説明

餌料生物増殖構成体、餌料生物増殖装置及び集魚装置

【課題】 餌料生物の集積、繁殖及び増殖を長期間促進すること。
【解決手段】 網状体を多数重ね合わせて形成した網状部9が棒状体8の周囲に巻き付けられている餌料生物増殖構成体5を複数備え、これら複数の餌料生物増殖構成体5が収容枠体11の内部の収容空間11aに設けられている。網状部9は、棒状体8に取り付けてあるので、海底等に長期間設置しても、網状体の網目で形成された微細空間の大きさや形が変わり難くすることができ、これによって、餌料生物の集積、繁殖及び増殖を長期間促進することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚類等の水産生物の餌となる餌料生物の集積、繁殖及び増殖を促進する餌料生物増殖構成体、餌料生物増殖装置及び集魚装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水産生物にとって有効な餌料生物であるヨコエビ、ワレカラ等は、その大きさがミリ単位前後又はそれ以下であり、微細かつ複雑な形状の空間を好んで集積し、繁殖し、増殖する傾向がある。このことを考慮した従来の集魚装置として、牡蠣殻を鉄枠構造体の内部に収容して海底に設置するものがある。
【0003】
しかし、この集魚装置では、地域により或いは年により、牡蠣殻や類似の貝殻が所要量発生しないことがあり、牡蠣殻等を使用できないことがある。そして、これらの貝殻は重量が大きいので、この貝殻を収容する鉄枠構造体の強度を大きくする必要があり、そのために、この鉄枠構造体のコストが嵩むという問題がある。また、餌料生物の種類に応じて、貝殻の隙間の大きさや数を調節することが難しいという問題がある。
【0004】
そこで、上記のような問題を解決するために、図12に示す餌料生物増殖装置(以下、単に「増殖装置」と言うこともある。)1が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この図12に示す増殖装置1は、図13に示す収容枠体2内に、適当な大きさに切断された魚網片3を、例えば球状及び筒状に丸めて配置したものである。この収容枠体2は、内部に収容空間2aが形成されるように、鉄製線状体4を溶接して格子状に形成したものである。この収容空間2aに適当な大きさに丸められた多数の魚網片3が収容されている。
【特許文献1】登録実用新案第3053279号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、図12に示す従来の餌料生物増殖装置1では、収容枠体2内に収容されている多数の魚網片3は、柔軟なものであるので、海底等に設置されて長い年月が経過すると、魚網片3が収容枠体2の底や隅に片寄った状態となることがある。魚網片3がこのように、収容枠体2の底や隅に片寄った状態となると、魚網片3の網目で形成される微細空間の大きさや形が変わり、このように変形した微細空間では、餌料生物の集積、繁殖、及び増殖が妨げられるという問題が生じる。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、海底等に長期間設置しても、網状体の網目で形成された微細空間の大きさや形が変わり難くすることができ、これによって、餌料生物の集積、繁殖、及び増殖を長期間促進することができる餌料生物増殖構成体、餌料生物増殖装置及び集魚装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る餌料生物増殖構成体は、網状体を重ね合わせて形成した網状部が芯部材の周囲に取り付けられていることを特徴とするものである。
【0008】
この発明に係る餌料生物増殖構成体によると、網状体を重ね合わせて形成された網状部によって、所望の大きさの多数の微細な空間を形成することができ、これら多数の微細な空間を餌料生物の繁殖の住処として提供することができる。よって、餌料生物を増殖することができる。そして、この網状部は、芯部材に取り付けられているので、海底等に長期間設置しても、網状部で形成された微細空間の大きさや形が変わり難くすることができ、これによって、餌料生物の集積、繁殖、及び増殖を長期間促進することができる。また、芯部材は、餌料生物増殖構成体を設置するときに、設置用構造体として使用することができ、設置するときに便利である。
【0009】
