説明

駆動伝達機構及びそれを備えた画像形成装置

【課題】カップリングの剛性が高められた駆動伝達機構及びそれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】駆動伝達機構30は、駆動モータ27及び駆動ローラ11の回転軸27a、11aに嵌合する第1及び第2カップリング31、32を有しており、第1及び第2カップリング31、32には、底面部31a、32aと、壁部31b、32bと、ボス部31c、32cと、穴部31d、32dと、第1及び第2係合突起33、34と、が形成され、第1及び第2係合突起33、34は、底面部31a、32aからスラスト方向に突出し、外側面及び内側面の底面部31a、32a側端部がそれぞれ壁部31b、32b及びボス部31c、32cと一体に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、特に回転駆動部材の駆動を伝達するための駆動伝達機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセスを用いた画像形成装置、特にカラー画像形成装置における転写方式は、転写ドラム方式、直接タンデム方式、中間転写方式などが知られているが、各種メディア対応や環境安定性などの点から中間転写方式が多く用いられている。中間転写方式においては、帯電、露光、現像の各工程により各色トナー像を感光体(像担持体)上に現像した後、一次転写部にてトナー像を感光体から中間転写ベルトへ多重転写し、二次転写部にて中間転写ベルトから用紙へ転写し、定着工程で永久像とすることによりカラー画像を形成することができる。
【0003】
このような画像形成装置では、中間転写ベルトは駆動ローラ及び従動ローラ等により張架されており、駆動モータからの回転駆動力が駆動ローラに伝達されることにより、中間転写ベルトが回動するようになっている。かかる駆動モータと中間転写ベルトとの駆動を伝達及び解除する方法として、カップリングを有する駆動伝達機構が用いられており、駆動モータの回転軸に嵌合した駆動側のカップリング(第1のカップリング)と駆動ローラの回転軸に嵌合した被駆動側のカップリング(第2のカップリング)とが連結されるようになっている。
【0004】
例えば、特許文献1には、駆動軸に軸テーパ部を設けると共に、駆動カップリングの内径部に軸テーパ部と係合可能なカップリングテーパ部を設け、且つ被駆動カップリング及び駆動カップリングの係合部に、相互引き込み力を発生させる引き込み力発生手段を設けることにより、着脱ユニットの操作性を向上しつつ、且つ回転ブレのない駆動伝達を可能とする方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、駆動側若しくは被動側カップイングのいずれか一方に形成された凸部と、いずれか他方に形成された凹部と、の回転伝達時の接触面同士のうちいずれか一方の接触面に他方の接触面に向かって突出する抜け止め用突起を形成し、他方の接触面に抜け止め用突起と噛み合う凹みを形成することにより、軸継ぎ手の構造をコンパクトにすると共に、カップリング飛びを防止して、確実な回転伝達を可能とする方法が開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、駆動側部材と被駆動側部材との間に、被駆動側部材が駆動側部材に向かって移動することにより径方向に変形する環状の弾性部材を設けることにより、駆動伝達時の振動を低減すると共に簡単な操作で回転駆動を着脱可能とする方法が開示されている。かかる特許文献3には、駆動側部材及び被駆動側部材が筒状部を有し、筒状部の内周にリブを設けることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−76734号公報
【特許文献2】特開2006−226310号公報
【特許文献3】特開2008−309185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1では、係合突起の接触面を傾斜させてカップリングが抜けることを防止しているものの、かかる係合突起をカップリングの円盤部から突設しており、特許文献2においても、抜け止めを防止しているものの、カップリングの外周面に沿って底面部から係合突起を突設している。このため、特許文献1及び2のいずれにおいても係合突起の剛性を十分に確保できず、ねじれが発生するおそれがある。
【0009】
