することによって、PG化合物が有する作用効果の持続性を高め、またより増強された作用効果が発現される。好ましい増粘性化合物としては、アクリル酸ポリマー類、ポリオール類、セルロースポリマー類、多糖類およびポリラクタム類などがあげられる。具体的に用いられる増粘性化合物としては、カルボマー(carbomer)(商標カルボポール(carbopol)941、934、940、941,971、974、980、981など)、ポリカルボフィル(polycarbophil)(商標ノベオン(noveon)AA−1、CA−1、CA−2など)などのアクリル酸ポリマー類(なお、これらはカルボキシビニルポリマーという総称でも知られる。);ポリビニルアルコール、グリセリン、ポリエチレングリコールなどのポリオール類;メチルセルロース、メチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロースポリマー類;カラギーナン、ゲランガム、キサンタンガム、ローストビーンガムなどの多糖類;およびポリビニルピロリドンなどのポリラクタム類(以下、単に増粘性化合物と称する場合がある)があげられる。特に、セルロースポリマー類および多糖類が好適に用いられる。
この増粘性化合物は必要あるいは目的に応じて2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。また、必要によりこの発明に用いられる増粘性化合物とそれ以外の増粘性化合物とを併用してもよい。
増粘性化合物の濃度は、PG化合物の濃度や用いる増粘性化合物の種類や分子量などによっても異なるが、通常、養毛・育毛剤全体に対して0.001〜30w/v%程度、好ましくは0.01〜10w/v%程度で、所望の効果が期待できる組成物を得ることができる。
【0072】
本発明の養毛・育毛剤はさらに、本発明の目的を損なわない限り、従来の頭皮および/または毛髪処置用組成物に通常添加されている活性成分を含んでいてもよい。
【0073】
本発明の組成物は頭皮または毛髪に局所的に塗布または噴霧するとよい。成分の組合せにより、活性成分は有効に経皮的に吸収される。
【0074】
本発明の養毛・育毛剤の用量は、対象の年齢および性別等に応じて決定され得る。一般に、成人男性について、養毛・育毛剤は0.0001-100mg/日/kg 体重、好ましくは、0.001-10mg/日/kg 体重のプロスタグランジン化合物の量にて適用される。量は一日2-4回に分けて分割用量で与えてもよい。
【0075】
本発明の養毛・育毛剤の有効成分の合成方法は、前述のような特許文献1をはじめとする従来技術に記載され、本発明においてもこれらに記載の技術を採用し、合成することができる。
【実施例】
【0076】
以下、本発明を実施例によりさらに説明する。
特許文献1または国際公開WO2005/018646号パンフレットに記載の合成方法に従い、以下の化合物(有効成分)を合成した。
化合物 A: 13,14-ジヒドロ-15,15-エチレンジオキシ-20−エチル−PGF2α イソプロピルエステル
化合物 B: 13,14-ジヒドロ-15,15-エチレンジオキシ-17-フェニル-18,19,20-トリノール-PGF2αイソプロピルエステル
化合物 C: 13,14-ジヒドロ-15,15-トリメチレンジオキシ-20-エチル-PGF2αイソプロピルエステル
化合物 D: 13,14-ジヒドロ-15,15-ジメトキシ-20−エチル−PGF2α イソプロピルエステル
化合物 E: 13,14-ジヒドロ-15,15-エチレンジオキシ-20-エチル-PGF2αエチルエステル
化合物 F:13,14−ジヒドロ−15−ケト−20−エチル−PGF2αイソプロピルエステル
化合物 G:13,14−ジヒドロ−15−ケト−18−フェニル−19,20−ジノール−PGF2α−イソプロピルエステル
化合物 H:13,14−ジヒドロ−15−ケト−17−フェノキシ−18,19,20−トリノール−PGF2α−イソプロピルエステル
【0077】
常法に従い、下記表1に示される各成分をホモジナイザーを用いて攪拌し、粒径約200nmの、PG化合物をリポソーム化した。
【0078】
【表1】

