説明

駆動用バッテリ温度調整システム

【課題】電気自動車の駆動用バッテリ温度調整システムに関し、部品点数の増加を抑えて駆動用バッテリを適切に温度管理することができるようにする。
【解決手段】冷媒の気化潜熱を利用して車室内に冷風を供給して冷房する冷却装置20と、加熱された液体を利用して車室内に温風を供給して暖房するヒータ装置30と、を有するエアコンシステム2が装備された電気自動車において、駆動用バッテリ1を冷却するシステムであって、ヒータ装置30の液体循環回路31に介装されて内部の液体を加熱する加熱装置34を迂回するように接続され、駆動用バッテリ1のケース内に一部を配管されたバッテリ内循環回路41と、液体循環回路31内を流通する液体をバッテリ内循環回路41へ導入するように切り替え可能な切替弁42と、冷却装置20の冷風を用いて液体循環回路31内の液体を冷却する液体冷却構造43と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリット電気自動車を含む電気自動車において駆動用バッテリを温度調整する、駆動用バッテリ温度調整システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリット電気自動車を含む電気自動車が開発され実用化されており、かかる電気自動車には、車両を走行駆動しうる電動発電機と、この電動発電機に電力を供給しうる駆動用バッテリとが装備される。一般に、バッテリは、高温の状況下で使用されると寿命が低下し易く、逆に、低温の状況下で使用されると出力を得難く、一定の温度範囲に温度を管理することが必要である。
【0003】
特に、バッテリは充放電によって発熱し、電気自動車にかかる駆動用バッテリの場合、充放電時の電流も大きいので充放電時に一層発熱しやすく、バッテリの温度管理の中でもバッテリの温度が高温にならないように冷却することが重要である。このため、このような駆動用バッテリには、通常、冷却システムが装備される。この冷却システムとしては、空冷方式や水冷方式などが一般的ある。
【0004】
例えば、図3は水冷方式の駆動用バッテリ冷却システムを示す構成図である。図3に示すように、この冷却システムは、冷却水循環流路11内を循環する冷却水によって、電池パック1内を冷却する。冷却水循環流路11は、一部が電池パック1内に配置され残りが電池パック1外に配置される。電池パック1外の冷却水循環流路11には、ウォータポンプ12と、ラジエータ13及び冷却ファン14とが介装され、ウォータポンプ12によって冷却水が冷却水循環流路11内を循環し、ラジエータ13及び冷却ファン14が電池パック1内に進入する前の冷却水を冷却し、冷却された冷却水が電池パック1内の電池を冷却する。また、冷却水循環流路11内の余剰冷却水はリザーバタンク15に貯留される。
【0005】
このような水冷方式に対して、例えば特許文献1に記載されているように、高圧冷媒の気化潜熱を用いて冷却する冷却装置、即ち、冷却サイクルを利用して空冷方式によって駆動用バッテリを冷却する技術も開発されている。
また、駆動用バッテリを加熱する技術も開発されている。例えば特許文献2には、車室内の暖房用の加熱流体(温水)を利用して駆動用バッテリを加熱して、バッテリ温度の低下を抑制してバッテリ性能の向上を図る技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−279180号公報
【特許文献2】特開平10−12286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、水冷方式によって駆動用バッテリを冷却する技術では、内部に冷却水が流通するようにした伝熱板を電池パック内の各バッテリセルの表面に接触させて各バッテリセルを冷却することができるので、バッテリセル間の温度バラツキが小さいという利点があるが、専用部品として、ラジエータ,ポンプ,タンクが必要であり部品点数が多大となるという課題がある。
【0008】
また、冷却サイクルを利用して駆動用バッテリを冷却する技術では、空調ユニットの一部を兼用しうるものの、空冷方式によるため、バッテリセル間の温度バラツキが大きくなりやすく、駆動用バッテリの適切な温度管理が難しい。
さらに、駆動用バッテリの温度管理には、駆動用バッテリを加熱してバッテリ温度の低下を抑制することも必要になるが、バッテリの冷却と加熱とを行なうために、例えば図3の冷却水を利用する装置と特許文献2の暖房用の温水を利用する装置とをそのまま併設したのでは、装置にかかる部品点数が一層多大となるという課題がある。