また、特許文献3では、筒状部にリブを設けることが開示されているが、かかるリブは筒状部の補強用であっていずれの部材とも噛合うものではなく、リブ自体が他の部材と噛合う際の剛性に関し、何ら開示されていない。また、特許文献3では、駆動側部材としてギア、被動側部材として回転軸が用いられており、カップリングの連結に関して示すものではない。このように、特許文献1〜3では、カップリングの剛性について、何ら開示されていない。
【0010】
ここで、回転駆動力の伝達時にカップリングの係合突起に撓みが発生すると、カップリング間で回転駆動力の伝達に誤差が発生する可能性がある。また、駆動側のカップリングが高精度に回転した場合であっても、被駆動側のカップリングとの間で負荷変動が発生すると、かかる変動に応じて回転軸上でねじれる力が発生する。
【0011】
また、画像形成装置においては省スペース化が求められており、中間転写ベルトを含む構成部材が着脱可能にユニット化される場合がある。このように省スペース化が強く求められる装置等において、部品であるカップリングもコンパクト化が求められている。そして、特にカップリングがコンパクト化され、軸方向に短く形成されると、係合突起の剛性が低下し易くなるため、カップリング間で係合突起のねじれによる回転駆動力の伝達が不安定になり、画像のムラに悪影響を及ぼすおそれがある。
【0012】
本発明は、上記問題に鑑み、カップリングの剛性が高められた駆動伝達機構及びそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明は、駆動手段及び回転駆動部材の回転軸に装着される第1及び第2のカップリングを有し、前記第1及び第2のカップリングに形成された係合突起が係合することにより前記駆動手段の所定の回転方向への回転駆動力を前記回転駆動部材に伝達する駆動伝達機構であって、前記第1及び第2のカップリングには、円盤状の底面部と、該底面部の外周縁に沿って且つ前記回転軸のスラスト方向に突出する壁部と、が形成され、前記係合突起は、前記底面部における前記壁部の内側に周方向に沿って等間隔に複数配置され、前記底面部から前記スラスト方向に前記壁部よりも突出し、且つ、前記係合突起の外側面における前記底面部側が前記壁部の内側面と一体に形成されることを特徴としている。
【0014】
また本発明は、前記底面部の中央部には、前記回転軸が嵌合するボス部が形成され、前記係合突起の内側面における前記底面部側が前記ボス部と一体に形成されることを特徴としている。
【0015】
また本発明は、前記壁部の先端部が、前記スラスト方向とは垂直面となるように形成され、前記係合突起が係合するとき前記垂直面同士が当接することを特徴としている。
【0016】
また本発明は、前記壁部に対する前記係合突起の突出長さは、前記底面部に対する前記壁部の突出長さと略同じであることを特徴としている。
【0017】
また本発明は、前記第1のカップリングに形成された第1の係合突起の前記周方向両端部に、前記回転方向下流側に向かって傾斜する傾斜面と、前記第2のカップリングに形成された第2の係合突起の前記周方向両端部に、前記回転方向上流側に向かって傾斜する傾斜面と、が形成され、前記第1のカップリングの回転時、前記第1の係合突起の前記回転方向下流側の第1の傾斜面が、前記第2の係合突起の前記回転方向上流側の第2の傾斜面と面接触することを特徴としている。
【0018】
また本発明は、前記回転駆動部材は、中間転写ベルトが架け渡され、前記中間転写ベルトを回動させるための駆動ローラであることを特徴としている。
【0019】
また本発明は、前記駆動伝達機構を備えた画像形成装置である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の第1の構成によれば、第1及び第2のカップリングに、円盤状の底面部と、該底面部の外周縁に沿って且つ回転軸のスラスト方向に突出する壁部と、を形成し、係合突起を、底面部における壁部の内側に周方向に沿って等間隔に複数配置し、底面部からスラスト方向に壁部よりも突出させ、且つ、係合突起の外側面における底面部側が壁部の内側面と一体に形成することによって、カップリングの剛性を高めることができる。また、係合突起のねじれを防止すると共に回転駆動力の伝達を安定させることができる。
【0021】
また、本発明の第2の構成によれば、上記第1の構成の駆動伝達機構において、底面部の中央部に、回転軸が嵌合するボス部を形成し、係合突起の内側面における底面部側をボス部と一体に形成することによって、カップリングの剛性をより高めることができる。また、係合突起のねじれをより防止すると共に回転駆動力の伝達をより安定させることができる。
