駆動装置、光プリントヘッド及び画像形成装置
【課題】クロック駆動回路の出力端子数の削減により、回路規模の削減と低コスト化を図る。
【解決手段】発光サイリスタ210のカソードがLレベルにされると、アノード・カソード間には電圧が印加される。一方、自己走査回路100における各サイリスタ111のゲートと、発光サイリスタ210の各ゲートとがそれぞれ接続されているため、サイリスタ111のゲート・カソード間にも電圧が印加される。この時、自己走査回路100により発光指令されている発光サイリスタ210のゲートのみを選択的にHレベルとすることで、発光指令されている発光サイリスタ210がターンオンする。特に、クロック駆動回路80の出力信号をRL微分回路90−1,90−2で微分して、アンダシュート波形あるいはオーバシュート波形を生成しているので、クロック駆動回路80の出力端子CK1R,CK2R数を削減できる。
【解決手段】発光サイリスタ210のカソードがLレベルにされると、アノード・カソード間には電圧が印加される。一方、自己走査回路100における各サイリスタ111のゲートと、発光サイリスタ210の各ゲートとがそれぞれ接続されているため、サイリスタ111のゲート・カソード間にも電圧が印加される。この時、自己走査回路100により発光指令されている発光サイリスタ210のゲートのみを選択的にHレベルとすることで、発光指令されている発光サイリスタ210がターンオンする。特に、クロック駆動回路80の出力信号をRL微分回路90−1,90−2で微分して、アンダシュート波形あるいはオーバシュート波形を生成しているので、クロック駆動回路80の出力端子CK1R,CK2R数を削減できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の発光素子を駆動する駆動装置、この駆動装置を有する光プリントヘッド、及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式を用いたプリンタ等の画像形成装置には、発光素子として発光サイリスタを多数配列させて露光部を形成したものがある。発光サイリスタを用いたものでは、駆動回路と発光サイリスタとが1対Nに対応(N>1)するように設けられ、その発光サイリスタのゲートを用いて発光させるべき発光サイリスタ位置を指定し、アノード及びカソード間に流す電流値により、発光パワーを制御している。
【0003】
発光サイリスタを用いる光プリントヘッドとして、自己走査型と呼ばれる構成のものが公知である。従来の自己走査型の光プリントヘッドを例えば、3.3Vの電源電圧のもとで駆動しようとする時、電源電圧3.3Vではゲートトリガ電流を生じさせることができないので、これを補う目的で、転送クロック信号(以下「クロック信号」を単に「クロック」という。)の波形にアンダシュート電圧を生じさせ、これと電源電圧3.3Vとの加算値でもってゲートトリガ電流を生成する構成が公知である。
【0004】
例えば、下記の特許文献1の技術では、転送クロック波形を生成するために、クロック駆動回路における2つの第1出力端子及び第2出力端子の内の第1出力端子をCR微分回路に伝達してアンダシュート波形を生じさせ、第2出力端子を介して直流成分を伝達するようにしている。なお、クロック駆動回路における出力端子を転送クロック当たり2個要しているのは、CR微分回路においては直流成分を伝達することができないためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−195796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の自己走査型の光プリントヘッドでは、クロック駆動回路における出力端子数が転送クロック当たり2個要するため、以下のような課題があった。
【0007】
光プリントヘッドにおいては、この動作の高速化を目的として、多数の自己走査型の発光サイリスタアレイチップを設け、同時並列して動作するようにしている。発光サイリスタアレイチップへのデータ転送クロックとして2相クロックが用いられ、発光サイリスタアレイチップ毎に2つのクロックが入力される。このため、自己走査型の光プリントヘッドのクロック駆動回路においては、発光サイリスタアレイチップ1個を駆動するために4個の出力端子を要することになる。
【0008】
光プリントヘッドには多数の自己走査型の発光サイリスタアレイチップを配列しているので、クロック駆動回路に備えるべき出力端子の総数が膨大となってしまい、大規模集積回路(以下「LSI」という。)パッケージに収容可能な端子数に抑えようとすると、クロック駆動回路に並列接続して駆動するチップ数が多数必要となってしまい、波形なまりを生じる。この結果、光プリントヘッドの動作を高速化できないという課題があった。
【0009】
又、発光素子として発光ダイオード(以下「LED」という。)を用いた自己走査型の光プリントヘッドにおいても、同様の課題が生じる。
【0010】
このように、光プリントヘッドを駆動するLSIのパッケージに収容可能な端子数を増大させず、自己走査型の発光素子アレイチップのクロック生成を行うことのできる回路構成が切望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の内の第1の発明の駆動装置は、共通端子に分岐接続されて配列された複数の発光素子を駆動する駆動装置において、走査回路と、データ駆動回路と、クロック駆動回路と、微分回路とを備えたことを特徴とする。
【0012】
ここで、前記走査回路は、各々、第1電源と接続される第1端子と、クロック端子と接続される第2端子と、前記第1端子及び前記第2端子間のオン/オフ状態を制御する制御端子と、を有する複数の3端子スイッチ素子が配列され、前記クロック端子から供給される第1クロックに基づき前記3端子スイッチ素子がオン/オフ動作して前記制御端子に流れる信号を前記発光素子に与え、前記複数の発光素子を順に走査して駆動する回路である。前記データ駆動回路は、駆動用矩形波の信号を駆動してデータ信号(以下単に「データ」という。)を前記共通端子へ供給する回路である。前記クロック駆動回路は、走査用矩形波の信号を駆動して第2クロックを出力する回路である。更に、前記微分回路は、前記第2クロックをインダクタにより微分して、前記第2クロックのエッジに微分波形が形成された前記第1クロックを生成し、前記クロック端子へ供給する回路である。
【0013】
第2の発明の光プリントヘッドは、前記第1の発明における複数の発光素子と、前記第1の発明の駆動装置と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
第3の発明の画像形成装置は、前記第2の発明の光プリントヘッドを備え、前記光プリントヘッドにより露光されて記録媒体に画像を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の内の第1の発明の駆動装置及び第2の発明の光プリントヘッドによれば、クロック駆動回路から出力される第2クロックを、インダクタを有する微分回路で微分して、その第2クロックのエッジに微分波形が形成された第1クロックを生成して走査回路へ供給するので、クロック駆動回路における第2クロック出力用の出力端子の数がクロック当たり1個で良く、従来構成と比べて所要端子の数を半減することができる。これにより、光プリントヘッドにおけるデータ転送速度を向上できることは勿論のこと、クロック駆動回路の出力端子の数の減少によって、回路規模の削減と、これによる低コスト化も期待できる。
【0016】
第3の発明の画像形成装置によれば、前記第2の発明の光プリントヘッドを採用しているので、スペース効率及び光取り出し効率に優れた高品質の画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は本発明の実施例1における図5中の印刷制御部及び光プリントヘッドの回路構成を示すブロック図である。
【図2】図2は本発明の実施例1における画像形成装置を示す概略の構成図である。
【図3】図3は図2中の光プリントヘッド13の構成を示す概略の断面図である。
【図4】図4は図3中の基板ユニットを示す斜視図である。
【図5】図5は図2の画像形成装置1におけるプリンタ制御回路の構成を示すブロック図である。
【図6】図6は図1中の発光サイリスタ210を示す構成図である。
【図7】図7は図1の動作を示すタイミングチャートである。
【図8】図8は図1及び図7中のクロック駆動回路80、RL微分回路90−1、第1段回路110−1及びタイミングチャートの要部を示す図である。
【図9】図9は図1の変形例1における印刷制御部及び光プリントヘッドの回路構成を示すブロック図である。
【図10】図10は図1及び図9の変形例2における出力バッファを示す回路図である。
【図11】図11は本発明の実施例2における印刷制御部及び光プリントヘッドの回路構成を示すブロック図である。
【図12】図12は図11中の発光サイリスタ210Bを示す構成図である。
【図13】図13は図11の動作を示すタイミングチャートである。
【図14】図14は図11及び図13中のクロック駆動回路80B、RL微分回路90−1、第1段回路110B−1及びタイミングチャートの要部を示す図である。
【図15】図15は図11の変形例1における印刷制御部及び光プリントヘッドの回路構成を示すブロック図である。
【図16】図16は図11及び図15の変形例2における出力バッファを示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施するための形態は、以下の好ましい実施例の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、明らかになるであろう。但し、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0019】
(実施例1の画像形成装置)
図2は、本発明の実施例1における画像形成装置を示す概略の構成図である。
【0020】
この画像形成装置1は、被駆動素子(例えば、発光素子として3端子発光素子である発光サイリスタ)を用いた発光素子アレイを有する露光装置(例えば、光プリントヘッド)が搭載されたタンデム型電子写真カラープリンタにより構成されており、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)の各色の画像を各々に形成する4つのプロセスユニット10−1〜10−4を有し、これらが記録媒体(例えば、用紙)20の搬送経路の上流側から順に配置されている。各プロセスユニット10−1〜10−4の内部構成は共通しているため、例えば、マゼンタのプロセスユニット10−3を例にとり、これらの内部構成を説明する。
【0021】
プロセスユニット10−3には、像担持体としての感光体(例えば、感光体ドラム)11が図2中の矢印方向に回転可能に配置されている。感光体ドラム11の周囲には、この回転方向上流側から順に、感光体ドラム11の表面に電荷を供給して帯電させる帯電装置12と、帯電された感光体ドラム11の表面に選択的に光を照射して静電潜像を形成する露光装置としての光プリントヘッド13が配設されている。更に、静電潜像が形成された感光体ドラム11の表面に、マゼンタ(所定色)のトナーを付着させて顕像を発生させる現像器14と、感光体ドラム11上のトナーの顕像を転写した際に残留したトナーを除去するクリーニング装置15が配設されている。なお、これら各装置に用いられているドラム又はローラは、図示しない駆動源からギア等を経由して動力が伝達され回転する。
【0022】
画像形成装置1の下部には、用紙20を堆積した状態で収納する用紙カセット21が装着され、その上方に、用紙20を1枚ずつ分離させて搬送するためのホッピングローラ22が配設されている。用紙20の搬送方向におけるホッピングローラ22の下流側には、ピンチローラ23,24と共に用紙20を挟持することによってこの用紙20を搬送する搬送ローラ25と、用紙20の斜行を修正し、プロセスユニット10−1に搬送するレジストローラ26とが配設されている。これらのホッピングローラ22、搬送ローラ25及びレジストローラ26は、図示しない駆動源からギア等を経由して動力が伝達され回転する。
【0023】
プロセスユニット10−1〜10−4の各感光体ドラム11に対向する位置には、それぞれ半導電性のゴム等によって形成された転写ローラ27が配設されている。各転写ローラ27には、感光体ドラム11上に付着されたトナーによる顕像を用紙20に転写する転写時に、各感光体ドラム11の表面電位とこれら各転写ローラ27の表面電位に電位差を持たせるための電位が印加されている。
【0024】
プロセスユニット10−4の下流には、定着器28が配設されている。定着器28は、加熱ローラとバックアップローラとを有し、用紙20上に転写されたトナーを加圧・加熱することによって定着する装置であり、この下流に、排出ローラ29,30、排出部のピンチローラ31,32、及び用紙スタッカ部33が設けられている。排出ローラ29,30は、定着器28から排出された用紙20を、排出部のピンチローラ31,32と共に挟持し、用紙スタッカ部33に搬送する。これらの定着器28及び排出ローラ29等は、図示しない駆動源からギア等を経由して動力が伝達されて回転する。
【0025】
このように構成される画像記録装置1は、次のように動作する。
先ず、用紙カセット21に堆積した状態で収納されている用紙20が、ホッピングローラ22によって、上から1枚ずつ分離されて搬送される。続いて、この用紙20は、搬送ローラ25、レジストローラ26及びピンチローラ23,24に挟持されて、プロセスユニット10−1の感光体ドラム11と転写ローラ27の間に搬送される。その後、用紙20は、感光体ドラム11及び転写ローラ27に挟持され、その記録面にトナー像が転写されると同時に感光体ドラム10−1の回転によって搬送される。同様にして、用紙20は、順次プロセスユニット10−2〜10−4を通過し、その通過過程で、各光プリントヘッド13により形成された静電潜像を各現像器14によって現像した各色のトナー像が、その記録面に順次転写されて重ね合わされる。
【0026】
このようにして記録面上に各色のトナー像が重ね合わされた後、定着器28によってトナー像が定着された用紙20は、排出ローラ29,30及びピンチローラ31,32に挟持されて、画像形成装置1の外部の用紙スタッカ部33に排出される。以上の過程を経て、カラー画像が用紙20上に形成される。
【0027】
(実施例1の光プリントヘッド)
図3は、図2中の光プリントヘッド13の構成を示す概略の断面図である。図4は、図3中の基板ユニットを示す斜視図である。
【0028】
図3に示す光プリントヘッド13は、ベース部材13aを有し、このベース部材13a上に、図4に示す基板ユニットが固定されている。基板ユニットは、ベース部材13a上に固定されるプリント配線板13bと、このプリント配線板13b上に接着剤等で固定された複数の集積回路(以下「IC」という。)チップ13cとにより構成されている。各ICチップ13cには、走査回路(例えば、自己走査回路)100が集積され、更にこの上に、主発光部としての発光素子列(例えば、発光サイリスタ列)からなる発光素子アレイ200が配置されている。各ICチップ13cにおける図示しない複数の端子と、プリント配線板13b上の図示しない配線パッドとは、ボンディングワイヤ13hにより電気的に接続されている。
【0029】
複数のICチップ13cにおける発光素子アレイ200上には、柱状の光学素子を多数配列してなるレンズアレイ(例えば、ロッドレンズアレイ)13dが配置され、このロッドレンズアレイ13dがホルダ13eにより固定されている。ベース部材13a、プリント配線板13b及びホルダ13eは、クランプ部材13f,13gにより固定されている。
【0030】
(実施例1のプリンタ制御回路)
図5は、図2の画像形成装置1におけるプリンタ制御回路の構成を示すブロック図である。
【0031】
このプリンタ制御回路は、画像形成装置1における印刷部の内部に配設された印刷制御部40を有している。印刷制御部40は、マイクロプロセッサ、読み出し専用メモリ(ROM)、随時読み書き可能なメモリ(RAM)、信号の入出力を行う入出力ポート、タイマ等によって構成され、図示しない上位コントローラからの制御信号SGl、及びビデオ信号(ドットマップデータを一次元的に配列したもの)SG2等によってプリンタ全体をシーケンス制御して印刷動作を行う機能を有している。印刷制御部40には、プロセスユニット10−1〜10−4の4つの光プリントヘッド13、定着器28のヒータ28a、ドライバ41,43、用紙吸引センサ45、用紙排出センサ46、用紙残量センサ47、用紙サイズセンサ48、定着器用温度センサ49、帯電用高圧電源50、及び転写用高圧電源51等が接続されている。ドライバ41には現像・転写プロセス用モータ(PM)42が、ドライバ43には用紙送りモータ(PM)44が、帯電用高圧電源50には現像器14が、転写用高圧電源51には転写ローラ27が、それぞれ接続されている。
【0032】
このような構成のプリンタ制御回路では、次のような動作を行う。
印刷制御部40は、上位コントローラからの制御信号SGlによって印刷指示を受信すると、先ず、温度センサ49によって定着器28内のヒータ28aが使用可能な温度範囲にあるか否かを検出し、この温度範囲になければヒータ28aに通電し、使用可能な温度まで定着器28を加熱する。次に、ドライバ41を介して現像・転写プロセス用モータ42を回転させ、同時にチャージ信号SGCによって帯電用高圧電源50をオン状態にし、現像器14の帯電を行う。
【0033】
そして、セットされている図2中の用紙20の有無及び種類が用紙残量センサ47及び用紙サイズセンサ48によって検出され、その用紙20に合った用紙送りが開始される。ここで、用紙送りモータ44はドライバ43を介して双方向に回転させることが可能であり、最初に逆転させて、用紙吸引センサ45が検知するまで、セットされた用紙20を予め設定された量だけ送る。続いて、正回転させて用紙20をプリンタ内部の印刷機構内に搬送する。
【0034】
印刷制御部40は、用紙20が印刷可能な位置まで到達した時点において、図示しない画像処理部に対してタイミング信号SG3(主走査同期信号、副走査同期信号を含む)を送信し、ビデオ信号SG2を受信する。画像処理部においてページ毎に編集され、印刷制御部40に受信されたビデオ信号SG2は、印刷データとして各光プリントヘッド13に転送される。各光プリントヘッド13は、それぞれ1ドット(ピクセル)の印刷のために設けられた自己走査回路100及び発光素子アレイ200を有している。
【0035】
ビデオ信号SG2の送受信は、印刷ライン毎に行われる。各光プリントヘッド13によって印刷される情報は、負電位に帯電された図示しない各感光体ドラム11上において電位の上昇したドットとして潜像化される。そして、現像器14において、負電位に帯電された画像形成用のトナーが、電気的な吸引力によって各ドットに吸引され、トナー像が形成される。
【0036】
その後、トナー像は転写ローラ27へ送られ、一方、転写信号SG4によって正電位に転写用高圧電源51がオン状態になり、転写ローラ27は感光体ドラム11と転写ローラ27との間隔を通過する用紙20上にトナー像を転写する。転写されたトナー像を有する用紙20は、ヒータ28aを内蔵する定着器28に当接して搬送され、この定着器28の熱によって用紙20に定着される。この定着された画像を有する用紙20は、更に搬送されてプリンタの印刷機構から用紙排出センサ46を通過してプリンタ外部へ排出される。
【0037】
印刷制御部40は、用紙サイズセンサ48、及び用紙吸引センサ45の検知に対応して、用紙20が転写ローラ27を通過している間だけ転写用高圧電源51からの電圧を転写ローラ27に印加する。印刷が終了し、用紙20が用紙排出センサ46を通過すると、帯電用高圧電源50による現像器14への電圧の印加を終了し、同時に現像・転写プロセス用モータ42の回転を停止させる。以後、上記の動作を繰り返す。
【0038】
(実施例1の印刷制御部及び光プリントヘッド)
図1は、本発明の実施例1における図5中の印刷制御部40及び光プリントヘッド13の概略の回路構成を示すブロック図である。
【0039】
光プリントヘッド13は、図4中のICチップ13cに形成された自己走査回路100及び発光素子アレイ200を有し、これらが複数の接続ケーブル95(=95−1〜95−3)及び複数の接続コネクタ96(=96−1〜96−3),97(=97−1〜97−3)を介して、印刷制御部40に接続されている。
【0040】
自己走査回路100により走査される発光素子アレイ200は、3端子発光素子である例えば複数のPゲート型発光サイリスタ210(=210−1〜210−n,・・・)を有し、これらの各発光サイリスタ210のアノードが電源電圧VDD電源に接続され、カソードがデータとしての駆動電流Ioutを流す共通端子INを介して接続コネクタ97−1に接続され、ゲートが自己走査回路100の各出力端子Q1〜Qnに接続されている。各発光サイリスタ210は、アノード・カソード間に電源電圧VDDが印加された状態で、ゲートにトリガ信号(例えば、トリガ電流)が流れると、アノード・カソード間がオン状態になってカソード電流が流れ、発光する素子である。発光サイリスタ210−1〜210−n,・・・の総数は、例えば、A4サイズの用紙に1インチ当たり600ドットの解像度で印刷可能な光プリントヘッド13の場合、4992個であり、これらが配列されることになる。
【0041】
自己走査回路100は、印刷制御部40から接続コネクタ96−2,96−3、接続ケーブル95−2,95−3及び接続コネクタ97−2,97−3を介して供給される2相の第1クロックにより駆動されて、発光素子アレイ200にトリガ電流を与えてオン/オフ動作させる回路であり、3端子スイッチ素子(例えば、Pゲート型の自己走査サイリスタ)を用いた複数段の回路110(=110−1〜110−n、例えばn=4992)を有し、自己走査型シフトレジスタにより構成されている。自己走査サイリスタを用いた各段の回路110(=110−1〜110−n、)は、第1端子(例えば、アノード)が第1電源(例えば、VDD電源)に接続された自己走査サイリスタ111(=111−1〜111−n)と、カソードが自己走査サイリスタ111の制御端子(例えば、ゲート)に接続されたダイオード112(=112−1〜112−n)と、自己走査サイリスタ111のゲート及び第2電源(例えば、グランドGND)間に接続された抵抗113(=113−1〜113−n)とにより、それぞれ構成されている。
【0042】
奇数段回路110−1,110−3,・・・,110−(n−1)における自己走査サイリスタ111(=111−1,111−3,・・・,111−(n−1))は、アノードがVDD電源に接続され、第2端子(例えば、カソード)が接続コネクタ97−2に接続され、ゲートが抵抗113(=113−1,113−3,・・・,113−(n−1))を介してグランドGNDに接続されると共に、そのゲートがダイオード112(=112−1,112−3,・・・,112−(n−1))のカソード・アノードを介して接続コネクタ97−3に接続されている。
【0043】
偶数段回路110−2,110−4,・・・,110−nにおける自己走査サイリスタ111(=111−2,111−4,・・・,111−n)は、アノードがVDD電源に接続され、カソードが接続コネクタ97−3に接続され、ゲートが抵抗113(=113−2,113−4,・・・,113−n)を介してグランドGNDに接続されると共に、そのゲートがダイオード112(=112−2,112−4,・・・,112−n)のカソード・アノードを介して前段の自己走査サイリスタ111(=111−1,111−3,・・・,111−(n−1))のゲートに接続されている。更に、各段の自己走査サイリスタ111(=111−1〜111−n)のゲートは、自己走査回路100の出力端子Q1〜Qnにそれぞれ接続されている。
【0044】
各段の回路110−1〜110−nにおける自己走査サイリスタ111は、発光素子アレイ200における発光サイリスタ210と同様なレイヤ構造を有し、且つ同様な回路動作を行う素子であるが、発光サイリスタ210のような発光機能を必要としないので、上層がメタル膜等の非透光性材料で覆われ、遮光して用いられる。各段の自己走査サイリスタ111におけるゲートにカソードが接続されたダイオード112は、各段の自己走査サイリスタ111のゲート間を接続するものであって、発光サイリスタ210−1〜210−nが順次点灯する時の走査方向(例えば、図1において右方向)を決定するために設けられている。
【0045】
自己走査回路100では、印刷制御部40から供給される2相の第1クロックに基づき、自己走査サイリスタ111−1〜111−nが択一的にオン状態となり、このオン状態が発光素子アレイ200に伝達され、発光サイリスタ210−1〜210−nの内から発光すべき発光サイリスタ210−1〜210−nを指令する働きをする。この自己走査回路100において、オン状態となる各段の回路110−1〜110−nにおけるサイリスタ111のオン状態が、2相クロック毎に隣接サイリスタ111に伝達され、シフトレジスタと同様の回路動作が行われる構成になっている。
【0046】
印刷制御部40は、駆動用矩形波の信号である駆動指令信号DRVONを出力する駆動用矩形波発生回路61と、その駆動指令信号DRVONに基づいて複数の発光素子アレイ200を時分割駆動するためのデータとしての駆動電流Ioutを共通端子INに流す複数のデータ駆動回路70と、走査用矩形波の信号である矩形波信号S62−1,S62−2を出力する走査用矩形波発生回路62と、その矩形波信号S62−1,S62−2に基づいて自己走査回路100に供給する2相クロックを生成するためのクロック駆動回路80及びRL微分回路90−1,90−2等とを有している。図1においては、説明を簡略化するために1組の駆動用矩形波発生回路61及びデータ駆動回路70のみが図示されている。複数の発光素子アレイ200は、例えば、総数4992個の発光サイリスタ210−1〜210−n,・・・を有し、これらの発光サイリスタ210−1〜210−n,・・・が複数の発光サイリスタ210−1〜210−nの組にグループ化され、各グループ毎に設けられたデータ駆動回路70によって、それらが同時並行的に分割駆動が行われる構成になっている。
【0047】
一例として典型的な設計例を挙げると、発光サイリスタ210(=210−1〜210−n)を192個配列してアレイ化した発光素子アレイ200のチップを図4中のプリント配線板13b上に26個整列する。これにより、光プリントヘッド13に必要な総数4992個の発光サイリスタ210−1〜210−n,・・・を構成している。この際、データ駆動回路70は前記26個の発光素子アレイ200に対応して設けられ、これらのデータ駆動回路70における出力端子の総数は26である。
【0048】
