駆動回路および液体噴射装置、印刷装置、医療機器
【課題】コンデンサーの数を抑えつつも、出力可能な電圧値の種類を増やす。
【解決手段】電源により充電される複数の第1蓄電素子を直列に接続して直列蓄電素子群を構成する。また、この直列蓄電素子群を用いて第2蓄電素子を充電する。そして、充電した第2蓄電素子を直列蓄電素子群に直列接続した状態と、第2蓄電素子を直列接続しない状態とを切り替えながら、直列蓄電素子群を負荷に接続して電圧を印加する。こうすると、第2蓄電素子を直列接続した場合と、直列接続しない場合との2種類の電圧が出力可能となる。ここで、直列蓄電素子群を構成する第1蓄電素子の数が互いに異なる複数の状態に対して、それぞれ2種類の電圧が出力可能なので、第2蓄電素子を備えるだけで出力可能な電圧の数を大幅に増やすことができる。これにより、蓄電素子の数を抑えながらも多種類の電圧を出力することが可能となる。
【解決手段】電源により充電される複数の第1蓄電素子を直列に接続して直列蓄電素子群を構成する。また、この直列蓄電素子群を用いて第2蓄電素子を充電する。そして、充電した第2蓄電素子を直列蓄電素子群に直列接続した状態と、第2蓄電素子を直列接続しない状態とを切り替えながら、直列蓄電素子群を負荷に接続して電圧を印加する。こうすると、第2蓄電素子を直列接続した場合と、直列接続しない場合との2種類の電圧が出力可能となる。ここで、直列蓄電素子群を構成する第1蓄電素子の数が互いに異なる複数の状態に対して、それぞれ2種類の電圧が出力可能なので、第2蓄電素子を備えるだけで出力可能な電圧の数を大幅に増やすことができる。これにより、蓄電素子の数を抑えながらも多種類の電圧を出力することが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧を印加して負荷を駆動する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電圧を印加することにより、半導体素子や誘電体素子などの電子素子の負荷を駆動する技術は、種々の装置で広く用いられている。例えば、インクジェットプリンターなどの流体噴射装置では、電圧に応じて伸縮するピエゾ素子に電圧を印加することで、噴射口から流体を押し出して噴射している。また、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの表示装置では、液晶に電圧を印加して液晶分子を整列させたり、あるいは有機ELに電圧を印加して発光させることによって画像を表示している。また、電子素子に限らず、モーターや電磁石などの種々の負荷に電圧を印加して負荷を駆動する技術も広く用いられている。
【0003】
これら種々の負荷を駆動する装置では、負荷に印加する電圧の波形(電圧波形)を制御することで負荷の動作を制御しており、このため、電圧波形を正確に生成することが重要である。こうした理由から、生成する電圧波形の最大電圧よりも高い電圧を発生する電源を用意しておき、電源からの電圧をパワートランジスター等の半導体素子を用いて降圧させることで電圧波形を生成する技術が広く用いられている(例えば、特許文献1)。この技術では、パワートランジスター等を制御することで、電圧波形を正確に生成することが可能である。
【0004】
また、出力電圧が高い電源や耐電圧の高いパワートランジスターを備えると装置が大型化する傾向がある。そこで、複数のコンデンサーを同一の電圧に充電し、それらのコンデンサーを直列に接続することで電圧を上昇させるとともに、直列に接続するコンデンサーの数を変えることで電圧を変化させる回路(いわゆるチャージポンプ回路)を用いることにより、パワートランジスター等を省略して装置構成を小型化しようとする技術が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−259969号公報
【特許文献2】特開平7−130484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、提案されている技術では、精度の高い電圧波形を生成することが困難だという問題があった。すなわち、直列に接続するコンデンサーの数を変えることで電圧を変化させることから、出力できる電圧値の種類の数は、コンデンサーの数に限られる。すると、この限られた種類の電圧で電圧波形を生成しなければならないので、精度の高い電圧波形を生成することが困難となる。もちろん、より多くのコンデンサーを備えて多種類の電圧を出力すれば、電圧波形の精度を高めることが可能であるが、今度はコンデンサーの数が増えるので、回路を小型化することが困難になってしまう。
【0007】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題を解決するためになされたものであり、コンデンサーの数を抑えつつ、出力可能な電圧値の種類を増やして電圧波形の精度を高める技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題の少なくとも一部を解決するために、本発明の負荷駆動回路は次の構成を採用した。すなわち、
負荷に電圧を印加することによって該負荷を駆動する負荷駆動回路であって、
電源から電圧の供給を受けて充電される複数の第1蓄電素子と、
前記複数の第1蓄電素子間の接続状態を切り替えることにより、該第1蓄電素子が直列に接続された直列蓄電素子群を構成する直列蓄電素子群構成手段と、
前記第1蓄電素子とは異なる第2蓄電素子を、前記直列蓄電素子群を用いて充電する第2蓄電素子充電手段と、
前記充電した第2蓄電素子と前記直列蓄電素子群とを直列接続した状態で、該第2蓄電素子および該直列蓄電素子群を負荷に接続する第1の接続状態と、該第2蓄電素子と該直列蓄電素子群との直列接続を切断した状態で、該直列蓄電素子群を前記負荷に接続する第2の接続状態とを切り換えて、該負荷に電圧を印加する電圧印加手段と
を備えることを要旨とする。
【0009】
かかる本発明の負荷駆動回路では、電源により充電される複数の第1蓄電素子を備えており、これら複数の第1蓄電素子を直列に接続して直列蓄電素子群を構成する。また、この直列蓄電素子群を第2蓄電素子に接続することで、第2蓄電素子を充電する。そして、直列蓄電素子群を負荷に接続して負荷に電圧を印加する際には、充電した第2蓄電素子と直列蓄電素子群とを直列に接続した状態で、直列蓄電素子群および第2蓄電素子を負荷に接続する状態と、第2蓄電素子と直列蓄電素子群との直列接続を切断した状態で、直列蓄電素子を負荷に接続する状態とを切り替えて電圧を印加する。
【0010】
複数の第1蓄電素子を直列接続した直列蓄電素子群は、各々の第1蓄電素子とは異なる電圧を発生するので、これを用いて充電される第2蓄電素子は、第1蓄電素子とは電圧値が異なる電圧を持つ。すると、これらの蓄電素子を用いて電圧を出力する際には、第1蓄電素子のみを直列接続した場合(直列蓄電素子群のみを用いた場合)と、第1蓄電素子に加えて第2蓄電素子を直列接続した場合(直列蓄電素子群に第2蓄電素子を直列接続した場合)とで、電圧値が異なる電圧が出力される。これにより、出力可能な電圧の数を増やすことができるので、出力電圧の階調度が向上する結果、電圧波形の精度を高めることが可能となる。また、直列蓄電素子群は、直列蓄電素子群を構成する第1蓄電素子の数が異なる複数の態様を取り得るが、そのそれぞれの態様に対して、直列蓄電素子群と第2蓄電素子とを直列接続するか否かに応じた2種類の電圧を出力することが可能である。このため、第2蓄電素子を備えるだけで出力可能な電圧の数を大幅に増やすことが可能であり、蓄電素子の数を抑えながらも多種類の電圧を出力することが可能となる。
【0011】
尚、蓄電素子は、充電されて電圧を発生する素子であれば、どのような素子であってもよい。例えば、コンデンサーのように充電されて電荷が供給されると内部に電場を蓄えることによって電圧を発生する素子であってもよいし、あるいは、二次電池のように内部に化学的なエネルギーを蓄えることによって電圧を発生する素子であってもよい。
【0012】
また、上述した本発明の負荷駆動回路では、第1蓄電素子を負荷から切断して充電する際には、第2蓄電素子を負荷に接続するものとしてもよい。
【0013】
こうすれば、第2蓄電素子の電圧を用いて負荷に電圧を印加した状態のままで、第1蓄電素子を充電することができるので、第1蓄電素子を充電する際にも、負荷に電圧を印加した状態を保つことが可能となる。
【0014】
また、上述した本発明の負荷駆動回路は、次の態様として把握することも可能である。すなわち、
電源から電圧の供給を受けて充電される第1蓄電素子と、
前記電源から電圧の供給を受けて充電される第2蓄電素子と、
前記第1蓄電素子と前記第2蓄電素子とが直列に接続された直列蓄電素子群を構成する直列蓄電素子群構成手段と、
前記第1蓄電素子および前記第2蓄電素子とは異なる第3蓄電素子を、前記直列蓄電素子群を用いて充電する第3蓄電素子充電手段と、
前記充電した第3蓄電素子と前記直列蓄電素子群とを直列接続した状態で、該第3蓄電素子および該直列蓄電素子群を負荷に接続する第1の接続状態と、該第3蓄電素子と該直列蓄電素子群との直列接続を切断した状態で、該直列蓄電素子群を前記負荷に接続する第2の接続状態とを切り換えて、該負荷に電圧を印加する電圧印加手段と
を備える負荷駆動回路として把握することが可能である。
【0015】
このような態様の負荷駆動回路では、電源により充電される第1蓄電素子および第2蓄電素子を備えており、第1蓄電素子と第2蓄電素子とを直列に接続して直列蓄電素子群を構成する。また、この直列蓄電素子群を第3蓄電素子に接続することで、第3蓄電素子を充電する。そして、直列蓄電素子群を負荷に接続して負荷に電圧を印加する際には、充電した第3蓄電素子と直列蓄電素子群とを直列に接続した状態で、直列蓄電素子群および第3蓄電素子を負荷に接続する状態と、第3蓄電素子と直列蓄電素子群との直列接続を切断した状態で、直列蓄電素子群を負荷に接続する状態とを切り換えて電圧を印加する。
【0016】
第1蓄電素子と第2蓄電素子とを直列接続した直列蓄電素子群は、第1蓄電素子および第2蓄電素子とは異なる電圧を発生するので、これを用いて充電される第3蓄電素子は、第1蓄電素子および第2蓄電素子とは異なる電圧を持つ。したがって、直列蓄電素子群のみを用いた場合(第1蓄電素子および第2蓄電素子のみを用いた場合)と、直列蓄電素子群に加えて第3蓄電素子を直列接続した場合とでは、異なる電圧が出力される。これにより、電圧値の種類を増やして出力電圧の階調度を向上させることが可能となり、その結果、電圧波形の精度を高めることが可能となる。
【0017】
また、上述した本発明の負荷駆動回路を用いれば、噴射ノズルに設けられたアクチュエーターを駆動することで噴射ノズルから液体を適切に噴射可能なことから、本発明は、上述した負荷駆動回路を備える液体噴射装置として把握することも可能である。
【0018】
かかる本発明の液体噴射装置では、上述した負荷駆動回路によって精度の高い電圧波形が生成されるので、アクチュエーターの動作を精度良く制御することができ、その結果、噴射する液体の量や液滴のサイズ、液体の噴射速度などを精度良く制御して液体を適切に噴射することが可能となる。
【0019】
また、上述した本発明の液体噴射装置は印刷装置に搭載することも可能であることから、本発明は、上述した液体噴射装置を搭載した印刷装置として把握することも可能である。
【0020】
このような本発明の印刷装置では、上述した負荷駆動回路によって、噴射ノズルに設けられたアクチュエーターを精度良く駆動することが可能であり、その結果、インクなどの液体を精度良く噴射することができるので、品質の高い画像を印刷することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施例の電圧波形生成回路を搭載したインクジェットプリンターの大まかな構成を示した説明図である。
