説明

駆動伝達機構およびこれを備えた画像形成装置

【課題】駆動軸と被駆動軸の偏芯,偏角を許容することができる駆動伝達機構と、この駆動伝達機構を備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】カラー複写機1の感光体ドラム12Yを回転させるための駆動伝達機構は、駆動軸70と、被駆動軸80と、第1,第2カップリング部材50,60を有する。第1カップリング部材50は、一径方向に凸部51を有し、突起長手方向と直交する方向に首振り動作できる自由度をもって駆動軸70に装着される。第2カップリング部材60は、凸部51と嵌合する凹部61を有し、溝長手方向に首振り動作できる自由度をもって被駆動軸80に装着される。第1,第2カップリング部材50,60は、径方向の一方向への首振りと、該一方向と直交する径方向への接触面の滑りとによって、駆動軸70と被駆動軸80との偏芯,偏角に起因する被駆動軸80の回転速度変動を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動軸と被駆動軸を同軸上に接離可能に配置し、一対のカップリング部材を介して該駆動軸の回転駆動力を該被駆動軸に伝達するための駆動伝達機構と、この駆動伝達機構を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高画質化が図られている今日のレーザプリンタやデジタル複写機において、感光体ドラムの回転速度変動が画質に与える影響は大きく、そのため感光体ドラムを回転させるための駆動連結部の構造は、複写機の構造設計における重要な要素となっている。
【0003】
具体的には、4連タンデム方式と呼ばれるカラー複写機等においては、感光体ドラムの回転軸とこれを回転させる駆動軸との偏芯,偏角から発生する,感光体ドラムの1回転当たりの回転速度変動は、印刷用紙に色ずれとなって現れるために大きな問題となる。
【0004】
従来、感光体ドラムの回転軸と駆動軸との偏芯や偏角を少なくする方法としては、駆動軸を感光体ドラムに嵌合して位置決めする方法が知られているが、この方法は位置決め調整が極めて困難であるという問題がある。また、正確に位置決めがされたとしても、複写機等は多くの駆動部品を備えているためにこれによって生ずる振動等により経時的に位置ずれが発生することは容易に予想され、困難な位置決め作業が繰り返し必要になるという問題がある。
【0005】
また、駆動軸と被駆動軸とを連結して駆動力を伝達するカップリング機構としては、オルダムカップリングが知られているが、これは偏芯を許容(吸収)することはできても、偏角を許容することができないため、駆動軸と被駆動軸の平行度の精度を上げる必要がある。
【0006】
そこで、偏芯,偏角を同時に許容するカップリング構造として、駆動軸と被駆動軸のどちらか一方に、半径方向とスラスト方向に自由度(ガタ)を持ってカップリングを装着する駆動伝達装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。 しかしながら、一方の軸だけが偏芯,偏角に応答するために、カップリングにおいてこの軸を保持する部分に大きな負荷が掛かり、カップリングの変形や破損が引き起こされるおそれがある。また、例えば、このカップリングを感光体ドラムを回転するために用いた場合においては、感光体ドラムを清掃,交換のために装置本体から引き出す際および逆に感光体ドラムを装置本体に装着する際のカップリングにおける駆動軸と感光体ドラムの回転軸との連結作業性はあまり良いものではない。
【特許文献1】特開2002−48148号公報(請求項1、図1〜図4、段落(0026)〜(0028))
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、駆動軸と被駆動軸とを接離容易なカップリングを介して連結させ、しかも一定の偏芯,偏角を許容することができる駆動伝達機構と、この駆動伝達機構を備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1によれば、駆動軸と、該駆動軸の回転により回転する被駆動軸と、該駆動軸の回転駆動力を該被駆動軸に伝達するために該駆動軸と該被駆動軸にそれぞれ取り付けられる一対のカップリング部材とを有する駆動伝達機構であって、前記一対のカップリング部材は、径方向の一方向への首振りと、該一方向と直交する径方向への接触面の滑りとによって、前記駆動軸と前記被駆動軸との偏芯と偏角に起因する前記被駆動軸の回転速度変動を抑制することを特徴とする駆動伝達機構、が提供される。