一方、走査用矩形波発生回路62、クロック駆動回路80及びRL微分回路90−1,90−2は、アレイ化した自己走査回路100のチップを駆動するものであるが、単にクロックを生成するのみならず、後述する自己走査サイリスタ111の点灯エネルギーを制御する必要があり、光プリントヘッド13の高速動作のためには、自己走査回路100毎に設けることが好ましい。しかし、光プリントヘッド13のデータ転送が低速で良い場合には、クロック駆動回路80及びRL微分回路90−1,90−2の出力端子と複数の自己走査回路100を並列に接続することで、その回路を共用することができる。
【0049】
これらのデータ駆動回路70、クロック駆動回路80、RL微分回路90−1,90−2、及び自己走査回路100により、本実施例1の駆動装置が構成されている。なお、データ駆動回路70、クロック駆動回路80及びRL微分回路90−1,90−2は、図1においては、印刷制御部40の内部に配置されているが、光プリントヘッド13の内部に配置しても良い。
【0050】
データ駆動回路70は、駆動用矩形波発生回路61から供給される駆動指令信号DRVONを反転する相補型MOSトランジスタ(以下「CMOS」という。)インバータ71と、このCMOSインバータ71の出力端子とデータ端子DAとの間に接続された抵抗72とにより構成されている。CMOSインバータ71は、Pチャネル型MOSトランジスタ(以下「PMOS」という。)71aと、Nチャネル型MOSトランジスタ(以下「NMOS」という。)71bとを有し、これらがVDD電源とグランドGNDとの間に直列に接続されている。
【0051】
即ち、PMOS71aは、ゲートに駆動指令信号DRVONが入力され、ソースがVDD電源に接続され、ドレーンが抵抗72の一端に接続されている。NMOS71bは、ゲートに駆動指令信号DRVONが入力され、ソースがグランドGNDに接続され、ドレーンが抵抗72の一端に接続されている。抵抗72の他端は、データ端子DA、接続コネクタ96−1、接続ケーブル95−1、及び接続コネクタ97−1を介して、発光素子アレイ200側の共通端子INに接続されている。
【0052】
クロック駆動回路80は、矩形波信号S62−1を駆動する出力バッファ81と、矩形波信号S62−2を駆動する出力バッファ82と、この出力バッファ81,82の出力側にそれぞれ接続された2相の第2クロック出力用の出力端子CK1R,CK2Rとにより構成されている。各出力バッファ81,82は、同一の回路構成であって、スイッチ素子(例えば、第1導電型のMOSトランジスタであるPMOS)を用いたオープンドレーン構成となっており、後述するように、高いHレベル出力電圧を維持しつつ、自己走査サイリスタ111のゲートトリガに適した微分波形(例えば、アンダシュート波形)を発生させることができる。
【0053】
即ち、一方の出力バッファ81は、PMOS81a及び第2導電型のMOSトランジスタ(例えば、NMOS))81bを有している。PMOS81aは、ゲートに矩形波信号S62−1が入力され、ソースが第1電源としてのVDD電源に接続され、ドレーンがNMOS81bのドレーン及び出力端子CK1Rに接続されている。NMOS81bは、ソース及びゲートが第2電源としてのグランドGNDに接続されて、常にオフ状態になっている。そのため、PMOS81a及びNMOS81bにより、PMOSオープンドレーン出力バッファ回路が構成されている。PMOS81aのサブストレート端子とドレーンとの間には、寄生ダイオード81a−1が存在し、更に、NMOS81bのサブストレート端子とドレーン端子との間にも、寄生ダイオード81b−1が存在する。ダイオード81a−1のアノード及びカソードは、PMOS81aのドレーン及びソースに対して並列に接続されている。ダイオード81b−1のアノード及びカソードは、NMOS81bのソース及びドレーンに対して並列に接続されている。
【0054】
同様に、他方の出力バッファ82は、スイッチ素子(例えば、第1導電型のMOSトランジスタであるPMOS)82a及び第2導電型のMOSトランジスタ(例えば、NMOS)82bを有している。PMOS82aは、ゲートに矩形波信号S62−2が入力され、ソースが第1電源としてのVDD電源に接続され、ドレーンがNMOS82bのドレーン及び出力端子CK1Rに接続されている。NMOS82bは、ソース及びゲートが第2電源としてのグランドGNDに接続されて、常にオフ状態になっている。そのため、PMOS82a及びNMOS82bにより、PMOSオープンドレーン出力バッファ回路が構成されている。PMOS82aのサブストレート端子とドレーンとの間には、寄生ダイオード82a−1が存在し、更に、NMOS82bのサブストレート端子とドレーン端子との間にも、寄生ダイオード82b−1が存在する。ダイオード82a−1のアノード及びカソードは、PMOS82aのドレーン及びソースに対して並列に接続されている。ダイオード82b−1のアノード及びカソードは、NMOS82bのソース及びドレーンに対して並列に接続されている。
【0055】
2つのRL微分回路90−1,90−2は、同一の回路構成であり、一方のRL微分回路90−1が、クロック駆動回路80の出力端子CK1Rとクロック端子CK1との間に接続され、他方のRL微分回路90−2が、クロック駆動回路80の出力端子CK2Rとクロック端子CK2との間に接続されている。
【0056】
一方のRL微分回路90−1は、抵抗91−1、インダクタ92−1及び抵抗93−1により構成されている。抵抗91−1は、出力端子CK1とクロック端子CK1との間に接続され、この抵抗91−1及びクロック端子CK1間と第2電源としてのグランドGNDとの間に、インダクタ92−1及び抵抗93−1が直列に接続されている。同様に、他方のRL微分回路90−2は、抵抗93−2、インダクタ92−2及び抵抗93−2により構成されている。抵抗93−2は、出力端子CK2Rとクロック端子CK2との間に接続され、この抵抗93−2及びクロック端子CK2間と第2電源としてのグランドGNDとの間に、インダクタ92−2及び抵抗93−2が直列に接続されている。
【0057】
インダクタ92−1,92−2は、例えば、高透磁率を備えたフェライト材料の表層又は内装に厚膜配線層を設け、インダクタ電極の一端から他端に貫通するように配線を形成したフェライトビーズ等を用いることができる。
【0058】
前記クロック駆動回路80は、PMOSを用いたオープンドレーンの出力バッファ81,82により構成されているので、出力端子CK1R,CK2Rの出力状態が、PMOS81a,82aがオンした時に高レベル(以下「Hレベル」という。)となる。PMOS81a,82aがオフした時には、出力端子CK1R,CK2Rの出力状態がハイ・インピーダンス(以下「HiZ」という。)となるが、一方の出力端子CK1Rが、抵抗91−1、インダクタ92−1及び抵抗93−1を介してグランドGNDに接続され、他方の出力端子CK2Rが、抵抗91−2、インダクタ92−2及び抵抗93−2を介してグランドGNDに接続されているので、これらの出力端子CK1R,CK2Rは、低レベル(以下「Lレベル」という。)となる。
【0059】
以下の説明においては、説明の煩雑さを避けるために、クロック駆動回路80の出力状態として少なくともHレベルとLレベルの2つの状態値を持つものとして記載する。
【0060】
なお、図1においては、抵抗91−1,91−2を設けているが、クロック駆動回路80の駆動能力によっては、抵抗91−1,91−2の抵抗値を略ゼロとすることができて、その場合には抵抗91−1,91−2を省略することも可能である。同様に、抵抗93−1,93−2を省略することもできる。
【0061】
(実施例1の発光サイリスタ)
図6(a)〜(d)は、図1中の発光サイリスタ210を示す構成図である。
【0062】
図6(a)は、発光サイリスタ210の回路シンボルを示し、アノードA、カソードK、及びゲートGの3つの端子を有している。
【0063】
図6(b)は、発光サイリスタ210の断面構造を示す図である。発光サイリスタ210は、例えば、GaAsウェハ基材を用い、公知のMO−CVD(Metal Organic-Chemical Vapor Deposition)法により、GaAsウェハ基材の上層に所定の結晶をエピタキシャル成長させることで製造される。
【0064】
即ち、図示しない所定のバッファ層や犠牲層をエピタキシャル成長させた後、AlGaAs材料にN型不純物を含ませたN型層211と、P型不純物を含ませ成層したP型層212と、N型不純物を含ませたN型層213とを順に積層させたNPNの3層構造からなるウェハを形成する。次いで、公知のフォトリソグラフィ法を用いて、最上層であるN型層213の一部に、選択的にP型不純物領域214を形成する。更に、公知のエッチング法により、図示しない溝部を形成することで、素子分離を行う。又、前記エッチングの過程で、発光サイリスタ210の最下層となるN型領域211の一部を露出させ、この露出領域に金属配線を形成してカソードKを形成する。これと同時に、P型領域214とP型領域212にも、それぞれアノードAとゲートGが形成される。
【0065】
図6(c)は、発光サイリスタ210の他の形態を示す断面構造図である。この断面構造では、例えば、GaAsウェハ基材を用い、公知のMO−CVD法により、そのGaAs基材の上層に所定の結晶をエピタキシャル成長させることで製造される。
【0066】
即ち、図示しない所定のバッファ層や犠牲層をエピタキシャル成長させた後、AlGaAs材料にN型不純物を含ませたN型層211、P型不純物を含ませ成層したP型層212と、N型不純物を含ませたN型層213と、P型不純物を含ませ成層したP型層215とを順に積層させたPNPNの4層構造のウェハを形成する。更に、公知のエッチング法を用いて、図示しない溝部を形成することで素子分離を行う。又、前記エッチングの過程で、発光サイリスタ210の最下層となるN型領域211の一部を露出させ、この露出領域に金属配線を形成してカソードKを形成する。同様に、最上層となるP型領域215の一部を露出させ、この露出領域に金属配線を形成してアノードAを形成する。これと同時に、P型領域212にゲートGが形成される。
【0067】
図6(d)は、図6(b)、(c)と対比させて描いた発光サイリスタ210の等価回路図である。発光サイリスタ210は、PNPトランジスタ(以下「PNPTR」という。)221とNPNトランジスタ(以下「NPNTR」という。)222とからなり、PNPTR221のエミッタが発光サイリスタ210のアノードAに相当し、NPNTR222のベースが発光サイリスタ210のゲートGに相当し、NPNTR222のエミッタが発光サイリスタ210のカソードKに相当している。又、PNPTR221のコレクタは、NPNTR222のベースに接続され、PNPTR221のベースが、NPNTR222のコレクタに接続されている。
【0068】
なお、図6に示す発光サイリスタ210では、GaAsウェハ基材上にAlGaAs層を構成したものであるが、これに限定されるものではなく、GaP、GaAsP、AlGaInPといった材料を用いるものであっても良く、更には、サファイヤ基板上にGaNやAlGaN、InGaNといった材料を成膜したものであっても良い。
【0069】
(実施例1の印刷制御部及び光プリントヘッドの概略動作)
図1において、例えば、印刷制御部40内の駆動用矩形波発生回路61から出力される駆動指令信号DRVONがLレベルの場合、データ駆動回路70におけるCMOSインバータ71を構成するPMOS71aがオン状態、NMOS71bがオフ状態となり、抵抗72を介してデータ端子DAは、Hレベルとなる。そのため、接続コネクタ96−1、接続ケーブル95−1及び接続コネクタ97−1を介して、光プリントヘッド13側の共通端子IN及び各発光サイリスタ210のカソードがHレベルに上昇する。この結果、各発光サイリスタ210のアノード・カソード間電圧は略0Vとなって、そこに流れる駆動電流Ioutがゼロとなり、発光サイリスタ210−1〜210−nが全て非発光状態となる。
【0070】
これに対し、駆動指令信号DRVONがHレベルの場合、CMOSインバータ71を構成するPMOS71aがオフ状態、NMOS71bがオン状態となって、抵抗72を介してデータ端子DAがLレベルとなる。この結果、接続コネクタ96−1、接続ケーブル95−1及び接続コネクタ97−1を介して共通端子INも略グランドGND電位(≒0V)となり、各発光サイリスタ210のアノード・カソード間に略電源電圧VDDが印加される。
【0071】
この際、発光サイリスタ210−1〜210−nの内、自己走査回路100により、発光指令されている発光サイリスタ210のゲートのみを選択的にHレベルとすることで、この発光サイリスタ210のゲートにはトリガ電流を生じ、発光指令されているサイリスタ210がターンオンすることになる。ターンオンした発光サイリスタ210のカソードに流れる電流は、データ端子DAに流入する電流(即ち、駆動電流Iout)であり、発光サイリスタ210は発光状態となってその駆動電流Ioutの値に応じた発光出力を生じる。
【0072】
即ち、発光サイリスタ210−1〜210−nの動作を考えるにあたり、自己走査回路100の各段の回路110−1〜110−nにおけるオンしているサイリスタ111(=111−1〜111−n)に着目すると、発光サイリスタ210のアノードには電源電圧VDDが印加されており、そのカソードがLレベルにされると、発光サイリスタ210のアノード・カソード間には電圧が印加される。一方、自己走査回路100における各サイリスタ111のゲートと、各発光サイリスタ210のゲートとがそれぞれ接続されているため、サイリスタ111のゲート・カソード間にも電圧が印加されることになる。この時、発光サイリスタ210−1〜210−nの内、自己走査回路100により発光指令されている発光サイリスタ210のゲートのみを選択的にHレベルとすることで、この発光サイリスタ210のゲートにはトリガ電流を生じ、発光指令されている発光サイリスタ210がターンオンすることになる。この際、発光サイリスタ210のカソードに流れる電流は、データ端子DAに流入する駆動電流Ioutであって、前記発光サイリスタ210が発光状態なってその駆動電流Ioutの値に応じた発光出力を生じる。
【0073】
(実施例1の印刷制御部及び光プリントヘッドの詳細動作)
図7は、図1の光プリントヘッド13及び印刷制御部40の詳細な動作を示すタイミングチャートである。
【0074】
この図7では、図2の画像形成装置1での印刷動作時における1ライン走査において、図1の発光サイリスタ210−1〜210−n(例えば、n=8)を順次点灯させる場合の動作波形が示されている。
【0075】
本実施例1のように、自己走査サイリスタ111を用いた自己走査回路100の場合、クロック端子CK1,CK2から供給される2相クロックが用いられ、この2相クロックは、出力端子CK1R,CK2Rを備えたクロック駆動回路80によって駆動される。
【0076】
図7のタイミングチャートにおいて、左端部に示す状態においては、走査用矩形波発生回路62から出力された矩形波信号S62−1,S62−2が出力バッファ81,82で反転されて、出力端子CK1R,CK2Rの各信号がHレベルとされる。
【0077】
クロック駆動回路80の出力端子CK1Rは、抵抗91−1を介してクロック端子CKlと接続され、このクロック端子CK1が、インダクタ92−1と抵抗93−1の直列回路を介してグランドGNDに接続されている。同様に、クロック駆動回路80の出力端子CK2Rは、抵抗93−2を介してクロック端子CK2と接続され、このクロック端子CK2が、インダクタ92−2と抵抗93−2の直列回路を介してグランドGNDに接続されている。そのため、図7のタイミングチャートの左端部に示す状態においては、クロック端子CK1の電位は、出力端子CK1RからのHレベル電位を抵抗91−1,93−1により分圧して得られるHレベル電位となっている。
【0078】
この時、(抵抗93−1の抵抗値≫抵抗91−1の抵抗値)に設定することで、前記Hレベルを電源電圧VDDに近接した値とすることは容易であり、抵抗91−1を省略する場合には、前記Hレベル電位を電源電圧VDDに略等しくすることができる。同様に、クロック端子CK2の電位は、出力端子CK2RからのHレベル電位を抵抗91−2,93−2により分圧して得られるHレベル電位となっている。
【0079】
このように、図7のタイミングチャートの左端部に示す状態においては、クロック端子CK1,CK2の各信号は共にHレベルとなって、奇数段回路110−1,110−3,110−5,110−7における自己走査サイリスタ111−1,111−3,・・・,111−7の組と、偶数段回路110−2,110−4,110−6,110−8における自己走査サイリスタ111−2,111−4,・・・,111−8の組とのいずれも、そのカソードがHレベルとされ、オフ状態となっている。この時、駆動指令信号DRVONはLレベルとなっており、CMOSインバータ71の出力端子がHレベルであって、抵抗72、データ端子DA、接続コネクタ96−1、接続ケーブル95−1、接続コネクタ97−1、及び共通端子INを介して、発光サイリスタ210−1〜210−8のカソードもまたHレベルとなって、これらの発光サイリスタ210−1〜210−8がオフ状態にある。
【0080】
以下、第1段、第2段回路110−1,110−2における各サイリスタ111−1,111−2のターンオン過程(1)、(2)を説明する。
【0081】
(1) 第1段回路110−1におけるサイリスタ111−1のターンオン過程
図7の時刻t1において、走査用矩形波発生回路62から出力された矩形波信号S62−1がクロック駆動回路80内の出力バッファ81で反転されて、出力端子CK1RがLレベルとされる。すると、インダクタ92−1には逆起電圧を生じ、クロック端子CK1の電圧が、a部のように、グランドGND電位以下に降下して微分波形(例えば、アンダシュート波形)を生じる。
【0082】
この時、第1段回路110−1のサイリスタ111−1に着目すると、このアノード電圧が電源電圧VDDであり、典型的な設計例では3.3Vとされる。一方、ダイード112−1のアノードは、クロック端子CK2に接続されており、この電圧が電源電圧VDDに近接したHレベルである。そのため、Hレベルがダイオード112−1のアノード・カソード間を通り、サイリスタ111−1のゲート・カソード間を経由してクロック端子CK1に至る電流が流れ、この電流をトリガ電流としてサイリスタ111−1がターンオンすることになる。
【0083】
時刻t2において、駆動用矩形波発生回路61から出力される駆動指令信号DRVONが立ち上がり、これがCMOSインバータ71で反転され、抵抗72を介してデータ端子DAがLレベルへ遷移する。これにより、発光サイリスタ210−1のアノード・カソード間には電源電圧VDDに略等しい電圧が印加される。この時、サイリスタ111−1はオンしているので、このサイリスタ111−1のゲートに対してゲート電圧を共有している発光サイリスタ210−1がオンして、この発光サイリスタ210−1のカソードには、b部に示すように、駆動電流Ioutが生じ、この駆動電流Ioutの値に応じた発光出力を生じる。
【0084】
次の時刻t3において、駆動指令信号DRVONが立ち下がり、これがCMOSインバータ71で反転され、データ端子DAがHレベルへ遷移する。これにより、発光サイリスタ210−1のアノード・カソード間電圧が略0Vとなって、この発光サイリスタ210−1はオフし、c部に示すように、駆動電流I0utが略ゼロとなる。
【0085】
本実施例1では、発光サイリスタ210−1を発光させて、図2中の感光体ドラム11上に潜像を形成することができる。この時の露光エネルギー量は、前記駆動電流Ioutの値に応じて定まる発光パワーと露光時間(t3−t2)との積である。そのため、発光サイリスタ210−1等に製造ばらつきに起因する発光効率の差があったとしても、前記露光時間(t3−t2)を発光サイリスタ210−1毎に調整することで、露光エネルギー量のばらつきを補正することができる。
【0086】
又、発光サイリスタ210−1を発光させる必要のない場合には、時刻t2から時刻t3の間の駆動指令信号DRVONをLレベルのままとする。このように、駆動指令信号DRVONによって発光サイリスタ210−1の発光の有無もまた制御することができる。
【0087】
(2) 第2段回路110−2におけるサイリスタ111−2のターンオン過程
図7の時刻t4において、走査用矩形波発生回路62から出力された矩形波信号S62−2がクロック駆動回路80内の出力バッファ82で反転されて、出力端子CK2RがLレベルとされる。この時、インダクタ92−2には逆起電圧を生じ、クロック端子CK2の電圧は、d部のように、グランドGND電位以下に降下してアンダシュート波形を生じる。
【0088】
この時、第2段回路110−2のサイリスタ111−2に着目すると、このアノード電圧は電源電圧VDDであり、典型的な設計例では3.3Vとされる。一方、ダイオード112−2のアノードは、サイリスタ111−1のゲートに接続されており、このサイリスタ111−1はオン状態となっているため、ダイオード112−2のアノード電圧は、電源電圧VDDに近接したHレベルである。そのため、サイリスタ111−1のゲートから、ダイオード112−2のアノード・カソード間を通り、サイリスタ111−2のゲート・カソード間を経由してクロック端子CK2に至る電流が流れ、この電流をトリガ電流としてサイリスタ111−2がターンオンすることになる。
【0089】
時刻t5において、クロック駆動回路80の出力端子CK1RがHレベルとされる。この時、インダクタ92−1に逆起電圧を生じ、クロック端子CKlには、e部に示すオーバシュート電圧が発生して、サイリスタ111−1のアノード・カソード間電圧が急激に減少し、このサイリスタ111−1がターンオンする。
【0090】
時刻t6において、駆動指令信号DRVONが立ち上がり、これがCMOSインバータ71で反転され、データ端子DAがLレベルへ遷移する。データ端子DAがLレベルへ遷移すると、発光サイリスタ210−2のアノード・カソード間には、電源電圧VDDと略等しい電圧が印加される。前述したように、時刻t6においては、サイリスタ111−2がオン状態にあり、サイリスタ111−1がオフとなっている。
【0091】
このように、サイリスタ111−2はオンしているので、このサイリスタ111−2のゲートに対してゲート電圧を共有している発光サイリスタ210−2がオンし、このカソードには、f部に示すように駆動電流Ioutを生じ、この駆動電流Ioutの値に応じた発光出力を生じる。
【0092】
次の時刻t7において、駆動指令信号DRVONが立ち下がり、これがCMOSインバータ71で反転され、データ端子DAがHレベルへ遷移する。これにより、発光サイリスタ210−2のアノード・カソード間電圧は略0Vとなって発光サイリスタ210−2がオフし、g部に示すように、駆動電流Ioutは略ゼロとなる。
【0093】
以下同様に、クロック駆動回路80における出力端子CK1R,CK2Rの信号の遷移と、駆動指令信号DRVONのオン、オフとが順に発生して、発光サイリスタ210−3〜210−8を順次点灯することができる。
【0094】
以上、図7を用いて詳細に説明したように、クロック端子CK1,CK2から供給されるクロックは、異なる位相をもって同様波形が繰り返す形状を有しており、これらのクロック波形が、奇数段の自己走査サイリスタ111−1,111−3,・・・,111−7の組と、偶数段の自己走査サイリスタ111−2,111−4,・・・,111−8の組とに順次入力されることで、各段の自己走査サイリスタ111−1〜111−8が順にオンしていく。
【0095】
オン状態にある自己走査サイリスタ111のゲート電圧は、電源電圧VDDに略等しいHレベルであり、オフ状態にある自己走査サイリスタ111のゲート電圧はグランドGND電位に略等しいLレベルである。前述したように、各段の自己走査サイリスタ111−1〜111−8が順次オンしていく結果、図1の自己走査回路100はシフトレジスタとして動作し、各段の自己走査サイリスタ111−1〜111−8のゲートが、自己走査回路100の出力端子Q1〜Q8となっている。そのため、自己走査回路100の出力端子Q1〜Q8から出力される点灯指令信号によって、発光素子アレイ200における発光サイリスタ位置が指令され、データ端子DAの値により発光サイリスタ210−1〜210−8の点灯、非点灯の別、更には点灯時間を制御することが可能となる。
【0096】
(図7中のアンダシュート波形の説明)
図8(a)、(b)は、図1のクロック駆動回路80内の出力バッファ81、RL微分回路90−1、及び第1段回路110−1と図7のタイミングチャートとの要部を示す図であり、同図(a)は要部の回路図、及び、同図(b)は要部の電圧波形図である。
【0097】
図8(a)において、サイリスタ111−1のアノードはVDD電源に接続され、このサイリスタ111−1のカソードがクロック端子CK1に接続され、更に抵抗91−1を介して出力端子CK1Rに接続されている。又、クロック端子CK1は、インダクタ92−1及び抵抗93−1を介してグランドGNDに接続されている。ダイオード112−1のカソードは、サイリスタ111−1のゲートに接続されている。ダイオード112−1のアノードは、図1に示したようにクロック端子CK2に接続されているのであるが、サイリスタ111−1のターンオン過程においてはその信号レベルが電源電圧VDDと略等しいHレベルとされており、図を簡略化する目的で、図8(a)においてはVDD電源に接続して示している。
【0098】
例えば、クロック駆動回路80の出力端子CK1RがHレベルとなっている場合を考える。
【0099】
これは前記図7のタイミングチャートの左端部における状態に対応している。この時、図8(a)の実線矢印で示す向きに電流I1を生じる。この電流I1は、VDD電源、PM0S81a、抵抗91−1、インダクタ92−1及び抵抗93−1を経由してグランドGNDに至る経路を通る。
【0100】
次いで、図7における時刻t1において、PM0S81aがオフ状態に遷移する。すると、インダクタ92−1には、図8(a)中に+として極性を付記した向きに逆起電圧を生じ、破線矢印にて示す向きの電流I2を生じる。この電流I2の経路は、インダクタ92−1、抵抗93−1、ダイオード81b−1、及び抵抗91−1を経由してインダクタ92−1に戻る第1の電流経路である。
【0101】
この時、第1の電流経路に着目すると、ダイオード81b−1のアノードはグランドGNDに接続されているので、出力端子CK1Rの電位はグランドGND電位よりも前記ダイオード81b−1の順電圧分低い電位となり、出力端子CKlの電位は前記ダイオード81b−1の順電圧よりも抵抗93−1の両端に生じる電圧降下分だけ更に低い電位となることが判る。
【0102】
この結果、破線矢印にて示すように、VDD電源からダイオード112−1、サイリスタ111−1のゲート・カソード、インダクタ92−1、及び抵抗93−1を経由してグランドGNDに至る第2の電流経路に電流I3を生じ、サイリスタ111−1のゲート・カソード間のトリガ電流となってサイリスタ111−1がターンオンすることになる。