【図2】噴射ヘッドの内部の機構を詳細に示した説明図である。
【図3】ピエゾ素子に印加する電圧波形(駆動電圧波形)を例示した説明図である。
【図4】本実施例のインクジェットプリンターに備えられた駆動電圧波形生成回路およびその周辺の回路構成を示した説明図である。
【図5】本実施例の駆動電圧波形生成回路の構成を示した説明図である。
【図6】本実施例の駆動電圧波形生成回路のチャージポンプ回路を用いて種々の電圧を出力する様子を示した説明図である。
【図7】コンデンサーCCを用いることにより多種類の電圧が出力可能となる様子を示した説明図である。
【図8】本実施例の駆動電圧波形生成回路によって多種類の電圧が出力可能となる様子を概念的に示した説明図である。
【図9】コンデンサーCCの電圧を出力端子に直接出力する第1変形例の駆動電圧波形生成回路を示した説明図である。
【図10】コンデンサーCCから電圧を出力している間にコンデンサーCCを充電可能とした第2変形例の駆動電圧波形生成回路を示した説明図である。
【図11】コンデンサーCCおよび電源を直列に接続可能とした第3変形例の駆動電圧波形生成回路を示した説明図である。
【図12】コンデンサーCCをチャージポンプ回路の出力電圧とは異なる電圧に充電する第4変形例の駆動電圧波形生成回路を例示した説明図である。
【図13】GND側にチャージポンプ回路を接続し、出力端子側にコンデンサーCCを接続する第5変形例の駆動電圧波形生成回路を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、上述した本願発明の内容を明確にするために、次のような順序に従って、電圧波形生成回路を搭載したインクジェットプリンターの実施例を説明する。
A.インクジェットプリンターの装置構成:
B.本実施例の駆動電圧波形生成回路:
C.変形例:
C−1.第1変形例:
C−2.第2変形例:
C−3.第3変形例:
C−4.第4変形例:
C−5.第5変形例:
【0023】
A.インクジェットプリンターの装置構成 :
図1は、本実施例の電圧波形生成回路を搭載したインクジェットプリンターの大まかな構成を示した説明図である。図示されているように、インクジェットプリンター10は、主走査方向に往復動しながら印刷媒体2上にインクドットを形成するキャリッジ20と、キャリッジ20を往復動させる駆動機構30と、印刷媒体2の紙送りを行うためのプラテンローラー40などから構成されている。キャリッジ20には、インクを収容したインクカートリッジ26や、インクカートリッジ26が装着されるキャリッジケース22、キャリッジケース22の底面側(印刷媒体2に向いた側)に搭載されてインクを噴射する噴射ヘッド24などが設けられており、インクカートリッジ26内のインクを噴射ヘッド24に導いて、噴射ヘッド24から印刷媒体2に向かって正確な分量のインクを噴射することが可能となっている。
【0024】
キャリッジ20を往復動させる駆動機構30は、主走査方向に延設されたガイドレール38と、内側に複数の歯形が形成されたタイミングベルト32と、タイミングベルト32を駆動させる駆動プーリ34およびステップモータ36などから構成されている。タイミングベルト32の一部はキャリッジケース22に固定されており、タイミングベルト32を駆動することによって、ガイドレール38に沿ってキャリッジケース22を精度良く移動させることができる。
【0025】
また、プラテンローラー40は、図示しない駆動モーターやギア機構によって駆動されて、印刷媒体2を副走査方向に所定量ずつ紙送りすることが可能となっている。これらの各機構は、インクジェットプリンター10に搭載されたプリンター制御回路50によって制御されており、プリンター制御回路50の制御の下で、プラテンローラー40が印刷媒体2を紙送りするとともに、キャリッジケース22が主走査方向に移動しながら噴射ヘッド24からインクを噴射することにより、印刷媒体2上に画像を印刷する。
【0026】
図2は、噴射ヘッドの内部の機構を詳細に示した説明図である。図示されている様に、噴射ヘッド24の底面(印刷媒体2に向いている面)には、複数の噴射口200が設けられており、それぞれの噴射口200からインク滴を噴射することが可能となっている。各噴射口200はそれぞれインク室202に接続されており、インク室202には、インクカートリッジ26から供給されたインクが満たされている。インク室202の上にはピエゾ素子(圧電素子)204が設けられており、ピエゾ素子204に電圧を印加すると、ピエゾ素子が変形してインク室202を加圧することにより、噴射口200からインク滴を噴射することが可能となっている。ここで、周知のようにピエゾ素子204はいわゆる容量性の負荷に相当する。また、ピエゾ素子204は、印加される電圧に応じて変形量が変わるので、ピエゾ素子204に印加する電圧を適切に制御すれば、インク室202を押す力や押すタイミングを調節して、噴射するインク滴のサイズを変更することが可能である。このため、インクジェットプリンター10は、次のような電圧波形をピエゾ素子204に印加している。
【0027】
図3は、ピエゾ素子に印加する電圧波形(駆動電圧波形)を例示した説明図である。図示されている様に、駆動電圧波形は、時間の経過とともに電圧が上昇し、その後降下して元の電圧に戻る台形状の波形をしている。また、図中には、駆動電圧波形に応じてピエゾ素子204が伸縮する様子が示されている。図示されている様に、駆動電圧波形の電圧が上昇していくと、これに対応して、ピエゾ素子204が徐々に収縮していく。このとき、ピエゾ素子204に引っ張られてインク室202が膨張するので、インクカートリッジ26からインク室202内にインクを供給することができる。電圧が上昇してピークに達した後、電圧が降下していくと、今度は、ピエゾ素子204が伸張することによって、インク室202を圧縮して噴射口200からインクを噴射する。このとき、駆動電圧波形は、元の電圧(図中「初期電圧」と示した電圧)よりも低い電圧まで下がるようになっており、ピエゾ素子204を初期状態よりも伸張させてインクを十分に押し出すことが可能となっている。その後、駆動電圧波形は初期電圧へと戻り、これに対応して、ピエゾ素子204も初期状態へと戻る。
【0028】
この様に、インクジェットプリンター10は、インク室202にピエゾ素子204が設けられており、ピエゾ素子204に適切な駆動電圧波形を印加することによって、噴射ヘッド24からインク滴を噴射することが可能となっている。このため、インクジェットプリンター10は、各機構の動作を制御するプリンター制御回路50に加えて、駆動電圧波形を生成する駆動電圧波形生成回路100を備えている。
【0029】
図4は、本実施例のインクジェットプリンターに備えられた駆動電圧波形生成回路およびその周辺の回路構成を示した説明図である。駆動電圧波形生成回路100の詳細な構成については後で詳しく説明するが、駆動電圧波形生成回路100は、おおまかには、電圧を発生させる電源と、電源からの電圧を変化させて電圧波形を生成する波形生成部とから構成されている。また、駆動電圧波形生成回路100の動作は、プリンター制御回路50によって制御されるようになっており、プリンター制御回路50は駆動電圧波形生成回路100を制御することで、目的の駆動電圧波形を生成することが可能となっている。
【0030】
駆動電圧波形生成回路100の出力は、図示されている様に、ゲートユニット300へと接続されている。ゲートユニット300は、並列に接続された複数のゲート素子302から構成されており、それぞれのゲート素子302の先には、ピエゾ素子204が接続されている。各ゲート素子302は、個別に導通状態または切断状態とすることが可能となっており、インクを噴射しようとする噴射口のゲート素子302だけを導通状態にすれば、対応するピエゾ素子204だけに駆動電圧波形を印加して、その噴射口200からインク滴を噴射することが可能となっている。
【0031】
プリンター制御回路50は、こうした回路構成を用いて、画像を次のように印刷する。まず、印刷しようとする画像データに基づいて、インク滴を噴射する噴射口200と、噴射するインク滴のサイズとを決定し、噴射するインク滴のサイズに応じて、そのサイズのインク滴を噴射するための駆動電圧波形を決定する。そして、ゲートユニット300に命令を送ってその噴射口200に対応するゲート素子302を導通状態にさせるとともに、駆動電圧波形生成回路100を動作させて目的の駆動電圧波形を生成する。こうして生成された駆動電圧波形は、ゲート素子302を介して目的の噴射口200のピエゾ素子204へと印加され、その結果、目的の噴射口200から目的のサイズのインク滴が噴射される。
【0032】
ここで、こうした駆動電圧波形を生成する回路の構成を小型化するためには、前述した様に、充電したコンデンサーを直列に接続したり切り離したりすることで電圧を変化させる回路(いわゆるチャージポンプ回路)を用いて駆動電圧波形を生成することが好ましい。もっとも、通常のチャージポンプ回路では、出力可能な電圧値の種類の数がコンデンサーの数に限られてしまうので、精度の高い駆動電圧波形を生成することが困難である。かといって、多数のコンデンサーを備えて多種類の電圧を出力しようとすると、今度はコンデンサーの数が増えるので、回路構成を小型化することが困難になってしまう。そこで、本実施例の駆動電圧波形生成回路100では、次のような回路構成を採用することにより、コンデンサーの数を抑えながらも、出力可能な電圧の数を増やして、精度の高い駆動電圧波形を生成可能としている。
【0033】
B.本実施例の駆動電圧波形生成回路 :
図5は、本実施例の駆動電圧波形生成回路の構成を示した説明図である。図示されている様に、駆動電圧波形生成回路100は、電源と、コンデンサーC1〜C2およびコンデンサーCCと、それらを接続するスイッチから構成されている。コンデンサーC1およびコンデンサーC2は、図中に「A」と示したスイッチを介して電源と接続することが可能となっており、電源に接続することで、コンデンサーC1およびコンデンサーC2を電源と同一の電圧(図中「E」と示した電圧)に充電することが可能となっている。尚、これらのスイッチや電源は、プリンター制御回路50によって操作されるようになっており、プリンター制御回路50はこれらを操作することで、駆動電圧波形生成回路100の動作を制御することが可能である(図4を参照)。
【0034】
また、コンデンサーC1〜C2および電源は、いわゆるチャージポンプ回路を構成しており、スイッチを切り替えることで、互いに直列に接続したり、切り離したりすることが可能となっている。本実施例の駆動電圧波形生成回路100では、このチャージポンプ回路を用いて、次のように複数の種類の電圧を出力する。
【0035】
図6は、本実施例の駆動電圧波形生成回路のチャージポンプ回路を用いて、種々の電圧を出力する様子を示した説明図である。図6(a)には、コンデンサーC1に充電された電圧と同一の電圧(図中に「E」と示された電圧)を出力する様子が示されている。図示されている様に、スイッチSW1を図6(a)の上側に切り替え、スイッチSW2を図6(a)の下側に切り替え、スイッチSW3を図6(a)の上側に切り替えると、コンデンサーC1が出力端子に接続されるので、コンデンサーC1の電圧と同一の電圧(図中に「E」と示した電圧)が出力端子から出力される。
【0036】