そして、この発明に係る餌料生物増殖構成体において、前記網状部を、略短円柱形に形成し、その中心に鉄製の前記芯部材を配置するとよい。このように、網状部を略短円柱形とすると、例えば網状体を芯部材に巻き付けることによって、網状体を簡単、かつ、しっかりと芯部材に取り付けることができる。これによって、年月の経過によって、芯部材に対する網状部の取付け位置が変動することを抑制できる。そして、芯部材を鉄製とすることによって、この鉄成分が餌料生物の繁殖を促進し、集魚の役割を果たすことができる。
【0010】
また、この発明に係る餌料生物増殖構成体において、前記芯部材を、棒状体又は鎖状体とするとよい。
【0011】
この発明に係る餌料生物増殖装置は、本発明の餌料生物増殖構成体を、収容枠体の内部に1又は2以上設けたことを特徴とするものである。
【0012】
この餌料生物増殖装置によると、例えば多数の餌料生物増殖構成体を収容枠体に収容する構成とすると、これら多数の餌料生物増殖構成体を一体として簡単に設置することができる。そして、この収容枠体によって、例えば海中の浮遊物等が餌料生物増殖構成体に接触することを防止して、この餌料生物増殖構成体が損傷することを防止できる。勿論、1つの餌料生物増殖構成体を収容枠体内に設けることによって、餌料生物増殖構成体の損傷を防止できる。
【0013】
この発明に係る集魚装置は、本発明の餌料生物増殖構成体を、鋼製枠体で形成された鋼製魚礁、コンクリート製魚礁、消波ブロック、及び防波堤のいずれかに設けたことを特徴とするものである。
【0014】
この集魚装置によると、餌料生物増殖構成体を鋼製魚礁、コンクリート製魚礁、消波ブロック、又は防波堤に設けた構成としたので、この餌料生物増殖構成体を設置するための設置用構造体を鋼製魚礁、コンクリート製魚礁等と、別個に製作したり、それらとは別の設置スペースを確保する必要がなく経済的である。そして、餌料生物増殖構成体を魚礁に設けることとすると、魚類等の水産生物の住処に餌料生物を増殖することができ、水産生物の繁殖を効率的に促進することができる。
【0015】
この発明に係る集魚装置は、本発明の餌料生物増殖構成体が立てた状態で魚礁の内部空間に配置され、前記餌料生物増殖構成体の上部が線状体を介して前記魚礁と連結し、下部がアンカーに結合していることを特徴とするものである。
【0016】
この集魚装置によると、魚礁の内部の収容空間に、餌料生物増殖構成体を立てた状態で配置しているので、この餌料生物増殖構成体の外周のいずれの側からも餌料生物がその内部に進入して生息することができる。そして、魚類等の水産生物は、この増殖構成体の外周のいずれの側からも、増殖構成体の内部やその周辺に生息する餌料生物を餌として食べることができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明に係る餌料生物増殖構成体によると、網状体を多数重ね合わせて形成した網状部を、芯部材に取り付けた構成としたので、海底等に長期間設置しても、網状体で形成された微細空間の大きさや形が変わり難くすることができ、これによって、餌料生物の集積、繁殖、及び増殖を長期間促進することができる。その結果、この餌料生物増殖構成体が設置され海域等に、魚類等の水産生物を効果的に集めたり繁殖させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る餌料生物増殖構成体、餌料生物増殖装置及び集魚装置の第1実施形態を図1〜図5を参照して説明する。図2は、餌料生物増殖構成体5を示す斜視図であり、図3は、複数本の餌料生物増殖構成体5を内部に収容する餌料生物増殖装置6を示す斜視図である。図5は、多数の餌料生物増殖装置6が設けられている集魚装置7を示す斜視図である。この集魚装置7は、例えば海底に設置されて使用されるものである。
【0019】
図2に示す餌料生物増殖構成体5は、棒状体(芯部材)8と、この棒状体8の周囲に取り付けられている網状部9とを備えている。棒状体8は、例えば長さが約1mの鉄棒である。この棒状体8は、餌料生物増殖構成体5が例えば海底に設置されて長期間経過しても、網状部9を確実に保持できる太さ及び長さに形成されている。
【0020】
図2に示す網状部9は、例えば使用済み又は未使用の魚網を適当な大きさに切り取って、略短円柱形に形成したものであり、この網状部9の中心に棒状体8が設けられている。つまり、この網状部9を製造するときは、まず、例えば図1(a)、(b)に示すように、魚網を矩形の所定の大きさに切り取って得られた網状体10を折り畳んで多数重ね合わせた状態にする。そして、図2に示すように、この折り畳まれた網状体10を棒状体8に対して、略短円柱形状となるように巻き付けて取り付ける。これによって、餌料生物増殖構成体5を製造することができる。なお、網状部9を棒状体8にしっかりと取り付けるために、例えば棒状体8の外周面に多数の突起を設けてもよいし、網状部9の外周面の適切な箇所を紐やワイヤ等で縛ってもよい。