【0079】
特許第4041451号公報に記載の実験手順に従い、本発明の有効成分の効果を検証した。
(1)マウスによる試験
C3Hマウス(8週齢、オス、平均体重35g)の背部皮膚(2cm×4cm)を電気バリカン及びシェーバーで刈り、翌日より実施例および比較例の各試料を被験部皮膚に朝夕2回、一匹当り0.2mLを二週間連用塗布した。一試料に対して動物一群10匹使用した。塗布開始22日目に各試料の被験部皮膚をビデオカメラに撮影し、画像解析装置にて毛刈り部及び発毛部の面積を測定した。養毛効果の判定は、下記に示す発毛率(%)を算出し、実施例または比較例の各群の発毛率平均値を求めて比較を行った。
発毛率(%)=(発毛部の面積)/(毛刈り部の面積)×100
【0080】
(2)ヒトによる試験
男性型脱毛症患者である被験者10名の耳上5cmの位置にて、頭髪を左右2ヶ所直径5mmの円形状に剃毛し、実施例及び比較例の各試料を左側の頭髪全体に毎日朝夕2回、約3mL塗布し、右側は何も塗布せずに、左右の比較を行った。毛成長速度の効果の判定は、試験開始後1ヶ月目に、左右の剃毛した部位の被験部毛髪20本を抜毛し、下記式で求めた値で毛成長速度を評価した。
毛成長速度=(左側毛髪20本の長さの平均)÷(右側毛髪20本の長さの平均)
【0081】
また、育毛効果、痒み防止効果、脱毛効果、ふけ防止効果の判定は、試験開始後3ヶ月目に各項に対し、右側の何も塗布していない被試部位と比較して、「産毛が剛毛化した或いは産毛が増加した」、「痒みをそれほど感じない」、「抜け毛が少なくなった」、「ふけが少なくなった」と回答した人数で示した。
【0082】
実施例1〜8および比較例1〜2
表2に示す処方の養毛・育毛剤を常法に従って作成し、前記の諸試験を実施して評価を行った。なお、本発明のPG化合物の適用量が上記表1の割合となるように処方した。その結果を併せて表2に示す。なお、比較例1〜2は、リポソーム化を行わないPG化合物を使用した例である。
【0083】
【表2】

【0084】
なお本発明品の養毛・育毛剤の長期間の使用中及び使用後においても、皮膚の状態に特に異常は認められなかった。なお、本発明の上記PG化合物をリポソーム化した場合と、本発明の範囲に含まれない他のPG化合物をリポソーム化した場合と、を比べた場合、本発明の上記PG化合物をリポソーム化した場合が、後者の場合に比べ、顕著な養毛育毛効果の改善効果を発現し、また痒み等の副作用が少ないものであった。
【0085】
実施例9(トニック)
配合量(%)
(1)95%エタノール 90.0
(2)本発明の有効成分 0.5
(3)ニコチン酸ベンジル 0.05
(4)酢酸α−DL−トコフェロール 0.5
(5)プロピレングリコール 1.0
(6)ポリエチレングリコール200 1.0
(7)香料 0.1
(8)色素 適 量
(9)精製水 残 部
【0086】
実施例10(ローション)
配合量(%)
(1)95%エタノール 80.0
(2)本発明の有効成分 0.2
(3)ニコチン酸アミド 0.5
(4)セファランチン 0.01
(5)ジプロピレングリコール 2.0
(6)リン酸二ナトリウム 0.08
(7)リン酸一カリウム 0.02
(8)L−メントール 0.3
(9)香料 0.05
(10)精製水 残 部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
15位に2つのヘテロ原子を有するプロスタグランジン化合物を、リポソーム化し、これを有効成分とする養毛・育毛剤。
【請求項2】
15−ケト−プロスタグランジン化合物を、リポソーム化し、これを有効成分とする養毛・育毛剤。

【公開番号】特開2009−84298(P2009−84298A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2009−16594(P2009−16594)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(707000691)辻堂化学株式会社 (104)
【Fターム(参考)】