また、図6(b)に示されている様に、図6(a)の状態からスイッチSW2を図6(b)の上側に切り替えると、今度は、コンデンサーC1とコンデンサーC2とを直列に接続した状態で、それらを出力端子に接続することができる。こうすると、コンデンサーC1の電圧にコンデンサーC2の電圧が加算されるので、「2E」の電圧を出力端子から出力することができる。
【0037】
更に、図6(c)に示されている様に、図6(b)の状態からスイッチSW4を電源に接続させるように図6(c)の上側に切り替えれば、コンデンサーC1とコンデンサーC2とを直列に接続したものに、更に電源を直列に接続することができる。こうすると、コンデンサーC1およびコンデンサーC2の合計の電圧「2E」に、更に電源の電圧「E」が加算されるので、「3E」の電圧を出力することができる。この様に、本実施例の駆動電圧波形生成回路100は、コンデンサーC1〜C2および電源で構成されるチャージポンプ回路を用いて、複数の種類の電圧を出力することが可能となっている。
【0038】
もっとも、こうしたチャージポンプ回路を用いただけでは、出力可能な電圧の数が限られるので、精度の高い駆動電圧波形を生成することは困難である。そこで、図5あるいは図6に示されている様に、本実施例の駆動電圧波形生成回路100では、電源やコンデンサーC1〜C2に加えて、コンデンサーCCを備えている。そして、このコンデンサーCCを、コンデンサーC1〜C2と電源とからなるチャージポンプ回路を用いて充電するとともに、充電したコンデンサーCCをコンデンサーC1〜C2および電源と組み合わせて使用することによって、上述した電圧に加えて、更に多くの種類の電圧を出力可能としている。この点について、図7を参照しながら説明する。
【0039】
図7は、コンデンサーCCを用いることにより、多種類の電圧が出力可能となる様子を示した説明図である。図7(a)には、コンデンサーCCを充電する様子が示されている。図示されている様に、コンデンサーCCを充電する際には、チャージポンプ回路を構成するコンデンサーC1〜C2と電源とを直列接続するとともに、スイッチSW3を操作して、チャージポンプ回路の出力を出力端子側からコンデンサーCC側へと切り替える。これにより、チャージポンプ回路の出力がコンデンサーCCに印加され、コンデンサーCCが充電される。
【0040】
ここで、コンデンサーCCは、チャージポンプ回路によって昇圧された電圧で充電されるので、充電後のコンデンサーCCの電圧は、電源の電圧(あるいはコンデンサーC1〜C2の電圧)とは異なる電圧になる。例えば、図7(a)の例では、コンデンサーCCはチャージポンプ回路によって昇圧された「3E」の電圧で充電されて、充電後の電圧は「3E」となり、電源およびコンデンサーC1〜C2の電圧「E」とは異なる電圧になる。このことは、見方を変えると、充電後のコンデンサーCCは、電源(あるいはコンデンサーC1〜C2)とは異なる電圧を発生する新たな電圧源となることを意味している。
【0041】
そこで、コンデンサーCCを、電源やコンデンサーC1〜C2と組み合わせて用いれば、コンデンサーC1〜C2や電源のみを用いた場合の電圧(図6を参照)とは異なる電圧を出力することが可能となる。すなわち、図7(b)に示されている様に、コンデンサーCCをコンデンサーC1に対して直列接続すれば、コンデンサーCCが「3E」に充電されていることから、「4E」の電圧を出力することが可能となる。また、図7(c)に示されている様に、コンデンサーC1およびコンデンサーC2を直列接続した状態で、コンデンサーCCに直列に接続すれば、コンデンサーCCが電圧「3E」に充電されていることから、「5E」の電圧を出力することが可能となる。
【0042】
このように、本実施例の駆動電圧波形生成回路100では、コンデンサーCCを、チャージポンプ回路で充電し、コンデンサーCCを電源やコンデンサーC1〜C2と直列に接続することで、チャージポンプ回路を用いて出力可能な電圧(図6を参照)に加えて、更に複数の種類の電圧を出力することが可能となっている。こうしたことが可能となるのは、前述した様に、コンデンサーCCを、電源やコンデンサーC1〜C2とは異なる電圧に充電していることによる。この点について、図8を参照しながら補足して説明する。
【0043】
図8は、本実施例の駆動電圧波形生成回路によって多種類の電圧が出力可能となる様子を概念的に示した説明図である。図中のグラフの左側には、本実施例の駆動電圧波形生成回路100によって出力可能となる電圧値が示されている。図中の白抜きの矢印は、電源およびコンデンサーC1〜C2を用いた場合に出力可能な電圧値を表しており、ハッチングを付した矢印は、コンデンサーCCを用いることで新たに出力可能となる電圧値を表している。
【0044】
一般に、チャージポンプ回路では、複数のコンデンサーが同一の電圧に充電されるので、出力される電圧の値は、直列に接続するコンデンサーの数によって決まってしまう。このため、直列に接続するコンデンサーの数が同じであれば、どのコンデンサーを用いても出力される電圧の値は同じであり、直列に接続するコンデンサーを他のコンデンサーに替えても、異なる電圧値を出力して出力可能な電圧の数を増やすことはできない。こうした点に鑑みて、本実施例の駆動電圧波形生成回路100では、コンデンサーCCを、コンデンサーC1〜C2や電源とは異なる電圧に充電している。こうすれば、コンデンサーC1とコンデンサーC2とを直列接続した際の電圧(図中に「2E」と示した電圧)と、コンデンサーC2の代わりにコンデンサーCCを用いた際の電圧(図中に「4E」と示した電圧)とが異なるので、コンデンサーC2に代えてコンデンサーCCを用いることで、新たな電圧を出力して出力可能な電圧の数を増やすことが可能となる。
【0045】
また、チャージポンプ回路で電圧を出力する際には、コンデンサーに加えて、コンデンサーを充電する電源を使用することも可能であるが、こうした場合、その電源でコンデンサーを充電していることから、電源の電圧とコンデンサーの電圧とは同じ電圧になっている。このため、コンデンサーと電源とのいずれを用いても、出力される電圧は同じであり、コンデンサーと電源とを使い分けても出力可能な電圧の数を増やすことはできない。これに対して、本実施例の駆動電圧波形生成回路100では、電源の電圧とコンデンサーCCの電圧とが異なるので、コンデンサーC1およびコンデンサーC2と電源とを直列に接続した際の電圧(図中に「3E」と示した電圧)と、電源の代わりにコンデンサーCCを用いた際の電圧(図中に「5E」と示した電圧)とが異なる。したがって、電源の変わりにコンデンサーCCを用いることで、新たな電圧を出力して出力可能な電圧の数を増やすこと可能となっている。
【0046】
図8の右側には、こうして出力可能になった電圧を用いて生成した駆動電圧波形が例示されている。本実施例の駆動電圧波形生成回路100では、多種類の電圧を出力可能となっていることから、図示されている様に、電圧を小刻みに変化させることが可能となり、精度の高い駆動電圧波形を生成することが可能となる。これにより、本実施例のインクジェットプリンター10では、噴射口200に設けられたピエゾ素子に精度の高い駆動電圧波形を印加することが可能となっており、その結果、ピエゾ素子を正確に制御して、インク滴を的確に噴射することが可能となっている。
【0047】
また、本実施例の駆動電圧波形生成回路100では、コンデンサーの数を抑えて回路構成を小型化することも可能である。すなわち、本実施例の駆動電圧波形生成回路では、前述した様に、コンデンサーCCを用いた場合と、コンデンサーCCを用いない場合とで出力される電圧が異なるので、直列に接続するコンデンサーの数が同じであっても、2通りの電圧が出力可能となる。このため、コンデンサーCCを備えることにより、おおまかには、チャージポンプ回路が備えているコンデンサーの数の2倍の種類の電圧を出力することが可能となる。このため、コンデンサーの数を大幅に増やす必要がなく、コンデンサーの数を抑えて回路構成を小型化することが可能となっている。
【0048】
また、本実施例の駆動電圧波形生成回路100では、コンデンサーCCを他のコンデンサーよりも高い電圧に充電することができることから、電圧を出力する際に直列に接続するコンデンサーの数を少なく抑えることも可能となっている。すなわち、コンデンサーCCを他のコンデンサーよりも高い電圧に充電しているので、コンデンサーCCを用いれば、その分だけ直列に接続するコンデンサーの数を少なく抑えることが可能である。例えば、図7(b)に示されている例では、チャージポンプ回路のコンデンサーの電圧の4倍の電圧を出力しているが、4倍の電圧を出力するために4つのコンデンサーを直列接続する必要はなく、コンデンサーCCとコンデンサーC1との2つのコンデンサーを直列に接続すればよい。
【0049】
一般に、コンデンサーを直列接続すると全体の静電容量が低下することから、多数のコンデンサーを直列接続する場合には、個々のコンデンサーの静電容量を予め大きくしておく必要がある。この点、本実施例の駆動電圧波形生成回路では、直列接続するコンデンサーの数を少なくすることができるので、個々のコンデンサーの静電容量を小さく抑えることが可能であり、更には、より小型のコンデンサーを用いて回路構成をより小型化することも可能となっている。また、コンデンサーとコンデンサーとの間を接続するスイッチの数も少なくすることができるので、回路構成をより簡素化することも可能であり、延いては、スイッチの内部抵抗による電力消費を減らして電力効率を向上させることも可能となる。
【0050】
尚、コンデンサーCCを充電する際には(図7(a)を参照)、コンデンサーC1およびコンデンサーC2の電圧が低下することにより、コンデンサーCCを十分に充電できない場合も生じ得る。こうした場合は、コンデンサーC1およびコンデンサーC2を電源で再び充電してから、コンデンサーCCに再度接続すればよい。こうした動作を繰り返すことで、コンデンサーCCを十分に充電することが可能である。
【0051】
以上に説明した様に、本実施例の駆動電圧波形生成回路100では、コンデンサーCCを電源やコンデンサーC1〜C2とは異なる電圧に充電して用いることにより、コンデンサーの数を大幅に増やすことなく、多種類の電圧を出力して精度の高い駆動電圧波形を生成することが可能となっている。このことから、回路構成を小型化することが可能となっており、更には、コンデンサー同士を接続するスイッチ等での電力消費を抑えて、電力効率を高めることも可能となっている。
【0052】
C.変形例 :
以下に、前述した本実施例の変形例について説明する。なお、以下に説明する変形例において、上述した本実施例と同様の構成部分については、本実施例と同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
C−1.第1変形例 :
前述した実施例の駆動電圧波形生成回路では、コンデンサーCCの出力電圧を、コンデンサーC1およびコンデンサーC2の出力電圧と組み合わせて出力端子から出力するものとして説明した(図7(b)および図7(c)を参照)。しかし、コンデンサーC1やコンデンサーC2と組み合わせずに、コンデンサーCCの出力電圧をそのまま出力端子から出力してもよい。
【0053】
図9は、コンデンサーCCの電圧を出力端子に直接出力する第1変形例の駆動電圧波形生成回路を示した説明図である。図示されている様に、コンデンサーCCは図中に「B」と示したスイッチを介して出力端子に接続することが可能となっており、コンデンサーCCの電圧を、コンデンサーC1やコンデンサーC2を介さずに出力端子から直接出力することが可能となっている。こうすると、コンデンサーCCが出力端子に電圧を出力している間は、コンデンサーC1およびコンデンサーC2は電圧を出力する必要がないので、その間に図中に「A」と示したスイッチを操作して、コンデンサーC1およびコンデンサーC2を充電することが可能である。こうすれば、駆動電圧波形を出力している間に、コンデンサーC1およびコンデンサーC2の電圧が低下しても、コンデンサーCCを用いている間にコンデンサーC1およびコンデンサーC2を充電しなおすことが可能であり、コンデンサーC1およびコンデンサーC2を充電しなおす時間を省略して駆動電圧波形をより迅速に出力することが可能となる。