【0009】
本発明は、上述の課題を解決するために創案されたもので、装置にかかる部品点数の増加を抑えて駆動用バッテリを適切に温度管理することができるようにした、駆動用バッテリ温度調整システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の駆動用バッテリ温度調整システムは、車両の駆動用モータに電力を供給する駆動用バッテリと、冷媒の気化潜熱を利用して車室内に冷風を供給して冷房する冷却装置と、加熱された液体を利用して車室内に温風を供給して暖房するヒータ装置とを有する電気自動車の駆動用バッテリ温度調整システムであって、前記ヒータ装置の前記液体を加熱する加熱装置が介装された液体循環回路に接続され、駆動用バッテリのケース内に一部を配管されたバッテリ内循環回路と、前記液体循環回路内を流通する前記液体を前記バッテリ内循環回路へ導入するように切り替え可能な切替弁と、前記冷却装置の冷風を用いて前記液体循環回路内の前記液体を冷却する液体冷却構造と、を備えていることを特徴としている。
【0011】
前記冷却装置は、冷媒を気化させるエバポレータと、前記エバポレータに送風し車室内に冷風を供給する送風機とをそなえ、前記ヒータ装置は、前記液体を加熱する前記加熱装置としての電気ヒータと、前記液体を前記液体循環回路内で循環させるポンプ、車室内に温風を供給するヒータコアとを前記液体循環回路内にそなえ、前記液体冷却構造は、前記ヒータコアを前記冷却装置の冷風流路の下流部に配置した構造であることが好ましい。
【0012】
前記切替弁は、前記液体循環回路内の前記液体を前記バッテリ内循環回路のみに流通させる第1流通モードと、前記液体循環回路内の前記液体を前記電気ヒータのみに流通させる第2流通モードと、前記液体循環回路内の前記液体を前記バッテリ内循環回路と前記電気ヒータとの双方に流通させる第3流通モードと、を有する電磁切替弁であって、前記バッテリの冷却要求がある、前記ヒータコアへの前記冷風の送風を実施すると共に前記電磁切替弁を前記第1流通モードに切り替え、前記バッテリの冷却要求がないと前記ヒータコアへの前記冷風の送風を停止し、さらに前記バッテリの加温要求があると前記電磁切替弁を前記第1又は3流通モードに切り替える制御手段を備えていることが好ましい。
【0013】
この場合、前記制御手段は、前記バッテリの冷却要求がない場合、前記バッテリの加温要求があると前記電磁切替弁を前記第1,3流通モードのいずれかに、前記バッテリの加温要求がないと前記電磁切替弁を前記第1〜3流通モードのいずれかに、それぞれ制御して前記液体の温度が予め設定された加温用温度域を保持するようにすることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の駆動用バッテリ温度調整システムによれば、液体冷却構造により冷却装置の冷風を用いて液体循環回路内の液体を冷却し、切替弁を、液体をバッテリ内循環回路へ導入するように切り替えることにより、バッテリ内循環回路を冷却された液体が流通し、ケース内の駆動用バッテリを冷却することができ、バッテリ内循環回路と切替弁と液体冷却構造とを追加するだけで部品増を抑えて、水冷方式によって、ケース内を均等に(例えば、バッテリを構成する複数のバッテリセルを温度バラツキなく均等に)冷却することができる。
【0015】
液体冷却構造を、ヒータ装置のヒータコアを冷却装置の冷風流路の下流部に配置した構造とすれば、配置変更のみで部品増をより抑えることができる。
さらに、バッテリの冷却要求があると、ヒータコアへの冷風の送風を実施し、電磁切替弁を、液体循環回路内の液体をバッテリ内循環回路のみに流通させる第1流通モードに切り替えることにより、バッテリの冷却要求に確実に応答することができる。
【0016】
また、バッテリの冷却要求がない場合には、バッテリの加温要求があると電磁切替弁を第1,3流通モードのいずれかに、バッテリの加温要求がないと電磁切替弁を第1〜3流通モードのいずれかに、それぞれ制御して液体の温度が予め設定された加温用温度域を保持するようにすれば、バッテリの加温要求や車室内の暖房要求に効率よく且つ確実に応答することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態のかかる駆動用バッテリ温度調整システムの構成図である。
【図2】本発明の一実施形態のかかる駆動用バッテリ温度調整システムの動作を説明するフローチャートである。