【0103】
図8(b)は、前記過程を示す電圧波形であって、出力端子CKIRがLレベルへ遷移する時、クロック端子CK1にはa部に示すようにアンダシュート部を生じて、グランドGND電位よりも電圧Vp分低くすることができる。
【0104】
典型的な設計例では、電源電圧VDDは3.3Vであり、ダイオード112−1の順電圧Vfは略1.6V、サイリスタ111−1のゲート・カソード間に生じるPN接合の順電圧Vgkもまた1.6Vとすると、第2の電流経路に電流I3を生じさせるためには、
Vf+Vgk<VDD+Vp
であることが必要である。この時、図8(b)に示すクロック端子CK1の波形にアンダシュート部aが無く、Vp=0であると、
Vf+Vgk=1.6+1.6=3.2V
となり、電源電圧VDDと同程度の値になって、サイリスタ111−1をターンオンさせるに十分なゲートトリガ電流を得ることができない。
【0105】
これに対し、例えば、前記アンダシュート波形としてVp=0.6Vといった値を与えることで、
VDD+Vp=3.3+0.6=3.9V
となり、サイリスタ111−1をターンオンさせるに十分なゲートトリガ電流を得ることができる。
【0106】
(実施例1の変形例1)
図9は、本発明の実施例1における図1の変形例1である印刷制御部40及び光プリントヘッド13Aの概略の回路構成を示すブロック図であり、図1中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0107】
本変形例1では、実施例1と同様の印刷制御部40を有している。印刷制御部40には、実施例1と同様の複数の接続コネクタ96(96−1〜96−3)、接続ケーブル95(95−1〜95−3)及び接続コネクタ97(=97−1〜97−3)を介して、実施例1の光プリントヘッド13とは異なる構成の光プリントヘッド13Aが接続されている。本変形例1の光プリントヘッド13Aは、実施例1と同様の自己走査回路100と、実施例1の発光素子アレイ200とは異なる構成の発光素子アレイ200Aとを有している。
【0108】
発光素子アレイ200Aは、複数の2端子発光素子(例えば、Pゲート型のLED)210A(=210A−1〜210A−n,・・・)を有し、これらの各LED210Aのアノードが自己走査回路100の各出力端子Q1〜Qnに接続され、カソードが駆動電流Ioutを流す共通端子INを介して接続コネクタ97−1に接続されている。各LED210Aは、アノード・カソード間に所定電圧が印加されると、オン状態になってカソード電流が流れ、発光する素子である。LED210A−1〜210A−n,・・・の総数は、実施例1と同様に、例えば、A4サイズの用紙に1インチ当たり600ドットの解像度で印刷可能な光プリントヘッド13Aの場合、4992個であり、これらが配列されることになる。
【0109】
このような構成の印刷制御部40及び光プリントヘッド13Aでは、以下のように動作する。
【0110】
例えば、駆動用矩形波発生回路61から出力される駆動指令信号DRVONがLレベルの場合、データ駆動回路70内のCMOSインバータ71により、抵抗72を介してデータ端子DAがHレベルとなる。そのため、接続コネクタ96−1、接続ケーブル95−1及び接続コネクタ97−1を介して、光プリントヘッド13A側の共通端子IN及び各LED210AのカソードがHレベルに上昇する。この結果、LED210A−1〜210A−nが全て非発光状態となる。
【0111】
これに対し、駆動指令信号DRVONがHレベルの場合、CMOSインバータ71により、抵抗72を介してデータ端子DAがLレベルとなる。この結果、接続コネクタ96−1、接続ケーブル95−1及び接続コネクタ97−1を介して共通端子INも略グランドGND電位(≒0V)となる。この際、LED210A−1〜210A−nの内、自己走査回路100により、発光指令されているLED210Aのアノードのみを選択的にHレベルとすることで、発光指令されているLED210Aがオン状態になる。オン状態のLED210Aのカソードに流れる電流は、データ端子DAに流入する電流(即ち、駆動電流Iout)であり、LED210Aは発光状態となってその駆動電流Ioutの値に応じた発光出力を生じる。
このように、本変形例1では、実施例1とほぼ同様に動作する。
【0112】
(実施例1の変形例2)
図10は、図1及び図9の変形例2における出力バッファを示す回路図であり、図1及び図9中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0113】
本変形例2の出力バッファ81Aでは、図1及び図9中の出力バッファ81におけるNMOS81b及びこの寄生ダイオード81b−1に代えて、通常のダイオード81cが設けられている。ダイオード81cは、カソードが出力端子CK1Rに接続され、アノードがグランドGNDに接続されている。図1及び図9中の他の出力バッファ82においても、図示しないが、NMOS82b及びこの寄生ダイオード82b−1に代えて、通常のダイオードが設けられている。
【0114】
例えば、ダイオード81cは、図8に示す電流I2をグランドGND側から出力端子CK1R側へ流す機能を有している。このようなダイオード81cを設けても、図1及び図9と同様の動作が行われる。
【0115】
(実施例1及び変形例1、2の効果)
本実施例1及び変形例1、2によれば、次の(a)、(b)のような効果がある。
【0116】
(a) 従来構成の自己走査回路の駆動においては、例えば、図1のRL微分回路90−1,90−2に相当する箇所にCR微分回路をそれぞれ設けて、図8(b)のa部においてアンダシュート波形を生成し、2個のクロック端子CK1,CK2から2相のクロックを出力している。この際、CR微分回路においては、直流成分を伝達することができないので、2個のクロック端子CK1,CK2に対して各2個のクロック出力端子を設けている。
【0117】
即ち、光プリントヘッド13においては、動作の高速化を目的として、多数の自己走査回路100のチップを設け、同時並列して動作するようにしている。多数の自己走査回路100へのデータ転送クロックとして2相クロックが用いられ、各自己走査回路100毎に2相のクロックが入力される。このため、自己走査回路100にクロックを供給するための従来のクロック駆動回路(本実施例1のクロック駆動回路に相当)においては、自己走査回路100のチップ1個を駆動するために4個のクロック出力端子を要することになる。
【0118】
光プリントヘッド13には多数の自己走査回路100のチップを配列しているので、そのクロック駆動回路に備えるべきクロック出力端子の総数が膨大となってしまう。これを避けるために、LSIパッケージに収容可能な端子数に抑えようとすると、クロック駆動回路に並列接続して駆動する自己走査回路100のチップ数を増大することになってしまい、波形なまりを生じる。この結果、光プリントヘッド13の動作を高速化できないという課題があった。
【0119】
これを解決するために、本実施例1や変形例1、2によれば、クロック駆動回路80を、PMOSを用いたオープンドレーン構成にし、この出力信号をRL微分回路90−1,90−2で微分して、図8(b)のa部におけるアンダシュート波形を生成しているので、クロック駆動回路80における出力端子CK1R,CK2Rの数がクロック当たり1個で良く、従来構成と比べて所要端子の数を半減することができる。これにより、光プリントヘッド13,13Aにおけるデータ転送速度を向上できることは勿論のこと、クロック駆動回路80の出力端子CK1R,CK2Rの数の減少によって、回路規模の削減と、これによる低コスト化も期待できる。
【0120】
(b) 本実施例1や変形例1、2の画像形成装置1によれば、光プリントヘッド13,13Aを採用しているので、スペース効率及び光取り出し効率に優れた高品質の画像形成装置1を提供することができる。即ち、プリントヘッド13,13Aを用いることにより、本実施例1や変形例1、2のフルカラーの画像形成装置1に限らず、モノクロ、マルチカラーの画像形成装置においても効果が得られるが、特に、露光装置としてのプリントヘッド13,13Aを数多く必要とするフルカラーの画像形成装置1において一層大きな効果が得られる。
【実施例2】
【0121】
本発明の実施例2における画像形成装置1では、光プリントヘッド13B及び印刷制御部40Bの回路構成が、実施例1の光プリントヘッド13及び印刷制御部40と異なるので、以下、その異なる部分について説明する。
【0122】
(実施例2の印刷制御部及び光プリントヘッド)
図11は、本発明の実施例2における印刷制御部40B及び光プリントヘッド13Bの概略の回路構成を示すブロック図であり、実施例1を示す図1中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0123】
本実施例2の光プリントヘッド13Bは、実施例1の自己走査回路100及び発光素子アレイ200とは異なる構成の自己走査回路100B及び発光素子アレイ200Bを有し、これらが実施例1と同様の複数の接続ケーブル95(=95−1〜95−3)及び複数の接続コネクタ96(=96−1〜96−3),97(=97−1〜97−3)を介して、実施例1の印刷制御部40とは異なる構成の印刷制御部40Bに接続されている。
【0124】
自己走査回路100Bにより走査される発光素子アレイ200Bは、3端子発光素子としての例えば複数のNゲート型の発光サイリスタ210B(=210B−1〜210B−n,・・・)を有し、これらの各発光サイリスタ210Bのアノードが駆動電流Ioutを流す共通端子INを介して接続コネクタ97−1に接続され、カソードがグランドGNDに接続され、ゲートが自己走査回路100Bの各出力端子Q1〜Qnに接続されている。発光サイリスタ210B−1〜210B−n,・・・の総数は、実施離1と同様に、例えば、A4サイズの用紙に1インチ当たり600ドットの解像度で印刷可能な光プリントヘッド13Bの場合、4992個であり、これらが配列されることになる。
【0125】
自己走査回路100Bは、印刷制御部40Bから接続コネクタ96−2,96−3、接続ケーブル95−2,95−3及び接続コネクタ97−2,97−3を介して供給される2相の第1クロックにより駆動されて、発光素子アレイ200Bにトリガ電流を与えてオン/オフ動作させる回路であり、Nゲート型の自己走査サイリスタを用いた複数段の回路110B(=110B−1〜110B−n、例えばn=4992)を有し、自己走査型シフトレジスタにより構成されている。各段の回路110B(=110B−1〜110B−n、)は、第1端子(例えば、カソード)が第1電源(例えば、グランドGND)に接続された自己走査サイリスタ111B(=111B−1〜111B−n)と、アノードが自己走査サイリスタ111Bの制御端子(例えば、ゲート)に接続されたダイオード112B(=112B−1〜112B−n)と、自己走査サイリスタ111Bのゲート及び第2電源(例えば、VDD電源)間に接続された抵抗113B(=113B−1〜113B−n)とにより、それぞれ構成されている。
【0126】
奇数段回路110B−1,110B−3,・・・,110B−(n−1)における自己走査サイリスタ111B(=111B−1,111B−3,・・・,111B−(n−1))は、第2端子(例えば、アノード)が接続コネクタ97−2に接続され、カソードがグランドGNDに接続され、ゲートが抵抗113B(=113B−1,113B−3,・・・,113B−(n−1))を介してVDD電源に接続されると共に、そのゲートがダイオード112B(=112B−1,112B−3,・・・,112B−(n−1))のアノード・カソードを介して接続コネクタ97−3に接続されている。
【0127】
偶数段回路110B−2,110B−4,・・・,110B−nにおける自己走査サイリスタ111B(=111B−2,111B−4,・・・,111B−n)は、第2端子(例えば、アノード)が接続コネクタ97−3に接続され、カソードがグランドGNDに接続され、ゲートが抵抗113B(=113B−2,113B−4,・・・,113B−n)を介してVDD電源に接続されると共に、そのゲートがダイオード112B(=112B−2,112B−4,・・・,112B−n)のアノード・カソードを介して前段の自己走査サイリスタ111B(=111B−1,111B−3,・・・,111B−(n−1))のゲートに接続されている。更に、各段の自己走査サイリスタ111B(=111B−1〜111B−n)のゲートは、自己走査回路100Bの出力端子Q1〜Qnにそれぞれ接続されている。
【0128】
各段の回路110B−1〜110B−nにおける自己走査サイリスタ111Bは、発光素子アレイ200Bにおける発光サイリスタ210Bと同様なレイヤ構造を有し、且つ同様な回路動作を行う素子であるが、実施例1と同様に、発光サイリスタ210Bのような発光機能を必要としないので、上層がメタル膜等の非透光性材料で覆われ、遮光して用いられる。各段の自己走査サイリスタ111Bにおけるゲートにアノードが接続されたダイオード112Bは、実施例1と同様に、各段の自己走査サイリスタ111Bのゲート間を接続するものであって、発光サイリスタ210B−1〜210B−nが順次点灯する時の走査方向(例えば、図11において右方向)を決定するために設けられている。
【0129】
自己走査回路100Bでは、実施例1と同様に、印刷制御部40Bから供給される2相の第1クロックに基づき、自己走査サイリスタ111B−1〜111B−nが択一的にオン状態となり、このオン状態が発光素子アレイ200Bに伝達され、発光サイリスタ210B−1〜210B−nの内から発光すべき発光サイリスタ210B−1〜210B−nを指令する働きをする。この自己走査回路100Bにおいて、オン状態となる各段の回路110−1〜110−nにおけるサイリスタ111のオン状態が、2相クロック毎に隣接サイリスタ111に伝達され、シフトレジスタと同様の回路動作が行われる構成になっている。
【0130】
印刷制御部40Bは、実施例1の駆動用矩形波発生回路61とは異なる駆動用矩形波の信号である負論理の駆動指令信号DRVON−Nを出力する駆動用矩形波発生回路61Bと、走査用の矩形波信号S62−1,S62−2を出力する実施例1と同様の走査用矩形波発生回路62と、駆動指令信号DRVON−Nに基づいて複数の発光素子アレイ200Bを時分割駆動する実施例1と同様の複数のデータ駆動回路70と、実施例1のクロック駆動回路80及びRL微分回路90−1,90−2とは異なり、矩形波信号S62−1,S62−2に基づいて自己走査回路100Bに供給する2相クロックを生成するためのクロック駆動回路80B及びRL微分回路90B−1,90B−2等とを有している。
【0131】
図11においては、実施例1の図1と同様に、説明を簡略化するために1組の駆動用矩形波発生回路61B及びデータ駆動回路70のみが図示されている。複数の発光素子アレイ200Bは、例えば、総数4992個の発光サイリスタ210B−1〜210B−n,・・・を有し、これらの発光サイリスタ210B−1〜210B−n,・・・が複数の発光サイリスタ210B−1〜210B−nの組にグループ化され、各グループ毎に設けられたデータ駆動回路70によって、それらが同時並行的に分割駆動が行われる構成になっている。
【0132】
一例として典型的な設計例を挙げると、実施例1と同様に、発光サイリスタ210B(=210B−1〜210B−n)を192個配列してアレイ化した発光素子アレイ200Bのチップを図4中のプリント配線板13b上に26個整列する。これにより、光プリントヘッド13に必要な総数4992個の発光サイリスタ210B−1〜210B−n,・・・を構成している。この際、データ駆動回路70は前記26個の発光素子アレイ200Bに対応して設けられ、これらのデータ駆動回路70における出力端子の総数は26である。
【0133】
一方、走査用矩形波発生回路62、クロック駆動回路80B及びRL微分回路90B−1,90B−2は、アレイ化した自己走査回路100Bのチップを駆動するものであるが、単にクロックを生成するのみならず、後述する自己走査サイリスタ111Bの点灯エネルギーを制御する必要があり、光プリントヘッド13Bの高速動作のためには、自己走査回路100B毎に設けることが好ましい。しかし、光プリントヘッド13Bのデータ転送が低速で良い場合には、クロック駆動回路80B及びRL微分回路90B−1,90B−2の出力端子と複数の自己走査回路100Bを並列に接続することで、その回路を共用することができる。
【0134】
これらのデータ駆動回路70、クロック駆動回路80B、RL微分回路90B−1,90B−2、及び自己走査回路100Bにより、本実施例2の駆動装置が構成されている。なお、データ駆動回路70、クロック駆動回路80B及びRL微分回路90B−1,90B−2は、図11においては、印刷制御部40Bの内部に配置されているが、光プリントヘッド13Bの内部に配置しても良い。
【0135】
クロック駆動回路80Bは、矩形波信号S62−1を駆動する出力バッファ81Bと、矩形波信号S62−2を駆動する出力バッファ82Bと、この出力バッファ81B,82Bの出力側にそれぞれ接続された2相の第2クロック出力用の出力端子CKIR,CK2Rとにより構成されている。各出力バッファ81B,82Bは、同一の回路構成であって、スイッチ素子(例えば、第1導電型のMOSトランジスタであるNMOS)を用いたオープンドレーン構成となっており、後述するように、低いLレベル出力電圧を維持しつつ、自己走査サイリスタ111Bのゲートトリガに適した微分波形(例えば、オーバシュート波形)を発生させることができる。
【0136】
即ち、一方の出力バッファ81Bは、第2導電型のMOSトランジスタ(例えば、PMOS)81d及び第1導電型のMOSトランジスタ(例えば、NMOS)81eを有している。PMOS81dは、ソース及びゲートが第1電源(例えば、VDD電源)に接続され、ドレーンが出力端子CK1Rに接続されて、常にオフ状態になっている。NMOS81eは、ゲートに矩形波信号S62−1が入力され、ソースが第2電源(例えば、グランドGND)に接続され、ドレーンがPMOS81dのドレーン及び出力端子CK1Rに接続されている。そのため、PMOS81d及びNMOS81eにより、NMOSオープンドレーン出力バッファ回路が構成されている。PMOS81dのサブストレート端子とドレーンとの間には、寄生ダイオード81d−1が存在し、更に、NMOS81eのサブストレート端子とドレーン端子との間にも、寄生ダイオード81e−1が存在する。ダイオード81d−1のアノード及びカソードは、PMOS81dのドレーン及びソースに対して並列に接続されている。ダイオード81e−1のアノード及びカソードは、NMOS81eのソース及びドレーンに対して並列に接続されている。
【0137】
同様に、他方の出力バッファ82Bは、PMOS82d及びNMOS82eを有している。PMOS82dは、ソース及びゲートがVDD端子に接続され、ドレーンが出力端子CK2Rに接続されて、常にオフ状態になっている。NMOS82eは、ゲートに矩形波信号S62−2が入力され、ソースがグランドGNDに接続され、ドレーンがPMOS82dのドレーン及び出力端子CK2Rに接続されている。そのため、PMOS82d及びNMOS82eにより、NMOSオープンドレーン出力バッファ回路が構成されている。PMOS82dのサブストレート端子とドレーンとの間には、寄生ダイオード82d−1が存在し、更に、NMOS82eのサブストレート端子とドレーン端子との間にも、寄生ダイオード82e−1が存在する。ダイオード82d−1のアノード及びカソードは、PMOS82dのドレーン及びソースに対して並列に接続されている。ダイオード82e−1のアノード及びカソードは、NMOS82eのソース及びドレーンに対して並列に接続されている。
【0138】
2つのRL微分回路90B−1,90B−2は、同一の回路構成であり、一方のRL微分回路90B−1が、実施例1と同様に、クロック駆動回路80Bの出力端子CK1Rとクロック端CK1との間に接続され、他方のRL微分回路90B−2が、実施例1と同様に、クロック駆動回路80Bの出力端子CK2Rとクロック端子CK2との間に接続されている。
【0139】
一方のRL微分回路90−1Bは、実施例1のRL微分回路90−1と同様に、抵抗91−1、インダクタ92−1及び抵抗93−1により構成されている。抵抗91−1は、出力端子CK1とクロック端子CK1との間に接続され、この抵抗91−1及びクロック端子CK1間と実施例1と異なる第2電源(例えば、VDD電源)との間に、インダクタ92−1及び抵抗93−1が直列に接続されている。同様に、他方のRL微分回路90B−2は、実施例1のRL微分回路90−2と同様に、抵抗93−2、インダクタ92−2及び抵抗93−2により構成されている。抵抗93−2は、出力端子CK2Rとクロック端子CK2との間に接続され、この抵抗93−2及びクロック端子CK2間と実施例1と異なる第2電源(例えば、VDD電源)との間に、インダクタ92−2及び抵抗93−2が直列に接続されている。
【0140】
前記クロック駆動回路80Bは、NMOSを用いたオープンドレーンの出力バッファ81B,82Bにより構成されているので、出力端子CK1R,CK2Rの出力状態が、NMOS81e,82eがオンした時にLレベルとなる。NMOS81e,82eがオフした時には、出力端子CK1R,CK2Rの出力状態がHiZとなるが、一方の出力端子CK1Rが、抵抗91−1、インダクタ92−1及び抵抗93−1を介してVDD電源に接続され、他方の出力端子CK2Rが、抵抗91−2、インダクタ92−2及び抵抗93−2を介してVDD電源に接続されているので、これらの出力端子CK1R,CK2Rは、Hレベルとなる。
【0141】
以下の説明においては、説明の煩雑さを避けるために、クロック駆動回路80Bの出力状態として少なくともHレベルとLレベルの2つの状態値を持つものとして記載する。
【0142】
なお、実施例1と同様に、クロック駆動回路80Bの駆動能力によっては、抵抗91−1,91−2の抵抗値を略ゼロとすることができて、その場合には抵抗91−1,91−2を省略することも可能である。同様に、抵抗93−1,93−2を省略することもできる。
【0143】
(実施例2の発光サイリスタ)
図12(a)〜(d)は、図11中の発光サイリスタ210Bを示す構成図である。
【0144】
図12(a)は、発光サイリスタ210Bの回路シンボルを示し、アノードA、カソードK、及びゲートGの3つの端子を有している。
【0145】
図12(b)は、発光サイリスタ210Bの断面構造を示す図である。発光サイリスタ210Bは、実施例1の発光サイリスタ210とほぼ同様に、例えば、GaAsウェハ基材を用い、公知のMO−CVD法により、GaAsウェハ基材の上層に所定の結晶をエピタキシャル成長させることで製造される。
【0146】
即ち、図示しない所定のバッファ層や犠牲層をエピタキシャル成長させた後、AlGaAs材料にN型不純物を含ませたN型層231と、P型不純物を含ませ成層したP型層232と、N型不純物を含ませたN型層233とを順に積層させたNPNの3層構造からなるウェハを形成する。次いで、公知のフォトリソグラフィ法を用いて、最上層であるN型層233の一部に、選択的にP型不純物領域234を形成する。更に、公知のエッチング法により、図示しない溝部を形成することで、素子分離を行う。又、前記エッチングの過程で、発光サイリスタ210Bの最下層となるN型領域231の一部を露出させ、この露出領域に金属配線を形成してカソードKを形成する。これと同時に、P型領域234とN型領域233にも、それぞれアノードAとゲートGが形成される。
【0147】
図12(c)は、発光サイリスタ210Bの他の形態を示す断面構造図である。この断面構造では、実施例1の発光サイリスタ210とほぼ同様に、例えば、GaAsウェハ基材を用い、公知のMO−CVD法により、そのGaAs基材の上層に所定の結晶をエピタキシャル成長させることで製造される。
【0148】
即ち、図示しない所定のバッファ層や犠牲層をエピタキシャル成長させた後、AlGaAs材料にN型不純物を含ませたN型層231、P型不純物を含ませ成層したP型層232と、N型不純物を含ませたN型層233と、P型不純物を含ませ成層したP型層235とを順に積層させたPNPNの4層構造のウェハを形成する。更に、公知のエッチング法を用いて、図示しない溝部を形成することで素子分離を行う。又、前記エッチングの過程で、発光サイリスタ210Bの最下層となるN型領域231の一部を露出させ、この露出領域に金属配線を形成してカソードKを形成する。同様に、最上層となるP型領域235の一部を露出させ、この露出領域に金属配線を形成してアノードAを形成する。これと同時に、N型領域233にゲートGが形成される。
【0149】
図11(d)は、図11(b)、(c)と対比させて描いた発光サイリスタ210Bの等価回路図である。発光サイリスタ210Bは、PNPTR241とNPNTR242とからなり、PNPTR241のエミッタが発光サイリスタ210BのアノードAに相当し、PNPTR241のベースが発光サイリスタ210BのゲートGに相当し、NPNTR242のエミッタが発光サイリスタ210BのカソードKに相当している。又、PNPTR241のコレクタは、NPNTR242のベースに接続され、PNPTR241のベースが、NPNTR242のコレクタに接続されている。
【0150】
なお、図12に示す発光サイリスタ210Bでは、実施例1の発光サイリスタ210と同様に、GaAsウェハ基材上にAlGaAs層を構成したものであるが、これに限定されるものではなく、GaP、GaAsP、AlGaInPといった材料を用いるものであっても良く、更には、サファイヤ基板上にGaNやAlGaN、InGaNといった材料を成膜したものであっても良い。
【0151】
(実施例2の印刷制御部及び光プリントヘッドの概略動作)
図11において、例えば、印刷制御部40B内の駆動用矩形波発生回路61Bから出力される駆動指令信号DRVON−NがHレベルの場合、データ駆動回路70内のPMOS71aがオフ状態、NMOS71bがオン状態となり、抵抗72を介してデータ端子DAは、Lレベルとなる。そのため、接続コネクタ96−1、接続ケーブル95−1及び接続コネクタ97−1を介して、光プリントヘッド13B側の共通端子IN及び各発光サイリスタ210BのアノードがLレベルになる。この結果、各発光サイリスタ210Bのアノード・カソード間電圧は略0Vとなって、そこに流れる駆動電流Ioutがゼロとなり、発光サイリスタ210B−1〜210B−nが全て非発光状態となる。
【0152】
これに対し、駆動指令信号DRVON−NがLレベルの場合、PMOS71aがオン状態、NMOS71bがオフ状態となって、抵抗72を介してデータ端子DAがHレベルとなる。この結果、接続コネクタ96−1、接続ケーブル95−1及び接続コネクタ97−1を介して共通端子INも略電源電圧となり、各発光サイリスタ210Bのアノード・カソード間に略電源電圧VDDが印加される。