【0022】
また、本発明の第3の構成によれば、上記第1または第2の構成の駆動伝達機構において、壁部の先端部を、スラスト方向とは垂直面となるように形成し、係合突起が係合するとき垂直面同士が当接することによって、係合突起の係合をより安定にし、係合突起のねじれをより防止すると共に回転駆動力の伝達をより安定させることができる。
【0023】
また、本発明の第4の構成によれば、上記第1〜第3のいずれかの構成の駆動伝達機構において、壁部に対する係合突起の突出長さを、底面部に対する壁部の突出長さと略同じとすることによって、係合突起の係合をより安定にし、係合突起のねじれをより防止すると共に回転駆動力の伝達をより安定にすることができる。
【0024】
また、本発明の第5の構成によれば、上記第1〜第4のいずれかの構成の駆動伝達機構において、第1のカップリングに形成された第1の係合突起の周方向両端部に、回転方向下流側に向かって傾斜する傾斜面と、第2のカップリングに形成された第2の係合突起の周方向両端部に、回転方向上流側に向かって傾斜する傾斜面と、を形成し、第1のカップリングの回転時、第1の係合突起の回転方向下流側の第1の傾斜面が、第2の係合突起の回転方向上流側の第2の傾斜面と面接触することによって、係合突起間に引き込み力が発生するため、係合をより安定させ、カップリングの抜けを防止すると共に調芯作用を発揮させることもでき、係合突起のねじれをより防止すると共に回転駆動力の伝達をより安定させることができる。
【0025】
また、本発明の第6の構成によれば、上記第1〜第5のいずれかの構成の駆動伝達機構において、回転駆動部材を、中間転写ベルトが架け渡され、中間転写ベルトを回動させるための駆動ローラとすることによって、中間転写ベルトの回動精度を高めることができる。
【0026】
また、本発明の第7の構成によれば、上記第1〜第6のいずれかの構成の駆動伝達機構を備えた画像形成装置とすることによって、回転駆動力の伝達が安定した良好な画像形成を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係る駆動伝達機構を備えた画像形成装置の全体構成を示す概略図
【図2】本実施形態の駆動伝達機構周辺を図1の上方から見た平面図
【図3】本実施形態の駆動伝達機構に用いられる第1カップリングを示す斜視図
【図4】第1カップリングの係合突起周辺を示す部分斜視図
【図5】本実施形態の駆動伝達機構に用いられる第2カップリングを示す斜視図
【図6】第1及び第2カップリングが連結される状態を示す斜視図
【図7】図6の第1及び第2係合突起が係合する状態を示す部分斜視図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の中間転写ベルトを備えた画像形成装置の構成を示す概略図である。画像形成装置(カラープリンタ)100本体内には4つの画像形成部Pa、Pb、Pc及びPdが、搬送方向上流側(図1では右側)から順に配設されている。これらの画像形成部Pa〜Pdは、異なる4色(マゼンタ、シアン、イエロー及びブラック)の画像に対応して設けられており、それぞれ帯電、露光、現像及び転写の各工程によりマゼンタ、シアン、イエロー及びブラックの画像を順次形成する。
【0029】
この画像形成部Pa〜Pdには、各色の可視像(トナー像)を担持する感光体ドラム1a、1b、1c及び1dが配設されており、これらの感光体ドラム1a〜1d上に形成されたトナー像が、駆動手段(図示せず)により図1において時計回りに回転しながら各画像形成部に隣接して移動する中間転写ベルト8上に順次転写(一次転写)された後、二次転写ローラ9において用紙S上に一度に転写(二次転写)され、さらに、定着部7において用紙S上に定着された後、装置本体より排出される構成となっている。感光体ドラム1a〜1dを図1において反時計回りに回転させながら、各感光体ドラム1a〜1dに対する画像形成プロセスが実行される。
【0030】
トナー像が転写される用紙Sは、装置下部の用紙カセット16内に収容されており、給紙ローラ12a及びレジストローラ対12bを介して二次転写ローラ9へと搬送される。中間転写ベルト8には誘電体樹脂製のシートが用いられ、その両端部を互いに重ね合わせて接合しエンドレス形状にしたベルトや、継ぎ目を有しない(シームレス)ベルトが用いられる。また、二次転写ローラ9の下流側には中間転写ベルト8表面に残存するトナーを除去するためのクリーニングブレード19が配置されている。
【0031】