【図3】背景技術のかかる駆動用バッテリ冷却システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を用いて本発明の一実施形態について説明する。
図1,図2は本発明の一実施形態のかかる駆動用バッテリ温度調整システムを説明する図であり、図1はその構成図、図2はその動作を説明するフローチャートである。
【0019】
<構成>
本駆動用バッテリ温度調整システムは、電気自動車(ハイブリット電気自動車を含む)に装備され、図1に示すように、電気自動車の走行用電動モータに電力を供給して車両を駆動するために備えられた駆動用バッテリを温度調整するもので、車室内の空調のために車両に装備されたエアコンシステム2の一部を利用している。なお、駆動用バッテリは電池パック1として装備され、この電池パック1は、バッテリケース(単にケースとも言う)1aの内部に複数のバッテリセルからなるバッテリ(図示略)を収納されて構成される。
【0020】
車両のエアコンシステム2は、冷媒の気化潜熱を利用して車室内に冷風を供給して冷房する冷却装置(クーラ装置)20と、加熱された液体(ここでは水)を利用して車室内に温風を供給して暖房するヒータ装置30とを有している。
冷却装置20は、冷媒が封入された高内圧の冷媒循環回路(冷却用配管)21と、この冷媒循環回路21に順に介装された電動コンプレッサ22,コンデンサ23,膨張弁24,エバポレータ25とを備えて構成され、コンデンサ23には冷却ファン23aが、エバポレータ25には送風ファン(送風機)25aが、それぞれ付設されている。
【0021】
冷媒循環回路21内の冷媒は、図中矢印で示すように循環し、まず、電動コンプレッサ22により高圧に圧縮される。冷媒は圧縮に伴い高温に温度上昇するが、次のコンデンサ23により凝縮されつつ冷却ファン23aによって空冷により温度低下される。そして、冷媒はやや温度の高い高圧液体となって、膨張弁24を通過しながら蒸発(気化)して、この際の気化潜熱によってきわめて低温に温度低下する。その後、冷媒はエバポレータ25に供給され、送風ファン25aによって送られる空気を冷却し、自身は温度上昇して、電動コンプレッサ22に流入する。
【0022】
送風ファン25aによって送られエバポレータ25で冷却された空気(冷気)は、ダクト26を介して車室内に送られて、車室内を冷房する。
ヒータ装置30は、液体(ここでは水)が内蔵された低内圧(大気圧程度)の液体循環回路(温水用配管)31と、この液体循環回路31に順に介装されたウォータポンプ32,ヒータコア33,加熱装置としての電気温水ヒータ(電気ヒータ)34とを有している。なお、液体循環流路31内の余剰水は図示しないリザーバタンクに貯留される。
【0023】
液体循環回路31内の水は、ウォータポンプ32によって図中矢印で示すように循環し、電気温水ヒータ34によって所定の温度域に加熱されて、ヒータコア33に送られて、図示しないヒータコア専用の送風ファンによって、或いは、エバポレータ25を停止して送風ファン25aによって、このヒータコア33に送風し、ヒータコア33により加熱された温風を車室内に送って、車室内を暖房する。
【0024】
本駆動用バッテリ温度調整システムは、このようなエアコンシステム2を利用しており、ヒータ装置30の液体循環回路31に、電気温水ヒータ34を迂回するように接続されて、ケース1a内に一部を配管されたバッテリ内循環回路41と、液体循環回路31とバッテリ内循環回路41との合流部に配設され液体循環回路31内を流通する水をバッテリ内循環回路41へ導入するように切り替え可能な電磁切替弁(バルブとも言う)42と、冷却装置20の冷風を用いて液体循環回路31内の水を冷却する液体冷却構造43と、を追加して構成される。
【0025】
バッテリ内循環回路41は、例えば、ケース1a内の各バッテリセルの表面に接触するように配置された伝熱板を冷却するように、水冷方式でバッテリを冷却するように配管される。
電磁切替弁42は、ここでは、3方向切り替え弁が用いられ、液体循環回路31内の水をバッテリ内循環回路41のみに流通させる第1流通モードと、液体循環回路31内の水を電気ヒータ34のみに流通させる第2流通モードと、液体循環回路31内の水をバッテリ内循環回路41と電気ヒータ34との双方に流通させる第3流通モードと、を有している。
【0026】
