説明

駆動力配分装置

【課題】温度センサ異常(高温異常、地絡異常)とを正確に判定し、主駆動輪と補駆動輪の駆動力配分する制御から主駆動輪のみに駆動力配分する制御に切り替えた際の車両走行の安定性を向上した駆動力配分装置を提供することにある。
【解決手段】マイコンは、温度センサより検出した温度が、所定値1未満であり、かつ、車両のエンジン回転起動時に、エンジン回転オフタイム時間検出手段より検出した、エンジン回転オフタイム時間が、所定値2未満であった場合には、温度センサの高温異常と判断する。一方、マイコンは、温度センサより検出した温度が、所定値1未満であり、かつ、車両のエンジン回転起動時に、エンジン回転オフタイム時間検出手段より検出した、エンジン回転オフタイム時間が、所定値2以上であった場合には、温度センサの地絡異常と判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動力配分装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、主駆動輪と補駆動輪との間の駆動力配分を変更可能な駆動力配分装置がある。
そして、こうした駆動力配分装置の多くは、駆動力伝達系の途中に設けられたトルクカップリングにより、入力側から出力側に伝達するトルクを変化させることにより、主駆動輪と補駆動輪との間の駆動力配分を制御するようになっている。
【0003】
トルクカップリングは、摩擦クラッチと電磁コイルから主に構成され、電磁コイルに印加する電流値によって摩擦クラッチの結合力を制御することにより、入力側から出力側に伝達するトルクを変化させることができるように構成されている。そして、この摩擦クラッチからは摩擦による発熱が発生するため、この発熱による摩擦クラッチの焼付きを防止するため、上記トルクカップリングには温度センサが取り付けられ、検出温度に応じて電磁コイルに印加する電流値を制御している。
【0004】
上記温度センサは、周辺の温度が所定値以上になった場合に異常を検出する温度センサ高温異常検出手段を有している。また、温度センサ自身の地絡または温度センサの配線等の地絡を検出する温度センサ地絡異常検出手段も有している。
【0005】
そして、温度センサの値が上昇し所定値以上になった場合には、温度センサ高温異常の警報(例えばランプ点灯)を出力し、上記トルクカップリングの入力側から出力側に伝達するトルクを弱める(カップリング力を弱める)ように、カップリングの電磁コイルに印加する電流を漸減させていく。即ち、4WD制御から2WD制御に切り替える。そうすることで、摩擦クラッチの焼付きを防止している。
【0006】
また、温度センサ自身が地絡した場合、または温度センサの配線等が地絡した場合には、温度センサ短絡異常の警報(例えばランプ点灯)を出力し、上記トルクカップリングの電磁コイルに印加する電流を遮断する。そうすることで、温度センサ自身及びその周辺の焼損を防止している。
【0007】
次に、上記温度センサ高温異常と、温度センサ短絡異常を検出するための温度センサ周辺の一般的なハード構成とソフト処理について説明する。
図4は、温度センサ18の出力を、ECU12に取り込む一般的なハード構成を示している。温度センサ18の正端子A1は、ECU12の中に設けられたフィルタ22(コンデンサC1,抵抗R2)、及びバッテリ19の電圧を分圧する分圧器23(抵抗R1、R2)の一端と接続され、CPU20へ入力される。
また、温度センサ18の負端子A2は、上記ECU12の中に設けられたフィルタ22(コンデンサC1,抵抗R2)とともにGNDに接続されている。
【0008】
次に、ソフト処理について説明する。図5は温度センサ18の高温異常の判定とその処理を示すフローチャートである。まず、温度センサ電圧Vthを取り込む(ステップS301)。次に、温度センサ電圧高温異常時閾値Vths1を取り込む(ステップS302)。そして、温度センサ電圧Vthが温度センサ電圧高温異常時閾値Vths1より小さいか否かを判定する(ステップS303)。
【0009】
温度センサ電圧Vthが温度センサ電圧高温異常時閾値Vths1より小さい場合(Vth<Vths1、ステップS303:YES)には、温度センサ高温異常と判定する(ステップS304)。そして、温度センサ高温異常警報としてランプを点灯し(ステップS305)、主駆動輪と補駆動輪の駆動力配分する制御(4WD制御)から主駆動輪にのみに駆動力配分する制御(2WD制御)に徐々に切り替えるため、摩擦クラッチへの電流値を漸減し(ステップS306)、処理を終わる。
