説明

駆動装置およびそれを用いた画像形成装置

【課題】駆動伝達ギアのバックラッシュによる振動を防止し、速度むらの無い回転駆動伝達を行う駆動装置およびそれを用いた画像形成装置を提供する。
【解決手段】第1駆動ギア52と、第1駆動ギア52と同軸上に第1駆動ギア52と一体に回転するように形成された第2駆動ギア53と、第1駆動ギア52にかみ合い第1駆動ギア52から駆動力を受ける従動ギア56と、従動ギア56とは異なる歯数で、従動ギア56と同軸上に回転可能に設けられ、第2駆動ギア53にかみ合い第2駆動ギア53から駆動力を受ける制動ギア57と、従動ギア56と制動ギア57を互いに軸方向に押し付けるように付勢する圧縮ばね59とからなり、一体に回転する第1駆動ギア52と第2駆動ギア53が従動ギア56と制動ギア57に軸方向で両側から押さえられるので、駆動伝達ギアのバックラッシュによる振動を防止し、回転速度むらを無くせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は駆動伝達ギアのバックラッシュによる振動を防止し、速度むらの無い回転駆動伝達を行う駆動装置およびそれを用いた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、画像形成装置として、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、及び黒(K)の各色ごとの電子写真プロセスユニットをベルトに沿って配列して当該ベルト上で各色ごとのトナー像を重ね合わせるようにした、いわゆるタンデム型のカラーの画像形成装置が広く普及している。
【0003】
この種のタンデム型の画像形成装置においては、各色ごとの電子写真プロセスユニット内の感光体ドラム上に個別にトナー像が形成された後に、その各色ごとのトナー像が、順次、ベルト上(またはベルト上を搬送される記録シート上)で重ね合わされるため、各色ごとの像に濃度むらや像の伸び縮みがあると、重ね合わせた像に単色でのむらや、色合成部分では重ね合わせて作られる2次色の色合いむら等が生じ、カラー画像としての画像品質を低下させる。
【0004】
このような色むらの原因の一つとして、各色の像担持体である感光体ドラムの回転速度むらがある。各色感光体ドラムに回転むらがあると、帯電や露光などの過程において、各感光体ドラム上に形成される潜像にむらが生じ、その結果画像むらとなるものであることが解っている。
【0005】
感光体ドラムの回転むらに起因する画像むらを防止するために、感光体ドラムを駆動する駆動系に一般にシザースギアと呼ばれるギア列のバックラッシュによる駆動伝達むらを防止する装置を設ける方法(例えば特許文献1参照)や、感光体ドラムあるいは感光体ドラムと一体で回転する軸にフライホイールを設け回転を安定させる方法(例えば特許文献2参照)、あるいは、感光体ドラムにギアなどの駆動装置で連結された先にフライホイールを設ける方法(例えば特許文献3参照)などが提案されている。
【特許文献1】特許第3658369号公報
【特許文献2】特開平9−171326号公報
【特許文献3】特開2000−250315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の特許文献1に記載のシザースギアを用いる方法では、同軸に設けられた2つのギアに付勢力を与えるばねによって、支持軸に対しギアが傾き歯面のかみ合い時に振動が発生し、回転むらを発生させるという問題があった。
【0007】
また、特許文献2に記載の感光体ドラムあるいはこれと一体で回転する軸にフライホイールを設ける方法においては、フライホイールの効果を十分に得るには回転半径を大きくする必要があるが、特にタンデム型の画像形成装置では複数の感光体ドラムが所定の短い間隔で配置されているので、感光体ドラム周辺の配置上の制約のため、回転半径を十分に大きくすることができないという課題を有していた。また、許される範囲で回転半径を最大とすることは、装置が高価なものとなるという別の課題もあった。
【0008】
また、特許文献3に記載の感光体ドラムにギアなどの駆動装置で連結された先にフライホイールを設ける方法では、ギアのバックラッシュにより歯のかみ合いに遊びがあるので