【0153】
この際、発光サイリスタ210B−1〜210B−nの内、自己走査回路100Bにより、発光指令されている発光サイリスタ210Bのゲートのみを選択的にLレベルとすることで、この発光サイリスタ210Bのゲートにはトリガ電流を生じ、発光指令されているサイリスタ210Bがターンオンすることになる。ターンオンした発光サイリスタ210Bのアノードに流れる電流は、データ端子DAから供給される電流(即ち、駆動電流Iout)であり、発光サイリスタ210Bは発光状態となってその駆動電流Ioutの値に応じた発光出力を生じる。
【0154】
即ち、発光サイリスタ210B−1〜210B−nの動作を考えるにあたり、自己走査回路100Bの各段の回路110B−1〜110B−nにおけるオンしているサイリスタ111B(=111B−1〜111B−n)に着目すると、発光サイリスタ210BのカソードがグランドGNDに接続されており、そのカソードがHレベルにされると、発光サイリスタ210Bのアノード・カソード間には電圧が印加される。一方、自己走査回路100Bにおける各サイリスタ111Bのゲートと、発光サイリスタ210Bの各ゲートとがそれぞれ接続されているため、サイリスタ111Bのアノード・ゲート間にも電圧が印加されることになる。この時、発光サイリスタ210B−1〜210B−nの内、自己走査回路100Bにより発光指令されている発光サイリスタ210Bのゲートのみを選択的にLレベルとすることで、この発光サイリスタ210Bのゲートにはトリガ電流を生じ、発光指令されている発光サイリスタ210Bがターンオンすることになる。この際、発光サイリスタ210Bのアノードに流れる電流は、データ端子DAから供給される駆動電流Ioutであって、前記発光サイリスタ210Bが発光状態なってその駆動電流Ioutの値に応じた発光出力を生じる。
【0155】
(実施例2の印刷制御部及び光プリントヘッドの詳細動作)
図13は、図11の光プリントヘッド13B及び印刷制御部40Bの詳細な動作を示すタイミングチャートである。
【0156】
この図13では、実施例1の図7と同様に、図2の画像形成装置1での印刷動作時における1ライン走査において、図11の発光サイリスタ210B−1〜210B−n(例えば、n=8)を順次点灯させる場合の動作波形が示されている。
【0157】
図13のタイミングチャートにおいて、左端部に示す状態においては、走査用矩形波発生回路62から出力された矩形波信号S62−1,S62−2が出力バッファ81B,82Bで反転されて、出力端子CK1R,CK2Rの各信号がLレベルとされる。
【0158】
クロック駆動回路80Bの出力端子CK1Rは、抵抗91−1を介してクロック端子CKlと接続され、このクロック端子CK1が、インダクタ92−1と抵抗93−1の直列回路を介してVDD電源に接続されている。同様に、クロック駆動回路80Bの出力端子CK2Rは、抵抗91−2を介してクロック端子CK2と接続され、このクロック端子CK2が、インダクタ92−2と抵抗93−2の直列回路を介してVDD電源に接続されている。
【0159】
そのため、図13のタイミングチャートの左端部に示す状態においては、クロック端子CK1の電位は、出力端子CK1RからのLレベル電位と電源電圧VDDとの電位差を抵抗91−1,93−1により分圧して得られるLレベル電位となっている。この時、(抵抗93−1の抵抗値≫抵抗91−1の抵抗値)に設定することで、前記LレベルをグランドGND電位に近接した値とすることは容易であり、抵抗91−1を省略する場合には、前記Lレベル電位をグランドGND電位に略等しくすることができる。
【0160】
同様に、クロック端子CK2の電位は、出力端子CK2RからのLレベル電位を電源電圧VDDとの電位差を抵抗91−2,93−2により分圧して得られるLレベル電位となっている。この時、(抵抗93−2の抵抗値≫抵抗91−2の抵抗値)に設定することで、前記LレベルをグランドGND電位に近接した値とすることは容易であり、抵抗91−2を省略する場合には、前記Lレベル電位をグランドGND電位に略等しくすることができる。
【0161】
このように、図13のタイミングチャートの左端部に示す状態においては、クロック端子CK1,CK2の各信号は共にLレベルとなって、奇数段回路110B−1,110B−3,110B−5,110B−7における自己走査サイリスタ111B−1,111B−3,・・・,111B−7の組と、偶数段回路110B−2,110B−4,110B−6,110B−8における自己走査サイリスタ111B−2,111B−4,・・・,111B−nの組とのいずれも、そのアノードがLレベルとされ、オフ状態となっている。この時、駆動指令信号DRVON−NはHレベルとなっており、CMOSインバータ71の出力端子がLレベルであって、抵抗72、データ端子DA、接続コネクタ96−1、接続ケーブル95−1、接続コネクタ97−1、及び共通端子INを介して、発光サイリスタ210B−1〜210B−8のアノードもまたLレベルとなって、これらの発光サイリスタ210B−1〜210B−8がオフ状態にある。
【0162】
以下、第1段、第2段回路110B−1,110B−2における各サイリスタ111B−1,111B−2のターンオン過程(1)、(2)を説明する。
【0163】
(1) 第1段回路110B−1におけるサイリスタ111B−1のターンオン過程
図13の時刻t1において、走査用矩形波発生回路62から出力された矩形波信号S62−1がクロック駆動回路80内の出力バッファ81Bで反転されて、出力端子CK1RがHレベルとされる。すると、インダクタ92−1には逆起電圧を生じ、クロック端子CK1の電圧が、a部のように、電源電圧VDD以上に上昇してオーバシュート波形を生じる。
【0164】
この時、第1段目回路110B−1のサイリスタ111B−1に着目すると、このアノード電圧が電源電圧VDDであり、典型的な設計例では3.3Vとされる。一方、ダイード112B−1のカソードは、クロック端子CK2に接続されており、この電圧がグランドGND電位に近接したLレベルである。そのため、サイリスタ111B−1のアノード・ゲート間を通り、ダイオード112B−1を経由してクロック端子CK2に至る電流が流れ、この電流をトリガ電流としてサイリスタ111B−1がターンオンすることになる。
【0165】
時刻t2において、駆動用矩形波発生回路61Bから出力される駆動指令信号DRVON−Nが立ち下がり、これがCMOSインバータ71で反転され、抵抗72を介してデータ端子DAがHレベルへ遷移する。これにより、発光サイリスタ210B−1のアノード・カソード間には電源電圧VDDに略等しい電圧が印加される。この時、サイリスタ111B−1はオンしているので、このサイリスタ111B−1のゲートに対してゲート電圧を共有している発光サイリスタ210B−1がオンして、この発光サイリスタ210B−1のアノードには、b部に示すように、駆動電流Ioutが生じ、この駆動電流Ioutの値に応じた発光出力を生じる。
【0166】
次の時刻t3において、駆動指令信号DRVON−Nが立ち上がり、これがCMOSインバータ71で反転され、データ端子DAがLレベルへ遷移する。これにより、発光サイリスタ210B−1のアノード・カソード間電圧が略0Vとなって、この発光サイリスタ210B−1はオフし、c部に示すように、駆動電流I0utが略ゼロとなる。
【0167】
本実施例1では、発光サイリスタ210B−1を発光させて、図2中の感光体ドラム11上に潜像を形成することができる。この時の露光エネルギー量は、前記駆動電流Ioutの値に応じて定まる発光パワーと露光時間(t3−t2)との積である。そのため、発光サイリスタ210B−1等に製造ばらつきに起因する発光効率の差があったとしても、前記露光時間(t3−t2)を発光サイリスタ210B−1毎に調整することで、露光エネルギー量のばらつきを補正することができる。
【0168】
又、発光サイリスタ210B−1を発光させる必要のない場合には、時刻t2から時刻t3の間の駆動指令信号DRVON−NをHレベルのままとする。このように、駆動指令信号DRVON−Nによって発光サイリスタ210B−1の発光の有無もまた制御することができる。
【0169】
(2) 第2段回路110B−2におけるサイリスタ111B−2のターンオン過程
図13の時刻t4において、走査用矩形波発生回路62から出力された矩形波信号S62−2がクロック駆動回路80B内の出力バッファ82Bで反転されて、出力端子CK2RがHレベルとされる。この時、インダクタ92−2には逆起電圧を生じ、クロック端子CK2の電圧は、d部のように、電源電圧VDD以上に上昇してオーバダシュート波形を生じる。
【0170】
この時、第2段回路110B−2のサイリスタ111B−2に着目すると、このアノード電圧は電源電圧VDDであり、典型的な設計例では3.3Vとされる。一方、ダイオード112B−2のカソードは、サイリスタ111B−1のゲートに接続されており、このサイリスタ111B−1はオン状態となっているため、ダイオード112B−2のカソード電圧は、グランドGND電位に近接したLレベルである。そのため、クロック端子CK2を通り、サイリスタ111B−2のアノード・ゲート間からダイオード112B−2のアノード・カソード間、及びサイリスタ111B−1のゲート・カソード間を経由してグランドGNDに至る電流が流れ、この電流をトリガ電流としてサイリスタ111B−2がターンオンすることになる。
【0171】
時刻t5において、クロック駆動回路80Bの出力端子CK1RがLレベルとされる。この時、インダクタ92−1に逆起電圧を生じ、クロック端子CKlには、e部に示すアンダシュート電圧が発生して、サイリスタ111B−1のアノード・カソード間電圧が急激に減少し、このサイリスタ111B−1がターンオンする。
【0172】
時刻t6において、駆動指令信号DRVON−Nが立ち下がり、これがCMOSインバータ71で反転され、データ端子DAがHレベルへ遷移する。データ端子DAがHレベルへ遷移すると、発光サイリスタ210B−2のアノード・カソード間には、電源電圧VDDと略等しい電圧が印加される。前述したように、時刻t6においては、サイリスタ111B−2がオン状態にあり、サイリスタ111B−1がオフとなっている。
【0173】
このように、サイリスタ111B−2はオンしているので、このサイリスタ111B−2のゲートに対してゲート電圧を共有している発光サイリスタ210B−2がオンし、このカソードには、f部に示すように駆動電流Ioutを生じ、この駆動電流Ioutの値に応じた発光出力を生じる。
【0174】
次の時刻t7において、駆動指令信号DRVON−Nが立ち上がり、これがCMOSインバータ71で反転され、データ端子DAがLレベルへ遷移する。これにより、発光サイリスタ210B−2のアノード・カソード間電圧は略0Vとなって発光サイリスタ210B−2がオフし、g部に示すように、駆動電流Ioutは略ゼロとなる。
【0175】
以下同様に、クロック駆動回路80Bにおける出力端子CK1R,CK2Rの信号の遷移と、駆動指令信号DRVON−Nのオン、オフとが順に発生して、発光サイリスタ210B−3〜210B−8を順次点灯することができる。
【0176】
以上、図13を用いて詳細に説明したように、クロック端子CK1,CK2から供給されるクロックは、異なる位相をもって同様波形が繰り返す形状を有しており、これらのクロック波形が、奇数段の自己走査サイリスタ111B−1,111B−3,・・・,111B−7の組と、偶数段の自己走査サイリスタ111B−2,111B−4,・・・,111B−8の組とに順次入力されることで、各段の自己走査サイリスタ111B−1〜111B−8が順にオンしていく。
【0177】
オン状態にある自己走査サイリスタ111Bのゲート電圧は、Lレベルであり、オフ状態にある自己走査サイリスタ111Bのゲート電圧はアノード電圧に略等しい。前述したように、各段の自己走査サイリスタ111B−1〜111B−8が順次オンしていく結果、図11の自己走査回路100Bはシフトレジスタとして動作し、各段の自己走査サイリスタ111B−1〜111B−8のゲートが、自己走査回路100Bの出力端子Q1〜Q8となっている。そのため、自己走査回路100Bの出力端子Q1〜Q8から出力される点灯指令信号によって、発光素子アレイ200Bにおける発光サイリスタ位置が指令され、データ端子DAの値により発光サイリスタ210B−1〜210B−8の点灯、非点灯の別、更には点灯時間を制御することが可能となる。
【0178】
(図13中のオーバシュート波形の説明)
図14(a)、(b)は、図11のクロック駆動回路80B内の出力バッファ81B、RL微分回路90B−1、及び第1段回路110B−1と図13のタイミングチャートとの要部を示す図であり、同図(a)は要部の回路図、及び、同図(b)は要部の電圧波形図である。
【0179】
図14(a)において、サイリスタ111B−1のカソードはグランドGNDに接続され、このサイリスタ111B−1のアノードがクロック端子CK1に接続され、更に抵抗91−1を介して出力端子CK1Rに接続されている。又、クロック端子CK1は、インダクタ92−1及び抵抗93−1を介してVDD電源に接続されている。ダイオード112B−1のアノードは、サイリスタ111B−1のゲートに接続されている。ダイオード112B−1のカソードは、図11に示したようにクロック端子CK2に接続されているのであるが、サイリスタ111B−1のターンオン過程においてはその信号レベルがLレベルとされており、図を簡略化する目的で、図14(a)においてはグランドGNDに接続して示している。
【0180】
例えば、クロック駆動回路80Bの出力端子CK1RがLレベルとなっている場合を考える。
【0181】
これは前記図13のタイミングチャートの左端部における状態に対応している。この時、図14(a)の実線矢印で示す向きに電流I1を生じる。この電流I1は、VDD電源、抵抗93−1、インダクタ92−1、及び抵抗91−1を経由して、NMOS81eを介してグランドGNDに至る経路を通る。
【0182】
次いで、図13における時刻t1において、NMOS81eがオフ状態に遷移する。すると、インダクタ92−1には、図14(a)中に+,−として極性を付記した向きに逆起電圧を生じ、破線矢印にて示す向きの電流I2を生じる。この電流I2の経路は、インダクタ92−1、抵抗91−1、ダイオード81d−1、及び抵抗93−1を経由してインダクタ92−1に戻る第1の電流経路である。
【0183】
この時、第1の電流経路に着目すると、ダイオード81d−1のカソードはVDD電源に接続されているので、出力端子CK1Rの電位は電源電圧VDDよりも前記ダイオード81d−1の順電圧分高い電位となり、クロック端子CKlの電位は前記ダイオード81d−1の順電圧よりも抵抗91−1の両端に生じる電圧降下分だけ更に高い電位となることが判る。
【0184】
この結果、破線矢印にて示すように、VDD電源から抵抗93−1、インダクタ92−1、サイリスタ111B−1のアノード・ゲート間、及びダイオード112B−1を経由してグランドGNDに至る第2の電流経路に電流I3を生じ、サイリスタ111B−1のアノード・ゲート間に流れる電流がトリガ電流となってサイリスタ111B−1がターンオンすることになる。
【0185】
図14(b)は、前記過程を示す電圧波形であって、出力端子CKIRがHレベルへ遷移する時、クロック端子CK1にはa部に示すようにオーバシュート部を生じて、電源電圧VDDよりも電圧Vp分高くすることができる。
【0186】
典型的な設計例では、電源電圧VDDは3.3Vであり、ダイオード112B−1の順電圧Vfは略1.6V、サイリスタ111B−1のアノード・ゲート間に生じるPN接合の順電圧Vagもまた1.6Vとすると、第2の電流経路に電流I3を生じさせるためには、
Vf+Vag<VDD+Vp
であることが必要である。この時、図14(b)に示すクロック端子CK1の波形にオーバシュート部aが無く、Vp=0であると、
Vf+Vag=1.6+1.6=3.2V
となり、電源電圧VDDと同程度の値になって、サイリスタ111B−1をターンオンさせるに十分なゲートトリガ電流を得ることができない。
【0187】
これに対し、例えば、前記オーバシュート波形としてVp=0.6Vといった値を与えることで、
VDD+Vp=3.3+0.6=3.9V
となり、サイリスタ111B−1をターンオンさせるに十分なゲートトリガ電流を得ることができる。
【0188】
(実施例2の変形例1)
図15は、本発明の実施例2における図11の変形例1である印刷制御部40B及び光プリントヘッド13Cの概略の回路構成を示すブロック図であり、図11中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0189】
本変形例1では、実施例2と同様の印刷制御部40Bを有している。印刷制御部40Bには、実施例2と同様の複数の接続コネクタ96(96−1〜96−3)、接続ケーブル95(95−1〜95−3)及び接続コネクタ97(=97−1〜97−3)を介して、実施例2の光プリントヘッド13Bとは異なる構成の光プリントヘッド13Cが接続されている。本変形例1の光プリントヘッド13Bは、実施例1と同様の自己走査回路100Bと、実施例1の発光素子アレイ200Bとは異なる構成の発光素子アレイ200Cとを有している。
【0190】
発光素子アレイ200Cは、2端子発光素子としての例えば複数のNゲート型のLED210C(=210C−1〜210C−n,・・・)を有し、これらの各LED210Cのアノードが、駆動電流Ioutを流す共通端子INを介して接続コネクタ97−1に接続され、カソードが、自己走査回路100Bの各出力端子Q1〜Qnに接続されている。各LED210Cは、アノード・カソード間に所定電圧が印加されると、オン状態になってカソード電流が流れ、発光する素子である。LED210C−1〜210C−n,・・・の総数は、実施例2と同様に、例えば、A4サイズの用紙に1インチ当たり600ドットの解像度で印刷可能な光プリントヘッド13Cの場合、4992個であり、これらが配列されることになる。
【0191】
このような構成の印刷制御部40B及び光プリントヘッド13Cでは、以下のように動作する。
【0192】
例えば、駆動用矩形波発生回路61Bから出力される駆動指令信号DRVON−NがHレベルの場合、データ駆動回路70内のCMOSインバータ71により、抵抗72を介してデータ端子DAがLレベルとなる。そのため、接続コネクタ96−1、接続ケーブル95−1及び接続コネクタ97−1を介して、光プリントヘッド13C側の共通端子IN及び各LED210CのアノードがLレベルになる。この結果、LED210C−1〜210C−nが全て非発光状態となる。
【0193】
これに対し、駆動指令信号DRVON−NがLレベルの場合、CMOSインバータ71により、抵抗72を介してデータ端子DAがHレベルとなる。この結果、接続コネクタ96−1、接続ケーブル95−1及び接続コネクタ97−1を介して共通端子INも略電源電圧VDDとなる。この際、LED210C−1〜210C−nの内、自己走査回路100Bにより、発光指令されているLED210Bのカソードのみを選択的にLレベルとすることで、発光指令されているLED210Cがオン状態になる。オン状態のLED210Cのアノードに流れる電流は、データ端子DAから供給される駆動電流Ioutであり、LED210Cは発光状態となってその駆動電流Ioutの値に応じた発光出力を生じる。
このように、本変形例1では、実施例2とほぼ同様に動作する。
【0194】
(実施例2の変形例2)
図16は、図11及び図15の変形例1における出力バッファを示す回路図であり、図11及び図15中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0195】
本変形例2の出力バッファ81Cでは、図11及び図15中の出力バッファ81BにおけるPMOS81d及びこの寄生ダイオード81d−1に代えて、通常のダイオード81fが設けられている。ダイオード81fは、アノードが出力端子CK1Rに接続され、カソードがVDD電源に接続されている。図11及び図15中の他の出力バッファ82Bにおいても、図示しないが、PMOS82d及びこの寄生ダイオード82d−1に代えて、通常のダイオードが設けられている。
【0196】
例えば、ダイオード81fは、図14に示す電流I2を出力端子CK1R側からVDD電源側へ流す機能を有している。このようなダイオード81fを設けても、図11及び図15と同様の動作が行われる。
【0197】
(実施例2及び変形例1、2の効果)
本実施例2及びこの変形例1、2によれば、次の(a)、(b)のような効果がある。
【0198】
(a) 本実施例2やこの変形例1、2によれば、クロック駆動回路80Bを、NMOSを用いたオープンドレーン構成にし、この出力信号をRL微分回路90B−1,90B−2で微分して、図14(b)のa部におけるオーバシュート波形を生成しているので、実施例1と同様に、クロック駆動回路80Bにおける出力端子CK1R,CK2Rの数がクロック当たり1個で良く、従来構成と比べて所要端子の数を半減することができる。これにより、光プリントヘッド13B,13Cにおけるデータ転送速度を向上できることは勿論のこと、クロック駆動回路80Bの出力端子CK1R,CK2Rの数の減少によって、回路規模の削減と、これによる低コスト化も期待できる。
【0199】
(b) 本実施例2やこの変形例1、2の画像形成装置1によれば、プリントヘッド13B,13Cを採用しているので、実施例1の効果(b)と同様の効果が得られる。
【0200】
(実施例1、2の他の変形例)
本発明は、上記実施例1、2やその変形例1、2に限定されず、その他の種々の利用形態や変形が可能である。この利用形態や変形例としては、例えば、次の(I)、(II)のようなものがある。
【0201】
(I) 実施例1、2及びこの変形例1、2において、光源として用いられる発光サイリスタ210,210B及びLED210A,210Cに適用した場合について説明したが、本発明は、サイリスタをスイッチング素子として用い、このスイッチング素子に例えば直列に接続された他の素子(例えば、有機エレクトロルミネセンス素子(以下「有機EL素子」という。)、表示素子等)への電圧印加制御を行う場合にも適用可能である。例えば、有機EL素子のアレイで構成される有機ELプリントヘッドを備えたプリンタ、表示素子の列を有する表示装置等において利用することができる。
【0202】
(II) 表示素子(例えば、列状あるいはマトリクス状に配列された表示素子)の駆動(即ち、電圧印加の制御)のためスイッチング素子としても用いられるサイリスタにも適用可能である。又、本発明は、3端子構造を備えたサイリスタの他、第1と第2の2つのゲートを備えた4端子サイリスタSCS(Semiconductor Controlled Switch)の場合にも適用可能である。
【符号の説明】
【0203】
1 画像形成装置
13,13A,13B,13C 光プリントヘッド
13c ICチップ
40,40B 印刷制御部
61,61B 駆動用矩形波発生回路
62 走査用矩形波発生回路
70 データ駆動回路
80,80B クロック駆動回路
81,81B,82,82B 出力バッファ
81a,82a,81d,82d PMOS
81b,82b,81e,82e NMOS
81b−1,82b−1,81c,81d−1,82d−1,81f ダイオード
90−1,90B−1,90−2,90B−2 RL微分回路
92−1,92−2 インダクタ
100,100B 自己走査回路
111,111−1〜111−n,111B,111B−1〜111B−n 自己走査サイリスタ
200,200A,200B,200C 発光素子アレイ
210,210−1〜210−n,210B,210B−1〜210B−n 発光サイリスタ
210A,210A−1〜210A−n,210C,210C−1〜210C−n LED
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の発光素子を駆動する駆動装置、この駆動装置を有する光プリントヘッド、及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式を用いたプリンタ等の画像形成装置には、発光素子として発光サイリスタを多数配列させて露光部を形成したものがある。発光サイリスタを用いたものでは、駆動回路と発光サイリスタとが1対Nに対応(N>1)するように設けられ、その発光サイリスタのゲートを用いて発光させるべき発光サイリスタ位置を指定し、アノード及びカソード間に流す電流値により、発光パワーを制御している。
【0003】
発光サイリスタを用いる光プリントヘッドとして、自己走査型と呼ばれる構成のものが公知である。従来の自己走査型の光プリントヘッドを例えば、3.3Vの電源電圧のもとで駆動しようとする時、電源電圧3.3Vではゲートトリガ電流を生じさせることができないので、これを補う目的で、転送クロック信号(以下「クロック信号」を単に「クロック」という。)の波形にアンダシュート電圧を生じさせ、これと電源電圧3.3Vとの加算値でもってゲートトリガ電流を生成する構成が公知である。
【0004】
例えば、下記の特許文献1の技術では、転送クロック波形を生成するために、クロック駆動回路における2つの第1出力端子及び第2出力端子の内の第1出力端子をCR微分回路に伝達してアンダシュート波形を生じさせ、第2出力端子を介して直流成分を伝達するようにしている。なお、クロック駆動回路における出力端子を転送クロック当たり2個要しているのは、CR微分回路においては直流成分を伝達することができないためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−195796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の自己走査型の光プリントヘッドでは、クロック駆動回路における出力端子数が転送クロック当たり2個要するため、以下のような課題があった。
【0007】
光プリントヘッドにおいては、この動作の高速化を目的として、多数の自己走査型の発光サイリスタアレイチップを設け、同時並列して動作するようにしている。発光サイリスタアレイチップへのデータ転送クロックとして2相クロックが用いられ、発光サイリスタアレイチップ毎に2つのクロックが入力される。このため、自己走査型の光プリントヘッドのクロック駆動回路においては、発光サイリスタアレイチップ1個を駆動するために4個の出力端子を要することになる。
【0008】
光プリントヘッドには多数の自己走査型の発光サイリスタアレイチップを配列しているので、クロック駆動回路に備えるべき出力端子の総数が膨大となってしまい、大規模集積回路(以下「LSI」という。)パッケージに収容可能な端子数に抑えようとすると、クロック駆動回路に並列接続して駆動するチップ数が多数必要となってしまい、波形なまりを生じる。この結果、光プリントヘッドの動作を高速化できないという課題があった。