【0054】
尚、図3を用いて前述したように、インクジェットプリンター10では、ピエゾ素子204に予め一定の電圧(図3で「初期電圧」と示した電圧)を印加している。そこで、コンデンサーCCを初期電圧に充電しておけば、コンデンサーCCを用いてピエゾ素子204に初期電圧を印加することも可能である。こうすれば、初期電圧を印加している間にコンデンサーC1やコンデンサーC2を充電して駆動電圧波形の出力に備えることができるので、より好適である。また、初期電圧を印加する電源を別途用意する必要がないので、装置構成をより小型化することが可能となる。
【0055】
C−2.第2変形例 :
また、コンデンサーCCから電圧を出力端子に出力している間には、コンデンサーC1やコンデンサーC2を充電するだけでなく、コンデンサーCCを充電することも可能である。
【0056】
図10は、コンデンサーCCから電圧を出力している間に、コンデンサーCCを充電可能とした第2変形例の駆動電圧波形生成回路を示した説明図である。図示されている様に、第2変形例の駆動電圧波形生成回路では、コンデンサーCCが出力端子に接続されるとともに、電源およびコンデンサーC1〜C2からなるチャージポンプ回路の出力が、ダイオードを介してコンデンサーCCに供給されるようになっている(図中に「B」と示した部分を参照)。こうすれば、コンデンサーCCから電圧が出力されて、コンデンサーCCの電圧が下がると、ダイオードを介してチャージポンプ回路からコンデンサーCCに電力が供給されるので、コンデンサーCCから電圧を出力しながらも、コンデンサーCCを充電することが可能となる。
【0057】
C−3.第3変形例 :
前述した実施例の駆動電圧波形生成回路100では、スイッチSW0を切り替えることで、電源とコンデンサーCCとを使い分けることが可能となっていた(図6(c)および図7(c)を参照)。しかし、コンデンサーCCと電源とを使い分けるだけでなく、両者を直列に接続して同時に使用することも可能である。
【0058】
図11は、コンデンサーCCおよび電源を直列に接続可能とした第3変形例の駆動電圧波形生成回路を示した説明図である。図示されている様に、第3変形例の駆動電圧波形生成回路では、図中に「C」と示したスイッチを切り替えることで、コンデンサーCCと電源とを直列に接続することが可能となっている。駆動電圧波形生成回路をこのような構成とすれば、電源および全てのコンデンサーの電圧を加算した電圧(図11の例では、図中に「6E」と示した電圧)を出力することが可能となるので、出力可能な電圧の数を更に増やすことが可能となる。
【0059】
C−4.第4変形例 :
前述した実施例の駆動電圧波形生成回路では、コンデンサーCCを、チャージポンプ回路の出力電圧と同一の電圧に充電するものとして説明した。しかし、コンデンサーCCは、電源およびコンデンサーC1〜C2と異なる電圧に充電すればよく、必ずしもチャージポンプの出力電圧と同一の電圧に充電する必要はない。
【0060】
図12は、コンデンサーCCをチャージポンプ回路の出力電圧とは異なる電圧に充電する第4変形例の駆動電圧波形生成回路を例示した説明図である。図12(a)に示されている様に、第4変形例の駆動電圧波形生成回路では、コンデンサーCC1およびコンデンサーCC2の2つのコンデンサーを直列に接続することが可能となっており(図中に「D」と示した部分を参照)、2つのコンデンサーを直列に接続した状態で、これらのコンデンサーをチャージポンプ回路で充電することが可能となっている。このため、2つのコンデンサーは、それぞれチャージポンプ回路の出力電圧の半分の電圧(図中に「1.5E」と示した電圧)に充電される。すると、コンデンサーCC1(あるいはコンデンサーCC2)の電圧は、電源およびコンデンサーC1〜C2の電圧と異なることから、コンデンサーC1〜C2や電源とコンデンサーCC1(あるいはコンデンサーCC2)を組み合わせて用いることで、多種類の電圧を出力することが可能となる。
【0061】
また、コンデンサーCC1およびコンデンサーCC2を使って電圧を出力する際には、図12(b)に示されている様に、コンデンサーCC1およびコンデンサーCC2を並列に接続した状態で使用するものとしてもよい。こうすれば、コンデンサーCC1およびコンデンサーCC2の全体の静電容量を増やすことができるので、より多くの電力を供給することが可能となり、また、コンデンサーCC1およびコンデンサーCC2を充電する頻度を減らして駆動電圧波形をより迅速に生成することが可能となる。
【0062】
C−5.第5変形例 :
前述した実施例および変形例では、チャージポンプ回路とコンデンサーCCとを直列に接続した状態で出力端子に接続する際には、出力端子側にチャージポンプ回路を接続し、GND側にはコンデンサーCCを接続するものとして説明した(図7(c)を参照)。しかし、これとは逆に、GND側にチャージポンプ回路を接続し、出力端子側にコンデンサーCCを接続するものとしてもよい。
【0063】
図13は、GND側にチャージポンプを接続し、出力端子側にコンデンサーCCを接続する第5変形例の駆動電圧波形生成回路を示した説明図である。図示されている様に、第5変形例の駆動電圧波形生成回路100では、図中に図中に「F」と示したスイッチを介してコンデンサーCCを出力端子に接続することが可能となっており、また、スイッチSW4を介してチャージポンプ回路をGNDに接続することが可能となっている。このため、チャージポンプ回路とコンデンサーCCとを直列に接続した状態では、出力端子の側にコンデンサーCCが接続され、GNDの側にはチャージポンプ回路が接続された状態となる。
【0064】
こうすると、チャージポンプ回路をGNDに接続していることから、チャージポンプ回路とコンデンサーCCとを直列に接続して高い電圧を出力する場合であっても、チャージポンプ回路の各スイッチにかかる電圧を低く抑えることが可能となる。例えば、図13の例では、チャージポンプ回路とコンデンサーCCとを直列に接続することで電圧値が「5E」の電圧を出力することが可能であるが、チャージポンプ回路がGNDに接続されているため、スイッチSW1にかかる電圧は、コンデンサー1つ分の電圧の「E」に抑えられる。同様に、スイッチSW2にかかる電圧は、コンデンサー2つ分の電圧の「2E」に抑えられる。このように、チャージポンプ回路をGNDの側に接続しておけば、チャージポンプ回路の各スイッチにかかる電圧を低く抑えることができるので、チャージポンプ回路の各スイッチには、電圧に対する耐性(耐圧)が小さなスイッチを用いることが可能となる。その結果、耐圧が小さなスイッチを用いて駆動電圧波形生成回路100の回路構成をより簡素化することが可能となり、更には、耐圧が小さなスイッチを用いればスイッチを制御する回路も簡素化することが可能となるので、スイッチを制御するプリンター制御回路50(図4を参照)の回路構成を簡素化することも可能となる。
【0065】
以上、本実施例の駆動電圧波形生成回路を搭載したインクジェットプリンターについて説明したが、本発明は上記すべての実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。例えば、より大型の噴射ヘッドを備えた印刷装置(いわゆるラインヘッドプリンタ等)に本実施例の駆動電圧波形生成回路を搭載してもよい。このような印刷装置の場合、噴射ヘッドが大型化するのに伴って多数の駆動素子が搭載されるので、駆動電圧波形を生成する回路構成も大型化する傾向がある。この点、本実施例の駆動電圧波形生成回路を用いれば、回路構成を小型化することが可能となる。
【0066】
また、上述した実施例では、本実施例の駆動電圧波形生成回路を、インクジェットプリンターのピエゾ素子の駆動回路に適用した場合を例にとって説明したが、本実施例の駆動電圧波形生成回路は、電圧に応じて駆動する種々の装置に適用することが可能である。例えば、液晶パネルや有機ELパネルなどの電圧により動作可能な表示装置に適用することも可能である。また、水あるいは食塩水等の液体をパルス状に噴射して生体組織を切開または切除する手術具としての流体噴射装置において、ピエゾ素子を駆動することによって液体室の容積を変更して、液体をパルス状の脈流に変換する脈流発生装置に適用することも可能である。こうした装置を駆動する場合も、多種類の電圧を出力可能なことから、液晶素子や有機ELなどの種々の素子を正確に動作させることが可能となる。また、多種類の電圧を出力可能なことから、表示装置の階調値の数を増やすことも可能となる。もちろん、表示装置に限らず、電圧により駆動可能な装置であれば、多種類の電圧を出力可能なことから、装置を正確に駆動させることが可能である。
【符号の説明】
【0067】
10…インクジェットプリンター、20…キャリッジ、22…キャリッジケース、24…噴射ヘッド、26…インクカートリッジ、30…駆動機構、32…タイミングベルト、34…駆動プーリ、36…ステップモータ、38…ガイドレール、40…プラテンローラー、50…プリンター制御回路、100…駆動電圧波形生成回路、200…噴射口、202…インク室、204…ピエゾ素子、300…ゲートユニット、302…ゲート素子。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧を印加して負荷を駆動する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電圧を印加することにより、半導体素子や誘電体素子などの電子素子の負荷を駆動する技術は、種々の装置で広く用いられている。例えば、インクジェットプリンターなどの流体噴射装置では、電圧に応じて伸縮するピエゾ素子に電圧を印加することで、噴射口から流体を押し出して噴射している。また、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの表示装置では、液晶に電圧を印加して液晶分子を整列させたり、あるいは有機ELに電圧を印加して発光させることによって画像を表示している。また、電子素子に限らず、モーターや電磁石などの種々の負荷に電圧を印加して負荷を駆動する技術も広く用いられている。
【0003】
これら種々の負荷を駆動する装置では、負荷に印加する電圧の波形(電圧波形)を制御することで負荷の動作を制御しており、このため、電圧波形を正確に生成することが重要である。こうした理由から、生成する電圧波形の最大電圧よりも高い電圧を発生する電源を用意しておき、電源からの電圧をパワートランジスター等の半導体素子を用いて降圧させることで電圧波形を生成する技術が広く用いられている(例えば、特許文献1)。この技術では、パワートランジスター等を制御することで、電圧波形を正確に生成することが可能である。
【0004】
また、出力電圧が高い電源や耐電圧の高いパワートランジスターを備えると装置が大型化する傾向がある。そこで、複数のコンデンサーを同一の電圧に充電し、それらのコンデンサーを直列に接続することで電圧を上昇させるとともに、直列に接続するコンデンサーの数を変えることで電圧を変化させる回路(いわゆるチャージポンプ回路)を用いることにより、パワートランジスター等を省略して装置構成を小型化しようとする技術が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−259969号公報