【0009】
本発明の請求項2によれば、駆動軸と、該駆動軸の回転により回転する被駆動軸と、該駆動軸の回転駆動力を該被駆動軸に伝達するために該駆動軸および該被駆動軸にそれぞれ取り付けられる第1カップリング部材および第2カップリング部材とを有する駆動伝達機構であって、前記第1カップリング部材は、径方向の一方向に設けられた一定幅の凸部と、前記駆動軸を挿通させるための第1挿通孔とを有し、前記第2カップリング部材は、該凸部と嵌合する凹部と、前記被駆動軸を挿通させるための第2挿通孔とを有し、前記第1カップリング部材は、前記凸部の突起長手方向と直交する径方向に首振りするように該径方向に自由度をもって前記駆動軸に装着され、かつ、前記第2カップリング部材は、前記凹部の溝長手方向と直交する径方向に首振りするように該径方向に自由度をもって前記被駆動軸に装着され、前記駆動軸と前記被駆動軸との偏芯と偏角に起因する前記被駆動軸の回転速度変動を、前記第1,第2カップリング部材の首振りと、前記凹部と凸部と接触面での滑りとによって抑制することを特徴とする駆動伝達機構が提供される。
【0010】
本発明の請求項3によれば、上記請求項2の駆動伝達機構において、前記突起長手方向と直交する径方向において、前記駆動軸の外周と前記第1挿通孔の壁面との間に所定の隙間が設けられ、前記溝長手方向と直交する径方向において、前記被駆動軸の外周と前記第2挿通孔の壁面との間に所定の隙間が設けられている駆動伝達機構が提供される。
【0011】
本発明の請求項4によれば、上記請求項2または請求項3の駆動伝達機構において、前記第1カップリング部材の前記突起長手方向での首振りが抑制されるように、該突起長手方向において自由度がない状態で前記駆動軸に装着され、前記第2カップリング部材は、前記溝長手方向での首振りが抑制されるように該溝長手方向において自由度がない状態で前記被駆動軸に装着されている駆動伝達機構が提供される。
【0012】
本発明の請求項5によれば、上記請求項2から請求項4の駆動伝達機構において、前記駆動軸は、軸方向と垂直にその先端部に設けられた第1平行ピンと、前記第1カップリング部材をその先端側に押圧するための圧縮バネと、該圧縮バネを保持するための第1保持部とを有し、前記第1カップリング部材は、前記突起長手方向と平行に前記第1平行ピンを収容するための第1ピン収容部を有し、該第1平行ピンを回動軸として首振り動作を行う駆動伝達機構が提供される。
【0013】
本発明の請求項6によれば、上記請求項2から請求項5の駆動伝達機構において、前記被駆動軸は、軸方向と垂直にその先端部に設けられた第2平行ピンと、前記第2カップリング部材をその先端で保持するための第2保持部とを有し、前記第2カップリング部材は、前記溝長手方向と平行に前記第2平行ピンを収容するための第2ピン収容部を有し、該第2平行ピンを回動軸として首振り動作を行う駆動伝達機構が提供される。
【0014】
本発明の請求項7によれば、駆動軸と、該駆動軸の回転により回転する被駆動軸と、該駆動軸の回転駆動力を該被駆動軸に伝達するために該駆動軸と該被駆動軸にそれぞれ取り付けられる一対のカップリング部材とを有する駆動伝達機構と、前記被駆動軸を回転軸とする感光体ドラムとを備えた画像形成装置であって、前記一対のカップリング部材は、径方向の一方向への首振りと、該一方向と垂直な径方向への接触面の滑りとによって、前記駆動軸と前記被駆動軸との偏芯と偏角に起因する前記感光体ドラムの回転速度変動を抑制することを特徴とする画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、駆動軸と被駆動軸の偏芯,偏角を許容(吸収)して、スムーズな回転伝達を行うことができるので、被駆動軸の回転速度変動を極めて小さく抑えることができる。そのため、この駆動伝達機構を電子写真方式を用いたカラー画像形成装置の各色感光体ドラムの回転駆動に適用することにより、色ずれのない綺麗な画像を形成することができる。また、駆動軸と被駆動軸にそれぞれ取り付けられるカップリングは接離容易であるために、例えば、感光体ドラムを装置本体に対して着脱する際の作業も容易に行うことができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。ここでは、画像形成装置として4連タンデム方式のカラー複写機を例に挙げ、感光体ドラムに駆動伝達機構を適用した場合について説明することとする。