次に、画像形成部Pa〜Pdについて説明する。回転自在に配設された感光体ドラム1a〜1dの周囲及び下方には、感光体ドラム1a〜1dを帯電させる帯電器2a、2b、2c及び2dと、各感光体ドラム1a〜1dに画像情報を露光する露光装置4と、感光体ドラム1a〜1d上にトナー像を形成する現像装置3a、3b、3c及び3dと、感光体ドラム1a〜1d上に残留した現像剤(トナー)を除去するクリーニング部5a、5b、5c及び5dが設けられている。
【0032】
ユーザにより画像形成開始が入力されると、先ず、帯電器2a〜2dによって感光体ドラム1a〜1dの表面を一様に帯電させ、次いで露光装置4によって光照射し、各感光体ドラム1a〜1d上に画像信号に応じた静電潜像を形成する。現像装置3a〜3dは、感光体ドラム1a〜1dに対向配置された現像ローラ(現像剤担持体)を備え、それぞれマゼンタ、シアン、イエロー及びブラックの各色のトナーが補給装置(図示せず)によって所定量充填されている。このトナーは、現像装置3a〜3dの現像ローラにより感光体ドラム1a〜1d上に供給され、静電的に付着することにより、露光装置4からの露光により形成された静電潜像に応じたトナー像が形成される。
【0033】
そして、中間転写ベルト8に所定の転写電圧で電界が付与された後、一次転写ローラ6a〜6dにより感光体ドラム1a〜1d上のマゼンタ、シアン、イエロー、及びブラックのトナー像が中間転写ベルト8上に一次転写される。これらの4色の画像は、所定のフルカラー画像形成のために予め定められた所定の位置関係をもって形成される。その後、引き続き行われる新たな静電潜像の形成に備え、感光体ドラム1a〜1dの表面に残留したトナーがクリーニング部5a〜5dにより除去される。
【0034】
中間転写ベルト8は、従動ローラ10、駆動ローラ(回転伝達部材)11及びテンションローラ20に掛け渡されおり、これらが一体となって装置本体に着脱可能に装着されている。駆動モータ(駆動手段)27(図2参照)からの回転駆動力が駆動伝達機構30により駆動ローラ11に伝達されて該ローラが回転し、かかる回転に伴い中間転写ベルト8が時計回りに回転を開始すると、用紙Sがレジストローラ12bから所定のタイミングで中間転写ベルト8に隣接して設けられた二次転写ローラ9へ搬送され、中間転写ベルト8とのニップ部(二次転写ニップ部)において用紙S上にフルカラー画像が二次転写される。トナー像が転写された用紙Sは定着部7へと搬送される。駆動伝達機構30の詳細については後述する。
【0035】
定着部7に搬送された用紙Sは、定着ローラ対13のニップ部(定着ニップ部)を通過する際に加熱及び加圧されてトナー像が用紙Sの表面に定着され、所定のフルカラー画像が形成される。フルカラー画像が形成された用紙Sは、複数方向に分岐した分岐部14によって搬送方向が振り分けられる。用紙Sの片面のみに画像を形成する場合は、そのまま排出ローラ対15によって排出トレイ17に排出される。
【0036】
一方、用紙Sの両面に画像を形成する場合は、定着部7を通過した用紙Sの一部を一旦排出ローラ対15から装置外部にまで突出させる。その後、用紙Sは排出ローラ対15を逆回転させることにより分岐部14で用紙搬送路18に振り分けられ、画像面を反転させた状態で二次転写ローラ9に再搬送される。そして、中間転写ベルト8上に形成された次の画像が二次転写ローラ9により用紙Sの画像が形成されていない面に転写され、定着部7に搬送されてトナー像が定着された後、排出トレイ17に排出される。
【0037】
図2は、本実施形態の駆動伝達機構周辺を図1の上方から見た平面図であり、図3は、本実施形態の駆動伝達機構に用いられる第1カップリングを示す斜視図であり、図4は、第1カップリングの係合突起周辺を示す部分斜視図であり、図5は、本実施形態の駆動伝達機構に用いられる第2カップリングを示す斜視図である。また、図6は、第1及び第2カップリングが連結する状態を示す斜視図であり、図7は、図6の第1及び第2係合突起が係合する状態を示す部分斜視図である。図1と共通する部分には共通する符号を付して説明を省略する。なお、便宜上、図4では、壁部31bを省略して示し、図6では壁部31b、32bを破線で示す。
【0038】
図2に示すように、駆動伝達機構30は、駆動モータ27の回転軸27aの先端に嵌合(装着)された第1カップリング(第1のカップリング)31と、駆動ローラ11の回転軸11aの一端に嵌合された第2カップリング(第2のカップリング)32と、から構成されている。第1及び第2カップリング31、32は同様の構成であり、共に樹脂材料から形成されている。
