香粧品用添加剤、並びに、それを含有する香粧品及び固形石鹸
【課題】緑色に着色可能な天然素材を用いた香粧品用添加剤、並びに、それを含有する香粧品及び固形石鹸を提供する。
【解決手段】有効成分として、ラン科シンビジウム属の植物の粉末を含有することを特徴とする香粧品用添加剤であり、ラン科シンビジウム属の植物としては、グレートフラワー・マリーローランサンが自然な緑色に着色できるとともに、起泡効果も優れており、好ましい。香粧品用添加剤の配合量は0.1〜30重量%、好ましくは0.1〜20重量%、さらに好ましくは0.1〜5重量%である。
【解決手段】有効成分として、ラン科シンビジウム属の植物の粉末を含有することを特徴とする香粧品用添加剤であり、ラン科シンビジウム属の植物としては、グレートフラワー・マリーローランサンが自然な緑色に着色できるとともに、起泡効果も優れており、好ましい。香粧品用添加剤の配合量は0.1〜30重量%、好ましくは0.1〜20重量%、さらに好ましくは0.1〜5重量%である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑色に着色可能な香粧品用添加剤、並びに、それを含有する香粧品及び固形石鹸に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自然志向の高まりから、石鹸等の香粧品の着色料には、合成着色料よりも天然素材からなる着色料の使用が好まれている。緑色の着色を施す場合、考えられる天然素材としては緑茶があるが、緑茶の粉末を混ぜて製造した固形石鹸は、製造当初から褐色が混じっており、きれいな緑色を発色させることができなかった(例えば、特許文献1参照)。したがって、従来、きれいな緑色に着色するには人工の合成着色料を使用することが多かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−1700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記に鑑み、褐色の混ざりの少ない緑色に着色可能な天然素材を用いた香粧品用添加剤、並びに、それを含有する香粧品及び固形石鹸の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記目的を達成するため鋭意研究の結果、有効成分として、ラン科シンビジウム属の植物の粉末を含有することを特徴とする香粧品用添加剤が、褐色の混ざりの少ない自然な緑色の着色を施すことができるとの知見を得、本発明を完成するに至ったものである。
【0006】
また、有効成分として、ラン科シンビジウム属の植物の粉末を含有する香粧品用添加剤は、高い起泡効果を有することが分かった。したがって、身体や口腔等の洗浄剤に好適であり、これに使用すると泡立ちが良くなる。泡立ちの良さは洗浄効果と比例するため、その洗浄効果を向上させることができる。なお、「起泡効果」とは、泡を生じさせる現象のことである。
【0007】
シンビジウム属植物は主にアジアの温帯から熱帯地域に分布自生するラン科の単子葉植物であり、特徴的な偽球茎を有し、その種類は約70種ある。またシンビジウム属植物は品種改良が行われ、種苗法のもとに品種登録されたものが多数存在する。自生種も含めて代表的なものは春蘭(cym.goeringii)、寒蘭(cym.kanran)、ホウサイラン、(cym.sinense)スルガラン(cym.ensifolium)、キンリョウヘン(cym.pumilum)、グレートフラワー・マリーローランサン(Cym.Great Flower ‘Marylaurencin’)、ローズワイン・新世紀(Cym Rose Wine‘Shinseiki’ ) グレートフラワー・バレリーナ(Cym. Great Flower‘Ballerina’)、ラッキーフラワー・あんみつ姫(Cym. Lucky Flower ‘Anmitsuhime’)グレートキャティ・まりこ(Cym. GreatKaty ‘ Mariko’)、ラッキーグロリア・あぐり(Cym. Lucky Gloria ‘Aguri’)ラッキーグロリア・福の神(Cym. Lucky Gloria ‘Fukunokami’)、シーサイド・サーヤ(Seaside‘Saya’)、サテンドール・ゴールデンイエロー(Cym. Satin Doll ‘Golden Yellow’)、グレートキャティ・リトルローランサン(Cym.Great Katy ‘Little Laurencin‘)、アンジェリコ・福娘(Angelico ‘Fukumusume’)等が知られている。自生種の中には、中国、東南アジア、オーストラリアなどで、薬用、食用として、用いられるものもある。また、出願人は多くのシンビジウム属植物を交配しており、シンビジウム属植物として、MK2330−7、MK2558−2M、K2573−1(いずれも出願人が付している品種番号)等のその他多くの新種を開発している。
【0008】
このように、ラン科シンビジウム属の植物としては極めて多数存在し、限定されるものではないが、中でも、種苗法による品種登録名、グレートフラワー・マリーローランサン(品種登録第2841号)が、特に自然な緑色に着色できると共に、起泡効果に優れるため好ましい。
【0009】
ラン科シンビジウム属の植物の粉末は、原料としてラン科シンビジウム属植物のどの部位を使用したものでもよく、ラン科シンビジウム属の植物の根、花茎、葉、花、種子及び偽球茎の一部若しくは複数、または全草を、そのまま又または適当な大きさに切断若しくは粉砕したものを使用することができるが、緑色の着色性に優れている葉を含んでいるのが好ましい。また、時期としては、葉が十分に成長している成熟期又は休眠期のラン科シンビジウム属の植物を使用するのが好ましい。
【0010】
粉末の大きさは、限定されるものではないが、粉末の平均粒子径は1mm以下、より好ましくは100μm以下とするのがよく、さらには粉末の粒子径が0.5〜80μmの分布となるように微細に粉砕するのがよい。粉末の平均粒子径が1mmよりも大きい場合、他の材料と混合しにくく、使用感にざらつきが生じる。なお、本発明において、「平均粒子径」とは、レーザー回折式粒度分布測定法で測定した体積基準の累積分布曲線の50%に相当する粒子径である。
【0011】
ラン科シンビジウム属の植物を粉末にする手段については、公知の方法であれば特に限定されないが、摩砕、粉砕、篩を使用した分級、サイクロン、遠心分離機を用いた遠心分離等が挙げられ、それらは単独で使用しても、2種以上を組み合わせた方法でもよい。また、その処理は、乾式粉砕、湿式粉砕及び/又は凍結粉砕でもよい。
【0012】