【0017】
図1に4連タンデム方式カラー複写機1の概略構成図を示す。このカラー複写機1は、上方にスキャナ部2と、胴内排紙部3とを備えている。また、カラー複写機1は、中間転写媒体である中間転写ベルト10と、中間転写ベルト10を張架し、回転させるための駆動ローラ22および従動ローラ23,24と、中間転写ベルト10の下側に沿って並列配置される4組の画像形成部11Y,11M,11C,11BKを備えている。
【0018】
中間転写ベルト10には、耐熱性および耐磨耗性に優れた材料、例えば、半導電性ポリイミドが好適に用いられる。画像形成部11Y,11M,11C,11BKはそれぞれ、イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(BK)のトナー像を形成するためのものである。画像形成部11Y,11M,11C,11BKはそれぞれ像担持体である感光体ドラム12Y,12M,12C,12BKを有している。中間転写ベルト10は、各画像形成部11C〜11BKの上方において、感光体ドラム12Y〜12BKに接触している。
【0019】
中間転写ベルト10を挟んで感光体ドラム12Y,12M,12C,12BKと対向する位置(一次転写位置)には、1次転写ローラ20Y,20M,20C,20BKが設けられている。一次転写ローラ20Y〜20BKには+1000V程度の1次転写電圧が印加され、これにより感光体ドラム12Y〜12BK上のトナー像が中間転写ベルト10に一次転写される。
【0020】
画像形成部11Y,11M,11C,11BKはそれぞれ、感光体ドラム12Y,12M,12C,12BKを個別に帯電させるための帯電チャージャ13Y,13M,13C,13BKと、感光体ドラム12Y,12M,12C,12BK上に形成された潜像にトナーを付着させるための現像ユニット18Y,18M,18C,18BKと、感光体ドラム12Y,12M,12C,12BKをクリーニングするためのクリーニング装置21Y,21M,21C,21BKを備えている。
【0021】
帯電チャージャ13Y〜13BKは、感光体ドラム12Y〜12BK表面を、−700V程度に一様に全面帯電させる。現像ユニット18Y〜18BKは、−500V程度の現像バイアスが印加される現像ローラによりそれぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(BK)のトナーおよびキャリアからなる二成分現像剤を感光体ドラム12Y〜12BKに供給する。クリーニング装置21Y〜21BKは、クリーニングブレードにより感光体ドラム12Y〜12BKの表面の残留トナーを除去する。
【0022】
画像形成部11Y〜11BKは、カラー複写機1の本体のフロント側(図面手前側)に引き出し可能となっている。そのため、感光体ドラム12Y〜BKと現像ユニット18BK〜18Cの各駆動系は、カラー複写機1の本体のリア側に配置されている。
【0023】
感光体ドラム12Y〜12BKはそれぞれ、回転方向である矢印tの向きに回転しながら、帯電チャージャ13Y〜13BKを通過して現像ユニット18Y〜18BKに至る途中で、レーザ露光装置16によって露光される。この露光のために、カラー複写機1は、スキャナ部2等からの画像データに基づいて、感光体ドラム12Y〜12BK上に潜像を形成するためのレーザ露光装置16を、画像形成部11Y〜11BKの下側に備えている。
【0024】
レーザ露光装置16は、半導体レーザ素子から出射されたレーザビームを、ポリゴンミラー16aにより感光体ドラム12Y〜12BKの軸線方向に走査し、結像レンズ系16b,各ミラー44を経て感光体ドラム12BK〜12C上に結像させる。なお、レーザ露光装置16の各色のレーザビームの出射部にはカバーガラスが設けられる。
【0025】
