説明

養毛料

【課題】べたつき、ごわつきがなく優れた養毛効果を有する養毛料の提供。
【解決手段】(a)魚由来コラーゲン 0.001〜10質量%、(b)抗炎症剤 0.0001〜5質量%を配合し、均一な皮膜を形成し、育毛の有効成分である抗炎症剤を滞留させることにより、養毛効果を高める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、養毛料に関し、更に詳しくは、魚由来コラーゲン及び抗炎症剤を配合することにより、べたつきがなく、ごわつきのない均一な皮膜を形成し、育毛の有効成分である抗炎症剤を滞留させ、過酸化脂質により生ずる脱毛の原因となる炎症を抑え、優れた養毛効果を発現する養毛料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、育毛・養毛料には、そのメカニズムや目的に応じ、血管拡張剤、血流促進剤、頭皮刺激剤、皮脂分泌抑制剤、抗炎症剤等、様々な有効成分が配合されている。しかしながら、単に、これらの有効成分を配合しただけでは、充分な養毛効果が得られない場合があった。
【0003】
また、養毛料においては、有効成分の安定性や使用感触の向上を目的として、キサンタンガム、ヒアルロン酸塩類、スクレロチウムガム、粘土鉱物、コラーゲン由来物等を配合する方法(例えば、特許文献1参照)や、発毛効果について報告のあるα,α−トレハロースと水溶性高分子とを含む水溶性混合物に育毛剤の構成成分として常用されている物質とを組み合わせる方法(例えば、特許文献2〜4参照)等が提案されていた。しかしながら、従来使用されていた水溶性高分子を配合した養毛料では、高分子特有のべたつきやごわつきを感じ、皮膜形成効果があまり期待できず、有効成分の十分な滞留性が望めない為、養毛効果が充分発現されない等の問題があった。
【0004】
一方、従来より、化粧品原料として汎用されているコラーゲンは、水分保持能やフィルム形成能を有することから、皮膚の保湿性を高め、組織の再生に有効であることが知られている。また、最近では、これまで主に使われていた牛や豚等動物由来のコラーゲンに代わるものとして、魚等に由来する海洋性コラーゲンが注目されており、そのアミノ酸組成が類似していることや、タンパクの変性温度が由来生物の生活環境に関連があり、一般に、魚等由来の海洋性コラーゲンは、動物由来のコラーゲンに比較し低いこと等の知見が得られている(例えば、非特許文献2参照)。
【非特許文献1】化粧品ハンドブック 日光ケミカルズ株式会社発行 平成8年11月1日発行 471〜488頁
【非特許文献2】フレグランスジャーナル フレグランスジャーナル社発行 1997−7 81〜85頁
【特許文献1】特開2005−53784号公報
【特許文献2】特開平10−7529号公報
【特許文献3】特開平10−279438号公報
【特許文献4】特開平10−279439号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の課題は、魚由来のコラーゲンの特性を生かし、べたつきややごわつきがなく、また、育毛の有効成分を滞留させ、優れた養毛効果を発揮する養毛料を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる事情に鑑み、本発明者は上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、魚由来コラーゲン及び抗炎症剤とを特定量配合することにより、べたつきがなく、ごわつきのない均一な皮膜を形成し、育毛の有効成分の一つである抗炎症剤を滞留させることが可能となり、優れた養毛料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、次の成分(a)、(b);
(a)魚由来コラーゲン 0.001〜10質量%、
(b)抗炎症剤 0.0001〜5質量%
を配合する養毛料を提供するものである。
そして、更には、成分(a)のタンパクの変性温度ピークが、40℃以下である養毛料を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の養毛料は、べたつきがなく、ごわつきのない均一な皮膜を形成し、育毛の有効成分である抗炎症剤を滞留させ、過酸化脂質により生ずる脱毛の原因となる炎症を抑えることができ優れた養毛効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に用いられる成分(a)の魚由来コラーゲンは、魚を起源とするコラーゲンであり、魚から得られるコラーゲンであれば、魚の種類、使用部位、調製方法等は特に限定されないが、ヒラメ、イワシ、マグロ等の硬骨魚類の皮、骨、浮き袋から常法に従って抽出されたもので、プロテアーゼ等の酵素処理を行っていないネイティブコラーゲンが好ましい。
成分(a)の魚由来コラーゲンを配合することにより、べたつきがなく、ごわつきのない均一な皮膜を形成し、育毛の有効成分である成分(b)を滞留させることができ、優れた養毛効果が得られる。
また、本発明の成分(a)の魚由来コラーゲンは、示差熱分析によるタンパクの変性温度ピークが40℃以下のものが好ましく、ヒトの体温(36℃)前後のものがより好ましい。これを養毛料に配合すると、塗布することにより体温で変性し、ごわつきのない均一で密閉力に優れた皮膜を形成する為、成分(b)の滞留をより向上させることができ、優れた養毛効果が得られる。