、フライホイールによる回転速度の安定化の効果は十分には期待できないという問題を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の駆動装置は、第1のギアと、第1のギアと同軸上に第1のギアと一体に回転するように形成された第2のギアと、第1のギアにかみ合い第1のギアから駆動力を受ける第3のギアと、第3のギアとは異なる歯数で、第3のギアと同軸上に第3のギアと独立に回転可能に設けられ、第2のギアにかみ合い第2のギアから駆動力を受ける第4のギアと、第3のギアと第4のギアを互いに軸方向に押し付けるように付勢する付勢手段とからなる構成を有している。
【0010】
この構成により、第3のギアに第4のギアの摩擦力による一定の負荷を与え、逆に第4のギアを第3のギアで早く回そうとすることによって、一体に回転するように形成された第1と第2のギアが、第3と第4のギアによって、その回転方向において両側から押さえられることになり、バックラッシュによるがたがなくなり、これによる回転駆動力伝達むらがなくなる。また、第3および第4のギアは軸方向から垂直に付勢されるため歯面が傾くことがないので、歯筋のずれによるかみ合い時の振動等も発生しない。
【0011】
また、本発明の駆動装置は、第1のギアと第2のギアが一体物として形成された構成を有している。
【0012】
この構成により、安価で、簡便な構成でむらの無い駆動の伝達ができる。
【0013】
また、本発明の駆動装置は、第3のギアにフライホイールを設けた構成を有している。
【0014】
この構成により、第3のギアおよびこれに連結した回転体の回転を安定させることができる。
【0015】
また、本発明の駆動装置は、第3のギアと第4のギアの内、少なくとも歯数の大きいギアに負転位のギアを用いた構成を有している。
【0016】
この構成により、第1のギアと第2のギアを同一歯数の同一ギアとすることができ、安価で、簡便な構成でむらの無い駆動の伝達ができる。
【0017】
また、本発明の駆動装置は、第3のギアと第4のギアの内、少なくとも歯数の小さいギアに正転位のギアを用いた構成を有している。
【0018】
この構成により、同様に、第1のギアと第2のギアを同一歯数の同一のギアとすることができ、安価で、簡便な構成でむらの無い駆動の伝達ができる。
【0019】
また、本発明の駆動装置は、第1のギアから第4のギアの全てが、はす歯ギアである構成を有している。
【0020】
この構成により、ギアのかみ合い率が大きくなり、むらの無い駆動の伝達ができる。
【0021】
また、本発明の駆動装置は、第3のギアと第4のギアの間に摩擦部材を設けた構成を有している。
【0022】
この構成により、第3のギアと第4のギアの間の駆動伝達力が安定して上昇し、第3のギアと第4のギアの歯面が第1のギアと第2のギアの歯面を付勢する力が安定するため、
よりむらの無い駆動の伝達ができる。
【0023】
さらに、本発明の画像形成装置は、上記のいずれかの駆動装置を用いた構成を有している。
【0024】
この構成により、むらの無い良質な画像を得ることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の駆動装置は、第1のギアと、第1のギアと同軸上に第1のギアと一体で回転するように形成された第2のギアと、第1のギアにかみ合い第1のギアから駆動力を受ける第3のギアと、第3のギアとは異なる歯数で、第3のギアと同軸上に回転可能に設けられ、第2のギアにかみ合い第2のギアから駆動力を受ける第4のギアと、第3のギアと第4のギアを互いに軸方向に押し付けるように付勢する付勢手段とからなり、安定した速度むらの無い回転駆動力を伝達でき、これにより画像むらの無い画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態の駆動装置およびそれを用いた画像形成装置について、図面を用いて説明する。
【0027】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1の画像形成装置を示す概略構成図である。
【0028】
図1において本実施の形態の画像形成装置は、帯電、露光、現像、転写及び定着の各プロセスを経て記録紙に画像を形成する画像形成部1を備え、この画像形成部1には、給紙部2の給紙カセットに収容された記録シート3が、給紙部2から画像形成部1に向かう給紙経路Aを経て逐次送り込まれる。画像形成部1にて所要の画像が形成された記録シート3は、画像形成部1から装置外へと向かう排紙経路Bを経て排紙部4に排出される。