カラー複写機1では、中間転写ベルト10を回転させるための駆動ローラ22と対向するように、中間転写ベルト10に一次転写されたトナー像を印刷用紙Pに転写(2次転写)するための2次転写ローラ26が配置されている。2次転写ローラ26には+1000V程度の2次転写電圧が印加され、これによって中間転写ベルト10上のトナー像が印刷用紙Pに2次転写される。なお、中間転写ベルト10の2次転写ローラ26の下流には、ベルトクリーナ10aが設けられている。
【0026】
レーザ露光装置16の下方には、2次転写ローラ26に向けて印刷用紙Pを供給するための第1,第2給紙カセット装置27,28が設けられている。第1,第2給紙カセット装置27,28から2次転写ローラ26に至る間には、第1,第2給紙カセット装置27,28内の印刷用紙Pを取り出すピックアップローラ27a,28aと、分離ローラ27b,28bと、第1,第2搬送ローラ31,32と、レジストローラ33が設けられている。
【0027】
また、カラー複写機1の図1右側には手差しにより印刷用紙Pを給紙するための手差しトレイ30が設けられている。手差しトレイ30からレジストローラ33に至る間には、印刷用紙Pを取り出すためのピックアップローラ30aと、手差し給紙ローラ36が設けられている。
【0028】
第1,第2給紙カセット27,28および手差しトレイ30から給紙される印刷用紙Pを垂直方向に搬送する縦搬送路37に沿って、2次転写ローラ26の下流、つまり上側には、印刷用紙Pに転写されたトナー像を熱処理により印刷用紙Pに定着させるための定着装置38が設けられている。
【0029】
定着装置38から排紙部3へは排紙搬送路41が設けられており、この排紙搬送路41の終端に排紙ローラ3aが設けられている。カラー複写機1は、排紙部3の図右側に、印刷用紙Pに両面印刷を施すための反転エリア40と、この反転エリア40から印刷用紙Pをレジストローラ33へ戻すための反転搬送ユニット45を備えている。
【0030】
排紙ローラ3aは、印刷用紙Pを排紙部3へ送り出す方向の回転(正回転)と、印刷用紙Pを反転搬送ユニット45へ戻す方向の回転(逆回転)とを行うことができるようになっている。反転エリア40はガイド42を備えており、このガイド42は、排紙ローラ3aが印刷用紙Pを反転搬送ユニット45へ戻す方向に回転する際に、印刷用紙Pをガイド41の上側に乗せて、印刷用紙Pを確実に反転搬送ユニット45へ送る。反転搬送ユニット45は、印刷用紙Pを降下搬送するための反転搬送路46と再搬送ローラ47を備えている。
【0031】
次に、感光体ドラム12Y〜12BKを回転させるための機構について説明する。感光体ドラム12Y〜12BKはそれぞれ同じ構造を有しているので、ここでは、感光体ドラム12Yを例に説明することとする。
【0032】
前述の通り、画像形成部11Yは、カラー複写機1の本体のフロント側に引き出し可能であり、感光体ドラム12Yの駆動系(モータ)はカラー複写機1の本体のリア側に配置されているので、感光体ドラム12Yの回転軸(被駆動軸)と、駆動系の回転軸(駆動軸)とは、接離自在である。そのため、感光体ドラム12Yをカラー複写機1の本体に装着した際に、駆動軸の回転を被駆動軸に伝達することができるように、被駆動軸と駆動軸のそれぞれの先端にカップリング部材が取り付けられる。
【0033】
図2Aに駆動軸の先端に取り付けられる第1カップリング部材の斜視図を、図2Bに被駆動軸の先端に取り付けられる第2カップリング部材の斜視図を、図3Aに第1カップリング部材と第2カップリング部材が嵌合した状態を示す側面図を、図3Bに第1カップリング部材と第2カップリング部材が嵌合した状態を示す別の側面図を、図4Aに図3A中の矢視AA断面図を、図4Bに図3B中の矢視BB断面図を、それぞれ示す。
【0034】
第1カップリング部材50は、径方向の一方向(Y方向とする)に設けられた一定幅(X方向の幅)の凸部51と、駆動軸70を挿通させるための第1挿通孔52を有している。凸部51は正面形状がH型となっているが、これに限定されるものではなく、無垢の突起であってもよい。第1挿通孔52を貫通孔としているので凸部51は2つに分かれているが、径方向の一方向であるY方向に配置されていることに変わりはない。
【0035】
駆動軸70は、軸方向(Z方向)と垂直にその先端部に設けられた第1平行ピン71と、第1カップリング部材50をその先端側に押圧するための圧縮バネ72と、圧縮バネ72を保持するための第1保持部73を有している。