【0021】
図3の餌料生物増殖装置6は、図2に示す餌料生物増殖構成体5を複数本用意して、これら複数本の餌料生物増殖構成体5を、収容枠体11内の収容空間11aに配置して取り付けたものである。この収容枠体11は、図4に示すように、所定長さに形成された2本の断面コ字状の縦部材12、12が、互いに間隔を隔てて平行して配置されている。この2本の縦部材12、12は、それぞれに設けられている溝部12aが互いに向かい合う向きに配置されている。また、同図に示すように、この2本の縦部材12、12の一端及び他端のそれぞれの上面及び下面は、連結板13を介して互いに連結されている。これら4つの連結板13は、2本の縦部材12、12の対応する部分に例えば溶接されて結合している。
【0022】
更に、2本の縦部材12、12と、上面側の2つの連結板13とで形成されているこの収容枠体11の上面壁部、及び2本の縦部材12、12と、下面側の2つの連結板13とで形成されているこの収容枠体11の下面壁部は、それぞれ格子状体14で形成されている。格子状体14は、多数の線材や細長い板材を使用して形成してもよいし、一体物として形成してもよい。また、それぞれの縦部材12、12、連結板13及び格子状体14は、材質が例えば鉄等の金属であるが、プラスチックとしてもよい。
【0023】
また、図3に示すように、それぞれが同一の長さの複数本の餌料生物増殖構成体5は、縦部材12、12と平行する状態で収容枠体11内部の収容空間11aに配置されている。そして、それぞれの棒状体8の一端は、例えば鉄製の結合部材15に溶接されて互いに結合し、他端は、それとは別の鉄製の結合部材15に溶接されて互いに結合している。そして、これら2本の各結合部材15、15の両端部は、2本の縦部材12、12の対応する各端部に溶接されて結合している。この2本の結合部材15、15によって、複数本の餌料生物増殖構成体5を収容枠体11の収容空間11a内に固定して取り付けている。なお、この収容枠体11は、海底等に長期間設置しても、損傷したり、形状が変化しないような鉄等の材料を使用しており、そのように設計されている。また、収容枠体11を溶接できないプラスチック等の材料を使用する場合は、溶着してもよいし、ねじ止めしてもよい。
【0024】
図5に示す集魚装置7は、鋼製の魚礁16に対して、図3に示す餌料生物増殖装置6を多数設けたものである。この鋼製の魚礁16は、鉄骨部材を溶接等により結合させて、全体として四角錐台形状に製作したものである。つまり、魚礁16は、下側矩形枠体17と、それよりも小さい上側矩形枠体18と、この上側矩形枠体18と下側矩形枠体17とを互いに連結する複数本の傾斜部材19とを備えている。そして、この魚礁16の4つの各傾斜面を形成する傾斜部材19に対して複数本の水平部材20が設けられており、この水平部材20に図3に示す餌料生物増殖装置6が多数設けられている。また、上側矩形枠体18にも複数本の水平部材20が設けられており、この水平部材20にも多数の餌料生物増殖装置6が設けられている。なお、魚礁16の各傾斜面に設けられている餌料生物増殖装置6は、それぞれの餌料生物増殖構成体5が例えば水平方向と平行する向きで設置してあるが、これに代えて、各傾斜面に2本ずつ互いに平行して設けられている傾斜部材19と平行に餌料生物増殖構成体5を設けてもよい。なお、この集魚装置7は、その横幅及び奥行きのそれぞれが例えば約6mである。
【0025】
図5に示す集魚装置7は、例えば海底に設置して使用することができる。この集魚装置7には、多数の餌料生物増殖装置6が設けられ、各餌料生物増殖装置6には、図2に示す餌料生物増殖構成体5が多数設けられている。これらの餌料生物増殖構成体5によると、網状体10を多数重ね合わせて形成した網状部9によって、所望の大きさの多数の微細な空間を形成することができ、これら多数の微細な空間をヨコエビ、ワレカラ等の餌料生物の繁殖の住処として提供することができる。よって、餌料生物を増殖することができる。そして、この網状部9は、棒状体8に取り付けられているので、海底等に長期間設置しても、網状体10で形成された微細空間の大きさや形が変わり難くすることができ、これによって、餌料生物の集積、繁殖、及び増殖を長期間促進することができる。その結果、魚類等の水産生物をこの餌料生物増殖構成体5が設置されている海域等に、効果的に集めたり繁殖させることができる。また、それぞれの棒状体8は、例えば図3に示す収容枠体11の結合部材15に結合(溶接)することができるので、多数の餌料生物増殖構成体5を収容枠体11に簡単に固定して取り付けることができる。