成分(a)の市販品としては、PANCOGEN MARINE(GATTEFOSSE社製 タンパクの変性温度ピーク:38℃)等が挙げられる。
【0009】
本発明に用いられる成分(a)の魚由来コラーゲンの配合量は、0.001〜10質量%(以下、単に「%」とする)であり、より好ましくは0.01〜5%である。この範囲であれば、塗布後の頭皮や毛髪がべたつくことなく、ごわつきのない均一で密閉力に優れた皮膜を形成し、コラーゲンに起因する着色や臭い、沈殿等の問題も生じることなく、成分(b)の抗炎症剤を滞留させることができ、成分(a)の有する組織の再生効果と併せて優れた養毛効果が得られる。
【0010】
一方、本発明に用いられる成分(b)の抗炎症剤は、頭皮における過酸化脂質による炎症が脱毛の原因の1つとして知られているが、これを鎮静することで育毛効果に対して有効に働くものである。成分(b)としては、抗炎症作用を発現するものであれば、特に限定されるものではないが、具体的には、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、メフェナム酸、フェニルブタゾン、インドメタシン、イブプロフェン、ケトプロフェン、アラントイン、グアイアズレン及びそれらの誘導体並びにそれらの塩、ε−アミノカプロン酸、酸化亜鉛、ジクロフェナクナトリウム、アロエ抽出物、シコン抽出物、サルビア抽出物、アルニカ抽出物、カミツレ抽出物、シラカバ抽出物、オトギリソウ抽出物、ユーカリ抽出物及びムクロジ抽出物などが挙げられ、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、アラントイン、グアイアズレン及びそれらの誘導体並びにそれらの塩、ε−アミノカプロン酸、シコン抽出物、アルニカ抽出物、カミツレ抽出物、ユーカリ抽出がより好ましい。
このうち、植物抽出物の場合、抽出方法についても、特に限定はなく、圧搾、溶媒抽出等、いずれのものも用いることができる。溶媒抽出の場合は、上記植物を、水、低級1価アルコール、多価アルコール、低級アルキルエステル、炭化水素、エーテル等の抽出溶媒の一種、又は二種以上用いて常法により抽出したものを用いることができる。
成分(b)の抗炎症剤は必要に応じて一種、又は二種以上用いることができる。
【0011】
本発明に用いられる成分(b)の抗炎症剤の配合量は、乾燥固形分に換算して0.0001〜5%であり、より好ましくは0.001〜3%である。この範囲であれば、成分(a)との併用により、成分(b)である抗炎症剤を滞留させ、過酸化脂質により生ずる脱毛の原因となる炎症を抑えることができ、育毛効果が十分発揮される。
【0012】
また、本発明の養毛料には、上記必須成分の他に、本発明の効果を損わない質的、量的範囲で、精製水、低級アルコール類、多価アルコール類、油脂類、界面活性剤類、美容成分、紫外線吸収剤、増粘剤、色素、防腐剤、香料等、通常化粧料に用いられるものを適宜配合することができる。
更に、一般に養毛料の薬効剤として知られる血管拡張剤、女性ホルモン剤、皮膚機能亢進剤、局所刺激剤、角質溶解剤、ビタミン剤、アミノ酸類、上記以外の植物抽出物、保湿剤等を必要に応じて配合してもよい。
【0013】
本発明の養毛料の形態の例としては、乳液、クリーム、ローション、ジェル、エアゾール等、通常養毛料として知られる種々のものが挙げられ、常法により、ヘアトニック、ヘアリキッド、ヘアローション、ヘアクリーム、ヘアミスト、ヘアスプレー等に適宜調製し用いることができる。
さらに、本発明の養毛料の使用方法としては特に制限はなく、剤型に応じ、適量を手に取り、頭皮、頭髪に塗布、塗擦、或いは噴霧させれば良いが、成分(a)の魚由来コラーゲンの特性適用時にタンパク変性して皮膜を形成し、成分(b)の滞留を高められるよう、本発明の養毛料を常温以下で保存し、髪の根元や頭皮に使用し擦り込むようにするとより効果的である。
【0014】
次に実施例を挙げて、本発明を更に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0015】
実施例1(本発明品1〜4及び比較品1〜3):ヘアローション
下記表1に示す組成のヘアローションを下記製法により調製し、(1)べたつきのなさ、(2)ごわつきのなさ、(3)養毛効果について、下記の方法により評価し、評価結果を併せて表1に示した。
【0016】
【表1】

【0017】
(製法)
A:成分(1)〜(3)及び成分(5)を均一に混合する。
B:Aに成分(4)を添加して均一に混合し、ヘアローションを得た。
【0018】
[評価方法:(1)べたつきのなさ、(2)ごわつきのなさ]
化粧品専門パネル20名に、本発明品1〜4及び比較品1〜3のヘアローションを使用してもらい、使用感、及び、均一な皮膜形成性の評価として、それぞれ、(1)べたつきのなさ、(2)ごわつきのなさについて、以下の(イ)5段階評価基準にて官能評価し、更に全パネルの評点の平均点を(ロ)4段階判定基準を用いて判断した。
(イ)5段階評価基準
(評 価) :(評点)
非常に良好 : 5点
良好 : 4点