【0029】
画像形成部1は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、および黒(K)の各色成分ごとのトナー像を形成する複数のプロセスユニット11〜14を有している。
【0030】
また、画像形成部1は、この各プロセスユニット11〜14内の各感光体ドラム11a〜14aの作像面に対して露光用の光束(点線の矢印)を走査するレーザ・スキャニング・ユニット(以下LSUという)16を有している。
【0031】
また、画像形成部1は、各プロセスユニット11〜14内の各感光体ドラム11a〜14a上に作像された各色ごとのトナー像が順次転写されて合成される画像保持手段としての中間転写ベルト(中間転写体)17とを有している。
【0032】
このように、画像形成部1は、各色ごとの感光体ドラム11a〜14aが中間転写ベルト17に沿って並んで配置されたタンデム型の構造となっている。
【0033】
各プロセスユニット11〜14内では、各帯電器11b〜14bにより均一に帯電させた各感光体ドラム11a〜14aの作像面に対してLSU16から露光用の光束が走査されることで静電潜像が形成される。この各感光体ドラム11a〜14aの静電潜像が、各現像器11c〜14cから供給される各色のトナーで現像されて、色成分ごとの単色トナー像が各感光体ドラム11a〜14aの作像面に形成される。
【0034】
中間転写ベルト17は、駆動ローラ21、従動ローラ22に巻き掛けられて支持されて
いる。この中間転写ベルト17の内側には、中間転写ベルト17を押圧して各感光体ドラム11a〜14a上のトナー像を中間転写ベルト17に転写する各色ごとの1次転写ローラ24〜27が設けられている。また中間転写ベルト17の端部側方には、中間転写ベルト17上のトナー像を記録シート3に転写する2次転写ローラ28が配設されている。
【0035】
この2次転写ローラ28によりトナー像が転写された記録シート3は、定着器19に搬送されて熱及び圧力によりトナー像を記録シート3に定着させる処理が行われる。その後、記録シート3は排紙経路Bを経て排紙ローラ20により排紙部4上に排出される。
【0036】
このように構成されたカラー画像形成装置において、各感光体ドラム11a〜14aに回転むらがあると、帯電や、露光などの過程において、各感光体ドラム11a〜14a上に形成される潜像にむらが生じ、その結果画像むらとして記録される。特にカラー画像形成装置においては、この各色の画像むらが合成されると、色合いのむらになり、画像品質上さらに好ましいことではないので、各感光体ドラム11a〜14aのそれぞれに回転むらが発生しないようにすることが重要である。
【0037】
図2は本発明の実施の形態1の駆動装置を感光ドラムの軸に対して直角方向から見た模式図である。
【0038】
図2において、画像形成装置の骨格を成す前基板40と後基板41にはそれぞれ軸受け42,43が設けられており、感光体ドラム11aの中心に設けられ、感光体ドラム11aを回転する駆動を伝達するドラム軸50を回転可能に保持している。図示しないモーターなどの駆動源により駆動されている駆動軸51に歯数Z1の第1駆動ギア(第1のギア)52と歯数Z2の第2駆動ギア(第2のギア)53が固定されている。ここで、第1駆動ギア52と第2駆動ギア53は共に駆動軸51に固定されているため、実質的に一体で形成されていることになり、第1駆動ギア52と第2駆動ギア53は一体に回転する。
【0039】
ドラム軸50にはドラム軸50に駆動力を伝えるように固定された歯数Z3の従動ギア(第3のギア)56と、ドラム軸50に対して回転自在に取り付けられた歯数Z4の制動ギア(第4のギア)57が設けられている。また、歯数Z1〜Z4を適宜の値に選ぶことにより、第1駆動ギア52と従動ギア56が、また第2駆動ギア53と制動ギア57が適度なバックラッシュを持って、それぞれかみ合うように構成されている。
【0040】
本実施の形態では、Z1=21、Z2=19、Z3=18、Z4=20とし、モジュール0.8のはす歯ギアとした。
【0041】