【0009】
又、発光素子として発光ダイオード(以下「LED」という。)を用いた自己走査型の光プリントヘッドにおいても、同様の課題が生じる。
【0010】
このように、光プリントヘッドを駆動するLSIのパッケージに収容可能な端子数を増大させず、自己走査型の発光素子アレイチップのクロック生成を行うことのできる回路構成が切望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の内の第1の発明の駆動装置は、共通端子に分岐接続されて配列された複数の発光素子を駆動する駆動装置において、走査回路と、データ駆動回路と、クロック駆動回路と、微分回路とを備えたことを特徴とする。
【0012】
ここで、前記走査回路は、各々、第1電源と接続される第1端子と、クロック端子と接続される第2端子と、前記第1端子及び前記第2端子間のオン/オフ状態を制御する制御端子と、を有する複数の3端子スイッチ素子が配列され、前記クロック端子から供給される第1クロックに基づき前記3端子スイッチ素子がオン/オフ動作して前記制御端子に流れる信号を前記発光素子に与え、前記複数の発光素子を順に走査して駆動する回路である。前記データ駆動回路は、駆動用矩形波の信号を駆動してデータ信号(以下単に「データ」という。)を前記共通端子へ供給する回路である。前記クロック駆動回路は、走査用矩形波の信号を駆動して第2クロックを出力する回路である。更に、前記微分回路は、前記第2クロックをインダクタにより微分して、前記第2クロックのエッジに微分波形が形成された前記第1クロックを生成し、前記クロック端子へ供給する回路である。
【0013】
第2の発明の光プリントヘッドは、前記第1の発明における複数の発光素子と、前記第1の発明の駆動装置と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
第3の発明の画像形成装置は、前記第2の発明の光プリントヘッドを備え、前記光プリントヘッドにより露光されて記録媒体に画像を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の内の第1の発明の駆動装置及び第2の発明の光プリントヘッドによれば、クロック駆動回路から出力される第2クロックを、インダクタを有する微分回路で微分して、その第2クロックのエッジに微分波形が形成された第1クロックを生成して走査回路へ供給するので、クロック駆動回路における第2クロック出力用の出力端子の数がクロック当たり1個で良く、従来構成と比べて所要端子の数を半減することができる。これにより、光プリントヘッドにおけるデータ転送速度を向上できることは勿論のこと、クロック駆動回路の出力端子の数の減少によって、回路規模の削減と、これによる低コスト化も期待できる。
【0016】
第3の発明の画像形成装置によれば、前記第2の発明の光プリントヘッドを採用しているので、スペース効率及び光取り出し効率に優れた高品質の画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は本発明の実施例1における図5中の印刷制御部及び光プリントヘッドの回路構成を示すブロック図である。
【図2】図2は本発明の実施例1における画像形成装置を示す概略の構成図である。
【図3】図3は図2中の光プリントヘッド13の構成を示す概略の断面図である。
【図4】図4は図3中の基板ユニットを示す斜視図である。
【図5】図5は図2の画像形成装置1におけるプリンタ制御回路の構成を示すブロック図である。
【図6】図6は図1中の発光サイリスタ210を示す構成図である。
【図7】図7は図1の動作を示すタイミングチャートである。
【図8】図8は図1及び図7中のクロック駆動回路80、RL微分回路90−1、第1段回路110−1及びタイミングチャートの要部を示す図である。
【図9】図9は図1の変形例1における印刷制御部及び光プリントヘッドの回路構成を示すブロック図である。
【図10】図10は図1及び図9の変形例2における出力バッファを示す回路図である。
【図11】図11は本発明の実施例2における印刷制御部及び光プリントヘッドの回路構成を示すブロック図である。
【図12】図12は図11中の発光サイリスタ210Bを示す構成図である。
【図13】図13は図11の動作を示すタイミングチャートである。
【図14】図14は図11及び図13中のクロック駆動回路80B、RL微分回路90−1、第1段回路110B−1及びタイミングチャートの要部を示す図である。
【図15】図15は図11の変形例1における印刷制御部及び光プリントヘッドの回路構成を示すブロック図である。
【図16】図16は図11及び図15の変形例2における出力バッファを示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施するための形態は、以下の好ましい実施例の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、明らかになるであろう。但し、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0019】
(実施例1の画像形成装置)
図2は、本発明の実施例1における画像形成装置を示す概略の構成図である。
【0020】
この画像形成装置1は、被駆動素子(例えば、発光素子として3端子発光素子である発光サイリスタ)を用いた発光素子アレイを有する露光装置(例えば、光プリントヘッド)が搭載されたタンデム型電子写真カラープリンタにより構成されており、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)の各色の画像を各々に形成する4つのプロセスユニット10−1〜10−4を有し、これらが記録媒体(例えば、用紙)20の搬送経路の上流側から順に配置されている。各プロセスユニット10−1〜10−4の内部構成は共通しているため、例えば、マゼンタのプロセスユニット10−3を例にとり、これらの内部構成を説明する。
【0021】
プロセスユニット10−3には、像担持体としての感光体(例えば、感光体ドラム)11が図2中の矢印方向に回転可能に配置されている。感光体ドラム11の周囲には、この回転方向上流側から順に、感光体ドラム11の表面に電荷を供給して帯電させる帯電装置12と、帯電された感光体ドラム11の表面に選択的に光を照射して静電潜像を形成する露光装置としての光プリントヘッド13が配設されている。更に、静電潜像が形成された感光体ドラム11の表面に、マゼンタ(所定色)のトナーを付着させて顕像を発生させる現像器14と、感光体ドラム11上のトナーの顕像を転写した際に残留したトナーを除去するクリーニング装置15が配設されている。なお、これら各装置に用いられているドラム又はローラは、図示しない駆動源からギア等を経由して動力が伝達され回転する。
【0022】
画像形成装置1の下部には、用紙20を堆積した状態で収納する用紙カセット21が装着され、その上方に、用紙20を1枚ずつ分離させて搬送するためのホッピングローラ22が配設されている。用紙20の搬送方向におけるホッピングローラ22の下流側には、ピンチローラ23,24と共に用紙20を挟持することによってこの用紙20を搬送する搬送ローラ25と、用紙20の斜行を修正し、プロセスユニット10−1に搬送するレジストローラ26とが配設されている。これらのホッピングローラ22、搬送ローラ25及びレジストローラ26は、図示しない駆動源からギア等を経由して動力が伝達され回転する。
【0023】
プロセスユニット10−1〜10−4の各感光体ドラム11に対向する位置には、それぞれ半導電性のゴム等によって形成された転写ローラ27が配設されている。各転写ローラ27には、感光体ドラム11上に付着されたトナーによる顕像を用紙20に転写する転写時に、各感光体ドラム11の表面電位とこれら各転写ローラ27の表面電位に電位差を持たせるための電位が印加されている。
【0024】
プロセスユニット10−4の下流には、定着器28が配設されている。定着器28は、加熱ローラとバックアップローラとを有し、用紙20上に転写されたトナーを加圧・加熱することによって定着する装置であり、この下流に、排出ローラ29,30、排出部のピンチローラ31,32、及び用紙スタッカ部33が設けられている。排出ローラ29,30は、定着器28から排出された用紙20を、排出部のピンチローラ31,32と共に挟持し、用紙スタッカ部33に搬送する。これらの定着器28及び排出ローラ29等は、図示しない駆動源からギア等を経由して動力が伝達されて回転する。
【0025】
このように構成される画像記録装置1は、次のように動作する。
先ず、用紙カセット21に堆積した状態で収納されている用紙20が、ホッピングローラ22によって、上から1枚ずつ分離されて搬送される。続いて、この用紙20は、搬送ローラ25、レジストローラ26及びピンチローラ23,24に挟持されて、プロセスユニット10−1の感光体ドラム11と転写ローラ27の間に搬送される。その後、用紙20は、感光体ドラム11及び転写ローラ27に挟持され、その記録面にトナー像が転写されると同時に感光体ドラム10−1の回転によって搬送される。同様にして、用紙20は、順次プロセスユニット10−2〜10−4を通過し、その通過過程で、各光プリントヘッド13により形成された静電潜像を各現像器14によって現像した各色のトナー像が、その記録面に順次転写されて重ね合わされる。
【0026】
このようにして記録面上に各色のトナー像が重ね合わされた後、定着器28によってトナー像が定着された用紙20は、排出ローラ29,30及びピンチローラ31,32に挟持されて、画像形成装置1の外部の用紙スタッカ部33に排出される。以上の過程を経て、カラー画像が用紙20上に形成される。
【0027】
(実施例1の光プリントヘッド)
図3は、図2中の光プリントヘッド13の構成を示す概略の断面図である。図4は、図3中の基板ユニットを示す斜視図である。
【0028】
図3に示す光プリントヘッド13は、ベース部材13aを有し、このベース部材13a上に、図4に示す基板ユニットが固定されている。基板ユニットは、ベース部材13a上に固定されるプリント配線板13bと、このプリント配線板13b上に接着剤等で固定された複数の集積回路(以下「IC」という。)チップ13cとにより構成されている。各ICチップ13cには、走査回路(例えば、自己走査回路)100が集積され、更にこの上に、主発光部としての発光素子列(例えば、発光サイリスタ列)からなる発光素子アレイ200が配置されている。各ICチップ13cにおける図示しない複数の端子と、プリント配線板13b上の図示しない配線パッドとは、ボンディングワイヤ13hにより電気的に接続されている。
【0029】
複数のICチップ13cにおける発光素子アレイ200上には、柱状の光学素子を多数配列してなるレンズアレイ(例えば、ロッドレンズアレイ)13dが配置され、このロッドレンズアレイ13dがホルダ13eにより固定されている。ベース部材13a、プリント配線板13b及びホルダ13eは、クランプ部材13f,13gにより固定されている。
【0030】
(実施例1のプリンタ制御回路)
図5は、図2の画像形成装置1におけるプリンタ制御回路の構成を示すブロック図である。
【0031】
このプリンタ制御回路は、画像形成装置1における印刷部の内部に配設された印刷制御部40を有している。印刷制御部40は、マイクロプロセッサ、読み出し専用メモリ(ROM)、随時読み書き可能なメモリ(RAM)、信号の入出力を行う入出力ポート、タイマ等によって構成され、図示しない上位コントローラからの制御信号SGl、及びビデオ信号(ドットマップデータを一次元的に配列したもの)SG2等によってプリンタ全体をシーケンス制御して印刷動作を行う機能を有している。印刷制御部40には、プロセスユニット10−1〜10−4の4つの光プリントヘッド13、定着器28のヒータ28a、ドライバ41,43、用紙吸引センサ45、用紙排出センサ46、用紙残量センサ47、用紙サイズセンサ48、定着器用温度センサ49、帯電用高圧電源50、及び転写用高圧電源51等が接続されている。ドライバ41には現像・転写プロセス用モータ(PM)42が、ドライバ43には用紙送りモータ(PM)44が、帯電用高圧電源50には現像器14が、転写用高圧電源51には転写ローラ27が、それぞれ接続されている。
【0032】
このような構成のプリンタ制御回路では、次のような動作を行う。
印刷制御部40は、上位コントローラからの制御信号SGlによって印刷指示を受信すると、先ず、温度センサ49によって定着器28内のヒータ28aが使用可能な温度範囲にあるか否かを検出し、この温度範囲になければヒータ28aに通電し、使用可能な温度まで定着器28を加熱する。次に、ドライバ41を介して現像・転写プロセス用モータ42を回転させ、同時にチャージ信号SGCによって帯電用高圧電源50をオン状態にし、現像器14の帯電を行う。
【0033】
そして、セットされている図2中の用紙20の有無及び種類が用紙残量センサ47及び用紙サイズセンサ48によって検出され、その用紙20に合った用紙送りが開始される。ここで、用紙送りモータ44はドライバ43を介して双方向に回転させることが可能であり、最初に逆転させて、用紙吸引センサ45が検知するまで、セットされた用紙20を予め設定された量だけ送る。続いて、正回転させて用紙20をプリンタ内部の印刷機構内に搬送する。
【0034】
印刷制御部40は、用紙20が印刷可能な位置まで到達した時点において、図示しない画像処理部に対してタイミング信号SG3(主走査同期信号、副走査同期信号を含む)を送信し、ビデオ信号SG2を受信する。画像処理部においてページ毎に編集され、印刷制御部40に受信されたビデオ信号SG2は、印刷データとして各光プリントヘッド13に転送される。各光プリントヘッド13は、それぞれ1ドット(ピクセル)の印刷のために設けられた自己走査回路100及び発光素子アレイ200を有している。
【0035】
ビデオ信号SG2の送受信は、印刷ライン毎に行われる。各光プリントヘッド13によって印刷される情報は、負電位に帯電された図示しない各感光体ドラム11上において電位の上昇したドットとして潜像化される。そして、現像器14において、負電位に帯電された画像形成用のトナーが、電気的な吸引力によって各ドットに吸引され、トナー像が形成される。
【0036】
その後、トナー像は転写ローラ27へ送られ、一方、転写信号SG4によって正電位に転写用高圧電源51がオン状態になり、転写ローラ27は感光体ドラム11と転写ローラ27との間隔を通過する用紙20上にトナー像を転写する。転写されたトナー像を有する用紙20は、ヒータ28aを内蔵する定着器28に当接して搬送され、この定着器28の熱によって用紙20に定着される。この定着された画像を有する用紙20は、更に搬送されてプリンタの印刷機構から用紙排出センサ46を通過してプリンタ外部へ排出される。
【0037】
印刷制御部40は、用紙サイズセンサ48、及び用紙吸引センサ45の検知に対応して、用紙20が転写ローラ27を通過している間だけ転写用高圧電源51からの電圧を転写ローラ27に印加する。印刷が終了し、用紙20が用紙排出センサ46を通過すると、帯電用高圧電源50による現像器14への電圧の印加を終了し、同時に現像・転写プロセス用モータ42の回転を停止させる。以後、上記の動作を繰り返す。
【0038】
(実施例1の印刷制御部及び光プリントヘッド)
図1は、本発明の実施例1における図5中の印刷制御部40及び光プリントヘッド13の概略の回路構成を示すブロック図である。
【0039】
光プリントヘッド13は、図4中のICチップ13cに形成された自己走査回路100及び発光素子アレイ200を有し、これらが複数の接続ケーブル95(=95−1〜95−3)及び複数の接続コネクタ96(=96−1〜96−3),97(=97−1〜97−3)を介して、印刷制御部40に接続されている。
【0040】
自己走査回路100により走査される発光素子アレイ200は、3端子発光素子である例えば複数のPゲート型発光サイリスタ210(=210−1〜210−n,・・・)を有し、これらの各発光サイリスタ210のアノードが電源電圧VDD電源に接続され、カソードがデータとしての駆動電流Ioutを流す共通端子INを介して接続コネクタ97−1に接続され、ゲートが自己走査回路100の各出力端子Q1〜Qnに接続されている。各発光サイリスタ210は、アノード・カソード間に電源電圧VDDが印加された状態で、ゲートにトリガ信号(例えば、トリガ電流)が流れると、アノード・カソード間がオン状態になってカソード電流が流れ、発光する素子である。発光サイリスタ210−1〜210−n,・・・の総数は、例えば、A4サイズの用紙に1インチ当たり600ドットの解像度で印刷可能な光プリントヘッド13の場合、4992個であり、これらが配列されることになる。
【0041】
自己走査回路100は、印刷制御部40から接続コネクタ96−2,96−3、接続ケーブル95−2,95−3及び接続コネクタ97−2,97−3を介して供給される2相の第1クロックにより駆動されて、発光素子アレイ200にトリガ電流を与えてオン/オフ動作させる回路であり、3端子スイッチ素子(例えば、Pゲート型の自己走査サイリスタ)を用いた複数段の回路110(=110−1〜110−n、例えばn=4992)を有し、自己走査型シフトレジスタにより構成されている。自己走査サイリスタを用いた各段の回路110(=110−1〜110−n、)は、第1端子(例えば、アノード)が第1電源(例えば、VDD電源)に接続された自己走査サイリスタ111(=111−1〜111−n)と、カソードが自己走査サイリスタ111の制御端子(例えば、ゲート)に接続されたダイオード112(=112−1〜112−n)と、自己走査サイリスタ111のゲート及び第2電源(例えば、グランドGND)間に接続された抵抗113(=113−1〜113−n)とにより、それぞれ構成されている。
【0042】
奇数段回路110−1,110−3,・・・,110−(n−1)における自己走査サイリスタ111(=111−1,111−3,・・・,111−(n−1))は、アノードがVDD電源に接続され、第2端子(例えば、カソード)が接続コネクタ97−2に接続され、ゲートが抵抗113(=113−1,113−3,・・・,113−(n−1))を介してグランドGNDに接続されると共に、そのゲートがダイオード112(=112−1,112−3,・・・,112−(n−1))のカソード・アノードを介して接続コネクタ97−3に接続されている。
【0043】
偶数段回路110−2,110−4,・・・,110−nにおける自己走査サイリスタ111(=111−2,111−4,・・・,111−n)は、アノードがVDD電源に接続され、カソードが接続コネクタ97−3に接続され、ゲートが抵抗113(=113−2,113−4,・・・,113−n)を介してグランドGNDに接続されると共に、そのゲートがダイオード112(=112−2,112−4,・・・,112−n)のカソード・アノードを介して前段の自己走査サイリスタ111(=111−1,111−3,・・・,111−(n−1))のゲートに接続されている。更に、各段の自己走査サイリスタ111(=111−1〜111−n)のゲートは、自己走査回路100の出力端子Q1〜Qnにそれぞれ接続されている。
【0044】
各段の回路110−1〜110−nにおける自己走査サイリスタ111は、発光素子アレイ200における発光サイリスタ210と同様なレイヤ構造を有し、且つ同様な回路動作を行う素子であるが、発光サイリスタ210のような発光機能を必要としないので、上層がメタル膜等の非透光性材料で覆われ、遮光して用いられる。各段の自己走査サイリスタ111におけるゲートにカソードが接続されたダイオード112は、各段の自己走査サイリスタ111のゲート間を接続するものであって、発光サイリスタ210−1〜210−nが順次点灯する時の走査方向(例えば、図1において右方向)を決定するために設けられている。
【0045】
自己走査回路100では、印刷制御部40から供給される2相の第1クロックに基づき、自己走査サイリスタ111−1〜111−nが択一的にオン状態となり、このオン状態が発光素子アレイ200に伝達され、発光サイリスタ210−1〜210−nの内から発光すべき発光サイリスタ210−1〜210−nを指令する働きをする。この自己走査回路100において、オン状態となる各段の回路110−1〜110−nにおけるサイリスタ111のオン状態が、2相クロック毎に隣接サイリスタ111に伝達され、シフトレジスタと同様の回路動作が行われる構成になっている。
【0046】
印刷制御部40は、駆動用矩形波の信号である駆動指令信号DRVONを出力する駆動用矩形波発生回路61と、その駆動指令信号DRVONに基づいて複数の発光素子アレイ200を時分割駆動するためのデータとしての駆動電流Ioutを共通端子INに流す複数のデータ駆動回路70と、走査用矩形波の信号である矩形波信号S62−1,S62−2を出力する走査用矩形波発生回路62と、その矩形波信号S62−1,S62−2に基づいて自己走査回路100に供給する2相クロックを生成するためのクロック駆動回路80及びRL微分回路90−1,90−2等とを有している。図1においては、説明を簡略化するために1組の駆動用矩形波発生回路61及びデータ駆動回路70のみが図示されている。複数の発光素子アレイ200は、例えば、総数4992個の発光サイリスタ210−1〜210−n,・・・を有し、これらの発光サイリスタ210−1〜210−n,・・・が複数の発光サイリスタ210−1〜210−nの組にグループ化され、各グループ毎に設けられたデータ駆動回路70によって、それらが同時並行的に分割駆動が行われる構成になっている。
【0047】
一例として典型的な設計例を挙げると、発光サイリスタ210(=210−1〜210−n)を192個配列してアレイ化した発光素子アレイ200のチップを図4中のプリント配線板13b上に26個整列する。これにより、光プリントヘッド13に必要な総数4992個の発光サイリスタ210−1〜210−n,・・・を構成している。この際、データ駆動回路70は前記26個の発光素子アレイ200に対応して設けられ、これらのデータ駆動回路70における出力端子の総数は26である。
【0048】
一方、走査用矩形波発生回路62、クロック駆動回路80及びRL微分回路90−1,90−2は、アレイ化した自己走査回路100のチップを駆動するものであるが、単にクロックを生成するのみならず、後述する自己走査サイリスタ111の点灯エネルギーを制御する必要があり、光プリントヘッド13の高速動作のためには、自己走査回路100毎に設けることが好ましい。しかし、光プリントヘッド13のデータ転送が低速で良い場合には、クロック駆動回路80及びRL微分回路90−1,90−2の出力端子と複数の自己走査回路100を並列に接続することで、その回路を共用することができる。
【0049】
これらのデータ駆動回路70、クロック駆動回路80、RL微分回路90−1,90−2、及び自己走査回路100により、本実施例1の駆動装置が構成されている。なお、データ駆動回路70、クロック駆動回路80及びRL微分回路90−1,90−2は、図1においては、印刷制御部40の内部に配置されているが、光プリントヘッド13の内部に配置しても良い。
【0050】
データ駆動回路70は、駆動用矩形波発生回路61から供給される駆動指令信号DRVONを反転する相補型MOSトランジスタ(以下「CMOS」という。)インバータ71と、このCMOSインバータ71の出力端子とデータ端子DAとの間に接続された抵抗72とにより構成されている。CMOSインバータ71は、Pチャネル型MOSトランジスタ(以下「PMOS」という。)71aと、Nチャネル型MOSトランジスタ(以下「NMOS」という。)71bとを有し、これらがVDD電源とグランドGNDとの間に直列に接続されている。
【0051】
即ち、PMOS71aは、ゲートに駆動指令信号DRVONが入力され、ソースがVDD電源に接続され、ドレーンが抵抗72の一端に接続されている。NMOS71bは、ゲートに駆動指令信号DRVONが入力され、ソースがグランドGNDに接続され、ドレーンが抵抗72の一端に接続されている。抵抗72の他端は、データ端子DA、接続コネクタ96−1、接続ケーブル95−1、及び接続コネクタ97−1を介して、発光素子アレイ200側の共通端子INに接続されている。
【0052】
クロック駆動回路80は、矩形波信号S62−1を駆動する出力バッファ81と、矩形波信号S62−2を駆動する出力バッファ82と、この出力バッファ81,82の出力側にそれぞれ接続された2相の第2クロック出力用の出力端子CK1R,CK2Rとにより構成されている。各出力バッファ81,82は、同一の回路構成であって、スイッチ素子(例えば、第1導電型のMOSトランジスタであるPMOS)を用いたオープンドレーン構成となっており、後述するように、高いHレベル出力電圧を維持しつつ、自己走査サイリスタ111のゲートトリガに適した微分波形(例えば、アンダシュート波形)を発生させることができる。
【0053】
即ち、一方の出力バッファ81は、PMOS81a及び第2導電型のMOSトランジスタ(例えば、NMOS))81bを有している。PMOS81aは、ゲートに矩形波信号S62−1が入力され、ソースが第1電源としてのVDD電源に接続され、ドレーンがNMOS81bのドレーン及び出力端子CK1Rに接続されている。NMOS81bは、ソース及びゲートが第2電源としてのグランドGNDに接続されて、常にオフ状態になっている。そのため、PMOS81a及びNMOS81bにより、PMOSオープンドレーン出力バッファ回路が構成されている。PMOS81aのサブストレート端子とドレーンとの間には、寄生ダイオード81a−1が存在し、更に、NMOS81bのサブストレート端子とドレーン端子との間にも、寄生ダイオード81b−1が存在する。ダイオード81a−1のアノード及びカソードは、PMOS81aのドレーン及びソースに対して並列に接続されている。ダイオード81b−1のアノード及びカソードは、NMOS81bのソース及びドレーンに対して並列に接続されている。
【0054】
同様に、他方の出力バッファ82は、スイッチ素子(例えば、第1導電型のMOSトランジスタであるPMOS)82a及び第2導電型のMOSトランジスタ(例えば、NMOS)82bを有している。PMOS82aは、ゲートに矩形波信号S62−2が入力され、ソースが第1電源としてのVDD電源に接続され、ドレーンがNMOS82bのドレーン及び出力端子CK1Rに接続されている。NMOS82bは、ソース及びゲートが第2電源としてのグランドGNDに接続されて、常にオフ状態になっている。そのため、PMOS82a及びNMOS82bにより、PMOSオープンドレーン出力バッファ回路が構成されている。PMOS82aのサブストレート端子とドレーンとの間には、寄生ダイオード82a−1が存在し、更に、NMOS82bのサブストレート端子とドレーン端子との間にも、寄生ダイオード82b−1が存在する。ダイオード82a−1のアノード及びカソードは、PMOS82aのドレーン及びソースに対して並列に接続されている。ダイオード82b−1のアノード及びカソードは、NMOS82bのソース及びドレーンに対して並列に接続されている。