磨砕方法としては限定されるものではないが、ポータブルミキサー、立体ミキサー、側面ミキサーなどの一方向回転式、多軸回転式、往復反転式、上下移動式、回転+上下移動式、管路式等の攪拌翼を使用する摩砕方法、ラインミキサー等の噴流式攪拌摩砕方法、高剪断ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー等を使用する摩砕方法、ニーダーを使用した回転押し出し式の摩砕方法、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、ビーズミル等の圧密と剪断を組み合わせた摩砕方法等が挙げられ、これらを単独、または複数を組み合わせてもよい。
【0013】
粉砕方法としては限定されるものではないが、例えば、スクリーンミル、ハンマーミル等のスクリーン式粉砕方法、フラッシュミル等の翼回転剪断スクリーン式粉砕方法、ジェットミル等の気流式粉砕方法、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、ビーズミル等の圧密と剪断を組み合わせた粉砕方法、翼攪拌式粉砕方法等が挙げられ、これらを単独、または複数を組み合わせてもよい。
【0014】
また、粉末の配合量は、乾燥質量を基準として、0.1〜30重量%の範囲で配合すれば緑色の着色効果と起泡効果を得られ、また、固形石鹸とした場合に固形化できる。また、固形石鹸とした場合に十分な固さを得る観点からは、0.1〜20重量%の範囲で配合すれば、ある程度の衝撃に耐え得る固さとなるので好ましい。また、十分な起泡効果を得ながら、かつ材料費のコストダウンを図る観点からは、0.1〜5重量%の範囲で配合すればよい。ラン科シンビジウム属植物の粉末の含有量が0.1重量%より少ない場合、好ましい緑色の着色効果及び起泡効果が得られず、また30重量%を越えて配合するのはその他の材料と均一に混合しにくく、そのような多量の粉末を配合するのは技術的にも困難であると共に、固形石鹸とした場合に形が崩れやすい。
【0015】
本発明の香粧品用添加剤の形態は制限されるものではなく、ラン科シンビジウム属植物の粉末そのものでもよいが、例えば、顆粒状、ペースト状等の他の形態としてもよい。また、本香粧品用添加剤には、ラン科シンビジウム属の植物の粉末以外に、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、他の成分を添加してもよい。
【0016】
本発明の香粧品用添加剤は、緑色の着色効果を得る目的で香粧品に配合することができる。また、起泡効果を上げる目的で身体や口腔の洗浄剤等の香粧品に配合することができる。
【0017】
また、香粧品とは、香料製品と化粧品の総称であり、身体洗浄剤、口腔剤、入浴剤、化粧品等の人体に適用する一連の製品を意味する。身体洗浄剤としては、例えば固形石鹸、液体石鹸、洗顔料、シャンプー、ボディーソープ等を挙げることができる。口腔剤としては、例えば練り歯磨き、洗口液等を挙げることができる。香粧品を調整する場合には、通常の香粧品原料として使用されているものを適宜配合して製造することができる。化粧品としては、例えば化粧水、化粧クリーム、乳液、ファンデーション、おしろい、口紅、整髪料、ヘトニック、ヘアリンス、発毛・育毛剤、ヘアカラー等を挙げることができる。
【0018】
本香粧品には、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、保湿剤、界面活性剤、香料、酵素類、ホルモン類、ビタミン類、紫外線吸収剤、紫外線遮蔽剤、溶剤、安定剤、可塑剤、滑沢剤、可溶化剤、還元剤、緩衝剤、甘味剤、基剤、揮散補助剤、吸着剤、矯味剤、共力剤、結合剤、懸濁剤、抗酸化剤、光沢化剤、コーティング剤、湿潤剤、清涼化剤、軟化剤、乳化剤、賦形剤、防腐剤、保存剤などを通常の方法にしたがって添加して用いることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、有効成分として、ラン科シンビジウム属の植物の粉末を含有することにより、自然な緑色の着色を施すことができる天然物のみに由来した香粧品用添加剤とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】試験例1において、固形石鹸製造直後における試験スタート時のサンプル1〜3、7〜9の状態を示す写真である。
【図2】図1の1週間後の各サンプルの状態を示す写真である。
【図3】図1の2週間後の各サンプルの状態を示す写真である。
【図4】図1の3週間後の各サンプルの状態を示す写真である。
【図5】図1の4週間後の各サンプルの状態を示す写真である。
【図6】試験例1において、5週間後のサンプル3の状態を示す写真であって、(a)は縦断面図、(b)は側面図である。
【図7】試験例1において、固形石鹸製造直後における試験スタート時のサンプル4〜6の状態を示す写真である。
【図8】図2の1週間後の各サンプルの状態を示す写真である。
【図9】図2の2週間後の各サンプルの状態を示す写真である。
【図10】図2の3週間後の各サンプルの状態を示す写真である。
【図11】試験例3において、サンプル3の泡の状態を示す写真であって、(a)は泡立て直後、(b)は15分後、(c)は30分後、(d)は1時間後の状態を示す。
【図12】試験例3において、サンプル2の泡の状態を示す写真であって、(a)は泡立て直後、(b)は15分後、(c)は30分後、(d)は1時間後の状態を示す。
【図13】試験例3において、サンプル1の泡の状態を示す写真であって、(a)は泡立て直後、(b)は15分後、(c)は30分後、(d)は1時間後の状態を示す。
【図14】試験例3において、サンプル10の泡の状態を示す写真であって、(a)は泡立て直後、(b)は15分後、(c)は30分後、(d)は1時間後の状態を示す。
【図15】非加熱圧縮製法によって製造した固形石鹸であって、(a)は配合量が20重量%、(b)は25重量%、(c)は30重量%のものを示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明者は、自然な緑色を発色することのできる天然自然物について鋭意検討した。その結果、ラン科シンビジウム属の植物の粉末を含有させた場合に、褐色の混じりの少ない自然な緑色を発色することができることを見出した。また、ラン科シンビジウム属の植物の粉末を含有させた場合に起泡効果も有することが分かり、これを身体や口腔の洗浄剤に含有させることにより、泡立ちが良くなり、洗浄効果を増すことができることも分かった。このように、ラン科シンビジウム属の植物の粉末は、香粧品に用いることができる。
【0022】
本実施形態においては、香粧品の例として固形石鹸を詳しく説明するが、本発明は固形石鹸に限定されるものではなく、その他の香粧品に適用可能であることはもちろんである。
【0023】
本発明の固形石鹸は、公知の加工法により製造することができる。例えば、練り物の固形石鹸は、石鹸素地に、ラン科シンビジウム属植物の粉末と、必要に応じてその他の任意の成分を適宜添加して所定温度条件下で混合・攪拌した後、公知の加工法に従って各種の形態に成型することにより製造される。従来の植物の粉末の場合、混合し難く、その混合量は1〜1.5重量%が限界であったが、ラン科シンビジウム属植物の粉末の場合は、それよりもはるかに多い8重量%を混合させることができた。