また、従動ギア56と制動ギア57の間にはそれぞれに対して摩擦力を発生する摩擦部材58が設けられており、ドラム軸50の端部に設けられた圧縮ばね59及び圧縮ばね59がドラム軸50から外れることを防止するとめ輪60により、摩擦部材58を介して制動ギア57を従動ギア56に軸方向に押し付け摩擦力を発生させている。このとき、圧縮ばね59は制動ギア57を軸方向方から垂直に加圧するので、ドラム軸50に対して、制動ギア57及び従動ギア56が傾くことはない。
【0042】
また、これらのギアにはかみ合い率を上げ回転伝達のむらを減少させる目的ではす歯ギア用いることがある。はす歯ギアでは歯面の傾きにより駆動時にギア全体を支持軸に対し傾ける力が発生するが、本実施の形態においては、圧縮ばね59が側方より垂直にギア側面を押圧するので、この傾きを防止し、この傾きによるかみ合い時の振動を防止することができる。
【0043】
このように構成された本実施の形態について、その動作を説明する。
【0044】
駆動軸51の動力は第1駆動ギア52から従動ギア56に伝わり、ドラム軸50とこれに係合している感光体ドラム11aを回転させる。また一方、駆動軸51の動力は第2駆動ギア53から制動ギア57に伝わり、制動ギア57を回転させる。このとき、制動ギア57はドラム軸50に対し回転自在に取り付けられているので、ドラム軸50に駆動力を伝えることはない。
【0045】
なお、本実施の形態のギアの歯数構成では第1駆動ギア52および第2駆動ギア53の回転数をR1としたとき、従動ギア56の回転数と制動ギア57の回転数は次の式で表される。
従動ギア56の回転数=R1×Z1/Z3=R1×21/18
制動ギア57の回転数=R1×Z2/Z4=R1×19/20
この結果、従動ギア56の回転数の方が制動ギア57の回転数よりも速いこととなる。
【0046】
ここで、制動ギア57は、圧縮ばね59により摩擦部材58を介して従動ギア56に押し付けられていため、制動ギア57と従動ギア56の間では摩擦力が発生し、制動ギア57は、より回転数の速い従動ギア56から摩擦部材58を介して駆動力を受け、第2駆動ギア53からの動力により回転する速度より速い速度で回転しようとする。
【0047】
しかし、制動ギア57は第2駆動ギア53とかみ合っているため、実質的にはバックラッシュ分だけ位相を変え、逆に制動ギア57が第2駆動ギア53を駆動する方向での歯面のかみ合いとなり、上記計算式で示す回転数で回転する。このとき摩擦部材58は従動ギア56、制動ギア57のいずれかあるいは双方との間ですべりが発生している。
【0048】
このときの本実施の形態のギアのかみ合っている状態を図3(A)、(B)に示す。
【0049】
図3(A)において、第1駆動ギア52の歯70は、矢印71で示す力で従動ギア56の歯72を押し、駆動を伝えている。また、図3(B)において、制動ギア57の歯75は矢印76で示す力で第2駆動ギア53の歯77から離れ、バックラッシュ分だけ位相が進み、第2駆動ギア53の歯78を押すことになる。
【0050】
ここにおいて、第1のギアである第1駆動ギア52と第2のギアである第2駆動ギア53は実質的に一体で設けられているので、第3のギアである従動ギア56に、第4のギアである制動ギア57の摩擦力による一定の負荷を与え、逆に制動ギア57を従動ギア56で早く回そうとする作用が働く。これによって、一体的に設けられた第1及び第2駆動ギア52、53の異なる歯が、回転方向において従動ギア56と制動ギア57によって、その両側から押さえられることになり、バックラッシュによるがたがなくなる。また、制動ギア57の歯面が傾くことがないので、歯筋のずれによるかみ合い時の振動等も発生しない。
【0051】
このため、駆動伝達時の振動、回転むらがなくなり、感光体ドラム11aを回転むら無くスムーズに駆動、回転することができる。
【0052】
また、従動ギア56と制動ギア57の歯数の大小を逆にしても同様の効果が得られる。
【0053】
なお、圧縮ばね59の力を調整するか、あるいは調整機構を設けたり、または、摩擦部材58の材質あるいは従動ギア56や制動ギア57の表面状態を変える等により、従動ギア56と制動ギア57の間に働く駆動力を変えることができ、制動ギア57の歯75が第2駆動ギア53の歯78を抑える力76を適度なものとすることができる。
【0054】
(実施の形態2)
図4は本発明の実施の形態2の駆動装置を感光ドラムの軸に対して直角方向から見た模式図である。