【0055】
2つのRL微分回路90−1,90−2は、同一の回路構成であり、一方のRL微分回路90−1が、クロック駆動回路80の出力端子CK1Rとクロック端子CK1との間に接続され、他方のRL微分回路90−2が、クロック駆動回路80の出力端子CK2Rとクロック端子CK2との間に接続されている。
【0056】
一方のRL微分回路90−1は、抵抗91−1、インダクタ92−1及び抵抗93−1により構成されている。抵抗91−1は、出力端子CK1とクロック端子CK1との間に接続され、この抵抗91−1及びクロック端子CK1間と第2電源としてのグランドGNDとの間に、インダクタ92−1及び抵抗93−1が直列に接続されている。同様に、他方のRL微分回路90−2は、抵抗93−2、インダクタ92−2及び抵抗93−2により構成されている。抵抗93−2は、出力端子CK2Rとクロック端子CK2との間に接続され、この抵抗93−2及びクロック端子CK2間と第2電源としてのグランドGNDとの間に、インダクタ92−2及び抵抗93−2が直列に接続されている。
【0057】
インダクタ92−1,92−2は、例えば、高透磁率を備えたフェライト材料の表層又は内装に厚膜配線層を設け、インダクタ電極の一端から他端に貫通するように配線を形成したフェライトビーズ等を用いることができる。
【0058】
前記クロック駆動回路80は、PMOSを用いたオープンドレーンの出力バッファ81,82により構成されているので、出力端子CK1R,CK2Rの出力状態が、PMOS81a,82aがオンした時に高レベル(以下「Hレベル」という。)となる。PMOS81a,82aがオフした時には、出力端子CK1R,CK2Rの出力状態がハイ・インピーダンス(以下「HiZ」という。)となるが、一方の出力端子CK1Rが、抵抗91−1、インダクタ92−1及び抵抗93−1を介してグランドGNDに接続され、他方の出力端子CK2Rが、抵抗91−2、インダクタ92−2及び抵抗93−2を介してグランドGNDに接続されているので、これらの出力端子CK1R,CK2Rは、低レベル(以下「Lレベル」という。)となる。
【0059】
以下の説明においては、説明の煩雑さを避けるために、クロック駆動回路80の出力状態として少なくともHレベルとLレベルの2つの状態値を持つものとして記載する。
【0060】
なお、図1においては、抵抗91−1,91−2を設けているが、クロック駆動回路80の駆動能力によっては、抵抗91−1,91−2の抵抗値を略ゼロとすることができて、その場合には抵抗91−1,91−2を省略することも可能である。同様に、抵抗93−1,93−2を省略することもできる。
【0061】
(実施例1の発光サイリスタ)
図6(a)〜(d)は、図1中の発光サイリスタ210を示す構成図である。
【0062】
図6(a)は、発光サイリスタ210の回路シンボルを示し、アノードA、カソードK、及びゲートGの3つの端子を有している。
【0063】
図6(b)は、発光サイリスタ210の断面構造を示す図である。発光サイリスタ210は、例えば、GaAsウェハ基材を用い、公知のMO−CVD(Metal Organic-Chemical Vapor Deposition)法により、GaAsウェハ基材の上層に所定の結晶をエピタキシャル成長させることで製造される。
【0064】
即ち、図示しない所定のバッファ層や犠牲層をエピタキシャル成長させた後、AlGaAs材料にN型不純物を含ませたN型層211と、P型不純物を含ませ成層したP型層212と、N型不純物を含ませたN型層213とを順に積層させたNPNの3層構造からなるウェハを形成する。次いで、公知のフォトリソグラフィ法を用いて、最上層であるN型層213の一部に、選択的にP型不純物領域214を形成する。更に、公知のエッチング法により、図示しない溝部を形成することで、素子分離を行う。又、前記エッチングの過程で、発光サイリスタ210の最下層となるN型領域211の一部を露出させ、この露出領域に金属配線を形成してカソードKを形成する。これと同時に、P型領域214とP型領域212にも、それぞれアノードAとゲートGが形成される。
【0065】
図6(c)は、発光サイリスタ210の他の形態を示す断面構造図である。この断面構造では、例えば、GaAsウェハ基材を用い、公知のMO−CVD法により、そのGaAs基材の上層に所定の結晶をエピタキシャル成長させることで製造される。
【0066】
即ち、図示しない所定のバッファ層や犠牲層をエピタキシャル成長させた後、AlGaAs材料にN型不純物を含ませたN型層211、P型不純物を含ませ成層したP型層212と、N型不純物を含ませたN型層213と、P型不純物を含ませ成層したP型層215とを順に積層させたPNPNの4層構造のウェハを形成する。更に、公知のエッチング法を用いて、図示しない溝部を形成することで素子分離を行う。又、前記エッチングの過程で、発光サイリスタ210の最下層となるN型領域211の一部を露出させ、この露出領域に金属配線を形成してカソードKを形成する。同様に、最上層となるP型領域215の一部を露出させ、この露出領域に金属配線を形成してアノードAを形成する。これと同時に、P型領域212にゲートGが形成される。
【0067】
図6(d)は、図6(b)、(c)と対比させて描いた発光サイリスタ210の等価回路図である。発光サイリスタ210は、PNPトランジスタ(以下「PNPTR」という。)221とNPNトランジスタ(以下「NPNTR」という。)222とからなり、PNPTR221のエミッタが発光サイリスタ210のアノードAに相当し、NPNTR222のベースが発光サイリスタ210のゲートGに相当し、NPNTR222のエミッタが発光サイリスタ210のカソードKに相当している。又、PNPTR221のコレクタは、NPNTR222のベースに接続され、PNPTR221のベースが、NPNTR222のコレクタに接続されている。
【0068】
なお、図6に示す発光サイリスタ210では、GaAsウェハ基材上にAlGaAs層を構成したものであるが、これに限定されるものではなく、GaP、GaAsP、AlGaInPといった材料を用いるものであっても良く、更には、サファイヤ基板上にGaNやAlGaN、InGaNといった材料を成膜したものであっても良い。
【0069】
(実施例1の印刷制御部及び光プリントヘッドの概略動作)
図1において、例えば、印刷制御部40内の駆動用矩形波発生回路61から出力される駆動指令信号DRVONがLレベルの場合、データ駆動回路70におけるCMOSインバータ71を構成するPMOS71aがオン状態、NMOS71bがオフ状態となり、抵抗72を介してデータ端子DAは、Hレベルとなる。そのため、接続コネクタ96−1、接続ケーブル95−1及び接続コネクタ97−1を介して、光プリントヘッド13側の共通端子IN及び各発光サイリスタ210のカソードがHレベルに上昇する。この結果、各発光サイリスタ210のアノード・カソード間電圧は略0Vとなって、そこに流れる駆動電流Ioutがゼロとなり、発光サイリスタ210−1〜210−nが全て非発光状態となる。
【0070】
これに対し、駆動指令信号DRVONがHレベルの場合、CMOSインバータ71を構成するPMOS71aがオフ状態、NMOS71bがオン状態となって、抵抗72を介してデータ端子DAがLレベルとなる。この結果、接続コネクタ96−1、接続ケーブル95−1及び接続コネクタ97−1を介して共通端子INも略グランドGND電位(≒0V)となり、各発光サイリスタ210のアノード・カソード間に略電源電圧VDDが印加される。
【0071】
この際、発光サイリスタ210−1〜210−nの内、自己走査回路100により、発光指令されている発光サイリスタ210のゲートのみを選択的にHレベルとすることで、この発光サイリスタ210のゲートにはトリガ電流を生じ、発光指令されているサイリスタ210がターンオンすることになる。ターンオンした発光サイリスタ210のカソードに流れる電流は、データ端子DAに流入する電流(即ち、駆動電流Iout)であり、発光サイリスタ210は発光状態となってその駆動電流Ioutの値に応じた発光出力を生じる。
【0072】
即ち、発光サイリスタ210−1〜210−nの動作を考えるにあたり、自己走査回路100の各段の回路110−1〜110−nにおけるオンしているサイリスタ111(=111−1〜111−n)に着目すると、発光サイリスタ210のアノードには電源電圧VDDが印加されており、そのカソードがLレベルにされると、発光サイリスタ210のアノード・カソード間には電圧が印加される。一方、自己走査回路100における各サイリスタ111のゲートと、各発光サイリスタ210のゲートとがそれぞれ接続されているため、サイリスタ111のゲート・カソード間にも電圧が印加されることになる。この時、発光サイリスタ210−1〜210−nの内、自己走査回路100により発光指令されている発光サイリスタ210のゲートのみを選択的にHレベルとすることで、この発光サイリスタ210のゲートにはトリガ電流を生じ、発光指令されている発光サイリスタ210がターンオンすることになる。この際、発光サイリスタ210のカソードに流れる電流は、データ端子DAに流入する駆動電流Ioutであって、前記発光サイリスタ210が発光状態なってその駆動電流Ioutの値に応じた発光出力を生じる。
【0073】
(実施例1の印刷制御部及び光プリントヘッドの詳細動作)
図7は、図1の光プリントヘッド13及び印刷制御部40の詳細な動作を示すタイミングチャートである。
【0074】
この図7では、図2の画像形成装置1での印刷動作時における1ライン走査において、図1の発光サイリスタ210−1〜210−n(例えば、n=8)を順次点灯させる場合の動作波形が示されている。
【0075】
本実施例1のように、自己走査サイリスタ111を用いた自己走査回路100の場合、クロック端子CK1,CK2から供給される2相クロックが用いられ、この2相クロックは、出力端子CK1R,CK2Rを備えたクロック駆動回路80によって駆動される。
【0076】
図7のタイミングチャートにおいて、左端部に示す状態においては、走査用矩形波発生回路62から出力された矩形波信号S62−1,S62−2が出力バッファ81,82で反転されて、出力端子CK1R,CK2Rの各信号がHレベルとされる。
【0077】
クロック駆動回路80の出力端子CK1Rは、抵抗91−1を介してクロック端子CKlと接続され、このクロック端子CK1が、インダクタ92−1と抵抗93−1の直列回路を介してグランドGNDに接続されている。同様に、クロック駆動回路80の出力端子CK2Rは、抵抗93−2を介してクロック端子CK2と接続され、このクロック端子CK2が、インダクタ92−2と抵抗93−2の直列回路を介してグランドGNDに接続されている。そのため、図7のタイミングチャートの左端部に示す状態においては、クロック端子CK1の電位は、出力端子CK1RからのHレベル電位を抵抗91−1,93−1により分圧して得られるHレベル電位となっている。
【0078】
この時、(抵抗93−1の抵抗値≫抵抗91−1の抵抗値)に設定することで、前記Hレベルを電源電圧VDDに近接した値とすることは容易であり、抵抗91−1を省略する場合には、前記Hレベル電位を電源電圧VDDに略等しくすることができる。同様に、クロック端子CK2の電位は、出力端子CK2RからのHレベル電位を抵抗91−2,93−2により分圧して得られるHレベル電位となっている。
【0079】
このように、図7のタイミングチャートの左端部に示す状態においては、クロック端子CK1,CK2の各信号は共にHレベルとなって、奇数段回路110−1,110−3,110−5,110−7における自己走査サイリスタ111−1,111−3,・・・,111−7の組と、偶数段回路110−2,110−4,110−6,110−8における自己走査サイリスタ111−2,111−4,・・・,111−8の組とのいずれも、そのカソードがHレベルとされ、オフ状態となっている。この時、駆動指令信号DRVONはLレベルとなっており、CMOSインバータ71の出力端子がHレベルであって、抵抗72、データ端子DA、接続コネクタ96−1、接続ケーブル95−1、接続コネクタ97−1、及び共通端子INを介して、発光サイリスタ210−1〜210−8のカソードもまたHレベルとなって、これらの発光サイリスタ210−1〜210−8がオフ状態にある。
【0080】
以下、第1段、第2段回路110−1,110−2における各サイリスタ111−1,111−2のターンオン過程(1)、(2)を説明する。
【0081】
(1) 第1段回路110−1におけるサイリスタ111−1のターンオン過程
図7の時刻t1において、走査用矩形波発生回路62から出力された矩形波信号S62−1がクロック駆動回路80内の出力バッファ81で反転されて、出力端子CK1RがLレベルとされる。すると、インダクタ92−1には逆起電圧を生じ、クロック端子CK1の電圧が、a部のように、グランドGND電位以下に降下して微分波形(例えば、アンダシュート波形)を生じる。
【0082】
この時、第1段回路110−1のサイリスタ111−1に着目すると、このアノード電圧が電源電圧VDDであり、典型的な設計例では3.3Vとされる。一方、ダイード112−1のアノードは、クロック端子CK2に接続されており、この電圧が電源電圧VDDに近接したHレベルである。そのため、Hレベルがダイオード112−1のアノード・カソード間を通り、サイリスタ111−1のゲート・カソード間を経由してクロック端子CK1に至る電流が流れ、この電流をトリガ電流としてサイリスタ111−1がターンオンすることになる。
【0083】
時刻t2において、駆動用矩形波発生回路61から出力される駆動指令信号DRVONが立ち上がり、これがCMOSインバータ71で反転され、抵抗72を介してデータ端子DAがLレベルへ遷移する。これにより、発光サイリスタ210−1のアノード・カソード間には電源電圧VDDに略等しい電圧が印加される。この時、サイリスタ111−1はオンしているので、このサイリスタ111−1のゲートに対してゲート電圧を共有している発光サイリスタ210−1がオンして、この発光サイリスタ210−1のカソードには、b部に示すように、駆動電流Ioutが生じ、この駆動電流Ioutの値に応じた発光出力を生じる。
【0084】
次の時刻t3において、駆動指令信号DRVONが立ち下がり、これがCMOSインバータ71で反転され、データ端子DAがHレベルへ遷移する。これにより、発光サイリスタ210−1のアノード・カソード間電圧が略0Vとなって、この発光サイリスタ210−1はオフし、c部に示すように、駆動電流I0utが略ゼロとなる。
【0085】
本実施例1では、発光サイリスタ210−1を発光させて、図2中の感光体ドラム11上に潜像を形成することができる。この時の露光エネルギー量は、前記駆動電流Ioutの値に応じて定まる発光パワーと露光時間(t3−t2)との積である。そのため、発光サイリスタ210−1等に製造ばらつきに起因する発光効率の差があったとしても、前記露光時間(t3−t2)を発光サイリスタ210−1毎に調整することで、露光エネルギー量のばらつきを補正することができる。
【0086】
又、発光サイリスタ210−1を発光させる必要のない場合には、時刻t2から時刻t3の間の駆動指令信号DRVONをLレベルのままとする。このように、駆動指令信号DRVONによって発光サイリスタ210−1の発光の有無もまた制御することができる。
【0087】
(2) 第2段回路110−2におけるサイリスタ111−2のターンオン過程
図7の時刻t4において、走査用矩形波発生回路62から出力された矩形波信号S62−2がクロック駆動回路80内の出力バッファ82で反転されて、出力端子CK2RがLレベルとされる。この時、インダクタ92−2には逆起電圧を生じ、クロック端子CK2の電圧は、d部のように、グランドGND電位以下に降下してアンダシュート波形を生じる。
【0088】
この時、第2段回路110−2のサイリスタ111−2に着目すると、このアノード電圧は電源電圧VDDであり、典型的な設計例では3.3Vとされる。一方、ダイオード112−2のアノードは、サイリスタ111−1のゲートに接続されており、このサイリスタ111−1はオン状態となっているため、ダイオード112−2のアノード電圧は、電源電圧VDDに近接したHレベルである。そのため、サイリスタ111−1のゲートから、ダイオード112−2のアノード・カソード間を通り、サイリスタ111−2のゲート・カソード間を経由してクロック端子CK2に至る電流が流れ、この電流をトリガ電流としてサイリスタ111−2がターンオンすることになる。
【0089】
時刻t5において、クロック駆動回路80の出力端子CK1RがHレベルとされる。この時、インダクタ92−1に逆起電圧を生じ、クロック端子CKlには、e部に示すオーバシュート電圧が発生して、サイリスタ111−1のアノード・カソード間電圧が急激に減少し、このサイリスタ111−1がターンオンする。
【0090】
時刻t6において、駆動指令信号DRVONが立ち上がり、これがCMOSインバータ71で反転され、データ端子DAがLレベルへ遷移する。データ端子DAがLレベルへ遷移すると、発光サイリスタ210−2のアノード・カソード間には、電源電圧VDDと略等しい電圧が印加される。前述したように、時刻t6においては、サイリスタ111−2がオン状態にあり、サイリスタ111−1がオフとなっている。
【0091】
このように、サイリスタ111−2はオンしているので、このサイリスタ111−2のゲートに対してゲート電圧を共有している発光サイリスタ210−2がオンし、このカソードには、f部に示すように駆動電流Ioutを生じ、この駆動電流Ioutの値に応じた発光出力を生じる。
【0092】
次の時刻t7において、駆動指令信号DRVONが立ち下がり、これがCMOSインバータ71で反転され、データ端子DAがHレベルへ遷移する。これにより、発光サイリスタ210−2のアノード・カソード間電圧は略0Vとなって発光サイリスタ210−2がオフし、g部に示すように、駆動電流Ioutは略ゼロとなる。
【0093】
以下同様に、クロック駆動回路80における出力端子CK1R,CK2Rの信号の遷移と、駆動指令信号DRVONのオン、オフとが順に発生して、発光サイリスタ210−3〜210−8を順次点灯することができる。
【0094】
以上、図7を用いて詳細に説明したように、クロック端子CK1,CK2から供給されるクロックは、異なる位相をもって同様波形が繰り返す形状を有しており、これらのクロック波形が、奇数段の自己走査サイリスタ111−1,111−3,・・・,111−7の組と、偶数段の自己走査サイリスタ111−2,111−4,・・・,111−8の組とに順次入力されることで、各段の自己走査サイリスタ111−1〜111−8が順にオンしていく。
【0095】
オン状態にある自己走査サイリスタ111のゲート電圧は、電源電圧VDDに略等しいHレベルであり、オフ状態にある自己走査サイリスタ111のゲート電圧はグランドGND電位に略等しいLレベルである。前述したように、各段の自己走査サイリスタ111−1〜111−8が順次オンしていく結果、図1の自己走査回路100はシフトレジスタとして動作し、各段の自己走査サイリスタ111−1〜111−8のゲートが、自己走査回路100の出力端子Q1〜Q8となっている。そのため、自己走査回路100の出力端子Q1〜Q8から出力される点灯指令信号によって、発光素子アレイ200における発光サイリスタ位置が指令され、データ端子DAの値により発光サイリスタ210−1〜210−8の点灯、非点灯の別、更には点灯時間を制御することが可能となる。
【0096】
(図7中のアンダシュート波形の説明)
図8(a)、(b)は、図1のクロック駆動回路80内の出力バッファ81、RL微分回路90−1、及び第1段回路110−1と図7のタイミングチャートとの要部を示す図であり、同図(a)は要部の回路図、及び、同図(b)は要部の電圧波形図である。
【0097】
図8(a)において、サイリスタ111−1のアノードはVDD電源に接続され、このサイリスタ111−1のカソードがクロック端子CK1に接続され、更に抵抗91−1を介して出力端子CK1Rに接続されている。又、クロック端子CK1は、インダクタ92−1及び抵抗93−1を介してグランドGNDに接続されている。ダイオード112−1のカソードは、サイリスタ111−1のゲートに接続されている。ダイオード112−1のアノードは、図1に示したようにクロック端子CK2に接続されているのであるが、サイリスタ111−1のターンオン過程においてはその信号レベルが電源電圧VDDと略等しいHレベルとされており、図を簡略化する目的で、図8(a)においてはVDD電源に接続して示している。
【0098】
例えば、クロック駆動回路80の出力端子CK1RがHレベルとなっている場合を考える。
【0099】
これは前記図7のタイミングチャートの左端部における状態に対応している。この時、図8(a)の実線矢印で示す向きに電流I1を生じる。この電流I1は、VDD電源、PM0S81a、抵抗91−1、インダクタ92−1及び抵抗93−1を経由してグランドGNDに至る経路を通る。
【0100】
次いで、図7における時刻t1において、PM0S81aがオフ状態に遷移する。すると、インダクタ92−1には、図8(a)中に+として極性を付記した向きに逆起電圧を生じ、破線矢印にて示す向きの電流I2を生じる。この電流I2の経路は、インダクタ92−1、抵抗93−1、ダイオード81b−1、及び抵抗91−1を経由してインダクタ92−1に戻る第1の電流経路である。
【0101】
この時、第1の電流経路に着目すると、ダイオード81b−1のアノードはグランドGNDに接続されているので、出力端子CK1Rの電位はグランドGND電位よりも前記ダイオード81b−1の順電圧分低い電位となり、出力端子CKlの電位は前記ダイオード81b−1の順電圧よりも抵抗93−1の両端に生じる電圧降下分だけ更に低い電位となることが判る。
【0102】
この結果、破線矢印にて示すように、VDD電源からダイオード112−1、サイリスタ111−1のゲート・カソード、インダクタ92−1、及び抵抗93−1を経由してグランドGNDに至る第2の電流経路に電流I3を生じ、サイリスタ111−1のゲート・カソード間のトリガ電流となってサイリスタ111−1がターンオンすることになる。
【0103】
図8(b)は、前記過程を示す電圧波形であって、出力端子CKIRがLレベルへ遷移する時、クロック端子CK1にはa部に示すようにアンダシュート部を生じて、グランドGND電位よりも電圧Vp分低くすることができる。
【0104】
典型的な設計例では、電源電圧VDDは3.3Vであり、ダイオード112−1の順電圧Vfは略1.6V、サイリスタ111−1のゲート・カソード間に生じるPN接合の順電圧Vgkもまた1.6Vとすると、第2の電流経路に電流I3を生じさせるためには、
Vf+Vgk<VDD+Vp
であることが必要である。この時、図8(b)に示すクロック端子CK1の波形にアンダシュート部aが無く、Vp=0であると、
Vf+Vgk=1.6+1.6=3.2V
となり、電源電圧VDDと同程度の値になって、サイリスタ111−1をターンオンさせるに十分なゲートトリガ電流を得ることができない。
【0105】
これに対し、例えば、前記アンダシュート波形としてVp=0.6Vといった値を与えることで、
VDD+Vp=3.3+0.6=3.9V
となり、サイリスタ111−1をターンオンさせるに十分なゲートトリガ電流を得ることができる。
【0106】
(実施例1の変形例1)
図9は、本発明の実施例1における図1の変形例1である印刷制御部40及び光プリントヘッド13Aの概略の回路構成を示すブロック図であり、図1中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0107】
本変形例1では、実施例1と同様の印刷制御部40を有している。印刷制御部40には、実施例1と同様の複数の接続コネクタ96(96−1〜96−3)、接続ケーブル95(95−1〜95−3)及び接続コネクタ97(=97−1〜97−3)を介して、実施例1の光プリントヘッド13とは異なる構成の光プリントヘッド13Aが接続されている。本変形例1の光プリントヘッド13Aは、実施例1と同様の自己走査回路100と、実施例1の発光素子アレイ200とは異なる構成の発光素子アレイ200Aとを有している。
【0108】
発光素子アレイ200Aは、複数の2端子発光素子(例えば、Pゲート型のLED)210A(=210A−1〜210A−n,・・・)を有し、これらの各LED210Aのアノードが自己走査回路100の各出力端子Q1〜Qnに接続され、カソードが駆動電流Ioutを流す共通端子INを介して接続コネクタ97−1に接続されている。各LED210Aは、アノード・カソード間に所定電圧が印加されると、オン状態になってカソード電流が流れ、発光する素子である。LED210A−1〜210A−n,・・・の総数は、実施例1と同様に、例えば、A4サイズの用紙に1インチ当たり600ドットの解像度で印刷可能な光プリントヘッド13Aの場合、4992個であり、これらが配列されることになる。
【0109】
このような構成の印刷制御部40及び光プリントヘッド13Aでは、以下のように動作する。
【0110】
例えば、駆動用矩形波発生回路61から出力される駆動指令信号DRVONがLレベルの場合、データ駆動回路70内のCMOSインバータ71により、抵抗72を介してデータ端子DAがHレベルとなる。そのため、接続コネクタ96−1、接続ケーブル95−1及び接続コネクタ97−1を介して、光プリントヘッド13A側の共通端子IN及び各LED210AのカソードがHレベルに上昇する。この結果、LED210A−1〜210A−nが全て非発光状態となる。
【0111】
これに対し、駆動指令信号DRVONがHレベルの場合、CMOSインバータ71により、抵抗72を介してデータ端子DAがLレベルとなる。この結果、接続コネクタ96−1、接続ケーブル95−1及び接続コネクタ97−1を介して共通端子INも略グランドGND電位(≒0V)となる。この際、LED210A−1〜210A−nの内、自己走査回路100により、発光指令されているLED210Aのアノードのみを選択的にHレベルとすることで、発光指令されているLED210Aがオン状態になる。オン状態のLED210Aのカソードに流れる電流は、データ端子DAに流入する電流(即ち、駆動電流Iout)であり、LED210Aは発光状態となってその駆動電流Ioutの値に応じた発光出力を生じる。
このように、本変形例1では、実施例1とほぼ同様に動作する。
【0112】
(実施例1の変形例2)