【0039】
図3に示すように、第1カップリング31は、大まかには、底面部31a、壁部31b、ボス部31c、穴部31d及び第1係合突起33を有している。底面部31aは、円盤状から成り、底面部31aの一側面(図の上面)の外周に沿って、底面部31aから垂直に突出する環状の壁部31bが形成されている。また、壁部31bの先端部は、回転軸27aのスラスト方向とは垂直面となるように形成されている。
【0040】
底面部31aの中央部には、ボス部31cが形成されている。かかるボス部31cは、壁部31bよりも底面部31aからスラスト方向(図の上方)に突出しないように形成されている。
【0041】
ボス部31cの中央部には、断面略小判形状の穴部31dが形成されている。回転軸27aの一先端部(図示せず)は、穴部31dと嵌合するように断面略小判形状に形成されており、かかる先端部に穴部31dが嵌合することにより、第1カップリング31が回転軸27aと共に回転できるようになっている。なお、その他例えば、回転軸27aの上記先端部に雄ネジ部を形成すると共に、穴部31dの内周面に雌ネジ部を形成し、上記先端部を穴部31dに螺合することもできる。
【0042】
そして、壁部31bの内周側であってボス部31cとの間には、第1係合突起33が周方向に沿って略等間隔に3つ形成されている。図3及び図4に示すように、第1係合突起33の周方向長さは、第1係合突起33同士の間隔よりも短く形成されている。また、第1係合突起33は、底面部31aから壁部31bよりもスラスト方向(図の上方)に突出しており、第1係合突起33の外側面における底面部31a側は、壁部31bと一体に形成され、これと繋がっている。
【0043】
すなわち、第1係合突起33は、底面部31aと壁部31bの内側面とからスラスト方向に突出している。また、第1係合突起33の壁部31bとの繋がり部分からの突出部と、壁部31bとの間には、後述する第2カップリング32との連結時、第1係合突起33と、後述する第2カップリング32の壁部32bと、が公差等により干渉するおそれを回避するために、隙間G1が設けられている。
【0044】
また、第1係合突起33の底面部31aからの突出長さL2は、壁部31bの底面部31aからの突出長さL1の略2倍に設定されている。すなわち、第1係合突起33の壁部31bからの突出長さ(L2−L1)は、壁部31bの突出長さL1と略同じに設定されている。これにより、後述するように第1カップリング31の壁部31bと第2カップリング32の壁部32bとを当接させたとき、第1及び第2係合突起33、34の突出端部をそれぞれ、底面部32a、31aと近接させることができるため、第1及び第2係合突起33、34の接触面積が大きくなり、係合を安定にすることができる。
【0045】
第1係合突起33の内側面における底面部31a側は、ボス部31cと一体に形成され、これと繋がっている。また、第1係合突起33のボス部31cとの繋がり部分からの突出部と、ボス部31cとの間には、後述する第2カップリング32との連結時、第1係合突起33と、後述する第2カップリング32のボス部32cと、が公差等により干渉するおそれを回避するために、隙間G2が設けられている。
【0046】
第1係合突起33の周方向両端部には、回転軸27aの画像形成時の回転方向(図6参照)下流側に向かって傾斜する第1傾斜面(第1の傾斜面)33a及び第2傾斜面33bが形成されている。また、回転方向下流側に第1傾斜面33a、上流側に第2傾斜面33bが形成されている。
【0047】
図5に示すように、第2カップリング32は第1カップリング31と同様の構成であり、第2カップリング32には、第1カップリング31の底面部31a、壁部31b、ボス部31c、穴部31d、第1係合突起33、隙間G1、G2、第1傾斜面33a及び第2傾斜面33bとそれぞれ同様の、底面部32a、壁部32b、ボス部32c、穴部32d、第2係合突起34、隙間G1、G2、第3傾斜面(第2の傾斜面)34a及び第4傾斜面34bが形成されている。
【0048】
なお、穴部32dは、回転軸11aにおいて断面略小判形状に形成された一先端部(図示せず)に嵌合するようになっている。また、第2カップリング32は、第1カップリング31と対向して連結されるため、かかる連結時、第3傾斜面34aは回転方向上流側、第4傾斜面34bは回転方向下流側に配置される(図6及び図7参照)。
【0049】