【0026】
また、図2に示すように、網状部9を略短円柱形に形成しているので、網状体10を棒状体8に巻き付けることによって、簡単、かつ、しっかりと棒状体8に取り付けることができる。これによって、年月の経過によって、棒状体8に対する網状部9の取付け位置が変動することを抑制できる。そして、棒状体8を鉄製とすることによって、この鉄成分が餌料生物の繁殖を促進し、集魚の役割を果たすことができる。
【0027】
更に、図3に示す餌料生物増殖装置6によると、多数の餌料生物増殖構成体5を収容枠体11に収容できるので、これら多数の餌料生物増殖構成体5を一体として簡単に、例えば図5に示す集魚装置7に設けることができる。そして、この収容枠体11によって、例えば海中の浮遊物等が餌料生物増殖構成体5に接触することを防止して、この餌料生物増殖構成体5が損傷することを防止できる。
【0028】
そして、図5に示す集魚装置7によると、多数の餌料生物増殖構成体(餌料生物増殖装置6)5を魚礁16に設けた構成としたので、多数の餌料生物増殖構成体5等を海底等に設置するための設置用構造体を魚礁16と別個に製作したり、それとは別の設置スペースを確保する必要がなく経済的である。そして、餌料生物増殖構成体5等を魚礁16に設けることによって、魚類等の水産生物の住処に餌料生物を増殖することができ、水産生物の繁殖や増殖を効率的に促進することができる。
【0029】
次に、図6を参照して、この発明に係る集魚装置の第2実施形態を説明する。図6に示す第2実施形態の集魚装置21は、図5に示す第1実施形態の集魚装置7の下部に、栗石収容枠体22を設けたものである。この栗石収容枠体22は、鉄骨部材を使用して平らな略直方体形状に形成したものである。この栗石収容枠体22内には、複数の栗石収容籠23、・・・が設けられ、それぞれの栗石収容籠23内には、多数の栗石24、・・・が配置されている。この栗石24は、栗石24の重量によって、集魚装置21を海底に安定して設置することができる。そして、多数の栗石24どうしの間には、多数の複雑な形状の隙間が形成されるので、それぞれの隙間が餌料生物や魚類の住処となり、餌料生物や魚類の繁殖を促進することができる。これ以外は、図5に示す第1実施形態の集魚装置7と同等であり、同様に作用するので、それらの説明を省略する。
【0030】
次に、図7及び図8を参照して、この発明に係る集魚装置の第3実施形態を説明する。図7に示す第3実施形態の集魚装置25は、防波堤26の側面に対して、図8(a)、(b)に示す餌料生物増殖装置6を設けたものである。この餌料生物増殖装置6は、図3に示すものであり、収容箱体27内に溶接やボルト等で固定して設けられている。収容箱体27は、正面に矩形の開口部27aが形成されており、矩形の底壁28を有し、この底壁28の上縁及び下縁に上側壁29及び下側壁30が結合し、底壁28の左縁及び右縁に左側壁31及び右側壁32が結合している。上側壁29及び下側壁30は、それぞれが斜め上方及斜め下方に傾斜して設けられている。この収容箱体27の深さは、餌料生物増殖装置6の厚みと略同一である。
【0031】
また、防波堤26の側面には、図7に示すように、収容箱体27と対応する形状の凹部33が形成されており、この凹部33に収容箱体27がアンカーボルト等で固定して取り付けられており、この収容箱体27内に餌料生物増殖装置6がボルトや溶接等で固定して取り付けられている。この餌料生物増殖装置6は、海水の水位が変動したときでも、常に水没する位置に設けられている。
【0032】
図7に示す集魚装置25によると、餌料生物増殖装置6を防波堤26に設けた構成としたので、この餌料生物増殖装置6を海底等に設置するためのスペースを確保する必要がないし、餌料生物増殖装置6を設置するための設置用構造体を防波堤26と別個に製作する必要がなく経済的である。
【0033】
次に、図9を参照して、この発明に係る集魚装置の第4実施形態を説明する。同図に示す第4実施形態の集魚装置34は、消波ブロック35の側面に対して、図2に示す餌料生物増殖構成体5を設けたものである。
【0034】