【0055】
図4において、図2と同じ構成には同じ番号を付している。本実施の形態においては、図2に示す例と同様に従動ギア56は制動ギア57より少ない歯数となっているが、従動ギア56に正転位のギアを、制動ギア57に負転位のギアを用いることで、従動ギア56と制動ギア57は略同一のピッチ円径を持つように構成されている。
【0056】
このため、図2に示す実施の形態1では、駆動ギアを第1駆動ギア52と第2駆動ギア53の二つとしたが、本実施の形態では、これらの駆動ギアを一体物として形成した一つの駆動ギア62として、従動ギア56と制動ギア57の両方にかみ合うようにすることができ、歯の形成が1回で済むため安価で、簡便な構成で、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0057】
(実施の形態3)
図5は本発明の実施の形態3の駆動装置を感光ドラムの軸に対して直角方向から見た模式図である。
【0058】
本実施の形態は、感光体ドラムをフライホイールを用いて回転むら無くスムーズに回転させるものである。
【0059】
図5において、図2と同じ構成には同じ番号を付している。本実施の形態においては、画像形成装置の骨格を成す前基板40と後基板41にはそれぞれ軸受け42,43が設けられており、感光体ドラム11aの中心に設けられ、感光体ドラム11aを回転する駆動を伝達するドラム軸50を回転可能に保持している。モーター軸101(モーターは図示せず)には、歯数Z10のモーターギア102が固定されている。
【0060】
ドラム軸50にはドラム軸50に駆動力を伝えるように固定された歯数Z11の駆動ギア100が設けられている。本実施の形態の駆動ギア100も、実施の形態2と同様に、実施の形態1における二つの駆動ギアを一体物として形成して一つの駆動ギアとしたものである。
【0061】
後基板41に設けられたアイドラ軸105には、アイドラ軸105に対して回転自在に取り付けられた歯数Z12の従動ギア106と、やはりアイドラ軸105に対して回転自在に取り付けられた歯数Z13の制動ギア107が設けられている。実施の形態2でも説明したように、歯数Z12の従動ギア106に正転位のギアを用い、歯数Z13の制動ギア107に負転位のギアを用いて略同一のピッチ円径になるように構成してある。
【0062】
また、モーター軸101およびアイドラ軸105の取り付け位置を選ぶことにより、モーターギア102と駆動ギア100が、駆動ギア100と従動ギア106と制動ギア107が適度なバックラッシュを持って、それぞれかみ合うように構成されている。
【0063】
本実施の形態では、Z10=20、転位係数x10=0、Z11=30、転位係数x11=0、Z12=15、転位係数x12=0.3、Z13=16、転位係数x13=−0.25とし、モジュール0.8、ねじれ角15°のはす歯ギアとした。
【0064】
モーター軸101とドラム軸50の軸間距離を20.852mmとすることで、モーターギア102と駆動ギア100のバックラッシュが0.100mmとなった。
【0065】
またドラム軸50とアイドラ軸105の軸間距離を19.000mmとすることで、駆動ギア100と従動ギア106のバックラッシュが0.100mmとなり、駆動ギア100と制動ギア107のバックラッシュが0.100mmとなった。
【0066】
また、従動ギア106と制動ギア107の間にはそれぞれに対して摩擦力を発生する摩擦部材108が設けられている。また、アイドラ軸105の制動ギア107と後基盤41にはさまれたところに、制動ギア107を摩擦部材108を介して従動ギア106に向け押圧し、その間で摩擦力を発生させる圧縮ばね109と、圧縮ばね109が直接後基盤41に当接しないようにするすべり部材110が設けられている。これにより、圧縮ばね109が制動ギア107と共に回転したときに、後基盤41との間でこすれ異音等が発生することが無い。
【0067】
なおこのとき、圧縮ばね109は制動ギア107を軸方向方から垂直に加圧するので、アイドラ軸105に対して、制動ギア107および従動ギア106が傾くことはない。
【0068】