図10は、図1及び図9の変形例2における出力バッファを示す回路図であり、図1及び図9中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0113】
本変形例2の出力バッファ81Aでは、図1及び図9中の出力バッファ81におけるNMOS81b及びこの寄生ダイオード81b−1に代えて、通常のダイオード81cが設けられている。ダイオード81cは、カソードが出力端子CK1Rに接続され、アノードがグランドGNDに接続されている。図1及び図9中の他の出力バッファ82においても、図示しないが、NMOS82b及びこの寄生ダイオード82b−1に代えて、通常のダイオードが設けられている。
【0114】
例えば、ダイオード81cは、図8に示す電流I2をグランドGND側から出力端子CK1R側へ流す機能を有している。このようなダイオード81cを設けても、図1及び図9と同様の動作が行われる。
【0115】
(実施例1及び変形例1、2の効果)
本実施例1及び変形例1、2によれば、次の(a)、(b)のような効果がある。
【0116】
(a) 従来構成の自己走査回路の駆動においては、例えば、図1のRL微分回路90−1,90−2に相当する箇所にCR微分回路をそれぞれ設けて、図8(b)のa部においてアンダシュート波形を生成し、2個のクロック端子CK1,CK2から2相のクロックを出力している。この際、CR微分回路においては、直流成分を伝達することができないので、2個のクロック端子CK1,CK2に対して各2個のクロック出力端子を設けている。
【0117】
即ち、光プリントヘッド13においては、動作の高速化を目的として、多数の自己走査回路100のチップを設け、同時並列して動作するようにしている。多数の自己走査回路100へのデータ転送クロックとして2相クロックが用いられ、各自己走査回路100毎に2相のクロックが入力される。このため、自己走査回路100にクロックを供給するための従来のクロック駆動回路(本実施例1のクロック駆動回路に相当)においては、自己走査回路100のチップ1個を駆動するために4個のクロック出力端子を要することになる。
【0118】
光プリントヘッド13には多数の自己走査回路100のチップを配列しているので、そのクロック駆動回路に備えるべきクロック出力端子の総数が膨大となってしまう。これを避けるために、LSIパッケージに収容可能な端子数に抑えようとすると、クロック駆動回路に並列接続して駆動する自己走査回路100のチップ数を増大することになってしまい、波形なまりを生じる。この結果、光プリントヘッド13の動作を高速化できないという課題があった。
【0119】
これを解決するために、本実施例1や変形例1、2によれば、クロック駆動回路80を、PMOSを用いたオープンドレーン構成にし、この出力信号をRL微分回路90−1,90−2で微分して、図8(b)のa部におけるアンダシュート波形を生成しているので、クロック駆動回路80における出力端子CK1R,CK2Rの数がクロック当たり1個で良く、従来構成と比べて所要端子の数を半減することができる。これにより、光プリントヘッド13,13Aにおけるデータ転送速度を向上できることは勿論のこと、クロック駆動回路80の出力端子CK1R,CK2Rの数の減少によって、回路規模の削減と、これによる低コスト化も期待できる。
【0120】
(b) 本実施例1や変形例1、2の画像形成装置1によれば、光プリントヘッド13,13Aを採用しているので、スペース効率及び光取り出し効率に優れた高品質の画像形成装置1を提供することができる。即ち、プリントヘッド13,13Aを用いることにより、本実施例1や変形例1、2のフルカラーの画像形成装置1に限らず、モノクロ、マルチカラーの画像形成装置においても効果が得られるが、特に、露光装置としてのプリントヘッド13,13Aを数多く必要とするフルカラーの画像形成装置1において一層大きな効果が得られる。
【実施例2】
【0121】
本発明の実施例2における画像形成装置1では、光プリントヘッド13B及び印刷制御部40Bの回路構成が、実施例1の光プリントヘッド13及び印刷制御部40と異なるので、以下、その異なる部分について説明する。
【0122】
(実施例2の印刷制御部及び光プリントヘッド)
図11は、本発明の実施例2における印刷制御部40B及び光プリントヘッド13Bの概略の回路構成を示すブロック図であり、実施例1を示す図1中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0123】
本実施例2の光プリントヘッド13Bは、実施例1の自己走査回路100及び発光素子アレイ200とは異なる構成の自己走査回路100B及び発光素子アレイ200Bを有し、これらが実施例1と同様の複数の接続ケーブル95(=95−1〜95−3)及び複数の接続コネクタ96(=96−1〜96−3),97(=97−1〜97−3)を介して、実施例1の印刷制御部40とは異なる構成の印刷制御部40Bに接続されている。
【0124】
自己走査回路100Bにより走査される発光素子アレイ200Bは、3端子発光素子としての例えば複数のNゲート型の発光サイリスタ210B(=210B−1〜210B−n,・・・)を有し、これらの各発光サイリスタ210Bのアノードが駆動電流Ioutを流す共通端子INを介して接続コネクタ97−1に接続され、カソードがグランドGNDに接続され、ゲートが自己走査回路100Bの各出力端子Q1〜Qnに接続されている。発光サイリスタ210B−1〜210B−n,・・・の総数は、実施離1と同様に、例えば、A4サイズの用紙に1インチ当たり600ドットの解像度で印刷可能な光プリントヘッド13Bの場合、4992個であり、これらが配列されることになる。
【0125】
自己走査回路100Bは、印刷制御部40Bから接続コネクタ96−2,96−3、接続ケーブル95−2,95−3及び接続コネクタ97−2,97−3を介して供給される2相の第1クロックにより駆動されて、発光素子アレイ200Bにトリガ電流を与えてオン/オフ動作させる回路であり、Nゲート型の自己走査サイリスタを用いた複数段の回路110B(=110B−1〜110B−n、例えばn=4992)を有し、自己走査型シフトレジスタにより構成されている。各段の回路110B(=110B−1〜110B−n、)は、第1端子(例えば、カソード)が第1電源(例えば、グランドGND)に接続された自己走査サイリスタ111B(=111B−1〜111B−n)と、アノードが自己走査サイリスタ111Bの制御端子(例えば、ゲート)に接続されたダイオード112B(=112B−1〜112B−n)と、自己走査サイリスタ111Bのゲート及び第2電源(例えば、VDD電源)間に接続された抵抗113B(=113B−1〜113B−n)とにより、それぞれ構成されている。
【0126】
奇数段回路110B−1,110B−3,・・・,110B−(n−1)における自己走査サイリスタ111B(=111B−1,111B−3,・・・,111B−(n−1))は、第2端子(例えば、アノード)が接続コネクタ97−2に接続され、カソードがグランドGNDに接続され、ゲートが抵抗113B(=113B−1,113B−3,・・・,113B−(n−1))を介してVDD電源に接続されると共に、そのゲートがダイオード112B(=112B−1,112B−3,・・・,112B−(n−1))のアノード・カソードを介して接続コネクタ97−3に接続されている。
【0127】
偶数段回路110B−2,110B−4,・・・,110B−nにおける自己走査サイリスタ111B(=111B−2,111B−4,・・・,111B−n)は、第2端子(例えば、アノード)が接続コネクタ97−3に接続され、カソードがグランドGNDに接続され、ゲートが抵抗113B(=113B−2,113B−4,・・・,113B−n)を介してVDD電源に接続されると共に、そのゲートがダイオード112B(=112B−2,112B−4,・・・,112B−n)のアノード・カソードを介して前段の自己走査サイリスタ111B(=111B−1,111B−3,・・・,111B−(n−1))のゲートに接続されている。更に、各段の自己走査サイリスタ111B(=111B−1〜111B−n)のゲートは、自己走査回路100Bの出力端子Q1〜Qnにそれぞれ接続されている。
【0128】
各段の回路110B−1〜110B−nにおける自己走査サイリスタ111Bは、発光素子アレイ200Bにおける発光サイリスタ210Bと同様なレイヤ構造を有し、且つ同様な回路動作を行う素子であるが、実施例1と同様に、発光サイリスタ210Bのような発光機能を必要としないので、上層がメタル膜等の非透光性材料で覆われ、遮光して用いられる。各段の自己走査サイリスタ111Bにおけるゲートにアノードが接続されたダイオード112Bは、実施例1と同様に、各段の自己走査サイリスタ111Bのゲート間を接続するものであって、発光サイリスタ210B−1〜210B−nが順次点灯する時の走査方向(例えば、図11において右方向)を決定するために設けられている。
【0129】
自己走査回路100Bでは、実施例1と同様に、印刷制御部40Bから供給される2相の第1クロックに基づき、自己走査サイリスタ111B−1〜111B−nが択一的にオン状態となり、このオン状態が発光素子アレイ200Bに伝達され、発光サイリスタ210B−1〜210B−nの内から発光すべき発光サイリスタ210B−1〜210B−nを指令する働きをする。この自己走査回路100Bにおいて、オン状態となる各段の回路110−1〜110−nにおけるサイリスタ111のオン状態が、2相クロック毎に隣接サイリスタ111に伝達され、シフトレジスタと同様の回路動作が行われる構成になっている。
【0130】
印刷制御部40Bは、実施例1の駆動用矩形波発生回路61とは異なる駆動用矩形波の信号である負論理の駆動指令信号DRVON−Nを出力する駆動用矩形波発生回路61Bと、走査用の矩形波信号S62−1,S62−2を出力する実施例1と同様の走査用矩形波発生回路62と、駆動指令信号DRVON−Nに基づいて複数の発光素子アレイ200Bを時分割駆動する実施例1と同様の複数のデータ駆動回路70と、実施例1のクロック駆動回路80及びRL微分回路90−1,90−2とは異なり、矩形波信号S62−1,S62−2に基づいて自己走査回路100Bに供給する2相クロックを生成するためのクロック駆動回路80B及びRL微分回路90B−1,90B−2等とを有している。
【0131】
図11においては、実施例1の図1と同様に、説明を簡略化するために1組の駆動用矩形波発生回路61B及びデータ駆動回路70のみが図示されている。複数の発光素子アレイ200Bは、例えば、総数4992個の発光サイリスタ210B−1〜210B−n,・・・を有し、これらの発光サイリスタ210B−1〜210B−n,・・・が複数の発光サイリスタ210B−1〜210B−nの組にグループ化され、各グループ毎に設けられたデータ駆動回路70によって、それらが同時並行的に分割駆動が行われる構成になっている。
【0132】
一例として典型的な設計例を挙げると、実施例1と同様に、発光サイリスタ210B(=210B−1〜210B−n)を192個配列してアレイ化した発光素子アレイ200Bのチップを図4中のプリント配線板13b上に26個整列する。これにより、光プリントヘッド13に必要な総数4992個の発光サイリスタ210B−1〜210B−n,・・・を構成している。この際、データ駆動回路70は前記26個の発光素子アレイ200Bに対応して設けられ、これらのデータ駆動回路70における出力端子の総数は26である。
【0133】
一方、走査用矩形波発生回路62、クロック駆動回路80B及びRL微分回路90B−1,90B−2は、アレイ化した自己走査回路100Bのチップを駆動するものであるが、単にクロックを生成するのみならず、後述する自己走査サイリスタ111Bの点灯エネルギーを制御する必要があり、光プリントヘッド13Bの高速動作のためには、自己走査回路100B毎に設けることが好ましい。しかし、光プリントヘッド13Bのデータ転送が低速で良い場合には、クロック駆動回路80B及びRL微分回路90B−1,90B−2の出力端子と複数の自己走査回路100Bを並列に接続することで、その回路を共用することができる。
【0134】
これらのデータ駆動回路70、クロック駆動回路80B、RL微分回路90B−1,90B−2、及び自己走査回路100Bにより、本実施例2の駆動装置が構成されている。なお、データ駆動回路70、クロック駆動回路80B及びRL微分回路90B−1,90B−2は、図11においては、印刷制御部40Bの内部に配置されているが、光プリントヘッド13Bの内部に配置しても良い。
【0135】
クロック駆動回路80Bは、矩形波信号S62−1を駆動する出力バッファ81Bと、矩形波信号S62−2を駆動する出力バッファ82Bと、この出力バッファ81B,82Bの出力側にそれぞれ接続された2相の第2クロック出力用の出力端子CKIR,CK2Rとにより構成されている。各出力バッファ81B,82Bは、同一の回路構成であって、スイッチ素子(例えば、第1導電型のMOSトランジスタであるNMOS)を用いたオープンドレーン構成となっており、後述するように、低いLレベル出力電圧を維持しつつ、自己走査サイリスタ111Bのゲートトリガに適した微分波形(例えば、オーバシュート波形)を発生させることができる。
【0136】
即ち、一方の出力バッファ81Bは、第2導電型のMOSトランジスタ(例えば、PMOS)81d及び第1導電型のMOSトランジスタ(例えば、NMOS)81eを有している。PMOS81dは、ソース及びゲートが第1電源(例えば、VDD電源)に接続され、ドレーンが出力端子CK1Rに接続されて、常にオフ状態になっている。NMOS81eは、ゲートに矩形波信号S62−1が入力され、ソースが第2電源(例えば、グランドGND)に接続され、ドレーンがPMOS81dのドレーン及び出力端子CK1Rに接続されている。そのため、PMOS81d及びNMOS81eにより、NMOSオープンドレーン出力バッファ回路が構成されている。PMOS81dのサブストレート端子とドレーンとの間には、寄生ダイオード81d−1が存在し、更に、NMOS81eのサブストレート端子とドレーン端子との間にも、寄生ダイオード81e−1が存在する。ダイオード81d−1のアノード及びカソードは、PMOS81dのドレーン及びソースに対して並列に接続されている。ダイオード81e−1のアノード及びカソードは、NMOS81eのソース及びドレーンに対して並列に接続されている。
【0137】
同様に、他方の出力バッファ82Bは、PMOS82d及びNMOS82eを有している。PMOS82dは、ソース及びゲートがVDD端子に接続され、ドレーンが出力端子CK2Rに接続されて、常にオフ状態になっている。NMOS82eは、ゲートに矩形波信号S62−2が入力され、ソースがグランドGNDに接続され、ドレーンがPMOS82dのドレーン及び出力端子CK2Rに接続されている。そのため、PMOS82d及びNMOS82eにより、NMOSオープンドレーン出力バッファ回路が構成されている。PMOS82dのサブストレート端子とドレーンとの間には、寄生ダイオード82d−1が存在し、更に、NMOS82eのサブストレート端子とドレーン端子との間にも、寄生ダイオード82e−1が存在する。ダイオード82d−1のアノード及びカソードは、PMOS82dのドレーン及びソースに対して並列に接続されている。ダイオード82e−1のアノード及びカソードは、NMOS82eのソース及びドレーンに対して並列に接続されている。
【0138】
2つのRL微分回路90B−1,90B−2は、同一の回路構成であり、一方のRL微分回路90B−1が、実施例1と同様に、クロック駆動回路80Bの出力端子CK1Rとクロック端CK1との間に接続され、他方のRL微分回路90B−2が、実施例1と同様に、クロック駆動回路80Bの出力端子CK2Rとクロック端子CK2との間に接続されている。
【0139】
一方のRL微分回路90−1Bは、実施例1のRL微分回路90−1と同様に、抵抗91−1、インダクタ92−1及び抵抗93−1により構成されている。抵抗91−1は、出力端子CK1とクロック端子CK1との間に接続され、この抵抗91−1及びクロック端子CK1間と実施例1と異なる第2電源(例えば、VDD電源)との間に、インダクタ92−1及び抵抗93−1が直列に接続されている。同様に、他方のRL微分回路90B−2は、実施例1のRL微分回路90−2と同様に、抵抗93−2、インダクタ92−2及び抵抗93−2により構成されている。抵抗93−2は、出力端子CK2Rとクロック端子CK2との間に接続され、この抵抗93−2及びクロック端子CK2間と実施例1と異なる第2電源(例えば、VDD電源)との間に、インダクタ92−2及び抵抗93−2が直列に接続されている。
【0140】
前記クロック駆動回路80Bは、NMOSを用いたオープンドレーンの出力バッファ81B,82Bにより構成されているので、出力端子CK1R,CK2Rの出力状態が、NMOS81e,82eがオンした時にLレベルとなる。NMOS81e,82eがオフした時には、出力端子CK1R,CK2Rの出力状態がHiZとなるが、一方の出力端子CK1Rが、抵抗91−1、インダクタ92−1及び抵抗93−1を介してVDD電源に接続され、他方の出力端子CK2Rが、抵抗91−2、インダクタ92−2及び抵抗93−2を介してVDD電源に接続されているので、これらの出力端子CK1R,CK2Rは、Hレベルとなる。
【0141】
以下の説明においては、説明の煩雑さを避けるために、クロック駆動回路80Bの出力状態として少なくともHレベルとLレベルの2つの状態値を持つものとして記載する。
【0142】
なお、実施例1と同様に、クロック駆動回路80Bの駆動能力によっては、抵抗91−1,91−2の抵抗値を略ゼロとすることができて、その場合には抵抗91−1,91−2を省略することも可能である。同様に、抵抗93−1,93−2を省略することもできる。
【0143】
(実施例2の発光サイリスタ)
図12(a)〜(d)は、図11中の発光サイリスタ210Bを示す構成図である。
【0144】
図12(a)は、発光サイリスタ210Bの回路シンボルを示し、アノードA、カソードK、及びゲートGの3つの端子を有している。
【0145】
図12(b)は、発光サイリスタ210Bの断面構造を示す図である。発光サイリスタ210Bは、実施例1の発光サイリスタ210とほぼ同様に、例えば、GaAsウェハ基材を用い、公知のMO−CVD法により、GaAsウェハ基材の上層に所定の結晶をエピタキシャル成長させることで製造される。
【0146】
即ち、図示しない所定のバッファ層や犠牲層をエピタキシャル成長させた後、AlGaAs材料にN型不純物を含ませたN型層231と、P型不純物を含ませ成層したP型層232と、N型不純物を含ませたN型層233とを順に積層させたNPNの3層構造からなるウェハを形成する。次いで、公知のフォトリソグラフィ法を用いて、最上層であるN型層233の一部に、選択的にP型不純物領域234を形成する。更に、公知のエッチング法により、図示しない溝部を形成することで、素子分離を行う。又、前記エッチングの過程で、発光サイリスタ210Bの最下層となるN型領域231の一部を露出させ、この露出領域に金属配線を形成してカソードKを形成する。これと同時に、P型領域234とN型領域233にも、それぞれアノードAとゲートGが形成される。
【0147】
図12(c)は、発光サイリスタ210Bの他の形態を示す断面構造図である。この断面構造では、実施例1の発光サイリスタ210とほぼ同様に、例えば、GaAsウェハ基材を用い、公知のMO−CVD法により、そのGaAs基材の上層に所定の結晶をエピタキシャル成長させることで製造される。
【0148】
即ち、図示しない所定のバッファ層や犠牲層をエピタキシャル成長させた後、AlGaAs材料にN型不純物を含ませたN型層231、P型不純物を含ませ成層したP型層232と、N型不純物を含ませたN型層233と、P型不純物を含ませ成層したP型層235とを順に積層させたPNPNの4層構造のウェハを形成する。更に、公知のエッチング法を用いて、図示しない溝部を形成することで素子分離を行う。又、前記エッチングの過程で、発光サイリスタ210Bの最下層となるN型領域231の一部を露出させ、この露出領域に金属配線を形成してカソードKを形成する。同様に、最上層となるP型領域235の一部を露出させ、この露出領域に金属配線を形成してアノードAを形成する。これと同時に、N型領域233にゲートGが形成される。
【0149】
図11(d)は、図11(b)、(c)と対比させて描いた発光サイリスタ210Bの等価回路図である。発光サイリスタ210Bは、PNPTR241とNPNTR242とからなり、PNPTR241のエミッタが発光サイリスタ210BのアノードAに相当し、PNPTR241のベースが発光サイリスタ210BのゲートGに相当し、NPNTR242のエミッタが発光サイリスタ210BのカソードKに相当している。又、PNPTR241のコレクタは、NPNTR242のベースに接続され、PNPTR241のベースが、NPNTR242のコレクタに接続されている。
【0150】
なお、図12に示す発光サイリスタ210Bでは、実施例1の発光サイリスタ210と同様に、GaAsウェハ基材上にAlGaAs層を構成したものであるが、これに限定されるものではなく、GaP、GaAsP、AlGaInPといった材料を用いるものであっても良く、更には、サファイヤ基板上にGaNやAlGaN、InGaNといった材料を成膜したものであっても良い。
【0151】
(実施例2の印刷制御部及び光プリントヘッドの概略動作)
図11において、例えば、印刷制御部40B内の駆動用矩形波発生回路61Bから出力される駆動指令信号DRVON−NがHレベルの場合、データ駆動回路70内のPMOS71aがオフ状態、NMOS71bがオン状態となり、抵抗72を介してデータ端子DAは、Lレベルとなる。そのため、接続コネクタ96−1、接続ケーブル95−1及び接続コネクタ97−1を介して、光プリントヘッド13B側の共通端子IN及び各発光サイリスタ210BのアノードがLレベルになる。この結果、各発光サイリスタ210Bのアノード・カソード間電圧は略0Vとなって、そこに流れる駆動電流Ioutがゼロとなり、発光サイリスタ210B−1〜210B−nが全て非発光状態となる。
【0152】
これに対し、駆動指令信号DRVON−NがLレベルの場合、PMOS71aがオン状態、NMOS71bがオフ状態となって、抵抗72を介してデータ端子DAがHレベルとなる。この結果、接続コネクタ96−1、接続ケーブル95−1及び接続コネクタ97−1を介して共通端子INも略電源電圧となり、各発光サイリスタ210Bのアノード・カソード間に略電源電圧VDDが印加される。
【0153】
この際、発光サイリスタ210B−1〜210B−nの内、自己走査回路100Bにより、発光指令されている発光サイリスタ210Bのゲートのみを選択的にLレベルとすることで、この発光サイリスタ210Bのゲートにはトリガ電流を生じ、発光指令されているサイリスタ210Bがターンオンすることになる。ターンオンした発光サイリスタ210Bのアノードに流れる電流は、データ端子DAから供給される電流(即ち、駆動電流Iout)であり、発光サイリスタ210Bは発光状態となってその駆動電流Ioutの値に応じた発光出力を生じる。
【0154】
即ち、発光サイリスタ210B−1〜210B−nの動作を考えるにあたり、自己走査回路100Bの各段の回路110B−1〜110B−nにおけるオンしているサイリスタ111B(=111B−1〜111B−n)に着目すると、発光サイリスタ210BのカソードがグランドGNDに接続されており、そのカソードがHレベルにされると、発光サイリスタ210Bのアノード・カソード間には電圧が印加される。一方、自己走査回路100Bにおける各サイリスタ111Bのゲートと、発光サイリスタ210Bの各ゲートとがそれぞれ接続されているため、サイリスタ111Bのアノード・ゲート間にも電圧が印加されることになる。この時、発光サイリスタ210B−1〜210B−nの内、自己走査回路100Bにより発光指令されている発光サイリスタ210Bのゲートのみを選択的にLレベルとすることで、この発光サイリスタ210Bのゲートにはトリガ電流を生じ、発光指令されている発光サイリスタ210Bがターンオンすることになる。この際、発光サイリスタ210Bのアノードに流れる電流は、データ端子DAから供給される駆動電流Ioutであって、前記発光サイリスタ210Bが発光状態なってその駆動電流Ioutの値に応じた発光出力を生じる。
【0155】
(実施例2の印刷制御部及び光プリントヘッドの詳細動作)
図13は、図11の光プリントヘッド13B及び印刷制御部40Bの詳細な動作を示すタイミングチャートである。
【0156】
この図13では、実施例1の図7と同様に、図2の画像形成装置1での印刷動作時における1ライン走査において、図11の発光サイリスタ210B−1〜210B−n(例えば、n=8)を順次点灯させる場合の動作波形が示されている。
【0157】
図13のタイミングチャートにおいて、左端部に示す状態においては、走査用矩形波発生回路62から出力された矩形波信号S62−1,S62−2が出力バッファ81B,82Bで反転されて、出力端子CK1R,CK2Rの各信号がLレベルとされる。
【0158】
クロック駆動回路80Bの出力端子CK1Rは、抵抗91−1を介してクロック端子CKlと接続され、このクロック端子CK1が、インダクタ92−1と抵抗93−1の直列回路を介してVDD電源に接続されている。同様に、クロック駆動回路80Bの出力端子CK2Rは、抵抗91−2を介してクロック端子CK2と接続され、このクロック端子CK2が、インダクタ92−2と抵抗93−2の直列回路を介してVDD電源に接続されている。
【0159】
そのため、図13のタイミングチャートの左端部に示す状態においては、クロック端子CK1の電位は、出力端子CK1RからのLレベル電位と電源電圧VDDとの電位差を抵抗91−1,93−1により分圧して得られるLレベル電位となっている。この時、(抵抗93−1の抵抗値≫抵抗91−1の抵抗値)に設定することで、前記LレベルをグランドGND電位に近接した値とすることは容易であり、抵抗91−1を省略する場合には、前記Lレベル電位をグランドGND電位に略等しくすることができる。
【0160】
同様に、クロック端子CK2の電位は、出力端子CK2RからのLレベル電位を電源電圧VDDとの電位差を抵抗91−2,93−2により分圧して得られるLレベル電位となっている。この時、(抵抗93−2の抵抗値≫抵抗91−2の抵抗値)に設定することで、前記LレベルをグランドGND電位に近接した値とすることは容易であり、抵抗91−2を省略する場合には、前記Lレベル電位をグランドGND電位に略等しくすることができる。
【0161】