また、第1及び第2カップリング31、32が連結する際、第2カップリング32は、コイルバネ等の付勢部材(図示せず)により、第1カップリング31に対して付勢されるようになっている。かかる連結後、第1カップリング31が回転すると、第3傾斜面34aは第1傾斜面33aと面接触して係合するようになっている。
【0050】
このような第1及び第2カップリング31、32をそれぞれ、回転軸27a及び回転軸11aに嵌合し、一体化された中間転写ベルト8(図1参照)及び駆動モータ27を装置本体に装着すると、図6に示すように、第1カップリング31の第1係合突起33の間に第2カップリング32の第2係合突起34が挿入されると共に、壁部31b、32bの垂直面同士が当接する。
【0051】
そして、回転軸27aが回転すると、図6及び図7に示すように、回転方向(白抜き矢印方向)において、第1係合突起33の第1傾斜面33aが、第2係合突起34の第3傾斜面34aと面接触して噛み合い、第3傾斜面34aを回転方向下流側に押圧する。これにより、第2係合突起34が回転軸11aと共に回転し、駆動モータ27の回転駆動力が駆動ローラ11に伝達される。このとき、第1及び第2カップリング31、32が回転すると、第1傾斜面33aと第3傾斜部34aとの間に引き込み力が発生する。
【0052】
なお、ここでは、第1係合突起33の周方向長さを第1係合突起33同士の間隔よりも短く、同様に、第2係合突起34の周方向長さを第2係合突起34同士の間隔よりも短く形成したため、第2係合突起34を第1係合突起33間に挿入し易くなっており、第1係合突起33と第2係合突起34とを十分に係合させることが可能となる。
【0053】
上記の通り、本実施形態では、第1及び第2のカップリング31、32に、円盤状の底面部31a、32aと、該底面部31a、32aの外周縁に沿って且つ回転軸27a、11aのスラスト方向に突出する壁部31b、32bと、を形成し、第1及び第2係合突起33、34を、底面部31a、32aにおける壁部31b、32bの内側に周方向に沿って等間隔に複数配置し、底面部31a、32aからスラスト方向に壁部31b、32bよりも突出させ、且つ、第1及び第2係合突起33、34の外側面における底面部31a、32a側を壁部31b、32bの内側面と一体に形成した。
【0054】
これにより、第1及び第2カップリング31、32の剛性を高めることができる。また、第1及び第2係合突起33、34のねじれを防止すると共に回転駆動力の伝達を安定させることができる。
【0055】
ここでは、第1及び第2係合突起33、34と壁部31b、32bとの間に隙間G1を設けたため、壁部32b、31bとの干渉をより回避しつつ第1及び第2係合突起33、34を係合させることができる。しかし、かかる隙間G1を設けない構成とすることもでき、また、かかる隙間G1の代わりに第1及び第2係合突起33、34の外側面を壁部31b、32bから突出端部に向かって内周側に傾斜するテーパ形状とすることもできる。
【0056】
また、本実施形態では、底面部31a、32aの中央部に、回転軸27a、11aが嵌合するボス部31c、32cを形成し、第1及び第2係合突起33、34の内側面における底面部31a、32a側をボス部31c、32cと一体に形成したため、第1及び第2カップリング31、32の剛性をより高めることができる。また、第1及び第2係合突起33、34のねじれをより防止すると共に回転駆動力の伝達をより安定させることができる。
【0057】
ここでは、第1係合突起33、34と、ボス部31c、32cとの間に隙間G2を設けたため、ボス部32c、31cとの干渉をより回避しつつ第1及び第2係合突起33、34を係合させることができる。しかし、かかる隙間G2を設けない構成とすることもでき、また、かかる隙間G2の代わりに第1及び第2係合突起33、34の内側面をボス部31c、32cから突出端部に向かって外周側に傾斜するテーパ形状とすることもできる。また、第1及び第2係合突起33、34をボス部31c、32cから離間させて形成することもできる。
【0058】
また、本実施形態では、壁部31b、32bの先端部を、スラスト方向とは垂直面となるように形成し、第1及び第2係合突起33、34を係合するとき垂直面同士が当接することとしたため、第1及び第2係合突起33、34の係合をより安定にし、第1及び第2係合突起33、34のねじれをより防止すると共に回転駆動力の伝達をより安定にすることができる。
【0059】
また、本実施形態では、壁部31b、32bに対する第1及び第2係合突起33、34の突出長さ(L2−L1)を、底面部31a、32aに対する壁部31b、32bの突出長さL1と略同じにしたため、第1及び第2係合突起33、34の係合をより安定にすると共に回転駆動の伝達をより安定にすることができる。しかし、第1及び第2係合突起33、34が係合可能であれば、壁部31b、32bの形状等は特に限定されるものではない。