消波ブロック35は、図9に示すように、略円錐台状の4つの突起36を、所定の中心位置から4方向に放射状に突出するように設けたものである。各突起36の側面には、その突出方向と略平行して収容凹部37が形成されており、各収容凹部37に図2に示す餌料生物増殖構成体5が設けられている。各餌料生物増殖構成体5は、図9に示すように、それぞれの棒状体8の両方の各端部が、それぞれの収容凹部37内に突設されている一対の固定金具38、38に例えば溶接されて取り付けられている。同図に示す各餌料生物増殖構成体5は、消波ブロック35の表面と略一致させて配置されているが、その表面よりも内側に位置するように設けてもよい。そのようにする場合は、収容凹部37を同図のものよりも深く形成して、収容凹部37の奥側に餌料生物増殖構成体5を取り付ければよい。
【0035】
図9に示す集魚装置によると、餌料生物増殖構成体5を消波ブロック35に設けた構成としたので、この餌料生物増殖構成体5を海底等に設置するためのスペースを確保する必要がないし、餌料生物増殖構成体5を設置するための設置用構造体を消波ブロック35と別個に製作する必要がなく経済的である。
【0036】
次に、図10〜図12を参照して、この発明に係る集魚装置の第5実施形態を説明する。図10に示す第5実施形態の集魚装置39は、コンクリート製魚礁40の内部に形成されている収容空間40aに、図2に示す餌料生物増殖構成体5を例えば3本設けたものである。
【0037】
このコンクリート製魚礁40は、図12に示すように、略六角錐台形状であり、内部に収容空間40aが形成され、下面に六角形の開口部40bが形成されている。そして、上壁41及び6つの各傾斜壁42、・・・には、この魚礁40の内部の収容空間40aと外部とを連通する魚類等(水産生物)の上側通路41a及び傾斜面通路42a、・・・が形成されている。
【0038】
3本の餌料生物増殖構成体5は、図10及び図11に示すように、互いに接触した状態で、所定の大きさに切り取られた結束用網状体(魚網)43で巻かれて束ねられている。そして、鉛直方向と平行した状態で、魚礁40の内部の収容空間40aに配置されている。これら3本のそれぞれの餌料生物増殖構成体5は、各棒状体8の上端部がワイヤー44、・・・を介して固定金具45、・・・に連結しており、それぞれの固定金具45は、魚礁40の上側通路41aを形成する内壁面に埋め込まれて設けられている。そして、各棒状体8の下端部は、アンカー金具46に結合し、このアンカー金具46はコンクリート製のアンカーブロック47に埋め込まれて設けられている。このアンカーブロック47は、海底に設置される。
【0039】
図10及び図11に示す集魚装置39によると、魚礁40の内部の収容空間40aに、餌料生物増殖構成体5を立てた状態で設置しているので、この餌料生物増殖構成体5の外周のいずれの側からも餌料生物がその内部に進入して生息することができる。そして、魚類等の水産生物は、この増殖構成体5の外周のいずれの側からも、増殖構成体5の内部やその周辺に生息する餌料生物を餌として食べることができる。
【0040】
ただし、上記実施形態では、図2に示す棒状体8を例えば鉄製としたが、鉄以外の金属や、プラスチック等の材質としてもよい。そして、同図に示すように、網状部9の形状を略短円柱形としたが、これ以外の形状としてもよく、例えば断面形状が長円形としてもよい。また、1本の棒状体8に対して1つの網状部9を設けたが、2以上の網状部9を設けた構成としてもよい。更に、1つの餌料生物増殖構成体5に対して1本の棒状体8を設けたが、2本以上の棒状体8を例えば束ねて設けた構成としてもよい。
【0041】
更に、上記実施形態では、図3に示すように、収容枠体11に複数本の餌料生物増殖構成体5を設けたが、これに代えて、収容枠体11に1本の餌料生物増殖構成体5を設けた構成としてもよい。
【0042】
そして、上記実施形態では、網状部9を魚網で形成したが、魚網以外の網状のものを使用して形成してもよい。また、網状部9は、天然繊維を使用したものでもよいし、人工繊維を使用したものでもよい。
【0043】
また、上記実施形態では、網状体10を折り畳んで網状部9を形成したが、複数枚の網状体10を重ね合わせて網状部9を形成してもよいし、網状体10を折り畳まずに、棒状体8に単に巻き付けてもよい。
【0044】