液体冷却構造43は、ヒータコア33を冷却装置20の冷風流路44の下流部に配置した構造である。つまり、送風ファン25aによって送られエバポレータ25で冷却された空気(冷気)は、エバポレータ25の下流の冷風流路44を流通し、一部はダクト26を介して車室内に送られるが、一部はヒータコア33に送られるように、冷却装置20の冷風流路44の下流部にヒータコア33を配置している。
【0027】
また、この冷風流路44のヒータコア33に向かう流路部分には、電動シャッタ45が装備され、電動シャッタ45を開くと冷風流路44の冷気がヒータコア33に送られ、電動シャッタ45を閉じると冷風流路44の冷気はヒータコア33には送られないようになっている。
このような電磁切替弁42及び電動シャッタ45を電気温水ヒータ34及び送風ファン25aと共に制御する電子制御ユニット(ECU,制御手段)40が備えられる。ECU40は、温度センサ51で検出された電池パック1のバッテリの温度Tと温度センサ52で検出された液体循環回路31内の水の温度Tとに基づいて、電磁切替弁42,電動シャッタ45,電気温水ヒータ34を制御する。
【0028】
温度センサ51は、ケースa内の全てのバッテリセルの表面温度を検出し、これらの検出値からその代表温度(例えば、全体の平均温度、或いは、高い方から何個か又は低い方から何個かの平均温度)をバッテリの温度Tとしてもよく、また、ケースa内の特定のバッテリ雰囲気温度に基づく推定値をバッテリの温度Tとしてもよい。
温度センサ52は、液体循環回路31内の水温を検出する水温センサであり、液体循環回路31内の水の平均的な温度を計測するように計測点を設定することが好ましい。
【0029】
ECU40は、バッテリの温度Tが予め設定された上限温度TBH以上になると電池パック1のバッテリの冷却を行なうために、電磁切替弁42を第1流通モードとし、電動シャッタ45を開放し、電気温水ヒータ34を停止させ、送風ファン25aを作動させる。これにより、液体循環回路31内の水は、ヒータコア33において、冷風流路44の冷気によって冷却され、電池パック1のバッテリを冷却する。なお、上限温度TBHは、バッテリ温度が上昇するとその劣化を促進するので、これ以上はバッテリ温度を上げたくないという温度である。
【0030】
また、ECU40は、バッテリの温度Tが予め設定された下限温度TBL以下になると電池パック1のバッテリの加温を行なうために、電磁切替弁42を第1又は第3流通モードとし、電動シャッタ45を閉鎖し、電気温水ヒータ34を適宜作動させる。なお、送風ファン25aは冷房要求に応じて作動させる。
これにより、電磁切替弁42を第3流通モードとすると、液体循環回路31内の水の一部は、電気温水ヒータ34に進んで暖められて液体循環回路31内全体の水を昇温させ温水とし、こうして昇温された温水の一部は液体循環回路31内からバッテリ内循環回路41に進んで、電池パック1のバッテリを加温する。なお、電磁切替弁42を第1,第3流通モードの何れにするかは、液体循環回路31内の温水の温度に応じて、温水の温度を予め設定された温度域に保持できるように選択する。つまり、液体循環回路31内の温水が過剰に温度上昇したら、電気温水ヒータ34を停止させる処理と電磁切替弁42を第1流通モードとする処理との何れか、又は、両方を行なう。
【0031】
また、ECU40は、バッテリの温度Tが下限温度TBLと上限温度TBHとの間にあり、バッテリの温度調整が不要な場合には、車室内への暖房要求があると、電磁切替弁42を第1〜3流通モードの何れかとし、電動シャッタ45を閉鎖し、電気温水ヒータ34を適宜作動させる。この場合、ヒータコア専用の送風ファンを備えていれば、これを作動させて送風ファン25aは停止させる。或いは、エバポレータ25を停止して送風ファン25aを作動させる。
【0032】
電磁切替弁42を第1〜3流通モードの何れにするかは、上記と同様に、液体循環回路31内の温水の温度に応じて、温水の温度を予め設定された温度域に保持できるように選択する。
つまり、温水の温度は設定された温度域にあれば電磁切替弁42を第2流通モードとし、液体循環回路31内の温水が過剰に温度上昇したら、電気温水ヒータ34を停止させる処理と電磁切替弁42を第1流通モード又は第3流通モードとする処理とのいずれか、又は、両方を行なう。
【0033】
電気温水ヒータ34を停止させて電磁切替弁42を第3流通モードとすれば、バッテリ内循環回路41を含んだ液体循環回路31内全体の温水の温度を均一又は略均一に低下でき、電磁切替弁42を第1流通モードとすれば、バッテリ内循環回路41を含んだ液体循環回路31内のうち電気温水ヒータ34の配管部を除いて部分的に温水の温度を低下でき、ヒータコア33や電池パック1内の温水の温度を比較的速やかに低下することができる。この場合、電気温水ヒータ34を停止させることが好ましい。