また、これらのギアにはかみ合い率を上げ回転伝達のむらを減少させる目的ではす歯ギアを用いることが一般的である。はす歯ギアでは歯面の傾きにより駆動時にギア全体を支持軸に対し傾ける力が発生するが、本発明の実施の形態においては、側方より垂直にギア側面を押圧するので、この傾きを防止し、傾きによるかみ合い時の振動を防止する働きがある。
【0069】
アイドラ軸105に固定された止め輪111は、従動ギア106などが、圧縮ばね109により押され、アイドラ軸105から外れるのを防止している。
【0070】
また、従動ギア106には、従動ギア106の回転に慣性を与え、速度ムラの無い回転を得るためのフライホイール112が、ねじ113により固定されて設けられている。
【0071】
このように構成された本実施の形態について、その動作を説明する。
【0072】
モーター軸101の動力はモーターギア102から駆動ギア100に伝わり、ドラム軸50とこれに係合している感光体ドラム11aを回転させる。
【0073】
また、駆動ギア100の回転は係合する従動ギア106及び制動ギア107に伝えられ、それぞれとの歯数比に応じた速度で回転させる。
【0074】
なお、本実施の形態のギアの歯数構成では、駆動ギア100の回転数をR2としたとき、従動ギア106の回転数と制動ギア107の回転数は次の式で表される。
従動ギア106の回転数=R2×Z11/Z12=R2×30/15
制動ギア107の回転数=R2×Z11/Z13=R2×30/16
この結果、従動ギア106の回転数の方が制動ギア107の回転数よりも速いこととなる。
【0075】
ここで、制動ギア107は、圧縮ばね109により摩擦部材108を介して従動ギア106に押し付けられていため、制動ギア107と従動ギア106の間では摩擦力が発生し、制動ギア107は、より回転数の速い従動ギア106から摩擦部材108を介して駆動力を受け、駆動ギア100からの動力により回転する速度より速い速度で回転しようとする。
【0076】
しかし、制動ギア107は駆動ギア100とかみ合っているため、実質的にはバックラッシュ分だけ位相を変え、逆に制動ギア107が駆動ギア100を駆動する方向での歯面
のかみ合いとなり、上記計算式で示す回転数で回転する。このとき、摩擦部材108は、従動ギア106、制動ギア107のいずれかあるいは双方との間ですべりが発生している。
【0077】
このときの本実施例のギアのかみ合いの状態を図6(A)、(B)に示す。
【0078】
図6(A)において、駆動ギア100の歯120は矢印121で示す力で従動ギア106の歯122を押し、従動ギア106に駆動を伝えている。また、図6(B)において、制動ギア107の歯125は矢印126で示す力で駆動ギア100の歯127から離れ、バックラッシュ分だけ位相が進み、駆動ギア100の歯128を押すことになる。
【0079】
したがって、駆動ギア100の異なる歯が回転方向において両側から押さえられることになり、バックラッシュによるがたがなくなる。また、制動ギア107の歯面が傾くことがないので、歯筋のずれによるかみ合い時の振動等も発生しない。
【0080】
このため、感光体ドラム11aとフライホイール112との間では、それらをつなぐ駆動ギア100と従動ギア106の間に適度なバックラッシュを設けているにもかかわらず、駆動伝達時のがたや振動がなくなるので、フライホイール112の効果により感光体ドラム11aを回転むら無くスムーズにすることができる。
【0081】
通常、感光体ドラム11aに対しギア結合した先のギアにフライホイールを設けた場合は、ギアのバックラッシュにより歯のかみ合いに遊びがあるので、フライホイールによる回転速度の安定化の効果は期待できないが、本実施の形態では、上記のように、バックラッシュの影響をなくして、回転速度の安定化を図ることができる。
【0082】
また、従動ギア106と制動ギア107の歯数の大小を逆にしても、同様に感光体ドラム11aの回転をむらの無いものとする効果が得られる。
【0083】
なお、ばね109の力を調整するか、あるいは調整機構を設けたり、または、摩擦部材108の材質あるいは従動ギア106や制動ギア107の表面状態を変える等により、従動ギア106と制動ギア107の間に働く駆動力を変えることができ、制動ギア107の歯125が駆動ギア100の歯128を抑える力126を適度なものとすることができる。
【0084】