【0036】
このような駆動軸70の先端形状に合わせて、第1カップリング部材50には、凸部51の突起長手方向(Y方向)と平行に、第1平行ピン71を収容するための凹みである第1ピン収容部53が設けられている。
【0037】
第1カップリング部材50が圧縮バネ72によって駆動軸70の先端側に押圧されることによって、第1平行ピン71が第1ピン収容部53に収容される。駆動軸70を図示しないモータにより回転させると、第1平行ピン71が第1ピン収容部53の壁面に接触した状態で維持されることにより、駆動軸70から第1カップリング部材50へ回転駆動力が伝達されて、第1カップリング部材50が駆動軸70とともに回転する。
【0038】
図5に駆動軸70の外径と第1挿通孔52の形状との関係を示す。駆動軸70は円柱状であり、したがってその外径dは、径方向で事実上一定とみなされる。第1挿通孔52は、突起長手方向であるY方向には自由度がない状態、つまり駆動軸70に対して第1カップリング部材50がぶれない状態となるような形状とする。このため、第1挿通孔52のY方向径Dは、駆動軸70を挿通させることができる公差範囲、例えば、D=d+0.1mm程度とすることが好ましい。
【0039】
また、第1挿通孔52は、凸部51の突起長手方向と直交する径方向であるX方向には自由度がある状態、つまり駆動軸70に対して第1カップリング部材50に一定のぶれが生ずる形状とする。すなわち、X方向では、駆動軸70の外周と第1挿通孔52の壁面との間に一定の隙間を設けて、首振り動作を生じるようにする。このとき、首振り動作は、第1平行ピン71を回動軸として生じる。
【0040】
そのために、第1挿通孔52のX方向径Dを、例えば、D=d+Δとする。ここで、このΔは、必要とされるぶれの大きさを考慮して決定される。例えば、0.2mmの偏芯を許容しようとすれば、Δはこれよりも大きな値、例えば、0.25〜0.3mmとすることができる。
【0041】
このように、第1カップリング部材50は、凸部51の突起長手方向であるY方向での首振りが抑制されるようにY方向においては自由度がない状態で、かつ、X方向には首振り動作が生じるように所定の自由度をもって、駆動軸70に装着される。
【0042】
第2カップリング部材60は、凸部51と嵌合する凹部61と、被駆動軸80を挿通させるための第2挿通孔62とを有している。凹部61が凸部51と嵌合する性格上、凹部61の溝長手方向はY方向である。凸部51が凹部61に嵌合された状態において凸部51のX方向での滑り量が少なくなるように、凸部51と凹部61の幅差は、第1カップリング部材50と第2カップリング部材60の製造加工の公差範囲、例えば、0.05mm〜0.2mmとすることが好ましい。第2挿通孔62は、第1挿通孔52と同様に、貫通孔としている。
【0043】
凸部51を凹部61に嵌合させた構造では、オルダムカップリングと同様に、Y方向でこれらの接触面が滑ることによって、偏芯,偏角を吸収することができる。凸部51と凹部61の接触面を滑りやすくするために、第1,第2カップリング部材50,60は、摩擦係数の小さい材料、例えば、ポリアセタール樹脂やフッ素樹脂等が好適に用いられる。
【0044】
被駆動軸80は、軸方向(Z方向)と垂直にその先端部に設けられた第2平行ピン81と、第2カップリング部材60をその先端で保持するための第2保持部82とを有している。第2平行ピン81の軸方向はY方向となっている。
【0045】
第2保持部82は、第2カップリング部材60が感光体ドラム12Y側へ押し込まれるのを防止している。なお、感光体ドラム12Yのカラー複写機1の本体への装着時には、第1カップリング部材50が圧縮バネ72によってスラスト方向に荷重を加えているので、凸部51と凹部61とが嵌合せずに、凹部61の上面が凸部50の上面に接触し、第1カップリング部材50が第2カップリング部材60に押されてZ方向(図示しないモータ側)に移動することがある。その場合でも、この状態で、駆動軸70または被駆動軸80を一定角度回転させれば、容易に、凸部51と凹部61とを嵌合させることができる。このように、第1,第2カップリング部材50は、感光体ドラム12Yの着脱を容易とする構造となっている。
【0046】