【0024】
また、さらに多量のラン科シンビジウム属植物の粉末を混合させる方法として、非加熱圧縮製法を用いることができる。すなわち、ニートソープ(石鹸素地)を乾燥させてチップ状にしたものをミキサーに入れ、ラン科シンビジウム属植物の粉末及びその他の成分を添加して攪拌・混合する。この混合物を圧縮成型機にて様々な型、重さに成型することにより、圧縮型の固形石鹸が製造される。この方法によると、固形石鹸中にラン科シンビジウム属植物の粉末を30重量%以上でも含有させることができる。包装は、真空包装機にて真空包装するのが好ましい。
【0025】
なお、ラン科シンビジウム属植物の粉末の配合量は、0.1重量%以上の範囲で配合すれば緑色の着色効果と起泡効果を得ることができ、また、30重量%以下とすれば、固形石鹸とした場合に固形化できる。また、十分な固さの固形石鹸を得る観点からは、0.1〜20重量%の範囲で配合するのが好ましい。また、十分な起泡効果を得ながら、かつ材料費のコストダウンを図る観点からは、0.1〜5重量%の範囲で配合すればよい。
【0026】
石鹸素地としては、油脂及び/又は脂肪酸をアルカリ金属水酸化物により鹸化又は中和することにより製造される脂肪酸のアルカリ金属塩(アルカリ石鹸)、アニオン性界面活性剤からなる中性石鹸、酸性石鹸が挙げられる。
【0027】
油脂としては、牛脂を始めとする獣脂を用いることもできるが、植物由来の天然油脂又は脂肪酸を用いるのが好ましい。植物由来の天然油脂及び/又は脂肪酸としては、パーム油、パーム核油、ヤシ油、オリーブ油、椿油、カポック油、糠油、トウモロコシ油、胡麻油、サフラワー油、大豆油、トール油、ナタネ油、綿実油、落花生油、ヒマワリ油、ブドウ種子油等が挙げられる。
【0028】
アルカリ金属塩としては、主にナトリウム塩、カリウム塩が挙げられ、ナトリウム塩が好ましい。また、アニオン性界面活性剤としては、ヤシ油脂肪酸エチルエステルスルホン酸ナトリウムやN-ラウロイル-L-グルタミン酸ナトリウムが挙げられる。
【0029】
また、本発明の固形石鹸は、石鹸素地以外に、固形石鹸に通常用いられる成分を本発明の効果を損なわない範囲において任意で添加することができる。例えば、グリセリン等の保湿剤、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類、プロピレングリコール、ソルビトール、ショ糖等のポリオール類、アニオン、両性、ノニオン等の界面活性剤、スクワラン、スクワレン、流動パラフィン、ラノリン誘導体、脂肪酸、高級アルコール等の過脂肪剤、タルク、マイカ、セリサイト、炭等の体質顔料、アロエエキス、チャエキス、カミツレエキス等の植物エキス類、パール化剤、香料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、殺菌剤、抗炎症剤、ビタミン類などを配合することができる。
【実施例】
【0030】
<各ラン科シンビジウム属植物の粉末の調整>
シンビジウム属植物のグレートフラワー・マリーローランサン(品種登録第2841号)、シンビジウム属植物の社内品種No.MK2330−7、シンビジウム属植物の社内品種No.2558−2、シンビジウム属植物の社内品種No.2573−1について、それぞれ休眠期における植物の葉を洗浄処理し、スライス装置で細切れに切断した後、殺菌処理を施し、約40〜50℃の温度の乾燥風で乾燥させたものを、粉砕機にて約1〜80μmの微粉末に粉砕することにより、各植物の粉砕物を得た。
【0031】
<処方例:固形石鹸>
固形石鹸の処方例について説明する。サンプル1〜3は粉末としてシンビジウム属植物のグレートフラワー・マリーローランサン(品種登録第2841号)の葉を用い、サンプル4は粉末としてシンビジウム属植物の社内品種No.MK2330−7の葉を用い、サンプル5は粉末としてシンビジウム属植物の社内品種No.2558−2の葉を用い、サンプル6は粉末としてシンビジウム属植物の社内品種No.2573−1の葉を用いて固形石鹸を製造するが、それぞれのサンプルの組成は表1に示すとおりである。また、比較例として、サンプル7は粉末として緑茶粉末を用い、サンプル8はタマフィリン(銅クロロフィル)を用い、サンプル9は合成着色料(緑色401号および黄色203号)を用いて、表1に示す組成で調整した。
【0032】
なお、保湿剤としては、限定されるものではないが、ハチミツ、ポリグルタミン酸、PCAナトリウム、シロキクラゲ多糖体、コメヌカスフィンゴ糖脂質、コラーゲンが挙げられ、これらを単独又は組み合わせて用いることができる。
【0033】
また、保油剤とは、石鹸による洗浄性を調整し、皮膚の油分をキープするために配合する成分であり、限定されるものではないが、シア脂、オリーブ油が挙げられ、これらを単独又は組み合わせて用いることができる。
【0034】
また、その他のエキスとは、皮膚に保湿を与える成分であり、限定されるものではないが、紅藻エキス、アロエエキス、ソウハクヒエキス、ダイズエキス、ニンジンエキス、酵母エキス、ローヤルゼリーエキスが挙げられ、これらを単独又は組み合わせて用いることができる。
【0035】
次に、各固形石鹸の製造方法について説明する。混合植物脂肪酸と苛性ソーダの連続中和によりニートソープ(石鹸素地)を作る。なお、混合植物脂肪酸は、パーム油、パーム核油を主成分とする脂肪酸である。次に、ニートソープを真空乾燥機で乾燥させ、チップ状にする。石鹸素地のチップをミキサーに入れ、各粉末、植物エキス、保湿剤、保油剤を添加し、混合する。この混合物をリファイナ―で練りつぶし、真空押し出し機で棒状にする。これを型打ち機で様々な型、重さに成型することにより、固形石鹸が製造される。
【0036】
【表1】
【0037】
以下、サンプル1〜10それぞれの効果を確認するため、以下の試験を行った。
【0038】
<試験例1>
上記のようにして製造された各固形石鹸(サンプル1〜9)を、室温(25℃)、高温下(45℃)、または日光曝露下(固形石鹸の上部:曝露、固形石鹸の下部:アルミホイルで覆って遮光)に置き、その外観の経過を観察した。
【0039】
なお、高温下(45℃)は、加速劣化試験の条件であり、固形石鹸を過酷な条件(45℃)の下において劣化を促進させるため、長期間に起こる劣化が短期間に進むとみなすことができる。この場合、室温に比べて、約3倍の速さで劣化が進むと考えられる。
【0040】
図1〜図5は、サンプル1〜3、7〜9の経時変化を示す写真である。また、図1のスタート時とは、固形石鹸の製造直後のことである。図1〜5に示すように、時間が経過すると表面の色は全てのサンプルで褪せてくるが、サンプル1〜3はスタート時から4週間たっても緑色を保ち、褐色がかることはなかった。サンプル7はスタート時から既に褐色を帯びており、最後まで褐色のままだった。