【0010】
図6は温度センサ18の地絡異常の判定とその処理を示すフローチャートである。まず、温度センサ電圧Vthを取り込む(ステップS401)。次に、温度センサ電圧地絡異常時閾値Vths2を取り込む(ステップS402)。そして、温度センサ電圧Vthが温度センサ電圧地絡異常時閾値Vths2より小さいか否かを判定する(ステップS403)。
【0011】
温度センサ電圧Vthが温度センサ電圧地絡異常時閾値Vths2より小さい場合(Vth<Vths2、ステップS403:YES)には、温度センサ地絡異常と判定する(ステップS404)。そして、温度センサ地絡異常警報としてランプを点灯し(ステップS405)、4WD制御から2WDに直ちに切り替えるため、摩擦クラッチへの電流を即時遮断し(ステップS406)、処理を終わる。
【0012】
次に、温度センサ18の高温異常時、地絡異常時の温度センサ電圧波形を説明するための図を図7、図8に示す。図7は、温度センサ高温異常検出時の温度センサ電圧波形である。一般的に温度センサ(例えば、サーミスタ)は温度が高くなるほど温度センサ電圧は低下する。図7に示すように、温度センサ電圧Vthが温度センサ電圧高温異常時閾値Vths1より小さくなった場合に温度センサ高温異常と判定される(図5のステップS304)。
【0013】
また、図8は、温度センサ地絡異常検出時の温度センサ電圧波形である。温度センサ電圧Vthは通常時では、図4の分圧器23でバッテリ19の電圧が分圧された電圧V0近辺となっている。時間t0時点で温度センサ18が地絡すると、温度センサ電圧Vthは急激に低下する。そして、図8に示すように、温度センサ電圧Vthが温度センサ電圧地絡異常時閾値Vths2より小さくなった場合に温度センサ地絡異常と判定される(図6のステップS404)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
以上のような、従来の温度センサ異常(高温異常、地絡異常)検出方法では、図7及び図8から明らかなように、温度センサが高温になった場合の温度センサ電圧Vth(=温度センサ電圧高温異常時閾値Vths1)と、温度センサが地絡異常になった場合の温度センサ電圧Vth(=温度センサ電圧地絡異常時閾値Vths2)では、両方の電圧値がほぼ同じ値となってしまう場合がある。
【0015】
そのため、本来は温度センサ18が高温異常となった場合にもかかわらず、温度センサ地絡異常と誤って判断される場合がある。このように誤って温度センサ地絡異常と判断されると、4WD制御から即時に、2WD制御に切り替えられるため、例えば、低μ路のカーブを走行中に切り替えらえた場合には、車両走行が不安定になる虞があった。
【0016】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、温度センサ高温異常と温度センサ地絡異常とを正確に判定し、4WDから2WDに切り替えた際の車両走行の安定性を向上した駆動力配分装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、駆動源の発生する駆動力を各駆動輪に伝達する駆動力伝達系の途中に設けられ入力側から出力側に伝達する伝達トルクを変化させることにより主駆動輪と補駆動輪との間の駆動力配分を変更可能なトルクカップリング(11)と、前記トルクカップリング(11)の温度変化を検出する温度センサ(18)と、前記温度センサ(18)の検出する温度変化によって前記温度センサの異常を判定する温度センサ異常判定手段(20)と、前記温度センサ異常判定手段(20)による判定に基づき、前記トルクカップリング(11)の作動を制御する制御手段(20)とを備えた駆動力配分装置(13)であって、車両のエンジン回転のオフタイム時間を検出するエンジン回転オフタイム時間検出手段(20)と、前記温度センサ異常判定手段(20)は、前記温度センサ(18)より検出した温度が、所定値1未満であり、かつ、前記車両のエンジン回転起動時に、前記エンジン回転オフタイム時間検出手段(20)より検出した、前記エンジン回転オフタイム時間が、所定値2未満であった場合には、前記温度センサ(18)の高温異常と判定し、前記制御手段(20)は、前記駆動力配分を、主駆動輪と前記補駆動輪とによる配分から、前記主駆動輪のみによる配分に徐々に切り替えること、を要旨とする。
【0018】