【特許文献2】特開平7−130484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、提案されている技術では、精度の高い電圧波形を生成することが困難だという問題があった。すなわち、直列に接続するコンデンサーの数を変えることで電圧を変化させることから、出力できる電圧値の種類の数は、コンデンサーの数に限られる。すると、この限られた種類の電圧で電圧波形を生成しなければならないので、精度の高い電圧波形を生成することが困難となる。もちろん、より多くのコンデンサーを備えて多種類の電圧を出力すれば、電圧波形の精度を高めることが可能であるが、今度はコンデンサーの数が増えるので、回路を小型化することが困難になってしまう。
【0007】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題を解決するためになされたものであり、コンデンサーの数を抑えつつ、出力可能な電圧値の種類を増やして電圧波形の精度を高める技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題の少なくとも一部を解決するために、本発明の負荷駆動回路は次の構成を採用した。すなわち、
負荷に電圧を印加することによって該負荷を駆動する負荷駆動回路であって、
電源から電圧の供給を受けて充電される複数の第1蓄電素子と、
前記複数の第1蓄電素子間の接続状態を切り替えることにより、該第1蓄電素子が直列に接続された直列蓄電素子群を構成する直列蓄電素子群構成手段と、
前記第1蓄電素子とは異なる第2蓄電素子を、前記直列蓄電素子群を用いて充電する第2蓄電素子充電手段と、
前記充電した第2蓄電素子と前記直列蓄電素子群とを直列接続した状態で、該第2蓄電素子および該直列蓄電素子群を負荷に接続する第1の接続状態と、該第2蓄電素子と該直列蓄電素子群との直列接続を切断した状態で、該直列蓄電素子群を前記負荷に接続する第2の接続状態とを切り換えて、該負荷に電圧を印加する電圧印加手段と
を備えることを要旨とする。
【0009】
かかる本発明の負荷駆動回路では、電源により充電される複数の第1蓄電素子を備えており、これら複数の第1蓄電素子を直列に接続して直列蓄電素子群を構成する。また、この直列蓄電素子群を第2蓄電素子に接続することで、第2蓄電素子を充電する。そして、直列蓄電素子群を負荷に接続して負荷に電圧を印加する際には、充電した第2蓄電素子と直列蓄電素子群とを直列に接続した状態で、直列蓄電素子群および第2蓄電素子を負荷に接続する状態と、第2蓄電素子と直列蓄電素子群との直列接続を切断した状態で、直列蓄電素子を負荷に接続する状態とを切り替えて電圧を印加する。
【0010】
複数の第1蓄電素子を直列接続した直列蓄電素子群は、各々の第1蓄電素子とは異なる電圧を発生するので、これを用いて充電される第2蓄電素子は、第1蓄電素子とは電圧値が異なる電圧を持つ。すると、これらの蓄電素子を用いて電圧を出力する際には、第1蓄電素子のみを直列接続した場合(直列蓄電素子群のみを用いた場合)と、第1蓄電素子に加えて第2蓄電素子を直列接続した場合(直列蓄電素子群に第2蓄電素子を直列接続した場合)とで、電圧値が異なる電圧が出力される。これにより、出力可能な電圧の数を増やすことができるので、出力電圧の階調度が向上する結果、電圧波形の精度を高めることが可能となる。また、直列蓄電素子群は、直列蓄電素子群を構成する第1蓄電素子の数が異なる複数の態様を取り得るが、そのそれぞれの態様に対して、直列蓄電素子群と第2蓄電素子とを直列接続するか否かに応じた2種類の電圧を出力することが可能である。このため、第2蓄電素子を備えるだけで出力可能な電圧の数を大幅に増やすことが可能であり、蓄電素子の数を抑えながらも多種類の電圧を出力することが可能となる。
【0011】
尚、蓄電素子は、充電されて電圧を発生する素子であれば、どのような素子であってもよい。例えば、コンデンサーのように充電されて電荷が供給されると内部に電場を蓄えることによって電圧を発生する素子であってもよいし、あるいは、二次電池のように内部に化学的なエネルギーを蓄えることによって電圧を発生する素子であってもよい。
【0012】
また、上述した本発明の負荷駆動回路では、第1蓄電素子を負荷から切断して充電する際には、第2蓄電素子を負荷に接続するものとしてもよい。
【0013】
こうすれば、第2蓄電素子の電圧を用いて負荷に電圧を印加した状態のままで、第1蓄電素子を充電することができるので、第1蓄電素子を充電する際にも、負荷に電圧を印加した状態を保つことが可能となる。
【0014】
また、上述した本発明の負荷駆動回路は、次の態様として把握することも可能である。すなわち、
電源から電圧の供給を受けて充電される第1蓄電素子と、
前記電源から電圧の供給を受けて充電される第2蓄電素子と、
前記第1蓄電素子と前記第2蓄電素子とが直列に接続された直列蓄電素子群を構成する直列蓄電素子群構成手段と、
前記第1蓄電素子および前記第2蓄電素子とは異なる第3蓄電素子を、前記直列蓄電素子群を用いて充電する第3蓄電素子充電手段と、
前記充電した第3蓄電素子と前記直列蓄電素子群とを直列接続した状態で、該第3蓄電素子および該直列蓄電素子群を負荷に接続する第1の接続状態と、該第3蓄電素子と該直列蓄電素子群との直列接続を切断した状態で、該直列蓄電素子群を前記負荷に接続する第2の接続状態とを切り換えて、該負荷に電圧を印加する電圧印加手段と
を備える負荷駆動回路として把握することが可能である。
【0015】
このような態様の負荷駆動回路では、電源により充電される第1蓄電素子および第2蓄電素子を備えており、第1蓄電素子と第2蓄電素子とを直列に接続して直列蓄電素子群を構成する。また、この直列蓄電素子群を第3蓄電素子に接続することで、第3蓄電素子を充電する。そして、直列蓄電素子群を負荷に接続して負荷に電圧を印加する際には、充電した第3蓄電素子と直列蓄電素子群とを直列に接続した状態で、直列蓄電素子群および第3蓄電素子を負荷に接続する状態と、第3蓄電素子と直列蓄電素子群との直列接続を切断した状態で、直列蓄電素子群を負荷に接続する状態とを切り換えて電圧を印加する。
【0016】
第1蓄電素子と第2蓄電素子とを直列接続した直列蓄電素子群は、第1蓄電素子および第2蓄電素子とは異なる電圧を発生するので、これを用いて充電される第3蓄電素子は、第1蓄電素子および第2蓄電素子とは異なる電圧を持つ。したがって、直列蓄電素子群のみを用いた場合(第1蓄電素子および第2蓄電素子のみを用いた場合)と、直列蓄電素子群に加えて第3蓄電素子を直列接続した場合とでは、異なる電圧が出力される。これにより、電圧値の種類を増やして出力電圧の階調度を向上させることが可能となり、その結果、電圧波形の精度を高めることが可能となる。
【0017】
また、上述した本発明の負荷駆動回路を用いれば、噴射ノズルに設けられたアクチュエーターを駆動することで噴射ノズルから液体を適切に噴射可能なことから、本発明は、上述した負荷駆動回路を備える液体噴射装置として把握することも可能である。
【0018】
かかる本発明の液体噴射装置では、上述した負荷駆動回路によって精度の高い電圧波形が生成されるので、アクチュエーターの動作を精度良く制御することができ、その結果、噴射する液体の量や液滴のサイズ、液体の噴射速度などを精度良く制御して液体を適切に噴射することが可能となる。
【0019】
また、上述した本発明の液体噴射装置は印刷装置に搭載することも可能であることから、本発明は、上述した液体噴射装置を搭載した印刷装置として把握することも可能である。
【0020】
このような本発明の印刷装置では、上述した負荷駆動回路によって、噴射ノズルに設けられたアクチュエーターを精度良く駆動することが可能であり、その結果、インクなどの液体を精度良く噴射することができるので、品質の高い画像を印刷することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施例の電圧波形生成回路を搭載したインクジェットプリンターの大まかな構成を示した説明図である。
【図2】噴射ヘッドの内部の機構を詳細に示した説明図である。
【図3】ピエゾ素子に印加する電圧波形(駆動電圧波形)を例示した説明図である。
【図4】本実施例のインクジェットプリンターに備えられた駆動電圧波形生成回路およびその周辺の回路構成を示した説明図である。
【図5】本実施例の駆動電圧波形生成回路の構成を示した説明図である。
【図6】本実施例の駆動電圧波形生成回路のチャージポンプ回路を用いて種々の電圧を出力する様子を示した説明図である。
【図7】コンデンサーCCを用いることにより多種類の電圧が出力可能となる様子を示した説明図である。
【図8】本実施例の駆動電圧波形生成回路によって多種類の電圧が出力可能となる様子を概念的に示した説明図である。
【図9】コンデンサーCCの電圧を出力端子に直接出力する第1変形例の駆動電圧波形生成回路を示した説明図である。
【図10】コンデンサーCCから電圧を出力している間にコンデンサーCCを充電可能とした第2変形例の駆動電圧波形生成回路を示した説明図である。
【図11】コンデンサーCCおよび電源を直列に接続可能とした第3変形例の駆動電圧波形生成回路を示した説明図である。
【図12】コンデンサーCCをチャージポンプ回路の出力電圧とは異なる電圧に充電する第4変形例の駆動電圧波形生成回路を例示した説明図である。
【図13】GND側にチャージポンプ回路を接続し、出力端子側にコンデンサーCCを接続する第5変形例の駆動電圧波形生成回路を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、上述した本願発明の内容を明確にするために、次のような順序に従って、電圧波形生成回路を搭載したインクジェットプリンターの実施例を説明する。
A.インクジェットプリンターの装置構成:
B.本実施例の駆動電圧波形生成回路:
C.変形例:
C−1.第1変形例:
C−2.第2変形例:
C−3.第3変形例:
C−4.第4変形例:
C−5.第5変形例:
【0023】
A.インクジェットプリンターの装置構成 :
図1は、本実施例の電圧波形生成回路を搭載したインクジェットプリンターの大まかな構成を示した説明図である。図示されているように、インクジェットプリンター10は、主走査方向に往復動しながら印刷媒体2上にインクドットを形成するキャリッジ20と、キャリッジ20を往復動させる駆動機構30と、印刷媒体2の紙送りを行うためのプラテンローラー40などから構成されている。キャリッジ20には、インクを収容したインクカートリッジ26や、インクカートリッジ26が装着されるキャリッジケース22、キャリッジケース22の底面側(印刷媒体2に向いた側)に搭載されてインクを噴射する噴射ヘッド24などが設けられており、インクカートリッジ26内のインクを噴射ヘッド24に導いて、噴射ヘッド24から印刷媒体2に向かって正確な分量のインクを噴射することが可能となっている。
【0024】
キャリッジ20を往復動させる駆動機構30は、主走査方向に延設されたガイドレール38と、内側に複数の歯形が形成されたタイミングベルト32と、タイミングベルト32を駆動させる駆動プーリ34およびステップモータ36などから構成されている。タイミングベルト32の一部はキャリッジケース22に固定されており、タイミングベルト32を駆動することによって、ガイドレール38に沿ってキャリッジケース22を精度良く移動させることができる。
【0025】