【0041】
また、図6(a)に示すように、サンプル3の内部の色は濃い色を保っており、図1のスタート時のものとほとんど変わりがなかった。つまり、石鹸を使用していくと、内部の濃い色の部分が徐々に表面に表れてくるため、使用時における外観は常に濃い緑色の状態となることが期待できる。
【0042】
また、サンプル8及び9の合成着色料による緑色の発色と比べて、本発明のサンプル1〜3は人工的でないより自然な緑色を発色することができた。
【0043】
また、図7〜図10は、グレートフラワー・マリーローランサン以外のラン科シンビジウム属の植物(サンプル4〜6)について、その経時変化を示す写真である。これによると、グレートフラワー・マリーローランサン以外の品種においても、ラン科シンビジウム属植物の固形石鹸は、濃い色ではあるが褐色がかっていない緑色を発色できることがわかった。そして、時間が経過しても色が若干褪せるだけで、褐色がかった色とはならないことが分かった。
【0044】
以上の結果から明らかなとおり、ラン科シンビジウム属の植物の粉末を含有する処方例では、自然な緑色を発色することができることが確認された。なお、粉末の配合量が多くなるに従い濃い色合いを呈するので、鮮やかな緑色から濃緑色ないし黒に近い色まで色合いの調整が可能である。なお、段落0024の非加熱圧縮製法によって製造した場合、配合量が、20重量%、25重量%、30重量%と比較的多いにも拘わらず、図15に示す通り、薄い緑色を呈した固形石鹸が得られているので、製法と配合量の組合せによって色合いには相違が表れるといえる。
【0045】
<試験例2>
次に、30代から50代の女性5名を被験者として、上記処方例で調整した固形石鹸を使用した場合のその使用感を調査した。アンケートは5段階評価で行い、ラン科シンビジウム属植物の葉の粉末を含有していないサンプル10を基準の「3」とし、それと比較したサンプル1〜3の使用感を評価してもらった。なお、試験方法は、通常の洗顔方法で石鹸を泡立てて洗顔するように指示した。また、各モニターには、サンプル1〜3及び10についてそれぞれ2〜3日間ずつ使用してもらった。その評価を表2に示す。
【0046】
【表2】
【0047】
「泡立ち」については、ラン科シンビジウム属植物の葉の粉末を含有していないサンプル10と比べて、ラン科シンビジウム属植物の葉の粉末を含有しているサンプル1〜3の方が泡立ちが良くなっていることが分かる。特に、ラン科シンビジウム属植物の葉の粉末の配合量の高いサンプル2及び3で評価が高く、最も配合量の高いサンプル3はきめ細かな密度のある泡で、クリーミーでまるで生クリームを顔に乗せているかのような肌触りで、いつまでも肌にのせていたくなる泡になったとの感想であった。また、サンプル1のようにラン科シンビジウム属植物の葉の粉末の含有量が低いサンプルでも、サンプル10と比べて短時間で泡が立ち始めた。
【0048】
「泡の弾力」については、サンプル1とサンプル10ではあまり差がでなかったが、サンプル2及び3では顔に乗せても消えることのない、弾力のある泡になった。
【0049】
「泡切れ」については、サンプル10と比べて、サンプル1〜3の各石鹸とも泡切れが良く、さっぱりと泡を洗い流すことができた。
【0050】
「汚れ落ち」については、サンプル10と比べてサンプル2及び3で評価が上がった。ただ、使用する回数が少ないため、長期間にわたって使用すれば、効果の違いはより顕著になるものと思われる。
【0051】
「潤い」については、ラン科シンビジウム属植物の粉末の配合が高くなるにしたがい、評価も高くなっている。乾燥肌の人でも潤いを感じられるようだった。
【0052】
以上のとおり、本発明の香粧品によると、サンプル1〜3はサンプル10と比較して評価が高く、特にラン科シンビジウム属植物の葉の粉末の配合量が5%のサンプル3が優れた使用感を示すことが分かった。ラン科シンビジウム属植物にはサポニンが含まれていることが分かっており、このサポニンの作用により泡立ちがよく、泡の質の向上につながっているものと思われる。
【0053】
また、クレンジングを使用せずとも、サンプル1〜3の使用により、メイクを落とすことができたとの感想があった。特にサンプル1〜3で、2度洗いした場合には厚めのメイクでもきれいに落とすことができた。ラン科シンビジウム属の植物は、繊維の強度が他の植物に比べて飛躍的に強いため、ラン科シンビジウム属植物の粉末が摩擦効果を奏し、化粧や汚れをきれいに落とすことができたと考えられる。
【0054】
<試験例3>
次に、泡の持続性テストを行った。試験方法は、サンプル1〜3及び10について、手で各サンプルの固形石鹸を泡立て、その泡を台の上において経時変化をみた。
【0055】
泡立て直後の泡は、ラン科シンビジウム属植物の葉の粉末を含有していないサンプル10と比べて、ラン科シンビジウム属植物の葉の粉末を含有しているサンプル1〜3の方が泡立ちが良く、特に、最も配合量の高いサンプル3はきめ細かな密度のある泡であった。そして、時間が経過するにつれて、泡の角が消えて丸くなっていくが、サンプル3では最後まで角がしっかりたっていた。また、写真では分かりにくいが、ラン科シンビジウム属植物の葉の粉末を含有しているサンプル1〜3、特にサンプル3では泡の色も淡い緑色が付いており、見た目もきれいであった。
【0056】
以上のとおり、最も配合量の高いサンプル3による泡はしっかりとしていて、劣化が少ないことがわかった。
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑色に着色可能な香粧品用添加剤、並びに、それを含有する香粧品及び固形石鹸に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自然志向の高まりから、石鹸等の香粧品の着色料には、合成着色料よりも天然素材からなる着色料の使用が好まれている。緑色の着色を施す場合、考えられる天然素材としては緑茶があるが、緑茶の粉末を混ぜて製造した固形石鹸は、製造当初から褐色が混じっており、きれいな緑色を発色させることができなかった(例えば、特許文献1参照)。したがって、従来、きれいな緑色に着色するには人工の合成着色料を使用することが多かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−1700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記に鑑み、褐色の混ざりの少ない緑色に着色可能な天然素材を用いた香粧品用添加剤、並びに、それを含有する香粧品及び固形石鹸の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記目的を達成するため鋭意研究の結果、有効成分として、ラン科シンビジウム属の植物の粉末を含有することを特徴とする香粧品用添加剤が、褐色の混ざりの少ない自然な緑色の着色を施すことができるとの知見を得、本発明を完成するに至ったものである。