上記構成によれば、温度センサより検出した温度が、所定値1未満であり、かつ、車両のエンジン回転起動時に、エンジン回転オフタイム時間検出手段より検出した、エンジン回転オフタイム時間が、所定値2未満であった場合には、温度センサの高温異常と判断するので、温度センサの高温異常を正確に判定できる。このような温度センサの高温異常においては、駆動力配分を主駆動輪のみによる配分に徐々に切り替えるので、車両走行を不安定にすることなく、主駆動輪と補駆動輪の駆動力配分する制御から主駆動輪のみに駆動力配分する制御に切り替えることができる。
【0019】
請求項2に記載の発明は、前記温度センサ異常判定手段(20)は、前記温度センサ(18)より検出した温度が、所定値1未満であり、かつ、前記車両のエンジン回転起動時に、前記エンジン回転オフタイム時間検出手段(20)より検出した、前記エンジン回転オフタイム時間が、所定値2以上であった場合には、前記温度センサ(18)の地絡異常と判定し、前記制御手段(20)は、前記駆動力配分を、直ちに前記主駆動輪のみの配分に切り替えること、を要旨とする。
【0020】
上記構成によれば、温度センサ異常判定手段は、温度センサより検出した温度が、所定値1未満であり、かつ、車両のエンジン回転起動時に、エンジン回転オフタイム時間検出手段より検出した、前記エンジン回転オフタイム時間が、所定値2以上であった場合には、温度センサの地絡異常と判断する。このような温度センサの地絡異常においては、直ちに主駆動輪のみの駆動力配分に切り替えることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、温度センサ異常(高温異常、地絡異常)を正確に判定できるので、主駆動輪と補駆動輪の駆動力配分する制御から、主駆動輪のみに駆動力配分する制御に切り替えた際の車両走行の安定性を向上した駆動力配分装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態の駆動力配分装置を備えた車両の概略構成図。
【図2】本発明の実施形態のイグニッションスイッチ(IG)オン/オフ時のカップリング本体の温度変化と温度センサの出力電圧変化図。
【図3】本発明の実施形態の温度センサの高温異常と地絡異常を判定する処理手順を示すフローチャート図。
【図4】温度センサのハード構成図。
【図5】従来の温度センサ高温異常の処理手順を示すフローチャート図。
【図6】従来の温度センサ地絡異常の処理手順を示すフローチャート図。
【図7】温度センサ高温異常時の温度センサ電圧波形図。
【図8】温度センサ地絡異常時の温度センサ電圧波形図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を4輪駆動車の駆動力配分装置に具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、車両1は、前輪駆動車をベースとする4輪駆動車であり、エンジン2に組みつけられたトランスアクスル3には、一対のフロントアクスル4が連結されている。また、トランスアクスル3には、上記各フロントアクスル4とともにプロペラシャフト5が連結されており、該プロペラシャフト5は、ピニオンシャフト(ドライブピニオンシャフト)7と連結されている。そして、ピニオンシャフト7は、ディファレンシャルとしてのリヤディファレンシャル8を介して一対のリヤアクスル9と連結されている。
【0024】
即ち、エンジン2の駆動力は、トランスアクスル3からフロントアクスル4を介して前輪10fに伝達される。そして、トランスアクスル3からプロペラシャフト5、ピニオンシャフト7、リヤディファレンシャル8及び各リヤアクスル9を介して後輪10rに伝達されるようになっている。
【0025】
また、本実施形態の車両1は、上記のように構成された駆動力伝達系の途中に設けられ入力軸から出力軸に伝達する伝達トルクを変化させることにより、主駆動輪である前輪10fと副駆動輪である後輪10rとの間の駆動力配分を変更可能なトルクカップリング11と、その作動を制御する制御手段としてのECU12とを備えている。そして、本実施形態では、これらトルクカップリング11及びECU12により駆動力配分装置13が構成されている。
【0026】
詳述すると、本実施形態では、トルクカップリング11は、プロペラシャフト5とピニオンシャフト7との間に介在されている。即ち、本実施形態では、リヤディファレンシャル8は、トルクカップリング11と補駆動輪である後輪10rとの間に介在され、トランスアクスル3は、駆動源であるエンジン2とトルクカップリング11との間に設けられている。
【0027】