【0060】
また、本実施形態では、第1係合突起33の周方向両端部に、回転方向下流側に向かって傾斜する第1及び第2傾斜面33a、33bを形成し、第2係合突起34の周方向両端部に、回転方向上流側に向かって傾斜する第3及び第4傾斜面34a、34bを形成し、第1カップリング31の回転時、第1傾斜面33aが、第3傾斜面34aと面接触することとした。
【0061】
これにより、第1係合突起33と第2係合突起34との間に引き込み力が発生するため、係合をより安定させ、第1及び第2カップリング31、32の抜けを防止すると共に調芯作用を発揮させることもでき、第1及び第2係合突起33、34のねじれをより防止すると共に回転駆動力の伝達をより安定させることができる。
【0062】
なお、第1及び第2係合突起33、34の形状は、本実施形態に特に限定されるものではなく、第1及び第3傾斜面33a、34aの当接状態等、装置構成等に応じて適宜設定することができる。また、第1〜第4傾斜面33a、33b、34a、34bの形状等も、装置構成等に応じて適宜設定することができる。
【0063】
また、本実施形態では、第1及び第2係合突起33、34をそれぞれ3つ形成したが、かかる第1及び第2係合突起33、34の数量は特に限定されず、2つ以上とすることができる。ただし、第1及び第2係合突起33、34の数量を多くすると、両者を噛み合わせるためのスペースが必要となり、その分、第1及び第2係合突起33、34の周方向長さが短くなる。
【0064】
一方、第1及び第2係合突起33、34が2つの場合には、回転駆動力の安定を十分に確保できないおそれがある。従って、第1及び第2係合突起33、34の数量は、例えばかかる観点を考慮して設定することができ、3つ以上が好ましく、3つとすることがさらに好ましい。
【0065】
その他、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、本発明の回転駆動部材を、中間転写ベルト8が架け渡され、中間転写ベルト8を回動させるための駆動ローラ11に適用したため、中間転写ベルトの回動精度を高めることができるが、駆動モータ27の回転駆動力を伝達可能であれば、回転駆動部材は特に限定されず、その他例えば、感光体ドラム1a〜1d等に適用することもできる。
【0066】
また、本発明は、高精度な回転駆動力の伝達を要する回転駆動部材に適用する際に、特に有効である。また、本実施形態では、第1及び第2カップリング31、32を樹脂材料から形成したため、ねじれ易い材質を用いた場合であっても、第1及び第2カップリング31、32のねじれの発生を防止することができる。しかし、かかる材質は特に限定されるものではなく、その他、金属材料とすることもできる。
【0067】
また、本発明は、画像形成部を複数備えたタンデム方式のカラー画像形成装置のみならず、モノクロ画像形成装置、或いは直接転写方式の画像形成装置、ファクシミリ等の他の画像形成装置にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、第1及び第2のカップリングに、円盤状の底面部と、該底面部の外周縁に沿って且つ回転軸のスラスト方向に突出する壁部と、を形成し、係合突起を、底面部における壁部の内側に周方向に沿って等間隔に複数配置し、底面部からスラスト方向に壁部よりも突出させ、且つ、係合突起の外側面における底面部側が壁部の内側面と一体に形成したものである。
【0069】
これにより、カップリングの剛性を高め、係合突起のねじれを防止すると共に回転駆動力の伝達を安定させることができるため、省スペース化にも十分に対応することができる。
【0070】
また、底面部の中央部に、回転軸が嵌合するボス部を形成し、係合突起の内側面における底面部側をボス部と一体に形成することによって、カップリングの剛性をより高め、係合突起のねじれをより防止すると共に回転駆動力の伝達をより安定させることができる。また、壁部の先端部を、スラスト方向とは垂直面となるように形成し、係合突起が係合するとき垂直面同士が当接することによって係合突起の係合をより安定させること等ができる。また、壁部に対する係合突起の突出長さを、底面部に対する壁部の突出長さと略同じとすることによって、係合突起の係合をより安定させること等ができる。
【0071】