【0006】
また、有効成分として、ラン科シンビジウム属の植物の粉末を含有する香粧品用添加剤は、高い起泡効果を有することが分かった。したがって、身体や口腔等の洗浄剤に好適であり、これに使用すると泡立ちが良くなる。泡立ちの良さは洗浄効果と比例するため、その洗浄効果を向上させることができる。なお、「起泡効果」とは、泡を生じさせる現象のことである。
【0007】
シンビジウム属植物は主にアジアの温帯から熱帯地域に分布自生するラン科の単子葉植物であり、特徴的な偽球茎を有し、その種類は約70種ある。またシンビジウム属植物は品種改良が行われ、種苗法のもとに品種登録されたものが多数存在する。自生種も含めて代表的なものは春蘭(cym.goeringii)、寒蘭(cym.kanran)、ホウサイラン、(cym.sinense)スルガラン(cym.ensifolium)、キンリョウヘン(cym.pumilum)、グレートフラワー・マリーローランサン(Cym.Great Flower ‘Marylaurencin’)、ローズワイン・新世紀(Cym Rose Wine‘Shinseiki’ ) グレートフラワー・バレリーナ(Cym. Great Flower‘Ballerina’)、ラッキーフラワー・あんみつ姫(Cym. Lucky Flower ‘Anmitsuhime’)グレートキャティ・まりこ(Cym. GreatKaty ‘ Mariko’)、ラッキーグロリア・あぐり(Cym. Lucky Gloria ‘Aguri’)ラッキーグロリア・福の神(Cym. Lucky Gloria ‘Fukunokami’)、シーサイド・サーヤ(Seaside‘Saya’)、サテンドール・ゴールデンイエロー(Cym. Satin Doll ‘Golden Yellow’)、グレートキャティ・リトルローランサン(Cym.Great Katy ‘Little Laurencin‘)、アンジェリコ・福娘(Angelico ‘Fukumusume’)等が知られている。自生種の中には、中国、東南アジア、オーストラリアなどで、薬用、食用として、用いられるものもある。また、出願人は多くのシンビジウム属植物を交配しており、シンビジウム属植物として、MK2330−7、MK2558−2M、K2573−1(いずれも出願人が付している品種番号)等のその他多くの新種を開発している。
【0008】
このように、ラン科シンビジウム属の植物としては極めて多数存在し、限定されるものではないが、中でも、種苗法による品種登録名、グレートフラワー・マリーローランサン(品種登録第2841号)が、特に自然な緑色に着色できると共に、起泡効果に優れるため好ましい。
【0009】
ラン科シンビジウム属の植物の粉末は、原料としてラン科シンビジウム属植物のどの部位を使用したものでもよく、ラン科シンビジウム属の植物の根、花茎、葉、花、種子及び偽球茎の一部若しくは複数、または全草を、そのまま又または適当な大きさに切断若しくは粉砕したものを使用することができるが、緑色の着色性に優れている葉を含んでいるのが好ましい。また、時期としては、葉が十分に成長している成熟期又は休眠期のラン科シンビジウム属の植物を使用するのが好ましい。
【0010】
粉末の大きさは、限定されるものではないが、粉末の平均粒子径は1mm以下、より好ましくは100μm以下とするのがよく、さらには粉末の粒子径が0.5〜80μmの分布となるように微細に粉砕するのがよい。粉末の平均粒子径が1mmよりも大きい場合、他の材料と混合しにくく、使用感にざらつきが生じる。なお、本発明において、「平均粒子径」とは、レーザー回折式粒度分布測定法で測定した体積基準の累積分布曲線の50%に相当する粒子径である。
【0011】
ラン科シンビジウム属の植物を粉末にする手段については、公知の方法であれば特に限定されないが、摩砕、粉砕、篩を使用した分級、サイクロン、遠心分離機を用いた遠心分離等が挙げられ、それらは単独で使用しても、2種以上を組み合わせた方法でもよい。また、その処理は、乾式粉砕、湿式粉砕及び/又は凍結粉砕でもよい。
【0012】
磨砕方法としては限定されるものではないが、ポータブルミキサー、立体ミキサー、側面ミキサーなどの一方向回転式、多軸回転式、往復反転式、上下移動式、回転+上下移動式、管路式等の攪拌翼を使用する摩砕方法、ラインミキサー等の噴流式攪拌摩砕方法、高剪断ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー等を使用する摩砕方法、ニーダーを使用した回転押し出し式の摩砕方法、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、ビーズミル等の圧密と剪断を組み合わせた摩砕方法等が挙げられ、これらを単独、または複数を組み合わせてもよい。
【0013】
粉砕方法としては限定されるものではないが、例えば、スクリーンミル、ハンマーミル等のスクリーン式粉砕方法、フラッシュミル等の翼回転剪断スクリーン式粉砕方法、ジェットミル等の気流式粉砕方法、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、ビーズミル等の圧密と剪断を組み合わせた粉砕方法、翼攪拌式粉砕方法等が挙げられ、これらを単独、または複数を組み合わせてもよい。
【0014】
また、粉末の配合量は、乾燥質量を基準として、0.1〜30重量%の範囲で配合すれば緑色の着色効果と起泡効果を得られ、また、固形石鹸とした場合に固形化できる。また、固形石鹸とした場合に十分な固さを得る観点からは、0.1〜20重量%の範囲で配合すれば、ある程度の衝撃に耐え得る固さとなるので好ましい。また、十分な起泡効果を得ながら、かつ材料費のコストダウンを図る観点からは、0.1〜5重量%の範囲で配合すればよい。ラン科シンビジウム属植物の粉末の含有量が0.1重量%より少ない場合、好ましい緑色の着色効果及び起泡効果が得られず、また30重量%を越えて配合するのはその他の材料と均一に混合しにくく、そのような多量の粉末を配合するのは技術的にも困難であると共に、固形石鹸とした場合に形が崩れやすい。
【0015】
本発明の香粧品用添加剤の形態は制限されるものではなく、ラン科シンビジウム属植物の粉末そのものでもよいが、例えば、顆粒状、ペースト状等の他の形態としてもよい。また、本香粧品用添加剤には、ラン科シンビジウム属の植物の粉末以外に、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、他の成分を添加してもよい。
【0016】
本発明の香粧品用添加剤は、緑色の着色効果を得る目的で香粧品に配合することができる。また、起泡効果を上げる目的で身体や口腔の洗浄剤等の香粧品に配合することができる。
【0017】