そして、本実施形態では、トルクカップリング11は、ピニオンシャフト7、及びリヤディファレンシャル8とともに、ディファレンシャルキャリア14内に収容されている。
【0028】
本実施形態のトルクカップリング11は、電磁コイルに供給される電流量に応じて、プロペラシャフト5側及びピニオンシャフト7側のそれぞれに設けられた各クラッチプレート間の摩擦係合力が変化する電磁クラッチ15を備えており、その摩擦係合力に基づくトルクを入力側のプロペラシャフト5から出力側のピニオンシャフト7へと伝達する。
【0029】
そして、ECU12は、電磁クラッチ15に対する電流供給を通じてトルクカップリング11の作動、即ちその伝達トルクを制御し、これにより主駆動輪である前輪10fと副駆動輪である後輪10rとの間の駆動力配分を制御する。
【0030】
更に詳述すると、本実施形態では、ECU12には、スロットル開度センサ16及び車輪速センサ17fl、17fr、17rl、17rr、トルクカップリング11に取付けられた温度センサ18が接続されており、ECU12は、これら各センサの出力信号に基づき、スロットル開度Ra、車速V、及び前輪10fと後輪10rとの間の車輪速差Wdiffの検出、トルクカップリング11の温度を検出する。なお、温度センサ18の検出値は低温から高温状態になるに従って電圧が低くなるものである。
【0031】
そして、ECU12は、これら車速V及びスロットル開度Ra、並びに車輪速差Wdiffに基づいて上記駆動力配分を決定し、その伝達トルクが該決定された駆動力配分に対応する値となるようにトルクカップリング11の作動を制御する。
【0032】
次に、本実施事例の、イグニッションスイッチ(IG)ON/OFF時のカップリング本体の温度変化と、温度センサの出力電圧変化図の具体的事例を、図2を用いて説明する。
図2(1)は、IG(イグニションスイッチ)のON状態、OFF状態を示している。即ち、時間t1までは、IGはON状態であり、時間t1〜t3の間は、IGはOFF状態となっている。そして、時間t3以降は再びIGはON状態となっている。
【0033】
図2(2)は、エンジン起動のON状態、OFF状態を示している。即ち、時間t2までは、エンジン起動はON状態であり、時間t2〜t4の間は、エンジン起動はOFF状態となっている。そして、時間t4以降は再びエンジン起動はON状態となっている。
【0034】
図2(1)と、図2(2)の関係からわかるように、IGがOFF状態(t1)となってからしばらくして、エンジン起動がOFF状態(t2)となる。また、IGがON状態(t3)となってからしばらくして、エンジン起動がON状態(t4)となる。尚、エンジン起動のOFF状態(時間t2〜t4の間)は、「エンジンオフタイム」と呼ばれ、この信号は、上位CPUから下位CPUへCAN(Controller Area Network)信号で送信される。
【0035】
また、図2(3)で示すように、上記「エンジンオフタイム」間は、エンジンオフタイムカウンタがカウントしており、この情報も、上位CPUから下位CPUへCAN信号で送信される。このエンジンオフタイムカウンタがカウントにより、エンジン起動のOFF状態(時間t2〜t4の間)、即ち、「エンジンオフタイム」の時間を検出することができる。
【0036】
図2(4)は、ある車両状態のカップリング温度を、また、図2(5)はその温度と対応したカップリング温度センサの電圧値を表している。カップリング温度センサの電圧特性は、図2の(4)、(5)からわかるように、カップリング温度が高くなるほど、カップリング温度センサの電圧値は低くなる。
【0037】
図2の(1)〜(5)の現象から以下のことがわかる。まず、IGがON状態時には、エンジン起動もON状態となっており、エンジン起動によって回転摩擦を受けるカップリング温度も上昇する(曲線L1)。そして、カップリング温度を検出するカップリング温度センサの電圧値は低下し続ける(曲線L2)。そして、t1時点で、IGがOFF状態になると、少しのタイムラグ(t2-t1)をもってエンジン起動もOFF状態となる。するとカップリング温度が低下しだし、カップリング温度を検出するカップリング温度センサの電圧値は上昇を始める。それと同時に、エンジンオフタイムカウンタが増加する。
【0038】
即ち、エンジンオフタイムカウンタ値が所定値を超えた場合には、エンジン起動がOFF状態となってからの時間が経過しており、カップリング温度が低下(例えばTa以下)していると推定される。そして、その時のカップリング温度センサの電圧値は高い状態になる。