本実施の形態では従動ギア106および制動ギア107と単一の駆動ギア100がかみ合うとした例について説明したが、駆動ギア100を歯数の異なる実質的な2段ギアとし従動ギア106および制動ギア107とかみ合う構成としても、本実施の形態と同様の効果が得られることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0085】
以上のように、本発明は、感光体ドラムの回転を小さな構成でスムーズで安定なものとすることができるという効果を有し、駆動伝達ギアのバックラッシュによる振動を防止する駆動装置およびそれを用いた画像形成装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の実施の形態1における画像形成装置を示す概略構成図
【図2】本発明の実施の形態1における駆動装置を示す模式図
【図3】(A)本発明の実施の形態1における駆動装置の従動ギアのかみ合い状態を示す要部模式図(B)本発明の実施の形態1における駆動装置の制動ギアのかみ合い状態を示す要部模式図
【図4】本発明の実施の形態2における駆動装置を示す模式図
【図5】本発明の実施の形態3における駆動装置を示す模式図
【図6】(A)本発明の実施の形態3における駆動装置の従動ギアのかみ合い状態を示す要部模式図(B)本発明の実施の形態3における駆動装置の制動ギアのかみ合い状態を示す要部模式図
【符号の説明】
【0087】
1 画像形成部
2 給紙部
3 記録シート
4 排紙部
11〜14 プロセスユニット
11a〜14a 感光体ドラム
16 LSU
17 中間転写ベルト
19 定着器
20 排紙ローラ
21 駆動ローラ
22 従動ローラ
24〜27 1次転写ローラ
28 2次転写ローラ
40 前基板
41 後基板
42,43 軸受け
50 ドラム軸
51 駆動軸
52 第1駆動ギア
53 第2駆動ギア
56,106 従動ギア
57,107 制動ギア
58,108 摩擦部材
59,109 圧縮ばね
60,111 とめ輪
62,100 駆動ギア
70,72,75,77,78,120,122,125,127,128 歯
101 モーター軸
102 モーターギア
105 アイドラ軸
110 すべり部材
112 フライホイール
113 ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のギアと、前記第1のギアと同軸上に前記第1のギアと一体に回転するように形成された第2のギアと、前記第1のギアにかみ合い前記第1のギアから駆動力を受ける第3のギアと、前記第3のギアとは異なる歯数で、前記第3のギアと同軸上に前記第3のギアと独立に回転可能に設けられ、前記第2のギアにかみ合い前記第2のギアから駆動力を受ける第4のギアと、前記第3のギアと前記第4のギアを互いに軸方向に押し付けるように付勢する付勢手段とからなることを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記第1のギアと前記第2のギアが一体物として形成されたことを特徴とする請求項1記載の駆動装置。
【請求項3】
前記第3のギアにフライホイールを設けたことを特徴とする請求項1記載の駆動装置。
【請求項4】
前記第3のギアと前記第4のギアの内、少なくとも歯数の大きいギアに負転位のギアを用いたことを特徴とする請求項1記載の駆動装置。
【請求項5】
前記第3のギアと前記第4のギアの内、少なくとも歯数の小さいギアに正転位のギアを用いたことを特徴とする請求項1記載の駆動装置。
【請求項6】
前記第1のギアから前記第4のギアの全てのギアが、はす歯ギアであることを特徴とする請求項1記載の駆動装置。
【請求項7】
前記第3のギアと前記第4のギアの間に摩擦部材を設けたことを特徴とする請求項1記載の駆動装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の駆動装置を用いた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−286535(P2007−286535A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−116442(P2006−116442)
【出願日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】