また、香粧品とは、香料製品と化粧品の総称であり、身体洗浄剤、口腔剤、入浴剤、化粧品等の人体に適用する一連の製品を意味する。身体洗浄剤としては、例えば固形石鹸、液体石鹸、洗顔料、シャンプー、ボディーソープ等を挙げることができる。口腔剤としては、例えば練り歯磨き、洗口液等を挙げることができる。香粧品を調整する場合には、通常の香粧品原料として使用されているものを適宜配合して製造することができる。化粧品としては、例えば化粧水、化粧クリーム、乳液、ファンデーション、おしろい、口紅、整髪料、ヘトニック、ヘアリンス、発毛・育毛剤、ヘアカラー等を挙げることができる。
【0018】
本香粧品には、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、保湿剤、界面活性剤、香料、酵素類、ホルモン類、ビタミン類、紫外線吸収剤、紫外線遮蔽剤、溶剤、安定剤、可塑剤、滑沢剤、可溶化剤、還元剤、緩衝剤、甘味剤、基剤、揮散補助剤、吸着剤、矯味剤、共力剤、結合剤、懸濁剤、抗酸化剤、光沢化剤、コーティング剤、湿潤剤、清涼化剤、軟化剤、乳化剤、賦形剤、防腐剤、保存剤などを通常の方法にしたがって添加して用いることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、有効成分として、ラン科シンビジウム属の植物の粉末を含有することにより、自然な緑色の着色を施すことができる天然物のみに由来した香粧品用添加剤とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】試験例1において、固形石鹸製造直後における試験スタート時のサンプル1〜3、7〜9の状態を示す写真である。
【図2】図1の1週間後の各サンプルの状態を示す写真である。
【図3】図1の2週間後の各サンプルの状態を示す写真である。
【図4】図1の3週間後の各サンプルの状態を示す写真である。
【図5】図1の4週間後の各サンプルの状態を示す写真である。
【図6】試験例1において、5週間後のサンプル3の状態を示す写真であって、(a)は縦断面図、(b)は側面図である。
【図7】試験例1において、固形石鹸製造直後における試験スタート時のサンプル4〜6の状態を示す写真である。
【図8】図2の1週間後の各サンプルの状態を示す写真である。
【図9】図2の2週間後の各サンプルの状態を示す写真である。
【図10】図2の3週間後の各サンプルの状態を示す写真である。
【図11】試験例3において、サンプル3の泡の状態を示す写真であって、(a)は泡立て直後、(b)は15分後、(c)は30分後、(d)は1時間後の状態を示す。
【図12】試験例3において、サンプル2の泡の状態を示す写真であって、(a)は泡立て直後、(b)は15分後、(c)は30分後、(d)は1時間後の状態を示す。
【図13】試験例3において、サンプル1の泡の状態を示す写真であって、(a)は泡立て直後、(b)は15分後、(c)は30分後、(d)は1時間後の状態を示す。
【図14】試験例3において、サンプル10の泡の状態を示す写真であって、(a)は泡立て直後、(b)は15分後、(c)は30分後、(d)は1時間後の状態を示す。
【図15】非加熱圧縮製法によって製造した固形石鹸であって、(a)は配合量が20重量%、(b)は25重量%、(c)は30重量%のものを示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明者は、自然な緑色を発色することのできる天然自然物について鋭意検討した。その結果、ラン科シンビジウム属の植物の粉末を含有させた場合に、褐色の混じりの少ない自然な緑色を発色することができることを見出した。また、ラン科シンビジウム属の植物の粉末を含有させた場合に起泡効果も有することが分かり、これを身体や口腔の洗浄剤に含有させることにより、泡立ちが良くなり、洗浄効果を増すことができることも分かった。このように、ラン科シンビジウム属の植物の粉末は、香粧品に用いることができる。
【0022】
本実施形態においては、香粧品の例として固形石鹸を詳しく説明するが、本発明は固形石鹸に限定されるものではなく、その他の香粧品に適用可能であることはもちろんである。
【0023】
本発明の固形石鹸は、公知の加工法により製造することができる。例えば、練り物の固形石鹸は、石鹸素地に、ラン科シンビジウム属植物の粉末と、必要に応じてその他の任意の成分を適宜添加して所定温度条件下で混合・攪拌した後、公知の加工法に従って各種の形態に成型することにより製造される。従来の植物の粉末の場合、混合し難く、その混合量は1〜1.5重量%が限界であったが、ラン科シンビジウム属植物の粉末の場合は、それよりもはるかに多い8重量%を混合させることができた。
【0024】
また、さらに多量のラン科シンビジウム属植物の粉末を混合させる方法として、非加熱圧縮製法を用いることができる。すなわち、ニートソープ(石鹸素地)を乾燥させてチップ状にしたものをミキサーに入れ、ラン科シンビジウム属植物の粉末及びその他の成分を添加して攪拌・混合する。この混合物を圧縮成型機にて様々な型、重さに成型することにより、圧縮型の固形石鹸が製造される。この方法によると、固形石鹸中にラン科シンビジウム属植物の粉末を30重量%以上でも含有させることができる。包装は、真空包装機にて真空包装するのが好ましい。
【0025】
なお、ラン科シンビジウム属植物の粉末の配合量は、0.1重量%以上の範囲で配合すれば緑色の着色効果と起泡効果を得ることができ、また、30重量%以下とすれば、固形石鹸とした場合に固形化できる。また、十分な固さの固形石鹸を得る観点からは、0.1〜20重量%の範囲で配合するのが好ましい。また、十分な起泡効果を得ながら、かつ材料費のコストダウンを図る観点からは、0.1〜5重量%の範囲で配合すればよい。
【0026】
石鹸素地としては、油脂及び/又は脂肪酸をアルカリ金属水酸化物により鹸化又は中和することにより製造される脂肪酸のアルカリ金属塩(アルカリ石鹸)、アニオン性界面活性剤からなる中性石鹸、酸性石鹸が挙げられる。
【0027】
油脂としては、牛脂を始めとする獣脂を用いることもできるが、植物由来の天然油脂又は脂肪酸を用いるのが好ましい。植物由来の天然油脂及び/又は脂肪酸としては、パーム油、パーム核油、ヤシ油、オリーブ油、椿油、カポック油、糠油、トウモロコシ油、胡麻油、サフラワー油、大豆油、トール油、ナタネ油、綿実油、落花生油、ヒマワリ油、ブドウ種子油等が挙げられる。
【0028】
アルカリ金属塩としては、主にナトリウム塩、カリウム塩が挙げられ、ナトリウム塩が好ましい。また、アニオン性界面活性剤としては、ヤシ油脂肪酸エチルエステルスルホン酸ナトリウムやN-ラウロイル-L-グルタミン酸ナトリウムが挙げられる。
【0029】