また、プラテンローラー40は、図示しない駆動モーターやギア機構によって駆動されて、印刷媒体2を副走査方向に所定量ずつ紙送りすることが可能となっている。これらの各機構は、インクジェットプリンター10に搭載されたプリンター制御回路50によって制御されており、プリンター制御回路50の制御の下で、プラテンローラー40が印刷媒体2を紙送りするとともに、キャリッジケース22が主走査方向に移動しながら噴射ヘッド24からインクを噴射することにより、印刷媒体2上に画像を印刷する。
【0026】
図2は、噴射ヘッドの内部の機構を詳細に示した説明図である。図示されている様に、噴射ヘッド24の底面(印刷媒体2に向いている面)には、複数の噴射口200が設けられており、それぞれの噴射口200からインク滴を噴射することが可能となっている。各噴射口200はそれぞれインク室202に接続されており、インク室202には、インクカートリッジ26から供給されたインクが満たされている。インク室202の上にはピエゾ素子(圧電素子)204が設けられており、ピエゾ素子204に電圧を印加すると、ピエゾ素子が変形してインク室202を加圧することにより、噴射口200からインク滴を噴射することが可能となっている。ここで、周知のようにピエゾ素子204はいわゆる容量性の負荷に相当する。また、ピエゾ素子204は、印加される電圧に応じて変形量が変わるので、ピエゾ素子204に印加する電圧を適切に制御すれば、インク室202を押す力や押すタイミングを調節して、噴射するインク滴のサイズを変更することが可能である。このため、インクジェットプリンター10は、次のような電圧波形をピエゾ素子204に印加している。
【0027】
図3は、ピエゾ素子に印加する電圧波形(駆動電圧波形)を例示した説明図である。図示されている様に、駆動電圧波形は、時間の経過とともに電圧が上昇し、その後降下して元の電圧に戻る台形状の波形をしている。また、図中には、駆動電圧波形に応じてピエゾ素子204が伸縮する様子が示されている。図示されている様に、駆動電圧波形の電圧が上昇していくと、これに対応して、ピエゾ素子204が徐々に収縮していく。このとき、ピエゾ素子204に引っ張られてインク室202が膨張するので、インクカートリッジ26からインク室202内にインクを供給することができる。電圧が上昇してピークに達した後、電圧が降下していくと、今度は、ピエゾ素子204が伸張することによって、インク室202を圧縮して噴射口200からインクを噴射する。このとき、駆動電圧波形は、元の電圧(図中「初期電圧」と示した電圧)よりも低い電圧まで下がるようになっており、ピエゾ素子204を初期状態よりも伸張させてインクを十分に押し出すことが可能となっている。その後、駆動電圧波形は初期電圧へと戻り、これに対応して、ピエゾ素子204も初期状態へと戻る。
【0028】
この様に、インクジェットプリンター10は、インク室202にピエゾ素子204が設けられており、ピエゾ素子204に適切な駆動電圧波形を印加することによって、噴射ヘッド24からインク滴を噴射することが可能となっている。このため、インクジェットプリンター10は、各機構の動作を制御するプリンター制御回路50に加えて、駆動電圧波形を生成する駆動電圧波形生成回路100を備えている。
【0029】
図4は、本実施例のインクジェットプリンターに備えられた駆動電圧波形生成回路およびその周辺の回路構成を示した説明図である。駆動電圧波形生成回路100の詳細な構成については後で詳しく説明するが、駆動電圧波形生成回路100は、おおまかには、電圧を発生させる電源と、電源からの電圧を変化させて電圧波形を生成する波形生成部とから構成されている。また、駆動電圧波形生成回路100の動作は、プリンター制御回路50によって制御されるようになっており、プリンター制御回路50は駆動電圧波形生成回路100を制御することで、目的の駆動電圧波形を生成することが可能となっている。
【0030】
駆動電圧波形生成回路100の出力は、図示されている様に、ゲートユニット300へと接続されている。ゲートユニット300は、並列に接続された複数のゲート素子302から構成されており、それぞれのゲート素子302の先には、ピエゾ素子204が接続されている。各ゲート素子302は、個別に導通状態または切断状態とすることが可能となっており、インクを噴射しようとする噴射口のゲート素子302だけを導通状態にすれば、対応するピエゾ素子204だけに駆動電圧波形を印加して、その噴射口200からインク滴を噴射することが可能となっている。
【0031】
プリンター制御回路50は、こうした回路構成を用いて、画像を次のように印刷する。まず、印刷しようとする画像データに基づいて、インク滴を噴射する噴射口200と、噴射するインク滴のサイズとを決定し、噴射するインク滴のサイズに応じて、そのサイズのインク滴を噴射するための駆動電圧波形を決定する。そして、ゲートユニット300に命令を送ってその噴射口200に対応するゲート素子302を導通状態にさせるとともに、駆動電圧波形生成回路100を動作させて目的の駆動電圧波形を生成する。こうして生成された駆動電圧波形は、ゲート素子302を介して目的の噴射口200のピエゾ素子204へと印加され、その結果、目的の噴射口200から目的のサイズのインク滴が噴射される。
【0032】
ここで、こうした駆動電圧波形を生成する回路の構成を小型化するためには、前述した様に、充電したコンデンサーを直列に接続したり切り離したりすることで電圧を変化させる回路(いわゆるチャージポンプ回路)を用いて駆動電圧波形を生成することが好ましい。もっとも、通常のチャージポンプ回路では、出力可能な電圧値の種類の数がコンデンサーの数に限られてしまうので、精度の高い駆動電圧波形を生成することが困難である。かといって、多数のコンデンサーを備えて多種類の電圧を出力しようとすると、今度はコンデンサーの数が増えるので、回路構成を小型化することが困難になってしまう。そこで、本実施例の駆動電圧波形生成回路100では、次のような回路構成を採用することにより、コンデンサーの数を抑えながらも、出力可能な電圧の数を増やして、精度の高い駆動電圧波形を生成可能としている。
【0033】
B.本実施例の駆動電圧波形生成回路 :
図5は、本実施例の駆動電圧波形生成回路の構成を示した説明図である。図示されている様に、駆動電圧波形生成回路100は、電源と、コンデンサーC1〜C2およびコンデンサーCCと、それらを接続するスイッチから構成されている。コンデンサーC1およびコンデンサーC2は、図中に「A」と示したスイッチを介して電源と接続することが可能となっており、電源に接続することで、コンデンサーC1およびコンデンサーC2を電源と同一の電圧(図中「E」と示した電圧)に充電することが可能となっている。尚、これらのスイッチや電源は、プリンター制御回路50によって操作されるようになっており、プリンター制御回路50はこれらを操作することで、駆動電圧波形生成回路100の動作を制御することが可能である(図4を参照)。
【0034】
また、コンデンサーC1〜C2および電源は、いわゆるチャージポンプ回路を構成しており、スイッチを切り替えることで、互いに直列に接続したり、切り離したりすることが可能となっている。本実施例の駆動電圧波形生成回路100では、このチャージポンプ回路を用いて、次のように複数の種類の電圧を出力する。
【0035】
図6は、本実施例の駆動電圧波形生成回路のチャージポンプ回路を用いて、種々の電圧を出力する様子を示した説明図である。図6(a)には、コンデンサーC1に充電された電圧と同一の電圧(図中に「E」と示された電圧)を出力する様子が示されている。図示されている様に、スイッチSW1を図6(a)の上側に切り替え、スイッチSW2を図6(a)の下側に切り替え、スイッチSW3を図6(a)の上側に切り替えると、コンデンサーC1が出力端子に接続されるので、コンデンサーC1の電圧と同一の電圧(図中に「E」と示した電圧)が出力端子から出力される。
【0036】
また、図6(b)に示されている様に、図6(a)の状態からスイッチSW2を図6(b)の上側に切り替えると、今度は、コンデンサーC1とコンデンサーC2とを直列に接続した状態で、それらを出力端子に接続することができる。こうすると、コンデンサーC1の電圧にコンデンサーC2の電圧が加算されるので、「2E」の電圧を出力端子から出力することができる。
【0037】
更に、図6(c)に示されている様に、図6(b)の状態からスイッチSW4を電源に接続させるように図6(c)の上側に切り替えれば、コンデンサーC1とコンデンサーC2とを直列に接続したものに、更に電源を直列に接続することができる。こうすると、コンデンサーC1およびコンデンサーC2の合計の電圧「2E」に、更に電源の電圧「E」が加算されるので、「3E」の電圧を出力することができる。この様に、本実施例の駆動電圧波形生成回路100は、コンデンサーC1〜C2および電源で構成されるチャージポンプ回路を用いて、複数の種類の電圧を出力することが可能となっている。
【0038】
もっとも、こうしたチャージポンプ回路を用いただけでは、出力可能な電圧の数が限られるので、精度の高い駆動電圧波形を生成することは困難である。そこで、図5あるいは図6に示されている様に、本実施例の駆動電圧波形生成回路100では、電源やコンデンサーC1〜C2に加えて、コンデンサーCCを備えている。そして、このコンデンサーCCを、コンデンサーC1〜C2と電源とからなるチャージポンプ回路を用いて充電するとともに、充電したコンデンサーCCをコンデンサーC1〜C2および電源と組み合わせて使用することによって、上述した電圧に加えて、更に多くの種類の電圧を出力可能としている。この点について、図7を参照しながら説明する。
【0039】
図7は、コンデンサーCCを用いることにより、多種類の電圧が出力可能となる様子を示した説明図である。図7(a)には、コンデンサーCCを充電する様子が示されている。図示されている様に、コンデンサーCCを充電する際には、チャージポンプ回路を構成するコンデンサーC1〜C2と電源とを直列接続するとともに、スイッチSW3を操作して、チャージポンプ回路の出力を出力端子側からコンデンサーCC側へと切り替える。これにより、チャージポンプ回路の出力がコンデンサーCCに印加され、コンデンサーCCが充電される。
【0040】
ここで、コンデンサーCCは、チャージポンプ回路によって昇圧された電圧で充電されるので、充電後のコンデンサーCCの電圧は、電源の電圧(あるいはコンデンサーC1〜C2の電圧)とは異なる電圧になる。例えば、図7(a)の例では、コンデンサーCCはチャージポンプ回路によって昇圧された「3E」の電圧で充電されて、充電後の電圧は「3E」となり、電源およびコンデンサーC1〜C2の電圧「E」とは異なる電圧になる。このことは、見方を変えると、充電後のコンデンサーCCは、電源(あるいはコンデンサーC1〜C2)とは異なる電圧を発生する新たな電圧源となることを意味している。
【0041】
そこで、コンデンサーCCを、電源やコンデンサーC1〜C2と組み合わせて用いれば、コンデンサーC1〜C2や電源のみを用いた場合の電圧(図6を参照)とは異なる電圧を出力することが可能となる。すなわち、図7(b)に示されている様に、コンデンサーCCをコンデンサーC1に対して直列接続すれば、コンデンサーCCが「3E」に充電されていることから、「4E」の電圧を出力することが可能となる。また、図7(c)に示されている様に、コンデンサーC1およびコンデンサーC2を直列接続した状態で、コンデンサーCCに直列に接続すれば、コンデンサーCCが電圧「3E」に充電されていることから、「5E」の電圧を出力することが可能となる。
【0042】