【0034】
<作用,効果>
本発明の一実施形態にかかる駆動用バッテリ温度調整システムは、上述のように構成されるので、例えば、図2に示すフローチャートのように、ECU40を通じて駆動用バッテリの温度調整を行なうことができる。なお、図2に示すフローは所定の制御周期で実施されるものとする。
【0035】
図2に示すように、まず、バッテリ温度Tと液体循環回路31内の温水温度Tとを各センサ51,52から取得し(ステップS10)、まず、バッテリ温度Tが設定された上限温度TBH以上か否かを判定する(ステップS20)。
ここで、バッテリ温度Tが上限温度TBH以上なら、電池パック1のバッテリの冷却を行なうために、電気温水ヒータ34をオフ(停止)とし(ステップS30)、バルブ42を第1流通モードとし(ステップS40)、電動シャッタ45を開放し送風ファン25aを作動させ、ヒータコア33に冷風を送る(ステップS50)。これにより、液体循環回路31内の水は、ヒータコア33において、冷風流路44の冷気によって冷却され、電池パック1のバッテリを冷却し、バッテリ温度Tを上限温度TBHよりも低下させる。したがって、バッテリの過剰な温度上昇が回避され、バッテリの劣化が抑えられる。
【0036】
一方、バッテリ温度Tが上限温度TBH以上でなければ、電気ヒータのオン(作動)を許可し(ステップS60)、電動シャッタ45を閉鎖して、ヒータコア33への冷風の供給を停止する(ステップS70)。そして、バッテリ温度Tが設定された下限温度TBL以下か否かを判定する(ステップS80)。
ここで、バッテリ温度Tが下限温度TBL以下なら、電池パック1のバッテリの加温を行なうために、電磁切替弁42を第1又は第3流通モードとし(ステップS90)、電気温水ヒータ34を適宜作動させる(ステップS100)。なお、送風ファン25aは冷房要求に応じて作動させる。これにより、液体循環回路31内の水は、電気温水ヒータ34で適宜加温され、電池パック1のバッテリを加温し、バッテリ温度Tを下限温度TBLよりも上昇させる。したがって、バッテリの過剰な温度低下が回避され、バッテリの性能低下が抑えられる。
【0037】
一方、バッテリ温度Tが下限温度TBL以下でないなら、この場合、バッテリの温度Tの温度が下限温度TBLと上限温度TBHとの間にあり、バッテリの温度調整は不要であり、電磁切替弁42を第1〜3流通モードの何れかとし(ステップS110)、暖房要求に応じて電気温水ヒータ34を適宜作動させる(ステップS100)。車室内の暖房を効率よく且つ確実に実施することができる。
【0038】
このようにして、本駆動用バッテリ温度調整システムによれば、車両に予め装備されたエアコンシステム2に、バッテリ内循環回路41とバルブ42と液体冷却構造43とを追加するだけで、エアコンシステム2の冷却装置20の冷風を用いて液体循環回路31内の暖房用の水を冷却し、バルブ42を、水をバッテリ内循環回路41へ導入するように切り替えることにより、バッテリ内循環回路41に冷却された水が流通し、ケース1a内のバッテリを水冷方式によって、ケース内を均等に(例えば、バッテリを構成する複数のバッテリセルを温度バラツキなく均等に)冷却することができる。
【0039】
したがって、装置にかかる部品点数の増加を抑えて、装置コストの増加を抑えながら、駆動用バッテリを適切に温度管理することができるようになる。
また、液体冷却構造43を、ヒータ装置30のヒータコア33を冷却装置20の冷風流路44の下流部に配置した構造としているので、配置変更のみでよく部品増をより抑えることができる。
【0040】
さらに、ECU40は、バッテリの冷却要求があると、ヒータコア33への冷風の送風を実施し、バルブ42を第1流通モードに切り替えることにより、バッテリの冷却要求に確実に応答することができ、バッテリの加温要求があると、ヒータコア33への冷風の送風を停止すると共にバルブ42を第1流通モード又は第3流通モードに切り替えることにより、バッテリの加温要求に確実に応答することができる。
【0041】
また、バッテリの温度調整要求がない場合には、バルブ42を第1〜3流通モードのいずれかに、それぞれ制御して液体の温度が予め設定された加温用温度域を保持するようにことにより、車室内の暖房要求に効率よく且つ確実に応答することができる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、かかる実施形態の一部を用いたり、かかる実施形態の一部を変更したりして、実施することができる。