また、本発明の固形石鹸は、石鹸素地以外に、固形石鹸に通常用いられる成分を本発明の効果を損なわない範囲において任意で添加することができる。例えば、グリセリン等の保湿剤、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類、プロピレングリコール、ソルビトール、ショ糖等のポリオール類、アニオン、両性、ノニオン等の界面活性剤、スクワラン、スクワレン、流動パラフィン、ラノリン誘導体、脂肪酸、高級アルコール等の過脂肪剤、タルク、マイカ、セリサイト、炭等の体質顔料、アロエエキス、チャエキス、カミツレエキス等の植物エキス類、パール化剤、香料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、殺菌剤、抗炎症剤、ビタミン類などを配合することができる。
【実施例】
【0030】
<各ラン科シンビジウム属植物の粉末の調整>
シンビジウム属植物のグレートフラワー・マリーローランサン(品種登録第2841号)、シンビジウム属植物の社内品種No.MK2330−7、シンビジウム属植物の社内品種No.2558−2、シンビジウム属植物の社内品種No.2573−1について、それぞれ休眠期における植物の葉を洗浄処理し、スライス装置で細切れに切断した後、殺菌処理を施し、約40〜50℃の温度の乾燥風で乾燥させたものを、粉砕機にて約1〜80μmの微粉末に粉砕することにより、各植物の粉砕物を得た。
【0031】
<処方例:固形石鹸>
固形石鹸の処方例について説明する。サンプル1〜3は粉末としてシンビジウム属植物のグレートフラワー・マリーローランサン(品種登録第2841号)の葉を用い、サンプル4は粉末としてシンビジウム属植物の社内品種No.MK2330−7の葉を用い、サンプル5は粉末としてシンビジウム属植物の社内品種No.2558−2の葉を用い、サンプル6は粉末としてシンビジウム属植物の社内品種No.2573−1の葉を用いて固形石鹸を製造するが、それぞれのサンプルの組成は表1に示すとおりである。また、比較例として、サンプル7は粉末として緑茶粉末を用い、サンプル8はタマフィリン(銅クロロフィル)を用い、サンプル9は合成着色料(緑色401号および黄色203号)を用いて、表1に示す組成で調整した。
【0032】
なお、保湿剤としては、限定されるものではないが、ハチミツ、ポリグルタミン酸、PCAナトリウム、シロキクラゲ多糖体、コメヌカスフィンゴ糖脂質、コラーゲンが挙げられ、これらを単独又は組み合わせて用いることができる。
【0033】
また、保油剤とは、石鹸による洗浄性を調整し、皮膚の油分をキープするために配合する成分であり、限定されるものではないが、シア脂、オリーブ油が挙げられ、これらを単独又は組み合わせて用いることができる。
【0034】
また、その他のエキスとは、皮膚に保湿を与える成分であり、限定されるものではないが、紅藻エキス、アロエエキス、ソウハクヒエキス、ダイズエキス、ニンジンエキス、酵母エキス、ローヤルゼリーエキスが挙げられ、これらを単独又は組み合わせて用いることができる。
【0035】
次に、各固形石鹸の製造方法について説明する。混合植物脂肪酸と苛性ソーダの連続中和によりニートソープ(石鹸素地)を作る。なお、混合植物脂肪酸は、パーム油、パーム核油を主成分とする脂肪酸である。次に、ニートソープを真空乾燥機で乾燥させ、チップ状にする。石鹸素地のチップをミキサーに入れ、各粉末、植物エキス、保湿剤、保油剤を添加し、混合する。この混合物をリファイナ―で練りつぶし、真空押し出し機で棒状にする。これを型打ち機で様々な型、重さに成型することにより、固形石鹸が製造される。
【0036】
【表1】
【0037】
以下、サンプル1〜10それぞれの効果を確認するため、以下の試験を行った。
【0038】
<試験例1>
上記のようにして製造された各固形石鹸(サンプル1〜9)を、室温(25℃)、高温下(45℃)、または日光曝露下(固形石鹸の上部:曝露、固形石鹸の下部:アルミホイルで覆って遮光)に置き、その外観の経過を観察した。
【0039】
なお、高温下(45℃)は、加速劣化試験の条件であり、固形石鹸を過酷な条件(45℃)の下において劣化を促進させるため、長期間に起こる劣化が短期間に進むとみなすことができる。この場合、室温に比べて、約3倍の速さで劣化が進むと考えられる。
【0040】
図1〜図5は、サンプル1〜3、7〜9の経時変化を示す写真である。また、図1のスタート時とは、固形石鹸の製造直後のことである。図1〜5に示すように、時間が経過すると表面の色は全てのサンプルで褪せてくるが、サンプル1〜3はスタート時から4週間たっても緑色を保ち、褐色がかることはなかった。サンプル7はスタート時から既に褐色を帯びており、最後まで褐色のままだった。
【0041】
また、図6(a)に示すように、サンプル3の内部の色は濃い色を保っており、図1のスタート時のものとほとんど変わりがなかった。つまり、石鹸を使用していくと、内部の濃い色の部分が徐々に表面に表れてくるため、使用時における外観は常に濃い緑色の状態となることが期待できる。
【0042】
また、サンプル8及び9の合成着色料による緑色の発色と比べて、本発明のサンプル1〜3は人工的でないより自然な緑色を発色することができた。
【0043】
また、図7〜図10は、グレートフラワー・マリーローランサン以外のラン科シンビジウム属の植物(サンプル4〜6)について、その経時変化を示す写真である。これによると、グレートフラワー・マリーローランサン以外の品種においても、ラン科シンビジウム属植物の固形石鹸は、濃い色ではあるが褐色がかっていない緑色を発色できることがわかった。そして、時間が経過しても色が若干褪せるだけで、褐色がかった色とはならないことが分かった。
【0044】
以上の結果から明らかなとおり、ラン科シンビジウム属の植物の粉末を含有する処方例では、自然な緑色を発色することができることが確認された。なお、粉末の配合量が多くなるに従い濃い色合いを呈するので、鮮やかな緑色から濃緑色ないし黒に近い色まで色合いの調整が可能である。なお、段落0024の非加熱圧縮製法によって製造した場合、配合量が、20重量%、25重量%、30重量%と比較的多いにも拘わらず、図15に示す通り、薄い緑色を呈した固形石鹸が得られているので、製法と配合量の組合せによって色合いには相違が表れるといえる。
【0045】
<試験例2>
次に、30代から50代の女性5名を被験者として、上記処方例で調整した固形石鹸を使用した場合のその使用感を調査した。アンケートは5段階評価で行い、ラン科シンビジウム属植物の葉の粉末を含有していないサンプル10を基準の「3」とし、それと比較したサンプル1〜3の使用感を評価してもらった。なお、試験方法は、通常の洗顔方法で石鹸を泡立てて洗顔するように指示した。また、各モニターには、サンプル1〜3及び10についてそれぞれ2〜3日間ずつ使用してもらった。その評価を表2に示す。
【0046】
【表2】
【0047】