このように、本実施例の駆動電圧波形生成回路100では、コンデンサーCCを、チャージポンプ回路で充電し、コンデンサーCCを電源やコンデンサーC1〜C2と直列に接続することで、チャージポンプ回路を用いて出力可能な電圧(図6を参照)に加えて、更に複数の種類の電圧を出力することが可能となっている。こうしたことが可能となるのは、前述した様に、コンデンサーCCを、電源やコンデンサーC1〜C2とは異なる電圧に充電していることによる。この点について、図8を参照しながら補足して説明する。
【0043】
図8は、本実施例の駆動電圧波形生成回路によって多種類の電圧が出力可能となる様子を概念的に示した説明図である。図中のグラフの左側には、本実施例の駆動電圧波形生成回路100によって出力可能となる電圧値が示されている。図中の白抜きの矢印は、電源およびコンデンサーC1〜C2を用いた場合に出力可能な電圧値を表しており、ハッチングを付した矢印は、コンデンサーCCを用いることで新たに出力可能となる電圧値を表している。
【0044】
一般に、チャージポンプ回路では、複数のコンデンサーが同一の電圧に充電されるので、出力される電圧の値は、直列に接続するコンデンサーの数によって決まってしまう。このため、直列に接続するコンデンサーの数が同じであれば、どのコンデンサーを用いても出力される電圧の値は同じであり、直列に接続するコンデンサーを他のコンデンサーに替えても、異なる電圧値を出力して出力可能な電圧の数を増やすことはできない。こうした点に鑑みて、本実施例の駆動電圧波形生成回路100では、コンデンサーCCを、コンデンサーC1〜C2や電源とは異なる電圧に充電している。こうすれば、コンデンサーC1とコンデンサーC2とを直列接続した際の電圧(図中に「2E」と示した電圧)と、コンデンサーC2の代わりにコンデンサーCCを用いた際の電圧(図中に「4E」と示した電圧)とが異なるので、コンデンサーC2に代えてコンデンサーCCを用いることで、新たな電圧を出力して出力可能な電圧の数を増やすことが可能となる。
【0045】
また、チャージポンプ回路で電圧を出力する際には、コンデンサーに加えて、コンデンサーを充電する電源を使用することも可能であるが、こうした場合、その電源でコンデンサーを充電していることから、電源の電圧とコンデンサーの電圧とは同じ電圧になっている。このため、コンデンサーと電源とのいずれを用いても、出力される電圧は同じであり、コンデンサーと電源とを使い分けても出力可能な電圧の数を増やすことはできない。これに対して、本実施例の駆動電圧波形生成回路100では、電源の電圧とコンデンサーCCの電圧とが異なるので、コンデンサーC1およびコンデンサーC2と電源とを直列に接続した際の電圧(図中に「3E」と示した電圧)と、電源の代わりにコンデンサーCCを用いた際の電圧(図中に「5E」と示した電圧)とが異なる。したがって、電源の変わりにコンデンサーCCを用いることで、新たな電圧を出力して出力可能な電圧の数を増やすこと可能となっている。
【0046】
図8の右側には、こうして出力可能になった電圧を用いて生成した駆動電圧波形が例示されている。本実施例の駆動電圧波形生成回路100では、多種類の電圧を出力可能となっていることから、図示されている様に、電圧を小刻みに変化させることが可能となり、精度の高い駆動電圧波形を生成することが可能となる。これにより、本実施例のインクジェットプリンター10では、噴射口200に設けられたピエゾ素子に精度の高い駆動電圧波形を印加することが可能となっており、その結果、ピエゾ素子を正確に制御して、インク滴を的確に噴射することが可能となっている。
【0047】
また、本実施例の駆動電圧波形生成回路100では、コンデンサーの数を抑えて回路構成を小型化することも可能である。すなわち、本実施例の駆動電圧波形生成回路では、前述した様に、コンデンサーCCを用いた場合と、コンデンサーCCを用いない場合とで出力される電圧が異なるので、直列に接続するコンデンサーの数が同じであっても、2通りの電圧が出力可能となる。このため、コンデンサーCCを備えることにより、おおまかには、チャージポンプ回路が備えているコンデンサーの数の2倍の種類の電圧を出力することが可能となる。このため、コンデンサーの数を大幅に増やす必要がなく、コンデンサーの数を抑えて回路構成を小型化することが可能となっている。
【0048】
また、本実施例の駆動電圧波形生成回路100では、コンデンサーCCを他のコンデンサーよりも高い電圧に充電することができることから、電圧を出力する際に直列に接続するコンデンサーの数を少なく抑えることも可能となっている。すなわち、コンデンサーCCを他のコンデンサーよりも高い電圧に充電しているので、コンデンサーCCを用いれば、その分だけ直列に接続するコンデンサーの数を少なく抑えることが可能である。例えば、図7(b)に示されている例では、チャージポンプ回路のコンデンサーの電圧の4倍の電圧を出力しているが、4倍の電圧を出力するために4つのコンデンサーを直列接続する必要はなく、コンデンサーCCとコンデンサーC1との2つのコンデンサーを直列に接続すればよい。
【0049】
一般に、コンデンサーを直列接続すると全体の静電容量が低下することから、多数のコンデンサーを直列接続する場合には、個々のコンデンサーの静電容量を予め大きくしておく必要がある。この点、本実施例の駆動電圧波形生成回路では、直列接続するコンデンサーの数を少なくすることができるので、個々のコンデンサーの静電容量を小さく抑えることが可能であり、更には、より小型のコンデンサーを用いて回路構成をより小型化することも可能となっている。また、コンデンサーとコンデンサーとの間を接続するスイッチの数も少なくすることができるので、回路構成をより簡素化することも可能であり、延いては、スイッチの内部抵抗による電力消費を減らして電力効率を向上させることも可能となる。
【0050】
尚、コンデンサーCCを充電する際には(図7(a)を参照)、コンデンサーC1およびコンデンサーC2の電圧が低下することにより、コンデンサーCCを十分に充電できない場合も生じ得る。こうした場合は、コンデンサーC1およびコンデンサーC2を電源で再び充電してから、コンデンサーCCに再度接続すればよい。こうした動作を繰り返すことで、コンデンサーCCを十分に充電することが可能である。
【0051】
以上に説明した様に、本実施例の駆動電圧波形生成回路100では、コンデンサーCCを電源やコンデンサーC1〜C2とは異なる電圧に充電して用いることにより、コンデンサーの数を大幅に増やすことなく、多種類の電圧を出力して精度の高い駆動電圧波形を生成することが可能となっている。このことから、回路構成を小型化することが可能となっており、更には、コンデンサー同士を接続するスイッチ等での電力消費を抑えて、電力効率を高めることも可能となっている。
【0052】
C.変形例 :
以下に、前述した本実施例の変形例について説明する。なお、以下に説明する変形例において、上述した本実施例と同様の構成部分については、本実施例と同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
C−1.第1変形例 :
前述した実施例の駆動電圧波形生成回路では、コンデンサーCCの出力電圧を、コンデンサーC1およびコンデンサーC2の出力電圧と組み合わせて出力端子から出力するものとして説明した(図7(b)および図7(c)を参照)。しかし、コンデンサーC1やコンデンサーC2と組み合わせずに、コンデンサーCCの出力電圧をそのまま出力端子から出力してもよい。
【0053】
図9は、コンデンサーCCの電圧を出力端子に直接出力する第1変形例の駆動電圧波形生成回路を示した説明図である。図示されている様に、コンデンサーCCは図中に「B」と示したスイッチを介して出力端子に接続することが可能となっており、コンデンサーCCの電圧を、コンデンサーC1やコンデンサーC2を介さずに出力端子から直接出力することが可能となっている。こうすると、コンデンサーCCが出力端子に電圧を出力している間は、コンデンサーC1およびコンデンサーC2は電圧を出力する必要がないので、その間に図中に「A」と示したスイッチを操作して、コンデンサーC1およびコンデンサーC2を充電することが可能である。こうすれば、駆動電圧波形を出力している間に、コンデンサーC1およびコンデンサーC2の電圧が低下しても、コンデンサーCCを用いている間にコンデンサーC1およびコンデンサーC2を充電しなおすことが可能であり、コンデンサーC1およびコンデンサーC2を充電しなおす時間を省略して駆動電圧波形をより迅速に出力することが可能となる。
【0054】
尚、図3を用いて前述したように、インクジェットプリンター10では、ピエゾ素子204に予め一定の電圧(図3で「初期電圧」と示した電圧)を印加している。そこで、コンデンサーCCを初期電圧に充電しておけば、コンデンサーCCを用いてピエゾ素子204に初期電圧を印加することも可能である。こうすれば、初期電圧を印加している間にコンデンサーC1やコンデンサーC2を充電して駆動電圧波形の出力に備えることができるので、より好適である。また、初期電圧を印加する電源を別途用意する必要がないので、装置構成をより小型化することが可能となる。
【0055】
C−2.第2変形例 :
また、コンデンサーCCから電圧を出力端子に出力している間には、コンデンサーC1やコンデンサーC2を充電するだけでなく、コンデンサーCCを充電することも可能である。
【0056】
図10は、コンデンサーCCから電圧を出力している間に、コンデンサーCCを充電可能とした第2変形例の駆動電圧波形生成回路を示した説明図である。図示されている様に、第2変形例の駆動電圧波形生成回路では、コンデンサーCCが出力端子に接続されるとともに、電源およびコンデンサーC1〜C2からなるチャージポンプ回路の出力が、ダイオードを介してコンデンサーCCに供給されるようになっている(図中に「B」と示した部分を参照)。こうすれば、コンデンサーCCから電圧が出力されて、コンデンサーCCの電圧が下がると、ダイオードを介してチャージポンプ回路からコンデンサーCCに電力が供給されるので、コンデンサーCCから電圧を出力しながらも、コンデンサーCCを充電することが可能となる。
【0057】
C−3.第3変形例 :
前述した実施例の駆動電圧波形生成回路100では、スイッチSW0を切り替えることで、電源とコンデンサーCCとを使い分けることが可能となっていた(図6(c)および図7(c)を参照)。しかし、コンデンサーCCと電源とを使い分けるだけでなく、両者を直列に接続して同時に使用することも可能である。
【0058】
図11は、コンデンサーCCおよび電源を直列に接続可能とした第3変形例の駆動電圧波形生成回路を示した説明図である。図示されている様に、第3変形例の駆動電圧波形生成回路では、図中に「C」と示したスイッチを切り替えることで、コンデンサーCCと電源とを直列に接続することが可能となっている。駆動電圧波形生成回路をこのような構成とすれば、電源および全てのコンデンサーの電圧を加算した電圧(図11の例では、図中に「6E」と示した電圧)を出力することが可能となるので、出力可能な電圧の数を更に増やすことが可能となる。
【0059】
C−4.第4変形例 :
前述した実施例の駆動電圧波形生成回路では、コンデンサーCCを、チャージポンプ回路の出力電圧と同一の電圧に充電するものとして説明した。しかし、コンデンサーCCは、電源およびコンデンサーC1〜C2と異なる電圧に充電すればよく、必ずしもチャージポンプの出力電圧と同一の電圧に充電する必要はない。
【0060】