被駆動軸80の先端形状に合わせて、第2カップリング部材60は、溝長手方向(Y方向)と平行に第2平行ピン81を収容するための第2ピン収容部63を備えている。第1カップリング部材50の凸部51を第2カップリング部材60の凹部61に嵌合させた状態で駆動軸70を回転させると、第1カップリング部材50の回転が、凸部51と凹部61の嵌合によって第2カップリング部材60に伝達される。第2カップリング部材60が回転すると、第2ピン収容部63の壁面が第2平行ピン81を回転させて被駆動軸80を回転させる。これにより、感光体ドラム12Yが回転する。
【0047】
第2カップリング部材60は、第1カップリング部材50と同様にして、凹部61の溝長手方向であるY方向での首振りが抑制されるように、Y方向においては自由度がない状態で、かつ、X方向には首振り動作が生じるように所定の自由度をもって、被駆動軸80に装着される。そのため、第2挿通孔62の形状は第1挿通孔52と同様に設計される。なお、第2カップリング部材60の首振り動作では、第2平行ピン81が回動軸となる。
【0048】
上述の通り、第1カップリング部材50と第2カップリング部材60とを嵌合させて駆動軸70から被駆動軸80へ駆動伝達を行う場合に、連結される駆動軸70と被駆動軸80に偏芯,偏角が生じた場合でも、X方向では第1,第2カップリング部材50,60の首振り動作により、また前述の通り、Y方向では第1,第2カップリング部材50,60どうしの接触面の滑り動作により、偏芯,偏角を吸収することができるので、被駆動軸80に回転速度変動が発生することを抑制することができる。
【0049】
図6に、ともに直径dがφ8mmの駆動軸70と被駆動軸80とを0.25mm偏芯させて配置し、これらをともにDがφ8.3mm,Dがφ8.1mmの第1,第2カップリング部材50,60を用いて連結させ、駆動軸70と被駆動軸80の回転速度をエンコーダ同時測定し、速度変動を印刷用紙に形成される画像上でのずれに換算したときの変動を示す。また図7には、径方向の一方向に滑りを生じさせるオルダムカップリングを用いて、同様に測定した変動を示す。
【0050】
これら図6と図7を比較すると明らかなように、従来のオルダムカップリングでは被駆動軸の偏芯を許容することができず、1回転周期で被駆動軸80の速度が大きく変動していることが分かる。これに対して、上述の第1,第2カップリング部材50,60を用いることにより、駆動軸70と被駆動軸80に偏芯が生じても、速度変動を起こすことなく駆動伝達が行われていることが確認された。
【0051】
本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】4連タンデム方式のカラー複写機の概略構成図。
【図2A】駆動軸の先端に取り付けられる第1カップリング部材の斜視図。
【図2B】被駆動軸の先端に取り付けられる第2カップリング部材の斜視図
【図3A】第1カップリング部材と第2カップリング部材が嵌合した状態を示す側面図。
【図3B】第1カップリング部材と第2カップリング部材が嵌合した状態を示す別の側面図。
【図4A】図3A中の矢視AA断面図。
【図4B】図3B中の矢視BB断面図。
【図5】駆動軸の外径と第1挿通孔の形状との関係を示す図。
【図6】本発明の駆動伝達機構に係る駆動軸と被駆動軸の回転速度変動を印刷用紙に形成される画像上でのずれに換算したときの変動を示す図。
【図7】従来の駆動軸と被駆動軸の回転速度変動を印刷用紙に形成される画像上でのずれに換算したときの変動を示す図。
【符号の説明】
【0053】
1…カラー複写機、11Y・11M・11C・11BK…画像形成部、12Y・12M・12C・12BK…感光体ドラム、50…第1カップリング部材、51…凸部、52…第1挿通孔、53…第1ピン収容部、60…第2カップリング部材、61…凹部、62…第2挿通孔、63…第2ピン収容部、70…駆動軸、71…第1平行ピン、72…圧縮バネ、80…被駆動軸、81…第2平行ピン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸と、該駆動軸の回転により回転する被駆動軸と、該駆動軸の回転駆動力を該被駆動軸に伝達するために該駆動軸と該被駆動軸にそれぞれ取り付けられる一対のカップリング部材とを有する駆動伝達機構であって、