「泡立ち」については、ラン科シンビジウム属植物の葉の粉末を含有していないサンプル10と比べて、ラン科シンビジウム属植物の葉の粉末を含有しているサンプル1〜3の方が泡立ちが良くなっていることが分かる。特に、ラン科シンビジウム属植物の葉の粉末の配合量の高いサンプル2及び3で評価が高く、最も配合量の高いサンプル3はきめ細かな密度のある泡で、クリーミーでまるで生クリームを顔に乗せているかのような肌触りで、いつまでも肌にのせていたくなる泡になったとの感想であった。また、サンプル1のようにラン科シンビジウム属植物の葉の粉末の含有量が低いサンプルでも、サンプル10と比べて短時間で泡が立ち始めた。
【0048】
「泡の弾力」については、サンプル1とサンプル10ではあまり差がでなかったが、サンプル2及び3では顔に乗せても消えることのない、弾力のある泡になった。
【0049】
「泡切れ」については、サンプル10と比べて、サンプル1〜3の各石鹸とも泡切れが良く、さっぱりと泡を洗い流すことができた。
【0050】
「汚れ落ち」については、サンプル10と比べてサンプル2及び3で評価が上がった。ただ、使用する回数が少ないため、長期間にわたって使用すれば、効果の違いはより顕著になるものと思われる。
【0051】
「潤い」については、ラン科シンビジウム属植物の粉末の配合が高くなるにしたがい、評価も高くなっている。乾燥肌の人でも潤いを感じられるようだった。
【0052】
以上のとおり、本発明の香粧品によると、サンプル1〜3はサンプル10と比較して評価が高く、特にラン科シンビジウム属植物の葉の粉末の配合量が5%のサンプル3が優れた使用感を示すことが分かった。ラン科シンビジウム属植物にはサポニンが含まれていることが分かっており、このサポニンの作用により泡立ちがよく、泡の質の向上につながっているものと思われる。
【0053】
また、クレンジングを使用せずとも、サンプル1〜3の使用により、メイクを落とすことができたとの感想があった。特にサンプル1〜3で、2度洗いした場合には厚めのメイクでもきれいに落とすことができた。ラン科シンビジウム属の植物は、繊維の強度が他の植物に比べて飛躍的に強いため、ラン科シンビジウム属植物の粉末が摩擦効果を奏し、化粧や汚れをきれいに落とすことができたと考えられる。
【0054】
<試験例3>
次に、泡の持続性テストを行った。試験方法は、サンプル1〜3及び10について、手で各サンプルの固形石鹸を泡立て、その泡を台の上において経時変化をみた。
【0055】
泡立て直後の泡は、ラン科シンビジウム属植物の葉の粉末を含有していないサンプル10と比べて、ラン科シンビジウム属植物の葉の粉末を含有しているサンプル1〜3の方が泡立ちが良く、特に、最も配合量の高いサンプル3はきめ細かな密度のある泡であった。そして、時間が経過するにつれて、泡の角が消えて丸くなっていくが、サンプル3では最後まで角がしっかりたっていた。また、写真では分かりにくいが、ラン科シンビジウム属植物の葉の粉末を含有しているサンプル1〜3、特にサンプル3では泡の色も淡い緑色が付いており、見た目もきれいであった。
【0056】
以上のとおり、最も配合量の高いサンプル3による泡はしっかりとしていて、劣化が少ないことがわかった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分として、ラン科シンビジウム属の植物の粉末を含有することを特徴とする香粧品用添加剤。
【請求項2】
緑色の着色効果を有することを特徴とする請求項1に記載の香粧品用添加剤。
【請求項3】
起泡効果を有することを特徴とする請求項1に記載の香粧品用添加剤。
【請求項4】
前記ラン科シンビジウム属の植物が、グレートフラワー・マリーローランサンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の香粧品用添加剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の香粧品用添加剤を含有することを特徴とする香粧品。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の香粧品用添加剤を含有することを特徴とする固形石鹸。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載の香粧品用添加剤を0.1〜30重量%含有することを特徴とする固形石鹸。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれかに記載の香粧品用添加剤を0.1〜20重量%含有することを特徴とする固形石鹸。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれかに記載の香粧品用添加剤を0.1〜5重量%含有することを特徴とする固形石鹸。
【請求項1】
有効成分として、ラン科シンビジウム属の植物の粉末を含有することを特徴とする香粧品用添加剤。
【請求項2】
緑色の着色効果を有することを特徴とする請求項1に記載の香粧品用添加剤。
【請求項3】
起泡効果を有することを特徴とする請求項1に記載の香粧品用添加剤。
【請求項4】
前記ラン科シンビジウム属の植物が、グレートフラワー・マリーローランサンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の香粧品用添加剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の香粧品用添加剤を含有することを特徴とする香粧品。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の香粧品用添加剤を含有することを特徴とする固形石鹸。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載の香粧品用添加剤を0.1〜30重量%含有することを特徴とする固形石鹸。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれかに記載の香粧品用添加剤を0.1〜20重量%含有することを特徴とする固形石鹸。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれかに記載の香粧品用添加剤を0.1〜5重量%含有することを特徴とする固形石鹸。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−162509(P2012−162509A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26251(P2011−26251)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(593129216)株式会社河野メリクロン (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(593129216)株式会社河野メリクロン (3)
【Fターム(参考)】
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