図12は、コンデンサーCCをチャージポンプ回路の出力電圧とは異なる電圧に充電する第4変形例の駆動電圧波形生成回路を例示した説明図である。図12(a)に示されている様に、第4変形例の駆動電圧波形生成回路では、コンデンサーCC1およびコンデンサーCC2の2つのコンデンサーを直列に接続することが可能となっており(図中に「D」と示した部分を参照)、2つのコンデンサーを直列に接続した状態で、これらのコンデンサーをチャージポンプ回路で充電することが可能となっている。このため、2つのコンデンサーは、それぞれチャージポンプ回路の出力電圧の半分の電圧(図中に「1.5E」と示した電圧)に充電される。すると、コンデンサーCC1(あるいはコンデンサーCC2)の電圧は、電源およびコンデンサーC1〜C2の電圧と異なることから、コンデンサーC1〜C2や電源とコンデンサーCC1(あるいはコンデンサーCC2)を組み合わせて用いることで、多種類の電圧を出力することが可能となる。
【0061】
また、コンデンサーCC1およびコンデンサーCC2を使って電圧を出力する際には、図12(b)に示されている様に、コンデンサーCC1およびコンデンサーCC2を並列に接続した状態で使用するものとしてもよい。こうすれば、コンデンサーCC1およびコンデンサーCC2の全体の静電容量を増やすことができるので、より多くの電力を供給することが可能となり、また、コンデンサーCC1およびコンデンサーCC2を充電する頻度を減らして駆動電圧波形をより迅速に生成することが可能となる。
【0062】
C−5.第5変形例 :
前述した実施例および変形例では、チャージポンプ回路とコンデンサーCCとを直列に接続した状態で出力端子に接続する際には、出力端子側にチャージポンプ回路を接続し、GND側にはコンデンサーCCを接続するものとして説明した(図7(c)を参照)。しかし、これとは逆に、GND側にチャージポンプ回路を接続し、出力端子側にコンデンサーCCを接続するものとしてもよい。
【0063】
図13は、GND側にチャージポンプを接続し、出力端子側にコンデンサーCCを接続する第5変形例の駆動電圧波形生成回路を示した説明図である。図示されている様に、第5変形例の駆動電圧波形生成回路100では、図中に図中に「F」と示したスイッチを介してコンデンサーCCを出力端子に接続することが可能となっており、また、スイッチSW4を介してチャージポンプ回路をGNDに接続することが可能となっている。このため、チャージポンプ回路とコンデンサーCCとを直列に接続した状態では、出力端子の側にコンデンサーCCが接続され、GNDの側にはチャージポンプ回路が接続された状態となる。
【0064】
こうすると、チャージポンプ回路をGNDに接続していることから、チャージポンプ回路とコンデンサーCCとを直列に接続して高い電圧を出力する場合であっても、チャージポンプ回路の各スイッチにかかる電圧を低く抑えることが可能となる。例えば、図13の例では、チャージポンプ回路とコンデンサーCCとを直列に接続することで電圧値が「5E」の電圧を出力することが可能であるが、チャージポンプ回路がGNDに接続されているため、スイッチSW1にかかる電圧は、コンデンサー1つ分の電圧の「E」に抑えられる。同様に、スイッチSW2にかかる電圧は、コンデンサー2つ分の電圧の「2E」に抑えられる。このように、チャージポンプ回路をGNDの側に接続しておけば、チャージポンプ回路の各スイッチにかかる電圧を低く抑えることができるので、チャージポンプ回路の各スイッチには、電圧に対する耐性(耐圧)が小さなスイッチを用いることが可能となる。その結果、耐圧が小さなスイッチを用いて駆動電圧波形生成回路100の回路構成をより簡素化することが可能となり、更には、耐圧が小さなスイッチを用いればスイッチを制御する回路も簡素化することが可能となるので、スイッチを制御するプリンター制御回路50(図4を参照)の回路構成を簡素化することも可能となる。
【0065】
以上、本実施例の駆動電圧波形生成回路を搭載したインクジェットプリンターについて説明したが、本発明は上記すべての実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。例えば、より大型の噴射ヘッドを備えた印刷装置(いわゆるラインヘッドプリンタ等)に本実施例の駆動電圧波形生成回路を搭載してもよい。このような印刷装置の場合、噴射ヘッドが大型化するのに伴って多数の駆動素子が搭載されるので、駆動電圧波形を生成する回路構成も大型化する傾向がある。この点、本実施例の駆動電圧波形生成回路を用いれば、回路構成を小型化することが可能となる。
【0066】
また、上述した実施例では、本実施例の駆動電圧波形生成回路を、インクジェットプリンターのピエゾ素子の駆動回路に適用した場合を例にとって説明したが、本実施例の駆動電圧波形生成回路は、電圧に応じて駆動する種々の装置に適用することが可能である。例えば、液晶パネルや有機ELパネルなどの電圧により動作可能な表示装置に適用することも可能である。また、水あるいは食塩水等の液体をパルス状に噴射して生体組織を切開または切除する手術具としての流体噴射装置において、ピエゾ素子を駆動することによって液体室の容積を変更して、液体をパルス状の脈流に変換する脈流発生装置に適用することも可能である。こうした装置を駆動する場合も、多種類の電圧を出力可能なことから、液晶素子や有機ELなどの種々の素子を正確に動作させることが可能となる。また、多種類の電圧を出力可能なことから、表示装置の階調値の数を増やすことも可能となる。もちろん、表示装置に限らず、電圧により駆動可能な装置であれば、多種類の電圧を出力可能なことから、装置を正確に駆動させることが可能である。
【符号の説明】
【0067】
10…インクジェットプリンター、20…キャリッジ、22…キャリッジケース、24…噴射ヘッド、26…インクカートリッジ、30…駆動機構、32…タイミングベルト、34…駆動プーリ、36…ステップモータ、38…ガイドレール、40…プラテンローラー、50…プリンター制御回路、100…駆動電圧波形生成回路、200…噴射口、202…インク室、204…ピエゾ素子、300…ゲートユニット、302…ゲート素子。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に電圧を印加することによって該負荷を駆動する負荷駆動回路であって、
電源から電圧の供給を受けて充電される複数の第1蓄電素子と、
前記複数の第1蓄電素子間の接続状態を切り替えることにより、該第1蓄電素子が直列に接続された直列蓄電素子群を構成する直列蓄電素子群構成手段と、
前記第1蓄電素子とは異なる第2蓄電素子を、前記直列蓄電素子群を用いて充電する第2蓄電素子充電手段と、
前記充電した第2蓄電素子と前記直列蓄電素子群とを直列接続した状態で、該第2蓄電素子および該直列蓄電素子群を負荷に接続する第1の接続状態と、該第2蓄電素子と該直列蓄電素子群との直列接続を切断した状態で、該直列蓄電素子群を前記負荷に接続する第2の接続状態とを切り換えて、該負荷に電圧を印加する電圧印加手段と
を備える負荷駆動回路。
【請求項2】
請求項1に記載の負荷駆動回路であって、
前記直列蓄電素子群が前記負荷から切断された状態で、前記第2蓄電素子を該負荷に接続する第2蓄電素子接続手段を備え、
前記第1蓄電素子は、前記第2蓄電素子が前記負荷に接続された状態で、前記電源から電圧の供給を受ける負荷駆動回路。
【請求項3】
負荷に電圧を印加することによって該負荷を駆動する負荷駆動回路であって、
電源から電圧の供給を受けて充電される第1蓄電素子と、
前記電源から電圧の供給を受けて充電される第2蓄電素子と、
前記第1蓄電素子と前記第2蓄電素子とが直列に接続された直列蓄電素子群を構成する直列蓄電素子群構成手段と、
前記第1蓄電素子および前記第2蓄電素子とは異なる第3蓄電素子を、前記直列蓄電素子群を用いて充電する第3蓄電素子充電手段と、
前記充電した第3蓄電素子と前記直列蓄電素子群とを直列接続した状態で、該第3蓄電素子および該直列蓄電素子群を負荷に接続する第1の接続状態と、該第3蓄電素子と該直列蓄電素子群との直列接続を切断した状態で、該直列蓄電素子群を前記負荷に接続する第2の接続状態とを切り換えて、該負荷に電圧を印加する電圧印加手段と
を備える負荷駆動回路。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の負荷駆動回路と、
液体を噴射する噴射ノズルと、
前記負荷駆動回路に前記負荷として接続されて、前記負荷駆動回路によって駆動されることで前記噴射ノズルから前記液体を噴射させるアクチュエーターと
を備える液体噴射装置。
【請求項5】
請求項4に記載の液体噴射装置を備える印刷装置。
【請求項1】
負荷に電圧を印加することによって該負荷を駆動する負荷駆動回路であって、
電源から電圧の供給を受けて充電される複数の第1蓄電素子と、
前記複数の第1蓄電素子間の接続状態を切り替えることにより、該第1蓄電素子が直列に接続された直列蓄電素子群を構成する直列蓄電素子群構成手段と、
前記第1蓄電素子とは異なる第2蓄電素子を、前記直列蓄電素子群を用いて充電する第2蓄電素子充電手段と、
前記充電した第2蓄電素子と前記直列蓄電素子群とを直列接続した状態で、該第2蓄電素子および該直列蓄電素子群を負荷に接続する第1の接続状態と、該第2蓄電素子と該直列蓄電素子群との直列接続を切断した状態で、該直列蓄電素子群を前記負荷に接続する第2の接続状態とを切り換えて、該負荷に電圧を印加する電圧印加手段と
を備える負荷駆動回路。
【請求項2】
請求項1に記載の負荷駆動回路であって、
前記直列蓄電素子群が前記負荷から切断された状態で、前記第2蓄電素子を該負荷に接続する第2蓄電素子接続手段を備え、
前記第1蓄電素子は、前記第2蓄電素子が前記負荷に接続された状態で、前記電源から電圧の供給を受ける負荷駆動回路。
【請求項3】
負荷に電圧を印加することによって該負荷を駆動する負荷駆動回路であって、
電源から電圧の供給を受けて充電される第1蓄電素子と、
前記電源から電圧の供給を受けて充電される第2蓄電素子と、
前記第1蓄電素子と前記第2蓄電素子とが直列に接続された直列蓄電素子群を構成する直列蓄電素子群構成手段と、
前記第1蓄電素子および前記第2蓄電素子とは異なる第3蓄電素子を、前記直列蓄電素子群を用いて充電する第3蓄電素子充電手段と、
前記充電した第3蓄電素子と前記直列蓄電素子群とを直列接続した状態で、該第3蓄電素子および該直列蓄電素子群を負荷に接続する第1の接続状態と、該第3蓄電素子と該直列蓄電素子群との直列接続を切断した状態で、該直列蓄電素子群を前記負荷に接続する第2の接続状態とを切り換えて、該負荷に電圧を印加する電圧印加手段と
を備える負荷駆動回路。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の負荷駆動回路と、
液体を噴射する噴射ノズルと、
前記負荷駆動回路に前記負荷として接続されて、前記負荷駆動回路によって駆動されることで前記噴射ノズルから前記液体を噴射させるアクチュエーターと
を備える液体噴射装置。
【請求項5】
請求項4に記載の液体噴射装置を備える印刷装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−41466(P2011−41466A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198583(P2010−198583)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【分割の表示】特願2009−188940(P2009−188940)の分割
【原出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【分割の表示】特願2009−188940(P2009−188940)の分割
【原出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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