【0042】
例えば、電磁切替弁42を3方向切替弁としているが、第1流通モードと第2流通モードとを有する2方向切替弁として、第3流通モードの変わりに、第1流通モードと第2流通モードとを反復して切り換えるようにしてもよい。
また、電磁切替弁42の位置も実施形態のものに限定されない。
さらに、液体循環回路31及びバッテリ内循環回路41を流通する液体は、水に限定されない。
【0043】
液体冷却構造43にかかる冷風流路44の図1に示す構造も一例であり、これに限定されない。
【符号の説明】
【0044】
1 電池パック(駆動用バッテリ)
1a バッテリケース(ケース)
2 エアコンシステム
20 冷却装置(クーラ装置)
21 冷媒循環回路(冷却用配管)
22 電動コンプレッサ
23 コンデンサ
23a 冷却ファン
24 膨張弁
25 エバポレータ
25a 送風ファン(送風機)
26 ダクト
30 ヒータ装置
31 液体循環回路(温水用配管)
32 ウォータポンプ
33 ヒータコア
34 加熱装置としての電気温水ヒータ(電気ヒータ)
40 電子制御ユニット(ECU,制御手段)
41 バッテリ内循環回路
42 電磁切替弁(バルブ)
43 液体冷却構造
44 冷風流路
45 電動シャッタ
51,52 温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動用モータに電力を供給する駆動用バッテリと、冷媒の気化潜熱を利用して車室内に冷風を供給して冷房する冷却装置と、加熱された液体を利用して車室内に温風を供給して暖房するヒータ装置とを有する電気自動車の駆動用バッテリ温度調整システムであって、
前記ヒータ装置の前記液体を加熱する加熱装置が介装された液体循環回路に接続され、駆動用バッテリのケース内に一部を配管されたバッテリ内循環回路と、
前記液体循環回路内を流通する前記液体を前記バッテリ内循環回路へ導入するように切り替え可能な切替弁と、
前記冷却装置の冷風を用いて前記液体循環回路内の前記液体を冷却する液体冷却構造と、を備えている
ことを特徴とする、駆動用バッテリ温度調整システム。
【請求項2】
前記冷却装置は、冷媒を気化させるエバポレータと、前記エバポレータに送風し車室内に冷風を供給する送風機とをそなえ、
前記ヒータ装置は、前記液体を加熱する前記加熱装置としての電気ヒータと、前記液体を前記液体循環回路内で循環させるポンプ、車室内に温風を供給するヒータコアとを前記液体循環回路内にそなえ、
前記液体冷却構造は、前記ヒータコアを前記冷却装置の冷風流路の下流部に配置した構造である
ことを特徴とする、請求項1記載の駆動用バッテリ温度調整システム。
【請求項3】
前記切替弁は、前記液体循環回路内の前記液体を前記バッテリ内循環回路のみに流通させる第1流通モードと、前記液体循環回路内の前記液体を前記電気ヒータのみに流通させる第2流通モードと、前記液体循環回路内の前記液体を前記バッテリ内循環回路と前記電気ヒータとの双方に流通させる第3流通モードと、を有する電磁切替弁であって、
前記バッテリの冷却要求がある、前記ヒータコアへの前記冷風の送風を実施すると共に前記電磁切替弁を前記第1流通モードに切り替え、前記バッテリの冷却要求がないと前記ヒータコアへの前記冷風の送風を停止し、さらに前記バッテリの加温要求があると前記電磁切替弁を前記第1又は3流通モードに切り替える制御手段を備えている
ことを特徴とする、請求項2記載の駆動用バッテリ温度調整システム。
【請求項4】
前記制御手段は、前記バッテリの温度調整要求がない場合、前記バッテリの加温要求があると前記電磁切替弁を前記第1,3流通モードのいずれかに、前記バッテリの加温要求がないと前記電磁切替弁を前記第1〜3流通モードのいずれかに、それぞれ制御して前記液体の温度が予め設定された加温用温度域を保持するようにする
ことを特徴とする、請求項3記載の駆動用バッテリ温度調整システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−81932(P2012−81932A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231789(P2010−231789)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】