このように、図13のタイミングチャートの左端部に示す状態においては、クロック端子CK1,CK2の各信号は共にLレベルとなって、奇数段回路110B−1,110B−3,110B−5,110B−7における自己走査サイリスタ111B−1,111B−3,・・・,111B−7の組と、偶数段回路110B−2,110B−4,110B−6,110B−8における自己走査サイリスタ111B−2,111B−4,・・・,111B−nの組とのいずれも、そのアノードがLレベルとされ、オフ状態となっている。この時、駆動指令信号DRVON−NはHレベルとなっており、CMOSインバータ71の出力端子がLレベルであって、抵抗72、データ端子DA、接続コネクタ96−1、接続ケーブル95−1、接続コネクタ97−1、及び共通端子INを介して、発光サイリスタ210B−1〜210B−8のアノードもまたLレベルとなって、これらの発光サイリスタ210B−1〜210B−8がオフ状態にある。
【0162】
以下、第1段、第2段回路110B−1,110B−2における各サイリスタ111B−1,111B−2のターンオン過程(1)、(2)を説明する。
【0163】
(1) 第1段回路110B−1におけるサイリスタ111B−1のターンオン過程
図13の時刻t1において、走査用矩形波発生回路62から出力された矩形波信号S62−1がクロック駆動回路80内の出力バッファ81Bで反転されて、出力端子CK1RがHレベルとされる。すると、インダクタ92−1には逆起電圧を生じ、クロック端子CK1の電圧が、a部のように、電源電圧VDD以上に上昇してオーバシュート波形を生じる。
【0164】
この時、第1段目回路110B−1のサイリスタ111B−1に着目すると、このアノード電圧が電源電圧VDDであり、典型的な設計例では3.3Vとされる。一方、ダイード112B−1のカソードは、クロック端子CK2に接続されており、この電圧がグランドGND電位に近接したLレベルである。そのため、サイリスタ111B−1のアノード・ゲート間を通り、ダイオード112B−1を経由してクロック端子CK2に至る電流が流れ、この電流をトリガ電流としてサイリスタ111B−1がターンオンすることになる。
【0165】
時刻t2において、駆動用矩形波発生回路61Bから出力される駆動指令信号DRVON−Nが立ち下がり、これがCMOSインバータ71で反転され、抵抗72を介してデータ端子DAがHレベルへ遷移する。これにより、発光サイリスタ210B−1のアノード・カソード間には電源電圧VDDに略等しい電圧が印加される。この時、サイリスタ111B−1はオンしているので、このサイリスタ111B−1のゲートに対してゲート電圧を共有している発光サイリスタ210B−1がオンして、この発光サイリスタ210B−1のアノードには、b部に示すように、駆動電流Ioutが生じ、この駆動電流Ioutの値に応じた発光出力を生じる。
【0166】
次の時刻t3において、駆動指令信号DRVON−Nが立ち上がり、これがCMOSインバータ71で反転され、データ端子DAがLレベルへ遷移する。これにより、発光サイリスタ210B−1のアノード・カソード間電圧が略0Vとなって、この発光サイリスタ210B−1はオフし、c部に示すように、駆動電流I0utが略ゼロとなる。
【0167】
本実施例1では、発光サイリスタ210B−1を発光させて、図2中の感光体ドラム11上に潜像を形成することができる。この時の露光エネルギー量は、前記駆動電流Ioutの値に応じて定まる発光パワーと露光時間(t3−t2)との積である。そのため、発光サイリスタ210B−1等に製造ばらつきに起因する発光効率の差があったとしても、前記露光時間(t3−t2)を発光サイリスタ210B−1毎に調整することで、露光エネルギー量のばらつきを補正することができる。
【0168】
又、発光サイリスタ210B−1を発光させる必要のない場合には、時刻t2から時刻t3の間の駆動指令信号DRVON−NをHレベルのままとする。このように、駆動指令信号DRVON−Nによって発光サイリスタ210B−1の発光の有無もまた制御することができる。
【0169】
(2) 第2段回路110B−2におけるサイリスタ111B−2のターンオン過程
図13の時刻t4において、走査用矩形波発生回路62から出力された矩形波信号S62−2がクロック駆動回路80B内の出力バッファ82Bで反転されて、出力端子CK2RがHレベルとされる。この時、インダクタ92−2には逆起電圧を生じ、クロック端子CK2の電圧は、d部のように、電源電圧VDD以上に上昇してオーバダシュート波形を生じる。
【0170】
この時、第2段回路110B−2のサイリスタ111B−2に着目すると、このアノード電圧は電源電圧VDDであり、典型的な設計例では3.3Vとされる。一方、ダイオード112B−2のカソードは、サイリスタ111B−1のゲートに接続されており、このサイリスタ111B−1はオン状態となっているため、ダイオード112B−2のカソード電圧は、グランドGND電位に近接したLレベルである。そのため、クロック端子CK2を通り、サイリスタ111B−2のアノード・ゲート間からダイオード112B−2のアノード・カソード間、及びサイリスタ111B−1のゲート・カソード間を経由してグランドGNDに至る電流が流れ、この電流をトリガ電流としてサイリスタ111B−2がターンオンすることになる。
【0171】
時刻t5において、クロック駆動回路80Bの出力端子CK1RがLレベルとされる。この時、インダクタ92−1に逆起電圧を生じ、クロック端子CKlには、e部に示すアンダシュート電圧が発生して、サイリスタ111B−1のアノード・カソード間電圧が急激に減少し、このサイリスタ111B−1がターンオンする。
【0172】
時刻t6において、駆動指令信号DRVON−Nが立ち下がり、これがCMOSインバータ71で反転され、データ端子DAがHレベルへ遷移する。データ端子DAがHレベルへ遷移すると、発光サイリスタ210B−2のアノード・カソード間には、電源電圧VDDと略等しい電圧が印加される。前述したように、時刻t6においては、サイリスタ111B−2がオン状態にあり、サイリスタ111B−1がオフとなっている。
【0173】
このように、サイリスタ111B−2はオンしているので、このサイリスタ111B−2のゲートに対してゲート電圧を共有している発光サイリスタ210B−2がオンし、このカソードには、f部に示すように駆動電流Ioutを生じ、この駆動電流Ioutの値に応じた発光出力を生じる。
【0174】
次の時刻t7において、駆動指令信号DRVON−Nが立ち上がり、これがCMOSインバータ71で反転され、データ端子DAがLレベルへ遷移する。これにより、発光サイリスタ210B−2のアノード・カソード間電圧は略0Vとなって発光サイリスタ210B−2がオフし、g部に示すように、駆動電流Ioutは略ゼロとなる。
【0175】
以下同様に、クロック駆動回路80Bにおける出力端子CK1R,CK2Rの信号の遷移と、駆動指令信号DRVON−Nのオン、オフとが順に発生して、発光サイリスタ210B−3〜210B−8を順次点灯することができる。
【0176】
以上、図13を用いて詳細に説明したように、クロック端子CK1,CK2から供給されるクロックは、異なる位相をもって同様波形が繰り返す形状を有しており、これらのクロック波形が、奇数段の自己走査サイリスタ111B−1,111B−3,・・・,111B−7の組と、偶数段の自己走査サイリスタ111B−2,111B−4,・・・,111B−8の組とに順次入力されることで、各段の自己走査サイリスタ111B−1〜111B−8が順にオンしていく。
【0177】
オン状態にある自己走査サイリスタ111Bのゲート電圧は、Lレベルであり、オフ状態にある自己走査サイリスタ111Bのゲート電圧はアノード電圧に略等しい。前述したように、各段の自己走査サイリスタ111B−1〜111B−8が順次オンしていく結果、図11の自己走査回路100Bはシフトレジスタとして動作し、各段の自己走査サイリスタ111B−1〜111B−8のゲートが、自己走査回路100Bの出力端子Q1〜Q8となっている。そのため、自己走査回路100Bの出力端子Q1〜Q8から出力される点灯指令信号によって、発光素子アレイ200Bにおける発光サイリスタ位置が指令され、データ端子DAの値により発光サイリスタ210B−1〜210B−8の点灯、非点灯の別、更には点灯時間を制御することが可能となる。
【0178】
(図13中のオーバシュート波形の説明)
図14(a)、(b)は、図11のクロック駆動回路80B内の出力バッファ81B、RL微分回路90B−1、及び第1段回路110B−1と図13のタイミングチャートとの要部を示す図であり、同図(a)は要部の回路図、及び、同図(b)は要部の電圧波形図である。
【0179】
図14(a)において、サイリスタ111B−1のカソードはグランドGNDに接続され、このサイリスタ111B−1のアノードがクロック端子CK1に接続され、更に抵抗91−1を介して出力端子CK1Rに接続されている。又、クロック端子CK1は、インダクタ92−1及び抵抗93−1を介してVDD電源に接続されている。ダイオード112B−1のアノードは、サイリスタ111B−1のゲートに接続されている。ダイオード112B−1のカソードは、図11に示したようにクロック端子CK2に接続されているのであるが、サイリスタ111B−1のターンオン過程においてはその信号レベルがLレベルとされており、図を簡略化する目的で、図14(a)においてはグランドGNDに接続して示している。
【0180】
例えば、クロック駆動回路80Bの出力端子CK1RがLレベルとなっている場合を考える。
【0181】
これは前記図13のタイミングチャートの左端部における状態に対応している。この時、図14(a)の実線矢印で示す向きに電流I1を生じる。この電流I1は、VDD電源、抵抗93−1、インダクタ92−1、及び抵抗91−1を経由して、NMOS81eを介してグランドGNDに至る経路を通る。
【0182】
次いで、図13における時刻t1において、NMOS81eがオフ状態に遷移する。すると、インダクタ92−1には、図14(a)中に+,−として極性を付記した向きに逆起電圧を生じ、破線矢印にて示す向きの電流I2を生じる。この電流I2の経路は、インダクタ92−1、抵抗91−1、ダイオード81d−1、及び抵抗93−1を経由してインダクタ92−1に戻る第1の電流経路である。
【0183】
この時、第1の電流経路に着目すると、ダイオード81d−1のカソードはVDD電源に接続されているので、出力端子CK1Rの電位は電源電圧VDDよりも前記ダイオード81d−1の順電圧分高い電位となり、クロック端子CKlの電位は前記ダイオード81d−1の順電圧よりも抵抗91−1の両端に生じる電圧降下分だけ更に高い電位となることが判る。
【0184】
この結果、破線矢印にて示すように、VDD電源から抵抗93−1、インダクタ92−1、サイリスタ111B−1のアノード・ゲート間、及びダイオード112B−1を経由してグランドGNDに至る第2の電流経路に電流I3を生じ、サイリスタ111B−1のアノード・ゲート間に流れる電流がトリガ電流となってサイリスタ111B−1がターンオンすることになる。
【0185】
図14(b)は、前記過程を示す電圧波形であって、出力端子CKIRがHレベルへ遷移する時、クロック端子CK1にはa部に示すようにオーバシュート部を生じて、電源電圧VDDよりも電圧Vp分高くすることができる。
【0186】
典型的な設計例では、電源電圧VDDは3.3Vであり、ダイオード112B−1の順電圧Vfは略1.6V、サイリスタ111B−1のアノード・ゲート間に生じるPN接合の順電圧Vagもまた1.6Vとすると、第2の電流経路に電流I3を生じさせるためには、
Vf+Vag<VDD+Vp
であることが必要である。この時、図14(b)に示すクロック端子CK1の波形にオーバシュート部aが無く、Vp=0であると、
Vf+Vag=1.6+1.6=3.2V
となり、電源電圧VDDと同程度の値になって、サイリスタ111B−1をターンオンさせるに十分なゲートトリガ電流を得ることができない。
【0187】
これに対し、例えば、前記オーバシュート波形としてVp=0.6Vといった値を与えることで、
VDD+Vp=3.3+0.6=3.9V
となり、サイリスタ111B−1をターンオンさせるに十分なゲートトリガ電流を得ることができる。
【0188】
(実施例2の変形例1)
図15は、本発明の実施例2における図11の変形例1である印刷制御部40B及び光プリントヘッド13Cの概略の回路構成を示すブロック図であり、図11中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0189】
本変形例1では、実施例2と同様の印刷制御部40Bを有している。印刷制御部40Bには、実施例2と同様の複数の接続コネクタ96(96−1〜96−3)、接続ケーブル95(95−1〜95−3)及び接続コネクタ97(=97−1〜97−3)を介して、実施例2の光プリントヘッド13Bとは異なる構成の光プリントヘッド13Cが接続されている。本変形例1の光プリントヘッド13Bは、実施例1と同様の自己走査回路100Bと、実施例1の発光素子アレイ200Bとは異なる構成の発光素子アレイ200Cとを有している。
【0190】
発光素子アレイ200Cは、2端子発光素子としての例えば複数のNゲート型のLED210C(=210C−1〜210C−n,・・・)を有し、これらの各LED210Cのアノードが、駆動電流Ioutを流す共通端子INを介して接続コネクタ97−1に接続され、カソードが、自己走査回路100Bの各出力端子Q1〜Qnに接続されている。各LED210Cは、アノード・カソード間に所定電圧が印加されると、オン状態になってカソード電流が流れ、発光する素子である。LED210C−1〜210C−n,・・・の総数は、実施例2と同様に、例えば、A4サイズの用紙に1インチ当たり600ドットの解像度で印刷可能な光プリントヘッド13Cの場合、4992個であり、これらが配列されることになる。
【0191】
このような構成の印刷制御部40B及び光プリントヘッド13Cでは、以下のように動作する。
【0192】
例えば、駆動用矩形波発生回路61Bから出力される駆動指令信号DRVON−NがHレベルの場合、データ駆動回路70内のCMOSインバータ71により、抵抗72を介してデータ端子DAがLレベルとなる。そのため、接続コネクタ96−1、接続ケーブル95−1及び接続コネクタ97−1を介して、光プリントヘッド13C側の共通端子IN及び各LED210CのアノードがLレベルになる。この結果、LED210C−1〜210C−nが全て非発光状態となる。
【0193】
これに対し、駆動指令信号DRVON−NがLレベルの場合、CMOSインバータ71により、抵抗72を介してデータ端子DAがHレベルとなる。この結果、接続コネクタ96−1、接続ケーブル95−1及び接続コネクタ97−1を介して共通端子INも略電源電圧VDDとなる。この際、LED210C−1〜210C−nの内、自己走査回路100Bにより、発光指令されているLED210Bのカソードのみを選択的にLレベルとすることで、発光指令されているLED210Cがオン状態になる。オン状態のLED210Cのアノードに流れる電流は、データ端子DAから供給される駆動電流Ioutであり、LED210Cは発光状態となってその駆動電流Ioutの値に応じた発光出力を生じる。
このように、本変形例1では、実施例2とほぼ同様に動作する。
【0194】
(実施例2の変形例2)
図16は、図11及び図15の変形例1における出力バッファを示す回路図であり、図11及び図15中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0195】
本変形例2の出力バッファ81Cでは、図11及び図15中の出力バッファ81BにおけるPMOS81d及びこの寄生ダイオード81d−1に代えて、通常のダイオード81fが設けられている。ダイオード81fは、アノードが出力端子CK1Rに接続され、カソードがVDD電源に接続されている。図11及び図15中の他の出力バッファ82Bにおいても、図示しないが、PMOS82d及びこの寄生ダイオード82d−1に代えて、通常のダイオードが設けられている。
【0196】
例えば、ダイオード81fは、図14に示す電流I2を出力端子CK1R側からVDD電源側へ流す機能を有している。このようなダイオード81fを設けても、図11及び図15と同様の動作が行われる。
【0197】
(実施例2及び変形例1、2の効果)
本実施例2及びこの変形例1、2によれば、次の(a)、(b)のような効果がある。
【0198】
(a) 本実施例2やこの変形例1、2によれば、クロック駆動回路80Bを、NMOSを用いたオープンドレーン構成にし、この出力信号をRL微分回路90B−1,90B−2で微分して、図14(b)のa部におけるオーバシュート波形を生成しているので、実施例1と同様に、クロック駆動回路80Bにおける出力端子CK1R,CK2Rの数がクロック当たり1個で良く、従来構成と比べて所要端子の数を半減することができる。これにより、光プリントヘッド13B,13Cにおけるデータ転送速度を向上できることは勿論のこと、クロック駆動回路80Bの出力端子CK1R,CK2Rの数の減少によって、回路規模の削減と、これによる低コスト化も期待できる。
【0199】
(b) 本実施例2やこの変形例1、2の画像形成装置1によれば、プリントヘッド13B,13Cを採用しているので、実施例1の効果(b)と同様の効果が得られる。
【0200】
(実施例1、2の他の変形例)
本発明は、上記実施例1、2やその変形例1、2に限定されず、その他の種々の利用形態や変形が可能である。この利用形態や変形例としては、例えば、次の(I)、(II)のようなものがある。
【0201】
(I) 実施例1、2及びこの変形例1、2において、光源として用いられる発光サイリスタ210,210B及びLED210A,210Cに適用した場合について説明したが、本発明は、サイリスタをスイッチング素子として用い、このスイッチング素子に例えば直列に接続された他の素子(例えば、有機エレクトロルミネセンス素子(以下「有機EL素子」という。)、表示素子等)への電圧印加制御を行う場合にも適用可能である。例えば、有機EL素子のアレイで構成される有機ELプリントヘッドを備えたプリンタ、表示素子の列を有する表示装置等において利用することができる。
【0202】
(II) 表示素子(例えば、列状あるいはマトリクス状に配列された表示素子)の駆動(即ち、電圧印加の制御)のためスイッチング素子としても用いられるサイリスタにも適用可能である。又、本発明は、3端子構造を備えたサイリスタの他、第1と第2の2つのゲートを備えた4端子サイリスタSCS(Semiconductor Controlled Switch)の場合にも適用可能である。
【符号の説明】
【0203】
1 画像形成装置
13,13A,13B,13C 光プリントヘッド
13c ICチップ
40,40B 印刷制御部
61,61B 駆動用矩形波発生回路
62 走査用矩形波発生回路
70 データ駆動回路
80,80B クロック駆動回路
81,81B,82,82B 出力バッファ
81a,82a,81d,82d PMOS
81b,82b,81e,82e NMOS
81b−1,82b−1,81c,81d−1,82d−1,81f ダイオード
90−1,90B−1,90−2,90B−2 RL微分回路
92−1,92−2 インダクタ
100,100B 自己走査回路
111,111−1〜111−n,111B,111B−1〜111B−n 自己走査サイリスタ
200,200A,200B,200C 発光素子アレイ
210,210−1〜210−n,210B,210B−1〜210B−n 発光サイリスタ
210A,210A−1〜210A−n,210C,210C−1〜210C−n LED
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通端子に分岐接続されて配列された複数の発光素子を駆動する駆動装置において、
各々、第1電源と接続される第1端子と、クロック端子と接続される第2端子と、前記第1端子及び前記第2端子間のオン/オフ状態を制御する制御端子と、を有する複数の3端子スイッチ素子が配列され、前記クロック端子から供給される第1クロック信号に基づき前記3端子スイッチ素子がオン/オフ動作して前記制御端子に流れる信号を前記発光素子に与え、前記複数の発光素子を順に走査して駆動する走査回路と、
駆動用矩形波の信号を駆動してデータ信号を前記共通端子へ供給するデータ駆動回路と、
走査用矩形波の信号を駆動して第2クロック信号を出力するクロック駆動回路と、
前記第2クロック信号をインダクタにより微分して、前記第2クロック信号のエッジに微分波形が形成された前記第1クロック信号を生成し、前記クロック端子へ供給する微分回路と、
を備えたことを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記クロック駆動回路は、
前記第1電源と前記第2クロック信号を出力する出力端子との間に接続され、前記走査用矩形波の信号によりオン/オフ動作するスイッチ素子と、
前記出力端子と前記第1電源とは異なる電位の第2電源との間に逆方向に接続されたダイオードと、
を有することを特徴とする請求項1記載の駆動装置。
【請求項3】
前記スイッチ素子は、前記走査用矩形波の信号によりオン/オフ動作する第1導電型のMOSトランジスタにより構成され、
前記ダイオードは、前記第1導電型とは異なる第2導電型のMOSトランジスタに形成される寄生ダイオードにより構成されていることを特徴とする請求項2記載の駆動装置。
【請求項4】
前記微分回路は、前記出力端子及び前記クロック端子間と前記第2電源との間に接続された前記インダクタを有することを特徴とする請求項2又は3記載の駆動装置。
【請求項5】
前記微分回路は、前記出力端子及び前記クロック端子間と前記第2電源との間に直列に接続された前記インダクタ及び抵抗を有することを特徴とする請求項2又は3記載の駆動装置。
【請求項6】
前記3端子スイッチ素子は、サイリスタにより構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記発光素子は、3端子発光素子により構成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記3端子発光素子は、発光サイリスタであることを特徴とする請求項7記載の駆動装置。
【請求項9】
前記発光素子は、2端子発光素子により構成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項10】
前記2端子発光素子は、発光ダイオードであることを特徴とする請求項9記載の駆動装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の複数の発光素子と、
請求項1〜10のいずれか1項に記載の駆動装置と、
を備えたことを特徴とする光プリントヘッド。
【請求項12】
請求項11記載の光プリントヘッドを備え、
前記光プリントヘッドにより露光されて記録媒体に画像を形成することを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
共通端子に分岐接続されて配列された複数の発光素子を駆動する駆動装置において、
各々、第1電源と接続される第1端子と、クロック端子と接続される第2端子と、前記第1端子及び前記第2端子間のオン/オフ状態を制御する制御端子と、を有する複数の3端子スイッチ素子が配列され、前記クロック端子から供給される第1クロック信号に基づき前記3端子スイッチ素子がオン/オフ動作して前記制御端子に流れる信号を前記発光素子に与え、前記複数の発光素子を順に走査して駆動する走査回路と、
駆動用矩形波の信号を駆動してデータ信号を前記共通端子へ供給するデータ駆動回路と、
走査用矩形波の信号を駆動して第2クロック信号を出力するクロック駆動回路と、
前記第2クロック信号をインダクタにより微分して、前記第2クロック信号のエッジに微分波形が形成された前記第1クロック信号を生成し、前記クロック端子へ供給する微分回路と、
を備えたことを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記クロック駆動回路は、
前記第1電源と前記第2クロック信号を出力する出力端子との間に接続され、前記走査用矩形波の信号によりオン/オフ動作するスイッチ素子と、
前記出力端子と前記第1電源とは異なる電位の第2電源との間に逆方向に接続されたダイオードと、
を有することを特徴とする請求項1記載の駆動装置。
【請求項3】
前記スイッチ素子は、前記走査用矩形波の信号によりオン/オフ動作する第1導電型のMOSトランジスタにより構成され、
前記ダイオードは、前記第1導電型とは異なる第2導電型のMOSトランジスタに形成される寄生ダイオードにより構成されていることを特徴とする請求項2記載の駆動装置。
【請求項4】
前記微分回路は、前記出力端子及び前記クロック端子間と前記第2電源との間に接続された前記インダクタを有することを特徴とする請求項2又は3記載の駆動装置。
【請求項5】
前記微分回路は、前記出力端子及び前記クロック端子間と前記第2電源との間に直列に接続された前記インダクタ及び抵抗を有することを特徴とする請求項2又は3記載の駆動装置。
【請求項6】
前記3端子スイッチ素子は、サイリスタにより構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記発光素子は、3端子発光素子により構成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記3端子発光素子は、発光サイリスタであることを特徴とする請求項7記載の駆動装置。
【請求項9】
前記発光素子は、2端子発光素子により構成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項10】
前記2端子発光素子は、発光ダイオードであることを特徴とする請求項9記載の駆動装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の複数の発光素子と、
請求項1〜10のいずれか1項に記載の駆動装置と、
を備えたことを特徴とする光プリントヘッド。
【請求項12】
請求項11記載の光プリントヘッドを備え、
前記光プリントヘッドにより露光されて記録媒体に画像を形成することを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−194856(P2011−194856A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67336(P2010−67336)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【出願人】(500002571)株式会社沖デジタルイメージング (186)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【出願人】(500002571)株式会社沖デジタルイメージング (186)
【Fターム(参考)】
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