前記一対のカップリング部材は、径方向の一方向への首振りと、該一方向と直交する径方向への接触面の滑りとによって、前記駆動軸と前記被駆動軸との偏芯と偏角に起因する前記被駆動軸の回転速度変動を抑制することを特徴とする駆動伝達機構。
【請求項2】
駆動軸と、該駆動軸の回転により回転する被駆動軸と、該駆動軸の回転駆動力を該被駆動軸に伝達するために該駆動軸および該被駆動軸にそれぞれ取り付けられる第1カップリング部材および第2カップリング部材とを有する駆動伝達機構であって、
前記第1カップリング部材は、径方向の一方向に設けられた一定幅の凸部と、前記駆動軸を挿通させるための第1挿通孔とを有し、
前記第2カップリング部材は、該凸部と嵌合する凹部と、前記被駆動軸を挿通させるための第2挿通孔とを有し、
前記第1カップリング部材は、前記凸部の突起長手方向と直交する径方向に首振りするように該径方向に自由度をもって前記駆動軸に装着され、かつ、前記第2カップリング部材は、前記凹部の溝長手方向と直交する径方向に首振りするように該径方向に自由度をもって前記被駆動軸に装着され、
前記駆動軸と前記被駆動軸との偏芯と偏角に起因する前記被駆動軸の回転速度変動を、前記第1,第2カップリング部材の首振りと、前記凹部と凸部と接触面での滑りとによって抑制することを特徴とする駆動伝達機構。
【請求項3】
前記突起長手方向と直交する径方向において、前記駆動軸の外周と前記第1挿通孔の壁面との間に所定の隙間が設けられ、
前記溝長手方向と直交する径方向において、前記被駆動軸の外周と前記第2挿通孔の壁面との間に所定の隙間が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の駆動伝達機構。
【請求項4】
前記第1カップリング部材の前記突起長手方向での首振りが抑制されるように、該突起長手方向において自由度がない状態で前記駆動軸に装着され、前記第2カップリング部材は、前記溝長手方向での首振りが抑制されるように該溝長手方向において自由度がない状態で前記被駆動軸に装着されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の駆動伝達機構。
【請求項5】
前記駆動軸は、軸方向と垂直にその先端部に設けられた第1平行ピンと、前記第1カップリング部材をその先端側に押圧するための圧縮バネと、該圧縮バネを保持するための第1保持部とを有し、
前記第1カップリング部材は、前記突起長手方向と平行に前記第1平行ピンを収容するための第1ピン収容部を有し、該第1平行ピンを回動軸として首振り動作を行うことを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の駆動伝達機構。
【請求項6】
前記被駆動軸は、軸方向と垂直にその先端部に設けられた第2平行ピンと、前記第2カップリング部材をその先端で保持するための第2保持部とを有し、
前記第2カップリング部材は、前記溝長手方向と平行に前記第2平行ピンを収容するための第2ピン収容部を有し、該第2平行ピンを回動軸として首振り動作を行うことを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の駆動伝達機構。
【請求項7】
駆動軸と、該駆動軸の回転により回転する被駆動軸と、該駆動軸の回転駆動力を該被駆動軸に伝達するために該駆動軸と該被駆動軸にそれぞれ取り付けられる一対のカップリング部材とを有する駆動伝達機構と、
前記被駆動軸を回転軸とする感光体ドラムとを備えた画像形成装置であって、
前記一対のカップリング部材は、径方向の一方向への首振りと、該一方向と垂直な径方向への接触面の滑りとによって、前記駆動軸と前記被駆動軸との偏芯と偏角に起因する前記感光体ドラムの回転速度変動を抑制することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−218403(P2007−218403A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−42776(P2006−42776)
【出願日】平成18年2月20日(2006.2.20)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】