更に、上記実施形態では、芯部材として棒状体8を使用したが、これに代えて、チェーン(鎖状体)等を使用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上のように、本発明に係る餌料生物増殖構成体、餌料生物増殖装置及び集魚装置は、海底等に長期間設置しても、網状体の網目で形成された微細空間の大きさや形が変わり難くすることができ、これによって、餌料生物の集積、繁殖及び増殖を長期間促進することができる優れた効果を有し、このような餌料生物増殖構成体、餌料生物増殖装置及び集魚装置等に適用するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】(a)はこの発明の第1実施形態に係る餌料生物増殖構成体の網状部の製造に使用される網状体を示す斜視図、(b)は図1(a)の網状体を折り畳んだ状体を示す斜視図である。
【図2】同第1実施形態に係る餌料生物増殖構成体を示す斜視図である。
【図3】同第1実施形態に係る餌料生物増殖装置を示す斜視図である。
【図4】図3の餌料生物増殖装置に使用される収容枠体を示す斜視図である。
【図5】同第1実施形態に係る集魚装置を示す斜視図である。
【図6】同発明の第2実施形態に係る集魚装置を示す斜視図である。
【図7】同発明の第3実施形態に係る集魚装置を示す縦断面図である。
【図8】(a)は同第3実施形態に係る集魚装置に使用される餌料生物増殖装置を示す正面図、(b)は図8(a)に示す餌料生物増殖装置のA−A断面図である。
【図9】同発明の第4実施形態に係る集魚装置を示す正面図である。
【図10】同発明の第5実施形態に係る集魚装置を示す縦断面図である。
【図11】同第5実施形態に係る集魚装置を示す横断面図である。
【図12】同第5実施形態に係る集魚装置に使用される魚礁を示す斜視図である。
【図13】従来の餌料生物増殖装置を示す斜視図である。
【図14】同従来の餌料生物増殖装置に使用される収容枠体を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
5 餌料生物増殖構成体
6 餌料生物増殖装置
7、21、25、34、39 集魚装置
8 棒状体(芯部材)
9 網状部
10 網状体
11 収容枠体
11a、40a 収容空間
12 縦部材
12a 溝部
13 連結板
14 格子状体
15 結合部材
16、40 魚礁
17 下側矩形枠体
18 上側矩形枠体
19 傾斜部材
20 水平部材
22 栗石収容枠体
23 栗石収容籠
24 栗石
26 防波堤
27 収容箱体
27a、40b 開口部
28 底壁
29 上側壁
30 下側壁
31 左側壁
32 右側壁
33 凹部
35 消波ブロック
36 突起
37 収容凹部
38、45 固定金具
41 上壁
41a 上側通路
42 傾斜壁
42a 傾斜面通路
43 結束用網状体
44 ワイヤー
46 アンカー金具
47 アンカーブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
網状体を重ね合わせて形成した網状部が芯部材の周囲に取り付けられていることを特徴とする餌料生物増殖構成体。
【請求項2】
前記網状部は、略短円柱形に形成され、その中心に鉄製の前記芯部材を配置したことを特徴とする請求項1記載の餌料生物増殖構成体。
【請求項3】
前記芯部材は、棒状体又は鎖状体であることを特徴とする請求項1又は2記載の餌料生物増殖構成体。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の1又は2以上の餌料生物増殖構成体を、収容枠体の内部に設けたことを特徴とする餌料生物増殖装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかに記載の餌料生物増殖構成体を、鋼製枠体で形成された鋼製魚礁、コンクリート製魚礁、消波ブロック、及び防波堤のいずれかに設けたことを特徴とする集魚装置。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれかに記載の餌料生物増殖構成体が立てた状態で魚礁の内部空間に配置され、前記餌料生物増殖構成体の上部が線状体を介して前記魚礁と連結し、下部がアンカーに結合していることを特徴とする集魚装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−345721(P2006−345721A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−172534(P2005−172534)
【出願日】平成17年6月13日(2005.6.13)
【出願人】(592137953)丸一建設株式会社 (5)
【Fターム(参考)】