しかし、カップリング温度が低下していると推定される時点にもかかわらず、カップリング温度センサの電圧値が低い状態で検出されると、温度センサが地絡異常を発生しているといえる。
【0039】
次に、本発明の実施形態の温度センサの高温異常と地絡異常を判定する処理手順について説明する。
図3のフローチャートに示すように、マイコン20は、まず、イグニッションスイッチ(IG)がONか否かを判定する(ステップS101)。そして、IGがONの場合(ステップS101:YES)には、マイコン20は、エンジン起動がOFFか否かを判定する(ステップS102)。
【0040】
そして、マイコン20は、エンジン起動がOFFの場合(ステップS102:YES)には、エンジンオフカウンタ(ENCTR)値を読み込む(ステップS103)。更に、マイコン20は、カップリング温度センサ電圧(Vth)を取り込む(ステップS104)。
【0041】
次に、マイコン20は、温度センサ電圧Vthが温度センサ電圧閾値Vths1より小さいか否かを判定する(ステップS105)。温度センサ電圧Vthが温度センサ電圧閾値Vths1より小さい場合(Vth<Vths1、ステップS105:YES)には、エンジンオフカウンタENCTRが所定値CTR0以上か否かを判定する(ステップS106)。
【0042】
そして、マイコン20は、エンジンオフカウンタENCTRが所定値CTR0以上の場合(ENCTR≧CTR0、ステップS106:YES)には、温度センサ地絡異常を検出する(ステップS107)。そして、マイコン20は、温度センサ地絡異常警報(ランプ点灯)を発し(ステップS108)、次に、マイコン20は、4WD制御時の電流を即時遮断し、2WD制御に切替えて(ステップS109)、処理を終わる。
【0043】
一方、マイコン20は、エンジンオフカウンタENCTRが所定値CTR0より小さい場合(ENCTR<CTR0、ステップS106:NO)には、温度センサ高温異常を検出する(ステップS110)。そして、マイコン20は、温度センサ高温異常警報(ランプ点灯)を発し(ステップS111)、次に、マイコン20は、4WD制御時の電流を漸減し、2WD制御に切替えて(ステップS112)、処理を終わる。
【0044】
また、マイコン20は、温度センサ電圧Vthが温度センサ電圧閾値Vths1以上の場合(Vth≧Vths1、ステップS105:NO)には、ステップS113に移行し、4WD制御を実行し、処理を終わる。
【0045】
一方、マイコン20は、エンジン起動がONの場合(ステップS102:NO)には、
カップリング温度センサ電圧(Vth)を取り込む(ステップS114)。そして、マイコン20は、温度センサ電圧Vthが温度センサ電圧閾値Vths2より小さいか否かを判定する(ステップS115)。温度センサ電圧Vthが温度センサ電圧閾値Vths2より小さい場合(Vth<Vths2、ステップS115:YES)には、温度センサ地絡異常を検出する(ステップS116)。そして、マイコン20は、温度センサ地絡異常警報(ランプ点灯)を発し(ステップS117)、次に、マイコン20は、4WD制御時の電流を即時遮断し、2WD制御に切替えて(ステップS118)、処理を終わる。
【0046】
一方、マイコン20は、温度センサ電圧Vthが温度センサ電圧閾値Vths2以上の場合(Vth≧Vths2、ステップS115:NO)には、ステップS113に移行し、4WD制御を実行し、処理を終わる。また、マイコン20は、IGがONでない場合(ステップS101:NO)には、ステップS119に移行し、2WD制御を実行し、処理を終わる。
【0047】
以上、本実施形態によれば、以下のような以下のような作用・効果を得ることができる。
上述のように、単純に温度センサの出力電圧を監視していただけでは、温度センサの出力電圧が低下した状態においては、温度センサ高温異常と、温度センサ地絡異常が同時に発生してしまい、本来は温度センサが高温異常となった場合にもかかわらず、温度センサ地絡異常と判断される場合がある。そして、温度センサ地絡異常と判断されれば、4WD制御時の電流を即時遮断し、2WD制御に切り替えられるため車両走行が不安定になる虞がある。
【0048】
この点、本実施形態のマイコンは、温度センサより検出した温度が、所定値1未満であり、かつ、車両のエンジン回転起動時に、エンジン回転オフタイム時間検出手段より検出した、エンジン回転オフタイム時間が、所定値2未満であった場合には、温度センサの高温異常と判断する。一方、マイコンは、温度センサより検出した温度が、所定値1未満であり、かつ、車両のエンジン回転起動時に、エンジン回転オフタイム時間検出手段より検出した、エンジン回転オフタイム時間が、所定値2以上であった場合には、温度センサの地絡異常と判断できるので、温度センサの高温異常、地絡異常を正確に判定できる。