また、第1の係合突起の周方向両端部に、回転方向下流側に向かって傾斜する傾斜面と、第2の係合突起の周方向両端部に、回転方向上流側に向かって傾斜する傾斜面と、を形成し、第1のカップリングの回転時、第1の係合突起の回転方向下流側の第1の傾斜面が、第2の係合突起の回転方向上流側の第2の傾斜面と面接触することによって、係合突起間に引き込み力が発生するため、係合をより安定させ、カップリングの抜けを防止すると共に調芯作用を発揮させること等もできる。
【0072】
また、回転駆動部材を、中間転写ベルトが架け渡され、中間転写ベルトを回動させるための駆動ローラとすることによって、中間転写ベルトの回動精度を高めることができる。また、上記駆動伝達機構を備えた画像形成装置とすることによって、回転駆動力の伝達が安定した良好な画像形成を行うことができる。
【符号の説明】
【0073】
8 中間転写ベルト
11 駆動ローラ(回転駆動部材)
11a 回転軸
23 平行ピン
27 駆動モータ(駆動手段)
27a 回転軸
30 駆動伝達機構
31 第1カップリング(第1のカップリング)
31a 底面部
31b 壁部
31c ボス部
31d 穴部
32 第2カップリング(第2のカップリング)
32a 底面部
32b 壁部
32c ボス部
32d 穴部
33 第1係合突起(第1の係合突起)
33a 第1傾斜面(第1の傾斜面)
33b 第2傾斜面
34 第2係合突起(第2の係合突起)
34a 第3傾斜面(第2の傾斜面)
34b 第4傾斜面
100 画像形成装置
G1、G2 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動手段及び回転駆動部材の回転軸に装着される第1及び第2のカップリングを有し、
前記第1及び第2のカップリングに形成された係合突起が係合することにより前記駆動手段の所定の回転方向への回転駆動力を前記回転駆動部材に伝達する駆動伝達機構であって、
前記第1及び第2のカップリングには、円盤状の底面部と、該底面部の外周縁に沿って且つ前記回転軸のスラスト方向に突出する壁部と、が形成され、
前記係合突起は、前記底面部における前記壁部の内側に周方向に沿って等間隔に複数配置され、前記底面部から前記スラスト方向に前記壁部よりも突出し、且つ、前記係合突起の外側面における前記底面部側が前記壁部の内側面と一体に形成されることを特徴とする駆動伝達機構。
【請求項2】
前記底面部の中央部には、前記回転軸が嵌合するボス部が形成され、前記係合突起の内側面における前記底面部側が前記ボス部と一体に形成されることを特徴とする請求項1に記載の駆動伝達機構。
【請求項3】
前記壁部の先端部が、前記スラスト方向とは垂直面となるように形成され、前記係合突起が係合するとき前記垂直面同士が当接することを特徴とする請求項1または2に記載の駆動伝達機構。
【請求項4】
前記壁部に対する前記係合突起の突出長さは、前記底面部に対する前記壁部の突出長さと略同じであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の駆動伝達機構。
【請求項5】
前記第1のカップリングに形成された第1の係合突起の前記周方向両端部に、前記回転方向下流側に向かって傾斜する傾斜面と、
前記第2のカップリングに形成された第2の係合突起の前記周方向両端部に、前記回転方向上流側に向かって傾斜する傾斜面と、が形成され、
前記第1のカップリングの回転時、前記第1の係合突起の前記回転方向下流側の第1の傾斜面が、前記第2の係合突起の前記回転方向上流側の第2の傾斜面と面接触することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の駆動伝達機構。
【請求項6】
前記回転駆動部材は、中間転写ベルトが架け渡され、前記中間転写ベルトを回動させるための駆動ローラであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の駆動伝達機構。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載された駆動伝達機構を備えた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−132988(P2011−132988A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290977(P2009−290977)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】