普通 : 3点
不良 : 2点
非常に不良 : 1点
(ロ)4段階判定基準
(全パネルの評点の平均値) :(判定)
平均点4.5以上 : ◎
平均点3.5以上4.5未満 : ○
平均点2.5以上3.5未満 : △
平均点2.5以下 : ×
【0019】
[評価方法:(3)養毛効果]
養毛効果としては、非特許文献1やそれに挙げられた参考文献等を参考にし、下記方法による抜け毛の防止効果の確認を以って養毛効果の評価とした。
すなわち、パネル10名を1群とし、本発明品1〜4及び比較品1〜3のヘアローションを頭皮に塗布する使用テストを行った。
使用期間は8週間で、その間パネルに毎日洗髪させた後、本発明品1〜4及び比較例1〜3のヘアローションをそれぞれ、適量頭皮に塗布させた。使用を開始する10日前から毎日洗髪させ、1日置きに洗髪時の抜け毛の本数を数え、合計5回の測定の平均値を塗布前の抜け毛の本数とし、また、8週間使用後も、使用開始前と同様に毎日洗髪させ、1日置きに洗髪時の抜け毛の本数を数え、合計5回の測定の平均値を塗布後の抜け毛の本数とした。
塗布前の抜け毛の本数と塗布後の抜け毛の本数を比較し、この抜け毛の防止効果を、以下の(ハ)5段階評価基準にて評価し、更に全パネルの評点の平均点を(ニ)4段階判定基準を用いて判断した。
(ハ)5段階評価基準
(評 価) :(評点)
抜け毛が20本以上減少 : 5点
抜け毛が15本以上20本未満減少 : 4点
抜け毛が5本以上15本未満減少 : 3点
抜け毛が5本未満増減 : 2点
抜け毛が5本以上増加 : 1点
(ニ)4段階判定基準
(全パネルの評点の平均値) :(判定)
平均点4.5以上 : ◎
平均点3.5以上4.5未満 : ○
平均点2.5以上3.5未満 : △
平均点2.5以下 : ×
【0020】
表1の結果から明らかなように、本発明品である本発明品1〜4のヘアローションは、比較品1〜3のヘアローションと比較して、べたつきやごわつきがなく、養毛効果に優れたヘアローションであった。一方、成分(a)の魚由来コラーゲンを配合していない比較品1は、育毛の有効成分である成分(b)を滞留させることができず、成分(b)を多く配合しているにも拘らず養毛効果の劣るものであった。成分(a)の代わりに、牛由来のコラーゲンを配合した比較品2は、ごわついて皮膜の均一さに欠け、べたつきのなさ及び養毛効果にも劣るものであった。また、成分(b)の抗炎症剤を配合していない比較品3は、べたつきのなさやごわつきのなさは良好であり、成分(a)による養毛効果が若干見られたものの満足なものではなかった。
【0021】
実施例2:ヘアリキッド
(成分) (%)
1.ポリオキシプロピレンブチルエーテルリン酸(35P.O.) 9
2.ポリオキシプロピレンモノブチルエーテル(60P.O.) 10
3.トリエタノールアミン 1
4.魚由来コラーゲン(注1) 2
5.シコン抽出液(注5) 2
6.グリチルレチン酸ステアリル(注6) 0.2
7.エチルアルコール 30
8.香料 適量
9.精製水 残量
注5:シコンエキス 一丸ファルコス社製
注6:シーオーグレチノール 丸善製薬社製
【0022】
(製法)
A:成分(3)〜(6)及び成分(9)を均一に混合する。
B:成分(1)、(2)及び成分(7)、(8)を均一に混合する。
C:AにBを添加して均一に混合し、ヘアリキッドを得た。
【0023】
実施例2のヘアリキッドは、べたつきがなく、ごわつきのない均一な皮膜を形成し、養毛効果に優れたヘアリキッドであった。
【0024】
実施例3:ヘアクリーム
(成分) (%)
1.ミツロウ 1
2.流動パラフィン 50
3.ステアリン酸 3
4.セスキオレイン酸ソルビタン 2
5.モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 1.5
6.魚由来コラーゲン(注1) 2
7.カミツレ抽出液(注7) 1
8.香料 適量
9.パラオキシ安息香酸メチル 適量
10.精製水 残量
注7:カミツレ抽出液(香栄興業社製)
【0025】
(製法)
A:成分(1)〜(5)を70℃で均一に混合する。
B:成分(9)及び成分(10)の一部を70℃に加熱する。
C:BにAを添加し、乳化し冷却する。
D:成分(6)、(7)及び成分(10)の残部を均一に混合する。
E:Cに、D及び(8)を添加し、均一に混合してヘアクリームを得た。
【0026】
実施例3のヘアクリームは、べたつきがなく、ごわつきのない均一な皮膜を形成し、養毛効果に優れたヘアクリームであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)、(b);
(a)魚由来コラーゲン 0.001〜10質量%
(b)抗炎症剤 0.0001〜5質量%
を配合することを特徴とする養毛料。
【請求項2】
成分(a)のタンパクの変性温度ピークが40℃以下であることを特徴とする請求項1記載の養毛料。

【公開番号】特開2007−262004(P2007−262004A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−90157(P2006−90157)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】