【0049】
このような構成にすれば、本来は温度センサが高温異常となった場合にもかかわらず、温度センサ地絡異常と判断される場合や、逆に温度センサが地絡異常となった場合にもかかわらず、温度センサ高温異常と判断される場合を防止することができる。
【0050】
その結果、実際には4WD制御時の電流値を漸減して2WD制御にスムーズに切り替えるべき温度センサ高温異常であるにも関わらず、温度センサ地絡異常と判断して、4WD制御時の電流を即時遮断し、2WD制御に切り替えられるため車両走行が不安定になることを防止することができる。
【0051】
なお、本実施形態は以下のように変更してもよい。
・本実施形態では、本発明を、前輪を主駆動輪とする車両の駆動力配分装置に具体化したが、後輪を主駆動輪とする車両の駆動力配分装置に具体化してもよい。
【0052】
・本実施形態では、トルクカップリングの周辺に温度センサを取り付けたが、温度センサの取り付け位置はこれに限ったものではなく、温度センサをECU内に取り付けたものでもよい。
【符号の説明】
【0053】
1:車両、2:エンジン、3:トランスアクスル、4:フロントアクスル、
5:プロペラシャフト、7:ピニオンシャフト、8:リヤディファレンシャル、
9:リヤアクスル、10f:前輪、10r:後輪、11:トルクカップリング、
12:ECU、13:駆動力配分装置、14:ディファレンシャルキャリア、
15:電磁クラッチ、16:スロットル開度センサ、
17fl、17fr、17rl、17rr:車輪速センサ、
18:温度センサ、19:バッテリ、20:CPU、
22:フィルタ、23:分圧器、
A1:温度センサの正端子、A2:温度センサの負端子
Ra:スロットル開度、V:車速、
Wdiff:車輪速差、IG:イグニッションスイッチ、
Vth:温度センサ電圧、
Vths1:温度センサ電圧高温異常時閾値、
Vths2:温度センサ電圧地絡異常時閾値、
V0:分圧器で分圧された電圧、t0:温度センサ地絡時点、
L1、L2:曲線、
ENCTR:エンジンオフカウンタ、CTR0:エンジンオフカウンタ所定値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源の発生する駆動力を各駆動輪に伝達する駆動力伝達系の途中に設けられ入力側から出力側に伝達する伝達トルクを変化させることにより主駆動輪と補駆動輪との間の駆動力配分を変更可能なトルクカップリングと、
前記トルクカップリングの温度変化を検出する温度センサと、
前記温度センサの検出する温度変化によって前記温度センサの異常を判定する温度
センサ異常判定手段と、
前記温度センサ異常判定手段による判定に基づき、前記トルクカップリングの作動
を制御する制御手段とを備えた駆動力配分装置であって、
車両のエンジン回転のオフタイム時間を検出するエンジン回転オフタイム時間検出手段と、
前記温度センサ異常判定手段は、前記温度センサより検出した温度が、所定値1未満であり、かつ、前記車両のエンジン回転起動時に、前記エンジン回転オフタイム時間検出手段より検出した、前記エンジン回転オフタイム時間が、所定値2未満であった場合には、前記温度センサの高温異常と判定し、前記制御手段は、前記駆動力配分を、主駆動輪と前記補駆動輪とによる配分から、前記主駆動輪のみによる配分に徐々に切り替えること、
を特徴とする駆動力配分装置。
【請求項2】
前記温度センサ異常判定手段は、前記温度センサより検出した温度が、所定値1未満であり、かつ、前記車両のエンジン回転起動時に、前記エンジン回転オフタイム時間検出手段より検出した、前記エンジン回転オフタイム時間が、所定値2以上であった場合には、前記温度センサの地絡異常と判定し、前記制御手段は、前記駆動力配分を、直ちに前記主駆動輪のみの配分に切り替えること、
を特徴とする請求項1に記載の駆動力配分装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−35378(P2013−35378A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172448(P2011−172448)
【出願日】平成23年8月6日(2011.8.6)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】